(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】微小電子機械ユニットを備えるラウドスピーカ
(51)【国際特許分類】
H04R 7/04 20060101AFI20241010BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H04R7/04
H04R17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523797
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2022079941
(87)【国際公開番号】W WO2023073024
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520404964
【氏名又は名称】エピノバテック、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】EPINOVATECH AB
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100227330
【氏名又は名称】向井 翼
(72)【発明者】
【氏名】マルティン、アンドレアス、オルソン
【テーマコード(参考)】
5D004
5D016
【Fターム(参考)】
5D004AA09
5D004BB01
5D004CC03
5D004CD07
5D016AA05
5D016BA05
5D016DA02
(57)【要約】
ラウドスピーカ・デバイス(200)が提供される。ラウドスピーカ・デバイス(200)は、微小電子機械ユニット(100)を備える。微小電子機械ユニット(100)は、平面の延長を有する振動板(10)を備える。振動板(10)は、第1の層(22)および第2の層(24)を含む半導体構造(20)を備え、各層が平面の延長内に延びる。第1の層(22)はAl(1-x)Ga(x)Nを含み、0.2≦x≦0.4であり、第2の層(24)はGaNを含む。振動板(10)は、延長内で平面の延長に対して横断方向に発振し、それによって音波を生成するように配置される。振動板(10)の表面上に、較正用重り(17)が配置される。微小電子機械ユニット(214)は、振動板(10)を支持する支持構造(30)と、振動板(10)の表面上に配置された電極(50)と、共鳴箱とをさらに備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小電子機械ユニット(100)であって、
平面の延長を有し、第1の層(24)および第2の層(24)を含む半導体構造(20)を備える振動板(10)であり、各層が前記平面の延長内に延び、前記第1の層(22)がAl(1-x)Ga(x)Nを含み、0.2≦x≦0.4であり、前記第2の層(24)がGaNを含み、前記振動板(10)が、延長内で前記平面の延長に対して横断方向に発振し、それによって音波を生成するように配置され、前記振動板(10)の表面上に較正用重り(17)が配置される、振動板(10)、
前記振動板(10)を支持する支持構造(30)、ならびに
前記振動板に接続された電極(50)を備える微小電子機械ユニット(100)と、
共鳴箱と
を備えるラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項2】
前記振動板(10)が、前記平面の延長内で円形であり、前記振動板(10)の直径が1~50マイクロメートルである、請求項1に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項3】
前記振動板(10)の前記半導体構造(20)が、GaN層(22)およびAl(1-x)Ga(x)N層(24)を含む超格子(20)であり、0.2≦x≦0.4である、請求項1または2に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項4】
前記超格子(20)の周期性が2~6nmである、請求項3に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項5】
前記振動板(10)の厚さが0.1~5μmである、請求項1から4のいずれか一項に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項6】
前記共鳴室が、複数の貫通孔(15)を有する背板を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項7】
前記電極(50)が、リング状であり、前記振動板(10)の縁部に配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項8】
前記支持構造(30)が、トランジスタを形成する半導体層構造を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項9】
前記支持構造(30)の前記半導体層構造が、ケイ素基層(30、110)を含む、請求項8に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項10】
前記支持構造(30)の前記半導体層構造が、GaN層(36)およびAl(1-x)Ga(x)N層を含み、0.2≦x≦0.4である、請求項8または9に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項11】
前記支持構造(30)の前記半導体層構造が、AlN層(34)を含む、請求項8から10のいずれか一項に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項12】
前記振動板(10)の表面上に配置された較正用重り(17)をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項13】
前記微小電子機械ユニット(100)の前記振動板(10)を作動させるように構成された回路(210)
をさらに備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【請求項14】
前記回路(210)が、
ドライバと、
比較器(212)と、
前記ドライバに当接する第1のGaN高電子移動度トランジスタHEMT(214)および第2のGaN高電子移動度トランジスタHEMT(216)とを備え、
前記第1のHEMT(214)および前記第2のHEMT(216)が、前記比較器(212)に電気的に接続されている、請求項13に記載のラウドスピーカ・デバイス(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微小電子機械ユニットを備えるラウドスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
ラウドスピーカまたはマイクロフォンに接続された増幅器などの音声デバイスは、オン抵抗、信号対雑音比SNR、電力/エネルギー消費などの多くの物理的特性を伴う。これらの物理的特性は、忠実度の高い音声品質と、音声デバイスの物理的寸法との間で妥協を含むことが多い。現在、今までになく小さい無線イヤホンによる音の消費が急速に遷移するにつれて、特に無線イヤホンは、複数のラウドスピーカ、マイクロフォン、および比較的電力を消耗する無線通信手段に電力を供給するために内蔵電池を有するため、この妥協もさらに進む。したがって、オン抵抗を低減させ、SNRを増大させながら、同時に音声デバイスの寸法を最小に抑え、ならびにその電力要求を最小にすることが、現在必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
目的は、当技術分野における上記の欠陥および欠点のうちの1つまたは複数を単独または任意の組合せで軽減、緩和、または解消し、上記の問題を少なくとも部分的に解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、添付の特許請求の範囲に記載のとおりである。
【0005】
第1の態様によれば、ラウドスピーカ・デバイスが提供される。ラウドスピーカ・デバイスは、微小電子機械ユニットを備える。微小電子機械ユニットは、平面の延長を有し、第1の層および第2の層を含む半導体構造を備える振動板であり、各層が平面の延長内に延び、第1の層がAl(1-x)Ga(x)Nを含み、0.2≦x≦0.4であり、第2の層がGaNを含む、振動板、振動板を支持する支持構造、ならびに振動板に接続された電極を備える。好ましくは、電極は、振動板の表面上に配置される。振動板は、延長内で平面の延長に対して横断方向に発振し、それによって音波を生成するように配置される。振動板の表面上に、較正用重りが配置される。微小電子機械ユニットは、共鳴箱をさらに備える。
【0006】
元素材料は、その元素記号または省略形によって本明細書に参照される。たとえば、窒化ガリウムは、典型的にはGaNと参照されることがあり、窒化アルミニウム・ガリウムは、AlGaNと参照されることがある。概して、特有の材料または元素を含むと考えられる層または構造は、特有の材料もしくは元素を少なくとも部分的に含む、または実質的に特有の材料もしくは元素からなると理解されてよい。半導体構造の層は、下から上の順序で順序付けられると理解されてよい。この文脈で、「上(on)」という用語は、層または構造を他の層もしくは構造より上に、または他の層もしくは構造上へ配置することを指す。「垂直」という用語は、層が互いに配置される方向を指す。垂直方向は、基板の頂面に対して直交方向または法線方向であると考えられ、頂面は、実質的に平面であると見なされてよい。「横方向」という用語は、垂直方向に直交する任意の方向を指す。
【0007】
半導体構造は、圧電的に作動可能である。したがって、半導体構造に対する機械的な衝撃が、電圧差を生成し、それによって電流を生成することができる。逆に印加電圧は、半導体構造の変形または動きを引き起こすことができる。したがって、振動板は、空気中の圧力差、すなわち音波を生成または検出することが可能なものなどの音響効果に利用されることがある。本明細書で議論される音波は、その通常の意味で解釈されるべきであり、すなわち約5~100000Hzの範囲内、好ましくは20~20000Hzの範囲の周波数を有する周期的な圧力差である。したがって、振動板は、ラウドスピーカ/マイクロフォン膜としても、ソレノイドとしても機能することができる。従来、ソレノイドは、レンツの法則による動作原理を有しており、膜の動きを生成/捕捉し、それによって音波を生成/捕捉するように膜に接続される外部デバイスである。本明細書では、そのようなソレノイドは冗長であり、それによってより少ない部材を有する一体化されたデバイスを形成する。微小電子機械ユニットは、電力の必要を低減させることができる。他の利点は、増大された信号対雑音比SNR、および低減されたオン抵抗を含むことができる。さらにこれは、比較的小型のサイズを可能にすることができる。
【0008】
発振するおよび振動するという用語は、本明細書全体にわたって区別なく使用されてよい。
【0009】
振動板は、平面の延長内で円形であってよく、振動板の直径は1~800マイクロメートル(μm)である。
【0010】
振動板の半導体構造は、GaN層およびAl(1-x)Ga(x)N層を含む超格子であってよく、0.2≦x≦0.4である。超格子は、複数のヘテロ構造層を含むことができ、各ヘテロ構造層は、1つのGaN層および1つのAl(1-x)Ga(x)N層を含む。超格子は、p型2次元ホールガス2DHGを提供して、2つの層同士の間の境界面に沿って伝導のためのチャネルを提供することができる。超格子は、増大された圧電効果を生成することを容易にし、したがって本発明によるスピーカ・デバイスの信号対雑音比を改善する。超格子によって比較的顕著な圧電特性を有する膜は、スカンジウムでドープされたAlN、すなわちScAlN中のスカンジウムなどの希土類金属、またはチタン酸ジルコン酸鉛PZTなどの鉛系材料を使用した場合より、圧電膜の製造を容易にすることができる。多くの場合、MEMSに使用される標準的な圧電薄膜は多結晶である。本明細書で考慮される超格子は、好ましくは結晶であり、したがって圧電効果は、多結晶粒子からの起こりうる欠陥によって劣化されない。したがって、半導体構造は、たとえば膜のより小さい変形を検出するために使用されるより高感度の膜を提供する。
【0011】
超格子の周期性は、2~6nmであってよい。
【0012】
振動板の厚さは、0.1~5マイクロメートルであってよい。
【0013】
微小電子機械ユニットは、複数の貫通孔を有する背板をさらに備えることができる。貫通孔の密度は、1ミクロン当たり0.1~0.6個の孔であってよい。背板は、円周壁によって振動板に対して高められる。したがって、振動板と背板との間に空洞が存在する。空洞は、圧力室または共鳴箱として機能することができる。貫通孔は、振動板の平面の延長に直交するように向けられた貫通している開口であってよい。複数の貫通孔は、振動板の音響特性を促進させることができる。さらに、空洞は、振動板の動きに起因する圧力差の増幅を容易にすることができる。背板は、スパッタリング、たとえばマグネトロン・スパッタリングによって、窒化アルミニウムで作られてよい。これは、微小電子機械ユニットの製造中、AlGaN振動板の上に、低い残留応力を有する背板を提供することができる。別法として、背板は窒化ケイ素で作られてもよい。
【0014】
電極は、リング状であってよく、振動板の縁部に配置されてよい。これは、振動板の変形によって誘起される電圧の生成を容易にする。逆に、特有の電圧は、振動板の比較的大きい変形を誘起することができる。したがって、この配置は、より高感度の振動板を提供する。
【0015】
支持構造は、トランジスタを形成する半導体層構造を含むことができる。層構造は、ある層が垂直方向に別の層の上に配置され、ならびに上の層が下の隣接層と物理的境界面を共有する構造であると理解されてよい。そのような物理的境界面は、導電接触を提供するように、すなわち物理的境界面を横切る電子および/または正孔輸送を可能にするように構成されてよい。導電接触は、たとえばオーム接触、ショットキー接触、またはpn接合もしくはトンネル接合における接触を指すことができる。トランジスタは、高電子移動度トランジスタHEMTであってよい。HEMTは、従来の金属酸化物半導体フィールド効果トランジスタMOSFETと比べて、より高いスイッチング周波数および改善された高電力特性を可能にする。
【0016】
支持構造の半導体層構造は、ケイ素基層を含むことができる。ケイ素基層は、より厚いGaNがその上に堆積/成長させられることを可能にし、結晶GaN/AlGaN層構造の形成に伴う製造の複雑さを生じることなく結晶品質を改善する。炭化ケイ素SiCなどの他の材料も可能であってよい。しかし、その比較的低いコストのため、純粋なケイ素が好ましい。
【0017】
支持構造の半導体層構造は、GaN層およびAl(1-x)Ga(x)N層を含むことができ、0.2≦x≦0.4である。
【0018】
支持構造の半導体層構造は、AlN層を含むことができる。そのようなAlN層は、ケイ素基層の上で、GaN層および/またはAl(1-x)Ga(x)N層の下に配置されてよい。ほとんどの場合、ケイ素および窒化物材料に対して結晶格子定数および熱膨張係数が異なることなどの要因により、ケイ素層の上へ窒化物層を形成しただけでは、たとえば材料特性の不整合により、形成された窒化物層に亀裂、欠陥、および全体的に不十分な結晶品質が生じる。したがって、AlN層は、ケイ素基層とGaN層およびAl(1-x)Ga(x)N層との間のより平滑な材料遷移を容易にし、それによって支持構造を通る十分な電子または正孔移動度を提供する。
【0019】
微小電子機械ユニットは、振動板の表面上に配置された較正用重りをさらに備えることができる。較正用重りは、特に振動板がリング状である場合、リング状であってよい。較正用重りは、金属、好ましくはAlCuによって製造されてよい。較正用重りは、振動板の質量を調整して振動板の音響特性を調節するように配置される。
【0020】
第2の態様によれば、ラウドスピーカ・デバイスが提供される。ラウドスピーカ・デバイスは、上記の第1の態様による微小電子機械ユニットと、微小電子機械ユニットの振動板を作動させるように構成された回路とを備える。
【0021】
微小電子機械ユニットに関連する上記の特徴は、該当する場合、この第2の態様にも同様に当てはまる。したがって、必要以上の繰返しを回避するために、上記を参照されたい。回路は、D級増幅器内に構成されてよい。
【0022】
回路は、ドライバと、比較器と、ドライバに接続された第1のGaN高電子移動度トランジスタHEMTおよび第2のGaN高電子移動度トランジスタHEMTとを備えることができ、第1のHEMTおよび第2のHEMTは、比較器に電気的に接続される。
【0023】
比較器は、音声入力信号を高周波三角波と比較して音声入力信号をデジタル化することによって、通常の比較器、たとえば動作増幅器として機能することができる。比較の結果は、アナログ音声入力信号からのデジタル・コピー信号であり、デジタル信号の低周波成分は音声入力信号を表し、高周波信号は概して無視される。比較器の出力は、たとえばD級増幅器にとって一般的なように、中間に接続されたドライバによってHEMTを駆動する。上記のように、GaN HEMTトランジスタは、従来のMOSFETと比べて、より高いスイッチング周波数および改善された高電力特性を提供することができる。さらに、電力要求が低減されてよい。
【0024】
第3の態様によれば、第1の態様による微小電子機械ユニットと、微小電子機械ユニットの振動板の動きを検出するように構成された回路とを備えるマイクロフォン・デバイスが提供される。
【0025】
マイクロフォン・デバイスは、「反転されたラウドスピーカ・デバイス」であってよい。しかし、一般にマイクロフォンでは電力効率がほとんど問題にならないため、マイクロフォン・デバイス内に含まれる回路はA級タイプであってよい。
【0026】
本発明のさらなる適用可能範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特有の例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、この詳細な説明から本発明の範囲内の様々な変更および修正が当業者には明らかになるため、例示のみを目的として与えられることを理解されたい。
【0027】
したがって、本発明は、記載されるデバイスの特定の構成部材または記載される方法の動作に限定されるものではなく、なぜならそのようなデバイスおよび方法は変動することがあるからであることを理解されたい。本明細書で使用される術語は、特定の実施形態について説明することのみを目的とし、限定的であることが意図されるものではないことも理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、文脈上別途明白に定めない限り、要素の1つまたは複数が存在しうることを意味することが意図されることに留意されたい。したがって、たとえば「a unit」または「the unit」への参照は、いくつかのデバイスを含むことができ、以下同様である。さらに、「備える」、「含む」、「含む」などの単語、および同様の表現は、他の要素またはステップを除外しない。
【0028】
本発明の上記その他の態様が、添付の図を参照して次により詳細に説明される。これらの図は、限定的であると見なされるべきではなく、逆に説明および理解のために使用される。本明細書全体にわたって、同じ参照番号は同様の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】微小電子機械ユニットの断面プロファイルを概略的に示す図である。
【
図2A-2B】バイアス電圧によって露出された微小電子機械ユニットの断面プロファイルを概略的に示す図である。
【
図4】振動板の代替幾何形状を概略的に示す図である。
【
図5】ラウドスピーカ・デバイスを非常に概略的に示す図である。
【
図6】マイクロフォン・デバイスを非常に概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明が、本発明の現在の好ましい実施形態が示されている添付の図面を参照して、より詳細に次に説明される。しかし本発明は、多くの異なる形態で実施されてよく、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、逆にこれらの実施形態は、徹底および完全さのために、ならびに本発明の範囲を当業者に完全に伝えるために提供される。
【0031】
図1に関連して、微小電子機械ユニット100の断面プロファイルが概略的に示されている。微小電子機械ユニット100は、振動板10を備える。振動板10は、平面の延長を有する。平面の延長は、微小電子機械ユニット100が取り付けられた基板110平面内の延長であってよい。したがって、平面の延長および基板100の平面は、実質的に平行であってよい。振動板100は、半導体構造を含む。半導体構造は、第1の層22および第2の層24を含む。
図1は、複数の第1の層および第2の層を非限定的に示すことに留意されたい。第1の層22および第2の層24の各層は、平面の延長内に延びる。第1の層22は、窒化アルミニウム・ガリウムAl(1-x)Ga(x)Nを含み、0.2≦x≦0.4である。xの値は、Al(1-x)Ga(x)Nのバンドギャップを設定する。バンドギャップは、3.4eV(x=1)~6.2eV(x=0)の範囲である。第2の層は、窒化ガリウムGaNを含む。それによって、GaNのバンドギャップは3.4eVである。微小電子機械ユニット100は、支持構造30をさらに備える。支持構造30は、振動板10を支持する。好ましくは、平面の延長内に占める支持構造30の平均断面積は、振動板10の面積より小さい。支持構造30は、基板110の平面から振動板10を高めることができる。したがって、振動板10の底面12および基板110の平面の頂面112は、振動板10と基板110との間の最も近い距離である振動板-基板距離D1だけ分離されてよい。それによって、振動板10の下に空洞40が存在してよい。したがって、振動板10は、延長内で平面の延長に対して横断方向に、すなわち垂直方向に、発振することが可能にされてよい。発振するという用語、たとえば振動するという用語は、本明細書全体にわたって区別なく使用されてよい。振動板10は、垂直方向に膨張/収縮することがさらに可能にされてよい。振動板10は、Al(1-x)Ga(x)NとGaNとの間の境界面23に2次元ホールガスを形成するために、pドープされてよい。これは、Al(1-x)Ga(x)NとGaNとの間の格子定数がわずかに異なるため、少数の束縛電子状態のみが存在しうるほど小さいポテンシャル井戸を境界面23に直交して形成し、それによって電子または正孔が境界面23に直交して動くことを防止する。しかし、境界面23に十分なバイアス電圧が印加される場合、電子または正孔はそれでもなお垂直方向に(たとえば、ヘテロ構造の超格子を横切って)動く。
【0032】
微小電子機械ユニット100は、振動板に接続された電極50をさらに備える。好ましくは、電極50は、振動板10の表面14上に配置される。電極50は、振動板10の頂面50上に直接取り付けられてよい。電極50は、十分な導電性を有する任意の材料によって製造されてよい。たとえば、導電性材料は、Ti、Al、Cu、Ni、および/またはAuであってよい。好ましくは、導電性材料は、たとえばアルミニウム銅AlCuなどの化合物または合金である。
【0033】
振動板10の半導体構造20は、圧電特性を有する。したがって、振動板の半導体構造の機械的変形は、半導体構造の電気的分極を提供する。それによって、半導体構造の異なる場所間の0以外の電圧が、機械的変形80、82によって誘起されてよい。これは、
図2Aおよび
図2Bに概略的に示されている。0以外の電圧は、電流をさらに誘起することができる。圧電材料にとって一般的なように、逆も可能である。すなわち、異なる場所間に印加されるバイアス電圧が、振動板の半導体構造20の機械的変形を生成することができる。この状況で、この効果は、電極50を帯電させることによって実現されてよい。帯電は、振動板10の変形80、82を生成することができ、したがって垂直方向、すなわち振動板10の平面の延長に実質的に直交する方向に、振動板10の収縮80または膨張82を生じさせる。たとえば、電極50に正のバイアス電圧が印加されると、振動板の収縮80を生成することができ、電極50に負のバイアス電圧が印加されると、振動板10の膨張82を生成することができる。
【0034】
振動板10は、平面の延長内で円形であってよい。これは、
図3に示されている。それによって、振動板の幾何形状は、振動板10の表面に直交する方向から見たとき、実質的に円対称であってよい。それによって、支持構造30は、振動板10の外縁部16の近傍で振動板10を支持するために、類似の円形の幾何形状を有することができる。したがって、支持構造30は、実質的に円柱形であり、支持構造30は、振動板の平面(および基板の平面)に直交する軸方向の延長を有する。支持構造の円柱形の壁の厚さは、振動板10の直径より著しく小さくてよい。振動板10の直径は、1~50μmであってよい。
【0035】
振動板10が円形の幾何形状を有する場合、電極50は、リング状であってよく、振動板の縁部に配置されてよい。電極50は、簡単に接続されてよい。したがって、リング状電極50の方位方向に沿っていかなる破断または分離部分も存在しなくてよい。
【0036】
振動板10の半導体構造20は、GaNおよびAl(1-x)Ga(x)Nを含む超格子20であってよく、0.2≦x≦0.4である。これは、
図1に概略的に示されている。超格子20は、複数のヘテロ構造層22、24を含むことができ、各ヘテロ構造層は、1つのGaN層22および1つのAl(1-x)Ga(x)N層24を含む。したがって、すべての第2の層2iが、GaN層22であってよく、それぞれの対のGaN層間のすべての層2(i+1)が、Al(1-x)Ga(x)N層24であってよい。しかし、層の数が偶数である必要はない。層の数が奇数である場合、底層および頂層は、類似の化学組成、GaNまたはAl(1-x)Ga(x)Nを有することができる。超格子20の周期性は、2~6ナノメートル(nm)であってよい。超格子20は、複数の平面を提供することができ、それぞれの平面内にp型2次元ホールガス2DHGが存在する。それによって、2DHGは、2つの隣接する層22、24間の境界面23に沿って伝導のためのチャネルを提供する。しかし、上記のように、層同士の間に十分なバイアス電圧が印加されることを条件として、電子または正孔は層同士の間を動くことができる。超格子20は、増大された圧電効果を生成することが可能であってよい。
【0037】
図4に例示されているように、平面内に占める超格子20の断面プロファイルは、半導体構造20の中心線と一致し、すなわち支持構造30の軸方向の延長に対して平行であり、方形である必要はない。したがって、超格子20の頂層18は、超格子の底層19より小さい面積を有することができる。例として、超格子20は径方向に面取りされてよく、したがって振動板10の周縁部の厚さが、振動板の中心部分の厚さより小さくなる。好ましくは、振動板10は、周縁部近傍の振動板10の底面および頂面が実質的に平行になるように面取りされる。この頂面上に、電極50が取り付けられてよい。同様に、振動板の中心部分の頂面および底面も実質的に平行であってよい。中心部分は、比較的大きい振動板10の面積を伴ってよく、したがって、たとえば振動板10の頂面14全体の面積の2分の1以上を構成する。
【0038】
超格子20の厚さは、0.1~5μmであってよい。したがって、超格子20は、数百またはさらには数千のAlGaN/GaNヘテロ構造層22、24を含むことができる。上記のように、厚さは、たとえば振動板10の縁部11と中心部分13との間で変動してよい。好ましくは、厚さは、縁部11より中心部分13で大きい。さらに、厚さは、径方向に依存してよい。
【0039】
微小電子機械ユニットは、背板60をさらに備えることができる。背板は、複数の貫通孔15を含むことができる。背板は、円周壁62によって振動板に対して高くなっている。円周壁62は、直接または間接的に、好ましくは直接、振動板10に取り付けられる。好ましくは、円周壁62は、振動板10の円周に取り付けられる。別法として、円周壁62は、支持構造30に取り付けられる。したがって、振動板10と背板60との間に空洞70が存在する。空洞は、圧力室または共鳴箱と見られてよい。貫通孔15は、背板10の平面の延長に直交するように向けられた貫通している開口であってよい。複数の貫通孔15は、背板10内でランダムに分散させられる。別法として、複数の貫通孔15は、背板60をその頂部または底面に直交する方向から見たとき、貫通孔15自体が格子を形成するように、秩序正しく分散させられてもよい。
【0040】
次に微小電子機械ユニット100の支持構造30に戻る。支持構造30は、トランジスタを形成する半導体層構造を含むことができる。上記のように、層構造は、ある層が垂直方向に別の層の上に配置され、ならびに上の層が下の隣接する層と物理的境界面を共有する構造であると理解されてよい。したがって物理的境界面は、導電接触を提供するように、すなわち物理的境界面を横切る電子および/または正孔輸送可能にするように構成されてよい。導電接触は、たとえばオーム接触、ショットキー接触、またはpn接合もしくはトンネル接合における接触を指すことができる。トランジスタは、高電子移動度トランジスタHEMTであってよく、比較的高いスイッチング周波数および望ましい高電力特性を可能にすることができる。これは、電子/正孔の伝導が上記のように2つの層同士の間の境界面に沿って2つの次元(2DEG/2DHG)に伝播するため、高い電子/正孔移動度、および/または2DEGもしくは2DHGの他の典型的な特性を容易にする。電子または正孔移動度は概して、層の平面内より層構造内の層同士の間で小さいことに留意されたい。
【0041】
支持構造30の半導体層構造は、ケイ素基層32を含むことができる。ケイ素基層32は、基板110上に直接取り付けられてよい。別法として、ケイ素基層32は比較的大きいケイ素ウエハであり、その上にAlNが成長させられてよい(以下でさらに議論される)ことから、ケイ素基層32は、基板110の一部を形成することができる。それによって、基板32、110は、ケイ素バルク材料32、110を含むことができる。ケイ素基層32の頂面33は、実質的に平面であってよい。ケイ素基層の垂直方向の厚さは、100~1000μmの範囲内、より好ましくは275~525μmの範囲内であってよい。別途明示的に記載されない限り、以下、厚さは垂直方向の厚さを指す。ケイ素基層の頂面33は、ミラー指数(111)を有することができる。ケイ素基層32は、ダイヤモンド立方晶構造を有することができる。
【0042】
支持構造の半導体層構造は、窒化アルミニウムAlN層34を含むことができる。AlN層34は、好ましくは、100~500nmの範囲内の厚さ、より好ましくは200~300nmの範囲内の厚さを有することができる。AlN層は、垂直ナノワイア構造35を含むことができる。これらのナノワイア35は、好ましくは、50~500nmの範囲内の垂直方向の長さ、より好ましくは150~250nmの範囲内の垂直方向の長さを有することができる。垂直ナノワイア構造35は、好ましくは、実質的に円形または六角形の横方向断面プロファイルを有することができる。そのようなナノワイアの直径は、5~50nm、より好ましくは10~30nmの範囲内であってよい。ナノワイア35は、垂直方向に見て繰り返すアレイ・パターンで配置されてよく、各ナノワイア35は、4つの等距離の最も近い他のナノワイアを有する。別法として、繰り返すアレイ・パターンは、方形のパターンを有することもできる。隣接するナノワイア35間の距離は、好ましくは10~500nmの範囲内、より好ましくは50~200nmの範囲内であってよい。
【0043】
支持構造30の半導体層構造は、GaN層36およびAl(1-x)Ga(x)N層(図示せず)をさらに含むことができ、0.2≦x≦0.4である。Al(1-x)Ga(x)N層は、GaN層36と振動板10との間に配置されてよい。前述のAlN層34の真上に配置される層は、GaN層36であってよい。GaN層36は、好ましくは100~500nmの範囲内の厚さ、より好ましくは200~300nmの範囲内の厚さを有することができる。GaN層36は、垂直ナノワイア構造35を横方向に密閉し、カプセル化し、または取り囲む、すなわち垂直ナノワイア構造間の空間を埋めると見なされてよい。GaN層36は、垂直ナノワイア構造を垂直方向に密閉またはカプセル化する、すなわち垂直ナノワイア構造の上に垂直方向に延び、垂直ナノワイア構造の頂部を覆うとさらに見なされてよい。
【0044】
GaN層36は、振動板10に直接取り付けられてよい。
【0045】
微小電子機械ユニット100は、振動板10の表面上に配置された較正用重り17をさらに備えることができる。較正用重り17は、振動板の頂面上に直接配置されてよい。上記で例示されているように、振動板が円形である場合、較正用重り17もリング状であってよい。この特定の例示的な形状は、
図3に示されている。較正用重り17は、振動板上で中心に配置されてよい。したがって、振動板10の中心およびリング状の較正用重り17の中心は実質的に一致することができる。較正用重り17は、たとえばAlCuなどの金属化合物または合金によって製造されてよい。しかし、他の材料も適用可能であってよい。
【0046】
図5に関連して、ラウドスピーカ・デバイス200が概略的に示されている。ラウドスピーカ・デバイス200は、微小電子機械ユニットを備える。微小電子機械ユニット100は、上記のとおりである。ラウドスピーカ・デバイス200は、微小電子機械ユニット100の振動板10を作動させるように構成された回路210をさらに備える。回路210は、D級音声増幅器の一部を形成することができる。したがって、回路210は、三角または方形波発振器を使用して、パルス幅変調PWMを利用することができる。従来のD級増幅器は、増幅された音声信号を回復するために、2つの出力MOSFETおよび外部ローパス・フィルタを備える。しかし、本明細書では、D級増幅器はフィルタのない増幅器であってよい。さらに、第1および第2のGaN高電子移動度トランジスタHEMTが、従来のMOSFETに取って代わることができる。HEMTは、出力ノードを供給電圧Vddおよび接地に交互に接続することによって、電流ステアリング・スイッチとして動作することができる。したがって、結果として生じる出力は、高周波方形波である。出力方形波は、入力音声信号によってパルス幅変調されてよい。これは、内部で生成される三角または鋸歯波振動器への入力音声信号を比較することによって実現されてよい。これは、自然サンプリングと参照されてよく、三角波発振器がサンプリング・クロックとして作用することができる。その結果生じる方形波のデューティー・サイクルが、入力信号のレベルと比例される。GaN HEMTは、そのような可変のデューティー・サイクルのために配置されてよい。微小電子機械ユニット100の振動板10は、ラウドスピーカ・デバイス200の音波源として機能することができる。それによって、振動板10の音響特性は、その半導体構造、たとえば振動板10の半導体構造内の層の数、可能な貫通孔15、平面の延長の幾何形状などに依存する。本明細書で構成される音響特性は、従来と同様に、相対強度、振動周波数などを含むことができる。D級増幅器は、フル・ブリッジD級増幅器であってよい。回路210は、比較器212を備えることができる。比較器212は、音声入力信号を高周波三角波と比較して音声入力信号をデジタル化することによって、通常の比較器、たとえば動作増幅器として機能することができる。比較の結果は、アナログ音声入力信号からのデジタル・コピー信号であり、デジタル信号の低周波成分は音声入力信号を表し、高周波信号は概して無視される。第1および第2のHEMTは、比較器に電気的に接続されてよい。比較器の出力は、たとえばD級増幅器にとって一般的なように、中間に接続されたドライバによってHEMTを駆動する。振動板10は、8Ωスピーカであるラウドスピーカ・デバイス200に接続してよい。回路210は、デバイスのデジタル部分を取り扱うために、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイFPGAを備えることができる。入力音声は、24ビットのパルス・コード変調PCM信号であってよく、kHzサンプル・レートでパルスのストリームに符号化される。
【0047】
GaN HEMTデバイスの駆動は、GaN HEMTデバイス・ゲート接点とドライバとの間の距離に注意が払われることを必要とする。GaN HEMTデバイスは、高スイッチング周波数でハーフ・ブリッジまたはフル・ブリッジ動作のためにGaN HEMTデバイスのONおよびOFFを交互に切り換えるために、ドライバに当接していくつかのGaN HEMTデバイス間で短く等しい距離を提供することができる。
【0048】
図6に関連して、マイクロフォン・デバイス300が概略的に示されている。マイクロフォン・デバイス300は、微小電子機械ユニット100を備える。微小電子機械ユニット100は、上記のとおりである。微小電子機械ユニット100は、回路310を備える。回路310は、微小電子機械ユニット100の振動板10の動きを検出するように構成される。したがって、振動板10の機械的な動きが電圧差を誘起し、この電圧差は、上記のラウドスピーカ・デバイスに関連して記載された特徴を考慮して「逆方向」に、電気信号に変換されてよい。
【0049】
したがって、要約すると、上記で議論されたように、微小電子機械ユニット100が記載されてきた。微小電子機械ユニット100は、たとえば、ラウドスピーカまたはマイクロフォン内で使用されてよい。印加されるバイアス電圧がその振動板自体によって機械的な動き/変形60、62に変換されてよく、逆も同様であるため、微小電子機械ユニット100の振動板10の圧電特性は、コイル/ソレノイドを冗長にすることができる。
【0050】
当業者であれば、本発明が上記の好ましい実施形態に決して限定されないことを理解されよう。逆に、添付の特許請求の範囲の範囲内で、多くの修正および変形が可能である。
【0051】
たとえば、微小電子機械ユニットは、圧力センサ、流量センサ、およびバイオマーカ向けのカンチレバー式センサなどの多くの異なるデバイス内で使用されてよいことが容易に理解されよう。
【0052】
開示される実施形態に対する変形は、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求される発明を実施する当業者であれば理解および実現されよう。
【国際調査報告】