IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2024-538257連続解重合を経てビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを製造する方法
<>
  • 特表-連続解重合を経てビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを製造する方法 図1
  • 特表-連続解重合を経てビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを製造する方法 図2
  • 特表-連続解重合を経てビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを製造する方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】連続解重合を経てビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/00 20060101AFI20241010BHJP
   C08J 11/10 20060101ALI20241010BHJP
   C08J 11/24 20060101ALI20241010BHJP
   C07C 69/82 20060101ALI20241010BHJP
   C07C 67/48 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C07C67/00
C08J11/10 ZAB
C08J11/24
C07C69/82 B
C07C67/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525115
(86)(22)【出願日】2023-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 KR2023008268
(87)【国際公開番号】W WO2024014723
(87)【国際公開日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】10-2022-0085160
(32)【優先日】2022-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジ‐フン
(72)【発明者】
【氏名】パク, クァン‐ウー
(72)【発明者】
【氏名】イ, ソン‐キ
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジュン キ
(72)【発明者】
【氏名】ジン, ユンテ
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401BA06
4F401CA22
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401CB01
4F401CB14
4F401CB18
4F401DA12
4F401EA60
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA06Z
4F401FA07Z
4F401FA10Z
4F401FA20Z
4H006AA02
4H006AC91
4H006BD81
4H006BD84
(57)【要約】
本発明はビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレートを製造する方法であって、(1)廃ポリエステル原料を共押出機に添加して、共押出物を得るステップと、(2)共押出物を、撹拌シャフトを備えた反応器へ添加し共押出物を解重合して第1の反応生成物を得るステップと、(3)第1の反応生成物を第1の連続撹拌槽型反応器に添加し第1の反応生成物を解重合して第2の反応生成物を得るステップと、(4)第2の反応生成物を第2の連続撹拌槽型反応器に添加し第2の反応生成物を解重合して第3の反応生成物を得るステップとを、含む、方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)廃ポリエステル原料を共押出機に供給して、共押出物を得るステップと、
(2)前記共押出物を撹拌シャフト反応器に供給し前記共押出物を解重合して第1の反応物を得るステップと、
(3)前記第1の反応物を第1の連続反応器に供給し前記第1の反応物を解重合して第2の反応物を得るステップと、
(4)前記第2の反応物を第2の連続反応器に供給し前記第2の反応物を解重合して第3の反応物を得るステップと
を含む、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項2】
第1のグリコール系化合物が、前記廃ポリエステル原料100重量部に対して0.01~100重量部の量でステップ(1)における前記共押出機に連続的に供給される、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項3】
ステップ(1)における前記共押出が170~290℃で行われる、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項4】
前記共押出物が3,000~36,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項5】
ステップ(2)における前記解重合が180~210℃で行われる、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、金属酢酸塩又はその無水物若しくは水素化物を含む触媒が前記撹拌シャフト反応器にさらに供給される、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項7】
ステップ(2)を経て得られた前記第1の反応物が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析された場合、50~75%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)のピーク面積分率を有する、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項8】
前記撹拌シャフト反応器が、ニーダー、パドルミキサー、プラウシェアミキサー、スクリューミキサー、及びリボンブレンダーからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項9】
第2のグリコール系化合物が、ステップ(3)において前記第1の反応物100重量部に対して50~340重量部の量で前記第1の連続反応器に連続的に供給される、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項10】
ステップ(4)を経て得られた前記第3の反応物が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析された場合、80~90%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)のピーク面積分率を有する、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項11】
ステップ(3)における前記解重合が170~195℃で30~50分間行われ、ステップ(4)における前記解重合が140~170℃で30~50分間行われる、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項12】
第3のグリコール系化合物が、前記第2の反応物100重量部に対して50~150重量部の量でステップ(4)における第2の連続反応器に連続的に供給される、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項13】
ステップ(4)の前記第3の反応物が0.1μmの孔径を有する濾過膜を使用して濾過される場合、前記濾過膜を通過する流量が10kg/hr以上である、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項14】
ステップ(4)における前記第3の反応物が、以下の式1
[式1]
濾過損失率(重量%)=(m-m/m)×100
:第3の反応物の初期重量
:0.1μmの孔径を有する濾過膜を通過した第3の反応物の重量
に従って8重量%未満の濾過損失率を有する、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項15】
ステップ(4)の前記第3の反応物を精製するステップ(5)をさらに含む、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃ポリエステルを使用して、高純度のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を高効率で調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーの中でもポリエステルは、その優れた機械的強度、耐熱性、透明度及びガスバリヤー性によって様々な分野で材料として使用されている。特に、ポリエステルのシート又は板は、良好な透明度及び優れた機械的強度を有し、その結果、ポリエステルのシート又は板は、ケース、箱、間仕切り、棚、パネル、包装材、建材、内装材及び外装材等に広く使用されている。
【0003】
その結果、ポリエステル等のプラスチックの廃棄物は、世界的に毎年、手に負えないレベルで発生している。最近、世界中の国々は廃ポリエステルを含む廃プラスチック資源を再利用するための規制及び計画を準備している。
【0004】
物理的な方法及び化学的な方法が廃ポリエステルのリサイクル方法として使用されるが、物理的なリサイクル方法は純度を保証することができないため、あまり普及していない。一方、ケミカルリサイクル法では、廃ポリエステルのエステル結合を切断して廃ポリエステルを解重合する。グリコリシス、加水分解、メタノリシス及びアミノリシス等の反応が使用される。このうちグリコリシスは、エチレングリコール又はジエチレングリコール等のグリコールを高温で添加することにより、廃ポリエステルを分解するものである。主としてビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む反応生成物が得られる。反応生成物に含まれるビス(2-ヒドロキシ)テレフタレートは、これを結晶化又は精製した後、不飽和ポリエステル又はエステルポリオールを調製するための原料として使用することができる。
【0005】
上記原料としてビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを使用するために、解重合プロセスの間にジエチレングリコールエステル(DEGエステル)等の副生成物の生成を最小限にすることにより、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの純度を高めることが必要である。この目的のために、連続撹拌槽型反応器(CSTR)を多段に設計することにより、解重合を行う方法が、現在採用されている。
【0006】
しかしながら、この方法は、バッチ式反応器を使用した場合に比べ、廃ポリエステルの解重合に要する時間が2倍以上となるため、プロセス効率が低下するという問題がある。また、廃ポリエステルを解重合するこの方法では、副生成物の生成の抑制が不十分であり、所望の純度のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを得ることには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許公開第2022-0068991号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記従来の課題を解決するために種々検討を行った。その結果、廃ポリエステルが連続反応器(CSTR)による解重合の前に、分子量の低減と短時間の解重合を行われる場合、高純度のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートが高効率(生産性の向上)で調製されることが可能であることが見出された。
【0009】
したがって、本発明の目的は、廃ポリエステルの連続的な解重合によってビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法を提供することであり、この方法において、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの純度及び生産効率(生産性)を向上することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法を提供し、この方法は、(1)廃ポリエステル原料を共押出機に供給して、共押出物を得るステップと、(2)共押出物を撹拌シャフト反応器(agitated shaft reactor)に供給し、共押出物を解重合して第1の反応物を得るステップと、(3)第1の反応物を第1の連続反応器に供給し、第1の反応物を解重合して第2の反応物を得るステップと、(4)第2の反応物を第2の連続反応器に供給し、第2の反応物を解重合して第3の反応物を得るステップとを、含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の調製方法によれば、廃ポリエステルは、共押出と撹拌シャフト反応器による短期間の解重合による分子量の低減、それに続く多段階の連続反応器(CSTR)による解重合が行われ、不純物と考えられる副生成物(例えば、DEG及びDEGエステル)の生成を最小限に抑えながら、比較的短時間でビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を調製(製造)することができる。
したがって、本発明は、高純度のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を高効率で提供することができ、上記のようにして調製されたビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)は、優れた品質を有するポリエステル及びそれを使用した製品を調製するための原料として使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態によるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法の一例を示す図である。
図2】比較例1~3によるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法を示す図である。
図3】比較例4~6によるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。本明細書における本発明は、以下に示す開示内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない限り、種々の形態に変更可能である。
【0014】
本明細書において、「含む(comprising)」という用語は、特定の特性、領域、ステップ、プロセス、要素、及び/又は成分を指定することを意図している。特に反対の記載がない限り、他の特性、領域、ステップ、プロセス、要素、及び/又は成分の存在又は追加を排除するものではない。
【0015】
本明細書を通じて、第1の、第2の、等の用語は、1つの要素を他の要素と区別する目的で使用されている。しかし、構成要素は用語によって限定されるべきではない。
【0016】
本明細書で使用される成分の量、反応条件等に関するすべての数値及び表現は、特に断りのない限り、「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。
【0017】
本明細書に記載されている化合物(反応物又は生成物)の数平均分子量及び重量平均分子量は、周知のように炭素12(12C)を基準とした相対質量である。その単位は記載されていないが、必要に応じて同じ数値のモル質量(g/モル)と理解してもよい。
【0018】
説明の便宜上、添付図面における個々の要素の大きさは誇張して描かれている場合があり、実際の大きさとは異なる場合がある。
【0019】
ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法
本発明は、廃ポリエステルの解重合により、再生樹脂(ポストコンシューマー樹脂)を調製するための原料の一つであるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法に関する。本発明は、廃ポリエステルの分子量の低減と短期間の解重合を行い、次いで連続反応器を通して多段階に解重合を行うことを特徴とする。
【0020】
具体的には、本発明によるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法は、(1)廃ポリエステル原料を共押出機に供給して、共押出物を得るステップと、(2)共押出物を撹拌シャフト反応器に供給し、共押出物を解重合して第1の反応物を得るステップと、(3)第1の反応物を第1の連続反応器に供給し、第1の反応物を解重合して第2の反応物を得るステップと、(4)第2の反応物を第2の連続反応器に供給し、第2の反応物を解重合して第3の反応物を得るステップとを含む。
【0021】
本発明によるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法は、ステップ(4)の第3の反応物を精製するステップ(5)をさらに含んでもよい。
【0022】
以下に、図1を参照しながら、この方法の各ステップを詳細に説明する。
【0023】
ステップ(1):共押出物を得るステップ
本発明によれば、ステップ(1)において、廃ポリエステル原料は共押出機(10)に供給されて共押出物を得る。具体的には、ステップ(1)において、廃ポリエステル原料の分子量の低減は、共押出機(10)を通して物理的及び/又は化学的方法で達成される。
【0024】
廃ポリエステル原料は使用後に廃棄されたポリエステル材料製品から得られ得る。具体的には、廃ポリエステルは、消費者が使用した後に廃棄される各種ポリエステル材料(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)材料)を含む飲料ボトル、布帛、フィルム、ケース、箱、間仕切り、棚、保護パネル、包装材、建材、内装材及び外装材等の廃製品を前処理することにより、廃ポリエステルを得ることができる。
【0025】
前処理は、廃棄物に混入している他のプラスチック、金属、及び異物を除去し、廃ポリエステルを洗浄した後、粉砕機で破砕することにより行われてもよい。前処理の結果、廃ポリエステル原料はフレーク状となる場合がある。さらに、廃ポリエステル原料は繊維のような微細構造を有してもよい。
【0026】
ステップ(1)において、第1のグリコール系化合物は共押出機(10)に連続的に供給されてもよい。第1のグリコール系化合物が共押出機(10)に供給される場合、廃ポリエステル原料の分子量はより効率的に低減されることが可能となる。
【0027】
第1のグリコール系化合物としては、特に限定されない。具体的には、第1のグリコール系化合物はエチレングリコール(モノエチレングリコール)、プロピレングリコール及びジエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0028】
第1のグリコール系化合物の供給量は、廃ポリエステル原料100重量部に対して、0.01~100重量部、1~80重量部、3~60重量部、又は5~50重量部であってもよい。第1のグリコール系化合物の供給量が上記範囲内である場合、共押出機(10)を通して廃ポリエステル原料の分子量は極限まで低減されることが可能となる。
【0029】
一方、共押出は、170~290℃、具体的には、173~275℃、175~250℃、180~230℃、185~215℃、又は190~200℃で行われてもよい。共押出が上記温度範囲で行われる場合、廃ポリエステル原料の分子量は安定して低減されることが可能となる。さらに、共押出時の押出速度(スクリューrpm)は、130~250rpm、135~220rpm、140~200rpm、又は145~185rpmであってもよい。
【0030】
共押出機(10)は、廃ポリエステル原料を共押出するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、共押出機(10)は、従来公知の単軸共押出機であってもよいし、多軸(例えば、二軸)共押出機であってもよい。
【0031】
ステップ(1)を経て得られる共押出物は、比較的低い重量平均分子量及び数平均分子量を有してもよい。すなわち、共押出物は、3,000~36,000、具体的には、3,500~30,000、3,800~25,000、又は4,000~20,000の重量平均分子量を有してもよい。さらに、共押出物は、500~10,000、800~8,000、1,000~6,500又は1,100~5,500の数平均分子量を有してもよい。
【0032】
ステップ(1)を経て得られる共押出物は、上述のように比較的低分子量を有しているため、ステップ(2)から(4)の解重合手順に費やす時間が短縮されることが可能となり、副生成物(例えば、DEG及びDEGエステル)の生成は最小限に抑えられる。
【0033】
ステップ(2):撹拌シャフト反応器によって第1の反応物を得るステップ
本発明によれば、ステップ(2)において、共押出物は撹拌シャフト反応器に供給され解重合(第1の解重合)されて、第1の反応物を得る。具体的には、ステップ(2)において、共押出物中に存在するポリマー鎖等が第1のグリコール系化合物により分解されるグリコリシス反応が短時間で行われることが可能である。
【0034】
ステップ(1)において、第1のグリコール系化合物が共押出機(10)に供給されない場合、第1のグリコール系化合物は撹拌シャフト反応器(20)に連続的に供給されてもよい。
【0035】
撹拌シャフト反応器(20)を通して共押出物の解重合を促進するために、解重合反応を促進するための触媒が撹拌シャフト反応器(20)にさらに供給されてもよい。触媒は、それが公知の触媒である限り、特に限定されない。具体的には、金属酢酸塩、酢酸塩の無水物、又は酢酸塩の水和物を含む触媒であってもよい。より具体的には、酢酸亜鉛、酢酸ナトリウム、酢酸コバルト及び酢酸マンガンからなる群から選択される少なくとも1つの酢酸塩、又はそれらの水和物若しくは無水物であってもよい。
【0036】
撹拌シャフト反応器(20)に供給される触媒の量は、廃ポリエステル原料100重量部に対して、0.01~5重量部、0.1~3重量部、又は0.2~1重量部であってもよい。
【0037】
共押出物の解重合は、180~210℃(具体的には、183~208℃、185~205℃、186~204℃、188~203℃、190~200℃、又は193~198℃)で50分以下(具体的には、5~50分、10~50分、20~50分、22~45分、25~40分、又は30~35分)行われてもよい。特に、共押出物の解重合温度は、ステップ(3)及び(4)における解重合温度よりも高くてもよいし、解重合に費やす時間は、ステップ(3)及び(4)における解重合に費やす時間よりも短くてもよい。その結果、高純度のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートが高効率で調製されることが可能である。
【0038】
一方、撹拌シャフト反応器(20)は、共押出物、第1のグリコール系化合物及び触媒を混合するためのものである限り、特に限定されない。具体的には、撹拌シャフト反応器(20)は、ニーダー、パドルミキサー、プラウシェアミキサー(plow shear mixer)、スクリューミキサー、及びリボンブレンダーからなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。より具体的には、撹拌シャフト反応器はニーダー又はパドルミキサーであってもよい。
【0039】
ステップ(2)を経て得られた第1の反応物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析された場合、50~75%、具体的には、55~75%、58~73%、又は65~70%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)のピーク面積分率を有してもよい。
【0040】
さらに、第1の反応物は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析した場合、11.0%以下、具体的には、0.5~10.5%、0.8~10%、1.0~8.0%、1.3~7.5%、又は1.5~7.3%の重量平均分子量2,000未満(>Mw2,000)を有するオリゴマーのピーク面積分率を有してもよい。
【0041】
ステップ(3):第1の連続反応器を通して第2の反応物を得るステップ
本発明によれば、ステップ(3)において、第1の反応物は、第1の連続反応器に供給され、解重合(第2の解重合)されて第2の反応物を得る。具体的には、ステップ(3)において、第2のグリコール系化合物は同様に第1の連続反応器(30)に連続的に供給されてもよい。その結果、第1の反応物中に存在するポリマー鎖等が第2のグリコール系化合物により分解されるグリコリシス反応が行われることが可能である。
【0042】
第2のグリコール系化合物としては、特に限定されない。具体的には、エチレングリコール(モノエチレングリコール)、プロピレングリコール及びジエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0043】
第1の連続反応器(30)に供給される第2のグリコール系化合物の量は、第1の反応物100重量部に対して50~340重量部であってもよい。具体的には、第2のグリコール系化合物は、第1の反応物100重量部に対して、50~300重量部、50~250重量部、50~200重量部、又は50~100重量部の量で第1の連続反応器(30)に連続的に供給されてもよい。第2のグリコール系化合物の供給量が上記範囲内である場合、第1の反応物の解重合は効率的に行われることが可能であり、これにより、ステップ(3)を経て得られる第2の反応物中に含有されるオリゴマー、ダイマー又はトリマーの割合は著しく低減されることが可能となる。
【0044】
第1の反応物の解重合は、170~195℃(具体的には、173~194℃、175~193℃、177~192℃、180~191℃、183~191℃、又は185~190℃)で30~50分間(具体的には、32~45分間、35~43分間、又は38~40分間)行われてもよい。上記条件下で第1の反応物の解重合が行われる場合、解重合が効率的に行われ、全体のプロセス時間が短縮されるため、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの純度及び調製効率(生産性)を向上させることができる。
【0045】
第1の反応物の解重合は、ステップ(2)において撹拌シャフト反応器(20)に連続的に供給される触媒の存在下で行われてもよいし、第1の連続反応器(30)に直接供給される触媒の存在下で行われてもよい。触媒は、金属酢酸塩、その無水物又はその水和物を含む触媒であってもよい。
【0046】
一方、第1の連続反応器(30)は、解重合を行うように設計された従来の連続流通式の槽型反応器である限り、特に限定されない。
【0047】
ステップ(3)を経て得られる第2の反応物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した場合、50~85%、具体的には、55~84%、65~83.5%、又は75~83%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)のピーク面積分率を有してもよい。ここで、第2の反応物中のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)のHPLCピーク面積分率は、第1の連続反応器(30)に供給される第2のグリコール系化合物の量に応じて変化可能である。
【0048】
ステップ(4):第2の連続反応器を通して第3の反応物を得るステップ
本発明によれば、ステップ(4)において、第2の反応物は第2の連続反応器(40)に供給され解重合(第3の解重合)されて、第3の反応物が得られる。具体的には、ステップ(4)において、ステップ(1)の第1の連続反応器(30)から排出され、第2の連続反応器(40)に供給される未反応の第2のグリコール系化合物により、第2の反応物中に存在するポリマー鎖等が分解されるグリコリシス反応が行われることが可能である。また、解重合が十分に行われる程度まで未反応の第2のグリコール系化合物が第2の連続反応器(40)に供給されない場合、又は未反応の第2のグリコール系化合物の純度が低下する場合の、解重合効率の低下に備えて、第3のグリコール系化合物が第2の連続反応器(40)に追加供給されてもよい。
【0049】
第3のグリコール系化合物としては、特に限定されない。具体的には、エチレングリコール(モノエチレングリコール)、プロピレングリコール及びジエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0050】
第2の連続反応器(40)に供給される第3のグリコール系化合物の量は、第2の反応物100重量部に対して50~150重量部であってもよい。具体的には、第3のグリコール系化合物は、第2の反応物100重量部に対して、50~130重量部、55~110重量部、60~90重量部、又は65~80重量部の量で第2の連続反応器(40)に連続的に供給されてもよい。第3のグリコール系化合物の供給量が上記範囲内である場合、第2の反応物の解重合は効率的に行われることが可能であり、これにより、ステップ(4)を経て得られる第3の反応物中に含有されるオリゴマー、ダイマー又はトリマーの割合は著しく低減されることが可能となる。
【0051】
第2の反応物の解重合は、140~170℃(具体的には、143~168℃、145~165℃、148~160℃、149~158℃、又は150~155℃)で30~50分間(具体的には、35~45分間、38~43分間、又は40~42分間)行われてもよい。上記条件下で第2の反応物の解重合が行われる場合、解重合は効率的に行われ、全体のプロセス時間が短縮されるため、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの純度及び調製効率(生産性)を向上させることができる。
【0052】
第2の反応物の解重合は、ステップ(2)において撹拌シャフト反応器(20)に連続的に供給される触媒、第1の連続反応器(30)に連続的に供給される触媒、又は第2の連続反応器(40)に直接供給される触媒の存在下で行われてもよい。触媒は、金属酢酸塩、その無水物、又はその水和物を含む触媒であってもよい。
【0053】
一方、第2の連続反応器(40)は、解重合を行うように設計された従来の連続流通式の槽型反応器である限り、特に限定されない。
【0054】
ステップ(4)を経て得られた第3の反応物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析された場合、80~90%、具体的には、83.5~90%、84~89.5%、又は84.5~89%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)のピーク面積分率を有してもよい。
【0055】
さらに、第3の反応物は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で分析した場合、2.0%以下、具体的には、0.0~2.0%、0.0~1.8%、0.0~1.7%、0.0~1.5%、又は0.0~1.0%の重量平均分子量2,000未満(>Mw2,000)を有するオリゴマーのピーク面積分率を有してもよい。
【0056】
一方、第3の反応物は、濾過ステップが行われて未反応物や不純物(夾雑物)が除去される。このような場合、濾過ステップに要する時間に大きな影響を与えるオリゴマーが第3の反応物にはほとんど含まれていないため、本発明では比較的短時間で濾過ステップを行うことができる。すなわち、本発明では、廃ポリエステルを連続反応器に直接供給して多段的に解重合する前に、ステップ(1)において共押出機(10)を通して廃ポリエステル原料の分子量を低減させ、ステップ(2)において撹拌シャフト反応器(20)を通して短期的に解重合が行われることにより得られる反応物は多段的に解重合が行われ、したがって、最終の解重合によって得られる第3の反応物は、そうでなければ濾過の時間を増加させるか、又は濾過ステップを遅延させるはずのオリゴマーをほとんど含有していない。また、上記(3)、(4)のステップを介して多段解重合が行われる場合、各ステップで得られる反応物の高温反応の滞留時間が短くなり、副生成物の生成が最小限に抑えられ、したがって、高純度のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを高収率で調製することができる。
【0057】
具体的には、第3の反応物が0.1μmの孔径を有する濾過膜を使用して濾過される場合、濾過膜を通過する流量(濾過流量)は、10kg/hr以上、具体的には、10~100kg/hr、12~90kg/hr、13~80kg/hr、又は14~70kg/hrであってもよい。濾過流量が上記範囲内である場合、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートの調製効率(生産性)を著しく向上させることが可能となる。
【0058】
さらに、第3の反応物は、以下の式1による、8重量%未満、具体的には、0.1~7.5重量%、0.5~7.0重量%、1.0~6.0重量%、又は1.3~5.0重量%の濾過損失率を有してもよい。
[式1]
濾過損失率(重量%)=(m-m/m)×100
:第3の反応物の初期重量
:0.1μmの孔径を有する濾過膜を通過した第3の反応物の重量
【0059】
ステップ(5):第3の反応物の精製
本発明によれば、ステップ(5)において、第3の反応物が精製される。ステップ(5)は、必要に応じて任意選択で行われることが可能である。
【0060】
第3の反応物の精製は、一般的に公知の方法を介して行われてもよい。具体的には、精製は、濾過、イオン交換、蒸留、脱色、及び吸着のうちの1つ又は複数のステップを含んでもよい。
【0061】
濾過ステップは、膜濾過、濾過助剤濾過、減圧フラッシュ(冷却)、及び固液分離等のプロセスを含んでもよい。このような濾過ステップが行われる場合、第3の反応液に含有される微粒子や不溶性異物を除去することができる。
【0062】
イオン交換は、一般的に公知のイオン交換樹脂を使用して行われるステップである。イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、両性イオン交換樹脂、キレート樹脂等を挙げることができる。具体的には、カチオン交換樹脂は、スルホン酸基(-SOH)を有する強酸性カチオン交換樹脂であってもよいし、又はカルボキシル基(-COOH)を有する弱酸性カチオン交換樹脂であってもよい。陰イオン交換樹脂は、4級アンモニウム塩の形態の強塩基性陰イオン交換樹脂であってもよいし、又はアミノ基を有する弱塩基性陰イオン交換樹脂であってもよい。このようなイオン交換ステップが行われる場合、触媒及び金属異物を除去することができる。
【0063】
蒸留は、減圧蒸留、薄膜蒸発、落下膜蒸発、ショートパス蒸発等のステップを含んでもよい。このような蒸留ステップが行われる場合、未反応のグリコール系化合物を除去することができる。
【0064】
脱色は、一般的に公知の脱色剤を使用して行われるステップである。具体的には、脱色剤としては、活性炭、活性クレー、珪藻土等を挙げることができる。このような脱色ステップが行われる場合、着色物質を除去することができる。
【0065】
吸着は、従来公知の吸着剤を使用して行われるステップである。このような吸着ステップが行われる場合、他の異物を除去し、結晶化した最終反応物(ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート)を得ることができる。
【0066】
発明の方法
以下、実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は説明のためにのみ提供されるものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
調製実施例1
破砕された廃PET(フレーク状のPET)とモノエチレングリコール(MEG)をそれぞれ15.5kg/hrの供給流量で単軸スクリュー共押出機に供給し、温度180℃、150rpmで共押出(分子量低減のため)して共押出物を得た。
【0068】
調製実施例2~7
供給流量及び共押出条件を下記表1に示すように調整したこと以外は、調製例1と同じ手順で各共押出物を得た。
【0069】
試験実施例1
調製実施例1~7で得られた共押出物を、それぞれ以下の条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析した。結果を下記表1に示す。
GPC分析装置:HLC-8420GPC Elite of TOSOH
移動相:クロロホルム/フェノール系混合溶媒
温度:40℃
カラム:個別ゲルタイプ×4EA
試料前処理:クロロホルム/フェノール系混合溶媒を使用して溶液中の試料濃度を0.5wt/v%に調整した。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1 共押出機、ニーダー、第1の連続反応器及び第2の連続反応器の適用
図1の設計条件に従い、調製実施例1の共押出プロセスに引き続き、ニーダー、第1の連続反応器(CSTR-1)、及び第2の連続反応器(CSTR-2)を介して連続的に解重合を行った。具体的には、調製実施例1の共押出物(供給流量:31.0kg/hr)と触媒としての酢酸亜鉛無水物(供給流量:0.065kg/hr)をニーダーに供給し、195℃で35分間第1の解重合反応を行い、第1の反応物を得た。
【0072】
こうして得られた第1の反応物と、追加のモノエチレングリコール(MEG-2)(供給流量:15.5kg/hr)を第1の連続反応器(CSTR-1)に供給し、190℃で40分間第2の解重合反応を行い、第2の反応物を得た。
【0073】
こうして得られた第2の反応物と、追加のモノエチレングリコール(MEG-3)(供給流量:31.0kg/hr)を第2の連続反応器(CSTR-1)に供給し、150℃で40分間第3の解重合反応を行い、第3の反応物を得た。
【0074】
こうして得られた第3の反応物を従来の方法で精製し、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製した。
【0075】
実施例2~7 共押出機、ニーダー、第1の連続反応器、及び第2の連続反応器の適用
各解重合反応における供給流量及び反応温度を下記表2に示すように調整したこと以外は、実施例1と同じ方法でビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製した。
【0076】
比較例1~3 ニーダー、第1の連続反応器、及び第2の連続反応器の適用
図2の設計条件に従い、破砕された廃PET(フレーク状のPET)の解重合を、破砕された廃PETの共押出プロセスを経ずに、酢酸亜鉛無水物触媒の存在下、ニーダー、第1の連続反応器(CSTR-1)及び第2の連続反応器(CSTR-2)を介して連続的に行った。各解重合反応における供給流量及び反応温度を下記表3に示すように調整しながら、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製した。
【0077】
比較例4~6 第1の連続反応器、第2の連続反応器及び第3の連続反応器の適用
図3の設計条件に従い、破砕された廃PET(フレーク状のPET)の解重合を、破砕された廃PETの共押出プロセス及びニーダーによる解重合を経ずに、酢酸亜鉛無水物触媒の存在下、第1の連続反応器(CSTR-1)、第2の連続反応器(CSTR-2)及び第3の連続反応器(CSTR-3)を介して連続的に行った。各解重合反応における供給流量及び反応温度を下記表3に示すように調整しながら、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製した。
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
試験実施例2
実施例1~7及び比較例1~6で得られた反応物をそれぞれゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により以下の条件で分析した。結果を下記表4及び表5に示す。
GPC分析装置:HLC-8420GPC Elite of TOSOH
移動相:クロロホルム/フェノール系混合溶媒
温度:40℃
カラム:個別ゲルタイプ×4EA
試料前処理:クロロホルム/フェノール系混合溶媒を使用して溶液中の試料濃度を0.5wt/v%に調整した。
【0081】
試験実施例3
実施例1~7及び比較例1~3の第2の連続反応器(CSTR-2)で解重合して得られた第3の反応物と、比較例4~6の第3の連続反応器(CSTR-3)で解重合して得られた第3の反応物とを、それぞれ円形のガラス繊維フィルターで濾過し、濾過時間及び流量を測定した。その結果を下記表4及び表5に示す。ここで、評価条件及び評価基準は以下の通りであった。
ガラス繊維フィルターの孔径:0.1μm
ガラス繊維フィルターの直径:320mm
濾過温度:100~150℃
濾過の成否の判定-◎:濾過時間20分以内、○:濾過時間20分超~60分以下、×:濾過時間60分超
【0082】
試験実施例4
試験実施例3において得られた反応物(濾液)を、それぞれ、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により以下の条件で分析した。結果を下記表4及び表5に示す。
前処理:約0.01gの試料を約20mLのメタノールで希釈し、HPLCで測定した。
HPLC分析装置(モデル):Waters e2695
カラム:C18(4.6×250mm)、5μm
UV検出器:242nm
注入量:10μL
溶離液(勾配)-A:HO+HPO、B:アセトニトリル
【0083】
試験実施例5
試験実施例3を行った後、反応物(濾液)の濾過損失率を下記式1により算出した。
[式1]
濾過損失率(重量%)=(m-m/m)×100
:第3の反応物の初期重量(実施例1~7及び比較例1~3では第2の連続反応器(CSTR-2)で解重合して得られた第3の反応物の初期重量、及び比較例4~6では第3の連続反応器(CSTR-3)で解重合して得られた反応物の初期重量)
:0.1μmの孔径を有する濾過膜を通過した第3の反応物の重量(実施例1~7及び比較例1~3では、0.1μmの孔径を有する濾過膜を通過した第2の連続反応器(CSTR-2)における解重合により得られた第3の反応物の重量、及び比較例4~6では0.1μmの孔径を有する濾過膜を通過した第3の連続反応器(CSTR-3)における解重合により得られた反応物の重量)
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
表4を参照すると、本発明による調製方法を適用した実施例1~7では、共押出とニーダーによる解重合を行った後、多段解重合を行った場合、比較的短時間で解重合を行うことにより、不純物と考えられる副生成物の生成を最小限に抑え、高純度のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造した。また、廃PETは良好に低分子化され、残存オリゴマーがほとんどないため、未反応物及び夾雑物を除去する濾過プロセスも効率的に行うことができた。
【0087】
これに対して、表5を参照すると、共押出プロセスを行わなかった比較例1~3では、実施例1~7に比べて廃PETの分子量の低減が達成されていないため、残留オリゴマーが増加し、副生成物の生成量が増加した。また、廃PETの分子量を低減させることなく多段解重合を行った比較例4~6では、残留オリゴマーが多く、濾過損失率が高いため、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法の効率が著しく悪化した。
【符号の説明】
【0088】
10:共押出機
20:撹拌シャフト反応器
30:第1の連続反応器
40:第2の連続反応器

図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)廃ポリエステル原料を共押出機に供給して、共押出物を得るステップと、
(2)前記共押出物を撹拌シャフト反応器に供給し前記共押出物を解重合して第1の反応物を得るステップと、
(3)前記第1の反応物を第1の連続反応器に供給し前記第1の反応物を解重合して第2の反応物を得るステップと、
(4)前記第2の反応物を第2の連続反応器に供給し前記第2の反応物を解重合して第3の反応物を得るステップと
を含み、
ステップ(2)における前記解重合が180~210℃で行われる、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項2】
第1のグリコール系化合物が、前記廃ポリエステル原料100重量部に対して0.01~100重量部の量でステップ(1)における前記共押出機に連続的に供給される、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項3】
ステップ(1)における前記共押出が170~290℃で行われる、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項4】
前記共押出物が3,000~36,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項5】
ステップ(2)における前記解重合が20~50分行われる、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、金属酢酸塩又はその無水物若しくは水素化物を含む触媒が前記撹拌シャフト反応器にさらに供給される、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項7】
ステップ(2)を経て得られた前記第1の反応物が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析された場合、50~75%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)のピーク面積分率を有する、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項8】
前記撹拌シャフト反応器が、ニーダー、パドルミキサー、プラウシェアミキサー、スクリューミキサー、及びリボンブレンダーからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項9】
第2のグリコール系化合物が、ステップ(3)において前記第1の反応物100重量部に対して50~340重量部の量で前記第1の連続反応器に連続的に供給される、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項10】
ステップ(4)を経て得られた前記第3の反応物が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析された場合、80~90%のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)のピーク面積分率を有する、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項11】
ステップ(3)における前記解重合が170~195℃で30~50分間行われ、ステップ(4)における前記解重合が140~170℃で30~50分間行われる、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項12】
第3のグリコール系化合物が、前記第2の反応物100重量部に対して50~150重量部の量でステップ(4)における第2の連続反応器に連続的に供給される、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項13】
ステップ(4)の前記第3の反応物が0.1μmの孔径を有する濾過膜を使用して濾過される場合、前記濾過膜を通過する流量が10kg/hr以上である、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項14】
ステップ(4)における前記第3の反応物が、以下の式1
[式1]
濾過損失率(重量%)=(m-m/m)×100
:第3の反応物の初期重量
:0.1μmの孔径を有する濾過膜を通過した第3の反応物の重量
に従って8重量%未満の濾過損失率を有する、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【請求項15】
ステップ(4)の前記第3の反応物を精製するステップ(5)をさらに含む、請求項1に記載のビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを調製する方法。
【国際調査報告】