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特表2024-538256パイロリシス油からの低芳香族炭化水素の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】パイロリシス油からの低芳香族炭化水素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 65/04 20060101AFI20241010BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20241010BHJP
   C10G 45/48 20060101ALI20241010BHJP
   C10G 45/52 20060101ALI20241010BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C10G65/04
C10G45/02
C10G45/48
C10G45/52
C08J11/12 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525110
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2022079933
(87)【国際公開番号】W WO2023073019
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】21204788.0
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ストゥムマン・マウヌス・スィンラー
(72)【発明者】
【氏名】アナスン・スティーファン
(72)【発明者】
【氏名】ゲーブリエルスン・ヨスタイン
(72)【発明者】
【氏名】イーイベア・ラスムス・ゴトシャルク
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA02
4F401AA11
4F401BA02
4F401CA30
4F401CA70
4F401CB01
4F401EA44
4F401EA77
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4F401FA02Y
4F401FA02Z
4F401FA03Z
4F401FA07Z
4H129AA01
4H129CA22
4H129CA25
4H129KC03X
4H129KC04X
4H129KC05X
4H129KC10X
4H129KD15X
4H129KD16X
4H129KD24X
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129MB16A
4H129MB18B
4H129NA01
4H129NA15
4H129NA37
(57)【要約】
本開示の広範な態様は、固体の熱分解に由来する、少なくとも5重量%の芳香族を含有する供給原料の転化のための方法であって、前記供給原料を、二水素の存在下、水素化脱酸素条件下で水素化脱酸素において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、脱酸素中間体を提供するステップ、前記脱酸素中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、脱芳香族中間体を提供するステップ、を含む方法に関する。これは、パイロリシス油等の供給原料を、ディーゼル燃料要件に適合する生成物または中間体に最小限の収量損失で転化する、という関連の利点を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体の熱分解に由来する、少なくとも5重量%、15重量%または30重量%の芳香族を含有する供給原料の転化のための方法であって、
a.前記供給原料を、二水素の存在下、水素化脱酸素条件下で、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、脱酸素中間体を提供するステップ、
b.前記脱酸素中間体から、150℃超で沸騰する脱酸素留出物フラクションを分離するステップ、および
c.前記脱酸素留出物フラクションのうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、脱芳香族中間体を提供するステップ、
を含む方法。
【請求項2】
固体の熱分解に由来する非安定化供給原料を、二水素の存在下、前処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、固体の熱分解に由来する前記組成物を提供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の脱酸素中間体または前記の脱芳香族中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化分解された中間体を提供することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
脱芳香族中間体を、少なくとも、300℃、350℃または370℃超で沸騰する高沸点フラクションと、蒸気フラクションとに分離し、前記高沸点フラクションのうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化分解中間体を提供するステップをさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
脱酸素中間体を分離するステップが、150℃、180℃または200℃を超える温度においておよび水素化脱酸素条件との差が10バール未満で、脱酸素中間体をストリッピング媒体でストリッピングすることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
中間体の分離が、少なくとも、320℃、340℃または360℃である沸点限界超で沸騰する重質フラクション、および150℃、180℃または200℃超かつ重質フラクション未満で沸騰する中間留出物フラクションをもたらし、および、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導かれる脱酸素中間体の量が、前記中間留出物フラクションのうちの少なくともある量を含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記重質フラクションのうちの少なくともある量が、以下のうちの1つまたは複数に導かれ、すなわち、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導かれ、それによって水素化分解された重質生成物を提供するか、前記熱分解プロセスに導かれ、それによって前記供給原料また非安定化供給原料の一部として分解された重質生成物を提供するか、あるいは、任意にさらなる処理のために、重質生成物として取り出すように導かれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
重質フラクションの質量が、供給原料の15パーセント未満である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
1つまたは複数の液体リサイクルループが、中間留出物、脱芳香族中間留出物、水素化分解生成物、重質フラクション、水素化分解中間体、脱芳香族中間体または生成物ストリームのうちのある量またはそれらの量の組み合わせを、上流プロセスステップ、例えば安定化において触媒的に活性な材料、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料、水素化分解において触媒的に活性な材料に、または分離のステップに、導くことによって確立される、請求項1、2、3、4、5、6、7または8に記載の方法。
【請求項10】
水素化脱芳香族条件が、200~350℃の区間の温度、30Bar~150Barまたは200Barの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9に記載の方法。
【請求項11】
水素化脱芳香族において触媒的に活性な前記材料が、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、タングステンおよびモリブデンを含む群から選択される活性金属、好ましくは1種または複数の元素貴金属、例えば白金またはパラジウム、ならびに耐熱性担体、好ましくは非晶質シリカ-アルミナ、アルミナ、シリカもしくはチタニアまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に記載の方法。
【請求項12】
水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料が、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料よりも高い水素化活性を有する、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11に記載の方法。
【請求項13】
水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導かれるストリームが、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触する前に冷却される、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12に記載の方法。
【請求項14】
固体の熱分解に由来する、少なくとも5重量%の芳香族を含有する供給原料の転化のためのプロセスプラントであって、
a.入口および出口を有し、二水素の存在下、水素化脱酸素条件下で運転される、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料を含む水素化脱酸素セクション、
b.入口および出口を有し、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で運転される、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含む水素化脱芳香族セクション、
を含み、
水素化脱酸素セクションの出口が、水素化脱芳香族セクションの入口と流体連通されている、前記プロセスプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体の熱分解の生成物を良質のディーゼル燃料に転化するための方法およびプロセスプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の原料、例えばリグノセルロース系バイオマス、または芳香族プラスチック(例えばポリスチレン)の熱分解の生成物(便宜上、パイロリシス油)は、非常に高い芳香族含有率、例えば30%から、および90%まで、ならびに5%~50%という高い酸素含有率を有する。パイロリシス油の製品への変換は、従来、酸素、ならびに他のヘテロ原子、例えば硫黄および窒素の除去を含む、水素化処理のステップを含む。水素化処理後、製品は通常、5%を超える、多くの場合に20~40%の間の、さらには70%までの芳香族含有率を有し、これは、製品が比重(密度)に関するディーゼル規格を満たさない可能性があるという結果をもたらす。
【0003】
US7,578,927(特許文献1)などの先行技術は、水素化処理された中間体を水素化分解して、ディーゼル成分およびガソリン成分としての使用に適した最終生成物を得ることを教示している。水素化分解は沸点を変化させる効果を有し、また、飽和および開環によって芳香族含有率を減少させることによって比重を減少させる効果を有する。この沸点の調節および比重の低下は、ディーゼル成分として使用される生成物にとって望ましい。しかしながら、水素化分解は収量の損失に関連し、ガソリン成分からの芳香族の除去は、オクタン価の損失を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US7,578,927
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明者らは、ガソリン成分として使用される場合に、水素化分解を用いる方法と比較して、ディーゼル収量を低下させず、そしてナフサフラクションの価値を増加させ得る、代替的な方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
提案される代替的方法は、水素化処理されたパイロリシス油の少なくとも1つのフラクションの水素化脱芳香族を、場合によっては様々な水素化加工スキーム間の中間体の最適な分配を確実にする分離スキームと組み合わせて、含む。
【0007】
本明細書で使用される場合に、用語「熱分解(thermal decomposition)」は、便宜上、材料が、化学量論量未満の酸素の存在下で(酸素なしを含む)、上昇させた温度(典型的には250℃~800℃もしくはさらには1000℃)で部分的に分解される、任意の分解プロセスに広く使用されるものとする。生成物は、典型的には、組み合わされた液体およびガスストリーム、ならびにある量の固体チャーである。当該用語は、触媒の存在下および非存在下の両方における、パイロリシス(pyrolysis)および水熱液化(hydrothermal liquefaction)として知られるプロセスを含むと解釈されるべきである。
【0008】
簡素化のために、熱分解、例えばパイロリシスおよび熱液化(thermal liquefaction)からの全ての生成物を、元のプロセスの性質にかかわらず、以下ではパイロリシス油と呼ぶ。
【0009】
以下において、ppmという略語は、百万分の体積部、例えばモル気体濃度を示すために使用されるものとする。
【0010】
以下において、ppmという略語は、百万分の重量部、例えば液状炭化水素ストリームの質量に対する硫黄原子の質量を示すために使用されるものとする。
【0011】
以下において、重量%という略語は、重量パーセントを示すために使用されるものとする。
【0012】
以下において、体積%という略語は、ガス(気体)に関する体積パーセントを示すために使用されるものとする。
【0013】
気相中の濃度が与えられる場合、別段の特定がない限り、それらはモル濃度として与えられる。
【0014】
液相または固相中の濃度が与えられる場合、別段の特定がない限り、それらは重量濃度として与えられる。
【0015】
液体の芳香族含有率は、当技術分野によれば、全分子の全質量(%)に対する、少なくとも1つの芳香族構造を有する分子の全質量である。
【0016】
本開示の一態様は、固体の熱分解に由来する、少なくとも5重量%、15重量%または30重量%の芳香族を含有する供給原料の転化のための方法であって、前記供給原料を、二水素の存在下、水素化脱酸素条件下で水素化脱酸素において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、脱酸素中間体を提供するステップ、前記脱酸素中間体から、150℃超で沸騰する脱酸素留出物フラクションを分離するステップ、および前記脱酸素中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、脱芳香族中間体を提供するステップ、を含む方法に関する。
【0017】
これは、パイロリシス油等の供給原料を、ディーゼル燃料要件に適合する生成物または中間体に、最小限の収量損失、低い反応器容積で、かつ、ナフサフラクション中の芳香族を犠牲にすることなく転化する、という関連の利点を有する。水素化脱芳香族プロセスは、芳香族含有率を10重量%未満、5重量%未満、または2重量%未満であるが、0.1重量%超に低減するように構成されていてもよい。
【0018】
本開示のさらなる態様は、固体の熱分解に由来する、少なくとも5重量%の芳香族を含有する供給原料の転化のための方法であって、前記供給原料を、二水素の存在下、水素化脱酸素条件下で水素化脱酸素において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、脱酸素中間体を提供するステップ、および前記脱酸素中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、脱芳香族中間体を提供するステップ、を含む方法に関する。
【0019】
さらなる実施態様において、前記方法は、固体の熱分解に由来する非安定化供給原料を、二水素の存在下、前処理条件下で水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、固体の熱分解に由来する前記組成物を提供することをさらに含む。
【0020】
これは、さらなる処理のために非安定化供給原料を安定化し、パイプおよび反応器の閉塞のリスクを最小化し、触媒失活のリスクを最小化する、という関連の利点を有する。
【0021】
さらなる実施態様では、前記の脱酸素中間体または前記の脱芳香族中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化分解された中間体を提供する。
【0022】
これは、中間生成物の沸点を調節し、一方ではプロセスステップにおける脱芳香族の大部分を最小限の収量損失で実施する、という関連の利点を有する。
【0023】
さらなる実施態様において、前記方法は、脱芳香族中間体を、少なくとも、高沸点フラクションであって、その少なくとも95重量%が300℃、350℃または370℃超で沸騰する高沸点フラクションと、蒸気フラクションとに分離するステップ、および前記高沸点フラクションのうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化分解中間体を提供するステップをさらに含む。
【0024】
これは、前記高沸点フラクションを追加的な処理、例えば水素化処理に導くだけであり、従って、ナフサ芳香族のガスへの分解、飽和または開環を回避し、従って、良質なナフサの高収量を維持する、という関連の利点を有する。
【0025】
さらなる実施態様では、中間体を分離するステップは、150℃、180℃または200℃を超える温度においておよび水素化脱酸素条件との差が10バール未満で、脱酸素中間体をストリッピング媒体でストリッピングすることを含む。
【0026】
これは、ディーゼル範囲内又はディーゼル範囲超で沸騰するフラクションの安価で効率的な分離を提供する、という関連の利点を有する。
【0027】
さらなる実施態様において、中間体の分離は、少なくとも、320℃、340℃または360℃である沸点限界(boiling point limit)超で沸騰する重質フラクション、および150℃、180℃または200℃超かつ重質フラクション未満で沸騰する中間留出物フラクションをもたらし、ここで、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導かれる脱酸素中間体の量は、前記中間留出物フラクションのうちの少なくともある量を含む。
【0028】
これは、ディーゼル成分としての使用に適した中間留出物フラクションを提供し、高沸点フラクションを考慮する必要がない、という関連の利点を有する。
【0029】
さらなる実施態様では、前記重質フラクションのうちの少なくともある量が、以下のうちの1つまたは複数に導かれる:二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導かれ、それによって水素化分解された重質生成物を提供するか、前記熱分解プロセスに導かれ、それによって前記供給原料また非安定化供給原料の一部として分解された重質生成物を提供するか、あるいは、任意にさらなる処理のために、重質生成物として取り出すように導かれる。
【0030】
これは、水素化分解または熱分解のいずれかによって、より高い沸点のフラクションの分子量を低下させるための処理を提供し、従って、商業的に価値のある領域の追加的な生成物を生成する、という関連の利点を有する。
【0031】
さらなる実施態様において、重質フラクションの質量は、供給原料の15%未満である。
【0032】
これは、重質フラクションの水素化分解の必要性を最小限にする、という関連の利点を有する。当該フラクションは、ある程度、(上流の)パイロリシス条件によって制御することができる。
【0033】
さらなる実施態様では、1つまたは複数の液体リサイクルループが、中間留出物、脱芳香族中間留出物、水素化分解生成物、重質フラクション、水素化分解中間体、脱芳香族中間体または生成物ストリームのうちのある量またはそれらの量の組み合わせを、上流プロセスステップ、例えば水素化脱芳香族、安定化において触媒的に活性な材料、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料、水素化分解において触媒的に活性な材料に、または分離のステップに、導くことによって確立される。
【0034】
これは、上流位置の温度を、特にリサイクル流が冷却または加熱される場合に、制御するという関連の利点を有し、また、触媒活性材料上での複数のパスによるさらなる反応を可能にする。
【0035】
さらなる実施態様において、水素化脱芳香族条件は、200~350℃の区間の温度、30Bar~150Barまたは200Barの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む。
【0036】
これは、芳香族の水素化に適しており、収量損失が最小限であるようなプロセス条件、という関連の利点を有する。ガス油比は、200Nm/mまたは1000Nm/m~2000Nm/mまたは7000Nm/mであってもよい。
【0037】
さらなる実施態様において、水素化脱芳香族において触媒的に活性な前記材料は、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、タングステンおよびモリブデンを含む群から選択される活性金属、好ましくは1種または複数の元素貴金属、例えば白金またはパラジウム、ならびに耐熱性担体、好ましくは非晶質シリカ-アルミナ、アルミナ、シリカ、チタニアもしくはモレキュラーシーブまたはそれらの組み合わせを含む。
【0038】
これは、このような触媒活性材料が水素化脱芳香族において安定かつ活性である、という関連の利点を有する。
【0039】
さらなる実施態様において、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料は、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料よりも高い水素化活性を有する。
【0040】
これは、中程度の温度での水素化脱芳香族を効果的に可能にする、という関連の利点を有する。この効果は、好ましくは、耐熱性酸化性担体、例えばアルミナ、シリカ、チタニアまたはモレキュラーシーブ上に、0.1:1のNi:Mo+W~2:1のNi:Mo+Wの範囲(ここで前記比は、Niの量とMoおよびWの合計量との間のモル比を表す)のニッケルの量によって促進された、高められた量の活性金属、例えば少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%または少なくとも1重量%から3重量%までのPtまたはPd貴金属、または少なくとも1重量%、少なくとも5重量%または少なくとも15重量%から最大で20重量%、最大30重量%または最大50重量%までのモリブデンまたはタングステンを含む、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料によって得られる。水素化脱芳香族触媒はまた、耐熱性担体上に活性金属として還元形態のNiのみを含んでいてよく、または少なくとも50%の硫化Moおよび/またはWを含む非担持バルク触媒であってもよい。
【0041】
さらなる実施態様では、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導かれるストリームは、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触する前に冷却される。
【0042】
これは、特にジフェノールのような化合物の脱酸素のためにより高い温度が必要とされる場合に、平衡を飽和環構造にさらにシフトさせる、という関連の利点を有する。
【0043】
水素化処理プロセスは、圧力、温度、空間速度、水素分圧、供給原料組成、触媒組成、表面積および細孔分布を含む触媒のナノ構造を含む複数のパラメーターによって制御されるので、水素化脱芳香族および他の水素化加工プロセスの機能的な定義は本開示の理解にとって有益である。
【0044】
触媒活性材料および供給原料の条件、組成および構造の組み合わせは、所与の組み合わせが特定のプロセスをもたらすかどうかを客観的に定義することを困難にする。当業者はこのことを認識しており、通常、条件および触媒活性材料の精査からプロセスの性質を理解し、彼の評価は、一般に入手可能な分析装置および実験施設を伴う、特定の供給材料またはモデル化合物のいずれかから決定され得る、単純でアクセス可能な実験的評価によって裏付けることができる。
【0045】
水素化処理の程度は、供給材料を、一連の条件下で触媒活性材料と接触するように導くことによって決定され得る。供給材料中の有機的に結合したヘテロ原子および生成物中の有機的に結合したヘテロ原子から計算される、除去されたヘテロ原子の相対量は、条件と触媒活性材料との前記組み合わせに関する水素化処理の程度を定義する。この水素化処理の程度は、酸素に関して(すなわち、水素化脱酸素)、窒素(すなわち、水素化脱窒素)、硫黄(すなわち、水素化脱硫)、および個々のまたは全金属(すなわち、水素化脱金属)に関して決定することができる。水素過剰では、平衡への反応が水素化処理による完全な転化を意味する。活性な水素化処理は、水素化処理の程度が少なくとも10%である条件および触媒活性材料を意味し得る。しかしながら、前記評価は、分子構造が、例えば立体障害によって、転化をブロックしないことを必要とし、従って、触媒活性材料、条件および供給原料のある組み合わせに関する水素化処理の具体的な実験的評価は、環を有さないか、または単環構造を有する置換アルカンを用いて最良に行われる。
【0046】
水素化脱芳香族の程度は、供給材料を、一連の条件下で触媒活性材料と接触するように導くことによって決定され得る。生成物中の全芳香族の濃度および供給材料中の全芳香族の濃度から計算される、全芳香族の相対的除去量は、条件と触媒活性材料との前記組み合わせに関する水素化脱芳香族の程度を定義する。関連するモデル化合物は、ヘプタン中30%ナフタレンであり得、芳香族の含有率はASTM D-6591に従って決定することができる。反応は平衡によって制限されるため、通常、完全な水素化脱芳香族は期待されず、従って、工業的観点からは10%を超える水素化脱芳香族が活性であると考えられる。
【0047】
水素化の程度は、供給材料を、一連の条件下で触媒活性材料と接触するように導くことによって決定され得る。消費された二水素の相対量は、水素化の程度を示し、2つの条件/触媒活性材料の比較では、二水素の最も多い消費が、水素化の最も高い活性を示す。
【0048】
水素化分解の程度は、供給材料を、一連の条件下で触媒活性材料と接触するように導くことによって決定され得る。所与の温度、例えば370℃を超えての沸騰から前記所与の温度370℃未満での沸騰に転化された材料の相対量が、条件と触媒活性材料との前記組み合わせに関する水素化分解の程度を定義する。単一の化合物では水素化分解の程度の現実的な尺度が得られないので、関連するモデル化合物は様々な範囲の化合物を含む供給材料であろう。水素過剰では、平衡への反応は水素化分解による完全な転化を意味するであろうが、実際には転化が制限されるように条件があまり厳しくないように選択され、なぜならそれはプロセスのより良好な制御を可能にするからである。増加した全水素化分解転化は、生成物の重質部分をリサイクルすることによって得ることができる。
【0049】
異性化の程度は、供給材料を、一連の条件下で触媒活性材料と接触するように導くことによって決定され得る。n-パラフィンから同数の炭素原子を有する分枝状パラフィンに転化された材料の相対量は、条件と触媒活性材料との前記組み合わせに関する異性化の程度を定義する。関連するモデル化合物は、n-ヘキサデカンであり得る。あるいは、触媒活性材料および異性化における活性な条件はまた、0.5重量%未満の炭化水素水素含有率の増加を伴う、改善された低温流動特性(すなわち、少なくとも5℃の流動点または曇り点の減少)によって決定され得る。
【0050】
活性な反応条件下で触媒的に活性な材料の存在下での供給原料の「支配的反応」という用語は、特定の一連の条件下で、特定の支配的反応が、上記で決定される、最も高い反応の程度を有する反応であることを意味するものとする。
【0051】
供給原料、触媒活性材料および条件の組み合わせは、特に明記しない限り、所与の反応に関して、この反応の程度が10%を超える場合に活性であると考えられる。この尺度によって、2つ以上の反応が、触媒活性材料、条件および供給原料の同一の組み合わせで活性であり得る。
【0052】
熱分解、例えばパイロリシスおよび熱液化からの液体生成物は、特に地球温暖化の観点から、化石生成物、特に水素化処理後の化石生成物に対する環境に優しい代替物と考えられてきた。これらの生成物(簡素化のために、元のプロセスにかかわらずパイロリシス油)の性質は一般に、それらが含酸素物質および場合によってはオレフィンに富むことであろう。形成物の当該性質は、生成物が安定化されず、従って、典型的な化石原料とは異なり、それらが非常に反応性であり、多量の水素を必要とし、反応の間にかなりの量の熱を放出し、高い重合傾向をさらに有することを意味する。熱の放出は重合をさらに増加させ得るものであり、高められた温度では、触媒もコーキングによって失活させられ得る。
【0053】
本開示による供給原料を提供する熱分解プロセスプラントセクションは、当技術分野で周知のような、流動床、輸送床(transported bed)または循環流動床の形態であってもよい。この分解は、パイロリシス供給原料を固体(チャー)、高沸点液体(タール)および高められた温度でガス状であるフラクションに転化する。ガス状フラクションは、標準温度で凝縮可能なフラクション(パイロリシス油または凝縮物、C5+化合物)および非凝縮性フラクション(パイロリシスオフガスを含むパイロリシスガス)を含む。例えば、熱分解プロセスプラントセクション(パイロリシスセクション)は、パイロライザーユニット(パイロリシス反応器)、粒状の固体、例えばチャーを除去するためにサイクロン(複数可)、および冷却ユニットを、それらによってパイロリシスオフガスストリームおよび前記パイロリシス油ストリーム、すなわち凝縮されたパイロリシス油を生成するために含む。パイロリシスオフガスストリームは、軽質炭化水素、例えばC1~C4炭化水素、HO、CO及びCOを含む。バイオマスのパイロリシスからのパイロリシス油ストリームは、バイオオイルまたはバイオクルードとも称され得、通常、200を超える異なる化合物、主に含酸素物質、例えば酸、糖、アルコール、フェノール、グアヤコール、シリンゴール、アルデヒド、ケトン、フラン、およびパイロリシスで処理された固体の解重合から生じる他の混合含酸素物質からなる、分子のブレンドに富む液体物質である。典型的には、パイロリシス油は、凝縮物およびタールを含む。
【0054】
本発明の目的のために、パイロリシスセクションは、当該技術分野においてフラッシュパイロリシスとも呼ばれる急速パイロリシスであってもよい。急速パイロリシスは、典型的には350~650℃の範囲、例えば約500℃の温度、10秒以下、例えば5秒以下、例えば約2秒の反応時間での、典型的には酸素の非存在下における、固体再生可能供給原料の熱分解を意味する。急速パイロリシスは、例えば、例えば流動床反応器における、自己熱運転によって行うことができる。後者は、自己熱パイロリシスとも呼ばれ、空気(任意選択的に不活性ガスまたはリサイクルガスとともに)を流動ガスとして使用することを特徴とする。それによって、パイロリシス反応器(自己熱反応器)内で生成されるパイロリシス化合物の部分酸化が、同時に熱伝達を改善しながら、パイロリシスのためのエネルギーを提供する。いわゆる接触急速パイロリシスでは、触媒を使用することができる。パイロリシス蒸気をアップグレードするために酸触媒を使用することができ、in-situモード(触媒がパイロリシス反応器内に位置する)およびex-situモード(触媒が別個の反応器内に置かれる)の両方で運転することができる。触媒の使用は、酸素を除去し、それによってパイロリシス油の安定化を助け、したがって水素化加工をより容易にするという利点をもたらす。加えて、所望のパイロリシス油化合物に向かって高められた選択性を達成することができる。
【0055】
一部の場合には、水素が接触パイロリシスに加えられ、これは反応性接触急速パイロリシスと呼ばれる。接触パイロリシスが高い水素圧、例えば5 barg超で行われる場合、それはしばしば接触水素化パイロリシスと呼ばれる。
【0056】
パイロリシス段階は、触媒および水素の存在なしに行われる急速パイロリシスであることができ、すなわち、急速パイロリシス段階は、接触急速パイロリシス、水素化パイロリシスまたは接触水素化パイロリシスではない。このことは、はるかに単純で安価なプロセスを可能にする。
【0057】
熱分解セクションは、水熱液化であってもよい。水熱液化は、固体のバイオポリマー構造を主に液体成分に分解するのに十分な時間、高温の加圧水環境中で処理することによる、バイオマスの液体燃料への熱化学的転化を意味する。典型的な水熱処理条件は、250~375℃の範囲の温度であり、40~220barの範囲の運転圧力である。この技術は、パイロリシス、例えば急速パイロリシスと比較して、より低い温度、より高いエネルギー効率という運転の利点、およびより低い酸素含有率を有する生成物を生成するという運転の利点を提供する。
【0058】
最後に、他の関連する熱分解方法は、条件がより低い温度および一般にはより高い滞留時間を伴う、中間的なまたは遅いパイロリシスであり、これらの方法は炭化またはトレファクションとしても知られ得る。これらの熱分解方法の主要な利点は、より低い投資であるが、それらはまた、特定の供給原料に関してまたは特定の生成物要件、例えばバイオ炭に対する必要性、に関して特定の利点を有し得る。
【0059】
含酸素物質の炭化水素への転化は、再生可能な輸送燃料の製造のための一般的な方法であるが、反応性および他の特性が、異なる供給原料に対しては異なる。パイロリシス油は、典型的には、ケトン、アルデヒドまたはアルコールからなる群から選択される1種または複数の含酸素物質を含み、典型的には熱分解および/または触媒的分解プロセス後の、植物、藻類、動物、魚類、植物油精製、他の生物学的起源、家庭廃棄物、トールオイルまたは黒液などの産業生物学的廃棄物、ならびに適切な組成を含む非生物学的廃棄物、例えばプラスチックフラクションまたはゴム(使用済みタイヤを含む)の熱分解に由来することができる。供給原料が生物起源のものである場合、供給原料および生成物は、全炭素含有率の1兆分の0.5部を超える14C含有率を有することを特徴とするが、供給原料が化石起源の廃棄物、例えばプラスチックを含む場合、この比は異なり得る。
【0060】
炭化水素生成物の生成は、典型的には、1または複数の水素化加工ステップを必要とし、これらは最も一般的には、ヘテロ原子を除去し、二重結合を飽和させるための水素化処理、炭化水素分子構造を調節するための水素異性化、および炭化水素分子量を減少させるための水素化分解であり、本開示によれば、水素化脱芳香族もまた適切である。
【0061】
水素化処理の間、含酸素物質は過剰の水素と組み合わされ、水素化脱酸素プロセスにおいて、ならびに脱炭酸および脱カルボニル化プロセスにおいて反応し、水、二酸化炭素および一酸化炭素が含酸素物質から放出され、ある量の二酸化炭素が、水性/ガスシフトプロセスによって一酸化炭素に転化される。典型的には、含酸素物質供給原料の5重量%または10重量%から50重量%までは酸素であり、従って生成物ストリームのうちのかなりの量は水、二酸化炭素および一酸化炭素である。さらに、供給原料の性質および生じる副反応に応じて、ある量の軽質炭化水素も生成物ストリーム中に存在し得る。水素化処理はまた、他のヘテロ原子、特に窒素および硫黄の抽出を含むが、場合によってはハロゲンおよびケイ素の抽出、ならびに二重結合の飽和も含むことができる。特に、含酸素物質の水素化処理は非常に反応性かつ発熱性であり、中程度のまたは低い活性の触媒が、触媒を失活させるコークス形成をもたらす過剰な熱放出および暴走反応を回避するためには好ましいかもしれない。触媒活性は一般に、少量の活性金属のみを使用することにより、特にニッケルおよびコバルトなどの促進金属の量を制限することによって制御される。
【0062】
典型的には、水素化処理、例えば脱酸素および水素化は、含酸素物質を含む供給原料ストリームを導いて、1種または複数の耐熱性酸化物、典型的にはアルミナ、しかし場合によってはシリカまたはチタニアを含むキャリア上に担持された、硫化モリブデンまたは場合によってはタングステンおよび/またはニッケルもしくはコバルトを含む触媒活性材料に接触させることを含む。担体は、典型的には非晶質である。触媒活性材料は、ホウ素またはリンなどのさらなる成分を含んでもよい。前記条件は、典型的には、250~400℃の区間の温度、30~150Barの区間の圧力、および0.1~2の区間の液空間速度(LHSV)である。脱酸素は、水を生成する水素化脱酸素、および、含酸素物質がカルボキシル基、例えば酸またはエステルを含む場合には、COを生成する脱炭酸の組み合わせを含む。カルボキシル基の脱酸素は、条件および触媒活性材料の性質に応じて、90%を超える水素化脱酸素から90%を超える脱炭酸まで変化し得る選択性で、水素化脱酸素または脱炭酸によって進行し得る。両方の経路による脱酸素は発熱性であり、多量の酸素の存在とともに、当該方法は、例えば、低温の水素、供給材料または生成物でクエンチすることによる、中間冷却を含むことができる。供給原料は、好ましくは、金属の活性を維持するために、金属の硫化を維持する量の硫黄を含有していてもよい。含酸素物質を含む供給原料ストリームが、10、100または500ppm未満の硫黄を含む場合、ジメチルジスルフィド(DMD)などのスルフィド供与体が典型的には供給原料に添加されている。
【0063】
非安定化供給原料が高度に反応性である場合、中程度の条件での前処理が、供給原料を安定化するために適切であり得る。これは、80℃、120℃または200℃という低い入口温度、3~15MPaの区間の圧力、および0.1~2の区間の液空間速度(LHSV)、および非促進化モリブデン等の活性の低い触媒活性材料の意図的な選択を含み得る。反応性成分および発熱性の性質のために、熱制御は、この前処理ステップにおいて意義を有し得る。
【0064】
HDO反応器中の前記条件下で、水性ガスシフトプロセスの平衡は、COおよびHのCOおよびHOへの転化を引き起こす。卑金属触媒の存在下では、ある量のメタン化が起こり、COおよびHをCHおよびHOに転化する。
【0065】
供給原料の構造に応じて、脱酸素プロセスは低温流動特性に乏しい直鎖状アルカンに富む生成物を提供し得、従って、脱酸素プロセスは、生成物の低温流動特性を改善することを目的として、水素異性化プロセスと組み合わせることができ、および/または生成物の沸点を調節することを主目的として、水素化分解プロセスと組み合わせることができる。
【0066】
典型的には、水素異性化による分子構造の転位は、中間脱酸素生成物ストリーム供給原料を、活性金属(白金および/またはパラジウムなどの元素貴金属、あるいは、ニッケル、コバルト、タングステンおよび/またはモリブデンなどの硫化卑金属のいずれか)、酸性担体(典型的には、高い形状選択性を示し、MOR、FER、MRE、MWW、AEL、TONおよびMTT等のトポロジーを有するモレキュラーシーブ)、および耐熱性担体(例えばアルミナ、シリカまたはチタニア、またはそれらの組み合わせ)を含む、水素異性化において触媒的に活性な材料と接触するように導くことを含む。触媒活性材料は、ホウ素またはリンなどのさらなる成分を含んでもよい。前記条件は、典型的には、250~350℃の区間の温度、20~100Barの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)である。異性化は実質的に熱的に中性であり、水素は典型的には異性化反応において消費されない(水素を消費する少量の水素化分解副反応は起こり得るが)。異性化において触媒的に活性な材料上の活性金属は、硫化された卑金属または還元された貴金属のいずれかであり得る。貴金属はより低い温度で活性であり、より低い温度での運転は、より低い程度の水素化分解および関連する収量損失も意味する。それが貴金属である場合、脱酸素供給原料は、典型的には、多くの場合にストリッピングプロセスを含む気/液分離セクションによって精製され、これは典型的には、ストリッピング媒体として水素を使用するが、他のストリッピング媒体、例えば蒸気を使用して、硫黄の含有率を1~10ppm未満に低減することもできる。活性金属が卑金属の場合、水素異性化への供給原料は、好ましくは、金属の活性を維持するために、金属の硫化を維持する量の硫黄を含有していてもよい。
【0067】
水素化分解は、大きな分子をより小さな分子にクラッキングすることによって、炭化水素混合物の低温流動特性および沸点特性を調節する。典型的には、水素化分解は、中間供給原料を、活性金属(白金および/またはパラジウムなどの元素貴金属、あるいは、ニッケル、コバルト、タングステンおよび/またはモリブデンなどの硫化卑金属のいずれか)、酸性担体(典型的には、高いクラッキング活性を示し、MFI、BEAおよびFAU等のトポロジーを有するモレキュラーシーブ)、および耐熱性担体(例えばアルミナ、シリカまたはチタニア、またはそれらの組み合わせ)を含む、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導くことを含む。触媒活性材料は、ホウ素またはリンなどのさらなる成分を含んでもよい。この全体的な組成は、異性化で触媒的に活性な材料に類似しているが、相違は、典型的には、酸性担体の性質であり、これは異なる構造(非晶質シリカ-アルミナでさえも)であってもよく、または異なる -典型的にはより高い- 酸性度(例えばシリカ:アルミナ比に起因する)を有していてもよい。前記条件は、任意選択的に、低温の水素、供給原料または生成物を用いたクエンチングによる中間冷却と一緒に、典型的には、250~400℃の区間の温度(これは典型的には、対応する異性化温度よりも高い温度である)、30~150Barの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む。
【0068】
パイロリシス油の組成は、原料およびパイロリシスプロセスによって定義される。これは、パイロリシス油は中程度の量の高沸点材料のみを含有し得、従って、水素化分解条件は中程度であることができ、リサイクルをほとんど伴わないかまたはリサイクルを伴わず、このことは有益であり、なぜならば、パイロリシス油の芳香族特性は、製油所プロセスにおける難題として知られる多核芳香族の広範な生成を引き起こし得るからである。
【0069】
水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料は、典型的には、活性金属(促進された硫化卑金属、例えばニッケルまたはコバルトによって促進されたタングステンおよび/またはモリブデン;ここで、水素化脱芳香族へのストリームに関連するガス相は、好ましくは、少なくとも50ppmの硫黄を含有する、または -任意に、例えば硫化水素の除去による、精製後に- 貴金属、例えば白金および/またはパラジウムのいずれか)、ならびに耐熱性担体(例えば非晶質シリカ-アルミナ、アルミナ、シリカ、チタニアまたはモレキュラーシーブ、またはそれらの組み合わせ)を含む。水素化脱芳香族は、芳香族に有利な高温で平衡制御されており、従って、活性金属としては貴金属が一般的には好ましく、なぜならそれらは卑金属と比較してより低い温度で活性だからである。水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料は、典型的には、耐熱性酸化性担体、例えばアルミナ、シリカまたはチタニア上に、0.1:1のNi:Mo+W~2:1のNi:Mo+Wの範囲(ここで前記比は、Niの量とMoおよびWの合計量との間のモル比を表す)のニッケルの量によって促進された、高められた量の活性金属、例えば少なくとも0.1重量%、少なくとも0.5重量%または少なくとも1重量%から3重量%までのPtまたはPd貴金属、または少なくとも1重量%、少なくとも5重量%または少なくとも15重量%から最大20重量%、最大30重量%または最大50重量%までのモリブデンまたはタングステンを含む。水素化脱芳香族触媒はまた、耐熱性担体上に活性金属として還元形態のNiのみを含んでいてよく、または少なくとも50%の硫化Moおよび/またはWを含む非担持バルク触媒であってもよい。
【0070】
水素化処理プロセスは、圧力、温度、空間速度、水素分圧、供給原料組成、触媒組成、表面積および細孔分布を含む触媒のナノ構造を含む複数のパラメーターによって制御されるので、水素化脱芳香族の機能的な定義は本開示の理解にとって有益である。当業者の一般的な理解によれば、水素化脱芳香族において活性であるとは、炭化水素構造に対する実質的な構造変化なしに、芳香族結合の少なくとも10%が飽和されるプロセスとして理解することができる。好ましくは、炭化水素構造への実質的な構造変化なしとは、供給原料中の炭素-炭素結合の10%未満が破壊されると理解されるべきである。これらの定義は化学反応の観点から意味をなすものであるが、上記で議論したような、当該分野における標準的な分析方法に基づく定義を用いることが好ましい場合もある。
【0071】
典型的には、水素化脱芳香族は、中間体生成物を、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導くことを含む。上述のように、芳香族と飽和分子との間の平衡は、高められた温度で芳香族側にシフトし、従って、温度は中程度であることが好ましい。前記条件は典型的には、200~350℃の区間の温度、30Bar~150Barまたは200Barまでの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)、および、第1の水素化処理ステップからの水素を維持することによって黙示的に定義される比であってよいか、またはより低くてよく、例えば200~2000Nm/mであってよいガス油比である。上述のように、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料上の一般的に好ましい活性金属(複数可)は、低温平衡から利益を享受するために、多くの場合に貴金属(複数可)であることが好ましい。本開示によれば、分別またはストリッピングの下流の中間体は、典型的には十分に精製され、従って、その位置で水素化脱芳香族を用いる場合、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料中の活性金属(複数可)は貴金属であってもよい。卑金属触媒も使用することができ、この場合、水素化脱芳香族へのストリームに関連するガス相は好ましくは少なくとも50ppmの硫黄を含有する。
【0072】
炭化水素、過剰な水素、およびヘテロ原子を含む無機分子を含む水素化加工されたストリームは、炭化水素とヘテロ原子を含む分子(典型的にはガス)とに分離されなければならない。これを行うために、水素化加工されたストリームは分離セクションに導かれ、これはパイロリシス油の処理に関するプロセスシナリオに関しては、典型的には、卑金属ベースの水素化処理反応器と貴金属ベースの水素化脱芳香族反応器との間にあるか、あるいは水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料が卑金属を含む場合には、水素化脱芳香族反応器の下流にあるかのいずれかである。前記方法はまた、1または複数の他の転化ステップ、例えば水素化分解または水素異性化を含むことができ、およびこれらのステップの順序および使用される触媒活性金属に応じて、当業者は、リサイクルガスストリームを取り出す目的で分離セクションを導入するために可能な位置を認識するであろう。
【0073】
含酸素物質に富む供給原料を処理するプロセスでは、熱の発生および水素の消費が大きいので、水素化加工反応器中のガス油比も、他の水素化加工プロセスと比較して非常に高く、例えば、1000~7000Nm/mである。この水素ガスは、冷却したガスを段階的に注入することによって、プロセス温度を制御するために使用することができる。しかしながら、より低い水素消費を伴う水素化加工プロセス(水素化脱芳香族および水素化分解を含む)のためには、ガス油比はより低くてもよく、例えば200~2000Nm/mであることができる。
【0074】
パイロリシス油生成物ストリームは、芳香族炭化水素、長鎖炭化水素、ガス状炭化水素、水、およびある程度の炭素酸化物を含有することができ、加えて、炭化水素質供給原料中の窒素は、水素化加工されたストリームにアンモニアをもたらす。パイロリシス油中の添加された硫黄ならびに任意の硫黄は、水素化加工されたストリーム中に硫化水素として存在し、最終的に、過剰量の水素が未反応のまま、水素化加工されたストリームに送られる。この多様な混合物の最適な取り扱いのために中間分離ステップが必要とされ得る。
【0075】
さらに、パイロリシス油の炭化水素への最適な転化のために3または4種の触媒活性材料を組み合わせる必要性は当然、プロセスレイアウトを複雑にし、材料の順序は、特に卑金属に関しては必要とされ貴金属に関しては避けるべき硫黄の存在に関して、慎重に考慮されなければならない。
【0076】
プロセスレイアウトにおいて、リサイクルは、様々な目的のためにすることができる:水素の効率的な使用のためのガスリサイクル、所望のフラクションの収量を最大化するための水素化分解において触媒的に活性な材料の周辺での液体リサイクル、および発熱性の脱酸素反応による温度上昇を制限するための、ならびにパイロリシス油中の反応性含酸素物質および他の反応性化合物のための重合反応の反応速度を制限するための、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料の周辺での液体リサイクル。リサイクルの構成の選択は、リサイクルループの数を最小限に抑えること、小さいリサイクル体積を有する構成を選択することにより反応器体積およびコストを最小限に抑えること、大きいリサイクル体積および/または大規模冷却によるプロセス反応性制御を最大限にすること、ならびに大きいリサイクル体積によって重合を最小限に抑えることによる、プロセスの単純さを含めた、様々な利点に関連する。
【0077】
リサイクルを伴わないプロセス構成も、単純さおよび低コストのために、特にプロセス体積が中程度である場合に、有益であり得る。
【0078】
異性化および水素化脱芳香族は、貴金属を含む触媒活性材料を用いて実施し得るため、硫化水素、二酸化炭素およびアンモニアを含む「サワーガス」は、これらの反応の前に除去される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1は、従来技術に従う、パイロリシス油をアップグレードするための方法を示す。
【0080】
図2は、ディーゼル範囲で沸騰するストリームの水素化脱芳香族を用いる、本開示に従うパイロリシス油をアップグレードするための方法を示す。
【0081】
図3は、ディーゼル範囲で沸騰する重質ストリームの水素化脱芳香族および水素化分解を用いる、本開示に従うパイロリシス油をアップグレードするための方法を示す。
【0082】
図4は、全生成物ストリームの水素化脱芳香族、および重質ストリームの水素化分解を用いる、本開示に従うパイロリシス油をアップグレードするための方法を示す。
【0083】
図は主に、前記方法の炭化水素の流れを示しており、当業者には、水素の添加は図示されていないが、当該方法において必要とされることが理解されよう。経済的な理由から、水素リッチガスストリーム(複数可)は、任意に精製後に、リサイクルしてもよい。同様に、温度および圧力などのプロセス条件も制御に関連し得、これは、空気冷却器、燃焼加熱器および熱交換器、ならびにポンプおよび圧縮機などの図示されていない装置によって行われ得る。当業者にはまた、プロセスに実際に関連するが、本発明のために限定された特定の関連性を有する、図に示されていないプロセスにおける他の要素が理解されるであろうし、そしてさらに、リサイクルストリームなどの特定の構成が示され得るが、代替の実施が本発明を損なうことなく可能であり得る。
【0084】
図1は、供給原料、例えばパイロリシス油(102)を、水素リッチメイクアップガス(104)と一緒に安定化用前処理反応器(STAB)に導いて、水素化脱酸素反応器(HDO)に供給するための安定化されたパイロリシス油(112)を提供する、方法レイアウトを示す。脱酸素された中間体(114)を取り出し、任意のリサイクルされた重質水素化分解生成物(118)と合わせ、第1の分別セクション(FRAC1)に導き、そこから水(122)、ガス(124)およびナフサ範囲生成物(126)ならびにディーゼル範囲生成物(128)を取り出す。さらに、底部ストリーム(130)を取り出し、水素(図示せず)と一緒に、水素化分解反応器(HDC)に導き、そこから水素化分解生成物(132)を取り出す。水素化分解生成物(132)は、さらに別の分別器(FRAC2)(ここでは分離ユニット)において分別されるが、当該方法は、単一の分別器システムにおいて統合されて分別されるように構成されていてもよい。さらなる分別器(FRAC2)から、ガス(134)、低沸点生成物(136)および高沸点生成物(138)が、ある量のリサイクルされる重質水素化分解生成物(118)の他に、取り出される。リサイクルされる重質水素化分解生成物(118)は、分別および水素化分解に導かれる。
【0085】
図2は、供給原料、例えばパイロリシス油(202)を、水素リッチメイクアップガス(204)および任意のリサイクルストリーム(206)と一緒に安定化用前処理反応器(STAB)に導いて、安定化されたパイロリシス油(208)を提供し、これはここで任意のリサイクルストリーム(210)と組み合わされて、水素化脱酸素反応器(HDO)に供給するための安定化されたストリーム(212)を提供する、方法レイアウトを示す。脱酸素中間体(214)を取り出して、分別のためのストリーム(220)として導く前に、任意に、ある量のリサイクルされた重質水素化分解生成物(218)と組み合わせ、前記分別のためのストリーム(220)は、第1の分別器セクション(FRAC1)に導かれ、そこから、水(222)、ガス(224)、ナフサ範囲生成物(226)、ディーゼル範囲生成物(228)および底部ストリーム(230)が取り出される。ディーゼル範囲生成物(228)を、水素(図示せず)と組み合わせ、水素化脱芳香族反応器(HDA)に導いて、良質のディーゼル範囲生成物(229)を提供する。さらに、底部ストリーム(230)を、水素(図示せず)と一緒に、水素化分解反応器(HDC)に導き、そこから水素化分解生成物(232)を取り出す。水素化分解生成物(232)を、さらに別の分別器(FRAC2)(ここでは分離ユニットである)において分別されるが、当該方法は、単一の分別器セクションにおいて統合されて分別されるように構成されていてもよい。さらなる分別セクション(FRAC2)から、ガス(234)、ナフサ範囲生成物(236)およびディーゼル範囲生成物(238)が、ある量のリサイクルされる重質水素化分解生成物(240)の他に、取り出される。リサイクルされた重質水素化分解生成物(240)は、直接分別および水素化分解のために導かれるストリーム(218)と、安定化反応器(STAB)および水素化脱酸素反応器(HDO)のために導かれるべきリサイクルストリーム(242)とに分割される。
【0086】
図3は、供給原料、例えばパイロリシス油(302)を、水素リッチメイクアップガス(304)および任意のリサイクルストリーム(306)と一緒に安定化用前処理反応器(STAB)に導いて、安定化されたパイロリシス油(308)を提供し、これはここで任意のリサイクルストリーム(310)と組み合わされて、水素化脱酸素反応器(HDO)に供給するための安定化されたストリーム(312)を提供する、方法レイアウトを示す。脱酸素中間体(314)を取り出して、分別のためのストリーム(320)として導く前に、任意に、ある量のリサイクルされた重質水素化分解生成物(318)と組み合わせ、前記分別のためのストリーム(320)は、第1の分別器セクション(FRAC1)に導かれ、そこから、水(322)、ガス(324)、ナフサ範囲生成物(326)およびディーゼル範囲生成物(328)が取り出される。さらに、底部ストリーム(330)を取り出し、水素(図示せず)と一緒に、組み合わされた水素化脱芳香族および水素化分解反応器(HDA/HDC)に導き、そこから水素化加工生成物(332)を取り出す。水素化加工生成物(332)を、さらに別の分別器(FRAC2)(ここでは分離ユニットである)において分別されるが、当該方法は、単一の分別器セクションにおいて統合されて分別されるように構成されていてもよい。さらなる分別セクション(FRAC2)から、ガス(334)、ナフサ範囲生成物(336)およびディーゼル範囲生成物(338)が、ある量のリサイクルされる水素化加工生成物(340)の他に、取り出される。リサイクルされる重質水素化加工生成物(340)は、直接分別および水素化分解のために導かれるストリーム(318)と、安定化反応器(STAB)および水素化脱酸素反応器(HDO)のために導かれるべきリサイクルストリーム(342)とに分割される。
【0087】
図4は、供給原料、例えばパイロリシス油(402)を、水素リッチメイクアップガス(404)および任意のリサイクルストリーム(406)と一緒に安定化用前処理反応器(STAB)に導いて、安定化されたパイロリシス油(408)を提供し、これはここで任意のリサイクルストリーム(410)と組み合わされて、水素化脱酸素反応器(HDO)に供給するための安定化されたストリーム(412)を提供する、方法レイアウトを示す。脱酸素中間体(414)を取り出し、冷却し、水素化脱芳香族反応器(HDA)に導く。脱芳香族生成物(416)を、分別のためのストリーム(420)として導く前に、任意に、ある量のリサイクルされた重質水素化分解生成物(418)と組み合わされるように導き、前記分別のためのストリーム(420)は、第1の分別器セクション(FRAC1)に導かれ、そこから、水(422)、ガス(424)、ナフサ範囲生成物(426)およびディーゼル範囲生成物(428)が取り出される。さらに、底部ストリーム(430)を取り出し、水素(図示せず)と一緒に、水素化分解反応器(HDC)に導き、そこから水素化分解生成物(432)を取り出す。水素化分解生成物(432)を、さらに別の分別器(FRAC2)(ここでは分離ユニットである)において分別されるが、当該方法は、単一の分別器セクションにおいて統合されて分別されるように構成されていてもよく、この場合、水素化分解生成物(432)は分別のためのストリーム(420)と組み合わされるように導かれるであろう。さらなる分別セクション(FRAC2)から、ガス(434)、ナフサ範囲生成物(436)およびディーゼル範囲生成物(438)が、ある量のリサイクルされた重質水素化分解生成物(440)の他に、取り出される。リサイクルされた重質水素化分解生成物(440)は、直接分別および水素化分解のために導かれるストリーム(418)と、安定化反応器(STAB)および水素化脱酸素反応器(HDO)のために導かれるべきリサイクルストリーム(442)とに分割される。
【0088】
図2、3および4では3つのリサイクルループが示されているが、特に供給材料および所望の生成物の性質に応じて、実際にはこれらのうちの1つまたは2つのみが好ましい場合がある。
【0089】
さらに、反応器間の冷却は示されていないが、上述のように、特にストリームがジフェノールなどの屈折性含酸素物質を含む場合には、高められたHDO温度が必要とされることがあり、従ってHDAの前の冷却が適切であり得る。
【0090】
特に、全ての図における第1の分別器は、有利には、ストリッパーによって置き換えられてよく、これは、特に高められた温度および圧力で運転される場合に、運転コストを低減し、なぜなら、ストリッパーの下流での再加熱および再加圧が必要とされないかまたは最小限に抑えられるためである。
【実施例
【0091】

図1図2図3、および図4における例証に従った方法を以下で比較する。
【0092】
全ての方法は、表1による安定化された供給原料を想定して実施され、これはウッドチップの急速パイロリシスからの安定化されたパイロリシス油に対応する例である。
【0093】
簡素化のために、例はリサイクルストリームおよび等温反応器がないことを前提として示し、結果は質量ストリーム(トン/時)として報告し、ストリームは芳香族の重量%によって特定する。
【0094】
表2は、図1に示される先行技術による方法の2つのバリアントを比較しており;高収量に焦点を当てるか(ケース1)、または高いディーゼル品質に焦点を当てるか(ケース2)のいずれかである。ケース1は、12トン/時を水素化分解に導くことを想定し、ケース2は、18トン/時を水素化分解に導くことを想定している。ケース1では、水素化分解条件は穏やかであり、従って、36重量%の芳香族で21トン/時という高いディーゼル収量をもたらし、従って、当該ディーゼルは低品質であり、ブレンドされる必要がある。ケース2では、ディーゼルフラクションの大部分がより高い転化率で運転されるHDC反応器に送られ、従って、26重量%の芳香族で19トン/時というディーゼル収量をもたらし、従って、ケース1よりも良好な品質であるが、より低い収量である。ケース1の組み合わされたナフサ/ディーゼル収量は46トン/時であり、それに対してケース2では45トン/時である。
【0095】
表3は、図2~4の主要なストリームにおける質量流量と芳香族のパーセントを示す。これは、図2および4に示されるコンセプトが21トン/時のディーゼル収量を与え、従って図1のケース1における収量と類似しているが、それぞれ4.8および1.7重量%の芳香族濃度を有することを示す。従って、図2および図4に示すレイアウトから製造されたディーゼルは、図1に示すレイアウトで製造されたディーゼルよりも高品質である。図3に示すレイアウトを使用すると、1.5重量%の芳香族で16トン/時のディーゼル収量が得られ、さらに5.6トン/時のケロシンも生成する。当該ケロシンは、28重量%の芳香族を含有し、ディーゼルと混合するか、規格を満たすようにブレンドするか、または別個のHDA反応器を使用して水素化処理することができる。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
特に、全ての図における第1の分別器は、有利には、ストリッパーによって置き換えられてよく、これは、特に高められた温度および圧力で運転される場合に、運転コストを低減し、なぜなら、ストリッパーの下流での再加熱および再加圧が必要とされないかまたは最小限に抑えられるためである。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.固体の熱分解に由来する、少なくとも5重量%、15重量%または30重量%の芳香族を含有する供給原料の転化のための方法であって、
a.前記供給原料を、二水素の存在下、水素化脱酸素条件下で、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、脱酸素中間体を提供するステップ、
b.前記脱酸素中間体から、150℃超で沸騰する脱酸素留出物フラクションを分離するステップ、および
c.前記脱酸素留出物フラクションのうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、脱芳香族中間体を提供するステップ、
を含む方法。
2.固体の熱分解に由来する非安定化供給原料を、二水素の存在下、前処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、固体の熱分解に由来する前記組成物を提供することをさらに含む、上記1に記載の方法。
3.前記の脱酸素中間体または前記の脱芳香族中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化分解された中間体を提供することをさらに含む、上記1または2に記載の方法。
4.脱芳香族中間体を、少なくとも、300℃、350℃または370℃超で沸騰する高沸点フラクションと、蒸気フラクションとに分離し、前記高沸点フラクションのうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化分解中間体を提供するステップをさらに含む、上記2または3に記載の方法。
5.脱酸素中間体を分離するステップが、150℃、180℃または200℃を超える温度においておよび水素化脱酸素条件との差が10バール未満で、脱酸素中間体をストリッピング媒体でストリッピングすることを含む、上記4に記載の方法。
6.中間体の分離が、少なくとも、320℃、340℃または360℃である沸点限界超で沸騰する重質フラクション、および150℃、180℃または200℃超かつ重質フラクション未満で沸騰する中間留出物フラクションをもたらし、および、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導かれる脱酸素中間体の量が、前記中間留出物フラクションのうちの少なくともある量を含む、上記4または5に記載の方法。
7.前記重質フラクションのうちの少なくともある量が、以下のうちの1つまたは複数に導かれ、すなわち、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導かれ、それによって水素化分解された重質生成物を提供するか、前記熱分解プロセスに導かれ、それによって前記供給原料また非安定化供給原料の一部として分解された重質生成物を提供するか、あるいは、任意にさらなる処理のために、重質生成物として取り出すように導かれる、上記6に記載の方法。
8.重質フラクションの質量が、供給原料の15パーセント未満である、上記6または7に記載の方法。
9.1つまたは複数の液体リサイクルループが、中間留出物、脱芳香族中間留出物、水素化分解生成物、重質フラクション、水素化分解中間体、脱芳香族中間体または生成物ストリームのうちのある量またはそれらの量の組み合わせを、上流プロセスステップ、例えば安定化において触媒的に活性な材料、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料、水素化分解において触媒的に活性な材料に、または分離のステップに、導くことによって確立される、上記1、2、3、4、5、6、7または8に記載の方法。
10.水素化脱芳香族条件が、200~350℃の区間の温度、30Bar~150Barまたは200Barの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む、上記1、2、3、4、5、6、7、8または9に記載の方法。
11.水素化脱芳香族において触媒的に活性な前記材料が、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、タングステンおよびモリブデンを含む群から選択される活性金属、好ましくは1種または複数の元素貴金属、例えば白金またはパラジウム、ならびに耐熱性担体、好ましくは非晶質シリカ-アルミナ、アルミナ、シリカもしくはチタニアまたはそれらの組み合わせを含む、上記1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に記載の方法。
12.水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料が、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料よりも高い水素化活性を有する、上記1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11に記載の方法。
13.水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導かれるストリームが、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触する前に冷却される、上記1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12に記載の方法。
14.固体の熱分解に由来する、少なくとも5重量%の芳香族を含有する供給原料の転化のためのプロセスプラントであって、
a.入口および出口を有し、二水素の存在下、水素化脱酸素条件下で運転される、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料を含む水素化脱酸素セクション、
b.入口および出口を有し、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で運転される、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含む水素化脱芳香族セクション、
を含み、
水素化脱酸素セクションの出口が、水素化脱芳香族セクションの入口と流体連通されている、前記プロセスプラント。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体の熱分解に由来する、少なくとも5重量%、15重量%または30重量%の芳香族を含有する供給原料の転化のための方法であって、
a.前記供給原料を、二水素の存在下、水素化脱酸素条件下で、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、脱酸素中間体を提供するステップ、
b.前記脱酸素中間体から、150℃超で沸騰する脱酸素留出物フラクションを分離するステップ、および
c.前記脱酸素留出物フラクションのうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、脱芳香族中間体を提供するステップ、
を含む方法。
【請求項2】
固体の熱分解に由来する非安定化供給原料を、二水素の存在下、前処理条件下で、水素化処理において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、固体の熱分解に由来する前記組成物を提供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の脱酸素中間体または前記の脱芳香族中間体のうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化分解された中間体を提供することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
脱芳香族中間体を、少なくとも、300℃、350℃または370℃超で沸騰する高沸点フラクションと、蒸気フラクションとに分離し、前記高沸点フラクションのうちの少なくともある量を、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導いて、水素化分解中間体を提供するステップをさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
脱酸素中間体を分離するステップが、150℃、180℃または200℃を超える温度においておよび水素化脱酸素条件との差が10バール未満で、脱酸素中間体をストリッピング媒体でストリッピングすることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
中間体の分離が、少なくとも、320℃、340℃または360℃である沸点限界超で沸騰する重質フラクション、および150℃、180℃または200℃超かつ重質フラクション未満で沸騰する中間留出物フラクションをもたらし、および、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導かれる脱酸素中間体の量が、前記中間留出物フラクションのうちの少なくともある量を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記重質フラクションのうちの少なくともある量が、以下のうちの1つまたは複数に導かれ、すなわち、二水素の存在下、水素化分解条件下で、水素化分解において触媒的に活性な材料と接触するように導かれ、それによって水素化分解された重質生成物を提供するか、前記熱分解プロセスに導かれ、それによって前記供給原料また非安定化供給原料の一部として分解された重質生成物を提供するか、あるいは、任意にさらなる処理のために、重質生成物として取り出すように導かれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
重質フラクションの質量が、供給原料の15パーセント未満である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
1つまたは複数の液体リサイクルループが、中間留出物、脱芳香族中間留出物、水素化分解生成物、重質フラクション、水素化分解中間体、脱芳香族中間体または生成物ストリームのうちのある量またはそれらの量の組み合わせを、上流プロセスステップ、例えば安定化において触媒的に活性な材料、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料、水素化分解において触媒的に活性な材料に、または分離のステップに、導くことによって確立される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
水素化脱芳香族条件が、200~350℃の区間の温度、30Bar~150Barまたは200Barの区間の圧力、および0.5~8の区間の液空間速度(LHSV)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
水素化脱芳香族において触媒的に活性な前記材料が、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、タングステンおよびモリブデンを含む群から選択される活性金属、好ましくは1種または複数の元素貴金属、例えば白金またはパラジウム、ならびに耐熱性担体、好ましくは非晶質シリカ-アルミナ、アルミナ、シリカもしくはチタニアまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料が、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料よりも高い水素化活性を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触するように導かれるストリームが、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料と接触する前に冷却される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
固体の熱分解に由来する、少なくとも5重量%の芳香族を含有する供給原料の転化のためのプロセスプラントであって、
a.入口および出口を有し、二水素の存在下、水素化脱酸素条件下で運転される、水素化脱酸素において触媒的に活性な材料を含む水素化脱酸素セクション、
b.入口および出口を有し、二水素の存在下、水素化脱芳香族条件下で運転される、水素化脱芳香族において触媒的に活性な材料を含む水素化脱芳香族セクション、
を含み、
水素化脱酸素セクションの出口が、水素化脱芳香族セクションの入口と流体連通されている、前記プロセスプラント。
【国際調査報告】