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特表2024-538200その場結晶化超低ゼオライト含有量流動接触分解触媒
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  • 特表-その場結晶化超低ゼオライト含有量流動接触分解触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】その場結晶化超低ゼオライト含有量流動接触分解触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/08 20060101AFI20241010BHJP
   C01B 39/24 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 35/51 20240101ALI20241010BHJP
   B01J 35/77 20240101ALI20241010BHJP
   B01J 37/30 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20241010BHJP
   C10G 11/05 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B01J29/08 M
C01B39/24
B01J35/51
B01J35/77
B01J37/30
B01J37/04 102
B01J37/00 F
B01J37/10
C10G11/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523617
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022047329
(87)【国際公開番号】W WO2023069656
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/270,464
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ジュンメイ
(72)【発明者】
【氏名】ドラツィオ,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ライス,サマンサ,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ファバテ,ニコラス,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】カメロタ,デビッド,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】カラス,カール,シー.
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G073BA17
4G073BA57
4G073BA63
4G073CZ05
4G073FB19
4G073FB21
4G073FB29
4G073FB30
4G073FB50
4G073GA02
4G073GA12
4G073GB02
4G073UA04
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10C
4G169BA15C
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC02C
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC41A
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169CC07
4G169DA08
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EA04X
4G169EA04Y
4G169EB18Y
4G169EC01X
4G169EC01Y
4G169EC02Y
4G169EC03Y
4G169EC06Y
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB05
4G169FB14
4G169FB57
4G169FB63
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4G169ZA04A
4G169ZA04B
4G169ZB04
4G169ZB09
4G169ZD01
4G169ZD06
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF09A
4G169ZF09B
4H129AA02
4H129CA08
4H129DA04
4H129GA12
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KC13X
4H129KC14X
4H129KC14Y
4H129KD09X
4H129KD09Y
4H129NA19
4H129NA37
(57)【要約】
本明細書では、流動接触分解触媒であって、その場で結晶化されたゼオライト材料及びマトリックス材料を含む流動接触分解触媒が開示される。少なくとも1つの実施形態では、失活触媒は、約1未満の、マトリックス表面積に対するゼオライト表面積の比率(Z/M)及び少なくとも約24.3Åの単位格子サイズを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動接触分解触媒であって、その場で結晶化されたゼオライト材料及びマトリックス材料を含み、前記失活触媒は、約1未満の、マトリックス表面積に対するゼオライト表面積の比率(Z/M)及び少なくとも約24.3Åの失活触媒の単位格子サイズを有する、流動接触分解触媒。
【請求項2】
前記ゼオライト材料は、希土類元素をさらに含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記希土類元素は、希土類酸化物としてゼオライト上に約10重量%~17重量%の量で存在する、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記希土類元素は、ランタンを含む、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒を構成する前記ランタンの実質的に全ては、前記ゼオライト材料中にある、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
前記ゼオライト材料は、Y-ゼオライトから本質的になる、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
前記ゼオライト材料は、実質的に分離した結晶を含有し、且つ相互成長結晶を実質的に含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項8】
前記ゼオライト材料は、少なくとも約70重量%の純アルミナを含む粒子上で結晶化される、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項9】
前記純アルミナは、アルミナA、アルミナB、アルミナC又はアルミナDの少なくとも1つからなる、請求項8に記載の触媒。
【請求項10】
流動接触分解触媒であって、その場で結晶化されたゼオライト材料及びマトリックス材料を含み、ゼオライト相互成長なしで約30重量%未満のゼオライト含有量を有する流動接触分解触媒。
【請求項11】
SEMによって測定される結晶サイズは、約1000~3000Åである、請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
ゼオライト材料を含む流動接触分解触媒を製造する方法であって、
20%未満の粘土と一緒に、アルミナを含む前駆体微小球を予形成すること、
前記予形成された微小球上においてゼオライトを約30重量パーセント未満までその場で結晶化させること
を含む方法。
【請求項13】
前記結晶化は、
前記予形成された前駆体微小球、メタカオリンを含む微小球、ケイ酸ナトリウム溶液及びゼオライトシードを混合して、スラリーを形成することと、
前記ゼオライトを結晶化させるのに十分な温度まで且つ時間にわたって前記スラリーを加熱することと
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ゼオライト材料中のナトリウムカチオンを他のイオンと交換することをさらに含み、イオン交換された生成物は、約0.2%未満の酸化ナトリウムの重量パーセントを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒を約1350~1550°Fで約15~30時間にわたって水蒸気処理することにより、前記触媒を失活させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記失活触媒のマトリックス表面積に対するゼオライト表面積の水蒸気処理後の比率(水蒸気処理後Z/M)は、約1未満であり、前記失活触媒の水蒸気処理後の単位格子サイズ(SUCS)は、少なくとも約24.3Åである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ゼオライト材料は、希土類元素をさらに含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記希土類元素は、希土類酸化物としてゼオライト上に約10重量%~17重量%の量で存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記希土類元素は、ランタンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒を構成する前記ランタンの実質的に全ては、前記ゼオライト材料中にある、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ゼオライト材料は、Y-ゼオライトから本質的になる、請求項12~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ゼオライト材料は、実質的に分離した結晶を含有し、且つ相互成長結晶を実質的に含まない、請求項12~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ゼオライト材料は、少なくとも約70重量%の純アルミナを含む粒子上で結晶化される、請求項12~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記純アルミナは、アルミナA、アルミナB、アルミナC又はアルミナDの少なくとも1つからなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
炭化水素原料を分解する方法であって、前記原料を、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒と接触させることを含む方法。
【請求項26】
一定のボトム転化率において、従来の触媒と比較して少なくとも5%低いコークス生成量を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項27】
一定のボトム転化率において、従来の触媒と比較して少なくとも10%低いコークス生成量を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項28】
一定のボトム転化率において、従来の触媒と比較して少なくとも15%低いコークス生成量を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項29】
ボトムアップグレードは、一定のコークス生成量において従来の触媒と比較して少なくとも5%だけ増加する、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項30】
ボトムアップグレードは、一定のコークス生成量において従来の触媒と比較して少なくとも10%だけ増加する、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項31】
FCCプロセスで使用される場合、6重量%の一定のコークス生成量において残留ボトムが5%未満であるように機能する、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項32】
FCCプロセスで使用される場合、6重量%の一定のコークス生成量において残留ボトムが5.5%未満であるように機能する、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項33】
FCCプロセスで使用される場合、6重量%の一定のコークス生成量において残留ボトムが5%以下であるように機能する、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項34】
FCCプロセスで使用される場合、5重量%の一定のボトム残留においてコークス生成量が6%未満であるように機能する、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項35】
FCCプロセスで使用される場合、5重量%の一定のボトム残留においてコークス生成量が5.5%未満であるように機能する、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項36】
FCCプロセスで使用される場合、5重量%の一定のボトム残留においてコークス生成量が5%未満であるように機能する、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項37】
FCCプロセスで使用される場合、80%のガソリン転化率においてガソリン収率が少なくとも56であるような分解選択性を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項38】
FCCプロセスで使用される場合、80%のガソリン転化率においてLCO収率が少なくとも12.7であるような分解選択性を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項39】
FCCプロセスで使用される場合、80%のガソリン転化率においてLCO/HCO比が少なくとも3であるような分解選択性を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項40】
FCCプロセスで使用される場合、80%のガソリン転化率においてコークス生成量が6.5未満であるような分解選択性を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項41】
FCCプロセスで使用される場合、80%のガソリン転化率においてコークス生成量が6未満であるような分解選択性を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項42】
FCCプロセスで使用される場合、80%のガソリン転化率においてコークス生成量が5.9未満であるような分解選択性を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月21日に出願された米国仮特許出願第63/270,464号明細書の優先権の利益を主張するものであり、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、石油精製触媒及びその組成物に関する。特に、本開示は、流動接触分解(FCC)触媒及びその組成物、その調製方法並びにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
流動接触分解(FCC)プロセスは、大きい有機分子を、より小さく、より有用な化合物に触媒的に破壊(分解)することを目的とする。ゼオライト含有材料は、FCCプロセスの触媒として数十年にわたって使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実用上、FCCプロセスの最終的な効率は、コークスなどの廃棄副生成物の生成によって制限されることが多い。有用な生成物の質量あたりの廃棄副生成物の生成を減少させることは、反応器の稼働時間、メンテナンス間に生成される生成物の価値、原料の転化などの点で大きい経済的利点をもたらす。現在入手可能なものよりも、分解された原料の量あたりでより低いコークス形成を示すFCC触媒成分を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、アルミナ粒子上のその場(in-situ)で結晶化されたゼオライトを含む流動接触分解(FCC)触媒成分であって、失活(例えば、水蒸気処理)FCC触媒成分は、約1未満の、マトリックス表面積(MSA)に対するゼオライト表面積(ZSA)の比率を有する、流動接触分解(FCC)触媒成分を提供する。
【0006】
様々なゼオライトを純アルミナ粒子上で結晶化させ得、例えば、限定されないが、構造BEA、MSE、-SVR、FAU、MOR、CON、SOF、MFI、IMF、FER、MWW、MTT、TON、EUO、MRE、NAT、CHA、EMT又はそれらの2つ以上の混合物を有するゼオライトが挙げられる。特定の実施形態では、ゼオライトは、ゼオライトX、Y-ゼオライト、ZSM-5、ベータゼオライト、ZSM-11、ZSM-14、ZSM-17、ZSM-18、ZSM-20、ZSM-31、ZSM-34、ZSM-41、ZSM-46、モルデナイト、チャバザイト又はそれらの2つ以上の混合物から選択され得る。一実施形態では、ゼオライトは、ゼオライトYである。特定の実施形態では、例えばゼオライトがゼオライトYである場合、新鮮な触媒ゼオライトは、少なくとも約24.50Åの単位格子サイズを有し得、失活(例えば、水蒸気処理)触媒は、少なくとも約24.3Åの単位格子サイズを有し得る。
【0007】
少なくとも1つの実施形態では、アルミナ微小球は、ベーマイト由来のアルミナ、擬似ベーマイト由来のアルミナ、フラッシュ焼成ギブサイト由来のアルミナ、ベーマイト、擬似ベーマイト、フラッシュ焼成ギブサイト、焼成されたフラッシュ焼成ギブサイト、シリカドープアルミナ、ガンマ-アルミナ(ガンマ-アルミナA又はBを含む)、アルミナC又はD、χ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、κ-アルミナ、α-アルミナ、それらの希土類変性変形物、それらのアルカリ土類金属変性変形物、それらのビスマス変性変形物又はそれらの2つ以上の混合物の1つ又は複数を含み得る。
【0008】
一実施形態では、アルミナ微小球は、最初にアルミナ粒子を粉砕し(例えば、限定されないが、チョップ粉砕、ハンマー粉砕又はボール粉砕などの乾式粉砕)、粉砕されたアルミナ粒子をスラリー化し、粉砕及びスラリー化されたアルミナを噴霧乾燥して、適切な平均粒径を有するアルミナ微小球を作製することによって作製され得る。噴霧乾燥するための粉砕されたアルミナは、2~10μmの範囲の粒径を有し得る。
【0009】
特定の実施形態では、アルミナ及び/又はゼオライトは、希土類元素、ビスマス、アルカリ土類元素又はそれらの2つ以上の混合物から選択される非アルミナ成分によって変性され得る。適切な希土類元素としては、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン又はそれらの2つ以上の混合物が挙げられ得る。適切なアルカリ土類元素としては、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム又はそれらの2つ以上の混合物が挙げられ得る。
【0010】
特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるFCC触媒成分のいずれかを調製する方法を提供する。本方法は、アルミナ微小球上においてゼオライトをその場で結晶化させることを含み、失活FCC触媒成分は、約1未満の、MSAに対するZSAの比率及び少なくとも約24.3Åの単位格子サイズを有する。ゼオライトは、本明細書に記載のゼオライトのいずれでもあり得る。アルミナは、本明細書に記載のアルミナのいずれでもあり得る。
【0011】
特定の実施形態では、結晶化は、アルミナ含有微小球をアルミニウム源、ケイ素源、任意選択的に水酸化ナトリウム及び水と混合して、アルカリ性スラリーを形成することを含む。特定の実施形態では、結晶化は、アルカリ性スラリーを、所望の量のゼオライトを結晶化させるのに十分な温度まで且つ時間にわたって加熱して、ゼオライト微小球を形成することをさらに含む。
【0012】
特定の実施形態では、本方法は、結晶化前に、例えばアルミナ粒子前駆体を粉砕し、粉砕されたアルミナ粒子前駆体をスラリー化し、且つスラリー化及び粉砕されたアルミナ粒子前駆体を噴霧乾燥して、本明細書に記載されるような適切な径のアルミナ微小球を形成することにより、アルミナ微小球を形成することを含む。
【0013】
特定の実施形態では、FCC触媒成分のいずれかを調製する方法は、ゼオライト微小球(結晶化後)及び/又はアルミナ粒子(結晶化前)を、希土類元素、ビスマス、アルカリ土類元素又はそれらの2つ以上の混合物から選択される非アルミナ成分で変性することをさらに含む。適切な希土類元素としては、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン又はそれらの2つ以上の混合物が挙げられ得る。適切なアルカリ土類元素としては、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム又はそれらの2つ以上の混合物が挙げられ得る。一実施形態では、変性は、ゼオライト微小球及び/又はアルミナ粒子を、選択された非アルミナ成分(例えば、硝酸セリウム、酢酸セリウム、硝酸ランタン、酢酸ランタン)の前駆体に含浸させることを含み得る。
【0014】
特定の実施形態では、本開示は、炭化水素原料を、本明細書に記載される実施形態のいずれかによるFCC触媒成分又は本明細書に記載される実施形態のいずれかによるFCC触媒組成物と接触させることにより、炭化水素原料を分解する方法を提供する。本開示の方法は、原料転化率の向上、ボトム分解の向上、ボトムコークス選択性の向上又はコークス生成の低下の1つ又は複数をもたらし得る。
【0015】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、複数の参照物を含む。したがって、例えば、「微小球」への言及は、単一の微小球だけでなく、2つ以上の微小球の混合物などを含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、測定量に関連する「約」という用語は、測定を行い、測定の目的及び測定装置の精度に見合った注意レベルを行使する当業者によって予想される、その測定量における通常の変動を指す。特定の実施形態では、「約」という用語は、言及された数±10%を含み、したがって、「約10」は、9~11を含むであろう。
【0017】
本明細書で使用される場合、「触媒」、又は「触媒組成物」、又は「触媒材料」、又は「触媒成分」という用語は、反応を促進する材料を指す。本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、FCC触媒組成物又はFCC添加剤組成物に言及する場合、第2の成分と混合又はブレンドされた第1の成分など、2つ以上の別個の及び異なる成分のブレンド又は混合物を指す。特定の実施形態では、組成物中の成分は、化合しており、物理的手段(例えば、濾過)によって分離することができない。他の実施形態では、組成物中の成分は、化合しておらず、物理的手段(例えば、濾過)によって分離され得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、「流動接触分解」又は「FCC」という用語は、石油原油の高沸点、高分子量炭化水素画分が、より価値のあるガソリン、オレフィン系ガス及び他の生成物に転化される石油精製所における転化プロセスを指す。
【0019】
「分解条件」又は「FCC条件」は、典型的なFCCプロセス条件を指す。典型的なFCCプロセスは、450℃~650℃の反応温度において、600℃~850℃の触媒再生温度で行われる。高温再生触媒は、ライザー反応器の底部で炭化水素原料に添加される。固体触媒粒子の流動化は、リフトガスで促進され得る。触媒は、気化し、原料を所望の分解温度まで過熱する。触媒及び原料の上昇通過中、原料は、分解され、コークスが触媒上に堆積する。コークス付き触媒及び分解生成物は、ライザーを出て、反応器容器の上部で固体-ガス分離システム、例えば一連のサイクロンに入る。分解された生成物は、ガス、ガソリン、軽質ガスオイル及び重質サイクルガスオイルを含む一連の生成物に分画される。いくつかのより重質の炭化水素は、反応器にリサイクルされ得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「原料」又は「供給原料」という用語は、高沸点及び高分子量を有する原油の部分を指す。FCCプロセスでは、炭化水素供給原料は、FCCユニットのライザーセクション中に注入され、そこで、供給原料は、触媒再生器からライザー反応器に循環された高温触媒に接触したとき、より軽質でより価値のある生成物に分解される。
【0021】
本明細書で使用される場合、微小球は、噴霧乾燥によって得ることができる。当業者によって理解されるように、微小球は、形状が必ずしも完全に球形であるわけではない。本明細書に記載される種々の触媒成分は、微小球の形態の粒子であり得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、「マトリックス」又は「非ゼオライトマトリックス」という用語は、ゼオライト又はモレキュラシーブではないFCC触媒成分の構成要素を指す。
【0023】
本明細書で使用される「ゼオライト」という用語は、ケイ素、アルミニウム及び酸素イオンの広範な三次元ネットワークに基づく骨格を有する結晶性アルミノシリケートを指し、実質的に均一な細孔分布を有する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「相互成長ゼオライト」という用語は、その場結晶化プロセスによって形成されるゼオライトを指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「その場結晶化」という用語は、ゼオライトが微小球上/中で直接成長又は相互成長し、マトリックス又は非ゼオライト材料と密接に関連するプロセスを指し、例えば、米国特許第4493902号明細書及び同第6656347号明細書に記載されている。ゼオライトは、ゼオライトが密接に関連し、マトリックス又は非ゼオライト材料上に均一に分散するように、前駆体微小球のマクロ細孔上/中で直接相互成長する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「予成形微小球」又は「前駆体微小球」という用語は、非ゼオライト成分を噴霧乾燥及び焼成することによって得られる微小球を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ゼオライト含有微小球」という用語は、予形成された前駆体上においてゼオライト材料をその場で結晶化させることによって得られる微小球を指す。
【0028】
本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書で特に指示されない限り、範囲内に入るそれぞれの別個の値に個別に言及する簡略法として機能することを意図するにすぎず、それぞれの別個の値は、あたかもそれが本明細書で個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で特に指示されない限り又は文脈によって特に明確に否定されない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供される任意の及び全ての例又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、特定の材料及び方法を例示することを意図するにすぎず、範囲に限定を提起するものでない。本明細書における言語は、任意の特許請求されない要素が、開示される材料及び方法の実施にとって必須であると示すものとして解釈されるべきではない。
【0029】
本開示の実施形態は、添付の図面の図に例示的に示され、これは、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態によるスケールアップした触媒試料及び参照材料について、循環ライザーユニットで測定した性能データを示す。
図2】実施形態による触媒及び参照材料のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は、特定の実施形態では、アルミナ含有微小球上のその場で結晶化されたゼオライトを含む流動接触分解(FCC)触媒成分であって、約1.8未満の、本明細書ではZ/M比とも記載され得るマトリックス表面積(MSA)に対するゼオライト表面積(ZSA)の比率を有するFCC触媒成分に関する。特定の実施形態では、FCC触媒成分のZ/M比は、約1.7未満、約1.6未満、約1.5未満、約1.3未満又は約1未満であり得る。特定の実施形態では、Z/M比は、約0.7、約0.9若しくは約1.1のいずれか~約1.5、約1.6、約1.7若しくは約1.8のいずれかの範囲又はその中の任意の部分範囲若しくは単一のZ/M値であり得る。一実施形態では、FCC触媒成分のZ/M比は、約0.9~約1.8の範囲である。限定的に解釈されるものではないが、コークスの生成量あたりの有用な生成物に転化される原料の量は、Z/M比の関数であると考えられる。具体的には、より大きい分子(例えば、供給原料を構成する分子)は、マトリックス材料(例えば、ガンマアルミナ)との相互作用により、いくらかより小さい生成物に分解され、これらの中間生成物は、ゼオライト材料との相互作用により、最終生成物(例えば、ライトサイクルオイル、ヘビーサイクルオイル、ガソリンなど)に転化されると考えられる。利用可能なマトリックス表面積の増加(すなわちZ/Mの減少)は、同量のコークスを生じながら、より多くの原料を分解することを可能にするか、又は所与の量の原料を分解しながら、生じるコークスの量を減少させる。さらに、単位格子サイズが大きいと、低コークス原料分解が促進されると考えられる。
【0032】
特定の実施形態では、FCC触媒成分が水蒸気処理条件(例えば、800℃、例えば約1~24時間で100%水蒸気処理)を受けた後の水蒸気失活Z/M比(sZ/M比)は、約1.0未満である。特定の実施形態では、sZ/M比は、約0.9未満、約0.8未満又は約0.7未満であり得る。特定の実施形態では、sZ/M比は、約0.2、約0.25若しくは約0.3のいずれか~約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9若しくは約1.0のいずれかの範囲又はその中の任意の部分範囲若しくは単一のsZ/M値であり得る。一実施形態では、FCC触媒成分のsZ/M比は、約0.2~約0.7の範囲である。一実施形態では、FCC触媒成分のsZ/M比は、約0.25~約0.6の範囲である。一実施形態では、FCC触媒成分のsZ/M比は、約0.3~約0.5の範囲である。
【0033】
Z/M比(又はsZ/M比)に達するには、FCC触媒成分の全表面積(TSA)をBET法に従って求め、FCC触媒成分のマトリックス表面積(MSA)をt-プロット法に従って求める。TSAとMSAとの差がFCC触媒成分のゼオライト表面積(ZSA)である。
【0034】
特定の実施形態では、FCC触媒成分のBET TSAは、約50m/g、約75m/g、約100m/g若しくは約125m/gのいずれか~約150m/g、約175m/g、約200m/g、約250m/g、約275m/g、約300m/g、約350m/g、約400m/g、約450m/g若しくは約500m/gのいずれかの範囲又はその中の任意の部分範囲又は単一のBET TSA値である。一実施形態では、FCC触媒成分のBET TSAは、約100m/g~約300m/gの範囲である。一実施形態では、FCC触媒成分のBET TSAは、約125m/g~約270m/gの範囲である。一実施形態では、FCC触媒成分のBET TSAは、約185m/g~約250m/gの範囲である。
【0035】
特定の実施形態では、FCC触媒成分のt-プロットMSAは、約25m/g、約50m/g、約75m/g若しくは約90m/gのいずれか~約110m/g、約125m/g、約130m/g、約140m/g、約150m/g、約160m/g、約170m/g、約175m/g、約180m/g若しくは約190m/gのいずれかの範囲又はその中の任意の部分範囲若しくは単一のt-プロットMSA値である。一実施形態では、FCC触媒成分のt-プロットMSAは、約25m/g~約175m/gの範囲である。一実施形態では、FCC触媒成分のt-プロットMSAは、約50m/g~約150m/gの範囲である。一実施形態では、FCC触媒成分のt-プロットMSAは、約65m/g~約130m/gの範囲である。
【0036】
特定の実施形態では、FCC触媒成分のZSAは、約25m/g、約50m/g、約75m/g若しくは約90m/gのいずれか~約110m/g、約125m/g、約130m/g、約140m/g、約150m/g、約160m/g、約170m/g、約175m/g、約180m/g若しくは約190m/gのいずれかの範囲又はその中の任意の部分範囲若しくは単一のZSA値である。一実施形態では、FCC触媒成分のZSAは、約25m/g~約175m/gの範囲である。一実施形態では、FCC触媒成分のZSAは、約50m/g~約150m/gの範囲である。一実施形態では、FCC触媒成分のZSAは、約110m/g~約145m/gの範囲である。
【0037】
本明細書に記載される実施形態によるFCC触媒成分としては、種々のゼオライト、例えば、限定されないが、構造BEA、MSE、-SVR、FAU、MOR、CON、SOF、MFI、IMF、FER、MWW、MTT、TON、EUO、MRE、NAT、CHA、EMT又はそれらの2つ以上の混合物を有するゼオライトから選択されるゼオライトが挙げられ得る。特定の実施形態では、ゼオライトは、ゼオライトX、Y-ゼオライト、ZSM-5、ベータゼオライト、ZSM-11、ZSM-14、ZSM-17、ZSM-18、ZSM-20、ZSM-31、ZSM-34、ZSM-41、ZSM-46、モルデナイト、チャバザイト又はそれらの2つ以上の混合物から選択される。一実施形態では、ゼオライトは、ゼオライトYである。
【0038】
いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.10Å~約24.80Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.30Å~約24.75Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.50Å~約24.70Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.50Å~約24.80Åの単位格子パラメータを有する。限定的に解釈されるものではないが、比較的大きい有効単位格子サイズは、より多くの液化石油ガス(LPG)をもたらすと考えられる。LPGは、FCC市場でも一層大きい関心を集めている。
【0039】
いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.30Å~約24.75Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.30Å~約24.74Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.30Å~約24.73Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.30Å~約24.72Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.30Å~約24.71Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.50Å~約24.75Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.50Å~約24.74Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.50Å~約24.73Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.50Å~約24.72Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.50Å~約24.71Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.60Å~約24.75Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.60Å~約24.74Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.60Å~約24.73Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.60Å~約24.72Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.60Å~約24.71Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.65Å~約24.75Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.65Å~約24.74Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.65Å~約24.73Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.65Å~約24.72Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.65Å~約24.71Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.45Å~約24.75Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.45Å~約24.74Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.45Å~約24.73Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.45Å~約24.72Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.45Å~約24.71Åの単位格子パラメータを有する。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、約24.10Å、24.11Å、24.12Å、24.13Å、24.14Å、24.15Å、24.16Å、24.17Å、24.18Å、24.19Å、24.20Å、24.21Å、24.22Å、24.23Å、24.24Å、24.25Å、24.26Å、24.27Å、24.28Å、24.29Å、24.30Å、24.31Å、24.32Å、24.33Å、24.34Å、24.35Å、24.36Å、24.37Å、24.38Å、24.39Å、24.40Å、24.41Å、24.42Å、24.43Å、24.44Å、24.45Å、24.46Å、24.47Å、24.48Å、24.49Å、24.50Å、24.51Å、24.52Å、24.53Å、24.54Å、24.55Å、24.56Å、24.57Å、24.58Å、24.59Å、24.60Å、24.61Å、24.62Å、24.63Å、24.64Å、24.65Å、24.66Å、24.67Å、24.68Å、24.69Å、24.70Å、24.71Å、24.72Å、24.73Å、24.74Å、24.75Å、24.76Å、24.77Å、24.78Å、24.79Å又は24.80Åの単位格子パラメータを有する。
【0040】
上記の単位格子サイズは、ゼオライトYなどのFAUゼオライト構造を有するゼオライトに特に適切であり得る。当業者に理解されるように、本明細書では、上記されたゼオライト構造のいくつかは、本明細書に記載されるものと異なる単位格子サイズを有し得る。
【0041】
本明細書で考案されるFCC触媒成分中のアルミナ含有微小球としては、ベーマイト由来のアルミナ、擬似ベーマイト由来のアルミナ、フラッシュ焼成ギブサイト由来のアルミナ、ベーマイト、擬似ベーマイト、フラッシュ焼成ギブサイト、焼成されたフラッシュ焼成ギブサイト、シリカドープアルミナ、ガンマ-アルミナ(ガンマ-アルミナA又はBを含む)、アルミナC又はD、χ-アルミナ、δ-アルミナ、θ-アルミナ、κ-アルミナ、α-アルミナ、それらの希土類変性変形物、それらのアルカリ土類金属変性変形物、それらのビスマス変性変形物又はそれらの2つ以上の混合物の1つ又は複数が含まれ得る。特定の実施形態では、アルミナ粒子としては、ベーマイト由来のアルミナ、擬似ベーマイト由来のアルミナ、フラッシュ焼成ギブサイト由来のアルミナ、フラッシュ焼成ギブサイト、焼成されたフラッシュ焼成ギブサイト、ガンマ-アルミナ、それらの希土類変性変形物、それらのアルカリ土類金属変性変形物又はそれらの2つ以上の混合物の1つ又は複数が含まれる。一実施形態では、アルミナ粒子は、ベーマイト及び/又は擬似ベーマイトの焼成に由来し、ランタン前駆体で変性されたランタンドープガンマアルミナを含む。一実施形態では、アルミナ粒子は、カイアルミナ、ガンマ-アルミナに類似したアルミナ又はそれらの組み合わせを含み得る焼成されたフラッシュ焼成ギブサイトを含む。一実施形態では、アルミナ粒子は、ガンマ-アルミナ及びペプタイズドベーマイトを含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、「フラッシュ焼成ギブサイト」とは、例えば、約500℃~800℃の温度で高温カラムを通過させて、蒸気と実質的に無水のアルミナとの混合物を形成するギブサイトを指す。前記実質的に無水のアルミナは、フラッシュ焼成ギブサイトと呼ばれる。「焼成されたフラッシュ焼成ギブサイト」という用語は、例えば、約700℃~約900℃若しくは約750℃~約850℃又は約800℃でさらなる焼成に供されたフラッシュ焼成ギブサイトを指す。
【0043】
特定の実施形態では、1つ又は複数の上記の純アルミナ粒子は、FCC触媒成分の非ゼオライトマトリックスの全体を形成する。一実施形態では、FCC触媒成分は、粘土を含まないか又は実質的に含まない(すなわちFCC触媒成分の総重量に基づいて約15重量%未満、約12重量%未満、約10重量%未満、約8重量%未満、約5重量%未満、約3重量%未満、約1重量%未満又は0重量%の粘土を有する)。限定的に解釈されるものではないが、アルミナマトリックス(すなわち上記の純アルミナ粒子の1つ又は複数を含む非ゼオライトマトリックス)は、コークス最小化において粘土マトリックスよりも優れていると考えられる。
【0044】
コークスの最小化において、粘土マトリックスがアルミナをベースとするマトリックスより劣る理由については、いくつかの理由がある。
【0045】
1つの理由は、限定的に解釈されるものではないが、スピネルが比較的高レベルの強ルイス酸部位を有し、炭化水素断片と強固に結合し得ることであろう。脱着せず、再生器に到達しない炭化水素がコークスである。純アルミナマトリックスは、特定の実施形態では、約70μmol/g未満、約65μmol/g未満、約60μmol/g未満、約55μmol/g未満、約50μmol/g未満、約45μmol/g未満、約40μmol/g未満又はその中の任意の部分範囲若しくは単一のルイス酸密度値の強ルイス酸部位密度を有し得る。
【0046】
純アルミナ微小球は、約40μm~約150μm、約60μm~約120μm又は約70μm~約90μmの平均粒径を有し得る。一実施形態では、純アルミナ粒子は、粉砕(例えば、限定されないが、5~10μmアルミナ粒子のD90までのチョップ粉砕、ハンマー粉砕又はボール粉砕などの乾式粉砕)、スラリー化及び/又は噴霧乾燥の1つ又は複数を経て、約40μm~約150μm、約60μm~約120μm又は約70μm~約90μmの平均粒径に到達する。
【0047】
いくつかの実施形態では、アルミナは、FCC触媒成分中、FCC触媒成分の総重量に基づいて約50重量%、約55重量%、約60重量%、約65重量%、約70重量%若しくは約75重量%のいずれか~約80重量%、約85重量%、約90重量%若しくは約95重量%のいずれかの範囲又はその中の任意の部分範囲若しくは単一濃度値の量で存在する。
【0048】
本明細書に記載されるFCC触媒成分中の純アルミナ及び/又はゼオライトのいずれも、限定されないが、希土類元素、ビスマス、アルカリ土類元素、その酸化物又はそれらの2つ以上の混合物からなどの非アルミナ成分によってさらに変性され得る。いくつかの実施形態では、非アルミナ成分は、FCC触媒成分の総重量に基づいて約0.1重量%、約0.5重量%、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%若しくは約5重量%のいずれか~約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%若しくは約18重量%のいずれかの範囲又はその中の任意の部分範囲若しくは単一の濃度値の量でFCC触媒成分中に存在する。特定の実施形態では、非アルミナ成分は、FCC触媒成分の総重量に基づいて約0.1重量%~約18重量%、約3重量%~約18重量%、約5重量%~約18重量%又は約10重量%~約17重量%の範囲又はその中の任意の部分範囲若しくは単一の濃度値の量でFCC触媒成分中に存在する。
【0049】
一実施形態では、本明細書に記載のFCC触媒成分中のアルミナ及び/又はゼオライトは、希土類元素で変性される。適切な希土類元素としては、限定されないが、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン又はそれらの2つ以上の混合物が挙げられる。一実施形態では、本明細書に記載のFCC触媒成分中のアルミナ粒子及び/又はゼオライトは、セリウム、例えばFCC触媒成分の総重量に基づいて例えば約0.1重量%~約15重量%、約3重量%~約15重量%、約5重量%~約15重量%又は約10重量%~約15重量%のセリウムで変性される。一実施形態では、本明細書に記載のFCC触媒成分中の純アルミナ粒子及び/又はゼオライトは、ランタン、FCC触媒成分の総重量に基づいて例えば約0.1重量%~約18重量%、約1重量%~約18重量%、約5重量%~約18重量%又は約10重量%~約17重量%のランタンオキシドで変性される。一実施形態では、本明細書に記載のFCC触媒成分中のアルミナ粒子及び/又はゼオライトは、ランタン及びセリウムで変性される。
【0050】
特定の実施形態では、アルミナマトリックスをランタンで変性することで、ライトサイクルオイル(LCO)へのボトム転化が有益に促進され得、本明細書で考案されるFCC触媒成分によって示されるLCO収率の向上に寄与し得る。
【0051】
一実施形態では、本明細書に記載のFCC触媒成分中の純アルミナ及び/又はゼオライトは、アルカリ土類元素で変性される。適切なアルカリ土類元素としては、限定されないが、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム又はそれらの2つ以上の混合物が挙げられる。一実施形態では、本明細書に記載のFCC触媒成分中のアルミナ粒子及び/又はゼオライトは、ストロンチウムで変性される。
【0052】
特定の実施形態では、本開示は、アルミナ微小球上においてゼオライトをその場で結晶化させることにより、本明細書に記載の約1.3未満のZ/M比を有するFCC触媒成分のいずれかを調製する方法に関する。特定の実施形態では、Z/M比は、約1.2未満、約1.1未満、約1.0未満、約0.9未満、約0.8未満又は約0.7未満であり得る。特定の実施形態では、Z/M比は、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5若しくは約0.6のいずれか~約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2若しくは約1.3のいずれかの範囲又はその中の任意の部分範囲若しくは単一のZ/M値であり得る。本明細書で上記されたゼオライトのいずれも、本明細書で上記されたアルミナ微小球のいずれかの上で結晶化させ得る。
【0053】
特定の実施形態では、FCC触媒成分のいずれかを調製する方法は、結晶化前にアルミナ含有微小球を調製することをさらに含み得る。一実施形態では、アルミナ微小球の調製は、アルミナ前駆体(例えば、ベーマイト又は擬似ベーマイトから製造された沈殿アルミナ)を粉砕すること、粉砕されたアルミナ前駆体及び任意選択的なケイ酸ナトリウムゾルのスラリーを製造することと、約40μm~約150μm、約60μm~約120μm又は約70μm~約90μmの平均粒径に到達するように、スラリー化及び粉砕されたアルミナ前駆体及び任意選択的なケイ酸ナトリウムゾルを噴霧乾燥することとを含む。
【0054】
特定の実施形態では、アルミナ微小球の調製は、アルミナを希土類元素、ビスマス又はアルカリ土類元素の1つ又は複数で変性することをさらに含み得る。一実施形態では、アルミナ微小球の調製は、純アルミナを希土類元素で変性することを含む。適切な希土類元素としては、限定されないが、イッテルビウム、ガドリニウム、セリウム、ランタン又はそれらの2つ以上の混合物が挙げられる。一実施形態では、アルミナ微小球の調製は、アルミナをセリウムで変性することを含む。アルミナをセリウムで変性することは、硝酸セリウム又は酢酸セリウムなどのセリウム前駆体でアルミナに含浸させることを含み得る。一実施形態では、アルミナ微小球の調製は、アルミナをランタンで変性することを含む。アルミナをランタンで変性することは、硝酸ランタン又は酢酸ランタンなどのランタン前駆体でアルミナを含浸させることを含み得る。
【0055】
特定の実施形態では、アルミナ微小球の調製は、アルミナをアルカリ土類元素で変性することをさらに含み得る。適切なアルカリ土類元素としては、限定されないが、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム又はそれらの2つ以上の混合物が挙げられる。一実施形態では、アルミナ微小球の調製は、アルミナをストロンチウムで変性することを含む。アルミナをストロンチウムで変性することは、硝酸ストロンチウム又は酢酸ストロンチウムなどのストロンチウム前駆体でアルミナを含浸させることを含み得る。
【0056】
特定の実施形態では、アルミナ微小球の調製は、アルミナ微小球を焼成すること(例えば、約700℃~約900℃若しくは約750℃~約850℃又は約800℃)をさらに含み得る。
【0057】
本明細書に記載のFCC触媒成分を調製する方法における結晶化ステップのために、本明細書に記載のアルミナ含有微小球のいずれかをアルミニウム源、ケイ素源、水及び任意選択的に水酸化ナトリウムと混合して、アルカリ性スラリーを得ることができる。シード(その教示が参照によりその全体が組み込まれる米国特許第4,631,262号明細書に記載されているものなど)を前記スラリーに添加し得る。その後、アルカリ性スラリーを、所望の重量%のゼオライトを結晶化させるのに十分な温度まで且つ時間にわたって加熱して、ゼオライト微小球を形成することができる。ゼオライト(例えば、ゼオライトY)の相組成は、FCC触媒成分の総重量に基づいて約5重量%、約6重量%、約7重量%若しくは約8重量%のいずれか~約15重量%、約17重量%、約20重量%、約25重量%若しくは約30重量%のいずれかの範囲又はその中の任意の部分範囲若しくは単一相組成であり得る。
【0058】
ゼオライト結晶化のための適切な犠牲アルミニウム源としては、限定されないが、メタカオリン、アルミン酸ナトリウム又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
特定の実施形態では、本明細書に記載のFCC触媒成分を調製する方法は、犠牲アルミニウム源粒子の調製も含む。一実施形態では、アルミニウム源粒子は、スピネルを形成することなくカオリナイトをメタカオリンに変換するのに十分な温度において且つ時間にわたってカオリナイトを焼成することから得られる。一実施形態では、アルミニウム源は、メタカオリンである。
【0060】
カオリナイト(及び得られたメタカオリン)には、1.0のSi/Alの原子比でアルミニウム及びケイ素が含まれるが、メタカオリンのみでは、1.0を超えるSi/Al比で特定のゼオライトを結晶化させるには不十分な量のケイ素が提供され得る。例えば、ゼオライトYは2.5のSi/Alの原子比を有し、ゼオライトYの成長を促進するために、メタカオリンに加えて第2のケイ素源が必要となる。
【0061】
ゼオライト結晶化のための適切な犠牲ケイ素源は、限定されないが、ケイ酸ナトリウム、石英、シリカゲル、シリカゾル、ケイ酸ナトリウムゾル及びそれらの組み合わせを含み得る。一実施形態では、使用されるケイ素源は、ケイ酸ナトリウムゾル(例えば、固体のケイ酸ナトリウムを水に溶解することによって作製され得る、ケイ酸ナトリウムを含有するほぼ水)を含む。一実施形態では、使用されるケイ素源は、シリカゲルを含む。一実施形態では、使用されるケイ素源は、石英を含む。
【0062】
Y-ゼオライト結晶化のための犠牲ケイ素源としてケイ酸ナトリウムゾルを使用する場合、それは、ゼオライト結晶化又はゼオライト成長反応の開始時に一度に添加され得る。限定されないが、シリカゲル又は石英などの他の犠牲ケイ素源は、ゼオライト結晶化反応にナトリウムを導入せず、2つの成分(ナトリウム及びシリカ)を別々に添加することができるため、ゼオライト結晶化において存在するナトリウム及びシリカの量を調整する際により柔軟性を与えるために使用され得る。対照的に、ケイ酸ナトリウム(又はケイ酸ナトリウムゾル)は、すでにその中にナトリウムを含み、ゼオライト結晶化中に存在するナトリウム及びシリカの量を調整する際の柔軟性が低い。これは、ケイ酸ナトリウム(又はケイ酸ナトリウムゾル)中のナトリウム対シリカ比が高く、ゼオライトの急速な成長に寄与し得るため、いくつかの課題を提起するか又は追加のプロセスステップをもたらし得る。ゼオライトの急速な成長は、結晶化したゼオライトの水熱安定性に悪影響を及ぼす可能性があり、且つ/又はあまり好ましくないゼオライト相(GIS又はGMEゼオライト構造など)の成長に寄与するため、あまり好ましくない場合がある。
【0063】
本明細書に記載のFCC触媒成分の調製方法における結晶化ステップ後、特定の実施形態では、本方法は、アルカリ性スラリーからゼオライト微小球を単離又は分離することをさらに含む。ゼオライト微小球の単離又は分離は、濾過などの一般的に使用される方法によって実施され得る。特定の実施形態では、ゼオライト微小球は、残留する結晶化液を除去するために、水又は他の適切な液体で洗浄されるか又はそれと接触され得る。
【0064】
特定の実施形態では、本明細書に記載のFCC触媒成分を調製する方法は、前記FCC触媒成分中のナトリウム含有量を減少させ、且つ/又はナトリウムイオンを他のより好ましいイオンで置換するために、ゼオライトをイオン交換すること(例えば、Y-ゼオライトをイオン交換すること)をさらに含む。例えば、一実施形態では、Yゼオライトは、FCC触媒成分のナトリウム含有量を、FCC触媒成分の総重量に基づいて約0.7重量%未満、約0.5重量%未満又は約0.3重量%未満のNaOまで減少させるためにイオン交換される。イオン交換は、1回、2回、3回、4回、5回、6回又は目標とするナトリウム含有量に達するまでに必要な回数で実行され得る。
【0065】
特定の実施形態では、ナトリウムイオンを、例えばアンモニウムカチオン、希土類金属又はそれらの組み合わせをイオン交換することによって他のイオンで置換して、より好ましいカチオンで変性されたゼオライトを含むFCC触媒成分を得ることができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、本方法は、硝酸アンモニウム溶液と混合する前に、ナトリウム型のゼオライトを接触させる前又は後にゼオライト微小球材料を硝酸アンモニウム溶液と混合することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、硝酸アンモニウム溶液との混合は、酸性pH条件で実行される。いくつかの実施形態では、硝酸アンモニウム溶液との混合は、約3~約3.5のpHで実行される。いくつかの実施形態では、硝酸アンモニウム溶液との混合は、室温より高い温度で実行される。いくつかの実施形態では、硝酸アンモニウム溶液との混合は、その増分を含めて、少なくとも約80℃~約100℃の温度で実行される。特定の実施形態では、ゼオライト微小球材料をアンモニウムカチオンでイオン交換することにより、ゼオライト微小球材料のナトリウム含有量は、FCC触媒成分の総重量に基づいて約1重量%のNaOから約2重量%のNaOまで減少する。
【0067】
いくつかの実施形態では、アンモニウム交換された微小球材料は、希土類イオン溶液でさらにイオン交換される。いくつかの実施形態では、希土類イオンは、イッテルビウム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、セリウム、ランタンの硝酸塩又は任意の2つ以上のそのような硝酸塩の混合物である。いくつかの実施形態では、希土類イオンは、ランタニド又はイットリウムから誘導される。いくつかの実施形態では、微小球を、硝酸ランタン又は硝酸イットリウムの溶液と接触させる。特定の実施形態では、微小球を硝酸ランタンの溶液と接触させる。FCC触媒成分の総重量に基づいて約5重量%~約18重量%、約10重量%~約17重量%又は約10重量%~約15重量%の範囲の希土類濃度が考案される。特定の実施形態では、希土類酸化物として触媒に添加される希土類の量は、FCC触媒成分の総重量に基づいて約1重量%~約5重量%又は約2重量%~約3重量%の希土類酸化物(REO)の範囲となる。一実施形態では、FCC触媒成分は、FCC触媒成分の総重量に基づいて約5重量%~約18重量%、約10重量%~約17重量%又は約10重量%~約15重量%の範囲の濃度でランタナを含む。
【0068】
触媒材料のランタナ含有量は、化学分析(例えば、ICP化学分析)によって推定することができる。本明細書で開示される新鮮な(すなわち水蒸気処理されていない)FCC触媒材料の場合、実質的に全てのランタナ(すなわち実験誤差内で100%)がゼオライト材料中に見出される。
【0069】
特定の実施形態では、本方法は、ゼオライト微小球を焼成することをさらに含む。焼成は、少なくとも約2時間実行され得る。特定の実施形態では、焼成は、約500℃~約750℃の温度で実行される。特定の実施形態では、焼成は、約25%v/vの蒸気の存在下で実行され得る。
【0070】
特定の実施形態では、焼成後、FCC触媒成分に追加の硝酸アンモニウム溶液イオン交換を実行し、FCC触媒成分中のナトリウム含有量をさらに減少させ得る。
【0071】
1つ又は複数の実施形態では、イオン交換ステップは、得られるFCC触媒成分が、FCC触媒成分の総重量に基づいて約0.2重量%未満のNaO(例えば、約0.02重量%のNaO~約0.2重量%のNaO)を含むように実行される。
【0072】
イオン交換後、微小球を再度焼成し得る(例えば、約500℃から約750℃の温度で)。
【0073】
特定の実施形態では、本明細書に記載のFCC触媒成分を調製する方法は、FCC触媒成分を水蒸気処理することをさらに含む。いくつかの実施形態では、水蒸気処理は、少なくとも約700℃(例えば、約750℃又は約800℃)の温度で実行される。いくつかの実施形態では、水蒸気処理は、少なくとも約4時間実行される。いくつかの実施形態では、水蒸気処理は、約1時間~約24時間実行される。
【0074】
FCC触媒中のゼオライト材料の結晶サイズ及び分布は、製造方法、材料などによって大きく異なる。本開示のFCC触媒材料は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて結晶サイズに関して分析された。
【0075】
本明細書に開示される触媒のゼオライト結晶サイズは、SEMによっても特徴付けることができる。SEMによって測定される結晶サイズは、1000Å~3000Åの範囲である。SEM測定により、数重量平均結晶サイズが得られる。
【0076】
本明細書に開示されるゼオライト触媒材料のSEM分析は、もう1つのはっきりとした特徴:相互成長結晶が少ないか、ほとんどない、孤立結晶の存在も示す。理論に束縛されるものではないが、マトリックス材料上に成長した孤立結晶は、高度に相互成長した触媒材料の場合よりも、マトリックス表面への供給原料の接近がより多くなると考えられる。アルミナマトリックス材料は、原料中の大きい分子の分解を促進し、利用可能なマトリックス表面積の増加は、本明細書に開示された触媒材料のより低いコークス/より高い転化に寄与すると考えられる。
【0077】
使用方法
特定の態様では、本開示は、本開示によって考案されるFCC触媒成分のいずれか(例えば、アルミナ粒子上においてその場で結晶化されたゼオライトを含み、約1.0以下の失活触媒のZ/M比触媒を有するもの)又は本明細書に記載されるFCC触媒組成物のいずれかと原料を接触させることにより、炭化水素原料を分解する方法に関する。
【0078】
特定の実施形態では、本明細書に記載される炭化水素原料を分解する方法は、改善されたボトムアップグレード性能をもたらす。FCC触媒成分の非ゼオライトマトリックスを、従来の粘土マトリックスではなく、アルミナから形成することは、ボトム転化を改善すると考えられる。このように、特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、炭化水素原料を、アルミナの少なくとも一部の代わりに粘土を含む、非ゼオライトマトリックスを含むFCC触媒成分と接触させることによって生じるボトム収率よりも低いボトム収率をもたらす(非ゼオライトマトリックス材料を除いて他には同一である)。
【0079】
特定の実施形態では、本明細書に記載される炭化水素原料を分解する方法は、コークス収率の低下をもたらす。FCC触媒成分の非ゼオライトマトリックスを、従来の粘土マトリックスではなく、アルミナ粒子から形成することは、より少ないコークスをもたらすと考えられる。このように、特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、炭化水素原料を、純アルミナの少なくとも一部の代わりに粘土を含む、非ゼオライトマトリックスを含むFCC触媒成分と接触させることによって生じるコークス収率よりも低いコークス収率をもたらす(非ゼオライトマトリックス材料を除いて他には同一である)。
【0080】
特定の実施形態では、本明細書に記載される炭化水素原料を分解する方法は、ライトサイクルオイル(LCO)収率の向上をもたらす。例えば、LCO収率は、Z/M比の関数であり、所与のマトリックス技術について、Z/Mが減少するにつれて、LCO収率が増加すると考えられる。このように、特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、炭化水素原料を約1.0以上の水蒸気失活触媒のZ/M比を有するFCC触媒成分と接触させた結果として得られるLCO収率よりも大きいLCO収率をもたらす(Z/M比を除いて他には同一である)。
【0081】
特定の実施形態では、本明細書に記載される炭化水素原料を分解する方法は、液化石油ガス(LPG)収率の向上をもたらす。例えば、比較的大きい有効単位格子パラメータは、LPG収率の増加をもたらすと考えられる。そのようなものとして、特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、炭化水素原料を、24.3Å未満である単位格子サイズを有するFCC触媒成分と接触させることによって生じるLPG収率よりも高いLPG収率をもたらす(単位格子サイズの寸法を除いて他には同一である)。
【実施例
【0082】
以下の実施例は、本開示の理解を支援するために記載され、本明細書に記載され、特許請求される本発明を特に限定するものとして解釈されるべきではない。当業者の範囲内であろう現在知られているか又は後に開発される全ての均等物の置換を含む、本発明のそのような変形形態及び配合物における変更又は実験設計における小さい変更は、本明細書に組み込まれる本発明の範囲内に入ると考えられるべきである。
【0083】
実施例1:希土類ドープガンマアルミナA微小球上でのY-ゼオライトのその場結晶化
Yゼオライトを、主にアルミナの微小球上においてその場で結晶化させた。このアルミナは希土類ドープガンマアルミナAであった。4重量%の希土類ドープガンマアルミナAを、約5μmのD90になるまで粉砕した。40%固体スラリーの形態の94部の粉砕したガンマアルミナAを、ケイ酸ナトリウム溶液の形態の6部のSiOと混合した。この混合物を噴霧乾燥して、約80μmの平均粒径を有する微小球とした。この微小球を1500°Fで2時間焼成した。
【0084】
アルミナ微小球をケイ酸ナトリウム溶液、ゼオライト-Yシード、水及び犠牲メタカオリン微小球と組み合わせた。メタカオリン微小球は、噴霧乾燥したカオリン粘土微小球を、カオリンをメタカオリンに変換するには十分であるが、スピネルに変換するには不十分な温度まで且つ時間にわたって焼成することによって調製した。混合物を反応器に加え、結晶化のために190°Fの温度まで加熱した。撹拌しながら結晶化温度を10~14時間維持した。次いで、得られたゼオライト微小球を濾過し、洗浄してナトリウムイオン型Y-ゼオライトFCC触媒(NaY型)を製造した。
【0085】
その後、ゼオライト微小球にイオン交換を行い、ナトリウムイオンをランタンイオンに置換した。次いで、イオン交換された微小球を1450°Fで24時間にわたって水蒸気処理した。得られた触媒を「触媒A」と命名した。触媒Aの特定特性の特徴評価は、NaYの段階、イオン交換後及び水蒸気失活後に実施した。触媒Aの特性を以下の表1に示す。
【0086】
実施例2:ガンマアルミナB上でのY-ゼオライトのその場結晶化
希土類ドーパントを含まないガンマアルミナBを用いて噴霧乾燥したミクロスフェア上においてYゼオライトをその場で結晶化させた。ガンマアルミナBは、約5μmのD90になるまで粉砕した。40%固体スラリーの形態の94部の粉砕したガンマアルミナBを、ケイ酸ナトリウム溶液の形態の6部のSiOと混合した。この混合物を噴霧乾燥して、約80μmの平均粒径を有する微小球とした。この微小球を1500°Fで2時間焼成した。
【0087】
アルミナ微小球をケイ酸ナトリウム溶液、ゼオライト-Yシード、水、苛性物質及び犠牲メタカオリン微小球と組み合わせた。メタカオリン微小球は、噴霧乾燥したカオリン粘土微小球を、カオリンをメタカオリンに変換するには十分であるが、スピネルに変換するには不十分な温度まで且つ時間にわたって焼成することによって調製した。混合物を反応器に加え、結晶化のために190°Fの温度まで加熱した。撹拌しながら結晶化温度を10~14時間維持した。次いで、得られたゼオライト微小球を濾過し、洗浄してナトリウムイオン型Y-ゼオライトFCC触媒(NaY型)を製造した。
【0088】
その後、ゼオライト微小球にイオン交換を行い、ナトリウムイオンをランタンイオンに置換した。次いで、イオン交換された微小球を1450°Fで24時間にわたって水蒸気処理した。得られた触媒を「触媒B」と命名した。触媒Bの特定特性の特徴評価は、NaYの段階、イオン交換後及び水蒸気失活後に実施した。触媒Bの特性を以下の表1に示す。
【0089】
触媒Bは、25ガロン結晶化反応器中で15Kgの微小球Bを用いてもスケールアップされた。試料には、同一イオン交換及び水蒸気処理プロセスを行った。この試料の特性を以下の表2に要約する。
【0090】
実施例3:アルミナC及び粘土粒子上でのY-ゼオライトのその場結晶化
Yゼオライトを主にアルミナの微小球上においてその場で結晶化させた。このアルミナは、アルミナCであった。アルミナCを、約5μmのD90になるまで粉砕した。40%固体スラリーの形態の83部の粉砕したアルミナCを約60%固体スラリーの形態の11部の含水カオリン及びケイ酸ナトリウム溶液の形態の6部のSiOと混合した。この混合物を噴霧乾燥して、約80μmの平均粒径を有する微小球とした。この微小球を1500°Fで2時間焼成した。
【0091】
アルミナ及び粘土微小球をケイ酸ナトリウム溶液、ゼオライト-Yシード、水及び苛性物質と組み合わせた。混合物を反応器に加え、結晶化のために190°Fの温度まで加熱した。撹拌しながら結晶化温度を10~14時間維持した。次いで、得られたゼオライト微小球を濾過し、洗浄してナトリウムイオン型Y-ゼオライトFCC触媒(NaY型)を製造した。
【0092】
その後、ゼオライト微小球にイオン交換を行い、ナトリウムイオンをランタンイオンに置換した。次いで、イオン交換された微小球を1450°Fで24時間にわたって水蒸気処理した。得られた触媒を「触媒C」と命名した。触媒Cの特定特性の特徴評価は、NaYの段階、イオン交換後及び水蒸気失活後に実施した。触媒Cの特性を以下の表1に示す。
【0093】
触媒Cは、25ガロン結晶化反応器中で15Kgの微小球Cを用いてもスケールアップされた。試料には、同一イオン交換及び水蒸気処理プロセスを行った。この試料の特性を以下の表2に要約する。
【0094】
表2、表3及び図1は、参照触媒からのデータを含む。参照触媒は、市販品である。参照微小球は、25%の含水粘土、25%の2300°Fで焼成された粘土及び50%のアルミナ-Aを用いて噴霧乾燥された。その後、ゼオライト物質をその場で結晶化させ、従来法に従ってイオン交換を行った。
【0095】
表1は、実施例の触媒A、B及びCの特性の比較を示す。表面積は、m/gで、単位格子サイズ(UCS)は、Åで、組成は、重量%で示される。表2は、スケールアップした試料及び参照材料の特性の比較を示し、単位は表1と同一である。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
図1は、スケールアップされた触媒B、スケールアップされた触媒C及び参照材料について、循環ライザーユニット(CRU)で測定した性能データを示す。図1に示すように、所定のコークス生成量において、触媒B及び触媒Cは、参照材料よりも多くの原料(ボトム)を生成物に転化している。所定のボトム転化レベルにおいて、触媒B及びCは、参照材料よりも少ないコークスを生成する。CRU試験は、水蒸気処理後に実施された。触媒Bでは、参照材料と比較して、ボトム転化率が一定の場合にコークスの選択性が22%向上し、コークスが一定の場合にボトムのアップグレードが20%向上した。触媒Cでは、参照材料と比較して、ボトム転化率が一定の場合にコークスの選択性が11%向上し、コークスが一定の場合にボトムのアップグレードが8%向上した。
【0099】
図2は、触媒B及び参照材料のSEM画像である(スケールバーは、500nmである)。触媒Bでは、ゼオライト結晶がマトリックス材料上で成長し、ゼオライト結晶間に遊離したマトリックス材が明瞭に観察される。参照触媒では、触媒Bの良好に分散した結晶ではなく、高度の結晶相互成長がある。触媒Bの結晶はまた、参照材料の結晶より小さい。
【0100】
表3は、触媒B、触媒C及び参照材料について、流動接触分解プロセスで生成される様々な生成物の量を示す。試験は、80%のガソリン転化率で実施した。触媒Bは、参照触媒と比較してLPG、ガソリン収率、LCO(ライトサイクルオイル)、LOC/HCO(ライトサイクルオイル/ヘビーサイクルオイル)比及びコークス選択性が改善された。
【0101】
【表3】
【0102】
前述の説明では、本発明の詳細な理解を提供するために、特定の材料、寸法、プロセスパラメータ等の多数の具体的な詳細が記載されている。特定の特徴、構造、材料又は特性は、1つ又は複数の実施形態では任意の適切な様式で組み合わされ得る。「例」又は「例示的」という用語は、本明細書では、例、実例又は例示として役立つことを意味するために用いられる。「例」又は「例示的」として本明細書に記載される任意の態様又は設計は、他の態様又は設計よりも好ましいか又は有利であると必ずしも解釈されない。むしろ、「例」又は「例示的」という語の使用は、具体的な様式で概念を提示することが意図される。本出願で用いる場合、「又は」という用語は、排他的な「又は」よりもむしろ包括的な「又は」を意味することが意図される。すなわち、特に明記しない限り又は文脈から明らかでない限り、「Xは、A又はBを含む」は、自然な包含的配列のいずれかを意味することが意図される。すなわち、XがAを含む;XがBを含む;又はXがA及びBの両方を含む場合、「Xは、A又はBを含む」は、前述の例のいずれの下でも満たされる。本明細書全体にわたり、「実施形態」、「特定の実施形態」又は「一実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたって様々な箇所での語句「実施形態」、「特定の実施形態」又は「一実施形態」の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及するわけではない。
【0103】
本開示は、その特定の例示的な実施形態に関して記載されてきた。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味よりもむしろ例示的な意味で考えられるべきである。本明細書で示され、説明されるものに加えて、本開示の様々な変更形態が当業者に明らかになり、添付の請求項の範囲内に入ることが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】