(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】薬剤送達装置の意図しない作動を防止するためのアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20241010BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61M5/32 510P
A61M5/20 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525450
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2022078631
(87)【国際公開番号】W WO2023072625
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オスカル・アレクサンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ザンデル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・カールソン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE06
4C066HH01
(57)【要約】
薬剤送達装置(1)のための、薬剤送達装置(1)の意図しない作動を防止するためのアセンブリが、近位端および遠位端を有するハウジング(3)であって、近位端は近位端開口(6)を有する、ハウジング(3)と、近位端開口(6)から延在する伸長位置から、ハウジング(3)内へさらに移動している後退位置まで、軸方向に移動するように構成された送達部材カバー(17)と、を含み、送達部材カバー(17)は、ハウジング(3)の遠位端に向かって軸方向に延在するように構成された半径方向に可撓性の第1のアームを有する。ハウジング(3)は、送達部材カバー(17)が後退位置にあるときに第1のアームを受容するように構成された半径方向空間を形成する内部外壁および内部内壁を有する。これらの壁の一方はガイド面を有し、第1のアームは、送達部材カバー(17)が後退位置に向かって移動するときにガイド面と協働するように構成され、壁の他方は、ガイド面より近位端からさらに離れて配置された半径方向停止面を有し、ガイド面は、閾値より低い第1の軸方向速度で送達部材カバー(17)が後退位置に向かって移動する場合に第1のアームが半径方向空間内へ移動することを可能にする第1の量で第1のアームを半径方向に屈曲させるように構成され、ガイド面は、閾値以上の第1の軸方向速度で送達部材カバー(17)が後退位置に向かって移動する場合に第1のアームが半径方向停止面に向かって偏向して半径方向停止面と衝突するように、第1の量より大きい第2の量で第1のアームを半径方向に屈曲させるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置(1)のための、前記薬剤送達装置(1)の意図しない作動を防止するためのアセンブリであって、
近位端(3a)および遠位端(3b)を有するハウジング(3)であって、前記近位端(3a)は近位端開口(6)を有する、ハウジング(3)と、
前記近位端開口(6)から延在する伸長位置から、前記ハウジング(3)内へさらに移動している後退位置まで、軸方向に移動するように構成された送達部材カバー(17)と、
を含み、
前記送達部材カバー(17)は、前記ハウジング(3)の前記遠位端(3b)に向かって軸方向に延在するように構成された半径方向に可撓性の第1のアーム(17c)を有し、
前記ハウジング(3)は、内部外壁(3c)と、前記内部外壁(3c)から半径方向に離間した内部内壁(3e)と、を有し、前記内部外壁(3c)と前記内部内壁(3e)との間には、前記送達部材カバー(17)が前記後退位置にあるときに前記第1のアーム(17c)を受容するように構成された半径方向空間(33)が形成され、
前記内部外壁(3c)および前記内部内壁(3e)の一方は、前記ハウジング(3)の半径方向平面に対して傾斜するガイド面(3d)であって、前記送達部材カバー(17)が前記伸長位置にあるとき、前記第1のアーム(17c)より前記ハウジング(3)の前記遠位端(3b)に近く配置される、ガイド面(3d)を有し、前記第1のアーム(17c)は、前記送達部材カバー(17)が前記後退位置に向かって移動するときに前記ガイド面(3d)と協働するように構成され、
前記内部外壁(3c)および前記内部内壁(3e)の他方は、前記ガイド面(3d)より前記近位端(3a)からさらに離れて配置された半径方向停止面(3f)を有し、
前記ガイド面(3d)は、閾値より低い第1の軸方向速度(v0)で前記送達部材カバー(17)が前記後退位置に向かって移動する場合に前記第1のアーム(17c)が前記半径方向空間(33)内へ移動することを可能にする第1の量で前記第1のアーム(17c)を半径方向に屈曲させるように構成され、
前記ガイド面(3d)は、閾値以上の第1の軸方向速度(v0)で前記送達部材カバー(17)が前記後退位置に向かって移動する場合に前記第1のアーム(17c)が前記半径方向停止面(3f)に向かって偏向して前記半径方向停止面(3f)と衝突するように、前記第1の量より大きい第2の量で前記第1のアーム(17c)を半径方向に屈曲させて、前記送達部材カバー(17)が前記後退位置に達することを防止するように構成されている、
アセンブリ。
【請求項2】
前記ガイド面(3d)は前記内部外壁(3c)に設けられ、前記半径方向停止面(3f)は前記内部内壁(3e)に設けられている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記ガイド面(3d)は、前記近位端(3a)から前記遠位端(3b)に向かう方向において前記内部外壁(3c)と前記内部内壁(3e)との間の距離を徐々に減少させるように傾斜している、請求項1または2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記第1のアーム(17c)は、前記ガイド面(3d)と協働して前記第1のアーム(17c)を半径方向に屈曲させるように構成された第1のアーム遠位端(17e)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記送達部材カバー(17)は近位管状部分(17a)を有し、前記近位管状部分(17a)から前記第1のアーム(17c)が前記ハウジング(3)の前記遠位端(3b)に向かって延在し、前記第1のアーム(17c)は、前記第1のアーム遠位端(17e)を前記近位管状部分(17a)に接続する本体(17d)を有し、前記第1のアーム遠位端(17e)は、前記本体(17d)より大きな半径方向厚さを有する、請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記第1のアーム遠位端(17e)は、前記本体(17d)の円周方向における広さより大きい前記ハウジング(3)の円周方向における広さを有する、請求項5に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記半径方向空間(33)は、前記第1のアーム(17c)を受容して、前記送達部材カバー(17)が前記後退位置に達することを可能にするような寸法の軸方向広さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記半径方向停止面(3d)は、前記ハウジング(3)の円周方向に延在する棚である、請求項1から7のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記送達部材カバー(17)を前記伸長位置に向かって付勢するように構成された第1の弾性部材(15)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記第1の弾性部材(15)は剛性を有し、前記閾値は前記剛性に依存する、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記第1の量は前記ガイド面(3d)の半径方向広さより大きいが、前記半径方向空間(33)の半径方向広さ未満である、請求項1から10のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記第2の量は、前記ガイド面(3d)の半径方向広さ(x)、前記ガイド面(3d)と前記ハウジング(3)の長手軸との間の角度(β)、前記ガイド面(3d)の遠位端と前記半径方向停止面(3f)との間の軸方向距離(d)、前記第1のアーム(17c)の振幅、および前記送達部材カバー(17)の前記半径方向停止面(3f)に衝突した後の第2の軸方向速度(v1)、の1つまたは複数に依存する、請求項1から11のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記アセンブリは、
【数1】
【数2】
との関係を満たすように設計され、v1は、前記半径方向停止面(3f)に衝突した後の前記送達部材カバー(17)の第2の軸方向速度であり、xは前記ガイド面(3d)の半径方向広さであり、lは、前記ガイド面(3d)が前記遠位端(3b)に向かう方向において終了した後に前記半径方向停止面(3f)に達するために乗り越えるべき前記第1のアーム(17c)の前記内部外壁(3c)からの隙間であり、dは前記ガイド面(3d)の遠位端と前記半径方向停止面(3f)との間の軸方向距離であり、βは前記ハウジング(3)の長手軸に対する前記ガイド面(3d)の傾斜角度であり、そしてωは前記第1のアーム(17c)の振幅である、請求項1から12のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のアセンブリを含む薬剤送達装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して薬剤送達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動注射器のような薬剤送達装置は、ハウジングと、ハウジングに対して移動可能である針カバーと、を含むことができる。針カバーは薬剤送達装置の初期状態においてハウジングから突出することができる。針カバーをハウジング内へさらに押し込むことによって装置を作動させることができる。これは典型的には薬剤送達装置を注射部位に向かって押すことによって実行される。この構造のため、たとえば薬剤送達装置を誤って落とすことによって装置が意図せず作動してしまう危険性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の目的は、先行技術の問題を解決する、または少なくとも軽減する薬剤送達装置のためのアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって本開示の第1の態様によれば、薬剤送達装置のための、薬剤送達装置の意図しない作動を防止するためのアセンブリが提供され、これは、近位端および遠位端を有するハウジングであって、近位端は近位端開口を有する、ハウジングと、近位端開口から延在する伸長位置から、ハウジング内へさらに移動している後退位置まで、軸方向に移動するように構成された送達部材カバーと、を含み、送達部材カバーは、ハウジングの遠位端に向かって軸方向に延在するように構成された半径方向に可撓性の第1のアームを有し、ハウジングは、内部外壁と、内部外壁から半径方向に離間した内部内壁と、を有し、内部外壁と内部内壁との間には、送達部材カバーが後退位置にあるときに第1のアームを受容するように構成された半径方向空間が形成され、内部外壁および内部内壁の一方は、ハウジングの半径方向平面に対して傾斜するガイド面であって、送達部材カバーが伸長位置にあるとき、第1のアームよりハウジングの遠位端に近く配置される、ガイド面を有し、第1のアームは、送達部材カバーが後退位置に向かって移動するときにガイド面と協働するように構成され、内部外壁および内部内壁の他方は、ガイド面より近位端からさらに離れて配置された半径方向停止面を有し、ガイド面は、閾値より低い第1の軸方向速度で送達部材カバーが後退位置に向かって移動する場合に第1のアームが半径方向空間内へ移動することを可能にする第1の量で第1のアームを半径方向に屈曲させるように構成され、ガイド面は、閾値以上の第1の軸方向速度で送達部材カバーが後退位置に向かって移動する場合に第1のアームが半径方向停止面に向かって偏向して半径方向停止面と衝突するように、第1の量より大きい第2の量で第1のアームを半径方向に屈曲させて、送達部材カバーが後退位置に達することを防止するように構成されている。
【0005】
したがって、送達部材カバーがハウジング内へ移動するときのその第1の軸方向速度が十分に高い、すなわち閾値以上である場合、送達部材カバーは、後退位置に到達することが防止される。たとえば、このアセンブリを含む薬剤送達装置が誤って落とされ、送達部材がハウジング内へ急速に移動すれば、送達部材カバーは、その後退位置に到達することが防止されることになり、したがって薬剤送達装置を作動または起動させて薬剤を放出することにはならない。
【0006】
送達部材カバーは、送達部材カバーが後退位置に達すると薬剤送達装置を作動させるように構成することができる。
【0007】
このアセンブリはパワーパックアセンブリを含むことができ、送達部材カバーは、送達部材カバーが後退位置に達するとパワーパックアセンブリを起動させるように構成することができる。
【0008】
本開示において、「遠位方向」という用語が使用されるとき、これは、薬剤送達装置の使用中、用量送達部位から離れる方向を指す。「遠位部分/端」という用語が使用されるとき、これは、薬剤送達装置の使用中、用量送達部位から最も遠くに配置されている、送達装置の部分/端、またはその部材の部分/端を指す。対応して、「近位方向」という用語が使用されるとき、これは、薬剤送達装置の使用中、用量送達部位に向かう方向を指す。
【0009】
「近位部分/端」という用語が使用されるとき、これは、薬剤送達装置の使用中、用量送達部位に最も近く配置されている、送達装置の部分/端、またはその部材の部分/端を指す。
【0010】
さらに、「長手方向の」、「長手方向に」、「軸方向に」または「軸方向の」という用語は、通常は装置またはその構成要素に沿って装置および/または構成要素の最長伸長の方向に、近位端から遠位端まで延在する方向を指す。
【0011】
同様に、「横方向」、「横方向の」および「横方向に」という用語は、長手方向に対して略垂直な方向を指す。
【0012】
さらに、「円周」、「円周方向の」、または「円周方向に」という用語は、軸、通常は装置および/または構成要素の最長伸長の方向に延在する中心軸に対する円周または円周方向を指す。
【0013】
同様に、「半径方向の」または「半径方向に」は、軸に対して半径方向に延在する方向を指し、「回転」、「回転の」および「回転式に」は、軸に対する回転を指す。
【0014】
一実施形態によればガイド面は内部外壁に設けられ、半径方向停止面は内部内壁に設けられている。
【0015】
あるいは、ガイド面を内部内壁に設けることができ、半径方向停止面を内部外壁に設けることができる。
【0016】
一実施形態によればガイド面は、近位端から遠位端に向かう方向において内部外壁と内部内壁との間の距離を徐々に減少させるように傾斜している。
【0017】
一実施形態によれば第1のアームは、ガイド面と協働して第1のアームを半径方向に屈曲させるように構成された第1のアーム遠位端を有する。
【0018】
一実施形態によれば送達部材カバーは近位管状部分を有し、近位管状部分から第1のアームがハウジングの遠位端に向かって延在し、第1のアームは、第1のアーム遠位端を近位管状部分に接続する本体を有し、第1のアーム遠位端は、本体より大きな半径方向厚さを有する。
【0019】
一実施形態によれば第1のアーム遠位端は、本体の円周方向における広さより大きいハウジングの円周方向における広さを有する。
【0020】
一実施形態によれば半径方向空間は、第1のアームを受容して、送達部材カバーが後退位置に達することを可能にするような寸法の軸方向広さを有する。
【0021】
一実施形態によれば半径方向停止面は、ハウジングの円周方向に延在する棚である。
【0022】
一実施形態は、送達部材カバーを伸長位置に向かって付勢するように構成された第1の弾性部材を含む。
【0023】
一実施形態によれば第1の弾性部材は剛性を有し、閾値はその剛性に依存する。
【0024】
閾値は、このアセンブリを含む薬剤送達装置の質量、および/またはこのアセンブリを含む薬剤送達装置の所定の落下高さにも依存し得る。
【0025】
一実施形態によれば第1の量はガイド面の半径方向広さより大きいが、半径方向空間の半径方向広さ未満である。
【0026】
一実施形態によれば第2の量は、ガイド面の半径方向広さ、ガイド面とハウジングの長手軸との間の角度、ガイド面の遠位端と半径方向停止面との間の軸方向距離、第1のアームの振幅、および半径方向停止面に衝突した後の第2の軸方向速度、の1つまたは複数に依存する。
【0027】
一実施形態によればこのアセンブリは、
【数1】
【数2】
次の関係を満たすように設計されている。ここでv1は、半径方向停止面に衝突した後の送達部材カバーの第2の軸方向速度であり、xはガイド面の半径方向広さであり、lは、ガイド面が遠位端に向かう方向において終了した後に半径方向停止面に達するために乗り越えるべき第1のアームの内部外壁からの隙間であり、dはガイド面の遠位端と半径方向停止面との間の軸方向距離であり、βはハウジングの長手軸に対するガイド面の傾斜角度であり、そしてωは第1のアームの振幅である。
【0028】
第2の態様によれば、第1の態様のアセンブリを含む薬剤送達装置が提供される。
【0029】
薬剤送達装置は自動注射器とすることができる。
【0030】
一般に、請求項に使用されるすべての用語は、本明細書で明示的に他の方法で定義されていない限り、当該技術分野におけるその通常の意味にしたがって解釈されるべきである。「部材、装置、構成要素、手段など」へのすべての言及は、明示的に他の方法で述べられていない限り、部材、装置、構成要素、手段などの少なくとも1つの例を指すものとして公然と解釈されるべきである。
【0031】
添付の図面を参照して、例として、本発明のコンセプトの具体的な実施形態を次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図5】薬剤送達前にキャップが取り外された後の薬剤送達装置の近位部分の長手方向断面を示す。
【
図6】送達部材カバーが衝撃を受けるが、その後退位置への移動が防止されているときの状況を示す。
【
図7】送達部材カバーが後退位置に達したときの状況を示す。
【
図8】薬剤送達装置の意図しない作動を防止するためのアセンブリを示す領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照して、次に本発明のコンセプトを以降でより十分に説明する。しかしながら、本発明のコンセプトは多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的で完全になり、本発明のコンセプトの範囲を当業者に十分に伝えるように、例として提供される。説明全体を通じて、同様の番号は同様の部材を指す。
【0034】
本開示は薬剤送達装置のアセンブリに関するものである。このアセンブリはハウジングおよび送達部材カバーを含む。このアセンブリは、薬剤送達装置が意図せずに起動することを防止するように構成されている。このアセンブリを含む薬剤送達装置は、ハウジングに対する薬剤送達部材カバーの軸方向移動によって起動するように設計されている。ハウジングに対する薬剤送達カバーのこの軸方向移動の結果、薬剤送達装置に収容される薬剤が薬剤送達部位に送達される。
【0035】
アセンブリの詳細な説明を薬剤送達装置の主な一例の文脈において以下に提供する。ハウジングに対する送達部材カバーの軸方向移動によって起動する他のタイプの薬剤送達装置とともにこのアセンブリを使用することもできるということが留意されるべきである。
【0036】
図1は薬剤送達装置1の一例を示す。薬剤送達装置1はこの例において自動注射器である。
【0037】
薬剤送達装置1はハウジング3を含む。ハウジング3は近位端3aおよび遠位端3bを有する。ハウジング3は中空であり、略管状とすることができる。ハウジング3は近位端開口を含むことができる。
【0038】
薬剤送達装置1はキャップ5を含む。キャップ5は、ハウジング3の近位端3aに、および/またはハウジング3の近位端開口から突出する送達部材カバー(
図1には示されていない)に取り付けることができる。
【0039】
【0040】
薬剤送達装置1は、シリンジ7のような薬剤容器を収容するように構成されている。シリンジ7は、送達部材、たとえば、針またはノズルを含む。送達部材にはたとえば、可撓性送達部材シールド9、たとえば、可撓性針シールド(FNS)および/または剛性送達部材シールド11、たとえば、剛性針シールド(RNS)、または両方を取り付けることができる。送達部材に送達部材シールド9と剛性送達部材シールド11との両方が取り付けられている一例において、剛性送達部材シールド11は可撓性送達部材シールド9の周囲に配置することができる。
【0041】
例示されたキャップ5は、剛性送達部材シールド11と係合するように構成された送達部材シールドリムーバ13を含む。送達部材シールドリムーバ13はたとえば、剛性送達部材シールド11と係合するように構成された半径方向内向き延在タブ13aを含むことができる。キャップ5が取り外されると、これは可撓性送達部材シールド9と剛性送達部材シールド11とを一緒に引き連れる。
【0042】
薬剤送達装置は前述の送達部材カバー17を含む。送達部材カバー17はハウジング3に摺動可能に配置され、ハウジング3の近位端開口6から延在する。
【0043】
送達部材カバー17は、伸長位置から、ハウジング3が伸長位置におけるより送達部材カバー17の大部分を受容する後退位置まで、ハウジング3に対して軸方向に移動するように構成されている。
【0044】
好ましい一例において、送達部材カバー17は伸長位置に向かって付勢されている。このアセンブリは、送達部材カバー17を伸長位置に向かって付勢するように構成された第1の弾性部材15を任意選択で含む。第1の弾性部材15はたとえばコイルバネとすることができる。
【0045】
第1の弾性部材15はたとえば、送達部材カバー17の半径方向表面とハウジング3の内側に設けられた半径方向表面との間で送達部材カバー17の内側で延在するように配置することができる。
【0046】
送達部材カバー17は、近位管状部分17aと、ハウジング3の遠位端3bに向かって遠位方向に延在する脚17bと、を有する。
【0047】
薬剤送達装置1は薬剤容器ホルダ19を含む。薬剤容器ホルダ19はハウジング3内に配置され、シリンジ7のような薬剤容器を保持するように構成されている。
【0048】
ハウジング3はたとえば、薬剤容器ホルダ19が近位方向に、すなわち、ハウジング3の近位端3aに向かって移動することを防止する半径方向内向きに延在する突起を含むことができる。
【0049】
薬剤送達装置1はプランジャロッド21を含む。プランジャロッド21は、薬剤容器、すなわち、この例においてシリンジ7内へ延在するように構成されている。
【0050】
プランジャロッド21は、ハウジング3の内側で近位方向に移動するように構成されている。プランジャロッド21は、初期軸方向位置から、初期軸方向位置よりハウジング3の近位端3aに近い最終位置まで移動するように構成されている。
【0051】
好ましい一例において、プランジャロッド21は半径方向凹部21aを含む。あるいは、プランジャロッドは、プランジャロッドの壁の外面から半径方向に延在する突起を含む。好ましい一例において、プランジャロッド21は中空である。あるいは、プランジャロッドは管状部分およびロッド部分を含む。
【0052】
好ましい一例において、薬剤送達装置1はロッド23および第2の弾性部材25を含む。ロッド23は、プランジャロッド21内に配置されるように構成され、第2の弾性部材25、たとえばバネは、ロッド23の周囲に配置することができる。あるいは、第2の弾性部材25はプランジャロッドの周囲に部分的に配置されてもよく、その場合、薬剤送達装置にはロッド23がない。
【0053】
別の一例において、薬剤送達装置は、ガスキャニスタと、プランジャロッドを初期軸方向位置から駆動するためにガスキャニスタに接続されたバルブと、を含む。
【0054】
一例において、薬剤送達装置がロッド23および第2の弾性部材25を含む場合、薬剤送達装置1はU字形ブラケット27を含むことができる。U字形ブラケット27は、U字形のその底部がハウジング3の遠位端3bの方を向くように配置されている。第2の弾性部材25は、U字形ブラケット27をハウジング3の遠位端3bに向かって付勢するように構成されている。
【0055】
好ましい一例において、薬剤送達装置1は回転体29および後部キャップ構造31を含む。プランジャロッド21が第2の弾性部材25によってハウジング3に対して近位方向に付勢される一例において、回転体29および後部キャップ構造31は、第2の弾性部材25からの付勢力に対抗してプランジャロッド21を解放可能に保持するように構成されている。この例において、後部キャップ構造31は、プランジャロッド21と係合してプランジャロッド21をその初期軸方向位置に維持するように構成されている。後部キャップ構造31は、半径方向可撓性アーム31bが設けられた管状近位部分31aを有する。各可撓性アーム31bは、薬剤送達装置1を作動または起動させて薬剤送達を実行する前にプランジャロッド21のそれぞれの半径方向凹部21aと係合するように構成されている。
【0056】
回転体29は管状近位部分31aの半径方向外側およびその周囲に配置されている。回転体29は、薬剤送達装置1の作動前に保持される第1の回転位置から、第2の回転位置まで、管状近位部分31aに対して回転するように構成されている。
【0057】
回転体29は、回転体29が第1の回転位置にあるとき、可撓性アーム31bを押圧し、可撓性アーム31bが半径方向凹部21aのそれぞれの1つから外れることを防止する内面を有する。
【0058】
回転体29は、回転体29が第1の回転位置にあるとき、可撓性アーム31bから円周方向にずれて配置されている内側凹部または窓が設けられた内面を有する。
【0059】
回転体29は、送達部材カバー17が伸長位置から後退位置に向かって移動するときに送達部材カバー17と協働するように構成されている。回転体29は、送達部材カバー17の線形移動を回転に変換するように構成されている。回転体29は、送達部材カバー17の脚17bの半径方向内向き延在ピンと協働するように構成されたガイド構造29aを有し、送達部材カバー17が後退位置に向かって移動すると、ピンがガイド構造29aのカム面に接触して移動するようになっている。これにより、回転体29が第1回転位置から第2の回転位置まで回転する。送達部材カバー17が後退位置に達すると、回転体29の内面の内側凹部または窓が後部キャップ構造31の可撓性アーム31bと位置を合わせる。可撓性アーム31bはこれによって半径方向外向きに屈曲してプランジャロッド21の半径方向凹部21aから外れることができ、プランジャロッド21はしたがって解放されて初期軸方向位置から最終位置に向かって軸方向に移動する。
【0060】
プランジャロッド21が解放されてその最終位置に達すると、先に後部キャップ構造31と係合していたU字形ブラケット27が解放され、たとえば、後部キャップ構造31の内側の半径方向表面と衝突する。これによりカチッという音が聞こえ、薬剤送達動作が完了したことを示す。
【0061】
ハウジング3および送達部材カバー17は、次に説明するように薬剤送達装置1の意図しない作動を防止するためのアセンブリを形成またはその一部を形成する。
【0062】
ここで
図3に移ると、送達部材カバー17がより詳細に示されている。送達部材カバー17は半径方向に可撓性の第1のアーム17cを含む。送達部材カバー17はまた、たとえば第1のアーム17cから円周方向に180°ずれて配置された、第1のアーム17cと同一である半径方向に可撓性の第2のアームを含むことができる。
【0063】
送達部材カバー17は近位管状部分17aを含む。第1のアーム17cは近位管状部分17aから遠位方向に延在する。
【0064】
第1のアーム17cは、近位管状部分17aから遠位に延在する本体17dを有する。第1のアームは第1のアーム遠位端17eを有する。本体17dは第1のアーム遠位端17eを近位管状部分17aに接続する。
【0065】
この例によれば、第1のアーム遠位端17eは本体17dより大きな半径方向厚さを有する。
【0066】
第1のアーム遠位端17eは、円周方向における本体17dの広さより大きい送達部材カバー17の円周方向における広さを有する。
【0067】
図4はハウジング3の正面斜視図を示す。ハウジング3は内部外壁3cおよび内部内壁3eを有する。
【0068】
内部内壁3eは内部外壁3cから半径方向に離間している。内部外壁3cと内部内壁3eとの間に半径方向空間33が形成されている。半径方向空間33は、送達部材カバー17が後退位置にあるとき、第1のアーム17c、特に第1のアーム遠位端17eを受容することができるような寸法である。
【0069】
内部外壁3cはガイド面3dを有する。ガイド面3dはハウジング3の半径方向平面に対して傾斜している。ガイド面3dは、内部外壁3cと内部内壁3eとの間の距離が近位端3aからハウジング3の遠位端3bに向かう方向において徐々に減少するように傾斜している。ガイド面3dは坂路形状を形成することができる。
【0070】
ガイド面3dはハウジング3の近位端3aの方を向いている。
【0071】
ガイド面3dは、ハウジング3内へ半径方向内向きに突出する構造に設けることができる。
【0072】
内部内壁3eは半径方向停止面3fを有する。半径方向停止面3fは、ハウジング3の円周方向に延在する棚または突起とすることができる。
【0073】
ガイド面3dは半径方向停止面3fと軸方向に位置を合わせて配置されている。
【0074】
ガイド面3dは、半径方向停止面3fよりハウジング3の近位端3aに近く設けられている。
【0075】
ガイド面3dおよび半径方向停止面3fは、送達部材カバー17が後退位置にあるとき、第1のアーム遠位端17eよりハウジング3の遠位端3bに近く設けられている。
【0076】
第1のアーム17cは、送達部材カバー17が伸長位置から後退位置に向かって移動するときにガイド面3dと協働するように構成されている。薬剤送達装置1の設計者によって設定された、閾値を下回る第1の軸方向速度で送達部材カバー17が移動する場合、第1のアーム17c、特に第1のアーム遠位端17eはガイド面3dに接触し、第1のアーム17cが内部外壁3cと内部内壁3dとの間を移動して半径方向空間33内へ入るように、半径方向内向きに第1の量で屈曲する。送達部材カバー17はしたがってその後退位置を得ることができる。
【0077】
閾値以上である第1の軸方向速度で送達部材カバー17が移動すれば、第1のアーム遠位端17eはより強い力でガイド面3dに接触し、第1の量より大きい第2の量で半径方向内向きに屈曲する。第1のアーム17cは半径方向停止面3fに向かって偏向して半径方向停止面3fと衝突する。送達部材カバー17はしたがって、後退位置に達することが防止されることになる。薬剤送達装置が回転体29および後部キャップ構造31を含む一例において、結果として、回転体29はその第2の回転位置に到達することができず、プランジャロッド21は後部キャップ構造31とのその係合から解放されないことになる。あるいは、薬剤送達装置が回転体および後部キャップ構造の代わりにガスキャニスタおよびバルブを含む一例において、送達部材カバー17が後退位置に達することが防止されれば、送達部材カバー17は、たとえば、バルブを回転または摺動させることによってバルブを作動させて、プランジャロッドを推進してハウジング3に対して近位方向に移動するためのガスを放出することができない。
【0078】
閾値はたとえば、一定の質量を有する薬剤送達装置1が所定の高さから落とされる場合に予想される力に基づいて設定することができる。
【0079】
図5は、キャップ5が取り外され、送達部材カバー17が伸長位置にあるときの薬剤送達装置1の近位部分の長手方向断面を示す。
【0080】
第1のアーム17cはガイド面3dおよび半径方向停止面3fに対して近位に配置されている。第1のアーム遠位端17eはしたがってガイド面3dおよび半径方向停止部3fよりハウジング3の近位端3aに近く配置されている。
【0081】
第1のアーム遠位端17eはガイド面3dと軸方向および半径方向に位置を合わせて配置されている。
【0082】
図6は、閾値以上である第1の軸方向速度v0で送達部材カバー17が後退位置に向かって移動したときの状況を示す。第1のアーム遠位端17eの遠位側端面17fがしたがってガイド面3dに接触し、これは強い力のため第1のアーム17cを第2の量で半径方向内向きに偏向させ、第1のアーム遠位端17eの遠位側端面17fが内部内壁3eの半径方向停止面3fに衝突するようになる。送達部材カバー17はしたがって、半径方向停止面3fによって後退位置へ移動することが防止される。
【0083】
図7は、送達部材カバー17が伸長位置から移動して後退位置に達したときを示す。この例において、送達部材カバー17は、閾値を下回る第1の軸方向速度v0で移動した。この場合、第1のアーム遠位端17eの遠位側端面17fがしたがってガイド面3dに接触した結果、第1のアーム17cは、第2の量未満である第1の量で半径方向内向きに屈曲する。第1のアーム17cが半径方向停止面3fと衝突するほど屈曲しないように、第1のアーム遠位端17eの遠位側端面17fがガイド面3dに接触している。代わりに、第1のアーム17cは、内部外壁3cと内部内壁3eとの間において半径方向空間33内へ入るのに十分に屈曲し、送達部材カバー17が後退位置に達することが可能になっている。
【0084】
図8は、第1のアーム17cが半径方向停止面3fと衝突するときのガイド面3dおよび半径方向停止面3fを含む領域の拡大図を示す。
【0085】
以下に示す式を読み取るため、式に使用される各パラメータの意味を示す。v0は送達部材カバー17の第1の軸方向速度であり、これは、ガイド面3dと衝突する前の送達部材カバー17の速度である。「軸方向速度」とは本明細書において、速度の軸方向成分、すなわち、ハウジング3の長手方向軸と平行な成分を意味する。v1は第2の軸方向速度であり、これは、送達部材カバー17がガイド面3dと衝突してガイド面3dから偏向した後のその軸方向速度である。βはハウジング3の長手軸に対するガイド面3dの傾斜の角度である。xはガイド面3dの半径方向広さである。lは、ガイド面3dがハウジング3の遠位端3bに向かう方向において終了した後に第1のアーム遠位端17eが半径方向停止面3fと衝突するために乗り越えることが要求される内部外壁3cからのクリアランスである。dはガイド面3dの遠位端から半径方向停止面3fまでの軸方向距離である。
【0086】
一例によれば、アセンブリが次の関係を満たすように設計されていれば、
【数3】
【数4】
ここでωは第1のアーム17cの振幅であり、閾値以上である第1の軸方向速度v0で送達部材カバー17が後退位置に向かって移動するとき、
図6に示すように、第1のアーム遠位端17eが半径方向停止面3fと衝突することになる結果、ガイド面3dに衝突した後に第2の軸方向速度v1になる。
【0087】
本発明のコンセプトを主にいくつかの例を参照して上で説明してきた。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、添付の請求項によって定義されるような本発明のコンセプトの範囲内で、上に開示されたもの以外の実施形態も同等に可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 薬剤送達装置
3 ハウジング
3a 近位端
3b 遠位端
3c 内部外壁
3d ガイド面
3e 内部内壁
3f 半径方向停止面
5 キャップ
6 近位端開口
7 シリンジ
9 可撓性送達部材シールド
11 剛性送達部材シールド
13 送達部材シールドリムーバ
13a 半径方向内向き延在タブ
15 第1の弾性部材
17 送達部材カバー
17a 近位管状部分
17b 脚
17c 第1のアーム
17d 本体
17e 第1のアーム遠位端
17f 遠位側端面
19 薬剤容器ホルダ
21 プランジャロッド
21a 半径方向凹部
23 ロッド
25 第2の弾性部材
27 U字形ブラケット
29 回転体
29a ガイド構造
31 後部キャップ構造
31a 管状近位部分
31b 可撓性アーム
33 半径方向空間
【国際調査報告】