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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】フレキシブル液晶含有レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20241010BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20241010BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20241010BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20241010BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241010BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
G02C7/04
G02B5/18
G02F1/13 505
G02F1/1333
G02F1/1335
G02F1/1339 500
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024523650
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 GB2022052454
(87)【国際公開番号】W WO2023067296
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/257,144
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】オーグ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】クラーク ロジャー ブライアン ミンチン
(72)【発明者】
【氏名】バシュタノフ ミハイル
【テーマコード(参考)】
2H006
2H088
2H189
2H249
2H291
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BC03
2H088EA42
2H088GA03
2H088GA17
2H088HA03
2H088HA24
2H088KA05
2H189AA08
2H189AA33
2H189CA13
2H189DA10
2H189DA18
2H189DA19
2H189DA21
2H189DA31
2H189GA07
2H189LA05
2H189LA07
2H189LA18
2H189MA15
2H249AA04
2H249AA43
2H291FA48Y
2H291FA56X
2H291FA56Z
(57)【要約】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズが提供される。コンタクトレンズは、このコンタクトレンズの焦点パワーを変化させる液晶セルを有し、液晶セルは、第1の表面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を有し、回折光学素子は、サポートをセル内の1つ以上の場所に設けることによって、セル隙間厚さを維持するよう配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、前記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
前記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、
前記回折光学素子は、サポートを前記セル内の1つ以上の場所に設けることによって前記セル隙間厚さを維持するよう配置されている、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記第1の液晶セルの周囲のところに設けられていて、前記回折光学素子に加えて前記セル隙間厚さを維持する周囲スペーサをさらに有する、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記第1の液晶セルは、コレステリック液晶を含み、前記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、前記第1及び前記第2の状態のうちの一方の状態では、前記液晶の有効屈折率と前記回折光学素子の屈折率の差は、前記第1及び前記第2の状態のうちの他方の状態の場合よりも大きい、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記第1及び前記第2の状態のうちの前記他方の状態では、前記液晶の有効屈折率と前記回折光学素子の屈折率の差は、ほぼゼロである、請求項3記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記回折光学素子は、内側部分及び外側部分を有し、前記外側部分のところの前記回折光学素子の高さは、前記内側部分のところの前記回折光学素子の高さよりも高い、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記回折光学素子の少なくとも一部分は、前記第1の内面に取り付けられ、前記回折光学素子の少なくとも一部分は、前記第2の内面に取り付けられるのがよい、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
450nmと700nmの両方では、前記液晶の平均屈折率は、前記回折光学素子の屈折率の0.80~1.20倍であり、前記平均屈折率は、nave=0.5(ne+no)であり、この式において、neは、異常光屈折率であり、noは、常光屈折率である、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
450nmと700nmの両方では、前記液晶の平均屈折率は、前記回折光学素子の屈折率の0.95~1.05倍である、請求項7記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第2の液晶セルを有し、前記第2の液晶セルは、オプションとして、前記第1の液晶セルの特徴を備えている、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、前記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
前記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、前記回折光学素子は、内側部分及び外側部分を有し、前記外側部分のところの前記回折光学素子の前記高さは、前記内側部分のところの前記回折光学素子の前記高さの1%~20%増しである、コンタクトレンズ。
【請求項11】
前記外側部分のところの前記回折光学素子の前記高さは、前記内側部分のところの前記回折光学素子の前記高さの少なくとも3%増しかつ最大15%増しである、請求項10記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記回折光学素子は、複数のピークとトラフを有し、前記外側部分は、外側ピーク、オプションとして最も外側のピークを有する、請求項10記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記回折光学素子は、弦長rにわたって延び、前記内側部分は、前記回折光学素子の中心からr/8の弦長の範囲内にある前記回折光学素子の前記一部分からなり、前記外側部分は、3r/8~r/2の弦長を有する回折光学素子の前記一部分からなる、請求項10記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記液晶は、コレステリック液晶からなり、オプションとして、非切り換え状態では、前記液晶のダイレクタは、前記第1及び前記第2の内面に対して5°以下の角度をなすのがよく、切り換え状態では、前記液晶のダイレクタは、前記第1及び前記第2の内面に対して少なくとも60°の角度をなすのがよく、オプションとして少なくとも70°、オプションとして少なくとも80°、オプションとして少なくとも85°の角度をなすのがよい、請求項10記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、前記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
前記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子、及びコレステリック液晶を含み、
前記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、前記第1の状態では、前記液晶の有効屈折率と前記回折光学素子の屈折率の差は、前記第2の状態の場合よりも大きく、又は小さく、
450nmと700nmの両方では、前記液晶の平均屈折率は、前記回折光学素子の屈折率の0.80~1.20倍であり、前記液晶の前記平均屈折率は、naveであり、かくして、nave=0.5(ne+no)として計算され、この式において、neは、異常光屈折率であり、noは、常光屈折率である、コンタクトレンズ。
【請求項16】
450nmと700nmの両方では、前記液晶の平均屈折率は、前記回折光学素子の屈折率の0.95~1.10倍である、請求項15記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
450nmと700nmの両方では、前記液晶の平均屈折率は、前記回折光学素子の屈折率の0.95~1.05倍である、請求項15記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
前記液晶の平均屈折率は、500nmでは、前記回折光学素子の屈折率の0.95~1.05倍である、請求項15記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、前記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
前記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子、及びコレステリック液晶を含み、
前記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、前記第1の状態では、前記液晶の有効屈折率と前記回折光学素子の屈折率の差は、前記第2の状態の場合よりも大きく、又は小さく、
前記回折光学素子の屈折率は、1.57以下である、コンタクトレンズ。
【請求項20】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、前記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
前記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子、及びコレステリック液晶を含み、
前記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、前記第1の状態では、前記液晶の有効屈折率と前記回折光学素子の屈折率の差は、前記第2の状態の場合よりも大きく、又は小さく、
前記回折光学素子の屈折率は、少なくとも1.58である、コンタクトレンズ。
【請求項21】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、前記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
前記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、
前記回折光学素子は、複数のピークとトラフを有し、前記ピークは、前記第1の内面から前記第2の内面に向かう方向に延び、
少なくとも一方のピークの少なくとも一部分は、前記第2の内面に取り付けられている、コンタクトレンズ。
【請求項22】
前記回折光学素子は、中央ピーク及び複数の外側ピークを有し、前記外側ピークのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分は、前記第2の内面に取り付けられている、請求項21記載のコンタクトレンズ。
【請求項23】
前記外側ピークの少なくとも1つ、オプションとして2つ以上、オプションとして各々は、環状である、請求項22記載のコンタクトレンズ。
【請求項24】
少なくとも1つのピークの少なくとも大部分、及びオプションとして実質的に周囲全体は、前記第2の内面に取り付けられている、請求項21記載のコンタクトレンズ。
【請求項25】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの少なくとも1つの光学特性を変化させる第1の液晶セルを有し、前記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
前記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、前記回折光学素子は、固有動作波長を有し、前記固有動作波長は、450nm~510nmであり、
前記第1の液晶セルは、コレステリック液晶を含み、
前記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、前記第1の状態では、前記液晶の有効屈折率と前記回折光学素子の屈折率の差は、前記第2の状態の場合よりも大きく、又は小さく、オプションとして前記固有動作波長は、460nm~490nm、オプションとして470nm~490nm、オプションとして480nmである、コンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルコンタクトレンズに関する。
【0002】
本発明は、フレキシブルコンタクトレンズに関する。特に、本発明は、電気的に切り換え可能なコンタクトレンズに関するが、これには限定されない。
【背景技術】
【0003】
回折光学素子を有するフレキシブルコンタクトレンズが知られている。かかるレンズは、液晶を備える場合があり、液晶は、2つの状態相互間で電気的に切り換え可能である。第1の状態では、液晶の屈折率は、回折光学素子の屈折率に一致せず、回折光学素子は、光と相互作用し、そしてこれを回折させる。第2の状態では、液晶の屈折率は、回折光学素子の屈折率に一致し、入射光の回折がなく、又は極めて少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、回折光学素子を有する改良型フレキシブルコンタクトレンズを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点によれば、以下の請求項1に記載された特徴を有する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズが提供される。
【0006】
本発明の第2の観点によれば、以下の請求項10に記載された特徴を有する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズが提供される。
【0007】
本発明の第3の観点によれば、以下の請求項15に記載された特徴を有する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズが提供される。
【0008】
本発明の第4の観点によれば、以下の請求項19に記載された特徴を有する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズが提供される。
【0009】
本発明の第5の観点によれば、以下の請求項20に記載された特徴を有する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズが提供される。
【0010】
本発明の第6の観点によれば、以下の請求項21に記載された特徴を有する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズが提供される。
【0011】
本発明の第7の観点によれば、以下の請求項25に記載された特徴を有する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズが提供される。
【0012】
本発明の好ましいが、オプションとしての特徴が以下にかつ従属形式の請求項に記載されている。
【0013】
当然のことながら、本発明の1つの観点に関して説明した特徴を他の観点に組み込むことができるということは理解されよう。
【0014】
次に、本発明の実施形態について添付の図面を参照して説明するが、これは例示であるにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の観点としてのコンタクトレンズの一例の概略側面切除図であり、コンタクトレンズが液晶セルを有する状態を示す図である。
図2図1で用いられた液晶セルの概略側面図である。
図3】非切り換え状態における液晶セル中の液晶分子の局所アライメントの略図である。
図4】切り換え状態における液晶セル中の液晶分子の局所アライメントの略図である。
図5】回折光学素子が低い屈折率を備えた液晶セルを有するレンズにより生じる回折プロフィールの強度を示す図であり、液晶セルの切り換え状態を示す図である。
図6】回折光学素子が低い屈折率を備えた液晶セルを有するレンズにより生じる回折プロフィールの強度を示す図であり、液晶セルの非切り換え状態を示す図である。
図7】回折光学素子が高い屈折率を備えた液晶セルを有するレンズにより生じる回折プロフィールの強度を示す図であり、液晶セルの切り換え状態を示す図である。
図8】回折光学素子が高い屈折率を備えた液晶セルを有するレンズにより生じる回折プロフィールの強度を示す図であり、液晶セルの非切り換え状態を示す図である。
図9】本発明の種々の観点としてのコンタクトレンズの一例の概略断面図であり、コンタクトレンズが2つの液晶セルを有する状態を示す図である。
図10】アライメントポリマーに隣接して位置する液晶のダイレクタのアライメントの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、本発明の第1の観点によれば、ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって
コンタクトレンズは、
コンタクトレンズの焦能力(focal power)を変化させる第1の液晶セルを有し、第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、
回折光学素子は、サポートをセル内の1つ以上の場所に設けることによってセル隙間厚さを維持するよう配置されていることを特徴とするコンタクトレンズを提供する。
【0017】
本出願人は、フレキシブルオフサルミックレンズ内にセル隙間厚さを維持するためのスペーサとして回折光学素子を用いることができるということを発見した。
【0018】
セル隙間厚さの維持は、オフサルミックレンズの光学的性質を維持する上で重要である。特に、セル隙間厚さの維持により、液晶がヘイズなく整列することができるのに十分足るほど小さいセル隙間厚さが維持される。この関係で、セル隙間厚さの維持は、15%以下、オプションとして12%以下、オプションとして10%以下、オプションとして8%以下、オプションとして5%以下の第1の液晶セル全体のセル隙間厚さの平均減少率を含むのがよい。セル隙間厚さの維持は、セル隙間厚さの比較的わずかな減少及び/又は増加を許容するにすぎない場合がある。この関係で、第1の液晶セルの端から端までのセル隙間厚さの平均変化率は、オフサルミックレンズがユーザの眼上に置かれることによって変形した場合、オプションとして15%以下であり、オプションとして12%以下であり、オプションとして10%以下であり、オプションとして8%以下であり、オプションとして5%以下の場合がある。
【0019】
変形していない状態のレンズの平均セル隙間厚さは、オプションとして少なくとも2.0ミクロンであり、オプションとして少なくとも3.0ミクロンであり、オプションとして少なくとも3.5ミクロンであり、オプションとして少なくとも4.0ミクロンであり、オプションとして少なくとも4.5ミクロンであり、オプションとして少なくとも5.0ミクロンである。
【0020】
変形していない状態のレンズの平均セル隙間厚さは、オプションとして7.0ミクロン以下であり、オプションとして6.5ミクロン以下であり、オプションとして6.0ミクロン以下であり、オプションとして5.5ミクロン以下であり、オプションとして5.0ミクロン以下であり、オプションとして4.5ミクロン以下であり、オプションとして4.0ミクロン以下である。
【0021】
本明細書で用いられるミクロンは、当業者によって理解されているように、マイクロメートルと同一である。
【0022】
変形していない状態のレンズの平均セル隙間厚さは、オプションとして2.0ミクロン~7.0ミクロンであり、オプションとして2.5ミクロン~5.5ミクロンであり、オプションとして3.5ミクロン~5.0ミクロンであり、オプションとして3.5ミクロン~4.5ミクロンである。
【0023】
回折光学素子の平均高さは、平均セル隙間厚さに一致するのがよい。同様に、第1の液晶セル中の一点のところの回折光学素子の高さは、第1の液晶セル中の当該一点のところのセル隙間厚さに一致するのがよい。
【0024】
第1の液晶セルには、サポートをセル内のいくつかの場所に設けることによってセル隙間厚さを維持するための他の要素(例えば、スペーサ)が実質的にないのがよい。しかしながら、オプションとして、周辺スペーサが回折光学素子に加えて、第1の液晶セルの周囲のところに設けられてもよい。
【0025】
誤解を避けるために言えば、回折光学素子は、光の回折のみの結果として生じる制御されかつ所望の光学的効果を生じさせるよう、回折光学素子に当たった光の波長に対して十分に小さいサイズ及びスケールを特徴とする回折光学素子である。誤解を避けるために言えば、回折光学素子は、フレネルレンズを含まない。
【0026】
第1の液晶セルは、第1の非切り換え(切り換えられていない)状態と第2の切り換え(切り換えられた)状態との間で動作できる。第1の状態では、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率の差は、第2の状態の場合よりも大きい場合があり、あるいは第2の状態よりも小さい場合がある。第1の状態又は第2の状態では、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率の差は、小さいか、又はゼロである場合があり、すなわち、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率は、ほぼ同一である場合がある。この文脈では、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率の差は、オプションとして、0.03以下、オプションとして0.02以下、オプションとして0.01以下である場合がある。屈折率におけるかかる差は、電磁スペクトルの可視部分(450~700nmの波長の放射線)中の波長について計算されるべきである。屈折率のかかる差は、450nmの波長で、オプションとして700nmの波長で計算されるのがよい。オプションとして、かかる差は、450nmから700nmまでの複数の波長で計算されてもよい。第1及び第2の状態の他方では、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率は、一致せず、したがって、回折光学素子は、入射光を回折させる。第1の状態は、非切り換え状態であるのがよく、すなわち、第1の液晶セルに加えられる電圧は、ゼロ又は低い。第2の状態は、切り換え状態であるのがよく、すなわち、セル中の液晶を第2の状態に切り換える電圧が印加された状態である。
【0027】
誤解を避けるために言えば、有効屈折率は、コンタクトレンズ及び第1の液晶セルに直角に入射する光に関する液晶の屈折率である。第1の非切り換え状態では、有効屈折率は、nave=0.5(no+ne)であるのがよく、この場合、noは、液晶の常屈折率であり、neは、液晶の異常屈折率である。第2の切り換え状態では、有効屈折率は、noである。
【0028】
誤解を避けるために言えば、「ユーザの視力を矯正する」という表現は、ユーザの近見視力、遠見視力、及び/又は中間視力を矯正するのに適しているという意味である。
【0029】
回折光学素子の最大高さは、回折光学素子全体にわたって同一である必要はない。例えば、回折光学素子は、内側部分及び外側部分を有する場合がある。外側部分のところの回折光学素子の最大高さは、内側部分のところの回折光学素子の最大高さよりも高いのがよい。外側部分のところの回折光学素子の最大高さは、内側部分のところの回折光学素子の最大高さよりも最大20%増しであり、オプションとして最大15%増しであり、オプションとして最大10%増しであり、オプションとして最大7.5%増しであり、オプションとして最大5%増しであり、オプションとして最大2.5%増しであり、オプションとして最大1%増しであるのがよい。回折光学素子の高さは、代表的には、光軸に沿う高さである。
【0030】
外側部分のところの回折光学素子の最大高さは、内側部分のところの回折光学素子の最大高さよりも少なくとも1%増しであり、オプションとして少なくとも2%増しであり、オプションとして少なくとも3%増しであり、オプションとして少なくとも4%増しであり、オプションとして少なくとも5%増しであり、オプションとして少なくとも6%増しであり、オプションとして少なくとも7%増しであり、オプションとして少なくとも8%増しであり、オプションとして少なくとも10%増しであり、オプションとして少なくとも12.5%増しであり、オプションとして少なくとも15%増しであり、オプションとして少なくとも20%増しであるのがよい。
【0031】
内側部分は、回折光学素子の中心のところに位置し又はこの近くに位置するのがよい。
【0032】
回折光学素子の高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて増大するのがよい。回折光学素子の高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて線形的に増大するのがよい。回折光学素子の高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて劣線形的(sub-linearly)に増大してもよい。回折光学素子の高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて優線形的(super-linearly)に増大してもよい。
【0033】
回折光学素子の少なくとも一部分は、第1の表面に取り付けられるのがよく、回折光学素子の少なくとも一部分は、第2の表面に取り付けられるのがよい。
【0034】
上述したように、回折光学素子は、複数のピーク及びトラフ、オプションとして環状ピーク及び環状トラフを有するのがよい。外側部分は、外側ピークを有するのがよく、例えば、オプションとして10個の最も外側のピークのうちの1個、オプションとして8個の最も外側のピークのうちの1個、オプションとして5個の最も外側のピークのうちの1個、オプションとして3個の最も外側のピークのうちの1個を有するのがよい。外側部分は、最も外側のピークを含むのがよい。ピークの高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて増大するのがよい。ピークの高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて線形的に増大するのがよい。ピークの高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて劣線形的に増大するのがよい。ピークの高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて優線形的に増大するのがよい。
【0035】
一ピークの少なくとも一部分は、第2の表面に取り付けられるのがよい。
【0036】
液晶は、コレステリック液晶を含むのがよい。非切り換え状態では、第1及び/又は第2の内面に隣接して位置する液晶のダイレクタは、第1及び第2の内面に対してオプションとして20゜以下、オプションとして15゜以下、オプションとして10゜以下、オプションとして8゜以下、オプションとして5゜以下、オプションとして3゜以下の角度をなすのがよい。非切り換え状態では、第1及び第2の内面から遠くに位置する(オプションとして、第1の内面と第2の内面との中間にある)液晶のダイレクタは、第1及び第2の内面に対してオプションとして20゜以下、オプションとして15゜以下、オプションとして10゜以下、オプションとして8゜以下、オプションとして5゜以下、オプションとして3゜以下の角度をなすのがよい。切り換え状態では、第1及び第2の内面から遠くに位置する(オプションとして、第1の内面と第2の内面との中間にある)液晶のダイレクタは、第1及び第2の内面に対して少なくとも60゜、オプションとして少なくとも70゜、オプションとして少なくとも80゜、オプションとして少なくとも85゜の角度をなすのがよい。
【0037】
回折光学素子の屈折率は、オプションとして少なくとも1.40、オプションとして少なくとも1.42、オプションとして少なくとも1.44、オプションとして少なくとも1.46、オプションとして少なくとも1.48であるのがよい。
【0038】
回折光学素子の屈折率は、オプションとして1.72以下、オプションとして1.70以下、オプションとして1.68以下、オプションとして1.66以下、オプションとして1.64以下であるのがよい。
【0039】
例えば、回折光学素子の屈折率は、1.40~1.72であるのがよく、好ましくは1.42~1.70、より好ましくは1.44~1.68であるのがよい。
【0040】
コンタクトレンズは、ユーザの視力を矯正する別の光学素子を有するのがよい。この関係で、コンタクトレンズは、ユーザの視力を矯正するレンズ本体を有するのがよい。レンズ本体は、正の屈折力(パワー)、例えば、+0.5D、+1.0D又は+1.5Dをもたらすことができる。レンズ本体の屈折力は、固定されるのがよい。かかるレンズ本体の追加は、第1の液晶セルが第2の切り換え状態にあるときに、液晶の有効屈折率が回折光学素子の屈折率と一致している場合には、特に有用であるといえる。
【0041】
液晶の屈折率は、450nmと700nmの両方では、オプションとして、回折光学素子の屈折率の0.80~1.20倍である。液晶の屈折率は、450nmと700nmの両方では、回折光学素子の屈折率の0.90~1.10倍であるのがよい。液晶の屈折率は、450nmと700nmの両方では、回折光学素子の屈折率の0.95~1.05倍であるのがよい。液晶の屈折率は、450nmと700nmの両方では、回折光学素子の屈折率の0.97~1.03倍であるのがよい。液晶の屈折率は、450nmと700nmの両方では、回折光学素子の屈折率の0.98~1.02倍であるのがよい。
【0042】
液晶の上述の屈折率は、500nmでは、回折光学素子の屈折率の0.80~1.20倍であるのがよく、オプションとして0.90~1.10倍、オプションとして0.95~1.05倍、オプションとして0.97~1.03倍、オプションとして0.98~1.02倍であるのがよい。
【0043】
液晶の上述の屈折率は、平均屈折率naveであり、かくして、nave=0.5(ne+no)として計算され、この場合、neは、異常屈折率であり、noは、常屈折率である。
【0044】
第1の液晶セルは、コレステリック液晶を含むのがよく、回折光学素子の屈折率は、オプションとして1.57以下である。
【0045】
第1の液晶セルは、コレステリック液晶を含むのがよく、回折光学素子の屈折率は、オプションとして1.58以下である。
【0046】
回折光学素子は、複数のピーク及びトラフ、オプションとして環状ピーク及び環状トラフを有するのがよい。ピークとトラフは、同心であるのがよい。少なくとも1つのピーク、オプションとして2つ以上のピーク、及びオプションとしてピークの各々は、サポートをセル内の1つ以上の場所に設けることによってセル隙間厚さを維持する。
【0047】
回折光学素子は、少なくとも5つのピークを有するのがよく、オプションとして少なくとも7つのピーク、及びオプションとして少なくとも10個のピークを有するのがよい。回折光学素子は、オプションとして20個以下のピーク、オプションとして15個以下のピーク、オプションとして10個以下のピークを有するのがよい。
【0048】
コンタクトレンズは、2つ以上の液晶セルを有するのがよい。例えば、コンタクトレンズは、第2の液晶セルを含むのがよい。第1及び第2の液晶セルは、光が装用者の眼に入る前にこれら両方の液晶セルを通過するよう配置されているのがよい。第2の液晶セルは、本発明の第1の観点に関して上述した特徴を有するのがよい。例えば、第2の液晶セルは、第2の液晶セル内のスペーサとして働く回折光学素子を有するのがよい。
【0049】
本発明の第2の観点によれば、ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、コンタクトレンズは、
コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、回折光学素子は、内側部分及び外側部分を有し、外側部分のところの回折光学素子の高さは、内側部分のところの回折光学素子の高さの1%~20%増しであることを特徴とするコンタクトレンズもまた、提供される。
【0050】
本出願人は、回折光学素子の最大高さが、第1の液晶セルの内側部分のところよりも第1の液晶セルの外側部分のところの方が高いことが有利であるが、最大高さの差が制限されるべきであることを発見した。特に、本出願人は、回折光学素子のかかる配置が、コンタクトレンズを角膜上に配置したときの角膜の湾曲を補償することができるということを発見した。さらに、回折光学素子のかかる配置は、特に回折光学素子を有するレンズのエッジのところにおける「まっすぐに見たときの見え方(straight ahead viewing)」の向上を助けることができる。回折光学素子のこの配置は、回折光学素子のエッジのところの光の光路が、回折光学素子の中心のところの光の光路とほぼ同一であるようにするのを助ける。
【0051】
回折光学素子の高さは、代表的には光軸に沿う高さである。
【0052】
最大高さは、代表的には、局所的に、すなわち、回折光学素子の基底(ベース)又は底部に対して相対的に測定される。
【0053】
外側部分のところの回折光学素子の最大高さは、内側部分のところの回折光学素子の最大高さの最大15%増しであるのがよく、オプションとして最大10%増し、オプションとして最大7.5%増し、オプションとして最大5%増し、オプションとして最大2.5%増しであるのがよい。
【0054】
外側部分のところの回折光学素子の最大高さは、内側部分のところの回折光学素子の最大高さの少なくとも2%増し、オプションとして少なくとも3%増し、オプションとして少なくとも4%増し、オプションとして少なくとも5%増し、オプションとして少なくとも6%増し、オプションとして少なくとも7%増し、オプションとして少なくとも8%増し、オプションとして少なくとも10%増し、オプションとして少なくとも12.5%増し、オプションとして少なくとも15%増しであるのがよい。
【0055】
回折光学素子の高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて増大するのがよい。回折光学素子の高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて線形的に増大するのがよい。回折光学素子の高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて劣線形的に増大するのがよい。回折光学素子の高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて優線形的に増大するのがよい。
【0056】
内側部分は、回折光学素子の中心のところに位置し又はこの近くに位置するのがよい。
【0057】
回折光学素子は、弦長rにわたって延びるのがよい。内側部分は、回折光学素子の中心からr/8の弦長の範囲内にある回折光学素子の部分を含むのがよい。外側部分は、r/4(オプションとして、3r/8)~r/2の弦長を有する回折光学素子の部分を含むのがよい。
【0058】
回折光学素子は、複数のピークとトラフ、オプションとして環状ピーク及び環状トラフを有するのがよい。外側部分は、外側ピーク、例えば、オプションとして10個の最も外側のピークのうちの1個、オプションとして8個の最も外側のピークのうちの1個、オプションとして5個の最も外側のピークのうちの1個、及びオプションとして3個の最も外側のピークのうちの1個を有するのがよい。外側部分は、最も外側のピークを有するのがよい。ピークの高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて増大するのがよい。ピークの高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて線形的に増大するのがよい。ピークの高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて劣線形的に増大してもよい。ピークの高さは、回折光学素子の中心からの距離につれて優線形的に増大してもよい。
【0059】
液晶は、コレステリック液晶を含むのがよい。非切り換え状態では、第1及び第2の内面から遠くに位置する(オプションとして、第1の内面と第2の内面との中間にある)液晶のダイレクタは、第1及び第2の内面に対してオプションとして20゜以下、オプションとして15゜以下、オプションとして10゜以下、オプションとして8゜以下、オプションとして5゜以下、オプションとして3゜以下の角度をなすのがよい。切り換え状態では、第1及び第2の内面から遠くに位置する(オプションとして、第1の内面と第2の内面との中間にある)液晶のダイレクタは、第1及び第2の内面に対して少なくとも60゜、オプションとして少なくとも70゜、オプションとして少なくとも80゜、オプションとして少なくとも85゜の角度をなすのがよい。
【0060】
変形していない状態のレンズの平均セル隙間厚さは、オプションとして少なくとも2.0ミクロン、オプションとして少なくとも3.0ミクロン、オプションとして少なくとも3.5ミクロン、オプションとして少なくとも4.0ミクロン、オプションとして少なくとも4.5ミクロン、オプションとして少なくとも5.0ミクロンである。
【0061】
変形していない状態のレンズの平均セル隙間厚さは、オプションとして7.0ミクロン以下、オプションとして6.5ミクロン以下、オプションとして6.0ミクロン以下、オプションとして5.5ミクロン以下、オプションとして5.0ミクロン以下、オプションとして4.5ミクロン以下、オプションとして4.0ミクロン以下である。
【0062】
変形していない状態のレンズの平均セル隙間厚さは、オプションとして2.0ミクロン~7.0ミクロン、オプションとして2.5ミクロン~5.5ミクロン、オプションとして3.5ミクロン~5.0ミクロン、及びオプションとして3.5ミクロン~4.5ミクロンである。
【0063】
本発明の第2の観点のコンタクトレンズは、本発明の第1の観点のコンタクトレンズの特徴のうちの任意のものを含むことができる。
【0064】
本発明の第3の観点によれば、ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、コンタクトレンズは、
コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子、及びコレステリック液晶を含み、
第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、第1の状態では、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率の差は、第2の状態の場合よりも大きく、又は小さく、
450nmと700nmの両方では、液晶の平均屈折率は、回折光学素子の屈折率の0.80~1.20倍であり、液晶の平均屈折率は、naveであり、かくして平均屈折率は、nave=0.5(ne+no)として計算され、この式において、neは、異常光屈折率であり、noは、常光屈折率であることを特徴とするコンタクトレンズが提供される。
【0065】
本出願人は、液晶の平均屈折率が、電磁スペクトルの可視部分において回折光学素子の屈折率とほぼ同じであることが有利であることを発見した。
【0066】
液晶の上述の平均屈折率及び回折光学素子の屈折率は、周囲温度、例えば20℃もしくは25℃、又は体温(約37℃)の温度に一致した温度、又は眼の角膜の温度(約34℃)に一致した温度で算定されるのがよい。
【0067】
液晶の平均屈折率は、450nmと700nmの両方では、回折光学素子の屈折率の0.90~1.10倍である。液晶の平均屈折率は、450nmと700nmの両方では、回折光学素子の屈折率の0.95~1.05倍であるのがよい。液晶の平均屈折率は、450nmと700nmの両方では、回折光学素子の屈折率の0.97~1.03倍であるのがよい。液晶の平均屈折率は、450nmと700nmの両方では、回折光学素子の屈折率の0.97~1.03倍であるのがよい。液晶の平均屈折率は、450nmと700nmの両方では、回折光学素子の屈折率の0.98~1.02倍であるのがよい。
【0068】
液晶の上述の平均屈折率は、500nmでは、回折光学素子の屈折率の0.80~1.20倍であるのがよく、オプションとして0.90~1.10倍、オプションとして0.95~1.05倍、オプションとして0.97~1.03倍、オプションとして0.98~1.02倍であるのがよい。
【0069】
液晶の上述の平均屈折率は、平均屈折率naveであり、かくして、nave=0.5(ne+no)として計算され、この場合、neは、異常屈折率であり、noは、常屈折率である。
【0070】
液晶の屈折率は、460nm、480nm、500nm、520nm、540nm、560nm、580nm、600nm、620nm、640nm、660nm及び680nmでは、オプションとして回折光学素子の屈折率の0.80~1.20倍、オプションとして0.90~1.10倍、オプションとして0.95~1.05倍、オプションとして0.97~1.03倍、オプションとして0.98~1.02倍である。
【0071】
液晶の有効屈折率は、450nmから700nmまでの実質的に全ての波長において、回折光学素子の屈折率のオプションとして0.80~1.20倍である。液晶の屈折率は、450nmから700nmまでの実質的に全ての波長において、回折光学素子の屈折率の0.90~1.10倍であるのがよく、回折光学素子の屈折率のオプションとして0.95~1.05倍、オプションとして0.97~1.03倍、オプションとして0.98~1.02倍であるのがよい。当業者であれば、全ての波長で屈折率を測定する必要はなく、屈折率は、大抵の材料についてはほぼ同じ仕方で波長につれて変化することを理解するであろう。代表的には、屈折率は、連続的に450nmから700nmまで減少し、最小値、最大値、又は変曲点は存在しない。
【0072】
第1の液晶セルは、第1の状態と第2の状態との間で動作できる。第1の状態(代表的には、非切り換え状態)では、第1及び第2の内面(及びオプションとして第1の内面と第2の内面との間の中間)から見て遠くに位置する液晶のダイレクタは、第1及び第2の内面に対して20゜以下、オプションとして15゜以下、オプションとして10゜以下、オプションとして8゜以下、オプションとして5゜以下、オプションとして3゜以下の角度をなすのがよい。切り換え状態(例えば、第2の状態)では、第1及び第2の内面から遠くに位置する(オプションとして、第1の内面と第2の内面との中間にある)液晶のダイレクタは、第1及び第2の内面に対して少なくとも60゜、オプションとして少なくとも70゜、オプションとして少なくとも80゜、オプションとして少なくとも85゜の角度をなすのがよい。
【0073】
本発明の第3の観点のレンズは、本発明の第1及び/又は第2の観点のレンズの特徴のうちの任意のものを含むことができる。
【0074】
本発明の第4の観点によれば、ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、コンタクトレンズは、
コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子、及びコレステリック液晶を含み、
第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、第1の状態では、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率の差は、第2の状態の場合よりも大きく、又は小さく、
回折光学素子の屈折率は、1.57以下であることを特徴とするコンタクトレンズが提供される。
【0075】
本出願人は、回折光学素子の屈折率が比較的低い場合、コンタクトレンズの光学性能が第2の状態では、広い波長範囲にわたって良好な近視野性能に合った良好な屈折率を示すということを発見した。
【0076】
第1の状態又は第2の状態では、しかしながら、好ましくは第2の状態では、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率の差は、小さいか、又はゼロである場合があり、すなわち、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率は、ほぼ同じである。第2の状態では、屈折率の一致のゆえに、回折光学素子は、入射光を著しく回折させることはない。第1の状態又は第2の状態では、しかしながら好ましくは第1の状態では、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率の差は、他方の状態の場合よりも大きいのがよく、その結果、回折光学素子は、入射光を回折させるようになっている。
【0077】
第1の非切り換え状態では、液晶の有効屈折率は、液晶の平均屈折率であるのがよく、つまり、nave=0.5(ne+no)であり、この場合、neは、異常屈折率であり、noは、常屈折率である。第2の切り換え状態では、液晶の有効屈折率は、no、すなわち常屈折率であるのがよい。
【0078】
コンタクトレンズは、ユーザの視力を矯正するレンズ本体を有するのがよい。レンズ本体は、正の屈折力、例えば、+0.5D、+1.0D又は+1.5Dをもたらすことができる。レンズ本体の屈折力は、固定されるのがよい。レンズ本体は、レンズの最も上の部分のところ又はその近くに配置されるのがよく、この最上部分は、装用者の眼に接触するレンズの部分から遠ざかる方向に向く。かかるレンズ本体の追加は、第1の液晶セルが第2の切り換え状態にあるときに、液晶の有効屈折率が回折光学素子の屈折率と一致している場合には、特に有用であるといえる。
【0079】
回折光学素子の屈折率は、オプションとして1.55以下、オプションとして1.53以下である。
【0080】
回折光学素子の屈折率は、オプションとして少なくとも1.43、オプションとして少なくとも1.45、オプションとして少なくとも1.47、オプションとして少なくとも1.49である。
【0081】
回折光学素子の屈折率は、オプションとして1.43~1.57、オプションとして1.45~1.55、オプションとして1.47~1.55である。
【0082】
第1及び第2の内面から遠くに位置する(オプションとして、第1の内面と第2の内面との中間にある)液晶のダイレクタは、非切り換え状態では、第1及び第2の内面に対して20゜以下、オプションとして15゜以下、オプションとして10゜以下、オプションとして8゜以下、オプションとして5゜以下、オプションとして3゜以下の角度をなすのがよい。切り換え状態では、第1及び第2の内面から遠くに位置する(オプションとして、第1の内面と第2の内面との中間にある)液晶のダイレクタは、第1及び第2の内面に対して少なくとも60゜、オプションとして少なくとも70゜、オプションとして少なくとも80゜、オプションとして少なくとも85゜の角度をなすのがよい。
【0083】
本発明の第4の観点のレンズは、本発明の第1、第2及び/又は第3の観点のレンズの特徴のうちの任意のものを含むことができる。
【0084】
本発明の第5の観点によれば、ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、コンタクトレンズは、
コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子、及びコレステリック液晶を含み、
第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、第1の状態では、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率の差は、第2の状態の場合よりも大きく、又は小さく、
回折光学素子の屈折率は、少なくとも1.58であることを特徴とするコンタクトレンズが提供される。
【0085】
本出願人は、回折光学素子の屈折率が比較的高い場合、レンズの光学性能は、第1の状態における互いに異なる波長に対する低い感度を示すことを発見した。
【0086】
第1の状態又は第2の状態では(しかしながら、好ましくは第1の状態では)、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率の差は、小さいか、又はゼロである場合があり、すなわち、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率は、ほぼ同じである。第1の状態では、屈折率の一致のゆえに、回折光学素子は、入射光を著しく回折させることはない。第1の状態又は第2の状態では、しかしながら好ましくは第2の状態では、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率の差は、他方の状態の場合よりも大きいのがよく、その結果、回折光学素子は、入射光を回折させるようになっており、これは、コンタクトレンズの屈折力に寄与する。
【0087】
第1の非切り換え状態では、液晶の有効屈折率は、液晶の平均屈折率であるのがよく、つまり、nave=0.5(ne+no)であり、この場合、neは、異常屈折率であり、noは、常屈折率である。第2の切り換え状態では、液晶の有効屈折率は、no、すなわち常屈折率であるのがよい。
【0088】
回折光学素子の屈折率は、オプションとして少なくとも1.58、オプションとして少なくとも1.60、オプションとして少なくとも1.62、オプションとして少なくとも1.64、オプションとして少なくとも1.66である。
【0089】
回折光学素子の屈折率は、オプションとして1.70以下、オプションとして1.68以下、オプションとして1.66以下である。
【0090】
回折光学素子の屈折率は、オプションとして1.58~1.70、オプションとして1.60~1.68、オプションとして1.62~1.66である。
【0091】
非切り換え状態では、第1及び第2の内面、オプションとして第1の内面と第2の内面との間の中間から見て遠くに位置する液晶のダイレクタは、第1及び第2の内面に対して20゜以下、オプションとして15゜以下、オプションとして10゜以下、オプションとして8゜以下、オプションとして5゜以下、オプションとして3゜以下の角度をなすのがよい。切り換え状態では、第1及び第2の内面、オプションとして第1の内面と第2の内面との間の中間から見て遠くに位置する液晶のダイレクタは、第1及び第2の内面に対して少なくとも60゜、オプションとして少なくとも70゜、オプションとして少なくとも80゜、オプションとして少なくとも85゜の角度をなすのがよい。
【0092】
第6の観点によれば、ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、コンタクトレンズは、
コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、
回折光学素子は、複数のピークとトラフを有し、ピークは、第1の内面から第2の内面に向かう方向に延び、
少なくとも一方のピークの少なくとも一部分は、第2の内面に取り付けられていることを特徴とするコンタクトレンズが提供される。
【0093】
第2の内面への回折光学素子の少なくとも1つのピークの取り付けにより、セル内における液晶の運動を制限することができ、この運動は、望ましくない場合がある。
【0094】
回折光学素子は、サポートをセル内の1つ以上の場所に設けることによって、セル隙間厚さを維持するよう配置されているのがよい。
【0095】
回折光学素子は、中央ピーク及び複数の外側ピークを有するのがよく、外側ピークのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分は、第2の内面に取り付けられる。
【0096】
少なくとも1つの外側のピーク、オプションとして2つ以上の外側ピーク、オプションとして各々は、環状であるのがよい。1つ以上の外側ピーク、オプションとして全ての外側ピークは、同心であるのがよい。
【0097】
少なくとも1つのピークの少なくとも大部分、実質的に全ては、第2の表面に取り付けられるのがよい。かかる配置は、第1の液晶セルが変形した場合であってもピークをこえる液晶の通過を阻止する。
【0098】
2つ以上のピークの実質的に全ては、第2の内面に取り付けられるのがよい。
【0099】
各ピークは、第2の内面に取り付けられるのがよい。実質的に全てのピークの各々は、第2の内面に取り付けられるのがよい。
【0100】
第2の内面へのピークの取り付けは、例えば、接着剤を用いて達成されるのがよい。変形例として、ピーク及び第2の内面のうちの少なくとも一方は、ピークと第2の内面を加熱して冷却時に取り付ける溶融可能なポリマーを備えるのがよい。
【0101】
本発明の第7の観点によれば、ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、コンタクトレンズは、
コンタクトレンズの少なくとも1つの光学特性を変化させる第1の液晶セルを有し、第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、回折光学素子は、固有動作波長を有し、固有動作波長は、450nm~510nmであり、
第1の液晶セルは、コレステリック液晶を含み、
第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、第1の状態では、液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率の差は、第2の状態の場合よりも大きく、又は小さいことを特徴とするコンタクトレンズが提供される。
【0102】
本出願人は、代表的には他のレンズ、例えば眼鏡レンズ向きに使用できる固有動作波長よりも低い固有動作波長をもつ回折光学素子を使用することが有利であることを発見した。
【0103】
固有動作波長は、例えば、560nm以下、オプションとして550nm以下、オプションとして540nm以下、オプションとして530nm以下、オプションとして520nm以下、オプションとして510nm以下、オプションとして500nm以下、オプションとして490nm以下、オプションとして480nm以下であるのがよい。本出願人は、眼鏡のレンズにおいて最大550nmのところで問題を生じさせるおそれのある青色回折アーチファクトがコンタクトレンズについては問題を生じさせることがないので、最高約550nmの固有動作波長をもつ実現可能なコンタクトレンズを得ることが可能であるということを発見した。
【0104】
固有動作波長は、例えば、少なくとも460nm、オプションとして少なくとも470nm、オプションとして少なくとも480nmであるのがよい。
【0105】
固有動作波長は、例えば、460~560nm、オプションとして460~550nm、オプションとして470~490nm、オプションとして470~490nm、そして、オプションとして480nmであるのがよい。
【0106】
次に、図1図9を参照して例示の実施形態について説明するが、これらは例示に過ぎない。
【0107】
本発明の第1及び第2の観点の実施形態としての電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズの一例が図1及び図2に示されている。図1は、全体を参照符号1で示したコンタクトレンズの概略断面図であり、このコンタクトレンズ1は、任意適当な材料、例えばシリコーンヒドロゲル材料、ケイ素化合物のないヒドロゲル材料、及びシリコーンエラストマー材料からなるフレキシブルレンズ本体2を有し、かかる材料には、全体を参照符号3で示された液晶セルが組み込まれている。図2は、コンタクトレンズ1の一部の断面図である。図面が煩雑になるのを避けるとともに、説明を容易にするために、液晶セル3が扁平な/平板状のものとして図2に示されている。当業者であれば、これはそうではなく、液晶セルの形状は、図1に正しく示されていることを認識するであろう。液晶セル3は、ユーザの視力を矯正する回折光学素子4及び液晶5を有する。概要を述べると、液晶は、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で切り換え可能である。切り換え状態及び非切り換え状態のうちの一方に関し、液晶の屈折率は、回折光学素子の屈折率と一致し、回折光学素子は、第1の焦能力を有する。切り換え状態と非切り換え状態のうちの他方に関し、液晶の屈折率は、回折光学素子の屈折率に一致しておらず、回折光学素子は、第1の焦能力とは異なる第2の焦能力を有する。
【0108】
回折光学素子4は、複数のピーク(山)及びトラフ(谷)を有し、中央ピーク10Aと8つの環状ピーク10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H,10Iが中央ピーク周りに同心状に配置され、それにより9つの回折ゾーン(1ゾーンは、隣り合うピークの各対相互間に設けられる)が提供されている。図面を煩雑にするのを避けるために、関連のトラフには参照符号を付けていない。かかる回折素子は、光学機器の当業者には知られている。既知のレンズでは、スペーサビード又はこの類似物が第1の内面6と第2の内面7との間のセル間隔を維持するために使用されることがある。この実施例では、回折光学素子4は、第1の内面6と第2の内面7との間のセル間隔を維持するためのスペーサとして働く。図2は、中央ピーク10Aが第2の内面と接触していない状態を示しているが、これは、ピーク10Aの高さがピーク10Iの高さよりも低いことを示すためにこのようにしているに過ぎず、これについては以下に詳細に説明する。スペーサ11が回折光学素子4の外方で液晶セル3の周囲に沿ってぐるりと設けられている。このスペーサ11は、グルー内に分散配置された直径が約4ミクロンのビードで形成されている。第1の内面6と第2の内面7との間隔は、ほぼ4ミクロンであるが、この間隔は、液晶セル3の外側領域22のところでは内側領域21よりも大きく、この差は、約5%であり、かかる差は、内側部分21及び外側部分22のところの回折光学素子4の最大高さの差に起因する。外側部分22のところの回折光学素子4の最大高さh2は、4.0ミクロンであり、内側部分21のところの回折光学素子4の最大高さh1は、3.85ミクロンである。最大高さのこの差は、わずかであるが、それにより光学性能が向上する。特に、本出願人は、回折光学素子のかかる配置がコンタクトレンズを角膜上に置いたときに角膜の曲率を補償することができるということを発見した。さらに、回折光学素子のかかる配置は、特に回折光学素子を有するレンズのエッジのところにおける「まっすぐに見たときの見え方」の向上を助けることができる。回折光学素子のエッジのところの回折光学素子の高さが増加することにより、このエッジのところでの光路は、回折光学素子の中心とほぼ同じになる。回折光学素子のかかる配置により、最適な光学性能の波長は、回折光学素子の幅全体にわたってほぼ同一となる。高さを増大しなければ、回折光学素子のエッジのところの光路は、回折光学素子の中心よりもわずかに短くなり、これは望ましくない。
【0109】
ピーク10A~10Iの高さは、回折光学素子4の中心から距離が長くなるにつれて増大する。ピーク10A~10Iの高さは、回折光学素子の中心からの距離つれて、劣線形的に、線形的に又は優線形的に増大する場合がある。
【0110】
回折光学素子4は、回折光学素子を通る波面が各ゾーン境界部を横切る2π位相シフトを示すよう「切り刻まれた」球面である(2πシフトが厳密に言えば、単一の波長でしか起こらないということを認める)。予想されるように、単純な球面(回折光学素子の領域にわたって単純で一様な球面パワーを与える)ではなく、回折光学素子の形状を単純に変更して回折光学素子の領域全体にわたって互いに異なる屈折力を有することができるようにする場合がある。例えば、乱視の治療のために長円形の回折光学素子を用いることができる場合がある。
【0111】
回折光学素子4は、第1の内面6と第2の内面7との間に間隔を維持し、そしてこの回折光学素子は、レンズ1(及びかくして液晶セル3)が変形したとき、例えばレンズが装用者の角膜上に置かれたときに起こる場合のある間隔の大幅な減少を阻止する。角膜は、一般的には非球面であり、装用者の角膜上にコンタクトレンズを載せることにより、レンズが変形する。スペーサとして働く回折光学素子4が存在しない場合、第1の内面6と第2の内面7との間の間隔の大幅な減少は、コンタクトレンズ1が装用者の眼上に配置されたとしたら液晶セル3のあるいくつかの部分について観察される場合がある。さらに、セル隙間厚さを維持することによっても、液晶がヘイズなく整列することができるのに十分足るほど小さいセル隙間厚さが維持される。
【0112】
本出願人は、ピークが内面7に取り付けられず、ユーザの角膜上に載せられた場合にそうであるようにコンタクトレンズが変形する場合、液晶は、コンタクトレンズの外側部分に向かって外方にピーク10A,10B相互間のスペースから動かされる場合があり、それにより回折光学素子と内面7との間に相当な量の過剰液晶が生じ、第1の内面6と第2の内面7との間の間隔がピーク10G、10H及び10Iの領域において最大1ミクロンまで増大する。液晶の変位の減少を助けるため、少なくとも1つ、オプションとして2つ以上、オプションとして各々のピーク10A~10Iが接着剤を用いて内面7にくっつけられる場合がある。接着剤に代わる一手段として、ピーク10A~10Iをポリマー9の溶融、加圧及び冷却によって内面に取り付けることができる場合がある。さらにまた、ピークを物理的接着により、例えばプラズマ処理プロセスなどの使用により取り付けることができる。しかしながら、1つ又は複数のピークを内面7にくっつけることは、必要不可欠ではなく、というのは、光学部品の光学的性質は、回折素子により液晶変位による相当なマイナスの影響を受けないからである。
【0113】
液晶デバイス3では、液晶は、キラルドーパントをドープしたネマチック液晶からなるコレステリック液晶である。かかるネマチック液晶は、液晶科学の当業者には周知であり、ネマチック液晶は、例えば、E7、BL037及び/又はBL038を含むのがよい。かかるキラルドーパント、例えば、Merck ZLI-3786、CB15及びS811もまた、液晶科学の当業者には周知である。液晶デバイス3中の分子の局所アライメントの状態が図3に概略的に示されている。図2を参照すると、内面6,7は、ゴムポリマーに隣接して位置する液晶分子にアライメントを与えるアライメントポリマーで形成されている。アライメントポリマーに隣接して位置する液晶分子のかかるアライメントは、液晶の粘弾性特性に応じて、アライメントポリマーから遠くに位置する液晶に特定の配向を与える。図2を参照すると、上記ポリマー9の層が液晶5に隣接して位置している。この場合におけるアライメントポリマー9は、UV硬化ポリマー(Rolic ROP-103/2CP )である。ポリマーは、適当に偏光したUV放射線を用いて硬化され、その結果、このポリマーは、このポリマーに隣接して位置する液晶に望ましいアライメントを与えるようになっている。同様なUV硬化済みポリマー層が回折光学素子4の頂部上に設けられているが、これは図示していない。アライメントポリマー層は、ゴムポリマー層に隣接して位置するダイレクタ(液晶分子の平均方向)が第1の内面6及び第2の内面7にほぼ平行であるのがよいが、代表的には数度(第1の内面6と第2の内面7に隣接して位置する小さな円によって示されている)傾けられる(「プレチルト」として当業者には知られている現象)よう互いにこすりあわされる。第1の内面6及び第2の内面7に隣接して位置するダイレクタの傾きは、数度を超えるのがよい。例えば、第1の内面6及び第2の内面7に隣接して位置するダイレクタの傾きは、10~30゜であるのがよい。第1の内面6と第2の内面7との間には、液晶5のダイレクタは、螺旋構造を形成する。これは、図3に示されている。ロッドの形状の示唆するところによれば、液晶のダイレクタは、第1の内面6及び第2の内面7にほぼ平行であり、しかもこの図の紙面内に位置している。この非切り換え状態では、液晶の有効屈折率は、偏光独立性であり、nave=0.5(ne+no)(方程式1)が与えられ、この式において、neは、異常屈折率、noは、常屈折率である。当業者であれば、液晶が単一屈折率物体として妥当な近似で挙動するためには、液晶のピッチが500nm以下(すなわち、入射光の波長とほぼ同じ又はこれよりも小さい)であることが望ましいことを認識するであろう。本出願人は、相当な光学的アーチファクトが見えないようにした状態でコンタクトレンズは、液晶が比較的高いピッチ(例えば、600~700nm)を有する場合には満足のゆくほどに動作することが可能であるということを発見した。これは、比較的高いピッチを用いることによりスイッチング電圧を減少させることができるので有益であるといえる。
【0114】
アライメントポリマー9に隣接して位置する液晶のダイレクタのアライメントが図10に示されており、矢印は、アライメントポリマーに隣接して位置する液晶のダイレクタの方向を支持している。かかるアライメントは、コンタクトレンズの偏光独立動作を提供するために用いられる。回折光学素子4上に形成されたポリマー層に隣接して位置する液晶のダイレクタのアライメントは、図10に示すアライメントと本質的に同一である。
【0115】
液晶5及び回折光学素子4の構成材料は、所望の光学的結果を達成するよう選択されるのがよい。例えば、液晶及び回折光学素子を製造するために用いられる材料は、液晶の有効屈折率が回折光学素子を製造するために用いられる材料の有効屈折率と一致するよう選択されるのがよく、この場合、回折光学素子は、レンズの焦能力に何ら寄与しない。変形例として、液晶の有効屈折率が回折光学素子を製造するために用いられた材料の有効屈折率と一致しない場合、回折光学素子は、レンズの焦能力への寄与をなす。
【0116】
適当な電圧が液晶セルの電極(8A,8B)に印加されると、液晶分子は、図4に概略的に示されたホメオトロピック状態に切り換えられ、このホメオトロピック状態では、液晶セル3の中央部分30内の液晶のダイレクタは、第1の内面6及び第2の内面7に垂直である。液晶のこのリアライメントは、異なる有効屈折率をもたらす。あるいくつかの場合、液晶が切り換え状態にあるとき、液晶の有効屈折率は、回折光学素子4を製造するために用いられた材料の屈折率と一致するのがよく、この場合、回折光学素子は、レンズの焦能力には一向に寄与しない。これとは逆に、液晶が切り換え状態にある時、液晶の有効屈折率は、回折光学素子4を製造するために用いられる材料の屈折率と一致しない場合があり、この場合、回折光学素子は、レンズの焦能力に寄与する。
【0117】
次に、本発明の第3の観点によるコンタクトレンズの一実施形態の一実施例について、図1及び図2を参照して説明する。電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズは、参照数字1で示されている。レンズ1は、コンタクトレンズの焦能力を変化させる液晶セル3を有する。液晶セル3は、ユーザの視力を矯正する回折光学素子4、及びコレステリック液晶5を有する。液晶セル3は、切り換え状態と非切り換え状態との間で動作可能である。回折光学素子はMR10で作られ、回折光学素子は、1.63の屈折率を有する。非切り換え状態では、液晶セルの有効屈折率と回折光学素子の有効屈折率は一致しており、したがって、回折光学素子は、レンズの焦能力に寄与しない。液晶の平均屈折率は、上述の方程式1に従って計算される。液晶の平均屈折率は、効果的には、全ての可視波長で、すなわち450~700nmで回折光学素子の屈折率に合わせられる。このように、全ての可視波長で屈折率を合わせることにより、光学性能が向上し、というのは、回折光学素子から観察される回折の量が可視スペクトル全体にわたる屈折率の一致に起因して最小限に抑えられるからである。当業者は、可視スペクトル全体にわたる屈折率の正確な一致が必要とされないことを認識するであろう。
【0118】
次に、本発明の第4の観点によるコンタクトレンズの一実施形態の一例について図1及び図2を参照して説明する。コンタクトレンズは、全体が参照符号1で示され、かかるコンタクトレンズは、コンタクトレンズの焦能力を変化させる液晶セル3を有する。液晶セル3は、ユーザの視力を矯正する回折光学素子4、及びコレステリック液晶5を有する。コンタクトレンズの上面にはさらに+1Dバルジ(図示せず)がさらに設けられている。液晶セル3は、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作できる。第1の状態では、液晶分子は、図3を参照して上述したように配向される。液晶の平均屈折率は、1.63である。回折光学素子4は、トライベックス(Trivex)で作られ、この解決光学素子は、1.51の屈折率を有する。第1の非切り換え状態では、液晶の屈折率と回折光学素子の屈折率との間には不一致が存在する。この結果、回折光学素子は、レンズの焦能力に寄与する。回折光学素子は、コンタクトレンズに-1Dを寄与し、したがって、回折光学素子4のこの寄与分及び+1Dバルジを考慮に入れると、レンズの全パワーは、0Dである。これは、遠見視力状態であるとみなされうる。第2の切り換え状態では、液晶5の有効屈折率は、1.51であり、液晶の屈折率と回折光学素子の屈折率との間には一致が存在する。この結果、回折光学素子は、レンズの焦能力には寄与しない。したがって、レンズの全パワーは+1Dである。これは、近見視力状態である。パワー不足の場合、コンタクトレンズは、デフォルトで遠見視力になり、すなわち屈折力は、0Dである。
【0119】
本出願人は、液晶の有効屈折率と、液晶セルが第2の状態に切り換えられたときに光の全ての可視波長に関して回折光学素子を作る材料の有効屈折率との間に優れた一致を得ることが可能であることを発見した。図5は、液晶の有効屈折率(no)と回折光学素子を作る材料の有効実効屈折率は、液晶セルが第2の状態に切り換えられると、光の全ての可視波長について実質的に同一であるということを示している。この関係で、実線は、液晶と回折光学素子の有効屈折率を示している。液晶と回折光学素子の有効屈折率は、400nmから700nmまでは実質的に同じである。この屈折率の優れた一致の結果として、回折光学素子は、レンズの屈折力に寄与することはない。さらに図5は、回折光学素子から観察された種々の次数の回折プロフィールの強度を示している。この関係で、破線は、0次回折プロフィールを示し、一点鎖線(ドットで隔てられた長いダッシュ)は、1次回折プロフィールを示し、点線は、2次回折プロフィールを示している。図5に示す1次及び2次回折プロフィールは、100を乗算した状態で示されていることに注目されたい。コンタクトレンズに入射した光の事実上全てが透過され、きわめてわずかな光しか回折されず、あらゆる波長で極めて小さな1次及び2次回折プロフフィールが生じていることが分かる。
【0120】
図6は、液晶セル3が第1の非切り換え状態にあるときに、波長の関数としての回折光学素子からの種々の回折ピークの強度を示している。この場合、液晶の有効屈折率と回折光学素子の有効屈折率との間には不一致が存在し、したがって、回折光学素子は、レンズの焦能力に寄与する。この関係で、破線は、0次回折プロフィールを示し、一点鎖線(ドットで隔てられた長いダッシュ)は、1次回折プロフィールを示し、点線は、2次回折プロフィールを示している。図6は、幾分かの波長依存性があるが、レンズの光学性能は、依然として良好であることを示している。驚くべきこととして、本出願人は、コンタクトレンズの光応答の幾分かの波長依存性が存在するにもかかわらず、眼鏡レンズで観察される横方向の虹効果がコンタクトレンズでは観察されないことを見出した。したがって、本出願人は、屈折率が比較的低い(すなわち、1.57以下)回折光学素子を用いて、良好な光学性能を備えたレンズを得ることができるということを実証した。
【0121】
次に、本発明の第5の観点によるコンタクトレンズの一実施形態の一例について図1及び図2を参照して説明する。コンタクトレンズは、全体が参照符号1で示され、このコンタクトレンズは、コンタクトレンズの焦能力を変化させる液晶セル3を有する。液晶セル3は、ユーザの視力を矯正する回折光学素子4、及びコレステリック液晶5を有する。液晶セル3は、第1の非切り換え状態と、第2の切り換え状態との間で動作でき、第1の状態における液晶の屈折率と回折光学素子の屈折率との差は、第2の状態の場合よりも小さい。回折光学素子の屈折率は、1.63である。第1の非切り換え状態では、液晶の有効屈折率は、1.63であり、液晶の屈折率と回折光学素子の屈折率との間には一致が存在する。この結果、回折光学素子は、レンズの焦能力に寄与しない。したがって、コンタクトレンズの全パワーは、0Dである。これは、遠見視力状態であるとみなされうる。第2の切り換え状態では、液晶5の有効屈折率は、1.51であり、液晶の屈折率と回折光学素子の屈折率との間には不一致が存在する。この結果、回折光学素子は、レンズの焦能力に寄与する。したがって、レンズの全パワーは+1Dである。これは、近接又は近見視力状態である。パワー不足の場合、コンタクトレンズは、デフォルトで遠見視力になり、すなわち屈折力は、0Dである。
【0122】
本出願人は、液晶セルが第1の非切り換え状態にあるときに光の全ての可視波長について液晶の有効屈折率と回折光学素子を作る材料の有効屈折率と間に良好な一致を得ることができ、低い方の波長(500nm未満)では屈折率にほんのわずかな差があるということを発見した。この関係で、液晶の屈折率は、実線として示され、回折光学素子の屈折率は、実線のすぐ隣に位置する細い破線として示されている。屈折率のこの優れた一致の結果として、回折光学素子は、レンズの屈折力にそれほど寄与をしない。図7は、回折光学素子から観察された種々の次数の回折プロフィールの強度を示している。この関係で、太い破線は、0次回折プロフィールを示し、一点鎖線(ドットで隔てられた長いダッシュ)は、1次回折プロフィールを示し、点線は、2次回折プロフィールを示している。図7に示す1次及び2次回折プロフィールは、100を乗算した状態で示されていることに注目されたい。コンタクトレンズに入射した光の事実上全てが透過され、きわめてわずかな光しか回折されず、あらゆる波長で極めて小さな1次及び2次回折プロフフィールが生じていることが分かる。
【0123】
図8は、液晶セル3が第2の切り換え状態にあるときに、波長の関数としての回折光学素子からの種々の回折ピークの強度を示している。この場合、液晶の有効屈折率と回折光学素子の有効屈折率との間には不一致が存在し、回折光学素子は、レンズの焦能力に寄与する。この関係で、太い破線は、0次回折プロフィールを示し、一点鎖線(ドットで隔てられた長いダッシュ)は、1次回折プロフィールを示し、点線は、2次回折プロフィールを示している。図8は、極めてわずかな波長依存性があり、レンズの光学性能は、依然として良好であることを示している。したがって、本出願人は、屈折率が比較的高い(すなわち、少なくとも1.58)回折光学素子を用いて、良好な光学性能を備えたレンズを得ることができるということを実証した。驚くべきこととして、本出願人は、コンタクトレンズの光応答の幾分かの波長依存性が存在するにもかかわらず眼鏡レンズで観察される横方向の虹効果がコンタクトレンズでは観察されないことを見出した。
【0124】
上述の例示のコンタクトレンズは、予想外の良好な周辺イメージング性能をもたらしている。この関係で、光が広い角度範囲から回折光学素子に入射することが見込まれ、入射角度の広い変動及び角膜の曲率により、回折光学素子を通る光路長の大きな変化が生じ、それにより光学性能が不良になる。しかしながら、本出願人は、コンタクトレンズに入り、そして瞳孔を通って進む周辺光が入射光にほぼ垂直である回折光学素子の一部を通過し、すなわち、この光がほぼ同一方向からの光であり、入射角度のばらつきがほとんどないということを発見した。これにより良好な周辺イメージング性能が得られる。
【0125】
さらに、光の入射角度が垂線から大きくなるにつれて、回折光学素子を通過する光の量は減少する。ある角度では、回折光学素子を通る光は実質的には存在せず、光学アーチファクトは何ら観察されない。例えば、約53゜の入射の光及び5mm瞳孔サイズの場合、検出光束の約半分が回折光学素子に入射し、残りの半分がコンタクトレンズの非回折領域を通過する。これよりも大きな入射角の光の場合、光にさらされる回折光学素子の有効面積がさらに減少するため、光束が回折領域から完全に出てると、光学的アーチファクトは無視できなくなる。したがって、ユーザに関する限り、回折領域の急な開始/停止が存在はず、寄与の振幅が滑らかに変化するだけである。眼鏡レンズの具体化例の場合では、これは、回折光学素子を通して見るのと、回折光学素子を通して見ないのとの間におけるくっきりとした飛躍のように見える。
【0126】
本出願人はまた、非直角で回折光学素子を通過した入射光によって引き起こされる周辺光の非点収差が許容可能である(平均約0.3D)ことを発見した。
【0127】
次に、本発明の第7の観点によるフレキシブルコンタクトレンズの一実施形態の一例について、図1を参照して説明する。このコンタクトレンズは、本質的には、本発明の第5の観点に関して上述したコンタクトレンズである。コンタクトレンズは、全体が参照符号1で示され、コンタクトレンズ1は、このコンタクトレンズの焦能力を変化させる液晶セル3を有し、このコンタクトレンズは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有する。液晶セル3は、ユーザの視力を矯正する回折光学素子4、及びコレステリック液晶5を有する。液晶セル3は、第1の状態と第2の状態との間で動作でき、第1の状態における液晶の有効屈折率と回折光学素子の屈折率との差は、第2の状態の場合よりも大きい。液晶セルと回折光学素子は、固有動作波長を有し、この固有動作波長は、450nm~510nmである。固有動作波長は、レンズの1つ以上の特性が最適化された波長である。例えば、液晶セルが、液晶の有効屈折率が回折光学素子の有効屈折率と一致している状態、又は液晶の有効屈折率が回折光学素子の有効屈折率と一致していない状態にあるとき、レンズの透過率を含むのがよい。図8は、コンタクトレンズの特性を480nmでどのようにすれば最適化できるかを示している。当業者であれば、他の光学的性質が480nm又はその近傍で最適化できるということを理解するであろう。当業者であれば、例えば液晶の屈折率又は第1の内面と第2の内面との間のセル間隔を変更するために液晶を変更することによって最適化を決定できるということを理解するであろう。
【0128】
液晶の有効屈折率は、液晶の分子の配向に依存している。例えば、非切り換え状態では、液晶の有効屈折率は、上述したように方程式1で計算された平均屈折率である。切り換え状態では、液晶の有効屈折率は、noである。
【0129】
本発明の諸観点の全てのコンタクトレンズは、2つ以上の液晶セルを有することができ、これについては、次に図9を参照して説明する。本発明の第1の観点によるコンタクトレンズの一例が全体を参照符号101で示されている。レンズ101は、レンズ本体2内に設けられた第1の液晶セル3及び第2の液晶セル3′を有する。第1の液晶セル3は、実質的に、本発明の第1の観点のコンタクトレンズに関して上述したものである。第2の液晶セル3′は、第1の液晶セル3と実質的に同一である。当業者であれば、これがそのようである必要はないということを理解するであろう。
【0130】
当業者であれば、本発明のレンズが、上述したレンズとは異なる回折光学素子を有することができるということを理解するであろう。この関係で、回折ゾーンの数は、回折レンズの屈折力(ジオプタで表される)に正比例し、また、回折光学素子の直径の2乗に正比例する。したがって、回折光学素子が小さければ小さいほど、所定の屈折力を生じさせるのに必要な回折ゾーンがそれだけ一層少なくなる。以下の表1は、回折光学素子の所与の直径について、所与の焦能力を所持させるのに必要な回折ゾーンの数を示している。

表1‐回折光学素子の所与の直径についてある1つの焦能力を達成するのに必要な回折ゾーンの数
【0131】
当然のことながら、本発明の1つの観点に関して説明した特徴を本発明の別の観点に組み込むことができるということは理解されよう。例えば、本発明の方法は、本発明の装置に関して説明した特徴のうちの任意のものを含むことができ、又はその逆の関係が成り立つ。
【0132】
次に、本発明の別の観点について以下の実施態様項を参照して説明する。
〔実施態様項A1〕
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって 上記コンタクトレンズは、
上記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、上記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
上記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、
上記回折光学素子は、サポートをセル内の1つ以上の場所に設けることによって上記セル隙間厚さを維持するよう配置されている、コンタクトレンズ。
〔実施態様項A2〕
上記第1の液晶セルの周囲のところに設けられていて、上記回折光学素子に加えて上記セル隙間厚さを維持する周囲スペーサをさらに有する、実施態様項1A記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項A3〕
上記第1の液晶セルは、コレステリック液晶を含み、上記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、上記第1及び上記第2の状態のうちの一方の状態では、上記液晶の有効屈折率と上記回折光学素子の屈折率の差は、上記第1及び上記第2の状態のうちの他方の状態の場合よりも大きい、実施態様項A1又はA2記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項A4〕
上記第1及び上記第2の状態のうちの他方の状態では、上記液晶の有効屈折率と上記回折光学素子の屈折率の差は、ほぼゼロである、実施態様項A3記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項A5〕
上記回折光学素子は、内側部分及び外側部分を有し、上記外側部分のところの上記回折光学素子の高さは、上記内側部分のところの上記回折光学素子の高さよりも高い、実施態様項A1~A4のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項A6〕
上記回折光学素子の少なくとも一部分は、上記第1の内面に取り付けられ、上記回折光学素子の少なくとも一部分は、上記第2の内面に取り付けられるのがよい、実施態様項A1~A5のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項A7〕
450nmと700nmの両方では、上記液晶の平均屈折率は、上記回折光学素子の屈折率の0.80~1.20倍であり、上記平均屈折率は、nave=0.5(ne+no)であり、この式において、neは、異常光屈折率であり、noは、常光屈折率である、実施態様項A1~A6のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項A8〕
450nmと700nmの両方では、上記液晶の平均屈折率は、上記回折光学素子の屈折率の0.95~1.05倍である、実施態様項A7記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項B1〕
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、上記コンタクトレンズは、
上記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、上記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
上記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、上記回折光学素子は、内側部分及び外側部分を有し、上記外側部分のところの上記回折光学素子の上記高さは、上記内側部分のところの上記回折光学素子の上記高さの1%~20%増しである、コンタクトレンズ。
〔実施態様項B2〕
上記外側部分のところの上記回折光学素子の上記高さは、上記内側部分のところの上記回折光学素子の上記高さの少なくとも3%増しかつ最大15%増しである、実施態様項B1記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項B3〕
上記回折光学素子は、複数のピークとトラフを有し、上記外側部分は、外側ピーク、オプションとして最も外側のピークを有する、実施態様項B1又はB2記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項B4〕
上記回折光学素子は、弦長rにわたって延び、上記内側部分は、上記回折光学素子の中心からr/8の弦長の範囲内にある上記回折光学素子の上記一部分からなり、上記外側部分は、3r/8~r/2の弦長を有する回折光学素子の上記一部分からなる、実施態様項B1~B13のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項B5〕
上記液晶は、コレステリック液晶からなり、オプションとして、非切り換え状態では、上記液晶のダイレクタは、上記第1及び上記第2の内面に対して5°以下の角度をなすのがよく、切り換え状態では、上記液晶のダイレクタは、上記第1及び上記第2の内面に対して少なくとも60°の角度をなすのがよく、オプションとして少なくとも70°、オプションとして少なくとも80°、オプションとして少なくとも85°の角度をなすのがよい、実施態様項B1~B4のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項C1〕
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、上記コンタクトレンズは、
上記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、上記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
上記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子、及びコレステリック液晶を含み、
上記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、上記第1の状態では、上記液晶の有効屈折率と上記回折光学素子の屈折率の差は、上記第2の状態の場合よりも大きく、又は小さく、
450nmと700nmの両方では、上記液晶の平均屈折率は、上記回折光学素子の屈折率の0.80~1.20倍であり、上記液晶の上記平均屈折率は、naveであり、かくして、nave=0.5(ne+no)として計算され、
上式において、neは、異常光屈折率であり、noは、常光屈折率である、コンタクトレンズ。
〔実施態様項C2〕
450nmと700nmの両方では、上記液晶の平均屈折率は、上記回折光学素子の屈折率の0.95~1.10倍である、実施態様項C1記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項C3〕
450nmと700nmの両方では、上記液晶の平均屈折率は、上記回折光学素子の屈折率の0.95~1.05倍である、実施態様項C1又はC2記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項C4〕
上記液晶の平均屈折率は、500nmでは、上記回折光学素子の屈折率の0.95~1.05倍である、実施態様項C1~C3のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項D1〕
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、上記コンタクトレンズは、
上記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、上記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
上記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子、及びコレステリック液晶を含み、
上記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、上記第1の状態では、上記液晶の有効屈折率と上記回折光学素子の屈折率の差は、上記第2の状態の場合よりも大きく、又は小さく、
上記回折光学素子の屈折率は、1.57以下である、コンタクトレンズ。
〔実施態様項E1〕
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、上記コンタクトレンズは、
上記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、上記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
上記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子、及びコレステリック液晶を含み、
上記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、上記第1の状態では、上記液晶の有効屈折率と上記回折光学素子の屈折率の差は、上記第2の状態の場合よりも大きく、又は小さく、
上記回折光学素子の屈折率は、少なくとも1.58である、コンタクトレンズ。
〔実施態様項F1〕
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、上記コンタクトレンズは、
上記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、上記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
上記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、
上記回折光学素子は、複数のピークとトラフを有し、上記ピークは、上記第1の内面から上記第2の内面に向かう方向に延び、
少なくとも一方のピークの少なくとも一部分は、上記第2の内面に取り付けられている、コンタクトレンズ。
〔実施態様項F2〕
上記回折光学素子は、中央ピーク及び複数の外側ピークを有し、上記外側ピークのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分は、上記第2の内面に取り付けられている、実施態様項F1記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項F3〕
上記外側ピークの少なくとも1つ、オプションとして2つ以上、オプションとして各々は、環状である、実施態様項F2記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項F4〕
少なくとも1つのピークの少なくとも大部分、及びオプションとして実質的に周囲全体は、上記第2の内面に取り付けられている、実施態様項F1~F3のうちいずれか一に記載のコンタクトレンズ。
〔実施態様項G1〕
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、上記コンタクトレンズは、
上記コンタクトレンズの少なくとも1つの光学特性を変化させる第1の液晶セルを有し、上記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
上記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、上記回折光学素子は、固有動作波長を有し、上記固有動作波長は、450nm~510nmであり、
上記第1の液晶セルは、コレステリック液晶を含み、
上記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、上記第1の状態では、上記液晶の有効屈折率と上記回折光学素子の屈折率の差は、上記第2の状態の場合よりも大きく、又は小さいコンタクトレンズ。
〔実施態様項G2〕
上記固有動作波長は、460nm~490nm、オプションとして470nm~490nm、オプションとして480nmである、実施態様項G1記載のコンタクトレンズ。
【0133】
本発明を特定の実施形態に関して説明するとともに図示したが、当業者であれば、本発明を本明細書には具体的には示していない多種多様な変形例で実施できることは理解されよう。次に、ある幾つかの考えられる変形例について説明するが、これらは例示であるに過ぎない。
【0134】
回折光学素子の使用は、コレステリック液晶からなる液晶セルには限定されない。例えば、ドープされていないネマチック及びスメクチック液晶を含む他種類の液晶セルを使用することができる。
【0135】
上記説明中、知られている、明らかである又は予測できる均等例を有する整数又は要素に言及している場合、かかる均等例は、個々に記載されているかのごとく本明細書中に組み込まれる。本発明の真の範囲を定める特許請求の範囲を参照すべきであり、かかる真の範囲は、任意のかかる均等例を含むよう解されるべきである。また、好ましい、有利である、好都合である、などとして説明した本発明の整数又は特徴は、オプションであって、独立形式の請求項に記載された発明の範囲を限定するものではないことは理解されよう。さらに、かかるオプションとしての整数又は特徴は、本発明の幾つかの実施形態において有益であると考えられる場合があるが、望ましくない場合があり、したがって、他の実施形態では、記載されないのがよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、前記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
前記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、
前記回折光学素子は、サポートを前記セル内の1つ以上の場所に設けることによって前記セル隙間厚さを維持するよう配置され、
前記回折光学素子は、内側部分及び外側部分を有し、前記外側部分のところの前記回折光学素子の最大高さは、前記内側部分のところの前記回折光学素子の最大高さよりも高く、その結果、前記外側部分のところの前記回折光学素子は、前記第1の内面及び前記第2の内面の支えとなるとともに、前記第1の内面と前記第2の内面を前記第1の液晶セルの内側領域のところの距離よりも前記第1の液晶セルの外側領域のところの長い距離のところで隔てるようになっている、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記第1の液晶セルの周囲のところに設けられていて、前記回折光学素子に加えて前記セル隙間厚さを維持する周囲スペーサをさらに有する、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記第1の液晶セルは、コレステリック液晶を含み、前記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、前記第1及び前記第2の状態のうちの一方の状態では、前記液晶の有効屈折率と前記回折光学素子の屈折率の差は、前記第1及び前記第2の状態のうちの他方の状態の場合よりも大きい、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記第1及び前記第2の状態のうちの前記他方の状態では、前記液晶の有効屈折率と前記回折光学素子の屈折率の差は、ほぼゼロである、請求項3記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記回折光学素子は、内側部分及び外側部分を有し、前記外側部分のところの前記回折光学素子の高さは、前記内側部分のところの前記回折光学素子の高さよりも高い、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記回折光学素子の少なくとも一部分は、前記第1の内面に取り付けられ、前記回折光学素子の少なくとも一部分は、前記第2の内面に取り付けられるのがよい、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
450nmと700nmの両方では、前記液晶の平均屈折率は、前記回折光学素子の屈折率の0.80~1.20倍であり、前記平均屈折率は、nave=0.5(ne+no)であり、この式において、neは、異常光屈折率であり、noは、常光屈折率である、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
450nmと700nmの両方では、前記液晶の平均屈折率は、前記回折光学素子の屈折率の0.95~1.05倍である、請求項7記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第2の液晶セルを有し、前記第2の液晶セルは、オプションとして、前記第1の液晶セルの特徴を備えている、請求項1記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、前記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
前記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、前記回折光学素子は、内側部分及び外側部分を有し、前記外側部分のところの前記回折光学素子の前記最大高さは、前記内側部分のところの前記回折光学素子の前記最大高さの1%~20%増しである、コンタクトレンズ。
【請求項11】
前記外側部分のところの前記回折光学素子の前記高さは、前記内側部分のところの前記回折光学素子の前記高さの少なくとも3%増しかつ最大15%増しである、請求項10記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記回折光学素子は、複数のピークとトラフを有し、前記外側部分は、外側ピーク、オプションとして最も外側のピークを有する、請求項10記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記回折光学素子は、弦長rにわたって延び、前記内側部分は、前記回折光学素子の中心からr/8の弦長の範囲内にある前記回折光学素子の前記一部分からなり、前記外側部分は、3r/8~r/2の弦長を有する回折光学素子の前記一部分からなる、請求項10記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記液晶は、コレステリック液晶からなり、オプションとして、非切り換え状態では、前記液晶のダイレクタは、前記第1及び前記第2の内面に対して5°以下の角度をなすのがよく、切り換え状態では、前記液晶のダイレクタは、前記第1及び前記第2の内面に対して少なくとも60°の角度をなすのがよく、オプションとして少なくとも70°、オプションとして少なくとも80°、オプションとして少なくとも85°の角度をなすのがよい、請求項10記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、前記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
前記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子、及びコレステリック液晶を含み、
前記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、前記第1の状態では、前記液晶の有効屈折率と前記回折光学素子の屈折率の差は、前記第2の状態の場合よりも大きく、又は小さく、
450nmと700nmの両方では、前記液晶の平均屈折率は、前記回折光学素子の屈折率の0.80~1.20倍であり、前記液晶の前記平均屈折率は、naveであり、かくして、nave=0.5(ne+no)として計算され、この式において、neは、異常光屈折率であり、noは、常光屈折率である、コンタクトレンズ。
【請求項16】
450nmと700nmの両方では、前記液晶の平均屈折率は、前記回折光学素子の屈折率の0.95~1.10倍である、請求項15記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
450nmと700nmの両方では、前記液晶の平均屈折率は、前記回折光学素子の屈折率の0.95~1.05倍である、請求項16記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
前記液晶の平均屈折率は、500nmでは、前記回折光学素子の屈折率の0.95~1.05倍である、請求項15記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの焦能力を変化させる第1の液晶セルを有し、前記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
前記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子、及びコレステリック液晶を含み、
前記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、前記第1の状態では、前記液晶の有効屈折率と前記回折光学素子の屈折率の差は、前記第2の状態の場合よりも小さく、
前記回折光学素子の屈折率は、1.57以上かつ1.66以下である、コンタクトレンズ。
【請求項20】
ユーザの眼に適合する電気的に切り換え可能なフレキシブルコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズは、
前記コンタクトレンズの少なくとも1つの光学特性を変化させる第1の液晶セルを有し、前記第1の液晶セルは、第1の内面と第2の内面との間にセル隙間厚さを有し、
前記第1の液晶セルは、ユーザの視力を矯正する回折光学素子を含み、前記回折光学素子は、固有動作波長を有し、前記固有動作波長は、450nm~510nmであり、
前記第1の液晶セルは、コレステリック液晶を含み、
前記第1の液晶セルは、第1の非切り換え状態と第2の切り換え状態との間で動作でき、前記第1の状態では、前記液晶の有効屈折率と前記回折光学素子の屈折率の差は、前記第2の状態の場合よりも大きく、又は小さく、
前記液晶セルが前記第1の状態又は前記第2の状態にあるとき、前記コンタクトレンズの透過率の最大値が450nm~510nmであり、
オプションとして、前記液晶セルが前記第1の状態又は前記第2の状態にあるとき、前記コンタクトレンズの透過率の最大値が460~490nm、オプションとして470~490nm、オプションとして480nmである、コンタクトレンズ。
【国際調査報告】