IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司の特許一覧 ▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院の特許一覧

特表2024-538269分解反応装置、分解の手段によるオレフィンの調製方法および使用
<>
  • 特表-分解反応装置、分解の手段によるオレフィンの調製方法および使用 図1
  • 特表-分解反応装置、分解の手段によるオレフィンの調製方法および使用 図2
  • 特表-分解反応装置、分解の手段によるオレフィンの調製方法および使用 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】分解反応装置、分解の手段によるオレフィンの調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 4/00 20060101AFI20241010BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20241010BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20241010BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C07C4/00
C07C11/04
C07C11/06
C07C11/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525283
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2022127962
(87)【国際公開番号】W WO2023072196
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111263241.1
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】劉同舉
(72)【発明者】
【氏名】王国清
(72)【発明者】
【氏名】張利軍
(72)【発明者】
【氏名】周叢
(72)【発明者】
【氏名】杜志国
(72)【発明者】
【氏名】張兆斌
(72)【発明者】
【氏名】石瑩
(72)【発明者】
【氏名】劉俊傑
(72)【発明者】
【氏名】蒋氷
(72)【発明者】
【氏名】巴海鵬
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC19
4H006BD81
(57)【要約】
分解反応装置、分解の手段によりオレフィンを調製する方法および使用。本分解反応装置は、順次接続される予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部を含む。分解の手段によるオレフィンの調製方法は、分解原料および水を加圧すること、加圧された分解原料および水を第1の加熱に供すること、第1の加熱に供された分解原料および水を第2の加熱に供するとともに、水の存在下で分解原料を軽質化して軽質化混合物を得ること、軽質化混合物を減圧下でガス化するとともに第3の加熱に供して第3の加熱混合物を得ること、および第3の加熱混合物を水蒸気の存在下で分解温度で分解してオレフィンを含む分解生成物を得ることを含む。分解反応装置はおよび/または分解反応方法は原油の分解効率およびオレフィンの収率を改善することができ、結果として運転コストが下がり、分解装置のコーキングおよび閉塞を減らすことができ、分解反応装置の運転時間を延ばすことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次接続された予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部を含むことを特徴とする分解反応装置。
【請求項2】
前記軽質化部は、軽質化容器、好ましくは軽質化釜を含む、請求項1に記載の分解反応装置。
【請求項3】
前記予熱部は、加熱容器または熱交換器を含み、および/または
前記減圧ガス化部は、減圧ガス化容器を含み、および/または
前記分解部はクラッカーを含む、請求項1または2に記載の分解反応装置。
【請求項4】
1つ以上の反応管を含み、各反応管は、前記順次接続された予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部を含み、任意に、各部の管径は、互いに同じであっても異なっていてもよい、請求項1に記載の分解反応装置。
【請求項5】
前記予熱部の前に加圧部、および/または、前記分解部の後に急冷部をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の分解反応装置。
【請求項6】
前記軽質化部と前記減圧ガス化部との間に、前記減圧ガス化部に流入する原料の圧力を下げる減圧手段が配置され、好ましくは、前記減圧手段は、減圧弁、圧力制御弁または絞り要素である、請求項1~5のいずれか1項に記載の分解反応装置。
【請求項7】
前記予熱部、前記軽質化部、前記減圧ガス化部および前記分解部の温度を順次上昇させ、好ましくは、前記予熱部、前記軽質化部、前記減圧ガス化部および前記分解部の温度はそれぞれ150~250℃、350~450℃、550~650℃および770~880℃である、請求項1~6のいずれか1項に記載の分解反応装置。
【請求項8】
前記予熱部が、2層管または2層を超える層を有する管である、請求項1~7のいずれか1項に記載の分解反応装置。
【請求項9】
前記2層管または2層を超える層を有する管の、内層管の壁の内側および/もしくは外側、ならびに/または中間層の管壁ならびに/または外層管の壁の内側に、螺旋状突起が配置されている、請求項8に記載の分解反応装置。
【請求項10】
前記2層管の、前記外層管の内径に対する前記内層管の内径の比が0.1~0.9、好ましくは0.4~0.6であり、
および/または、隣接する管層の前記螺旋状突起は、螺旋方向が反対であり;
および/または、前記螺旋状突起の直径に対する螺旋高さの比は0.1~20、好ましくは1~10であり;
および/または、前記螺旋状突起の直径に対する突起高さの比は0.01~0.5、好ましくは0.02~0.1である、請求項8または9に記載の分解反応装置。
【請求項11】
前記加圧部は加圧装置を備え、好ましくは、前記加圧装置はポンプである、請求項5に記載の分解反応装置。
【請求項12】
前記予熱部、前記軽質化部、前記減圧ガス化部および前記分解部の体積比が、0.1~10:0.1~1000:0.1~10:1、好ましくは0.1~0.5:1~300:0.1~0.5:1である、請求項1~11のいずれか1項に記載の分解反応装置。
【請求項13】
順次接続された加圧部、予熱部、軽質化部、減圧ガス化部、分解部および急冷部、ならびに、分解原料入口および分解生成物出口を含み、前記分解原料入口が前記予熱部に配置され、前記分解生成物出口が前記急冷部に配置され、前記予熱部、前記軽質化部、前記減圧ガス化部、前記分解部および前記急冷部はそれぞれ、運転中の各部の温度を制御する温度制御手段を備え;前記減圧ガス化部に流入する原料の圧力を減圧するために、減圧手段が、前記軽質化部と前記減圧ガス化部との間に配置され;前記予熱部の構造が2層管であり、螺旋状突起が、前記2層管の内層管の壁の内側および/または外層管の壁の内側に配置されている、分解反応装置。
【請求項14】
分解によりオレフィンを生成する方法であって、
(1)分解原料および水を加圧するステップ;
(2)前記加圧された分解原料と水とを第1の加熱に供するステップ;
(3)前記第1の加熱に供された分解原料と水とを第2の加熱に供し、水の存在下で前記分解原料を軽質化し、軽質化混合物を得るステップ;
(4)前記軽質化混合物を減圧下でガス化し、第3の加熱に供して第3の加熱混合物を得るステップ;および
(5)前記第3の加熱混合物を水蒸気の存在下、分解温度で分解し、オレフィンを含む分解生成物を得るステップ、を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記第1の加熱、前記第2の加熱、前記第3の加熱および前記分解の温度を順次上昇させ、好ましくは、ステップ(2)からステップ(5)まで、隣接するステップ間の温度上昇は、100~250℃、好ましくは150~250℃の範囲であり;より好ましくは、前記第1の加熱、前記第2の加熱、前記第3の加熱および前記分解の温度は、それぞれ、150~250℃、350~450℃、550~650℃および770~880℃であり;
および/または、ステップ(1)において、水と前記分解原料との重量比は0.3~10.5、好ましくは0.5~5であり;
および/または、前記分解原料は、原油、残渣油、および原油の処理によって得られる重質炭化水素のうちの少なくとも1つである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(1)において、加圧後、前記分解原料および水の圧力が10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaであり、
および/または、ステップ(2)において、前記第1の加熱の条件は、350℃より低い温度、好ましくは150~250℃の温度;および10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaの圧力を含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(3)において、超臨界水の条件下、または超臨界水に近い条件下で前記軽質化を行い、好ましくは、前記軽質化の条件は、300~500℃、好ましくは350~450℃の温度;および10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaの圧力を含み;
および/または、ステップ(4)において、前記減圧は、前記軽質化混合物の圧力を0.01~0.5MPa、好ましくは0.1~0.4MPaに低下させ;そして前記第3の加熱は、前記軽質化混合物の温度を550~700℃、好ましくは550~650℃に上昇させる、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(5)において、分解の条件は、710~900℃、好ましくは770~880℃、より好ましくは780~820℃の温度、0.01~0.5MPa、好ましくは0.1~0.4MPaの圧力、および0.1~0.5秒の滞留時間を含む、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
(6)前記分解反応後に得られた前記分解生成物を冷却するステップ、を更に含み、
好ましくは、ステップ(6)において、0.1秒以内に、冷却により前記分解生成物の温度を550℃以下にし、圧力が0.01~0.5MPaであり、好ましくは0.1~0.4MPaである、請求項14~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか1項に記載の分解反応装置において実施される、請求項14~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
分解によるオレフィンの調製における、請求項1~13のいずれか1項に記載の分解反応装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、分解の分野に関し、具体的には、分解反応装置、分解によるオレフィンを調製のための方法および使用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
低級オレフィンは通常、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエンなどの不飽和炭化水素を主成分とし、経済的価値の高い有機化学原料である。経済の発展に伴い、これらの有機化学原料の需要は年々増加している。低級オレフィンの調製の主原料としては、古くからナフサが使用されてきた。しかし近年は、安価な中東油田の随伴ガスおよび米国のシェールガスがエチレン原料として広く使用されるようになり、エチレン関連製品の価格が低下している。市場競争の影響に対処するため、エチレン分解反応装置の原料ソースを拡大し、原料コストを削減することは、従来のエチレン企業にとって、コスト削減と効率向上の有効な手段となっている。したがって、低級オレフィンを製造する分解反応装置の原料として重質炭化水素、特に未処理の原油を使用することは、オレフィン製造の原料コストとエネルギー消費量との削減に貢献し、市場における分解原料の需給変化に迅速に対応することができる。
【0003】
原油資源を有効利用し、低級オレフィンの収率を高めるために、通常、分解反応装置を用いて各種炭化水素原料をオレフィンに分解する水蒸気分解が行われている。一般的に使用される分解反応装置には、対流部と輻射部とが含まれる。
【0004】
水蒸気分解は、様々な炭化水素原料をオレフィン、好ましくはエチレン、プロピレン、ブテン、およびブタジエンなどの低級オレフィンに分解するために使用されてきた。従来の水蒸気分解は、対流部と輻射部との2つの主要部を持つ分解炉を使用する。炭化水素原料は一般に液体として分解炉の対流部に入り、そこで、一般に輻射部からの高温の排ガスに間接的に接触し蒸気と直接的に接触することにより、加熱されガス化される。ガス化された原料と水蒸気との混合物は、次に輻射部に導入され、そこで分解が行われる。オレフィンを含む生成物は、急冷を含む更なる下流処理のために分解炉を出る。
【0005】
CN101583697Aは、合成油を含む供給原料を分解する方法を開示している。この方法は、原油を希釈し、原油の分解性能を向上させ、オレフィンの転化率を高めるために、既存のエチレン製造原料を原油に混合するステップを含む。しかし、この方法は、既存のエチレン製造原料の供給源によって制限され、低級オレフィンを製造するために大量の原油を有効に利用することができない。
【0006】
CN109651041Aは、低級オレフィンを調製する方法を開示している。この方法は以下のステップを含む:(1)重質油と超臨界二酸化炭素とを接触させ、分離して、軽質油と二酸化炭素とを含む軽質液相、および重質油を含む重質液相を得るステップ;(2)軽質油と二酸化炭素とを含む軽質液相を成分分離に供して、軽質油と二酸化炭素とを得るステップ;(3)軽質油を水蒸気熱分解に供して低級オレフィンを得るステップ。この方法は、重質油の処理に二酸化炭素を使用するため、原油の性状はある程度改善されるが、分解反応装置の運転サイクルが短いという問題がある。
【0007】
上記の方法で原油を分解すると、原油利用率が低く、低級オレフィンの収率が低く、分解反応装置がコークス化しやすく、運転サイクルが短い。
発明の内容
【0008】
本発明の目的は、先行技術に存在する分解反応装置の低い原油利用率、低い低級オレフィン収率および短い運転サイクルという技術的問題を克服し、分解反応装置、並びに分解によりオレフィンを調製するための方法および使用を提供することである。
【0009】
原油は高分子量の不揮発成分を含んでいる。本発明者らは、これらの不揮発成分を従来の分解反応装置の対流部で予熱した場合、そのごく一部がガス化されず、ガス化されなかった不揮発成分が混合ガス流によって輻射部に巻き込まれ、輻射部においてコーキング析出が生じ易くなり、さらには輻射部が閉塞して分解生成物の収率が低下し、装置の運転サイクルが短くなることを見出した。このように、本発明は、原油を水中で軽質化反応に供することにより、原油中の重質成分高分子の少なくとも一部を低分子化し、水蒸気熱分解により適した原料を提供するものである。また、軽質化に必要な水は前記分解部の希釈水蒸気としても機能することができる。また、軽質化反応後に得られた生成物を最初に減圧加熱してから分解反応を行うことにより、原油利用率および低級オレフィン収率をさらに向上させ、分解反応装置のコーキングを低減し、分解反応装置の運転時間を延長することができる。
【0010】
本発明の第1の態様は、順次接続された予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部を含む分解反応装置を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記軽質化部は、軽質化容器、好ましくは軽質化釜を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記予熱部は、加熱容器または熱交換器を含む。いくつかの実施形態において、前記減圧ガス化部は、減圧ガス化容器を含む。いくつかの実施形態において、前記分解部は、クラッカーを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記分解反応装置は1つ以上の反応管を含み、各反応管は前記順次接続された予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部を含む。前記反応管の配置は、水平型、垂直型または吊り下げ型とすることができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記分解反応装置は、前記予熱部の前に加圧部、および/または前記分解部の後に急冷部をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記減圧ガス化部に流入する材料の圧力を下げる減圧手段が、前記軽質化部と前記減圧ガス化部との間に配置される。好ましくは、前記減圧手段は、減圧弁、圧力制御弁または絞り要素である。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記予熱部、前記軽質化部、前記減圧ガス化部および前記分解部の温度は順次上昇される。好ましくは、前記予熱部、前記軽質化部、前記分解ガス化部および前記分解部の温度は、それぞれ150~250℃、350~450℃、550~650℃および770~880℃である。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記予熱部は、2層管または2層を超える(層を有する)管である。いくつかの実施形態において、螺旋状突起は、前記2層管または2層を超える管の、内層管の壁の内側および/または壁の外側、および/または中間層の管壁、および/または外層管の壁の内側に配置されている。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記2層管の前記外層管の内径に対する前記内層管の内径の比は0.1~0.9、好ましくは0.4~0.6である。いくつかの実施形態では、隣接する管層の前記螺旋状突起は、反対の螺旋方向を有する。いくつかの実施形態では、前記螺旋状突起の直径に対する螺旋高さの比は0.1~20、好ましくは1~10である。いくつかの実施形態では、前記螺旋状突起の直径に対する突起高さの比は0.01~0.5、好ましくは0.02~0.1である。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記加圧部は加圧装置を備えており、好ましくは、前記加圧装置はポンプである。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記予熱部、前記軽質化部、前記減圧ガス化部および前記分解部の体積比は、0.1~10:0.1~1000:0.1~10:1、好ましくは0.1~0.5:1~300:0.1~0.5:1である。
【0021】
本発明の第2の態様は、分解反応装置を提供する:分解反応装置は、順次接続された加圧部、予熱部、軽質化部、減圧ガス化部、分解部ならびに急冷部、分解原料入口および分解生成物出口を含み、前記分解原料入口が前記予熱部に配置され、前記分解生成物出口が前記急冷部に配置され、前記予熱部、前記軽質化部、前記減圧ガス化部、前記分解部および前記急冷部はそれぞれ、運転中の各部の温度を制御する温度制御手段を備え、前記減圧ガス化部に流入する原料の圧力を減圧するために、減圧手段が、前記軽質化部と前記減圧ガス化部との間に配置され、前記予熱部の構造が2層管であり、前記2層管の内層管の壁の内側および/または外層管の壁の内側に螺旋状突起が配置される。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記2層管の前記外層管の内径に対する前記内層管の内径の比は0.1~0.9、好ましくは0.4~0.6である。いくつかの実施形態において、前記内層管の壁の内側にある螺旋状突起は、前記外層管の壁の内側にある螺旋状突起の螺旋方向とは反対の螺旋方向を有する。いくつかの実施形態では、前記内層管の壁の内側にある螺旋状突起の直径に対する螺旋高さの比は、0.1~20、好ましくは1~10である。いくつかの実施形態において、前記外層管の壁の内側にある前記螺旋状突起の直径に対する螺旋高さの比は、0.1~20、好ましくは1~10である。いくつかの実施形態において、前記内層管の壁の内側にある前記螺旋状突起の直径に対する突起高さの比は0.01~0.5、好ましくは0.02~0.1である。いくつかの実施形態では、前記外層管の壁の内側にある前記螺旋状突起の直径に対する突起高さの比は、0.01~0.5、好ましくは0.02~0.1である。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記予熱部、前記軽質化部、前記減圧ガス化部、前記急冷部および前記分解部の体積比は、0.1~10:0.1~1000:0.1~10:0.1~10:1、好ましくは0.1~0.5:1~300:0.1~0.5:0.1~0.5:1である。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記減圧手段は、減圧弁、圧力制御弁または絞り要素である。いくつかの実施形態において、前記加圧部は、加圧装置を備える。好ましくは、前記加圧装置はポンプである。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記分解反応装置は、1つまたは複数の反応管の構造を有する。いくつかの実施形態では、前記反応管の配置は水平型、垂直型または吊り下げ型である。
【0026】
本発明の第3の態様は、分解によりオレフィンを生成する方法を提供し、この方法が以下のステップを含むことを特徴とする:
(1)分解原料および水を加圧するステップ;
(2)前記加圧された分解原料と水とを第1の加熱に供するステップ;
(3)前記第1の加熱に供された分解原料および水を第2の加熱に供し、水の存在下で前記分解原料を軽質化反応に供し、(前記分解原料の軽質化反応生成物を含む)軽質化混合物を得るステップ;
(4)減圧下で前記軽質化混合物をガス化し、第3の加熱に供して第3の加熱混合物(気体)を得るステップ;および
(5)前記第3の加熱混合物を水蒸気の存在下、分解温度で分解し、オレフィンを含む分解生成物を得るステップ。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記第1の加熱、前記第2の加熱、前記第3の加熱および前記分解の温度を順次上昇させ、好ましくは、ステップ(2)からステップ(5)まで、隣接するステップ間の温度上昇は、100~250℃、好ましくは150~250℃の範囲である。いくつかの実施形態において、前記第1の加熱、前記第2の加熱、前記第3の加熱および前記分解の温度は、それぞれ150~250℃、350~450℃、550~650℃および770~880℃である。
【0028】
いくつかの実施形態では、ステップ(1)における水と前記分解原料との重量比は0.3~10.5、好ましくは0.5~5である。いくつかの実施形態では、前記分解原料は原油である。
【0029】
いくつかの実施形態では、ステップ(1)において、加圧後、前記分解原料と水との圧力はそれぞれ10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaである。いくつかの実施形態において、ステップ(2)において、前記第1の加熱の条件は以下を含む:350℃より低い温度、好ましくは150~250℃;10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaの圧力。いくつかの実施形態において、ステップ(3)の軽質化反応は、超臨界水の条件または超臨界水に近い条件下で行われる。好ましくは、前記軽質化反応の条件は以下を含む:350~450℃の温度、10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaの圧力。いくつかの実施形態において、ステップ(4)の減圧は、前記軽質化反応後の前記混合物の圧力を0.01~0.5MPa、好ましくは0.1~0.3MPaに低下させ、そして前記第3の加熱は、前記軽質化反応後の前記混合物の温度を550~650℃に上昇させる。いくつかの実施形態において、ステップ(5)における前記分解反応の条件は以下を含む:770~880℃、好ましくは780~820℃の温度、および0.01~0.5MPa、好ましくは0.2~0.3MPaの圧力。ステップ(5)において、前記材料の滞留時間は0.1~0.5秒とすることができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、本方法はさらに以下を含む:(6)前記分解反応後に得られた前記分解生成物を冷却するステップ。好ましくは、ステップ(6)において、前記冷却は、0.1秒以内に前記分解生成物の温度を550℃以下にし、圧力は0.01~0.5MPa、好ましくは0.2~0.3MPaである。
【0031】
いくつかの実施形態では、本方法は本願の分解反応装置で実施することができる。
【0032】
本発明の第4の態様は、分解によってオレフィンを生成する方法を提供し、この方法は以下を含む:
(1)分解原料および水を加圧するステップ;
(2)前記加圧された分解原料および水を第1の加熱に供するステップ;
(3)前記第1の加熱に供された分解原料および水を第2の加熱に供し、前記分解原料を水の存在下で軽質化反応に供するステップ;
(4)前記軽質化反応後に得られた混合物を減圧した後、第3の加熱に供し、水蒸気と前記分解原料の軽質化反応生成物とを含む第3の加熱混合物を得るステップ;
(5)前記分解原料の軽質化反応生成物を水蒸気の存在下で分解反応に供するステップ;
(6)前記分解反応後の前記分解生成物を冷却するステップ。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記第1の加熱、前記第2の加熱、前記第3の加熱および前記分解反応の温度は順次上昇され、その上昇は100~250℃、好ましくは150~250℃の範囲である。いくつかの実施形態において、ステップ(1)における水と分解原料との重量比は、0.3~10.5、好ましくは0.5~5であり得る。いくつかの実施形態において、前記分解原料は、原油、残渣油、および原油を処理して得られる重質炭化水素からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0034】
いくつかの実施形態において、ステップ(1)における加圧後の前記分解原料および水の圧力は、10~40MPa、好ましくは21~30MPaである。いくつかの実施形態において、ステップ(2)における前記第1の加熱のための条件は、以下を含む:350℃より低い温度、好ましくは150~250℃;10~40MPa、好ましくは21~30MPaの圧力。いくつかの実施形態において、ステップ(3)における前記軽質化反応の条件は以下を含む:350~450℃の温度、および10~40MPa、好ましくは21~30MPaの圧力。いくつかの実施形態では、ステップ(4)において、前記減圧は、前記軽質化反応後に得られる混合物の圧力を0.01~0.5MPa、好ましくは0.1~0.3MPaに低下させる;前記第3の加熱は、前記軽質化反応後の混合物の温度を550~650℃に上昇させる。いくつかの実施形態において、ステップ(5)における前記分解反応の条件は以下を含む:770~880℃、好ましくは780~820℃の温度、0.01~0.5MPa、好ましくは0.2~0.3MPaの圧力、および0.1~0.5秒の滞留時間。いくつかの実施形態では、ステップ(6)において、0.1秒以内に、前記冷却により前記分解生成物の温度を550℃以下にし、圧力は0.01~0.5MPa、好ましくは0.2~0.3MPaである。
【0035】
いくつかの実施形態では、本方法は本願の分解反応装置で実施することができる。
【0036】
本発明の第5の態様は、分解によるオレフィンの調製における上記の分解反応装置の使用を提供する。
【0037】
本発明により提供される分解反応装置および/または分解方法は、原油の分解効率を効果的に向上させ、オレフィン収率を増加させ、運転コストを低減させることができ、分解装置のコーキングおよび閉塞を低減させ、分解反応装置の運転時間を延長させることができる。
〔図面の説明〕
【0038】
図1図1は、本発明の一実施形態による分解反応装置の概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による分解反応装置の予熱部の構造透視図である。
図3図3は、本発明の別の実施形態による分解反応装置の予熱部の構造透視図である。
当業者であれば理解できるように、図面は本願の例示的な実施形態を単に示すものであり、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。
〔本発明の実施態様〕
【0039】
本明細書で開示される範囲の端点および任意の値は、正確な範囲または値に限定されるものではなく、これらの範囲または値は、そのような範囲または値に近い値を含むものと理解されたい。数値範囲については、各範囲の端点の値、個々の点の値を互いに組み合わせて、1つまたは複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書に具体的に開示されているものとみなされる。
【0040】
本明細書における「一実施形態」または「いくつかの実施形態」との言及は、実施形態(複数可)に関連して記載される特徴、構造または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。1つまたは複数の実施形態において、これらの特徴、構造または特性は、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0041】
本明細書における個々の実施形態は、互いに組み合わせることができるが、自然法則に反する組み合わせや、当業者が専門的知識に基づいて除外する組み合わせは含まれない。
【0042】
本発明の一態様は、順次接続された予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部を含む分解反応装置を提供する。
【0043】
本明細書で使用される「分解」は、当該技術分野で一般的に知られている意味を有し、炭素-炭素結合の切断により、炭化水素をより少ない炭素原子を含むより小さな炭化水素に分解することを指す。好ましくは、本願における「分解」は水蒸気分解であり、前記「水蒸気分解」は、当該技術分野において一般的に知られている意味を有し、水蒸気の存在下で起こる熱分解反応を指す。
【0044】
本願の分解反応装置は、順次接続される予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部を含む。いくつかの実施形態によれば、処理される流れは、分解反応装置において、前記予熱部、前記軽質化部、前記減圧ガス化部および前記分解部を順次通過する。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記分解反応装置は、前記予熱部の前に加圧部も含むことができる。前記加圧部において、前記分解原料と水とは必要な圧力まで加圧される。前記加圧部で加圧された後、前記分解原料および水は、10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaに加圧される。いくつかの実施形態によれば、圧力は、15MPa、16MPa、17MPa、18MPa、19MPa、20MPa、21MPa、22MPa、23MPa、24MPa、25MPa、26MPa、27MPa、28MPa、29MPa、30MPa、31MPa、32MPa、33MPa、34MPa、35MPa、36MPa、37MPa、38MPaまたは39MPaであり得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記加圧部は、例えば、分解原料および水を前記予熱部に送る管を含む、または管である。いくつかの実施形態において、前記加圧部は、加圧装置を備える。当該技術分野で一般的に知られている様々な加圧装置を使用することができる。好ましくは、前記加圧装置はポンプである。
【0047】
前記分解原料と水とは加圧された後、前記予熱部に送られる。
【0048】
前記予熱部は、前記分解原料および水を含む材料を予熱するために使用される。前記予熱部において、分解原料および水などの予熱される材料は、所望の温度、例えば350℃以下の温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、前記予熱部は、前記材料を例えば150~250℃の温度に加熱する。例えば、前記予熱部は前記材料を150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、310℃、320℃、330℃または340℃に加熱する。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記予熱部は加熱容器または熱交換器を含む。前記加圧された分解原料と水とが加熱容器に供給された後、前記分解原料と水とは前記加熱容器内で所望の温度に加熱される。熱交換器を使用する場合、前記分解原料と水とは熱交換により所望の温度に加熱される。いくつかの実施形態では、前記予熱部は管状である。いくつかの実施形態では、前記予熱部は、2層管または2層を超える層を有する管である。いくつかの実施形態において、前記予熱部は、管状反応器の部分(すなわち、前記管状反応器の予熱部)を含むか、または管状反応器の部分である。
【0050】
前記予熱部では、前記原料(前記分解原料および水)の圧力は10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaである。
【0051】
本発明において、前記分解原料と水とを別個に加圧および予熱することができ、その後、前記加圧および予熱された分解原料と、前記加圧および予熱された水とを混合する。あるいは、前記分解原料と水とを別々に加圧することができ、その後、加圧された分解原料と加圧された水とを混合して混合物を得、得られた該混合物を、所望の予熱温度まで加熱する。あるいは、前記分解原料を水と混合し、その混合物を加圧および予熱することもできる。例えば、前記分解原料および水を容器に加えて混合物を得、次いで前記容器内の前記混合物を加圧および予熱する。
【0052】
前記予熱部に続いて、前記軽質化部がある。前記分解原料および水などの原料は、前記予熱部で予熱された後、前記軽質化部に送られる。
【0053】
前記軽質化部において、前記分解原料と水とはさらに加熱され、例えば300~540℃、好ましくは300~500℃、より好ましくは350~450℃の温度に加熱される。例えば、前記軽質化部において、前記分解原料と水とは、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、390℃、400℃、410℃、420℃、430℃、440℃、450℃、460℃、470℃、480℃、490℃、500℃、510℃、520℃または530℃に加熱される。
【0054】
前記軽質化部では、前記分解原料と水との圧力は10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaである。
【0055】
当該技術分野で知られているように、水の臨界温度は約374℃であり、水の臨界圧力は約22.1メガパスカル(MPa)である。超臨界水とは、水の臨界温度以上の温度を有し、水の臨界圧力以上の圧力を有する水のことである。本願の前記軽質化部では、水は臨界に近い状態または超臨界の状態にある。本願の前記軽質化部では、前記分解原料(原油など)は、臨界に近い状態または超臨界状態の水の存在下で反応し、前記分解原料中の重質成分高分子の少なくとも一部がより小さな分子に転化され、軽質化された混合物が得られる。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記軽質化部は、軽質化釜等の軽質化容器を含む。あるいは、前記軽質化部は、管状反応器の部分を含むか、または管状反応器の部分である。
【0057】
いくつかの実施形態では、複数の軽質化反応釜を直列または並列に接続することができ、前記軽質化反応釜の一部が分解ガス化部に反応物を排出しているとき、分解原料および水が軽質化反応釜の一部に供給され、軽質化反応釜の一部が軽質化反応を実行している。これにより、前記分解反応装置の後続部の連続的で安定した運転を維持することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、前記加圧され予熱された分解原料と水とは、前記軽質化反応釜に供給され、350~450℃および21~30MPaの条件下で1~120分間反応され、軽質化混合物を得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記得られた軽質化混合物の全体が前記分解ガス化部に入るか、または固体残渣および任意に水の一部が分離された後に前記分解ガス化部に入る。
【0060】
前記軽質化部に続いて前記減圧ガス化部がある。前記軽質化部から得られた前記軽質化混合物は、前記減圧ガス化部に供給される。軽質化後に得られた軽質化混合物は、前記減圧ガス化部に送られ、減圧ガス化および加熱され、完全にまたは実質的に完全にガス化された蒸気含有混合物(ガス状混合物)を得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、減圧は、前記軽質化混合物の圧力を0.01~0.5MPa、好ましくは0.1~0.4MPaに低下させる。例えば、前記軽質化混合物の圧力は、0.02MPa、0.03MPa、0.04MPa、0.05MPa、0.06MPa、0.07MPa、0.08MPa、0.09MPa、0.1MPa、0.15MPa、0.2MPa、0.25MPa、0.3MPa、0.35MPa、0.4MPaまたは0.45MPaに減圧することができる。前記減圧ガス化部での加熱は、前記蒸気含有混合物の温度を例えば550~700℃、好ましくは550~650℃に上昇させる。例えば、前記減圧ガス化部での加熱は、前記蒸気含有混合物の温度を560℃、570℃、580℃、590℃、600℃、610℃、620℃、630℃、640℃、650℃、660℃、670℃、680℃または690℃に上昇させる。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記減圧ガス化部は減圧ガス化容器を含む。あるいは、前記減圧ガス化部は、管状反応器の部分を含むか、または管状反応器の部分である。
【0063】
いくつかの実施形態では、前記減圧ガス化部に入る原料の圧力を下げるために、前記軽質化部と前記減圧ガス化部との間に減圧手段が配置される。減圧可能な任意の減圧手段を使用することができる。好ましくは、前記減圧手段は減圧弁、圧力制御弁または絞り要素である。
【0064】
前記減圧ガス化部に続いて分解部がある。前記減圧ガス化部から得られた前記蒸気含有混合物(ガス状混合物)は、前記分解部に送られる。前記原料は前記分解部で水蒸気分解処理を受ける。前記分解部では、材料は分解温度に加熱される;好ましくは、前記材料は710~900℃、好ましくは770~880℃、より好ましくは780~820℃の温度に加熱される;前記分解部では、圧力は0.01~0.5MPa、好ましくは0.1~0.4MPaである。例えば、前記材料は、前記分解部において、720℃、730℃、740℃、750℃、760℃、770℃、780℃、790℃、800℃、810℃、820℃、830℃、840℃、850℃、860℃、870℃、880℃または890℃に加熱される。例えば、圧力は、前記分解部において0.02MPa、0.03MPa、0.04MPa、0.05MPa、0.06MPa、0.07MPa、0.08MPa、0.09MPa、0.1MPa、0.15MPa、0.2MPa、0.25MPa、0.3MPa、0.35MPa、0.4MPaまたは0.45MPaとすることができる。
【0065】
当技術分野で知られているように、前記分解部での前記材料の滞留時間は比較的短い。当業者であれば、必要な滞留時間を適切に選択することができる。好ましくは、前記分解部における前記材料の滞留時間は0.1~0.5秒である。例えば、前記分解部における前記材料の滞留時間は、0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒または0.5秒とすることができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、前記分解部はクラッカーを含む。前記クラッカーは、スチームクラッカーのような、当該技術分野において一般的に知られているクラッカーであってよい。いくつかの実施形態において、前記分解部は、管状反応器の部分を含むか、または管状反応器の部分である。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記分解反応装置は、前記分解部の後に急冷部をさらに含むことができる。分解後に得られる分解生成物を急冷することは当技術分野で知られている。前記急冷部は、分解によって得られた分解生成物を迅速に冷却するために使用され、分解生成物が高温に長時間とどまることによるコーキングを防止する。前記急冷部は、当該技術分野において一般的に知られている装置を使用することができる。いくつかの実施形態において、本願発明の急冷部では、例えば0.1秒以内に、前記分解生成物の温度は550℃以下、好ましくは450~550℃に冷却され、圧力は0.01~0.5MPa、好ましくは0.1~0.4MPaとする。
【0068】
好ましくは、本願の分解反応装置は、1つ以上の反応管を含むことができ、各反応管は、前記順次連結された予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部を含む。すなわち、前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部はそれぞれ反応管の一部を形成し、順次連結されて反応管全体を形成する。このような実施形態では、前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部は、それぞれ管状とすることができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部はそれぞれ反応管の一部であり、それぞれが同じ管径を有する。あるいは、前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部はそれぞれ反応管の一部であるが、それらの管径は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0070】
前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部を順次接続した反応管は、各部の長さおよび径を適宜選択および設定することができ、例えば、流速、体積、滞留時間等に基づいて選択することができる。
【0071】
本願では、前記反応管の配置は、水平型、垂直型、吊り下げ型、あるいは当該技術分野で採用できる他の配置とすることができる。
【0072】
好ましくは、本願では、前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部の温度を順次上昇させる。好ましくは、前記予熱部、軽質化部、分解ガス化部および分解部の内の隣接する2つの部間の温度上昇は、100~250℃、好ましくは150~250℃の範囲である。例えば、好ましくは、前記予熱部、軽質化部、分解ガス化部および分解部の温度は、それぞれ150~250℃、350~450℃、550~650℃および770~880℃である。
【0073】
本願において、前記分解反応装置の加熱様式に制限はない。例えば、加熱は熱交換によって行うことができる。また、例えば、電気加熱または可燃性ガスの燃焼により加熱することもできる。本願において、前記可燃性ガスの種類は限定されず、当該技術分野で公知の様々な可燃性ガスを使用することができる。いくつかの実施形態において、前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部は、各部の温度を制御する温度制御手段をそれぞれ備える。
【0074】
いくつかの実施形態において、好ましくは、前記予熱部は、2層管もしくは2層を超える層を有する管を含むか、または2層管もしくは2層を超える層を有する管である。前記予熱部が2層管または2層を超える層を有する管である場合、前記分解原料および水は、異なる管または管層に配置することができる。
【0075】
好ましくは、螺旋状突起は、2層管または2層を超える層を有する管の、最も内側の層の管の側の内壁および/または壁の外側、および/または中層管の壁の内側および/または壁の外側、および/または最も外側の層の管の壁の内側に配置される。
【0076】
いくつかの実施形態では、好ましくは、隣接する管層の螺旋状突起は、反対の螺旋方向を有する。例えば、2層管の場合、前記内層管の壁の内側にある螺旋状突起が時計回りであれば、前記外層管の壁の内側にある螺旋状突起は反時計回りであり、その逆も同様である。
【0077】
前記予熱部が2層を超える(層を有する)管である場合、前記予熱部は3層、4層、5層、6層などの管とすることができる。本願では、最も内側の管の内部空間を第1管層と呼び、内側から外側に向かって、第1管層、第2管層、第3管層、第4管層などと命名する。本発明では、前記分解原料と水とは、それぞれ前記予熱部の異なる管層に入る。例えば、前記予熱部が2層管を含むかまたは2層管である場合、水は内層管(第1管層)に供給され、前記分解原料は外層管(第2管層)に供給され得る。例えば、前記予熱部が3層を有する管を含む場合、前記分解原料は第1管層および第3管層に供給することができ、水は第2管層(即ち、中間管層)に供給することができる。好ましくは、水は最も外側の管層には供給されない。
【0078】
いくつかの実施形態では、螺旋状突起は、各管層の外側管の壁の内側(内面)に配置されている。
【0079】
本願では、前記予熱部を外部から加熱することができる。反対の螺旋方向の螺旋状突起を有する2層管の場合、水は内層管(前記第1管層)に供給され、前記分解原料は外層管(前記第2管層)に供給されるので、熱伝達の順序は外層管の壁、前記分解原料、内層管の壁および水となる。前記予熱部では、螺旋状突起の作用により、前記分解原料と水とが反対方向の旋回流を発生させ、管壁近傍の滞留層の厚さが減少し、管内の物質移動と熱移動とが大幅に促進される。前記予熱部を出て前記軽質化部に入るとき、反対方向の旋回流を持つ前記分解原料と水とが互いに完全に接触し、軽質化反応の速度が大幅に向上する。また、水による前記反応管の外管壁の腐食が大幅に減少される。なぜなら、前記軽質化部の先頭部分に入る水は前記反応管の中心にあり、前記外管壁から遠く、その温度は徐々に臨界温度近くに、または臨界温度を超えて上昇されるからである。
【0080】
本願において、前記2層管または2層管を超える層を有する管の各管層の厚さは、適宜設定することができる。例えば、各管層の厚さは、前記予熱部を通過する前記分解原料および水の量および流速に応じて適切に設定することができる。いくつかの実施形態では、2層管の外層管の内径に対する内層管の内径の比は、0.1~0.9、好ましくは0.4~0.6である。例えば、前記2層管の外層管の内径に対する内層管の内径の比は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8または0.9であり得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記螺旋状突起は、0.1~20、好ましくは1~10の、直径に対する螺旋高さの比(螺旋直径に対する螺旋1回転の高さの比)を有する。例えば、前記直径に対する高さの比は、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19であり得る。いくつかの実施形態において、前記螺旋状突起の直径に対する突起高さの比(最も内側の管については、管の内径に対する螺旋状突起の高さの比であり、他の管層については、管層の外層の内径と内層の外径との差に対する螺旋状突起の高さの比である)は、0.01~0.5、好ましくは0.02~0.1である。例えば、直径に対する突起高さの比は、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.3または0.4とすることができる。
【0082】
前記螺旋状突起の断面は、長方形、正方形、三角形、台形、半円形、半楕円形など、一般に知られている任意の形状をとることができる。前記螺旋状突起の高さは、管壁から螺旋状突起の断面の最高点までの高さとして定義される。
【0083】
前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部の体積は、当業者によって適切に選択され得る。いくつかの実施形態において、前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部の体積比は、0.1~10:0.1~1000:0.1~10:1、好ましくは0.1~7:1~300:0.1~7:1、好ましくは0.1~5:1~300:0.1~7:1、好ましくは0.1~0.5:1~300:0.1~0.5:1である。例えば、前記分解反応装置が反応管を含み、各反応管が順次接続している予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部を含んでいる場合、各部の管長および/または管径を設定することにより、体積を調節することができる。
【0084】
好ましくは、本発明は、順次接続された加圧部、予熱部、軽質化部、減圧ガス化部、分解部ならびに急冷部、分解原料入口および分解生成物出口を含む分解反応装置を提供する:前記分解原料入口は前記予熱部に配置され、前記分解生成物出口は前記急冷部に配置され、前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部、分解部および急冷部はそれぞれ、運転中の各部の温度を制御する温度制御手段を備え、前記減圧ガス化部に流入する原料の圧力を減圧するために、減圧手段が、前記軽質化部と減圧ガス化部との間に配置され、前記予熱部の構造が2層管であり、該2層管の内層管の壁の内側および/または外層管の壁の内側に螺旋状突起が配置される。
【0085】
図2は、本願で使用可能な2層管の予熱部を示している。該2層管は内層管10と外層管11を含む。内層管10の内径の外層管11の内径に対する比は0.1~0.9、好ましくは0.4~0.6とすることができる。前記内層管の内側と前記外層管の内側には、それぞれ螺旋状突起が設けられている。前記内層管の内側に設けられた螺旋状突起は、前記外層管の内側に設けられた螺旋状突起とは螺旋方向が反対である。前記内層管内側の螺旋状突起の直径に対する螺旋高さの比(螺旋直径に対する螺旋1回転の高さの比)は、0.1~20、好ましくは1~10である。前記外層管の内層側の螺旋状突起の直径に対する螺旋高さの比(螺旋直径に対する螺旋1回転の高さの比)は、0.1~20、好ましくは1~10である。前記内層管内側の螺旋状突起の直径に対する突起高さの比(管内径に対する突起高さの比)は0.01~0.5、好ましくは0.02~0.1である。前記外層管の内側の螺旋状突起の直径に対する突起高さの比(前記外層管の内径と前記内層管の外径との差に対する突起高さの比)は、0.01~0.5、好ましくは0.02~0.1である。
【0086】
図3は、本願で使用できる3層管の予熱部を示している。該3層管は、管壁の各層の内側に螺旋状突起を備えている。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態において、前記予熱部が2層管もしくは2層を超える層を有する管を含むかまたは2層管もしくは2層を超える層を有する管である場合、分解原料および水は、前記予熱部の異なる管層にそれぞれ供給することができる。例えば、2層管の場合、分解原料および水は、前記予熱部の内層管および内層管と外層管との間の管層にそれぞれ供給することができる。外部加熱の場合、前記予熱部では、水は内層管を流れ、前記分解原料は内層管と外層管との間を流れる。熱伝達の順序は、外層管、分解原料、内層管、および水である。水による反応管の外層管壁の腐食は大幅に減少される。なぜなら、前記軽質化部の先頭部分に入る水は反応管の中心部にあり、外層管壁から遠く、その温度は徐々に臨界温度近くに、または臨界温度を超えて上昇されるからである。また、螺旋状突起がある場合、分解原料と水とは螺旋状突起の作用で反対方向の旋回流を生じ、管壁付近の滞留層の厚さが減少し、管内の物質移動と熱移動とが大幅に促進される。前記予熱部を出て前記軽質化部に入るとき、反対の旋回流反応を持つ分解原料と水とは互いに完全に接触し、軽質化反応の速度を大幅に向上させる。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態において、前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部、急冷部および分解部の体積比は、0.1~10:0.1~1000:0.1~10:0.1~10:1、好ましくは0.1~0.5:1~300:0.1~0.5:0.1~0.5:1である。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態において、前記減圧手段の具体的な形態は、減圧の目的を達成できる限り、限定されない。好ましくは、前記減圧手段は、減圧弁、圧力制御弁または絞り要素とすることができる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態では、前記加圧部は加圧装置を備える。好ましくは、前記加圧装置はポンプである。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態において、前記分解反応装置は、1つ以上の反応管を含む。具体的には、各反応管は、順次接続される加圧部、予熱部、軽質化部、減圧ガス化部、分解部、および任意に急冷部を備えて配置される。前記反応管の配置は、水平型、垂直型、または吊り下げ型があり得る。
【0092】
本発明において、前記分解反応装置の加熱方法は特に限定されない。例えば、電気加熱により加熱してもよいし、可燃性ガスをボトムバーナーで燃焼させることにより加熱してもよい。本発明において、前記可燃性ガスの種類は特に限定されず、当該技術分野で公知の利用可能な種々の可燃性ガスを使用することができる。前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部は、それぞれ、運転中に各部の温度が順次上昇するように制御する温度制御手段を備えることができ、その温度上昇は150~250℃の範囲であることが好ましい。例えば、前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部、分解部および急冷部は、各々温度制御手段を備え、運転中に各部の温度がそれぞれ150℃~250℃、350~450℃、550~650℃、770~880℃、450~550℃となるように制御する。
【0093】
本発明において、ある部で得られた生成物を分離し、生成物の一部を次の部に送って後の処理を続けることができるが、これも本発明の保護範囲に入る。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記分解反応装置が(複数の)反応管を含み、各反応管が前記順次接続された予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部を含む場合、任意の2つの部間に生成物の分離操作はなく、即ち、上流部の全ての生成物は、上流部に続いて下流部に供給される。
【0095】
本発明の具体的な実施形態によれば、図1を参照すると、分解反応装置が示されている。前記分解反応装置は、加圧部(この実施形態では、加圧は、加圧装置、すなわち、図1の水ポンプ1および原油ポンプ2を介して達成される)と、順次接続される予熱部4と、軽質化部5と、減圧ガス化部6と、分解部7および急冷部8と、入口3と、分解生成物出口9とを含む。前記入口3は前記予熱部4に配置され、前記分解生成物出口9は前記急冷部8に配置される。任意に、前記予熱部4、軽質化部5、減圧ガス化部6、分解部7および急冷部8はそれぞれ、運転中の各部の温度を制御する温度制御手段を備えている。前記軽質化部と減圧ガス化部との間には、前記減圧ガス化部に流入する軽質化混合物の圧力を減圧する減圧手段が配置されている。図に示すように、前記予熱部4、軽質化部5、減圧ガス化部6、分解部7および急冷部8は、管状の反応器を形成している。
【0096】
本発明の別の態様は、分解によりオレフィンを生成する方法を提供し、この方法は以下のステップを含むことを特徴とする:
(1)分解原料および水を加圧するステップ;
(2)前記加圧された分解原料および水を第1の加熱(予熱)に供するステップ;
(3)前記第1の加熱に供された分解原料と水とを第2の加熱に供し、水の存在下で前記分解原料を軽質化し、軽質化混合物を得るステップ;
(4)前記軽質化混合物を減圧下でガス化し、第3の加熱に供して第3の加熱混合物を得る(減圧ガス化)ステップ;および
(5)前記第3の加熱混合物を水蒸気の存在下、分解温度で分解し、オレフィンを含む分解生成物を得るステップ。
本発明の別の態様は、分解によってオレフィンを生成する方法を提供し、この方法は以下を含む:
(1)分解原料および水を加圧するステップ;
(2)前記加圧された分解原料および水を第1の加熱(予熱)に供するステップ;
(3)前記第1の加熱に供された分解原料と水とを第2の加熱に供し、水の存在下で前記分解原料を軽質化し、軽質化混合物を得るステップ;
(4)前記軽質化混合物を減圧下でガス化し、第3の加熱(減圧ガス化)に供し、水蒸気および前記分解原料の軽質化反応生成物を含む第3の加熱混合物を得るステップ;および
(5)前記第3の加熱混合物を水蒸気の存在下で分解して、オレフィンを含む分解生成物を得るステップ;および
(6)前記分解生成物を冷却するステップ。
いくつかの実施形態において、前記第1の加熱、第2の加熱、第3の加熱および分解の温度は、順次上昇される。好ましくは、ステップ(2)からステップ(5)まで、隣接するステップ間の温度上昇は150~250℃の範囲である。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態において、前記第1の加熱、第2の加熱、第3の加熱および分解の温度は順次上昇され、その上昇は150~250℃の範囲内、好ましくは150~250℃の範囲内である。いくつかの実施形態において、好ましくは、前記第1の加熱、第2の加熱、第3の加熱および分解の温度は、それぞれ150~250℃、350~450℃、550~650℃および770~880℃である。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態では、ステップ(1)において、前記分解原料に対する水の重量比は、0.3~10.5、好ましくは0.5~5である。例えば、前記分解原料に対する水の重量比は、0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3,3.5,4または4.5であり得る。
【0099】
本発明では、分解の前進反応によりモル数を増加させる。圧力の低下および水(反応条件下では水蒸気として)の添加により、炭化水素の分圧を低下させることができ、これが前進反応の促進と転化率の向上とに寄与する。
【0100】
本願において、前記分解原料は、原油、残渣油、および原油を処理して得られる重質炭化水素のうちの少なくとも1つを含むことができる。前記残渣油は、大気残渣油および真空残渣油を含み得る。本発明のいくつかの実施形態において、前記分解原料は原油である。
【0101】
本発明では、石油化学プロセスで一般的に使用される水を使用することができる。例えば、脱イオン水、リサイクル水、再生水等を使用することができる。
【0102】
前記加圧ステップ(ステップ(1))において、前記分解原料および水は、必要な圧力まで加圧される。いくつかの実施形態によれば、前記分解原料および水は、10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaに加圧される。いくつかの実施形態によれば、圧力は、15MPa,16MPa,17MPa,18MPa,19MPa,20MPa,21MPa,22MPa,23MPa,24MPa,25MPa,26MPa,27MPa,28MPa,29MPa,30MPa,31MPa,32MPa,33MPa,34MPa,35MPa,36MPa,37MPa,38MPaまたは39MPaであり得る。
【0103】
前記加圧ステップは、前記分解原料および水を送るためのパイプライン内で行うことができる。例えば、前記加圧は、前記分解原料および水を予熱ステップに送るパイプライン(複数可)内で行うことができる。前記加圧は、当該技術分野で公知の加圧装置によって行うことができる。好ましくは、前記加圧装置はポンプである。
【0104】
前記分解原料と水とが加圧された後、それらは予熱される、すなわち前記予熱ステップ(ステップ(2))。
【0105】
前記予熱ステップは、前記分解原料および水を含む材料を予熱するために使用される。前記予熱ステップにおいて、前記分解原料および水などの予熱される材料は、所望の温度、例えば350℃以下の温度まで加熱される。いくつかの実施形態では、前記予熱ステップは、前記材料を例えば150~250℃の温度に加熱する。例えば、前記予熱部は前記材料を150℃,160℃,170℃,180℃,190℃,200℃,210℃,220℃,230℃,240℃,250℃,260℃,270℃,280℃,290℃,300℃,310℃,320℃,330℃または340℃に加熱する。
【0106】
いくつかの実施形態において、前記予熱ステップは、加熱容器および/または熱交換器の使用を含む。加熱容器を使用する場合、前記加圧された分解原料および水が前記加熱容器に供給された後、前記分解原料および水は前記加熱容器内で所望の温度に加熱される。熱交換器を使用する場合、前記分解原料と水とは熱交換により所望の温度に加熱される。いくつかの実施形態において、前記予熱ステップは、管状反応器の部(すなわち、管状反応器の予熱部)であり得る。
【0107】
前記予熱ステップにおいて、前記材料(分解原料および水)の圧力は、10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaである。いくつかの実施形態において、前記予熱ステップにおける圧力は、前記加圧ステップにおける圧力と同じであり得る。
【0108】
本発明において、前記分解原料と水とを別々に加圧および予熱することができ、次いで、加圧および予熱された分解原料と加圧および予熱された水とを混合する。あるいは、前記分解原料と水とを別々に加圧することができ、前記加圧された分解原料と加圧された水とを混合して混合物を得、得られた混合物を所望の予熱温度まで加熱する。あるいは、前記分解原料を水と混合し、その混合物を加圧および予熱することもできる。例えば、前記分解原料および水を容器に添加して混合物を得、次いで前記容器内の混合物を加圧および予熱することができる。いくつかの実施形態では、ステップ(1)とステップ(2)を1つのステップにまとめることができる。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態において、加圧後、前記分解原料および水の圧力は:10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaである。本発明において、前記分解原料および水は、別々に、10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaに加圧され得る。本発明において、あるいは、前記分解原料と水とは混合され、10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaに加圧される。
【0110】
本発明において、前記加圧は、前記軽質化反応中、水と原油とを液体状態に保ち、水の近臨界状態または超臨界状態を達成するために行われ、この状態では、物質移動、熱移動、および反応のすべてが促進され、軽質化反応速度が速く、コークス化しにくい。
【0111】
本発明では、前記分解原料が高温に達するのが早すぎて、高温に長時間滞留することによるコーキングの発生を防止すると同時に、水が超臨界状態に達するのが早すぎて装置が腐食するのを防止するために、軽質化処理の前に予熱ステップを設ける。前記予熱ステップ(ステップ(2))では、第1の加熱の条件として、温度を350℃以下、好ましくは150~250℃に昇温すること、圧力を10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaとすることが含まれる。
【0112】
本願の方法では、前記予熱ステップの後に軽質化処理ステップが続く。本願において「軽質化」とは、超臨界水または超臨界水に近い水の温度および圧力での材料の処理を指す。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態において、ステップ(3)(軽質化処理ステップ)において、前記軽質化処理の条件としては、温度350~450℃、圧力10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaを含むことができる。前記軽質化処理の時間は、所望の軽質化処理生成物を得るために適切に選択することができる。例えば、前記軽質化ステップの処理時間は、0.2分~240分、好ましくは0.5分~60分、より好ましくは1~10分とすることができる。
【0114】
いくつかの実施形態において、前記軽質化部において、前記分解原料および水はさらに加熱され、例えば、300~540℃、好ましくは300~500℃、より好ましくは350~450℃の温度に加熱される。例えば、前記軽質化部において、前記分解原料および水は、310℃,320℃,330℃,340℃,350℃,360℃,370℃,380℃,390℃,400℃,410℃,420℃,430℃,440℃,450℃,460℃,470℃,480℃,490℃,500℃,510℃,520℃または530℃に加熱される。
【0115】
前記軽質化処理ステップでは、前記分解原料(原油など)と水とを超臨界水または超臨界水に近い水の温度および圧力下で反応(軽質化)させ、前記分解原料中の重質成分高分子の少なくとも一部を、より小さい分子に転化し、水蒸気熱分解の原料としてより適した状態にする。軽質化に必要な水は、前記分解段階中の希釈蒸気としても機能する。前記軽質化反応後に得られる混合物(軽質化混合物)は、水蒸気と前記分解原料の軽質化反応生成物とを含む。
【0116】
前記軽質化処理ステップでは、前記予熱ステップからの前記分解原料および水をさらに加熱し、例えば、350~450℃の温度に加熱する。前記軽質化処理ステップにおいて、前記分解原料および水の圧力は、10~40MPa、好ましくは15~30MPa、より好ましくは21~30MPaである。いくつかの実施形態において、前記軽質化処理ステップにおける圧力は、前記予熱ステップにおける圧力および/または前記加圧ステップにおける圧力と同じであり得る。
【0117】
本願の前記軽質化処理ステップでは、水は近臨界状態または超臨界状態にある。本願の前記軽質化処理ステップでは、前記分解原料(原油など)を近臨界状態または超臨界状態の水の存在下で反応させ、前記分解原料中の重質成分高分子の少なくとも一部を低分子に転化して軽質化混合物を得る。
【0118】
いくつかの実施形態において、前記軽質化処理ステップは、軽質化反応釜のような軽質化容器内で実施される。あるいは、前記軽質化処理ステップは、管状反応器(即ち、管状反応器の軽質化部)内で実施される。
【0119】
いくつかの実施形態では、複数の軽質化反応釜を直列または並列に接続することができる。一部の前記軽質化反応釜が反応物を前記分解ガス化部に排出しているとき、分解原料および水が一部の前記軽質化反応釜に供給され、一部の前記軽質化反応釜が軽質化反応を行って、本願方法の連続的で安定した運転を維持する。
【0120】
いくつかの実施形態において、前記加圧され予熱された分解原料および水は、軽質化処理ステップにおいて、350~450℃、21~30MPaの条件下で、1~120分間反応し、軽質化混合物を得る。
【0121】
本願の方法は、ガス状混合物を得るために、前記軽質化処理後に減圧ガス化ステップ(ステップ(4))をさらに含む。本発明のいくつかの実施形態において、オレフィン収率を増加させるために、ステップ(4)において、前記減圧は、前記軽質化反応後に得られる混合物の圧力を0.01~0.5MPa、好ましくは0.1~0.4MPaに低下させる。例えば、前記混合物の圧力を0.02MPa,0.03MPa,0.04MPa,0.05MPa,0.06MPa,0.07MPa,0.08MPa,0.09MPa,0.1MPa,0.15MPa,0.2MPa,0.25MPa,0.3MPa,0.35MPa,0.4MPaまたは0.45MPaに減圧することができる。
【0122】
本願発明の方法における前記減圧ガス化ステップ(ステップ(4))では、前記軽質化反応後に得られる前記混合物(軽質化混合物)の圧力は低下するが、温度は低下しないことに留意すべきである。好ましくは、前記軽質化反応後に得られた前記混合物の減圧中または減圧後に、前記軽質化反応後に得られた前記混合物の温度がさらに上昇するように、好ましくは550~650℃に上昇するように、第3の加熱を行う。前記減圧ガス化部での加熱により、前記混合物の温度は、例えば550~700℃、好ましくは550~650℃に上昇する。例えば、前記減圧ガス化部での加熱は、前記混合物の温度を560℃,570℃,580℃,590℃,600℃,610℃,620℃,630℃,640℃,650℃,660℃,670℃,680℃または690℃に上昇させる。
【0123】
いくつかの実施形態において、前記減圧ガス化ステップは、減圧ガス化容器内で実施される。あるいは、前記減圧ガス化ステップは、管状反応器(すなわち、前記管状反応器の減圧ガス化部)内で実施される。
【0124】
本願の方法では、減圧ガス化の後、減圧ガス化によって得られた前記混合物(ガス状混合物)を水蒸気分解に供する(ステップ(5)、分解ステップ)。
【0125】
本発明の方法では、前記分解反応は吸熱が強く、モル数が増加し、副反応が多い反応系である。したがって、高温、低圧、および短い滞留時間は、前記分解反応によるオレフィンの生成を容易にするプロセス条件である。
【0126】
水蒸気分解は、当該技術分野で知られている操作である。当業者は、前記分解される原料および所望の分解生成物に基づいて、前記分解操作に必要な条件を合理的に選択することができる。例えば、具体的には、前記水蒸気分解ステップ(ステップ(5))において、前記分解反応の条件としては、温度770~880℃、好ましくは780~820℃、圧力0.01~0.5MPa、好ましくは0.2~0.3MPa、滞留時間0.1~0.5秒が含まれる。前記分解部では、前記材料は分解温度に加熱され、好ましくは、前記材料は710~900℃、好ましくは770~880℃、より好ましくは780~820℃の温度に加熱される。前記分解部では、前記圧力は0.01~0.5MPa、好ましくは0.1~0.4MPaである。例えば、前記分解部では、前記材料は、720℃、730℃、740℃、750℃、760℃、770℃、780℃、790℃、800℃、810℃、820℃、830℃、840℃、850℃、860℃、870℃、880℃または890℃に加熱される。例えば、前記分解部の圧力は、0.02MPa、0.03MPa、0.04MPa、0.05MPa、0.06MPa、0.07MPa、0.08MPa、0.09MPa、0.1MPa、0.15MPa、0.2MPa、0.25MPa、0.3MPa、0.35MPa、0.4MPaまたは0.45MPaとすることができる。例えば、前記分解部における前記材料の滞留時間は、0.1秒、0.2秒、0.3秒、0.4秒または0.5秒とすることができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、前記分解ステップはクラッカーで行われる。前記クラッカーは、スチームクラッカーのような、当該技術分野において一般的に知られているクラッカーであり得る。いくつかの実施形態において、前記分解ステップは、管状反応器(すなわち、前記管状反応器の分解部)において実施される。
【0128】
任意に、本願の方法はまた、前記分解ステップの後に冷却(急冷)ステップを含むことができる。分解後の前記分解生成物の冷却(急冷)は当該技術分野で知られている。
【0129】
当業者であれば、前記分解生成物に基づいて、冷却に必要な条件を合理的に選択することができる。本発明のいくつかの実施形態では、前記冷却ステップ(ステップ(6))において、0.1秒以内に、冷却により分解生成物の温度を550℃以下にし(例えば、450~550℃に冷却し)、圧力を0.01~0.5MPa、好ましくは0.2~0.3MPaにする。
【0130】
いくつかの実施形態では、前記急冷ステップは、当該技術分野で一般的に知られている急冷装置で行うことができる。
【0131】
本発明において、本願の方法は、本願の上記分解反応装置において実施することができる。ここで、前記加圧部は、前記分解原料および水を加圧するために使用される。前記予熱部は、前記加圧された分解原料および水を前記第1の加熱に供するために使用される。前記軽質化部は、前記第1の加熱に供された分解原料および水を前記第2の加熱に供し、前記分解原料を超臨界水または近臨界水の存在下で軽質化反応に供する。前記減圧ガス化部は、前記軽質化反応後に得られた前記混合物を減圧し、水蒸気と前記分解原料の軽質化反応生成物とを含む第3の加熱混合物を得るための前記第3の加熱を行うために使用される。前記分解部は、前記混合物を水蒸気の存在下で分解反応させるために使用される。前記急冷部は、前記分解反応後に得られる前記分解生成物を急冷するために使用され、前記反応原料が高温に長時間滞留することによるコーキングを防止する。
【0132】
好ましい実施形態によれば、本願発明の方法のステップ(2)~(5)(即ち、前記予熱ステップ、軽質化処理ステップ、減圧ガス化ステップおよび分解ステップ)は、上記のような反応管を含む分解反応装置において実施され、ここで、前記反応管は、予熱部、軽質化部、減圧ガス化部および分解部を含み、これらは順次接続されて、前記予熱ステップ、軽質化ステップ、減圧ガス化ステップおよび分解ステップをそれぞれ行う。より好ましくは、反応管を含む前記分解反応装置を使用する場合、予熱ステップ、軽質化処理ステップ、減圧ガス化ステップおよび分解ステップの各ステップ間で生成物を分離する操作は行わず、すなわち、上流ステップからの前記生成物は全て次の下流ステップに供給される。
【0133】
当業者には理解されるように、本願において上述した分解反応装置は、本願の方法において使用することができる。従って、本願の装置に関連して記載した特徴は、適用可能であれば、本願の方法にも適用することができ、逆もまた同様である。
【0134】
本願において、各部またはステップに提供される温度または圧力範囲は、前記部またはステップにおいて達成されると予想される温度または圧力である。しかし、当業者に知られているように、温度値または圧力値の達成にはプロセスが必要である。例えば、前記予熱ステップが前記材料を200℃の温度に加熱する場合、前記材料の温度は加熱開始時には200℃より低く、加熱が進むにつれて200℃まで上昇する。例えば、管状反応器(管状予熱部)で前記予熱ステップを行う場合、前記管状予熱部の入口では前記材料の温度は200℃より低く、前記材料が前記管内を流れるにつれて温度が上昇し、200℃に達する。例えば、2層管の場合、管内層および管外層の材料は前記予熱部で徐々に加熱され、前記予熱部出口での平均温度は200℃に達する。
【0135】
本発明の第3の態様は、分解によるオレフィンの調製における本願の上記分解反応装置の使用を提供する。例えば、本願の前記分解反応装置は、原油などの重質原料の分解、好ましくは水蒸気分解に使用することができる。
【0136】
本発明では、圧力は絶対圧である。
本発明において、分解によって調製される低級オレフィンには、エチレン、プロピレン、およびブタジエンが含まれる。
〔実施例〕
【0137】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
以下の実施例および比較例で使用した原油の組成を表1に示す。組成は、模擬蒸留分析法ASTM D5307に従って測定した。測定にはAgilent 7890ガスクロマトグラフを用いた。
【表1】

〔軽質化の実施例〕
【0138】
管状軽質化反応装置および攪拌型反応器を用いて、それぞれ原油および水を超臨界水または超臨界水に近い水で軽質化した。その結果を表Aおよび表Bに示す。前記反応装置および反応条件は、軽質化原油a(表2の実施例1の予熱部および軽質化部から構成された管状軽質化反応装置;水の油に対する比1.5;予熱部温度250℃、圧力27MPa;軽質化部温度440℃、圧力27MPa、滞留時間15分);軽質化原油b(反応装置は軽質化原油aと同じ;水の油に対する比1.5、予熱部温度250℃、圧力24MPa、軽質化部温度430℃、圧力24MPa、滞留時間15分);軽質化原油c(110mL攪拌槽型軽質化反応器、水量28g、水の油に対する比1.5、430℃、32MPa、攪拌速度600r/min、反応時間15分);軽質化原油d(表2の実施例1の予熱部と軽質化部から構成されるが、螺旋構造を有さない管状軽質化反応装置、水の油に対する比1.5、予熱部温度250℃、圧力30MPa;軽質化部430℃、30MPa、滞留時間15分)。
【表2】

【表3】
【0139】
表Aの結果から、原油中の軽質成分はそれぞれ約12%から32%、24%、20%および12%に増加し、原油中の重質成分は約40%から4%、8%、19%、25%に減少した。これに対応して、原油中の軽質成分は166.7%、100%、66.7%、および0%増加し、原油中の重質成分は90%、80%、52.5%および37.5%減少した。
軽質化処理前後の原油の模擬蒸留データから、原油が軽質化反応を受けた後、重質成分の一部が軽質成分に転化されることが分かる。
〔実施例1-6〕
【0140】
本願の分解反応装置で、原油と水とから低級オレフィンを生成した。前記分解反応装置は、順次接続される水ポンプ、原油ポンプ、入口、予熱部、軽質化部、減圧ガス化部、分解部および急冷部、並びに分解生成物出口を含む。前記予熱部、軽質化部、減圧ガス化部、分解部、および急冷部は、管状反応器として配置されている。前記予熱部の構造は2層管であり、2層管の壁の内側には反対方向に螺旋状突起が設けられている(断面形状は長方形、幅は1mm)。分解原料と水とを前記分解反応装置に供給し、加圧、第1の加熱(予熱)、第2の加熱(軽質化)、第3の加熱(減圧ガス化)、分解、および冷却を順次行った。水ポンプと原油ポンプとを使用して前記分解原料と水とを加圧し、前記予熱部を使用して前記加圧された分解原料および水の第1の加熱を行った;前記分解原料と水とを前記入口から前記予熱部に供給し、水は前記予熱部の前記内層管を通って流れ、前記分解原料は前記予熱部の内層管と外層管との間を通って流れ、前記軽質化部を使用して、第1の加熱に供された分解原料および水の第2の加熱を行い、水の存在下で前記分解原料に軽質化反応を行わせた;減圧ガス化部を使用して、軽質化反応後に得られた混合物を減圧した後、第3の加熱を行い、水蒸気と分解原料の軽質化反応生成物とを含む第3の加熱混合物を得た。前記分解部は、第3の加熱混合物を水蒸気の存在下で分解反応させるために使用され、前記急冷部は、前記分解反応後に得られた前記分解生成物を冷却するために使用され、前記分解反応生成物は、前記急冷部の分解生成物出口から取り出された。
【0141】
前記分解反応装置の仕様を表2に、各部の処理パラメータを表3に示す。原油と水とを原料として、特定の原料と水との重量比、各部の特定の温度、各部の特定の圧力の条件で分解を行った。分解生成物(オレフィン)の結果を表4に示す。
【0142】
実施例1~6では、分解部は内径10mm、長さ1mの管である。
実施例1~6では、各部の管内径は10mmであるが、例外として実施例6の軽質化部の管内径は32mmである。
【表4】

【表5】

比較例1
【0143】
エチレン工業装置で公知のSRT-IV型分解反応装置を用い、表1に示す組成の原油を原料として、原油に対する水の重量比を0.75、前記分解反応装置の輻射部の出口温度を780℃、圧力を0.27MPa、滞留時間を0.2秒として分解反応を行った。分解生成物を回収し、オレフィン含有量を表4に示した。
【0144】
前記分解反応装置の運転サイクルとは、分解反応装置が運転を開始してから、コークス燃焼のために運転を停止するまでの時間をいう。
エチレン収率(wt%)=(分解で得られたエチレンの重量/供給された原油の重量)×100%
プロピレン収率(wt%)=(分解で得られたプロピレンの重量/供給された原油の重量)×100%
ブタジエン収率(wt%)=(分解で得られたブタジエンの重量/供給された原油の重量)×100%
オレフィン3種の合計収率(wt%)=エチレン収率+プロピレン収率+ブタジエン収率
具体的な結果は表4にまとめた。
【表6】
【0145】
表4の結果からわかるように、本発明の技術的解決手段を用いた実施例1~6では、得られたエチレン、プロピレン、およびブタジエンの収率が高く、3種のオレフィンの合計収率も高く、装置の運転時間も長かった。本発明の技術的解決手段を採用しない比較例1では、得られたエチレン、プロピレンおよびブタジエンの収率が低く、3種のオレフィンの合計収率も低かった。また、装置の運転サイクルは12時間しか続かず、反応管のコーキングが激しすぎてコークス焼却せざるを得なかった。
【0146】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術的概念の範囲内において、他の任意の好適な態様における種々の技術的特徴の組み合わせを含め、本発明の技術的解決策に多くの単純な変更を加えることができる。これらの単純な修正および組み合わせも、本発明により開示されたとみなされるべきであり、すべて本発明の保護範囲に包含される。
〔符号の説明〕
1 水ポンプ
2 原油ポンプ
3 分解原料入口
4 予熱部
5 軽質化部
6 減圧ガス化部
7 分解部
8 急冷部
9 分解生成物出口
10 内層管
11 外層管
12 外層管の壁の内側の螺旋状突起
13 内層管の壁の内側の螺旋状突起
【図面の簡単な説明】
【0147】
図1図1は、本発明の一実施形態による分解反応装置の概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による分解反応装置の予熱部の構造透視図である。
図3図3は、本発明の別の実施形態による分解反応装置の予熱部の構造透視図である。
図1
図2
図3
【国際調査報告】