(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】血管障害の治療器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525162
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 US2022048938
(87)【国際公開番号】W WO2023081340
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517416374
【氏名又は名称】マイクロベンション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROVENTION, INC.
【住所又は居所原語表記】35 Enterprise, Aliso Viejo, California 92656 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】トラン、ハン ピー
(72)【発明者】
【氏名】ヒューイット、トッド
(72)【発明者】
【氏名】ミルハウス、パーカー
(72)【発明者】
【氏名】デサイ、カリシマ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD53
(57)【要約】
患者の血管系を治療するための器具および方法が記載されている。実施形態は、一緒に織られた複数の細長いフィラメントから作られた透過性のインプラントを含むことができる。該インプラントは、凸形状を有する外面を有する遠位端を有するドーム部およびつば部からなる第1の拘束されていないプリセット構成を有することができる。該インプラントは、該第1の拘束されていない構成が反転した第2の展開構成を有していてもよい。該第2の展開構成は、開いた遠位端を有し、凹形状の内面を有する。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脳動脈瘤の治療用の器具であって、
複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、前記複数のフィラメントの各々が第1の端部および第2の端部を有し、前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部がハブに集められており、
前記透過性シェルがドーム状部とつば状部とを備える第1の拘束されていないプリセット構成を有し、前記ドーム状部が、外面、内面、および前記内面によって画定される内部空洞を備え、前記ハブが前記第1の拘束されていないプリセット構成において前記内部空洞内に位置しており、
前記透過性シェルが、前記患者の脳動脈瘤内に展開されたときに第2の拘束された構成をとるように構成され、前記第2の拘束された構成が開いた遠位端を備える、
器具。
【請求項2】
前記第1の拘束されていないプリセット構成が帽子形状を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記帽子形状がリップ状部をさらに備える、請求項2に記載の器具。
【請求項4】
前記リップ状部が前記つば状部から鋭角に延在する、請求項3に記載の器具。
【請求項5】
前記第1の拘束されていないプリセット構成が傘形状を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項6】
前記ハブが前記第1の拘束されていないプリセット構成の遠位端に位置する、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
前記第2の拘束された構成が椀形状を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記第2の拘束された構成が近位端に実質的に平坦な部分をさらに備える、請求項1に記載の器具。
【請求項9】
前記第2の拘束された構成がチューリップ形状を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項10】
前記第2の拘束された構成がカップ形状を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項11】
前記ハブが前記第2の拘束された構成の近位端に位置する、請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部および前記第2の端部がハブに集められている、請求項1に記載の器具。
【請求項13】
前記複数の細長いフィラメントの各々が中間部分を備え、前記中間部分が前記第2の拘束された構成の遠位端においてループを形成する、請求項1に記載の器具。
【請求項14】
前記複数の細長いフィラメントの各々が中間部分を備え、前記中間部分が前記第1の拘束されていないプリセット構成の近位端においてループを形成する、請求項1に記載の器具。
【請求項15】
前記第1の拘束されていないプリセット構成における前記透過性シェルの遠位端が反転している、請求項1に記載の器具。
【請求項16】
前記第1の拘束されていないプリセット構成における前記透過性シェルの遠位端が外凸面を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項17】
前記第2の拘束された構成における前記透過性シェルの遠位端が内凹面を有する、請求項1に記載の器具。
【請求項18】
前記複数の細長いフィラメントが編組メッシュ状に配置されている、請求項1に記載の器具。
【請求項19】
前記透過性シェルが前記編組メッシュの単層を備える、請求項18に記載の器具。
【請求項20】
前記透過性シェルが前記編組メッシュの二重層を備える、請求項18に記載の器具。
【請求項21】
前記透過性シェルが前記編組メッシュの多層を備える、請求項18に記載の器具。
【請求項22】
内部空洞および頸部を有する脳動脈瘤を治療するための方法であって、
マイクロカテーテル内のインプラントを脳動脈内の対象領域まで前進させる工程であって、前記インプラントが複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを備え、前記複数のフィラメントの各々が第1の端部および第2の端部を有し、前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部がハブに集められ、前記ハブがプッシャーに結合され、前記インプラントがドーム状部、つば状部および開いた近位端を備える第1の拡張状態に熱セットされている、工程と、
前記インプラントを前記脳動脈瘤のドームに向かって遠位方向に前進させることにより、前記インプラントを前記マイクロカテーテルから出して前記脳動脈瘤の内部空洞に前進させる工程であって、前記透過性シェルが前記動脈瘤の前記内部空洞において第2の拡張状態に拡張し、前記第2の拡張状態が開いた遠位端を備える、工程と、
前記プッシャーを前記インプラントから取り外す工程と、
前記インプラントを取り外した後、前記マイクロカテーテルを前記対象領域から引き抜く工程と、
を含む方法。
【請求項23】
前記第1の拡張状態が帽子形状を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の拡張状態が傘形状を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の拡張状態が椀形状を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の拡張状態が、近位端に実質的に平坦な部分をさらに備える、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の拡張状態がチューリップ形状を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の拡張状態がカップ形状を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の細長いフィラメントが編組メッシュ状に配置されている、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記透過性シェルが前記編組メッシュの単層を備える、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記透過性シェルが前記編組メッシュの二重層を備える、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記透過性シェルが前記編組メッシュの多層を備える、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の拡張形状が前記第1の拡張形状とは異なる、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記ハブが前記第1の拡張状態の遠位端に位置する、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記ハブが前記第2の拡張状態の近位端に位置する、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部および前記第2の端部がハブに集められている、請求項22に記載の方法。
【請求項37】
前記複数の細長いフィラメントの各々が中間部分を含み、前記中間部分が前記第2の拡張状態の遠位端においてループを形成する、請求項22に記載の方法。
【請求項38】
前記複数の細長いフィラメントの各々が中間部分を含み、前記中間部分が前記第1の拡張状態の近位端においてループを形成する、請求項22に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の拡張状態にある前記透過性シェルの遠位端が反転している、請求項22に記載の方法。
【請求項40】
前記第1の拡張状態にある前記透過性シェルの遠位端が外凸面を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の拡張状態にある前記透過性シェルの遠位端が内凹面を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項42】
内部空洞および頸部を有する脳動脈瘤を治療するための方法であって、
マイクロカテーテル内のインプラントを脳動脈内の対象領域まで前進させる工程であって、前記インプラントが複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを備え、前記複数のフィラメントの各々が第1の端部および第2の端部を有し、前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部がハブに集められ、前記ハブがプッシャーに結合されている、工程と、
前記インプラントを前記脳動脈瘤のドームに向かって遠位方向に前進させることにより、前記インプラントを前記マイクロカテーテルから出して前記脳動脈瘤の内部空洞に前進させる工程であって、前記透過性シェルが前記動脈瘤の前記内部空洞において第1の拡張状態まで拡張し、前記第1の拡張状態がドーム状部とつば状部とを備え、前記ドーム状部が、外面、内面、および前記内面によって画定される内部空洞を備え、前記ハブが前記第1の拡張状態の遠位端において前記内部空洞内に位置する、工程と、
前記プッシャーを前記内部空洞内で近位側に引き抜く工程であって、前記透過性シェルが動脈瘤の内部空洞内で第2の拡張状態の姿勢をとり、前記第2の拡張状態が近位端の実質的に平坦な部分および開いた遠位端を備え、前記ハブが前記拡張状態の近位端に位置する、工程と、
前記プッシャーを前記インプラントから取り外す工程と、
前記インプラントを取り外した後、前記マイクロカテーテルを前記対象領域から引き抜く工程と、
を含む方法。
【請求項43】
前記第1の拡張状態が帽子形状を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の拡張状態が傘形状を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記複数の細長いフィラメントの各々が中間部分を含み、前記中間部分が前記第2の拡張状態の遠位端においてループを形成する、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記複数の細長いフィラメントの各々が中間部分を含み、前記中間部分が前記第1の拡張状態の近位端においてループを形成する、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記第1の拡張状態の遠位端における前記複数のフィラメントが反転している、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記第2の拡張状態における前記透過性シェルの高さが前記脳動脈瘤の高さ未満である、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記脳動脈瘤が広頸部脳動脈瘤である、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
前記インプラントが展開された後に、前記実質的に平坦な部分が広頸部脳動脈瘤の頸部内に収まる、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
前記ハブが前記プッシャーに取り外し可能に結合される、請求項42に記載の方法。
【請求項52】
患者の脳動脈瘤の治療用の器具であって、
複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、前記複数のフィラメントの各々が第1の端部および第2の端部を有し、前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部がハブに集められており、
前記透過性シェルが、外凸面を有する閉じた遠位端を備える第1の拘束されていない構成を有し、
前記透過性シェルが、前記患者の脳動脈瘤内に展開されたときに第2の構成をとるように構成され、前記第2の構成が内凸面を有する開いた遠位端を備える、
器具。
【請求項53】
患者の脳動脈瘤の治療用の器具であって、
複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、前記複数のフィラメントの各々が第1の端部および第2の端部を有し、前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部がハブに集められており、
前記透過性シェルが、外凸面を有する閉じた遠位端を備える第1の拘束されていない構成を有し、
前記透過性シェルが、前記患者の脳動脈瘤内に展開されたときに第2の構成をとるように構成され、前記第2の構成が開いた遠位端および内部空洞を備える、
器具。
【請求項54】
前記第1の拘束されていない構成が傘形状を備える、請求項53に記載の器具。
【請求項55】
前記ハブが前記外凸面と接触していない、請求項53に記載の器具。
【請求項56】
前記第2の構成が椀形状を備える、請求項53に記載の器具。
【請求項57】
前記ハブが前記第2の構成の内部空洞内に位置しない、請求項53に記載の器具。
【請求項58】
患者の脳動脈瘤の治療用の器具であって、
複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、前記複数のフィラメントの各々が第1の端部および第2の端部を有し、前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部がハブに集められており、前記透過性シェルが第1の表面および第2の表面を有し、前記ハブが前記第2の表面に取り付けられており、
前記透過性シェルが、内部空洞を有する凸状部を備える第1の拘束されていない構成を有し、前記ハブが前記第1の拘束されていない構成において前記凸状部の前記内部空洞内に位置しており、
前記透過性シェルが、前記患者の脳動脈瘤内に展開されたときに第2の構成をとるように構成され、前記第2の構成が前記第1の拘束されていない構成の反転である、
器具。
【請求項59】
前記凸状部の前記内部空洞の表面が前記第2の表面である、請求項58に記載の器具。
【請求項60】
前記第2の構成が開いた遠位端を備える、請求項58に記載の器具。
【請求項61】
前記第1の拘束されていない構成が開いた近位端をさらに備える、請求項58に記載の器具。
【請求項62】
前記第1の拘束されていない構成が前記凸状部に取り付けられた平面部分をさらに備える、請求項58に記載の器具。
【請求項63】
前記平面部分が前記凸状部から斜めに延在する、請求項62に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年11月5日に出願された米国仮出願番号63/276,537の利益を主張するものであり、この仮出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本明細書における器具および方法の実施形態は、哺乳動物の体内の嚢状空洞の小内室または血管障害への流体の流れを遮断することに関する。より具体的には、本明細書における実施形態は、患者の脳動脈瘤の治療に特に関するいくつかの実施形態を含む、患者の血管障害の治療のための器具および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
哺乳類の循環系は、ポンプとして働く心臓と、血液を体内の様々な場所に運ぶ血管系で構成されている。流れる血液が血管に及ぼす力のために、血管は様々な血管障害を起こすことがある。動脈瘤として知られる一般的な血管障害の一つは、血管の異常な広がりから生じる。通常、血管瘤は血管壁の弱化とそれに続く血管壁の膨張および拡張の結果として形成される。例えば、脳の動脈内に動脈瘤が存在し、この動脈瘤が破裂して頭蓋内出血を起こすと、死亡する可能性がある。
【0004】
脳動脈瘤の治療のための外科的技術は、一般的に、外科医が患者の脳を直接手術するため、患者の頭蓋骨に器具を挿入できる開口部を形成することを要する開頭術を伴う。いくつかの外科的アプローチでは、動脈瘤の発生源である親血管を露出させるために脳を後退させる必要がある。動脈瘤へのアクセスが可能になると、外科医は動脈瘤の頸部をクリップで挟み、動脈瘤への動脈血の流入を防ぐ。クリップが正しく設置されれば、動脈瘤は数分で取り除かれる。外科的技術は多くの動脈瘤に有効な治療法である。残念なことに、このような病態を治療するための外科的技術には侵襲的な大がかりな手術が含まれ、患者にとってリスクの高い麻酔下での長時間の手術が必要となることが多い。したがって、このような手術では、手術の対象者であるために患者は良好な身体状態であることを一般的に必要とする。
【0005】
大がかりな手術に頼ることなく脳動脈瘤を治療するため、様々な代替的で侵襲性の低い手術が用いられてきた。侵襲的な手術を必要とせずに動脈瘤を治療するための1つのアプローチに、血管内および動脈瘤の発生部位を横切ってスリーブまたはステントを配置することがある。このような流れの迂回器具(diverter devices)は、動脈瘤の内部にかかる血圧を下げながら血管内の血流を維持する。バルーン拡張型ステントと呼ばれるバルーンカテーテルを膨らませて適切なサイズに拡張するタイプのステントもあれば、自己拡張的に弾性的に拡張するタイプのステントもある。ステントの中には、グラフトと呼ばれる高分子材料のスリーブで一般的に覆われてステントグラフトを形成するものもある。ステントやステントグラフトは、送達カテーテルの中を通して血管障害部に隣接する予め選択された位置に一般に送達される。脳動脈瘤の治療では、被覆ステントやステントグラフトは、治療される血管障害の近くにある小さな穿孔血管を不注意に閉塞させる可能性があるため、その使用は非常に限られている。
【0006】
さらに、現在の非被覆ステントは、一般に単独での治療には不十分である。小さな脳血管で使用されるマイクロカテーテルにステントを通り抜けさせるため、通常はステントの密度を減少させるので、拡張時には動脈瘤頸部にブリッジするステント構造が少ししか存在しない。すなわち、上記ステントはたくさんの量の流れは遮断しないので動脈瘤内の血液を凝固させる。よって、上記ステントは、一般に上述のコイルなどの血管閉塞器具と組み合わせて使用され、これにより動脈瘤の閉塞が達成される。
【0007】
動脈瘤に塞栓物質や充填物質を注入する手術もある。このような血管閉塞器具または材料の送達は、止血を促進するため、または動脈瘤空洞を完全に充填するために使用することができる。血管閉塞器具は、動脈瘤が存在する血管を通る血液の流れを塞栓の形成によって遮断するか、または血管から生じる動脈瘤内にそのような塞栓を形成するために、典型的にはカテーテルを介して人体の血管系内に配置することができる。様々な埋設可能な(implantable)コイル型血管閉塞器具が知られている。このような器具のコイルは、それ自体が二次コイル形状に形成されてもよいし、あるいは、より複雑な様々な二次形状のいずれかに形成されてもよい。血管閉塞コイルは脳動脈瘤の治療に一般的に使用されているが、充填密度の低さ、血流の流体力学的圧力による圧縮、広い頸部の動脈瘤における安定性の低さ、およびこのアプローチによる動脈瘤治療のほとんどが複数のコイルの展開を必要とするためその展開が複雑で困難であるなどのいくつかの制約に悩まされている。巻かれたコイルは、治療部位から移動する危険性が高いため、広い頸部空洞(例えば、広頸部動脈瘤)のような特定の生理学的状態の治療には効果が低い。
【0008】
障害部を跨ぐ部分(defect spanning portion)または領域を有する多くの動脈瘤頸部ブリッジ器具が試みられているが、これらの器具はいずれも顕著な臨床的成功には至っておらず使用もされていない。これらの器具の採用および臨床的有用性における主な限界は、頸部を確実にカバーするように該障害部を跨ぐ部分を配置できないことである。神経血管に適合した(すなわち、マイクロカテーテルを通して送達可能で柔軟性の高い)既存のステント送達システムは、必要とする回転の位置調整能力を有していない。先行技術に記載されている多くの動脈瘤ブリッジ器具のもう一つの限界は、柔軟性に乏しいことである。脳血管は曲がりくねっており、脳内のほとんどの動脈瘤位置に効果的に送達するためには高い柔軟性が必要である。
【0009】
不注意による動脈瘤の破裂または血管壁の損傷の危険性を減少させながら、脳動脈瘤のような動脈瘤への血液の流れを実質的に遮断することができる、小さく曲がりくねった血管における送達および使用のための器具および方法が必要とされてきた。さらに、変形、圧縮、または転位の重大な危険性を伴わずに、長期間にわたって脳動脈瘤の血流を遮断するのに適した方法および器具が必要とされてきた。
【0010】
嚢内閉塞器具(intrasaccular occlusive device)は、動脈瘤を含む様々な血管内疾患の治療に使用される新しいタイプの閉塞器具の一部である。該器具はこのような頸部の広い疾患、すなわち広い治療領域を治療するのに有効なことが多い。嚢内閉塞器具は動脈瘤内に収まる構造を有し、動脈瘤頸部に閉塞効果を与えて動脈瘤内への血流を制限するのに役立つ。該器具の残りの部分は、動脈瘤の全部または一部の閉塞を助けるために動脈瘤内に収まる比較的適合性の高い構造を有している。嚢内器具は、通常は治療部位の形状に適合する。これらの器具は、また、治療部位/動脈瘤の頸部の断面を閉塞させ、それによって凝固を促進し、時間の経過とともに動脈瘤の血栓形成と閉塞を引き起こす。より大きな動脈瘤では、嚢内器具が動脈瘤内に移動して頸部領域から離脱する圧密(compaction)の危険性がある。
【0011】
あらゆる大きさの動脈瘤に対して、動脈瘤を治療する医師が選択しうる閉塞器具の大きさには多数の異なるタイプがあり、これら器具は高さや直径が異なる場合がある。インプラント(埋設物)には、例えば樽型や球形など、異なる拡張形状を有することもある。したがって、多くの異なるサイズおよびモデルのインプラントは、治療される動脈瘤とほぼ同じ容積を有しうるものであり、したがって動脈瘤に対して許容可能な「容積の一致」になる。
【0012】
あるいは、インプラントは動脈瘤の全高よりも小さい場合もある。一部の器具は動脈瘤の約半分しか充填しないように設計されている。このようなインプラントは容積を一致させる必要がないため、異なるサイズの動脈瘤に使用することができる。しかしながら、これらのインプラントは幅の広い動脈瘤の頸部を最適にカバーできない可能性がある。 例えば、先細りの近位端を有する器具は、幅広の頸部動脈瘤の頸部を適切にカバーしないことがある。さらに、不適合な器具は動脈瘤の遠位側に移動して頸部に固定されないことがある。
【0013】
頸部のサイズが異なる複数の異なるサイズの動脈瘤を治療するのに適したサイズを有する閉塞器具が必要とされている。
【0014】
以下の実施形態は、広頸部動脈瘤(wide-neck aneurysms)を含む多数のサイズの動脈瘤に適合して治療することができる予め設定された拡張形状を有する器具を利用することによってこの問題に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
動脈瘤および神経血管瘤を含む様々な疾患を治療するために使用される閉塞器具が記載されている。いくつかの実施形態において、閉塞器具は嚢内器具として構成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の実施形態によって可能となる下記のおよび他の態様、特徴、および利点は、添付図面を参照しながら説明される以下の本発明の実施形態の説明から明白かつ明瞭になるであろう。
【0017】
含まれる種々の図は、1つ以上の実施形態による閉塞器具を示す。
【0018】
【
図2A】例示的な器具の略図ならびに閉じた遠位端および開いた近位端を備えた反転形状を有する非拘束構成を有する動脈瘤の治療のための例示的な器具を示す。
【
図2B】例示的な器具の略図ならびに閉じた遠位端および開いた近位端を備えた反転形状を有する非拘束構成を有する動脈瘤の治療のための例示的な器具を示す。
【
図4A】
図2Aおよび
図2Bの例示的な器具の略図、開いた遠位端および閉じた近位端を有する例示的な器具を示す。
【
図4B】
図2Aおよび
図2Bの例示的な器具の略図、開いた遠位端および閉じた近位端を有する例示的な器具を示す。
【
図5A】動脈瘤内に展開される状態の例示的な器具が描かれている。
【
図5B】動脈瘤内に展開される状態の例示的な器具が描かれている。
【
図5C】動脈瘤内に展開される状態の例示的な器具が描かれている。
【
図5D】動脈瘤内に展開される状態の例示的な器具が描かれている。
【
図5E】動脈瘤内に展開される状態の例示的な器具が描かれている。
【
図6】フィラメントのループによって画定された開口部を有する管状メッシュが描かれている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
提示されている実施形態は、概して異なるサイズの動脈瘤を治療するために使用することができる閉塞器具に関するものである。
【0020】
特定の動脈瘤内への配置用の器具を選択する1つの方法は、器具110の容積を動脈瘤の容積に一致させることである。
図1に見られるように、ほぼ樽形または球形の形状を有する透過性シェル140を有する器具110の場合、医師は「+1/-1」の方策に従ってインプラントを選択することができる。例えば、選択された器具110の透過性シェル140は、動脈瘤の平均直径よりも約1mm大きい直径および動脈瘤の最小高さよりも約1mm小さい高さを有することができる。動脈瘤の直径に対して約1mmだけ透過性シェル140を大きくすることにより、インプラントが動脈瘤内に展開された後にインプラントにわずかな圧縮力がかかることを保証することができる。この圧縮力は、インプラント後において血液が動脈瘤内へ流入したり血液が動脈瘤から流出したりする際に、透過性シェル140が安定した位置を維持するのに役立つ可能性がある。浸透性シェル140が動脈瘤内に適合するように直径を約1mmだけ圧縮すると、浸透性シェル140は高さを約1mmだけ伸長し、それによって動脈瘤の容積をほぼ完全に占めることができる。すなわち、選択された透過性シェル140は、容積的には動脈瘤とほぼ等しいが、最初は直径がより大きい。このように直径を大きくすることで、展開後に動脈瘤壁に対する摩擦を提供することができ、「容積の一致」によって透過性シェル140は動脈瘤を完全に満たすことができるため、(矢印161によって表される)血行力学的力および血栓収縮力(矢印161によって表される)によってインプラントに経時的に圧力がかけられても安定した位置を維持することができる。
【0021】
例えば、平均直径が約5mmの動脈瘤を治療する場合、医師は、直径×高さが、6×3、6×4、6×5の器具110(例えば、樽型)、または直径が約6mmの球形の器具のいずれかを選択することができる。同様に、約6mmの平均直径を有する動脈瘤は、直径×高さが、7×3、7×4、または7×5(例えば、樽形状)の器具110、または約7mmの直径を有する球状器具で治療することができる。
【0022】
代替的な実施形態では、器具は非拘束の(unrestrained)、拡張された、プリセットされた、熱セットされた、「フリーエアー(free air)」の、または非抑圧(unconstrained)な形状を有し、動脈瘤内に展開されるときには異なる拡張または展開形状を有することができ、そこでは器具は動脈瘤壁によって拘束される。拡張されたプリセット形状は、動脈瘤壁の圧縮力によって異なる拡張形状に変形することができる。
図2に見られるように、透過性シェル240は、「フリーエアー」中に存在するような、すなわち傘状または帽子状の、拘束されていない、拡張された、プリセットされた、または熱セットされた構成244を有することができる。いくつかの実施形態では、拡張されたプリセット形状は、傘状または帽子状に熱セットされてもよく、マーカーバンド70の近くに凹み(recess)を有してもよい。
図4A~4Bに見られるように、展開されると、該凹みは、広頸部形状によりよく適合する平坦な底面または近位面をもたらす可能性がある。該凹みの形状は、最適な展開および先鋭の性能特性を達成するように最適化され得る。展開された構成では、透過性シェルの最も近位側の点によって画定される平面に対してマーカーバンドが凹むことのないように、透過性シェルは近位端においてもはや凹みを有さなくてもよい。他の実施形態では、拡張されたプリセット形状は、傘形状または帽子形状に熱セットされていてもよく、マーカーバンド70の近傍に凹みを有さなくてもよい。
【0023】
図2A~2Bに見られるように、拡張された、プリセットされた、熱セットされた、または非拘束の構成のインプラントは、「フリーエアー」において傘または帽子に類似していてもよい。器具を形成する複数のフィラメントの各々は、第1の端部および第2の端部を有することができる。いくつかの実施形態では、複数のフィラメントの各々の第1の端部および第2の端部の両方が、単一のハブすなわちマーカーバンド70に集められていてもよい。他の実施形態では、複数のフィラメントの各々の第1の端部のみがハブすなわちマーカーバンド70に集められていてもよい。複数のフィラメントは、バスケットすなわちかごを形成するために編組またはループ化されてもよい。いくつかの実施形態において、複数のフィラメントの各々の中間部分は、拘束されていない構成244の近位端218においてループを形成してもよい。
【0024】
展開されたプリセット構成244は、「フリーエアー」においてつば状部(brim portion)214に接続するドーム状部212を含むことができる。つば状部214は、下方に湾曲するか、わずかに凸状または傾斜した形状を有することもある。いくつかの実施形態では、つば状部214は、実質的に平坦、真っすぐ、または水平でなくてもよい。つば状部214は、また、任意選択的に、つば状部214の下方カーブとは異なる角度でつば状部から下方に傾斜するリップ状部215を有してもよい。リップ状部215は、つば状部214よりも大きな傾斜を有してもよい。拡張されプリセットされた拘束されていない構成244は、外面および内面を有する反転構成であってもよい。ハブすなわちマーカーバンド70は、拘束されていない、拡張された、熱セットされた、またはプリセットされた構成244の遠位端216が反転するように、ドーム状部212の内面によって形成される内部空洞内に配置されてもよい。
【0025】
図3に見られるように、器具210の透過性シェル240は、マイクロカテーテル内での送達のために半径方向に拘束された細長い構成を有してもよい。ハブすなわちマーカーバンド70は、プッシャー170に着脱可能に結合される場合がある。細長い構成では、透過性シェルはハブすなわちマーカーバンド70から遠位方向に延在することがある。
【0026】
図4A~4Bおよび
図5A~5Eに見られるように、透過性シェル240は、動脈瘤160内に展開されるときに、異なる(帽子型または傘型の拘束されていないプリセットされた「フリーエアー」構成以外の)拡張形状246をとることがある。透過性シェル240は、
図3に見られるように、マイクロカテーテル172内で反転した構成になっていてもよく、透過性シェル240はハブすなわちマーカーバンド70から遠位方向に延在しており、透過性シェルは開いた遠位端222を有している。透過性シェル240は動脈瘤の形状に実質的に適合することができる。透過性シェルの遠位端の直径は動脈瘤の最大直径よりも大きい(例えば、約1mm大きいか、または少なくとも約1mm大きい)ことがあるので、透過性シェル240の側面は圧縮され、拘束されていない拡張プリセット構成244の高さよりも大きい高さまで透過性シェルが長くなることがある。透過性シェル240のリップ状部215は、チューリップ型、椀型、カップ型、またはティーカップ型と同様の角度で外側に延在してもよく、これによって摩擦が増大し、透過性シェル240が動脈瘤160の内部空洞内に配置された状態を維持するのを助けることができる。実質的に平坦な部分220は頸部において動脈瘤160の開口部を占めることがある。展開形状の実質的に平坦な部分220は、
図2Aに見られるドーム状部212の側面および頂部に対応することができる。展開形状の透過性シェルの近位部分は逆円錐台形状を有することがある。
【0027】
1つの実施形態では、インプラントを展開するために、マイクロカテーテル172を動脈瘤160の頸部に隣接して向けることができる。
図5A~
図5Eに見られるように、プッシャー170は透過性シェル240をマイクロカテーテル172から出して動脈瘤160の内部空洞に前進させることができ、透過性シェル240はリップ状部215を有する開いた遠位端222を有する。透過性シェル240はそのプリセットされ熱セットされた「フリーエアー」構成に偏向しているため、透過性シェルがマイクロカテーテル172の遠位開口部から出てさらに前進すると、開いた遠位端222は膨張し続ける。透過性シェルがマイクロカテーテル172の遠位開口部から出てさらに前進すると、透過性シェル240の側壁の少なくとも一部が動脈瘤160の内部空洞の壁に接触し、これにより、プリセットされ熱セットされた「フリーエアー」構成を透過性シェル240がとることが妨げられることがある。その代わりに、透過性シェル240は動脈瘤160の壁に適合し、開いた遠位端222を有し椀形状またはチューリップ形状に類似する拡張した展開状態になる。熱セット構成のドーム状部212は、動脈瘤160の頸部上に配置された実質的に平坦な部分になることができる。透過性シェル240はそのプリセットされた熱セット構成に偏向しているため、透過性シェルの側壁(以前は、つば状部212とリップ状部215)は動脈瘤壁に圧力を及ぼし、これにより透過性シェル240が動脈瘤160内に適切に配置された状態を維持するのを補助することができる。
【0028】
別の実施形態では、インプラントを展開するために、マイクロカテーテル172を動脈瘤160の頸部に隣接させて向けてもよい。プッシャー170が透過性シェル210をマイクロカテーテル172から出して動脈瘤160の内部空洞に前進させ、ここで透過性シェル240は開いた近位端を有する部分的に反転した構成をとることがあり、ハブ70がドーム状部212の内部空洞に位置しており、つば状部214が動脈瘤壁によって拘束されていることがある。プッシャー170が内部空洞から引き抜かれると、ハブ70がドーム状部210の内部空洞内に収まらなくなるように透過性シェルが反転することがある。ハブ70に取り付けられているプッシャー170が近位に引き抜かれると、ドーム状部212は反転して
図4A~4Bに見られる実質的に平坦な部分220の姿勢をとることがあり、一方、つば状部214は、拡張した展開状態として開いた遠位端222を有し、椀状またはチューリップ状に類似するように動脈瘤の壁に適合することができる。
【0029】
インプラントの展開形状は、拘束されていない「フリーエアー」形状のインプラントが反転したものであってもよい。
図4A~4Bに見られるように、動脈瘤160内への展開後、器具244は近位端224に実質的に平坦な部分220および開いた遠位端222を有する椀形状またはチューリップ形状を有することがある。血管障害(例えば、動脈瘤)内の拘束された拡張状態において、拘束されていない器具の近位端214(例えば、
図2Bを参照)は、動脈瘤内に展開された器具における拘束され拡張された構成246の遠位端になる可能性がある。拘束された、または展開された構成246において、いくつかの実施形態では、複数のフィラメントの各々の中間部分から作られたループが、開いた遠位端222の縁を形成することがある。
【0030】
図2Aおよび
図4Aに見られるように、ドーム状部212は実質的に平坦な部分220を形成してもよく、つば状部214は拡張された器具の側面245を形成してもよい。ドーム状部212および/または実質的に平坦な部分の長さは、約2.5インチ(約63.5mm)~約4.5インチ(約114.3mm)の間、代替的に約2.8インチ(約71.1mm)~約4.2インチ(約106.7mm)の間、代替的に約3.0インチ(約76.2mm)~約4.0インチ(約101.6mm)の間、代替的に約3.2インチ(約81.3mm)~約3.8インチ(約96.5mm)の間であってよい。
【0031】
つば状部214および/またはつば状部214とリップ状部215とを合わせた長さは、拘束された拡張構成246の高さに等しいかまたは実質的に等しい場合がある。プリセットされた「フリーエアー」構成のつば状部214および/またはつば状部214とリップ状部215とを合わせた長さは、拡張された構成の高さに対応し得るが、約1.0~約3.0インチ(約25.4~約76.2mm)、約1.5~約3.0インチ(約38.1~約76.2mm)、代替的に約1.5~約2.5インチ(約38.1~約63.5mm)、代替的に約1.5~約2.25インチ(約38.1~約57.2mm)、約1.0~約2.0インチ(約25.4~約50.8mm)の間であってよい。プリセットされた「フリーエアー」構成のつば状部214および/またはつば状部214とリップ状部215とを合わせた長さは、拡張された構成の高さに対応し得るが、実質的に平坦な部分の長さよりも約20%大きいか、代替的に約30%大きいか、代替的に約40%大きいか、代替的に約50%大きくてもよい。プリセットされた「フリーエアー」構成の、つば状部214および/またはつば状部214とリップ状部215とを合わせた長さは、拡張された構成の高さに対応し得るが、実質的に平坦な部分の長さの約20%と約90%との間か、代替的に約30%と約90%との間か、代替的に約40%と約90%との間か、代替的に約50%と約90%との間であってよい。いくつかの実施形態では、動脈瘤側壁に隣接する側面の長さは、(1)つば状部の端部(またはリップ状部が存在する場合はリップ状部の端部)、および(2)ドーム状部とつば状部との間の変曲点によって画定されるため、変化しないことがある。
【0032】
透過性シェル240は、動脈瘤内で拡張され展開された形状を基準として反転された異なる形状に熱セットされているため、透過性シェル240は、そのプリセットされ反転された(または「フリーエアー」)構成をとるように偏向するにつれて動脈瘤の壁に対して圧力を及ぼす可能性がある。この圧力は、動脈瘤160内の適切な位置に透過性シェル240を維持するのに役立つ。椀形状の器具210の1つの利点は、医師が動脈瘤にとって適切なサイズを決定する際に考慮するモデルが少なくて済むことである。
【0033】
器具210の透過性シェル240は、マイクロカテーテル内での送達のために半径方向に拘束された細長い構成を有していてもよい。透過性シェル240は、半径方向に拘束された状態に対して長手方向に短縮された構成を有する帽子型の拡張されたプリセット構成244または拘束されていない構成を有することができる。しかしながら、一旦動脈瘤160内に展開されると、
図4A~4Bに見られるように、透過性シェルは、プッシャーの近位側引き抜きおよび動脈瘤壁からの圧縮力に応答して、異なる(帽子型のプリセット構成以外の)拡張形状246をとることがある。透過性シェル240は動脈瘤の形状に実質的に適合する可能性がある。透過性シェルの遠位端の直径は動脈瘤の最大直径よりも大きい(例えば、約1mm大きいか、または少なくとも約1mm大きい)可能性があるため、透過性シェル240の側面は圧縮される可能性がある。
【0034】
展開された構成において、いくつかの実施形態では、ハブは透過性シェルの近位端のメッシュに対して凹んでいないことがある。いくつかの実施形態では、拡張された展開構成は、透過性シェルの外面によって形成された近位端において凹状部を有さないことがある。
【0035】
インプラントの透過性シェル240は、編組チューブ状メッシュから作られてもよい。管状編組メッシュを形成するための機構および方法は、米国特許第8,261,648号明細書、米国特許第8,826,791号明細書、および米国特許出願公開第2021/0275184号明細書にさらに詳細に記載されており、これらの特許は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。メッシュまたは編組部分は、織られた構造の複数のフィラメントから作られてもよい。メッシュまたは編組部分を構成する複数のフィラメントは、ニチノール、ステンレス鋼、延伸充填チューブ(例えば、ニチノールジャケットを有する白金またはタンタルコア)、白金、白金/タングステンなどの白金合金、NiTiNibYなどの超弾性金属、CoCrなどの高強度金属、またはそれらの混合物から作られてもよい。
【0036】
いくつかの器具の実施形態は、約10フィラメント~約300フィラメント、代替的に約10フィラメント~約100フィラメント、代替的に約60フィラメント~約80フィラメント、代替的に約72フィラメント~約216フィラメント、代替的に約150フィラメント~約300フィラメントを使用して形成することができる。透過性シェルのいくつかの実施形態は、約70フィラメント~約300フィラメント、あるいは約100フィラメント~約200フィラメントを含むことができる。ワイヤまたはフィラメントは、約0.0005インチ(約0.0127mm)~約0.003インチ(約0.0762mm)、代替的に約0.001インチ(約0.0254mm)~約0.003インチ(約0.0762mm)、代替的に約0.0015インチ(約0.0381mm)~約0.0025インチ(約0.0635mm)、代替的に約0.0008インチ(約0.0203mm)~約0.004インチ(約0.1016mm)の直径すなわち横断寸法を有することができる。場合によっては、細長い弾力性フィラメントは、約0.0005インチ(約0.0127mm)~約0.005インチ(約0.127mm)、代替的に約0.001インチ(約0.0254mm)~約0.003インチ(約0.0762mm)、代替的に約0.0004インチ(約0.01016mm)~約0.002インチ(約0.0508mm)の外側の横断寸法すなわち直径を有することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、メッシュは、異なるタイプの材料(例えば、ニチノールおよびDFT)のフィラメントおよび/または異なるサイズのフィラメントの混合物から作ることができる。いくつかの実施形態では、メッシュは、不均一なまたは比較的不均一な分布を有するフィラメントから作られてもよい。他の実施形態では、メッシュは、比較的均一に分布するフィラメントから作られてもよい。
【0038】
単一のメッシュを構成するワイヤまたはフィラメントは、異なる横方向の直径を有することができ、また異なる材料で作られてもよい。異なるサイズのフィラメントを含むいくつかの器具の実施形態では、透過性シェルの大きなフィラメントは、約0.001インチ(約0.0254mm)~約0.004インチ(約0.1016mm)である横方向の寸法すなわち直径を有してもよく、小さなフィラメントは、約0.0004インチ(約0.01016mm)~約0.0015インチ(約0.0381mm)、または代替的に、約0.0004インチ(約0.01016mm)~約0.001インチ(約0.0254mm)の横方向の寸法すなわち直径を有してもよい。 さらに、小さなフィラメントと大きなフィラメントとの間の横断寸法すなわち直径の差は、約0.004インチ(約0.1016mm)未満、代替的には約0.0035インチ(約0.0889mm)未満、代替的には約0.002インチ(約0.0508mm)未満であってよい。異なるサイズのフィラメントを含む透過性シェルの実施形態については、透過性シェルの小さなフィラメントの数対透過性シェルの大きなフィラメントの数は、約2対1~約15対1、より具体的には約2対1~約12対1、さらに具体的には約4対1~約8対1であってよい。
【0039】
メッシュのインプラントを構築するためのワイヤの好適な材料およびサイズは、米国特許出願公開第2017/0095254号明細書、米国特許出願公開第2016/0249934号明細書、米国特許出願公開第2016/0367260号明細書、米国特許出願公開第2016/0249937号明細書、および米国特許出願公開第2018/0000489号明細書に記載されており、これらのすべては、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0040】
いくつかの実施形態では、インプラントは、動脈瘤頸部付近の近位に近位ハブすなわちマーカーバンドのみを有する、折り返された単一の編組メッシュから作られるメッシュの複数の層を有する透過性シェルを備えてもよい。透過性シェルはメッシュが1回折り畳まれる2層、あるいはメッシュが2回折り畳まれる3層、あるいはメッシュが3回折り畳まれる4層を含むことができる。多層の透過性シェルの製造方法については、米国特許出願公開第2022/0257260号明細書にさらに詳細に記載されており、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に明示的に組み込まれる。いくつかの実施形態では、インプラントは二重層であってもよく、フィラメントの両端が器具の一端に位置するようにメッシュを折り返して作ってもよい。近位ハブすなわちマーカーバンド70が複数のフィラメントの各フィラメントの両端を保持してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、インプラントは、単層のメッシュのみを有する透過性シェルを有することがある。近位ハブは、メッシュを構成する複数のフィラメントの各々のフィラメントの一端(例えば、近位端)のみを保持し、複数のフィラメントの各々のフィラメントの他端(例えば、遠位端)は、開いた遠位端222において結合されていなくてフリーでもよい。あるいは、フィラメントの他端は、透過性シェル240のメッシュに織り込まれていてもよい。あるいは、フィラメントの第2の端部は、追加のハブによって集められて一緒に保持されてもよい。追加のハブは、展開された透過性シェルによって形成された開いた空洞内に配置され、器具210の近位端224に向かって配置されてもよい。追加ハブは、透過性シェル240を構成する1または複数のメッシュ層によって分離された状態で近位ハブの近くまたは隣接して配置されることがある。 あるいは、インプラントは単層であってもよく、すべての目的のためにその全体が参照により明示的に組み込まれる米国特許出願公開第2021/0275184号明細書に記載されているように、城郭風の(castellated)マンドレル上に構築されてもよい単一の編組メッシュから作られてもよい。編組メッシュ270は、
図6に見られるように、フィラメントがループ274に形成され、開口部272が遠位端において中心に位置するように、城郭風のマンドレルを使用して構築され得る。複数のフィラメントの端部は、例えば、近位ハブすなわちマーカーバンド70において、近位端で互いに相対的に固定されてもよい。
【0042】
本明細書で提供される任意の実施形態に関して説明されるすべての特徴、要素、構成要素、機能、および工程は、他の任意の実施形態のものと自由に組み合わせ可能であり、置換可能であることが企図される。ある特徴、要素、構成要素、機能、または工程が、1つの実施形態に関してのみ記載されている場合、明示的に別段の記載がない限り、その特徴、要素、構成要素、機能、または工程は、本明細書に記載されている他のすべての実施形態で使用できることを理解されたい。したがって、この段落は、異なる実施形態からの特徴、要素、構成要素、機能、および工程を組み合わせるか、あるいは、ある実施形態からの特徴、要素、構成要素、機能、および工程を他の実施形態のものと置換する、請求項の導入のための先行的な根拠および書面による裏付けにいつでもなり、これは以下の説明において、特定の例において、そのような組み合わせまたは置換が可能であることが明示的に記載されていない場合であってもあてはまる。可能な組み合わせおよび置換のすべてを明示的に記載することは過度に負担が大きいことを明確に認めることができ、当業者であれば、特にそのような組み合わせおよび置換の各々およびすべてが許容されることが容易に認識できるであろう。
【0043】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(前記、該)」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数の参照語を含む。
【0044】
本発明の態様は独立請求項に記載され、好ましい特徴は従属請求項に記載されている。従属請求項の好ましい特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよく、1つの態様の好ましい特徴は、他の態様と組み合わせて提供されてもよい。
【0045】
実施形態は様々な変更および代替形態の影響を受けやすいが、その具体例を図面に示し、本明細書で詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は、開示された特定の形態に限定されるべきものではなく、それどころか、これらの実施形態は、本開示の主旨の範囲内に入るすべての修正、均等物、および代替物をカバーするものであることが理解されるべきである。さらに、実施形態の任意の特徴、機能、工程、または要素を特許請求の範囲に記載または追加することができ、その範囲内にない特徴、機能、工程、または要素によって特許請求の範囲の発明的範囲を規定する否定的限定も可能である。
【0046】
多くの実施形態において、患者の脳動脈瘤の治療用の器具は、複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、該複数のフィラメントの各々は第1の端部および第2の端部を有し、該複数の細長いフィラメントの各々の該第1の端部はハブに集められており、該透過性シェルはドーム状部とつば状部とからなる第1の拘束されていないプリセット構成を有し、該ドーム状部は、外面、内面、および該内面によって画定される内部空洞を備え、該ハブは該第1の拘束されていないプリセット構成において該内部空洞内に位置し、該透過性シェルは患者の脳動脈瘤内に展開されたときに第2の拘束された構成をとるように構成され、該第2の拘束された構成は開いた遠位端を備えている。
【0047】
いくつかの実施形態において、該第1の拘束されていないプリセット構成は帽子形状を有する。 いくつかの実施形態において、該帽子形状はリップ状部をさらに備える。いくつかの実施形態では、該リップ状部は該つば状部から鋭角で延在する。
【0048】
いくつかの実施形態では、該第1の拘束されていないプリセット構成は傘形状を有する。
【0049】
いくつかの実施形態において、該ハブは該第1の拘束されていないプリセット構成の遠位端に位置する。
【0050】
いくつかの実施形態では、該第2の拘束された構成は椀形状を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、該第2の拘束された構成は近位端に実質的に平坦な部分をさらに備える。
【0052】
いくつかの実施形態では、該第2の拘束された構成はチューリップ形状を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、該第2の拘束された構成はカップ形状を有する。
【0054】
いくつかの実施形態において、該ハブは該第2の拘束された構成の近位端に位置する。
【0055】
いくつかの実施形態において、該複数の細長いフィラメントの各々の該第1の端部および該第2の端部はハブに集められている。
【0056】
いくつかの実施形態において、該複数の細長いフィラメントの各々は中間部分を備え、該中間部分は該第2の拘束された構成の遠位端でループを形成する。
【0057】
いくつかの実施形態において、該複数の細長いフィラメントの各々は中間部分を備え、該中間部分は該第1の拘束されていないプリセット構成の近位端でループを形成する。
【0058】
いくつかの実施形態では、該第1の拘束されていないプリセット構成における該透過性シェルの遠位端は反転している。
【0059】
いくつかの実施形態では、該第1の拘束されていないプリセット構成における該透過性シェルの遠位端は外凸面を有する。
【0060】
いくつかの実施形態では、該第2の拘束された構成における該透過性シェルの遠位端は内凹面を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、該複数の細長いフィラメントは編組メッシュに配置される。 いくつかの実施形態では、該透過性シェルは該編組メッシュの単層からなる。いくつかの実施形態では、該透過性シェルは該編組メッシュの二重層からなる。いくつかの実施形態では、該透過性シェルは該編組メッシュの複数の層からなる。
【0062】
多くの実施形態において、内部空洞および頸部を有する脳動脈瘤を治療するための方法は、マイクロカテーテル内のインプラントを脳動脈の対象領域まで前進させる工程であって、該インプラントが複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、該複数のフィラメントの各々が第1の端部と第2の端部とを有し、該複数の細長いフィラメントの各々の該第1の端部がハブに集められ、該ハブがプッシャーに結合され、該インプラントがドーム状部、つば状部および開いた近位端からなる第1の拡張状態に熱セットされている工程と、該インプラントを該脳動脈瘤のドーム状部に向かって遠位方向に前進させることにより、該インプラントを該マイクロカテーテルから出して該脳動脈瘤の内部空洞に前進させる工程であって、該透過性シェルが該動脈瘤の該内部空洞において第2の拡張状態に拡張し、該第2の拡張状態が開いた遠位端からなる工程と、該プッシャーを該インプラントから離脱させる工程と、該インプラントを離脱させた後、該マイクロカテーテルを該対象領域から引き抜く工程とを含んでいる。
【0063】
いくつかの実施形態では、該第1の拡張状態は帽子形状を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、該第1の拡張状態は傘形状を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、該第2の拡張状態は椀形状を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、該第2の拡張状態は近位端に実質的に平坦な部分をさらに備える。
【0067】
いくつかの実施形態では、該第2の拡張状態はチューリップ形状を有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、該第2の拡張状態はカップ形状を有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、該複数の細長いフィラメントは編組メッシュに配置される。 いくつかの実施形態では、該透過性シェルは該編組メッシュの単層からなる。いくつかの実施形態では、該透過性シェルは該編組メッシュの二重層からなる。いくつかの実施形態では、該透過性シェルは該編組メッシュの複数の層からなる。
【0070】
いくつかの実施形態では、該第2の拡張形状は該第1の拡張形状とは異なる。
【0071】
いくつかの実施形態において、該ハブは該第1の拡張状態の遠位端に位置する。
【0072】
いくつかの実施形態では、該ハブは該第2の拡張状態の近位端に位置する。
【0073】
いくつかの実施形態において、該複数の細長いフィラメントの各々の該第1の端部および該第2の端部はハブに集められている。
【0074】
いくつかの実施形態において、該複数の細長いフィラメントの各々は中間部分を含み、該中間部分は該第2の拡張状態の遠位端でループを形成する。
【0075】
いくつかの実施形態において、該複数の細長いフィラメントの各々は中間部分を備え、該中間部分は該第1の拡張状態の近位端でループを形成する。
【0076】
いくつかの実施形態では、該第1の拡張状態にある該透過性シェルの遠位端は反転している。
【0077】
いくつかの実施形態では、該第1の拡張状態にある該透過性シェルの遠位端は、外凸面を有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、該第2の拡張状態にある該透過性シェルの遠位端は、内凹面を有する。
【0079】
多くの実施形態において、内部空洞および頸部を有する脳動脈瘤を治療するための方法は、マイクロカテーテル内のインプラントを大脳動脈の対象領域まで前進させる工程であって、該インプラントが複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、該複数のフィラメントの各々が第1の端部と第2の端部とを有し、該複数の細長いフィラメントの各々の該第1の端部がハブに集められ、該ハブがプッシャーに結合されている工程と、該インプラントを該脳動脈瘤のドーム部に向かって遠位方向に前進させることにより、該インプラントを該マイクロカテーテルから出して該脳動脈瘤の内部空洞に前進させる工程であって、該透過性シェルが該動脈瘤の該内部空洞において第1の拡張状態まで拡張し、該第1の拡張状態が、ドーム状部およびつば状部からなり、該ドーム状部が、外面、内面、および該内面によって画定される内部空洞からなり、該ハブが、該第1の拡張状態の遠位端において該内部空洞内に位置する工程と、該プッシャーを該内部空洞内で近位側に引き抜く工程であって、該透過性シェルが該動脈瘤の該内部空洞内で第2の拡張状態の姿勢をとり、該第2の拡張状態が近位端の実質的に平坦な部分および開いた遠位端からなり、該ハブが該拡張状態の近位端に位置する工程と、該プッシャーを該インプラントから取り外す工程と、該インプラントを取り外した後に該マイクロカテーテルを該対象領域から引き抜く工程とを含んでいる。
【0080】
いくつかの実施形態では、該第1の拡張状態は帽子形状を有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、該第1の拡張状態は傘形状を有する。
【0082】
いくつかの実施形態では、該複数の細長いフィラメントの各々は中間部分を含み、該中間部分は該第2の拡張状態の遠位端でループを形成する。
【0083】
いくつかの実施形態において、該複数の細長いフィラメントの各々は中間部分を備え、該中間部分は該第1の拡張状態の近位端でループを形成する。
【0084】
いくつかの実施形態では、該第1の拡張状態の遠位端における該複数のフィラメントは反転している。
【0085】
いくつかの実施形態において、該第2の拡張状態における該透過性シェルの高さは、該脳動脈瘤の高さ未満である。
【0086】
いくつかの実施形態において、該脳動脈瘤は広頸部脳動脈瘤である。
【0087】
いくつかの実施形態では、該インプラントが展開された後に、該実質的に平坦な部分が広頸部脳動脈瘤の頸部内に収まる。
【0088】
いくつかの実施形態では、該ハブは該プッシャーに取り外し可能に結合されている。
【0089】
多くの実施形態において、患者の脳動脈瘤の治療用の器具は、複数の細長いフィラメントから作られた透過性のシェルを含み、該複数のフィラメントの各々は第1の端部および第2の端部を有し、該複数の細長いフィラメントの各々の該第1の端部はハブに集められており、該透過性シェルが外凸面を有する閉じた遠位端からなる第1の拘束されていない構成を有し、該透過性シェルが該患者の脳動脈瘤内に展開されたときに第2の構成をとるように構成され、該第2の構成が内凸面を有する開いた遠位端からなる。
【0090】
いくつかの実施形態において、該第1の拘束されていない構成は傘形状からなる。
【0091】
いくつかの実施形態において、該ハブは該外凸面と接触していない。
【0092】
いくつかの実施形態では、該第2の構成は椀形状からなる。
【0093】
いくつかの実施形態では、該ハブは該第2の構成の内部空洞内に位置されていない。
【0094】
多くの実施形態において、患者の脳動脈瘤の治療用の器具は、複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、該複数のフィラメントの各々は第1の端部および第2の端部を有し、該複数の細長いフィラメントの各々の該第1の端部はハブに集められており、該透過性シェルが外凸面を有する閉じた遠位端からなる第1の拘束されていない構成を有し、該透過性シェルが該患者の脳動脈瘤内に展開されたときに第2の構成をとるように構成され、該第2の構成が開いた遠位端および内部空洞からなる。
【0095】
いくつかの実施形態において、該第1の拘束されていない構成は傘形状からなる。
【0096】
いくつかの実施形態において、該ハブは外凸面と接触していない。
【0097】
いくつかの実施形態では、該第2の構成は椀形状からなる。
【0098】
いくつかの実施形態において、該ハブは該第2の構成の内部空洞内に位置しない。
【0099】
多くの実施形態において、患者の脳動脈瘤の治療用の器具は、複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、該複数のフィラメントの各々は第1の端部および第2の端部を有し、該複数の細長いフィラメントの各々の該第1の端部はハブに集められており、該透過性シェルが第1の表面と第2の表面とを有し、該ハブは該第2の表面に取り付けられており、該透過性シェルが内部空洞を有する凸状部からなる第1の拘束されていない構成を有し、該ハブが該第1の拘束されていない構成において該凸状部の該内部空洞に位置し、該透過性シェルが該患者の脳動脈瘤に展開されたときに第2の構成をとるように構成され、該第2の構成が該第1の拘束されていない構成の反転である。
【0100】
いくつかの実施形態では、該凸状部の該内部空洞の表面が該第2の表面である。
【0101】
いくつかの実施形態では、該第2の構成は開いた遠位端を備える。
【0102】
いくつかの実施形態において、該第1の拘束されていない構成は開いた近位端をさらに備える。
【0103】
いくつかの実施形態において、該第1の拘束されていない構成は、該凸状部に取り付けられた平面部分をさらに備える。いくつかの実施形態では、該平面部分は、該凸状部から斜めに延在する。
【0104】
項(clauses)
例示的な実施形態は、以下の番号付けされた各項に記載されている。
第1項 患者の脳動脈瘤の治療用の器具であって、
複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、前記複数のフィラメントの各々が第1の端部および第2の端部を有し、前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部がハブに集められており、
前記透過性シェルがドーム状部とつば状部とを備える第1の拘束されていないプリセット構成を有し、前記ドーム状部が、外面、内面、および前記内面によって画定される内部空洞を備え、前記ハブが前記第1の拘束されていないプリセット構成において前記内部空洞内に位置しており、
前記透過性シェルが、前記患者の脳動脈瘤内に展開されたときに第2の拘束された構成をとるように構成され、前記第2の拘束された構成が開いた遠位端を備える、
器具。
第2項 前記第1の拘束されていないプリセット構成が帽子形状を有する、第1項に記載の器具。
第3項 前記帽子形状がリップ状部をさらに備える、第2項に記載の器具。
第4項 前記リップ状部が前記つば状部から鋭角に延在する、第3項に記載の器具。
第5項 前記第1の拘束されていないプリセット構成が傘形状を有する、第1項に記載の器具。
第6項 前記ハブが前記第1の拘束されていないプリセット構成の遠位端に位置する、第1項に記載の器具。
第7項 前記第2の拘束された構成が椀形状を有する、第1項に記載の器具。
第8項 前記第2の拘束された構成が近位端に実質的に平坦な部分をさらに備える、第1項に記載の器具。
第9項 前記第2の拘束された構成がチューリップ形状を有する、第1項に記載の器具。
第10項 前記第2の拘束された構成がカップ形状を有する、第1項に記載の器具。
第11項 前記ハブが前記第2の拘束された構成の近位端に位置する、第1項に記載の器具。
第12項 前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部および前記第2の端部がハブに集められている、第1項に記載の器具。
第13項 前記複数の細長いフィラメントの各々が中間部分を備え、前記中間部分が前記第2の拘束された構成の遠位端においてループを形成する、第1項に記載の器具。
第14項 前記複数の細長いフィラメントの各々が中間部分を備え、前記中間部分が前記第1の拘束されていないプリセット構成の近位端においてループを形成する、第1項に記載の器具。
第15項 前記第1の拘束されていないプリセット構成における前記透過性シェルの遠位端が反転している、第1項に記載の器具。
第16項 前記第1の拘束されていないプリセット構成における前記透過性シェルの遠位端が外凸面を有する、第1項に記載の器具。
第17項 前記第2の拘束された構成における前記透過性シェルの遠位端が内凹面を有する、第1項に記載の器具。
第18項 前記複数の細長いフィラメントが編組メッシュ状に配置されている、第1項に記載の器具。
第19項 前記透過性シェルが前記編組メッシュの単層を備える、第18項に記載の器具。
第20項 前記透過性シェルが前記編組メッシュの二重層を備える、第18項に記載の器具。
第21項 前記透過性シェルが前記編組メッシュの多層を備える、第18項に記載の器具。
第22項 内部空洞および頸部を有する脳動脈瘤を治療するための方法であって、
マイクロカテーテル内のインプラントを脳動脈内の対象領域まで前進させる工程であって、前記インプラントが複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを備え、前記複数のフィラメントの各々が第1の端部および第2の端部を有し、前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部がハブに集められ、前記ハブがプッシャーに結合され、前記インプラントがドーム状部、つば状部および開いた近位端を備える第1の拡張状態に熱セットされている、工程と、
前記インプラントを前記脳動脈瘤のドームに向かって遠位方向に前進させることにより、前記インプラントを前記マイクロカテーテルから出して前記脳動脈瘤の内部空洞に前進させる工程であって、前記透過性シェルが前記動脈瘤の前記内部空洞において第2の拡張状態に拡張し、前記第2の拡張状態が開いた遠位端を備える、工程と、
前記プッシャーを前記インプラントから取り外す工程と、
前記インプラントを取り外した後、前記マイクロカテーテルを前記対象領域から引き抜く工程と、
を含む方法。
第23項 前記第1の拡張状態が帽子形状を有する、第22項に記載の方法。
第24項 前記第1の拡張状態が傘形状を有する、第22項に記載の方法。
第25項 前記第2の拡張状態が椀形状を有する、第22項に記載の方法。
第26項 前記第2の拡張状態が、近位端に実質的に平坦な部分をさらに備える、第22項に記載の方法。
第27項 前記第2の拡張状態がチューリップ形状を有する、第22項に記載の方法。
第28項 前記第2の拡張状態がカップ形状を有する、第22項に記載の方法。
第29項 前記複数の細長いフィラメントが編組メッシュ状に配置されている、第22項に記載の方法。
第30項 前記透過性シェルが前記編組メッシュの単層を備える、第29項に記載の方法。
第31項 前記透過性シェルが前記編組メッシュの二重層を備える、第29項に記載の方法。
第32項 前記透過性シェルが前記編組メッシュの多層を備える、第29項に記載の方法。
第33項 前記第2の拡張形状が前記第1の拡張形状とは異なる、第22項に記載の方法。
第34項 前記ハブが前記第1の拡張状態の遠位端に位置する、第22項に記載の方法。
第35項 前記ハブが前記第2の拡張状態の近位端に位置する、第22項に記載の方法。
第36項 前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部および前記第2の端部がハブに集められている、第22項に記載の方法。
第37項 前記複数の細長いフィラメントの各々が中間部分を含み、前記中間部分が前記第2の拡張状態の遠位端においてループを形成する、第22項に記載の方法。
第38項 前記複数の細長いフィラメントの各々が中間部分を含み、前記中間部分が前記第1の拡張状態の近位端においてループを形成する、第22項に記載の方法。
第39項 前記第1の拡張状態にある前記透過性シェルの遠位端が反転している、第22項に記載の方法。
第40項 前記第1の拡張状態にある前記透過性シェルの遠位端が外凸面を有する、第22項に記載の方法。
第41項 前記第2の拡張状態にある前記透過性シェルの遠位端が内凹面を有する、第22項に記載の方法。
第42項 内部空洞および頸部を有する脳動脈瘤を治療するための方法であって、
マイクロカテーテル内のインプラントを脳動脈内の対象領域まで前進させる工程であって、前記インプラントが複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを備え、前記複数のフィラメントの各々が第1の端部および第2の端部を有し、前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部がハブに集められ、前記ハブがプッシャーに結合されている、工程と、
前記インプラントを前記脳動脈瘤のドームに向かって遠位方向に前進させることにより、前記インプラントを前記マイクロカテーテルから出して前記脳動脈瘤の内部空洞に前進させる工程であって、前記透過性シェルが前記動脈瘤の前記内部空洞において第1の拡張状態まで拡張し、前記第1の拡張状態がドーム状部とつば状部とを備え、前記ドーム状部が、外面、内面、および前記内面によって画定される内部空洞を備え、前記ハブが前記第1の拡張状態の遠位端において前記内部空洞内に位置する、工程と、
前記プッシャーを前記内部空洞内で近位側に引き抜く工程であって、前記透過性シェルが動脈瘤の内部空洞内で第2の拡張状態の姿勢をとり、前記第2の拡張状態が近位端の実質的に平坦な部分および開いた遠位端を備え、前記ハブが前記拡張状態の近位端に位置する、工程と、
前記プッシャーを前記インプラントから取り外す工程と、
前記インプラントを取り外した後、前記マイクロカテーテルを前記対象領域から引き抜く工程と、
を含む方法。
第43項 前記第1の拡張状態が帽子形状を有する、第42項に記載の方法。
第44項 前記第1の拡張状態が傘形状を有する、第42項に記載の方法。
第45項 前記複数の細長いフィラメントの各々が中間部分を含み、前記中間部分が前記第2の拡張状態の遠位端においてループを形成する、第42項に記載の方法。
第46項 前記複数の細長いフィラメントの各々が中間部分を含み、前記中間部分が前記第1の拡張状態の近位端においてループを形成する、第42項に記載の方法。
第47項 前記第1の拡張状態の遠位端における前記複数のフィラメントが反転している、第42項に記載の方法。
第48項 前記第2の拡張状態における前記透過性シェルの高さが前記脳動脈瘤の高さ未満である、第42項に記載の方法。
第49項 前記脳動脈瘤が広頸部脳動脈瘤である、第42項に記載の方法。
第50項 前記インプラントが展開された後に、前記実質的に平坦な部分が広頸部脳動脈瘤の頸部内に収まる、第42項に記載の方法。
第51項 前記ハブが前記プッシャーに取り外し可能に結合される、第42項に記載の方法。
第52項 患者の脳動脈瘤の治療用の器具であって、
複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、前記複数のフィラメントの各々が第1の端部および第2の端部を有し、前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部がハブに集められており、
前記透過性シェルが、外凸面を有する閉じた遠位端を備える第1の拘束されていない構成を有し、
前記透過性シェルが、前記患者の脳動脈瘤内に展開されたときに第2の構成をとるように構成され、前記第2の構成が内凸面を有する開いた遠位端を備える、
器具。
第53項 患者の脳動脈瘤の治療用の器具であって、
複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、前記複数のフィラメントの各々が第1の端部および第2の端部を有し、前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部がハブに集められており、
前記透過性シェルが、外凸面を有する閉じた遠位端を備える第1の拘束されていない構成を有し、
前記透過性シェルが、前記患者の脳動脈瘤内に展開されたときに第2の構成をとるように構成され、前記第2の構成が開いた遠位端および内部空洞を備える、
器具。
第54項 前記第1の拘束されていない構成が傘形状を備える、第53項に記載の器具。
第55項 前記ハブが前記外凸面と接触していない、第53項に記載の器具。
第56項 前記第2の構成が椀形状を備える、第53項に記載の器具。
第57項 前記ハブが前記第2の構成の内部空洞内に位置しない、第53項に記載の器具。
第58項 患者の脳動脈瘤の治療用の器具であって、
複数の細長いフィラメントから作られた透過性シェルを含み、前記複数のフィラメントの各々が第1の端部および第2の端部を有し、前記複数の細長いフィラメントの各々の前記第1の端部がハブに集められており、前記透過性シェルが第1の表面および第2の表面を有し、前記ハブが前記第2の表面に取り付けられており、
前記透過性シェルが、内部空洞を有する凸状部を備える第1の拘束されていない構成を有し、前記ハブが前記第1の拘束されていない構成において前記凸状部の前記内部空洞内に位置しており、
前記透過性シェルが、前記患者の脳動脈瘤内に展開されたときに第2の構成をとるように構成され、前記第2の構成が前記第1の拘束されていない構成の反転である、
器具。
第59項 前記凸状部の前記内部空洞の表面が前記第2の表面である、第58項に記載の器具。
第60項 前記第2の構成が開いた遠位端を備える、第58項に記載の器具。
第61項 前記第1の拘束されていない構成が開いた近位端をさらに備える、第58項に記載の器具。
第62項 前記第1の拘束されていない構成が前記凸状部に取り付けられた平面部分をさらに備える、第58項に記載の器具。
第63項 前記平面部分が前記凸状部から斜めに延在する、第62項に記載の器具。
【国際調査報告】