(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】DMD共焦点顕微鏡を備えた眼科手術システム
(51)【国際特許分類】
A61F 9/008 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
A61F9/008 130
A61F9/008 100
A61F9/008 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525167
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 IB2022060849
(87)【国際公開番号】W WO2023089458
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】エドワード エー.デホーグ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン パーク
(57)【要約】
特定の実施形態では、眼内の標的を撮像し治療するための眼科レーザ手術システムは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)共焦点顕微鏡と、レーザデバイスと、コンピュータとを含む。DMD共焦点顕微鏡は、眼の画像を生成し、光源と、DMDデバイスと、イメージセンサとを含む。光源は、顕微鏡撮像ビームを提供する。DMDデバイスは、撮像経路に沿って顕微鏡撮像ビームを眼に向けて誘導し、眼から反射された顕微鏡撮像ビームを受光し、像面からではない反射された顕微鏡撮像ビームの光を遮断して顕微鏡撮像ビームを走査する。イメージセンサは、走査された顕微鏡撮像ビームを検出して眼の画像を生成する。レーザデバイスは、レーザビーム経路に沿ってレーザビームを眼内の標的に向けて誘導する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内の標的を撮像し治療するための眼科レーザ手術システムであって、
前記眼の複数の画像を生成するように構成されたデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)共焦点顕微鏡であって、前記眼の軸はz軸を規定し、前記z軸は複数のxy平面を規定し、前記DMD共焦点顕微鏡は、
顕微鏡撮像ビームを提供するように構成された光源と、
DMDデバイスであって、
撮像経路に沿って前記顕微鏡撮像ビームを前記眼に向けて誘導し、
前記眼から反射された前記顕微鏡撮像ビームを受光し、
像面からではない前記眼から反射された前記顕微鏡撮像ビームの光を遮断して前記顕微鏡撮像ビームを走査する
ように構成されたマイクロミラーアレイを含む、前記DMDデバイスと、
前記走査された顕微鏡撮像ビームを検出して前記眼の前記複数の画像を生成するように構成されたイメージセンサと、
を含む、前記DMD共焦点顕微鏡と、
レーザビーム経路に沿ってレーザビームを前記眼内の前記標的に向けて誘導するように構成されたレーザデバイスと、
前記DMD共焦点顕微鏡及び前記レーザデバイスに命令を送信するように構成されたコンピュータと
を含む、眼科レーザ手術システム。
【請求項2】
前記標的は硝子体眼浮遊物を含む、請求項1に記載の眼科レーザ手術システム。
【請求項3】
前記DMDデバイスは、
ピンホールとして動作する1つ以上のマイクロミラーのセットをオンに切り替えて前記顕微鏡撮像ビームを走査することによって、前記像面からではない前記眼から反射された前記顕微鏡撮像ビームの光を遮断して前記顕微鏡撮像ビームを走査するように構成される、請求項1に記載の眼科レーザ手術システム。
【請求項4】
前記DMDデバイスは、
複数のピンホールとして動作する1つ以上のマイクロミラーのセットをオンに切り替えて前記顕微鏡撮像ビームを走査することによって、前記像面からではない前記眼から反射された前記顕微鏡撮像ビームの光を遮断して前記顕微鏡撮像ビームを走査するように構成される、請求項1に記載の眼科レーザ手術システム。
【請求項5】
前記DMD共焦点顕微鏡は、
前記複数のxy平面に複数の2次元(2D)正面画像を生成するように構成される、請求項1に記載の眼科レーザ手術システム。
【請求項6】
前記DMD共焦点顕微鏡は、
前記複数の2次元(2D)正面画像を組み合わせて3次元(3D)画像を生成するように構成される、請求項5に記載の眼科レーザ手術システム。
【請求項7】
前記眼の第2の複数の画像を生成するように構成された撮像システムを更に含む、請求項1に記載の眼科レーザ手術システム。
【請求項8】
前記撮像システムは、前記眼の前記第2の複数の画像の少なくとも1つを生成するように構成された光干渉断層撮影(OCT)デバイスを含む、請求項7に記載の眼科レーザ手術システム。
【請求項9】
前記撮像システムは、前記眼の前記第2の複数の画像の少なくとも1つを生成するように構成された走査型レーザ検眼鏡(SLO)デバイスを含む、請求項7に記載の眼科レーザ手術システム。
【請求項10】
前記撮像システムは、前記z軸に対する前記標的のz位置を特定するように構成される、請求項7に記載の眼科レーザ手術システム。
【請求項11】
前記撮像システムから撮像ビームを受光し、撮像システムビーム経路に沿って前記撮像ビームを前記眼に向けて誘導し、
前記レーザデバイスから前記レーザビームを受光し、前記撮像システムビーム経路と位置合わせされた前記レーザビーム経路に沿って前記レーザビームを前記眼に向けて誘導する
ように構成されたxyスキャナを更に含む、請求項7に記載の眼科レーザ手術システム。
【請求項12】
眼内の標的を撮像し治療するための方法であって、
デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)共焦点顕微鏡によって、前記眼の複数の画像を生成することであって、前記眼の軸はz軸を規定し、前記z軸は複数のxy平面を規定し、前記生成することは、
前記DMD共焦点顕微鏡の光源によって、顕微鏡撮像ビームを提供することと、
前記DMD共焦点顕微鏡のDMDデバイスのマイクロミラーアレイによって、撮像経路に沿って前記顕微鏡撮像ビームを前記眼に向けて誘導することと、
前記マイクロミラーアレイによって、前記眼から反射された前記顕微鏡撮像ビームを受光することと、
前記マイクロミラーアレイによって、像面からではない前記眼から反射された前記顕微鏡撮像ビームの光を遮断して前記顕微鏡撮像ビームを走査することと、
前記DMD共焦点顕微鏡のイメージセンサによって、前記走査された顕微鏡撮像ビームを検出して前記眼の前記複数の画像を生成することと、
を含む、前記生成すること、及び
レーザデバイスによって、レーザビーム経路に沿ってレーザビームを前記眼内の前記標的に向けて誘導すること
を含む、方法。
【請求項13】
前記標的は硝子体眼浮遊物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記像面からではない前記眼から反射された前記顕微鏡撮像ビームの光を前記遮断して前記顕微鏡撮像ビームを走査することは、
ピンホールとして動作する1つ以上のマイクロミラーのセットをオンに切り替えて前記顕微鏡撮像ビームを走査することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記像面からではない前記眼から反射された前記顕微鏡撮像ビームの光を前記遮断して前記顕微鏡撮像ビームを走査することは、
複数のピンホールとして動作する1つ以上のマイクロミラーのセットをオンに切り替えて前記顕微鏡撮像ビームを走査することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記DMD共焦点顕微鏡によって、前記複数のxy平面に複数の2次元(2D)正面画像を生成することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記DMD共焦点顕微鏡によって、前記複数の2次元(2D)正面画像を組み合わせて3次元(3D)画像を生成することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
撮像システムによって、前記眼の第2の複数の画像を生成することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記撮像システムの光干渉断層撮影(OCT)デバイスによって、前記眼の前記第2の複数の画像の少なくとも1つを生成することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記撮像システムの走査型レーザ検眼鏡(SLO)デバイスによって、前記眼の前記第2の複数の画像の少なくとも1つを生成することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記撮像システムによって、前記z軸に対する前記標的のz位置を特定することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
xyスキャナによって、前記撮像システムから撮像ビームを受光し、撮像システムビーム経路に沿って前記撮像ビームを前記眼に向けて誘導することと、
前記xyスキャナによって、前記レーザデバイスから前記レーザビームを受光し、前記撮像システムビーム経路と位置合わせされた前記レーザビーム経路に沿って前記レーザビームを前記眼に向けて誘導することと
を更に含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、眼科手術システムに関し、より詳細には、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)共焦点顕微鏡を備えた眼科手術システムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼浮遊物は、視覚の質、例えば視力及びコントラスト感度を低下させる可能性がある、硝子体中のコラーゲンの塊である。レーザビトレオライシスでは、レーザビームを浮遊物に照射して浮遊物を分解することによって浮遊物が除去される。しかしながら、既知のレーザビトレオライシス用システムは、浮遊物の画像解像度が低く、浮遊物の深さ位置を提供できず、浮遊物を正確に標的化することが困難である。その上、浮遊物が網膜の極めて近傍にある場合、深さ位置の不足によって網膜損傷が生じる場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
特定の実施形態では、眼内の標的を撮像し治療するための眼科レーザ手術システムは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)共焦点顕微鏡と、レーザデバイスと、コンピュータとを含む。DMD共焦点顕微鏡は、眼の画像を生成する。眼軸はz軸を規定し、z軸はxy平面を規定する。DMD共焦点顕微鏡は、光源と、DMDデバイスと、イメージセンサとを含む。光源は、顕微鏡撮像ビームを提供する。DMDデバイスは、撮像経路に沿って顕微鏡撮像ビームを眼に向けて誘導し、眼から反射された顕微鏡撮像ビームを受光し、像面からではない反射された顕微鏡撮像ビームの光を遮断して顕微鏡撮像ビームを走査する。イメージセンサは、走査された顕微鏡撮像ビームを検出して眼の画像を生成する。レーザデバイスは、レーザビーム経路に沿ってレーザビームを眼内の標的に向けて誘導する。コンピュータは、DMD共焦点顕微鏡及びレーザデバイスに命令を送信する。
【0004】
実施形態は、以下の特徴のいずれも含まなくてもよく、1つ、いくつか、又は全てを含んでもよい。
【0005】
*標的は硝子体眼浮遊物を含む。
【0006】
*DMD共焦点顕微鏡は、xy平面に2次元(2D)正面画像を生成する。DMD共焦点顕微鏡は、2次元(2D)正面画像を組み合わせて3次元(3D)画像を生成し得る。
【0007】
DMDデバイスは、1つ以上のピンホールとして動作するマイクロミラーのセットをオンに切り替えて顕微鏡撮像ビームを走査することによって、像面からではない反射された顕微鏡撮像ビームの光を遮断して顕微鏡撮像ビームを走査する。
【0008】
*眼科レーザ手術システムは、眼の追加の画像を生成する撮像システムを含む。眼科レーザ手術システムは、追加の画像を生成する光干渉断層撮影(OCT)デバイス及び/又は走査型レーザ検眼鏡(SLO)デバイスを含み得る。撮像システムは、z軸に対する標的のz位置を特定し得る。眼科レーザ手術システムは、撮像システムから撮像ビームを受光し、撮像システムビーム経路に沿って撮像ビームを眼に向けて誘導し、レーザデバイスからレーザビームを受光し、撮像システムビーム経路と位置合わせされたレーザビーム経路に沿ってレーザビームを眼に向けて誘導する、xyスキャナを含む。
【0009】
特定の実施形態では、眼内の標的を撮像し治療するための方法は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)共焦点顕微鏡によって眼の画像を生成することを含む。眼軸はZ軸を規定し、Z軸はxy平面を規定する。生成することは、DMD共焦点顕微鏡の光源によって、顕微鏡撮像ビームを提供することと、DMD共焦点顕微鏡のDMDデバイスのマイクロミラーアレイによって、顕微鏡撮像ビームを撮像経路に沿って眼に向けて誘導することと、マイクロミラーアレイによって、眼から反射された顕微鏡撮像ビームを受光することと、マイクロミラーアレイによって、像面からではない眼から反射された顕微鏡撮像ビームの光を遮断して、顕微鏡撮像ビームを走査することと、DMD共焦点顕微鏡のイメージセンサによって、走査された顕微鏡撮像ビームを検出して眼の画像を生成することとを含む。レーザビームは、レーザデバイスによってレーザビーム経路に沿って眼内の標的に向けて誘導される。
【0010】
実施形態は、以下の特徴のいずれも含まなくてもよく、1つ、いくつか、又は全てを含んでもよい。
【0011】
*標的は硝子体眼浮遊物を含む。
【0012】
*像面からではない眼から反射された顕微鏡撮像ビームの光を遮断して顕微鏡撮像ビームを走査することは、ピンホールとして動作する1つ以上のマイクロミラーのセットをオンに切り替えて顕微鏡撮像ビームを走査することを含む。
【0013】
*像面からではない眼から反射された顕微鏡撮像ビームの光を遮断して顕微鏡撮像ビームを走査することは、複数のピンホールとして動作する1つ以上のマイクロミラーのセットをオンに切り替えて顕微鏡撮像ビームを走査することを含む。
【0014】
*2次元(2D)正面画像は、DMD共焦点顕微鏡によってxy平面に生成される。2次元(2D)正面画像は、3次元(3D)画像を生成するためにDMD共焦点顕微鏡によって組み合わされ得る。
【0015】
*眼の画像の第2のセットは、撮像システムによって生成される。第2の画像の少なくとも1つは、撮像システムの光干渉断層撮影(OCT)デバイス又は走査型レーザ検眼鏡(SLO)デバイスによって生成され得る。z軸に対する標的のz位置は、撮像システムによって特定され得る。撮像システムからの撮像ビームは、xyスキャナによって受光され、撮像システムビーム経路に沿って眼に向けて誘導され得、レーザデバイスからのレーザビームは、xyスキャナによって受光され、撮像システムビーム経路と位置合わせされたレーザビーム経路に沿って眼に向けて誘導され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】特定の実施形態による、眼内の標的(眼浮遊物など)を撮像し治療するために使用され得る眼科手術システムの一例を示す。
【
図2】
図1のシステムにおいて使用され得るDMD共焦点顕微鏡の一例を示す。
【
図3】特定の実施形態による、
図1のシステムなどの眼科手術システムによって実行され得る、眼を撮像し治療するための方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、説明及び図面を参照して、開示される装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を詳細に示す。説明及び図面は、網羅的であることも、又は、特許請求の範囲を、図面において示され、説明において開示される特定の実施形態に限定することも意図するものではない。図面は可能な実施形態を表すが、図面は必ずしも縮尺通りではなく、実施形態をよりよく示すために特定の特徴部を簡略化、誇張、削除、又は部分的に分割している場合がある。
【0018】
既知のレーザビトレオライシス用システムは、特定の状況では浮遊物の正確で高精度の撮像及び標的化を提供できない。よって、本明細書で説明する眼科手術システムは、これらの問題を解消する。手術システムは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)ベースの共焦点顕微鏡(「DMD共焦点顕微鏡」)を含む。DMD共焦点顕微鏡は、高速(例えば、60ヘルツ(Hz)超)の画像取得を可能にする、DMDを走査要素として利用する。DMD共焦点顕微鏡画像は、浮遊物のxy位置を特定するために使用することができる。手術システムはまた、浮遊物のz位置を提供する光干渉断層撮影(OCT)デバイスを含み得る。更に、レーザ治療及び撮像デバイスは、xyスキャナを共有し、デバイス間での相互位置合わせを可能にし得る。したがって、これらの眼科手術システムは、浮遊物の改善された撮像及び標的化を提供する。
【0019】
図1は、特定の実施形態による、眼12内の標的(眼浮遊物など)を撮像し治療するために使用され得る眼科手術システム10の一例を示す。この例では、システム10は、図示のように結合された、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)ベースの共焦点顕微鏡(「DMD共焦点顕微鏡」)20、撮像システム22、レーザデバイス24、xyスキャナ26、ビームスプリッタ28、及びコントローラ30を含む。この例では、眼12の軸(例えば、視軸又は光軸)はz軸を規定し、z軸は、z軸に直交するx軸及びy軸を規定する。x軸及びy軸は、眼内のxy平面を規定する。x、y、及びz方向及び位置は、x軸、y軸、及びz軸をそれぞれ基準とする。
【0020】
概要によれば、DMD共焦点顕微鏡20は、眼12の硝子体及び網膜の2次元(2D)正面画像を生成する。特定の実施形態では、DMDデバイスは、極めて迅速に動作して複数の画像を並行して収集できるDMDマイクロミラーを有する。画像は、浮遊物のxy位置の特定を可能にする、浮遊物が網膜上に落とす影を示し得る。撮像システム22は、浮遊物のz位置を特定できる撮像デバイス(例えば、光干渉断層撮影(OCT)デバイス)を含む。xyスキャナ26は、xy平面内において撮像システム22とレーザデバイス24とを相互位置合わせする。よって、システム10は、浮遊物の正確なxyz位置をレーザデバイス24に提供することができ、したがって、レーザは浮遊物を破砕することができる。特定の実施形態では、コントローラ30は、これらの動作を実行するようにシステム10の構成要素に命令を送信する。
【0021】
構成要素に着目すると、DMD共焦点顕微鏡20は、眼12の画像を生成する。概要として、DMD共焦点顕微鏡20は、光源と、DMDデバイスと、イメージセンサとを含む。光源は、顕微鏡撮像ビームを提供する。DMDデバイスは、撮像経路に沿って顕微鏡撮像ビームを眼に向けて誘導し、眼から反射された顕微鏡撮像ビームを受光し、像面からではない反射された顕微鏡撮像ビームの光を遮断して顕微鏡撮像ビームを走査する。イメージセンサは、走査された顕微鏡撮像ビームを検出して眼の画像を生成する。
【0022】
特定の実施形態では、DMDデバイスは、極めて迅速に動作して複数の画像を並行して収集できるDMDマイクロミラーを有し、したがって、DMD共焦点顕微鏡20は、単一の像点の取得を提供する走査光学系を使用する従来の走査型レーザ検眼鏡(SLO)デバイス又は光干渉断層撮影(OCT)システムよりも高速の画像取得をもたらす。実施形態では、DMDは、画像からの光をピクセル毎に透過又は反射させることを可能にする、オン状態又はオフ状態に切り替えることができるマイクロミラーアレイである。各マイクロミラーは、対象物面からの光のみをイメージセンサへ通過させることを可能にする、共焦点顕微鏡におけるピンホールとして効果的に機能する。焦点の合っていない光、すなわち、対象物面にない光は遮断され、すなわち、像面に通されない。マイクロミラーは、順次個別に切り替えることができ、走査システムと同様に、対象物が1点毎に撮像されることを可能にする。その上、複数のピクセルを並行して作動させることによって、共焦点断層撮像システムの特性を維持しながら、画像取得速度を向上させることができる。DMD共焦点顕微鏡20については、
図2を参照してより詳細に説明される。
【0023】
撮像システム22は、眼12の画像を生成し、任意の適切な撮像デバイスを含み得る。特定の実施形態では、撮像システム22は、光干渉断層撮影(OCT)デバイス及び/又は走査型レーザ検眼鏡(SLO)デバイスを含み得る。OCTデバイスは、任意の適切な干渉計デバイス、例えば、時間領域、スペクトル領域、及び/又は掃引源OCTデバイスであり得る。特定の実施形態では、OCTデバイスは、z軸に対する標的のz位置(深さ位置)を特定し得る。例えば、OCTデバイスは、標的のz位置を示す3次元(3D)画像を生成し得る。特定の実施形態では、OCTデバイスは、正確なz位置を提供するために、約5μm以上などの深さ分解能を有し得る。
【0024】
レーザデバイス24は、レーザビームを生成し、眼12に向けて誘導する。レーザビームは、組織と相互作用して(例えば、光破壊、破砕、又は光切除して)標的を治療するための任意の適切な特性を有し得る。レーザビームは、例えば紫外又は赤外領域の任意の適切な波長を有し得る。レーザデバイス24は、任意の適切なパルス幅(例えば、ピコ秒からナノ秒の範囲)のレーザパルスを任意の適切な繰り返し率(例えば、30キロヘルツ(kHz)以上)で送達する。
【0025】
xyスキャナ26は、撮像システム22から撮像ビームを受光し、撮像システムビーム経路に沿って撮像ビームを眼に向けて横方向に誘導し、レーザデバイス24からレーザビームを受光し、撮像システムビーム経路と位置合わせされたレーザビーム経路に沿ってレーザビームを眼12に向けて横方向に誘導する。よって、xyスキャナ26は、飛蚊症の治療のために撮像システム22の撮像デバイスとレーザデバイス24を相互位置合わせする。撮像デバイスを用いて浮遊物の位置が特定された時点で、レーザは、浮遊物を破砕することができる。
【0026】
xyスキャナ26は、任意の適切な方式でビームを横方向に誘導し得る。例えば、xyスキャナ26は、相互に垂直な軸の周りでチルトすることができるガルバノメトリック作動式スキャナミラーの対を含み得る。別の例として、xyスキャナ26は、ビームを電気光学的に操作できる電気光学結晶又はビームを音響光学的に操作できる音響光学結晶を含み得る。別の例として、xyスキャナ26は、例えばレーザパルスの3Dマトリクスを作成できる高速スキャナを含み得る。そのようなスキャナの例としては、ガルバノスキャナ、共振スキャナ、又は音響光学スキャナが挙げられる。
【0027】
ビームスプリッタ28は、眼12に向かう及び/又は眼12からの光路に撮像システム22及びレーザデバイス24を結合する1つ以上のビームスプリッタを含む。ビームスプリッタ28の例としては、ダイクロイックミラーが挙げられる。コントローラ30は、動作を実行するようにシステム10の構成要素に命令する。例えば、コントローラ30は、走査のリアルタイム同期及び位置補償を実行することによって、DMDデバイスによる走査とxyスキャナ26による走査とを整合させ得る。コントローラ30は、イメージセンサ、例えばCMOSイメージセンサを用いて走査を監視することによって走査を整合させ得る。
【0028】
図2は、
図1のシステム10において使用され得るDMD共焦点顕微鏡20の一例を示す。この例では、DMD共焦点顕微鏡20は、図示のように光学的に結合された、光源30、レンズ32、及びミラー34、レンズ36、DMDデバイス40、リレー光学系41(例えば、レンズ42、ビームスプリッタ46、レンズ48及び50を含む)、レンズ52、及びイメージセンサ54を含む。
【0029】
動作の概要として、光源30は、顕微鏡撮像ビームを提供する。DMDデバイス40は、リレー光学系41を通る撮像経路に沿って顕微鏡撮像ビーム43を眼に向けて誘導し、眼からリレー光学系41を通って反射された顕微鏡撮像ビームを受光する。DMDデバイス40は、像面からではない反射された顕微鏡撮像ビームの光を遮断して、ビーム45を生成するように顕微鏡撮像ビームを走査する。すなわち、DMDデバイス40は、像面からではない光(対象物面外の光)を遮断するボクセルを形成する、SLOピンホールとして動作する。ミラー34は、ビーム45をイメージセンサ54へ誘導する。イメージセンサ54は、走査された顕微鏡撮像ビームを検出して眼の画像を生成する。
【0030】
構成要素に着目すると、光源30は、DMDデバイス40上に光を誘導して、DMDデバイス40を照明する。光源30は、任意の適切な光、例えば、広帯域の白色光又はコヒーレント光を提供し得る。
【0031】
DMDデバイス40は、任意の適切なサイズ、例えば約5×5μmのマイクロミラーアレイを含む。個々のマイクロミラーは、光を偏向させるためにオフ状態又はオン状態に切り替える(それぞれ作動させない又は作動させる)ことができる。ミラーを作動させると、ミラーは、イメージセンサ54に向けて光を偏向させる。よって、DMDデバイス40は、像面からではない光(対象物面外の光)を遮断するボクセルを形成する、SLOピンホールのように動作する。マイクロミラーを特定のパターンで切り替えて、例えば、1つ以上のピンホールとして動作するマイクロミラーのセットをオンに切り替えて、顕微鏡撮像ビームを走査することによって、DMDデバイス40は、対象物(例えば、網膜)を走査してイメージセンサ54のための画像を取得する。
【0032】
マイクロミラーのパターンによって、1つ以上のピンホールが形成され得る。複数のピンホールは、複数の像点の取得を可能にし、より高速な走査を生じさせる。一般に、生体組織の撮像は散乱性が高いため、走査される像点は、点が隣り合う点と干渉するのを避けるために互いに十分に離れている必要がある。
【0033】
特定の実施形態では、DMDデバイス40は、xy平面を走査してz位置に2D正面画像を生成する。2D正面画像は、浮遊物を追跡するために使用され得る。3D画像を生成するために、顕微鏡20は、z位置におけるxy平面に2D正面画像を生成する。次いで、顕微鏡20は、次のz位置に焦点を調整して、次のxy平面に次の2D正面画像を生成する。コントローラ30は、2D画像を組み合わせて3D画像を生成する。
【0034】
リレー光学系41は、システム10と眼12との間で光を伝送する1つ以上の光学要素を含む。一般に、光学要素は、光ビームに作用(例えば、透過、反射、屈折、回折、コリメート、調整、整形、集束、変調、及び/又は他の方法で作用)することができる。光学要素の例としては、レンズ、プリズム、ミラー、回折光学要素(DOE)、ホログラフィック光学要素(HOE)、及び空間光変調器(SLM)が挙げられる。
【0035】
この例では、リレー光学系41は、DMDデバイス40から光を受光し、この光を眼12へ誘導する。リレー光学系41は、眼12から反射された光を受光し、この光をDMDデバイス40へ誘導する。リレー光学系41のレンズは、ビームの焦点位置のZ位置を変化させるように調整され得る。これによって、3D画像を生成するために使用され得る複数の2D正面画像を異なるz位置で取得することが可能となる。加えて、アフォーカルリレーが、DMDを眼の網膜上に結像するために使用され得る。光学リレーは、レンズ42によって投影された瞳孔が眼の瞳孔と共役になるように設計することができるので、光ビームが網膜を横切る間に、眼の瞳孔におけるビームの動きが、口径食を低減する又はなくすために最小限に抑えられる。また、アフォーカルリレーにおけるレンズ(48~50のレンズ距離)を調整することによって、患者の屈折異常に対処することができる。
【0036】
ミラー34は、ミラー又はビームスプリッタなどの、イメージセンサ54へ撮像ビーム45を誘導できる任意の適切な光学要素を含む。特定の実施形態では、ミラー34は、浮遊物像を強調するために暗視野機能を実行する。実施形態では、ミラー34は、光43の中心円錐部を遮るが、外側円錐部を通過させるピックオフミラーを含む。DMDデバイス40からの光45は、34によってイメージセンサ54に向けて反射される。イメージセンサ54は、DMDデバイス40からの偏向された光を検出する。イメージセンサ54は、CMOSイメージセンサなどの、任意の適切な検出器を含み得る。
【0037】
手術システムの特定の実施形態は、利点を提供し得る。例えば、DMDデバイス40は、迅速に走査して複数の画像を並行して生成し、これによって、眼の2D画像及び3D画像の高速生成が可能となる。別の例として、ダブルパスDMDは、網膜によって反射される迷光を低減し、浮遊物を撮像する際の画像コントラストを改善する。加えて、撮像システム22のOCTデバイスは、向上した深さ分解能を提供する。別の例として、DMDチップは、適正な画像取得速度のために必要とされるSLO又はOCTスキャナよりも安価である。
【0038】
図3は、特定の実施形態による、
図1のシステム10などの眼科手術システムによって実行され得る、眼を撮像し治療するための方法の一例を示す。システムは、DMD共焦点顕微鏡(DMDデバイス、リレー光学系、及びイメージセンサを含む)と、撮像システム(OCTデバイスを含む)と、コントローラとを含み得る。
【0039】
方法は、ステップ110で開始し、光源は、光ビームをDMDデバイス上に誘導する。DMDデバイスは、ステップ112において、リレー光学系を通して光ビームを眼へ誘導する。眼は光ビームを反射する。DMDデバイスは、ステップ114において、眼からリレー光学系を通して反射された光ビームを受光する。
【0040】
DMDデバイスは、ステップ116において像面からでない光を遮断して光ビームを走査する。例えば、DMDは、1つ以上のピンホールのパターンでマイクロミラーのオンとオフを切り替えて、光ビームを走査する。DMDデバイスは、ステップ120において、イメージセンサに向けて光を偏向させ、イメージセンサは、光の検出に応答してセンサ信号を生成する。
【0041】
コントローラは、ステップ122において、イメージセンサからの信号から標的の画像を生成する。例えば、コントローラは、2D画像を生成し得、及び/又は複数の2D画像から3D画像を生成し得る。コントローラは、ステップ124において標的のxy位置を特定し、ステップ126において標的のz位置を特定する。例えば、コントローラは、DMDデバイスからxy位置を特定し得、OCTデバイスからz位置を特定し得る。レーザデバイスは、ステップ130において、レーザビームを標的の位置に向けて誘導する。
【0042】
本明細書に開示されるシステム及び装置の構成要素(本明細書に開示されるコンピュータ又はコントローラなど)は、インターフェース、ロジック、及び/又はメモリを含み得、これらのうちのいずれかがコンピュータハードウェア及び/又はソフトウェアを含み得る。インターフェースは、構成要素への入力を受信する、及び/又は構成要素からの出力を送信することができ、通常、ソフトウェア、ハードウェア、周辺機器、ユーザ、及びこれらの組み合わせなどの間で情報を交換するために使用される。ユーザインターフェースは、コンピュータと通信する(例えば、コンピュータに入力を送信する及び/又はコンピュータから出力を受信する)ためにユーザが利用できるインターフェースの一種である。ユーザインターフェースの例としては、ディスプレイ、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)、タッチスクリーン、キーボード、マウス、ジェスチャセンサ、マイク、及びスピーカが挙げられる。
【0043】
ロジックは、構成要素の操作を行うことができる。ロジックは、データを処理する、例えば命令を実行して入力から出力を生成する1つ又は複数の電子デバイスを含み得る。かかる電子デバイスの例としては、コンピュータ、プロセッサ、マイクロプロセッサ(例えば中央処理装置(CPU))、及びコンピュータチップが挙げられる。ロジックは、操作を行うために電子デバイスにより実行されることができる命令を符号化するコンピュータソフトウェアを含み得る。コンピュータソフトウェアの例としては、コンピュータプログラム、アプリケーション、及びオペレーティングシステムが挙げられる。
【0044】
メモリは、情報を記憶することができ、有形のコンピュータ可読及び/又はコンピュータ実行可能なストレージ媒体を含み得る。メモリの例としては、コンピュータメモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は読み出し専用メモリ(ROM))、マスストレージメディア(例えば、ハードディスク)、リムーバブルストレージメディア(例えば、コンパクトディスク(CD)又はデジタルビデオ若しくは多用途ディスク(DVD))、データベース、ネットワークストレージ(例えば、サーバ)、及び/又は他のコンピュータ可読媒体が挙げられる。特定の実施形態は、コンピュータソフトウェアを用いて符号化されたメモリを対象とし得る。
【0045】
特定の実施形態に関して本開示を説明してきたが、実施形態の修正形態(例えば、変更形態、置換形態、追加形態、省略形態及び/又は他の修正形態)が、当業者には明らかになろう。したがって、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に対する修正がなされ得る。例えば、本明細書で開示されたシステム及び装置に対する修正がなされ得る。当業者に明らかであるように、システム及び装置の構成要素は、統合若しくは分離され得る、又はシステム及び装置の動作は、より多い、より少ない、若しくは他の構成要素によって実行され得る。別の例として、本明細書で開示された方法に対する修正がなされ得る。当業者に明らかであるように、方法は、より多い、より少ない、又は他のステップを含み得、ステップは、任意の適切な順序で実行され得る。
【0046】
請求項を解釈する際に特許庁及び読者を助けるために、本出願人らは、用語「のための手段(means for)」又は「のためのステップ(step for)」が特定請求項において明示的に使用されない限り、請求項又は請求要素のいかなるものも合衆国法典第35巻§112条(f)を想起させるように意図されてはいないということを注記する。請求項内の任意の他の用語(例えば、「機構」、「モジュール」、「デバイス」、「ユニット」、「構成要素」、「要素」、「部材」、「装置」、「機械」、「システム」、「プロセッサ」、又は「コントローラ」)の使用は、当業者にとって既知の構造を指すものと本出願人らにより理解され、したがって合衆国法典第35巻§112条(f)を想起させるように意図されていない。
【国際調査報告】