(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】水性フッ化ポリビニリデンコーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 127/16 20060101AFI20241010BHJP
C08L 27/16 20060101ALI20241010BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20241010BHJP
C08K 5/06 20060101ALI20241010BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241010BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20241010BHJP
【FI】
C09D127/16
C08L27/16
C08L71/02
C08K5/06
C09D7/63
C09D7/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525028
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 CN2021128873
(87)【国際公開番号】W WO2023077398
(87)【国際公開日】2023-05-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ガオ、ペン
(72)【発明者】
【氏名】シェン、チェン
(72)【発明者】
【氏名】ホー、メイジア
(72)【発明者】
【氏名】シェン、チェンボー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002BD141
4J002CH022
4J002ED026
4J002ED036
4J002FD312
4J002FD316
4J002GH00
4J002HA06
4J038CB122
4J038CD111
4J038HA156
4J038JA26
4J038KA09
4J038MA10
4J038NA26
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC07
4J038PC08
(57)【要約】
コーティング組成物は、水と、複数のフッ化ポリビニリデン粒子と、5以上の疎水性物質分岐度を有する界面活性剤とを含み、組成物は、フッ素化界面活性剤を含まない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物であって、
水と、
複数のフッ化ポリビニリデン粒子と、
5以上の疎水性物質分岐度を有する界面活性剤と、を含み、
前記組成物が、フッ素化界面活性剤を含まない、コーティング組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記フッ化ポリビニリデン粒子に対する前記界面活性剤の重量比が、2.0%~15.0%である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物の総重量に基づいて、20重量%~70重量%の前記フッ化ポリビニリデン粒子を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
0.1重量%~10.0重量%の分散剤を更に含み、前記分散剤が、ジイソブチレンと無水マレイン酸とのランダムコポリマーである、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
0.1重量%~10.0重量%の分散剤を更に含み、前記分散剤が、構造(II):
【化1】
を有し、式中、各AOが独立して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、及びランダム又はブロック順のこれらの組み合わせであり得、更に、構造(II)の各nが独立して、5~40であり得る、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、構造(I):
【化2】
を有し、構造(I)のnが、3~11であり、各nのR
1が独立して、H、又は1若しくは2個の炭素を有するアルキルからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
構造(I)のnが、8~11であり、R
1が、Hである、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
コーティング組成物を形成する方法であって、
複数のフッ化ポリビニリデン粒子を、水と5以上の疎水性物質分岐度を有する界面活性剤との混合物中に分散させるステップを含み、前記組成物が、フッ素化界面活性剤を含まない、方法。
【請求項10】
基材をコーティングする方法であって、
請求項9に記載のコーティング組成物を基材に塗布するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コーティング組成物に関し、より具体的には、フッ化ポリビニリデンを含むコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
フッ化ポリビニリデン(「PVDF」)、及びポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)などの他のフルオロポリマーは典型的に、多段階プロセスで形成される。例えば、米国特許出願公開第2021/0032381号は、PTFEの生産に頻繁に使用される方法がフッ素化モノマーの水性乳化重合を含むことを説明している。水性乳化重合は典型的に、フッ素化界面活性剤を使用し、ポリオキシエチレンアルキルエーテル界面活性剤などの非イオン性界面活性剤を含み得る。フッ素化界面活性剤は、乳剤を維持するのに必須である。乳化重合の完了後、固体を濃縮して、フッ素化界面活性剤を除去するステップが行われる。次いで、固体フルオロポリマーを回収し、使用することができる。
【0003】
PVDFは、溶媒、化学物質、天候、及び熱に対する良好な耐性を提供する、高性能コーティングの作製に使用されるフルオロポリマーである。PTFE及び他のフルオロポリマーとは異なり、PVDFは、完全フッ素化ポリマーではなく、CH2CF2の反復化学構造を有する。この独特な化学構造は、低い表面エネルギー、及び1.8グラム/立方センチメートル(「g/cc」)~1.9g/ccの比較的高い密度を有するPVDFをもたらす。PVDFの低い表面エネルギー及び高い密度は典型的に、水性分散液中で使用される場合にPVDF粒子の凝集及び分離をもたらし、したがって、典型的に、フッ素化界面活性剤が使用される。コーティング用途におけるそのような水性分散液の使用は、凝集及び分離が基材上の粒子の不均一なコーティングをもたらすため、困難である。加えて、凝集体は、水性分散液の形成から7日未満のうちにきつく密集する傾向がある。きつく密集した凝集体は、もはや再分散させることができず、それによって水性分散液の可使時間を制限する。したがって、その均一性を保持することができるか、又は7日の期間後に少なくとも再分散可能である、安定な分散液を達成することが有利であろう。
【0004】
フッ素化界面活性剤は典型的に、安定な水性分散液の作製に必要とされるが、フッ素化界面活性剤を含めることは、廃棄に関する環境への懸念を呈する。フッ素化界面活性剤なしで安定なPVDF水性分散液を作製する様々な試みが、試されてきた。例えば、米国特許出願公開第2015/0030906号は、非フッ素化界面活性剤を使用するPVDFの水性分散液の形成を提供しているが、そのような分散液は、PVDFが急速に凝集及び分離する傾向があるため、すぐに使用される。
【0005】
上記の教示を考慮すると、最初は均一であり、7日の期間後に再分散可能であるPVDFの水性分散液の発見は、驚くべきことであろう。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、最初は均一であり、7日の期間後に再分散可能であるPVDFの水性分散液を提供する。本発明は、高度に分岐した界面活性剤が、最初に均一なPVDFの水性分散液を作製することができることだけでなく、高度に分岐した界面活性剤が、延長した貯蔵時間後にPVDFの再分散可能性を維持することができることも発見した結果である。理論に拘束されるものではないが、5以上の疎水性物質分岐度を有する界面活性剤は、少なくとも部分的には立体障害によって、PVDF粒子の緊密な凝集を防止することができると考えられる。PVDF粒子の緊密な凝集を防止することによって、水性分散液は、経時的に均一な分散液を維持することができるか、又は急速に再分散可能であることができる。
【0007】
本開示は、コーティング組成物の形成に特に有用である。
【0008】
本開示の第1の特徴によれば、コーティング組成物は、水と、複数のフッ化ポリビニリデン粒子と、5以上の疎水性物質分岐度を有する界面活性剤とを含み、組成物は、フッ素化界面活性剤を含まない。
【0009】
本開示の第2の特徴によれば、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。
【0010】
本開示の第3の特徴によれば、フッ化ポリビニリデン粒子に対する界面活性剤の重量比は、2.0%~15.0%である。
【0011】
本開示の第4の特徴によれば、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、20重量%~70重量%のフッ化ポリビニリデン粒子を含む。
【0012】
本開示の第5の特徴によれば、コーティング組成物は、0.1重量%~10.0重量%の分散剤を更に含み、分散剤は、ジイソブチレンと無水マレイン酸とのランダムコポリマーである。
【0013】
本開示の第6の特徴によれば、コーティング組成物は、0.1重量%~10.0重量%の分散剤を更に含み、分散剤は、構造(II)を有し、式中、各AOは独立して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、及びランダム又はブロック順のこれらの組み合わせであり得、更に、構造(II)の各nは独立して、5~40であり得る。
【0014】
本開示の第7の特徴によれば、界面活性剤は、構造(I)を有し、構造(I)のnは、3~11であり、各nのR1は独立して、H、又は1若しくは2個の炭素を有するアルキルからなる群から選択される。
【0015】
本開示の第8の特徴によれば、構造(I)のnは、8~11であり、R1は、Hである。
【0016】
本開示の第9の特徴によれば、方法は、複数のフッ化ポリビニリデン粒子を、水と5以上の疎水性物質分岐度を有する界面活性剤との混合物中に分散させるステップを含み、組成物は、フッ素化界面活性剤を含まない。
【0017】
本開示の第10の特徴によれば、基材をコーティングする方法は、請求項9に記載のコーティング組成物を基材に塗布するステップを含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物は、Aを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0019】
別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。
【0020】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分が、コーティング組成物の総重量に占める重量パーセンテージを示す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「CAS番号」は、Chemical Abstracts Serviceによって割り当てられたケミカルサービス登録番号である。
【0022】
コーティング組成物
本開示は、コーティング組成物を対象とする。コーティング組成物は、水と、複数のフッ化ポリビニリデン粒子と、5以上の疎水性物質分岐度を有する界面活性剤とを含む。コーティング組成物は、フッ素化界面活性剤を含まない。本明細書で使用される場合、「含まない(free of)」という用語は、コーティング組成物が、それが含まないとされる材料を0.001重量%以下含むことを意味すると定義される。コーティング組成物は、分散剤及び/又は他の添加剤を含み得る。例えば、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、一方で同時に、70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下の水を含み得る。コーティング組成物は、電池セパレータ上のコーティングの形成、及び水性分散液を使用するPVDF粒子の均一な堆積が有利である他の用途において有用であり得る。更に、コーティング組成物はフッ素化界面活性剤を含まないため、コーティング組成物は、関連する環境への影響がより少ない。
【0023】
フッ化ポリビニリデン
コーティング組成物は、フッ化ポリビニリデンを含む。PVDFは、複数の粒子の形態である。PVDFは、ホモポリマー、コポリマー、及びターポリマーをその意味の範囲内に含み得る。PVDFは、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、他のモノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーと共重合した、50モルパーセント(「モル%」)以上、又は75モル%以上、又は80モル%以上、又は85モル%以上のフッ化ポリビニリデンであり得る。PVDFは、100モル%のフッ化ポリビニリデンであってもよく、追加のコモノマーを含有しなくてもよい。PVDF粒子は、20nm以上、又は50nm以上、又は100nm以上、又は200nm以上、又は300nm以上、又は400nm以上、又は500nm以下の直径又は最大長さ寸法を有し得る。PVDFは、水性フリーラジカル乳化重合、懸濁重合、溶液重合、及び超臨界CO2重合によって形成することができる。
【0024】
例えば、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、一方で同時に、70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は25重量%以下のPVDF粒子を含み得る。
【0025】
界面活性剤
コーティング組成物は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、疎水性部分(「疎水性物質」)及び親水性部分の両方を含む。界面活性剤の疎水性物質は、直鎖状(すなわち、直鎖)又は分岐状(したがって、2以上の分岐度を有する)であってもよい。分岐度は、疎水性物質の主鎖から伸びる疎水性部分の数を数えることによって決定される。界面活性剤は、5以上、又は6以上、又は7以上、又は8以上、又は9以上の疎水性物質分岐度を有する。界面活性剤は、単一の界面活性剤又は界面活性剤の混合物であり得る。界面活性剤は、構造(I)
【0026】
【化1】
によって特徴付けることができ、構造(I)のnは、3~11であり、各nのR
1は独立して、H、又は1若しくは2個の炭素を有するアルキルからなる群から選択される。例えば、構造(I)のnは、3、又は4、又は5、又は6、又は7、又は8、又は9、又は10、又は11であり得る。
【0027】
コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~10.0重量%の界面活性剤を含む。例えば、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0.1重量%以上、又は0.5重量%以上、又は1.0重量%以上、又は1.5重量%以上、又は2.0重量%以上、又は2.5重量%以上、又は3.0重量%以上、又は3.5重量%以上、又は4.0重量%以上、又は4.5重量%以上、又は5.0重量%以上、又は5.5重量%以上、又は6.0重量%以上、又は6.5重量%以上、又は7.0重量%以上、又は7.5重量%以上、又は8.0重量%以上、又は8.5重量%以上、又は9.0重量%以上、又は9.5重量%以上、一方で同時に、10.0重量%以下、又は9.5重量%以下、又は9.0重量%以下、又は8.5重量%以下、又は8.0重量%以下、又は7.5重量%以下、又は7.0重量%以下、又は6.5重量%以下、又は6.0重量%以下、又は5.5重量%以下、又は5.0重量%以下、又は4.5重量%以下、又は4.0重量%以下、又は3.5重量%以下、又は3.0重量%以下、又は2.5重量%以下、又は2.0重量%以下、又は1.5重量%以下、又は1.0重量%以下、又は0.5重量%以下、又は0.2重量%以下の界面活性剤を含み得る。
【0028】
コーティング組成物は、2%~15%の界面活性剤対PVDFの重量比を有し得る。例えば、界面活性剤対PVDFの重量比は、2.0%以上、又は2.5%以上、又は3.0%以上、又は3.5%以上、又は4.0%以上、又は4.5%以上、又は5.0%以上、又は5.5%以上、又は6.0%以上、又は6.5%以上、又は7.0%以上、又は7.5%以上、又は8.0%以上、又は8.5%以上、又は9.0%以上、又は9.5%以上、又は10.0%以上、又は10.5%以上、又は11.0%以上、又は11.5%以上、又は12.0%以上、又は12.5%以上、又は13.0%以上、又は13.5%以上、又は14.0%以上、又は14.5%以上、一方で同時に、15.0%以下、又は14.5%以下、又は14.0%以下、又は13.5%以下、又は13.0%以下、又は12.5%以下、又は12.0%以下、又は11.5%以上、又は11.0%以下、又は10.5%以下、又は10.0%以下、又は9.5%以下、又は9.0%以下、又は8.5%以下、又は8.0%以下、又は7.5%以下、又は7.0%以下、又は6.5%以下、又は6.0%以下、又は5.5%以下、又は5.0%以下、又は4.5%以下、又は4.0%以下、又は3.5%以下、又は3.0%以下、又は2.5%以下であり得る。PVDFに対する界面活性剤の重量比は、以下に詳細に説明されるように決定される。
【0029】
分散剤
コーティング組成物は、1つ以上の分散剤を含み得る。本開示の目的では、分散剤は、液体中の固体粒子の懸濁液に添加された場合に、粒子の分散を促進するか、又は懸濁液中の分散した粒子を維持する、非界面活性剤材料である。分散剤には、無機分散剤、ポリマー分散剤、及び小分子分散剤が含まれ得る。分散剤は、ジイソブチレン(CAS番号25167-70-8)と無水マレイン酸(CAS番号108-31-6)とのコポリマーであり得る。そのような一例では、分散剤は、分散剤の総重量に基づいて、30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、一方で同時に、70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下のジイソブチレンを含み得る。分散剤は、分散剤の総重量に基づいて、30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、一方で同時に、70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下の無水マレイン酸を含み得る。
【0030】
分散剤のジイソブチレン及び無水マレイン酸コポリマーの例では、分散剤は、10,000ダルトン~30,000ダルトンの重量平均分子量を有し得る。例えば、分散剤は、10,000ダルトン以上、又は11,000ダルトン以上、又は12,000ダルトン以上、又は13,000ダルトン以上、又は14,000ダルトン以上、又は15,000ダルトン以上、又は16,000ダルトン以上、又は17,000ダルトン以上、又は18,000ダルトン以上、又は19,000ダルトン以上、又は20,000ダルトン以上、又は21,000ダルトン以上、又は22,000ダルトン以上、又は23,000ダルトン以上、又は24,000ダルトン以上、又は25,000ダルトン以上、又は26,000ダルトン以上、又は27,000ダルトン以上、又は28,000ダルトン以上、又は29,000ダルトン以上、一方で同時に、30,000ダルトン以下、又は29,000ダルトン以下、又は28,000ダルトン以下、又は27,000ダルトン以下、又は26,000ダルトン以下、又は25,000ダルトン以下、又は24,000ダルトン以下、又は23,000ダルトン以下、又は22,000ダルトン以下、又は21,000ダルトン以下、又は20,000ダルトン以下、又は19,000ダルトン以下、又は18,000ダルトン以下、又は17,000ダルトン以下、又は16,000ダルトン以下、又は15,000ダルトン以下、又は14,000ダルトン以下、又は13,000ダルトン以下、又は12,000ダルトン以下、又は11,000ダルトン以下の重量平均分子量を有し得る。分散剤の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィを使用して決定される。
【0031】
好適な分散剤の別の例には、構造(II):
【0032】
【化2】
によって特徴付けられる化合物が含まれ、式中、各アルキレンオキシド(「AO」)は独立して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、及び/又はランダム若しくはブロック順のこれらの組み合わせであり得る。構造(II)の各nは独立して、5~40であり得る。例えば、nは、5以上、又は10以上、又は15以上、又は20以上、又は25以上、又は30以上、又は35以上、一方で同時に、40以下、又は35以下、又は30以下、又は25以下、又は20以下、又は15以下、又は10以下、又は9以下、又は8以下、又は7以下、又は6以下であり得る。エチレンオキシドは、構造(II)の全重量の25重量%以上を占めてもよい。例えば、エチレンオキシドは、25重量%以上、又は30重量%以上、又は40重量%以上、又は50重量%以上、又は60重量%以上、又は70重量%以上、又は80重量%以上、一方で同時に、90重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下、又は50重量%以下、又は40重量%以下、又は30重量%以下を占めてもよい。
【0033】
コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0重量%の分散剤、又は0.1重量%~10.0重量%の分散剤を含み得る。例えば、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0.1重量%以上、又は0.5重量%以上、又は1.0重量%以上、又は1.5重量%以上、又は2.0重量%以上、又は2.5重量%以上、又は3.0重量%以上、又は3.5重量%以上、又は4.0重量%以上、又は4.5重量%以上、又は5.0重量%以上、又は5.5重量%以上、又は6.0重量%以上、又は6.5重量%以上、又は7.0重量%以上、又は7.5重量%以上、又は8.0重量%以上、又は8.5重量%以上、又は9.0重量%以上、又は9.5重量%以上、一方で同時に、10.0重量%以下、又は9.5重量%以下、又は9.0重量%以下、又は8.5重量%以下、又は8.0重量%以下、又は7.5重量%以下、又は7.0重量%以下、又は6.5重量%以下、又は6.0重量%以下、又は5.5重量%以下、又は5.0重量%以下、又は4.5重量%以下、又は4.0重量%以下、又は3.5重量%以下、又は3.0重量%以下、又は2.5重量%以下、又は2.0重量%以下、又は1.5重量%以下、又は1.0重量%以下、又は0.5重量%以下、又は0.2重量%以下の分散剤を含み得る。
【0034】
コーティング組成物を作製する方法及び基材をコーティングする方法
コーティング組成物は、複数のフッ化ポリビニリデン粒子を、水と5以上の疎水性物質分岐度を有する界面活性剤との混合物中に分散させるステップを含む方法によって形成され、組成物は、フッ素化界面活性剤を含まない。フッ化ポリビニリデン粒子を水と界面活性剤との混合物中に分散させる行為は、様々な方法で達成することができる。例えば、コーティング組成物を、ビーズ(例えば、ガラス、ZrO、Al2O3など)とともに粉砕ジャーに入れ、所定の時間粉砕することができる。そのような粉砕方法は、PVDF粒子が分散液中で所望されるよりも大きいサイズでコーティング組成物中に添加される場合に、有利に使用される。加えて、又は代替的に、PVDF粒子は、組み合わされた水及び界面活性剤において直接混合又は撹拌されてもよい。PVDF粒子、界面活性剤、水、分散剤、及び任意の他の添加剤は、任意の順序で一緒に添加され得ることが理解されるであろう。
【0035】
コーティング組成物は、コーティングされた基材の形成に有用である。基材をコーティングする方法は、コーティング組成物を基材に塗布するステップを使用して行うことができる。コーティング組成物は、様々な様式で基材に塗布することができる。例えば、基材を組成物中に浸漬してもよく、組成物を基材上に噴霧してもよく、基材がコーティング組成物から離れた浴を通過する連続シートであってもよく、かつ/又はコーティング組成物を基材に塗布する他の方法であってもよい。基材には、ポリマー材料、金属、セラミック、無定形材料(例えば、ガラス)、及び/又は他の種類の材料が含まれ得る。ポリマー材料基材の例には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリオレフィンエラストマー、1つ以上のアルファオレフィンと別のモノマーとのコポリマー、及び他の種類のポリマー材料であり含まれ得る。例示的な使用では、コーティング組成物をポリマー基材に塗布して、電池用のセパレータ層を形成することができる。
【実施例】
【0036】
材料
以下の材料を、本発明の実施例(「inventive examples、IE」)及び比較例(「comparative example、CE」)の形成に使用した。
【0037】
界面活性剤1は、90重量%の活性水溶液、及び構造(I)(nは8であり、R1はHである)を有する界面活性剤である。界面活性剤1は、5の疎水性物質分岐度を有する。界面活性剤1は、The Dow Chemical Company、Midland Michiganから入手可能である。
【0038】
界面活性剤2は、90重量%の活性水溶液、及び構造(I)(nは11であり、R1はHである)を有する界面活性剤である。界面活性剤2は、5の疎水性物質分岐度を有する。界面活性剤2は、The Dow Chemical Company、Midland Michiganから入手可能である。
【0039】
分散剤1は、ジイソブチレンの45重量%~55重量%のモノマー構造単位から形成され、残りは、無水マレイン酸である。分散剤は、約16,500ダルトンの重量平均分子量を有し、The Dow Chemical Company、Midland Michiganから入手可能である。
【0040】
分散剤2は、構造(II)を有する分散剤であり、式中、各AO鎖は、ブロック順のエチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位で構成され、平均反復単位nは、各分岐において約37である。分散剤2は、The Dow Chemical Company、Midland Michiganから入手可能である。
【0041】
界面活性剤3は、4の疎水性物質分岐度を有する3,5,5-トリメチルヘキシルエトキシレートであり、Sigma Aldrich、St.Louis Missouriから入手可能である。
【0042】
界面活性剤4は、64366-70-7のCAS番号及び2の疎水性物質分岐度を有する、2-エチルヘキサノールEO-PO非イオン性界面活性剤である。界面活性剤4は、The Dow Chemical Company、Midland Michiganから入手可能である。
【0043】
界面活性剤5は、84133-50-6のCAS番号及び2の疎水性物質分岐を有するC12-14-二級アルコールエトキソレート(ethoxolates)である。界面活性剤5は、The Dow Chemical Company、Midland Michiganから入手可能である。
【0044】
界面活性剤6は、4の平均疎水性物質分岐を有するイソトリデシルアルコールエトキシレートであり、BASF corporation、Ludwigshafen,GermanyからLUTENSOL(商標)TOとして市販されている。
【0045】
PVDFは、Arkema、Colombes,FranceからKYNAR(商標)HSV900として市販されているフッ化ポリビニリデンホモポリマー粒子である。
【0046】
ZrOビーズは、Sinopharm Chem.Reagent Co.Ltd.、Chinaからの直径0.8~1.2mmのZrOビーズであった。
【0047】
試料の調製
界面活性剤、PVDF粉末、分散剤(IE1)、及び水の予め混合した混合物を粉砕ジャーに充填することによって、比較例及び本発明の実施例を調製した。ZrOビーズを秤量し、添加した。Shanghai Dedongからのサンドミル機にジャーを設置し、粉砕プロセスの開始前に粉砕ジャーに対する水冷を開始した。粉砕プロセスを、1400回転/分で4時間にわたって行った。割り当てられた時間の後、粉砕された混合物を500メッシュナイロン篩に通すことによって、ZrOビーズを濾別した。FEI CompanyからのNOVA(商標)Nanosem630走査型電子顕微鏡による特徴付けのために、粉砕されたPVDF分散液試料を導電性テープに塗布した。凝集及び沈降を観察するために、全ての実施例を撹拌せずに約23℃で7日間保管した。存在する界面活性剤(界面活性剤中のあらゆる希釈剤を考慮に入れる)のグラム単位の重量をPVDF粒子のグラム単位の重量で割り、100を掛けることによって、PVDFに対する界面活性剤の重量比を計算する。実施例を、目視によって、及び走査型電子顕微鏡の使用の両方で評価した。保管後に再分散させることができなかった実施例は、凝集したもの、又は緊密に凝集したものと称され、これらの差異は、撹拌によってジャーの底から遊離され得る材料の量である。PVDFを撹拌して、均一な分散を再開することができた実施例は、再分散可能なものとして分類した。
【0048】
結果
表1は、IE1~IE5及びCE1~CE4の組成を提供する。実施例の構成物は、グラム単位で提供する。
【0049】
【0050】
表2は、初期分散液の外観、7日間の保管後の形態、及び存在する平均粒径ピークに関する、使用した異なる界面活性剤の結果を提供する。
【0051】
【0052】
ここで、表1及び2を参照すると、全ての本発明の実施例並びに比較例1及び4は、粉砕プロセス後に均一な乳状分散液を示した。しかしながら、23℃で7日間の保管後、CE1~CE4は相分離を示し、これは試料容器の底に強い堆積物の形成をもたらした。CE1~CE4の堆積物は、手動振盪では再分散させることができなかった。IE1は、7日間の保管後も均一なままであった。IE2~IE5は相分離を示したが、堆積物は手動振盪で再分散させることができた。CE1~CE4は、4以下の疎水性物質分岐を有する界面活性剤の選択が、異なる界面活性剤が使用されているにもかかわらず、凝集を防止することができないことを実証している。しかしながら、5の疎水性物質分岐を有する界面活性剤を利用するIE1~IE5は全て、最初は均一であり、7日の期間後に再分散可能である、PVDFの水性分散液を達成することができる。6以上の疎水性物質分岐度を有する界面活性剤は、凝集に対して同じ耐性を示し、立体障害効果が更により大きいために、再分散可能であると考えられる。
【国際調査報告】