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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】分光計装置の較正方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/06 20060101AFI20241010BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G01J3/06
G01J3/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523635
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2022078903
(87)【国際公開番号】W WO2023066896
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】21203363.3
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517267802
【氏名又は名称】トリナミクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ロヴリンツィチ,ロベルト
【テーマコード(参考)】
2G020
【Fターム(参考)】
2G020CB31
2G020CC22
2G020CC28
2G020CC55
2G020CC63
2G020CD06
2G020CD35
2G020CD38
2G020CD39
(57)【要約】
分光計装置(114)を較正するための方法を開示する。分光計装置(114)は少なくとも1つの検出器装置(112)を備え、該検出器装置が、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学要素(116)を備え、且つ複数の感光要素(122)をさらに備え、各感光要素(124)が、構成波長成分の1つの少なくとも一部分を受光し、そして構成波長成分それぞれの少なくとも1つの部分によるそれぞれの感光要素(124)の照明に応じてそれぞれの検出器信号を生成するように構成される。該方法は、以下のステップ:
a) 少なくとも1つの広帯域光源(128)を使用し、少なくとも1つの光干渉計(130)を介して分光計装置(114)、具体的には検出器装置(112)を照明するステップ、
b) 複数の感光要素(122)について、具体的には感光要素(124)の各々について、ステップa)における光干渉計(130)を介した照明に応じた複数の検出器信号を決定するステップ、および
c) 複数の検出器信号から較正情報の少なくとも1つの項目を決定するステップ
を含む。
さらに、分光計装置(114)を較正するためのシステム(110)、本方法を実行するためのコンピュータプログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光計装置(114)を較正するための方法であって、
前記分光計装置(114)が少なくとも1つの検出器装置(112)を備え、該検出器装置が、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学要素(116)を備え、且つ複数の感光要素(122)をさらに備え、各感光要素(124)が、前記構成波長成分の1つの少なくとも一部分を受光し、そして前記構成波長成分それぞれの少なくとも1つの部分によるそれぞれの前記感光要素(124)の照明に応じてそれぞれの検出器信号を生成するように構成され、
以下のステップ:
a) 少なくとも1つの広帯域光源(128)を使用し、少なくとも1つの光干渉計(130)を介して前記分光計装置(114)を照明するステップ、
b) 前記複数の感光要素(122)について、ステップa)における前記光干渉計(130)を介した照明に応じた複数の検出器信号を決定するステップ、および
c) 前記複数の検出器信号から較正情報の少なくとも1つの項目を決定するステップ
を含み、
前記光干渉計(130)が、入射光を少なくとも2つの照明経路に分割するための少なくとも1つのビーム分割装置(136)を備え、前記光干渉計(130)が、第1の照明経路(140)における少なくとも1つの走査鏡(138)と、第2の照明経路(144)における少なくとも1つの静止鏡(142)とをさらに備え、
前記走査鏡(138)を前記第1の照明経路(140)に沿って移動させ、前記静止鏡(142)が静止したままであり、前記走査鏡(138)を段階的に1kHz以下のステップ周波数で移動させ、前記走査鏡(138)の前記ステップ周波数が前記検出器装置(112)の最大読み出し周波数よりも遅い
方法。
【請求項2】
前記光干渉計(130)が、マイケルソン干渉計(134)、ファブリー・ペロー干渉計、キューブコーナー干渉計からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)において、前記光干渉計(130)の透過周波数を所定のスペクトル範囲にわたって変化させ、そして、ステップb)において、前記光干渉計(130)の前記透過周波数に応じて前記複数の検出器信号を決定する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)において、前記較正情報の少なくとも1つの項目が、前記光干渉計(130)の前記透過周波数と、前記透過周波数に関連する前記複数の検出器信号の強度ピークを生成する前記複数の感光要素(122)のピクセル位置(166)および識別番号の少なくとも1つとを比較することによって決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)において、前記第1の照明経路(140)における前記走査鏡(138)の複数の位置について前記複数の検出器信号が決定され、前記走査鏡(138)の前記複数の位置が互いに異なり、ステップc)が、前記複数の検出器信号を前記走査鏡(138)の前記複数の位置と相関させることを含み、ステップc)において、前記走査鏡(138)の前記複数の位置に相関させた前記複数の検出器信号が、前記較正情報の少なくとも1つの項目を決定するために使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
ステップc)が、ステップb)において決定された前記複数の検出器信号を処理し、それによって複数の処理された検出器信号(162)を得ることを含み、ステップc)における前記較正情報の少なくとも1つの項目の決定が、前記複数の処理された検出器信号(162)から前記較正情報の少なくとも1つの項目を決定することを含み、前記複数の検出器信号の処理が、前記複数の検出器信号を変換することを含み、前記複数の検出器信号が、少なくとも1つのフーリエ変換を用いて変換される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記較正情報の項目が、波長較正情報の項目および迷光較正情報の項目の少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記波長較正情報の項目が、少なくとも1つの波長較正関数を含み、前記波長較正関数が、前記感光要素(124)のピクセル位置(166)および識別番号の少なくとも1つを波長位置に割り当てる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記迷光較正情報の項目が、少なくとも1つの信号分布関数を含み、前記信号分布関数が、特定の波長を有する入射光に対する前記複数の感光要素(122)の応答の分布を表す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
分光計装置(114)を較正するためのシステムであって、少なくとも1つの検出器装置(112)を備えた前記分光計装置(114)を備え、
前記検出器装置(112)が、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学要素(116)を備え、且つ複数の感光要素(122)をさらに備え、各感光要素(124)が、前記構成波長成分の1つの少なくとも一部分を受光し、そして前記構成波長成分それぞれの少なくとも1つの部分によるそれぞれの前記感光要素(124)の照明に応じてそれぞれの検出器信号を生成するように構成され、
さらに、少なくとも1つの広帯域光源(128)と少なくとも1つの光干渉計(130)とを備え、該広帯域光源および該光干渉計は、前記光干渉計(130)を介して前記広帯域光源(128)で前記分光計装置(114)を照明するように配置され、
さらに、少なくとも1つの評価ユニット(148)を備え、前記評価ユニット(148)が、請求項1または2に記載の方法を実行するように構成される
システム(110)。
【請求項11】
前記広帯域光源(128)が、白熱ランプ(132)、黒体放射体、電気フィラメント、発光ダイオードの少なくとも1つを備える、請求項10に記載のシステム(110)。
【請求項12】
前記光学要素(116)が、少なくとも1つの波長選択要素(118)を備え、前記波長選択要素(118)が、プリズム、回折格子、リニア可変フィルタ(120)、光学フィルタからなる群から選択される、請求項10に記載のシステム(110)。
【請求項13】
前記検出器装置(112)が、リニアアレイ(126)に配置された前記複数の感光要素(122)を備え、感光要素(124)の前記リニアアレイ(126)が、10~1000個の数の感光要素(124)を備える、請求項10に記載のシステム(110)。
【請求項14】
システムに関する請求項10に記載の前記システム(110)によってプログラムが実行されると、方法に関する請求項1に記載の分光計装置(114)を較正するための方法を前記システム(110)の前記評価ユニット(148)に実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光計装置を較正するための方法およびシステムに関する。さらに、本発明は、分光計装置を較正するための方法を実行するためのコンピュータプログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。本発明の方法および装置は、特に、赤外線スペクトル領域、具体的には近赤外線および中赤外線スペクトル領域での調査に使用される分光計装置を較正するために使用することができる。ただし、光学的調査に使用される他の分光計装置も実現可能である。
【背景技術】
【0002】
分光法は、研究、産業および顧客アプリケーションで広く使用されており、光学分析および/または品質管理などの複数のアプリケーションを可能にする。食品、農業、製薬、医療、ライフサイエンスおよびその他多くの分野で使用されている。測光、吸収、蛍光およびラマン分光分析など様々な方法が利用可能であり、サンプルの定性および/または定量分析ができる。これらの方法は、通常、特定の波長におけるサンプルの放射照度などのスペクトル情報を、分光装置の特定の物理的セクション、例えば検出器ピクセル、時間間隔などにマッピングすることを含む。
【0003】
一般に、分光法には、特に、様々な分光装置からの測定値を互いに比較する場合、アプリケーションの成功のために、無視できる変動を有する分光装置の信頼できる性能が必要である。具体的には、特定のサンプルのスペクトルデータは、同じタイプの様々な分光装置について少なくとも類似または同一でなければならない。
【0004】
分光装置においては、波長および/または迷光に関する較正は、一般に、信頼できる性能のために極めて重要である。具体的には、スペクトルのどの部分が或る特定の検出器要素によって検出されるかを選択するために、光学センサの一部として、バンドパスフィルタなどの回折格子および/またはフィルタを使用する分光装置もある。帯域幅および/または帯域遮断などの回折格子および/またはフィルタの詳細情報、および検出器要素とのその相互作用は、一般に、光学センサの応答を理解するために必要とされる場合がある。例えば、複数の検出器要素またはピクセルのリニアアレイ上にリニア可変フィルタを配置して光学センサを構築する場合、光学センサの波長較正が一般に必要となることがある。
【0005】
波長較正および/または迷光較正のための様々な方法が当該技術分野で知られている。例えば、光学センサを或る特定の波長の単色光で照明することができる。この照明光は、リニアアレイの或る特定の検出器要素によって検出される。単色光の波長は既知であるので、光学センサを較正することができる。さらに、このようにして光学センサのスペクトル分解能に関する情報が得られ得る。
【0006】
一例として、機器のスペクトル迷光から生じる測定誤差に対する分光放射計の応答を補正する方法が、Y.Zong,S.W.Brown,B.C.Johnson,K.R.Lykke and Y.Ohno:「Simple spectral stray light correction method for array spectroradiometers」、Applied Optics、第45巻、第6号、2006年に記載されている。機器のスペクトル範囲をカバーする一組の単色レーザー光源に対する機器の応答を特性化することにより、機器内のスペクトル迷光信号の大きさを定量化するスペクトル迷光信号分布マトリックスが得られる。これらのデータを使用することで、スペクトル迷光補正マトリックスが導出され、簡単なマトリックス乗算で機器の応答を補正することができる。
【0007】
US2011/032529A1は、波長較正標準として安定したモノリシック干渉計を使用した任意の分光計の較正を開示している。多色光源からの光はモノリシック干渉計に入力され、干渉計の光路差に基づく干渉を受ける。その結果、波長変調された出力ビームが参照分光計で分析され、参照データが生成される。干渉計からの出力ビームは、任意のスペクトル機器に供給することができる。任意のスペクトル機器の波長較正は、スペクトル機器出力と参照データとの比較に基づいて行われる。
【0008】
WO2003/085371A2は、リアルタイム高速高解像度ハイパースペクトルイメージングのための方法およびシステムを開示している。このシステムは、シーンまたはサンプル内の物体によって放射される電磁放射をコリメートするための電磁放射コリメート要素を備える。そのシステムは、コリメートされた物体放射ビームを受光して分割し、干渉画像を生成し、分割されたコリメートされた物体放射ビームの光路差の大きさを圧電的に決定して変更するための光干渉計を備える。光干渉計は、ビームスプリッタ、固定ミラー、可動ミラー、軸に沿った可動ミラーを変位させるための圧電モータ、軸に沿った可動ミラーの距離の変化を検知および測定するための距離変化フィードバックセンサ、圧電モータを作動および制御するための圧電モータコントローラ、および熱機械的に安定な光干渉計マウントを含む。システムはさらに、各光路差の干渉画像を集光するためのカメラ光学系、干渉画像を記録するための検出器、中央プログラミングおよび信号処理ユニット、およびディスプレイを備える。
【0009】
既知の方法と装置によって達成された利点にもかかわらず、いくつかの技術的課題が残っている。具体的には、各波長を個別に較正しなければならない場合がある。このような手順では、異なる波長の単色光が必要となるので、時間とコストがかかる可能性がある。あるいは、数波長のみを較正に使用し、その間の検出器要素の信号を補間することも考えられる。しかし、補間により、光学センサで得られる情報量が制限される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US2011/032529A1
【特許文献2】WO2003/085371A2
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Y.Zong,S.W.Brown,B.C.Johnson,K.R.Lykke and Y.Ohno:「Simple spectral stray light correction method for array spectroradiometers」、Applied Optics、第45巻、第6号、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、分光計装置の較正に関する上記の技術的課題に少なくとも部分的に対処する装置を提供することが望ましい。具体的には、較正情報の量を増加させると同時に時間的およびコスト的に効果的な較正を提供する、分光計装置を較正するための方法およびシステムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、独立請求項の特徴を備えた分光計装置を較正するための方法およびシステムによって、コンピュータプログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体によって、対処される。独立した態様で、または任意の組み合わせで実現され得る有利な実施形態は、従属請求項および明細書全体に記載されている。
【0014】
本明細書中で使用される「有する」、「備える」、または「含む」という用語、またはそれらの任意の文法上の変形は、非排他的な方法で使用される。よって、これらの用語は、これらの用語によって導入された特徴の他に、この文脈で説明されている実体にさらなる特徴が存在しない状況と、1つ以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を指すことができる。一例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」、および「AはBを含む」という表現は、B以外にAに他の要素が存在しない状況(つまり、Aは専らかつ排他的にBを構成する状況)と、Bに加えて、1つ以上のさらなる要素、例えば要素C、要素CとD、またはさらなる要素などが実体Aに存在する状況の双方を指すことができる。
【0015】
さらに、「少なくとも1つ」、「1つ以上」という用語、または、特徴または要素が1回以上存在し得ることを示す同様の表現は、典型的には、それぞれの特徴または要素を導入するときに1回だけ使用されることに留意されたい。ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素を参照するときに、「少なくとも1つ」または「1つ以上」という表現は、それぞれの特徴または要素が1回以上存在し得るという事実にもかかわらず、繰り返されない。
【0016】
さらに、本明細書で使用される「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」という用語、または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の特徴に関連して使用される。よってこれらの用語によって導入される特徴は、任意の特徴であり、いかなる意味でも特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、当業者であれば認識するように、代替的特徴を用いて実施することができる。同様に、「本発明の一実施形態では」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替実施形態に関するいかなる制限もなく、本発明の範囲に関するいかなる制限もなく、および、そのような方法で導入される特徴を本発明の他の任意のまたは非任意の特徴と組み合わせる可能性に関するいかなる制限もなく、任意の特徴であることが意図されている。
【0017】
本発明の第1の態様では、分光計装置の検出器などの分光計装置を較正する方法が開示される。
【0018】
本明細書で使用される「分光計装置」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのサンプルを光学的に分析することができ、それによってサンプルの少なくとも1つのスペクトル特性に関する情報の少なくとも1つの項目を生成することができる装置を指すことができる。具体的には、この用語は、スペクトルの対応する波長またはその区画、例えば波長間隔に関して信号強度を記録することができる装置を指すことができ、信号強度は、好ましくは、さらなる評価に使用できる電気信号として提供され得る。光学要素は、具体的には光学フィルタおよび/または分散要素など少なくとも1つの波長選択要素を備え、入射光を、検出器装置を用いることによりそれぞれの強度が決定される構成波長成分のスペクトルに分離するために使用できる。さらに、入射光を受光し、その入射光を光学要素に伝達するように設計することができるさらなる光学要素を使用してもよい。分光計装置は、一般に、反射モードで、および/または透過モードで操作可能であり得る。分光計装置の可能な実施形態については、以下にさらに詳細に概説する分光計装置の説明を参照されたい。
【0019】
本明細書で使用される「較正する」(このプロセスは「較正」とも呼ばれる)という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、分光計装置における測定の不正確さの決定、補正および調整の少なくとも1つのプロセスを指すことができる。よって、「較正情報の項目」ともしばしば呼ばれる較正プロセスの結果は、例えば、1つ以上の測定値を1つ以上の較正された値または「真の」値に変換するための、較正関数、較正係数、較正マトリックスなどの較正プロセスの結果に関する情報の少なくとも1つの項目であるか、またはそれを備え得る。測定の不正確さは、一例として、波長決定における不確かさ、および/または分光計装置の測定信号に対する固有および/または外来干渉から生じる可能性がある。よって分光計装置の較正は、波長較正、迷光較正、暗電流較正、スペクトル分解能のテストの少なくとも1つを備え得る。較正、具体的には、較正の各々は、少なくとも1つの2段階プロセスを含んでもよく、第1のステップにおいて、分光計装置の測定信号の既知の標準からの偏差に関する情報が決定され、第2のステップにおいて、この情報を使用して分光計装置の測定信号を補正および/または調整し、偏差を低減、最小化、および/または除去する。このように、較正は、較正情報の項目を、例えば分光計装置の測定信号および/または測定スペクトルに適用することを含み得る。分光計装置の較正は、較正された分光計装置を用いて実行される測定の精度を向上および/または維持できる。
【0020】
分光計装置の較正は、具体的には、分光計装置製造業者の製造業者の現場で実施できる。しかしながら較正は、例えば、使用する現場での分光計装置のセットアップ後、および/またはメンテナンス目的などの分野で実施してもよい。
【0021】
分光計装置は、少なくとも1つの検出器装置を備える。よって、具体的には、分光計装置を較正する際に、分光計装置が備える検出器装置の較正が必要であり得、そして実行され得る。「検出器装置」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、入射光を記録および/または監視することができる任意の装置または装置の組み合わせを指すことができる。検出器装置は、入射照明に応答でき、そして照明の強度を示す電気信号を生成するように構成されてもよい。検出器装置は、可視スペクトル範囲、紫外線スペクトル範囲、または赤外線スペクトル範囲、具体的には近赤外線スペクトル範囲(NIR)の1つ以上において感度を有し得る。検出器装置は、具体的には、少なくとも1つの光学センサ、例えば、光学半導体センサであってよく、またはそれを備え得る。一例として、特に、検出器装置が近赤外線スペクトル範囲などの赤外線スペクトル範囲で感度を有する場合、半導体センサは、Si、PbS、PbSe、InGaAs、および拡張InGaAsからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む少なくとも1つの半導体センサであってよく、またはそれを備え得る。一例として、検出器装置は、少なくとも1つのCCDまたはCMOS装置などの少なくとも1つの光検出器を備え得る。検出器装置は、具体的には、複数のピクセル化されたセンサを含む少なくとも1つの検出器アレイを備えてよく、ピクセル化されたセンサの各々は、構成波長成分の少なくとも1つの少なくとも一部分を検出するように構成される。
【0022】
検出器装置は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学要素を備える。本明細書で使用する「光学要素」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、光を波長依存的に透過、反射、偏向、または散乱させることのうちの1つ以上に好適な任意の要素または要素の組み合わせを指すことができる。光学要素はさらに、具体的には入射光を構成波長成分のスペクトルに分離した後、スペクトルを検出器装置上に透過させるように構成できる。具体的には、光学要素における入射光の波長依存的な透過、反射、偏向または散乱は、スペクトルの構成波長成分の空間的分離をもたらし、それ故、検出器装置上に直接または間接的に透過され得る。
【0023】
本明細書で使用される「光」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、通常は「光学スペクトル範囲」と呼ばれ、そして可視スペクトル範囲、紫外線スペクトル範囲、および赤外線スペクトル範囲の1つ以上を含む、電磁放射の区画を指すことができる。「紫外線スペクトル」または「UV」という用語は、一般に、1nm~380nm、好ましくは100nm~380nmの波長を有する電磁放射を指す。「可視」という用語は、一般に、380nm~760nmの波長を指す。「赤外線」または「IR」という用語は、一般に、760nm~1000μmの波長を指し、760nm~3μmの波長は、通常、「近赤外線」または「NIR」と呼ばれ、一方、3μ~15μmの波長は、通常、「中赤外線」または「MidIR」、および15μm~1000μmの波長は、「遠赤外線」または「FIR」と表示される。
【0024】
本明細書で使用される「スペクトル」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、分光計装置によって調査される光学スペクトル範囲の区画、具体的には、IRスペクトル範囲、特にNIRまたはMidIRスペクトル範囲の少なくとも1つを指すことができる。スペクトルの各部分は、信号波長と対応する信号強度とによって定義される光信号によって構成され得る。従って本明細書で使用する「構成波長成分」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、スペクトルの一部を形成する光信号を指すことができる。具体的には、光信号は、それぞれの波長または波長間隔に対応する信号強度を含み得る。
【0025】
検出器装置は複数の感光要素をさらに備え、各感光要素は、構成波長成分の1つの少なくとも一部分を受光し、そして構成波長成分それぞれの少なくとも1つの部分によるそれぞれの感光要素の照明に応じてそれぞれの検出器信号を生成するように構成される。
【0026】
本明細書で使用される「感光要素」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、検出器装置が備える個々の光学センサを指すことができ、各光学センサは少なくとも1つの感光領域を有し、この領域は特定の感光領域に入射する構成波長成分の1つの一部分の強度に依存する少なくとも1つの出力信号を生成することによって感光要素の光応答を記録するように構成される。個々の光学センサが備える少なくとも1つの感光領域は、特に、感光領域に入射する入射光を受光するように設計された単一の均一な領域であってよい。少なくとも1つの出力信号は、具体的には、検出器信号として使用でき、そして好ましくは、さらなる評価のための外部評価ユニットに提供することができる。
【0027】
従って「検出器信号」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの検出器により生成される信号、具体的には、感光要素の少なくとも1つの出力信号を指すことができる。少なくとも1つの出力信号は、電子信号及び光信号の少なくとも1つから選択されてよい。少なくとも1つの出力信号は、アナログ信号および/またはデジタル信号であってよい。隣接する感光要素の出力信号は、同時にまたは時間的に連続して生成されることができる。例えば、行(row)スキャン又は列(line)スキャンの間、列に配置される一連の感光要素に対応する出力信号のシーケンスが生成されることが可能である。さらに、個々の感光要素は、好ましくは、外部評価ユニットに検出器信号として提供する前に出力信号を増幅するように適合され得るアクティブピクセルセンサであってよい。この目的のために、感光要素は、電子信号を処理および/または前処理するための1つ以上のフィルタおよび/またはアナログ-デジタル変換器などの1つ以上の信号処理装置を備えることができる。
【0028】
本発明は、一例として、所与の順序で実行される以下のステップを含む。しかしながら、異なる順序も可能であることに留意されたい。さらに、方法ステップの1つ以上を1回または繰り返し実行することも可能である。さらに、方法ステップの2つ以上を同時にまたは時間的に重複して実行することも可能である。本方法は、列挙されていないさらなる方法ステップを含んでもよい。
【0029】
この方法は、以下のステップ:
a) 少なくとも1つの広帯域光源を使用し、少なくとも1つの光干渉計を介して分光計装置、具体的には検出器装置を照明するステップ、
b) 複数の感光要素について、具体的には感光要素の各々について、ステップa)における光干渉計を介した照明に応じた複数の検出器信号を決定するステップ、および
c) 複数の検出器信号から較正情報の少なくとも1つの項目を決定するステップ
を含む。
【0030】
本明細書で使用される「照明する」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、照明されるべき装置または要素に光源から光を供給、通過および/または誘導するプロセスを指すことができる。具体的には、広帯域光源を使用して装置または要素を照明することは、広帯域光源から放出された光を、照明されるべき装置または要素に供給および/または誘導することを含んでよい。広帯域光源から照明されるべき装置または要素への光の経路上に、1つ以上のさらなる装置が配置されてもよい。よって1つ以上のさらなる装置を介して照明されるべき装置または要素を照明することは、広帯域光源からの光を1つ以上のさらなる装置に誘導し、その後、照明されるべき装置または要素に光を供給および/または誘導することを含んでよい。例えば、光干渉計を介して分光計装置、具体的には検出器装置を照明することは、広帯域光源からの光を光干渉計に誘導することと、その後、光干渉計を通過した光を分光計装置、具体的には検出器装置に誘導することとを含んでよい。
【0031】
本明細書で使用される「広帯域光源」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも5nm、具体的には少なくとも10nmのスペクトル幅、例えば10nm~3000nmのスペクトル幅を有する光など、広いスペクトル範囲の光を放出する装置を指すことができる。広帯域光源の広いスペクトル範囲は、可視スペクトル範囲、紫外線スペクトル範囲および赤外線スペクトル範囲の少なくとも1つを含み得る。本発明の典型的な目的のために使用される光は、特に、IRスペクトル範囲、具体的にはNIRまたはMidIRスペクトル範囲の少なくとも1つ、より具体的には1μm~5μm、さらにより具体的には1μm~3μmの波長を有する光を含んでもよい。例えば、広帯域光源は、1000nm~3000nm、より具体的には1300nm~2500nmなどのNIRおよびMidIRの光を放出する熱エミッタを備え得る。広帯域光源のさらに可能な実施形態については、以下でさらに詳細に説明する。
【0032】
本明細書で使用する「光干渉計」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、光の重ね合わせ、具体的には光スペクトル範囲の光の重ね合わせを可能にし、重ね合わされた光の干渉の効果を引き起こすための装置または装置の組み合わせを指すことができる。例えば、光干渉計は、入射光を少なくとも2つの光ビームに分割し、さらに、分割された光ビームの互いに対する位相シフトを引き起こすように構成できる。光干渉計はさらに、光ビームが互いに重ね合わさって干渉するように、位相シフトされた光ビームを合波するように構成されてもよい。
【0033】
光干渉計は、具体的には、マイケルソン干渉計、ファブリー・ペロー干渉計、キューブコーナー干渉計からなる群から選択してよい。しかしながら、他の光干渉計も実現可能である。
【0034】
さらに、ステップa)において、光干渉計の透過周波数を所定のスペクトル範囲にわたって変化させてもよく、そして、ステップb)において、光干渉計の透過周波数に応じて複数の検出器信号を決定してもよい。ステップc)において、較正情報の少なくとも1つの項目は、光干渉計の透過周波数と、透過周波数に関連する複数の検出器信号の強度ピークを生成する複数の感光要素のピクセル位置および識別番号の少なくとも1つとを比較することによって決定されてもよい。本明細書で使用される「透過周波数」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、光学分光計を透過する複数の周波数のスペクトルの主周波数を指すことができる。具体的には、光干渉計の透過周波数は、最も高い透過強度を有する透過周波数のスペクトルにおける主周波数を指すことができる。透過周波数は、光干渉計を較正するための基準として使用できる。本明細書で使用される「ピクセル位置」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、検出器装置内の感光要素の位置情報の任意の項目を指すことができる。ピクセル情報は、絶対位置情報および相対位置情報の1つ以上を使用することによって、検出器装置内の感光要素の位置を、具体的には、1次元、2次元、またはさらには3次元で表す。本明細書で使用される「識別番号」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、検出器装置が備える各感光要素を特有に識別する情報の数値またはアルファ数項目を指すことができる。例えば、検出器装置の感光要素は、検出器装置における出現順序に関して番号付けされてもよい。しかし、検出器装置の感光要素を識別するための他の選択肢も実行可能である。
【0035】
複数の検出器信号は、12.000 1/cm~500 1/cmの範囲、具体的には10.000 1/cm~1000 1/cmの範囲、より具体的には7.000 1/cm~4.000 1/cmの範囲の波数について記録されてもよい。このように、光学分光計装置は、12.000 1/cm~500 1/cmの範囲、具体的には10.000 1/cm~1000 1/cmの範囲、より具体的には7.000 1/cm~4.000 1/cmの範囲の波数を有する光を透過するように構成できる。
【0036】
光干渉計は、一例として、入射光、具体的には広帯域光源からの入射光を、少なくとも2つの照明経路に分割するための少なくとも1つのビーム分割装置を備え得る。光干渉計は、第1の照明経路における少なくとも1つの走査鏡と、第2の照明経路における少なくとも1つの静止鏡とをさらに備え得る。本方法において、具体的には、ステップa)において、走査鏡は第1の照明経路に沿って移動させてよく、静止鏡は静止したままであってよい。走査鏡は、段階的に1kHz以下のステップ周波数で、具体的には500Hz以下のステップ周波数で、より具体的には150Hz以下のステップ周波数で、移動させてよい。具体的には、走査鏡のステップ周波数は、検出器装置の最大読み出し周波数よりも遅くてよい。例えば、検出器装置の最大読み出し周波数がステッピング周波数を1kHz以下に制限する場合、100Hzのステッピング周波数が最適である。本明細書で使用する「読み出し周波数」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、特定の時間間隔で実行される読み出しの定量的尺度を指すことができる。具体的には、検出器装置において、感光要素の出力信号は、読み出し集積回路などの関連する信号処理装置によって生成されてもよい。例えば、各感光要素は、読み出し集積回路を備えてよく、その読み出し集積回路は、感光要素の照明に応答して生成される感光要素の光応答、具体的には光電流を蓄積し、蓄積された光応答をさらなる信号処理のために伝達するように構成されていてもよい。読み出し周波数は、感光要素の光電流が読み出し集積回路によって蓄積される時間間隔を示す場合がある。本明細書で使用される「ステッピング周波数」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、特定の時間間隔で実行されるステップの定量的な尺度を指すことができる。具体的には、走査鏡のステップ周波数は、1秒あたりの第1の照明経路における走査鏡のステップ数または位置を定量化できる。
【0037】
さらに、ステップb)において、複数の検出器信号は、第1の照明経路における走査鏡の複数の位置について決定されてもよい。走査鏡の複数の位置は、互いに異なっていてもよい。さらに、ステップc)は、具体的には、複数の検出器信号を処理する前に、複数の検出器信号を走査鏡の複数の位置と相関させることを含んでよい。よって、ステップc)において、走査鏡の複数の位置に相関させた複数の検出器信号は、較正情報の少なくとも1つの項目を決定するために使用されてよい。
【0038】
追加的または代替的に、ステップc)は、ステップb)において決定された複数の検出器信号を処理し、それによって複数の処理された検出器信号を得ることを含み得る。ステップc)における較正情報の少なくとも1つの項目の決定は、複数の処理された検出器信号から較正情報の少なくとも1つの項目を決定することを含み得る。本明細書で使用される「処理」という用語は、具体的には、複数の検出器信号に対して1つ以上の処理を実行するプロセスを指すことができる。処理の結果は、複数の処理された検出器信号であってよく、またはそれを含んでもよい。具体的には、複数の検出器信号の処理は、複数の検出器信号を変換すること、具体的には数学的に変換することを含んでよい。例えば、複数の検出器信号は、少なくとも1つのフーリエ変換、具体的には少なくとも1つの離散フーリエ変換を用いて変換されてよい。追加的または代替的に、処理は、オフセット補正およびデジタルフィルタの1つ以上を複数の検出器信号に適用することを含んでよい。
【0039】
上記で概説したように、ステップc)は、較正情報の少なくとも1つの項目を決定することを含む。較正情報の項目は、波長較正情報の項目および迷光較正情報の項目の少なくとも1つを含んでよい。波長較正情報の項目は、少なくとも1つの波長較正関数を含んでよい。波長較正関数は、感光要素のピクセル位置および識別番号の少なくとも1つを波長位置に割り当ててもよい。例えば、波長較正関数は、多項式関数を含んでよい。しかし、他の波長較正関数も実現可能である。迷光較正情報の項目は、少なくとも1つの信号分布関数、具体的には少なくとも1つの信号分布マトリックスを含んでよい。信号分布関数は、特定の波長を有する入射光に対する複数の感光要素の応答の分布、具体的には各感光要素の応答の分布を表す。例として、信号分布マトリックスの計算および/または適用は、Y.Zong,S.W.Brown,B.C.Johnson,K.R.Lykke and Y.Ohno:「Simple spectral stray light correction method for array spectroradiometers」、Applied Optics、第45巻、第6号、2006年にさらに詳細に記載されている。
【0040】
追加的または代替的に、本方法、具体的にはステップc)は、以下にさらに詳細に概説するように、少なくとも部分的にコンピュータ実装できる。
【0041】
本発明のさらなる態様では、分光計装置を較正するためのシステムが開示される。このシステムは、少なくとも1つの検出器装置を備えた分光計装置を備え、該検出器装置が、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学要素を備え、且つ複数の感光要素をさらに備え、各感光要素が、構成波長成分の1つの少なくとも一部分を受光し、そして構成波長成分それぞれの少なくとも1つの部分によるそれぞれの感光要素の照明に応じてそれぞれの検出器信号を生成するように構成される。システムはさらに、少なくとも1つの広帯域光源と、光干渉計を介して広帯域光源で分光計装置、具体的には検出器装置を照明するように配置された少なくとも1つの光干渉計とを備える。システムは、少なくとも1つの評価ユニットをさらに備え、評価ユニットは、本発明による、例えば上記に開示された実施形態のいずれか1つおよび/または以下にさらに詳細に開示する実施形態のいずれか1つによる方法を実行するように構成される。
【0042】
システムまたはその一部の定義および可能な実施形態については、分光計装置の較正方法に関して説明した定義および実施形態を参照されたい。
【0043】
本明細書で使用する「評価ユニット」という用語は広義の用語であり、その通常で慣習的な意味が当業者に与えられるべきであり、特別なまたはカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、コンピュータまたはシステムの基本的な動作を実行するように構成された任意の論理回路、および/または、一般的には、計算または論理演算を実行するように構成された装置を指すことができる。特に、評価ユニットは、コンピュータまたはシステムを駆動する基本命令を処理するように構成できる。一例として、評価ユニットは、少なくとも1つの算術論理演算ユニット(ALU)、数学コプロセッサまたは数値コプロセッサなどの少なくとも1つの浮動小数点ユニット(FPU)、複数のレジスタ、具体的には、オペランドをALUに供給し、演算結果を格納するように構成されたレジスタ、およびL1キャッシュメモリおよびL2キャッシュメモリなどのメモリから構成されてよい。特に、プロセッサはマルチコアプロセッサであってもよい。具体的には、評価ユニットは、中央処理装置(CPU)であってよく、またはそれを備え得る。例えば、評価ユニットは、1つ以上のプロセッサを備え得る。追加的または代替的に、評価ユニットはマイクロプロセッサであってよく、またはそれを備えてもよく、よって具体的には、評価ユニットの要素は1つの集積回路(IC)チップに含有されてもよい。追加的または代替的に、評価ユニットは、1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)および/または1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)および/または1つ以上のテンソル処理ユニット(TPU)および/または専用の機械学習最適化チップなどの1つ以上のチップであってよく、またはそれらを備え得る。評価ユニットは、具体的には、1つ以上の評価操作、具体的には、上記でさらに詳細に説明した方法のステップc)において実行される1つ以上の操作を実行するために、ソフトウェアプログラミングなどによって構成されてもよい。評価ユニットは、一方向および/または双方向に、データおよび/または制御コマンドをシステムの他の要素、具体的には検出器装置と交換するように構成されてもよい。具体的には、評価ユニットは、検出器装置から複数の検出器信号を受信するように構成されてもよい。
【0044】
広帯域光源は、一例として、白熱ランプ、黒体放射体、電気フィラメント、発光ダイオードの少なくとも1つを備え得る。
【0045】
光学要素は、少なくとも1つの波長選択要素を備え得る。波長選択要素は、プリズム、回折格子、リニア可変フィルタ、光学フィルタ、具体的には狭帯域通過フィルタからなる群から選択してよい。
【0046】
検出器装置は、リニアアレイに配置された複数の感光要素を備え得る。感光要素のリニアアレイは、10~1000個の数の感光要素、具体的には100~500個の数の感光要素、具体的には200~300個の数の感光要素、より具体的には256個の数の感光要素を備え得る。各感光要素は、ピクセル化無機カメラ要素、具体的にはピクセル化無機カメラチップ、より具体的にはCCDチップまたはCMOSチップ、モノクロカメラ要素、具体的にはモノクロカメラチップ、少なくとも1つの光導電体、具体的には無機光導電体、より具体的にはPbS、PbSe、Ge、InGaAs、ext.InGaAs、InSbまたはHgCdTeを備える無機光導電体からなる群から選択され得る。各感光要素は、760nm~1000μmの波長範囲、具体的には760nm~15μmの波長範囲、より具体的には1μm~5μmの波長範囲、より具体的には1μm~3μmの波長範囲の電磁放射線に対して感度を有し得る。
【0047】
検出器装置は、具体的には、分光計装置、具体的には、反射分光計装置および透過分光計装置の少なくとも1つに備えられてよい。
【0048】
本発明のさらなる態様では、本発明による、例えば上記に開示された実施形態のいずれか1つおよび/または以下にさらに詳細に開示する実施形態のいずれか1つによるシステムによってプログラムが実行されると、本発明による、例えば上記に開示された実施形態のいずれか1つおよび/または以下にさらに詳細に開示する実施形態のいずれか1つによる分光計装置を較正するための方法をシステムの評価ユニットに実行させる命令を含むコンピュータプログラムが開示される。
【0049】
よって、具体的には、上記で示した少なくとも方法ステップc)は、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって、好ましくはコンピュータプログラムを使用することによって実行され得る。しかしながら、上記に示した方法ステップa)~c)の1つ、1つ以上、またはさらには全ては、少なくともコンピュータ制御されてよく、および/またはコンピュータまたはコンピュータネットワークによってサポートされてもよい。
【0050】
本発明のさらなる態様では、本発明による、例えば上記に開示された実施形態のいずれか1つおよび/または以下にさらに詳細に開示する実施形態のいずれか1つによるシステムによってプログラムが実行されると、本発明による、例えば上記に開示された実施形態のいずれか1つおよび/または以下にさらに詳細に開示する実施形態のいずれか1つによる分光計装置を較正するための方法をシステムの評価ユニットに実行させる命令を含む、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体が開示される。
【0051】
本明細書で使用される「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」という用語は、具体的には、コンピュータ実行可能命令が記憶されたハードウェア記憶媒体などの非一過性のデータ記憶手段を指すことができる。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能なデータキャリアとも呼ばれ、具体的には、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/または読取専用メモリ(ROM)などの記憶媒体であってよく、またはそれらを備え得る。
【0052】
本発明による方法およびシステムは、既知の方法および装置に対して多数の利点を提供し得る。具体的には、分光計装置、具体的には光学要素としてリニア可変フィルタを有する検出器装置を備えた分光計装置を光干渉計と組み合わせることにより、分光計装置の較正が改善され得る。本方法および本システムによれば、スペクトル分解能および迷光に関する情報などの測定情報の量を増加させると同時に、分光計装置の較正をより迅速に行うことができる。具体的には、単色レーザ光源および/または複数の異なるバンドパスフィルタを用いて各波長を個別に較正する必要性は、本発明による方法を実行することによって不要となり得る。
【0053】
本方法において、広帯域光は、広帯域光源から放出され、光干渉計を通過し、そして分光器装置、具体的には検出器装置に誘導されてよい。検出器装置の複数の感光要素、具体的には複数の感光要素の全ては、好適な電子機器を用いて読み出されてもよい。時間I(t)の関数としての複数の検出器信号は、光干渉計における走査鏡の動きに相関させてもよい。フーリエ変換を使用し、検出器装置に備えられた各感光要素について、光学要素の全透過スペクトルが得られる。
【0054】
要約し、さらに可能な実施形態を除外することなく、以下の実施形態を想定することができる。
【0055】
実施形態1:分光計装置を較正するための方法であって、該分光計装置が少なくとも1つの検出器装置を備え、該検出器装置が、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学要素を備え、且つ複数の感光要素をさらに備え、各感光要素が、構成波長成分の1つの少なくとも一部分を受光し、そして構成波長成分それぞれの少なくとも1つの部分によるそれぞれの感光要素の照明に応じてそれぞれの検出器信号を生成するように構成され、
以下のステップ:
a) 少なくとも1つの広帯域光源を使用し、少なくとも1つの光干渉計を介して分光計装置、具体的には検出器装置を照明するステップ、
b) 複数の感光要素について、具体的には感光要素の各々について、ステップa)における光干渉計を介した照明に応じた複数の検出器信号を決定するステップ、および
c) 複数の検出器信号から較正情報の少なくとも1つの項目を決定するステップ
を含む、方法。
【0056】
実施形態2:光干渉計が、マイケルソン干渉計、ファブリー・ペロー干渉計、キューブコーナー干渉計からなる群から選択される、先行する実施形態に記載の方法。
【0057】
実施形態3:ステップa)において、光干渉計の透過周波数を所定のスペクトル範囲にわたって変化させ、そして、ステップb)において、光干渉計の透過周波数に応じて複数の検出器信号を決定する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
実施形態4:ステップc)において、較正情報の少なくとも1つの項目が、光干渉計の透過周波数と、透過周波数に関連する複数の検出器信号の強度ピークを生成する複数の感光要素のピクセル位置および識別番号の少なくとも1つとを比較することによって決定される、先行する実施形態に記載の方法。
【0059】
実施形態5:光干渉計が、入射光、具体的には広帯域光源からの入射光を、少なくとも2つの照明経路に分割するための少なくとも1つのビーム分割装置を備え、該光干渉計が、第1の照明経路における少なくとも1つの走査鏡と、第2の照明経路における少なくとも1つの静止鏡とをさらに備え、本方法において、具体的にはステップa)において、走査鏡を第1の照明経路に沿って移動させ、静止鏡は静止したままである、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
実施形態6:走査鏡を、段階的に1kHz以下のステップ周波数で、具体的には500Hz以下のステップ周波数で、より具体的には150Hz以下のステップ周波数で移動させる、先行する実施形態に記載の方法。
【0061】
実施形態7:ステップb)において、複数の検出器信号が、第1の照明経路における走査鏡の複数の位置について決定され、走査鏡の複数の位置は互いに異なっている、先行する2つの実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
実施形態8:ステップc)が、具体的には、複数の検出器信号を処理する前に、複数の検出器信号を走査鏡の複数の位置と相関させることを含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0063】
実施形態9:ステップc)において、走査鏡の複数の位置に相関させた複数の検出器信号が、較正情報の少なくとも1つの項目を決定するために使用される、先行する実施形態に記載の方法。
【0064】
実施形態10:ステップc)が、ステップb)において決定された複数の検出器信号を処理し、それによって複数の処理された検出器信号を得ることを含み、ステップc)における較正情報の少なくとも1つの項目の決定が、複数の処理された検出器信号から較正情報の少なくとも1つの項目を決定することを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
実施形態11:複数の検出器信号の処理が、複数の検出器信号を変換すること、具体的には数学的に変換することを含む、先行する実施形態に記載の方法。
【0066】
実施形態12:複数の検出器信号が、少なくとも1つのフーリエ変換、具体的には少なくとも1つの離散フーリエ変換を用いて変換される、先行する実施形態に記載の方法。
【0067】
実施形態13:複数の検出器信号が、12.000 1/cm~500 1/cmの範囲、具体的には10.000 1/cm~1000 1/cmの範囲、より具体的には7.000 1/cm~4.000 1/cmの範囲の波数について記録されについて記録される、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
実施形態14:較正情報の項目が、波長較正情報の項目および迷光較正情報の項目の少なくとも1つを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
実施形態15:波長較正情報の項目が、少なくとも1つの波長較正関数を含み、波長較正関数が、感光要素のピクセル位置および識別番号の少なくとも1つを波長位置に割り当てる、先行する実施形態に記載の方法。
【0070】
実施形態16:迷光較正情報の項目が、少なくとも1つの信号分布関数、具体的には少なくとも1つの信号分布マトリックスを含み、信号分布関数が、特定の波長を有する入射光に対する複数の感光要素の応答の分布、具体的には各感光要素の応答の分布を表す、先行する2つの実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態17:先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法であって、具体的にはステップc)が、少なくとも部分的にコンピュータ実装される、方法。
【0072】
実施形態18:分光計装置を較正するためのシステムであって、少なくとも1つの検出器装置を備えた分光計装置を備え、該検出器装置が、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学要素を備え、且つ複数の感光要素をさらに備え、各感光要素が、構成波長成分の1つの少なくとも一部分を受光し、そして構成波長成分それぞれの少なくとも1つの部分によるそれぞれの感光要素の照明に応じてそれぞれの検出器信号を生成するように構成され、該システムはさらに、少なくとも1つの広帯域光源と、光干渉計を介して広帯域光源で分光計装置、具体的には検出器装置を照明するように配置された少なくとも1つの光干渉計とを備え、該システムはさらに、少なくとも1つの評価ユニットを備え、評価ユニットが、先行する実施形態のいずれか1つに記載の方法を実行するように構成される、システム。
【0073】
実施形態19:広帯域光源が、白熱ランプ、黒体放射体、電気フィラメント、発光ダイオードの少なくとも1つを備える、先行する実施形態に記載のシステム。
【0074】
実施形態20:光学要素が、少なくとも1つの波長選択要素を備える、先行する2つの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
【0075】
実施形態21:波長選択要素が、プリズム、回折格子、リニア可変フィルタ、光学フィルタ、具体的には狭帯域通過フィルタからなる群から選択される、先行する実施形態に記載のシステム。
【0076】
実施形態22:検出器装置が、リニアアレイに配置された複数の感光要素を備え、感光要素のリニアアレイが、10~1000個の数の感光要素、具体的には100~500個の数の感光要素、具体的には200~300個の数の感光要素、より具体的には256個の数の感光要素を備える、先行する4つの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
【0077】
実施形態23:各感光要素が、ピクセル化無機カメラ要素、具体的にはピクセル化無機カメラチップ、より具体的にはCCDチップまたはCMOSチップ、モノクロカメラ要素、具体的にはモノクロカメラチップ、少なくとも1つの光導電体、具体的には無機光導電体、より具体的にはPbS、PbSe、Ge、InGaAs、ext.InGaAs、InSbまたはHgCdTeを備える無機光導電体からなる群から選択される、先行する5つの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
【0078】
実施形態24:各感光要素が、760nm~1000μmの波長範囲、具体的には760nm~15μmの波長範囲、より具体的には1μm~5μmの波長範囲、より具体的には1μm~3μmの波長範囲の電磁放射線に対して感度を有する、先行する6つの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
【0079】
実施形態25:検出器装置が、分光計装置、具体的には、反射分光計装置および透過分光計装置の少なくとも1つに備えられる、先行する7つの実施形態のいずれか1つに記載のシステム。
【0080】
実施形態26:先行するシステムに関する実施形態のいずれか1つに記載のシステムによってプログラムが実行されると、先行する方法に関する実施形態のいずれか1つに記載の分光計装置を較正するための方法をシステムの評価ユニットに実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【0081】
実施形態27:先行するシステムに関する実施形態のいずれか1つに記載のシステムによってプログラムが実行されると、先行する方法に関する実施形態のいずれか1つに記載の分光計装置を較正するための方法をシステムの評価ユニットに実行させる命令を含む、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【図面の簡単な説明】
【0082】
さらなる任意の特徴および特徴は、好ましくは従属請求項と関連した下記の実施形態の説明でより詳細に開示される。ここで、それぞれの任意の特徴は、個別に実施してよく、さらに如何なる任意の特徴と組み合わせても実施してよいことが、当業者には理解されよう。本発明の範囲は、好ましい実施形態に限定されない。実施形態は、図に模式的に示されている。これらの図における同一の参照番号は、同一のまたは機能的に同等である要素を指す。
【0083】
以下の図において:
図1図1は、分光計装置を較正するシステムの実施形態を概略図で示す。
図2図2は、分光計装置を較正する方法の実施形態のフローチャートを示す。
図3図3A~3Dは、迷光較正の図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1は、分光計装置114を較正するためのシステム110の例示的な実施形態を概略図で示す。システム110は、少なくとも1つの検出器装置112を備えた分光計装置114を含む。検出器装置112は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学要素116を備える。光学要素116は、具体的には、少なくとも1つの波長選択要素118を備え得る。図1に示す例示的な実施形態では、波長選択要素118は、リニア可変フィルタ120であってよい。しかしながら、プリズム、回折格子、光学フィルタ、具体的には狭帯域通過フィルタなどの他の選択肢も実現可能である。
【0085】
検出器装置112は複数の感光要素122をさらに備え、各感光要素124は、構成波長成分の1つの少なくとも一部分を受光し、そして構成波長成分それぞれの少なくとも1つの部分によるそれぞれの感光要素124の照明に応じてそれぞれの検出器信号を生成するように構成される。
【0086】
図1に見られるように、検出器装置112は、リニアアレイ126に配置された複数の感光要素122を備え得る。感光要素124のリニアアレイ126は、256個の数の感光要素124を備え得る。各感光要素124は、PbSを備える無機光導電体であってよい。しかしながら、リニアアレイおよび/または他の光導電体の他のはずまたはサイズも実現可能である。各感光要素124は、1μm~3μmの波長範囲の電磁放射線に対して感度を有し得る。
【0087】
システム110はさらに、少なくとも1つの広帯域光源128と、光干渉計130を介して広帯域光源128で検出器装置112を照明するように配置された少なくとも1つの光干渉計130とを備える。広帯域光源128は、例として、少なくとも1つの白熱ランプ132を備え得る。しかしながら、黒体放射体、発光ダイオードおよび/または電気フィラメントなどの他の広帯域光源128も実現可能である。
【0088】
図1に見られるように、光干渉計130は、少なくとも1つのマイケルソン干渉計134で構成され得る。しかしながら、ファブリー・ペロー干渉計および/またはキューブコーナー干渉計などの他の光干渉計も、原理的には実現可能である。この例では、光干渉計130は、入射光、具体的には広帯域光源128からの入射光を、少なくとも2つの照明経路に分割するための少なくとも1つのビーム分割装置136を備える。光干渉計130は、第1の照明経路140における少なくとも1つの走査鏡138と、第2の照明経路144における少なくとも1つの静止鏡142とをさらに備え得る。矢印146で示すように、走査鏡138は、第1の照明経路140に沿って移動可能であってよい。
【0089】
システム110は、少なくとも1つの評価ユニット148をさらに備え、評価ユニットは、本発明による、例えば上記に開示された実施形態のいずれか1つおよび/または以下にさらに詳細に開示する実施形態のいずれか1つによる、分光計装置114を較正するための方法を実行するように構成される。評価ユニット148は、図1に矢印150で示すように、一方向および/または双方向に、データおよび/または制御コマンドをシステム110の他の要素、具体的には検出器装置112と交換するように構成され得る。具体的には、評価ユニット148は、検出器装置112から複数の検出器信号を受信するように構成されてもよい。
【0090】
図2において、分光計装置114を較正する方法の例示的な実施形態のフローチャートを示す。分光計装置114は、図1に示すように具体化できる:分光計装置114は、入射光を構成波長成分のスペクトルに分離するように構成された少なくとも1つの光学要素116を備えた少なくとも1つの検出器装置112を備える。検出器装置112は、複数の感光要素122をさらに備え、各感光要素124は、構成波長成分の1つの少なくとも一部分を受光し、そして構成波長成分それぞれの少なくとも1つの部分によるそれぞれの感光要素124の照明に応じてそれぞれの検出器信号を生成するように構成される。
【0091】
本方法は、一例として、所与の順序で実施されうる以下のステップを含む。しかしながら、異なる順序も可能であることに留意されたい。さらに、方法ステップの1つ以上を1回または繰り返し実行することも可能である。さらに、方法ステップの2つ以上を同時にまたは時間的に重複して実行することも可能である。本方法は、列挙されていないさらなる方法ステップを含んでもよい。
【0092】
この方法は、以下のステップ:
a) (参照番号152で示す)少なくとも1つの広帯域光源128を使用し、少なくとも1つの光干渉計130を介して分光計装置114、具体的には検出器装置112を照明するステップ、
b) (参照番号154で示す)複数の感光要素122について、具体的には感光要素124の各々について、ステップa)における光干渉計130を介した照明に応じた複数の検出器信号を決定するステップ、および
c) (参照番号156で示す)複数の検出器信号から較正情報の少なくとも1つの項目を決定するステップ
を含む。
【0093】
さらに、ステップa)において、光干渉計130の透過周波数を所定のスペクトル範囲にわたって変化させてもよく、そして、ステップb)において、光干渉計130の透過周波数に応じて複数の検出器信号を決定してもよい。ステップc)において、較正情報の少なくとも1つの項目が、光干渉計130の透過周波数と、透過周波数に関連する複数の検出器信号の強度ピークを生成する複数の感光要素122のピクセル位置および識別番号の少なくとも1つとを比較することによって決定されてもよい。
【0094】
上記で概説したように、光干渉計130は、第1の照明経路140における少なくとも1つの走査鏡138と、第2の照明経路144における少なくとも1つの静止鏡142とを備え得る。走査鏡138は、第1の照明経路140に沿って移動可能であってよい。本方法において、具体的にはステップa)において、走査鏡138を第1の照明経路144に沿って移動させてよく、静止鏡142は静止したままであってよい。走査鏡138は、段階的に1kHz以下のステップ周波数で、具体的には100Hz以下のステップ周波数で、より具体的には10Hz以下のステップ周波数で、移動させてよい。
【0095】
さらに、ステップb)において、複数の検出器信号は、第1の照明経路140における走査鏡138の複数の位置について決定されてもよい。走査鏡138の複数の位置は、互いに異なっていてもよい。さらに、図2に示すように、ステップc)は、具体的には、複数の検出器信号を処理する前に、複数の検出器信号を走査鏡138の複数の位置と相関させることを含んでよい(参照番号158で示す)。よって、ステップc)において、走査鏡138の複数の位置に相関させた複数の検出器信号は、較正情報の少なくとも1つの項目を決定するために使用されてよい。
【0096】
さらに、図2に示すように、ステップc)は、ステップb)において決定された複数の検出器信号を処理し、それによって複数の処理された検出器信号を得ることを含み得る(参照番号160で示す)。ステップc)における較正情報の少なくとも1つの項目の決定は、複数の処理された検出器信号から較正情報の少なくとも1つの項目を決定することを含み得る。具体的には、複数の検出器信号の処理は、複数の検出器信号を変換すること、具体的には数学的に変換することを含んでよい。例えば、複数の検出器信号は、少なくとも1つのフーリエ変換、具体的には少なくとも1つの離散フーリエ変換を用いて変換されてよい。
【0097】
較正情報の項目は、波長較正情報の項目および迷光較正情報の項目の少なくとも1つを含んでよい。波長較正情報の項目は、少なくとも1つの波長較正関数を含んでよい。波長較正関数は、感光要素124のピクセル位置および識別番号の少なくとも1つを波長位置に割り当ててもよい。例えば、波長較正関数は、多項式関数を含んでよい。しかし、他の波長較正関数も実現可能である。迷光較正情報の項目は、少なくとも1つの信号分布関数、具体的には少なくとも1つの信号分布マトリックスを含んでよい。信号分布関数は、特定の波長を有する入射光に対する複数の感光要素122の応答の分布、具体的には各感光要素124の応答の分布を表す。例として、信号分布マトリックスの計算および/または適用は、Y.Zong,S.W.Brown,B.C.Johnson,K.R.Lykke and Y.Ohno:「Simple spectral stray light correction method for array spectroradiometers」、Applied Optics、第45巻、第6号、2006年にさらに詳細に記載されている。
【0098】
迷光較正の図、具体的には、迷光較正情報の項目を決定するための複数のサブステップに対応する図を、図3A図3Dに示す。図3Aでは、光干渉計130の異なる透過周波数に対して複数の処理された検出器信号162が示されている。具体的には、図3Aの図において、処理された検出器信号の信号強度164が、複数の感光要素122のピクセル位置166の関数として示されている。図3Aは、光干渉計130のいくつかの透過周波数に対する複数の処理された検出器信号162を示し、具体的には、1456nmの透過波長(参照番号168で示す)、1664nmの透過波長(参照番号170で示す)、1840nmの透過波長(参照番号172で示す)、2057nmの透過波長(参照番号174で示す)、2241nmの透過波長(参照番号176で示す)、および2446nmの透過波長(参照番号178で示す)に対応する。
【0099】
複数の検出器信号の処理は、複数の検出器信号にオフセット補正およびデジタルフィルタの1つ以上を適用することを含み得る。図3Bは、オフセット補正およびサヴィツキー・ゴレイフィルタなどのデジタルフィルタの適用後の、複数の処理された検出器信号162を示す。具体的には、図3Bの図において、処理された検出器信号の信号強度164が、複数の感光要素122のピクセル位置166の関数として示されている。図3Bにおいて、図3Aで特定された透過周波数の信号強度164が示されている。図3Cには、1456nm~2446nmの範囲の透過波長に対応する透過周波数の信号強度164が示されている(参照番号180で示す)。これらの信号強度の値は、いわゆる信号分布マトリックスに格納されてもよい。
【0100】
信号分布マトリックス、特に信号分布マトリックスの逆は、較正された検出器装置112で決定された測定スペクトルに適用され得る。信号分布マトリックスを測定スペクトルに適用する効果を図3Dに示す。図3Dの図では、測定スペクトルの相対強度がピクセル位置166の関数として示されている。図3Dでは、PETサンプルの補正されていない測定スペクトル182と、補正されていない測定スペクトル182に迷光較正情報の項目、具体的には信号分布マトリックスを含むものを適用することによって得られた対応する補正された測定スペクトル184とが示されている。図3Dからわかるように、迷光較正情報の項目を適用することにより、スペクトル分解能を向上させ、そして迷光の影響を低減できる。
【符号の説明】
【0101】
110 システム
112 検出器装置
114 分光計装置
116 光学要素
118 波長選択要素
120 リニア可変フィルター
122 複数の感光要素
124 感光要素
126 リニアアレイ
128 広帯域光源
130 光干渉計
132 白熱灯
134 マイケルソン干渉計
136 ビーム分割装置
138 走査鏡
140 第1の照明経路
142 静止鏡
144 第2の照明経路
146 矢印
148 評価ユニット
150 矢印
152 検出器装置を照明する
154 複数の検出器信号を決定する
156 較正情報の少なくとも1つの項目を決定する
158 複数の検出器信号を相関させる
160 複数の検出器信号を処理する
162 複数の処理された検出器信号
164 信号強度
166 ピクセル位置
168 透過波長1456nm
170 透過波長1664nm
172 透過波長1840nm
174 透過波長2057nm
176 透過波長2241nm
178 透過波長2446nm
180 1456nm~2446nmの範囲の透過波長
182 補正されていない測定スペクトル
184 補正された測定スペクトル
図1
図2
図3AB
図3CD
【国際調査報告】