(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】紅色酵母米を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/062 20060101AFI20241010BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20241010BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20241010BHJP
A61K 31/366 20060101ALI20241010BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241010BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20241010BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241010BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241010BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K36/062
A61K36/899
A61P3/06
A61K31/366
A61K9/14
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/46
A61K47/28
A61K47/36
A61K47/22
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525432
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022080337
(87)【国際公開番号】W WO2023073226
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522297410
【氏名又は名称】メダ ファーマ エス.ピー.エイ.
【氏名又は名称原語表記】MEDA Pharma S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Valosa di Sopra 9,20900 Monza,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110002114
【氏名又は名称】弁理士法人河野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128624
【氏名又は名称】穂坂 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138483
【氏名又は名称】村上 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】ゲルフィ、エレナ
(72)【発明者】
【氏名】モスコーニ、マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ザナルディ、アンドレア
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C086
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
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4C076AA31
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4C088MA41
4C088NA10
4C088ZC33
(57)【要約】
本発明は、脂質封入技術によってコーティングされた紅麹発酵米を含む固形経口組成物、及びコーティングされた紅麹発酵米を調製するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅色酵母米と、(a)脂肪アルコール及び/又は脂肪酸、(b)グリセリド、並びに(c)ポリエチレングリコールを含む脂質担体と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記脂質担体が前記紅色酵母米を封入しているか、又は前記紅色酵母米と密に混合されていることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記紅色酵母米は、モナコリンK 1.75w/w%が規格化されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪アルコールが、セチルアルコール、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ミリスチルアルコール、アラキジルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸が、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、アラキジン酸、ラウリン酸、及びそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記グリセリドが、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、アラキジン酸グリセリル、及びそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリエチレングリコールが、400~6000g/mol、特に、400g/mol、1500g/mol、3350g/mol、4000g/mol、又は6000g/molの平均分子量を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記脂質担体が、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、及びPEG 1500を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、ホットメルト造粒によって得ることができる、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
高コレステロール血症又は高脂血症の治療又は予防に使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
Berberis aristata、フィトステロール及び/又はフィトスタノール、Cynara cardunculus抽出物、Citrus bergamia抽出物、Allium sativum、Salvia miltiorrhiza、ポリコサノール、Camellia sinensis抽出物、Melannurca campana抽出物、Curcuma longa、並びにクルクミノイド、スピルリナ、キトサン、ベータグルカン、グルコマンナンから選択される1つ以上の成分を追加で含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
コエンザイムQ10、アスタキサンチン、葉酸、オルトシフォンから選択される1つ以上の成分を追加で含む、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を調製するためのプロセスであって、
(i)前記脂質担体成分のうちの1つ以上を、少なくとも部分的に溶融するまで、好ましくは完全に溶融するまで加熱するステップと、
(ii)前記紅色酵母米が溶融した脂質担体マトリックスに組み込まれるまで、前記紅色酵母米を溶融した前記1つ以上の脂質担体成分と組み合わせるステップと、
(iii)結果として得られた混合物をあらゆる残りの脂質担体成分と組み合わせるステップと、
(iv)前記脂質担体成分が固化するまで、結果として得られた混合物を冷却するステップと、
(v)結果として得られた固体混合物を粉砕し、任意選択で篩過して、造粒物を得るステップと、を含む、プロセス。
【請求項14】
ステップ(i)において、前記脂質担体成分は全て、それらが完全に溶融するまで加熱される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記紅色酵母米は、前記紅色酵母米が溶融した前記マトリックスに完全に組み込まれるまで、少量ずつに分けて徐々に、溶融した前記脂質担体成分と組み合わせられる、請求項13又は14に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モナコリンK溶解性及び溶解速度を改善するための特定の脂質封入技術を使用した、モナコリンK(MK)が規格化された紅麹発酵米ベースの固形経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紅麹発酵米、別名、紅色酵母米(RYR)は、伝統的には、天然食品着色剤として、かつ肉及び魚の食品防腐剤として、何世紀にもわたって使用されている。これは、一連の活性薬剤化合物であるモナコリン(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムAレダクターゼ阻害剤として示される)を含むその生物活性成分の多くが血清コレステロールレベルを低下させることができることが発見されたため、近年、人気のある栄養補助食品になっている(Lin et al.,Appl Microbiol Biotechnol 2008;77,965-973)。
【0003】
紅色酵母米中に見られる生物活性化合物の中で、モナコリンは、高脂血症を制御するそれらの薬理学的効果について周知である。モナコリンKは、血漿中のコレステロールを低下させるのに最も有効な化合物であると考えられている。これは、ロバスタチン及びメビノリンと構造的に同一である(Klimek,Wang,and Ogunkanmi,P&T 2009,34 No 6,313-316)。
【0004】
溶解性は、薬物放出及び吸収において最も重要な物理化学的特性のうちの1つであり、特に経口投与薬において、バイオアベイラビリティに重要な役割を果たす。
【0005】
更に、有意なバイオアベイラビリティのために、経口投与薬は、胃腸管でのその溶解性のみならず、細胞膜にわたるその透過性にも依存する。したがって、この薬物分子は、生体膜にわたって輸送されるのに好適な形態で提示されることが必要とされる。また、エンドサイトーシスを除く全ての機構による薬物の吸収に必須の前提条件は、それが水溶液中に存在しなければならないことである。この事実は、次いで、薬物の水溶性(絶対溶解性又は固有溶解性)及びその溶解速度に依存する(Poovi and Damodharan,Future Journal of Pharmaceutical Sciences 2018;4,191-205)。
【0006】
ロバスタチンは、その難水溶性(0.4×10-3mg/mL)及び短い半減期(1~2時間)のため、不十分な経口バイオアベイラビリティ(5%)を呈する(Zhou and Zhou 2015;Drug design,development and therapy 9:5269-5275)。経口投与用量の不十分なバイオアベイラビリティは、広範な初回通過代謝に起因する。ロバスタチンは、「低い溶解性/高い浸透性」を有するBCSクラスIIに分類され、それ故に、ロバスタチンの不十分な経口バイオアベイラビリティが、溶解限界を更に引き起こすその制限された水可溶化に起因する可能性があると予測することができる。(Qureshi,Chitneni,and Kian Asian Journal of Pharmaceutical Sciences,2014;10,40-56)。その構造的同一性のため、同じことがモナコリンKにも当てはまる。
【0007】
更に、モナコリンKは、ある特定の経口剤形で安定性を欠く場合もある。
【0008】
したがって、増加した溶解速度及びより高い溶解性を示すモナコリンKを紅色酵母米製剤中に提供することが、本発明の目的である。本発明の更なる目的は、改善された安定性を呈するモナコリンKを紅色酵母米製剤中に提供することである。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様では、本発明は、紅色酵母米と、(a)脂肪アルコール及び/又は脂肪酸、(b)グリセリド、並びに(c)ポリエチレングリコールを含む脂質担体と、を含む、組成物を提供する。
【0010】
第2の態様では、本発明は、紅色酵母米と、(a)脂肪アルコール及び/又は脂肪酸、(b)グリセリド、並びに(c)ポリエチレングリコールを含む脂質担体と、を含む、組成物を提供し、本組成物はホットメルト造粒によって得ることができる。
【0011】
第3の態様では、本発明は、紅色酵母米と、脂肪アルコール及び/又は脂肪酸、グリセリド、並びにポリエチレングリコールを含む脂質担体と、を含む組成物を調製するためのプロセスを提供し、本プロセスは、
(i)脂質担体成分のうちの1つ以上を、少なくとも部分的に溶融するまで、好ましくは完全に溶融するまで加熱するステップと、
(ii)紅色酵母米が溶融した脂質担体マトリックスに組み込まれるまで、紅色酵母米を溶融した1つ以上の脂質担体成分と組み合わせるステップと、
(iii)結果として得られた混合物をあらゆる残りの脂質担体成分と組み合わせるステップと、
(iv)脂質担体成分が固化するまで、結果として得られた混合物を冷却するステップと、
(v)結果として得られた固体混合物を粉砕し、任意選択で篩過して、造粒物を得るステップと、を含む。
【0012】
驚くべきことに、本出願人は、紅色酵母米と、少なくとも1つの脂肪アルコール又は脂肪酸、1つ以上のグリセリド、及び1つ以上のポリエチレングリコールを含む脂質担体とを含む組成物が、改善された溶解性及びバイオアベイラビリティを有し、統計的に有意な効果を示すことを見出した。本発明の脂質封入組成物は、非封入紅色酵母米組成物と比較して、モナコリンKの改善された安定性も示し得る。
【0013】
ここで、添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】封入製剤中のモナコリンKの溶解速度を示す。
【
図2】異なる時点でのモナコリンKの減少率を示す安定性研究の詳細を示す。
【0015】
定義
組み合わせの様々な成分の割合は、他の成分に対して定義される。他の成分に基づく特定の成分の重量%(重量パーセント)は、特定の成分の重量(質量)を、組成物の重量に基づく重量(質量)で割って、100を乗じたもの、すなわち、以下である。
【数1】
【0016】
紅麹発酵米又は紅色酵母米は、室温で数日間、紅麹菌(Monascus purpureus)で発酵させ、その結果、紅色になった、調理された白米の伝統的な中国調製物(Chinese preparation)である。
【0017】
本発明との関連で使用される紅色酵母米は、1.75%(w/w)のモナコリンKが規格化されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本組成物は、紅色酵母米と、(a)脂肪アルコール及び/又は脂肪酸、(b)グリセリド、並びに(c)ポリエチレングリコールを含む脂質担体と、を含む。
【0019】
脂質担体は、紅色酵母米を封入していてもよく、本明細書では紅色酵母米の脂質封入とも称され得る。あるいは、脂質担体は、紅色酵母米と密に混合されていてもよい。
【0020】
好ましくは、本発明は、モナコリンK 1.75w/w%が規格化された紅色酵母米と、少なくとも1つの脂肪アルコール又は脂肪酸、グリセリド、及びポリエチレングリコールを含む脂質担体との組成物を提供する。
【0021】
好適な脂肪アルコールは、セチルアルコール、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、ミリスチルアルコール、アラキジルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びそれらの組み合わせである。好ましい脂肪アルコールは、セチルアルコールである。
【0022】
好適な脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、アラキジン酸、ラウリン酸、及びそれらの組み合わせである。
【0023】
好適なグリセリドは、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、アラキジン酸グリセリル、及びそれらの組み合わせである。好ましいグリセリドは、モノステアリン酸グリセリル及びジベヘン酸グリセリルである。
【0024】
好ましいポリエチレングリコール(PEG)は、400~6000g/mol、特に、400g/mol、1500g/mol、3350g/mol、4000g/mol、又は6000g/molの平均分子量を有するものである。
【0025】
一実施形態では、脂質担体は、2つ以上の脂肪アルコール及び/若しくは脂肪酸、グリセリド、並びに/又はポリエチレングリコールを含んでもよい。
【0026】
本発明の一態様によれば、脂肪アルコール、1つ以上のグリセリド、及びポリエチレングリコールを含む紅色酵母米の脂質封入物が提供される。
【0027】
一実施形態では、本組成物は、
・脂肪アルコールと、
・グリセリドと、
・PEG 1500とを含む。
【0028】
別の実施形態では、本組成物は、
・セチルアルコールと、
・モノステアリン酸グリセリルと、
・PEG 1500とを含む。
【0029】
別の実施形態では、本組成物は、
・セチルアルコールと、
・ジベヘン酸グリセリルと、
・PEG 1500とを含む。
【0030】
別の実施形態では、本組成物は、
・セチルアルコールと、
・モノステアリン酸グリセリルと、
・ジベヘン酸グリセリルと、
・PEG 1500とを含む。
【0031】
一実施形態では、本組成物は、
・0.5~13%の量の脂肪アルコールと、
・79~98%の量のグリセリドと、
・0.5~8%の量のPEG 1500とを含む。
【0032】
別の実施形態では、本組成物は、
・0.5~13%の量のセチルアルコールと、
・1~14%の量のモノステアリン酸グリセリルと、
・1~8%の量のPEG 1500とを含む。
【0033】
別の実施形態では、本組成物は、
・0.5~13%の量のセチルアルコールと、
・65~97%の量のジベヘン酸グリセリルと、
・1~8%の量のPEG 1500とを含む。
【0034】
別の実施形態では、本組成物は、
・0.5~13%の量のセチルアルコールと、
・1~14%の量のモノステアリン酸グリセリルと、
・65~97%の量のジベヘン酸グリセリルと、
・1~8%の量のPEG 1500とを含む。
【0035】
好ましい実施形態では、本組成物は、
・0.6~5.0%の量のセチルアルコールと、
・0.6~4.4%の量のモノステアリン酸グリセリルと、
・0.6~3.1%の量のPEG 1500とを含む。
【0036】
別の好ましい実施形態では、本組成物は、
・0.6~5.0%の量のセチルアルコールと、
・25.0~35.7%の量のジベヘン酸グリセリルと、
・0.6~3.1%の量のPEG 1500とを含む。
【0037】
別の好ましい実施形態では、本組成物は、
・0.6~5.0%の量のセチルアルコールと、
・0.6~4.4%の量のモノステアリン酸グリセリルと、
・25.0~35.7%の量のジベヘン酸グリセリルと、
・0.6~3.1%の量のPEG 1500とを含む。
【0038】
別の好ましい実施形態では、本組成物は、
・セチルアルコール0.6%と、
・モノステアリン酸グリセリル0.6%と、
・PEG 1500 0.6%とを含む。
【0039】
別の好ましい実施形態では、本組成物は、
・セチルアルコール0.6%と、
・ジベヘン酸グリセリル35.7%と、
・PEG 1500 0.6%とを含む。
【0040】
別の好ましい実施形態では、本組成物は、
・セチルアルコール0.6%と、
・モノステアリン酸グリセリル0.6%と、
・ジベヘン酸グリセリル35.7%と、
・PEG 1500 0.6%とを含む。
【0041】
別の好ましい実施形態では、本組成物は、
・セチルアルコール5.0%と、
・モノステアリン酸グリセリル4.4%と、
・PEG 1500 3.1%とを含む。
【0042】
別の好ましい実施形態では、本組成物は、
・セチルアルコール5.0%と、
・ジベヘン酸グリセリル25.0%と、
・PEG 1500 3.1%とを含む。
【0043】
別の好ましい実施形態では、本組成物は、
・セチルアルコール5.0%と、
・モノステアリン酸グリセリル4.4%と、
・ジベヘン酸グリセリル25.0%と、
・PEG 1500 3.1%とを含む。
【0044】
成分A:脂肪アルコール、グリセリド、PEG、及び成分B:紅色酵母米(モナコリンKが規格化されたもの)に対する好適な封入比は、以下の重量%比の範囲内である。
・0.5~1、
・0.6~1、
・1~1、
・1~2、
・1~3、
・1~5。
【0045】
好ましい比率は、成分Aの成分Bに対する0.6~1重量%である。
【0046】
更なる実施形態では、前述の組成物は、Berberis aristata、フィトステロール及び/又はフィトスタノール、Cynara cardunculus抽出物、Citrus bergamia抽出物、Allium sativum、Salvia miltiorrhiza、ポリコサノール、Camellia sinensis抽出物、Melannurca campana抽出物、Curcuma longa、並びにクルクミノイド、スピルリナ、キトサン、ベータグルカン、グルコマンナン、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、葉酸、及びオルトシフォンから選択される1つ以上の成分を追加で含んでもよい。
【0047】
調製
脂質封入紅色酵母米は、ホットメルト造粒技法を使用して調製されてもよい。
【0048】
一実施形態では、紅色酵母米と、(a)脂肪アルコール及び/又は脂肪酸、(b)グリセリド、並びに(c)ポリエチレングリコールを含む脂質担体とを含む組成物は、ホットメルト造粒によって得ることができる。
【0049】
この溶融法又は融合法は、1961年に最初に提案され、速放性固体分散体剤形が調製された。この方法では、薬物と担体の物理的混合物を溶融するまで直接加熱する。その後、溶融した混合物を冷却し、激しく撹拌しながら氷浴中で急速に固化させることができる。その後、最終固体塊を破砕、粉砕、及び篩過し、錠剤化剤を用いて錠剤に圧縮することができる。
【0050】
一実施形態では、本発明は、紅色酵母米と、脂肪アルコール及び/又は脂肪酸、グリセリド、並びにポリエチレングリコールを含む脂質担体と、を含む組成物を調製するためのプロセスを提供し、本プロセスは、
(i)脂質担体成分のうちの1つ以上を、少なくとも部分的に溶融するまで、好ましくは完全に溶融するまで加熱するステップと、
(ii)紅色酵母米が溶融した脂質担体マトリックスに組み込まれるまで、紅色酵母米を溶融した1つ以上の脂質担体成分と組み合わせるステップと、
(iii)結果として得られた混合物をあらゆる残りの脂質担体成分と組み合わせるステップと、
(iv)脂質担体成分が固化するまで、結果として得られた混合物を冷却するステップと、
(v)結果として得られた固体混合物を粉砕し、任意選択で篩過して、造粒物を得るステップと、を含む。
【0051】
好ましくは、本プロセスのステップ(i)において、脂質担体成分は全て、それらが完全に溶融するまで加熱される。
【0052】
この調製法は、典型的には、脂質担体成分のうちの1つ以上を完全に溶融するまで加熱する(65~80℃)ことを伴う。塊が軟化し始めるまで、加熱を85℃~105℃の一定の温度で提供した。
【0053】
賦形剤が完全に溶融すると、紅色酵母米を少量ずつに分けて徐々に添加し、紅色酵母米が溶融したマトリックスに完全に組み込まれるまで、溶融した塊の温度が前述の最適範囲に戻ることを可能にする。このようにして得られた塊を冷却し、ミルで破砕し、1mmの篩で較正して、造粒物を形成する。
【0054】
二成分系の融点は、その組成、すなわち、担体の選択及びその系中の薬物の重量分率に依存する。ホットメルト法による固体分散体の形成のための重要なパラメータは、溶融形態での薬物と担体の混和性である。別の重要なパラメータは、薬物及び担体の熱安定性である。(Savjani,Gaijar,Savjani(2012);ISRN Pharm.195727)。
【0055】
封入RYRを適切な賦形剤と混合して、必要な剤形を得る。本プロセスは、直接混合及び直接圧縮に好適である。このようにして得られたブレンドを使用して、好適なパンチを備えた回転式錠剤圧縮機での圧縮、又はカプセル充填機を使用したカプセル封入、又は適切な包装機によるサシェ又はスティックパックへの投薬によって、完成した剤形を調製することができる。
【0056】
本発明の使用
本発明は、高コレステロール血症又は高脂血症の治療又は予防のための、本明細書に開示される組成物の使用も提供する。
【0057】
本発明は、高コレステロール血症又は高脂血症の治療又は予防のための、薬剤の製造のための本明細書に開示される組成物の使用を提供する。
【0058】
高コレステロール血症(及び高脂血症)は、冠動脈疾患、脳血管疾患、及び末梢動脈疾患の周知の危険因子である。実際には、基礎血漿コレステロールレベルのあらゆる低下は、心血管系合併症(心筋梗塞、脳卒中、末梢閉塞性動脈疾患)の発生率の比例的低下と相関している。この相関は、一次予防に関連する最初の臨床事象の前に既に存在し、二次予防に関連する最初の臨床ベント後の心血管事象の前にも存在する。
【0059】
投薬量
本発明の組成物は、高コレステロール血症及び高脂血症の治療又は予防に有用である。
【0060】
本組成物は、概して、その投与を必要とする対象、例えば、ヒト又は動物、典型的にはヒトに投与される。
【0061】
本組成物は、典型的には、治療的又は予防的に有用な量で投与される。
【0062】
本組成物は、有益な治療効果を維持するために長期間にわたって投与されてもよく、又は短期間のみ投与されてもよい。
【0063】
組み合わせの各々の成分の典型的な1日用量は、体重1kg当たり100pg~100mg、より典型的には体重1kg当たり5ng~25mg、より通常では体重1kg当たり10ng~15mg(例えば、10ng~10~20mg、より典型的には1kg当たり1μg~1kg当たり20mg、例えば、1kg当たり1μg~10mg)の範囲内とすることができるが、必要に応じてより高い用量又はより低い用量が投与されてもよい。
【0064】
本組成物は、例えば、0.1~1000mg、1~800mg、5~700mg、10~500mg、25~400mg、又は50~350mgの用量の範囲内で経口投与されてもよい。
【0065】
本組成物の1日用量の特定の例は、100、200、300、600、900、1200、1500、及び1800mgである。
【0066】
モナコリンK 1.75w/w%が規格化された紅色酵母米の組成物の場合、この投薬量範囲は、典型的には、1.75mg~約35mgのモナコリンKの1日用量に対応する。
【0067】
製剤
一実施形態では、脂質封入紅色酵母米組成物は、経口剤形として提供される。経口剤形としては、錠剤(コーティングあり若しくはコーティングなし)、カプセル(硬質シェル若しくは軟質シェル)、カプレット、丸剤、トローチ剤、シロップ、溶液、散剤、顆粒剤、エリキシル剤及び懸濁剤、舌下錠剤、ウエハ、又は口腔パッチなどのパッチが挙げられる。
【0068】
したがって、本発明の一実施形態では、脂質封入紅色酵母米組成物は、錠剤で提示される。
【0069】
典型的には、錠剤は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。薬学的に許容される賦形剤は、例えば、担体(例えば、固体、液体、若しくは半固体担体)、アジュバント、希釈剤、充填剤若しくは増量剤、造粒剤、コーティング剤、放出制御剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、防腐剤、抗酸化剤、緩衝剤、懸濁剤、増粘剤、香味剤、甘味料、味覚マスキング剤、安定剤、又は医薬組成物に従来使用されている任意の他の賦形剤から選択することができる。
【0070】
好ましくは、本発明の組成物は、1つ以上の薬学的に許容される充填剤又は増量剤とともに製剤化される。
【0071】
賦形剤の例としては、無水リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロース、クロスポビドン、並びにヒドロキシプロピルセルロース及びマルトデキストリンが挙げられる。
【0072】
一実施形態では、脂質封入紅色酵母米組成物は、カプセルで提供される。
【0073】
典型的には、カプセルは、1つ以上の薬学的又は栄養補助的に許容される賦形剤を含む。薬学的又は栄養補助的に許容される賦形剤は、例えば、担体(例えば、固体、液体、若しくは半固体担体)、アジュバント、希釈剤、充填剤若しくは増量剤、造粒剤、コーティング剤、放出制御剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、防腐剤、抗酸化剤、緩衝剤、懸濁剤、増粘剤、香味剤、甘味料、味覚マスキング剤、安定剤、又は医薬組成物に従来使用されている任意の他の賦形剤から選択することができる。
【0074】
賦形剤の例としては、無水リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素、マルトデキストリン、カルボキシメチルセルロース、クロスポビドン、及びヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0075】
一実施形態では、脂質封入紅色酵母米組成物は、造粒物として提供される。造粒物は、サシェ又はスティックパックに包装されてもよい。
【0076】
造粒物は、当該技術分野で既知の乾式又は湿式造粒技法によって調製されてもよい。
【0077】
【実施例】
【0078】
封入紅色酵母米の溶解分析
溶解分析用の試料の調製は、70~75℃の溶融温度を使用して、記載した一般的な手順に従った。紅色酵母米が溶融したマトリックスに完全に組み込まれた後、得られた塊を30~42℃の温度まで冷却する。
【0079】
溶解研究の目的は、以下の組成物を含むモナコリンKの溶解プロファイルに対する脂質封入の影響を比較することであった。
【表5】
【表6】
【0080】
溶解試験
1gの原材料を、500mlの溶解媒体である0.05%SDSを含む50mMリン酸緩衝液(pH6.8)に混合した。溶解試験を、6つの容器を含むUSP溶解装置2(パドル、37℃±0.5℃)を使用して行った。パドル回転速度は50rpmであった。各時点(t=2分、5分、10分、15分、20分、40分、60分、120分、及び180分)で、約3mlの溶液をサンプリングし、RC(0.2μm)により濾過した。濾過した試料を、HPLC-UV(内部法0028 rev 03)を用いて分析して、各時点でのモナコリンKの溶解量を決定した。全ての材料について、溶解モナコリンK(MK)の相対量を以下のように計算した。
【数2】
【0081】
選択した時点iでの時間に対する溶解MK%の曲線の微分値に近似させるために、溶解MK%のi時点での変動率を以下のように計算した。
【数3】
【0082】
統計的評価は、(5分、10分、15分、20分、40分、6分、120分、及び180分時点での)造粒RYRと古典的RYRとの間の変動率の差に統計的に関連性があるかを決定することであった。一元配置分散分析を使用して、試料RYR、G0321、及びG0421における変動率(VR)の手段の同等性を試験した。各試料は、6つのデータ点のセットを含んだ。Minitab Softwareを用いて統計分析を行った。
【0083】
結果
異なる時点で試料RYR、G0321、及びG0421に行った一元配置分散分析試験は、脂質封入組成物G0421及びG0321の溶解曲線とRYR(脂質封入紅色酵母米ではない)の溶解曲線との間の統計的に有意な差(p<0.05)を支持した。
【0084】
G0321及びG0421はいずれも、RYRと比較して、有意な優れた溶解速度を示した。
【表7】
【0085】
封入紅色酵母米の安定性分析
安定性研究の目的は、組成物を含むモナコリンKの溶解プロファイルに対する脂質封入の影響を比較することであった。
【0086】
この研究のために、以下の製剤を調製した。
【表8】
【表9】
【0087】
いずれの製剤も、前方ブリスターがPVC/PVDC(250/40ミクロン)から成り、後方ブリスターがアルミニウムから成る同じブリスター中に保管した。保管条件は、40℃及び75%相対湿度(RH)で6ヶ月間であった(標準加速安定性試験)。
【0088】
モナコリンK含有量を、HPLC-DADを用いて、0、1、3、及び6ヶ月後に分析した。
【0089】
結果を表2及び
図2に示す。封入紅色酵母米を含む製剤は、全ての時点後に、非封入紅色酵母米と比較して、有意に高い安定性を示した。
【表10】
【0090】
造粒物の調製及び粒度分布分析
3つの造粒物(a)~(c)を、以下の記述に記載のプロセスに従って調製した:
-脂質担体成分のうちの1つ以上を、少なくとも部分的に溶融するまで、好ましくは完全に溶融するまで加熱すること、
-紅色酵母米が溶融した脂質担体マトリックスに組み込まれるまで、紅色酵母米を溶融した1つ以上の脂質担体成分と組み合わせること、
-結果として得られた混合物をあらゆる残りの脂質担体成分と組み合わせること、
-脂質担体成分が固化するまで、結果として得られた混合物を冷却すること、及び
-結果として得られた固体混合物を粉砕し、任意選択で篩過して、造粒物を得ること。
【0091】
これらの造粒物を調製する際に、溶融相温度及び混合速度(塊形成のため)をわずかに変化させた。
【表11】
【0092】
粒度分布測定を、Mastersizer 3000(Malvern-Panalytical)を使用して、ISO 13320:2020に従うレーザー光散乱(LLS)により行い、試料をそのまま(乾燥粉末)分析した。
【0093】
粒度パラメータ(Dv(10)、Dv(50)、Dv(90))を、体積での等価球径で表す。等価球径は、レーザー回折分析から得た直径である。これは、分析した粒子の体積と同等の体積を有する球体の直径である。
【0094】
造粒物の調製の際に、3つの造粒物(a)~(c)の各々が、許容範囲内の化学的及び物理的特性を有することが見出された。
【0095】
製造の観点から、造粒物(b)が最適であった。これは、この造粒物の粒度分布が流動性を改善し(造粒物(a)及び(c)と比較して)、次いで、その後の製剤化ステップ(混合及び最終的には錠剤化)中に造粒物の取り扱いの容易さを改善したためである。
【国際調査報告】