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2024-538231アウトランナ用モータの為のロータ及び該ロータを備えたアウトランナ用モータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】アウトランナ用モータの為のロータ及び該ロータを備えたアウトランナ用モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/24 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
H02K1/24 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524439
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2022080174
(87)【国際公開番号】W WO2023073158
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21205609.7
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520300482
【氏名又は名称】マクソン インターナショナル アーゲー
【氏名又は名称原語表記】MAXON INTERNATIONAL AG
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】トラクセル, マティス
(72)【発明者】
【氏名】クレハー, ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ガッサー, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴュートリッヒ, クリスティアン
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA20
5H601CC01
5H601DD02
5H601DD11
5H601DD18
5H601GA02
5H601GA36
5H601GA41
5H601GD31
5H601KK07
(57)【要約】
アウトランナ用モータの為のロータ及び該ロータを備えたアウトランナ用モータ。本発明は、ロータベルとして設計され、ロータベル内にロータ極が位置されたロータ用ハウジングを備え、ロータベルは、回転軸を中心に回転可能になるようにアウトランナモータのステータ内に装着可能であり、回転軸に対して非対称な剛性、特に非対称な傾斜剛性を呈するアウトランナモータ用ロータに関する。また、本発明は、モータ用シャフトと、複数のステータ歯を有するステータと、ステータを囲む本発明によるロータとを有するアウトランナモータに関する。本発明が解決しようとする課題は、従来技術から知られている困難性をさらに改善することであり、特に、アウトランナモータ用ロータと、このようなロータを有するアウトランナモータとを、より静かで振動レベルが低くなるように設計することである。この課題は、ロータベルの重心をその回転軸上に置くことによって、本発明に従って解決される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータベル(2)として設計されたロータ用ハウジングにロータ極(5)が位置されたアウトランナモータ(16)用ロータ(1)であって、
前記ロータベル(2)は、前記アウトランナ用モータ(16)のステータ(17)に回転軸(R)を中心に回転可能に装着され、回転軸(R)に対して非対称な剛性、特に非対称な傾斜剛性を有し、前記ロータベル(2)の重心がその回転軸(R)上に置かれることを特徴とする、ロータ(1)。
【請求項2】
前記ロータベル(2)は、異なるジオメトリの領域を有し、さらに/または、異なる材料で構成されることを特徴とする請求項1に記載のロータ(1)。
【請求項3】
前記ロータベル(2)の、前記回転軸(R)に対して垂直な端面(4)が、非対称に構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のロータ(1)。
【請求項4】
前記ロータベル(2)の前記端面(4)は、少なくとも1つの切欠部(6)とスポーク(7)とを備え、前記スポーク(7)は、異なる材料から成り、さらに/または、異なる厚さまたは幅および/または、これらの間に異なる角度を有することを特徴とする、請求項3に記載のロータ(1)。
【請求項5】
前記スポーク(7)は、2つのロータ極(5)の間に配置されるように、前記回転軸(R)を中心に非対称に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載のロータ(1)。
【請求項6】
前記スポーク(7)の数は、各場合に2つのロータ極によって形成されるロータ極対の数よりも少なく、特に、前記スポーク(7)の数は、前記ロータ極対の数に対して次の2つの最小素数に対応することを特徴とする、請求項4または5に記載のロータ(1)。
【請求項7】
前記スポーク(7)は、前記回転軸(R)に対して非対称に配置され、それぞれが可能な限り等しい角度を有することを特徴とする、請求項4~6のいずれか1項に記載のロータ(1)。
【請求項8】
前記ロータ極(5)は、径方向外側(9)が円弧状であり、径方向内側(10)が平坦であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のロータ(1)。
【請求項9】
前記ロータベル(2)にリング状の減衰要素(12)が挿入されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のロータ(1)。
【請求項10】
モータシャフトと、複数のステータ歯(18)を有するステータ(17)と、ステータ(17)を囲む請求項1~9のいずれか一項に記載のロータ(1)とを備える、アウトランナ用モータ(16)であって、前記ステータ歯(18)の数がロータ極(5)の数よりも少ないことを特徴とする、アウトランナ用モータ(16)。
【請求項11】
前記ステータ歯(18)の各々は、ステータ歯ヘッド(19)を有し、前記ロータ極(5)間の接線方向距離(T)は、2つのステータ歯ヘッド(19)間の接線方向スロット隙間幅(NB)よりも大きく、前記接線方向スロット隙間幅(NB)と、前記ロータ極(5)間の接線方向距離(T)との比が0.5~0.85であることを特徴とする、請求項10に記載のアウトランナ用モータ(16)。
【請求項12】
各ステータ歯(18)はステータ歯ヘッド(19)を有し、2つのステータ歯ヘッド(19)間の接線方向スロット隙間幅(NB)とステータ歯ヘッド(19)の接線方向幅(ZB)との比が0.25以下であり、好ましくは0.11~0.2の範囲内にあることを特徴とする、請求項10又は11に記載のアウトランナ用モータ(16)。
【請求項13】
各ステータ歯(18)は、銅巻線(21)が周囲に巻回されたステータ歯ネック(20)を有し、前記ステータ歯ネック(20)の幅(ZHB)は、モータ動作時に前記ステータ歯ネック(20)内の磁束が飽和範囲に達しないように構成されていることを特徴とする、請求項10~12のいずれか一項に記載のアウトランナ用モータ(16)。
【請求項14】
前記ステータ歯(18)の各々は、ステータ歯ヘッド(19)を有し、前記ロータ(1)と前記ステータ(17)との間に空隙(22)が形成され、前記空隙(22)の幅(LB)と前記2つのステータ歯ヘッド(19)間の接線方向スロット隙間幅(NB)との比が0.25~0.5であることを特徴とする、請求項10~13のいずれか一項に記載のアウトランナ用モータ(16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータベルとして設計され、ロータベル内にロータ極が位置されたロータ用ハウジングを備えた請求項1に記載のアウトランナ用モータの為のロータであって、ロータベルは、アウトランナ用モータのステータ内に回転軸を中心に回転可能に装着可能であり、回転軸に対して非対称な剛性、特に非対称な傾斜剛性を有することを特徴とするアウトランナ用モータの為のロータに関する。
【0002】
さらに、本発明は、モータ用シャフトと、複数のステータ歯を有するステータと、本発明に係るロータとを備えた請求項10に記載のアウトランナ用モータに関する。
【0003】
このタイプのアウトランナ用モータは、比較的短い軸方向長さを有するフラットモータである。ロータは、片側ロータベルによってモータ用シャフトに接続される。アウトランナ用モータの為のロータ用ハウジングのベル構造は、固有振動数が低く、減衰が少なく、大径で質量が大きく、軸受の摩擦力が小さく、外径に近い磁力を有するため、騒音や振動の点で不利であることが分かった。ロータの質量慣性モーメントを小さく保つためには、ロータベルをできるだけ薄い壁で構成する必要があるが、これはロータベルの剛性が低いことを意味し、振動に有利である。
【0004】
特に、これらのアウトランナ用モータが高トルクに適応される場合、それらは強い磁気力を受ける。実際のシステムにおいて、これらの磁気力は結果として励起される力となり、その振幅と時間の経過はジオメトリの不完全性や材料および他の不規則性に依存する。ロータとステータとの間に作用する得られた駆動トルクに加えて、磁気力は主に径方向に、極間に、すなわちロータの磁石とステータ歯の間に作用する。
【0005】
モータの固有振動数は、物理法則に従って、弾性成分の剛性と移動質量または慣性によって定義される。固有振動数付近に何らかの形で振動励起が発生すると、振動振幅(共振)が大きく増大し、振動エネルギ(減衰)を分散させることによってのみ振動振幅を制限することができる。
【0006】
構造上、このようなアウトランナ用モータの弾性要素は、主に振動に関与するが、ロータベルと軸受、特に玉軸受の弾性接点であり、ロータベルと軸受は、共振近傍の振動振幅における強い折り目によって表される非常に小さな減衰を有する。
【0007】
CN211266724Uから、永久磁石同期モータ用の端部カバーが知られており、これは、端部カバー本体と、該端部カバー本体上に配置された複数の補強リブとを備える。永久磁石同期モータの端部カバーの補強リブは非対称に配置されている。その結果、モータの電磁励振下でモータの構造振動と共振する電磁力波の問題を解決でき、永久磁石同期モータの作動音を低減できる。
【0008】
CN112271852Aはまた、ノイズ低減のための永久磁石同期モータの端部カバーを示す。端部カバーは、内外補強リブを有し、内補強リブも非対称に分布している。
【0009】
これら2つの文献において、モータ用ハウジングの非回転部である端部カバーに非対称に配置された補強リブが設けられている。これは既に騒音・振動の低減につながっているが、まだ改善の余地がある。
【0010】
また、DE102017123085A1は、他の電子的に切り替え可能な極を有するステータと、ステータに対して回転可能に装着され、ステータを少なくとも部分的に囲むロータとを有するアウトランナ用モータを示している。ロータはポット状であり、周方向に沿って交互に配置された複数の永久磁石を備える。アウトランナ用モータは、アウトランナ用モータが設置された装置の駆動列によって生じる出力不均衡を補償するように適合されている。この目的のために、アウトランナ用モータは、定義された不平衡を生成するための2つのカウンタウェイトを有する。第1のカウンタ質量は、ロータの周面の一部に形成され、ロータと一体に形成されている。第2のカウンタ質量は、ポット形ロータの端面の部分領域が打ち抜かれ、ロータ端面の残りの部分領域上に折り曲げられるように構成することができる。
【0011】
したがって、本発明の課題は、従来技術から知られている困難性をさらに改善し、特に、アウトランナ用モータの為のロータと、そのようなロータを有するアウトランナ用モータとを、より静かで振動レベルが低いように構成することである。
【0012】
この課題は、独立クレーム1及び10の特徴によって解決される。
【0013】
この目的のために、本発明によれば、ロータベルの重心がその回転軸上に置かれることが提供される。
【0014】
ロータベルは、一方の側で少なくとも部分的に閉じられ、シェル表面および端面を有するポット形ハウジングである。この傾斜剛性により、ロータベルの端面またはシェル表面がロータベルに垂直な方向に傾斜することが防止される。非対称傾斜剛性は、回転軸に関して点対称でも回転対称でもない。ロータ極は、好ましくは永久磁石として構成される。ロータベルをモータ用シャフトの一方の側に装着するための軸受点が端面上に又は端面に設けられている。周方向の主振動モードに対する振動微分方程式を解くための固有値問題の数学的解法は定義されていない。しかしながら、力励起は周方向に明瞭な成分を示した。このことから、ロータとステータとの間の弾性相対傾斜運動が周方向運動に関連していることがわかる。この観測により、機械的ロータの構造を最適化した。軸受の傾斜剛性にはほとんど影響を与えないが、ロータベルの傾斜剛性を最適化することができる。従って、ロータベルのベル構造は、ロータベルの傾斜剛性が、回転軸を中心に回転するときのねじれ角の関数として不規則に変化するように構成される。一方、回転軸に対するロータベルの傾斜剛性の非対称構成は、通常対称構成で互いに近接している傾斜固有周波数が互いから強く分離されていることを意味する。一方、共振付近で振動する傾斜固有モードは、傾斜剛性が回転軸周囲の角度に大きく依存して変化するため、単純に回転することができず、共振ピークが分裂し、振動振幅が小さくなると減衰が大きくなり、振動や騒音の解析に現れる。したがって、ロータベルの、この構成は、付加的な減衰および励起の低減を可能にする。モータの不平衡が低く、したがって静かな運転が達成される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態は、サブクレームの主題である。
【0016】
好ましい実施形態によれば、ロータベルは、異なる形状の領域および/または異なる材料で作られた領域を有することが提供される。これは、回転軸に対してロータベルの所望の非対称傾斜剛性を達成する簡単な方法である。たとえば、ロータベルは、周方向に異なる厚みを有するものであってもよいし、異なる材料で作られてもよい。
【0017】
別の好ましい実施形態において、回転軸に垂直なロータベルの端面が非対称であることを提供することができる。その結果、ロータベルの所望の非対称傾斜剛性を簡単かつ安定的に達成することができる。これにより、ロータベルのシェル表面を対称的にすることができ、特に、軸対称又は回転対称にすることができる。これはまた、ロータベルの費用効果的な生産と同様に、モータが低い不平衡で運転することを可能にする。
【0018】
好ましくは、ロータベルの端面は、少なくとも1つの切欠き部およびスポークを有するように構成することができ、ここで、スポークは異なる材料で作られ、かつ/または、異なる厚さまたは幅を有し、かつ/または、それらの間に異なる角度を含む。これにより、本発明のロータベルの非対称な傾斜剛性が得られ、騒音や振動を低減することができる。この場合、スポークは、ロータベルの端面の軸受領域からロータベルの外周まで延びる。本実施形態において、第1の2つの傾斜モードは互いに強く分離されており、第1の2つの傾斜モードの傾斜固有周波数は、100-500Hz、特に300-500Hz以上離れていることが好ましい。
【0019】
さらに別の実施形態によれば、スポークは、それぞれが2つのロータ極の間に配置されるように、回転軸の周りに非対称に配置されることが可能である。スポークをロータ極、即ち、ロータの永久磁石の間に配置することによって、ロータベルを通る好ましくない磁束であって、付加的な磁気励起を引き起こす可能性があるものを回避することができる。好ましくは、スポーク構造を磁気回路からより良好に分離するために、ロータ戻り回路はスポークへの遷移領域で飽和されない。
【0020】
好ましくは、スポークの数は、各場合において2つのロータ極によって形成されるロータ極対の数よりも少なく、好ましくは、少なくとも4つのスポークが設けられる。スポークの数は、素数に対応することが特に好ましい。これにより、ロータベルの端面におけるスポークの所望の非対称配置を容易に達成することができる。この場合、スポークの数は、ロータ極対の数に対して次の2つの最小素数に対応することが特に好ましい。一般的には、5つまたは7つのスポーク、特に、5つのスポークが好ましい。
【0021】
さらに別の好ましい実施形態において、スポークが回転軸に対して非対称に配置され、それぞれが可能な限り等しい角度を有することを提供することができる。これにより、スポークはできるだけ均等に配置される。モータの好ましい実施形態は、12個のロータ極がロータベル内に配置され、端面が5個のスポークを有することを提供することができる。この構成において、隣接するスポークは、互いに最小2個および最大3個のロータ極隙間によって離間されているか、または互いに少なくとも60°および最大90°の角度を形成する。このようなロータベルの構成において、この垂直傾斜方向に対するロータベルの端面の傾斜を打ち消すロータベルの傾斜剛性は、1~5 Nm/度である。この場合、回転軸に対して最も剛性の高いロータベルの領域は、回転軸に対して最も剛性の低い領域よりも20~60%高い剛性を有する。
【0022】
さらに別の好ましい実施形態において、ロータ極が径方向外側で円弧状であり、径方向内側で平坦であることを提供することができる。好ましくは、ロータ極は、別個の異方性磁気セグメントとして構成される。ロータ極の、この構成は、アウトランナ用モータ内の空隙磁束密度のコースを平滑化することを可能にし、空隙内の磁束は理想的には正弦波コースを有する。これにより、不規則で強い励起が回避される。同時に、滑らかな表面は湾曲した表面よりも少ない機械加工を必要とするので、そのような回転子極または磁石は、湾曲した磁石と比較してコストを低減する。
【0023】
さらに好ましい実施形態によれば、リング状の減衰要素をロータ内に設けることができる。好ましくは、減衰要素は、剛性の高いガラス繊維強化PPA(ポリフタルアミド)等の減衰性の良好なプラスチックから作られるリングとして構成される。プラスチックリングは、その周表面に沿って周方向に均等に配置されたウェブからなる。好ましくは、ウェブの数は、ロータ極間の空間の数に対応する。プラスチックリングは、好ましくは、ウェブがロータ極間の空間内に位置決めされるような方法でロータベル内に挿入される。プラスチックリングの高い剛性により、ロータベルのシェル表面はさらに安定化され、所望の減衰が達成される。
【0024】
上述したようなモータシャフトと、複数のステータ歯を有するステータと、ステータを囲むロータとを有する有するアウトランナ用モータに関しては、ステータ歯の数がロータ極の数よりも少ないという点で上記課題が解決される。好ましくは、アウトランナ用モータは、電子的に整流されるアウトランナ用モータである。また、ロータおよびステータシステムの最適なレイアウトは、モータのノイズおよび振動を低減または回避するのに役立つ。12個のロータ極と8個のステータ歯との組み合わせ、または16個のロータ極と12個のステータ歯との組み合わせが好ましいことが示されている。より大きな直径を有するロータに対しては、28個のロータ極と24個のステータ歯との組合せ、または40個のロータ極と36個のステータ歯との組合せも好ましい。一般に、4個のロータ極対と3個のステータ歯の比、または、7個のロータ極対と6個のステータ歯の比、または、10個のロータ磁極対と9個のステータ歯の比、または、これらの比の倍数が特に好適である。
【0025】
別の好ましい実施形態において、ステータ歯の各々はステータ歯ヘッドを有し、ロータ極間の接線方向距離は2つのステータ歯ヘッド間の接線方向スロット隙間幅よりも大きい。特に、2つのステータ歯ヘッド間の接線方向スロット隙間幅とロータ極間の接線方向距離との比は、0.5~0.85である。また、この構成は、騒音や振動の低減にもつながる。
【0026】
別の好ましい実施形態において、2個のステータ歯ヘッド間の接線方向スロット隙間幅のステータ歯ヘッドの接線方向幅に対する比が0.25以下であり、好ましくは、0.11から0.2の範囲であることを提供することができる。できるだけ幅の広いステータ歯ヘッドは、1回転にわたるロータの観点からの磁気抵抗変化を低減でき、磁気励起を低減できる。また、騒音や振動の低減にもつながる。
【0027】
銅巻線が周囲に配置されたステータ歯ネックを有する各ステータ歯において、モータ運転時にステータ歯ネック内の磁束が飽和領域に達しないようにステータ歯ネックの幅を調整することにより、更なる低騒音化、低振動化を図ることができる。
【0028】
さらに別の好ましい実施形態において、各ステータ歯がステータ歯ヘッドを有し、ロータとステータとの間に空隙が形成され、空隙の幅と2個のステータ歯ヘッド間の接線方向スロット隙間幅との比が0.25から0.5の範囲内であることを提供することができる。この結果生じる空隙磁場の減少はまた、システムの励起を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下、図面を参照して、より詳細に本発明の実施形態を説明する。
図1a図1aは、ロータの第1の実施形態の斜視図である。
図1b図1bは、ロータの第1の実施形態の斜視図である。
図2a図2aは、図1aから見たロータの斜視図である。
図2b図2bは、図1bから見たロータの斜視図である。
図3図3は、図1aからロータの軸方向を見た図である。
図4図4は、ロータの減衰要素の斜視図である。
図5図5は、軸方向から見たロータの他の実施形態である。
図6図6は、軸方向から見たときに、ロータとステータとを備えたアウトランナ用モータの一区分である。
図7a図7aは、軸方向から見たときのロータのシェル表面の径方向の変形を示す。
図7b図7bは、軸方向から見たときのロータのシェル表面の径方向の変形を示す。
図7c図7cは、軸方向から見たときのロータのシェル表面の径方向の変形を示す。
図7d図7dは、軸方向から見たときのロータのシェル表面の径方向の変形を示す。
図7e図7aは、軸方向から見たときのロータのシェル表面の径方向の変形を示す。
【0030】
【発明の詳細な説明】
【0031】
図1aは、アウトランナ用モータ、好ましくは電子的に転流されたアウトランナ用モータの発明によるロータ1の第1の実施形態の斜視図を示す。ロータ1は、ロータベル2として構成されたロータ用ハウジングを備える。従って、ロータベル2は、本質的にベル形状またはポット形状を備え、本質的に円筒形のシェル表面3と、シェル表面3に本質的に垂直に続く端面4とを備える。端面4には軸受点8が形成されており、この軸受点8を介してロータベル2をアウトランナ用モータのモータシャフトに、したがって、ステータに装着することができる。ロータベル2はまた、軸受点8を通って延びる回転軸Rを備える。回転軸Rは、ロータベル2の端面4に対して垂直である。ロータベル2は、アウトランナ用モータの回転軸Rを中心に回転可能又は装着可能である。
【0032】
ロータベル2には、シェル表面3の内側に減衰要素12(プラスチックリング)が配置されている。減衰要素12は、2つの円形端セクション13、14を接続するウェブ15を含む。ロータ極5は、減衰要素12の凹部内のウェブ15の間に配置される。ロータ極5は、シェル表面3の内側でロータベルの円周に沿って均等に配置されている。ロータ極5は好ましくは永久磁石として構成され、好ましくは離散的な異方性磁気セグメントとして構成される。2つのロータ極5は、それぞれロータ極対を形成する。以下、図3を参照してロータ極5を詳細に説明する。
【0033】
このタイプのアウトランナ用モータは、軸方向の長さが比較的短いという特徴がある。ロータ1は、片側ロータベル2によってモータ用シャフトに接続されている。このようなロータハウジング用ベル構造は、減衰が少なく固有振動数が低く、大直径上に大きな質量があり、軸受間隔が小さく、外径に近い磁力を有するため、騒音および振動の点でむしろ不利である。
【0034】
したがって、本発明によれば、ロータベル2のベル構造は、ロータ角度の関数としてロータベル2の傾斜剛性が回転軸Rを中心に不規則に変化するように構成されている。したがって、ロータベル2の傾斜剛性は、回転軸Rに対して非対称である。ロータベル2の非対称傾斜剛性は、たとえば、異なるジオメトリの領域を有するロータベルによって達成することができる。これらは、たとえば、異なる壁厚の領域又はロータベルに形成された切欠き部とすることができる。別の可能性は、ロータベル2の領域が異なる材料で作られていることである。ロータベル2の非対称性は、ロータベル2の重心が常に回転軸R上にあるように構成されることが有利である。
【0035】
図1a、図1bおよび図2a、図2bに示す実施形態において、ロータベル2の端面4は非対称に構成される。これは、図2a,図2bで明確に見られる。図2a、図2bは、図1a、図1bからのロータ1の斜視図も示しており、ロータ1は回転軸Rに沿って反対側から見ることができる。ロータベル2の端面4は、切欠き部6とスポーク7とを有する。スポーク7は、軸受点8から径方向、すなわち回転軸Rに垂直な方向に、ロータベル2のシェル表面3まで延びる。切欠き部6は、スポーク7の間に形成される。ロータベル2の重心は、回転軸R上に置かれている。以下、図3を参照して、より詳細にスポーク7および切欠き部6を説明する。ロータ1またはロータベル2の非対称性の、この構成により、最初の2つの傾斜固有モードは互いに強く分離され、それらの傾斜固有周波数は好ましくは-100Hzおよび500Hzの間である。
【0036】
図1aおよび図2aとは対照的に、図1bおよび図2bは、ロータ極5および減衰要素12を含まないロータ1の斜視図を示す。この場合のロータベル2のシェル表面3は円筒状である。ロータベル2のシェル表面3上の二重矢印SRは、ロータベル2が主に磁力によって励起されて振動する方向を示している。これにより、ロータベル2は、径方向SRにおけるステータ歯18とロータ極5との間の磁気的な吸引力および部分的な磁気的な反発力によって基本的に励起されるか、または弾性的に変形される。また、シェル表面3は、シェル表面3に垂直または回転軸Rに垂直な端面4のいずれか一方の回転軸Rにのみされていることもあり、ロータベル2にも軸方向SAに振動が誘起される。
【0037】
図3は、図1a,図1bのロータ1と本発明に係るロータベル2とを回転軸Rに沿って軸方向から見た図である。ロータベル2の端面4の非対称形状が明確に視認可能である。端面4は、周方向に5本のスポーク7と、スポーク7間に形成された5本の切欠き部6とを有している。12個のロータ極5は、ロータベル2のシェル表面3内に均等に分布して配置されている。隣り合うロータ極5は、各々の場合、互いに離間して配置され、その間に接線方向距離Tを有するロータ極隙間11が形成されている。したがって、この配置は、ロータベル2内に6つのロータ極対を形成する。
【0038】
既に説明したように、ロータ極5は、離散的な異方性磁気セグメントとして構成される。ロータ極5は、径方向外側9において円弧状である。その反対側、すなわち径方向内側10において、ロータ極5は平坦である。これにより、空隙磁束密度曲線を平滑化することができ、アウトランナ用モータのロータとステータとの間の空隙内の磁束は理想的に正弦波状となる。これにより、不規則で強い励起が回避される。同時に、このようなロータ極5の構成は、平滑または平坦な表面、すなわち径方向内側表面10が湾曲した表面よりも少ない機械加工を必要とするため、湾曲した磁石と比較してコストを低減する。
【0039】
スポーク7は、ロータ1の2つのロータ極5の間に配置されている。スポーク7をロータ極5の間に配置することによって、ロータベル2を通る好ましくない磁束が回避され、付加的な磁気励起を引き起こす可能性がある。好ましくは、スポーク7を磁気回路からより良好に分離するために、ロータ戻り回路はスポークへの遷移領域で飽和されない。したがって、5個のスポーク7は、ロータベル2の端面4の円周に沿って非対称に分布している。好ましくは、スポーク7は、それらの間を可能な限り等しい角度で包囲するように配置されるか、または可能な限り均等に分布するように配置される。図3に見られるように、これは、スポーク7がそれらの間に最小2個および最大3個のロータ極隙間11を包囲することを意味する。2つのスポーク7の間の角度は、最小60°から最大90°である。スポーク7は、ロータベル2の重心が常に回転軸R上にあるように、幅または厚さが異なっている。図3に見られるように、第1の実施形態において、2つの上部スポーク7は、3つの下部スポーク7よりも僅かに広い。あるいは、スポークが異なる厚さを有するか、または異なる材料で作られることも考えられる。
【0040】
図4は、図1a、図2aおよび図3に示すロータ1に挿入された減衰要素12を単一の図で示す。減衰要素12はリング状であり、2つの円形端セクション13、14を備え、これらの端部は、それらに垂直に延びるウェブ15を介して互いに接続される。ウェブ15は、図1a、図2aおよび図3にも見られるように、それらがロータ極隙間11に挿入できるような寸法にされる。好ましくは、減衰要素12は、プラスチック材料、特に高剛性を有するガラス繊維強化PPA(ポリフタルアミド)で作られる。これにより、ロータベルのシェル表面をさらに安定させて減衰させることができる。
【0041】
図5は、アウトランナ用モータの為のロータ1のさらなる実施形態を示す。図5に示すロータ1は、上述したロータ1と基本的に同様に構成されている。したがって、以下に記載されていない構成部品については、図1図3に関する上記の説明を参照する。したがって、以下では、基本的に相違点についてのみ説明する。図5に示す実施形態において、ロータベル2のシェル表面3に16個のロータ極5が配置されている。したがって、ロータベル2には8対のロータ極が形成される。ロータベル2の端面4もまた、5つの切欠き部6と5つのスポーク7を有する。スポーク7は、ロータ極5の間に配置されている。これにより、上述の利点が得られる。
【0042】
ロータベルの他の実施形態も可能である。好ましくは、ロータベルは、多数の少なくとも4つのスポークで構成される。さらに、ロータベルのスポークの数は、素数に対応することが好ましい。また、スポークの数は、ロータ極対の数よりも小さいことが好ましい。スポークの数は、ロータ極対の数に関して次の2つの最小素数に対応することが特に好ましい。一般的には、5つまたは7つのスポーク、特に5つのスポークが好ましい。
【0043】
図6はアウトランナ用モータ16の一セクションを示す。アウトランナ用モータ16は、ステータ17と本発明に係るロータ1とを備える。ロータ1は、たとえば、図1図3または図5に示すように構成することができる。
【0044】
このようなロータを有するアウトランナ用モータは、特に高トルクに適応される場合、強い磁気力を受ける。理想的には、これらの磁力は互いに打ち消し合う。しかしながら、実際のシステムにおいて、それらは結果として力の励起をもたらし、その振幅と時間の経過は形状と材料の不完全性と他の不規則性に依存する。ロータとステータとの間に作用する結果として生じる駆動トルクに加えて、磁気力は、ロータのロータ極とステータ歯との間で主に径方向に作用する。
【0045】
モータの固有振動数は、物理法則に従って、弾性成分の剛性と移動質量または慣性によって定義される。固有振動数付近に何らかの形で振動励起が発生すると、振動振幅(共振)が強く増大し、振動エネルギ(減衰)を分散させることによってのみ振動振幅を制限することができる。この構造により、主に振動に関与するこのようなアウトランナ用モータの弾性要素は、ロータベルと軸受、特に玉軸受けの弾性接点であり、ロータベルと軸受は、共振付近の振動振幅の強い増加によって表される非常に小さな減衰を有する。したがって、アウトランナ用モータをより静かにし、より低いレベルの振動にするために、追加の減衰と励起の減少は非常に歓迎される。
【0046】
周方向の主振動モードに対する振動微分方程式を解くための固有値問題の数学的解法は定義されていない。しかしながら、力励起は周方向に明瞭な成分を示した。このことから、ロータとステータ間の弾性相対傾斜運動は円周運動と関連していると結論した。この観察を用いて、機械的ロータ設計を上述のように最適化した。
したがって、ロータ1は、シェル表面3を有するロータベル2を備える。ロータ極5は、シェル表面3に配置されている。ロータ1は、上述した2つの実施形態のうちの1つに従って構成することができるので、以下ではさらに詳細に説明しない。図1から図3および図5を参照する。
【0047】
ステータ17は、複数のステータ歯18を備える。各ステータ歯18は、各ステータ歯ヘッド19とステータ歯ネック20とを備える。各ステータ歯ネック20の周囲には、銅巻線21が配置されている。好ましくは、ロータ1はステータ歯18よりも多くのロータ極5を有している。特に、12個のロータ極と8個のステータ歯との組み合わせ、または16個のロータ極と12個のステータ歯との組み合わせが好ましい。より大きな直径を有するロータに対しては、28個のロータ極と24個のステータ歯との組合せ、または40個のロータ極と36個のステータ歯との組合せも好ましい。一般に、4個のロータ極対と3個のステータ歯の比、または7個のロータ極対と6個のステータ歯の比、または10個のロータ極対と9個のステータ歯の比、またはこれらの比の倍数が特に好適である。
【0048】
好ましい実施形態において、ロータ極5の接線方向距離T、すなわちロータ極隙間11の幅は、2個のステータ歯ヘッド19間の接線方向スロット隙間幅NBよりも大きい。特に、ロータ極の接線方向距離Tに対する接線方向スロット隙間幅NBの比は、好ましくは0.5~0.85である。
【0049】
さらに好ましいのは、接線方向スロット隙間幅NBとステータ歯ヘッド19の接線方向幅ZBとの比<=0.25であり、特に0.11~0.2の範囲内にある。できるだけ幅の広いステータ歯ヘッド19を有することによって、ステータ歯ヘッド19内の磁束の飽和による非線形性を回避することができ、したがって、結果として生じる励起も回避することができる。
【0050】
非線形性およびそれによる振動励起を回避するために、銅巻線21が周囲に配置されるステータ歯ネック20は、モータ動作中にステータ歯ネック20内の磁束が飽和範囲に到達しないように十分な幅ZHBで適合されるべきである。
【0051】
ロータ1とステータ17との間には空隙22が形成されている。この場合、ロータ1とステータ17との間の空隙22の幅LBは、2つのステータ歯ヘッド19間の接線方向スロット隙間幅NBに対する空隙22の幅LBの比が0.25~0.5となるように比較的大きく構成されている。この結果生じる空隙磁場の減少は、また、システムの励起を防ぐことができる。
【0052】
図7a~図7eは、アウトランナ用モータ16のロータ1のシェル表面3の径方向の変形の軸方向図を示す。シェル表面3は、ロータ1とステータ17との間に作用する磁力によって変形する。モータに高いトルクを発生させるためには、ロータ1とステータ17との間に特に強い磁力が作用しなければならない。これらの力は、ロータ1の剛性に応じてシェル表面3を変形させ、ロータベル2、特に、ロータ用シェル3は、質量慣性モーメントを回避するために可能な限り最小の材料厚さを有するべきである。材料の厚さが薄いため、振動が発生しやすくなるか、または振動が減衰されにくくなる。
【0053】
たとえば、ロータ極の数、ステータ歯18の数、またはステータ歯18に印加される電流に応じて、シェル表面3は、図7に示すように、異なるように励起されて振動することができる。図7aは、磁気吸引力によって圧縮されたシェル表面3を示す。図7bにおいて、シェル表面3は、2つのノードまたは点の周りで振動する。特に、2ノード周りの振動は、図1(b)、図2(b)に示すように、軸方向および径方向の3次元的な振動となり、玉軸受け接点の剛性も大きく関与する。図7cは、4つのノード周辺のシェル表面3の振動を示している。ロータ1の固有振動数およびモータ速度に係わらず、ロータ1の固有振動数での励起は、モータがより強く振動する共振を生成し、したがって、ノイズおよび/または振動を生成する。2つのノードの周りで振動するとき、振動は主にモータによって生成され、一方、4つ、6つまたは8つのノードの周りの振動は、ロータ1を通してノイズを生成する傾向がある。ロータベルの非対称な剛性のために、共振は分割されて幾つかの共振周波数に分割され、これらの共振周波数はそれほど強く振動せず、それによってモータ振動および/またはノイズを低減する。図7dおよび図7eは、それぞれ6点および8点の周りのシェル表面3の振動を示す。
【符号の説明】
【0054】
1…ロータ、
2…ロータベル、
3…シェル表面
4…端面、
5…ロータ極、
6…切欠き部、
7…スポーク、
8…軸受点、
9…ロータ極の径方向外側、
10…ロータ極の径方向内側、
11…ロータ極隙間、
12…減衰要素、
13…端セクション、
14…端セクション、
15…ウェブ、
16…アウトランナ用モータ、
17…ステータ、
18…ステータ歯、
19…ステータ歯ヘッド、
20…ステータ歯ネック、
21…銅線巻線、
22…空隙、
R…回転軸、
SA…軸方向の振動、
SR…径方向の振動、
T…ロータ極の接線方向距離、
NB…接線方向スロット隙間幅、
ZB…ステータ歯ヘッドの接線方向幅、
LB…空隙幅、
ZHB…歯ネック幅。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7a-7e】
【国際調査報告】