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特表2024-538227電気化されたファイバー吸着剤の製造方法並びに電気及び電磁スイング吸着プロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】電気化されたファイバー吸着剤の製造方法並びに電気及び電磁スイング吸着プロセス
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20241010BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 20/32 20060101ALI20241010BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B01J20/22 A
B01J20/10 A
B01J20/10 C
B01J20/18 A
B01J20/18 E
B01J20/20 B
B01J20/20 D
B01J20/20 E
B01J20/26 A
B01J20/32
B01D53/04 110
B01J20/28 Z
B01J20/34 D
B01J20/34 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524376
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 KR2022015484
(87)【国際公開番号】W WO2023068651
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0141816
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518366555
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】コ ドンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヨンフン
(72)【発明者】
【氏名】ジャマル アキル
(72)【発明者】
【氏名】キム キュナム
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジンホン
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA03
4D012CA03
4D012CD05
4D012CD06
4D012CE03
4D012CF05
4D012CF10
4D012CG01
4D012CG02
4D012CG03
4G066AA04B
4G066AA05B
4G066AA15C
4G066AA18C
4G066AA20C
4G066AA22B
4G066AA27C
4G066AA42C
4G066AA61B
4G066AB07B
4G066AB10B
4G066AB12B
4G066AB13B
4G066AB24B
4G066AC02C
4G066AC11B
4G066AC12C
4G066AC13C
4G066AC17C
4G066AC27C
4G066BA09
4G066BA16
4G066BA20
4G066BA22
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA01
4G066FA03
4G066FA12
4G066FA37
4G066GA02
4G066GA03
(57)【要約】
本発明は、吸着剤及び伝導性材料を含む支持体で形成される電気化されたファイバー吸着剤及びその製造方法を開示する。本発明によるファイバー吸着剤は、比較的低い濃度、特に大気中の二酸化炭素を効率よく吸着することができ、二酸化炭素の脱着に必要なエネルギー源が自由で、直接的な吸着剤の加熱が可能であるため、エネルギー効率に優れているという効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤及び伝導性材料を含む多孔性支持体から形成されている電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項2】
前記支持体のボア表面又はシェル表面に伝導性層が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項3】
前記支持体のボアに伝導性材料が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項4】
前記支持体の内部に伝導性材料が含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項5】
前記吸着剤は、二酸化炭素を物理的または化学的に吸着することができることを特徴とする、請求項1に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項6】
前記吸着剤は、金属-有機骨格体(Metal-Organic Framework, MOF)、多孔性有機分子(Porous Organic Cage, POC)、共有結合性有機骨格体(Covalent Organic Frameworks, COF)、多孔性配位ポリマー(Porous Coordination Polymers, PCP)、金属-有機多面体(Metal-Organic polyhedra, MOP)、ゼオライト、シリカ、活性炭、炭素素材及び金属酸化物からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項7】
前記金属-有機骨格体は、金属ノードおよび有機リガンドを含む、請求項6に記載の電気化されたファイバー吸着剤 。
【請求項8】
前記金属ノードは、Mg、Al、Y、Sc、Mo、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Cd、Ca、Pd、Pt、Au、Ag、Ru、Gd、Eu、Tb及びNbからなる群より選択される1種以上であり、前記有機リガンドは、4,4'-ジオキシド-3,3'-ビフェニルジカルボン酸塩、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボン酸塩、1,5-ジオキシド-2,6-ナフタレンジカルボン酸塩、4,4'-ジオキシド-3,3'-トリフェニルジカルボン酸塩、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、4-(4-カルボキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-ヒドロキシ-安息香酸、4,4'-エチニレンジ安息香酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、2-ブロモ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、ピリジン-3-カルボン酸、2-メチル-1H-イミダゾール、4-メチル-5-イミダゾールカルボキシアルデヒド及びビフェニル-4,4'-ジカルボン酸(biphenyl-4,4'-dicarboxylic acid)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項7に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項9】
前記金属-有機骨格体はNbOFFIVE-1-Niであることを特徴とする、請求項7に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項10】
前記炭素材料が多孔性炭素材料であることを特徴とする、請求項6に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項11】
前記吸着剤は、アミン系の化合物をさらに投入または結合したことを特徴とする、請求項6に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項12】
前記伝導性材料は、伝導性多孔性構造体、伝導性金属及び合金、伝導性2D材料、及び伝導性炭素材料からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項13】
前記伝導性材料の抵抗は、0.5Ω/m~10,000Ω/mであることを特徴とする、請求項12に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項14】
前記伝導性金属及び合金は、銀、銅、軟銅(annealed copper)、金、アルミニウム、カルシウム、タングステン、亜鉛、コバルト、ニッケル、ルテニウム、リチウム、鉄、白金、スズ、ガリウム、ニオブ、炭素鋼、鉛、ガリンスタン、チタン、方向性電気鋼板(grain oriented electrical steel)、マンガニン(manganin)、コンスタンタン(constantan)、ステンレス鋼、水銀、マンガン、およびニクロム(nichrome)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項12に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項15】
前記伝導性2D材料は、二硫化モリブデン(MoS2)、ホスホリン(phosphorene), ビスムチン(bismuthene)、マキシン(Mxene)または二硫化タングステン(WS2)であることを特徴とする、請求項12に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項16】
前記伝導性炭素材料は、グラフェン、酸化グラフェン、グラファイト(graphite)、カーボンブラック(carbon black)及びカーボンナノチューブからなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項12に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項17】
前記伝導性多孔性構造体は、共有結合性有機骨格体(Covalent Organic Framework, COF)または金属-有機骨格体(Metal-Organic Framework, MOF)または炭素系多孔性物質であることを特徴とする、請求項12に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項18】
前記伝導性材料は、粒子状またはバルクワイヤ状であることを特徴とする、請求項12に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項19】
前記バルクワイヤは、絶縁体でコーティングされていることを特徴とする、請求項18に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項20】
前記支持体は、高分子または焼結による無機物であることを特徴とする、請求項1に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項21】
前記支持体は、セルロース、酢酸セルロース、微多孔性ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニリデンフッ化物、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、酸化ニッケル、酸化銅、アルミナ、酸化亜鉛、炭化ケイ素からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項20に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項22】
前記支持体は、中空構造またはモノリシック構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項23】
前記吸着剤は、前記支持体中に1wt%~80wt%含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項24】
サセプター(susceptor)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項25】
前記サセプターは、炭素繊維、酸化クロム、針鉄鉱(Goethite)、レピドクロサイト(Lapidocrocite)、赤鉄鉱(Hematite)、マグヘマイト(Maghemite)、磁鉄鉱(Magnetite)、チタン鉄鉱(Ilmenite)、鉄(Fe)及びコバルト(Co)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項24に記載の電気化されたファイバー吸着剤。
【請求項26】
吸着剤と支持体を含むドープ溶液を紡糸してから伝導性材料を含む溶液に浸漬するステップとを含む、請求項2に記載の電気化されたファイバー吸着剤の製造方法。
【請求項27】
前記ファイバー吸着剤の製造方法は、前記支持体を溶液に浸漬する前に、前記支持体のシェル表面を処理するステップをさらに含む、請求項26に記載の電気化されたファイバー吸着剤の製造方法。
【請求項28】
吸着剤及び支持体を含むドープ溶液を紡糸するが、紡糸口金のボア又はコア側に伝導性材料を添加した後に紡糸するステップを含む、請求項3又は4に記載の電気化されたファイバー吸着剤の製造方法。
【請求項29】
請求項1に記載の電気化されたファイバー吸着剤を複数含む二酸化炭素の電気および電磁スイング吸着のための電気化されたファイバー吸着剤モジュール。
【請求項30】
(a)二酸化炭素含有ガスを請求項1に記載の電気化されたファイバー吸着剤と接触させ、前記二酸化炭素を吸着するステップ;および
(b)前記ファイバー吸着剤に電圧を印加して前記吸着された二酸化炭素を脱着するステップ;を含む、二酸化炭素の電気および電磁スイング吸着方法。
【請求項31】
抵抗加熱方式又は誘導加熱方式により電圧を印加して二酸化炭素を吸着した吸着剤を再生することを特徴とする、請求項30に記載の二酸化炭素の電気及び電磁スイング吸着方法。
【請求項32】
前記ガス中の二酸化炭素濃度は1000ppm以下であることを特徴とする、請求項30に記載の二酸化炭素の電気及び電磁スイング吸着方法。
【請求項33】
前記ステップ(b)の後に、(c)前記ステップ(a)及び(b)を繰り返して行うステップをさらに含む、請求項30に記載の二酸化炭素の電気及び電磁スイング吸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化されたファイバー吸着剤、その製造方法並びにこれを用いた電気及び電磁スイング吸着プロセスに関し、より詳しくは、吸着剤と伝導性材料を含む多孔性支持体で形成されている電気化されたファイバー吸着剤、その製造方法並びにこれを用いた電気及び電磁スイング吸着プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
年間40Gt以上の二酸化炭素の排出は、地球温暖化をますます加速させるため、カーボンニュートラルに関する問題が世界中に広まっている。カーボンニュートラルのための様々な技術のうち、燃焼後の二酸化炭素の捕捉技術は二酸化炭素の排出量を減らして二酸化炭素濃度の増加速度だけを低下させるが、直接空気捕捉(Direct air capture, DAC)技術は大気中の二酸化炭素を直接除去するという点で、カーボンニュートラルの根本的な解決策として注目されている技術である。
【0003】
化石燃料発電所(10~15%)から排出される二酸化炭素の量より350倍低い大気中の二酸化炭素濃度(~400ppm)を効果的に抽出するために、従来には、二酸化炭素との結合エネルギーが高い水性アルカリベースの化学吸収分離プロセスが適用されてきた。しかし、溶液ベースの再生プロセスは、二酸化炭素を脱着する際に多くのエネルギーがかかり、プラントの腐食を引き起こす可能性がある。一方、ゼオライト、シリカ、金属-有機骨格体(Metal-Organic Framework, MOF)のような多孔性吸着剤は、広い表面積に基づいて二酸化炭素をよく吸着することができるが、再生に必要なエネルギーは低いため、効果的な二酸化炭素吸着剤として浮上した。
【0004】
直接空気捕集は、圧力スイング吸着ではなく、温度スイング吸着(Temperature swing adsorption, TSA)および電気スイング吸着(Electric swing adsorption, ESA)が考慮され、このような吸着プロセスは、10kPa未満の低い二酸化炭素分圧を処理する再生プロセスに効果的である。
【0005】
ただし、燃焼後の二酸化炭素の捕集技術の場合、工場から廃熱を提供され、吸着剤の再生が円滑であることに対し、直接空気捕集技術は設置位置は自由だが、吸着剤の再生熱源を確保することが難しい。
【0006】
また、蒸気を利用した従来の温度スイング吸着は、吸着剤の安定性を低下させたり、生成物の純度を急激に下げたりして、水を蒸気に転換するのに多くのエネルギーがかかるため限界が存在し、脱着後の二酸化炭素の純度を下げ、捕集した二酸化炭素の後処理に困難がある。
【0007】
一方、印加された電気エネルギーを利用した自己発熱であるジュール加熱(joule heating)あるいは抵抗加熱効果を利用する電気スイング吸着プロセスの場合には、吸着剤の安定性を維持すると同時に、製品の純度とプロセス効率を最大化することができる。特に、このような電気スイング吸着プロセスは、太陽光、風力、燃料電池などクリーンエネルギーと呼ばれる新再生可能エネルギーで駆動することができ、設置位置の制約が少なく、直接空気捕集にさらに最適化されている。しかし、電気エネルギーを熱源として使用するためには、吸着モジュールを電熱器で包んで使用しなければならないが、これも吸着モジュールのサイズが大きくなればなるほど、モジュールの内部まで所望の温度に上げるのが容易ではないという欠点がある。
【0008】
また、二酸化炭素の直接捕集プロセスは、大気圧へ提供される空気中の約400ppmに達する非常に低い分圧の二酸化炭素を吸着するため、圧力降下(pressure drop)が大きい充填層吸着管(packed bed)システムの代わりに他のシステムを導入しなければならない。
【0009】
つまり、直接空気捕集産業で多孔性吸着剤を使用した効果的な電気スイング吸着の作動を示すためには、i)高いCO2容量、ii)優れた電気発熱性、iii)低い圧力降下および拡散抵抗などの特性を必要とする。
そのため、電気スイング吸着方式に適用するために必要な特性を兼ね備えた新しいタイプの吸着剤が求められている。
【0010】
一方、韓国公開特許第10-2018-0117023号は、結合剤を含むアミン官能化MOFベースの二酸化炭素吸着剤を開示しており、韓国公開特許第10-2020-0145906号は、二酸化炭素捕集のための構造化された金属-有機骨格体ファイバー吸着剤及びその製造方法を開示している。
【0011】
ただし、韓国公開特許第10-2018-0117023号の場合、MOFベース吸着剤のアミン官能化による二酸化炭素吸着量の増加には成功したものの、当該吸着剤の実質的なプロセスに使用するための成形及びプロセスに対する効果的な解決策を提示していない。そして、韓国公開特許第10-2020-0145906号は、金属-有機骨格体ファイバー吸着剤の製造方法を通じて二酸化炭素吸着剤の製作方法と成形法を同時に解決したが、当該ファイバー吸着剤を使用するためには、高温の蒸気またはパージガスを伴う温度スイング吸着が必要であり、これは吸着システムの設置を蒸気やパージガスを供給できる工場地帯にしかできないという地理的限界があるため、大気中の二酸化炭素吸着には適していないという欠点がある。
【0012】
そこで、本発明者らは、前記問題を解決するために鋭意努力した結果、吸着剤と伝導性材料を含む多孔性支持体で形成されている電気化されたファイバー吸着剤を製造し、前記製造されたファイバー吸着剤が比較的低い濃度、特に大気中の二酸化炭素を効率よく吸着することができ、二酸化炭素の脱着に必要なエネルギー源が自由で、直接的な吸着剤の加熱が可能であるため、エネルギー効率に優れていることを確認し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国公開特許10-2018-0117023号
【特許文献2】韓国公開特許10-2020-0145906号
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、電気化されたファイバー吸着剤及びその製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明は、吸着剤と伝導性材料を含む多孔性支持体で形成された電気化されたファイバー吸着剤を提供する。
【0015】
本発明はまた、吸着剤と支持体を含むドープ溶液(Dope solution)を紡糸した後、伝導性材料を含む溶液に浸漬するステップを含む、前記支持体のボア表面又はシェル表面に伝導性層が形成されている電気化されたファイバー吸着剤の製造方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、吸着剤と支持体を含むドープ溶液を紡糸し、紡糸口金のボアに伝導性材料を添加した後に紡糸するステップを含む、前記支持体のボアに伝導性材料が形成されている電気化されたファイバー吸着剤の製造方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、吸着剤および伝導性材料と支持体を含むドープ溶液を紡糸するステップを含む、前記支持体の内部に吸着剤などの伝導性材料が含まれている電気化されたファイバー吸着剤の製造方法を提供する。
【0018】
本発明はまた、前記電気化されたファイバー吸着剤を複数含む二酸化炭素の電気および電磁スイング吸着のための電気化されたファイバー吸着剤モジュールを提供する。
【0019】
本発明はまた、(a)二酸化炭素含有ガスを前記電気化されたファイバー吸着剤に接触させて前記二酸化炭素を吸着するステップ;および(b)前記ファイバー吸着剤に電圧を印加して前記吸着された二酸化炭素を脱着するステップ;を含む、二酸化炭素の電気および電磁スイング吸着方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、(a)二酸化炭素含有ガスを前記ファイバー吸着剤と接触させて前記二酸化炭素を吸着するステップ;(b)前記ファイバー吸着剤に電圧を印加して前記吸着された二酸化炭素を脱着するステップ;および(c)前記ステップ(a)および(b)を繰り返すステップを含む、電気化されたファイバー吸着剤の電気および電磁スイング吸着プロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施態様によるファイバー吸着剤の構成を模式的に示したものである。
図2】本発明の一実施態様によるファイバー吸着剤のSEM画像である。
図3】本発明の一実施態様によるシェル表面に伝導性層が形成されているファイバー吸着剤のSEM画像である。
図4】本発明の一実施態様によるシェル表面に伝導性層が形成されているファイバー吸着剤の3Dデジタル顕微鏡画像である。
図5】本発明の一実施態様によるシェル表面に伝導性層が形成されているファイバー吸着剤の印加電圧による温度を示す画像である。
図6】及び
図7】本発明の一実施態様によるファイバー吸着剤の等温条件における二酸化炭素の吸着量を示すグラフである。
図8】本発明の熱的特性測定前後の一実施態様によるファイバー吸着剤に対して、等温条件での二酸化炭素の吸着量を示すグラフである。
図9】本発明の一実施態様により製造されたCuバルクワイヤが形成されているファイバー吸着剤のSEM画像である。
図9a】、
図9b】、
図9d】、及び
図9e】本発明の実施例により製造されたCuバルクワイヤが形成され、メソポーラスシリカ(mesoporous silica)を含むファイバー吸着剤のSEM画像である。
図9c】及び
図9f】本発明の実施態様により製造されたCuバルクワイヤが形成されているファイバー吸着剤のデジタル画像である。
図10a】本発明の一実施態様により製造されたCuバルクワイヤが形成されている高分子ファイバー(NbOFFIVE-1-Ni)のCO2破過曲線(breakthrough curve)である。
図10b】本発明の一実施態様により製造されたNiCrバルクワイヤが形成されており、金属-有機骨格体NbOFFIVE-1-Niを含むファイバー吸着剤のファイバー当たりの電流による温度の変化を示すグラフである。
図11】本発明の他の実施態様により製造されたCuバルクワイヤが形成されているファイバー吸着剤のCO2破過曲線である。
図12】本発明の実施態様に使用される乾湿式紡糸工程(dry-jet wet-quenching spinning)装置を示す図である。
図13】本発明に記載の電気化されたファイバー吸着剤の誘導加熱方式の原理を説明する図である。
【発明の実施のための形態】
【0022】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される命名法及び下記に記載する実験方法は、当該技術分野においてよく知られており、通常使用されるものである。
【0023】
本発明は、吸着剤と伝導性材料を含む多孔性支持体で形成されているファイバー吸着剤が比較的低い濃度、特に大気中の二酸化炭素を効率よく吸着することができ、二酸化炭素の脱着に必要なエネルギー源が自由で、直接的な吸着剤の加熱が可能であり、エネルギー効率に優れていることを確認しようとした。
【0024】
従って、本発明は、一観点では、吸着剤と伝導性材料を含む多孔性支持体で形成された電気化されたファイバー吸着剤に関する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明によれば、吸着剤と伝導性材料を含む多孔性支持体で形成された電気化されたファイバー吸着剤が提供される。
【0025】
本発明の好ましい一実施態様によれば、前記支持体のボア表面又はシェル表面に伝導性層が形成されるか(図1のRoute1)、又は前記支持体の内部に伝導性材料が形成されてもよい(図1のRoute2)。
【0026】
このとき、本発明における伝導性材料は、支持体のボア表面又はシェル表面へのコーティング(coating)によって伝導性層の形で形成されてもよい。または、紡糸過程でボアに一緒に紡糸して前記支持体のボアに位置してもよい。このとき、ファイバー全体を貫通するバルクワイヤ状であってもよい。または、ドープ溶液に一緒に含めて紡糸し、前記支持体の内部に位置してもよい。
【0027】
また、本発明における「モノリシック(monolithic)構造」とは、中空型(hollow fiber)構造ではなく、内部が充填されている円筒型構造を意味する。
以下、本発明による電気化されたファイバー吸着剤を各構成別に詳細に説明する。
【0028】
支持体
まず、本発明によるファイバー吸着剤は、前記吸着剤と伝導性材料を支持する多孔性支持体を含む。
前記支持体は、有機支持体(高分子支持体)または無機支持体であってもよく、無機支持体(無機物)は焼結プロセスによって形成されてもよい。
【0029】
例えば、前記支持体は、セルロース、酢酸セルロース、微多孔性ポリマー(Polymer of Intrinsic Microporosity:PIM)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、酸化ニッケル、酸化銅、アルミナ、酸化亜鉛、炭化ケイ素からなる群より選択される1種以上であってもよい。
また、前記支持体は、中空構造またはモノリシック構造を有してもよい。
【0030】
吸着剤
前記吸着剤は、金属-有機骨格体(Metal-Organic Framework, MOF)、多孔性有機分子(Porous Organic Cage, POC)、共有結合性有機骨格体(Covalent Organic Frameworks, COF)、多孔性配位ポリマー(Porous Coordination Polymers, PCP)、金属-有機多面体(Metal-Organic Polyhedra, MOP)、ゼオライト、シリカ、活性炭、炭素素材及び金属酸化物で構成される群から選択される1種以上であってもよく、このとき、前記炭素素材は、カーボンナノチューブ又はグラフェンなどの多孔性炭素材料であってもよい。この時、前記吸着剤として使用される前記物質は、アミン系(R-NH2 またはR2-NHまたはR3-N、Rは炭化水素官能基である)の化合物をさらに投入(infiltration)または結合(bonding)させて二酸化炭素吸着能を向上させることができる。
【0031】
前記金属-有機骨格体は、金属ノード及び有機リガンドを含んでもよく、このとき、金属ノードは、Mg、Al、Y、Sc、Mo、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Cd、Ca、Pd、Pt、Au、Ag、Ru、Gd、Eu、Tb及びNbからなる群より選択される1種以上であってもよく、前記有機リガンドは、4,4'-ジオキシド-3,3'-ビフェニルジカルボン酸塩、2,5-ジオキシド-1,4-ベンゼンジカルボン酸塩、1,5-ジオキシド-2,6-ナフタレンジカルボン酸塩、4,4'-ジオキシド-3,3'-トリフェニルジカルボン酸塩、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、4-(4-カルボキシ-3-ヒドロキシ-フェニル)-2-ヒドロキシ-安息香酸、4,4'-エチニレンジ安息香酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、2-ブロモ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、ピリジン-3-カルボン酸、2-メチル-1H-イミダゾール、4-メチル-5-イミダゾールカルボキシアルデヒド及びビフェニル-4,4'-ジカルボン酸から選択される1種以上であってもよく、好ましくは金属-有機骨格体はNbOFFIVE-1-Niであってもよいが、これに限定されない。
このように支持体に含まれる吸着剤は、二酸化炭素を化学的に吸着したり、物理的に吸着することができる。
【0032】
また、吸着剤が支持体に含まれた形の吸着剤であるため、吸着剤のみを使用する充填層吸着管では、吸着剤が空気の流れを妨害して圧力降下現象が発生し、これにより吸着のための全体サイクル時間が長くなり、効率が低下する可能性があるという問題を解決することができる。
【0033】
また、このような形状の吸着剤は、モノリス(monolith)状より物質伝達係数に優れており、これにより、吸着がより早く起こることができるため、効率的な二酸化炭素吸着が可能という利点もある。
【0034】
吸着剤をファイバー状に成形する理由は、圧力降下が高いほどファン過負荷または高いファン運転コストが必要であるからである。吸着剤を利用するプロセスにおいて、流体が曲がりくねった通路を通過し、カラム内部の吸着剤との衝突により圧力降下が発生する。充填層構造である場合には、さらに曲がりくねった通路が発生し、これによる圧力降下で駆動のためのより高い圧力を必要とし、吸入口でより多くのエネルギーを消費することになる。このように、ファイバー吸着剤カラムの駆動圧力と同じ圧力で流体が充填層に沿って進行する場合、ファイバー吸着剤のそれと比べて明らかに低い流速でカラムに沿って進行することになり、これは流体-吸着剤接触境界に影響を与えるため、吸着カラムの入口から出口まで徐々に吸着効率が低下することになる。
【0035】
モノリス吸着床は、まっすぐな構造の流体の流れ通路を提供するため、最小限の圧力降下が発生する。カラム全体に同じ吸着能力でのより高い吸着効率を有し、これにより、より高いエネルギー効率を保証することができる。しかし、構造の特性上、単位体積当たりの吸着剤の量がファイバー吸着剤のそれと比べて低く、これは実験室のスケールでは重要性が低いが、産業スケールで見れば、全体的な吸着モジュール、吸着塔のサイズにおいて大きな差を見せることになる。
【0036】
前記吸着剤は、前記支持体内に1wt%~80wt%で含まれてもよく、好ましくは20wt%~70wt%、より好ましくは30wt%~50wt%で含まれてもよい。
【0037】
前記吸着剤が前記支持体内に1wt%未満で含まれる場合、ファイバー吸着剤のCO2吸着性能が低調であるという問題が発生する可能性があり、前記支持体に80wt%を超えて含まれる場合、ドープ溶液の粘度が高く、紡糸プロセスが困難であり、生成された高分子ファイバー吸着剤は脆くなりやすいという問題が発生する可能性がある。
【0038】
伝導性材料
また、本発明で提供されるファイバー吸着剤は、伝導性材料を含んでもよい。
このとき、伝導性材料は、前記支持体のボア表面又はシェル表面に形成されてもよく、さらに、吸着剤を支持体にローディングする際に吸着剤と共に含まれてもよく、ドープ溶液とバルクワイヤを一緒に紡糸して支持体のボアにバルクワイヤを形成するなどの方法で、支持体内に含まれる形で伝導性材料を形成してもよい。
前記伝導性材料は、伝導性多孔性構造体、伝導性金属及び合金、伝導性2D材料、及び伝導性炭素材料からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0039】
このとき、前記伝導性多孔性構造体は、共有結合性有機骨格体(Covalent Organic Framework, COF)、金属-有機骨格体(Metal-Organic Framework, MOF)、炭素系多孔性物質であってもよく、前記伝導性金属及び合金は、銀、銅、軟銅(annealed copper)、金、アルミニウム、カルシウム、タングステン、亜鉛、コバルト、ニッケル、ルテニウム、リチウム、鉄、白金、スズ、ガリウム、ニオブ、炭素鋼、鉛、ガリンスタン、チタン、方向性電気鋼板(grain oriented electrical steel)、マンガニン(manganin)、コンスタンタン(constantan)、ステンレス鋼、水銀、マンガン、およびニクロム(nichrome)、炭化ケイ素、鉄アルミニウム、タンタル、モリブデン、二ケイ化モリブデン、ランタンクロマイト、チタン酸バリウムから選択される1種以上を含んでもよい。
【0040】
前記伝導性2D材料は、二硫化モリブデン(MoS2)、ホスホリン(Phosphorene)、ビスムチン(Bismuthene)、マキシン(MXene)または二硫化タングステン(WS2)であってもよく、前記伝導性炭素材料は、グラフェン、酸化グラフェン、グラファイト(graphite)、カーボンブラック(carbon black)およびカーボンナノチューブからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0041】
また、前記伝導性材料は、粒子状またはバルクワイヤ状の1種の形状であってもよく、粒子状は、物理的に連結されて電流が流れることができる形状であってもよい。
本発明の一実施態様において、前記伝導性材料は、伝導性材料のナノワイヤ状であってもよい。
他の実施態様では、前記伝導性材料は、伝導性材料のバルクワイヤ状であってもよい。
前記伝導性材料は、ジュール加熱効果又は抵抗加熱及び誘導加熱効果が発生する材料であることが好ましい。
一実施態様では、前記伝導性材料は、前記支持体のシェル表面にコーティングされてもよい。
他の実施態様では、前記伝導性材料は、前記支持体ボアにバルクワイヤ状で位置してもよい。
【0042】
前記伝導性材料の抵抗は、0.001Ω/m~10000Ω/mであってもよく、より好ましくは、実施例に基づいて0.5Ω/m~35Ω/mであってもよい。
【0043】
前記伝導性材料の抵抗が0.001 Ω/m未満で低い場合、熱を発生させるために過剰な電流が必要であるという問題が発生する可能性があり、これにより高分子支持体、または吸着剤の崩壊が行われる可能性がある。また、伝導性材料の単位抵抗が1000Ω/mを超えて高くなる場合、十分な熱を発生させるために過剰な電圧が求められるという問題が発生する可能性がある。
【0044】
このような伝導性層の抵抗値は、伝導性材料の選択、複数の伝導性材料間の電気的連結構造、伝導性層の厚さ及び長さなどを調節することで適切に制御することができる。
【0045】
ほとんどの高分子の場合、直接電流にさらされると、強い電流により高分子鎖が切断され、支持体が酸化される場合がある。これを補完するために、内部に入るバルクワイヤに絶縁体(non-conductive)をコーティングして、高分子とバルクワイヤ間の直接的な接触を遮断することができる。
【0046】
絶縁体コーティングの場合、エナメル、パラフィン、ポリエチレンなどであってもよく、これは紡糸プロセスの前にバルクワイヤにコーティングして作製してもよく、または紡糸プロセス中にボアにバルクワイヤと絶縁体溶液を一緒に紡糸してもよい。これにより、バルクワイヤと支持体との直接的な接触を回避することで、電流の流れはそのままワイヤに維持することに対し、ワイヤにおいてジュール加熱および抵抗加熱効果で発生する熱は効果的にファイバー吸着剤に伝達することができる。
【0047】
誘導加熱(induction heat)方式は、本発明の前記抵抗加熱方式とその方式が非常に類似している。誘導加熱の基本原理は、誘導電流による抵抗加熱で、図13に示すように、外部電流の方向が高い周波数に変更されるとき、その電流から発生する磁場の方向が急激に変化し、それによって磁場変化の影響を受ける電磁性物質に渦電流が流れ続けて加熱される方式である。
【0048】
したがって、本発明による方式であるワイヤを直接差し込んで発熱させる以外に、誘導電流を発生させることができる物質がファイバー吸着剤に分散させることができる。誘導電流を発生させることができる物質は、サセプター(susceptor)と呼ばれる。サセプターは、磁場の影響で渦電流を発生させることができる電磁性物質を意味し、代表的に炭素繊維がこれに属する。炭素繊維をドープ溶液に混ぜて紡糸するRoute2の方法で作製すると、誘導加熱が可能なファイバー吸着剤が生成される。
【0049】
炭素繊維以外のセプタムは磁性を帯びる物質がほとんど可能であり、特に磁性を失う温度であるキュリー温度(Curie temperature)だけ脱着したい温度以上であればほとんど使用可能である。代表的に1)酸化クロム(CrO2, TCurie=113℃)、2)酸化鉄系の鉱石:[1]針鉄鉱(Goethite, α-FeO(OH), 120℃), [2]鱗鉄鉱(Lapidocrocite, γ-FeO(OH), 196℃), [3]赤鉄鉱(Hematite, α-Fe2O3, 680℃)、[4]マグヘマイト(Maghemite, α-Fe2O3, 617℃)、[5]磁鉄鉱(Magnetite, Fe3O4 , 575℃), [6]チタン鉄鉱(Ilmenite, FeTiO, 233℃)、及び 3)純金属物質([1]鉄、Fe、768℃、[2]コバルト、Co、1121℃など)などが主な候補物質となる。
【0050】
ファイバー吸着剤は、大量化が容易で商用化が可能な吸着剤プラットフォームであるが、二酸化炭素の吸脱着に使用するには、高分子の熱容量がおおむね高い。高分子の熱容量が高いため、ファイバー吸着剤の熱容量も高くなる傾向があり、これにより、所望の脱着温度まで上げるのに多くの熱とエネルギーが必要である。熱容量調節の概念は、その問題を解決するために導入することができる。
【0051】
Super Pなどの炭素物質は安定しており、ドープ溶液に混ぜてファイバー吸着剤として製造しやすく、熱容量も非常に低いので、これらの補助物質を混ぜてファイバー吸着剤として製造すれば、熱容量が低く調節されたファイバー吸着剤を生産することができる。熱容量だけでなく、当該補助物質は熱伝達効率も優れており、ファイバー吸着剤内の温度分布度を均一に調節することができる。ただし、Route1とRoute2のいずれの方式でも、ファイバー吸着剤を製造できるドープ溶液に入ることができる固体(吸着剤及び熱容量調節用の補助物質)の量に限界があり、補助物質を追加することによって吸着量に損失がある可能性がある。したがって、補助物質の量に対する吸着量、熱容量及び熱伝達係数を比較分析して最適なファイバー吸着剤を見つける技術を導入することができる。
【0052】
以下、本発明の他の観点から提供されるファイバー吸着剤の製造方法を各ステップ別に詳細に説明する。このとき、前述したファイバー吸着剤に対して説明した内容は、後述するファイバー吸着剤の製造方法に全て適用することができる。
【0053】
Route1
本発明は、他の観点から、吸着剤と支持体を含むドープ溶液を紡糸した後(紡糸ステップ)、伝導性材料を含む溶液に浸漬するステップ(コーティングステップ)を含む、前記支持体のボア表面及びシェル表面に伝導性層が形成されている電気化されたファイバー吸着剤の製造方法に関し、具体的には、吸着剤と支持体を含むドープ溶液を紡糸して相分離により固体化させた後、伝導性材料を含む溶液に浸漬するステップを含む、前記支持体のボア表面又はシェル表面に伝導性層が形成されている電気化されたファイバー吸着剤の製造方法に関する。
【0054】
本発明の一実施態様によれば、前記紡糸ステップとディップコーティングステップの2つのステップを経て、支持体のシェル表面に伝導性層が形成されている電気化されたファイバー吸着剤を製造することができる(図1のRoute1)。
前記本発明によるファイバー吸着剤の製造方法は、吸着剤と支持体を含むドープ溶液を紡糸した後、伝導性材料を含む溶液に浸漬するステップを含む。
まず、吸着剤と支持体を含むドープ溶液を紡糸して、吸着剤を含む支持体を得る。
前記放射ドープ溶液は、吸着剤および高分子を含んでもよい。
【0055】
一実施態様では、前記高分子は、ドープ溶液の全重量に対して、5wt%~50wt%で含まれてもよく、好ましくは7wt%~30wt%で含まれてもよく、より好ましくは8wt%~15wt%で含まれてもよい。
【0056】
一実施態様では、前記吸着剤は、ドープ溶液の全重量に対して10wt%~60wt%で含まれてもよく、好ましくは20wt%~55wt%で含まれてもよい。前記吸着剤が10wt%未満で含まれる場合、ファイバー吸着剤のCO2吸着性能が低下する可能性があるという問題があり、60wt%以上で含まれる場合、ドープ溶液の粘度が高く、紡糸工程が難しく、生成されたファイバー吸着剤は脆くなりやすいという問題がある。
【0057】
前記ドープ溶液は、気孔形成剤をさらに含んでもよい。
前記気孔形成剤としては、例えば、LiNO3、PVP、CaCO3であってもよいが、これらに限定されない。
前記ドープ溶液において、前記気孔形成剤は0.1wt%~30wt%で含まれてもよく、好ましくは0.1wt%~5wt%で含まれてもよい。
【0058】
前記ドープ溶液は、溶媒及び非溶媒を含んでもよいが、ここで、前記溶媒は、有機溶媒であってもよく、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ヘキサメチルホスホアミド(HMPA)、N,N,N',N'-テトラメチル尿素(TMU)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、又はこれらの混合物であってもよいが、これらに限定されない。
【0059】
前記溶媒は、ドープ溶液の全重量に対して10wt%~70wt%で含まれてもよく、好ましくは30wt%~60wt%で含まれてもよい。
前記非溶媒は、水、アルコール、グリコールであってもよいが、これらに限定されない。
前記非溶媒は、放射性ドープ含有溶液の全重量に対して0.1wt%~40wt%で含まれてもよく、好ましくは0.1wt%~10wt%で含まれてもよい。
【0060】
前記のステップは、一般的な紡糸プロセスによって行われる。一実施態様では、図12に示す装置を用いた乾湿式紡糸プロセスによって行われてもよい。前記乾湿式紡糸プロセスは、大きくi)紡糸口金からドープ溶液が紡糸されるステップii)紡糸されたドープ溶液が非溶媒に焼き入れするステップiii)非溶媒内部に入ったドープ溶液が二相に分離されて固体化するステップに分けられる。
前記紡糸されたファイバー吸着剤前駆体は、モノリシックファイバーまたは中空型ファイバーであってもよい。
【0061】
前記ドープの紡糸過程でボア流体をドープ溶液と一緒に紡糸する場合、中空型ファイバーで形成されてもよく、ボア流体を紡糸しない場合、モノリシックファイバーで形成されてもよい。
一実施態様では、前記ボア流体はNMP/H2Oであってもよい。
次に、ファイバー吸着剤の製造方法は、前記支持体を伝導性材料を含む溶液に浸漬するステップを含む。
前記伝導性材料を含む溶液に超音波処理を行うことにより、伝導性材料の分散性を良好に保つことが好ましい。
【0062】
一実施態様では、前記ファイバー吸着剤の製造方法は、前記支持体を溶液に浸漬する前に、前記ファイバー吸着剤のシェル表面を処理するステップをさらに含んでもよい。例えば、支持体をUVオゾン処理して、支持体のシェル表面に酸素官能基を形成することにより、伝導性材料と支持体との間の接着性を向上させることができる。
【0063】
前記支持体を伝導性材料を含む溶液に浸漬するステップは、繰り返し行ってもよい。前記ステップを繰り返し行うことにより、伝導性層がより良好に形成することができる。
【0064】
Route2
本発明の他の観点では、吸着剤及び支持体を含むドープ溶液を紡糸するが、紡糸口金のボアに伝導性材料を一緒に紡糸するか、又はドープ溶液に伝導性材料を添加して紡糸するステップ(紡糸ステップ)を含むファイバー吸着剤の製造方法に関し、具体的には、吸着剤と支持体を含むドープ溶液を紡糸し、紡糸口金のボアまたはコア側に伝導性材料を添加した後、紡糸して相分離により固体化させるステップを含む、前記支持体のボアまたはコアに伝導性材料が形成されている電気化されたファイバー吸着剤の製造方法に関する。
【0065】
本発明の他の一実施態様によれば、前記ボア流体の代わりにバルクワイヤを紡糸することにより、紡糸ステップを一度に行うことで、支持体のボアにバルクワイヤが形成された電気化されたファイバー吸着剤を製造することができる(図1のRoute2)。
【0066】
前記Route2によるファイバー吸着剤の製造方法において、ドープ溶液の組成は、Route1と同じであってもよい。また、Route2の場合、ドープ溶液の組成が伝導性材料をさらに含んでもよい。
本発明の伝導性材料を含む支持体で形成されている電気化されたファイバー吸着剤の作製過程をまとめると下記の通りである。
【0067】
【0068】
ファイバー吸着剤の吸着方式は、ここにとどまらず、1)支持体または吸着剤に化学的官能基を化学的に添加してこれを吸着に使用したり、2)支持体または吸着剤の多孔性構造に化学的官能基(例えば、アミン官能基)を物理的または化学的に添加してこれを吸着に使用したり、3)固体吸着剤と前記1)及び2)の2つ以上の組み合わせで使用してもよい。
【0069】
1)の場合には、ポリアミドイミド(PAI)にポリエチレンイミン(PEI)官能基をアミン開環反応(amine ring opening)で吊るしてCO2吸着能を持たせた場合が挙げられる。
前記アミン開環反応でPAI高分子鎖にCO2吸着性能を持つPEIをつける反応でPAIのCO2吸着能を画期的に向上させることができる。ここで使用された支持体PAIは、セルロース、酢酸セルロース、微多孔性ポリマー(Polymer of intrinsic microporosity:PIM)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、アルミナ(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、炭化ケイ素(SiC)からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0070】
2)の場合、PIM-PEIが挙げられる。PIMの場合、2nm未満の微細気孔を有しており、この微細気孔内部に吸着剤を含浸させることでCO2吸着能を向上させることができる。使用される吸着剤は、ポリエチレンイミン、テトラエチレンペンタミン(tetraethylenepentamine)、エチレンアミン、p-キシレンジアミン(p-xylenediamine)などのアミン系の化学物質であってもよいが、これらに限定されない。
また、本発明の他の観点では、前記ファイバー吸着剤を複数含む電気化されたファイバー吸着剤モジュールに関する。
本発明で提供されるファイバー吸着剤モジュールは、前述したファイバー吸着剤に対する内容を全て適用できるが、重複して説明しない。
【0071】
本発明は、他の観点では、ガスを前記ファイバー吸着剤と接触させて二酸化炭素を吸着するステップ;および前記ファイバー吸着剤に電圧を印加して前記吸着された二酸化炭素を脱着するステップ;を含む二酸化炭素の電気および電磁スイング吸着方法に関する。
【0072】
また、本発明は、(a)二酸化炭素含有ガスを前記ファイバー吸着剤に接触させて二酸化炭素を吸着するステップ;(b)前記ファイバー吸着剤に電圧を印加して前記吸着された二酸化炭素を脱着するステップ;及び(c)前記ステップ(a)及び(b)を繰り返すステップを含む、電気化されたファイバー吸着剤の電気及び電磁スイング吸着プロセスに関する。
本発明で提供される二酸化炭素吸着及び脱着方法は、前述したファイバー吸着剤に関する内容を全て適用することができ、重複して説明しない。
【0073】
まず、本発明で提供される二酸化炭素の電気及び電磁スイング吸着方法は、ガスを前記ファイバー吸着剤と接触させて二酸化炭素を吸着するステップを含む。前記ガスは、100%以下(純粋な二酸化炭素)、15%以下(煙道ガス;flue gas)、1000ppm以下(ultra-dilute stream)または500ppm(direct air capture)であってもよい。
【0074】
一実施態様では、二酸化炭素を含むガスフィードをファイバー吸着剤の側面に流すシェルアンドチューブ(Shell and tube)プロセスで行ってもよい。
【0075】
また、本発明で提供される二酸化炭素の電気スイング吸着方法は、前記ファイバー吸着剤に電圧を印加して、前記吸着された二酸化炭素を脱着するステップを含む。
【0076】
前記ステップで電圧を印加することにより、伝導性材料のジュール加熱あるいは抵抗加熱効果により温度が上昇し、これにより二酸化炭素の脱着が行われてもよい。このように脱着に使用されるエネルギー源が電気であるため、発熱源を得ることができる位置に対して自由であり、再生可能エネルギー(renewable energy)などを利用してエネルギー生産の価格及びカーボンフットプリント(carbon footprint)においても利点を有する。
二酸化炭素の脱着のためには、60℃~250℃の温度に達するように電圧を印加することが好ましい。
本発明において、前記(c)ステップは、2~500回繰り返し行ってもよい。
【実施例
【0077】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、あくまでも本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものと解釈されないことは、当業者にとって自明であろう。
【0078】
[実施例]
実施例1:吸着剤を含む支持体の製造
支持体としてポリエーテルイミド(PEI)を選択し、吸着剤として金属-有機骨格体であるNbOFFIVE-1-Niを選択した。
これを用いて紡糸するが、紡糸のためのドープ組成は下記表3aの通りである。
【0079】
ファイバー吸着剤は、下記表1に示す放射パラメータによって生成することができ、前記ファイバー吸着剤は、ボア流体の流れの有無に応じて、中空構造またはモノリシック構造を有することができる。
【表1】
【0080】
図2は、中空構造のNbOFFIVE-1-Ni/ポリエーテルイミド(PEI)ファイバー吸着剤の写真とSEMを示す。前記ファイバー吸着剤は淡青色を呈しており、MOF粒子は高分子マトリックスの巨大気孔に均一にローディングされた。ファイバー吸着剤の表面には数ミクロンの大きな空隙が見られ、これはファイバー吸着剤が開放型多孔性構造であることを意味する。
【0081】
実施例2:伝導性層の形成
実施例1-1~実施例1-5によるMOFがローディングされたファイバー吸着剤にディップコーティングプロセスにより、シェル表面に伝導性層を形成した。
有機支持体のディップコーティングプロセスにおいて、支持体の親水性/疎水性はコーティング品質に重要な変数として作用することができ、疎水性を有する支持体の場合、UVオゾン処理をして支持体表面に酸素官能基を生成したり、コーティング液との接着性を向上させるためにポリエチレンイミンのような添加剤を添加してもよい。
【0082】
伝導性層を形成する銀ナノワイヤを含む溶液の完全な分散は、コーティング品質に影響を与え、ディップコーティングプロセスの様々なパラメータは、下記表3のように最適化された。
これによるファイバー吸着剤の例は、図1のRoute1を通じて確認することができる。
【表2】
【0083】
溶液の濃度、浸漬時間、浸漬回数は、浸漬プロセス中のコーティング層の厚さと均一性に影響を与える。前記電気化されたファイバー吸着剤の抵抗は、コーティング条件により、1cm当たり1~100Ωの範囲で減少した。
【0084】
図3は、銀ナノワイヤでコーティングされたファイバー吸着剤が濃い灰色になったことと、コーティングプロセス後、シェル表面側に1マイクロメーター未満の厚さの層が形成されたことを示している。特に、大きな気孔が消失し、銀ナノワイヤがファイバー吸着剤のシェル表面に緻密に積層されていることが分かる。しかし、依然として存在するメゾ/マイクロ気孔のため、ガス物質移動への影響はほとんどない。
【0085】
実施例3:伝導性材料がワイヤ状で含まれた吸着剤
ドープを紡糸する過程で、紡糸口金のボアに金属ワイヤを同時に紡糸することにより、バルクワイヤの周囲にドープ溶液が紡糸されて電化化されたファイバー吸着剤が製造された。
これによるファイバー吸着剤は、図1のRoute2を通じて確認することができる。
【0086】
このような方法で製造されたファイバー吸着剤の断面を電子顕微鏡(SEM)を用いて確認し、その結果を図9に示した。図9によると、バルクワイヤの周りに高分子ファイバーが形成されており、高分子ファイバーのボア表面に接してバルクワイヤが形成されていることが確認された。
【0087】
実施例3-1および3-2:
支持体としてポリアミドイミド(PAI, Torlon)を選択し、吸着剤として金属-有機骨格体であるNbOFFIVE-1-Niを選択した。
図12において、コア(Core side)側にNbOFFIVE-1-Niとトーロン(Torlon)を含むドープ溶液を、ボア側に発熱体である金属ワイヤを一緒に紡糸するが、紡糸のためのドープ組成は下記表3bの通りである。
【0088】
前述したRoute2と同じ形式で作製されたファイバーは、蒸留水で72時間溶媒置換を行った後、メタノール、ヘキサンに1時間ずつ焼き入れ処理する後処理過程を経る。作製されたファイバーは、120℃の真空で12時間乾燥させた後、実験に使用した。
【0089】
実施例3-3~3-5:シリカファイバー吸着剤の調製
支持体としてトーロンを選択し、吸着剤として ポリエチレンイミン(PEI)Mw~800が含浸されたシリカを選択しました。
【0090】
図12において、コア側にメソポーラスシリカとトーロンを含むドープ溶液を、ボア側に発熱体である金属ワイヤを一緒に紡糸するが、紡糸のためのドープ組成は下記表3cの通りである。
【0091】
前記ファイバー吸着剤の紡糸後の後処理過程は実施例3-1、3-2と同様である。その後、前記ファイバー吸着剤をさらに5~20wt%のPEI/メタノール溶液に24時間浸漬することにより、PEIチェーンをシリカ気孔内部に浸透させ、ファイバー外部に残ったPEIをヘキサンで洗浄した後、120℃の真空中で12時間乾燥させて使用した。
【0092】
実験例1:紡糸条件による二酸化炭素吸着特性の確認
表1の条件による実施例1-1~実施例1-5の二酸化炭素吸着特性を確認し、図6及び図7に示した。
【0093】
実施例1-1~実施例1-5のファイバー吸着剤は、高分子に対するMOFの比重が約83wt%に近く、400ppmの濃度で二酸化炭素吸着量が0.9に近く、NbOFFIVE-1-Niパウダーの75%レベルで非常に優れた吸着量を有することがわかる。
図6のように実施例1-1~実施例1-3を比較すると、支持体であるPEI含量が減少するほど二酸化炭素吸着量は増加することが確認できる。
【0094】
また、図7のように実施例1-1及び実施例1-4、実施例1-5を比較すると、支持体であるPEI含量が同じ条件下で、NbOFFIVE-1-Ni含量が増加した場合、二酸化炭素吸着量が増加することが分かり、実施例1-5の場合が最も優れた二酸化炭素吸着能を示す。
実施例1-1~実施例1-5及び実施例3の吸着能を数値でまとめると、下記表3~表5の通りである。
【表3】
【表4】
【表5】
【0095】
また、実施例2のように、シェル表面にコーティング層をさらに形成した場合、コーティング層の形成によりファイバー吸着剤の全体の質量が増加し、ファイバー吸着剤の吸着量が減少したように見えるが、増加した質量を考慮して計算すると、ファイバー吸着剤内のNbOFFIVE-1-Ni自体の吸着能は変わらないことが確認される。
【0096】
実験例2:コーティング条件による熱的特性の確認
実施例1~5の吸着剤に実施例2の内容で伝導性層を形成し、この伝導性層コーティング条件を下記表6のように変化させながら、熱的特性を確認した。
【表6】
【0097】
前記表6において、実施例2-1及び2-2の場合、コーティング溶液によるコーティングを3回ずつ行ったのに対し、実施例2-3の場合は2回、実施例2-4の場合は1回だけ行った。
【0098】
その結果、コーティング回数が比較的少ない実施例2-3及び2-4の場合、コーティングがうまく行われず、抵抗が比較的高く測定されることが分かり、特に実施例2-4の場合、抵抗が非常に高く、電流がほとんど流れないことが確認できる。
つまり、一定回数以上繰り返しコーティングを行い、伝導性層をより良く形成させることで、電気伝導度を向上させる必要があることを意味する。
【0099】
また、実施例2-1と実施例2-2を比較すると、実施例2-1は、コーティング溶液中の銀ナノワイヤが比較的よく分散している場合を示し、実施例2-2は、比較的よく分散していない場合を示す。
このような分散度は、コーティング溶液の製造時に様々な条件を変えて調節することができる。
【0100】
前記表4を参照すると、コーティング溶液の銀ナノワイヤの分散度に優れた溶液でコーティングを行った実施例2-1の場合、抵抗が著しく低く、これにより、比較的低い電圧でも熱的効果がよく起こることが確認できた。
つまり、これは、コーティング溶液中の分散特性がコーティング品質に影響を与えることを示す。
【0101】
実験例3:吸着剤の熱的特性の確認
電気化されたファイバー吸着剤の熱的特性をテストするために、実施例2の吸着剤をガラス基板に固定し、銅線ワイヤで装置に連結した。前記ファイバー吸着剤に電圧を印加し、印加された電圧によって発生する熱を熱画像カメラで観察した。
【0102】
実施例のように最適化されたファイバー吸着剤の熱的特性は、様々な印加電圧で立証され、これを図5を通じて確認することができる。印加電圧が増加するにつれて、ファイバー吸着剤の温度が上昇し、ファイバー吸着剤の優れた電気伝導性はジュール加熱効果を向上させた。
MOFの電気的安定性を確認するために、熱的特性測定前後の試料に対して、等温条件下でCO2吸着量を測定し、図8に示した。
図8で確認できるように、熱的特性測定後もファイバー吸着剤のCO2吸着量はほとんど減少しなかった。
【0103】
実験例4:リサイクル回数による二酸化炭素吸着特性の確認
実施例3-1及び実施例3-5の吸着剤をサイクル回数に応じて吸着量を測定し、表7及び表8に示した。
【表7】
【表8】
【0104】
表7および表8に示すように、NbOFFIVE-1-Niファイバー吸着剤とシリカファイバー吸着剤は、サイクル回数を繰り返してもCO2吸着量にほとんど変化がないことがわかる。
【0105】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に説明したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、これらの具体的な技術は単なる好ましい実施態様に過ぎず、これによって本発明の範囲が限定されないことは明らかであろう。 したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明による電気化されたファイバー吸着剤は、比較的低い濃度、特に大気中の二酸化炭素を効率よく吸着することができ、二酸化炭素の脱着に必要なエネルギー源が自由で、直接的な吸着剤の加熱が可能で、エネルギー効率に優れているという効果がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11a
図11b
図12
図13
【国際調査報告】