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特表2024-538207船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージシステム及びパージ方法
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  • 特表-船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージシステム及びパージ方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージシステム及びパージ方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20241010BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20241010BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B63B25/16 D
B63H21/38 A
B63B25/16 A
B63B25/16 F
F17C13/00 302A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523656
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 KR2021019907
(87)【国際公開番号】W WO2023080331
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0149454
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォン ジェ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172BA06
3E172BD01
3E172DA90
3E172HA04
(57)【要約】
船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージシステム及びパージ方法が開示される。本発明の船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージシステムは、船舶に設けられて液化ガスを低温で貯蔵し、真空断熱層を有する断熱部を備える貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクで発生した蒸発ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された圧縮ガスを冷却する熱交換器と、前記熱交換器で前記圧縮ガスを冷却する冷媒が循環する冷媒循環ラインとを備える。再液化装置の窒素パージを行う時、前記貯蔵タンクの真空断熱層内の真空状態を維持するために設けられる真空ポンプで、前記冷媒循環ライン内の気体を吸引して排出させた後、前記冷媒循環ライン内に窒素ガスを供給することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に設けられて液化ガスを低温で貯蔵し、真空断熱層を有する断熱部を備える貯蔵タンク;と、
前記貯蔵タンクで発生した蒸発ガスを圧縮する圧縮機;と、
前記圧縮機で圧縮された圧縮ガスを冷却する熱交換器;と、
前記熱交換器で前記圧縮ガスを冷却する冷媒が循環する冷媒循環ライン:とを備え、
再液化装置の窒素パージを行う時、前記貯蔵タンクの真空断熱層内の真空状態を維持するために設けられる真空ポンプで、前記冷媒循環ライン内の気体を吸引して排出させた後、前記冷媒循環ライン内に窒素ガスを供給することを特徴とする、
船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージシステム。
【請求項2】
前記冷媒循環ラインに設けられて、前記熱交換器に供給される冷媒を膨張させて冷却する冷媒膨張機;と、
前記冷媒循環ラインに設けられて、前記熱交換器での熱交換後に前記熱交換器から排出された冷媒を圧縮する冷媒圧縮機:とを備え、
前記冷媒循環ラインを循環する冷媒は窒素冷媒であり、前記冷媒圧縮機は、前記冷媒膨張機での冷媒の膨張エネルギーが伝達されて駆動されることを特徴とする、
請求項1に記載の船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージシステム。
【請求項3】
前記真空ポンプと再液化装置とを接続するハードパイプ;と、
前記ハードパイプと、前記再液化装置の配管及び各装置とを接続するフレキシブルパイプ:とをさらに備える、
請求項2に記載の船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージシステム。
【請求項4】
前記再液化装置の窒素パージは、
1)前記真空ポンプで、前記再液化装置の配管内及び各装置内の気体を吸引して排出させる真空排気ステップ;と、
2)前記配管及び各装置に窒素ガスを供給して、前記配管内及び各装置内の気体を排出させるパージステップ;と、
3)前記配管内及び各装置内の気体の露点を確認する確認ステップ;とを含み、窒素パージが行われる、
請求項3に記載の船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージシステム。
【請求項5】
前記ステップ1)及び2)が、順次2回以上行われた後、前記ステップ3)が行われ、
前記ステップ3)で、露点が要求される設定値まで低下していない場合には、前記ステップ1)に戻って、前記ステップ1)から前記ステップ3)が順次行われることを特徴とする、
請求項4に記載の船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージシステム。
【請求項6】
前記ステップ1)の真空排気は、前記配管内及び各装置内が7mbaraの真空圧となるように、真空ポンプを作動させて行われ、前記ステップ2)で、前記配管内及び各装置内の圧力が5bargとなるように窒素ガスを供給して、前記配管内及び各装置内の気体を排出させて、パージすることを特徴とする、
請求項4に記載の船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージシステム。
【請求項7】
船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを圧縮し、蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを、冷媒循環ラインを循環する冷媒との熱交換により冷却して再液化させて、
前記貯蔵タンクには、前記液化ガスを低温で維持するために真空断熱層を有する断熱部が設けられ、
前記蒸発ガスを再液化させる再液化装置の窒素パージを行う時、前記真空断熱層内の真空状態を維持するために設けられる真空ポンプで、前記冷媒循環ライン内の気体を吸引して排出させた後、前記冷媒循環ラインに窒素ガスを供給することを特徴とする船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージ方法。
【請求項8】
前記再液化装置の窒素パージは、
1)前記真空ポンプで、前記再液化装置の配管内及び各装置内の気体を吸引して排出させる真空排気ステップ;と、
2)前記配管及び各装置に窒素ガスを供給して、前記配管内及び各装置内の気体を排出させるパージステップ;と、
3)前記配管内及び各装置内の気体の露点を確認する確認ステップ;とを含み、窒素パージを行う、
請求項7に記載の船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージ方法。
【請求項9】
前記ステップ1)及び2)を、順次2回以上行った後、前記ステップ3)を行い、
前記ステップ3)で、露点が要求される設定値まで低下していない場合には、前記ステップ1)に戻って、前記ステップ1)から前記ステップ3)を順次行うことを特徴とする、
請求項8に記載の船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージ方法。
【請求項10】
前記真空ポンプと前記再液化装置とをハードパイプで接続し、窒素パージを行う時に、前記再液化装置の配管及び各装置と前記ハードパイプとをフレキシブルパイプで接続して、前記真空排気ステップを行うことを特徴とする、
請求項8または請求項9に記載の船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の蒸発ガスの再液化装置のパージシステム及びパージ方法に関する。より詳細には、再液化装置のパージ(Purging)を行う際、貯蔵タンクの真空断熱層内の真空状態を維持するために設けられる真空ポンプにより、冷媒循環ライン内の気体を吸引して排出させた後、窒素パージ(N2 Purging)を行う船舶用の再液化装置のパージシステム及びパージ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス(Natural gas)は、メタン(Methane)を主成分とし、燃焼時に環境汚染物質を殆ど排出しないことから、環境性に優れた燃料として注目されている。液化天然ガス(LNG; Liquefied Natural Gas)は、天然ガスを常圧で約-163℃に冷却して液化させて得られるものであり、気体状態の天然ガスと比べて、その体積が約1/600まで減少することから、海上ルートを利用した長距離輸送に非常に適している。このような理由から、天然ガスは、主に貯蔵や輸送に有利なLNGの液体状態で、貯蔵されて輸送される。
【0003】
天然ガスの液化点は、常圧で約-163℃と極低温であることから、LNG貯蔵タンクには、通常、LNGを液体状態で維持するための断熱処理が施されるが、LNG貯蔵タンクに断熱処理を施しても、外部熱を完全に遮断することは難しい。このため、外部熱がLNG貯蔵タンクに継続して伝達されることで、LNG輸送の過程でLNG貯蔵タンク内のLNGが自然気化し、蒸発ガス(BOG; Boil-Off Gas、ボイルオフガス)が発生する。
【0004】
LNG貯蔵タンク内で蒸発ガスが継続して発生すると、LNG貯蔵タンク内の圧力が上昇する。そして、貯蔵タンク内の圧力が設定した安全圧力以上になると、タンク破損(Rupture)等の緊急事態が生じる恐れがあるため、安全バルブを利用して蒸発ガスを貯蔵タンクの外部に排出させる必要がある。しかし、蒸発ガスはLNG損失の1つであり、LNGの輸送効率や燃料効率の点で重要な問題となることから、貯蔵タンクで発生した蒸発ガスを処理する様々な方法が用いられている。
【0005】
近年、船舶のエンジン等の燃料需要先で蒸発ガスを使用する方法、蒸発ガスを再液化させて貯蔵タンクに回収する方法、または、これら2つの方法を組合せて使用する方法等が開発され、用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蒸発ガスを再液化させる再液化サイクルを船舶に適用する場合、代表的な再液化サイクルとして、例えばSMRサイクルやC3MRサイクルが知られている。C3MRサイクル(Propane-precooled Mixed Refrigerant Cycle)は、プロパンの単一冷媒を用いて蒸発ガスを冷却した後、混合冷媒を用いて冷却して再液化させ、また、SMRサイクル(Single Mixed Refrigerant Cycle)は、複数の成分から構成される混合冷媒を用いて蒸発ガスを再液化させる。
【0007】
これらSMRサイクルやC3MRサイクルは、混合冷媒が用いられ、液化工程の進行に伴い冷媒が漏洩する。これにより、混合冷媒の組成比が変化することで液化効率が低下するため、混合冷媒の組成比を継続して計測すると共に、不足した冷媒成分を補充することで、冷媒の組成を維持する必要がある。
【0008】
また、再液化サイクルを利用する他の再液化方法として、窒素冷媒が用いられるシングルサイクルの再液化方法が知られている。
【0009】
窒素冷媒は、混合冷媒を用いる冷凍サイクルと比較して、冷却効率は低いが、窒素冷媒は不活性物質であることから安全性が高く、また冷媒の相変化が生じないことから、船舶に適用し易いという利点がある。
【0010】
船舶内のすべての装置や配管は、製造直後または装置のメンテナンス後の初始動(Initial Start-up)前に、装置や配管内の酸素濃度を減少させると共に、空気中の水分が冷却されて凝縮するのを防止するため、窒素パージ(N2 purging)が実施される。
【0011】
特に、極低温のLNGから発生した蒸発ガスを、蒸発ガスよりも低温の窒素冷媒で冷却して再液化させる再液化サイクルでは、各装置内や配管内に残留する水分が凝縮・凍結することで、熱交換器を含む主要な装置や計測機器類、配管等が損傷する恐れがある。このため、再液化サイクルでは、各装置内や配管内の気体の露点(Dew point)を調整することが、非常に重要となる。
【0012】
従来のパージ方法は、パージとパージ実施後の露点の確認作業を、露点が要求される設定値となるまで複数回繰り返すことで、露点が調整されていた。しかしながら、このような方法では、再液化サイクルを構成する装置や配管の容量が大きい場合、窒素パージに要する窒素ガス量が増加し、また、窒素ガスの露点(N2 Dew Point)調整にかかる時間が長くなるという問題点がある。
【0013】
本発明は、このような問題を解決し、窒素パージに要する窒素ガス消費量を削減できると共に、パージに要する時間を短縮して、再液化サイクルを迅速に稼働させることができるパージシステム及びパージ方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明の実施形態では、船舶に設けられて液化ガスを低温で貯蔵し、真空断熱層を有する断熱部を備える貯蔵タンクと、前記貯蔵タンクで発生した蒸発ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された圧縮ガスを冷却する熱交換器と、前記熱交換器で前記圧縮ガスを冷却する冷媒が循環する冷媒循環ラインとを備え、再液化装置の窒素パージを行う時、前記貯蔵タンクの真空断熱層内の真空状態を維持するために設けられる真空ポンプで、前記冷媒循環ライン内の気体を吸引して排出させた後、前記冷媒循環ライン内に窒素ガスを供給することを特徴とする、船舶用蒸発ガス再液化装置のパージシステムが提供される。
【0015】
また、好ましくは、前記冷媒循環ラインに設けられて、前記熱交換器に供給される冷媒を膨張させて冷却する冷媒膨張機と、前記冷媒循環ラインに設けられて、前記熱交換器での熱交換後に前記熱交換器から排出された冷媒を圧縮する冷媒圧縮機とを備え、前記冷媒循環ラインを循環する冷媒は窒素冷媒であり、前記冷媒圧縮機は、前記冷媒膨張機での冷媒の膨張エネルギーが伝達されて駆動される。
【0016】
また、好ましくは、前記真空ポンプと再液化装置とを接続するハードパイプと、前記ハードパイプと、前記再液化装置の配管及び各装置とを接続するフレキシブルパイプとをさらに備える。
【0017】
また、好ましくは、前記再液化装置の窒素パージは、1)前記真空ポンプで、前記再液化装置の配管内及び各装置内の気体を吸引して排出させる真空排気ステップと、2)前記配管及び各装置に窒素ガスを供給して、前記配管内及び各装置内の気体を排出させるパージステップと、3)前記配管内及び各装置内の気体の露点を確認する確認ステップとを含み、窒素パージが行われる。
【0018】
また、好ましくは、前記ステップ1)及び2)が、順次2回以上行われた後、前記ステップ3)が行われ、前記ステップ3)で、露点が要求される設定値まで低下していない場合には、前記ステップ1)に戻って、前記ステップ1)から前記ステップ3)が順次行われる。
【0019】
また、好ましくは、前記ステップ1)の真空排気は、前記配管内及び各装置内が7mbaraの真空圧となるように、真空ポンプを作動させて行われ、前記ステップ2)で、前記配管内及び各装置内の圧力が5bargとなるように窒素ガスを供給して、前記配管内及び各装置内の気体を排出させて、パージする。
【0020】
本発明の実施形態では、船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを圧縮し、蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを、冷媒循環ラインを循環する冷媒との熱交換により冷却して再液化させて、前記貯蔵タンクには、前記液化ガスを低温で維持するために真空断熱層を有する断熱部が設けられ、前記蒸発ガスを再液化させる再液化装置の窒素パージを行う時、前記真空断熱層内の真空状態を維持するために設けられる真空ポンプで、前記冷媒循環ライン内の気体を吸引して排出させた後、前記冷媒循環ラインに窒素ガスを供給することを特徴とする船舶用蒸発ガス再液化装置のパージ方法が提供される。
【0021】
また、好ましくは、前記再液化装置の窒素パージは、1)前記真空ポンプで、前記再液化装置の配管内及び各装置内の気体を吸引して排出させる真空排気ステップと、2)前記配管及び各装置に窒素ガスを供給して、前記配管内及び各装置内の気体を排出させるパージステップと、3)前記配管内及び各装置内の気体の露点を確認する確認ステップとを含み、窒素パージを行う。
【0022】
また、好ましくは、前記ステップ1)及び2)を、順次2回以上行った後、前記ステップ3)を行い、前記ステップ3)で、露点が要求される設定値まで低下していない場合には、前記ステップ1)に戻って、前記ステップ1)から前記ステップ3)を順次行う。
【0023】
また、好ましくは、前記真空ポンプと前記再液化装置とをハードパイプで接続し、窒素パージを行う時に、前記再液化装置の配管及び各装置と前記ハードパイプとをフレキシブルパイプで接続して、前記真空排気ステップを行う。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、再液化装置のパージ(Purging)を行う際、貯蔵タンクの真空断熱層を真空排気にするために設けられる真空ポンプを利用して、再液化装置の配管内や装置内の気体を吸引して排出させた後、窒素ガス(N)を供給してパージを行う。
【0025】
船舶に既設の真空ポンプを利用し、窒素パージの実施に先立って、再液化装置の配管内や装置内を真空排気(Vacuum)することで、窒素パージに要する窒素ガスの量を削減でき、また、再液化装置の露点を目標値に調整できると共に、窒素パージに要する時間を短縮し、再液化装置を迅速に稼動させることができる。
【0026】
特に、極低温のLNGから発生した蒸発ガスを、蒸発ガスよりも低い温度の窒素冷媒で冷却して再液化させる再液化装置では、装置内や配管内に残留する水分が凝縮・凍結することで、主要な装置や計測機器類、配管等が故障や破損する恐れがあるが、そのような故障等を防止して、液化装置や船舶の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のパージシステムが適用される船舶の蒸発ガスの再液化装置を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面及び図面に記載した内容を参照して、本発明の動作上の利点及び本発明の実施形態により達成される目的を、本発明の実施形態を例に説明する。
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の構成及び作用について説明する。なお、各図面の構成要素に付した参照符号について、同一の構成要素には、他の図面上に表示されるものにも可能な限り同一の符号を表記する。
【0030】
後述する本発明の実施形態の船舶としては、液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクが設けられる全種類の船舶であり得る。代表的なものとしては、LNG運搬船(LNG Carrier)、液体水素運搬船、LNG RV(Regasification Vessel)等の自走能力を備える船舶をはじめ、LNG FPSO(Floating Production Storage Offloading)、LNG FSRU(Floating Storage Regasification Unit)等の推進能力を有しない海上浮遊式の海上構造物である。
【0031】
また、本実施形態は、ガスを低温で液化させて輸送でき、貯蔵時に蒸発ガスが発生する全種類の液化ガスの再液化サイクルに適用することができる。このような液化ガスとしては、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Liquefied Ethylene Gas)、液化プロピレンガス(Liquefied Propylene Gas)等の液化ガスがある。なお、後述する実施形態では、代表的な液化ガスの1つであるLNGを例に説明する。
【0032】
図1に、本発明のパージシステムが適用される船舶の蒸発ガスの再液化装置を模式的に示す。
【0033】
図1に示す蒸発ガスの再液化装置は、船舶に設けられる貯蔵タンクTで発生した蒸発ガスが、蒸発ガス供給ラインより供給されて、これを圧縮する圧縮機100と、圧縮機100で蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを冷却する熱交換器200と、熱交換器200で圧縮ガスとの熱交換に用いられる冷媒が循環する冷媒循環部300とを備える。
【0034】
貯蔵タンクTに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスは、熱交換器200に供給されて熱交換器200で冷熱が回収された後、圧縮機100に供給される。圧縮機100で、蒸発ガスは、例えば船舶の主エンジンの燃料供給圧力まで圧縮される。例えば、DFエンジンが設けられる場合には5.5bargの圧力、X-DFエンジンが設けられる場合には15bargの圧力、ME-GIエンジンが設けられる場合には300barg程の圧力まで圧縮される。圧縮された蒸発ガスは、船舶の主エンジン(図示せず)に燃料として供給され、燃料として供給されずに残った蒸発ガスが再液化される。
【0035】
ところで、船舶に関する規定によれば、エンジンに燃料を供給する圧縮機は、緊急事態に備えて冗長設計(Redundancy)することが求められる。なお、本実施形態では、主に1台の圧縮機を例に説明するが、圧縮機は、主圧縮機と予備圧縮機とを備えるように構成してもよい。
【0036】
圧縮機100の下流には、蒸発ガスを再液化させて貯蔵タンクTに回収する再液化ラインRLが接続される。圧縮機100で圧縮された蒸発ガスは、再液化ラインRLより熱交換器200に供給されて、冷却される。
【0037】
再液化ラインRLの熱交換器200の下流には、再液化ガスを気液分離する気液分離器400が設けられている。また、必要に応じて、再液化ラインRLの気液分離器400の上流には、熱交換器200で冷却された圧縮ガスを減圧して、再液化量を調整する減圧バルブがさらに設けられる。
【0038】
気液分離器400で分離された再液化ガスは、貯蔵タンクTに供給されて再貯蔵される。一方、気液分離器400で分離されたフラッシュガスは、蒸発ガス供給ラインの熱交換器200より上流の圧縮される前の蒸発ガスの流れに供給されるか、ガス燃焼ユニット(GCU)に送られる。
【0039】
冷媒循環部300では、冷媒が冷媒循環ラインCLを循環し、熱交換器200で熱交換により圧縮ガスを冷却する。
【0040】
冷媒循環部300は、熱交換器200に供給される冷媒を膨張させて冷却する冷媒膨張機320と、冷媒膨張機320に接続されて冷媒の膨張エネルギーが伝達され、熱交換器200で熱交換後に熱交換器200から排出される冷媒を圧縮する冷媒圧縮機310とを備える。また、冷媒圧縮機310を駆動するためのモータ(図示せず)が設けられ、冷媒圧縮機310と冷媒膨張機320はシャフトを介して接続され、冷媒の膨張エネルギーが冷媒の圧縮に利用される。これにより、冷凍サイクルを駆動するために必要な電力を削減できる。
【0041】
冷媒膨張機320で膨張により冷却された冷媒は、冷熱を供給するために熱交換器200に供給され、熱交換器200で熱交換された後、熱交換器200から排出され、冷媒圧縮機310で圧縮される。冷媒圧縮機310で圧縮された冷媒は、熱交換器200に供給されて冷却された後、冷媒膨張機320に供給されて膨張により冷却され、熱交換器200に再び供給されることで、冷媒が冷媒循環ラインCLを循環する。
【0042】
したがって、熱交換器200では、圧縮機100で圧縮された蒸発ガス、圧縮機100に供給される前の非圧縮の蒸発ガス、冷媒膨張機320で膨張により冷却された冷媒及び、冷媒圧縮機310で圧縮された冷媒の4つの流れが熱交換される。即ち、熱交換器200では、圧縮機100で圧縮された圧縮ガスと冷媒圧縮機310で圧縮された冷媒とが、圧縮機100に供給される前の非圧縮の蒸発ガスと冷媒膨張機320で膨張により冷却された冷媒との熱交換により冷却される。
【0043】
このような再液化装置に設けられる各装置や各配管は、再液化装置の製造後やメンテナンス後の初始動(Initial Start-up)前に、各装置や各配管内の酸素濃度を減少させると共に、空気中の水分が冷却されて凝縮するのを防止するために、窒素パージ(N2 Purging)が実施される。
【0044】
本実施形態のパージシステムは、このような再液化装置で窒素パージを実施することができる。
【0045】
本実施形態では、再液化装置の窒素パージを行う際、貯蔵タンクTの真空断熱層内の真空状態を維持するために設けられる真空ポンプを利用する方法を提案する。
【0046】
低温の液化ガス、特に極低温のLNGが貯蔵される貯蔵タンクTには、液化ガスの温度を低温に維持し、外部熱の侵入を防止するために、断熱部(Insulation)が設けられており、この断熱部は真空断熱層を備える。
【0047】
このような真空断熱層内の真空状態を維持するため、真空圧で作動する真空ポンプが船舶に設けられる。
【0048】
真空ポンプは常時稼働される装置ではなく、本実施形態では、このような真空ポンプを再液化装置のパージに利用する。即ち、窒素パージの実施に先立って、真空ポンプにより、再液化装置の冷媒循環ラインCLを含む各配管内及び各装置内の気体を吸引して排出させて、各配管内と各装置内とを真空状態(Vacuum)とした後、窒素ガス(N)を供給してパージする。これにより、再液化装置の窒素パージに要する窒素ガス量を削減し、また、窒素ガスの露点を目標値に調整でき、窒素パージに要する時間を短縮することができる。
【0049】
本実施形態のパージシステムにより、再液化装置のパージは、以下のように行われる。
【0050】
真空ポンプから再液化装置の設置場所まで、硬質(ハード)パイプが延伸し、硬質パイプにより真空ポンプと再液化装置とが接続される。また、再液化装置の各配管と各装置にパージを行う際には、硬質パイプと再液化装置の配管及び装置とをフレキシブルパイプで接続する。
【0051】
再液化装置の窒素パージは、まず、硬質パイプと再液化装置の配管及び装置とをフレキシブルパイプで接続した後、真空ポンプで再液化装置の配管内及び装置内の気体を吸引して排出させる(真空排気ステップ)。次に、再液化装置の配管及び装置に窒素を供給して、配管内及び装置内の気体を排出(Vent)させる(パージステップ)。そして、配管内及び装置内の窒素ガスの露点(Dew point)を確認する(確認ステップ)。
【0052】
真空排気ステップの真空排気は、配管内及び装置内の圧力が7mbara程の真空圧となるように、真空ポンプを約1時間作動させて行う。その後、パージステップで、配管内及び装置内の圧力が5barg程となるように窒素ガスを供給して、配管内及び装置内の気体を排出させて、パージする。
【0053】
真空化ステップに先立って、再液化装置に設けられる各装置、配管、計測機器類が真空圧に耐えられるか否かが検査され、各装置、配管、計測機器類が真空圧に耐えられる場合には、本実施形態のパージシステムが適用される。
【0054】
真空化ステップとパージステップとを2回以上実施した後、配管内及び装置内の窒素ガスの露点が、要求される設定値まで低下したか否かを確認する。
【0055】
露点が要求される設定値(目標値)まで低下していない場合は、再び真空排気ステップに戻り、真空排気ステップから確認ステップまでを順次、再び実施する。
【0056】
以上、本実施形態では、窒素パージの実施に先立って、船舶に既設の真空ポンプを利用して、再液化装置の配管内及び装置内を真空状態(Vacuum)とすることで、再液化装置の窒素パージに必要な窒素ガスの量を削減でき、また、窒素パージによる露点調整で露点が目標値に達するまでにかかる時間が短縮され、再液化装置を迅速に再始動することができる。
【0057】
特に、他の装置等を追加して設置する必要がなく、船舶に既設の装置を利用することで、装置の利用効率を向上させ、再液化装置の設置費用を削減することができる。
【0058】
さらに、極低温のLNGから発生した蒸発ガスを蒸発ガスよりも低い温度の窒素冷媒により再液化させる再液化装置で、装置内や配管内に残留する水分が凍結すると、主要装置や計測機器類、配管等の破損する恐れがあるが、これを防止することができる。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を超えない範囲内で様々な変更または変形ができることは、本発明が属する技術分野の当業者にとって自明である。
図1
【国際調査報告】