(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】デンドライト安定性が改善されたリチウムイオン伝導性材料
(51)【国際特許分類】
C03C 10/02 20060101AFI20241010BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241010BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241010BHJP
【FI】
C03C10/02
H01M10/0562
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525325
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022080001
(87)【国際公開番号】W WO2023073057
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】102021128377.9
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ロイケル
(72)【発明者】
【氏名】ニナ ホインキス
(72)【発明者】
【氏名】イェアク シューマッハー
(72)【発明者】
【氏名】マイケ シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ロータース
【テーマコード(参考)】
4G062
5H029
【Fターム(参考)】
4G062AA11
4G062BB01
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4G062DA03
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4G062MM23
4G062NN24
4G062PP09
5H029AJ12
5H029AM12
5H029HJ01
(57)【要約】
本発明は、デンドライト安定性(デンドライトの形成に対する安定性)が改善されたリチウムイオン伝導性材料、特にガラスセラミック、ならびに使用および製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶相および非晶質相を含むリチウムイオン伝導性材料であって、前記リチウムイオン伝導性材料は、0.5mA/cm
2超の臨界電流密度を有する、リチウムイオン伝導性材料。
【請求項2】
前記非晶質相が、Li
2Oと、SiO
2、B
2O
3、Al
2O
3、P
2O
5およびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される少なくとも1つのガラス形成剤とを含み、前記リチウムイオン伝導性材料の総重量に対するガラス形成剤の含有量が、少なくとも0.05重量%であり、前記ガラス形成剤の総重量に対するSiO
2およびP
2O
5の合計割合が、少なくとも25重量%である、請求項1記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項3】
前記ガラス形成剤の総重量に対する前記SiO
2の割合が、少なくとも25重量%である、請求項2記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項4】
前記リチウムイオン伝導性材料が、ガラスセラミックである、請求項1から3までのいずれか1項記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項5】
前記結晶相が、主結晶相を含み、前記主結晶相が、少なくとも50重量%の前記結晶相の割合を有し、前記主結晶相が、立方晶系で存在する、請求項1から4までのいずれか1項記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項6】
前記結晶相が、主結晶相を含み、前記主結晶相が、少なくとも50重量%の前記結晶相の割合を有し、前記主結晶相が、ガーネット構造を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項7】
前記主結晶相が、ランタンジルコン酸リチウム(LLZO)を含む、請求項5または6記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項8】
前記主結晶相が、分子式Li
7-3x+y-zAl
xM
y
IIM
3-y
IIIM
2-z
IVM
z
VO
12±δを有し、M
IIは、1つ以上の2価のカチオンを含み、M
IIIは、1つ以上の3価のカチオンを含み、M
IVは、1つ以上の4価のカチオンを含み、M
Vは、1つ以上の5価のカチオンを含み、x+z>0、y<1およびδ<0.5である、請求項5から7までのいずれか1項記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項9】
前記非晶質相中のLi
2Oの割合が、前記リチウムイオン伝導性材料の総重量に対して0.05~5.00重量%である、請求項1から8までのいずれか1項記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項10】
前記リチウムイオン伝導性材料中の前記非晶質相の割合が、5重量%未満である、請求項1から9までのいずれか1項記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載のリチウムイオン伝導性材料の製造方法であって、以下の工程:
・ 出発材料を溶融する工程、
・ 前記溶融物を冷却する工程
を含む、方法。
【請求項12】
固体リチウムイオン電池における、特にセパレータとしての、請求項1から10までのいずれか1項記載のリチウムイオン伝導性材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンドライト安定性(デンドライトの形成に対する安定性)が改善されたリチウムイオン伝導性材料、特にガラスセラミック、ならびに使用および製造方法に関する。
【0002】
固体リチウムイオン電池(英語表記:All-solid-state batteries(ASSB))は、その高いエネルギー密度と安全性から、エネルギー貯蔵技術/エレクトロモビリティの将来を担うものと考えられている。この技術革新の中心は、液体電解質を固体イオン伝導性セパレータに置き換えることであり、セパレータ自体がリチウムに対して安定であれば(例えば、ランタンジルコン酸リチウム(LLZO)を使用する場合)、特に、負極材料としてリチウム金属を使用することもできる。しかし、充電中に、負極に析出したLiがセパレータに向かって正極側まで成長することがある。これをデンドライト形成と呼ぶ。このようなデンドライトが形成されると、短絡が発生する。充電時の電流密度が高いほど、望ましくないデンドライトが形成されやすくなる。したがって、電流密度が高い場合にもデンドライトの形成を抑制する、あるいは臨界電流密度(英語表記:Critical Current Density(CCD))が高いセパレータ材料を提供する必要がある。
【0003】
したがって、先行技術の欠点を克服することが本発明の課題である。この課題は、特許請求の範囲の主題によって解決される。特に、この課題は、結晶相および非晶質相を含むリチウムイオン伝導性材料であって、該リチウムイオン伝導性材料は、0.5mA/cm2超の臨界電流密度を有する、リチウムイオン伝導性材料によって解決される。
【0004】
リチウムイオン伝導性結晶相、例えばLi安定LLZO(特にTaまたはAlドープ)と、非晶質相、特に焼結セパレータの粒界における非晶質相とを組み合わせることにより、このような非晶質相を含まない材料、あるいはガラス形成剤(純粋なLi2O)を含まない非晶質相、あるいは結晶相および非晶質相の総重量に対する、すなわちリチウムイオン伝導性材料の総重量に対するガラス形成剤の含有量が低い材料と比較して、CCDを著しく増加させることができる。ガラス形成剤含有量は、有利には、リチウムイオン伝導性材料の総重量に対して少なくとも0.05重量%とすることができる。
【0005】
非晶質相は特に、非晶質相が、(Liイオン伝導率のための)Li2Oに加えて、少なくとも1つのガラス形成剤(特に、SiO2、Al2O3、B2O3、P2O5から選択されるもの)を含み、その際、SiO2および/またはP2O5は、必ず含まれており、ガラス形成剤の総重量に対するSiO2およびP2O5の合計の割合が、少なくとも25重量%であり、すなわち、それぞれ重量%単位で、(SiO2+P2O5)/(SiO2+B2O3+Al2O3+P2O5)≧0.25である。このSiO2および/またはP2O5の最低含有量は、非晶質相(ガラス相とも呼ばれる)の安定化に有利である。B2O3は、ガラス相の相分離を招きかねず、その場合にはCCDに対するプラスの効果が得られないため、単独のガラス形成剤としては好ましくない。Al2O3も同様に、少量のAl2O3が結晶相に溶解しかねず、それにより非晶質相の生成が困難になり、さらには多量のAl2O3が望ましくない二次相を生成するおそれがあるため、単独のガラス形成剤としては好ましくない。
【0006】
Nb2O5、Ta2O5、PbO、Bi2O3、GeO2、SeO3、TeO3、Sb2O3またはAs2O3のような異種ガラス形成剤は、本発明の趣意での非晶質相の生成には有効ではなく、なぜならば、Nb2O5およびTa2O5の場合は結晶相に溶解し、PbO、Bi2O3、GeO2、SeO3、TeO3、Sb2O3およびAs2O3の場合は多価であるためリチウム金属と接触して還元され、CCDが低下するためである。リチウムイオン伝導性材料、特にガラスセラミック中の多価元素の量、特にPbO、Bi2O3、GeO2、SeO3、TeO3、Sb2O3およびAs2O3の割合の合計は、好ましくは0.5重量%未満、例えば最大でも0.2重量%または最大でも0.1重量%であることが望ましい。リチウムイオン伝導性材料は、例えば、PbO、Bi2O3、GeO2、SeO3、TeO3、Sb2O3および/またはAs2O3を含まなくてもよい。
【0007】
非晶質相の組成は、LLZO結晶との望ましくない相互作用(例えば、LLZOの、伝導性の低い正方晶系形態への変態)が生じないように選択することができる。例えば、非晶質相のLi2O含有量が高すぎると、立方晶系形態から、伝導性の低い正方晶系形態のLLZOへの変態が生じる場合がある。したがって、非晶質相のLi2O含有量は、リチウムイオン伝導性材料の総重量に対して、例えば、最大でも5.00重量%、最大でも4.50重量%、最大でも4.00重量%、または最大でも3.50重量%に制限することができる。非晶質相のLi2O含有量は、リチウムイオン伝導性材料の総重量に対して、例えば、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.20重量%、少なくとも0.40重量%または少なくとも0.60重量%とすることができる。非晶質相のLi2O含有量は、リチウムイオン伝導性材料の総重量に対して、例えば、0.05~5.00重量%、0.20~4.50重量%、0.40~4.00重量%、または0.60~3.50重量%の範囲とすることができる。
【0008】
非晶質相のガラス形成剤含有量は、リチウムイオン伝導性材料の総重量に対して、例えば、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.10重量%、少なくとも0.15重量%、少なくとも0.20重量%、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.30重量%、少なくとも0.35重量%、少なくとも0.40重量%、少なくとも0.45重量%、または少なくとも0.50重量%とすることができる。非晶質相のガラス形成剤含有量は、リチウムイオン伝導性材料の総重量に対して、例えば、最大でも4.00重量%、最大でも3.50重量%、最大でも3.00重量%、最大でも2.50重量%、最大でも2.00重量%、最大でも1.50重量%、最大でも1.00重量%、最大でも0.80重量%、最大でも0.75重量%、または最大でも0.70重量%とすることができる。非晶質相のガラス形成剤含有量は、リチウムイオン伝導性材料の総重量に対して、例えば、0.05~4.00重量%、0.10~3.50重量%、0.15~3.00重量%、0.20~2.50重量%、0.25~2.00重量%、0.30~1.50重量%、0.35~1.00重量%、0.40~0.80重量%、0.45~0.75、または0.50~0.70重量%の範囲とすることができる。
【0009】
リチウムイオン伝導性材料のガラス形成剤含有量は、リチウムイオン伝導性材料の総重量に対して、例えば、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.10重量%、少なくとも0.15重量%、少なくとも0.20重量%、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.30重量%、少なくとも0.35重量%、少なくとも0.40重量%、少なくとも0.45重量%、または少なくとも0.50重量%とすることができる。リチウムイオン伝導性材料のガラス形成剤含有量は、リチウムイオン伝導性材料の総重量に対して、例えば、最大でも4.00重量%、最大でも3.50重量%、最大でも3.00重量%、最大でも2.50重量%、最大でも2.00重量%、最大でも1.50重量%、最大でも1.00重量%、最大でも0.80重量%、最大でも0.75重量%、または最大でも0.70重量%とすることができる。リチウムイオン伝導性材料のガラス形成剤含有量は、リチウムイオン伝導性材料の総重量に対して、例えば、0.05~4.00重量%、0.10~3.5重量%、0.15~3.00重量%、0.20~2.50重量%、0.25~2.00重量%、0.30~1.50重量%、0.35~1.00重量%、0.40~0.80重量%、0.45~0.75、または0.50~0.70重量%の範囲とすることができる。
【0010】
ガラス形成剤は、非晶質相中に存在し、結晶相中には存在しないため、非晶質相のガラス形成剤含有量(リチウムイオン伝導性材料の総重量に対する)は、リチウムイオン伝導性材料のガラス形成剤含有量(リチウムイオン伝導性材料の総重量に対する)に相当する。ここで、Al2O3は例外であり、Al2O3は、結晶相がガーネット構造を有する場合、特にランタンジルコン酸リチウム(LLZO)の場合には、結晶相中にも存在し得る。しかし、ガーネット構造を有する結晶相へのAl2O3の溶解性は限られている。組成や製造工程にも若干左右されるが、LLZOの式単位あたりAl2O3は約0.1molであり、すなわちLi6.4Al0.2La3Zr12O12である。このことは、1つ以上の2価のカチオンMII、1つ以上の3価のカチオンMIII、1つ以上の4価のカチオンMIV、1つ以上の5価のカチオンMVがドープされている、このガーネットのドープ変種にも当てはまる。したがって、組成Al2O3から非晶質相を計算する場合、ガーネットの式単位あたり0.1molまでの量のAl2O3を結晶相に割り当てる。過剰のAl2O3、すなわちガーネットの式単位あたり0.1molの量を超える部分のAl2O3は、非晶質相に割り当てる。
【0011】
非晶質相は、溶融物を介した製造プロセスによって生成することができ、その際、特に過剰のLi2Oおよびガラス形成剤を含み、特にこれらからなる非晶質相も、結晶性LLZOに加えて凝固時に形成される。挙げられたガラス形成剤はイオン半径が小さいため、LLZOの結晶構造には「適合」しない。さらに、非晶質相を、例えば溶融プロセスによって別途製造し、次いで結晶相に添加して結晶相と混合することもできる。これは例えば、結晶相および非晶質相を粉砕することで達成できる。他の製造プロセスや混合プロセスも考えられる。
【0012】
ガラスセラミックの焼結時に、例えばセパレータとして使用する場合またはそのために、非晶質相は、特に粒界に蓄積される。
【0013】
本発明により、著しく増加したCCD、特に0.5mA/cm2超、例えば少なくとも1.0mA/cm2またはそれを上回るCCDを達成することができる。例えば、負極とセパレータとの間の中間層の挿入のような複雑なさらなるプロセス工程は、本発明による解決策により回避することができる。
【0014】
本発明によるリチウムイオン伝導性材料、特にガラスセラミックまたは本発明によるリチウムイオン伝導性LLZO材料を、単独で、または他の電池材料と一緒に焼結して、再充電可能なリチウムイオン電池、特に固体リチウムイオン電池(英語表記:all-solid-state batteries(ASSB))の無機セラミック電解質に使用することができる。ここで、一方では、セパレータとしての使用も考えられ、電極間に導入することで、望ましくない短絡から電極が保護され、それによりシステム全体の機能が保証される。ここで、本発明によるセパレータは、デンドライトの安定性が改善されていることを特徴とし、これにより、短絡を起こさずに高い電流密度で充電することが可能となる(急速充電)。他方で、電極材料との共焼結も考えられ、この場合、固体電解質は、電池が放電されるか充電されるかに応じて、電極材料と伝導性電極との間で当該電荷キャリア(リチウムイオン)を輸送する。
【0015】
本発明の材料は、リチウムイオン伝導性材料、特にガラスセラミックである。伝導率は、例えば、少なくとも1×10-5S/cm、少なくとも3×10-5S/cm、少なくとも7×10-5S/cm、少なくとも1×10-4S/cm、または少なくとも2×10-4S/cmとすることができる。伝導率は、例えば、最大でも1×10-2S/cm、最大でも5×10-3S/cm、最大でも4×10-3S/cm、最大でも3×10-3S/cm、または最大でも2×10-3S/cmとすることができる。伝導率は、例えば、1×10-5S/cm~1×10-2S/cm、3×10-5S/cm~5×10-3S/cm、7×10-5S/cm~4×10-3S/cm、1×10-4S/cm~3×10-3S/cm、または2×10-4S/cm~2×10-3S/cmの範囲とすることができる。伝導率は、インピーダンス分光法を用いて決定することができる。この目的のために、材料をd50=1μmのサイズに粉砕し、次いでプレス加工して圧縮体とし、これを1130℃で30分間焼結することができる。水との接触による試料の劣化を避けるため、試料調製を無水で行うことができる。
【0016】
本発明のリチウムイオン伝導性材料は、結晶相および非晶質相を含む。非晶質相は、特に、Li2Oと、SiO2、B2O3、Al2O3、P2O5およびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される少なくとも1つのガラス形成剤とを含むことができ、ここで、ガラス形成剤の総重量に対するSiO2およびP2O5の割合の合計は、少なくとも25%であり、すなわち、それぞれ重量%単位で、(SiO2+P2O5)/(SiO2+B2O3+Al2O3+P2O5)≧0.25である。ガラス形成剤の総重量に対するSiO2およびP2O5の割合の合計は、例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはさらには100%とすることができる。したがって、リチウムイオン伝導性材料は、B2O3およびAl2O3を含まなくてもよい。
【0017】
SiO2は、本発明の特に好ましいガラス形成剤である。ガラス形成剤の総重量に対するSiO2の割合は、例えば、少なくとも25%とすることができ、すなわち、それぞれ重量%単位で、(SiO2)/(SiO2+B2O3+Al2O3+P2O5)≧0.25である。ガラス形成剤の総重量に対するSiO2の割合は、例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはさらには100%とすることができる。したがって、リチウムイオン伝導性材料は、P2O5、B2O3およびAl2O3を含まなくてもよい。特に、ガラス形成剤は、SiO2とすることができる。SiO2は、臨界電流密度を著しく増加させるために特に有利である。
【0018】
本発明のリチウムイオン伝導性材料中のLi2Oの割合は、例えば、少なくとも10.0重量%、少なくとも10.5重量%、または少なくとも11.0重量%とすることができる。本発明のリチウムイオン伝導性材料中のLi2Oの割合は、例えば、最大でも15.0重量%、最大でも14.5重量%、または最大でも14.0重量%とすることができる。本発明のリチウムイオン伝導性材料中のLi2Oの割合は、例えば、10.0~15.0重量%、10.5~14.5重量%、または11.0~14.0重量%の範囲とすることができる。
【0019】
本発明のリチウムイオン伝導性材料中の希土類酸化物RE2O3、好ましくはLa2O3、Gd2O3および/またはY2O3の合計の割合は、例えば、少なくとも45重量%、少なくとも48重量%、または少なくとも50重量%とすることができる。本発明のリチウムイオン伝導性材料中の希土類酸化物RE2O3、好ましくはLa2O3、Gd2O3および/またはY2O3の合計の割合は、例えば、最大でも70重量%、最大でも65重量%、または最大でも60重量%とすることができる。本発明のリチウムイオン伝導性材料中の希土類酸化物RE2O3、好ましくはLa2O3、Gd2O3および/またはY2O3の合計の割合は、例えば、45~70重量%、48~65重量%、または50~60重量%の範囲とすることができる。
【0020】
本発明のリチウムイオン伝導性材料中のZrO2およびHfO2の合計の割合は、例えば、少なくとも17重量%、少なくとも18重量%、または少なくとも19重量%とすることができる。本発明のリチウムイオン伝導性材料中のZrO2およびHfO2の合計の割合は、例えば、最大でも35重量%、最大でも33重量%、または最大でも31重量%とすることができる。本発明のリチウムイオン伝導性材料中のZrO2およびHfO2の合計の割合は、例えば、17~35重量%、18~33重量%、または19~31重量%の範囲とすることができる。
【0021】
本発明のリチウムイオン伝導性材料中のSiO2の割合は、例えば、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.10重量%、少なくとも0.15重量%、少なくとも0.20重量%、少なくとも0.25重量%、少なくとも0.30重量%、少なくとも0.35重量%、または少なくとも0.40重量%とすることができる。本発明のリチウムイオン伝導性材料中のSiO2の割合は、例えば、最大でも2.00重量%、最大でも1.75重量%、最大でも1.50重量%、最大でも1.25重量%、最大でも1.00重量%、最大でも0.90重量%、最大でも0.85重量%、または最大でも0.80重量%とすることができる。本発明のリチウムイオン伝導性材料中のSiO2の割合は、例えば、0.05~2.00重量%、0.10~1.75重量%、0.15~1.50重量%、0.20~1.25重量%、0.25~1.00重量%、0.30~0.90重量%、0.35~0.85重量%、または0.40~0.80重量%の範囲とすることができる。
【0022】
本発明のリチウムイオン伝導性材料中のTa2O5、Nb2O5およびAl2O3の合計の割合は、例えば、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.75重量%、または少なくとも1重量%とすることができる。本発明のリチウムイオン伝導性材料中のTa2O5、Nb2O5およびAl2O3の合計の割合は、例えば、最大でも15重量%、最大でも13.5重量%、または最大でも12重量%とすることができる。本発明のリチウムイオン伝導性材料中のTa2O5、Nb2O5およびAl2O3の合計の割合は、例えば、0.5~15重量%、0.75~13.5重量%、または1~12重量%の範囲とすることができる。
【0023】
本発明のリチウムイオン伝導性材料は、例えば、以下に示す成分を、示される割合(重量%単位)で含むことができる:
【表1】
【0024】
さらに好ましくは、本発明のリチウムイオン伝導性材料は、例えば、以下に示す成分を、示される割合(重量%単位)で含むことができる:
【表2】
【0025】
特に好ましくは、本発明のリチウムイオン伝導性材料は、例えば、以下に示す成分を、示される割合(重量%単位)で含むことができる:
【表3】
【0026】
特に好ましくは、本発明のリチウムイオン伝導性材料は、例えば、以下に示す成分を、示される割合(重量%単位)で含むことができる:
【表4】
【0027】
特に好ましくは、本発明のリチウムイオン伝導性材料は、例えば、以下に示す成分を、示される割合(重量%単位)で含むことができる:
【表5】
【0028】
特に好ましくは、本発明のリチウムイオン伝導性材料は、例えば、以下に示す成分を、示される割合(重量%単位)で含むことができる:
【表6】
【0029】
本開示において、材料がある成分について不含である、またはある成分を含まないと記載されている場合、これは、この成分がせいぜい不純物として存在し得るに過ぎないことを意味する。これは、この成分が実質的な量では添加されないことを意味する。本発明によれば、実質的でない量とは、最大でも0.05重量%、または最大でも0.04重量%の量である。
【0030】
リチウムイオン伝導性材料中の非晶質相の割合は、特に、非晶質相中のLi2Oの割合(リチウムイオン伝導性材料の総重量に対する)と、非晶質相中の少なくとも1つのガラス形成剤の割合(リチウムイオン伝導性材料の総重量に対する)との合計に相当する。リチウムイオン伝導性材料中の非晶質相の割合が非常に高い場合、リチウムイオン伝導性材料のリチウムイオン伝導率が損なわれる可能性がある。したがって、リチウムイオン伝導性材料中の非晶質相の割合の上限を制限することが有利である。好ましくは、リチウムイオン伝導性材料中の非晶質相の割合は、5.0重量%未満、特に最大でも4.9重量%、最大でも4.8重量%、最大でも4.7重量%、最大でも4.6重量%、最大でも4.5重量%、最大でも4.4重量%、最大でも4.3重量%、最大でも4.2重量%、最大でも4.1重量%、または最大でも4.0重量%である。リチウムイオン伝導性材料中の非晶質相の割合は、例えば、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.15重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.4重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.6重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.8重量%、少なくとも0.9重量%、または少なくとも1.0重量%とすることができる。リチウムイオン伝導性材料中の非晶質相の割合は、例えば、0.1~<5.0重量%、0.15~4.9重量%、0.2~4.8重量%、0.3~4.7重量%、0.4~4.6重量%、0.5~4.5重量%、0.6~4.4重量%、0.7~4.3重量%、0.8~4.2重量%、0.9~4.1重量%、または1.0~4.0重量%の範囲とすることができる。
【0031】
リチウムイオン伝導性材料中の結晶相および非晶質相の割合の決定は、特にリチウムイオン伝導性材料の組成に基づいて行われる。この目的のために、結晶相の分子式を用い、組成を重量%単位から原子%単位に換算する。次に、分子式に従って結晶相を形成する元素をこの相に割り当てる(複数の結晶相に対して同じ手順を用いる)。非晶質相には、過剰のLi、O、およびガラス形成剤を割り当てる。原子%単位での組成を、結晶相の分子式の化学量論的因子のうちのいずれかで正規化すれば、この手順は簡略化される。これを、LLZOの分子式Li7-3x+y-zAlxMy
IIM3-y
IIIM2-z
IVMz
VO12の例で以下に示す。まず、原子%単位での組成をMII+MIII=3(またはMIV+MV=2)に正規化し、pfu(式単位あたりの原子数(英語表記:“parts per formula unit”))単位での組成を得る。この組成は、結晶形成成分と、化学量論的な結晶に組み込まれない成分である、過剰のLiおよびO、ならびにSi、P、B、Al(Alは、ガーネット構造への溶解性が限られているため、0.2pfuまでの量は、結晶形成成分としてカウントされる。Alがより多く含まれる場合、0.2pfuとの差分が、非晶質相に割り当てられる)とに分けられる。次に、pfu単位での非晶質相を、それぞれの原子量を用いて、含まれる酸化物の重量%に換算し直す。リチウムイオン伝導性材料中の非晶質相の重量割合は、非晶質相中の酸化物の、重量%単位での重量割合(リチウムイオン伝導性材料の総重量に対する)の合計である。
【0032】
本発明のリチウムイオン伝導性材料は、0.5mA/cm2超の臨界電流密度を有する。臨界電流密度は、例えば、少なくとも0.6mA/cm2、少なくとも0.7mA/cm2、少なくとも0.8mA/cm2、少なくとも0.9mA/cm2、または少なくとも1.0mA/cm2とすることができる。臨界電流密度は、例えば、最大でも20mA/cm2、最大でも18mA/cm2、最大でも16mA/cm2、最大でも14mA/cm2、最大でも12mA/cm2、または最大でも10mA/cm2とすることができる。臨界電流密度は、例えば、>0.5~20mA/cm2、0.6~18mA/cm2、0.7~16mA/cm2、0.8~14mA/cm2、0.9~12mA/cm2、または1.0~10mA/cm2の範囲とすることができる。いくつかの実施形態において、臨界電流密度は、最大でも7.5mA/cm2、最大でも5.0mA/cm2、最大でも4.0mA/cm2、最大でも3.0mA/cm2、最大でも2.0mA/cm2、または最大でも1.2mA/cm2である。
【0033】
臨界電流密度は、ディスク状の焼結体(直径8.5mm、高さ1mm)の対向する2つの面にリチウムを接触させることにより測定することができる。これを、50~2000μA/cm2の電流密度を50μA/cm2ずつ増加させながらサイクル運転し、電圧を記録する。電流密度ごとに1サイクルを行い、充放電プロセスをそれぞれ30分間行う。臨界電流密度は、セルの短絡が発生する電流密度として定義される。この電流密度では、電圧はもはやオームの法則による電流密度には従わず、ただちに電圧降下が起こる。焼結体を製造するために、リチウムイオン伝導性材料をd50=1μmのサイズに粉砕し、次いでプレス加工して圧縮体とし、これを1130℃で30分間焼結することができる。水との接触による試料の劣化を避けるため、試料調製を無水で行うことができる。
【0034】
本発明のリチウムイオン伝導性材料は、特にガラスセラミックとすることができる。
【0035】
本発明の趣意でのガラスセラミックとは、冷却および自発的な結晶化によって、または冷却およびその後の制御されたセラミゼーションプロセスによって、各成分の均質な溶融物から製造される材料である。成形工程または粉砕工程は、冷却前に行うことも、冷却中に行うことも、冷却後に行うこともできる。
【0036】
本発明のリチウムイオン伝導性材料は、結晶相および非晶質相を含む。結晶相は、主結晶相を含むことができる。主結晶相とは、リチウムイオン伝導性材料の結晶相の重量%単位での割合が最も高い結晶相である。主結晶相は、特に、リチウムイオン伝導性材料の結晶相の少なくとも50重量%、例えば50重量%超、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、またはさらには100重量%の割合を有する。このように、リチウムイオン伝導性材料の結晶相は、主結晶相からなることができる。
【0037】
主結晶相は、特にガーネット構造を有することができる。しかし、主結晶相は、岩塩構造、ペロブスカイト構造、逆ペロブスカイト構造またはNASICON構造を有することもできる。主結晶相は、例えば、立方晶系で存在することができる。主結晶相は、例えば、ランタンジルコン酸リチウム(LLZO)を含むか、またはそれからなることができる。
【0038】
リチウムイオン伝導性材料の結晶相の主結晶相は、特に、分子式Li7-3x+y-zAlxMy
IIM3-y
IIIM2-z
IVMz
VO12±δを有することができ、ここで、MIIは、1つ以上の2価のカチオンを含み、MIIIは、1つ以上の3価のカチオンを含み、MIVは、1つ以上の4価のカチオンを含み、MVは、1つ以上の5価のカチオンを含み、x+z>0、y<1およびδ<0.5である。特に好ましくは、MIIIは、1つ以上のランタニドおよび/またはイットリウムを含む。特に好ましくは、MIVは、ジルコニウムまたはハフニウムを含む。特に好ましくは、MVは、ニオブまたはタンタルを含む。特に好ましくは、MIIIは、1つ以上のランタニドおよび/またはイットリウムを含み、MIVは、ジルコニウムまたはハフニウムを含み、MVは、ニオブまたはタンタルを含む。
【0039】
本発明のリチウムイオン伝導性材料は、結晶相および非晶質相を含む。結晶相は、例えば、リチウムイオン伝導性材料中の粒界によって分離された晶子の形態で存在することができる。非晶質相は、特に、粒界に存在することができる(
図1)。非晶質相は、例えば、少なくとも1.5g/cm
3の密度を有することができる。
【0040】
本発明はまた、リチウムイオン伝導性材料、特に本発明のリチウムイオン伝導性材料の製造方法に関する。本方法は、特に以下の工程を含むことができる:
・ 出発材料を溶融する工程、
・ 溶融物を冷却する工程。
【0041】
出発材料(原料とも呼ばれる)を、例えば(特に、上部が開放されている)スカルるつぼ中で溶融することができる。好ましくは、原料を混合し、得られた混合物を予熱する。特に、バーナー加熱をこれに使用することができる。予熱によって最低伝導率を達成することができる。いわゆるカップリング温度に達したら、高周波カップリングにより、特に誘導コイルを通じて、溶融物のさらなる加熱および均質化を達成することができる。溶融物の均質化を改善するために、特に水冷式スターラーで撹拌することができる。完全に均質化した後、例えば、溶融物から直接試料を採取し(急速冷却)、一方、溶融物の残りは、高周波のスイッチを切ることによりゆっくり冷却することができる。
【0042】
このようにして製造された材料は、溶融物から直接凝固させるか、急冷し、次いで温度処理(セラミゼーション)することにより、ガーネット状の主結晶相を有するリチウムイオン伝導性の、特にガラスセラミック材料に変換することができる。溶融物から直接採取した試料は、冷却に関係なく自発的な結晶化を示すため、その後のセラミゼーション処理を省くことができる。
【0043】
本発明はまた、固体リチウムイオン電池における、特にセパレータとしての本発明のリチウムイオン伝導性材料の使用に関する。リチウムイオン伝導性材料は、特に電極材料との共焼結後に、負極および/または正極に使用することもできる。
【0044】
本発明はまた、本発明のリチウムイオン伝導性材料を含む固体リチウムイオン電池に関する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】a)例1およびb)例V1の材料で作製された焼結セパレータの電子顕微鏡写真を示す図である。例1のSiO
2に富む非晶質相は、粒界(濃色部分)に蓄積されている。
【0046】
実施例
以下の表1は、本発明による実施例1、および2つの比較例V1およびV2を示す。
【0047】
【0048】
原料を、表1の組成に従って混合し、上部が開放されているスカルるつぼに充填した。ここで、Li2Oの蒸発分を補うため、Li2Oの量に対して約5%の過剰量を使用した。この混合物をまず、一定の最低伝導率を達成するために予熱する必要があった。このために、バーナー加熱を使用した。カップリング温度に達した後、誘導コイルを通じた高周波カップリングによって、溶融物のさらなる加熱および均質化を達成した。溶融物の均質化を改善するために、水冷式スターラーで撹拌を行った。完全に均質化した後、溶融物から直接試料を採取し(急冷)、一方、溶融物の残りは、高周波のスイッチを切ることによりゆっくり冷却した。
【0049】
このようにして製造された材料を、溶融物から直接凝固させるか、急冷し、次いで温度処理(セラミゼーション)することにより、ガーネット状の主結晶相を有するガラスセラミック材料に変換することができる。溶融物から直接採取した試料は、冷却に関係なく自発的な結晶化を示したため、その後のセラミゼーション処理を省くことができた。このようにして得られたガラスセラミックから、伝導率およびCCD(臨界電流密度)を測定するためのインピーダンス分光用試料を作製した。このために、材料をd50=1μmのサイズに粉砕し、次いでプレス加工して圧縮体とし、これを1130℃で30分間焼結した。水との接触による試料の劣化を避けるため、試料調製を無水で行った。
【0050】
結晶相および非晶質相について、組成を、それぞれランタンジルコン酸リチウムの式単位あたりの原子数(pfu)(英語表記:“parts per formula unit”(pfu))で示す。非晶質相は酸化性であるため、酸素(O2-)によって元素/カチオンの電荷を均衡させる。このため、まず重量%単位での組成を、原子%単位での組成に換算する。次に、原子%単位での組成をLa=3に正規化して、pfu単位での組成を得る。この組成は、LLZO形成成分であるLi、La、Zr、Hf、Ta、Oと、非晶質相(化学量論的なLLZO結晶に取り込まれない成分である、Si、ならびに過剰のLiおよびO)とに分けられる。ここで、化学量論的なLLZO結晶の組成は、Li7-xLa3Zr2-x-yTaxHfyO12±δであると仮定する。この組成の分割は、化学量論的なLLZO結晶を形成できるすべての元素がLLZO結晶としても存在し、取り込むことができない、または過剰に存在する元素は非晶質相として存在するという仮定に基づいている。次に、リチウムイオン伝導性材料の総重量に対する酸化物の割合を重量%単位で求めるために、pfu単位での非晶質相を、それぞれの原子量を用いて重量%単位に換算し直す。
【0051】
非晶質相の重量(表2)は、表1から非晶質相中の酸化物を重量%単位で合計したものである。
【0052】
臨界電流密度(CCD)を測定するため、ディスク状の焼結体(直径8.5mm、高さ1mm)の対向する2つの面にリチウムを接触させる。これを、50~2000μA/cm2の電流密度を50μA/cm2ずつ増加させながらサイクル運転し、電圧を記録する。電流密度ごとに1サイクルを行い、充放電プロセスをそれぞれ30分間行う。臨界電流密度は、セルの短絡が発生する電流密度として定義される。この電流密度では、電圧はもはやオームの法則による電流密度には従わず、ただちに電圧降下が起こる。
【0053】
以下の表2は、実施例1および2つの比較例V1、V2の非晶質相の割合および臨界電流密度CCDを示している。
【0054】
【0055】
実施例1では、ガラス形成剤SiO2を目的に応じて添加することで、比較例V1、V2と比較して、非晶質相の割合および臨界電流密度を大幅に増加させることができた。
【0056】
比較例V2では、原料組成中のLi2Oの割合を増加させることにより、比較例V1に比べて非晶質相の割合を約10倍増加させた。それにもかかわらず、V2のCCDはV1と比較して変化しなかった。したがって、ガラス形成剤、特に好ましくはSiO2の割合を増加させることは、CCDをさらに増加させるために特に有利である。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶相および非晶質相を含むリチウムイオン伝導性材料であって、前記リチウムイオン伝導性材料は、0.5mA/cm
2超の臨界電流密度を有する、リチウムイオン伝導性材料。
【請求項2】
前記非晶質相が、Li
2Oと、SiO
2、B
2O
3、Al
2O
3、P
2O
5およびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される少なくとも1つのガラス形成剤とを含み、前記リチウムイオン伝導性材料の総重量に対するガラス形成剤の含有量が、少なくとも0.05重量%であり、前記ガラス形成剤の総重量に対するSiO
2およびP
2O
5の合計割合が、少なくとも25重量%である、請求項1記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項3】
前記ガラス形成剤の総重量に対する前記SiO
2の割合が、少なくとも25重量%である、請求項2記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項4】
前記リチウムイオン伝導性材料が、ガラスセラミックである、請求項
1記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項5】
前記結晶相が、主結晶相を含み、前記主結晶相が、少なくとも50重量%の前記結晶相の割合を有し、前記主結晶相が、立方晶系で存在する、請求項
1記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項6】
前記結晶相が、主結晶相を含み、前記主結晶相が、少なくとも50重量%の前記結晶相の割合を有し、前記主結晶相が、ガーネット構造を有する、請求項
1記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項7】
前記主結晶相が、ランタンジルコン酸リチウム(LLZO)を含む、請求項5または6記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項8】
前記主結晶相が、分子式Li
7-3x+y-zAl
xM
y
IIM
3-y
IIIM
2-z
IVM
z
VO
12±δを有し、M
IIは、1つ以上の2価のカチオンを含み、M
IIIは、1つ以上の3価のカチオンを含み、M
IVは、1つ以上の4価のカチオンを含み、M
Vは、1つ以上の5価のカチオンを含み、x+z>0、y<1およびδ<0.5である、請求項
5または6記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項9】
前記非晶質相中のLi
2Oの割合が、前記リチウムイオン伝導性材料の総重量に対して0.05~5.00重量%である、請求項
1記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項10】
前記リチウムイオン伝導性材料中の前記非晶質相の割合が、5重量%未満である、請求項
1記載のリチウムイオン伝導性材料。
【請求項11】
請求項
1記載のリチウムイオン伝導性材料の製造方法であって、以下の工程:
・ 出発材料を溶融する工程、
・ 前記溶融物を冷却する工程
を含む、方法。
【請求項12】
固体リチウムイオン電池における、特にセパレータとしての、請求項
1記載のリチウムイオン伝導性材料の使用。
【国際調査報告】