(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】板状核燃料要素およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G21C 3/06 20060101AFI20241010BHJP
G21C 3/07 20060101ALI20241010BHJP
G21C 3/60 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G21C3/06 100
G21C3/07
G21C3/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523386
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2022078819
(87)【国際公開番号】W WO2023066859
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593128105
【氏名又は名称】フラマトム
【氏名又は名称原語表記】FRAMATOME
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ステプニック,ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】グラース,ミシェル
(57)【要約】
板状核燃料要素(2)は、核分裂性物質でできたコア(4)とクラッディング(6)を含み、クラッディングは、コア(4)を収容する中央開口部(10)を画定するフレーム(8)およびフレーム(8)とコア(4)を挟む2つのカバープレート(12)を含み、フレーム(8)は金属の第1のクラッディング材料でできており、カバープレート(12)が金属の第2のクラッディング材料でできており、第1のクラッディング材料は第2のクラッディング材料の硬度よりも厳密に高い硬度を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核分裂性物質でできたコア(4)とクラッディング(6)を含む板状核燃料要素(2)において、クラッディングが、コア(4)を収容する中央開口部(10)を画定するフレーム(8)およびフレーム(8)とコア(4)を挟む2つのカバープレート(12)を含み、フレーム(8)が金属の第1のクラッディング材料でできており、カバープレート(12)が金属の第2のクラッディング材料でできており、第1のクラッディング材料が第2のクラッディング材料の硬度よりも厳密に高い硬度を有している、板状核燃料要素。
【請求項2】
第1のクラッディング材料の前記硬度が、コア(4)の硬度よりも厳密に低いものである、請求項1に記載の核燃料要素。
【請求項3】
第1のクラッディング材料が、アルミニウム合金またはジルコニウム合金である、請求項1または2に記載の核燃料要素。
【請求項4】
第1のクラッディング材料が、アルミニウム-マグネシウム合金である、請求項1から3のいずれか一つに記載の核燃料要素。
【請求項5】
第1のクラッディング材料が、AG4またはAG5アルミニウム-マグネシウム合金である、請求項1から4のいずれか一つに記載の核燃料要素。
【請求項6】
第2のクラッディング材料が、アルミニウム合金またはジルコニウム合金である、請求項1から5のいずれか一つに記載の核燃料要素。
【請求項7】
第2のクラッディング材料が、アルミニウム-マグネシウム合金である、請求項1から6のいずれか一つに記載の核燃料要素。
【請求項8】
第2のクラッディング材料が、AG3アルミニウム-マグネシウム合金である、請求項1から7のいずれか一つに記載の核燃料要素。
【請求項9】
核分裂性物質が、少なくとも1つのウラン合金を含有する、請求項1から8のいずれか一つに記載の核燃料要素。
【請求項10】
核分裂性物質が、ウラン-ケイ素合金、ウラン-モリブデン合金、ウラン-アルミニウム合金、ウラン-ジルコニウム合金またはそれらの組合せを含有する、請求項1から9のいずれか一つに記載の核燃料要素。
【請求項11】
核分裂性物質が、U
3Si
2でできている、請求項1から10のいずれか一つに記載の核燃料要素。
【請求項12】
核分裂性物質のウランの含有量が、2.5gU/cm
3以上、特に、厳密に4.8gU/cm
3超である、請求項1から11のいずれか一つに記載の核燃料要素。
【請求項13】
核分裂性物質のウランの含有量が、6.5gU/cm
3未満、特に5.3gU/cm
3未満である、請求項1から12のいずれか一つに記載の核燃料要素。
【請求項14】
-コア(4)、開口部(10)を有するフレーム(8)およびカバープレート(12)を提供すること、
-フレーム(8)の開口部(10)内へコア(4)を挿入すること、
-カバープレート(12)がフレーム(8)およびコア(4)を挟むような形で2つのカバープレート(12)でコア(4)を格納するフレーム(8)を覆うこと、
-カバープレート(12)がフレーム(8)に固着されるようにサンドイッチ構造を圧延し、コア(4)が、フレーム(8)およびカバープレート(12)により画定されたクラッディング(6)内に封止されること、
を含む、請求項1から13のいずれか一つに記載の板状核燃料要素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核燃料要素の技術分野、詳細には、例えば一次標的としての使用または研究用原子炉用核燃料としての使用のための板状核燃料要素に関する。
【背景技術】
【0002】
板状核燃料要素は、例えば核医学または生物学で使用するための機器校正のために核分裂生成物を得るため、または研究用途のための中性子を提供するために、照射対象の原子炉内などに置くことができる。
【0003】
ウランを含有する板状核燃料要素を用いてモリブデン-99(以下「Mo99」と呼ぶ)を回収することができ、モリブデン-99は、標準的なベータ放射体であり、したがって例えば機器校正のために使用されるテクネチウム-99、特に、核医学および生物学において放射性トレーサとして使用されるテクネチウム-99の準安定核異性体(Tc99m)の供給源として役立つことができる。
【0004】
コアの縁部および面を覆うクラッディング内に封止された核分裂性物質の板状コアを含む板状核燃料要素を提供することが可能である。核分裂性物質は、ウラン合金を含んでいてよく、クラッディングは、アルミニウムまたはアルミニウム合金でできていてよい。
【0005】
「ピクチャ・イン・フレーム」技術を使用することによってこのような板状核燃料要素を製造することが可能である。この技術においては、均一厚みの核分裂性物質の矩形プレートでできたコアがフレームの開口部内に嵌合され、コアを格納するフレームがカバープレートの間に挟まれるような形でフレームの対向する面上にカバープレートが設置される。このサンドイッチ構造は次に、圧延、詳細には熱間圧延される。圧延プロセスでは、カバープレートはフレームに固着して、コアを封止し、板状核燃料要素を形成する。
【0006】
圧延により、核燃料要素の厚みは減少され、核燃料要素の長さは延長される。圧延によって、いわゆる「ドッグボーン」効果が発生し、コアの端部でコアの厚みが増大し、それに対応してカバープレートの厚みが減少し得る。
【0007】
しかしながら、処理および照射中の核分裂性物質の放出を防止するためにクラッディングの厚みは最小とすることが望ましい。クラッディングが特にドックボーン効果に起因して局所的に薄くなり過ぎた場合、核燃料要素をリバットする必要がある。
【0008】
ドッグボーン効果を制限するために、複数の提案がなされてきた。
【0009】
英国特許第1094505号明細書は、コアの端部で核分裂性コアとカバープレートとの間にインサートを提供することを提案している。
【0010】
仏国特許発明第1210887号明細書は、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)およびスズ(Sn)からなる群の中から選択された1つの元素が添加されたウラン-アルミニウム合金(U-Al)として核分裂性コアを提供することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】英国特許第1094505号明細書
【特許文献2】仏国特許発明第1210887号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的の1つは、ドッグボーン効果のリスクの減少を可能にする板状核燃料要素を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するために、本発明は、核分裂性物質でできたコアとクラッディングを含む板状核燃料要素において、クラッディングが、コアを収容する中央開口部を画定するフレームおよびフレームとコアを挟む2つのカバープレートを含み、フレームが金属の第1のクラッディング材料でできており、カバープレートが金属の第2のクラッディング材料でできており、第1のクラッディング材料が第2のクラッディング材料の硬度よりも厳密に高い硬度を有している、板状核燃料要素を提案する。
【0014】
カバープレートの第2のクラッディング材料よりも高い硬度を示す第1のクラッディング材料でできたフレームは、カバープレートよりも耐変形性が高い。したがって、核燃料要素の圧延中、核燃料要素は、コアの端部の部域において、変形が少なく、したがってドッグボーン効果の出現が制限されることになる。
【0015】
具体的実施形態において、核燃料要素は、単数または複数の以下の任意の特徴を、個別にまたは技術的に実現可能なあらゆる組合せの形で含む:
-第1のクラッディング材料の前記硬度は、コアの硬度よりも厳密に低いものである;
-第1のクラッディング材料は、アルミニウム合金またはジルコニウム合金である;
-第1のクラッディング材料は、アルミニウム-マグネシウム合金である;
-第1のクラッディング材料は、AG4またはAG5アルミニウム-マグネシウム合金である;
-第2のクラッディング材料は、アルミニウム合金またはジルコニウム合金である;
-第2のクラッディング材料は、アルミニウム-マグネシウム合金である;
-第2のクラッディング材料は、AG3アルミニウム-マグネシウム合金である;
-核分裂性物質は、少なくとも1つのウラン合金を含有する;
-核分裂性物質は、ウラン-ケイ素合金、ウラン-モリブデン合金、ウラン-アルミニウム合金、ウラン-ジルコニウム合金またはそれらの組合せを含有する;
-核分裂性物質は、U3Si2でできている;
-核分裂性物質のウランの含有量は、2.5gU/cm3以上、特に、厳密に4.8gU/cm3超である;
-核分裂性物質のウランの含有量は、6.5gU/cm3未満、特に5.3gU/cm3未満である。
【0016】
本発明は同様に、以上で定義されている板状核燃料要素の製造方法において、
-コア、開口部を有するフレームおよびカバープレートを提供するステップと、
-フレームの開口部内へコアを挿入するステップと、
-カバープレートがフレームおよびコアを挟むような形で2つのカバープレートでコアを格納するフレームを覆うステップと、
-カバープレートがフレームに固着されるようにサンドイッチ構造を圧延するステップであって、コアがフレームおよびカバープレートにより画定されたクラッディング内に封止される、ステップと、
を含む方法にも関する。
【0017】
本発明およびその利点は、単に非限定的な例としてかつ添付図面を参照して記されている以下の説明を読んだ上でより良く理解できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図1のII-IIに沿った核燃料要素の断面図である。
【
図3】
図1および2に示された核燃料要素のコアのクラッディング内への封止を例示する。
【
図4】
図1および2に示された核燃料要素のコアのクラッディング内への封止を例示する。
【
図5】光学顕微鏡で撮られた核燃料要素の断面図を例示する。
【
図6】光学顕微鏡で撮られた核燃料要素の断面図を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に例示されている核燃料要素2は例えば、原子炉内の一次標的としてか、または中性子を得る目的での研究用原子炉用の核燃料として使用されるように意図されている。
【0020】
核燃料要素2は、板状である。核燃料要素2は例えば、一次標的についてはおよそ150mm、そして研究用原子炉用の核燃料としての使用については最高およそ1000mmの長さ、例えば40~90mmの幅およびおよそ1mm~3mmの厚みを有する。円筒形の核燃料製品を得ることを考慮して、板状燃料要素2は例えば、通常約20~50mm、例えば30mmの直径で圧延され溶接される。
【0021】
図2を見れば分かるように、核燃料要素2は、核分裂性物質でできたコア4を含み、コア4はクラッディング6内に封止される。
【0022】
コア4は、封止した形でクラッディング6によって取り囲まれている。クラッディング6は、コア4の核分裂性物質がクラッディング6外へ移動するのを防ぐ。クラッディング6は、核燃料要素2の照射中に生成される核分裂生成物も保持する。
【0023】
核分裂性物質は、例えばウランを含む。核分裂性物質のウランの含有量は好ましくは、2.5gU/cm3以上、好ましくは厳密に4.8gU/cm3よりも高い。核分裂性物質のウランの含有量は例えば6.5gU/cm3以下、特に5.3gU/cm3以下である。
【0024】
核分裂性物質中に含まれるウランは、例えば低濃縮ウラン(LEU)である。LEUとは、ウラン中の同位体U235の比率が20重量%未満、例えば約19.75重量%であることを意味する。
【0025】
核分裂性物質は、例えばウラン合金、詳細にはウラン-ケイ素合金、ウラン-モリブデン合金、ウラン-アルミニウム合金およびウラン-ジルコニウム合金またはそれらの混合物からなる群の中から選択されたウラン合金を含有する。
【0026】
具体的実施形態において、核分裂性物質は、単一のウラン合金、詳細にはウラン-ケイ素合金、ウラン-モリブデン合金、ウラン-アルミニウム合金およびウラン-ジルコニウム合金からなる群の中から選択されたウラン合金を含有する。
【0027】
好ましい実施形態において、コア4の核分裂性物質中に含まれるウランは、U3Si2として提供される。
【0028】
クラッディング6は、コア4を収容する開口部10を有するフレーム8および、フレーム8および中央開口部10内に収容されたコア4がカバープレート12の間に挟まれるような形でフレーム8の対向する面上に設置された2つのカバープレート12を含む。
【0029】
フレーム8は第1のクラッディング材料で作製され、カバープレート12は第1のクラッディング材料とは異なる第2のクラッディング材料でできている。
【0030】
第1のクラッディング材料は、第2のクラッディング材料の硬度よりも厳密に高い硬度、好ましくはコア4の硬度(すなわち核分裂性物質の硬度)よりも厳密に低い硬度を有する。
【0031】
以下で説明するように、核燃料要素2を製造するための方法は、例えば300℃~600℃、特に350℃~450℃の温度で行なわれる熱間圧延を含み得る。
【0032】
300℃~600℃の温度範囲内、特に350℃~450℃の温度範囲内で、第1のクラッディング材料は例えば40~70HVのビッカース硬度(HV)を有し、第2のクラッディング材料は例えば30~60HVのビッカース硬度を有し、かつ/またはコア4は例えば50~100HVのビッカース硬度を有する。
【0033】
以下で説明するように、核燃料要素2を製造するための方法は、室温で行なわれる冷間圧延を含み得る。
【0034】
室温では、第1のクラッディング材料は例えば50~100HVのビッカース硬度(HV)を有し、第2のクラッディング材料は例えば30~70HVのビッカース硬度を有し、かつ/またはコア4は例えば100HV以上のビッカース硬度を有する。
【0035】
第1のクラッディング材料および第2のクラッディング材料は例えば、金属材料である。
【0036】
第1のクラッディング材料および第2のクラッディング材料の各々は、概して原子炉において使用されるいかなるタイプの金属材料、すなわちアルミニウム合金、例えばEN AW-1050A、EN AW-6061、EN AW-5754、EN AW-5083、EN AW-5019またはAlFeNi、ジルコニウム合金、例えばジルカロイ-2、ジルカロイ-4またはZr-Nb合金、Ni系合金、例えばAlloy600、あるいはステンレス鋼、例えばAISI 304LまたはAISI 316Lであってよい。
【0037】
第1のクラッディング材料は、例えばアルミニウム-マグネシウム合金(Al-Mg)、詳細にはAG4としても知られるEN AW-5083またはAG5としても知られるEN AW-5019である。
【0038】
第2のクラッディング材料は、例えばアルミニウム-マグネシウム合金、詳細には、例えば約3重量%のマグネシウムを含む、AG3としても知られるEN AW-5754である。
【0039】
図3および4に例示されているように、核燃料要素2の製造方法は以下のステップを含む:
-コア4、フレーム8およびカバープレート12を提供するステップと、
-フレーム8の開口部10内へコア4を挿入するステップと、
-コア4を格納するフレーム8をカバープレート12で挟むような形でカバープレート12を設置するステップ(
図4参照)および、
-カバープレート12がフレーム8に固着されるようにカバープレート12の間に収容されたフレーム8とコア4によって形成されたサンドイッチ構造を圧延するステップであって、コア4がフレーム8およびカバープレート12により画定されたクラッディング6内に封止されている、ステップ(
図4の矢印Rを参照)。
【0040】
第1のサブステップにおいて、核分裂性物質のウランおよびウラン合金の各々の他の構成成分は、炉内、例えばアーク炉、誘導炉または抵抗炉内で溶融させられる。存在する場合には、上述の追加の元素をこの第1のサブステップにおいて溶融物に添加してよい。
【0041】
第2のサブステップにおいて、インゴットを形成するために溶融物を鋳型内に注ぐ。
【0042】
第3のサブステップでは、ウラン合金粉末を得るためにインゴットを粉砕する。有利には、粉末粒子の平均サイズは、100μm未満、例えば40μm~70μmである。粉末粒度を決定するためには、有利には、NF ISO 13320規格にしたがってレーザ粒度分布を使用することができる。
【0043】
第4のサブステップでは、粉末は、例えば平行六面体の形状を有する成形体を得るために圧縮される。有利には、成形体は、核燃料製品1内のコア4の最終幅におおよそ等しい幅を有する。
【0044】
成形体の気孔率は有利には、最初に空気中で、次に水中で成形体を秤量することによって決定される。後者の測定の間、成形体は、サスペンション機構上または成形体上に気泡が全く存在しない状態で完全に水中に浸漬される。このとき、核分裂性物質の理論上の密度が分かっているため、気孔率を計算することができる。
【0045】
代替案として、処理の持続時間を短縮しかつ/または残留気孔の量を削減するために、有利には200~1000バールの高圧下で、400℃~900℃の温度で、焼結サブステップを行なうことができる。
【0046】
第4および第5のサブステップに対する代替案として、粉末を表面、好ましくはクラッディング6の表面上に、有利には300~500℃の温度でコールドスプレーしてもよい。コールドスプレー法は、結果として高密度で高品質の被着物をもたらす。
【0047】
第2から第5までのサブステップに対する代替案として、粉末をコア4のサイズを直接有する鋳型内で直接鋳造してもよく、追加の元素があれば、それらは第1のサブステップにおいて添加される。
【0048】
クラッディング6によるコア4の封止を考慮して、コア4は、フレーム8の中央開口部10内に設置される。開口部10は、コア4の輪郭と整合する輪郭を有する。コア4は例えば、長方形の輪郭を有する。フレーム8は、コア4の側面に沿って延在する。
【0049】
フレーム8は好ましくは、例えばプレートに穿孔して開口部10を得ることなどにより、単一の連続した材料部品で一体的に作製される。代替的には、フレーム8は、コア4の側面に沿って延在するフレーム8を画定するようにコア4の周りに配設された複数のフレーム部品を含んでいてよい。
【0050】
フレーム8内部にコア4を設置した後、カバープレート12をフレーム8の対向する面上に設置して、2つのカバープレート12間に挟まれたコア4を収容するフレーム8を含むサンドイッチ構造14を形成する。
【0051】
2つのカバープレート12は例えば、
図3および4に示されたようにシートを折畳むことによって得られる。このような場合、2つのカバープレート12は、単一の連続した材料部品内で一体的に作製される。代替的には、2つのカバープレート12が、別個に提供される。
【0052】
図4では、クラッディング6は、カバープレート12がフレーム8に固着されるようにサンドイッチ構造14を圧延することによって封止される。こうして各カバープレート12は、その外縁でフレーム8に対して固着され、封止する形でフレーム8を閉鎖する。
【0053】
圧延は、例えば熱間圧延である。熱間圧延は好ましくは、300℃~600℃の温度で、特に350~450℃の温度で行なわれる。
【0054】
圧延は、好ましくは1つの圧延方向Rに沿って、この圧延方向Rに沿った1回または複数回のパスで行なわれる。
【0055】
圧延ステップは、コア4をその最終厚みおよびサイズにし、フレーム8および上部および下部プレート12によって形成されるクラッディング6内部でのコア4の適切な封止を保証する。
【0056】
任意には、圧延ステップは、熱間圧延後に行なわれる核燃料要素2の冷間圧延を含む。冷間圧延は、熱間圧延中の温度よりも厳密に低い温度で行なわれる。冷間圧延は、好ましくは室温で行なわれる。冷間圧延は、例えば、コア4の厚みおよび長さを調整するために行なわれる。
【0057】
任意には、核燃料要素2の最終平面寸法は、核燃料要素2の縁部を切断することによって調整される。切断は、プレス切断、水切断、レーザ切断などの任意の切断技術によるものである。
【0058】
任意には、核燃料要素2の最終厚みは例えば、機械加工、化学エッチングなどによって調整される。
【0059】
任意には、核燃料要素2は、公知のプロセスにしたがった化学洗浄に付される。化学洗浄は、例えば核燃料要素を脱脂するために行なわれる。
【0060】
圧延方向Rにサンドイッチ構造14を圧延すると、コア4内に波が形成され、フレーム8の対応する側面に沿ってコア4の縁部に向かって伝搬する傾向がある。
【0061】
波の出現によって、クラッディングカバー12のうちの少なくとも一方が波と合って過度に薄くなり、「ドッグボーン」効果の発生リスクが増大し、このため核燃料要素2をリバットしなければならない。
【0062】
圧延中のコア4の核分裂性物質中で形成される波のサイズは、核分裂性物質の流量が低下した場合に増大し、核分裂性物質の流量は、核分裂性物質の密度が増大した場合に低下する。
【0063】
したがって、コア4の密度を増大させることによりコア4のウランの含有量を増大させると、有害なドッグボーン効果の発生リスクが増大する傾向にある。
【0064】
しかしながら、フレーム8の第1のクラッディング材料は、カバープレート12の第2のクラッディング材料の硬度よりも厳密に高い硬度を有することから、フレーム8は、カバープレート12よりも耐変形性が高く、したがって、圧延中にコア4内に形成される波のサイズを制限する傾向にある。
【0065】
その上、コア4の硬度よりも厳密に低い硬度を有するフレーム8の第1のクラッディング材料は、コア4よりも耐変形性が低く、このため、圧延中にコア4内に形成される波の形成リスクは制限される。
【0066】
したがって、カバープレート12の材料よりも硬度が高くコア4より硬度の低い第1のクラッディング材料でできたフレーム8は、コア4の密度を増大させることによってコア4のウランの含有量を増大させても、有害なドッグボーン効果の発生リスクを制限することができる。
【0067】
核燃料要素2の特性は、詳細には、原子炉内の一次標的としてまたは中性子を得るための研究用原子炉用の核燃料として使用するために重要である。
【0068】
コア4の密度および核分裂性物質を含むコア4の幾何形状および組成は、ニュートロニクスにとって重要である。クラッディング材料は、原子炉の一次回路の化学的性質にとって重要である。
【0069】
ドッグボーン効果の発生リスクの制限を伴うコア4のウランの含有量の増大は、すでに原子炉での使用に適格とされている、材料(核分裂性物質、第1のクラッディング材料および第2のクラッディング材料)、形状、寸法および製造技術を用いて得ることが可能である。
【0070】
インゴットを粉末に粉砕し、粉末でできた成形体をその後に焼結させることで、コア4の優れた均質性が得られ、その気孔率を所望のレベルまで削減すること、ひいてはその密度およびウランの含有量を増加させることが可能となる。
【0071】
コア4の直接鋳造により、非多孔質コア4が得られる。
【0072】
図5は、U
3Si
2でできたコア4Aを有し、フレーム8Aおよびカバープレート12Aが同じ材料すなわちAG3でできており、そのためフレーム8Aおよびカバープレート12Aが同じ硬度を有している、第1の核燃料要素2Aの断面の光学顕微鏡で撮られた図を例示している。
【0073】
図6は、フレーム8BがAG3製のカバープレート12Bよりも硬いAG5でできているという点だけが
図5のものと異なっている第2の核燃料要素2Bの断面の光学顕微鏡で撮られた図である。
【0074】
第1の核燃料要素2Aおよび第2の核燃料要素2Bは両方共、同じ条件下で運用され2つのカバープレートの間に挟まれたフレーム内に挿入されたコアで形成されたサンドイッチ構造を圧延するステップを含む同じ製造方法を用いて製造された。
【0075】
図5および6は、フレーム8Aおよびカバープレート12Aが同じ材料でできている第1の核燃料要素2A上にドッグボーン効果が出現していること、そしてフレーム8Aおよびカバープレート12Aが異なる材料でできており、フレーム8Bの材料がカバープレート12Aの材料よりも硬度が高い第2の核燃料要素2Bにおいてはこのドッグボーン効果が限定的であるかまたは回避すらされていることを例示している。
【0076】
詳細には、第1の核燃料要素2Aのカバープレート12Aの第1の最小厚みTAは、第2の核燃料要素2Bのカバープレート12Bの第2の最小厚みTBよりも厳密に小さい。
【0077】
本事例においては、第1の最小厚みは、204μmと測定され、第2の最小厚みは386μmと測定された。
【符号の説明】
【0078】
2 板状核燃料要素
4 コア
6 クラッディング
8 フレーム
10 開口部
12 カバープレート
14 サンドイッチ構造
【手続補正書】
【提出日】2024-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核分裂性物質でできたコ
アとクラッディン
グを含む板状核燃料要
素において、クラッディングが、コ
アを収容する中央開口
部を画定するフレー
ムおよびフレー
ムとコ
アを挟む2つのカバープレー
トを含み、フレー
ムが金属の第1のクラッディング材料でできており、カバープレー
トが金属の第2のクラッディング材料でできており、第1のクラッディング材料が第2のクラッディング材料の硬度よりも厳密に高い硬度を有している、板状核燃料要素。
【請求項2】
第1のクラッディング材料の前記硬度が、コ
アの硬度よりも厳密に低いものである、請求項1に記載の核燃料要素。
【請求項3】
第1のクラッディング材料が、アルミニウム合金またはジルコニウム合金である、請求項1または2に記載の核燃料要素。
【請求項4】
第1のクラッディング材料が、アルミニウム-マグネシウム合金である、請求項
1に記載の核燃料要素。
【請求項5】
第1のクラッディング材料が、AG4またはAG5アルミニウム-マグネシウム合金である、請求項
1に記載の核燃料要素。
【請求項6】
第2のクラッディング材料が、アルミニウム合金またはジルコニウム合金である、請求項
1に記載の核燃料要素。
【請求項7】
第2のクラッディング材料が、アルミニウム-マグネシウム合金である、請求項
1に記載の核燃料要素。
【請求項8】
第2のクラッディング材料が、AG3アルミニウム-マグネシウム合金である、請求項
1に記載の核燃料要素。
【請求項9】
核分裂性物質が、少なくとも1つのウラン合金を含有する、請求項
1に記載の核燃料要素。
【請求項10】
核分裂性物質が、ウラン-ケイ素合金、ウラン-モリブデン合金、ウラン-アルミニウム合金、ウラン-ジルコニウム合金またはそれらの組合せを含有する、請求項
1に記載の核燃料要素。
【請求項11】
核分裂性物質が、U
3Si
2でできている、請求項
1に記載の核燃料要素。
【請求項12】
核分裂性物質のウランの含有量が、2.5gU/cm
3以
上である、請求項1
に記載の核燃料要素。
【請求項13】
核分裂性物質のウランの含有量が、厳密に4.8gU/cm
3
超である、請求項1に記載の核燃料要素。
【請求項14】
核分裂性物質のウランの含有量が、6.5gU/cm
3未
満である、請求項
1に記載の核燃料要素。
【請求項15】
核分裂性物質のウランの含有量が、5.3gU/cm
3
未満である、請求項1に記載の核燃料要素。
【請求項16】
-コ
ア、開口
部を有するフレー
ムおよびカバープレー
トを提供すること、
-フレー
ムの開口
部内へコ
アを挿入すること、
-カバープレー
トがフレー
ムおよびコ
アを挟むような形で2つのカバープレー
トでコ
アを格納するフレー
ムを覆うこと、
-カバープレー
トがフレー
ムに固着されるようにサンドイッチ構造を圧延し、コ
アが、フレー
ムおよびカバープレー
トにより画定されたクラッディン
グ内に封止されること、
を含む、請求項
1に記載の板状核燃料要素の製造方法。
【国際調査報告】