(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ボールボンド配置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
H01L21/60 301F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525562
(86)(22)【出願日】2021-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-27
(86)【国際出願番号】 SG2021050719
(87)【国際公開番号】W WO2023096567
(87)【国際公開日】2023-06-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515298442
【氏名又は名称】ヘレウス マテリアルズ シンガポール ピーティーイー. リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】リム,ヨウ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】サランガパニ,ムラリ
(72)【発明者】
【氏名】ダヤラン,マリヤッパン
(72)【発明者】
【氏名】チン,シェルン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,メイ ホー
(72)【発明者】
【氏名】ロー,ミュウ ワン
(72)【発明者】
【氏名】タン,チー チョウ
(72)【発明者】
【氏名】パン,イェアン ミー
(72)【発明者】
【氏名】カン,スンシグ
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044FF02
5F044FF04
(57)【要約】
【解決手段】 半導体デバイスのボンドパッドと、ボンドパッドにボールボンディングされたワイヤとを含むボールボンド配置であって、ボンディングされたボールから延びるワイヤが、15~50μmの直径を有し、表面を有する銀系ワイヤ芯を含み、ワイヤ芯が、その表面上に重ねられた被覆層を有し、被覆層が、厚さ1~40nmのパラジウム又はニッケルの内層と、厚さ20~500nmの隣接する金の外層とから構成されている、二重層であり、ボンディングされたボールの表面が70~100%の金被覆率を有する、ボールボンド配置。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスのボンドパッドと、前記ボンドパッドにボールボンディングされたワイヤとを含むボールボンド配置であって、
前記ボンディングされたボールから延びる前記ワイヤが、15~50μmの直径を有し、表面を有する銀系ワイヤ芯を含み、前記ワイヤ芯が、その表面上に重ねられた被覆層を有し、
前記被覆層が、厚さ1~40nmのパラジウム又はニッケルの内層と、厚さ20~500nmの隣接する金の外層とから構成されている、二重層であり、
前記ボンディングされたボールの表面が70~100%の金被覆率を有する、ボールボンド配置。
【請求項2】
前記金外層が、アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を、前記ワイヤの重量に基づいて10~300重量ppmの範囲の合計割合で含む、請求項1に記載のボールボンド配置。
【請求項3】
アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される前記少なくとも1種の構成要素の前記合計割合が、前記金外層の前記金の重量に基づいて300~3500重量ppmの範囲である、請求項2に記載のボールボンド配置。
【請求項4】
前記ワイヤ芯の銀系材料が、ドープされた銀、銀合金、又はドープされた銀合金である、請求項1~3のいずれか一項に記載のボールボンド配置。
【請求項5】
前記銀合金が、パラジウムを唯一の合金元素として含む、請求項4に記載のボールボンド配置。
【請求項6】
アンチモンが前記金外層内に存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載のボールボンド配置。
【請求項7】
前記ボンドパッドが、金属M、90重量%超の金属Mの合金、又は外側金属M(合金)最上層を有する前記金属M以外の金属からなり、前記金属Mが、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム又はニッケルである、請求項1~6のいずれか一項に記載のボールボンド配置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載ののボールボンド配置を製造するための方法であって、以下の工程:
(i)ボンドパッドを有する半導体と、15~50μmの直径を有し、表面を有する銀系ワイヤ芯を含むワイヤとを用意する工程であって、前記ワイヤ芯が、その表面上に重ねられた被覆層を有し、
前記被覆層が、厚さ1~40nmのパラジウム又はニッケルの内層と、厚さ20~500nmの隣接する金の外層とから構成されている、二重層である、工程と、
(ii)前記ワイヤを前記ボンドパッドにボールボンディングする工程であって、前記ボールボンディングが、1.5~2.2の範囲のBSRでFABを形成することを含む、工程と、を含む、方法。
【請求項9】
前記金外層が、アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を、前記ワイヤの重量に基づいて10~300重量ppmの範囲の合計割合で含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される前記少なくとも1種の構成要素の前記合計割合が、前記金外層の前記金の重量に基づいて300~3500重量ppmの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ワイヤ芯の銀系材料が、ドープされた銀、銀合金、又はドープされた銀合金である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記銀合金が、パラジウムを唯一の合金元素として含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アンチモンが前記金外層内に存在する、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ボンドパッドが、金属M、90重量%超の金属Mの合金、又は外側金属M(合金)最上層を有する前記金属M以外の金属からなり、前記金属Mが、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム又はニッケルである、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスのボンドパッドと、ボンドパッドにボールボンディングされたワイヤとを含むボールボンド配置に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
ワイヤボールボンディングは、当技術分野において周知である。ワイヤボールボンディングの第1の工程は、丸線ボンディングワイヤの先端におけるFAB(free air ball)(フリーエアボール)形成である。FAB形成の後に、実際のボールボンディング手順が続く。半導体デバイスのボンドパッドへのFABのボールボンディングは、いわゆるボールボンド配置、又はより正確には、半導体デバイスのボンドパッドと、ボンドパッドにボールボンディングされたワイヤとを含むボールボンド配置の形成をもたらす。ボールボンディングされたワイヤは、その上部に向かって狭くなるボンディングされたボールを含み、ボンディングされたボールは、そこからワイヤがその元の直径で延びるネックを有する。ボールボンディング手順の間、FABは、閉じたベル状の形状を有するボンディングされたボールに変形されており、閉じたベルの底部はボンドパッドとの界面を有し、ワイヤはベルの上部から延びている、すなわち、ワイヤは上記ネックから延びている。
【0003】
用語「ボンドパッド」が、本明細書で使用される。これは、ボンドパッド、特に半導体デバイスのボンドパッドを意味する。ボンドパッドは、金属M若しくは90重量%(% by weight)超の金属Mの合金からなっていてもよく、又は外側金属M(合金)最上層を有する金属M以外の金属からなっていてもよい。そのような最上層は、例えば、0.5~1μmの厚さを有し得る。金属Mは、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム又はニッケル、特にアルミニウム又はニッケルであり得る。ボンドパッドは、例えば、0.2~4μmの全厚を有し得る。
【0004】
韓国特許第101687597(B1)号は、外部金層を有する銀系ボンディングワイヤを開示している。金被覆銀系ボンディングワイヤの先端に大気雰囲気(air atmosphere)中でFABを形成する場合、FABの外表面の金含有量は5~35重量%である。
【0005】
本出願人は、金被覆外層を有し、かつ半導体デバイスのボンドパッドにボールボンディングされる銀系ボンディングワイヤのボールボンド配置が、ボンディングワイヤがワイヤ芯の銀系表面と金被覆外層との間にニッケル又はパラジウムの中間層を有する場合及びFAB形成が1.5~2.2の範囲のBSR(ball size ratio)(ボールサイズ比、ワイヤ直径で割ったFAB直径)で行われる場合、ボンディングされたボールの表面の70~100%の著しく高い金被覆率を示すことを見出した。ボンディングされたボールの表面の70~100%の高い金被覆率は、ボールボンド配置のかなりのガルバニック腐食防止の基礎、又は言い換えると、ボールボンド配置の接合部若しくはボールボンド界面におけるガルバニック腐食の防止の基礎を形成すると考えられる。ガルバニック腐食の防止の有益な結果は、ボールボンド配置のボンド剥がれの回避である。ボールボンド配置のガルバニック腐食挙動は、いわゆるbHAST試験(下記の「試験方法A」を参照されたい)を実施して試験することができる。
【0006】
したがって、本発明はボールボンド配置に関する。本発明のボールボンド配置は、半導体デバイスのボンドパッドと、ボンドパッドにボールボンディングされたワイヤとを含み、
ボンディングされたボールから延びるワイヤは、15~50μmの直径を有し、表面を有する銀系ワイヤ芯を含み、ワイヤ芯は、その表面上に重ねられた被覆層を有し、
被覆層は、厚さ1~40nm、好ましくは厚さ1.5~15nmのパラジウム又は好ましくはニッケルの内層と、厚さ20~500nm、好ましくは厚さ30~350nmの隣接する金の外層とから構成されている、二重層であり、
ボンディングされたボールの表面は70%~100%の金被覆率を有する。
【0007】
用語「ボンディングされたボールの表面」が本明細書で使用される。これは、ボンディングされたボールの全表面、すなわち、ボンディングされたボールの表面の可視部分と表面の不可視部分(ボンディングされた部分、すなわち底部)、言い換えると、その可視部分とそのボンドパッドとのボンド界面とを意味するものとする。表面の可視部分が、ボンディングされたボールのネックから延びるワイヤの表面を含まないことは自明である。
【0008】
用語「ボンディングされたボールの表面の金被覆率」が本明細書で使用される。これは、ボンディングされたボールの金で覆われた表面積のパーセンテージを意味するものとする。このパーセンテージは、ボールボンド配置断面のSEM EDX分析(scanning electron microscope energy dispersive X-ray analysis)(走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分析)を実行することによって決定することができる(下記の「試験方法B」を参照されたい)。この目的のために、ボンディングされたボール、すなわちボールボンド配置を、エポキシポッティングし、ボールボンドの中心に対して横に機械的に切断し、次いで、スクラッチのない断面図を得るためにイオンミリングする。イオンミリングされた断面をSEMで観察し;SEMのエネルギー分散型X線アタッチメントの支援により、イオンミリングされた切片を金についてドットマッピングする。それは、例えば、200~5000倍、好ましくは800~1300倍の範囲の倍率;例えば5~30kV、好ましくは5~10kVの範囲の電子ビーム励起電圧、及び例えば30~950pA、好ましくは30~550pAの範囲の定電流で行われ得る。金についてのドットマッピングは、ボンディングされたボールの周囲に沿った金ドットの広がりを、ネックから、ボンディングされたボールの両側の表面の可視部分及び不可視部分にわたって探すことを意味する、すなわち、それは、ボンディングされたボールの左側、右側及び底部の金ドットについて調べられる。全周囲に沿って金ドットが存在する場合、ボンディングされたボールの表面の金被覆率は100%である。金被覆率のパーセンテージの評価は以下の通りである。
-不良:ボンディングされたボールの周囲の70%未満が金で覆われている。
+良好:ボンディングされたボールの周囲の70%~100%が金で覆われている。
【0009】
70%~100%の金被覆率は、ボールボンド配置のガルバニック腐食に対するかなりの耐性、又は言い換えると、ボールボンド配置の接合部若しくはボールボンド界面におけるかなりのガルバニック腐食耐性と相関し、その結果、ボールボンドの良好な信頼性と相関する。
【0010】
厚さ15~50μmの丸線ワイヤは、表面を有するワイヤ芯(以下、略して「芯」とも呼ばれる)を含み、ワイヤ芯は、その表面上に重ねられた被覆層を有し、ワイヤ芯自体は銀系ワイヤ芯であり、被覆層は、厚さ1~40nm、好ましくは厚さ1.5~15nmのパラジウム又は好ましくはニッケルの内層と、厚さ20~500nm、好ましくは厚さ30~350nmの隣接する金の外層とから構成されている、二重層である。
【0011】
ワイヤ芯は銀系である、すなわち、ワイヤ芯は、ドープされた銀、銀合金、又はドープされた銀合金の形態の銀系材料からなる。
【0012】
本明細書で使用される用語「ドープされた銀」とは、(a1)99.49超~99.997重量%の範囲の量の銀と、(a2)30~5000重量ppm(ppm by weight)未満の総量の、銀以外の少なくとも1種のドーピング元素と、(a3)0~100重量ppmの総量の更なる成分(銀及び少なくとも1種のドーピング元素以外の成分)とからなる、銀系材料を意味する。好ましい実施形態では、本明細書で使用される用語「ドープされた銀」とは、(a1)99.49超~99.997重量%の範囲の量の銀と、(a2)30~5000重量ppm未満の総量の、カルシウム、ニッケル、白金、パラジウム、金、銅、ロジウム及びルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種のドーピング元素と、(a3)0~100重量ppmの総量の更なる成分(銀、カルシウム、ニッケル、白金、パラジウム、金、銅、ロジウム及びルテニウム以外の成分)とからなる、ドープされた銀を意味する。
【0013】
本明細書で使用される用語「銀合金」とは、(b1)89.99~99.5重量%、好ましくは97.99~99.5重量%の範囲の量の銀と、(b2)0.5~10重量%、好ましくは0.5~2重量%の範囲の総量の少なくとも1種の合金元素と、(b3)0~100重量ppmの総量の更なる成分(銀及び少なくとも1種の合金元素以外の成分)とからなる、銀系材料を意味する。好ましい実施形態では、本明細書で使用される用語「銀合金」とは、(b1)89.99~99.5重量%、好ましくは97.99~99.5重量%の範囲の量の銀と、(b2)0.5~10重量%、好ましくは0.5~2重量%の範囲の総量の、ニッケル、白金、パラジウム、金、銅、ロジウム及びルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種の合金元素と、(b3)0~100重量ppmの総量の更なる成分(銀、ニッケル、白金、パラジウム、金、銅、ロジウム及びルテニウム以外の成分)とからなる、銀合金を意味する。パラジウムを唯一の合金元素として含む銀合金、特に、1~2重量%、特に1.5重量%のパラジウム含有量を有する銀合金が、最も好ましい。
【0014】
本明細書で使用される用語「ドープされた銀合金」とは、(c1)89.49超~99.497重量%、好ましくは97.49~99.497重量%の範囲の量の銀と、(c2)30~5000重量ppm未満の総量の少なくとも1種のドーピング元素と、(c3)0.5~10重量%、好ましくは0.5~2重量%の範囲の総量の少なくとも1種の合金元素と、(c4)0~100重量ppmの総量の更なる成分(銀、少なくとも1種のドーピング元素及び少なくとも1種の合金元素以外の成分)とからなり、少なくとも1種のドーピング元素(c2)が、少なくとも1種の合金元素(c3)以外である、銀系材料を意味する。好ましい実施形態では、本明細書で使用される用語「ドープされた銀合金」とは、(c1)89.49超~99.497重量%、好ましくは97.49~99.497重量%の範囲の量の銀と、(c2)30~5000重量ppm未満の総量の、カルシウム、ニッケル、白金、パラジウム、金、銅、ロジウム及びルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種のドーピング元素と、(c3)0.5~10重量%、好ましくは0.5~2重量%の範囲の総量の、ニッケル、白金、パラジウム、金、銅、ロジウム及びルテニウムからなる群から選択される少なくとも1種の合金元素と、(c4)0~100重量ppmの総量の更なる成分(銀、カルシウム、ニッケル、白金、パラジウム、金、銅、ロジウム及びルテニウム以外の成分)とからなり、少なくとも1種のドーピング元素(c2)が、少なくとも1種の合金元素(c3)以外である、ドープされた銀合金を意味する。
【0015】
本開示は、「更なる成分」及び「ドーピング元素」に言及している。任意の更なる成分の個々の量は、30重量ppm未満である。任意のドーピング元素の個々の量は、少なくとも30重量ppmである。重量%及び重量ppmで示された全ての量は、芯又はその前駆部材若しくは伸長前駆部材の総重量に基づく。
【0016】
ワイヤの芯は、0~100重量ppm、例えば10~100重量ppmの範囲の総量の、いわゆる更なる成分を含み得る。本文脈において、「不可避不純物」とも称される場合が多い更なる成分は、使用される原料中に存在する不純物又はワイヤ芯製造方法に由来する、微量の化学元素及び/又は化合物である。更なる成分の総量が0~100重量ppmと低いことにより、ワイヤ特性の良好な再現性が保証される。芯中に存在する更なる成分は、通常、別途添加されているものではない。個々の更なる成分のそれぞれは、ワイヤ芯の総重量に基づいて、30重量ppm未満の量で含まれている。
【0017】
ワイヤの芯は、バルク材料の均質領域である。いかなるバルク材料も、ある程度異なる特性を示し得る表面領域を常に有するものであるため、ワイヤの芯の特性は、バルク材料の均質領域の特性として理解される。このバルク材料領域の表面は、形態、組成(例えば、硫黄、塩素及び/又は酸素の含有量)、並びに他の特徴の点で異なり得る。この表面は、ワイヤ芯と、そのワイヤ芯上に重ねられた被覆層との間の界面領域である。典型的には、被覆層は、ワイヤ芯の表面上に完全に重ねられている。ワイヤの芯と、その上に重ねられた被覆層との間の、このワイヤの領域には、芯及び被覆層の両方の材料の組み合わせが存在し得る。
【0018】
ワイヤ芯の表面上に重ねられた被覆層は、厚さ1~40nm、好ましくは厚さ1.5~15nmのパラジウム又は好ましくはニッケルの内層と、厚さ20~500nm、好ましくは厚さ30~350nmの隣接する金の外層とから構成されている、二重層である。この文脈において、用語「厚さ」又は「被覆層厚さ」とは、芯の長手方向軸線に対して垂直方向の、被覆層のサイズを意味する。
【0019】
好ましい実施形態では、金外層は、アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を、ワイヤ(ワイヤ芯+被覆層)の重量に基づいて10~300重量ppm、好ましくは10~120重量ppmの範囲の合計割合で含む。同時に、一実施形態では、アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される少なくとも1種の構成要素の合計割合は、金外層の金の重量に基づいて300~3500重量ppm、好ましくは300~2000重量ppmの範囲であり得る。
【0020】
アンチモンが金外層内に存在することが好ましい。アンチモンが金層内に単独で存在すること、すなわち、ビスマス、ヒ素及びテルルが同時に存在しないことが、より一層好ましい。言い換えると、好ましい実施形態では、金層は、金層内にビスマス、ヒ素及びテルルが存在することなく、ワイヤ(ワイヤ芯+被覆層)の重量に基づいて、10~300重量ppm、好ましくは10~120重量ppm、最も好ましくは20~120重量ppmの範囲の割合でアンチモンを含み、同時に、より一層好ましい実施形態では、アンチモンの割合は、金層の金の重量に基づいて、300~3500重量ppm、好ましくは300~2000重量ppmの範囲であり得る。
【0021】
一実施形態では、アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される少なくとも1種の構成要素は、金層内で濃度勾配を示してもよく、この勾配は、ワイヤ芯に向かう方向に、すなわちワイヤ芯の長手方向軸線に対して垂直方向に増加する。
【0022】
この少なくとも1種の構成要素が金層中にどのような化学形態で存在するか又はどのような化学種として存在するか、すなわち、金層中に元素形態で存在するか又は化学化合物の形態で存在するかは不明である。
【0023】
厚さ15~50μmの丸線被覆ワイヤ(すなわち、15~50μmの直径を有し、表面を有する銀系ワイヤ芯を含み、ワイヤ芯が、その表面上に重ねられた被覆を有し、被覆層が、厚さ1~40nmのパラジウム又は好ましくはニッケルの内層と、厚さ20~500nmの隣接する金の外層とから構成されている、二重層である、ワイヤ)は、少なくとも以下の工程(1)~(5):
(1)銀系前駆部材を用意する工程と、
(2)30~200μmの範囲の中間直径が得られるまで、前駆部材を伸長して、伸長前駆部材を形成する工程と、
(3)方法工程(2)の完了後に得られた伸長前駆部材の表面上に、パラジウム又は好ましくはニッケルの内層と、隣接する金の外層との二重層被覆を適用する工程と、
(4)所望の最終直径が得られ、かつ1~40nmの範囲の所望の最終厚さを有するパラジウム又は好ましくはニッケルの内層と、20~500nmの範囲の所望の最終厚さを有する隣接する金の外層とから構成される二重層が得られるまで、方法工程(3)の完了後に得られた被覆前駆部材を更に伸長する工程と、(5)方法工程(4)の完了後に得られた被覆前駆体を、200~600℃の範囲のオーブン設定温度で0.4~0.8秒の範囲の曝露時間にわたって最終ストランド焼鈍して、被覆ワイヤを形成する工程と、
を含む方法であって、
工程(2)が、400~800℃のオーブン設定温度で50~150分の範囲の曝露時間にわたって、前駆部材を中間バッチ焼鈍する1つ以上のサブ工程を含んでもよく、
工程(3)における金層の適用が、金電気めっき浴からそれを電気めっきすることによって行われる、方法によって作製され得る。
【0024】
その好ましい実施形態における厚さ15~50μmの丸線被覆ワイヤは、これと同じ方法によって作製され得るが、ただし、金電気めっき浴は、金だけでなく、アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される少なくとも1種の構成要素も含む。
【0025】
用語「ストランド焼鈍」が、本明細書で使用される。これは、再現性の高いワイヤの高速生産を可能にする、連続プロセスである。本発明の文脈において、ストランド焼鈍とは、焼鈍されるべき被覆前駆体が、従来の焼鈍オーブンを通して引っ張られるか又は移動され、焼鈍オーブンから出た後にリールに巻き取られる間に、焼鈍が動的に行われることを意味する。この場合、焼鈍オーブンは、典型的には、所定の長さの円筒管の形態である。例えば、10~60メートル/分の範囲で選択することが可能な所定の焼鈍速度における、その焼鈍オーブンの規定の温度プロファイルを用いて、焼鈍時間/オーブン温度のパラメータを規定し、設定することができる。
【0026】
用語「オーブン設定温度」が本明細書で使用される。これは、焼鈍オーブンの温度コントローラにおいて固定された温度を意味する。焼鈍オーブンは、チャンバ炉型オーブン(バッチ焼鈍の場合)又は管状焼鈍オーブン(ストランド焼鈍の場合)とすることができる。
【0027】
本開示は、前駆部材、伸長前駆部材、被覆前駆部材、被覆前駆体、及び被覆ワイヤを区別する。用語「前駆部材」は、ワイヤ芯の所望の最終直径に達していないワイヤ前段階に対して使用され、一方、用語「前駆体」は、所望の最終直径のワイヤ前段階に対して使用される。方法工程(5)の完了後、すなわち、所望の最終直径の被覆前駆体の最終ストランド焼鈍後、本発明の意味における被覆ワイヤが得られる。
【0028】
方法工程(1)で用意されるような前駆部材は、銀系前駆部材である、すなわち、前駆部材は、(a)ドープされた銀、(b)銀合金、又は(c)ドープされた銀合金からなる。用語「ドープされた銀」、「銀合金」、及び「ドープされた銀合金」の意味に関しては、前述の開示を参照されたい。
【0029】
銀系前駆部材の実施形態では、銀系前駆部材は、銀と所望の量の必要な成分とを合金化すること、ドープすること、又は合金化及びドープすることによって得ることができる。ドープされた銀又は銀合金又はドープされた銀合金は、金属合金の当業者には既知の従来の方法によって、例えば、所望の比率で成分を一緒に溶融することによって調製することができる。その際には、1種以上の従来の母合金を利用することが可能である。溶融方法は、例えば、誘導炉を利用して実行することができ、真空下又は不活性ガス雰囲気下で行うことが好都合である。使用される材料は、例えば99.99重量%以上の純度グレードを有し得る。そのようにして生成された溶融物を冷却することにより、銀系前駆部材の均質片を形成することができる。典型的には、そのような前駆部材は、例えば2~25mmの直径及び例えば2~100mの長さを有するロッドの形態である。そのようなロッドは、適切な鋳型を使用して銀系溶融物を連続鋳造し、続いて冷却及び固化することによって作製され得る。
【0030】
方法工程(2)では、30~200μmの範囲の中間直径が得られるまで、前駆部材を伸長して、伸長前駆部材を形成する。前駆部材を伸長する技術は既知であり、本発明の文脈において有用であると考えられる。好ましい技術は、圧延、スエージ加工、ダイス伸線などであり、これらのうち、ダイス伸線が特に好ましい。後者の場合、前駆部材は、所望の中間直径に達するまで、数回の方法工程で伸線される。そのようなワイヤダイス伸線方法は、当業者には周知である。従来のタングステンカーバイド及びダイヤモンドの伸線ダイスを採用することができ、従来の伸線潤滑剤を採用して伸線を支援することができる。
【0031】
本発明の方法の工程(2)は、400~800℃の範囲のオーブン設定温度で50~150分の範囲の曝露時間にわたって、伸長前駆部材を中間バッチ焼鈍する1つ以上のサブ工程を含んでもよい。上記の任意選択的な中間バッチ焼鈍は、例えば、ロッドを2mmの直径まで伸線して、ドラムに巻き付けた状態で実行することができる。
【0032】
方法工程(2)の任意選択的な中間バッチ焼鈍は、不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下で実行することができる。数多くのタイプの不活性雰囲気、及び還元性雰囲気が、当技術分野において既知であり、焼鈍オーブンをパージするために使用されている。既知の不活性雰囲気のうち、窒素又はアルゴンが好ましい。既知の還元性雰囲気のうち、水素が好ましい。別の好ましい還元性雰囲気は、水素と窒素の混合物である。水素と窒素の好ましい混合物は、90~98体積%の窒素と、それに応じた2~10体積%の水素であり、これらの体積%は合計で100体積%である。窒素/水素の好ましい混合物は、それぞれ混合物の総体積に基づいて、93/7、95/5、及び97/3体積%/体積%に等しい。
【0033】
方法工程(3)では、方法工程(2)の完了後に得られた伸長前駆部材の表面上に、パラジウム又は好ましくはニッケルの内層と、隣接する金の外層との二重層被覆の形態の被覆が、上記表面の上に被覆を重ねるように適用される。
【0034】
当業者は、ワイヤの実施形態に関して開示されている層厚さの被覆を最終的に得る伸長前駆部材上における、すなわち、被覆前駆部材を最終的に伸長した後の、そのような被覆の厚さを算出する方法について既知である。当業者には、実施形態による材料の被覆層を銀系表面上に形成するための、数多くの技術が既知である。好ましい技術は、電気めっき及び無電解めっきなどのめっき、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着及び物理蒸着などの気相からの材料の堆積、並びに溶融物からの材料の堆積である。パラジウム内層又は好ましいニッケル内層を、電気めっきによって適用することが好ましい。
【0035】
金層は電気めっきによって適用される。金電気めっきは、金電気めっき浴、すなわち、パラジウム又はニッケルカソード表面が金で電気めっきされることを可能にする電気めっき浴を利用して実行される。言い換えると、金電気めっき浴は、カソードとして配線されているパラジウム又はニッケル表面上に、金属元素形態の金を直接適用することを可能にする組成物である。金電気めっき浴は金を含む。金電気めっき浴中の金の濃度は、例えば、8~40g/l(グラム毎リットル)、好ましくは10~20g/lの範囲とすることができる。
【0036】
上で既に言及されているように、金電気めっき浴は、アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を含んでもよく、ここで金電気めっき浴は、元素金の堆積を可能にするだけでなく、金層内のアンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される少なくとも1種の構成要素の堆積も可能にする組成物である。この少なくとも1種の構成要素が、どのような化学種であるか、すなわち、金層中に元素形態で存在するか又は化学化合物として存在するかは不明である。そのような金電気めっき浴は、好適な化学形態の、上述の少なくとも1種の構成要素(例えば、Sb2O3、BiPO4、As2O3、又はTeO2のような化合物)を、溶解塩又は溶解塩類として金を含有している水性組成物に添加することによって、作製することができる。少なくとも1種の構成要素を添加することが可能な、そのような水性組成物の例は、Atotech製のAurocor(登録商標)K24HF、並びにUmicore製のAuruna(登録商標)558及びAuruna(登録商標)559である。あるいは、例えばMetalor製のMetGold Pure ATFのように、アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を既に含む金電気めっき浴を使用することができる。金電気めっき浴中の金の濃度は、例えば、8~40g/l(グラム毎リットル)、好ましくは10~20g/lの範囲とすることができる。金電気めっき浴中の、アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される少なくとも1種の構成要素の濃度は、例えば15~1000重量ppmの範囲とすることができる。
【0037】
金層の電気めっき適用は、カソードとして配線されているパラジウム被覆又はニッケル被覆伸長前駆部材を、金電気めっき浴に通るように誘導することによって実行される。そのようにして得られた、金電気めっき浴から出る金被覆前駆部材を、方法工程(4)を実行する前に、すすいで乾燥させてもよい。すすぎ媒体として、水を使用することが好都合であるが、アルコール、及びアルコール/水混合物が、すすぎ媒体の更なる例である。パラジウム被覆又はニッケル被覆伸長前駆部材が金電気めっき浴を通過する、この金電気めっきは、例えば0.2~20Vの範囲の直流電圧で、例えば、0.001~5A、特に0.001~1A、又は0.001~0.2Aの範囲の電流で実施することができる。典型的な接触時間は、例えば0.1~30秒、好ましくは2~8秒の範囲とすることができる。この文脈において使用される電流密度は、例えば0.01~150A/dm2の範囲とすることができる。金電気めっき浴は、例えば45~75℃、好ましくは55~65℃の範囲の温度を有し得る。
【0038】
金被覆層の厚さは、本質的に以下のパラメータを介して、すなわち、金電気めっき浴の化学組成、伸長前駆部材と金電気めっき浴との接触時間、電流密度を介して、所望されるように調整することができる。この文脈において、金層の厚さは一般に、金電気めっき浴中の金の濃度を増加させることによって、カソードとして配線されている伸長前駆部材と金電気めっき浴との接触時間を増加させることによって、及び電流密度を増加させることによって、増大させることができる。
【0039】
方法工程(4)では、(4)1~40nm、好ましくは1.5~15nmの範囲の所望の最終厚さを有するパラジウム又は好ましくはニッケルの内層と、20~500nm、好ましくは30~350nmの範囲の所望の最終厚さを有する隣接する金の外層とから構成される二重層を有するワイヤの所望の最終断面又は直径が得られるまで、方法工程(3)の完了後に得られた被覆前駆部材を更に伸長する。被覆前駆部材を伸長する技術は、方法工程(2)の開示において上述したものと同じ伸長技術である。
【0040】
方法工程(5)では、方法工程(4)の完了後に得られた被覆前駆体を、200~600℃、好ましくは350~500℃の範囲のオーブン設定温度で0.4~0.8秒の範囲の曝露時間にわたって最終ストランド焼鈍して、被覆ワイヤを形成する。方法工程(5)は、大気下で、又は窒素若しくはフォーミングガス(forming gas)をパージして、実行することができる。
【0041】
好ましい実施形態では、最終ストランド焼鈍された被覆前駆体、すなわち、依然として熱い被覆ワイヤは、一実施形態では1種以上の添加剤、例えば0.01~0.2体積%の添加剤を含有し得る水中で急冷される。水中での急冷とは、最終ストランド焼鈍された被覆前駆体を、即座に又は急速に、すなわち0.2~0.8秒以内に、方法工程(5)で経験した温度から室温まで、例えば浸漬又は滴下によって冷却することを意味する。
【0042】
方法工程(5)及び任意選択的な急冷の完了後、被覆ワイヤが完成する。被覆ワイヤは、半導体デバイスのボンドパッドにボールボンディングすることができる。
【0043】
本発明のボールボンド配置は、以下に開示されるように、後続の工程(i)及び(ii)を含む方法によって作製され得る。したがって、一実施形態では、本発明は、ボールボンド配置を製造するための方法であって、以下の工程:
(i)ボンドパッドを有する半導体と、前述の開示された実施形態のいずれかによるワイヤとを用意する工程と、
(ii)ワイヤをボンドパッドにボールボンディングする工程であって、ボールボンディングが、1.5~2.2の範囲のBSRでFABを形成することを含む、工程と、
を含む、方法に関する。
【0044】
工程(i)において、ボンドパッドを有する半導体と、前述の開示された実施形態のいずれかによるワイヤとが用意される。そのようなワイヤを製造するための方法に関しては、上記の開示を参照されたい。
【0045】
工程(ii)において、ワイヤは、半導体デバイスのボンドパッドにボールボンディングされる。この目的のために、まず、周囲雰囲気(ambient atmosphere)(大気雰囲気)中で電気トーチ(electric flame-off)(EFO)焼成を実行することによって、ワイヤの先端にFABを調製する。1.5~2.2、好ましくは1.6~2.0の範囲のBSRでFABを調製することが必須であり、したがって、例えば、20~120mA、好ましくは40~70mA、最も好ましくは40~50mAの範囲のEFO電流、及び例えば、75~1400μs、好ましくは140~550μs、最も好ましくは140~350μsの範囲のEFO時間、及び例えば、625~1125μm、好ましくは700~900μmの範囲のワンドギャップ(EFO電極先端と破断ワイヤ先端との間の距離)で作業することができる。周知のボンダの例としては、ほんの数例を挙げると、IConn-KNSボンダ、Shinkawaボンダ及びASMボンダが挙げられる。
【0046】
上で既に言及されているように、ボールボンディング手順自体、すなわち、形成されたFABを下降させて半導体デバイスのボンドパッドに接触させ、ワイヤをボールボンディングすることは、当業者に周知であり、方法論的な特殊性を含まない。通常のボールボンディング装置、特に上に開示された3つの周知のボンダのうちの1つを使用することができる。ボンディングプロセスパラメータは、例えば22~30gの範囲のボンディング力、例えば78~94mAの範囲の超音波エネルギー、例えば170~250℃の範囲の温度、例えは6~20μm/msの範囲の接触速度であり得る。
【0047】
ワイヤの実施例
それぞれが少なくとも99.99重量%の純度(「4N」)を示す、98.5重量%の銀(Ag)及び1.5重量%のパラジウム(Pd)をるつぼ内で溶融した。次いで、その溶融物から、8mmのロッドの形態のワイヤ芯前駆部材を連続鋳造した。次いで、それらのロッドを数回の伸線工程で伸線して、直径2mmの円形断面を有するワイヤ芯前駆体を形成した。これらのワイヤ芯前駆体を、500℃のオーブン設定温度で60分の曝露時間にわたって中間バッチ焼鈍した。それらのロッドを数回の伸線工程で更に伸線して、直径46μmの円形断面を有するワイヤ芯前駆体を形成した。
【0048】
表1に従って、ワイヤ芯前駆体を金の外層で電気めっきした。
【0049】
ワイヤ実施例1及び2において、金層は、パラジウム又はニッケル内層を前被覆することなく、ワイヤ芯前駆体上に直接電気めっきされた。金層内にアンチモンが存在するワイヤ実施例では、ワイヤ芯前駆体を、カソードとして配線されている間に、14.5g/lの金含有量を有する61℃の金電気めっき温浴(Metalor製のMetGold Pure ATF基づいている)を通して移動させ、採用した様々な電気めっき浴のアンチモン含有量は、それぞれの場合で20~100重量ppmの範囲であった。
【0050】
ニッケル内層を有するワイヤ実施例では、ワイヤ芯前駆体を、ニッケル内層と、隣接する金の外層との二重層被覆で電気めっきした。この目的のために、ワイヤ芯前駆体を、カソードとして配線されている間に、60℃のニッケル電気めっき温浴(90g/l(グラム毎リットル)のNi(SO3NH2)2、6g/lのNiCl2及び35g/lのH3BO3を含む)を通して、続いて61℃の金電気めっき温浴を通して移動させた。
【0051】
全ての被覆ワイヤ前駆体を20μmの最終直径に更に伸線し、続いて430℃のオーブン設定温度で0.6秒の曝露時間にわたって最終ストランド焼鈍を行い、その直後に、そのようにして得られた被覆ワイヤを、急冷水溶液(0.07体積%の界面活性剤を含有する脱イオン水)中で急冷した。それぞれのワイヤの急冷水溶液との接触時間は0.3秒であった。
【0052】
全てのワイヤのワイヤ試料を、IConn-KNSボンダを使用して、表1に指定したそれぞれのボンディングパラメータにより、周囲大気雰囲気(ambient air atmosphere)(T=20℃及び相対湿度RH=50%)下でボンディングした。FABを、既定の高さ(203.2μmの先端)から6.4μm/ms)の接触速度で、16pSOPデバイス(プラスチックスモールアウトラインパッケージデバイス、すなわち、半導体分野で周知の表面実装集積回路パッケージ)のAl-0.5重量%Cuボンドパッドに下降させた。ボンドパッドに触れると、一連の規定のボンディングパラメータ(30gのボンド力、90mAの超音波エネルギー及び15msのボンディング時間)が作用してFABを変形させ、ボンディングされたボールを形成した。ボンディングされたボールを形成した後、キャピラリを既定の高さ(152.4μmのキンク高さ及び254μmのループ高さ)まで上昇させて、ループを形成した。ループを形成した後、キャピラリをリードまで下降させて、ステッチを形成した。ステッチを形成した後、キャピラリを上昇させ、ワイヤクランプを閉じてワイヤを切断することにより、既定のテール長さ(254μmのテール延伸長さ)を得た。
【0053】
試験方法
全ての試験及び測定は、T=20℃及び相対湿度RH=50%で行った。
【0054】
A.ボールボンド配置のバイアス高加速ストレス試験(biased highly accelerated stress test、bHAST):
各ワイヤ試料を、ストリップ上に取り付けられた10個の16pSOPデバイスにボールボンディングした。各ストリップをエポキシ成形し、HASTチャンバにおいて130℃、85%RH及び+20Vのバイアスで標準的な高加速ストレス試験を実行することによって、信頼性について試験した。10個の16pSOPデバイスのそれぞれの16個のボンディングされたボールをデイジーチェーン接続(daisy-chained)し、電気抵抗の発生をモニターした。480時間以内又はそれよりも早い時間以内の電気抵抗の10%以上の増加は、ボールボンド相互接続不良によるデバイス不良を示した。ワイヤ試料は、電気抵抗が480時間の全試験期間にわたって一定のままであった場合、試験に合格したものとして示された。
【0055】
更に、全てのボンディングされたボールを1000倍の倍率の光学顕微鏡下で調査して、任意の剥がれた可能性のあるボンディングされたボールを検査した。この目的のために、試験された16pSOPデバイスを注意深くカプセルから取り出し、剥がれたボンディングされたボールについて、すなわちボンドパッドとの機械的一体性について調べた。任意の剥がれたボンディングされたボールは、界面ガルバニック腐食不良タイプを示していた。
【0056】
B.ボールボンド配置の断面のSEM EDX分析:
ボールボンド配置を、エポキシポッティングし、ボールボンドの中心に対して横に機械的に切断し、次いで、スクラッチのない断面図を得るためにイオンミリングした。イオンミリングされた断面をSEMで観察し;SEMのエネルギー分散型X線アタッチメントの支援により、イオンミリングされた切片を金についてドットマッピングした。それは、1300倍の倍率;10kVの電子ビーム励起電圧、250pAの定電流、60μmの開口、10mmの作動距離で行った。金についてのドットマッピングは、ボンディングされたボールの全周に沿った金ドットの広がりを、そのネックからその左側、その右側及びその底部にわたって探すことによって実行した。この目的のために、元素金のX線数を計測し、金ドットとして画像で表し;観察された断面領域の金ドットの累積は、元素金の存在を確定し、一方、黒色領域は金の非存在を示した。金被覆率のパーセンテージの評価は以下の通りであった。
-不良:ボンディングされたボールの周囲の70%未満が金で覆われている。
+良好:ボンディングされたボールの周囲の70%~100%が金で覆われている。
【0057】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスのボンドパッドと、前記ボンドパッドにボールボンディングされたワイヤとを含むボールボンド配置であって、
前記ボンディングされたボールから延びる前記ワイヤが、15~50μmの直径を有し、表面を有する銀系ワイヤ芯を含み、前記ワイヤ芯が、その表面上に重ねられた被覆層を有し、
前記被覆層が、厚さ1~40nmのパラジウム又はニッケルの内層と、厚さ20~500nmの隣接する金の外層とから構成されている、二重層であり、
前記ボンディングされたボールの表面が70~100%の金被覆率を有する、ボールボンド配置。
【請求項2】
前記金外層が、アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を、前記ワイヤの重量に基づいて10~300重量ppmの範囲の合計割合で含む、請求項1に記載のボールボンド配置。
【請求項3】
アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される前記少なくとも1種の構成要素の前記合計割合が、前記金外層の前記金の重量に基づいて300~3500重量ppmの範囲である、請求項2に記載のボールボンド配置。
【請求項4】
前記ワイヤ芯の銀系材料が、ドープされた銀、銀合金、又はドープされた銀合金である、請求項1に記載のボールボンド配置。
【請求項5】
前記銀合金が、パラジウムを唯一の合金元素として含む、請求項4に記載のボールボンド配置。
【請求項6】
アンチモンが前記金外層内に存在する、請求項1に記載のボールボンド配置。
【請求項7】
前記ボンドパッドが、金属M、90重量%超の金属Mの合金、又は外側金属M(合金)最上層を有する前記金属M以外の金属からなり、前記金属Mが、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム又はニッケルである、請求項1に記載のボールボンド配置。
【請求項8】
請求項1に記載ののボールボンド配置を製造するための方法であって、以下の工程:
(i)ボンドパッドを有する半導体と、15~50μmの直径を有し、表面を有する銀系ワイヤ芯を含むワイヤとを用意する工程であって、前記ワイヤ芯が、その表面上に重ねられた被覆層を有し、
前記被覆層が、厚さ1~40nmのパラジウム又はニッケルの内層と、厚さ20~500nmの隣接する金の外層とから構成されている、二重層である、工程と、
(ii)前記ワイヤを前記ボンドパッドにボールボンディングする工程であって、前記ボールボンディングが、1.5~2.2の範囲のBSRでFABを形成することを含む、工程と、を含む、方法。
【請求項9】
前記金外層が、アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される少なくとも1種の構成要素を、前記ワイヤの重量に基づいて10~300重量ppmの範囲の合計割合で含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アンチモン、ビスマス、ヒ素及びテルルからなる群から選択される前記少なくとも1種の構成要素の前記合計割合が、前記金外層の前記金の重量に基づいて300~3500重量ppmの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ワイヤ芯の銀系材料が、ドープされた銀、銀合金、又はドープされた銀合金である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記銀合金が、パラジウムを唯一の合金元素として含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アンチモンが前記金外層内に存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ボンドパッドが、金属M、90重量%超の金属Mの合金、又は外側金属M(合金)最上層を有する前記金属M以外の金属からなり、前記金属Mが、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム又はニッケルである、請求項8に記載の方法。
【国際調査報告】