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特表2024-538219イリジウム系触媒及びその調製方法、ヒドロホルミル化方法
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  • 特表-イリジウム系触媒及びその調製方法、ヒドロホルミル化方法 図1
  • 特表-イリジウム系触媒及びその調製方法、ヒドロホルミル化方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】イリジウム系触媒及びその調製方法、ヒドロホルミル化方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/50 20060101AFI20241010BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20241010BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
C07C45/50
C07C47/02
B01J37/04 102
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523907
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 CN2021130914
(87)【国際公開番号】W WO2023070761
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111256879.2
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520307724
【氏名又は名称】南京延長反応技術研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING YANCHANG REACTION TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE CO. LTD
【住所又は居所原語表記】ZHOU, Zheng No.88, South Tuan District, Jiangbei New District Nanjing , Jiangsu 210047 China
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】張志炳
(72)【発明者】
【氏名】胡興邦
(72)【発明者】
【氏名】姚晨飛
(72)【発明者】
【氏名】周政
(72)【発明者】
【氏名】李磊
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169AA08
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC74A
4G169BC74B
4G169BE03A
4G169BE03B
4G169BE08A
4G169BE08B
4G169BE27A
4G169BE27B
4G169BE41A
4G169BE46B
4G169CB52
4G169DA04
4G169FA01
4G169FB05
4G169FC02
4G169FC07
4H006AA02
4H006AC45
4H006BA22
4H006BA39
4H006BA45
4H006BA46
4H006BA48
4H006BB11
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC31
4H006BC36
4H006BE20
4H006BE40
4H039CA62
4H039CL45
(57)【要約】
【課題】 イリジウム系触媒を提供する。
【解決手段】 イリジウム系触媒の化学構造式は以下の通りであることを特徴とする。式
中、Phはフェニル基、Rはメチル基又はエチル基であり、XはCHCO、NO
Cl、BF、PF、SbFのうちの1つ以上である。本発明は従来技術中のロジウ
ム系触媒をイリジウム系触媒に置き換えることによって反応のコストを低減し、反応物の
生産量を向上させる。
【化1】
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イリジウム系触媒を用いてオレフィンのヒドロホルミル化を行う方法であって、それに
は以下の工程:
イリジウム系触媒が存在する条件下において、オレフィン、一酸化炭素、水素を原料と
し、触媒反応を行うことと、
反応前に、前記イリジウム系触媒を溶媒中に溶解することと、
前記溶媒はn-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、トルエン又はテトラヒドロ
フランの1つであることと、
前記イリジウム系触媒は下記化学構造式:
【化1】
であることと、
式中、Phはフェニル基、Rはメチル基又はエチル基であり、XはCHCO、NO
、BF、PF、SbFのうちの1つ以上であることと、
前記イリジウム系触媒の調製方法であって、
4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジアルキルオキサンテン、溶媒及び
イリジウム化合物を混合撹拌し、さらに昇温、撹拌して前記イリジウム系触媒を得る工程
を含み、
前記混合撹拌の時間は2hであり、
前記昇温、撹拌において、温度を50℃まで昇温してから2h撹拌し、
前記イリジウム系触媒中のXがCHCO、NO、BF、PF、SbFであ
る場合、まず昇温、攪拌して置換対象物を得てから、X基を含む化合物を前記置換対象物
に添加して置換を行うことと、を含む
ことを特徴とするイリジウム系触媒を用いてオレフィンのヒドロホルミル化を行う方法
【請求項2】
前記触媒反応の反応温度は70~120℃であることを特徴とする請求項1に記載の方
法。
【請求項3】
前記触媒反応の反応温度は80~110℃であることを特徴とする請求項1に記載の方
法。
【請求項4】
前記触媒反応の反応圧力は0.5MPa~3.0MPaであることを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒反応の反応圧力は1.0MPa~2.0MPaであることを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記オレフィンと前記一酸化炭素の分圧比は10:1~1:10であることを特徴とす
る請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記オレフィンと前記一酸化炭素の分圧比は5:1~1:5であることを特徴とする請
求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記オレフィンと前記水素の分圧比は10:1~1:10であることを特徴とする請求
項1に記載の方法。
【請求項9】
前記オレフィンと前記水素の分圧比は5:1~1:5であることを特徴とする請求項1
に記載の方法。
【請求項10】
前記イリジウム系触媒の質量は前記溶媒の質量の0.005wt%~2.0wt%であ
ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記イリジウム系触媒の質量は前記溶媒の質量の0.05wt%~1.0wt%である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホルミル化反応分野に関し、特にイリジウム系触媒及びその調製方法、ヒドロ
ホルミル化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブチルアルデヒドとオクタノールは、幅広い用途を持つバルク化学工業原料である。現
在、工業的に合成されるブタノールは、主にオレフィンのヒドロホルミル化反応によって
n-ブチルアルデヒドとイソブチルアルデヒドを調製したうえで、それらを原料として後
続の反応を行って得ている。オレフィンのヒドロホルミル化反応は、ブタノールの合成に
おいて重要な工程である。
【0003】
オレフィンのヒドロホルミル化によるn-ブチルアルデヒド及びイソブチルアルデヒド
の合成についてはこれまでに数多くの特許が開示されており、それらの特許や現在の工業
的方法では、一般的にロジウム金属をベースとした触媒が採用されている。例えば、特許
文献1、特許文献2、特許文献3は、触媒にトリフェニルホスフィン-ロジウムを使用し
ている。特許文献4は、触媒にシクロオクタジエン酢酸-ロジウムを使用している。特許
文献5は、触媒に6,6’-((3,3’-ジ-tert-ブチル-5 ,5’-ジメト
キシ-[1,1’-ビフェニル]-2,ビス(オキシ))ジベンゾ[d,f][1,3,
2]ジオキサホスフェピン-ロジウムを使用している。特許文献6は、触媒にアセチルモ
ルホリン-ロジウムを使用している。特許文献7は、触媒に酢酸-ロジウムを使用してい
る。特許文献8は、触媒に亜りん酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-
ロジウムを使用している。特許文献9は、触媒に長鎖カルボン酸-ロジウムを使用してい
る。特許文献10は、触媒にアセチルアセトナートカルボニル-ロジウムを使用している
。特許文献11は、触媒にヒドリドカルボニル-トリス(トリフェニルホスフィン)-ロ
ジウムを使用している。特許文献12は、触媒に酢酸ロジウム(II)+トリス(3-ス
ルフォナトフェニル)ホスフィンナトリウム塩水和物を使用している。
【0004】
上記の特許以外に、ロジウム金属をベースとした触媒は公表論文においても一般的に採
用されている。例えば、非特許文献1は、触媒にヘテロ環リン配位子-ロジウムを使用し
ており、最高で2.6のn-ブチルアルデヒド/イソブチルアルデヒド比を得ている。非
特許文献2は、触媒にN-Triphos配位子-ロジウムを使用しており、最高で2.
3のn-ブチルアルデヒド/イソブチルアルデヒド比を得ている。非特許文献3は、触媒
にヒドリドカルボニル-トリス(トリフェニルホスフィン)-ロジウムを使用しており、
最高で12.7のn-ブチルアルデヒド/イソブチルアルデヒド比を得ている。非特許文
献4は、触媒にポルフィリン修飾のトリフェニルホスフィン配位子-ロジウムを使用して
おり、最高で2.3のn-ブチルアルデヒド/イソブチルアルデヒド比を得ている。
【0005】
ロジウム金属はオレフィンのヒドロホルミル化反応において何度もリサイクルできるも
のの、反応過程におけるゆっくりとした損失や失活は避けられない。ロジウム金属の国際
価格は急速に上昇しており、これに応じて生産工程の触媒コストも急速に上昇している。
また、n-ブチルアルデヒド/イソブチルアルデヒド比の値が低く、生産工程において価
値の低いイソブチルアルデヒドが大量に生成されていた。
【0006】
本発明はこれに鑑みて提出されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第02/00583号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3712126号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第102826967号明細書
【特許文献4】特開2002-047294号公報
【特許文献5】中国特許出願公開第110156580号明細書
【特許文献6】中国特許出願公開第103896748号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第3770144号明細書
【特許文献8】中国特許出願公開第111348995号明細書
【特許文献9】米国特許第9550179号明細書
【特許文献10】中国特許出願公開第102826973号明細書
【特許文献11】欧州特許第2417094号明細書
【特許文献12】欧州特許第2417093号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Angew.Chem.Int.Ed. 2019, 58, 2120-2124
【非特許文献2】ACS Catal. 2018, 8, 5799-5809
【非特許文献3】Journal of Molecular Catalysis A:Chemical, 2009, 300, 116-120
【非特許文献4】Chem. Eur. J. 2017, 23, 14769-14777
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の第1の目的は、イリジウム系触媒を提供することであり、本発明が使用するイ
リジウム系触媒は従来のイリジウム系触媒に比べて価格が安く、生産コストが大幅に削減
される。
【0010】
本発明の第2の目的は、イリジウム系触媒の調製方法を提供することであり、当該調製
方法は反応条件が穏やかであり、エネルギー消費が著しく低減されるうえに、調製される
触媒の触媒作用が従来の触媒よりも一層優れている。
【0011】
本発明の第3の目的は、イリジウム系触媒によりオレフィンのヒドロホルミル化を行う
方法を提供することであり、本発明がオレフィンのヒドロホルミル化を行う方法は、上述
の触媒を用いて触媒反応を行うことで、反応温度が低く、反応条件が穏やかであるだけで
なく、目的生成物の選択率が大幅に向上する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的を達成するために、以下の技術案を用いる。
【0013】
本発明はイリジウム系触媒を提供し、イリジウム系触媒の化学構造式は以下の通りであ
る。
【0014】
【化1】
【0015】
式中、Phはフェニル基、Rはメチル基又はエチル基であり、XはCHCO、NO
、Cl、BF、PF、SbFのうちの1つ以上である。イリジウム系触媒の中国
語名称は4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジアルキルオキサンテン-イ
リジウム触媒であり、略称はPOP(R)-Ir-Xである。
【0016】
本発明はさらにイリジウム系触媒の調製方法を提供する。それは以下の工程を含む。
【0017】
4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジアルキルオキサンテン、溶媒及び
イリジウム化合物を混合撹拌し、さらに昇温、撹拌してイリジウム系触媒を得る。ここで
、溶媒にはテトラヒドロフランを選択し、イリジウム化合物にはシクロオクタジエンイリ
ジウム塩化物を選択し、テトラヒドロフラン中で4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)
-9,9-ジアルキルオキサンテンとシクロオクタジエンイリジウム塩化物を2:1のモ
ル比で反応させてイリジウム系触媒POP(R)-Ir-Xを得た。
【0018】
好適には、混合撹拌の時間は1.5h~3hであり、好適には2hである。
【0019】
好適には、昇温、撹拌において、温度は40~60℃まで昇温するが、好適には50℃
であり、その後1.5h~3h撹拌するが、好適には2hである。
【0020】
好適には、イリジウム系触媒中のXがCHCO、NO、BF、PF、SbF
である場合、まず昇温、攪拌して置換対象物を得てから、X基を含む化合物を置換対象
物に添加して置換を行う。
【0021】
本発明はさらにイリジウム系触媒によりオレフィンのヒドロホルミル化を行う方法を提
供する。それは以下の工程を含む。
【0022】
上述の触媒が存在する条件下において、オレフィン、一酸化炭素、水素を原料とし、触
媒反応を行う。反応前に、触媒をn-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、トルエ
ン又はテトラヒドロフラン中に溶解する必要がある。
【0023】
好適には、触媒反応の反応温度は70~120℃であり、好適には80℃~110℃で
ある。
【0024】
好適には、触媒反応の時間は6~9hであり、好適には8hである。反応時間はあまり
長くする必要がなく、比較的短い反応時間で比較的高い収率の目的生成物が得られる。
【0025】
好適には、触媒反応の反応圧力は0.5MPa~3.0MPaであり、好適には1.0
MPa~2.0MPaである。
【0026】
好適には、オレフィンと一酸化炭素の分圧比は10:1~1:10であり、好適には5
:1~1:5である。
【0027】
好適には、オレフィンと水素の分圧比は10:1~1:10であり、好適には5:1~
1:5である。
【0028】
好適には、触媒用量は溶媒量の0.005wt%~2.0wt%であり、好適には0.
05wt%~1.0%である。
【発明の効果】
【0029】
本発明が採用するイリジウム系触媒は、プロピレン、一酸化炭素、水素を原料とし、ヒ
ドロホルミル化を行ってn-ブチルアルデヒド及びイソブチルアルデヒドを調製する。従
来のロジウム系触媒と比較すると、ロジウム金属の場合、反応におけるゆっくりとした流
出や失活は不可避であり、必然的に反応の転換比や選択率などに影響するだけでなく、ロ
ジウム金属の価格も急速に上昇しているが、本発明が採用するイリジウム系触媒は、価格
が安く、調製条件やヒドロホルミル化の反応条件が穏やかであり、n-ブチルアルデヒド
とイソブチルアルデヒドを調製する効果がより良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下の好適な実施形態についての詳細な説明を読むことで、当業者は他の様々な優位点
や利点をはっきり理解するであろう。図面は好適な実施形態を示す目的のみに用いられ、
本発明を限定するものとは見なされない。図面全体において、同一の部材は同一の参照符
合を用いて示している。
【0031】
図1】本発明の実施例6中の反応生成物のクロマトグラムである。
図2】本発明の実施例10中の反応生成物のクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施例に基づき本発明の実施形態について詳述するが、当業者は、以下の実施例
が本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものと見なすべきでは
ないことを理解するであろう。実施例において具体的な条件が明記されていないものにつ
いては、常套の条件に従うか又は製造業者が推奨する条件に従って実施した。使用した試
薬又は機器の製造業者が明記されていないものは、いずれも市場で購入可能な一般製品で
ある。
【実施例1】
【0033】
イリジウム系触媒の調製方法は以下の通りである。
【0034】
POP(CH)-Ir-Clの合成:窒素雰囲気下で250mlの反応フラスコにテ
トラヒドロフラン100ml、シクロオクタジエンイリジウム塩化物5.0g、4,5-
ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジアルキルオキサンテン8.6gを加え、室温
で2時間撹拌して反応させた後、50℃まで昇温し、2時間撹拌して反応させた。溶媒を
蒸発乾固し、得られた固体を20mlのn-ヘキサンで2回洗浄し、乾燥後に11.9g
のPOP(CH)-Ir-Clを得た。
【実施例2】
【0035】
具体的な操作工程は実施例1と同じであるが、異なる点として、混合撹拌時間を1.5
hとし、昇温、撹拌における温度を40℃、撹拌時間を1.5hとしており、最終的に1
1.4gのPOP(CH)-Ir-Clを得た。
【実施例3】
【0036】
具体的な操作工程は実施例1と同じであるが、異なる点として、混合撹拌時間を3hと
し、昇温、撹拌における温度を60℃、撹拌時間を3hとしており、最終的に11.5g
のPOP(CH)-Ir-Clを得た。
【実施例4】
【0037】
POP(CH)-Ir-NOの合成:250mlの反応フラスコにテトラヒドロフ
ラン150ml、実施例1~3で得たPOP(CH)-Ir-Cl 5.0g、硝酸銀
0.92g、水20mlを加え、室温下で6時間遮光撹拌して反応させ、不溶物を濾過し
た。溶媒を蒸発乾固し、得られた固体を20mlのn-ヘキサンで2回洗浄し、乾燥後に
POP(CH)-Ir-NOを4.5g得た。
【実施例5】
【0038】
POP(CH)-Ir-CHCOの合成:250mlの反応フラスコにテトラヒ
ドロフラン150ml、実施例1~3で得たPOP(CH)-Ir-Cl 5.0g、
硝酸銀0.90g、水20mlを加え、室温下で6時間遮光撹拌して反応させ、不溶物を
濾過した。溶媒を蒸発乾固し、得られた固体を20mlのn-ヘキサンで2回洗浄し、乾
燥後にPOP(CH)-Ir-CHCOを4.6g得た。
【実施例6】
【0039】
ヒドロホルミル化反応の操作工程は以下の通りである。
【0040】
50mlの高圧反応釜中に実施例5のPOP(CH)-Ir-CHCO 81m
g、トルエン12mlを加え、水素置換を3回行った後、3barのプロピレン、8ba
rの一酸化炭素、8barの水素の順に導入し、撹拌しながら90℃まで昇温した。この
温度下で8時間撹拌して反応させ、反応液を0℃まで冷却した。ゆっくりと減圧し、サン
プリングしてガスクロマトグラフ分析を行い、ガスクロマトグラフィーの結果に基づき、
触媒回転数TONが78.8、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒドの選択率が
99.8%(n-ブチルアルデヒド/イソブチルアルデヒド=29.1:1)であること
を算出できた。
[実施例7~11]
【0041】
実施例6のプロピレンのヒドロホルミル化反応方法を使用し、異なる温度に変更して反
応を行った。結果は表1に示す通りである。
【0042】
表1 プロピレンのヒドロホルミル化反応に及ぼす温度の影響

[実施例12~17]
【0043】
実施例6のプロピレンのヒドロホルミル化反応方法を使用し、異なるガス圧力に変更し
て反応を行った。結果は表2に示す通りである。
【0044】
表2 プロピレンのヒドロホルミル化反応に及ぼす圧力の影響


【比較例1】
【0045】
他の操作工程は実施例6と同じであるが、異なる点として、使用した触媒はCN111
348995Aに開示された亜りん酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)
-ロジウムである。結果は以下に示す通りである。
【0046】
表3 ヒドロホルミル化反応における触媒の違いが及ぼす影響

【0047】
上記表から分かるように、イリジウム系触媒を用いて行ったヒドロホルミル化反応のプ
ロセスでは、温度が80℃、プロピレンガス圧力が3barであるときにヒドロホルミル
化反応が最も良好であり、本発明は最高で29.1:1のn-ブチルアルデヒド/イソブ
チルアルデヒド比を得られている。これは、本発明が低温低圧条件下でも良好な反応の選
択率及び反応の転換率を有することを説明するものである。さらに、比較例1のロジウム
触媒との比較から、本発明の新型触媒がコストを低減させるだけでなく、触媒作用が従来
の触媒より優れていることも分かる。本発明が採用する新しいイリジウム系触媒によって
触媒反応を行い、且つ反応条件を模索したことにより、低エネルギー消費量の条件下で反
応を行うことが実現されたうえに、反応効率も良好であった。
【0048】
最後に、上述の実施形態は本発明の原理を説明する目的で用いた例示的な実施形態に過
ぎず、本発明はそれらに限定されないことを理解されたい。当業者であれば、本発明の原
理及び本質を逸脱せずに各種の変形や改良を行うことが可能であり、それらの変形や改良
も本発明の保護範囲に属すると見なされる。
図1
図2
【国際調査報告】