(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】乳様生成物の生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20241010BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241010BHJP
A61K 35/20 20060101ALI20241010BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20241010BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241010BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241010BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C12N5/071
C12P21/02 C
A61K35/20
A61P3/02
A61P43/00 111
A61P31/00
A61P3/04
A61P37/04
A61P7/00
A61P13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524434
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2022080089
(87)【国際公開番号】W WO2023073108
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【氏名又は名称】安藤 祐子
(72)【発明者】
【氏名】マルケス ド リマ, マリア
(72)【発明者】
【氏名】ビアンキ, アリアナ
(72)【発明者】
【氏名】マシンチアン, オミッド
(72)【発明者】
【氏名】クラウス, マリン
(72)【発明者】
【氏名】デスタイラッツ, フレデリック
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA10
4B064CC03
4B064CC30
4B064CD20
4B064CD30
4B064DA01
4B064DA10
4B065AA90X
4B065AB10
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB19
4B065BB20
4B065BC41
4B065CA44
4B065CA60
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB39
4C087MA16
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA51
4C087ZA70
4C087ZA81
4C087ZB09
4C087ZB31
4C087ZC02
4C087ZC21
4C087ZC51
(57)【要約】
乳腺細胞を産生する方法、及び哺乳動物乳様生成物、例えばヒト乳様生成物を製造する方法であって、哺乳動物成体母乳幹細胞(mBSC)、例えばヒト成体母乳幹細胞(hBSC)に由来するラクトサイトを生成するステップと、哺乳動物乳様生成物、例えばヒト乳様生成物をラクトサイトから発現させるステップとを含む、方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)骨形成タンパク質4(BMP4)及び/又はレチノイン酸(RA)を含む培養培地中で哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)を培養して、胚様体(EB)を生成するステップと、
ii)前記EBを成長させて、乳腺細胞の集団を生成するステップと、
を含む、乳腺細胞の集団を産生する方法。
【請求項2】
前記培養培地が、骨形成タンパク質4(BMP4)及びレチノイン酸(RA)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養ステップi)が、前記mBSCを、任意選択で少なくとも12日間、MammoCult培地及びBMP4中、三次元懸濁培養系において、例えば三次元懸濁条件において、培養して、それによってhBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記培養ステップi)が、hBSCを、任意選択で8日間以下、MammoCult培地及びBMP4中、三次元懸濁培養系において、例えば三次元懸濁条件において培養して、それによって前記mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記成長ステップii)が、形成された前記EBを、RAを含む三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させて、ラクトサイトを生成することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記成長ステップii)が、形成された前記EBを、RAを含む三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル中で、25日間以下成長させて、ラクトサイトを生成することを含む、請求項2又は4に記載の方法。
【請求項7】
ステップii)が、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップ:ii)及びiii):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ステップii)が、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップ:ii)及びiii):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で15日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記乳腺細胞が、ヒト乳腺細胞である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
BMP4が、0日目~10日目の間、好ましくは0日目~3日目の間に前記培養培地に添加され、0日目が、前記hBSCが前記培養培地に初めて添加される時点である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
BMP4が前記培養培地に3日間添加される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
RAが、10日目~15日目の間、任意選択で6日目~11日目の間に前記培養培地に添加され、0日目が、前記hBSCが前記培養培地に初めて添加される時点である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
RAが、前記培養培地に5日間添加される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
BMP4が、5~20ng/mL、好ましくは5ng/mL、10ng/mL又は20ng/mLの濃度で前記培養培地に添加される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
RAが、1μMの濃度で前記培養培地に添加される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記EBが、EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から任意選択で選択される、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記EBの1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、BMP4及びRAで処理されていないEBにおける前記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している、請求項2~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%以上が、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも35%が、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも15%が、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、かつ/又は任意選択で、EBの少なくとも20%が、EpCAM及びGATA3乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記EBが、1つ以上の乳特異的生物活性マーカー、任意選択でオステオポンチン(OPN)を発現する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記EBの1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの発現が増加されており、任意選択でオステオポンチン(OPN)の発現が増加されている、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記EBの1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの分泌が増加されており、任意選択でオステオポンチン(OPN)の分泌が増加されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記乳腺細胞が、ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを形成する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
分化プロトコルにおける哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)の乳腺前駆細胞への分化効率を増加させるための、BMP4及び/又はRAの使用。
【請求項24】
哺乳動物乳様生成物を製造する方法であって、
C)哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)に由来するラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップ、
D)前記ラクトサイトから哺乳動物乳様生成物を分泌させるステップ、
を含み、
ステップA)が、BMP4及び/又はRAを含む培養培地中でhBSCを培養することを含む、方法。
【請求項25】
前記培養培地が、骨形成タンパク質4(BMP4)及びレチノイン酸(RA)を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップA)が、30日~45日の工程、任意選択で45日未満の工程、任意選択で44日未満の工程、任意選択で35日未満の工程、任意選択で31日未満の工程である、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
ヒト乳様生成物を製造する方法であって、
ステップA)が、
i)mBSCを、BMP4を含む適切な培養培地、例えばMammoCult培地及びBMP4中で、適切な三次元培養系において、例えば三次元懸濁条件において、少なくとも12日間培養することによって、mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、RAを含む適切な三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質とRAとから構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を更に含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ヒト乳代替生成物を製造する方法であって、
ステップA)が、
i)mBSCを、BMP4を含む適切な培養培地、例えばMammoCult培地及びBMP4中で、適切な三次元培養系において、例えば三次元懸濁条件において、8日間以下培養することによって、mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、RAを含む適切な三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質とRAとから構成される混合浮遊ゲル中で25日間以下成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を更に含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項29】
ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO
3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中、又は培地mTeSR(商標)中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、BMP4及びヘパリン及びヒドロコルチゾンが添加された、完全MammoCult培地中で10日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を7日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO
3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中、又は培地mTeSR(商標)中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、BMP4及びヘパリン及びヒドロコルチゾンが添加された、完全MammoCult培地中で6日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を15日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン、プロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を5日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO
3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリン及びBMP4を添加したMammoCultB培地中で10日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を7日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO
3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリン及びBMP4を添加したMammoCultB培地中で6日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で15日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を5日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
ステップA)が、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法を含む、請求項24~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ステップA)が、三次元懸濁培養条件で行われる、請求項24~26及び33に記載の方法。
【請求項35】
請求項24~34のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる、ヒト乳様生成物。
【請求項36】
治療に使用するための、請求項35に記載のヒト乳様生成物。
【請求項37】
請求項35に記載のヒト乳様生成物の、ヒト乳代替物としての、任意選択で母乳代替物としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳腺細胞の産生方法に関する。本発明はまた、哺乳動物乳様生成物(product)、例えばヒト乳様生成物をインビトロで製造する方法であって、哺乳動物成体母乳幹細胞(hBSC)、例えばヒト成体母乳幹細胞(hBSC)に由来するラクトサイトを培養及び分化によって生成する、及び/又はかかるラクトサイトを含む乳腺様腺オルガノイドを生成するステップと、哺乳動物乳様生成物、例えばヒト乳様生成物を、かかるラクトサイト及び/又は乳腺様腺オルガノイドから発現させるステップと、を含む、方法に関する。本発明はまた、哺乳動物乳様生成物、例えば、かかる方法から得ることができるヒト乳様生成物に関する。
【0002】
[背景技術]
哺乳動物の乳、特にヒトの乳は、多数の成分を含む複雑な体液であり、その成分のそれぞれは、乳児及びおそらく母体の健康に実質的に寄与し得る。少なくとも6ヶ月齢まではヒト母乳が最も適切な栄養源であることが明らかになってきている。ヒト乳の多くの成分は、乳児用フォーミュラの製造の基礎となる牛乳中には全く見られないか、ほとんど見られないか、又は活性が低い。このような成分には、例えばタンパク質ラクトフェリン、増殖/成長因子、長鎖多価不飽和脂肪酸又はオリゴ糖が含まれる。ヒト乳組成物は、現在の乳児用フォーミュラを開発するためのゴールドスタンダードとして使用されているが、乳児用フォーミュラ組成物における最近の主要な開発にもかかわらず、現在の製造プロセスでヒト乳の複製物が達成されると考えることは非現実的である。
【0003】
今日、ヒト乳の唯一の供給源は、ヒトドナー(授乳中の母親)である。献乳は、非商業的使用(ヒト乳バイオバンク)及び商業的使用について報告されている。しかしながら、献乳は限られており、強い規制、安全性、及び時には倫理的又は宗教的制約を伴う。
【0004】
哺乳動物の乳、特にヒト乳中には幹細胞が見出されており、ヒト成体母乳幹細胞(hBSC)と呼ばれている。hBSCは、高度に可塑性であり、培養において複数の細胞種に分化し、より重要なことには、ヒト乳腺の小葉-腺房(lobulo-alveolar)構造を形成するのに必要な3つの系列に分化することが示されている(Hassiotou F.et al.Stem Cells.2012)。しかしながら、かかる文献は、かかる細胞の機能性を実証していない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、乳腺細胞を産生するための改善された方法を提供すること、及び培養細胞において哺乳動物乳(例えば、ヒト乳)の発現を再現することである。本発明の目的はまた、レシピエントの特異なニーズに適合させることができる培養細胞からの分泌により、カスタマイズされた哺乳動物乳様生成物、例えばヒト乳様生成物を調製すること、及び/又は乳幼児期栄養のための既存の牛乳ベースの解決策を補完するためにヒト乳生物活性を生成することである。
【0006】
[発明の概要]
本発明は、上述の技術的課題を解決する。
【0007】
本明細書で提供されるのは、乳腺細胞の集団を産生する方法であって、
i)骨形成タンパク質4(BMP4)及び/又はレチノイン酸(RA)を含む培養培地中で哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)を培養して、胚様体(EB)を生成するステップと、
ii)EBを成長させて、乳腺細胞の集団を生成するステップと、
を含む方法である。
【0008】
本明細書でさらに提供されるのは、分化プロトコルにおける哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)の乳腺前駆細胞への分化効率を増加させるための、BMP4及び/又はRAの使用である。
【0009】
本明細書でさらに提供されるのは、哺乳動物乳様生成物を産生する方法であって、
A)哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)に由来するラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップ、
B)上記ラクトサイトから哺乳動物乳様生成物を分泌させるステップ、を含み、
ステップA)が、BMP4及び/又はRAを含む培養培地中でhBSCを培養することを含む、方法である。
【0010】
本明細書でさらに提供されるのは、本明細書中に記載の方法に従って得ることができるヒト乳様生成物である。
【0011】
本明細書でさらに提供されるのは、治療に使用するための、本明細書中に記載の方法による、ヒト乳様生成物である。
【0012】
本明細書でさらに提供されるのは、本明細書中に記載の方法によるヒト乳様生成物の、ヒト乳代替物、任意選択的に母乳代替物としての使用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、ラクトサイトによる脂質産生機能を示す。
【
図2】
図2は、ラクトサイトによる脂質産生機能を示す。
【
図3】ヒト及びウシのラクトフェリン由来のペプチドの、タンデムMSペプチドスペクトルのマッチについての2つの例を、
図3及び
図4に示す。
【
図4】ヒト及びウシのラクトフェリン由来のペプチドの、タンデムMSペプチドスペクトルのマッチについての2つの例を、
図3及び
図4に示す。
【
図6-1】
図6は、三次元オルガノイド設定を使用した人工多能性幹細胞(iPSC)の非神経外胚葉系列分化に対する骨形成タンパク質4(BMP4)の効果を示す。a.乳腺前駆体の生成及び0日目~3日目の間のBMP4処理の手順を要約したスキーム。b.異なる濃度のBMP4への曝露後の形態変化の顕微鏡観察。c~f、同定された様々なマーカー:EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3を使用した、乳腺陽性前駆細胞数のフローサイトメトリーによる定量。g~h.主要な非神経外胚葉マーカーとしてのヒトTFAP2A及びTFAP2CのRNA発現レベル。i~k.神経外胚葉マーカーとしてのヒトPAX6、OTX2及びSOX11。l.管腔マーカーとしてのヒトKRT18。m.分泌型リン酸化乳糖タンパク質としてのヒトOPN。
【
図6-2】
図6は、三次元オルガノイド設定を使用した人工多能性幹細胞(iPSC)の非神経外胚葉系列分化に対する骨形成タンパク質4(BMP4)の効果を示す。a.乳腺前駆体の生成及び0日目~3日目の間のBMP4処理の手順を要約したスキーム。b.異なる濃度のBMP4への曝露後の形態変化の顕微鏡観察。c~f、同定された様々なマーカー:EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3を使用した、乳腺陽性前駆細胞数のフローサイトメトリーによる定量。g~h.主要な非神経外胚葉マーカーとしてのヒトTFAP2A及びTFAP2CのRNA発現レベル。i~k.神経外胚葉マーカーとしてのヒトPAX6、OTX2及びSOX11。l.管腔マーカーとしてのヒトKRT18。m.分泌型リン酸化乳糖タンパク質としてのヒトOPN。
【
図7】
図7は、乳腺三次元分化の30日目~35日目の間のエストロゲン関連受容体アルファ(ESRRA)、ケラチン14(KRT14)及びMUC1のRNA発現レベルに対する骨形成タンパク質4(BMP4)の効果を示す。
【
図8】
図8は、三次元オルガノイド設定を用いた人工多能性幹細胞(iPSC)の乳腺特異的系列分化に対するレチノイン酸(RA)、ウシ血清アルブミン(BSA)及びウシ胎仔血清(FBS)の効果を示す。a.乳腺前駆体の生成並びに10日目~15日目の間のRA、BSA及びFBSの適用の手順を要約したスキーム。b.RA、BSA及びFBSへの曝露後の形態変化の顕微鏡観察。c.カルセインAM及びエチジウムホモダイマー1をベースとした、様々な条件下の細胞生存率のフローサイトメトリー評価。d~f.上皮マーカー:EpCAM、CD49f及びMUC1を使用した乳腺前駆細胞数のフローサイトメトリーによる定量。
【
図9】
図9は三次元オルガノイドモデルを使用した人工多能性幹細胞(iPSC)の乳腺分化に対する骨形成タンパク質4(BMP4)とレチノイン酸(RA)との組み合わせ効果を示す。a~c.分化期間(25日目(対照プロトコルの場合)及び20日目(期間短縮プロトコルの場合))及び誘導前段階(35日目(BMP4及びRAを含む対照プロトコルの場合)、及び26日目(期間短縮プロトコルの場合))中に同定された数種のマーカー:EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3を使用した乳腺陽性前駆細胞数のフローサイトメトリーによる定量、d~f.誘導後期間(42日目(BMP4及びRAを含む対照プロトコルの場合)及び31日目(期間短縮プロトコルの場合)。
*は、BMP4とRAとの組み合わせを含む短縮された改変プロトコル(31日)を表す。
【
図10】
図10は、オステオポンチンタンパク質の分泌の、液体クロマトグラフィー・質量分析(LC-MS/MS)ベースでのターゲットプロテオミクス解析を示す。
【0014】
[発明を実施するための形態]
定義
本発明の文脈において、「インビトロ」という用語は、試験管、培養皿、バイオリアクター又は生きている生物の体外の任意の場所で行われるか又は生じることを意味する。
【0015】
本発明の文脈において、「哺乳動物」という用語は、哺乳動物種、例えばヒト、ウシ、サル、ラクダ、ヒツジ、ヤギなどに属する動物を指す。
【0016】
本発明の文脈において、「ラクトサイト」又は「乳腺様細胞」という用語は、CK18細胞マーカーを発現し、哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)、特にヒト成体母乳肝細胞(hBSC)に由来する、分泌上皮細胞を特定する。ヒト成体母乳幹細胞は、適切なインフォームドコンセントの下でドナーから得ることができる。本発明の一実施形態では、BSCは改変されていない。一実施形態では、BSCは、外因性核酸及び/又は外因性核酸を含む誘導性遺伝子発現系を含むように改変されていない。ここで、誘導性遺伝子発現系は、ホルモン又はシグナル伝達因子を発現するように構成されている。一実施形態では、外因性核酸及び/又は外因性核酸を含む誘導性遺伝子発現系は、ラクトサイトへの細胞分化を促進している。
【0017】
本発明の文脈において、「乳腺様(mammary gland like)オルガノイド」又は「乳腺様(mammary like)オルガノイド」という用語は、二次元又は三次元(2D/3D)で発達し、上記で定義されたようなラクトサイトを含む、乳腺のミニチュア化及び単純化されたバージョンを意味する。
【0018】
本発明の文脈において、「ヒト乳様生成物」という用語は、細胞培養した乳生成物である。かかる生成物は、本発明の方法に従って生成されたラクトサイト及び/又は乳腺様オルガノイドによって発現される食用生成物である。
【0019】
本発明による「ヒト乳様生成物」は、栄養状態の良好な母親のヒト母乳と同じ成分(例えば、生物活性物質、多量栄養素及び微量栄養素並びにそれらのレベルの観点による)を有することができる。これを本明細書では「標準ヒト乳生成物」と称する。あるいは、本発明による「ヒト乳様生成物」は、栄養状態の良好な母親のヒト母乳中に天然に見出される成分の比率及び濃度を変化させることができる。これを本明細書では「非標準乳様生成物」と称する。本発明による「ヒト乳様生成物」は、栄養状態の良好な母親のヒト母乳中に天然には見出されない成分を含むように調整することができる(「調整(modified)乳様生成物」)。ヒト乳様生成物の非限定的な例は、サプリメント、強化剤、ヒト母乳代替物(又は代用物)、ならびに生物活性物質のうちの1つのみ及び/又は一部に富んだ原材料、栄養状態の良好な母親のヒト母乳に典型的に見出すことができる多量栄養素及び微量栄養素からなる群から選択される。
【0020】
「ヒト乳様生成物」は、自然に分泌される乳を摂取する代わりに使用することができる(「ヒト乳代替物」)。乳代替生成物は、天然に分泌された乳と組み合わせて摂取されるサプリメント(「ヒト乳サプリメント」)又は強化剤(「ヒト乳強化剤」)として使用することができる。
【0021】
一実施形態では、本発明による標準ヒト乳様生成物は、少なくとも、栄養状態の良好な母親のヒト母乳中に典型的に見出すことができる多量栄養素及び微量栄養素を含む。一実施形態では、本発明による標準ヒト乳様生成物は、タンパク質、ペプチド、脂質(リノール酸及びα-リノレン酸を含む)、炭水化物、ビタミン(ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸、葉酸、ビタミンC及びビオチンを含む)、ミネラル(鉄、カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、塩化物、カリウム、マンガン、ヨウ素、セレン、銅及び亜鉛を含む)、コリン、ミオイノシトール及びL-カルニチンを含む。一実施形態では、本発明による標準ヒト乳様生成物はまた、増殖/成長因子、サイトカイン、プロバイオティクス、細胞外小胞(例えば、乳脂肪球及び/又はエキソソーム)、エキソソーム由来の生物活性物質(例えば、miRNA)及び分泌型IgAからなる群から選択される、少なくとも1つの生物活性物質を含む。本発明による標準ヒト乳様生成物は、天然のヒト母乳分泌による生成物ではない。
【0022】
別の実施形態では、本発明によるヒト乳様生成物は、かかる生成物を摂取する乳児の具体的なニーズに適合させることができる。本発明によるヒト乳様生成物は、栄養状態の良好な母親のヒト母乳中に典型的に見出され得る、生物活性物質、多量栄養素及び微量栄養素のうちの1つのみ及び/又は一部を含み得る。かかる実施形態では、ヒト母乳様生成物は、「非標準ヒト乳様生成物」という用語で称されることもある。一実施形態では、本発明による非標準ヒト乳様生成物は、タンパク質、ペプチド、脂質(リノール酸及びα-リノレン酸を含む)、炭水化物(ヒト乳オリゴ糖を含む)、ビタミン(ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸、葉酸、ビタミンC及びビオチンを含む)、ミネラル(鉄、カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、塩化物、カリウム、マンガン、ヨウ素、セレン、銅及び亜鉛を含む)、コリン、ミオイノシトール、L-カルニチン、増殖/成長因子、サイトカイン、プロバイオティクス、細胞外小胞(例えば、乳脂肪球及び/又はエキソソーム)、エキソソーム由来の生物活性物質(例えば、miRNA)及び分泌型IgAからなる群から選択される、1つ以上の栄養素又は生物活性物質を含む。
【0023】
本発明の文脈において、「無調整ヒト乳様生成物」という用語は、ラクトサイトによって、及び/又は本発明の方法のステップA)及びステップB)に従って生成された乳腺様オルガノイドによって発現され、本発明の方法の任意のステップC)によるさらなる処理に供されていない、ヒト乳様生成物を示す。無調整ヒト乳様生成物は、標準及び非標準ヒト乳様生成物の両方を含み得る。非標準ヒト乳様生成物の非限定的な例は、サプリメント、強化剤、ならびに栄養状態の良好な母親のヒト母乳に典型的に見出され得る、生物活性物質、多量栄養素及び微量栄養素のうちの1つのみ及び/又は一部に富んだ原材料からなる群から選択される。
【0024】
本発明の文脈において、「調整ヒト乳様生成物」という用語は、ラクトサイトによって、及び/又は本発明の方法のステップA)及びステップB)に従って生成された乳腺様オルガノイドによって発現され、本発明の方法の任意のステップC)によるさらなる処理に供されている、ヒト乳様生成物を示す。
【0025】
調整ヒト乳様生成物は、標準及び非標準ヒト乳様生成物のいずれをも含み得る。
【0026】
本発明の文脈において、「EB」という用語は、「胚様体」を意味する。
【0027】
本発明の文脈において、「mEB」という用語は、「MammoCult培地で培養された胚様体」を意味する。
【0028】
MammoCult培地は、基礎培地、少なくとも1種類の増殖サプリメント、ヘパリン及びヒドロコルチゾンを含む、無血清培養培地を指す。
【0029】
本発明の文脈において、「胚様体(EB)」、「MammoCult培地で培養された胚様体(mEB)」、「マンモスフェア」及び/又は「スフェロイド」という用語は、本発明の方法のステップA)下で母乳幹細胞(BSC)によって懸濁液中に形成された三次元凝集体を指す。
【0030】
本発明の文脈における「乳児」という用語は、12ヶ月齢未満、例えば9ヶ月齢未満、特に6ヶ月齢未満の小児を指す。
【0031】
本発明の文脈において、乳児は、正期産児又は早期産児のいずれかであり得る。本発明の一実施形態では、乳児は、早期産児及び正期産児の群から選択される。
【0032】
用語「正期産児」は、正期産又は37週以上の在胎齢で生まれた乳児を指す。
【0033】
用語「早期産児」は、37週未満の在胎齢で生まれた乳児を指す。
【0034】
本発明の文脈において、「出生時体重」という用語は、出生後に胎児又は新生児が獲得していた最初の体重を意味する。
【0035】
本発明の文脈において、「低出生体重」という用語は、2500g未満(2499g以下)の出生時体重を意味する。
【0036】
本発明の文脈において、「極低出生時体重」という用語は、1500g未満(1499g以下)の出生時体重を意味する。
【0037】
本発明の文脈において、「超低出生時体重」という用語は、1000g未満(999g以下)の出生時体重を意味する。
【0038】
用語「在胎不当過小児」は、在胎期間別成長チャート(gestational growth chart)の出生時体重に対する平均基準よりも2標準偏差を超えて低い出生時体重を有する乳児、又は同じ在胎齢の乳児から得られた集団ベースの体重データの10thパーセンタイル未満の出生時体重を有する乳児を指す。「在胎不当過小児」という用語には、構造的(constitutive)もしくは遺伝的起源のいずれかにより、又は子宮内発育遅延の結果として、出生時に小さい乳児が含まれる。
【0039】
本発明の文脈において、「幼児(young children)」又は「低年齢の小児(toddler)」という用語は、1~3歳の小児を示す。
【0040】
本明細書で使用される「乳児用フォーミュラ」という用語は、乳児を対象とし、Codex Alimentarius、(Codex STAN 72-1981)、及びCodex Alimentarius、(Codex STAN 72-1981)に定義されている乳児用特別用途食品(特別医療目的用食品を含む)に定義されている栄養組成物を指す。乳児用フォーミュラはまた、出生後1ケ月の間の乳児の特定の栄養補給用途を意図する食品であって、当該フォーミュラそのものによって、このカテゴリーに該当する乳児の栄養要件(乳児用フォーミュラ及びフォローオンフォーミュラに対する、Article 2(c)of the European Commission Directive 91/321/EEC 2006/141/EC of 22 December 2006)を満たす、食品を指す。乳児用フォーミュラは、スターター乳児用フォーミュラ及びフォローアップフォーミュラ又はフォローオンフォーミュラを包含する。一般に、スターターフォーミュラは、出生時からの乳児のための母乳代替物であり、フォローアップフォーミュラ又はフォローオンフォーミュラは6ヶ月以降のための母乳代替物である。
【0041】
「グローイングアップミルク」(又はGUM)は、1年目以降から与えられる。このミルクは、概して、特に小児の栄養必要量に合わせて調整された乳系飲料である。かかる飲料は、他の食品と組み合わせて12ヶ月から2~3歳の小児に与えるために使用される栄養組成物である。
【0042】
本発明の文脈において、「強化剤」という用語は、乳児又は幼児に対して栄養上の利益を有する1つ以上の栄養素を含む組成物を指す。
【0043】
「乳強化剤」という用語は、ヒト母乳、乳児用フォーミュラ、グローイングアップミルク、又は他の栄養素で強化されたヒト母乳のいずれかを強化又は補充するために使用される任意の組成物を意味する。したがって、本発明のヒト乳強化剤は、ヒト母乳、乳児用フォーミュラ、グローイングアップミルク、又は他の栄養素で強化されたヒト母乳に溶解させた後に投与することができ、あるいは独立した組成物として投与することができる。
【0044】
独立した組成物として投与される場合、本発明のヒト乳強化剤は、「サプリメント」であると特定することもできる。一実施形態では、本発明の乳強化剤はサプリメントである。
【0045】
「ヒト乳強化剤」という用語は、ヒト母乳、又は他の栄養素で強化されたヒト母乳を、強化又は補充するために使用される任意の組成物を意味する。本発明による「ヒト乳強化剤」は、極低出生時体重(very low birth weight、VLBW)又は超低出生時体重(extremely low birth weight、ELBW)を有する早産で生まれた乳児に投与されることが意図され得る。
【0046】
本発明による乳強化剤は、液体形態の粉末であってもよい。
【0047】
液体形態を有する乳強化剤組成物は、いくつかの特定の利点を示す。例えば、液体製剤は、特定の重量又は体積に較正された液滴を送達する包装と組み合わせられる場合、より便利であり得る。
【0048】
更に、液体製剤は強化される組成物と混合するのがより容易であるが、粉末製剤は場合によっては塊を形成することがある。
【0049】
本発明の文脈において、「ヒト成体母乳幹細胞(hBSC)の乳腺前駆細胞への分化効率及び成熟を増加させる」という用語は、分化プロトコルを経たhBSCの出発集団から生成された非乳腺前駆細胞と比較して、乳腺前駆細胞の割合を増加させることを意味する。本発明において、上記分化プロトコルは、BMP4及び/又はRAの使用を含む。したがって、上記の乳腺前駆細胞の割合の増加は、BMP4及び/又はRAの使用を含まないがそれ以外は同じである分化プロトコルを経たhBSCの出発集団から生成された非乳腺前駆細胞に対する乳腺前駆細胞の割合と比較されてもよい。
【0050】
本発明の文脈において、「生存率を増加させる」という用語は、生きていて健康である細胞の数を増加させることを意味する。上記細胞は、さらなる分化ステップが可能であり、例えば、本発明の文脈において、乳腺オルガノイドへと発達することが可能である。
【0051】
本発明の文脈において、「乳腺前駆細胞」又は類似の用語は、少なくとも2つの乳腺前駆体マーカーを発現する細胞を意味する。上記マーカーとしては、CD49f、EpCAM、MUC1及びGATA3が挙げられるが、これらに限定されない。逆に、本発明の文脈において、「非乳腺前駆細胞」又は類似の用語は、少なくとも2つの乳腺前駆体マーカーを発現しない細胞を意味する。
【0052】
本明細書におけるEpiCult培地又はEpiCultB培地への言及は、ヒドロコルチゾン、インスリン、FGF10及びHGFを含む無血清培養培地を指す。
【0053】
本明細書中に開示される培養培地は、微生物(microorganisms)の増殖/成長及び分化を支援するように設計された、必須栄養素を含む固体、半固体又は液体を指す。MammoCult培地は、本発明において使用され得る培養培地の一例である。
【0054】
本発明による方法及び使用
本発明は、特定の条件下で培養され及び分化したhBSCを使用して乳腺細胞を産生する方法、及び哺乳動物乳様生成物をインビトロで製造する方法において上記乳腺細胞を使用する方法に関する。
【0055】
驚くべきことに、本明細書中に記載される方法における骨形成タンパク質4(BMP4)及び/又はレチノイン酸(RA)の添加は、非神経外胚葉前駆細胞の割合を増加させ、神経外胚葉前駆細胞の割合を減少させることによって、非神経外胚葉前駆細胞の、より均質な混合物を提供することが、本発明において実証された。
【0056】
本明細書中に記載の方法におけるBMP4及び/又はRAの添加は、hBSCの乳腺前駆細胞への分化効率を増加させ、したがって、本明細書中に記載される方法によって産生される乳腺前駆細胞の数を増加させることも、本発明において実証された。利点としては、乳腺細胞の収率向上が挙げられる。
【0057】
驚くべきことに、本明細書中に記載の方法におけるRAの添加は、本発明の方法によって産生される乳腺前駆細胞の生存率を増加させることも見出された。
【0058】
典型的には、hBSCの分化及び形態形成を補助するために、血清添加培養液が使用される。現在、RAが血清の有効な代替物として使用され得ることが見出されている。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の方法は、有利には無血清である。
【0059】
BMP4とRAとの組み合わせは、オステオポンチン(OPN)などの乳特異的生物活性マーカーの発現レベル及び分泌レベルを改善することも実証されている。
【0060】
BMP4とRAとの組み合わせによって分化効率が増加することから、全体的な分化プロトコルの長さを短縮できることも実証されている。この短縮は、細胞死の低減、乳様物の収率の向上、及び費用節約などの重大な利益を有する。
【0061】
哺乳動物乳腺細胞の産生
一態様では、本発明は、特定の条件下で培養及び分化されたhBSCを用いて乳腺細胞を産生する方法に関する。
【0062】
したがって、本発明は、乳腺細胞の集団を産生する方法であって、
i)骨形成タンパク質4(BMP4)及び/又はレチノイン酸(RA)を含む培養培地中でヒト成体母乳幹細胞(hBSC)を培養して、胚様体(EB)を生成するステップと、
ii)EBを成長させて、乳腺細胞の集団を生成するステップと、
を含む方法を提供する。
【0063】
本発明はまた、分化プロトコルにおけるヒト成体母乳幹細胞(hBSC)の乳腺前駆細胞への分化効率を増加させるための、BMP4及び/又はRAの使用を提供する。
【0064】
したがって、本発明は、乳腺細胞の集団を産生する方法であって、
i)骨形成タンパク質4(BMP4)を含む培養培地中でヒト成体母乳幹細胞(hBSC)を培養して、胚様体(EB)を生成するステップと、
ii)EBを成長させて、乳腺細胞の集団を生成するステップと、
を含む方法を提供する。
【0065】
本発明はまた、分化プロトコルにおけるヒト成体母乳幹細胞(hBSC)の乳腺前駆細胞への分化効率を増加させるための、BMP4の使用を提供する。
【0066】
したがって、本発明は、乳腺細胞の集団を産生する方法であって、
i)レチノイン酸(RA)を含む培養培地中でヒト成体母乳幹細胞(hBSC)を培養して、胚様体(EB)を生成するステップと、
ii)EBを成長させて、乳腺細胞の集団を生成するステップと、
を含む方法を提供する。
【0067】
本発明はまた、分化プロトコルにおけるヒト成体母乳幹細胞(hBSC)の乳腺前駆細胞への分化効率を増加させるための、RAの使用を提供する。
【0068】
したがって、本発明は、乳腺細胞の集団を産生する方法であって、
i)骨形成タンパク質4(BMP4)とレチノイン酸(RA)とを含む培養培地中でヒト成体母乳幹細胞(hBSC)を培養して、胚様体(EB)を生成するステップと、
ii)EBを成長させて、乳腺細胞の集団を生成するステップと、
を含む方法を提供する。
【0069】
本発明はまた、分化プロトコルにおけるヒト成体母乳幹細胞(hBSC)の乳腺前駆細胞への分化効率を増加させるための、BMP4及びRAの使用を提供する。いくつかの実施形態では、本発明はまた、哺乳動物乳様生成物の製造効率を増加させるための、BMP4及びRAの使用を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態では、乳腺細胞は、ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを形成する。上記ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドは泌乳能(lactogenic)を有しており、すなわち、乳を産生することができる。
【0071】
骨形成タンパク質4(BMP4)
いくつかの実施形態では、BMP4は、本明細書中に記載されている分化方法の初期段階において培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、BMP4は、0日目~10日目の間に培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、BMP4は、0日目~6日目の間に培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、BMP4は、0日目~3日目の間に培養培地に添加される。0日目は、hBSCが培養培地に初めて添加される時点、すなわち、hBSCが初めて分化誘導される時点である。
【0072】
いくつかの実施形態では、BMP4は、3日間培養培地に添加される。
【0073】
いくつかの実施形態では、BMP4は、5~20ng/mLの濃度で培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、BMP4は、5ng/mLの濃度で培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、BMP4は、10ng/mLの濃度で培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、BMP4は、20ng/mLの濃度で培養培地に添加される。
【0074】
いくつかの実施形態では、BMP4は、0日目~3日目の間に、5~20ng/mLの濃度で培養培地に添加される。
【0075】
本明細書中に記載されている方法において生成されたEBは、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーは、EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から選択される。
【0076】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している。
【0077】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%以上は、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%以上は、2つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記乳腺陽性前駆細胞マーカーは、EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から選択される。
【0078】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも50%は、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも5ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも50%は、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも75%は、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも20ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも75%は、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0079】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、MUC1及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも5ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも15%は、MUC1及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも20%は、MUC1及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも20ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも20%は、MUC1及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0080】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも20%は、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも5ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも20%は、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも35%は、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも20ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも35%は、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0081】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、GATA3乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも20ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも15%は、GATA3乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0082】
EBはまた、非神経外胚葉マーカーを発現し、それによって非神経細胞系列への富化を示す。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の非神経外胚葉マーカーは、TFAP2A及びTFAP2Cから選択される。
【0083】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の非神経外胚葉マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍増加している。
【0084】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の非神経外胚葉マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも3~15倍増加している。
【0085】
いくつかの実施形態では、EBの非神経外胚葉マーカーTFAP2Aの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍増加している。いくつかの実施形態では、EBの非神経外胚葉マーカーTFAP2Cの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍増加している。
【0086】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の神経外胚葉マーカーの発現が減少している。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の神経外胚葉マーカーは、PAX6、OTX2及びSOX11から選択される。
【0087】
したがって、本明細書中に記載される方法は、細胞集団中に存在する細胞のタイプに関してより均質な細胞集団を提供し、すなわち、細胞集団は、非神経外胚葉系列細胞の、より均質な集団を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の神経外胚葉マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して少なくとも0.5倍に減少している。すなわち、これらのマーカーの発現レベルは半分に減少している。いくつかの実施形態では、上記神経外胚葉マーカーは、PAX6、OXT2及びSOX11から選択される。
【0089】
いくつかの実施形態では、EBは、1つ以上の乳特異的生物活性マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記乳特異的生物活性マーカーはオステオポンチン(OPN)である。
【0090】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、増加している。
【0091】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍増加している。
【0092】
いくつかの実施形態では、EBのOPNの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍増加している。いくつかの実施形態では、BMP4は、5~20ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBのOPNの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍増加している。
【0093】
いくつかの実施形態では、EBのOPNの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも4倍増加している。
【0094】
いくつかの実施形態では、EBのOPNの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも18倍増加している。
【0095】
いくつかの実施形態では、乳腺細胞の乳特異的生物活性マーカーの発現が、BMP4で処理されていない乳腺細胞と比較して、増加している。いくつかの実施形態では、乳腺細胞の乳特異的生物活性マーカーの発現が、BMP4で処理されていない乳腺細胞と比較して、少なくとも2倍増加している。いくつかの実施形態では、上記マーカーは、エストロゲン関連受容体α(ESRRA)、ケラチン14(KRT14)及びMUC1から選択される。いくつかの実施形態では、乳腺細胞のESRRAの発現が、BMP4で処理されていない乳腺細胞と比較して、少なくとも2倍増加している。いくつかの実施形態では、乳腺細胞のKRT14の発現が、BMP4で処理されていない乳腺細胞と比較して、少なくとも2倍増加している。いくつかの実施形態では、乳腺細胞のMUC1の発現が、BMP4で処理されていない乳腺細胞と比較して、少なくとも2倍増加している。
【0096】
レチノイン酸(RA)
いくつかの実施形態では、RAは、本明細書中に記載されている分化方法の初期段階において培養条件に添加される。いくつかの実施形態では、RAは、乳腺分化系列の運命決定(mammary lineage commitment)段階の間に培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、RAは、10日目~15日目の間に培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、RAは、6日目~11日目の間に培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、RAは、11日目の後に培養培地に添加されない。いくつかの実施形態では、RAは、11日目の前に培養培地に添加される。0日目は、hBSCが培養培地に初めて添加される時点、すなわち、hBSCが初めて分化誘導される時点である。
【0097】
いくつかの実施形態では、RAは、培養培地に5日間添加される。
【0098】
いくつかの実施形態では、RAは、1μMの濃度で培養培地に添加される。
【0099】
いくつかの実施形態では、RAは、10日目~15日目の間に、1μMの間の濃度で培養条件に添加される。
【0100】
いずれかに記載されている方法において生成されたEBは、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記の1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーは、EpCAM、CD49f及びMUC1から選択される。
【0101】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、RAで処理されていないEBにおける上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している。
【0102】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、ウシ血清アルブミン(BSA)又はウシ胎仔血清などの血清で処理されたEBにおける上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している。
【0103】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、又は50%以上は、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%以上は、2つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記乳腺陽性前駆細胞マーカーは、EpCAM、CD49f及びMUC1から選択される。
【0104】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも40%は、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%は、MUC1及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0105】
いくつかの実施形態では、EBは、RAで処理されていないEBと比較して、細胞生存率が増加している。いくつかの実施形態では、EBは、少なくとも85%以上の生存率を有する。いくつかの実施形態では、EBは、少なくとも95%以上の生存率を有する。
【0106】
本明細書中に記載の乳腺細胞の集団を産生する方法は、本明細書中に記載の哺乳動物乳様生成物を産生するための方法において、特に本明細書中に記載されるステップA)の一部として、組み合わせられてもよく、及び/又は利用されてもよい。
【0107】
例えば、本明細書中に記載の乳腺細胞の集団を産生する方法のいくつかの実施形態では、培養ステップi)は、hBSCを、任意選択で少なくとも12日間、MammoCult培地中、三次元懸濁培養系において、例えば三次元懸濁条件において培養して、それによってhBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の乳腺細胞の集団を産生する方法のいくつかの実施形態では、成長ステップii)は、EBを、RAを含む三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させることを含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、ステップii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップ:ii)及びiii)
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を20の間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、
を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、ステップii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップ:ii)及びiii):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、
を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されている乳腺細胞の集団を産生する方法において、培養ステップi)は、hBSCを、任意選択で少なくとも12日間、MammoCult培地中、三次元懸濁培養系において、例えば三次元懸濁条件において培養して、それによってhBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含み、成長ステップii)は、EBを、RAを含む三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させることを含む。
【0112】
BMP4及びRA
本明細書中に記載されるBMP4に関する任意の実施形態は、本明細書中に記載されるRAに関する任意の実施形態と組み合わせてもよいことは理解される。
【0113】
例えば、BMP4及びRAを培養培地に添加するタイミングに関して、いくつかの実施形態では、BMP4は、0日目~3日目の間に培養培地に添加され、RAは、10日目~15日目の間に培養培地に添加される。
【0114】
いくつかの実施形態では、BMP4は、0日目~3日目の間に培養培地に添加され、RAは、6日目~11日目の間に培養培地に添加される。
【0115】
本明細書中に記載される方法におけるBMP4とRAとの組み合わせは、BMP4及びRAのそれぞれ単独について観察される結果を超える、さらなる驚くべき効果を示すことも理解される。
【0116】
本明細書中に記載されるBMP4とRAとの組み合わせを使用した方法において生成されたEBは、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーは、EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から選択される。
【0117】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している。
【0118】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又はそれ以上は、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%以上は、2つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記乳腺陽性前駆細胞マーカーは、EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から選択される。
【0119】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも35%は、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも60%は、中間分化の段階でEpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも35%は、誘導前の段階でEpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、誘導後の段階でEpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも40%は、誘導後の段階でEpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0120】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも20%は、中間分化の段階でMUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、誘導前の段階でMUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも5%は、誘導後の段階でMUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、誘導後の段階でMUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0121】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも20%は、GATA3及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも50%は、中間分化の段階でGATA3及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも25%は、誘導前の段階でGATA3及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、誘導後の段階でGATA3及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも40%は、誘導後の段階でGATA3及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0122】
いくつかの実施形態では、中間分化の段階は25日目であり、誘導前の段階は35日目であり、誘導後の段階は42日目である。いくつかの実施形態では、中間分化の段階は20日目の間である。誘導前の段階は26日目であり、誘導後の段階は31日目である。
【0123】
いくつかの実施形態では、EBは、1つ以上の乳特異的生物活性マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記乳特異的生物活性マーカーはオステオポンチン(OPN)である。
【0124】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの発現が、BMP4及びRAで処理されていないEBにおける上記マーカーの発現レベルと比較して増加している。いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの分泌が、BMP4及びRAで処理されていないEBにおける上記マーカーの発現レベルと比較して、増加している。いくつかの実施形態では、EBにおけるOPNの分泌が、BMP4及びRAで処理されていないEBにおけるOPNの発現レベルと比較して、増加している。いくつかの実施形態では、EBにおけるOPNの分泌が、BMP4及びRAで処理されていないEBにおけるOPNの発現レベルと比較して、40%以上増加している。
【0125】
本明細書中に記載の乳腺細胞の集団を産生する方法は、本明細書中に記載の哺乳動物乳様生成物を産生するための方法において、特に本明細書中に記載されるステップA)の一部として、組み合わせられてもよく、及び/又は利用されてもよい。
【0126】
例えば、本明細書中に記載の乳腺細胞の集団を産生する方法のいくつかの実施形態では、培養ステップi)は、hBSCを、任意選択で少なくとも12日間、MammoCult培地及び任意選択でBMP4中、三次元懸濁培養系において、例えば三次元懸濁条件において培養して、それによってhBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含む。いくつかの実施形態では、ステップAi)は、8日間以下である。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の乳腺細胞の集団を産生する方法のいくつかの実施形態では、成長ステップii)は、形成されたEBを、任意選択でRAを含む三次元包埋系において、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲルにおいて、少なくとも30日間、例えば32日間成長させて、ラクトサイトを生成することを含む。いくつかの実施形態では、ステップAii)は、少なくとも23日間、例えば25日間以下である。
【0128】
本明細書中に記載されている乳腺細胞の集団を産生する方法のいくつかの実施形態では、培養ステップi)は、hBSCを、任意選択で少なくとも12日間、MammoCult培地及びBMP4中、三次元懸濁培養系において、例えば三次元懸濁条件において培養して、それによってhBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含み、成長ステップii)は、形成されたEBを、RAを含む三次元包埋系において、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲルにおいて、少なくとも30日間、例えば32日間成長させて、ラクトサイトを生成することを含む。
【0129】
哺乳動物乳様生成物の製造
本発明はまた、本明細書で定義されるステップA)及びステップB)のいずれか、並びに本明細書で定義される任意のステップC)を含む、本明細書で定義される哺乳動物乳様生成物を製造する方法にも関する。本明細書で定義される哺乳動物乳様生成物を製造するための上記方法は、ステップA)の一部として、哺乳動物乳腺細胞を産生する方法も含み得る。特に、BMP4及び/又はRAは、本明細書で定義される哺乳動物乳様生成物を製造する方法のいずれかに、特にステップA)の一部として添加されてもよい。BMP4とRAとの組み合わせを使用する上記方法はまた、長さの異なる哺乳動物乳様生成物産生時間を含む。
【0130】
ステップA hBSCからのラクトサイト及び/又は乳腺様オルガノイドの生成
本発明の方法によれば、乳腺様細胞及び/又はオルガノイド構造は、ステップA)下で生成される。
【0131】
このような乳腺様細胞及び/又はオルガノイド構造は、hBSCを利用する任意の既報の方法に従って生成することができる。
【0132】
一実施形態では、このような乳腺様細胞及び/又はオルガノイド構造は、その全体が本明細書に援用されるHassiotou F.et al.Stem Cells.2012に記載の手順に従って生成することもできる。
【0133】
上記の科学刊行物(以下、「Hassiotou刊行物」とも称する)に記載されている方法論は、hBSCからヒト乳腺様細胞及び/又はオルガノイドを生成するためのプロトコルを表す。
【0134】
より具体的には、ステップAは、好ましくは
胚様体形成
乳腺分化系列の運命決定
分枝及び腺房分化、並びに
乳生物活性の誘導
を含む。
【0135】
これらの段階の各々は、特定の培養培地を用いて、特定の時間にわたって実施されてもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、ステップAは、合計で40~45日間、好ましくは42日間実施される。
【0137】
いくつかの実施形態では、ステップAは、短縮され、42日未満、任意選択で40日未満、任意選択で31日未満実施される。好ましくは、ステップAは31日間実施される。
【0138】
いくつかの実施形態では、胚様体形成段階は、0日目~10日目の間である。いくつかの実施形態では、胚様体形成段階は、10日間である。
【0139】
いくつかの実施形態では、胚様体形成段階は、短縮され、0日目~6日目の間である。いくつかの実施形態では、胚様体形成段階は、6日間である。いくつかの実施形態では、胚様体形成段階は、10日間以下である。
【0140】
いくつかの実施形態では、乳腺分化系列の運命決定段階は、10日目~15日目の間である。いくつかの実施形態では、乳腺分化系列の運命決定段階は、6日目~11日目の間である。いくつかの実施形態では、胚様体形成段階は、5日間である。いくつかの実施形態では、胚様体形成段階は、5日間以下である。
【0141】
いくつかの実施形態では、分枝及び腺房分化段階は、15日目~35日目の間である。いくつかの実施形態では、分枝及び腺房分化段階は、20日間である。
【0142】
いくつかの実施形態では、分枝及び腺房分化段階は、短縮され、11日目~26日目の間である。いくつかの実施形態では、分枝及び腺房分化段階は、15日間である。いくつかの実施形態では、分枝及び腺房分化段階は、15日間以下である。
【0143】
いくつかの実施形態では、乳生物活性の誘導段階は、35日目~42日目の間である。いくつかの実施形態では、乳生物活性の誘導段階は、7日間である。
【0144】
いくつかの実施形態では、乳生物活性の誘導段階は、短縮され、26日目~31日目の間である。いくつかの実施形態では、乳生物活性の誘導段階は、5日間である。いくつかの実施形態では、乳生物活性の誘導段階は、5日間以下である。
【0145】
したがって、いくつかの実施形態では、ステップAは合計42日間実施され、ここで、胚様体形成段階は0日目~10日目の間であり、乳腺分化系列の運命決定段階は10日目~15日目の間であり、分枝及び腺房分化段階は15日目~35日目の間であり、乳生物活性の誘導段階は35日目~42日目の間である。
【0146】
他の実施形態では、プロセスが短縮され、その結果ステップAは合計31日間実施され、ここで、胚様体形成段階は0日目~6日目の間であり、乳腺分化系列の運命決定段階は6日目~11日目の間であり、分枝及び腺房分化段階は11日目~26日目の間であり、乳生物活性の誘導段階は26日目~31日目の間である。
【0147】
本明細書中に記載される方法における使用のための期間及び培養培地のさらなる詳細は、以下に提供される。
【0148】
いくつかの実施形態では、BMP4が培養培地に添加される。この添加は、本明細書に記載のように乳腺前駆細胞の割合を増加させるためである。
【0149】
BMP4は、本明細書中に記載されるように、培養培地に添加される。
【0150】
BMP4は、本明細書中に記載されている分化方法の初期段階において培養条件に添加される。いくつかの実施形態では、BMP4は、0日目~10日目の間に培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、BMP4は、0日目~6日目の間に培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、BMP4は、0日目~3日目の間に培養培地に添加される。0日目は、hBSCが培養培地に初めて添加される時点、すなわち、hBSCが初めて分化を誘導される時点である。
【0151】
いくつかの実施形態では、BMP4は、3日間培養培地に添加される。
【0152】
いくつかの実施形態では、BMP4は、5~20ng/mLの濃度で培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、BMP4は、5ng/mLの濃度で培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、BMP4は、10ng/mLの濃度で培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、BMP4は、20ng/mLの濃度で培養培地に添加される。
【0153】
いくつかの実施形態では、BMP4は、0日目~3日目の間に、5~20ng/mLの濃度で培養培地に添加される。
【0154】
いくつかの実施形態では、RAは、ステップ2において培養培地に添加される。これは、乳腺前駆細胞の割合を増加させるため、及び/又は乳腺前駆細胞の生存率を増加させるためである。
【0155】
RAは、本明細書中に記載されるように培養培地に添加される。
【0156】
RAは、本明細書中に記載される分化方法の初期段階において培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、RAは、乳腺分化系列の運命決定段階の間に培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、RAは、10日目~15日目の間に培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、RAは、6日目~11日目の間に培養培地に添加される。いくつかの実施形態では、RAは、11日目の後に培養培地に添加されない。0日目は、hBSCが培養培地に初めて添加される時点、すなわち、hBSCが初めて分化を誘導される時点である。
【0157】
いくつかの実施形態では、RAは、培養培地に5日間添加される。
【0158】
いくつかの実施形態では、RAは、1μMの濃度で培養培地に添加される。
【0159】
いくつかの実施形態では、RAは、10日目~15日目の間に、1μMの間の濃度で培地に添加される。
【0160】
本発明の一実施形態では、ステップa)下でヒト成体母乳幹細胞(hBSC)からラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を製造する方法が提供され、かかるステップa)は、
i)hBSCを、適切な培養培地(例えば、任意選択で抗生物-抗真菌剤溶液及びファンギゾンを添加した、MammoCult培地)中で培養して、1週間後に、hBSCから形成されたマンモスフェアを回収するステップ;及び
ii)かかるマンモスフェアを、適切な系(例えば、任意選択でウシ胎児血清(FBS)及びインスリン及び上皮成長因子(EGF)及びヒドロコルチゾン及び抗生物-抗真菌剤溶液及びフンギゾンを添加した、L-グルタミンを含む培養培地RPMI(Roswell Park Memorial Institute)1640を含む乳腺分化培地など)中で少なくとも1週間、例えば2~4週間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を含む。
【0161】
本発明の一実施形態では、ステップa)下でヒト成体母乳幹細胞(hBSC)からラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を製造する方法が提供され、かかるステップa)は、
i)hBSCを、本明細書中に記載のBMP4を任意選択で含む適切な培養培地(例えば、任意選択で抗生物質-抗真菌剤溶液及びファンギゾンを添加した、MammoCult培地)中で培養して、1週間後に、hBSCから形成されたマンモスフェアを回収するステップ、及び
ii)かかるマンモスフェアを、本明細書中に記載のRAを任意選択で含む適切な系(例えば、任意選択でウシ胎児血清(FBS)及びインスリン及び上皮成長因子(EGF)及びヒドロコルチゾン及び抗生物-抗真菌剤溶液及びフンギゾンを添加した、L-グルタミンを含む培養培地RPMI(Roswell Park Memorial Institute)1640を含む乳腺分化培地など)中で少なくとも1週間、例えば2~4週間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を含む。
【0162】
本発明の一実施形態では、ステップa)下でヒト成体母乳幹細胞(hBSC)からラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を製造する方法が提供され、かかるステップa)は、
i)hBSCを、本明細書中に記載のBMP4を含む適切な培養培地(例えば、任意選択で抗生物-抗真菌剤溶液及びファンギゾンを添加した、MammoCult培地)中で培養して6日後に、hBSCから形成されたマンモスフェアを回収するステップ、及び
ii)かかるマンモスフェアを、本明細書中に記載のRAを含む適切な系(例えば、任意選択でウシ胎児血清(FBS)及びインスリン及び上皮成長因子(EGF)及びヒドロコルチゾン及び抗生物-抗真菌剤溶液及びフンギゾンを添加した、L-グルタミンを含む培養培地RPMI(Roswell Park Memorial Institute)1640を含む乳腺分化培地など)中で10日未満成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を含む。
【0163】
本発明の一実施形態では、ステップa)下でヒト成体母乳幹細胞(hBSC)からラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を製造する方法が提供され、かかるステップa)は、
i)hBSCを、マンモスフェア形成のための非接着条件下で適切な培養培地(例えば、MammoCult培地)中で凝集させ及び培養するステップ、及び
ii)かかるマンモスフェアを、三次元の適切な系(例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル、又は非接着性プレート内の懸濁培養物)中で少なくとも10日間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を含む。
【0164】
本発明の一実施形態では、ステップa)下でヒト成体母乳幹細胞(hBSC)からラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を製造する方法が提供され、かかるステップa)は、
i)hBSCを、マンモスフェア形成のための非接着条件下で、本明細書中に記載のBMP4を任意選択で含む適切な培養培地(例えば、MammoCult培地)中で凝集及び培養するステップ、及び
ii)かかるマンモスフェアを、本明細書中に記載のRAを任意選択で含む三次元の適切な系(例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル、又は非接着性プレート内の懸濁培養物)中で少なくとも10日間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を含む。
本発明の一実施形態では、ステップa)下でヒト成体母乳幹細胞(hBSC)からラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を製造する方法が提供され、かかるステップa)は、
i)hBSCを、マンモスフェア形成のための非接着条件下で、本明細書中に記載のBMP4を含む適切な培養培地(例えば、MammoCult培地)中で凝集させ及び培養するステップ、及び
ii)かかるマンモスフェアを、本明細書中に記載のRAを含む三次元の適切な系(例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル、又は非接着性プレート内の懸濁培養物)中で10日間未満成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を含む。
【0165】
一実施形態では、ステップA)下での乳腺の運命決定は、特定の因子(例えば、上皮小体ホルモン(pTHrP)及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGF)を添加した馴化培地(例えば、EpiCultB)を適用することによって得られる。
【0166】
一実施形態では、ステップA)下での乳腺の運命決定は、特定の因子(例えば、上皮小体ホルモン(pTHrP)及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGF)及びRAを添加した馴化培地(例えば、EpiCultB)を適用することによって得られる。
【0167】
本発明の一実施形態では、本方法は、ステップA)下で乳腺様オルガノイドを生成するステップを含む。
【0168】
本発明の一実施形態では、ステップA)下で乳腺様オルガノイドを生成する方法は、細胞の二次元単層、付着EBを有する二次元(2D with attached EB)、非接着性プレート内の懸濁液、及び混合浮遊ゲルからなる群から選択される条件下で細胞を培養するステップを含む。
【0169】
別の好ましい実施形態では、ステップA)におけるマンモスフェア(mEB)を、適切な系(例えば、Hassiotou F.et al.Stem Cells.2012に記載の浮遊混合ゲル培養系)中で少なくとも15日間培養する。
【0170】
より好ましい実施形態では、ステップA)におけるマンモスフェア(mEB)を、適切な系(例えば、Hassiotou F.et al.Stem Cells.2012に記載の浮遊混合ゲル培養系)中で20日間培養する。
【0171】
一実施形態では、本発明による方法は、ステップA)に従う培養条件を提供し[例えば、ステップA)i)下、及び/又はステップA)ii)下]、この条件は、標準ヒト乳様生成物を分泌することができるヒト成体母乳幹細胞(hBSC)に由来するラクトサイトを生成するように調整されている。
【0172】
一実施形態では、栄養素及び生体模倣刺激の送達は、細胞成長、分化、及び組織形成に影響を与えるように制御される。一実施形態では、このような制御は、バイオリアクター内で行われる。
【0173】
一実施形態では、本発明による方法は、ステップA)に従う培養条件を提供し[例えば、ステップA)i)下、及び/又はステップA)ii)下]、培養条件は、非標準ヒト乳様生成物を分泌することができるヒト成体母乳幹細胞(hBSC)に由来するラクトサイトを生成するように調整されている。
【0174】
好ましい実施形態では、ステップA)下でヒトhBSCからラクトサイトを生成するステップを含む、ヒト乳様生成物を製造する方法であって、このようなステップA)は、適切な三次元培養系(例えば、三次元懸濁条件)において少なくとも42日間、hBSCを乳腺細胞(例えば、ラクトサイト)へと分化させることを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも31日間。いくつかの実施形態では、31日間以下である。
【0175】
好ましい実施形態では、ステップA)下でヒトhBSCからラクトサイトを生成するステップを含む、ヒト乳様生成物を製造する方法であって、このようなステップA)は、本明細書中に記載されるBMP4及び/又はRAを含む適切な三次元培養系(例えば、三次元懸濁条件)において少なくとも42日間、hBSCを乳腺細胞(例えば、ラクトサイト)へと分化させることを含む、方法が提供される。好ましい実施形態では、ステップA)下でヒトhBSCからラクトサイトを生成するステップを含む、ヒト乳様生成物を製造する方法であって、このようなステップA)は、本明細書中に記載されるBMP4及びRAを含む適切な三次元培養系(例えば、三次元懸濁条件)において少なくとも31日間以下、hBSCを乳腺細胞(例えば、ラクトサイト)へと分化させることを含む、方法が提供される。
【0176】
別の好ましい実施形態では、ステップA)下でhBSCからラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を製造する方法が提供され、かかるステップA)は、
i)hBSCを、適切な培養培地(例えば、MammoCult培地)中で、適切な三次元培養系(例えば、三次元懸濁条件)において、少なくとも12日間(-2日目~10日目)培養することによって、hBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、適切な三次元包埋系(例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル)中で少なくとも30日間、好ましくは32日間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を含む。
【0177】
別の好ましい実施形態では、ステップA)下でhBSCからラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を製造する方法が提供され、かかるステップA)は、
i)hBSCを、本明細書中に記載のBMP4を任意選択で含む適切な培養培地(例えば、MammoCult培地)中で、適切な三次元培養系(例えば、三次元懸濁条件)において、少なくとも12日間(-2日目~10日目)培養することによって、hBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、RAを任意選択で含む適切な三次元包埋系(例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル)中で少なくとも30日間、好ましくは32日間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を含む。
【0178】
別の好ましい実施形態では、ステップA)下でhBSCからラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を製造する方法が提供され、かかるステップA)は、
i)hBSCを、本明細書中に記載のBMP4を含む適切な培養培地(例えば、MammoCult培地)中で、適切な三次元培養系(例えば、三次元懸濁条件)において、8日(-2日目~6日目)間以下培養することによって、hBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、RAを含む適切な三次元包埋系(例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル)中で25日間以下成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を含む。
【0179】
本発明の特に好ましい実施形態では、ステップA)下でhBSCからラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を生産する方法が提供され、ステップA)i)は、
i)標準培地E8(Chen et al.,Nat Methods,2011に記載のようにDMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン(sodium selenium)、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む)又はmTeSR(商標)中で2日間(-2日目~0日目)のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、ヘパリン(典型的には4μg/mL)及びヒドロコルチゾン(典型的には0.48μg/mL)が添加された、完全MammoCult培地(StemCell Technologies)中で10日間(0日目~10日目)のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)を添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間(10日目~15日目)のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を20日間(15日目~35日目)インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を7日間(35日目~42日目)インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む。
【0180】
本発明の特に好ましい実施形態では、ステップA)下でhBSCからラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を生産する方法が提供され、ステップA)i)は、
i)標準培地E8(Chen et al.,Nat Methods,2011に記載のようにDMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む)又はmTeSR(商標)中で2日間(-2日目~0日目)のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、ヘパリン(典型的には4μg/mL)及びヒドロコルチゾン(典型的には0.48μg/mL)及び任意選択で本明細書中に記載のBMP4が添加された、完全MammoCult培地(StemCell Technologies)中で10日間(0日目~10日目)のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及び任意選択で本明細書中に記載のRAを添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間(10日目~15日目)のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を20日間(15日目~35日目)インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を7日間(35日目~42日目)インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む。
【0181】
本発明の特に好ましい実施形態では、ステップA)下でhBSCからラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を生産する方法が提供され、ステップA)i)は、
i)標準培地E8(Chen et al.,Nat Methods,2011に記載のようにDMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む)又はmTeSR(商標)中で2日間(-2日目~0日目)のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、ヘパリン(典型的には4μg/mL)及びヒドロコルチゾン(典型的には0.48μg/mL)及び本明細書中に記載のBMP4が添加された、完全MammoCult培地(StemCell Technologies)中で6日間(0日目~6日目)のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及び本明細書中に記載のRAを添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間(6日目~11日目)のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を15日間(11日目~26日目)インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を5日間(26日目~31日目)インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む。
【0182】
ステップiv)は、好ましくは、乳タンパク質発現細胞、特にラクトサイト、及び/又は乳腺様オルガノイドへの分化をもたらす。
【0183】
本発明のさらに特に好ましい実施形態では、ステップA)下でhBSCからラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を生産する方法が提供され、ステップA)i)は、
i)標準培地E8(Chen et al.,Nat Methods,2011に記載のようにDMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む)又はmTeSR(商標)中で2日間(-2日目~0日目)のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリンを添加したMammoCultB培地中で10日間(0日目~10日目)のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)を添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間(10日目~15日目)包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で20日間(15日目~35日目)インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を7日間(35日目~42日目)インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む。
【0184】
本発明のさらに特に好ましい実施形態では、ステップA)下でhBSCからラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を生産する方法が提供され、ステップA)i)は、
i)標準培地E8(Chen et al.,Nat Methods,2011に記載のようにDMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む)又はmTeSR(商標)中で2日間(-2日目~0日目)のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリン及び任意選択で本明細書中に記載のBMP4を添加したMammoCultB培地中で10日間(0日目~10日目)のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及び任意選択でRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間(10日目~15日目)包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で20日間(15日目~35日目)インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を7日間(35日目~42日目)インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む。
【0185】
本発明のさらに特に好ましい実施形態では、ステップA)下でhBSCからラクトサイトを生成することを含む、ヒト乳様生成物を生産する方法が提供され、ステップA)i)は、
i)標準培地E8(Chen et al.,Nat Methods,2011に記載のようにDMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む)又はmTeSR(商標)中で2日間(-2日目~0日目)のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリン及び本明細書中に記載のBMP4を添加したMammoCultB培地中で6日間(0日目~6日目)のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間(6日目~11日目)包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で15日間(11日目~26日目)インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を5日間(26日目~31日目)インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む。
【0186】
ステップiv)は、好ましくは、乳タンパク質発現細胞、特にラクトサイト、及び/又は乳腺様オルガノイドへの分化をもたらす。
【0187】
本明細書で言及される標準培地E8(Chen et al.,Nat Methods,2011に記載のようにDMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む)は、例えば、ThermoFischer Scientificからカタログ番号A1517001の「Essential 8(商標)培地」として市販されている(https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/A1517001#/A1517001も参照されたい)。
【0188】
mTeSR(商標)培地は、STEMCELL Technologiesからカタログ番号85850で市販されている(https://www.stemcell.com/mtesr1.htmlも参照されたい)。このような培地は、「Defined,Feeder-Independent medium for human hembryonic stem cell culture」、Current protocol in Stem Cell Biology,Volume 2,Issue 1,Sept 2007にも記載されている。
【0189】
一実施形態では、特に好ましい実施形態について上で定義されたステップiii)及び/又はiv)は、好ましくは、少なくとも乳腺細胞(breast cell)、管腔細胞、及び基底細胞の形成/これらの細胞への分化をもたらす。これに関連して、乳腺細胞(breast cell)は、好ましくは、β-カゼイン、乳タンパク質、及びホルモン受容体からなる群から選択されるマーカーのうち、1つ又は複数、好ましくはすべてを発現する。更に、管腔細胞は、好ましくは、EpCAM、MUC1、CD49F、GATA3、CK8、及びCK18からなる群から選択されるマーカーののうち、1つ又は複数、好ましくはすべてを発現する。更に、基底細胞は、好ましくは、CK14、α-平滑筋アクチン及びP63からなる群から選択される1つ以上のマーカーを発現する。
【0190】
さらなる一実施形態では、特に好ましい実施形態について上で定義したステップii)及び/又はiv)におけるmEB(マンモスフェア)の誘導後に、β-カゼイン、乳タンパク質、及びホルモン受容体からなる群から選択されるマーカーのうち、1つ以上を発現する乳腺様オルガノイド、EpCAM、MUC1、CD49F、GATA3、CK8、及びCK18からなる群から選択される1つ以上のマーカーを発現する管腔細胞、並びにCK14、α-平滑筋アクチン及びP63からなる群から選択される1つ以上のマーカーを発現する基底細胞を得ることもできる。
【0191】
本発明の一実施形態において、上記の方法は、標準ヒト乳様生成物を製造するために提供される。
【0192】
別の実施形態において、上記の方法は、非標準ヒト乳様生成物を製造するために提供される。
【0193】
一実施形態では、栄養素及び生体模倣刺激の送達は、細胞成長、分化及び組織形成に影響を与えるように制御される。一実施形態では、このような制御は、バイオリアクター内で行われる。
【0194】
本明細書中に記載されている哺乳動物乳様生成物を製造する方法においてBMP4を培養培地に添加する場合、本明細書中に記載されている方法において生成されるEBは、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーは、EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から選択される。
【0195】
いくつかの実施形態では、EBは、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して増加されている。
【0196】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又はそれ以上は、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%以上は、2つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記乳腺陽性前駆細胞マーカーは、EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から選択される。
【0197】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも50%は、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも5ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも50%は、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも75%は、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも20ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも75%は、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0198】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、MUC1及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも5ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも15%は、MUC1及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも20%は、MUC1及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも20ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも20%は、MUC1及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0199】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも20%は、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも5ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも20%は、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも35%は、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも20ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも35%は、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0200】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、GATA3乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、BMP4は、少なくとも20ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBの少なくとも15%は、GATA3乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0201】
EBはまた、非神経外胚葉マーカーを発現し、それによって非神経細胞系列への富化を示す。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の非神経外胚葉マーカーは、TFAP2A及びTFAP2Cから選択される。
【0202】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の非神経外胚葉マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍増加している。
【0203】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の非神経外胚葉マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも3~15倍増加している。
【0204】
いくつかの実施形態では、EBの非神経外胚葉マーカーTFAP2Aの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍増加している。いくつかの実施形態では、EBの非神経外胚葉マーカーTFAP2Cの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍増加している。
【0205】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の神経外胚葉マーカーの発現が減少している。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の神経外胚葉マーカーは、PAX6、OTX2及びSOX11から選択される。
【0206】
したがって、本明細書中に記載される方法は、細胞集団中に存在する細胞のタイプに関してより均質な細胞集団を提供し、すなわち、細胞集団は、非神経外胚葉系列細胞の、より均質な集団を含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の神経外胚葉マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも0.5倍に減少している。すなわち、これらのマーカーの発現レベルは半分に減少している。いくつかの実施形態では、上記神経外胚葉マーカーは、PAX6、OXT2及びSOX11から選択される。
【0208】
いくつかの実施形態では、EBは、1つ以上の乳特異的生物活性マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記乳特異的生物活性マーカーはオステオポンチン(OPN)である。
【0209】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、増加している。
【0210】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍増加している。
【0211】
いくつかの実施形態では、EBのOPNの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍増加している。いくつかの実施形態では、BMP4は、5~20ng/mLの濃度で培養培地に添加され、EBのOPNの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍増加している。
【0212】
いくつかの実施形態では、EBのOPNの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも4倍増加している。
【0213】
いくつかの実施形態では、EBのOPNの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも18倍増加している。
【0214】
いくつかの実施形態では、乳腺細胞の乳特異的生物活性マーカーの発現が、BMP4で処理されていない乳腺細胞と比較して、増加している。いくつかの実施形態では、乳腺細胞の乳特異的生物活性マーカーの発現が、BMP4で処理されていない乳腺細胞と比較して、少なくとも2倍増加している。いくつかの実施形態では、上記マーカーは、エストロゲン関連受容体α(ESRRA)、ケラチン14(KRT14)及びMUC1から選択される。いくつかの実施形態では、乳腺細胞のESRRAの発現が、BMP4で処理されていない乳腺細胞と比較して、少なくとも2倍増加している。いくつかの実施形態では、乳腺細胞のKRT14の発現が、BMP4で処理されていない乳腺細胞と比較して、少なくとも2倍増加している。いくつかの実施形態では、乳腺細胞のMUC1の発現が、BMP4で処理されていない乳腺細胞と比較して、少なくとも2倍増加している。
【0215】
したがって、一例として、本明細書で提供されるのは、ヒト乳様生成物を製造するための方法であって、ステップA)下でヒト母乳幹細胞(hBSC)からラクトサイトを生成することを含み、かかるステップA)が
i)hBSCを、適切な培養培地(例えば、MammoCult培地)及び本明細書中に記載のBMP4中で培養することによって、hBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させて、10日後に、hBSCから形成されたマンモスフェアを回収するステップ;及び
ii)かかるマンモスフェアを、適切な系(例えば、Hassiotou F.et al.Stem Cells.2012に記載の浮遊混合ゲル培養系)中で少なくとも10日間培養して、ラクトサイトを生成するステップ、
を含み、
マンモスフェア(EB)の1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、BMP4で処理されていないマンモスフェア(EB)における上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して増加している、
方法である。
【0216】
本明細書中に記載されている哺乳動物乳様生成物を製造する方法においてRAを培養培地に添加する場合、本明細書中に記載されている方法において生成されるEBは、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記の1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーは、EpCAM、CD49f及びMUC1から選択される。
【0217】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、RAで処理されていないEBにおける上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している。
【0218】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、ウシ血清アルブミン(BSA)又はウシ胎仔血清などの血清で処理されたEBにおける上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している。
【0219】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、又は50%以上は、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又はそれ以上は、2つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記乳腺陽性前駆細胞マーカーは、EpCAM、CD49f及びMUC1から選択される。
【0220】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも40%は、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%は、MUC1及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0221】
いくつかの実施形態では、EBは、RAで処理されていないEBと比較して、細胞生存率が増加している。いくつかの実施形態では、EBは、生存率が少なくとも85%以上である。いくつかの実施形態では、EBは、生存率が少なくとも95%以上である。
【0222】
したがって、一例として、本明細書で提供されるのは、ヒト乳様生成物をインビトロで製造する方法であって、
A)ヒト母乳幹細胞(hBSC)に由来するラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップ、
B)上記ラクトサイトからヒト乳様生成物を分泌させるステップ、を含み、
かかるステップA)は、
i)hBSCを、適切な培養培地、例えばMammoCult培地中で、適切な三次元培養系において、例えば三次元懸濁条件において、少なくとも12日間培養することによって、hBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、RAを含む適切な三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を含み、
マンモスフェア(EB)は、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、RAで処理されていないEBにおける上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して増加されている、方法である。
【0223】
本明細書中に記載されている哺乳動物乳様生成物を製造する方法においてBMP4及びRAを培養培地に添加する場合、本明細書中に記載されている方法において生成されるEBは、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーは、EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から選択される。
【0224】
いくつかの実施形態では、EBは、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して増加されている。
【0225】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又はそれ以上は、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%以上は、2つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態は、上記乳腺陽性前駆細胞マーカーは、EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から選択される。
【0226】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも35%は、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも60%は、中間分化段階でEpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも35%は、誘導前段階でEpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも40%は、誘導後の段階でEpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0227】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも20%は、中間分化の段階でMUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、誘導前の段階でMUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも5%は、誘導後の段階でMUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0228】
いくつかの実施形態では、EBの少なくとも20%は、GATA3及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも50%は、中間分化の段階でGATA3及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも25%は、誘導前の段階でGATA3及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、EBの少なくとも15%は、誘導後の段階でGATA3及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する。
【0229】
いくつかの実施形態では、中間分化の段階は25日目である。誘導前の段階は35日目であり、誘導後の段階は42日目である。いくつかの実施形態では、中間分化の段階は20日目の間である。誘導前の段階は26日目であり、誘導後の段階は31日目である。
【0230】
いくつかの実施形態では、EBは、1つ以上の乳特異的生物活性マーカーを発現する。いくつかの実施形態では、上記乳特異的生物活性マーカーはオステオポンチン(OPN)である。
【0231】
いくつかの実施形態では、EBの1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの発現が、BMP4及びRAで処理されていないEBにおける上記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、増加している。
【0232】
したがって、一例として、本明細書で提供されるのは、ヒト乳様生成物を製造するための方法であって、ステップA)下でヒト母乳幹細胞(hBSC)からラクトサイトを生成することを含み、かかるステップA)が
i)hBSCを、適切な培養培地(例えば、MammoCult培地)及び本明細書中に記載のBMP4中で培養することによって、hBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させて、10日後に、hBSCから形成されたマンモスフェアを回収するステップ;及び
ii)かかるマンモスフェアを、適切な系(例えば、Hassiotou F.et al.Stem Cells.2012に記載の浮遊混合ゲル培養系)中で少なくとも10日間培養して、ラクトサイトを生成するステップ、
を含み、
マンモスフェア(EB)は、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、BMP4で処理されていないマンモスフェア(EB)における上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して増加している、
方法である。
【0233】
したがって、一例として、本明細書で提供されるのは、ヒト乳様生成物を製造するための方法であって、ステップA)下でヒト母乳幹細胞(hBSC)からラクトサイトを生成することを含み、かかるステップA)が
i)hBSCを、適切な培養培地(例えば、MammoCult培地)及び本明細書中に記載のBMP4中で培養することによって、hBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させて、6日後に、hBSCから形成されたマンモスフェアを回収するステップ;及び
ii)かかるマンモスフェアを、RAを含む適切な系(例えば、Hassiotou F.et al.Stem Cells.2012に記載の浮遊混合ゲル培養系)中で少なくとも10日間未満培養して、ラクトサイトを生成するステップ、
を含み、
マンモスフェア(EB)の1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、BMP4及びRAで処理されていないマンモスフェア(EB)における上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している、
方法である。
【0234】
本明細書に開示される任意の方法又は方法ステップは、支持体として膜マトリックスを使用するのではなく、三次元懸濁培養において行われ得ることが理解されるであろう。したがって、いくつかの実施形態では、全ての分化手順の間、細胞は懸濁培養で維持される。
【0235】
ステップBヒト母乳様生成物の発現
本発明の一実施形態において、本方法は、好ましくはステップA)に従って調製された、ヒト成体母乳幹細胞(hBSC)に由来する乳腺様オルガノイドからヒト乳様生成物を発現させるステップを含む。
【0236】
ヒト乳様生成物の発現は、好ましくは、かかるラクトサイト及び/又は乳腺様腺オルガノイドからのヒト乳様生成物の発現の誘導時に生じる。
【0237】
一実施形態では、泌乳期のラクトサイトは、催乳因子(例えば、プロラクチン、ハイドロコルチゾン、及びインスリン)を添加した特定の培地(例えば、EpiCult B)を適用することによって誘導される。
【0238】
特に、好ましくはステップA)に従って調製された、ヒト母乳幹細胞(BSC)に由来する乳腺様オルガノイドから得られたヒト乳様生成物は、タンパク質、脂質又はオリゴ糖、好ましくはヒト乳オリゴ糖などを含む、又はこれらからなる群から選択される、ヒト乳の生物活性物質を含有する。本発明者らは具体的には、とりわけオリゴ糖(ラクトース)、脂質(C12:0、C16:0、C18:0、C18:1 n-9、C18:2脂肪酸)、及びタンパク質(ラクトフェリン、アルファラクトアルブミンを同定することに成功した。
【0239】
本発明の一実施形態では、ヒト母乳幹細胞(BSC)に由来する乳腺様オルガノイドから得られたヒト乳様生成物は、標準ヒト乳生成物である。本発明の別の実施形態では、ヒト母乳幹細胞(BSC)に由来する乳腺様オルガノイドから得られたヒト乳様生成物は、非標準ヒト乳生成物である。
【0240】
ステップC 調整ヒト母乳様生成物を製造するためのさらなる処理
本発明の任意の一実施形態では、本方法は、ステップB)から得ることができるヒト乳様生成物に対して行われ、かかる生成物に対して追加の処理を行って調整ヒト乳様生成物を提供することを含む追加のステップC)を含む。
【0241】
一実施形態では、ヒト母乳様生成物に対して行われる追加の処理ステップC)は、精製ステップ、単離プロセス、抽出プロセス、分画ステップ、濃縮プロセス、酵素処理、さらなる成分(例えば、ヒト乳腺オルガノイドによって発現され得ないもの(例えば、免疫グロブリン、プロバイオティクス、ビタミン類及び/又はミネラル類など))の添加又はそれらの組合せからなる群において選択され得る。
【0242】
ヒト乳様生成物
標準ヒト母乳様生成物
本発明の一実施形態では、ヒト母乳様生成物は、標準ヒト母乳様生成物であり、すなわち、栄養状態の良好な母親のヒト母乳と同じ成分を含む。
【0243】
母乳哺育の利点は、科学文献において周知であり、標準ヒト母乳様生成物へのアクセスが可能になることで、かかる生成物を多くの同様に周知の健康上の利点のために使用可能になる。
【0244】
かかる実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、実際の授乳が不可能な状況下で、母乳代替物として使用することができる。
【0245】
かかる実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、例えば、泌乳が少ない女性、又は出産の6ヶ月後に泌乳しなくなった女性の授乳経験がより長期間になるよう支援するために使用されることが意図される。
【0246】
同様に、標準ヒト母乳様生成物は、例えば、病気により母親からの実際の授乳が損なわれる状況下であっても、授乳を可能にするために使用されることが意図される。
【0247】
別の実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、母乳の産生が自然に開始されない状況、例えば乳児を養子とした場合に使用されることが意図される。
【0248】
一実施形態では、本発明による標準ヒト乳様生成物は、天然に生じるとおりのヒト母乳授乳期の生成物ではない。
【0249】
一実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、乳児に最適な栄養を提供する際に使用するためのものである。
【0250】
一実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、乳児に健康な発育を提供する際に使用するためのものである。
【0251】
一実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、幼児における感染、肥満の予防及び免疫発達の促進に使用するためのものである。
【0252】
一実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、無調整ヒト母乳様生成物である。
【0253】
別の実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、調整ヒト母乳様生成物である。
【0254】
一実施形態では、本発明による標準ヒト乳様生成物は、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン及びミネラルを含む。
【0255】
別の実施形態では、本発明による標準ヒト乳様生成物は、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル及び生物活性物質を含む。
【0256】
一実施形態では、本発明による標準ヒト乳様生成物は、タンパク質、脂質(リノール酸及びα-リノレン酸を含む)、炭水化物、ビタミン(ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸、葉酸、ビタミンC及びビオチンを含む)、ミネラル(鉄、カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、塩化物、カリウム、マンガン、ヨウ素、セレン、銅及び亜鉛を含む)、コリン、ミオイノシトール及びL-カルニチンを含む。
【0257】
さらなる実施形態では、本発明による標準ヒト乳様生成物はまた、増殖/成長因子、サイトカイン、プロバイオティクス、細胞外小胞(例えば、乳脂肪球及び/又はエキソソーム)、エキソソーム由来の生物活性物質(例えば、miRNA)及び分泌型IgAからなる群において選択される少なくとも1つの生物活性物質を含む。
【0258】
かかる標準ヒト母乳様生成物は、本発明の方法に従って、例えば、増殖/成長因子、サイトカイン、プロバイオティクス、細胞外小胞(例えば、乳脂肪球及び/又はエキソソーム)、エキソソーム由来の生物活性物質(例えば、miRNA)及び分泌型IgA)を添加するステップC)を含めることによって調製され得る。
【0259】
一実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、プロバイオティクスを含有する。
【0260】
かかる標準ヒト母乳様生成物は、例えば、いくつかの商業的に入手可能な供給源から得ることができるプロバイオティクス(例えば、B.ラクティス(B.Lactis)、B.インファンティス(B.Infantis)、L.ラムノサス(L.Ramnhosus))を含有させることにより、本発明の方法に従い調製され得る。
【0261】
かかる実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、胃腸機能を最適化するため、及び/又は免疫を促進するために使用され得る。
【0262】
一実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、分泌型IgA及びプロバイオティクスを含有する。
【0263】
かかる標準ヒト母乳様生成物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/156301号及び国際公開第2009/156367号に記載されているように調製することができるプロバイオティクスと分泌型IgAとの組合せを添加するステップC)を含めることによって、本発明の方法に従って調製することができる。かかる実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、免疫グロブリンの欠乏を予防するために、並びに/又は乳児及び幼児における再発感染の予防において使用され得る。
【0264】
非標準ヒト母乳様生成物
本発明の一実施形態では、ヒト乳様生成物は、栄養状態の良好な母親のヒト母乳中に天然に見出される成分比及び成分濃度とは変更させることができる。これを本明細書では「非標準乳様生成物」と称する。
【0265】
一実施形態では、本発明による非標準ヒト乳様生成物は、乳強化剤、サプリメント、及び/又は特別な目的に適合させたヒト母乳代替物からなる群において選択され得る。
【0266】
ヒト乳強化剤及びヒト乳生物活性サプリメント
一実施形態では、本発明の方法は、授乳中の母親から自然に得られるヒト母乳を強化するために、又は乳児用フォーミュラを強化するために使用することができる非標準ヒト母乳様生成物を提供する。
【0267】
別の実施形態では、本発明の方法は、必要に応じて乳児又は幼児のためのサプリメントとして使用され得る非標準ヒト母乳様生成物を提供する。
【0268】
かかる実施形態では、非標準ヒト母乳様生成物は、健康な発育を提供するために、及び/又は、乳児又は幼児における特定の状態(例えば、ぜんそく、アレルギー、認知変化など)に典型的に関連する病気を発症するリスクを低減するために、及び/又は、発育、免疫の発達、感染からの保護を促進するために、使用され得る。
【0269】
注目すべきことに、かかる強化剤又はサプリメント中の成分(特に生物活性成分)がヒト起源であることは、それらが本発明の方法によるものであるという事実と相まって、かかる成分にそのままの(intact)又はより高い機能性を提供すると考えられる。
【0270】
非標準ヒト母乳様生成物は、強化剤として使用されることが意図される。強化剤として使用されることが意図されるかかる非標準ヒト母乳様生成物は、本発明の方法に従って、例えば、ステップB)から得ることができるヒト母乳様生成物からの特定の生物活性物質の単離及び/又は濃縮のステップC)を含めることによって、調製され得る。かかる単離ステップは、ステップB)から得ることができる無調整ヒト母乳様生成物の古典的な分画、富化(enrichment)及び/又は精製を介して行われてもよい。
【0271】
サプリメントとして使用されることが意図される非標準ヒト母乳様生成物は、ヒト乳オリゴ糖(例えば、2FL、3FL、LNT、LnNT、DiFl、6SL及び/又は3SL)、脂質、増殖/成長因子(例えば、上皮増殖因子(EGF)、ヘパリン結合上皮増殖因子)、サイトカイン(例えば、形質転換増殖因子-β2(TGFβ-2)、IL-1、IL-2、IL-6、IL-10、IL-18、インターフェロンガンマ(INF-ガンマ)、TNF-アルファ)、細胞外小胞(例えば、乳脂肪球及び/又はエキソソーム)、マイクロRNAを含むエキソソーム、及び抗菌/保護的生物活性物質(例えば、ラクトフェリン、リゾチーム、ラクトアドヘリン)からなる群において選択される1つ以上の生物活性物質を含み得る。サプリメントとして使用されることが意図されるかかる非標準ヒト母乳様生成物は、本発明の方法に従って、例えば、ステップB)から得ることができる無調整ヒト母乳様生成物から生物活性物質を単離するステップC)を含めることによって調製され得る。かかる単離ステップは、ステップB)から得ることができる無調整ヒト母乳様生成物の古典的な分画、富化及び/又は精製を介して行われてもよい。
【0272】
一実施形態では、非標準ヒト母乳様生成物は、フコシル化ヒト乳オリゴ糖、例えば2FL及び/又は3FLを含有するサプリメント又は乳強化剤である。かかるサプリメント又は乳強化剤は、FUT2遺伝子が不活性であることに起因してフコシル化オリゴ糖を分泌しない女性のヒト母乳のプロファイルを充足させる際に使用するためのものである。
【0273】
強化剤又はサプリメントとして使用されることが意図されるかかる非標準ヒト母乳様生成物は、本発明の方法に従って、例えば、ステップB)から得ることができる無調整ヒト母乳様生成物からフコシル化オリゴ糖(例えば、2FL及び/又は3FL)を単離及び/又は濃縮するステップC)を含めることによって調製され得る。
【0274】
かかる実施形態では、標準ヒト母乳様生成物は、胃腸機能を最適化するため、及び/又は免疫を促進するために使用され得る。
【0275】
遺伝的疾患を有する乳児のためのヒト母乳様生成物
一実施形態では、本発明によるヒ非標準ト母乳様生成物は、遺伝的疾患を有して生まれた乳児の特異的なニーズに対処するように調整され得る。
【0276】
ガラクトース血症
かかる実施形態では、非標準ヒト母乳様生成物は、ガラクトース血症に罹患している乳児のニーズに適合させることができる。ガラクトース血症は、乳児のガラクトース代謝能に影響を及ぼす稀な遺伝子疾患である。
【0277】
かかる実施形態では、非標準ヒト母乳様生成物は、ラクトース及び/又はラクトース含有サッカリドを除去されるべきである。かかる実施形態では、非標準ヒト母乳様生成物は、ガラクトース血症に罹患した乳児に健康な発育を提供するために使用され得る。
【0278】
一実施形態では、ラクトース及び/又はラクトース含有サッカリドが除去された非標準ヒト母乳様生成物は、酵素処理(ラクターゼ処理)のステップC)、又はステップB)から得ることができる無調整ヒト母乳様生成物の膜分画及び限外濾過のステップC)を含めることによって、本発明の方法に従って得ることもできる。
【0279】
別の実施形態では、ラクトース及び/又はラクトース含有サッカリドが除去された非標準ヒト母乳様生成物は、ステップA)においてα-ラクトアルブミン欠失hBSCを使用することによって、本発明の方法に従って得られ得る。
【0280】
フェニルケトン尿症
かかる実施形態では、非標準ヒト母乳様生成物は、フェニルケトン尿症(PKU)に罹患している乳児のニーズに適合させることができる。PKUは、フェニルアラニンをチロシンに変換するフェニルアラニンヒドロキシラーゼが存在しないこと又は機能不全であることに起因する。未処置では、脳毒性により重度の精神遅滞がもたらされる。
【0281】
かかる実施形態では、非標準ヒト母乳様生成物のフェニルアラニンは除去又は減少させるべきである。かかる実施形態では、非標準ヒト母乳様生成物は、PKUに罹患した乳児に健康な発育を提供するために使用され得る。一実施形態では、非標準ヒト母乳様生成物のフェニルアラニン含量が、かかる生成物を摂取する対象の体重1kg当たり20mg未満に維持されるように、フェニルアラニンを減少させる。
【0282】
一実施形態では、フェニルアラニンを減少させ又は除去した非標準ヒト母乳様生成物は、ステップB)から得ることができる無調整ヒト母乳様生成物の酵素処理(タンパク質加水分解)又は濾過のステップC)を含めることによって、本発明の方法に従って得ることができる。
【0283】
一実施形態では、フェニルアラニンを減少させた非標準ヒト母乳様生成物は、ステップB)から得ることができる無調整ヒト母乳様生成物の酵素処理(タンパク質加水分解)又は濾過のステップC)を含めることによって、本発明の方法に従って得ることができる。
【0284】
別の実施形態では、フェニルアラニンを減少させた非標準ヒト母乳様生成物は、本発明の方法に従って、ステップB)において、限定量又はゼロ量のフェニルアラニンを提供する培養培地を、例えば、乳清由来のグリコマクロペプチド(GMP)を含有する培養培地などを提供することによって得ることができる。
【0285】
本明細書に開示するとおりの詳細な説明の様々な態様及び実施形態は、本発明を作製及び使用する特定の方法を例示するものであり、請求項及び詳細な説明と共に考慮するにあたり、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。本発明の態様及び実施形態に由来する特徴を、本発明の同じ又は異なる態様及び実施形態に由来する更なる特徴と組み合わせてもよいことも理解されたい。
【0286】
発明を実施するための形態及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「1つの」(「a」、「an」及び「the」)には、別段の指示が文脈上明確にない限り、複数の参照物も含まれる。
【0287】
本発明の追加的な実施形態
第1の追加の実施形態では、以下が提供される。
【0288】
S1. 哺乳動物乳様生成物を製造する方法であって、
A)哺乳動物成体母乳幹細胞(mBSC)に由来するラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップ、
B)前記哺乳動物成体乳幹細胞(mBSC)に由来する前記ラクトサイトから前記哺乳動物乳様生成物を分泌するステップ、
を含む、方法。
【0289】
S2. 非標準ヒト乳様生成物を製造する方法であって、
A)ヒト成体母乳幹細胞(hBSC)に由来するラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップ、
B)前記ヒト成体母乳幹細胞(hBSC)に由来する前記ラクトサイトから前記ヒト乳様生成物を分泌するステップ、
を含み、
前記非標準ヒト乳様生成物が、タンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、コリン、ミオイノシトール、L-カルニチン、成長因子、サイトカイン、プロバイオティクス、細胞外小胞、エキソソーム由来の生物活性物質及び分泌型IgAからなる群から選択される、栄養素又は生物活性物質のうちの1つ以上を含む、
ステートメント1に記載の方法。
【0290】
S3. ステートメント1に記載のヒト乳様生成物をさらに処理して調整ヒト乳様生成物を得るステップC)を、任意選択で含む、ステートメント1又は2に記載の方法。
【0291】
S4.ステップC)が、精製ステップ、単離プロセス、抽出プロセス、分画ステップ、濃縮プロセス、酵素処理、さらなる成分の添加又はこれらの組み合わせからなる群において選択される、ステートメント3に記載の方法。
【0292】
S5.ステップA)に従う培養条件が、非標準ヒト乳様生成物を分泌することができるヒト成体母乳幹細胞(hBSC)に由来するラクトサイトを生成するように調整されている、ステートメント2~4のいずれか1つに記載の方法。
【0293】
S6.調整ヒト乳様生成物が、ステップC)下で、ステップB)の前記ヒト乳様生成物に、ステップB)において前記ラクトサイトによって分泌されない1つ以上のヒト母乳成分を添加することによって得られる、ステートメント3~5のいずれか1つに記載の方法。
【0294】
S7.前記ラクトサイトが、ステップA)下で生成される乳腺様オルガノイド構造の一部である、ステートメント1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0295】
S8.前記ヒト乳様生成物が、オリゴ糖、脂質及びタンパク質からなる群から選択される生物活性物質からなる、又は生物活性物質を含む、ステートメント1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0296】
S9.前記ヒト乳様生成物が、ラクトース、C12:0、C16:0、C18:0、C18:1 n-9、C18:2、ラクトフェリン及びアルファラクトアルブミンからなる群から選択される生体活性物質からなる、又は生物活性物質を含む、ステートメント1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0297】
S10.ステートメント2~9のいずれか1つに記載の方法に従って得ることができる、ヒト乳様生成物。
【0298】
S11.オリゴ糖、脂質及びタンパク質からなる群から選択される、生物活性物質を含む、又は生物活性物質からなる、ステートメント10に記載のヒト乳様生成物。
【0299】
S12.ラクトース、C12:0脂肪酸、C16:0脂肪酸、C18:0脂肪酸、C18:1 n-9脂肪酸、C18:2脂肪酸、ラクトフェリン及びアルファラクトアルブミンからなる群から選択される生物活性物質を含む、又は生物活性物質からなる、ステートメント11に記載のヒト乳様生成物。
【0300】
S13.治療に使用するための、ステートメント10~12のいずれか1つに記載のヒト乳様生成物。
【0301】
S14.母乳代替物としての、ステートメント10~12のいずれか1つに記載のヒト母乳様生成物の使用。
【0302】
第2の追加の実施形態では、以下が提供される。
S1. 乳腺細胞の集団を産生する方法であって、
i)骨形成タンパク質4(BMP4)を含む培養培地中でヒト母乳幹細胞(hBSC)を培養して、胚様体(EB)を生成するステップと、
ii)前記EBを成長させて、乳腺細胞の集団を生成するステップと、
を含む方法。
【0303】
S2. 前記培養ステップi)が、前記hBSCを、任意選択で少なくとも12日間、MammoCult培地及びBMP4中、三次元懸濁培養系、例えば三次元懸濁条件において培養して、それによって前記hBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含む、ステートメント1に記載の方法。
【0304】
S3. 前記成長ステップii)が、前記EBを、三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させて、ラクトサイトを生成することを含む、ステートメント1又は2に記載の方法。
【0305】
S4. 前記乳腺細胞がヒト乳腺細胞である、ステートメント1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0306】
S5. BMP4が、0日目~10日目の間、好ましくは0日目~3日目の間に前記培養培地に添加され、0日目が、前記hBSCが前記培養培地に初めて添加される時点である、ステートメント1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0307】
S6. BMP4が前記培養培地に3日間添加される、ステートメント1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0308】
S7. BMP4が、5~20ng/mL、好ましくは5ng/mL、10ng/mL又は20ng/mLの濃度で前記培養培地に添加される、ステートメント1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0309】
S8. 前記EBが、EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から任意選択で選択される、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する、ステートメント1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0310】
S9. 前記EBの1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける前記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している、ステートメント1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0311】
S10. 前記EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%以上が、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも50%が、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも15%が、MUC1及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも20%が、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、かつ/又はEBの少なくとも15%が、GATA3乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する、ステートメント1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0312】
S11. 前記EBが、TFAP2A及びTFAP2Cから任意選択で選択される、1つ以上の非神経外胚葉マーカーを発現する、ステートメント1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0313】
S12. 前記EBの1つ以上の非神経外胚葉マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける前記非神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも2倍、任意選択で少なくとも3~15倍増加している、ステートメント1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0314】
S13. 前記EBの1つ以上の非神経外胚葉マーカーの発現が、BMP4で処理されていないEBにおける前記神経外胚葉マーカーの発現レベルと比較して、少なくとも0.5倍に減少し、任意選択で、前記神経外胚葉マーカーが、PAX6、OXT2及びSOX11から選択される、ステートメント1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0315】
S14. 前記EBが、1つ以上の乳特異的生物活性マーカー、任意選択でオステオポンチン(OPN)を発現する、ステートメント1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0316】
S15. 前記EBのOPNの発現が、BMP4で処理されていないEBにおけるOPNの発現レベルと比較して、少なくとも2倍、任意選択で少なくとも4~18倍増加している、ステートメント1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0317】
S16. 前記乳腺細胞が、ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを形成する、ステートメント1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0318】
S17. 前記乳腺細胞の乳特異的生物活性マーカーの発現が、BMP4で処理されていない乳腺細胞と比較して増加しており、任意選択で、前記乳腺細胞の乳特異的生物活性マーカーの発現が、BMP4で処理されていない乳腺細胞と比較して、少なくとも2倍増加し、任意選択で、上記マーカーが、エストロゲン関連受容体α(ESRRA)、ケラチン14(KRT14)及びMUC1から選択される、ステートメント1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0319】
S18. 分化プロトコルにおけるヒト母乳幹細胞(hBSC)の乳腺前駆細胞への分化効率を増加させるための、BMP4の使用。
【0320】
S19. 哺乳動物乳様生成物を製造する方法であって、
C)ヒト母乳幹細胞(hBSC)に由来するラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップ、
D)前記ラクトサイトから前記哺乳動物乳様生成物を分泌させるステップ、
を含み、
ステップA)が、BMP4を含む培養培地中で前記hBSCを培養することを含む、方法。
【0321】
S20. ヒト乳様生成物を製造する方法であって、
ステップA)が、
i)hBSCを、BMP4を含む適切な培養培地、例えばMammoCult培地及びBMP4中で、適切な三次元培養系において、例えば三次元懸濁条件において、少なくとも12日間培養することによって、前記hBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成された前記mEB(マンモスフェア)を、適切な三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を更に含む、ステートメント19に記載の方法。
【0322】
S21. ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む、標準hBSC培地E8中、又は培地mTeSR(商標)中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、BMP4及びヘパリン及びヒドロコルチゾンが添加された、完全MammoCult培地中で10日間の前記EBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)を添加した完全EpiCultB培地中での前記mEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で前記mEB(マンモスフェア)を7日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、ステートメント20に記載の方法。
【0323】
S22. ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準hBSC培地E8中で2日間のインキュベーションによる、前記hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリン及びBMP4を添加したMammoCultB培地中で10日間の前記EBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成された前記mEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)を添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で前記mEB(マンモスフェア)を7日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、ステートメント20に記載の方法。
【0324】
S23. ステップA)が、ステートメント1~17のいずれか1つに記載の方法を含む、ステートメント19~22のいずれか1つに記載の方法。
【0325】
S24. ステートメント19~23のいずれか1つに記載の方法に従って得ることができる、ヒト乳様生成物。
【0326】
S25. 治療に使用するための、ステートメント24に記載のヒト乳様生成物。
【0327】
S26. ステートメント24に記載のヒト乳様生成物の、ヒト乳代替物、任意選択で母乳代替物としての使用。
【0328】
第3の追加の実施形態では、以下が提供される。
S1. 乳腺細胞の集団を産生する方法であって、
i)培養培地レチノイン酸(RA)中でヒト母乳幹細胞(hBSC)を培養して、胚様体(EB)を生成するステップと、
ii)前記EBを成長させて、乳腺細胞の集団を生成するステップと、
を含む方法。
【0329】
S2. 前記培養ステップi)が、前記hBSCを、任意選択で少なくとも12日間、MammoCult培地中、三次元懸濁培養系において、例えば三次元懸濁条件において培養して、それによって前記hBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含む、ステートメント1に記載の方法。
【0330】
S3. 前記成長ステップii)が、前記EBを、RAを含む三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させることを含む、ステートメント1又は2に記載の方法。
【0331】
S4. ステップii)がさらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップ:ii)及びiii):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中での前記mEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、
を含む、ステートメント3に記載の方法。
【0332】
S5. ステップii)がさらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップ:ii)及びiii):
ii)形成された前記mEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋した前記mEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、
を含む、ステートメント3に記載の方法。
【0333】
S6. 前記乳腺細胞がヒト乳腺細胞である、ステートメント1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0334】
S7. RAが、10日目~15日目の間に前記培養培地に添加され、0日目が、前記hBSCが前記培養培地に初めて添加される時点である、ステートメント1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0335】
S8. RAが、前記培養培地に5日間添加される、ステートメント1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0336】
S9. RAが、1μMの濃度で前記培養培地に添加される、ステートメント1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0337】
S10.前記EBが、EpCAM、CD49f及びMUC1から任意選択で選択される、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する、ステートメント1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0338】
S11.前記EBの1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、RAで処理されていないEBにおける前記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している、ステートメント1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0339】
S12.前記EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、又は50%以上が、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも40%が、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも10%が、MUC1及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、かつ/又は任意選択で、EBの少なくとも15%が、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する、ステートメント1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0340】
S13.前記EBが、RAで処理されていないEBと比較して増加した細胞生存率を有する、ステートメント1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0341】
S14.前記EBが、少なくとも85%以上、好ましくは95%以上の生存率を有する、ステートメント1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0342】
S15.前記乳腺細胞が、ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを形成する、ステートメント1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0343】
S16. 分化プロトコルにおけるヒト母乳幹細胞(hBSC)の乳腺前駆細胞への分化効率を増加させるための、RAの使用。
【0344】
S17. 哺乳動物乳様生成物を製造する方法であって、
A)ヒト母乳幹細胞(hBSC)に由来するラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップ、
B)前記ラクトサイトから前記哺乳動物乳様生成物を分泌させるステップ、を含み、
ステップA)が、RAを含む培養培地中で前記hBSを培養することを含む、方法。
【0345】
S18. ヒト乳様生成物を製造する方法であって、
ステップA)が、
i)hBSCを、適切な培養培地、例えばMammoCult培地中で、適切な三次元培養系において、例えば三次元懸濁条件において、少なくとも12日間培養することによって、前記hBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成された前記mEB(マンモスフェア)を、RAを含む適切な三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質とRAとから構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を更に含む、ステートメント16に記載の方法。
【0346】
S19. ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準hBSC培地E8中、又は培地mTeSR(商標)中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、ヘパリン及びヒドロコルチゾンが添加された、完全MammoCult培地中で10日間の前記EBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中での前記mEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で前記mEB(マンモスフェア)を7日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、ステートメント18に記載の方法。
【0347】
S20. ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準hBSC培地E8中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリンを添加したMammoCultB培地中で10日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成された前記mEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋した前記mEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で前記mEB(マンモスフェア)を7日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、ステートメント18に記載の方法。
【0348】
S21. ステップA)が、ステートメント1~15のいずれか1つに記載の方法を含む、ステートメント17~20のいずれか1つに記載の方法。
【0349】
S22. ステートメント17~20のいずれか1つに記載の方法に従って得ることができる、ヒト乳様生成物。
【0350】
S23. 治療に使用するための、ステートメント22に記載のヒト乳様生成物。
【0351】
S24. ステートメント22に記載のヒト乳様生成物の、ヒト乳代替物、任意選択で母乳代替物としての使用。
【0352】
第4の追加の実施形態では、以下が提供される。
S1. 乳腺細胞の集団を産生する方法であって、
i)骨形成タンパク質4(BMP4)及び/又はレチノイン酸(RA)を含む培養培地中で哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)を培養して、胚様体(EB)を生成するステップと、
ii)前記EBを成長させて、乳腺細胞の集団を生成するステップと、
を含む方法。
【0353】
S2. 前記培養培地が、骨形成タンパク質4(BMP4)及びレチノイン酸(RA)を含む、ステートメント1に記載の方法。
【0354】
S3. 培養ステップi)が、前記mBSCを、任意選択で少なくとも12日間、MammoCult培地及びBMP4中、三次元懸濁培養系において、例えば三次元懸濁条件において培養して、それによって前記hBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含む、ステートメント1又は2に記載の方法。
【0355】
S4. 前記培養ステップi)が、前記hBSCを、任意選択で8日間以下、MammoCult培地及びBMP4中、三次元懸濁培養系において、例えば三次元懸濁条件において培養して、それによって前記mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含む、ステートメント2に記載の方法。
【0356】
S5. 前記成長ステップii)が、形成された前記EBを、RAを含む三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させて、ラクトサイトを生成することを含む、ステートメント1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0357】
S6. 前記成長ステップii)が、形成された前記EBを、RAを含む三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル中で、25日間以下成長させて、ラクトサイトを生成することを含む、ステートメント2又は4に記載の方法。
【0358】
S7. ステップii)がさらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップ:ii)及びiii):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中での前記mEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で前記mEB(マンモスフェア)を20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、
を含む、ステートメント5に記載の方法。
【0359】
S8. ステップii)がさらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップ:ii)及びiii):
ii)形成された前記mEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋した前記mEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で15日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、
を含む、ステートメント6に記載の方法。
【0360】
S9. 前記乳腺細胞がヒト乳腺細胞である、ステートメント1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0361】
S10. BMP4が、0日目~10日目の間、好ましくは0日目~3日目の間に前記培養培地に添加され、0日目が、前記hBSCが前記培養培地に初めて添加される時点である、ステートメント1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0362】
S11. BMP4が、前記培養培地に3日間添加される、ステートメント1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0363】
S12. RAが、10日目~15日目の間、任意選択で6日目~11日目の間に前記培養培地に添加され、0日目が、前記hBSCが前記培養培地に初めて添加される時点である、ステートメント1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0364】
S13. RAが、前記培養培地に5日間添加される、ステートメント1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0365】
S14. BMP4が、5~20ng/mL、好ましくは5ng/mL、10ng/mL又は20ng/mLの濃度で前記培養培地に添加される、ステートメント1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0366】
S15. RAが、1μMの濃度で前記培養培地に添加される、ステートメント1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0367】
S16. 前記EBが、任意選択でEpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から選択される1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する、ステートメント1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0368】
S17. 前記EBの1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、BMP4及びRAで処理されていないEBにおける上記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している、ステートメント2~15のいずれか1つに記載の方法。
【0369】
S18. 前記EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%以上が、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも35%が、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも15%が、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、かつ/又は任意選択で、EBの少なくとも20%が、EpCAM及びGATA3乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する、ステートメント1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0370】
S19. 前記EBが、1つ以上の乳特異的生物活性マーカー、任意選択でオステオポンチン(OPN)を発現する、ステートメント1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0371】
S20. 前記EBの1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの発現が増加しており、任意選択でオステオポンチン(OPN)の発現が増加している、ステートメント1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0372】
S21. 前記EBにおける1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの分泌が増加されており、任意選択でオステオポンチン(OPN)の分泌が増加されている、ステートメント1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0373】
S22. 前記乳腺細胞が、ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを形成する、ステートメント1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0374】
S23. 分化プロトコルにおける哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)の乳腺前駆細胞への分化効率を増加させるための、BMP4及び/又はRAの使用。
S24. 哺乳動物乳様生成物を製造する方法であって、
A)哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)に由来するラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップ、
B)前記ラクトサイトから前記哺乳動物乳様生成物を分泌させるステップ、を含み、
ステップA)が、BMP4及び/又はRAを含む培養培地中で前記hBSCを培養することを含む、方法。
【0375】
S25. 前記培養培地が、骨形成タンパク質4(BMP4)及びレチノイン酸(RA)を含む、ステートメント24に記載の方法。
【0376】
S26. ステップA)が、30日~45日の間の工程、任意選択で45日未満の工程、任意選択で44日未満の工程、任意選択で35日未満の工程、任意選択で31日未満の工程である、ステートメント24又は25に記載の方法。
S27. ヒト乳様生成物を製造する方法であって、
ステップA)が、
i)前記mBSCを、BMP4を含む適切な培養培地、例えばMammoCult培地及びBMP4中で、適切な三次元培養系において、例えば三次元懸濁条件において、少なくとも12日間培養することによって前記mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成された前記mEB(マンモスフェア)を、RAを含む適切な三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質とRAとから構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を更に含む、ステートメント24~26のいずれか1つに記載の方法。
【0377】
S28. ヒト乳代替生成物を製造する方法であって、
ステップA)が、
i)前記mBSCを、BMP4を含む適切な培養培地、例えばMammoCult培地及びBMP4中で、適切な三次元培養系において、例えば三次元懸濁条件において、8日間以下培養することによって、前記mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成された前記mEB(マンモスフェア)を、RAを含む適切な三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質とRAとから構成される混合浮遊ゲル中で25日間以下成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を更に含む、ステートメント25又は26に記載の方法。
【0378】
S29. ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中、又は培地mTeSR(商標)中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、BMP4及びヘパリン及びヒドロコルチゾンが添加された、完全MammoCult培地中で10日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中での前記mEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で前記mEB(マンモスフェア)を20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で前記mEB(マンモスフェア)を7日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、ステートメント27に記載の方法。
【0379】
S30. ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中、又は培地mTeSR(商標)中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、BMP4及びヘパリン及びヒドロコルチゾンが添加された、完全MammoCult培地中で6日間の前記EBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中での前記mEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を15日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で前記mEB(マンモスフェア)を5日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、ステートメント28に記載の方法。
【0380】
S31. ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリン及びBMP4を添加したMammoCultB培地中で10日間の前記EBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成された前記mEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋した前記mEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で前記mEB(マンモスフェア)を7日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、ステートメント27に記載の方法。
【0381】
S32. ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリン及びBMP4を添加したMammoCultB培地中で6日間の前記EBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成された前記mEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋した前記mEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で15日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中で前記mEB(マンモスフェア)を5日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、ステートメント28に記載の方法。
【0382】
S33. ステップA)が、ステートメント1~22のいずれか1つに記載の方法を含む、ステートメント24~32のいずれか1つに記載の方法。
【0383】
S34. ステップA)が三次元懸濁培養条件で行われる、ステートメント24~26及び33に記載の方法。
【0384】
S35. ステートメント24~34のいずれか1つに記載の方法に従って得ることができる、ヒト乳様生成物。
【0385】
S36. 治療に使用するための、ステートメント35に記載のヒト乳様生成物。
【0386】
S37. ステートメント35に記載のヒト乳様生成物の、ヒト乳代替物、任意選択で母乳代替物としての使用。
【0387】
本明細書で述べる現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。このような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、並びに本発明の付随する利点を減らすことなく、なされてもよい。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【0388】
実験
実施例1
hBSCの培養及びhBSCからラクトサイトへの分化
本発明者らの目的は、ドナーから採取したヒト母乳細胞からhBSCを単離し、乳腺分化条件(Hassiotou F. et al. Stem Cells. 2012に記載の条件)下で、その分化中に分析用の上清を採取し、分泌された栄養素に基づいてラクトサイトの機能性を実証することである。
【0389】
材料
献乳試料
インフォームドコンセントへの署名後に得られた献乳を、搾乳から3時間以内に使用した。
【0390】
スフェロイド形成培地の配合
500mLのMammoCult培地キットに、3%ペニシリン・ストレプトマイシン及び2μL/mLフンギゾンを添加した(表1)。
【0391】
【0392】
乳腺分化培地の配合
L-グルタミンを含む500mLのRPMI 1640に、20%FBS、4μg/mLのインスリン、20ng/mLのEGF、0.5μg/mLのヒドロコルチゾン、5%ペニシリン・ストレプトマイシン、及び2μL/mLのフンギゾンを添加した(表2)。
【0393】
【0394】
実験計画
1.1 ヒト母乳細胞(hBMC)の単離
・各献乳をPBS(リン酸緩衝食塩水)で希釈し(1:1)、遠心分離した(20℃で800×g、20分間)。
・脂肪層及び液体部分のスキムミルクを除去し、細胞ペレットをPBS中で3回洗浄した(20℃で300×g、5分間)。
・細胞生存率はフローサイトメトリーによって評価した
【0395】
1.2 胚性幹細胞マーカーによるヒト母乳細胞(hBMC)の染色
各献乳から100μLのhBMCの試料を生存率について染色し、及び胚性幹細胞マーカーに対する抗体で染色した(各抗体製造業者の指示に従った)。
【0396】
【0397】
・細胞をFACS(LSRII、5つのレーザーを有する新しい細胞分析装置、Becton Dickinson)によって解析した。
【0398】
1.3 スフェロイドとしてのhBMCの培養
・各献乳からのhBMCの残りを、超低接着6ウェルプレート(Corning)内のスフェロイド形成培地(3mL/ウェル)(表1を参照されたい)中で、37℃、5%CO 2にて培養した。
【0399】
1.4 乳腺分化条件下でのhBMCの培養(3~4週間)及び上清回収
・初代hBMCスフェロイドを、各献乳につき1~3ウェル(1ウェル当たり1mLの培地)で、37℃、5%CO2にて、組織培養用24ウェルプレート(Corning)の乳腺分化培地中で4週間インキュベーションした(表2を参照されたい)。スフェロイドを回収し、遠心分離した(300g、5分)。培地を廃棄し、1mLのトリプシンを5分間添加した。その後、細胞を遠心分離し、トリプシンを除去し、1mLの乳腺培地を細胞に添加した。
・毎週、上清を各ウェルから回収し、(-20±5℃)で保存した。
・新鮮な乳腺分化培地を各ウェルに添加した。
【0400】
1.5 ELISAによるα-ラクトアルブミン及びラクトフェリン検出
各ELISAキットの製造業者の指示に従って、α-ラクトアルブミン(Cloud clone、カタログ番号SEB018Hu)及びラクトフェリン(Cloud clone、カタログ番号SEA780Hu)について、上清をELISAで解析した。
【0401】
結果
フローサイトメトリー:
表4に報告するように、3名のドナー全てのhBMCが、5つのマーカーの全てを発現した。
【0402】
TRA-1-160の発現が最も高く、全ての生存細胞で23.5%~33.4%であった。SSEA4、SOX2、及びNANOGは、より広い発現範囲を有し、全ての生存細胞で、それぞれ2.5%~21%、6.2%~22.1%、及び0.9%~22.2%であった。OCT4発現は最も低く、全ての生存細胞で、0.1%~2.7%であった。
【0403】
【0404】
1.6 培養物の外観:
低接着プレート内のmammocult培地中で1週間後、hBMCはスフェロイドを形成した。細胞が乳腺培地中の培養プレートに播種されると、その一部は表面に付着し、乳腺様の形態を示す。
【0405】
1.7 ELISA:
各ドナーについて、1週間培養後の乳腺培地中のhBMC培養物によるラクトフェリン及びα-ラクトアルブミン分泌のELISA結果を、以下の表7に報告する。
【0406】
【0407】
まとめ及び結論
・hBMCは様々なレベルの胚性幹細胞マーカーを発現しており、様々な細胞系列に分化することができる胚性幹細胞の存在が確認された。
・乳腺分化条件下で、これらの胚性幹細胞の一部は乳腺様の形態を獲得し、この形態は約2週間維持された。
【0408】
したがって、本研究の条件下で、乳腺様細胞は分化を示し、かつ培養することができた。
【0409】
実施例2
ラクトサイトによって分泌された脂質の分析
方法:上記の手順1.4下で1週目及び2週目に得られた上清を分析して、ラクトサイトによって分泌される複数種の脂質クラスに含まれる、脂肪酸の存在を調査する。溶融シリカCP-Sil 88キャピラリーカラム(100%シアノプロピルポリシロキサン、100 m、内径0.25mm、フィルム厚0.25mm)を備えた分取ステーションモジュールを有する7693オートサンプラーを備えた7890Aガスクロマトグラフを、250℃で加熱されたスプリットインジェクター(1:25比)、及び300℃で操作される水素炎イオン化検出器と共に使用する。
【0410】
FAME(脂肪酸メチルエステル)の調製は、メタノール性塩酸(methanolic chloridric acid)による試料の直接エステル交換によって行われる。FAMEの分離は、キャピラリーガスクロマトグラフィー・FID(GC)を使用して行われる。
【0411】
FAMEの同定は、保持時間(RT)及び外部標準との比較によって行われる。FAの定量は、内部標準としてメチルC11:0を使用した計算によって行われる。本方法のエステル交換性能は、第2の内部標準としてTAG C13:0を用いて制御される。
【0412】
・10mLのスクリューキャップ付ガラス試験管に250mLの上清試料を添加する。
・300mLの内部標準FAME C11:0溶液を添加する。
・300mLの内部標準TAG C13:0溶液を添加する。
・2mLのメタノールを添加する。
・2mLのメタノール/HCl(3N)を添加する。
・1mLのヘキサンを添加する。
・試験管にしっかりと蓋をして、激しく振とうする。
・100℃/60分で加熱し、時々振とうする。
・室温まで自然冷却する(約15分)。
・2mLの水を加える。
・1200gで5分間遠心分離する。
・ヘキサン相(上相)を、ガラスウール及び無水硫酸ナトリウムを含有するパスツールピペットを通して、清浄な空のGCバイアルへと濾過する。
【0413】
結果:1週目及び2週目についてそれぞれ表5、
図1及び表6、
図2に報告するように、分析は脂肪酸の存在を明らかにしており、ラクトサイトによる脂質産生機能を示す。
【0414】
【0415】
【0416】
実施例3
上清中のタンパク質の分析
方法:1.4に上述したように1週目に得られた上清試料中のタンパク質の同定を、Dzieciatkowskaらが記載した手順に従って行った(Dzieciatkowska M.,Hill R,and Hansen KC,Methods Mol Biol.2014;1156:53-66;GeLC-MS/MS Analysis of Complex Protein Mixtures)。簡潔に述べると、培養上清中のタンパク質を一次元SDS-PAGE解析によって分離した。タンパク質染色後、検出されたタンパク質バンドを切り出し、ゲル内消化し、続いて放出されたペプチドをLC-MS/MS分析によって分離及び検出した。MSスペクトルを、Mascot(Matrix Science)を使用したタンパク質データベース検索によってさらに処理した。厳しいフィルター基準を適用し(ペプチド質量許容差:5ppm;セミトリプシン切断;偽発見率(FDR):1%;ケラチン汚染排除)、上清の高バックグラウンドのウシタンパク質(培養培地中のウシ胎児血清の存在に起因する)中のヒトタンパク質を検出した。
【0417】
結果:異なる3つのヒト乳タンパク質、すなわち、α-2-マクログロブリン、インターα-トリプシン阻害剤重鎖H2及びラクトフェリンが、この解析において同定された。例えば、ヒトラクトフェリンは、対比する相同なウシラクトフェリンペプチドと特異的に異なる14個のペプチドのマッチングにより同定された。ヒト及びウシのラクトフェリン由来のペプチドの、タンデムMSペプチドスペクトルのマッチについての2つの例を、以下の
図3及び
図4に示す。これらの結果は、hBMC培養物の上清中にヒト乳タンパク質、例えばラクトフェリンが存在することを確定する。
【0418】
実施例4
上清中の炭水化物の分析
方法:1.4で上述したように1週目、2週目及び3週目に得られた上清試料を、AustinとBenetがヒト乳について記載した手順に従って、ラクトース又はヒト乳オリゴ糖の存在について分析した[Austin,S.;Benet,T.Quantitative determination of non-lactose milk oligosaccharides.Analytica Chimica Acta 2018,1010,86-96]。簡潔に述べると、初代細胞上清のアリコートをラミナリトリオースの溶液と混合した後、2-アミノベンズアミドで標識した。標識後、試料をUHPLCで分析し、検出されたラクトース又はオリゴ糖を、等モルの応答因子を仮定したマルトトリオースの検量線に対して定量した。
結果を
図5に報告する。
【0419】
結果:ラクトースは、分化の1週目、2週目及び3週目に初代細胞上清中に10~25mg/Lの様々な濃度で見出された。
【0420】
実施例5
三次元オルガノイドの設定を使用した人工多能性幹細胞(iPSC)の非神経外胚葉系列分化に対する骨形成タンパク質4(BMP4)の効果
方法:ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)株603を、Fujifilm Cellular Dynamics,Inc(FCDI)から購入し、乳腺前駆細胞の三次元分化のために使用した。簡潔に述べると、550万個の解離したiPSCを、4.5mLの凝集培地を含有する6ウェルプレート(超低接着)に、平面状シェーカープラットフォーム(95RPMに設定)を使用して播種した。0日目~3日目の間に、様々な濃度のBMP4(314-BP-050、Bio-Techne AG)を培養培地に添加した。
【0421】
結果:様々な濃度のBMP4でiPSC細胞を試験して、非神経外胚葉分化を誘導した(
図6のa、b)。フローサイトメトリーによる定量によると、20ng/mLのBMP4は、EpCAM(CD326)、CD49f、MUC1(CD227)及びGATA3などの乳腺前駆体マーカーの発現を有意に誘導した(
図6のc~f)。Nanostring解析によると、主要な非神経外胚葉マーカーとしてのヒトTFAP2A及びTFAP2C(AP2ガンマ)の発現は、分化の10日目に対照試料と比較して増加した(
図6のg~h)。さらに、ペアードボックス遺伝子6(PAX6)、オルソデンティクルホメオボックス2(OTX2)及びSRYボックス転写因子11(SOX11)などのヒト特異的神経外胚葉マーカーの発現レベルは、分化中に減少した(
図6のi~k)。最後に、BMP4は、ヒト管腔特異的マーカーのサイトケラチン18(KRT18)及び分泌型リン酸化乳糖タンパク質オステオポンチン(OPN)の発現を誘導することができる(
図6のl~m)。
【0422】
より詳細には、
図6は、三次元オルガノイド設定を使用した人工多能性幹細胞(iPSC)の非神経外胚葉系列分化に対する骨形成タンパク質4(BMP4)の効果を示す。a.乳腺前駆体の生成及び0日目~3日目の間のBMP4処理の手順を要約したスキーム。b.異なる濃度のBMP4への曝露後の形態変化の顕微鏡観察。c~f、同定された様々なマーカー:EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3を使用した、乳腺陽性前駆細胞数のフローサイトメトリーによる定量。g~h.主要な非神経外胚葉マーカーとしてのヒトTFAP2A及びTFAP2CのRNA発現レベル。i~k.神経外胚葉マーカーとしてのヒトPAX6、OTX2及びSOX11。l.管腔マーカーとしてのヒトKRT18。m.分泌型リン酸化乳糖タンパク質としてのヒトOPN。
【0423】
より詳細には、
図7は、乳腺三次元分化の30日目~35日目の間のエストロゲン関連受容体アルファ(ESRRA)、ケラチン14(KRT14)及びMUC1のRNA発現レベルに対する骨形成タンパク質4(BMP4)の効果を示す。
【0424】
これらの結果は、BMP4が幹細胞の運命決定を非神経外胚葉系列へと誘導し、驚くべきことに、乳腺前駆細胞の特異化を有意に増加させることを実証する。
【0425】
実施例6
エストロゲン関連受容体アルファ(ESRRA)、ケラチン14(KRT14)及びMUC1の発現プロファイルを使用して、iPSC細胞の三次元乳腺分化の最終段階におけるBMP4の効果を評価した。驚くべきことに、BMP4は、対照試料と比較して、30日目、33日目及び35日目に全ての遺伝子のRNA発現レベルを増加させた(
図7)。
【0426】
これらの結果は、BMP4が、幹細胞の分化に由来する乳腺細胞における乳生物活性の発現を有意に増加させることを実証する。
【0427】
実施例7
三次元オルガノイド設定を用いた人工多能性幹細胞(iPSC)の乳腺特異的系列分化に対するレチノイン酸(RA)、ウシ血清アルブミン(BSA)及びウシ胎仔血清(FBS)の効果
方法:ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)株603をFujifilm Cellular Dynamics,Inc(FCDI)から購入し、乳腺前駆細胞の三次元分化のために使用した。簡潔に述べると、550万個の解離したiPSCを、4.5mLの凝集培地を含有する6ウェルプレート(超低接着)に、平面状シェーカープラットフォーム(95RPMに設定)を使用して播種した。RA(1uM、10552611、Fisher Scientific)、BSA(5%、A7030-50G、Sigma-Aldrich)及びFBS(5%、10270106、Gibco)10日目~15日目の間。
【0428】
結果:レチノイン酸(RA)、ウシ血清アルブミン(BSA)及びウシ胎仔血清(FBS)の効果を、非神経外胚葉特異化に続く、iPSCの乳腺上皮系列への分化において試験した。RA誘導オルガノイドは、スフェロイド形状から、ヒト乳腺における肺胞形成を模倣し得る出芽オルガノイドへの形態の移行を示す(
図8のb)。前駆細胞生存率は、BSA及びFBSと比較してRA条件で有意に高い(
図8のc)。RA処理後の乳腺前駆細胞数のフローサイトメトリーによる定量から、EPCAM(CD326)、CD49f及びMUC1(CD227)の発現レベルの有意な増加が明らかになった(
図8のd~f)。
【0429】
より詳細には、
図8は、三次元オルガノイド設定を用いた人工多能性幹細胞(iPSC)の乳腺特異的系列分化に対するレチノイン酸(RA)、ウシ血清アルブミン(BSA)及びウシ胎仔血清(FBS)の効果を示す。a.乳腺前駆体の生成並びに10日目~15日目の間のRA、BSA及びFBSの適用の手順を要約したスキーム。b.RA、BSA及びFBSへの曝露後の形態変化の顕微鏡観察。c.カルセインAM及びエチジウムホモダイマー1をベースとした、様々な条件下の細胞生存率のフローサイトメトリー評価。d~f.上皮マーカー:EpCAM、CD49f及びMUC1を使用した乳腺前駆細胞数のフローサイトメトリーによる定量。
【0430】
結果として、RAは、乳腺オルガノイド発生の初期段階において上皮前駆細胞分化を増進することができる。
【0431】
実施例8
ヒト母乳中に見られるものに非常に似た乳生物活性を生成するために、骨形成タンパク質4(BMP4)及びレチノイン酸(RA)を、42日間と期間短縮プロトコルとしての31日間とで使用する、異なる方法を、ヒト乳腺の生体模倣モデルとしてiPSC由来乳腺オルガノイドを使用する三次元プラットフォームにおいて確立した(
図9)。
【0432】
20ng/mLのBMP4及び1μMのRAを単一フォーマット又は組み合わせフォーマットで使用した、42日プロトコル及び期間短縮プロトコル(31日
*-
*は、BMP4とRAとの組み合わせを含む期間短縮した改変プロトコル(31日)を示す)において、フローサイトメトリー定量を使用したところ、三次元培養したiPSC細胞は、対照条件と比較して、EpCAM(CD326)、CD49f、MUC1(CD227)及びGATA3などの乳腺前駆体マーカーの発現を誘導することができる、又は分化時間及び/又は誘導前段階(
図9のa~c)及び誘導後期間(
図9のd~f)の間、これらの発現プロファイルを維持することができる。
【0433】
より詳細には、
図9は三次元オルガノイドモデルを使用した人工多能性幹細胞(iPSC)の乳腺分化に対する骨形成タンパク質4(BMP4)とレチノイン酸(RA)との組み合わせ効果を示す。a~c.分化期間(25日目(対照プロトコルの場合)及び20日目(期間短縮プロトコルの場合))及び誘導前段階(35日目(BMP4及びRAを含む対照プロトコルの場合)、及び26日目(期間短縮プロトコルの場合))中に同定された数種のマーカー:EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3を使用した乳腺陽性前駆細胞数のフローサイトメトリーによる定量、d~f.誘導後期間(42日目(BMP4及びRAを含む対照プロトコルの場合)及び31日目(期間短縮プロトコルの場合)。
*は、BMP4とRAとの組み合わせを含む短縮された改変プロトコル(31日)を表す。
【0434】
LC-MS/MSにより、ヒトオステオポンチンペプチド-GDSVVYGLR及び-YPDAVATWLNPDPSQKが、細胞培養上清中に特異的に検出された(
図10)。
【0435】
より詳細には、
図10は、オステオポンチンタンパク質の分泌の、液体クロマトグラフィー・質量分析(LC-MS/MS)ベースでのターゲットプロテオミクス解析を示す。オステオポンチンタンパク質の分泌は、対照とする分化方法の使用により、又は骨形成タンパク質4(BMP4)、レチノイン酸(RA)を用いることで、及びこの2つの因子の組み合わせにより、iPS由来乳腺細胞の培養物の培地中に検出された。
【0436】
これらの結果は、BMP4とRAとの組み合わせが、幹細胞の分化に由来する乳腺細胞における乳腺前駆体マーカー及び乳生物活性の発現及び分泌を有意に増加させることを実証する。
【0437】
本明細書で述べる現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。このような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、並びに本発明の付随する利点を減らすことなく、なされてもよい。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)骨形成タンパク質4(BMP4)及び/又はレチノイン酸(RA)を含む培養培地中で哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)を培養して、胚様体(EB)を生成するステップと、
ii)前記EBを成長させて、乳腺細胞の集団を生成するステップと、
を含む、乳腺細胞の集団を産生する方法。
【請求項2】
前記培養培地が、骨形成タンパク質4(BMP4)及びレチノイン酸(RA)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養ステップi)が、前記mBSCを、任意選択で少なくとも12日間、MammoCult培地及びBMP4中、三次元懸濁培養系におい
て培養して、それによって
前記mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記培養ステップi)が、
前記mBSCを、任意選択で8日間以下、MammoCult培地及びBMP4中、三次元懸濁培養系におい
て培養して、それによって前記mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記成長ステップii)が、形成された前記EBを、RAを含む三次元包埋
系中で、少なくとも30日
間成長させて、ラクトサイトを生成することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記成長ステップii)が、形成された前記EBを、RAを含む三次元包埋
系中で、25日間以下成長させて、ラクトサイトを生成することを含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項7】
ステップii)が、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップ:ii)及びiii):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ステップii)が、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップ:ii)及びiii):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で15日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記乳腺細胞が、ヒト乳腺細胞である、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
BMP4が、0日目~10日目の
間に前記培養培地に添加され、0日目が、前記
mBSCが前記培養培地に初めて添加される時点である、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
BMP4が前記培養培地に3日間添加される、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
RAが、10日目~15日目の間、任意選択で6日目~11日目の間に前記培養培地に添加され、0日目が、前記
mBSCが前記培養培地に初めて添加される時点である、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
RAが、前記培養培地に5日間添加される、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
BMP4が、5~20ng/m
Lの濃度で前記培養培地に添加される、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
RAが、1μMの濃度で前記培養培地に添加される、請求項
1に記載の方法。
【請求項16】
前記EBが、EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から任意で選択される、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する、請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
前記EBの1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、BMP4及びRAで処理されていないEBにおける前記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している、請求項
2に記載の方法。
【請求項18】
前記EBの少なくとも10
%が、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも35%が、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも15%が、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、かつ/又は任意選択で、EBの少なくとも20%が、EpCAM及びGATA3乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する、請求項
1に記載の方法。
【請求項19】
前記EBが、1つ以上の乳特異的生物活性マーカー、任意選択でオステオポンチン(OPN)を
、発現する
か、
その発現が増加しているか、又はその分泌が増加している、請求項
1に記載の方法。
【請求項20】
前記乳腺細胞が、ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを形成する、請求項
1に記載の方法。
【請求項21】
分化プロトコルにおける哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)の乳腺前駆細胞への分化効率を増加させるための、
骨形成タンパク質4(BMP4
)及び/又は
レチノイン酸(RA
)を含む組成物。
【請求項22】
哺乳動物
の乳様生成物を製造する方法であって、
A)哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)に由来するラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップ、
B)前記ラクトサイトから哺乳動物乳様生成物を分泌させるステップ、
を含み、
ステップA)が、
骨形成タンパク質4(BMP4
)及び/又は
レチノイン酸(RA
)を含む培養培地中で
前記mBSCを培養することを含む、方法。
【請求項23】
前記培養培地が
、BMP
4及びRAを含む、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
ステップA)が、30日~45日の工
程である、請求項
22に記載の方法。
【請求項25】
ヒト乳様生成物を製造する方法であって、
ステップA)が、
i)mBSCを、BMP4を含む適切な培養培
地中で、適切な三次元培養系において
、少なくとも12日間培養することによって、mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、RAを含む適切な三次元包埋
系中で、少なくとも30日
間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を更に含む、請求項
22に記載の方法。
【請求項26】
ヒト乳
様生成物を製造する方法であって、
ステップA)が、
i)mBSCを、BMP4を含む適切な培養培
地中で、適切な三次元培養系において
、8日間以下培養することによって、mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、RAを含む適切な三次元包埋
系中で25日間以下成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を更に含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項27】
ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO
3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中、又は培地mTeSR(商標)中で2日間のインキュベーションによる、
mBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、BMP4及びヘパリン及びヒドロコルチゾンが添加された、完全MammoCult培地中で10日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を7日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項28】
ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO
3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中、又は培地mTeSR(商標)中で2日間のインキュベーションによる、
mBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、BMP4及びヘパリン及びヒドロコルチゾンが添加された、完全MammoCult培地中で6日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を15日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン、プロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を5日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、請求項
26に記載の方法。
【請求項29】
ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO
3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中で2日間のインキュベーションによる、
mBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリン及びBMP4を添加したMammoCultB培地中で10日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を7日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項30】
ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO
3及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中で2日間のインキュベーションによる、
mBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリン及びBMP4を添加したMammoCultB培地中で6日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で15日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を5日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、請求項
26に記載の方法。
【請求項31】
請求項22~30のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる、ヒト乳様生成物。
【請求項32】
哺乳動物の乳様生成物を製造する方法であって、
A)哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)に由来するラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップ、
B)前記ラクトサイトから哺乳動物の乳様生成物を分泌させるステップ、
を含み、
ステップA)が、骨形成タンパク質4(BMP4)及び/又はレチノイン酸(RA)を含む培養培地中で前記mBSCを培養することを含み、かつ、ステップA)が、請求項1~
20のいずれか一項に記載の方法を含む、
哺乳動物の乳様生成物を製造する方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法に従って得ることができる、ヒト乳様生成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0437
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0437】
本明細書で述べる現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。このような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、並びに本発明の付随する利点を減らすことなく、なされてもよい。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
本発明は以下の態様であってもよい。
項目1
i)骨形成タンパク質4(BMP4)及び/又はレチノイン酸(RA)を含む培養培地中で哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)を培養して、胚様体(EB)を生成するステップと、
ii)前記EBを成長させて、乳腺細胞の集団を生成するステップと、
を含む、乳腺細胞の集団を産生する方法。
項目2
前記培養培地が、骨形成タンパク質4(BMP4)及びレチノイン酸(RA)を含む、項目1に記載の方法。
項目3
前記培養ステップi)が、前記mBSCを、任意選択で少なくとも12日間、MammoCult培地及びBMP4中、三次元懸濁培養系において、例えば三次元懸濁条件において、培養して、それによってhBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含む、項目1又は2に記載の方法。
項目4
前記培養ステップi)が、hBSCを、任意選択で8日間以下、MammoCult培地及びBMP4中、三次元懸濁培養系において、例えば三次元懸濁条件において培養して、それによって前記mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させることを含む、項目2に記載の方法。
項目5
前記成長ステップii)が、形成された前記EBを、RAを含む三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させて、ラクトサイトを生成することを含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
項目6
前記成長ステップii)が、形成された前記EBを、RAを含む三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質から構成される混合浮遊ゲル中で、25日間以下成長させて、ラクトサイトを生成することを含む、項目2又は4に記載の方法。
項目7
ステップii)が、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップ:ii)及びiii):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、
を含む、項目5に記載の方法。
項目8
ステップii)が、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップ:ii)及びiii):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で15日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、
を含む、項目6に記載の方法。
項目9
前記乳腺細胞が、ヒト乳腺細胞である、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
項目10
BMP4が、0日目~10日目の間、好ましくは0日目~3日目の間に前記培養培地に添加され、0日目が、前記hBSCが前記培養培地に初めて添加される時点である、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
項目11
BMP4が前記培養培地に3日間添加される、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
項目12
RAが、10日目~15日目の間、任意選択で6日目~11日目の間に前記培養培地に添加され、0日目が、前記hBSCが前記培養培地に初めて添加される時点である、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
項目13
RAが、前記培養培地に5日間添加される、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
項目14
BMP4が、5~20ng/mL、好ましくは5ng/mL、10ng/mL又は20ng/mLの濃度で前記培養培地に添加される、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
項目15
RAが、1μMの濃度で前記培養培地に添加される、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
項目16
前記EBが、EpCAM、CD49f、MUC1及びGATA3から任意選択で選択される、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
項目17
前記EBの1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現が、BMP4及びRAで処理されていないEBにおける前記乳腺陽性前駆細胞マーカーの発現レベルと比較して、増加している、項目2~15のいずれか一項に記載の方法。
項目18
前記EBの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%以上が、1つ以上の乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも35%が、EpCAM及びCD49f乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、任意選択で、EBの少なくとも15%が、MUC1及びEpCAM乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現し、かつ/又は任意選択で、EBの少なくとも20%が、EpCAM及びGATA3乳腺陽性前駆細胞マーカーを発現する、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
項目19
前記EBが、1つ以上の乳特異的生物活性マーカー、任意選択でオステオポンチン(OPN)を発現する、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
項目20
前記EBの1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの発現が増加されており、任意選択でオステオポンチン(OPN)の発現が増加されている、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
項目21
前記EBの1つ以上の乳特異的生物活性マーカーの分泌が増加されており、任意選択でオステオポンチン(OPN)の分泌が増加されている、項目1~20のいずれか一項に記載の方法。
項目22
前記乳腺細胞が、ラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを形成する、項目1~21のいずれか一項に記載の方法。
項目23
分化プロトコルにおける哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)の乳腺前駆細胞への分化効率を増加させるための、BMP4及び/又はRAの使用。
項目24
哺乳動物乳様生成物を製造する方法であって、
C)哺乳動物母乳幹細胞(mBSC)に由来するラクトサイト乳腺様腺オルガノイドを生成するステップ、
D)前記ラクトサイトから哺乳動物乳様生成物を分泌させるステップ、
を含み、
ステップA)が、BMP4及び/又はRAを含む培養培地中でhBSCを培養することを含む、方法。
項目25
前記培養培地が、骨形成タンパク質4(BMP4)及びレチノイン酸(RA)を含む、項目24に記載の方法。
項目26
ステップA)が、30日~45日の工程、任意選択で45日未満の工程、任意選択で44日未満の工程、任意選択で35日未満の工程、任意選択で31日未満の工程である、項目24又は25に記載の方法。
項目27
ヒト乳様生成物を製造する方法であって、
ステップA)が、
i)mBSCを、BMP4を含む適切な培養培地、例えばMammoCult培地及びBMP4中で、適切な三次元培養系において、例えば三次元懸濁条件において、少なくとも12日間培養することによって、mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、RAを含む適切な三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質とRAとから構成される混合浮遊ゲル中で、少なくとも30日間、例えば32日間成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を更に含む、項目24~26のいずれか一項に記載の方法。
項目28
ヒト乳代替生成物を製造する方法であって、
ステップA)が、
i)mBSCを、BMP4を含む適切な培養培地、例えばMammoCult培地及びBMP4中で、適切な三次元培養系において、例えば三次元懸濁条件において、8日間以下培養することによって、mBSCを非神経外胚葉細胞へと分化させるステップ、及び
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、RAを含む適切な三次元包埋系、例えば、マトリゲル及び/又はコラーゲンIなどのマトリックスタンパク質とRAとから構成される混合浮遊ゲル中で25日間以下成長させて、ラクトサイトを生成するステップ、
を更に含む、項目25又は26に記載の方法。
項目29
ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO
3
及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中、又は培地mTeSR(商標)中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、BMP4及びヘパリン及びヒドロコルチゾンが添加された、完全MammoCult培地中で10日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を7日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、項目27に記載の方法。
項目30
ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO
3
及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中、又は培地mTeSR(商標)中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びに基礎培地、増殖サプリメントを含み、BMP4及びヘパリン及びヒドロコルチゾンが添加された、完全MammoCult培地中で6日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、
と定義され、ここで、
ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加した完全EpiCultB培地中でのmEB(マンモスフェア)の5日間のインキュベーション、
iii)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を15日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン、プロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を5日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、項目28に記載の方法。
項目31
ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO
3
及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリン及びBMP4を添加したMammoCultB培地中で10日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で20日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を7日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、項目27に記載の方法。
項目32
ステップA)i)が、
i)DMEM/F12、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、ナトリウムセレン、FGF2、インスリン、NaHCO
3
及びトランスフェリン、TGFβ1又はNODALを含む標準mBSC培地E8中で2日間のインキュベーションによる、hBSCからの胚様体(EB)の生成、並びにMammoCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びヘパリン及びBMP4を添加したMammoCultB培地中で6日間のEBのインキュベーションによって、非神経外胚葉細胞に非常に富んだmEB(マンモスフェア)を産生するステップ、と定義され、ここで、ステップA)ii)は、さらなるサブステップに区別され、かつ以下のステップii)、iii)及びiv):
ii)形成されたmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及び上皮小体ホルモン(pTHrP)及びRAを添加したEpiCultB培地中に浮遊させたマトリゲルとコラーゲンIとの混合物中に5日間包埋すること、
iii)包埋したmEB(マンモスフェア)を、EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFGF10及びHGFを添加したEpiCultB培地中で15日間インキュベーションすることによる、分枝及び腺房分化並びに乳腺細胞特異化の促進、及び
iv)EpiCult増殖サプリメント及びヒドロコルチゾン及びインスリン及びFBS及びプロラクチン及びプロゲステロン及びβ-エストラジオールを添加したEpiCultB培地中でmEB(マンモスフェア)を5日間インキュベーションすることによる乳タンパク発現の誘導、
を含む、項目28に記載の方法。
項目33
ステップA)が、項目1~22のいずれか一項に記載の方法を含む、項目24~32のいずれか一項に記載の方法。
項目34
ステップA)が、三次元懸濁培養条件で行われる、項目24~26及び33に記載の方法。
項目35
項目24~34のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる、ヒト乳様生成物。
項目36
治療に使用するための、項目35に記載のヒト乳様生成物。
項目37
項目35に記載のヒト乳様生成物の、ヒト乳代替物としての、任意選択で母乳代替物としての使用。
【国際調査報告】