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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】断続的なパーコレーション洗浄
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/04 20060101AFI20241010BHJP
   B01J 8/08 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 8/06 20060101ALI20241010BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C07K1/04
B01J8/08
B01J8/06
C12N15/10 110Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523276
(86)(22)【出願日】2022-10-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 SE2022050936
(87)【国際公開番号】W WO2023068987
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】2130279-9
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524018213
【氏名又は名称】ポリペプチド ラボラトリーズ ホールディング (ピーピーエル) アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルードマン - オンブールジェ、オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ラベッティデュラン、レナン
【テーマコード(参考)】
4G070
4H045
【Fターム(参考)】
4G070AA03
4G070AB07
4G070BB02
4G070BB15
4G070CB08
4G070CB17
4G070CB30
4G070CC06
4G070CC20
4G070DA21
4H045AA10
4H045AA20
4H045FA33
4H045FA51
(57)【要約】
本発明は、固相ペプチド合成(SPPS)または固相オリゴヌクレオチド合成(SPOS)などの不均一な液固相反応の液相および固相に含まれる化合物および溶媒を置換するための方法に関する。この方法は、液相および固相を含む反応器に適用され、この反応器には、液相が反応室から除去されている間、置換液が不連続的に供給される。本発明はまた、化合物を置換するための方法をさらに含む固相ペプチドまたはオリゴヌクレオチド合成プロトコルの適用によってペプチドまたはオリゴヌクレオチドを合成するための方法を包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各サイクルが反応ステップを含む繰り返し(反復)サイクルによるサブユニット(化合物)の連続的な導入によって合成される標的化合物の形成のための、液相および前記液相中に分散した粒子形態で存在する固相を含む、不均一な化学反応プロトコルの反応ステップで前記液相および固相に含まれる化合物を置換するための方法であって、
前記反応ステップが行われる反応器であって、気相、液相、固相、および前記反応器から前記固相を本質的に除去することなく前記反応器から前記液相を排出するための手段を含む、反応器を用意するステップと、
前記反応器から前記液相を除去するステップであって、前記反応器には置換液が不連続的に供給され、液相の層が常に前記固相上で維持されるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記反応器からの前記液相が連続的に除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
気液相境界および液固相境界を決定し、それによって前記固相上の前記液相の高さ(h)を確立することを含み、前記高さ(h)は決して0ではない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記高さ(h)が経時的に変動する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記液相の前記高さ(h)が、最大約1000%、好ましくは最大約500%、より好ましくは最大約300%、より好ましくは最大約200%変動する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記固相上の前記液相の最低高さh(min)が、約0.5cm、好ましくは約1cm、好ましくは約2cm、約3cm、約4cm、約5cmである、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記固相上の前記液相の最高高さh(max)が、約20cm、好ましくは約10cm、好ましくは約10cm、好ましくは約7cm、好ましくは約6cm、好ましくは約5cm、好ましくは約4cm、好ましくは約2cmである、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
h(max)とh(min)との差が、約0.1cm~最大約20cm、好ましくは約0.1cm~最大約10cm、好ましくは約0.2cm~最大約4cmである、請求項3から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
h(min)とh(max)との比[比:h(max)/h(min)]が約1.1~約6である、請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応器内の前記置換液(前記固相上)の空塔速度(Superficial velocity)が、約100cm/時~最大約400cm/時、好ましくは約150cm/時~最大約300cm/時、好ましくは約175cm/時~最大約250cm/時の範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器への前記置換液の流速が、前記反応器から排出される液相の流速よりも高い、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応器への前記置換液の前記流速が、前記反応器から排出される前記液相の前記流速に対して約110%~最大約500%である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記気液相境界および前記液固相境界が、少なくとも1つの検出器によって監視される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記検出器が、超音波、レーダ、またはレーザセンサから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記置換液が前記反応器に供給されない場合、前記少なくとも一つの検出器からのデータの取得が行われる、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記標的化合物がペプチドおよびオリゴヌクレオチドから選択され、前記サブユニットがアミノ酸、ヌクレオシド、およびそれらの誘導体から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記標的化合物がペプチドであり、前記サブユニットがアミノ酸およびその誘導体である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記不均一な化学反応が固相ペプチド合成(SPPS)である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記反応器が、前記液相と固相との間、ならびに少なくとも入口および出口との間の物質移動を促進するための手段を含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記液相と固相との間の物質移動を促進するための手段が、前記置換液が前記反応器から排水されるときには作動しない、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記液相と固相との間の物質移動を促進するための手段が、サイクルの前記反応ステップが所定の反応終点に達したときにオフにされ、前記置換液の最初の供給によって置換終点に達するまでと定義される期間(時間)中にオフ(動作不能)のままである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記液相と固相との間の物質移動を促進するための前記手段が、置換終点の達成後にオンにされ、それによって、前記液相中に固相の均質化された分散体がもたらされ、前記終点が維持されるか否かが確立される、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記固相が、シリカ含有材料、およびポリマー材料であって、前記標的化合物のサブユニットと、場合によりリンカーを介して共有結合することができる反応部位を含む前記ポリマー材料から選択される、請求項16から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記反応器から除去された前記液相が、前記除去された液相中の少なくとも1つの種を監視するための少なくとも1つの検出器によって監視され、反応終点または置換終点などの終点を確立する、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか一項によって定義される方法を含む、固相ペプチド合成プロトコルの適用によってペプチドまたはオリゴヌクレオチドを合成するための方法。
【請求項26】
各サイクルが液相および前記液相中に分散した粒子形態で存在する固相での反応ステップを含む繰り返し(反復)サイクルによって、アミノ酸およびその誘導体の連続的な導入によって合成される標的ペプチドを形成するための、固相ペプチド合成反応プロトコルの反応ステップで前記液相および固相に含まれる、化合物を置換するための方法であって、
前記反応ステップが行われるタンク反応器であって、入口、出口、前記液相と固相との間の物質移動を促進するための手段、気相、液相、固相、および前記反応器から前記固相を本質的に除去することなく前記反応器から前記液相を排出するための手段を含む、タンク反応器を用意するステップと、
前記反応器から前記出口を通して前記液相を除去するステップであって、前記反応器には前記入口を通して置換液が不連続に供給され、所定の終点に達するまで、液相が常に前記固相上で維持されるステップと、
を含む方法。
【請求項27】
前記液相が前記反応器から連続的に除去される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記固相の沈降をさらに含み、それによって液固相境界、固相上の液相および気液相境界を形成する、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記反応器が、前記固液相境界および前記気液相境界を検出することができ、それによって前記固相上の前記液相の高さhを提供することができる少なくとも1つのセンサを備える、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記固相上の前記液相の最低高さh(min)が、約0.5cm、好ましくは約1cm、好ましくは約2cm、約3cm、約4cm、約5cmである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記固相上の前記液相の最高高さh(max)が、約20cm、好ましくは約10cm、好ましくは約7cm、好ましくは約6cm、好ましくは約5cm、好ましくは約4cm、好ましくは約2cmである、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
h(max)とh(min)との差が、約0.1cm~最大約20cm、好ましくは約0.1cm~最大約10cm、好ましくは約0.2cm~最大約4cmである、請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記反応器内の前記置換液(前記固相上)の空塔速度が、約100cm/時~最大約400cm/時、好ましくは約150cm/時~最大約300cm/時、好ましくは約175cm/時~最大約250cm/時の範囲である、請求項26から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
固相ペプチド合成の反応ステップの液相および固相に含まれる、化合物(および/または溶媒)を置換するための方法であって、前記反応ステップが起こる反応器であって、液相および固相、前記反応器から前記固相を本質的に除去することなく前記反応器から前記液相を排出するための手段を含む、反応器を用意するステップと、前記反応器から前記液相が除去される一方で、置換液が前記反応器に不連続に(断続的に)供給されるステップとを含み、液相の連続層が前記固相上で維持される、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相ペプチド合成(SPPS)または固相オリゴヌクレオチド合成(SPOS)などの不均一な液固相反応の液相および固相に含まれる化合物および溶媒を置換するための方法に関する。この方法は、液相および固相を含む反応器に適用され、この反応器には、液相が反応室から除去されている間、置換液が不連続的に供給される。本発明はまた、化合物を置換するための方法をさらに含む固相ペプチドまたはオリゴヌクレオチド合成プロトコルの適用によってペプチドまたはオリゴヌクレオチドを合成するための方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
不均一な液固相の化学反応プロトコルは、反復サブユニットを含む分子の合成に魅力的である。液固相プロトコルは、固相を液相から効果的に分離することを可能にし、サブユニットの連続的な段階的導入(添加)のための反応ステップを含む反復サイクルの適用に適した条件を提供する。液固相反応プロトコルは、ペプチド合成およびオリゴヌクレオチド合成の分野で首尾よく実施されている。合成の過程で、新生分子(成長中のペプチドまたはオリゴヌクレオチドなど)は固体支持体に共有結合し、反復サイクルの反応ステップ間の洗浄による副生成物の効率的な除去のための条件を提供する。不均一な液固相の化学反応プロトコルは、例えば商業規模でのペプチドおよびオリゴヌクレオチドの合成に大きな影響を及ぼしてきたが、この方法論は、反復サイクルの各反応ステップの後に試薬、副生成物および反応溶液の置換に必要なかなりの体積の溶媒を消費する。
【0003】
固相ペプチド合成は、通常、反応中に反応器からまたは反応器への連続流がない撹拌タンク反応器(STR)などのバッチ反応器で行われる。充填床反応器などの管状反応器は、洗浄ステップ中に他の反応器を超えるいくつかの利点を提供する。充填床反応器は、反応器入口と樹脂ビーズとの間の「死体積」の量が最小限に抑えられるならば、STRのような希釈操作ではなく、置換操作として洗浄を進めることを可能にする。
【0004】
固相ペプチド合成は、アミノ酸を支持体に結合させるステップと、アミノ酸を脱保護するステップと、1つ以上の後続のアミノ酸を固体支持体に共有結合したアミノ酸またはアミノ酸断片にカップリングするステップとを含む反復サイクルによって、ペプチド鎖を固体支持体上に構築することを可能にする。固相ペプチド合成に使用される固体支持体は、通常、架橋度の低いゲル樹脂である。最も一般的な支持体は、架橋剤として1もしくは2%のジビニルベンゼン(DVB)を含有するポリスチレンであるが、他の固体支持体としては、ポリアクリラート、ポリアクリルアミドおよびポリエチレングリコールが挙げられる。これらの架橋した支持体は、有機溶媒に不溶性であるが、トルエン、ジメチルホルムアミドおよびジクロロメタンなどの非プロトン性溶媒中で溶媒和され、膨潤する。さらに、ペプチド樹脂は、ペプチド鎖長の伸長に起因して、集合中に収縮/膨潤することもある。さらに、これらの樹脂は、本質的にかなり軟質である傾向があり、したがって、物理的摩耗に感受性である。
【0005】
ペプチド合成ステップ(カップリングおよび脱保護)の間、好ましい反応器は撹拌反応器であり、これは反応を制御するための均一な媒体を有することを可能にする。一方、サイクルの合成ステップ間の樹脂の洗浄のために、好ましい反応器は、除去すべき種が最低限の溶媒で最適な方法でパーコレートされることを可能にするカラム型ピストン反応器である。
【0006】
固相オリゴヌクレオチド合成は、固相ペプチド合成と多くの類似性を有する。標的ヌクレオチドは、サイクルを構成する反復反応ステップの適用による固相上での個々のヌクレオシドの連続的な反応(カップリング)によって形成される。より具体的には、オリゴヌクレオチドは、典型的には、保護基、特にホスホロアミダイトを含むヌクレオシドの誘導体の実施によって形成される。ホスホアミダイト(phosphoamidites)の重要な特徴は、テトラゾールなどの弱酸によって触媒される求核試薬(例えば、ペントース糖の5’炭素の脱保護されたヒドロキシル基)に対する反応性である。テトラゾール触媒によるホスホロアミダイトカップリングは、効率を99%超に高め、長いオリゴヌクレオチド、最大100ヌクレオチド以上のオリゴヌクレオチドの合成を可能にする。通常、オリゴヌクレオチドは、3’末端から5’末端に合成され、保護されたヌクレオシドが3’炭素のリンカー/スペーサーによって共有結合している適切な固相から開始される。ヌクレオシドの反応基、すなわち塩基のヒドロキシル基、リン酸基およびアミンは、典型的には保護されている。適切には、5’ヒドロキシル基はジメトキシトリチル(DMT)によって保護され、イソブチリルまたはベンゾイルは塩基のアミンを保護するために使用され、ホスホロアミダイトは3’炭素のヒドロキシル基を保護する。ホスホロアミダイト固相合成は、3’ヌクレオチドから始まり、標的オリゴヌクレオチドの最終的な5’ヌクレオチドが結合するまで繰り返される4つの反応ステップからなる一連のサイクルを経る。ホスホロアミダイト固相合成の4つの反応ステップは、典型的には、脱保護、カップリング、キャッピングおよび安定化を含む。選択されるオリゴヌクレオチド合成のための固相は、多孔質シリケート、例えば多孔性ガラス(controlled-pore-glass、CPG)であり、依然として多孔質シリケートである。しかしながら、最近では、ポリスチレンをベースとする固相も関心を集めている(例えば多孔質架橋アミノエチルポリスチレン樹脂)。オリゴヌクレオチド合成は、通常、固体支持体を含む反応カラムで実施される。試薬をカラムに順次流す。
【0007】
固相ペプチド合成と同様に、固相オリゴヌクレオチド合成も、サイクルの反応ステップ後に過剰な反応物、副生成物および反応溶媒を置換するために使用されるかなりの量の液体を消費する。置換液はプロセス質量強度(PMI=原材料の量をAPI[活性医薬物質]の量で割ったもの)の約25%に等しい使用される有機材料の半分に相当するので、置換液(洗浄液)の減少は保証される。
【0008】
連続流通反応器は通常、固相オリゴヌクレオチド合成のために展開され、特に固相は多孔質シリケートである。1つのタイプの連続流通反応器は固定床反応器である。上記で示唆したように、通常、いくつかの架橋を有するポリマーである固相は、具体的には溶媒に起因するが、成長中のペプチドまたはオリゴヌクレオチドにも起因して、体積を変化させる傾向がある。SPPSの樹脂が体積で100%を超えて膨潤するが、100%を超えて収縮することも珍しくない。何らかの方法で、樹脂の膨潤および収縮は、連続流通反応器内に収容されなければならない。
【0009】
米国特許第9169287号明細書は、充填床反応器の適用による固相ペプチド合成のための連続流通反応器を開示している。樹脂の体積変化を収容するために、反応器の一部のみが樹脂で充填され、一方、かなりの体積の液体が樹脂床の上に存在する。樹脂床の上の大量の液体は、部分的には逆混合効果および希釈に起因して、カップリング反応および洗浄の実行などの反応ステップに非常に好ましくなく、大過剰の試薬の使用および洗浄液の大量消費をもたらす。米国特許第9169287号明細書の合成は、ペプチドの大規模生産には好ましくないであろう。
【0010】
米国特許出願公開第200206714号明細書は、固相ペプチド合成のための連続流通反応器を提示している。液相の体積を低く保ちながらの、反応サイクルにわたって体積の著しい変化を伴う樹脂の収容のための解決策は、ピストンによって作動される可動壁によって反応器全体の体積の調節を提供することである。米国特許出願公開第200206714号明細書の提案は、大規模生産にとって有利に操作することが困難であり得る複雑性の高い反応器を提示する。
【0011】
さらに、流通反応器の使用は、一般に、反応ステップ中に均一な反応条件を提供せず、樹脂中の試薬の濃度を局所的に変化させ、床上での反応進行の変動をもたらし、それによって純度に影響を与える可能性がある。
【0012】
さらに、連続流通反応器は、その直径よりもはるかに大きい高さを有し、樹脂床の膨張および収縮を妨げるかなりの量の壁表面積を有する。樹脂床が膨張すると、樹脂床は容器の壁に押し付けられ、樹脂粒子間の空隙空間を減少させる。したがって、高圧液滴が生成され、必要な時間内に全ての洗浄剤を床に押し込む。この高圧は、軟質ゲルビーズを圧縮し、潜在的に流れを制限し、樹脂ビーズを損傷し、フィルタを閉塞し得る微粒子を生成し、潜在的にフィルタフリットを損傷または破壊する可能性がある。高圧が使用されない場合、床を通る流れが遅くなりすぎ、洗浄ステップに時間がかかり、方法の生産性が低下する。
【0013】
独特許第2017351号明細書は、回転ボウルの設計に基づく反応器も開発されていることを開示している。回転ボウルまたは遠心反応器は、樹脂粒子に対して液体速度を増加させることを可能にすることができる。この「洗濯機」反応器では、多孔性バスケットに最初に樹脂が充填され、次いで液体に浸漬しながら中程度の速度まで回転する。遠心力により、樹脂粒子がバスケットの内壁に床を形成し、樹脂床を通る適度な流体の再循環を引き起こす。ボウルは、樹脂床と同様に水で満たされる(すなわち、液体で満たされている)。液体槽によってバスケットに課される抗力は、駆動モータに高いトルクを課し、また熱の発生を引き起こす。これらの理由から、Birr反応器の回転速度は比較的遅くなり、固体の速度に対する流体の相対速度は制限される。回転速度の制限は、ほぼ確実に、上部が浅く、底部付近が深い不均一な樹脂床をもたらす。この技術はまた、大規模製造のためのスケールアップにとって複雑である。
【0014】
米国特許第5186824号明細書は、水で満たされた「中空ロータ」をベースとする遠心反応器を開示している。反応器内の液体流路は半径方向ではなく軸方向であり、幾何学的形状は液体流場に対して不規則である。液体が導入される点は、最後に添加された液体の密度に対する液体の密度に依存する。また、樹脂を膨張させる余地がほとんどない。膨張および収縮の結果、樹脂の液相への曝露が不均一になりやすい。ロータからの液体の完全かつ均一な接触および除去は、達成が非常に困難であり得る。
【0015】
国際公開第2021/158444号パンフレットは、固相ペプチド合成のための反応器設計に関する。反応器設計の特徴は、いくつかの反応器の直列での適用である。直列反応器設計は溶媒を減少させる可能性を有するが、大規模生産のために操作することが困難であり得る複雑性の高い複数の反応器を必要とするという犠牲を払う。
【0016】
米国特許出願公開第2021/0094982号明細書は、固相ペプチド合成のための反応器システムを開示している。システムは、溶媒の除去のためにパーコレーションを使用することができる。パーコレーションは、反応器内で、洗浄液を出口流速と同じ流速で導入し、それによって液体の高さを一定のレベルに維持することによって実施される。流入および流出を同じ流速に保つことによってパーコレーション中に液体の高さを一定に維持することは、溶媒の消費の大幅な減少を可能にする最も効果的な洗浄モードを提供すると述べられている。
【0017】
洗浄液の連続的な流れは、樹脂床の上の液相のレベルを監視することを困難にする。反応器から液相を連続的に除去すると同時に反応器に洗浄(置換)液の不連続な供給を適用することによって、同時に固相(樹脂床)の上の洗浄液の空塔速度(Superficial velocity)に大きな影響を与えることなく、洗浄液が反応器に供給されない期間中、液面(すなわち、固相(樹脂床)の上の液相の高さ)を正確に監視することができる。
【0018】
米国特許出願公開第2021/0094982号明細書は、洗浄液の流入および液体の流出を同じ流速に設定したパーコレーション洗浄プロトコルに関する実験データを提示している。第0144段落中の表は、異なる流速の洗浄溶媒(および推論により、反応器からの液体の流出の流速も)、ならびに設定された終点(ここで液相中のピペリジンの量が反応器から出る)に達するのに必要な洗浄液の体積および時間に対する影響を示す。米国特許出願公開第2021/0094982号明細書では、最適な洗浄が好ましい終点として定義されている。50ml/分の流速では、930mlの洗浄溶媒の消費で20分以内に最適な洗浄に達する。300ml/分の流速では、1200mlの洗浄溶媒の消費で4分以内に最適値に達する。明らかに、洗浄時間と消費される洗浄液の両方が重要である。設定された終点では、洗浄時間の減少は溶媒消費量の増加によって相殺され、一方で溶媒消費量の減少は洗浄時間の増加および全体的なスループットの低下によって相殺される。
【0019】
本発明の根底にある経験的データからの1つの結論は、空塔速度によって提供される測定基準が、全体的な効率について、洗浄溶媒の流速よりも適切な代用となるという発見である。空塔速度は、流速とは異なり、洗浄溶媒の消費量と洗浄時間の両方を考慮して、反応器のサイズに関して独立している(異なる体積の反応器に普遍的に適用可能である)。さらに、出願人は、驚くべきことに、空塔速度の最適値を構成する具体的な好ましい範囲があることも見出した。空塔速度の特定の範囲では、洗浄液の使用済み体積および時間の両方を考慮した全体的な効率が具体的には有利である。
【0020】
米国特許出願公開第2021/0094982号明細書のパーコレーション洗浄は、乱れを発生させることなく、樹脂床に可能な限り近い一定の液面を適用する。一定の液面を提供するためには、液体の流入および流出は連続的であり、定常状態で同一の流速を有する必要がある。樹脂床に近い一定の液面を提供することは、センサを組み込んだ高度な調整システムなしで達成することは困難である。樹脂床の体積は、溶媒(溶媒組成物)およびペプチド鎖長の成長の関数として変化し得る。さらに、固相の特性は、固相に共有結合した目的の化合物がサブユニットの導入によってサイズが増加するにつれて変化する。反復サイクルの反応ステップ後に洗浄液(置換液)を導入すると、液相の組成が徐々に変化し、固相の膨潤特性に影響を及ぼすことがある。結論として、液面だけでなく、提示された理由のために固相(樹脂床)のレベルも監視する必要があり得る。したがって、液面を可能な限り固相の近くで一定に保つことは、固相のレベル(すなわち、液固相境界)および液面(すなわち気液相境界)の正確な監視に依存する。米国特許出願公開第2021/0094982号明細書では、洗浄液の連続的な流入中に液面が測定され、これは測定の精度を損なう。
【0021】
本発明は、洗浄液の連続供給を乱すことなく固相レベルおよび液面の監視を可能にする、置換液の不連続な流入を実施する。さらに、例えば反応器の壁の固相(樹脂)を洗浄するために必要であれば、置換液の不連続な供給の流速および持続時間を(樹脂床[固相]上の置換液の空塔速度に影響を与えることなく)容易に調節することができる。
【0022】
さらに、置換/洗浄液の不連続供給および反応器からの液相の連続パージの適用による反応溶媒、試薬および副生成物の置換は、洗浄液の連続流入および液体の連続流出の洗浄プロトコルよりも、使用済み洗浄液の減少をさらに改善する。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、各サイクルが反応ステップを含む繰り返し(反復)サイクルによるサブユニット(化合物)の連続的な導入によって合成される標的生成物の形成のための不均一な化学反応の反応ステップの、液相および液相に分散された粒子形態で存在する固相に含まれる化合物(および/または溶媒)を置換するための方法であって、固相が反応器から除去されるときに固相が反応室から逃げるのを防止する手段を少なくとも用意することと、反応器から液相を除去することとを含み、置換液が反応器に不連続的に供給され、液相の永久層が固相上で維持される、方法に関する。
【0024】
本発明はまた、本明細書に提示される化合物を置換するための方法を含む固体合成プロトコルの適用によるペプチドおよびオリゴヌクレオチドの合成のための方法を包含する。
【0025】
ペプチドおよびオリゴヌクレオチドは、化学構造などの多くの次元において類似している反復サブユニット(構成要素)を含む生物学的ポリマーである。これらのサブユニットは、ペプチドのサブユニット(アミノ酸)についてはカルボン酸およびアルファ-アミノ官能基、ならびにオリゴヌクレオチドのサブユニット(ヌクレオシド)については塩基、糖およびリン酸基などの類似の官能基を共有する。
【0026】
オリゴヌクレオチドおよびペプチドの製造のために選択される合成プロトコルは、オリゴヌクレオチドまたはペプチドが固相に共有結合する固相合成である。ヌクレオシドまたはアミノ酸(またはその任意の残基)は、固相に共有結合した連続的に成長中のオリゴヌクレオチドまたはペプチドに段階的にカップリングされる。固相合成は、ペプチドまたはオリゴヌクレオチドが固相に共有結合している間に反応物(ヌクレオシドまたはアミノ酸)が液相に提供される、液相および固相を含む不均一な化学反応の反応ステップを含む。
【0027】
固相は、粒子形態であってもよく、適切には液相中に分散されていてもよい。固相は圧縮性であってもよく、高度に溶媒和されたポリマー樹脂から本質的に非圧縮性の粒子または高い表面積を有する剛性構造までの範囲であってもよい。さらに、固相合成は、バッチ、連続モード、または両方の組み合わせで操作することができる。
【0028】
オリゴヌクレオチド合成とペプチド合成の両方に適用される固相合成プロトコルには、典型的には脱保護、すなわち保護基の除去と、さらなるサブユニット(ヌクレオシドまたはアミノ酸)がペプチドまたはオリゴヌクレオチドの成長中のポリマーに共有結合するカップリング反応と、副生成物、反応物および溶媒の置換を含むステップとを含む多数の異なる手順ステップを含む反復サイクルが含まれる。
【0029】
ペプチドの合成のためのサイクルは、通常、ペプチド-樹脂残基のN末端α-アミノ基に連結された保護基が切断され、保護されていないα-アミノ官能基が残ることを典型的に意味する脱保護のステップを含む。その後のステップでは、N末端α-アミノ保護アミノ酸のカルボン酸部分を、アミドカップリングの形成下でペプチド-樹脂残基の保護されていないα-アミノ官能基に共有結合させる。洗浄手順による脱保護およびカップリングの成功後に副生成物および過剰な試薬を除去する。
【0030】
固相オリゴヌクレオチド合成では、通常、保護された2’-デオキシヌクレオシド(dA、dC、dG、T)、リボヌクレオシド(A、C、G、およびU)または化学修飾ヌクレオシド、例えばLNAもしくはBNAに由来し得るホスホロアミダイトヌクレオシド構成要素(サブユニット)の使用を含むホスホロアミダイト合成方法を実施する。所望のオリゴヌクレオチドを得るために、構成要素を、生成物の配列が必要とする順序で、成長中のオリゴヌクレオチド鎖に順次カップリングさせる。天然に存在するヌクレオチドの代わりにヌクレオシドホスホロアミダイトを使用することにより、選択性および収率が劇的に改善される。反復サイクルは、通常、脱ブロックまたは脱トリチル化、カップリング、キャッピング(または硫化)および酸化のステップを含む。
【0031】
オリゴヌクレオチド合成に用いられる固相は、通常、非膨潤性または低膨潤性の固相(支持体)である。オリゴヌクレオチド合成に適した固相は、多孔質シリケート、例えば多孔性ガラス(CPG)である。近年、SPOSにおいて、方法条件(例えば、溶媒およびオリゴヌクレオチドの成長)が変化するにつれて体積が変化する傾向があるマクロ多孔質ポリスチレン(MPPS)を含むポリスチレン系樹脂などの非シリケート固相が導入されている。
【0032】
不均一な化学反応は、連続またはバッチモードで操作することができる。
【0033】
本発明は、不均一な液固相の化学反応プロトコルの反応ステップが所定の反応終点に達したと考えられるときの化合物の置換に関する。
【0034】
反応終点は、反応が有用な収率に達した点であると考えられる。置換される化合物は、次の反応ステップに好ましくない任意の化合物である。そのような好ましくない化合物は、過剰な反応物、副生成物および溶媒を含み得る。
【0035】
置換液は、次の反応ステップで好ましくないと考えられる化合物を減少させ、適切には排除する。したがって、置換という語は、好ましくない化合物の減少を引き起こす任意の物理的現象を含むと解釈されるべきである。したがって、固相への置換液の添加を含む置換手順は、減少、除去、洗浄、パーコレーションなどの現象を包含する。
【0036】
詳述したように、方法は、類似のサブユニットの連続的な導入によって合成される標的生成物を形成するための不均一な液固相の化学反応プロトコルの反復サイクルの反応ステップに関連するように、具体的に構成される。方法は適切には同じ反応室/容器で実施され、ここでサイクルの反応ステップも実行される。したがって、反応室は、典型的には、標的分子の合成のためのサイクルの反応ステップのいずれか1つを実施するために必要な特徴を含み、具体的には本方法のための要素も含み得る。したがって、本方法の1つの利点は、反応ステップが実行される同じ反応室内で実施され、方法の複雑性を低減することである。
【0037】
本発明の最も一般的な定義に有効な一態様によれば、本方法は、出口を介して反応器から液相を連続的に除去することと、入口を介して室に置換液を不連続に供給することとを包含し、固体の上の液体の高さ(h)は、高さ(h)が決して0ではないという条件で経時的に変動する。
【0038】
さらなる態様によれば、本方法の反応器は、入口、出口、液相、固相、および液相が反応器から除去されるときに固相が反応室から逃げるのを防止する手段と、
反応器から出口を介して液相を連続的に除去することとを含み、置換液は入口を通って室に不連続的に供給され、液相の連続層は固相上に維持される。
【0039】
一態様によれば、標的化合物はペプチドおよびオリゴヌクレオチドから選択され、サブユニットはアミノ酸およびヌクレオシドならびにそれらの任意の誘導体から選択される。
【0040】
本発明の文脈では、アミノ酸は、アミンおよびカルボン酸を含む任意の有機化合物であり得る。アミノ酸の1つの基は、α-アミンおよびカルボン酸を含む。アミノ酸およびアミノ酸誘導体は、本明細書では同じ意味を有し、互換的に使用することができる。重要なアミノ酸は、翻訳中にタンパク質に生合成的に組み込まれるタンパク質を構成するアミノ酸(しばしば天然アミノ酸と呼ばれる)である。タンパク質を構成するアミノ酸は化学修飾されていてもよい。
【0041】
本発明の文脈におけるヌクレオシドは、ポリヌクレオチド鎖の合成に役立つ任意の有機分子であり得る。ヌクレオシド誘導体には、核酸塩基(窒素塩基)の誘導体および/または糖もしくは糖を置換する部分の誘導体のいずれか1つを含む有機分子が含まれる。
【0042】
ペプチド(ポリペプチドとも呼ばれる)は、少なくとも2個のアミノ酸またはアミノ酸の誘導体を含む分子である。アミノ酸の数によって決定されるある時点で、分子は、ペプチドではなくタンパク質として示される。通常、100個未満のアミノ酸(またはアミノ酸誘導体)を有する分子はペプチドとして示される。
【0043】
アミノ酸およびその誘導体は、アミノ酸断片も包含する。アミノ酸断片は、2アミノ酸から、標的ペプチドのアミノ酸の数から1アミノ酸を引いたものに等しい数のアミノ酸を有する断片までを含む標的ペプチドの任意の数の断片であり得、全ての断片は標的ペプチドとなる。
【0044】
アミノ酸およびその誘導体はまた、タンパク質を構成しないアミノ酸、ならびに生物学的用途のための標的ペプチドの有用性を高めることができる任意の非アミノ酸化合物を含む。
【0045】
なおさらなる態様によれば、標的化合物はペプチドから選択され、サブユニットはアミノ酸およびその誘導体から選択される。アミノ酸およびその誘導体はまた、アミノ酸の従来の定義に含まれないサブユニットを含み得る。
【0046】
一態様によれば、本発明は、固相ペプチド合成の反応ステップの液相および固相に含まれる化合物(および/または溶媒)を置換するための方法であって、反応ステップが起こる反応器であり、液相および固相、液相が反応器から除去されるときに固体粒子が反応器から逃げるのを防止する手段を含む、反応器を用意することと、液相を反応器から連続的に除去し、その間に置換液を反応器に不連続に(断続的に)供給することとを含み、液相の連続層が固相上に維持される、方法に関する。一態様によれば、本発明は、固相ペプチド合成の反応ステップの液相および固相に含まれる化合物(および/または溶媒)を置換するための方法であって、反応ステップが起こる反応器であり、液相および固相、液相が反応器から除去されるときに固体粒子が反応器から逃げるのを防止する手段、液相と固相との間の物質移動を促進するための手段を含む、反応器を用意することと、液相を反応器から連続的に除去し、および(その間に)置換液を反応器に不連続に(断続的に)供給することとを含み、液相の連続層が固相上に維持される、方法に関する。
【0047】
本方法のさらなる態様は、固相の沈降を含み、それによって、液相と固相との間に視覚的および適切なセンサによって測定可能な相境界を形成する。固相の沈降は、例えば撹拌機、ボルテックス混合、窒素バブリングまたは再循環ポンプによる、液相と固相との間の物質移動を促進するための手段による固相および液相の撹拌が中断されたときに起こる。したがって、方法のさらなる態様は、反応器からの液相の連続的な除去および反応器への置換液の不連続な供給が、例えば撹拌機、ボルテックス混合、窒素バブリングまたは再循環ポンプによる液相と固相との間の物質移動を促進するための手段が中断されるときに実施されることである。固相の沈降は、置換操作に先行する反応ステップにおいて、例えば撹拌機、ボルテックス混合、窒素バブリングまたは再循環ポンプによる液相と固相との間の物質移動を促進するための手段の適用により、液相と固相の均質化が起こることを暗示する。
【0048】
なおさらなる態様によれば、展開される反応器は、タンク反応器(例えば撹拌タンク反応器)またはカラム反応器である。
【0049】
さらなる態様によれば、サイクルの反応ステップは全て、本発明の化合物を置換するためにも使用される反応器内で行われる。反応ステップの方法が、液相中に均一に分配された粒子形態の固相の提供、液相と固相との間の物質移動を促進するための手段による均質化を含む場合、本発明の置換方法の適用は、依然として1つの同じ反応器を使用しながら固定床反応器を模倣する。
【0050】
さらなる態様は、パーコレーションによる固相の洗浄を含む方法であって、固相が反応器に含まれ、方法が反応器から液相を連続的に除去することと、固相上に液相の連続層を維持しながら置換/洗浄液を反応器に不連続的に供給することとを含む、方法に関する。
【0051】
さらなる態様では、置換液は、間の物質移動を促進するための手段が終了した(それ以上関与しなくなった)後にいつでも反応器に導入される。好ましくは、固相より上の液相の高さが所定の最低閾値(h(min))に達したときに、置換液が導入される。
【0052】
一態様によれば、約30%を超えて、約20%を超えて、約10%を超えて変動しない固相上の置換液の空塔速度をもたらすプロトコルを使用して、液相を反応器から除去する。
【0053】
さらなる態様によれば、適切には約30%を超えて、約20%を超えて、約10%を超えて変動しない固相上の置換液の空塔速度をもたらすように、液相が反応器から連続的に除去される。
【0054】
一態様によれば、固相は、シリカ含有材料、およびポリマー材料(固相)を標的化合物(新生化合物)の(近位)サブユニットと場合によりリンカーを介して共有結合することができる反応部位を含むポリマー材料から選択される。
【0055】
なおさらなる態様によれば、固相は、ポリスチレン系ポリマー(固相)を標的化合物(新生化合物)の(近位)サブユニットと場合によりリンカーを介して共有結合することができる反応部位を含む、架橋ポリスチレン系ポリマーから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明の方法を実施するための概略的な反応器を示す図である。
図2】時間の関数として液相の高さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の重要な特徴は、反応器への置換液の供給および反応器からの液相の回収、すなわち反応器の入口流および出口流を分離することである。したがって、連続的な出力流速は、流入が不連続的な方法で調整されながら固相上で液相の所望の空塔速度を達成するように調整される。置換液の流入は、固相上に常に液相の層が存在するように調整される。
【0058】
一態様によれば、反応室から出口を通る液相は、置換液が入口を通って反応室に不連続に供給されている間に連続的に除去され、それにより、液相の連続層は、好ましくは所定の置換終点に達するまで、固相上で常に維持される。
【0059】
置換終点は、次の反応ステップに有害である所定量の任意の1つまたは複数の化合物として定義される。固相ペプチド合成では、樹脂(固相)に対して(最も)遠位の保護アミノ酸を脱保護するために脱保護剤が使用される。後続のカップリングステップの前に、脱保護剤を、非標的ペプチドの形成を排除または最小化する量まで除去することが重要である。α-アミンがFmoc保護されている場合、脱保護剤はピペリジンであってもよい。したがって、置換終点は、ピペリジンの量として定義され得る。
【0060】
別の態様によれば、気液相境界および液固相境界が決定され、それによって固相上の液相の高さ(h)が確立され、適切には高さ(h)が決して0ではないことを条件とする。
【0061】
高さ(h)は、好適には、経時的に、好ましくは最大約1000%、好ましくは最大約500%、より好ましくは最大約300%、より好ましくは最大約200%変動する。
【0062】
置換液が反応室に不連続に供給されるとき、置換液の流速は、典型的には、固相が常に液相の層によって覆われるようにするために、パージされた液相の流速よりも高い。
【0063】
一実施形態によれば、固相上の液相の高さが所定の最低値、h(min)に達したときに、置換液の供給が起動される。固相上の液相の高さが所定の最高値、h(max)に達したときに、置換液の供給を終了する。
【0064】
液相の高さは、オペレータによって視覚的に監視されてもよいが、好ましくは、高さは、気液相境界および液固相境界を監視する少なくとも1つのセンサによって提供される。適切なアルゴリズムによって、液体層の高さhを二相境界から導き出すことができる。
【0065】
好ましくは、最低高さh(min)は、液相上の置換液の分配が固相を乱さないように選択される。
【0066】
一態様によれば、反応器の内側断面積は、約10cm~最大約80000cmである。
【0067】
さらなる態様によれば、固相(樹脂床)の上の液相の最低高さh(min)は、約0.5cm、好ましくは約1cm、好ましくは約2cm、約3cm、約4cm、約5cmである。最低高さh(min)は、約0.5cm~最大約20cm、適切には約1cm~約10cmの範囲であり得る。最高高さh(max)は、好ましくは約2cm、好ましくは約4cm、好ましくは約5cm、または約6cm、または約7cm、または約10cm、または約20cmである。液相の最高高さh(max)は、適切には約2cm~最大約20cm、適切には約4cm~最大約10cmの範囲である。液面の高さの別の測定基準は、高さの算術平均である。h(min)が1cmであり、h(max)が2cmである場合、平均高さ、h(mean)は(1+2)/2=1.5である。一態様によれば、液相の平均高さ、h(mean)は、1.0cm~最大約10cmの範囲である。
【0068】
一態様によれば、h(min)とh(max)との比[比:h(max)/h(min)]は、約1.1~約6である。
【0069】
一態様によれば、反応器内の(固相上の)置換液の空塔速度は、約100cm/時~最大約400cm/時、好ましくは約150cm/時~最大300cm/時、好ましくは約175cm/時~最大約250cm/時の範囲に保持される。空塔速度とは、本明細書において、体積流速[体積/時間]を固相(固定床)の断面積[面積]で割ることによって与えられる、仮説上の線形平均速度を意味する。空塔速度は、パーコレーション速度とも呼ばれ得る。パーコレーション速度は、適切には、固相(樹脂)から置換される化合物の物質移動速度論および固相(液相中に分散した粒子形態の固相の床:樹脂床)の圧力液滴の物質移動速度論を考慮して調整される。
【0070】
反応室からの液相の流出速度は連続的であり、好ましくは30%を超えて、好ましくは20%を超えて、適切には10%を超えて変動させない。流出速度は、典型的には、本明細書で指定される範囲の空塔速度を提供するように調整される。
【0071】
一態様によれば、流入/流出比(置換液の流速と除去された液相の流速との比)は、1を超え、適切には約5~最大約10である。
【0072】
レベルが低閾値に達すると、溶媒は規定体積の一部分だけ添加される。この体積が添加されると、流入が停止し、液面が測定され、これは、センサビームまたはレベルの目視検査が流入溶媒の流れによって乱されないため、最適条件下で行うことができる。パーコレーション(流出)はこのレベルを低下させ、再び低レベルに達すると、供給ポンプが再起動される。
【0073】
本発明の一実施形態は、液相中に分散した粒子形態の固相を含む固相合成に関し、固相が液相中に均一に分散しているときにサイクルの反応ステップが行われる。固相は、撹拌機、ボルテックス混合、窒素バブリングまたは再循環ポンプなどの液相と固相との間の物質移動を促進するための手段によって均質化されると言うことができる。したがって、反応器は、反応ステップ中に液相中の固相を均質化するために、液相と固相との間の物質移動を促進するための手段を備えなければならない。通常、固相の均質化を含む反応ステップを含む固相合成は、バッチモードで操作される反応器を含む。
【0074】
脱保護またはカップリングステップなどの反応ステップの反応が所定の反応終点に達したとき、液相および固相を含む反応組成物(均質化された反応組成物)を、液体粒子と固体粒子との間の明確な相境界が検出可能または観察可能になるまで沈降させることが好ましい場合がある。
【0075】
好ましくは、置換(洗浄)液が反応室に供給される前に、液相と固相との間の物質移動を促進し、(存在する場合)固相を均質化するための手段が中断され、液体および固体粒子が、視覚的に監視することができる程度に、または少なくとも1つの検出器によって気液相境界および液固粒子境界を監視することができる程度に分離するまで、反応組成物を沈降させる。
【0076】
置換液が導入された瞬間に、固相上に常に液体層が存在し、固相が乾燥するのを妨げることが好ましい。
【0077】
しかしながら、置換液はまた、物質移動を促進するための手段が中断された後にいつでも導入されてもよい。置換液はまた、物質移動を促進するための手段が中断される前に導入されてもよい。物質移動を促進するための手段が中断された後であるが、液相と固相との間の視覚的または測定可能な(検出可能な)相境界が確立される前に、置換を反応器に導入することもできる。
【0078】
原理的には、液相と固相との間には、相境界という用語の厳密な意味での境界は存在しない。むしろ、固相、またはむしろ固体粒子は、常に液相に浸漬されるか、または液相に分散される。したがって、固相という用語は、液相に分散した粒子形態の固相として理解されるべきである。反応組成物が液相に固体粒子を均一に分配しようとする力を受けない場合、粒子は重力によって徐々に沈降し、それによって固体粒子の分散体の上に液体層が形成される。しばらくすると、固体粒子間の重力と反発力との間に平衡が生じ、固体粒子を含む一定の分散体のレベル、すなわち液固相境界における固相のレベルが得られる。この平衡では、液相と分散体との間の視覚的に観察可能で検出可能な遷移を擬似相境界として示すことができる。ここで、この擬似境界は、簡潔にするために、液固境界として示されている。
【0079】
本発明の不均一な液固相の化学反応プロトコルの液相に分散した固体粒子は、粒子形態の固相の床または単に樹脂床とも呼ばれ得る。
【0080】
本発明の特徴的な特徴の1つは、置換/洗浄液の不連続または断続的な供給および液相の連続的な流出の提供である。洗浄液の流入および液相の流出の分離により、洗浄液の流速は、固体粒子の床の上の液相の本質的に一定な空塔流速(または単に空塔速度)を維持しながら変化し得る。ここで、空塔速度は以下のように定義される:
【数1】

(式中、
は、所与の相の空塔速度を示し、
Qは相の流速を示し、
Aは断面積を示す)。
【0081】
本方法は、パーコレーション方法、すなわち、置換液の供給の手段による抽出によって固相から可溶性成分が除去される抽出手順としても企図され得る。
【0082】
方法が固相の沈降をさらに含み、それによって固相上に気液相境界、液固相境界および液相を形成する、さらなる態様。
【0083】
さらなる態様によれば、本発明は、出口を通って反応器から液相を連続的に除去することを含み、ここで、置換液は入口を通って反応器に断続的に(不連続的に)供給され、固体層の上の液体層の高さ(h)は経時的に変動し、ただし高さ(h)は決して0ではない。
【0084】
さらなる態様によれば、沈降は、液相の連続的な流出によって強制される。反応組成物が液相に固体粒子を均一に分配しようとする力を受けない場合、粒子は重力によって徐々に沈降し、それによって固体粒子の分散体の上に液体層が形成される。液相の流出は沈降を強制し、しばらくすると、固体粒子間の重力と反発力との間に平衡が生じ、固体粒子を含む一定の分散のレベル、すなわち液固相境界における固相のレベルが得られる。この平衡では、液相と分散体との間の視覚的に観察可能で検出可能な遷移を擬似相境界として示すことができる。ここで、この擬似境界は、簡潔にするために、液固境界として示されている。
【0085】
なおさらなる態様によれば、不連続パーコレーション洗浄は、不均一な化学反応のサイクルの全ての反応ステップが実行される反応器内で実施される。
【0086】
反応器
反応器または反応室は、好ましくは、サブユニットの連続的な導入によって合成される標的分子を形成するための不均一な液固相の化学反応プロトコルを実施するための反応器である。より具体的には、反応器は、固相ペプチド合成および固相オリゴヌクレオチド合成に適した任意の反応器であり得る。一態様によれば、反応器は、固相ペプチド合成に適用可能な任意の反応器であり得る。反応器は、バッチモードまたは連続モード用の反応器、あるいはバッチモードと連続モードの両方で操作することができる反応器であってもよい。
【0087】
好ましくは、反応器は、カラム反応器およびタンク反応器から選択される。好ましくない反応速度論を有する反応は、タンク反応器内で、適切にはバッチ操作で実施することができる。好ましい反応速度論を有する反応は、適切には連続操作においてカラム反応器で実施することができる。
【0088】
オリゴヌクレオチド合成における反応ステップ、具体的には律速反応の反応速度論は、カラム反応器が好ましいようなものである。固相オリゴヌクレオチド合成のためのカラム反応器は、通常、連続モードで操作され、反応液の再循環を可能とする構成を有していてもよい。
【0089】
SPPSにおける反応ステップ、具体的には律速カップリングステップ(アミド結合が形成される)の反応速度論は、タンク反応器が好ましいようなものである。SPPS用のタンク反応器は、一般にバッチモードで操作される。
【0090】
反応器は、反応溶液を再循環させることができるフィードバックシステムを備えてもよい。
【0091】
一態様によれば、反応器はバッチ型反応器である。反応器は、好適には、好ましくはバッチ操作のために指定されたタンク反応器(撹拌タンク反応器など)である。
【0092】
適切には、反応室は、少なくとも1つの入口、1つの出口、液相、および固相を含む。反応室はまた、液相と固相との間の物質移動を促進するための手段と、固相を枯渇させることなく液相の除去を可能にする手段とを備えてもよい。反応室には、適切には置換液分配システムが備えられている。
【0093】
液相と固相との間の物質移動を促進するための手段は、固相を含む液体に作用する機械的装置であってもよい。液相および固相の不規則な乱れまたは乱流運動の導入。機械的装置の例には、アンカー、プロペラ、フラットブレードディスクタービン、パドル、ゲートアンカーおよび螺旋ねじなどのインペラが含まれる。物質移動の増加は、窒素バブリング、ボルテックスまたは再循環などの気相によっても達成され得る。
【0094】
置換液は、適切な液分配システムによって固相上の液相に適切に分配される。固相が固相上に置換液の栓流を本質的に提供することができるように、置換液は液相に供給される。置換液は、好ましくは固相の乱れが最小になるように液相に分配される。反応器への置換液の流速は、反応器内の分配システムのタイプによってある程度支配される。分配システムは、液体を噴霧に微粒子化することができるノズルを備えるように構成されてもよい。分配システムのノズルは、液体の粒径を調節することができるように構成されてもよい。反応ステップの後に固体粒子が液相の上の反応器の壁上に存在する場合、壁からの固体粒子の除去を促進する物理的形態で置換液を分配することが賢明となり得る。反応器壁を洗浄した後、ノズルを調整し、それによって固相を乱さない微細な噴霧を形成することによって、液体の粒径を減少させることが好ましい。適切には、置換液の入口流速は、分配システムが正しく機能し、流体の均一な分配を確実にし、反応器壁の適切なすすぎを可能にして微量の化合物および固相粒子を排除するのに十分でなければならない。ノズルの操作は、最適な動作を保証するために制限された流れ範囲を必要とすることが多い。したがって、適切には分配システムのサイズに依存して、入口流速を最適範囲内に設定することができ、したがって、流入を空塔速度(パーコレーション速度)の制約から独立させることが重要である。空塔速度は、液相の出口流速と高度に相関している。
【0095】
反応器は、好適には、約0.5~最大約5000リットルの好ましい容量を有するガラス、ステンレス鋼、ハステロイまたは被覆反応器である。液相を排出しながら固相(樹脂)を保持するために、典型的には濾過装置が反応器の底部に配置される。この濾過装置は、焼結ステンレス鋼材料から形成されてもよいが、多孔質ポリマーもしくは濾過シート、または当業者に公知の任意の他の濾過システムからなることができる。
【0096】
一態様によれば、反応器は、異なる反応ステップに使用される樹脂、試薬および溶媒の導入のための少なくとも1つの入口を有してもよい。液体は、1つ以上の自給式ポンプによって導入されることが好ましい。導入流速および導入された体積は、マスフローセンサによって適切に測定および定量化される。反応器に供給される任意の液体は、熱交換器を介して反応器に入る前に、必要に応じて加熱または冷却されてもよい。
【0097】
一態様によれば、反応器は、導電性セル、近赤外セル(例えば、1mm~30mmの光路)、UVセル(例えば、0.5mm~10mmの光路)および屈折率セルから選択され得るセルの測定を介して、反応器から排出された液体中の化学種の発生のリアルタイム測定を可能にするように構成され得る。
【0098】
前に示唆したように、気液相境界および液固相境界は、視覚的にまたは少なくとも1つのセンサによって監視することができる。これらの2つの相境界の監視により、固相上の液相の高さを提供することができる。適切なセンサは、UHFおよびマイクロ波長で超音波または電磁放射線(レーダセンサ)およびレーザ(ライダセンサを含む)を放出するセンサである。適切な1つまたは複数のセンサによって、固相上の液相の高さ(h)をモニターすることができる。一態様によれば、2つのセンサ(検出器)が実装され、一方は液固相境界の監視専用であり、他方は気液相境界の監視専用である。好ましくは、2つのセンサのうち、両方が2つの相境界を同時に監視するように実装される。さらなる態様によれば、両方の相境界を監視することができる1つのセンサが実装される。液固相境界および気液相境界を検出することにより、反応室に供給される不連続な置換液の調整が容易になる。
【0099】
液相の高さを監視するためのセンサの適用に加えて、反応器は、圧力、導電率およびpHを測定するためのセンサを含む様々なセンサを装備することができる。
【0100】
反応への置換液の不連続な供給を提供する本方法のさらなる利点は、反応器に置換液が供給されないときに、相境界および固相上の液相の高さの監視を行うことができるということである。置換液が反応器に供給されていない期間中の液相の高さの測定は、相境界、したがって液相の高さのより正確な測定を提供する。液面は置換液の影響を受けない。また、センサは、気相中の液体粒子(分配システム(ノズルのシステム)からの置換液の噴霧)によって乱されない。また、置換液の供給を不連続に操作することにより、置換液の流速を調整する自由度が高まる。したがって、置換液の流速を調節することができる。例えば、周期的に置換液の流速を減少させることができる。また、置換液の供給の持続時間を調節することができる。したがって、反応器への置換液の供給の流速および持続時間の両方を変えることができる。流速は、送達段階/期間内または送達段階の間に一時的に増加させることができる。置換液の流速を減少させる必要がある場合、持続時間を増加させて、各送達段階中に一定体積の置換液が反応器に供給されるようにしてもよい。
【0101】
一実施形態によれば、方法は固相ペプチド合成プロトコルで実施される。特に、方法は、サイクルの反応ステップのいずれかの後(または2つの反応ステップの間)、より具体的には脱保護ステップの後およびカップリングステップの後に実施されてもよい。
【0102】
例で実施される実施形態の説明
固相ペプチド合成プロトコル(SPPS)およびα-アミドのFmoc保護基を使用してジペプチドを合成する。1.12meq/gの装填量を有する4-メチルベンズヒドリルアミン樹脂塩酸塩(MBHA-樹脂)を固相として使用する。MBHA-樹脂を、焼結ステンレス鋼材料の形態のフィルタ底を有する撹拌タンク反応器(直径30cm)に充填し、ジメチルホルムアミド(DMF)で洗浄する。反応器には撹拌翼が装備されている。反応器の上部にはいくつかの入口が存在し、そのうちの1つの入口は樹脂の導入専用であり、1つの入口は溶媒(DMF、ピペリジン等)の導入専用であり、自給式ポンプによって導入される。導入流速および導入された体積は、マスフローセンサによって測定および定量化される。流速は、35l/h~600l/h(50~850cm/h)の範囲であり得る。合成の各ステップの間に反応器を正しく洗浄するために、置換(洗浄)液などの溶媒を分散させるための装置が、反応器のレベルで、ラインの末端に配置される。この装置は、20~1000l/hの間で正しく動作する。アミノ酸を脱保護するための薬剤の導入専用の入口パイプを反応器の上部に配置することもできる。これは、流速が20~1000l/h(28~1415cm/h)である自給式ポンプによって行われる。導入流速および導入された体積は、マスフローセンサによって測定および定量化される。マスフローセンサによって体積および流速が制御される追加の溶媒用の入口パイプも、組立反応器(assembly reactor)の上部に配置することができる。
【0103】
樹脂を、DMF中のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の10%溶液の添加によって中和する。その後、Fmoc保護Rinkアミドリンカーを反応器に添加し、DIC/OXYMAを使用してリンカーを樹脂にカップリングさせる。カップリングが成功した後、樹脂をDMF中で洗浄する。
【0104】
最初の反復サイクルは、25%ピペリジン/DMF溶液の添加によるFmoc基の脱保護を含む。脱保護した後、樹脂をDMFおよび本発明の方法(不連続パーコレーション洗浄)を用いて洗浄する。脱保護に成功した後、撹拌を中止し、樹脂(固相)を沈降させて樹脂床および床の上の液相を形成し、それによって反応器内に均一かつ水平に分配される樹脂床を形成する。洗浄溶媒を液体の表面および反応器の壁に均一に導入して、微量のピペリジン、副生成物(ジベンゾフルベンとして)および固相を全て除去する。溶媒は、1cmの低レベルの液体閾値h(min)に達したときに導入される。反応器は、パーコレーション洗浄中に連続的に排水される。100ppmのピペリジンの所望の終点に達するまで、パーコレーション洗浄を行う。図2は、液相の高さを有する洗浄液の不連続流プロトコルを時間の関数として示す。
【0105】
脱保護が成功した後および不連続洗浄の後、Fmoc保護アミノ酸(Fmoc-AA-OH)を反応器に導入する。Fmoc保護アミノ酸のカップリングを、DMF(0.5M)中のDIC/OXYMAを用いて行う。カップリング後、撹拌を中止し、樹脂(固相)を沈降させて樹脂床および床の上の液相を形成し、それによって反応器内に均一かつ水平に分配される樹脂床を形成する。洗浄溶媒を液体の表面および反応器の壁に均一に導入して、微量の反応物(Fmoc-AA-OH)、カップリング剤(DIC/OXYMA)および副生成物(ジイソプロピル尿素として)を全て除去する。洗浄溶媒は、3.0cmの低レベルの液体閾値h(min)に達したときに600l/hで不連続的に導入される。反応器を212cm/h(150l/h)の空塔速度でパーコレーション洗浄中に連続的に排水する。
【0106】
図1は、本発明の方法を実施するための概略的な反応器を示す。反応器は、入口(1)および溶媒分配システム(2)を備える。入口および溶媒分配システムを通って、置換液は反応器に供給される。反応器の底部には、液相を排出するための出口(7)が存在する。反応器内に気相(3)、固体(樹脂)相(5)上の液相(4)の層が存在する。濾過装置(6)が反応器の底部に構成され、固相を除去することなく出口(7)を通る液相の排出を可能にする。
【0107】
図2は、樹脂上の液相の高さを時間の関数として示す。固体(樹脂)相層(16)および濾過装置(17)ならびに液相、例えば(15)も概略的に含まれる。(8)はレベル軸を示し、(18)は時間軸である。(9)は高レベルの液体閾値[h(max)]であり、(10)は低レベルの液体閾値、h(min)である。三角形(12)は、反応器に供給される置換液の持続時間および液相のレベルの経時的な増加を明示する。置換液の流入の開始は、液相が低レベルの液体閾値[h(min)](10)に達することによってトリガされる。液相のレベルが高レベルの閾値h(max)(9)に達すると、置換液の流入が停止される。液相が低レベルの液体閾値h(min)(10)に達するまで、置換液の流入は活動していないままである。三角形(13)は、置換液が遮断される持続時間および経時的な液相の減少を明示する。(14)は不連続パーコレーション中の液相の可変層を示す。(11)は樹脂床のレベル、したがって液固相境界を示す。
【0108】
直径30cmのステンレス鋼反応器内で実施した不連続パーコレーション洗浄の概要
まず、樹脂床のレベル(排水後)をレベルセンサを用いて測定し、記録する。このステップは、反応器を排水した後、
・第1の脱ブロッキングの前、または
・最後の脱ブロッキングの前(最後から2番目のデブロッキング溶液を排水した後)
・カップリング前
に行う。
【0109】
脱ブロッキング/カップリングステップの後、撹拌機は、レーダプローブとの干渉を回避し、パーコレーションステップ中のレベル測定を可能にするために規定の位置で停止する。このために、規定の位置を保証するために、センサを撹拌装置に設置する。
【0110】
パーコレーションを、ピペリジン/カップリング溶液を排水することなく、脱ブロッキング/カップリングステップの直後に開始する。
【0111】
反応器の底部のバルブを開き、排水ポンプをユーザによって設定された流速で開始する。排水を、パーコレーションシーケンス全体の間、一定の流出で連続的に行う。
【0112】
レベルセンサが低レベルの液体閾値h(min)に達すると、導入バルブが開き、導入ポンプがユーザによって定義された体積の導入を開始する。ノズルによる効率的な流体分配およびピペリジン/カップリング溶液の洗い流しを確実にするために、流入は流出よりも高くなければならない。
【0113】
いかなる状況下でも溶媒レベルが樹脂床のレベルを下回ることがないように、樹脂床の上のレベル設定点は非常に重要である。そうでなければ、樹脂が乾燥し、パーコレーションの品質が影響を受ける可能性がある。
【0114】
このサイクルを、以下のオンラインの監視:
・FT-NIR閾値
・UV閾値
またはオフラインの監視:
・クロラニル試験
・pH
・分光分析(例えばDNFB)
のいずれかで、ユーザによって選択された停止基準に達するまで繰り返す。
【0115】
パーコレーション設定点の終わりに達すると、排水が停止し、DMF導入ポンプが停止する(導入が進行中の場合)。
【0116】
均質化を、パーコレーションの直後に、反応器から洗浄液を排水することなく行う。その後、残留濃度(ピペリジンまたはカップリング溶液)を、オンラインまたはオフラインの方法(DNFB、クロラニル)によって分析し、この定量化により、残留濃度を減少させるために追加のバッチ洗浄を行う必要があるかどうか、または次のステップを開始する必要があるかどうかを定義する。
【0117】
直径6cmのガラス反応器を用いて行った不連続パーコレーション洗浄
まず、反応器を排水せずに、樹脂床レベルを手動で測定する。
【0118】
パーコレーションを、ピペリジン/カップリング溶液を排水することなく、脱ブロッキング/カップリングステップの直後に開始する。
【0119】
反応器の底部のバルブを開き、排水ポンプをユーザによって設定された流速で開始する。排水を、パーコレーションシーケンス全体の間、一定の流出で連続的に行う。
【0120】
液面が低レベルの液体閾値h(min)に達すると、導入ポンプは最高高さh(max)に達するまで溶媒の導入を開始する。溶媒レベルが樹脂床のレベルを下回らないことを確実にするために、流入は流出よりも高くなければならない。そうでなければ、樹脂が乾燥し、パーコレーションの品質が影響を受ける可能性がある。
【0121】
このサイクルを繰り返し、洗浄液を異なる画分に収集し、オフラインの方法(DNFB、クロラニル)によって分析して反応器出口での残留濃度を決定する。
【0122】
パーコレーション設定点の終わりに達したら、排水を停止する。
【0123】
均質化を、パーコレーションの直後に、反応器から洗浄液を排水することなく行う。その後、残留濃度(ピペリジンまたはカップリング溶液)を、オフラインの方法(DNFB、クロラニル)によって分析し、この定量化により、残留濃度を減少させるために追加のバッチ洗浄を行う必要があるかどうか、または次のステップを開始する必要があるかどうかを定義する。
【0124】

概要
例1は、本発明の不連続パーコレーション洗浄と連続パーコレーション洗浄およびバッチ洗浄との比較に関する。ここでは、4-メチルベンズヒドリルアミン塩酸塩樹脂(MBHA-ポリスチレン)を充填した直径6cmのガラス反応器を使用する。
【0125】
例2~6では、固相ペプチド合成の条件を模倣するモデル樹脂として、ジペプチド樹脂、Fmoc-Ala-Gly-Rinkアミド-MBHA-樹脂が使用される。例2~5は、サイクルの脱保護ステップ後の条件を示した。
【0126】
例6は、サイクルのカップリングステップ後の条件を提供する。
【0127】
例2および6は、バッチ洗浄と本発明による不連続パーコレーション洗浄との比較に関する。
【0128】
例3~5は、所定の終点における、洗浄体積および時間に対する不連続パーコレーション洗浄のいくつかのパラメータ(空塔速度、固相上の液相の変動する高さ、固相上の液相の最高高さの変化)の影響を示す。
【0129】
システムの説明
以下の例では、直径6cmのガラス反応器および直径30cmのステンレス鋼反応器の2つの異なる反応器を使用する。
【0130】
両方の反応器は、撹拌翼を含む撹拌タンク反応器(STR)を備えている。さらに、反応器は、液体を排出しながら固相を保持するための濾過装置を底部に有する。反応器の上部にはいくつかの入口が存在し、そのうちの1つの入口は樹脂の導入専用であり、別の入口は合成溶媒および置換液などの様々な溶媒の導入に使用される。反応器の底部には、液体を排出するために使用される出口が存在する。溶媒/液体の体積および流速を、マスフローセンサによって測定する。反応器は、入ってくる液体を反応器の壁が洗浄されるように分配する分配システムをさらに備える。ステンレス鋼反応器はまた、相境界を測定するための、およびそれによって固相上の液相の高さを測定するためのセンサを備えている。
【0131】
不連続パーコレーション洗浄とバッチ洗浄とを比較する各例では、同じ反応器を使用する。
【0132】
例1では、直径6cmのガラス反応器を使用する。他の全ての例では、直径30cmのステンレス鋼反応器が使用される。
【0133】
全ての例において、同じベース樹脂(固相):4-メチルベンズヒドリルアミン塩酸塩樹脂(MBHA-ポリスチレン)を使用する。
【0134】
バッチ洗浄の説明
バッチ洗浄ステップは、洗浄溶媒の導入と、5分間撹拌することと、次に排水することとを構成する連続バッチによって行われる。脱保護後のバッチ洗浄ステップの終点は、近IR定量化によって洗浄液中のピペリジンの残留濃度を測定することによって決定される。カップリング後、UV定量化によって洗浄液中の残留カップリング溶液(例えば、カップリング剤、アミノ酸および副生成物)の吸光度を測定することによって終点を確立する。
【0135】
不連続パーコレーション洗浄の説明
不連続パーコレーション洗浄は、濾過底部を備えた反応器内に固定床として配置され、樹脂床を通る洗浄溶媒のいかなる優先経路も回避するためにその表面上に均一かつ水平に分配された樹脂に対して行う。
【0136】
例1
この例では、本発明の不連続パーコレーション洗浄を、洗浄体積および持続時間に関して連続パーコレーション洗浄およびバッチ洗浄と比較して、排出された液相中の残留ピペリジンとして定義される所定の終点を達成する。
【0137】
この例では、塩基不安定性α-アミン保護基(例えば、Fmoc)の脱保護のためにDMF/ピペリジンを使用するサイクルの脱保護ステップ後の条件中に、異なる洗浄操作を試験する。
【0138】
直径6cmのガラスの撹拌タンク反応器(STR)に、高さ6cmまでの4-メチルベンズヒドリルアミン塩酸塩樹脂を充填する。その後、脱保護剤であるDMF/ピペリジン(25%)溶液を反応器に添加し、樹脂を10分未満撹拌することによって溶液中で均質化する。溶液を反応器から排水し、脱保護剤であるDMF/ピペリジン(25%)溶液を反応器に添加し、樹脂を5分未満撹拌することによって溶液中で均質化する。脱保護溶液は、バッチ洗浄の場合、反応器から排水される。脱保護溶液を含む均質化された樹脂は、2つの異なるパーコレーション洗浄操作の評価の出発点である。
【0139】
不連続パーコレーション:撹拌機を停止し、樹脂床を反応器内に均一かつ水平に分配する。洗浄溶媒(置換液)であるDMFを液体の表面および反応器の壁に均一に導入して、除去すべき微量の脱保護剤(ピペリジン)を全て除去する。1cmの低レベルの液体閾値h(min)に達したときに、3cmの高レベルの液体閾値h(max)に達するまで、溶媒を反応器に導入する。反応器を1.3リットル/時の流速でパーコレーション洗浄中に連続的に排水して、樹脂床上で45cm/hの空塔速度を得る。100ppmのピペリジンの所望の終点に達するまで、パーコレーション洗浄を行う。
【0140】
バッチ洗浄:洗浄液(DMF)を均一に導入し、5分間撹拌する。次いで、反応器を排水する。バッチ洗浄を、100ppmのピペリジンの所望の終点に達するまで繰り返す。
【0141】
連続パーコレーション:撹拌機を停止し、樹脂床を反応器内に均一かつ水平に分配する。洗浄溶媒を液体の表面および反応器の壁に均一に導入して、除去すべき微量の薬剤(ピペリジン)を全て除去する。溶媒は、45cm/hの空塔速度でパーコレーション洗浄中に連続的に導入および排水され、液面は樹脂床の上3cmで安定している。したがって、洗浄溶媒の流速は、反応器から排出される液相の流速に等しい。100ppmのピペリジンの所望の終点に達するまで、連続的なパーコレーション洗浄を行う。
【0142】
3つの洗浄操作について設定された終点における、洗浄液(置換液)の体積および持続時間を表1に示す。
【表1】
【0143】
例2~6:例2~5の全てにおいて、例1と同じMBHA-樹脂を、Rinkアミドリンカーによって樹脂に共有結合したジペプチドとさらに共に使用している。ジペプチド樹脂、Fmoc-Ala-Gly-Rinkアミド-MBHA-樹脂を、表2に示すプロトコルに従って製造する。例6では、NH2-Gly-Rinkアミド-MBHA-樹脂を用意し、Fmoc-Ala-OHをカップリングする。
【0144】
表2は、例6から10に使用されるジペプチドリンカー樹脂の固相合成を記載する。
【表2】

表2:Fmoc-Ala-Gly-Rinkアミド-MBHA-樹脂を提供するためのSPPS手順の概要
【0145】
例2
洗浄方法の関数としてのピペリジン洗浄効率。
【0146】
この例では、本発明の不連続パーコレーション洗浄を、洗浄体積および持続時間に関してバッチ洗浄と比較して、排出された液相中の残留ピペリジンとして定義される所定の置換(パーコレーション)終点を達成する。
【0147】
塩基不安定性α-アミン保護基(例えば、Fmoc)の脱保護のためにDMF/ピペリジンを使用するサイクルの脱保護ステップ後の条件中に、バッチ洗浄および不連続パーコレーション洗浄を試験する。
【0148】
直径30cmであり底部フィルタを含むステンレス鋼撹拌タンク反応器(STR)に、Fmoc-Ala-Gly-Rinkアミド-MBHA-樹脂を高さ10cmまで充填する。その後、脱保護剤であるDMF/ピペリジン(25%)溶液を反応器に添加し、樹脂を10分未満撹拌することによって溶液中で均質化する。溶液を反応器から排水し、脱保護剤であるDMF/ピペリジン(25%)溶液を反応器に添加し、樹脂を5分未満撹拌することによって溶液中で均質化する。脱保護溶液は、バッチ洗浄の場合、反応器から排水される。脱保護溶液を含む均質化された樹脂は、パーコレーション洗浄操作の評価の出発点である。
【0149】
不連続パーコレーション:撹拌機を停止し、樹脂床を反応器内に均一かつ水平に分配する。洗浄溶媒であるDMFを液体の表面および反応器の壁に均一に導入して、除去すべき微量の脱保護剤(DMF/ピペリジン)を全て除去する。3.0cmの低レベルの液体閾値h(min)に達し、4.0cmの高レベルの液体閾値h(max)で終了するとき、洗浄溶媒(1リットルのDMF)を600l/hの流速で反応器に導入する。洗浄液の供給を約20~25秒間中断する。反応器を、パーコレーション洗浄中に150リットル/時の流速で連続的に排水し、これは樹脂床上で212cm/hの空塔速度を表す。100ppmのピペリジンの所望の終点に達するまで、パーコレーション洗浄を行う。
【0150】
バッチ洗浄:洗浄液(6リットルのDMF)を均一に導入し、5分間撹拌する。次いで、反応器を排水する。バッチ洗浄を、100ppmのピペリジンの所望の終点に達するまで繰り返す。
【表3】
【0151】
例3
ピペリジン洗浄に対する空塔速度の影響。
【0152】
洗浄溶媒の流速は、除去すべきピペリジン(の種)が固相(樹脂)から液相(洗浄溶媒)へと移動することを可能にするために、ピペリジン(の種)の拡散速度に応じて最適化される。したがって、高すぎる流速は、洗浄溶媒の過剰消費および洗浄持続時間の増加を意味する。さらに、流出が高すぎる場合、ピペリジンは液相に十分に速く拡散しない可能性があり、均質化後にピペリジン含有量が増加する可能性がある。この場合、最終終点に達するために追加のバッチ洗浄が必要である。
【0153】
例2と同じステンレス鋼反応器を使用する。さらに、Fmoc-Ala-Gly-Rinkアミド-MBHA-樹脂(高さ10cm)を充填し、例2のプロトコルに従ってDMF/ピペリジン溶媒で均質化する。
【0154】
撹拌機を停止し、樹脂床を反応器内に均一かつ水平に分配する。洗浄溶媒(DMF)を液体の表面(樹脂)および反応器の壁に均一に導入して、除去すべき微量の薬剤を全て除去する。3.0cmの低レベルの液体閾値h(min)に達し、表4に示すような高レベルの液体閾値で中断するときに、溶媒(1リットルのDMF)を600l/hで導入する。洗浄液の供給を約20~25秒間中断する。反応器を、表4の空塔速度を生成する流速でパーコレーション洗浄中に連続的に排水する。100ppmのピペリジンの所望の終点に達するまで、パーコレーション洗浄を行う。
【表4】
【0155】
424cm/hでのパーコレーションの場合、ピペリジン含有量が100ppm未満(20.8リットルのDMFの消費量に相当)になった時点で、パーコレーションを5分後に停止した。しかしながら、均質化後、ピペリジン含有量は、固相から液相への遅延した拡散のために増加した。その結果、濃度を所望の終点未満に低下させるために、追加のバッチ洗浄(6リットルのDMF、5分間撹拌)を行った。洗浄液の空塔速度は、液相と固相との間の拡散速度に適合させるべきである。空塔速度が拡散に関して高すぎる場合、拡散平衡が得られる前に終点に到達し、追加のパーコレーションまたはバッチ洗浄を必要とする。
【0156】
例4
樹脂上の最低液面がピペリジン洗浄効率に及ぼす影響。
【0157】
例2と同じステンレス鋼反応器を使用する。さらに、Fmoc-Ala-Gly-Rinkアミド-MBHA-樹脂(高さ10cm)を反応器に充填し、例2のプロトコルに従ってDMF/ピペリジン溶媒で均質化する。撹拌機を停止し、洗浄溶媒であるDMFを、樹脂床を乱さないように、かつ樹脂床の表面が水平のままであるように均一に導入する。再混合現象を制限し、したがって洗浄ステップを最適化するために、低レベルの液体閾値h(min)に達したときに不連続溶媒導入を実行する。樹脂上の液面の影響を検証するために、反応器に導入される洗浄溶媒の流速を、反応器から排出される液相の流速と同一にした。
【0158】
樹脂床を、反応器内で均一かつ水平に分配する。洗浄溶媒(DMF)を液体の表面および反応器の壁に均一に導入して、除去すべき微量の薬剤を全て除去する。表5に示すように、洗浄溶媒を、低レベルの液体閾値h(min)minに達したときに600l/hの流速で導入し、高レベルの液体閾値で中断する。反応器を、排出された液相の流速150リットル/時に相当する空塔速度212cm/hで連続的に排水する。100ppmのピペリジンの所望の終点に達するまで、パーコレーション洗浄を行う。
【表5】
【0159】
例5
樹脂上の最高液面がピペリジン洗浄効率に及ぼす影響。
【0160】
例2と同じステンレス鋼反応器を使用する。さらに、Fmoc-Ala-Gly-Rinkアミド-MBHA-樹脂(高さ10cm)を反応器に充填し、例2のプロトコルに従ってDMF/ピペリジン溶媒で均質化する。撹拌機を停止し、洗浄溶媒であるDMFを、樹脂床を乱さないように、かつ樹脂床の表面が水平のままであるように均一に導入する。逆混合現象を制限し、したがって洗浄ステップを最適化するために、低レベルの液体閾値h(min)に達したときに不連続洗浄溶媒導入を実行する。溶媒導入後、液面は流入量と部分体積に依存して最高レベルh(max)に達する。
【0161】
樹脂床を、反応器内で均一かつ水平に分配する。洗浄溶媒(DMF)を液体の表面および反応器の壁に均一に導入して、除去すべき微量の薬剤を全て除去する。3.0cmの低レベルの液体閾値h(min)に達し、表6に示すような高レベルの液体閾値h(max)で中断するとき、溶媒(DMF)を600l/hの流速で導入する。反応器を212cm/hの空塔速度で連続的に排水する。液相を、150リットル/時の流速で排出する。100ppmのピペリジンの所望の終点に達するまで、パーコレーション洗浄を行う。
【表6】
【0162】
例6
洗浄方法の関数としてのカップリング溶液洗浄効率。
【0163】
例2~5と同じステンレス鋼反応器を使用する。反応器にNH2-Gly-Rinkアミド-MBHA-樹脂(高さ10cm)を充填し、DMF(0.5M)中のFmoc-Ala-OH/DIC/Oxyma(3/3/3当量)を含むカップリング溶液を添加する。樹脂を、オフライン分析(すなわち、カイザー試験)によって監視して反応の完了(反応終点)に達するまで撹拌することによって均質化する。ニンヒドリンと脱保護ペプチド樹脂のN末端アミン基からの第一級アミンとの反応に基づくカイザー試験。その後、バッチ洗浄の場合、カップリング溶液を反応器から排出する。
【0164】
(置換)終点は、5回のバッチ洗浄(それぞれ5.2L)後のUVによって決定し、その結果、同じ終点(波長301nmで0.5mmの光路に対して0.254uA)に達するまでパーコレーション洗浄を行った。
【0165】
不連続パーコレーション:撹拌機を停止し、樹脂床を反応器内に均一かつ水平に分配する。洗浄溶媒を液体の表面および反応器の壁に均一に導入して、除去すべき微量の薬剤(ピペリジン)を全て除去する。3.0cmの低レベルの液体閾値h(min)に達したときに溶媒を600l/hで導入し、4cmの高レベルの液体閾値h(max)に達したときに導入を停止する。反応器を、212cm/hの空塔速度(および排出される液体の流速150l/h)でパーコレーション洗浄中に連続的に排水する。
【0166】
バッチ洗浄:洗浄液(5.2リットルのDMF)を均一に導入し、5分間撹拌する。次いで、反応器を排水する。
【表7】


図1
図2
【国際調査報告】