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特表2024-538238非担持バイメタル水素化処理触媒、その調製と応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】非担持バイメタル水素化処理触媒、その調製と応用
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/22 20060101AFI20241010BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20241010BHJP
   C07C 53/126 20060101ALI20241010BHJP
   C10G 45/46 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20241010BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20241010BHJP
   C07F 11/00 20060101ALN20241010BHJP
   C07F 15/04 20060101ALN20241010BHJP
   C07F 15/06 20060101ALN20241010BHJP
   C07F 15/02 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
B01J31/22 M
C07F19/00
C07C53/126
C10G45/46
B01J37/08
B01J37/04 102
C07F11/00 B
C07F15/04
C07F15/06
C07F15/02
C07F11/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524606
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 CN2022126700
(87)【国際公開番号】W WO2023071936
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111244222.4
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111244223.9
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111244221.X
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523143774
【氏名又は名称】中石化石油化工科学研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】侯煥▲ディ▼
(72)【発明者】
【氏名】王廷
(72)【発明者】
【氏名】董明
(72)【発明者】
【氏名】陶夢瑩
(72)【発明者】
【氏名】趙毅
(72)【発明者】
【氏名】龍軍
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H050
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169AA09
4G169BA28A
4G169BA28B
4G169BB02C
4G169BB04C
4G169BB05C
4G169BB08C
4G169BB09C
4G169BB10C
4G169BB12C
4G169BB16C
4G169BB20C
4G169BC30A
4G169BC31A
4G169BC53A
4G169BC54A
4G169BC57A
4G169BC58A
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC65A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC69A
4G169BC70A
4G169BC72A
4G169BE08A
4G169BE08B
4G169CC05
4G169EC27
4G169FB05
4G169FB29
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC10
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB40
4H006BS10
4H006BS70
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB40
4H050WB13
4H050WB22
4H129AA02
4H129CA01
4H129CA04
4H129CA07
4H129CA08
4H129CA10
4H129CA14
4H129DA19
4H129DA21
4H129KA10
4H129KA12
4H129KB01
4H129KD15Y
4H129KD16Y
4H129KD24Y
4H129NA14
(57)【要約】
開示されるのは、非担持バイメタル水素化処理触媒、その調製およびその応用である。該触媒は、金属中心原子または中心イオンと有機配位子とが配位結合を介して結合することにより形成される錯体からなる。一般式式(I)M[R(COO)で表される概略組成を有する。式中、MおよびMは金属を表し、R(COO)は前記有機配位子を表し、Rは前記有機配位子のヒドロカルビル基を表し、COOは前記有機配位子の配位基を表し、xは前記有機配位子中の配位基数を表し、aは前記金属の総量に対する非配位結合を介して前記金属に結合した酸素原子のモル比を表し、bは前記金属の総量に対する前記有機配位子のモル比を表す。炭化水素の水素化に使用した場合、前記触媒およびその組成物は、油相への高い分散性、高い水素化活性および目的生成物への高い選択性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属中心原子または中心イオンと有機配位子とが配位結合を介して結合して形成された錯体から構成される非担持バイメタル水素化処理触媒であって、前記触媒は式(I)で表される概略組成を有し、
[R(COO)式(I)
ここで、MおよびMは金属を表し、R(COO)は有機配位子を表し、Rは前記有機配位子のヒドロカルビル基を表し、COOは前記有機配位子の配位基を表し、xは前記有機配位子中の配位基の数を表し、aは非配位結合を介して前記金属に結合された酸素原子の前記金属の総量に対するモル比を表し、bは前記金属の総量に対する前記有機配位子のモル比を表し:
とMは互いに異なり、それぞれ独立して、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属およびIB族金属からなる群から選択される1種であり;
Rは、C3-C19ヒドロカルビル基であり、好ましくは、C5-C11ノルマルアルキル、C5-C11異性体アルキル、シクロアルキル部分を有するC5-C12アルキルおよびC6-C12アリールからなる群から選択され;
xは1、2または3であり、好ましくは1または2であり;
aは0~5、好ましくは1~3の正数であり;そして
bは1~6、好ましくは2~5の正数であり、
前記触媒は、700cm-1~1000cm-1、1350cm-1~1450cm-1および1500cm-1~1610cm-1の位置に特性ピークを有する赤外スペクトルを示す、非担持バイメタル水素化処理触媒。
【請求項2】
前記触媒中の前記錯体の少なくとも一部は式(I-1)で表される構造を有し:
【化1】

ここで、M、M、Rおよびxは請求項1に定義した通りであり;
→は配位結合を表し;
xは前記有機配位子中の配位基の数を表し、1または2、好ましくは1であり;
nは配位数を表し、1~6、好ましくは2~5の正数であり;
yは、非配位結合を介して前記金属Mおよび前記金属Mの両方に結合している酸素原子の数を表し、0または1であり、好ましくは1であり;そして
zは、非配位結合を介して前記金属Mにのみ結合している酸素原子の数を表し、0~2の正数、好ましくは0または1である、請求項1に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒。
【請求項3】
前記触媒のIRスペクトルにおいて、1350~1450cm-1の位置の特性ピークと1500~1610cm-1の位置の特性ピークとの間の距離が145cm-1より大きい、請求項1または2に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒。
【請求項4】
水素化活性を有する前記VB族金属、VIB族金属、VIII族金属およびIB族金属は、V、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ru、Ni、CuおよびPdからなる群から選択され、好ましくは、Mo、Ni、W、Fe、VおよびCoからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒。
【請求項5】
前記有機配位子が、C4-C20有機カルボン酸に由来し、好ましくは、C4-C20ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C20ナフテンカルボン酸、および芳香環を含むC7-C20芳香族カルボン酸からなる群から選択される1種以上に由来し、より好ましくは、C6-C12ノルマルまたは異性体のアルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C13ナフテンカルボン酸、および芳香環を含むC7-C13芳香族カルボン酸からなる群から選択される1種以上に由来し、さらに好ましくは、コハク酸、ヘキサン酸、アジピン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、エチルヘキサン酸、オレイン酸、石油酸、サリチル酸、安息香酸およびフェニル酢酸からなる群から選択される1種以上に由来する、請求項1~4のいずれか1項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒。
【請求項6】
前記触媒が、金属を基準として、前記触媒の重量に対して計算された、5%~35%、好ましくは8%~30%、より好ましくは10%~25%、特に好ましくは10%~20%の金属含有量を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒を調製する方法であって、
1)第1の金属源またはその分散液を有機配位子化合物と混合するステップ;
2)ステップ1)で得られた混合物を温度T1で時間t1反応させるステップ;
3)ステップ2)で得られた材料を温度T2で時間t2反応させるステップ;
4)任意に、第2の金属源またはその分散液を、ステップ3)で得られた材料に添加し、その結果物を温度T2で時間t3反応させるステップ;および
5)得られた液体生成物を回収するステップ、を含み、
前記第1および第2の金属源は、それぞれ独立して、元素状金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属オキシ酸、金属無機塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記第1および第2の金属源の前記金属は、互いに同じであるか、または互いに異なり、それぞれ独立して、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属、およびIB族金属からなる群から選択される1種または2種であり、
前記有機配位子化合物は、C4-C20有機カルボン酸またはその無水物から選択され、好ましくは、C4-C20ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C20ナフテンカルボン酸、芳香環を含むC7-C20芳香族カルボン酸もしくはその無水物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記第1および第2の金属源中の金属の総量に対する前記有機配位子化合物のモル比は、1~10:1であり、
前記温度T1は50℃~150℃、好ましくは80℃~120℃であり、前記時間t1は5分~180分、好ましくは10分~150分であり、
前記温度T2は100℃~350℃、好ましくは160℃~260℃であり、前記時間t2は1時間~8時間、好ましくは2時間~5時間であり、
前記時間t3は1時間~8時間、好ましくは2時間~5時間であり、
ただし、前記第1の金属源のみを使用するか、または、前記第2の金属源の金属が前記第1の金属源の金属と同じである場合には、前記第1の金属源の金属は、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属、およびIB族金属からなる群から選択される2種である、方法。
【請求項8】
ステップ1)で得られた前記混合物が、前記第1の金属源と前記有機配位子化合物とからなり;または、
ステップ1)で得られた前記混合物は、前記第1の金属源、前記第1の金属源を分散させるための分散媒、および前記有機配位子化合物からなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の金属源が、それぞれ独立して、元素状金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属炭酸塩、金属オキシ酸、金属オキシ酸の塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
金属源の分散液を使用する場合、前記分散液中の前記分散媒が、水、炭酸、塩酸、硫酸もしくはリン酸からなる群から選択される無機分散媒、または、エタノール、トルエン、キシレン、石油エーテル、ガソリン、軽油もしくはそれらの組み合わせからなる群から選択される有機分散媒であり、
好ましくは、前記第1の金属源に対する前記第1の金属源の前記分散液中の前記分散媒の重量比、および前記第2の金属源に対する前記第2の金属源の前記分散液中の前記分散媒の重量比は、それぞれ独立して1~25:1、より好ましくは2~8:1である、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の金属源および第2の金属源を、金属に基づいて計算される1:1~5のモル比で使用する、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒と、少なくとも1種の有機配位子化合物および/または有機溶媒とを含む、バイメタル水素化処理触媒組成物であって、
前記有機配位子化合物は、C4-C20有機カルボン酸から選択され、好ましくは、C4-C20ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C20ナフテンカルボン酸、芳香環含むC7-C20芳香族カルボン酸またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、C6-C12ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C13ナフテンカルボン酸、芳香環を含むC7-C13芳香族カルボン酸またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、さらに好ましくは、コハク酸、ヘキサン酸、アジピン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、エチルヘキサン酸、オレイン酸、石油酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸またはそれらの組み合わせからなる群から選択され;
前記有機溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、トルエン、ガソリン、エタノール、軽油またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物。
【請求項13】
前記組成物は少なくとも1つの有機配位子化合物を含み、前記組成物は700~1000cm-1、1350~1450cm-1、1500~1610cm-1および1700~1750cm-1の位置に特性ピークを有する赤外スペクトルを示す、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の重量に基づいて、前記非担持バイメタル水素化処理触媒が50%~95%、好ましくは80%~95%の量で存在し、前記有機配位子化合物および前記有機溶媒の合計量が、5%~50%、好ましくは5%~20%である、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
炭化水素原料を水素化処理する方法であって、炭化水素原料を、請求項1~6のいずれか1項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒または請求項12~14のいずれか1項に記載のバイメタル水素化処理触媒組成物と接触させて水素化反応させるステップを含み、前記炭化水素原料が、ベンゼン、アルキルベンゼン、ナフタレン、アルキルナフタレン、アントラセン、アルキルアントラセン等の不飽和炭化水素化合物、または、原油、ガソリン、軽油、減圧ガス油、残留油等の不飽和炭化水素化合物を含む混合物である、方法。
【請求項16】
重油の水素化に適した非担持触媒組成物であって、10重量%~45重量%の水素化処理触媒成分、45重量%~80重量%の分散媒、および、1.0重量%~10重量%の活性剤を含み、
前記水素化処理触媒成分は、請求項1~6のいずれか1項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒と、任意に有機配位子化合物とからなり、前記有機配位子化合物はC4-C20有機カルボン酸から選択され、
前記分散媒は、有機溶媒、石油留分またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記有機溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記石油留分は、150℃~524℃の蒸留範囲を有する留出油または沸点が524℃を超える残留油成分から選択され、
前記活性剤は、元素状硫黄、硫黄含有化合物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、チオール、チオエーテル、二硫化炭素、硫黄、チオフェン化合物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物。
【請求項17】
前記有機配位子化合物が、C4-C20ノルマルもしくは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C20ナフテンカルボン酸、芳香環を含むC7-C20芳香族カルボン酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、C6-C12ノルマルもしくは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C13ナフテンカルボン酸、芳香環を含むC7-C13芳香族カルボン酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、さらに好ましくは、コハク酸、ヘキサン酸、アジピン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、エチルヘキサン酸、オレイン酸、石油酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記水素化処理触媒成分が、前記水素化処理触媒成分の重量に基づいて、5%~35%、好ましくは8%~30%、より好ましくは10%~25%、特に好ましくは10%~20%の金属含有量、および0%~50%、好ましくは5%~50%、より好ましくは5%~20%の有機配位子化合物含有量を有する、請求項16または17に記載の非担持触媒組成物。
【請求項19】
前記水素化処理触媒成分が、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法によって得られる前記液体生成物である、請求項16~18のいずれか1項に記載の非担持触媒組成物。
【請求項20】
請求項16~19のいずれか1項に記載の非担持触媒組成物の重油の水素化アップグレーディングでの使用。
【請求項21】
重油を水素化アップグレーディングする方法であって、重油原料を、水素および請求項16~19のいずれか1項に記載の非担持触媒組成物の存在下、加熱条件下で水素化アップグレーディング反応に供するステップを含み、前記非担持触媒組成物は、任意に予備硫化されている、方法。
【請求項22】
前記水素化アップグレーディングの条件は、金属を基準として前記重油原料の重量に対して計算した前記非担持触媒組成物の量が50μg/g~10000μg/g、初期水素圧力が5MPa~20MPa、反応温度が360℃~480℃、液空間速度が0.05h-1~2.0h-1、および水素対油の体積比が300~2000であることを含み;
好ましくは、前記水素化アップグレーディングの条件は、金属を基準として前記重油原料の重量に対して計算した前記非担持触媒組成物の量が50μg/g~3000μg/g、初期水素圧力が5MPa~15MPa、反応温度が390℃~450℃、液空間速度が0.05~1.0h-1、水素対油の体積比が500~1500であることを含む、請求項20に記載の使用または請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本願は、水素化処理触媒の分野に関し、特に非担持バイメタル水素化処理触媒、その調製および応用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
2020年、中国の原油の対外依存度は70%を超え、輸入原油の大半は中東と南米からの粗悪な重質原油であり、残留油が50%以上を占める。したがって、石油資源の有効利用、特に残留油の深層処理は、石油資源の利用率を向上させ、中国のエネルギー安全危機を緩和することができる。
【0003】
原油処理において、担持触媒は最も古くから研究されてきた水素化処理触媒であり、最も多くの工業用途に広く応用されている。担持触媒は、触媒活性成分、助触媒活性成分および担体の3成分から構成され、前記触媒活性成分および助触媒活性成分は主に金属であり、前記担体はアルミナ、シリカ、カオリン、分子シーブ等のケイ素系もしくはアルミニウム系の材料または多孔質材料である。触媒上の金属活性サイトの特性を改善し、触媒の活性、選択性および安定性を向上させるために、水素化処理触媒は、バイメタル触媒およびポリメタル触媒に向けて開発された。留出油の水素化精製触媒にはMo-NiおよびW-Ni水素化精製触媒が使用され、減圧留出油の水素化前処理にはW-Mo-Ni触媒が主に使用されている。Mo、W、Ni等の非貴金属水素化処理触媒は、ほとんどが硫化物の形で存在し、担体の細孔流路に担持される。助金属元素の影響については、埋め込みモデル(CoまたはNiがMoSまたはWSに埋め込まれた構造)、相乗モデル(CoがCoとして存在する構造)、単層モデル(MoOまたはWOが単層として担体上に分布した構造)等の理論があり、助金属元素が主金属の硫化物構造に与える影響または担体上の主金属元素の分布を説明することができる。
【0004】
既存のバイメタル触媒はすべて担持触媒であるため、このような触媒を用いた炭化水素の水素化反応は不均一系触媒反応に属し、7つの段階を経る。すなわち、原料の分子が前記触媒の外表面に拡散する→前記原料の分子が前記触媒の細孔流路に拡散する→前記原料の分子が前記触媒の活性中心に吸着される→前記原料の分子が前記触媒の活性中心と表面触媒反応を起こす→反応生成物が前記触媒の活性中心の表面から脱離する→前記反応生成物が前記触媒の細孔流路から外部に拡散する→前記反応生成物が前記触媒の外表面から液相系に拡散する。これらの段階のうち、拡散段階は担持バイメタル水素化処理触媒による水素化反応の発生確率と効率に大きく影響し、触媒の触媒活性を制限する。
【0005】
触媒の分散度と油溶解度を向上させるため、国内外の多くの研究者が関連研究を実施してきた。中国特許第ZL201510275523.1号は、油溶性Mo-Niバイメタル触媒とその調製法および応用を開示している。開示された方法では、硝酸ニッケルとモリブデン酸アンモニウムを15~25質量倍の蒸留水に溶解し、少量のグリコールを添加した後、アンモニア水を加えてpHをアルカリ性に調整する;この溶液を攪拌下130~160℃に加熱し、3~5時間反応させ、得られた生成物を濾過して固体の中間生成物を得る。この固体の中間生成物を常圧下100℃で脱気し、オレイン酸と混合し、230~260℃で2~4時間反応させて油溶性Mo-Niバイメタル触媒を得る。前記触媒は、バイメタルの質量比をフレキシブルに調整でき、高い水素化活性と良好なコークス抑制効果を有する。しかし、前記特許文献では、第一ステップでグリコールとアンモニア水を添加し、第一ステップで得られた反応生成物を濾過して中間生成物を得、前記中間生成物を乾燥した後、第二ステップの反応に供するため、方法の手順が複雑であり、濾過による廃棄物が発生し、目的生成物の金属含有量が低い。
【0006】
中国特許第ZL201610862714.2号は、水素化分解用モリブデン-ニッケル触媒およびその調製方法を開示している。この方法では、六価モリブデン源化合物を溶媒に溶解分散させ、無機酸触媒およびC1-C5有機酸を添加して、40℃~150℃の温度で5時間~10時間反応させ、ステップ(1)で得られた反応生成物にC6-C16有機酸またはC6-C16エステルを添加し、160℃~320℃の温度で2時間~22時間反応させる。ステップ(2)で得られた生成物を20℃~80℃に冷却し、ニッケル含有無機材料を添加し、50℃~95℃で3~10時間反応させ、次いで100℃~180℃に加熱し、1時間~8時間反応させる;ステップ(3)で得られた生成物を分離して溶媒相を除去し、油相を水で洗浄した後、減圧蒸留により軽質成分を除去してモリブデン-ニッケル水素化分解触媒を得る。この触媒を重油の水素化分解反応に使用すると、高い転化率と軽質油の高い収率を示す。しかし、前記触媒の調製方法は、ステップ数が多く、操作が複雑で、出発原料が高価であり、反応生成物を水で洗浄するため大量の廃水が発生し、環境パフォーマンスが悪いという欠点がある。また、合成時に2種類の金属を添加する時期やステップが異なるため、最終的に合成された生成物が2種類の有機金属化合物の混合物であるのか、単一のバイメタル有機金属化合物であるのかを判別することができない。
【0007】
米国特許No.第7,842,635B2号は、油溶性バイメタル触媒の調製方法を開示している。この方法では、モリブデン源化合物をNおよびHの混合ガス流中で有機カルボン酸と反応させてモリブデン-有機化合物を得、別の金属化合物を有機カルボン酸と反応させて対応する有機金属化合物を得、2つの有機金属化合物を所定の比率で混合してバイメタル-有機混合物を得る。しかし、上記の方法では、気相-液相-固相の三相反応を伴うため、転化率が低く、エネルギー消費量が多く、大量の廃水、廃ガス、固形廃棄物が発生する。
【0008】
〔発明の開示〕
本願の目的は、非担持バイメタル水素化処理触媒、その調製およびその応用を提供することにある。この触媒は、高い油相分散性を有する有機金属錯体を含み、炭化水素化合物の水素化反応の触媒として使用する場合、その反応は均一系触媒反応に属し、それによって不均一系触媒反応の拡散段階を排除し、水素化活性を向上させるのに有益である。
【0009】
上記目的を達成するために、一形態において、本願は、金属中心原子または中心イオンと有機配位子とが配位結合を介して結合することにより形成された錯体からなり、式(I)で表される概略組成を有する、非担持バイメタル水素化処理触媒を提供する:
[R(COO) (I)、
ここで、MおよびMは金属を表し、R(COO)は有機配位子を表し、Rは有機配位子のヒドロカルビル基を表し、COOは前記有機配位子の配位基を表し、xは前記有機配位子中の配位基の数を表し、aは前記金属の総量に対する非配位結合を介して前記金属に結合された酸素原子のモル比を表し、bは前記金属の総量に対する前記有機配位子のモル比を表す:
およびMは互いに異なり、それぞれ独立して、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属、IB族金属からなる群から選択される1種であり;
RはC3-C19ヒドロカルビル基であり;
xは1、2または3であり、好ましくは1または2であり;
aは0~5、好ましくは1~3の正数であり;そして
bは1~6、好ましくは2~5の正数である。
【0010】
ここで、前記触媒は、700~1000cm-1、1350~1450cm-1および1500~1610cm-1の位置に特性ピークを有する赤外スペクトルを示す。
【0011】
別の態様において、本願は、以下のステップを含む、非担持バイメタル水素化処理触媒を調製するための方法を提供する:
1)第1の金属源またはその分散液を有機配位子化合物と混合するステップ;
2)ステップ1)で得られた混合物を温度T1で時間t1反応させるステップ;
3)ステップ2)で得られた材料を温度T2で時間t2反応させるステップ;
4)任意に、ステップ3)で得られた材料に、第2の金属源またはその分散液を添加し、その結果物を温度T2で時間t3反応させるステップ;および
5)得られた液体生成物を回収するステップ。
【0012】
ここで、前記第1および第2の金属源は、それぞれ独立して、元素状金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属オキシ酸、金属無機塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記第1および第2の金属源の金属は、互いに同じであるか、または互いに異なり、それぞれ独立して、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属、およびIB族金属からなる群から選択される1種または2種である。
【0013】
前記有機配位子化合物は、C4-C20有機カルボン酸またはその無水物からなる群から選択される。
【0014】
前記第1および第2の金属源中の前記金属の総量に対する前記有機配位子化合物のモル比は、1~10:1である。
【0015】
前記温度T1は50℃~150℃、前記時間t1は5分~180分、
前記温度T2は100℃~350℃、前記時間t2は1~8時間、
前記時間t3は1時間~8時間である。
【0016】
ただし、前記第1の金属源のみが使用されるか、または前記第2の金属源の金属が前記第1の金属源の金属と同じである場合には、前記第1の金属源の金属は、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属、およびIB族金属からなる群から選択される2種である。
【0017】
さらに別の態様において、本願は、非担持バイメタル水素化処理触媒と、少なくとも1種の有機配位子化合物および/または有機溶媒とを含む、バイメタル水素化処理触媒組成物を提供する。本組成物中では、前記有機配位子化合物はC4-C20有機カルボン酸から選択され、前記有機溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
さらに別の態様において、炭化水素原料を水素化処理するためのプロセスであって、前記炭化水素原料を、本願に係る非担持バイメタル水素化処理触媒またはバイメタル水素化処理触媒組成物と接触させて水素化反応させるステップを含む、プロセスが提供される。
【0019】
さらに別の態様において、本願は、重量%で、10%から45%の水素化処理触媒成分、45%から80%の分散媒、および1.0%から10%の活性剤を含む、非担持触媒組成物を提供する。
【0020】
前記水素化処理触媒成分は、本願による非担持バイメタル水素化処理触媒と、任意にC4-C20有機カルボン酸から選択される有機配位子化合物から構成される。
【0021】
前記分散媒は、有機溶媒、石油留分またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記有機溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記石油留分は、蒸留範囲が150℃~524℃の留出油または沸点>524℃の残留油成分から選択される。
【0022】
前記活性剤は、元素状硫黄、硫黄含有化合物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0023】
さらに別の態様では、重油の水素化アップグレーディングにおける本願の非担持触媒組成物の使用が提供される。
【0024】
さらに別の態様において、本願は、重油原料を、水素および本願の非担持触媒組成物の存在下、加熱条件下で水素化アップグレーディング反応に供するステップを含む、重油の水素化アップグレードのためのプロセスを提供する。前記非担持触媒組成物は、任意で予備硫化されていてもよい。
【0025】
炭化水素の水素化反応に使用する場合、本願による非担持バイメタル水素化処理触媒およびその組成物は、油相への高い分散性、安定性、水素化活性および目的生成物への選択性を示す。一方、本願に係る触媒の調製方法は、原料の数が少なく、調製ステップが簡単で、材料およびエネルギー消費量が少なく、グリーンで効率的な調製手順であるという利点を有し、得られる触媒、特にその中に含まれる金属錯体は、金属含有量が高く、貯蔵安定性が良好である。
【0026】
本願のその他の特徴および利点については、以下の詳細な説明において詳述する。
【0027】
〔図面の簡単な説明〕
本明細書の一部を構成する図面は、本願の理解を助けるために提供されるものであり、限定的なものとみなされるべきではない。本願は、本明細書における以下の詳細な説明と組み合わせて図面を参照して解釈することができる。図面において:
図1図1は、実施例1で得られた生成物のIRスペクトルであり;
図2図2は、実施例2で得られた生成物のIRスペクトルであり;
図3図3は、実施例3で得られた生成物のIRスペクトルであり;
図4図4は、実施例4で得られた生成物のIRスペクトルであり;
図5図5は、実施例5で得られた生成物のIRスペクトルであり;
図6図6は、実施例6で得られた生成物のIRスペクトルであり;
図7図7は、実施例1で得られた触媒をトルエンに溶解した結果を示す画像であり;そして、
図8図8は、実施例3で得られた触媒をトルエンに溶解した結果を示す画像である。
〔発明の実施形態の詳細な説明〕
【0028】
以下、図面およびその具体的な実施形態を参照して、本願をさらに詳細に説明する。なお、本願の具体的な実施形態は、例示のみを目的として提供されるものであり、いかなる意味においても限定を意図するものではないことに留意されたい。
【0029】
本願の文脈において記述される数値範囲の端点を含む任意の特定の数値は、その正確な値に限定されるものではなく、さらに当該正確な値に近いすべての値、例えば当該正確な値の±5%以内のすべての値を包含すると解釈されるべきである。さらに、本明細書に記載された任意の数値範囲に関して、範囲の端点間、各端点と範囲内の任意の特定の値との間、または範囲内の任意の2つの特定の値との間で任意の組み合わせを行い、1つまたは複数の新しい数値範囲を提供することができ、当該新しい数値範囲も本願明細書に具体的に記載されているとみなされるべきである。
【0030】
別段の記載がない限り、本明細書で使用される用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有し、用語が本明細書で定義され、その定義が当技術分野における通常の理解と異なる場合、本明細書で提供される定義が優先されるものとする。
【0031】
本願の文脈において、明示的に記載された事項に加えて、記載されていない事項または事柄は、何ら変更されることなく、当該技術分野において公知のものと同じであるとみなされる。さらに、本明細書に記載された実施形態のいずれかを、本明細書に記載された別の1つまたは複数の実施形態と自由に組み合わせることができ、このようにして得られた技術的解決策またはアイデアは、本願の当初の開示または当初の説明の一部とみなされ、そのような組み合わせが明らかに不合理であることが当業者にとって明らかでない限り、本明細書に開示または予期されていない新規事項であるとみなされるべきではない。
【0032】
本明細書で引用した特許および非特許文献はすべて、本文や記事を含むがこれに限定されず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0033】
上述したように、第一の態様において、本願は、金属の中心原子または中心イオンと有機配位子とが配位結合を介して結合することにより形成された錯体からなる非担持バイメタル水素化処理触媒を提供する。前記金属は、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属およびIB族金属からなる群から選択される2種である。前記有機配位子は、ヒドロカルビル部分と、-C(=O)-O基である配位基とを含み、酸素原子を介して金属中心原子または中心イオンと配位結合を形成しており、触媒は式(I)で表される概略組成を有する:
[R(COO) (I)
ここで、M、Mは金属を表し、R(COO)は前記有機配位子を表し、Rは前記有機配位子のヒドロカルビル基を表し、COOは前記有機配位子の配位基を表し、xは前記有機配位子中の配位基の数を表し、aは前記金属の総量に対する非配位結合を介して前記金属に結合された酸素原子のモル比を表し、bは前記金属の総量に対する前記有機配位子のモル比を表す:
およびMは、互いに異なり、それぞれ独立して、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属、IB族金属からなる群から選択される1種である;
Rは、C3-C19ヒドロカルビル基であり、好ましくは、C5-C11ノルマルアルキル、C5-C11異性体アルキル、シクロアルキル部分を有するC5-C12アルキルおよびC6-C12アリールからなる群から選択される;
xは1、2または3であり、好ましくは1または2である;
aは0~5、好ましくは1~3の正数である;そして
bは1~6、好ましくは2~5の正数である。
【0034】
ここで、触媒は、700cm-1~1000cm-1、1350cm-1~1450cm-1および1500cm-1~1610cm-1の位置に特性ピークを有する赤外スペクトルを示す。
【0035】
本願によれば、非担持バイメタル水素化処理触媒は錯体のみからなり、固体担体成分を含まない。しかしながら、所望により、本願の非担持バイメタル水素化処理触媒は、有機溶媒および有機配位子化合物のような、触媒を分散させることができる液体成分を有する組成物の形態で存在および使用することもできる。
【0036】
本願によれば、本願の錯体において水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属およびIB族金属は、使用する金属に応じて、中心原子の形態であっても中心イオンの形態であってもよい。
【0037】
本願によれば、非担持バイメタル水素化処理触媒は、複数の異なる錯体の混合物であってもよく、触媒中の金属の総量(即ち、金属MおよびMの総量)に対する酸素原子および有機配位子のモル比aおよびbは、金属含有量および元素組成等の分析に基づく計算値であるため、非整数であってもよい。また、組成物中のM、Mは、どの金属が存在するかを示すのみで、金属間のモル比を示すものではない。
【0038】
好ましい実施形態では、触媒中の錯体の少なくとも一部は、式(I-1)で表される構造を有する:
【0039】
【化1】

ここで、MおよびMは、互いに異なり、それぞれ独立して、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属およびIB族金属からなる群から選択される1種である金属を表す;
→は配位結合を表す;
Rは、C3-C19ヒドロカルビル基であり、好ましくは、C5-C11ノルマルアルキル、C5-C11異性体アルキル、シクロアルキル部分を有するC5-C12アルキルおよびC6-C12アリールからなる群から選択される;
xは前記有機配位子中の配位基数を表し、1または2、好ましくは1である;
nは配位数を表し、1~6、好ましくは2~5の正数である;
yは、非配位結合を介して前記金属Mおよび金属Mの両方に結合している酸素原子の数を表し、0または1であり、好ましくは1である;そして
zは、非配位結合を介して前記金属Mにのみ連結している酸素原子の数を表し、0~2の正数、好ましくは0または1である。
【0040】
好ましい実施形態において、触媒の赤外スペクトルにおいて、1350cm-1~1450cm-1の位置の特性ピークと1500cm-1~1610cm-1の位置の特性ピークとの間の距離は、145cm-1より大きい。
【0041】
好ましい実施形態において、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属およびIB族金属は、V、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ru、Ni、CuおよびPdから構成される群から選択され、より好ましくはMo、Ni、W、Fe、VおよびCoからなる群から選択される。
【0042】
本願において、「C3-C19ヒドロカルビル」という用語は、3~19個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を指し、このヒドロカルビル基は飽和または不飽和であってよく、ノルマルヒドロカルビル、異性体ヒドロカルビル、またはシクロアルキル部分を有するヒドロカルビルであってよく、これらに限定されないが、C3-C19ノルマルアルキル、C3-C19異性体アルキル、シクロアルキル部分を有するC5-C19アルキル、およびC6-C19アリールを含む。
【0043】
本願において、用語「C3-C19ノルマルアルキル」は、3~19個の炭素原子、好ましくは5~11個の炭素原子を有するノルマルアルキル基、例えばn-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシルを指す。
【0044】
本願において、用語「C3-C19異性体アルキル」は、3~19個の炭素原子、好ましくは5~11個の炭素原子を有する異性体アルキル基、例えばイソペンチル、イソヘキシル、イソヘプチル、イソオクチル、イソノニル、イソデシル、イソウンデシルを指す。
【0045】
本願において、用語「シクロアルキル部分を有するC5-C19アルキル」は、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、デカヒドロナフチル、メチルデカヒドロナフチル、エチルデカヒドロナフチル等の飽和炭素環を含む、5~19個の炭素原子、好ましくは5~12個の炭素原子を有する飽和ヒドロカルビル基を指す。
【0046】
本願において、用語「C6-C19アリール」は、芳香族環を構成する6~19個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、例えば、フェニル、ナフチル、アントラシル、p-トリル、ベンジル、メチルナフチル、メチルアントラセニル等を指し、好ましくは、6~12個の炭素原子を有するアリール基である。
【0047】
本願によれば、C3-C19ヒドロカルビル基、C3-C19ノルマルアルキル基、C3-C19異性体アルキル基、シクロアルキル部分を有するC5-C19アルキル基、およびC6-C19アリール基は、例えば、任意に、ハロ、ニトロ、スルホン酸基等から選択される1つ以上の基で置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0048】
好ましい実施形態において、錯体中の有機配位子は、C4-C20有機カルボン酸から由来され、好ましくは、C4-C20ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を有するC6-C20ナフテンカルボン酸および芳香環を有するC7-C20芳香族カルボン酸から構成される群から選択される1種以上から由来され、より好ましくは、C6-C12ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を有するC6-C13ナフテンカルボン酸および芳香環を有するC7-C13芳香族カルボン酸からなる群から選択される1種以上から由来され、さらに好ましくは、コハク酸、ヘキサン酸、アジピン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、エチルヘキサン酸、オレイン酸、石油酸、サリチル酸、安息香酸およびフェニル酢酸からなる群から選択される1種以上から由来される。
【0049】
好ましい実施形態では、非担持バイメタル水素化処理触媒は、金属を基準として、触媒重量に対して、5%から35%、好ましくは8%から30%、より好ましくは10%から25%、特に好ましくは10%から20%の金属含有量を有する。
【0050】
好ましい実施形態において、前記非担持バイメタル水素化処理触媒は、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属および/またはIB族金属、それらの酸化物、それらの水酸化物、それらの金属オキシ酸および/またはそれらの金属無機塩を、C4-C20有機カルボン酸、好ましくはC4-C20ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を有するC6-C20ナフテンカルボン酸、芳香環を有するC7-C20芳香族カルボン酸、またはそれらの組み合わせから構成される群から選択される有機配位子化合物と直接反応させることによって得られる。
【0051】
本願によれば、用語「C4-C20ノルマルアルキルカルボン酸」は、ノルマルアルカンに1つ以上のカルボキシル基を結合して得られる4~20個の炭素原子を有するカルボン酸を指し、例えば、酪酸、コハク酸、吉草酸、ヘキサン酸、アジピン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、エチルヘキサン酸、トリデカン酸、オレイン酸等が挙げられる。
【0052】
本願によれば、用語「C4-C20異性体アルキルカルボン酸」は、異性アルカンに1つ以上のカルボキシル基を結合することによって得られる4~20個の炭素原子を有するカルボン酸を指し、例えばイソ酪酸、イソ吉草酸、イソヘキサン酸、エチルヘキサン酸等が挙げられる。
【0053】
本願によれば、「飽和炭素環を有するC6-C20ナフテンカルボン酸」という用語は、飽和炭素環を有するアルカン化合物に1つ以上のカルボキシル基を連結することによって得られる、6~20個の炭素原子を有するカルボン酸を指し、例えば、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカヒドロナフトエ酸、デカヒドロナフトエ酸、デカヒドロナフタレンジカルボン酸等である。
【0054】
本願によれば、用語「芳香族環を有するC7-C20芳香族カルボン酸」は、芳香族炭化水素すなわち芳香族環を有する炭化水素化合物に、1つ以上のカルボキシル基を連結することによって得られる、7~20個の炭素原子を有するカルボン酸を指し、例えば安息香酸、フェニル酢酸、フタル酸、フェニルプロピオン酸である。
【0055】
さらに好ましい実施形態では、前記有機配位子化合物は、C6-C12ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を有するC6-C13ナフテンカルボン酸、芳香環を有するC7-C13芳香族カルボン酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、さらに好ましくは、コハク酸、ヘキサン酸、アジピン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、エチルヘキサン酸、オレイン酸、石油酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0056】
第二の態様において、本願は、以下のステップを含む、非担持バイメタル水素化処理触媒を調製するための方法を提供する:
1)第1の金属源またはその分散液を有機配位子化合物と混合するステップ;
2)ステップ1)で得られた混合物を温度T1で時間t1反応させるステップ;
3)ステップ2)で得られた材料を温度T2で時間t2反応させるステップ;
4)任意に、ステップ3)で得られた材料に第2の金属源またはその分散液を添加し、その結果物を温度T2で時間t3反応させるステップ;および
5)得られた液体生成物を回収するステップ。
【0057】
ここで、前記第1および第2の金属源は、それぞれ独立して、元素金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属オキシ酸、金属無機塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記第1および第2の金属源の金属は、互いに同じであるか、または互いに異なり、それぞれ独立して、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属、およびIB族金属からなる群から選択される1種または2種であり、
前記有機配位子化合物は、C4-C20有機カルボン酸またはその無水物から選択され、
前記有機配位子化合物の、前記第1および第2の金属源中の金属の総量に対するモル比は、1~10:1であり、
前記温度T1は50℃~150℃、好ましくは80℃~120℃、時間t1は5分~180分、好ましくは10分~150分であり、
前記温度T2は100℃~350℃、好ましくは160℃~260℃、時間t2は1時間~8時間、好ましくは2時間~5時間であり、
前記時間t3は1時間~8時間、好ましくは2時間~5時間であり、
ただし、前記第1の金属源のみが使用されるか、または前記第2の金属源の金属が前記第1の金属源の金属と同じである場合には、前記第1の金属源の金属は、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属、およびIB族金属からなる群から選択される2種である。
【0058】
本願の触媒の調製方法は、予備反応ステップ2)(すなわち、温度T1で時間t1だけ予備反応させること)を加えることにより、得られる金属錯体の金属含有量が高くなり、貯蔵安定性が向上したものを提供することができる。
【0059】
本願によれば、ステップ2)、3)および4)で使用される圧力および反応雰囲気は、特に限定されないが、例えば、前記反応圧力は大気圧であってもよく、前記反応雰囲気は空気、窒素または不活性雰囲気であってもよい。
【0060】
好ましい実施形態では、ステップ1)で得られた混合物は、前記第1の金属源と前記有機配位子化合物から構成されるか、または前記第1の金属源、前記第1の金属源を分散させるための分散媒、および前記有機配位子化合物から構成される。
【0061】
本願によれば、ステップ1)において前記有機配位子化合物として使用される前記C4-C20有機カルボン酸は、本願の第1の態様に具体的に記載されているものであってよい。例えば、好ましい実施形態において、前記有機配位子化合物は、C4-C20ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を有するC6-C20ナフテンカルボン酸、芳香環を有するC7-C20芳香族カルボン酸、またはそれらの組み合わせから構成される群から選択され、好ましくは、C6-C12ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を有するC6-C13ナフテンカルボン酸、芳香環を有するC7-C13芳香族カルボン酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、コハク酸、ヘキサン酸、アジピン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、エチルヘキサン酸、オレイン酸、石油酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、またはそれらの組み合わせから構成される群から選択される。
【0062】
本願によれば、前記第1および第2の金属源は、各々独立して、水素化活性を有する1種または2種のVB族、VIB族、VIII族またはIB族の金属を含み得る。これらの金属のうちの2種を含む場合、前記第1および第2の金属源は、各々独立して、2種の金属を含む単一の金属源であってもよく、または各々1種もしくは2種の金属を含む2種以上の金属源の混合物であってもよい。
【0063】
好ましい実施形態では、ステップ4)が使用される場合、前記第2の金属源に含まれる金属の少なくとも一部は、前記第1の金属源に含まれる金属とは異なっており、例えば、前記第1の金属源は1つの金属を含み、前記第2の金属源は前者とは異なる1つの金属を含み、または、前記第1の金属源は1つの金属を含み、前記第2の金属源は2つの金属を含み、そのうちの1つは前記第1の金属源に含まれる金属と同じである。さらに好ましくは、前記第1の金属源と第2の金属源はそれぞれ1つの金属を含み、前記2つの金属源に含まれる金属は異なる。
【0064】
本願によれば、金属に基づいて計算される前記第1の金属源と第2の金属源とのモル比は、任意の値とすることができ、特に限定されない。好ましい実施形態では、前記第1の金属源と第2の金属源の比は1:1-5である。
【0065】
いくつかの特定の実施形態において、本方法は以下のステップを含む:
i)第1の金属源を分散媒に分散させ、第1の金属源の分散液を得る;
ii)ステップi)で得られた分散液に有機配位子化合物を添加し、温度T1に加熱し、前記温度T1で時間t1反応させる;
iii)ステップii)で得られた前記材料を温度T2に加熱し、前記温度T2で時間t2反応させる;および
iv)前記反応終了後に冷却し、前記得られた液体生成物を回収する。
【0066】
他の特定の実施形態では、前記方法は以下のステップを含む:
i)有機配位子化合物に直接第一の金属源を分散させる;
ii)ステップi)で得られた前記混合物を温度T1に加熱し、前記温度T1で時間t1反応させる;
iii)ステップii)で得られた前記材料を温度T2に加熱し、前記温度T2で時間t2反応させる;および
iv)前記反応終了後に冷却し、前記得られた液体生成物を回収する。
【0067】
他の特定の実施形態では、前記方法は以下のステップを含む:
a)第1の金属源またはその分散液を有機配位子化合物に添加する;
b)ステップa)で得られた前記混合物を温度T1に加熱し、前記温度T1で時間t1反応させる;
c)ステップb)で得られた前記材料を温度T2に加熱し、前記温度T2で時間t2反応させる;
d)ステップc)で得られた前記材料に第2の金属源を添加し、前記温度T2で時間t3反応させる;および
e)前記反応終了後に冷却し、前記得られた液体生成物を回収する。
【0068】
本願の方法によれば、前記金属無機塩は、塩化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩等の金属の無機酸塩、または金属オキシ酸のアンモニウム塩等の金属の金属オキシ酸塩であり得る。好ましい実施形態において、前記第1および第2の金属源は、それぞれ独立して、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩化物、金属硫化物、金属硫酸、金属硝酸、金属炭酸、金属オキシ酸、金属オキシ酸塩からなる群から選択され、例えば、V、Mo、W、Fe、Co、Ni、Cu、およびZnの酸化物、水酸化物、塩化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、および炭酸塩、モリブデン酸、タングステン酸、様々な形態のモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0069】
本願の方法によれば、前記金属源の前記分散液中の前記分散媒は、水、炭酸、塩酸、硫酸、またはリン酸から構成される群から選択され得る無機分散媒、または脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、またはそれらの組み合わせから構成される群から選択される有機分散媒であってよく、より好ましくは、エタノール、トルエン、キシレン、石油エーテル、ガソリン、軽油、またはそれらの組み合わせから構成される群から選択される。
【0070】
好ましい実施形態では、第1の金属源分散液中の分散媒と第1の金属源の重量比、および第2の金属源分散液中の分散媒と第2の金属源の重量比は、それぞれ独立して1~25:1、好ましくは2~8:1である。
【0071】
好ましい実施形態では、前記第1の金属源と第2の金属源は、金属を基準として計算したモル比1:1~5で使用される。
【0072】
本願において、前記反応ステップは、反応圧力および反応雰囲気において特に限定されず、例えば、反応圧力は大気圧であってもよく、反応雰囲気は空気、窒素または不活性雰囲気であってもよい。
【0073】
本願によれば、前記反応は水の存在下または非存在下(例えば、有機配位子化合物の重量の0~10倍の量の水の存在下)で実施することができる。
【0074】
本願によれば、前記反応は、金属源、有機配位子化合物および任意の溶媒(例えば、水およびトルエン、エタノール、軽油等の有機溶媒)に加えて、他の成分(例えば、触媒、塩基性pH調整剤等)の非存在下で実施することができる。
【0075】
第3の態様において、本願は、本願による非担持バイメタル水素化処理触媒と、少なくとも1種の有機配位子化合物および/または有機溶媒とを含むバイメタル水素化処理触媒組成物であって、有機配位子化合物がC4-C20有機カルボン酸から選択される、バイメタル水素化処理触媒組成物を提供する。
【0076】
本願によれば、前記バイメタル水素化処理触媒組成物中の有機配位子化合物として含まれる前記C4-C20有機カルボン酸は、本願の前記第1の態様に具体的に記載されたものであってよい。例えば、好ましい実施形態において、前記有機配位子化合物は、C4-C20ノルマルもしくは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を有するC6-C20ナフテンカルボン酸、芳香環を有するC7-C20芳香族カルボン酸、またはそれらの組み合わせから構成される群から選択され、好ましくは、C6-C12ノルマルもしくは異性体アルキルカルボン酸から構成される群から選択され、飽和炭素環を有するC6-C13ナフテンカルボン酸、芳香環を有するC7-C13芳香族カルボン酸、またはそれらの組み合わせ、より好ましくはコハク酸、ヘキサン酸、アジピン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、エチルヘキサン酸、オレイン酸、石油酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、またはそれらの組み合わせから構成される群から選択される。
【0077】
本願において、前記有機溶媒は、前記非担持バイメタル水素化処理触媒と分散又は混和し得るものであれば特に限定されず、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒又はこれらの組み合わせからなる群から選択され得、好ましくは、トルエン、ガソリン、エタノール、軽油又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0078】
好ましい実施形態では、前記組成物の重量に基づいて、前記非担持バイメタル水素化処理触媒は、50%~95%、好ましくは80%~95%の量で存在し、前記有機配位子化合物および前記有機溶媒の合計量は、5%~50%、好ましくは5%~20%である。
【0079】
好ましい実施形態において、前記組成物は、少なくとも1つの有機配位子化合物を含み、前記組成物は、700~1000cm-1、1350~1450cm-1、1500~1100cm-1および1700~1750cm-1の位置に特性ピークを有する赤外スペクトルを示す。ここで、700~1000cm-1、1350~1450cm-1および1500~1610cm-1の位置の前記特性ピークは前記錯体の特性ピークであり、1700~1750cm-1の位置の前記特性ピークは前記有機配位子化合物の特性ピークである。
【0080】
さらに好ましい実施形態では、前記水素化処理触媒組成物は、前記非担持バイメタル水素化処理触媒および少なくとも1種の有機配位子化合物から構成される。この場合、前記水素化処理触媒組成物の組成は、式(I)、M[R(COO)を用いて模式的に表すこともでき、式中、M、M、a、Rおよびxは上記で定義した通りであり、bは、金属MおよびMの合計量に対する前記有機配位子および有機配位子化合物の合計量のモル比を表す。
【0081】
いくつかの特定の実施形態において、前記水素化処理触媒組成物は、油溶解度、貯蔵安定性、および耐酸化性を改善するための他の成分、例えば、ギ酸、シュウ酸、ホルムアルデヒド、エチレンジアミン、オレイルアミン等の還元性および安定性の性能を有する有機材料をさらに含んでもよく、前記他の成分は、前記組成物の0重量%~80重量%、好ましくは0重量%~50重量%の量で存在してもよい。
【0082】
第4の態様において、炭化水素の水素化における、本願による非担持バイメタル水素化処理触媒またはバイメタル水素化処理触媒組成物の使用が提供される。
【0083】
第5の態様において、炭化水素原料を水素化処理するためのプロセスであって、前記炭化水素原料を、水素化反応のために、本願による非担持バイメタル水素化処理触媒またはバイメタル水素化処理触媒組成物と接触させるステップを含む、プロセスが提供される。
【0084】
本願によれば、炭化水素原料は、ベンゼン、アルキルベンゼン、ナフタレン、アルキルナフタレン、アントラセン、アルキルアントラセン等の各種不飽和炭化水素化合物;又は原油、ガソリン、軽油、真空ガス油、残留油等の不飽和炭化水素化合物の混合物とすることができる。
【0085】
好ましい実施形態では、前記水素化反応の条件は、380℃~430℃の反応温度、5MPa~20MPaの初期水素圧力、0.05h-1~1.0h-1の新鮮な供給液の液空間速度、および全体の供給に対して50μg/g~10000μg/gの触媒濃度(金属に基づいて計算)という条件を含む。
【0086】
第6の態様において、本願は、10重量%から45重量%の水素化処理触媒成分、45重量%から80重量%の分散媒、および1.0重量%から10重量%の活性剤を含む非担持触媒組成物を提供する。前記水素化処理触媒成分は、本願の非担持バイメタル水素化処理触媒および任意に有機配位子化合物から構成され、前記有機配位子化合物は、C4-C20有機カルボン酸から選択される。
【0087】
本願によれば、有機配位子化合物として水素化処理触媒成分中に含まれ得るC4-C20有機カルボン酸としては、本願の第1の態様に具体的に記載されたものを挙げることができるが、その詳細な説明はここでは省略する。
【0088】
本願によれば、前記非担持触媒組成物に使用するのに適した前記分散媒は、前記非担持バイメタル水素化処理触媒中の金属-有機錯体の溶解、分散を促進することができる任意の液体材料であることができ、前記触媒を分散させることができる、または前記触媒と混和性であることができる有機溶媒および石油留分が挙げられるが、これらに限定されない。前記有機溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、またはそれらの組み合わせからなる群から選択することができ、好ましくは、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、またはそれらの組み合わせ、例えばn-オクタン、シクロヘキサン、トルエン、およびデカヒドロナフタレンからなる群から選択され、より好ましくは、芳香族溶媒である。前記石油留分は、150℃~524℃の蒸留範囲を有する留出油、または524℃を超える沸点を有する残留油成分、例えば、溶剤ガソリン、AGO留分、LCO、油スラリー、フルフラール抽出物、大気残留物、および真空残留物から選択することができ、好ましくは、芳香族に富む石油留分である。
【0089】
本願によれば、前記非担持触媒組成物に好適な活性剤は、前記非担持バイメタル水素化処理触媒の金属-有機錯体中のM-O結合を活性化して、水素化活性相中にM-S結合を形成することができる材料である。例えば、元素状硫黄、硫黄含有化合物、硫黄含有化合物の混合物、またはそれらの組み合わせであり得、好ましくは、チオール、チオエーテル、二硫化炭素、硫黄、チオフェン化合物、またはそれらの組み合わせから構成される群から選択される。
【0090】
好ましい実施形態において、前記水素化処理触媒成分は、前記非担持触媒組成物の重量を基準として、10%~45%、好ましくは10%~30%の量で存在し、前記分散媒は、45%~80%、好ましくは60%~80%の量で存在し、前記活性剤は、1.0%~10%、好ましくは3.0%~10.0%の量で存在する。
【0091】
第7の態様では、重油の水素化アップグレードにおける本願の非担持触媒組成物の使用が提供される。
【0092】
第8の態様において、本願は、重油原料を、水素および本願の非担持水素化処理触媒組成物の存在下、加熱条件下で水素化アップグレード反応に付すステップを含む、重油の水素化アップグレードプロセスを提供する。この水素化処理触媒組成物は、任意に予備硫黄化されている。
【0093】
好ましい実施形態において、水素化アップグレーディングの条件は以下を含む:重油原料の重量に対して、金属を基準として計算した50μg/g~10000μg/g、好ましくは50μg/g~3000μg/gの非担持触媒組成物の量;5MPa~20MPa、好ましくは5~15MPaの初期水素圧力;360℃~480℃、好ましくは390℃~450℃の反応温度;0.05h-1~2.0h-1、好ましくは0.05~1.0h-1の液空間速度;および300~2000、好ましくは500~1500の水素対油の体積比。
〔実施例〕
以下の実施例を参照して、本願をさらに説明するが、本願はこれに限定されるものではない。
以下の実施例において、特に断りのない限り、使用される試薬および原料は市販の製品であり、化学的に純粋なものである。
以下の実施例において、得られた生成物の金属含有量は、SPECTRO社製プラズマ発光分光分析装置ARCOS SOPを用い、光学チャンバーを密閉してアルゴンガスを封入し、波長130~770nmの垂直観察で測定する条件で、導出結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)により測定した。
以下の実施例において、得られた生成物の元素組成は以下のように決定した:元素C、Hの含有量は、イタリアCara Erba EA1110元素分析装置を用いて、SH0656法に従って決定した;元素Sの含有量は、エネルギー分散X蛍光分光法GB 17040法に従って測定した;そして元素Oの含有量は、O-含有量法によって測定した。
以下の実施例では、得られた生成物の赤外スペクトルを、Thermo Fisher社のNICOLET IS50分光計を用い、走査波長400~4000cm-1、走査回数16回で測定した。ZnSe結晶とHgCdTe赤外線検出器を併用し、試料の減衰全反射率(ATR)を4cm-1の分解能で測定した。
実施例1-6および比較例1
表1に示す量の化合物を秤量し、三口フラスコに入れ、表1に示す条件で反応させた。反応終了後、実施例1-5のフラスコ内の金属化合物は完全に溶解し、未反応の金属化合物が実施例6のフラスコに残った。実施例1~5で得られたフラスコ内の液体反応生成物を注出して目的の触媒生成物を得、実施例6の生成物を濾過して未反応の金属化合物を除去し、目的の触媒生成物を得た。比較例1は、実施例1と同じ原料を用い、若干異なる方法で実施した。触媒の金属含有量は導出結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)を用いて測定し、触媒の元素組成は対応する方法を用いて測定し、金属含有量および元素組成の測定結果に応じて触媒の組成を決定した。実施例1-6および比較例1の使用原料、反応条件および試験結果を表1に示す。
【表1】

表1に示すように、本願の非担持バイメタル触媒またはバイメタル水素化処理触媒組成物の金属含有量は12.30~33.3%とすることができ、触媒中の金属の総量に対する有機配位子のモル比、または触媒中の金属の総量に対する有機配位子と有機配位子化合物との合計量のモル比は1.7~3.7である。
【0094】
実施例1で得られた生成物の元素分析結果を表2に示すが、式(MoNi)O(i-C16COO)で表される生成物の組成におけるaおよびbの値は、表2に示すデータから計算でき、b=0.54/(0.10+0.10)=2.70、a=(1.26-2.0×0.54)/0.20=0.9である。
【0095】
【表2】

実施例3で得られた触媒の元素分析結果を表3に示すが、式(MoCo)O(C16COO)で表される触媒の組成におけるaおよびbの値は、表3に示すデータから計算すると、b=0.54/(0.11+0.11)=2.45、a=(1.36-2.0×0.54)/0.22=1.27となる。
【0096】
【表3】

実施例1~6で得られた触媒のIRスペクトルを図1~6に示す。図1~6から明らかなように、全ての実施例の触媒は、700~1000cm-1、1350~1450cm-1および1500~1610cm-1の位置に特性ピークを示す。
【0097】
図1に示すように、実施例1の触媒は、700~1000cm-1の位置にM-O振動の特性ピークを示し、1350~1450cm-1および1500~1610cm-1の位置に-C(=O)-O基と金属との配位の特性ピークを示し、1350~1450cm-1の位置にある特性ピークと、1500~1610cm-1の位置にある特性ピークとの間の距離(すなわち、それらのピークの頂点の位置に対応する波数の差)が145cm-1を超えることから、下記式で表される単座配位構造を有する錯体が触媒中に存在することがわかる:
【0098】
【化2】

表1のデータから、触媒の調製において、ステップ(2)(すなわち、温度T1での時間t1の予備反応)を加えることにより、実施例1で得られた錯体は、比較例1で得られた錯体と比較して、高い金属含有量を有することがわかる。また、表4のデータから、実施例1で得られた錯体は、比較例1で得られた錯体と比較して、高い保存安定性を示すことがわかる。
【0099】
【表4】

実施例7-8
実施例1および実施例3で得られた触媒生成物をそれぞれトルエンに分散させて、本願の方法で得られた非担持水素化処理触媒の油溶性を評価した。実施例1および実施例3の生成物のトルエンへの溶解および分散結果をそれぞれ図7および図8に示す。図からわかるように、本願に従って合成された非担持水素化処理触媒は、トルエンと完全に混和しており、非担持水素化処理触媒が良好な油溶性を有することがわかる。
【0100】
実施例9-10
実施例1および4で得られた生成物を芳香族炭化水素、すなわちフェナントレンの水素化処理触媒として用い、溶媒としてテトラリンを用い、全反応物(フェナントレン+溶媒)10g中のフェナントレンの質量分率を10%とし、100mlの連続攪拌オートクレーブ中で、初期水素圧9MPa、反応温度420℃、反応時間60分、触媒濃度(金属を基準として算出)2500μg/g(全反応物の重量に対する相対値)の試験条件で反応を行った。試験結果を表5に示す。
【0101】
比較例2
実施例1で得られた生成物を、従来の担持触媒(残留油水素化処理用Ni-Mo担持触媒、Mo含有量9.3質量%、Ni含有量2.52質量%)に金属量換算で等価置換した以外は、実施例9と同様に試験を行った。試験結果を表5に示す。
【0102】
【表5】

表5の結果からわかるように、本願の非担持バイメタル触媒は、担持触媒と比較して、より高いフェナントレン転化率およびより高い深部水素化生成物の収率を示し、担持触媒と比較して、水素化フェナントレンのモル数は72~98%増加した。
【0103】
実施例11~12
実施例1で得られた生成物と有機配位子化合物(すなわち、ヘキサン酸エチル)を質量比95:5の組成物に配合した。この組成物と実施例6で得られた生成物をそれぞれ触媒として用いて、アルキル置換芳香族炭化水素、すなわちドデシルピレンの水素化分解反応を行った。溶媒としてデカヒドロナフタレンを用い、全反応物(ドデシルピレン+溶媒)10g中のドデシルピレンの質量分率は10%とし、反応は、100mlオートクレーブ中で、初期水素圧9MPa、反応温度420℃、反応時間60分、触媒濃度(金属を基準として算出)2500μg/g(全反応物の重量を基準として算出)を含む試験条件下で撹拌しながら行った。試験結果を表6に示す。
【0104】
【表6】

表6の結果から、本願の非担持バイメタル触媒およびその組成物は、いずれもドデシルピレンの分解転化率100%およびドデシルピレンの縮合率0%を達成することができ、実施例6の生成物と比較して、有機配位子化合物をさらに添加した触媒組成物は、高い水素消費量を示し、本願の触媒組成物は、触媒自体と比較して水素活性化活性が高く、同一条件下で水素消費量が高いことがわかる。
【0105】
実施例13-15
アスファルテン含有率14%、コンラッドソンカーボン残渣価26.4%、重金属(Ni+V)含有率210μg/gの真空残渣A200gを原料として、表7に示す触媒および反応条件で、2Lのバッチ式オートクレーブで攪拌しながら、残留油の触媒水熱転化試験を行った。試験結果を表7に示す。
【0106】
比較例3
実施例13で使用した触媒を従来の担持触媒(残留油水素化処理用Ni-Mo担持触媒、Mo含有量9.3質量%、Ni含有量2.52質量%)に代えた以外は、実施例13と同様に試験を行った。試験結果を表7に示す。
【0107】
【表7】

表7の結果からわかるように、本願の非担持バイメタル水素化処理触媒は、従来の担持型触媒と比較して、同じ反応条件下で、残留油の分解率が高く、コーク率が低く、留出油の収率が高い。
【0108】
実施例16-18
実施例1および6の触媒生成物、分散媒、活性剤を用いて非担持水素化処理触媒の組成物を形成した。得られた非担持水素化処理触媒組成物中の各成分の含有量を表8に示す。
【0109】
【表8】

実施例19
実施例17で得られた触媒組成物を、反応温度360℃、初期水素圧5MPa、反応時間30分の条件で予備硫化処理を行い、試験終了後に反応生成物を回収した。
【0110】
実施例20-23
実施例17、18および19の触媒組成物生成物ならびに実施例1の触媒生成物を、それぞれ、アスファルテン含有量12.8%、コンラッドソンカーボン残渣価26.3%および重金属(Ni+V)含有量220μg/gを有する真空残渣B原料200gと混合し、2Lバッチ式オートクレーブ中で、反応温度425℃、初期水素圧9MPaおよび反応時間130分の条件で真空残渣水熱転化試験に供した。試験結果を表9に示す。
【0111】
【表9】

表9に示す実施例21と実施例20の結果の比較から、活性剤を含有する実施例17の非担持触媒組成物は、活性剤を含有しない比較例1の生成物と比較して、残留油転化率がやや高く、アスファルテンのアップグレード率が高く、コークス率が47%低減しており、アスファルテン縮合反応抑制性能が優れていることがわかる。
【0112】
一方、表9に示す実施例22と実施例20の結果の比較から分かるように、有機配位子化合物(即ち、エチルヘキサン酸)を含む実施例17の非担持触媒組成物生成物は、有機配位子化合物を含んでいない実施例18の非担持触媒組成物生成物と比較して、高い残留油転化率、アスファルテンのアップグレード率、および低いコークス率を示す。
【0113】
さらに、表9に示す実施例23と実施例20の結果の比較からわかるように、実施例17の非担持触媒組成物生成物に予備硫化処理を施した場合、残留油転化率およびアスファルテンアップグレード率をさらに向上させることができ、コークス率をさらに低減させることができる。
【0114】
本願は、本明細書において、好ましい実施形態を参照して詳細に説明されているが、は、これらの実施形態に限定されることを意図するものではない。本願の発明概念に従って様々な変更を行うことができ、これらの変更は本願の範囲内であるものとする。
【0115】
上記の実施形態で説明した様々な技術的特徴は、矛盾することなく任意の適切な方法で組み合わせることができることに留意すべきであり、不必要な繰り返しを避けるために、様々な可能性のある組み合わせは本願明細書には記載していないが、そのような組み合わせも本願明細書の範囲内とする。
【0116】
さらに、本願の様々な実施形態は、その組み合わせが本願の精神から逸脱しない限り、任意に組み合わせることができ、そのような組み合わせた実施形態は、本願の開示とみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0117】
本明細書の一部を構成する図面は、本願の理解を助けるために提供されるものであり、限定的なものとみなされるべきではない。本願は、本明細書における以下の詳細な説明と組み合わせて図面を参照して解釈することができる。図面において:
図1図1は、実施例1で得られた生成物のIRスペクトルであり;
図2図2は、実施例2で得られた生成物のIRスペクトルであり;
図3図3は、実施例3で得られた生成物のIRスペクトルであり;
図4図4は、実施例4で得られた生成物のIRスペクトルであり;
図5図5は、実施例5で得られた生成物のIRスペクトルであり;
図6図6は、実施例6で得られた生成物のIRスペクトルであり;
図7図7は、実施例1で得られた触媒をトルエンに溶解した結果を示す画像であり;そして、
図8図8は、実施例3で得られた触媒をトルエンに溶解した結果を示す画像である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属中心原子または中心イオンと有機配位子とが配位結合を介して結合して形成された錯体から構成される非担持バイメタル水素化処理触媒であって、前記触媒は式(I)で表される概略組成を有し、
[R(COO)式(I)
ここで、MおよびMは金属を表し、R(COO)は有機配位子を表し、Rは前記有機配位子のヒドロカルビル基を表し、COOは前記有機配位子の配位基を表し、xは前記有機配位子中の配位基の数を表し、aは非配位結合を介して前記金属に結合された酸素原子の前記金属の総量に対するモル比を表し、bは前記金属の総量に対する前記有機配位子のモル比を表し:
とMは互いに異なり、それぞれ独立して、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属およびIB族金属からなる群から選択される1種であり;
Rは、C3-C19ヒドロカルビル基であり、好ましくは、C5-C11ノルマルアルキル、C5-C11異性体アルキル、シクロアルキル部分を有するC5-C12アルキルおよびC6-C12アリールからなる群から選択され;
xは1、2または3であり、好ましくは1または2であり;
aは0~5、好ましくは1~3の正数であり;そして
bは1~6、好ましくは2~5の正数であり、
前記触媒は、700cm-1~1000cm-1、1350cm-1~1450cm-1および1500cm-1~1610cm-1の位置に特性ピークを有する赤外スペクトルを示す、非担持バイメタル水素化処理触媒。
【請求項2】
前記触媒中の前記錯体の少なくとも一部は式(I-1)で表される構造を有し:
【化1】

ここで、M、M、Rおよびxは請求項1に定義した通りであり;
→は配位結合を表し;
xは前記有機配位子中の配位基の数を表し、1または2、好ましくは1であり;
nは配位数を表し、1~6、好ましくは2~5の正数であり;
yは、非配位結合を介して前記金属Mおよび前記金属Mの両方に結合している酸素原子の数を表し、0または1であり、好ましくは1であり;そして
zは、非配位結合を介して前記金属Mにのみ結合している酸素原子の数を表し、0~2の正数、好ましくは0または1である、請求項1に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒。
【請求項3】
前記触媒のIRスペクトルにおいて、1350~1450cm-1の位置の特性ピークと1500~1610cm-1の位置の特性ピークとの間の距離が145cm-1より大きい、請求項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒。
【請求項4】
水素化活性を有する前記VB族金属、VIB族金属、VIII族金属およびIB族金属は、V、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ru、Ni、CuおよびPdからなる群から選択され、好ましくは、Mo、Ni、W、Fe、VおよびCoからなる群から選択される、請求項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒。
【請求項5】
前記有機配位子が、C4-C20有機カルボン酸に由来し、好ましくは、C4-C20ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C20ナフテンカルボン酸、および芳香環を含むC7-C20芳香族カルボン酸からなる群から選択される1種以上に由来し、より好ましくは、C6-C12ノルマルまたは異性体のアルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C13ナフテンカルボン酸、および芳香環を含むC7-C13芳香族カルボン酸からなる群から選択される1種以上に由来し、さらに好ましくは、コハク酸、ヘキサン酸、アジピン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、エチルヘキサン酸、オレイン酸、石油酸、サリチル酸、安息香酸およびフェニル酢酸からなる群から選択される1種以上に由来する、請求項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒。
【請求項6】
前記触媒が、金属を基準として、前記触媒の重量に対して計算された、5%~35%、好ましくは8%~30%、より好ましくは10%~25%、特に好ましくは10%~20%の金属含有量を有する、請求項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒。
【請求項7】
請求項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒を調製する方法であって、
1)第1の金属源またはその分散液を有機配位子化合物と混合するステップ;
2)ステップ1)で得られた混合物を温度T1で時間t1反応させるステップ;
3)ステップ2)で得られた材料を温度T2で時間t2反応させるステップ;
4)任意に、第2の金属源またはその分散液を、ステップ3)で得られた材料に添加し、その結果物を温度T2で時間t3反応させるステップ;および
5)得られた液体生成物を回収するステップ、を含み、
前記第1および第2の金属源は、それぞれ独立して、元素状金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属オキシ酸、金属無機塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記第1および第2の金属源の前記金属は、互いに同じであるか、または互いに異なり、それぞれ独立して、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属、およびIB族金属からなる群から選択される1種または2種であり、
前記有機配位子化合物は、C4-C20有機カルボン酸またはその無水物から選択され、好ましくは、C4-C20ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C20ナフテンカルボン酸、芳香環を含むC7-C20芳香族カルボン酸もしくはその無水物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記第1および第2の金属源中の金属の総量に対する前記有機配位子化合物のモル比は、1~10:1であり、
前記温度T1は50℃~150℃、好ましくは80℃~120℃であり、前記時間t1は5分~180分、好ましくは10分~150分であり、
前記温度T2は100℃~350℃、好ましくは160℃~260℃であり、前記時間t2は1時間~8時間、好ましくは2時間~5時間であり、
前記時間t3は1時間~8時間、好ましくは2時間~5時間であり、
ただし、前記第1の金属源のみを使用するか、または、前記第2の金属源の金属が前記第1の金属源の金属と同じである場合には、前記第1の金属源の金属は、水素化活性を有するVB族金属、VIB族金属、VIII族金属、およびIB族金属からなる群から選択される2種である、方法。
【請求項8】
ステップ1)で得られた前記混合物が、前記第1の金属源と前記有機配位子化合物とからなり;または、
ステップ1)で得られた前記混合物は、前記第1の金属源、前記第1の金属源を分散させるための分散媒、および前記有機配位子化合物からなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の金属源が、それぞれ独立して、元素状金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属硝酸塩、金属炭酸塩、金属オキシ酸、金属オキシ酸の塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
金属源の分散液を使用する場合、前記分散液中の前記分散媒が、水、炭酸、塩酸、硫酸もしくはリン酸からなる群から選択される無機分散媒、または、エタノール、トルエン、キシレン、石油エーテル、ガソリン、軽油もしくはそれらの組み合わせからなる群から選択される有機分散媒であり、
好ましくは、前記第1の金属源に対する前記第1の金属源の前記分散液中の前記分散媒の重量比、および前記第2の金属源に対する前記第2の金属源の前記分散液中の前記分散媒の重量比は、それぞれ独立して1~25:1、より好ましくは2~8:1である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の金属源および第2の金属源を、金属に基づいて計算される1:1~5のモル比で使用する、請求項に記載の方法。
【請求項12】
請求項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒と、少なくとも1種の有機配位子化合物および/または有機溶媒とを含む、バイメタル水素化処理触媒組成物であって、
前記有機配位子化合物は、C4-C20有機カルボン酸から選択され、好ましくは、C4-C20ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C20ナフテンカルボン酸、芳香環含むC7-C20芳香族カルボン酸またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、C6-C12ノルマルまたは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C13ナフテンカルボン酸、芳香環を含むC7-C13芳香族カルボン酸またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、さらに好ましくは、コハク酸、ヘキサン酸、アジピン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、エチルヘキサン酸、オレイン酸、石油酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸またはそれらの組み合わせからなる群から選択され;
前記有機溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、トルエン、ガソリン、エタノール、軽油またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物。
【請求項13】
前記組成物は少なくとも1つの有機配位子化合物を含み、前記組成物は700~1000cm-1、1350~1450cm-1、1500~1610cm-1および1700~1750cm-1の位置に特性ピークを有する赤外スペクトルを示す、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の重量に基づいて、前記非担持バイメタル水素化処理触媒が50%~95%、好ましくは80%~95%の量で存在し、前記有機配位子化合物および前記有機溶媒の合計量が、5%~50%、好ましくは5%~20%である、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
炭化水素原料を水素化処理する方法であって、炭化水素原料を、請求項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒と接触させて水素化反応させるステップを含み、前記炭化水素原料が、ベンゼン、アルキルベンゼン、ナフタレン、アルキルナフタレン、アントラセン、アルキルアントラセン等の不飽和炭化水素化合物、または、原油、ガソリン、軽油、減圧ガス油、残留油等の不飽和炭化水素化合物を含む混合物である、方法。
【請求項16】
重油の水素化に適した非担持触媒組成物であって、10重量%~45重量%の水素化処理触媒成分、45重量%~80重量%の分散媒、および、1.0重量%~10重量%の活性剤を含み、
前記水素化処理触媒成分は、請求項に記載の非担持バイメタル水素化処理触媒と、任意に有機配位子化合物とからなり、前記有機配位子化合物はC4-C20有機カルボン酸から選択され、
前記分散媒は、有機溶媒、石油留分またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記有機溶媒は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記石油留分は、150℃~524℃の蒸留範囲を有する留出油または沸点が524℃を超える残留油成分から選択され、
前記活性剤は、元素状硫黄、硫黄含有化合物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、チオール、チオエーテル、二硫化炭素、硫黄、チオフェン化合物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、組成物。
【請求項17】
前記有機配位子化合物が、C4-C20ノルマルもしくは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C20ナフテンカルボン酸、芳香環を含むC7-C20芳香族カルボン酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、C6-C12ノルマルもしくは異性体アルキルカルボン酸、飽和炭素環を含むC6-C13ナフテンカルボン酸、芳香環を含むC7-C13芳香族カルボン酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、さらに好ましくは、コハク酸、ヘキサン酸、アジピン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、エチルヘキサン酸、オレイン酸、石油酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記水素化処理触媒成分が、前記水素化処理触媒成分の重量に基づいて、5%~35%、好ましくは8%~30%、より好ましくは10%~25%、特に好ましくは10%~20%の金属含有量、および0%~50%、好ましくは5%~50%、より好ましくは5%~20%の有機配位子化合物含有量を有する、請求項16に記載の非担持触媒組成物。
【請求項19】
前記水素化処理触媒成分が、請求項に記載の方法によって得られる前記液体生成物である、請求項16に記載の非担持触媒組成物。
【請求項20】
請求項16に記載の非担持触媒組成物の重油の水素化アップグレーディングでの使用。
【請求項21】
重油を水素化アップグレーディングする方法であって、重油を、水素および請求項16に記載の非担持触媒組成物の存在下、加熱条件下で水素化アップグレーディング反応に供するステップを含み、前記非担持触媒組成物は、任意に予備硫化されている、方法。
【請求項22】
前記水素化アップグレーディングの条件は、金属を基準として前記重油の重量に対して計算した前記非担持触媒組成物の量が50μg/g~10000μg/g、初期水素圧力が5MPa~20MPa、反応温度が360℃~480℃、液空間速度が0.05h-1~2.0h-1、および水素対油の体積比が300~2000であることを含み;
好ましくは、前記水素化アップグレーディングの条件は、金属を基準として前記重油の重量に対して計算した前記非担持触媒組成物の量が50μg/g~3000μg/g、初期水素圧力が5MPa~15MPa、反応温度が390℃~450℃、液空間速度が0.05~1.0h-1、水素対油の体積比が500~1500であることを含む、請求項20に記載の使
【国際調査報告】