(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】アンカー及びアンカーシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/56 20060101AFI20241010BHJP
A61B 17/92 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61B17/56
A61B17/92
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525645
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2022080390
(87)【国際公開番号】W WO2023073235
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ガスタフソン・アダム
(72)【発明者】
【氏名】ボナー・ケビン・エフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲテルマン・マーク・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ディデュチ・デビッド・アール
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL30
4C160LL56
4C160LL59
(57)【要約】
軟組織を骨に固定するためのアンカーが提供される。例示的な一実施形態では、アンカーは、遠位ノーズと、遠位ノーズの一方の側部から近位に延在するスパインとを有するねじ山のない非対称アンカー本体と、スパインとは反対側のノーズの側部から近位に延在する偏向可能なクリップと、を含むことができる。スパインは、アンカー本体の背面を画定する。スパインは、外側骨係合面と、外側骨係合面とは反対側の内側組織着座面と、両側の横方向の側部とを有する。偏向可能なクリップ及びスパインの一部は、骨に取り付けられる軟組織の前端を収容及び遮蔽するように構成されたガイド領域を画定する。アンカーを骨内に挿入するための軟組織アンカーシステム及び方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーであって、
遠位ノーズと、前記遠位ノーズの一方の側部から近位に延在するスパインとを有するねじ山のない非対称アンカー本体であって、前記スパインが、前記アンカー本体の背面を画定し、外側骨係合面と、前記外側骨係合面とは反対側の内側組織着座面と、両側の横方向の側部とを有する、ねじ山のない非対称アンカー本体と、
前記スパインとは反対側の前記ノーズの側部から近位に延在する偏向可能なクリップであって、前記偏向可能なクリップ及び前記スパインの一部が、骨に取り付けられる軟組織の前端を収容及び遮蔽するように構成されたガイド領域を画定する、偏向可能なクリップと、
を備えているアンカー。
【請求項2】
前記遠位ノーズの遠位先端が、内部を通って長手方向に延在する少なくとも2つの縫合糸穴を有する、請求項1に記載のアンカー。
【請求項3】
前記少なくとも2つの縫合糸穴が、互いに横方向に隣接して配置されている、請求項2に記載のアンカー。
【請求項4】
前記少なくとも2つの縫合糸穴が、前記軟組織の前記前端を前記ガイド領域の遠位端に維持するために手術用縫合糸を受容するように構成されている、請求項2に記載のアンカー。
【請求項5】
前記スパインの前記横方向の側部から延在する偏向可能なウィングの複数の対をさらに備え、各ウィングが、軟組織を包囲する側面を画定するように、前記スパインの前記組織着座面の上方かつ前記組織着座面を越えて延在する部分を有する状態で、各対が前記スパインに沿って長手方向に離間されている、請求項1に記載のアンカー。
【請求項6】
偏向可能なウィングの少なくとも1つの対に隣接して近位に配置された縫合糸凹部の少なくとも1つの対をさらに備え、各縫合糸凹部が、縫合糸を少なくとも部分的に収容するように構成されており、各縫合糸凹部が、前記縫合糸凹部内に着座した縫合糸が前記偏向可能なウィングの偏向に干渉しないように、前記アンカー本体の横方向の側部を通って延在する、請求項5に記載のアンカー。
【請求項7】
各縫合糸凹部が、少なくとも部分的に弧状である経路に沿って前記アンカー本体の前記横方向の側部を通って延在する、請求項6に記載のアンカー。
【請求項8】
前記外側骨係合面上に形成された少なくとも1つの骨係合バーブをさらに備えている、請求項1に記載のアンカー。
【請求項9】
前記外側骨係合面から延在する少なくとも1つの偏向可能なバックウィングをさらに備えている、請求項1に記載のアンカー。
【請求項10】
前記スパインの前記横方向の側部の近位端から横方向に延在する1つの対の配向タブをさらに備え、前記1つの対の配向タブが、前記アンカーが骨に挿入されるときに前記アンカーの横方向の移動を制限するように構成されている、請求項1に記載のアンカー。
【請求項11】
前記アンカー本体が、前記アンカー本体の近位端に形成され、前記アンカー本体内に遠位に延在する少なくとも1つのボアを有し、前記ボアが、挿入器具の遠位端を受容するように構成されている、請求項1に記載のアンカー。
【請求項12】
軟組織アンカーシステムであって、
骨に挿入されるように構成されたねじ山のない非対称アンカーであって、前記アンカーが、
内部を通って延在する長手方向軸を有する遠位ノーズと、
前記遠位ノーズの一方の側部から近位に延在するスパインであって、前記スパインが、前記長手方向軸からオフセットされており、前記スパイン及び前記遠位ノーズが前記アンカーの長さを画定する、スパインと、
前記スパインの反対側の前記遠位ノーズの側部から近位に延在する可撓性フランジであって、前記可撓性フランジ及び前記スパインの一部が、前記遠位ノーズに近接して隣接する組織受容凹部を画定し、前記可撓性フランジが、挿入中に前記凹部内に軟組織セグメントを捕捉するのに有効である、可撓性フランジと、
を有する、ねじ山のない非対称アンカーと、
前記アンカーに取り外し可能に結合され、前記アンカーを骨内に押し込むように構成された挿入器具であって、前記挿入器具が、ハンドルと、前記ハンドルから延在する細長いシャフトとを有し、前記ハンドルが近位端及び遠位端を有し、前記近位端が、前記アンカーが挿入される解剖学的構造の一部を表す形状を有する、挿入器具と、
を備えている、軟組織アンカーシステム。
【請求項13】
前記細長いシャフトが、その遠位端に挿入器プロングを有し、前記挿入器プロングが、前記アンカーに取り外し可能に結合するように、前記アンカーの近位端内に延在するボア内に受容されるように構成されている、請求項12に記載のアンカーシステム。
【請求項14】
前記細長いシャフトが、前記アンカーが骨に挿入されている際の前記アンカーの挿入深さを示す少なくとも1つのマーキングを含む、請求項12に記載のアンカーシステム。
【請求項15】
前記解剖学的構造の前記一部が上腕骨である、請求項12に記載のアンカーシステム。
【請求項16】
前記ハンドルの前記近位端が、前記ハンドルの前記遠位端よりも広い、請求項12に記載のアンカーシステム。
【請求項17】
前記可撓性フランジが、前記アンカーの長さよりも短い長さを有する、請求項12に記載のアンカーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、アンカー、アンカーシステム、及び軟組織を骨に固定するためにそれらを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体内において靱帯、腱、及び/又は他の軟組織がそれらが付属する骨から完全又は部分的に剥離することは、特にスポーツ選手の間では比較的一般的に見られる外傷である。そのような外傷は一般に、過度のストレスがこれらの組織にかかる結果として生じる。例として、組織の剥離は、転倒などの事故、仕事に関連した活動時、スポーツ競技の最中、又は他の多くの状況及び/又は活動のいずれかにおける過度労作の結果として発生し得る。
【0003】
部分的な剥離の場合、一定の十分な時間が与えられ、外傷をさらなる過度のストレスにさらさないように注意が払われれば、外傷はしばしばそれ自体で治癒する。しかしながら、完全剥離の場合には、軟組織をそれが付属する1つ又は複数の骨に再付着させるために外科手術が必要となる場合もある。骨に軟組織を再付着させるために、多数の縫合糸アンカーが現在も利用可能である。現在存在する装置の例としては、ねじ、ステープル、縫合糸アンカー、及び鋲が挙げられる。
【0004】
押込み式のアンカーなどの縫合糸アンカーを用いた軟組織の再付着手術では、通常、先ずアンカー受容穴を骨の所望の組織再付着点にドリル穿穴する。次いで、縫合糸アンカーを軟組織に取り付け、次に適当な設置器具を使用して穴の中に展開する。しかしながら、軟組織の端部(例えば、腱)を止まり穴の中へ挿入することは困難であり得る。その理由は、縫合糸アンカーが穴の中で展開されている間に、軟組織の端部が、穴(例えば、穴の縁部)と噛み合い、かつ引っ掛かる傾向にあるためである。さらに、現在の押込み式のアンカーでは、軟組織を縫合糸アンカーに結び付けるときに、軟組織の遠位端を、軟組織を開かせて球根状の端部を形成するような方法で、縫合糸アンカーに対して引っ張ることができる。結果として、軟組織は、縫合糸アンカーが穴に挿入されている間に、縫合糸アンカーから離れるように摺動することができる。一旦縫合糸アンカーが骨内に打ち込まれると、打ち込まれた縫合糸アンカーによって縫合糸及び軟組織が定位置に固定されるため、骨に対する軟組織の位置を調節するために縫合糸及び軟組織を調節することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、軟組織を骨に付着させるための改良されたアンカー及びアンカーシステムが依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
軟組織を骨に固定するためのアンカーが提供される。1つの例示的な実施形態では、アンカーは、遠位ノーズと、遠位ノーズの一方の側部から近位に延在するスパインとを有するねじ山のない非対称アンカー本体と、スパインとは反対側のノーズの側部から近位に延在する偏向可能なクリップと、を含むことができる。スパインは、アンカー本体の背面を画定する。スパインは、外側骨係合面と、外側骨係合面とは反対側の内側組織着座面と、両側の横方向の側部とを有する。偏向可能なクリップ及びスパインの一部は、骨に取り付けられる軟組織の前端を収容及び遮蔽するように構成されたガイド領域を画定する。
【0007】
遠位ノーズは、様々な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、遠位ノーズの遠位先端は、内部を通って長手方向に延在する少なくとも2つの縫合糸穴を有することができる。そのような実施形態では、少なくとも2つの縫合糸穴は、互いに横方向に隣接して配置することができる。他のそのような実施形態では、少なくとも2つの縫合糸穴は、軟組織の前端をガイド領域の遠位端に維持するために手術用縫合糸を受容するように構成することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、アンカーは、スパインの横方向の側部から延在する偏向可能なウィングの複数の対をさらに含むことができ、各ウィングが、軟組織を包囲する側面を画定するように、スパインの組織着座面の上方かつ組織着座面を越えて延在する部分を有する状態で、各対がスパインに沿って長手方向に離間され得る。そのような実施形態では、アンカーは、偏向可能なウィングの少なくとも1つの対に隣接して近位に配置された縫合糸凹部の少なくとも1つの対を含むことができる。各縫合糸凹部は、縫合糸を少なくとも部分的に収容するように構成することができ、各縫合糸凹部は、縫合糸凹部内に着座した縫合糸が偏向可能なウィングの偏向に干渉しないように、アンカー本体の横方向の側部を通って延在することができる。そのような実施形態では、各縫合糸凹部は、少なくとも部分的に弧状である経路に沿ってアンカー本体の横方向の側部を通って延在することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、アンカーは、外側骨係合面上に形成された少なくとも1つの骨係合バーブを含むことができる。
【0010】
アンカー本体は、様々な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、アンカー本体は、アンカー本体の近位端に形成され、アンカー本体内に遠位に延在する少なくとも1つのボアを有することができる。ボアは、挿入器具の遠位端を受容するように構成され得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、アンカーは、外側骨係合面から延在する少なくとも1つの偏向可能なバックウィングを含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、アンカーは、スパインの横方向の側部の近位端から横方向に延在する1つの対の配向タブを含むことができる。1つの対の配向タブは、アンカーが骨に挿入されるときにアンカーの横方向の移動を制限するように構成することができる。
【0013】
軟組織アンカーシステムも提供される。例示的な一実施形態では、システムは、骨に挿入されるように構成されたねじ山のない非対称アンカーと、アンカーに取り外し可能に結合され、アンカーを骨内に押し込むように構成された挿入器具とを含むことができる。アンカーは、内部を通って延在する長手方向軸を有する遠位ノーズと、遠位ノーズの一方の側部から近位に延在するスパインと、スパインとは反対側の遠位ノーズの側部から近位に延在する可撓性フランジと、を含む。スパインは、長手方向軸からオフセットされており、スパイン及び遠位ノーズがアンカーの長さを画定する。可撓性フランジ及びスパインの一部は、遠位ノーズに近接して隣接する組織受容凹部を画定し、可撓性フランジは、挿入中に凹部内に軟組織セグメントを捕捉するのに有効である。挿入器具は、ハンドルと、ハンドルから延びる細長いシャフトとを有する。ハンドルは、近位端及び遠位端を有し、近位端が、アンカーが挿入される解剖学的構造の一部を表す形状を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、解剖学的構造の一部は上腕骨であり得る。
【0015】
細長いシャフトは、様々な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、細長いシャフトは、その遠位端に挿入器プロングを有することができる。挿入器プロングは、アンカーに取り外し可能に結合するように、アンカーの近位端内に延在するボア内に受容されるように構成することができる。いくつかの実施形態では、細長いシャフトは、アンカーが骨に挿入されている際のアンカーの挿入深さを示す少なくとも1つのマーキングを含むことができる。
【0016】
ハンドルは、様々な構成を有することができる。特定の実施形態では、ハンドルの近位端は、ハンドルの遠位端よりも広くすることができる。
【0017】
可撓性フランジは、様々な構成を有する。いくつかの実施形態では、可撓性フランジは、アンカーの長さよりも短くすることができる長さを有する。
【0018】
アンカーを骨内に挿入する方法も提供される。例示的な一実施形態では、方法は、ねじ山のないアンカーを挿入器具に結合することであって、アンカーが、遠位ノーズと、遠位ノーズの一方の側部から近位に延在するスパインとを有する、結合することと、軟組織を、軟組織の前端がアンカーのガイド領域内に位置する状態でアンカーに接続することであって、ガイド領域が、遠位ノーズから近位に延在する偏向可能なクリップによって部分的に形成されており、軟組織が、遠位ノーズを通って延在する手術用縫合糸によって、アンカーに接続されている、接続することと、軟組織が接続されているアンカーを、骨ソケット内に押し込んで、軟組織を骨に取り付けることと、を含むことができる。
【0019】
挿入器具は、様々な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、挿入器具は、近位端及び遠位端を有するハンドルを含む。ハンドルの近位端は、内部に形成された骨ソケットを有する解剖学的構造の一部を示す形状を有することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、アンカーを挿入器具に結合することは、取り外し可能な停止縫合糸を、アンカーを通って延在する少なくとも1つの穴に通すことと、停止縫合糸の自由端をハンドルにクリートで留めることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、以下の発明を実施するための形態を添付図面と併せて読むことで、より完全に理解されるであろう。
【
図1】アンカーの例示的な一実施形態の背面図である。
【
図5】
図1のアンカーを上から見下ろした図である。
【
図7】ハンドルと、ハンドルから延びる細長いシャフトとを有する挿入器具の例示的な一実施形態の正面斜視図である。
【
図8】ハンドルと肩の一部との間の解剖学的類似性を示す、肩の一部に隣接して配置された挿入器具の一部を示す概略図である。
【
図9】
図7の挿入器具の上部の拡大正面斜視図である。
【
図10A】
図7の挿入器具に結合された
図1のアンカーを有するソフトアンカーシステムの例示的な一実施形態の背面斜視図である。
【
図11】挿入器具に結合された
図1のアンカーを有するソフトアンカーシステムの例示的な一実施形態の正面斜視図である。
【
図12】
図1のアンカーが挿入器具に結合されたソフトアンカーシステムの例示的な一実施形態の正面斜視図であり、本システムが停止縫合糸及び固定縫合糸を有する。
【
図13A】停止縫合糸が取り除かれた
図12のソフトアンカーシステムの遠位部分の拡大側面図であり、固定縫合糸のループと、アンカーに接続された軟組織セグメントとを示している。
【
図13B】
図13Aのソフトアンカーシステムの遠位部分であり、アンカー及び接続された軟組織セグメントの上を通されたループを示す図である。
【
図13C】
図13Bのソフトアンカーシステムの遠位部分であり、締め付けられた構成のループを示す図である。
【
図14】
図10Aのソフトアンカーシステムのアンカーにねじ込まれている、肩の関節窩取付け部から解放された二頭筋腱の端部を示す概略図である。
【
図15】
図10Aのソフトアンカーシステムのアンカーに結び付けられている二頭筋腱の端部の拡大図を示す概略図である。
【
図16】固定された二頭筋腱が連結されたアンカーが、
図14の肩部内に形成された骨ソケット内にドッキングされている様子を示す概略図である。
【
図17】骨ソケットに完全に挿入されたアンカー及び固定された二頭筋腱を示す、
図14の肩部の一部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に開示されるアンカー、アンカーシステム、及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理が総括的に理解されるように、ある特定の例示的な実施形態について、これから説明する。これらの実施形態の1つ又は複数の実施例が、添付の図面に例解されている。当業者であれば、本明細書で詳細に説明し、添付の図面に示されるアンカー、アンカーシステム、及び方法が、非限定的な例示的実施形態であり、本発明の範囲が、特許請求の範囲のみによって定義されることを理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して例解又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0023】
概して、ねじ山のないアンカー(例えば、押込み式のアンカー)、軟組織アンカーシステム、及びその使用方法が提供される。1つの例示的な実施形態では、ねじ山のないアンカーは、偏向可能なクリップ(例えば、可撓性フランジ)によって部分的に形成されるガイド領域を有するアンカー本体を含む。ガイド領域は、骨に取り付けられる軟組織の前端を収容及び遮蔽するように構成される。すなわち、使用中、ねじ山のないアンカーは、例えば骨への挿入中に軟組織のより良好な制御を提供するように設計される。そのような偏向可能なクリップがなければ、ねじ山のないアンカーが骨に挿入されるときに、軟組織がねじ山のないアンカーから剥がれて離れる可能性があることが理解されるであろう。これは、少なくとも、軟組織をねじ山のないアンカーに取り付けるときに、軟組織がねじ山のないアンカーの遠位面に向かって引っ張られ、軟組織の前端が開き、(例えば、アンカーから外向きに離れて摺動し)、球根状の端部を形成するためである。有益なことに、この偏向可能なクリップを組み込むことにより、例えばねじ山のないアンカーにねじ込まれて結び付けられ、骨に挿入されている間に、軟組織の前端の形態を制御することができる。したがって、ねじ山のないアンカーのガイド領域内に軟組織を拘束することにより、挿入中に軟組織が骨(例えば、骨ソケットの開口の縁部)に引っ掛かるリスクを低減することができる。加えて、これは、骨ソケットの開口の可視化を増加させ、ねじ山のないアンカーの側部(例えば、存在する場合、偏向可能な側部ウィングを含む)の周りの軟組織の巻き付きを低減させることができる。
【0024】
さらに、例示的な実施形態では、軟組織アンカーシステムは、ねじ山のないアンカーと、ねじ山のないアンカーに取り外し可能に結合され、ねじ山のないアンカーを骨内に押し込むように構成された挿入器具とを含むことができる。ねじ山のないアンカーは、骨に挿入されるのに適した、本明細書で説明される構成などの任意の構成を有することができる。挿入された器具は、近位端及び遠位端を有するハンドルと、ハンドルから延びる細長いシャフトとを含む。
【0025】
本明細書に記載されるねじ山のないアンカーは非対称であり得る。そのような例では、これは所望の挿入配向を作り出し、したがって、使用中にねじ山のないアンカーの挿入配向を使用者に明示するのを助けるために、視覚的又は触覚的インジケータを挿入器具上で採用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、挿入器具のハンドルの近位端は、ねじ山のないアンカーが挿入される解剖学的構造の一部を表す形状を有する。「表す」という用語は、当業者によって理解されるようなその通常の慣例的な意味を採用することができる。例えば、解剖学的構造の一部を表す構造(例えば、挿入された器具のハンドル)は、製造公差及び一般的に理解されている解剖学的ばらつきの範囲内で、所定の解剖学的構造の外面と同じ又はほぼ同じである1つ又は複数の寸法及び表面(例えば、1つ又は複数の外面)を有することができる。有益なことに、このハンドル構成は、ユーザ(例えば、医師)に、それに結合されたねじ山のないアンカーの配向に関するより直感的なインジケータを提供することができる。一例として、ハンドルは、アンカーが埋め込まれる骨に似せてモデル化された様式化された骨形状に作製することができる。
【0026】
解剖学的構造の一部は、様々な構成を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、解剖学的構造の一部は、上腕骨である。そのような実施形態では、上腕骨上の目印(例えば、二頭筋溝)を、ねじ山のないアンカーの配向の主要なインジケータとして使用されることができる。そのような例では、ハンドルが解剖学的構造に対して「整列」するように、所望の配向を配置することができる(例えば、骨の長手方向軸に対する挿入器具の長手方向軸を中心としたおおよその回転)。解剖学的構造の他の例示的な適切な部分は、関節、腰部、大腿骨、脛骨、膝蓋骨、足首、肘などを含むことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるねじ山のないアンカー及び軟組織アンカーシステムは、二頭筋腱が骨に取り付けられる二頭筋修復手技において使用されることができる。他の実施形態では、本明細書で説明されるねじ山のないアンカー及び軟組織アンカーシステムは、ねじ山のないアンカーを使用してハムストリング腱移植片が骨に取り付けられる膝の側副靱帯再建などの他のタイプの外科的処置、及びねじ山のないアンカーを使用して腱又は他の軟組織が骨に取り付けられる他の腱固定術処置において使用することができる。本明細書に開示されるねじ山のないアンカー、挿入器具、及び方法が、測定デバイス、ドリル、及びマレットなどを含む様々な手術デバイスと共に使用され得ることは、当業者には理解されよう。
【0028】
図1~
図6は、ねじ山のないアンカー100の例示的な一実施形態を示す。ねじ山のないアンカー100は非対称であり、アンカーが骨に挿入されているときに骨内に形成された開口部に軟組織が悪影響を及ぼすリスクを低減するように、取り付けられた軟組織の形態を制御するように構成されている。簡略化のために、軟組織は、以下でより詳細に説明されるように、挿入前にねじ山のないアンカー100に取り付けられるが(例えば、1つ又は複数の縫合糸、例えば、
図11~14の腱縫合糸504を介して)、軟組織は、
図1~6から省略されている。ねじ山のないアンカー100は、アンカー本体102及び偏向可能なクリップ104を含む。
【0029】
1つ又は複数の縫合糸は、任意の種類の縫合糸とすることができ、天然材料及び合成材料を含む任意の様々な材料から作製され得る。1つ又は複数の縫合糸に適切な材料の例としては、ポリグリコリド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、及びポリジオキサノンなどのポリマー、並びにナイロン及び絹などの布地が挙げられる。1つ又は複数の縫合糸は、生体吸収性、部分的に生体吸収性、又は非吸収性であってもよく、円形の断面又は別形状の断面を有することができる。
【0030】
アンカー本体102は、様々な構成を有することができる。例えば、
図1~
図6に示すように、アンカー本体102は、遠位ノーズ106及びスパイン108を含む。遠位ノーズ106は様々な形状及びサイズを有することができるが、この図示された実施形態では、遠位ノーズ106は弾丸形状の構成を有する。さらに示されるように、遠位ノーズ106は、その中に画定された2つの縫合糸穴110a、110bを有する遠位先端107を有し、これらの縫合糸穴は、軟組織をねじ山のないアンカー100に固定するために使用されるように構成されている。2つの縫合糸穴110a、110bはまた、遠位先端107に向かって軟組織に過剰に張力をかけることを防止するのに役立ち得る。2つの縫合糸穴110a、110bは、遠位ノーズ106内の様々な位置に配置することができ、遠位ノーズ106の長手方向軸に対して様々な方向に延在することができる。
【0031】
この図示された実施形態では、2つの縫合糸穴110a、110bは、互いに横方向に隣接して配置され、各々が遠位ノーズ106を通って長手方向に延在する(例えば、遠位ノーズ106の長手方向軸Lに沿って延在する(
図1))。さらに、この図示された実施形態では、2つの縫合糸穴110a、110bは遠位に向いている。2つの縫合糸穴110a、110bが
図1~
図6に示されているが、当業者は、任意の数の縫合糸穴が遠位ノーズ内に画定され、遠位ノーズを通って異なる方向に延在することができ、したがって、縫合糸穴の数及び延在方向は、図に示されているものに限定されないことを理解するであろう。
【0032】
アンカー本体102はまた、遠位ノーズ106の一方の側部106aから近位に延在し、遠位ノーズ106の長手方向軸Lからオフセットされたスパイン108を含む。スパイン及び遠位ノーズは、ねじ山のないアンカー100の長さL
Aを画定する。示されるように、スパイン108は、アンカー本体102の背面102aを画定する(
図3~
図5参照)。スパイン108は、様々な構成を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、スパイン108は、外側骨係合面112と、外側骨係合面112とは反対側の内側組織着座面113と、両側の第1及び第2の横方向の側部114、115とを含む。
【0033】
スパイン108の表面及び側部は様々な形状を有することができるが、この図示された実施形態では、外側骨係合面112は概ね湾曲した形状を有し、内側組織着座面113は概ね平坦な形状(例えば、概ね平坦又は線形)を有する。さらに、第1の横方向の側部114は、略平面形状(例えば、略線形)を有する第1のセグメント114aと、略テーパ形状を有する第2のセグメント114bとを有する。同様に、第2の横方向の側部115は、略平面形状(例えば、略線形)を有する第1のセグメント115aと、略テーパ形状を有する第2のセグメント115bとを有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、スパイン108は、ねじ山のないアンカー100への軟組織の取り付けを増大するように構成された少なくとも1つの補助縫合糸穴を含むことができ、ねじ山のないアンカー100に取り付けられた軟組織、又はこれらの組み合わせの配向の良好な制御を提供する。さらに、少なくとも1つの補助縫合糸穴は、埋め込み後のトグリングを制限するように構成することができる。補助縫合糸穴の数は変化し得るが、この図示される実施形態では、2つの軸方向縫合糸穴117a、117bが、スパイン108内に画定される。
図1、
図3、及び
図4に示されるように、2つの補助縫合糸穴117a、117bは、互いに長手方向に隣接して位置付けられ、各々がスパイン108を通って横方向に延在する(例えば、スパイン108の長手方向軸L
Sに対して横方向に延在する(
図1))。2つの補助縫合糸穴117a、117bが示されているが、当業者は、任意の数の補助縫合糸穴がスパイン内に画定され、スパインを通って異なる方向に延在することができ、したがって、補助縫合糸穴の数及び延在方向は、図に示されているものに限定されないことを理解するであろう。
【0035】
いくつかの実施形態では、
図5に示すように、アンカー本体102は、挿入器具(例えば、
図7~
図9の挿入器具200)の遠位端を受容するように構成された少なくとも1つのボア119を有する。例えば、特定の実施形態では、ボア119は、挿入された器具の遠位端の形状に対して相補的な形状を有することができる。この実施形態では、ボア119は概して円筒状の形状を有している。他の実施形態では、ボア119は、他の適切な形状(例えば、概して矩形)を有し得る。使用時には、以下でより詳細に説明するように、挿入器具の遠位端がボア119内に挿入されると、ボア119は、ねじ山のないアンカー100内のその位置、したがって結果として生じる衝撃面を維持するのに役立つ。ある実施形態では、挿入器具及びねじ山のないアンカーインターフェースは、患者の身体内での回転を可能にすることができる。
【0036】
図1~
図6に示すように、偏向可能なクリップ104(例えば、可撓性フランジ)は、スパイン108の反対側の遠位ノーズ106の側部106bから近位に延在する。結果として、偏向可能なクリップ104及びスパイン108の一部は、骨に取り付けられる軟組織の前端を収容及び遮蔽するように構成されたガイド領域116(
図2及び
図5を参照)を画定する。例えば、使用中、軟組織がねじ山のないアンカーに取り付けられている間、ガイド領域116は、軟組織がねじ山のないアンカーの側部から押し出される傾向を低減することができる。さらに、ガイド領域116はまた、ねじ山のないアンカー100が骨ソケット内に挿入されている間に、取り付けられた軟組織が骨(例えば、骨ソケットの縁部)に引っ掛かることを防止することができる。ガイド領域116は、ねじ山のないアンカー100の長さL
Aに沿った任意の様々な位置に配置することができるが、この図示された実施形態では、ガイド領域116は、遠位ノーズ106に近接して隣接している。ガイド領域116は、本明細書では組織受容凹部と呼ぶこともできる。使用時、以下でより詳細に説明するように、少なくとも2つの縫合糸穴110a、110bは、軟組織の前端をガイド領域116の遠位端116aに維持するために手術用縫合糸を受容するように構成される。
【0037】
手術用縫合糸(複数可)は、任意の種類の縫合糸とすることができ、天然材料及び合成材料を含む任意の様々な材料から作製され得る。手術用縫合糸(複数可)に適切な材料の例としては、ポリグリコリド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリジオキサノンなどのポリマー、並びにナイロン及び絹などの布地が挙げられる。手術用縫合糸(複数可)は、生体吸収性、部分的に生体吸収性、又は非吸収性であってもよく、円形の断面又は別形状の断面を有することができる。
【0038】
偏向可能なクリップは、偏向可能なクリップの第1の端部104aから第2の端部104bまで延在する長さLFを有する。示されるように、第1の端部104aは、遠位ノーズ106の遠位にある。偏向可能なクリップ104は、ねじ山のないアンカーに取り付けられた軟組織の前端を捕捉して遮蔽するのに適した任意の適切な長さを有することができる。この図示された実施形態では、偏向可能なクリップ104の長さLFは、ねじ山のないアンカー100の長さLAより短い。偏向可能なクリップ104は、可撓性であるように設計される。結果として、これは、(例えば、ねじ山のないアンカーの挿入中の)ねじ山のないアンカー100の破損のリスクを低減することができる。使用時、以下でより詳細に説明するように、偏向可能なクリップ104は、ねじ山のないアンカー挿入中にガイド領域116内の軟組織セグメント(例えば、軟組織の少なくとも前端)を捕捉するのに有効である。これにより、軟組織セグメントの前端が骨に引っ掛かることを防ぐことができる。
【0039】
図示されていないが、いくつかの実施形態では、ねじ山のないアンカー100はまた、ガイド領域116の遠位端116aの近位に配置された横方向縫合糸穴(複数可)(例えば、ねじ山のないアンカー100の長手方向軸Lに対して横方向に延びる縫合糸穴(複数可))を含むことができる。使用時に、軟組織セグメントをねじ山のないアンカー100に取り付けるとき(例えば、軟組織セグメントに取り付けられた縫合糸が通されて結び目が作られている間)、横方向縫合糸穴(複数可)は、ユーザがねじ山のないアンカー100に沿って軟組織の前端を遠位に前進させることができる量を制限するために使用することができる。これは、前端が開くリスクをさらに低減するのに役立つことができる。
【0040】
図1~6にさらに示されるように、ねじ山のないアンカー100は、スパイン108の横方向の側部114、115から延在する少なくとも1対の偏向可能なウィングを含む。偏向可能なウィングは、骨に係合して、ねじ山のないアンカー100を骨ソケット内に固定するのを助けるように構成される。対の数は変動し得るが、この図示される実施形態では、ねじ山のないアンカー100は、3対の偏向可能なウィング118a、118b、120a、120b、122a、122bを含み、一方のウィング118a、120a、122aは、スパイン108の第1の横方向の側部114から延在し、他方のウィング118b、120b、122bは、スパイン108の第2の横方向の側部115から延在する。
図1及び3に示されるように、各偏向可能なウィング118a、118b、120a、120b、122a、122bは、それらの間にそれぞれの空間119a、119b、121a、121b、123a、123bを生成するように、スパイン108から外向きに延在する。これは、偏向可能なウィング118a、118b、120a、120b、122a、122bが、ねじ山のないアンカー100が骨ソケットに挿入されるとき、内側に、かつスパイン108のより近くに移動(例えば、屈曲)することを可能にする。さらに、偏向可能なウィング118a、118b、120a、120b、122a、122bは、弾性であり、その結果、それらは、内向きに移動した後、それらの元の構成(
図1及び
図3参照)に戻るように付勢され、それによって、ねじ山のないアンカーと、ねじ山のないアンカー100が挿入される骨ソケットの壁との間の摩擦を増加させる。この増大した摩擦は、ねじ山のないアンカー100を骨ソケット内に固定するのを助けることができ、特定の例では、挿入後のねじ山のないアンカーの近位移動に抵抗することもできる。
【0041】
さらに、偏向可能なウィングは、挿入中に軟組織がアンカー本体102の周りに巻き付くのを防止するように、ねじ山のないアンカー100の背面102aに対して位置決めされた軟組織を拘束するように構成される。例えば、この図示された実施形態に示されるように、偏向可能なウィング118a、118b、120a、120b、122a、122bの各対は、スパイン108に沿って長手方向に離間され、各ウィングは、軟組織を包囲する側面124a、124bを画定するように、スパイン108の内側組織着座面113の上方かつそれを越えて延在する部分を有する。すなわち、ウィング118a、120a、122bは、軟組織を包囲する第1の側面124aを画定し、ウィング118b、120b、122bは、軟組織を包囲する第2の側面124bを画定する。他の実施形態では、少なくとも1つの対の偏向可能なウィングが省略されることができることも本明細書で企図される。
【0042】
いくつかの実施形態では、ねじ山のないアンカー100は、追加の骨係合特徴を含むことができる。例えば、
図1及び
図2に示すように、ねじ山のないアンカーは、スパイン108の外側骨係合面112上に形成された少なくとも1つの骨係合バーブ132と、スパイン108の外側骨係合面112から延びる少なくとも1つの偏向可能なバックウィング134とを含む。任意の数の骨係合バーブ及び偏向可能なバックウィングを採用することができるが、この図示された実施形態では、1つの骨係合バーブ132及び1つの偏向可能なバックウィング134がある。他の実施形態では、少なくとも1つの骨係合バーブ132及び/又は少なくとも1つの偏向可能なバックウィング134を省略することができることも本明細書で企図される。
【0043】
少なくとも1つの骨係合バーブ132は様々な構成を有することができるが、この図示された実施形態では、少なくとも1つの骨係合バーブ132はテーパ状構成を有する。同様に、少なくとも1つの偏向可能なバックウィング134は、様々な構成を有することができる。示されるように、少なくとも1つの偏向可能なバックウィング134は、それらの間に空間135を生成するように、スパイン108から外向きに延在する。これは、少なくとも1つの偏向可能なバックウィング134が、ねじ山のないアンカー100が骨ソケットに挿入されるとき、内側に、かつスパイン108のより近くに移動(例えば、屈曲)することを可能にする。さらに、少なくとも1つの偏向可能なバックウィング134は弾性であり、内側に移動した後に付勢されてその元の構成に戻るようになっている(
図1及び
図2参照)。これにより、ねじ山のないアンカー100が挿入される骨ソケットの壁に対する摩擦が増大する。特定の実施形態では、少なくとも1つの骨係合バーブ132も弾性である。代替的に又は追加的に、少なくとも1つの偏向可能なバックウィング134とスパイン108との間及び/又は少なくとも1つの骨係合バーブ132とスパイン108との間のこの増大した摩擦はまた、挿入後のねじ山のないアンカー100の近位移動に抵抗するのに役立つことができる。他の骨係合特徴の様々な実施形態が、米国特許第8,114,128号及び米国特許第8,882,801号にさらに記載されている。これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
さらに、ねじ山のないアンカー100は、少なくとも1対の偏向可能なウィングに近位に隣接して配置された少なくとも1対の縫合糸凹部を含み、各縫合糸凹部は、縫合糸を少なくとも部分的に収容するように構成される。これは、軟組織及びねじ山のないアンカーの周りの「靴紐捕捉」又はひびろ糸を可能にする。少なくとも1対の縫合糸凹部はまた、縫合糸(複数可)がこの位置で軟組織及びねじ山のないアンカーの周りで締め付けられると、縫合糸の位置を保持するためのより小さい直径を作り出す。さらに、いくつかの実施形態では、より狭い部分をこれらの縫合糸凹部の側方に配置して、軟組織及びねじ山のないアンカーの組み立て中の保持を助けることができる。他の実施形態では、少なくとも1つの対の縫合糸凹部が省略されることができることも本明細書で企図される。
【0045】
縫合糸凹部の対の数は変化し得るが、この図示された実施形態では、ねじ山のないアンカー100は、3対の縫合糸凹部126a、126b、128a、128b、130a、130bを含む。示されるように、第1の対の縫合糸凹部126a、126bは、第1の対の偏向可能なウィング118a、118bに近位に隣接して配置され、第2の対の縫合糸凹部128a、128bは、第2の対の偏向可能なウィング120a、120bに近位に隣接して配置され、第3の対の縫合糸凹部130a、130bは、第3の対の偏向可能なウィング122a、122bに近位に隣接して配置される。さらに、より狭いセクション127(
図3参照)を各縫合糸凹部126a、126b、128a、128b、130a、130bの側方に配置した。
【0046】
この図示される実施形態では、各縫合糸凹部126a、126b、128a、128b、130a、130bは、アンカー本体102の横方向の側部を通って延在する。結果として、使用時に、これは、縫合糸凹部内に着座される縫合糸が偏向可能なウィングの偏向を妨げることを防止する。さらに、いくつかの実施形態では、
図1及び
図3に示されるように、各縫合糸凹部は、少なくとも部分的に弧形である経路に沿って延びる。他の実施形態では、経路は、他の適切な形状を有し得る。この図示された実施形態では、縫合糸凹部126a、128a、130aの各々は、スパイン108の第1の横方向の側部114を通って延在し、縫合糸凹部126b、128b、130bの各々は、スパイン108の第2の横方向の側部115を通って延在する。これらの縫合糸凹部は、その中に据え付けられた縫合糸(複数可)と組み合わせて、移植後のトグリングを制限することができる。さらに、この組み合わせは、ねじ山のないアンカー100への軟組織の取り付けを増強するように、ねじ山のないアンカー100に取り付けられた軟組織の配向のより良好な制御を提供するように、又はそれらの組み合わせを提供するように構成され得る。
【0047】
図1~
図4にさらに示すように、ねじ山のないアンカー100は、ねじ山のないアンカー100が骨ソケット内に挿入されるときにねじ山のないアンカー100の横方向の移動を制限するように構成された1つの対の配向タブ136a、136bを含む。1つの対の配向タブが、様々な構成を有することができるが、いくつかの実施形態では、図示されるように、各タブ136a、136は、スパイン108のそれぞれの横方向の側部の近位端から横方向に延在する。より具体的には、1つの対の配向タブのうちの第1の配向タブ136aは、スパイン108の第1の横方向の側部114の近位端114cから横方向に延在し、1つの対の配向タブのうちの第2の配向タブ136bは、スパイン108の第2の横方向の側部115の近位端115cから横方向に延在する。
【0048】
代替的又は追加的に、ねじ山のないアンカー100の遠位端101の最大外径D(
図2及び
図5参照)は、ねじ山のないアンカー100が骨ソケットの中心を案内することを可能にするようなサイズにすることができる。結果として、これは、骨ソケット内のねじ山のないアンカー100の位置自由度を低減することができ、したがって、骨ソケットに対するねじ山のないアンカーの軸方向の整列を維持するのを助けることができる。すなわち、遠位端101の最大外径Dは、骨ソケットの中心軸に対するねじ山のないアンカー100の位置ずれを防止するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、遠位端101の最大外径Dは、約3mm~12mm又は約5.4mm~9mmであり得、製造公差は約0mm~0.25mmである。当業者は、遠位端101の最大外径Dが、少なくとも骨ソケットのサイズ及び/又は形状に依存することを理解するであろう。「直径」という用語は、ねじ山のないアンカーの遠位端の両側を通る直線距離である。例えば、偏向可能なクリップの外側骨係合面から、偏向可能なクリップと長さが重複するスパインのセグメントの外側骨係合面までの直線距離である(
図2及び
図5参照)。本明細書で使用される「直径」は、円形断面を有する構造、又は丸みを帯びた断面を有する構造にさえも限定されない。
【0049】
軟組織を骨に付着させるために、当業者によって理解されるように、ドリル、錐、パンチ器具などを使用することなどによって、骨ソケット(例えば、ボア、穴など)を患者の骨に形成することができる。骨ソケットの直径は、骨ソケット内に配置されるねじ山のないアンカーの最大外径よりわずかに小さくすることができ、骨ソケットの長さは、ねじ山のないアンカーの長さと同じか又はそれよりわずかに長くすることができる。骨ソケットは、皮質骨を通して完全に延びて、ねじ山のないアンカーを皮質骨の厚さを通して完全に係合させることができる。骨ソケットは、ねじ山のないアンカーの長さに応じて、海綿骨内に延びることもできる。
【0050】
ねじ山のないアンカー(例えば、ねじ山のないアンカー100)を骨内に(例えば、形成された骨ソケット内に)打ち込むために、任意の適切な挿入器具を使用することができる。概して、挿入器具(例えば、挿入器具200)は、ハンドルと、ハンドルを通って延在する細長いシャフトとを含む。使用時、ねじ山のないアンカーは、細長いシャフトの遠位端に結合される。例えば、細長いシャフトの遠位端は、ねじ山のないアンカーに挿入され得(例えば、
図5のねじ山のないアンカー100のボア119に挿入され)、取り外し可能な停止縫合糸(
図10 A~10Bの停止縫合糸402)は、ねじ山のないアンカーの穴(例えば、
図1のねじ山のないアンカー100の補助縫合糸穴117a、117b)に通され得、取り外し可能な停止縫合糸の自由端は、ハンドルの1つ又は複数のクリート(例えば、
図7のクリート214)に巻き付けられ得る。次に、軟組織を、ねじ山のないアンカーに接続することができる(例えば、糸を通して結び目を作るか、又は糸を通してロックすることができる(例えば、ロックループデバイスを介して))。軟組織がねじ山のないアンカーに接続されると、次に、挿入器具を使用して、ねじ山のないアンカー及び接続された軟組織を形成された骨ソケット内に挿入及び駆動する(例えば、押す)ことができる。ねじ山のないアンカー及び接続された軟組織が骨ソケット内のその所望の位置に駆動されると、取り外し可能な停止縫合糸は、1つ又は複数のクリートから解放されて挿入器具から取り外され得、その後、挿入器具がねじ山のないアンカーから取り外される。
【0051】
ハンドルは、挿入器具の把持及び操作を容易にするように構成された任意の適切な形状を有することができる。形状は変化し得るが、いくつかの実施形態では、ハンドルは、略円筒形を有する。
【0052】
アンカーに対して所望の挿入配向が存在する例(例えば、アンカーが非対称である場合、例えば、
図1~
図6のねじ山のないアンカー100)では、使用中にねじ山のないアンカーの挿入配向を使用者に明示するのを助けるために、視覚的又は触覚的インジケータを挿入器具上で採用することができる。例として、
図7に示すように、挿入器具のハンドルは、アンカーが挿入される解剖学的構造の一部を表す形状を有することができる。
【0053】
図7-9は、ハンドル202と、ハンドル202から延びる細長いシャフト204とを有する挿入器具200の例示的な一実施形態を示している。細長いシャフト204は、ハンドル202に持続的に又は取り外し可能に連結することができる。この図示された実施形態では、以下でより詳細に説明されるように、ハンドルは、近位端206から遠位端208まで延在し、近位端206は、肩300の上腕骨302(
図8参照)を模した様式化された骨形状を有する。挿入器具200は、二頭筋腱が骨に取り付けられる二頭筋修復処置のために設計されているが、当業者であれば、挿入器具が他の外科的処置(例えば、膝蓋骨から大腿骨への中間の膝蓋大腿靱帯再建、横方向の足首の靱帯再建、肘の側副靱帯再建、後ろの脛骨筋の腱の再付着若しくは再建、遠位の二頭筋の腱の再付着、又は任意の他の軟組織の移植、靱帯、若しくは骨の取り付け)のために設計され得、したがって、様式化された骨形状は、そのような他の外科手術中に手術される別の骨又は関節(例えば、大腿骨、脛骨、膝蓋骨、足首、肘など)に似せてモデル化することができることを理解するであろう。
【0054】
図7及び
図8に示すように、近位端206は、ハンドル202の遠位端208よりも幅広であり、上腕骨302の上腕骨頭304の形状とほぼ同様の形状を有する。さらに、
図9により詳細に示されるように、ハンドル202の近位端206は、少なくとも1つのインジケータ特徴210を含む。この少なくとも1つのインジケータ特徴210は、概して、上腕骨302上の目印306に(例えば、サイズ、形状、及び/又は位置において)相関する。この図示された実施形態では、目印306は、上腕骨302の二頭筋溝である。したがって、少なくとも1つのインジケータ特徴210は、ハンドル202の最外前面203から内向きに延在する溝の形態である。ハンドル202の近位端206は、上腕骨の二頭筋溝を表す1つのインジケータ特徴を含むが、他の実施形態では、近位端は、上腕骨の他の目印を表す追加の又は異なるインジケータ特徴を含むことができる。
【0055】
さらに、いくつかの実施形態では、ハンドル202の上面212は、
図7~
図9に示すように、概ね平坦な構成を有することができる。この構成は、ハンドル202とドライバ器具(例えば、マレット)との間のインターフェースを強化するのに役立つことができる。すなわち、上面212の概ね平坦な構成は、ドライバ器具がハンドル202をタッピング又は他の方法で押し、それによって、結合されたねじ山のないアンカーを骨パック内にタッピング又は押し込む間、ハンドル202とドライバ器具との間の接触を最大化するのを助けることができる。
【0056】
ハンドル202は、追加の要素を含むことができる。例えば、
図7及び8に示されるように、ハンドル202は、ハンドル202の遠位端208から外向きに延在するクリート214を含む。クリート214は、縫合糸(例えば、
図10 A~10Bの停止縫合糸402)の自由端(複数可)がクリート214の周りに巻き付けられることを可能にして、(例えば、ねじ山のないアンカーをハンドルに取り外し可能に固定する目的で)縫合糸がハンドル202に選択的に固定されることを可能にするように構成される。クリート214は、様々な構成を有することができる。クリート214は、スプール構造214aを含む。使用時に、停止縫合糸が補助縫合糸穴(例えば、
図1~
図7のねじ山のないアンカー100の補助縫合糸穴117a、117b)に通されると、停止縫合糸は、スプール構造214aの周りに巻かれ、クリート214に取り外し可能に固定される。
【0057】
いくつかの実施形態では、ハンドル202は、(例えば、挿入器具200の使用中に)ハンドル202を把持するのを助けることができる様々な特徴を含むことができる。例えば、ハンドル202は、溝216などの把持特徴部を含むことができ、把持特徴部は、ねじ山のないアンカーの結合、軟組織のねじ込み、及び/又は骨へのねじ山のないアンカーの挿入のために、ユーザがハンドル202を効率的かつ効果的に把持することを可能にするのを支援することができる。溝216は、
図7及び8に示されるように、ハンドル202に沿った任意の場所に位置付けられることができるが、溝216は、ハンドル202の遠位端208の近位に位置付けられる。代替的又は追加的に、ハンドル202の最外前面203の少なくとも一部は、使用中にユーザの手とハンドル202との間の摩擦を増加させ、それによって、ハンドル202の周りのユーザの把持を強化することができる、粗面仕上げを有することができる。
【0058】
細長いシャフト204は様々な構成を有することができるが、この図示された実施形態では、細長いシャフト204は、その長さの大部分に沿って概ね円筒形の形状である。
図7に示すように、細長いシャフト204の遠位端218は、駆動面219で終端するテーパが付された構成を有する。図示されていないが、駆動面219は概ね矩形の形状を有する。他の実施形態では、駆動面219は、任意の他の適切な形状を有し得る。さらに、遠位端218は、挿入器プロング220を含む。挿入器プロング220は、駆動面219から遠位に延在する。挿入器プロング220は、ねじ山のないアンカー(例えば、
図1-7のねじ山のないアンカー100)に取り外し可能に結合するように、ねじ山のないアンカーの近位端内に延在するボア(例えば、
図5のボア199)内に受容されるように構成される。挿入器プロングは、様々な構成を有し得るが、この図示の実施形態では、挿入器プロングは、概して円筒形状を有する。当業者であれば、挿入器プロングの構造的構成が、挿入器具200に結合されるねじ山のないアンカー内のボアの形状及びサイズに少なくとも依存することを理解するであろう。特定の実施形態では、挿入器プロング220の構造的構成がねじ山のないアンカーのボアに対して相補的でないとき、細長いシャフト204は、ハンドル202から取り外すことができ(例えば、細長いシャフト204をハンドル202から、ハンドル202に対して離すように引っ張ること、又はその逆のことによって)、異なる形状及び/又はサイズの挿入器プロングを有する別の細長いシャフトを、その後の使用のためにハンドルに結合することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、
図7に示されるように、細長いシャフト204の遠位端218は、少なくとも1つのマーキング222を含む。少なくとも1つのマーキングが様々な構成を有することができるが、この図示された実施形態では、少なくとも1つのマーキング222は、第1の境界線224aと第2の境界224bとの間に画定される。第1及び第2の境界線224a、224bの各々は、細長いシャフト204の周りに少なくとも部分的に巻き付く。少なくとも1つのマーキング222は、ねじ山のないアンカーが骨ソケットに挿入されているときに、ねじ山のないアンカーの所望の挿入深さに関連付けられるように構成される。例えば、所望の挿入深さは、皮質骨の下であり得る。したがって、少なくとも1つのマーキング222は、ねじ山のないアンカーの骨ソケット内への挿入中にねじ山のないアンカーが皮質骨の下に展開されるときをユーザが決定することを可能にする位置で遠位端218上に位置決めすることができる。
【0060】
図10Aは、挿入器具200(
図7~
図9)に結合されたねじ山のないアンカー100(
図1~
図6)を含む軟組織アンカーシステム400の例示的な一実施形態を示す。軟組織アンカーシステム400はまた、ねじ山のないアンカー100を挿入器具200にさらに取り外し可能に取り付けるために使用される停止縫合糸402を含む。停止縫合糸402は、軟組織セグメント(例えば、腱、靱帯など)がねじ山のないアンカー100に接続されている間、ねじ山のないアンカー100の挿入器具200への固定を補助なしに維持するように構成されている(
図14参照)。
【0061】
図10Aに示され、
図10Bにより詳細に示されるように、停止縫合糸402は、ねじ山のないアンカー100の補助縫合糸穴117a、117bを通され、細長いシャフト204の遠位端218は、挿入器プロング220(閉塞されている)がねじ山のないアンカー100のボア119(閉塞されている)内に受容されるように、ねじ山のないアンカー100に部分的に挿入される。ねじ山のないアンカー100は、ガイド領域116(閉塞されている)がクリート214と整列するようにクロックされるように位置決めされる。さらに、停止縫合糸402は、スプール構造214aの周りに巻き付けられ、クリート214に固定される。
【0062】
図10A及び
図10Bにさらに示すように、軟組織アンカーシステム400は、少なくとも1つのフィーダワイヤが結合された糸通しタブ404を含む。この図示された実施形態では、2つのフィーダワイヤ406、408が糸通しタブ404に結合され、各々が、ねじ山のないアンカー100の遠位ノーズ106の2つの縫合糸穴110a、110bのうちのそれぞれ1つに通される。これにより、糸通しタブ404がねじ山のないアンカー100に装着される。また、2本のフィーダワイヤ406、408は、各々がループ構成である。これにより、軟組織セグメント(例えば、
図14~
図17の二頭筋腱500)に取り付けられた縫合糸(例えば、
図14~
図16の腱縫合糸504)の自由端をそこに通し、糸通しタブ404に結合することが可能になる。使用時、縫合糸の自由端がそれぞれのフィーダワイヤ406、408内に配置されると、糸通しタブ404は、ねじ山のないアンカー100から引き離されて、ねじ山のないアンカー100の2つの縫合糸穴110a、110bを通して縫合糸を往復させる。
【0063】
図11は、軟組織アンカーシステム700の別の実施形態を図示する。以下に説明する相違点を除いて、軟組織アンカーシステム700は、
図10Aの軟組織アンカーシステム400と同様であり、したがって、共通の特徴については本明細書では詳細に説明しない。示されるように、軟組織アンカーシステム700は、ハンドル702の第1及び第2の横方向の側部704a、704bからそれぞれ外向きに延在する第1及び第2のクリート706、708を含む。さらに、ハンドル702は、ハンドル702の遠位端703を通って延びる管腔705を含む。管腔は、停止縫合糸710を受容し、それを通過させるように構成される。
【0064】
第1及び第2のクリート706、708の各々は、(例えば、ねじ山のないアンカー100をハンドル702に取り外し可能に固定する目的で)停止縫合糸710がハンドル702に選択的に固定されることを可能にするために、停止縫合糸710のそれぞれの自由端710a、710bがその周りに巻き付けられることを可能にするように構成されている。使用時には、停止縫合糸は、ねじ山のないアンカー100に通され、管腔705を通過し、第1及び第2のクリート706、708の周りに巻き付けられる。他の実施形態では、両方の自由端710a、710bは、同じクリート、例えば、第1のクリート706又は第2のクリート708のいずれかの周りに巻き付けられ得る。第1のクリート706及び第2のクリート708は様々な構成を有することができる。この図示された実施形態では、第1及び第2のクリート706、708の各々は、それぞれのスプール構造706a、708bを含む。使用時、停止縫合糸がねじ山のないアンカー100の補助縫合糸穴117a、117b(閉塞されている)に通されると、自由端710aはスプール構造706aに巻き付けられ、クリート706に取り外し可能に固定され、自由端710bはスプール構造708aに巻き付けられ、クリート708に取り外し可能に固定される。
【0065】
いくつかの実施形態では、代替的又は追加的に、軟組織アンカーシステムは、例えば、
図12に示されるような固定縫合糸を含むことができ、固定縫合糸は、軟組織をねじ山のないアンカーにさらに固定するのを助けるように構成される。以下に説明する相違点を除いて、
図12に示される軟組織アンカーシステム800は、
図11の軟組織アンカーシステム700と同様であり、したがって、共通の特徴については本明細書では詳細に説明しない。示されるように、停止縫合糸810に加えて、軟組織アンカーシステム800はまた、ねじ山のない縫合糸100の補助縫合糸穴117aに通される固定縫合糸812を含む。使用時には、
図13A~
図13 Cに示すように、固定縫合糸812はループ814を形成し(
図13A)、軟組織セグメント801がねじ山のないアンカー100に接続されると(例えば、組織縫合糸816(例えば、腱縫合糸)の自由端816a、816bを遠位ノーズ106に対して結ぶことによって)、固定縫合糸812のループ814は、遠位ノーズ106及び軟組織セグメント801上を通過する(
図13B)。固定縫合糸812は、次いで、引っ張られ(例えば、ハンドル802の近位端806に向かって)、第2のクリート808の周りに巻き付けられ、それによって、ねじ山のないアンカー100及び接続された軟組織セグメント801の周りにループ814を締め付ける(
図12及び
図13C参照)。その結果、軟組織セグメント801は、ねじ山のないアンカー100の背面102a(
図12参照)に対して固定される。この固定は、ねじ山のないアンカー100と接続された軟組織セグメント801との間のトグリングを最小限に抑えるのに役立つ(例えば、骨ソケットへの挿入中)。ねじ山のないアンカー100及び接続された軟組織セグメント801の埋め込み後、固定縫合糸812を除去することができる。特定の実施形態では、固定縫合糸812は、クリート留めではなく、切断して結び目を作ることにより、挿入中及び挿入後に軟組織セグメント801を背面102に対して固定することができる。代替的又は追加的に、自由針(図示せず)を使用して、固定縫合糸812を軟組織セグメント801に通して、ねじ山のない縫合糸100へのさらなる固定を行うことができる。
【0066】
図14~
図17は、二頭筋腱修復処置において軟組織アンカーシステム400(
図10 A~
図10B)を使用する例示的な一実施形態を概略的に示す。より具体的には、
図14~
図17は、二頭筋腱500をねじ山のないアンカー100(
図1~
図6及び
図10 A~
図10B)に結合することと、挿入器具200(
図7~
図10B)を介してねじ山のないアンカー100を上腕骨600内に形成された骨ソケット502内に挿入することとを示す。図示されていないが、二頭筋腱500が最初に関節窩取付け部から解放され、二頭筋腱500の一部が患者から引き抜かれるか、又は他の方法で患者から外在化される。二頭筋腱500は、次いで、定寸され、その後、腱縫合糸504を介して縫合される。次いで、骨ソケット502が上腕骨600内に形成される(例えば、穿穴によって)。腱縫合糸504の2つの自由端504a、504bは、それぞれのフィーダワイヤ406、408内に配置され、糸通しタブ404は、ねじ山のないアンカー100から引き離されて、腱縫合糸504が、ねじ山のないアンカー100の遠位ノーズ106の2つの縫合糸穴110a、110bに通される。
【0067】
腱縫合糸504が2つの縫合糸穴110a、110bに通されると、二頭筋腱500の前端501がねじ山のないアンカー100のガイド領域116(
図15)内に配置されるまで、ねじ山のないアンカー100が腱縫合糸504(
図14)の下方に進められる。
図15に示されるように、2つの自由端504a、504bは、次いで、ガイド領域116内に前端501を固定するために一緒に結ばれ、その結果、二頭筋腱500をねじ山のないアンカー100に接続する。より具体的には、二頭筋腱500は、したがって、偏向可能なクリップ104とねじ山のないアンカー100のスパイン108との間に固定される。他の実施形態では、腱縫合糸504は、例えば、結び目及び鍵穴開口部、係止ループ(例えば、調節可能ループ技術)、又は縫合糸を締め付けるために縫合糸をきついスロットに引き込むことによって、ねじ山のないアンカー100に取り付けることができる。
【0068】
固定され接続されると、ユーザは、ねじ山のないアンカー100を患者に導入し(
図16)、挿入器具200を使用してねじ山のないアンカー100を骨ソケット502にドッキングする。図示されていないが、ねじ山のないアンカー100及び接続された二頭筋腱500は、次に、骨ソケット502内に所望の深さまで押し込まれる(
図17)。ねじ山のないアンカー100及び接続された二頭筋腱500は、ドライバ(例えば、マレット)を使用して骨ソケット502内に押し込むことができる。代替的又は追加的に、ユーザ自身がハンドル202に下向きの力を加えることができ、この力は、骨ソケット502を通してねじ山のないアンカー100及び接続された二頭筋腱500を前進させるのに有効である。ねじ山のないアンカー100がその所望の深さになると、停止縫合糸402をハンドル202からクリート214から解放することができ、挿入器具200をねじ山のないアンカー100、したがって患者から取り外すことができる。次に、停止縫合糸402を患者から取り外すことができる。
【0069】
本開示においては、実施形態の同様の名称の構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の名称の各構成要素の各特徴については必ずしも完全に詳しく述べることはしない。加えて、直線状又は円形の寸法が開示されたアンカー、アンカーシステム、及び方法の説明で使用される限りにおいて、このような寸法は、このようなインプラント、インプラントシステム、及び方法と共に使用され得る形状のタイプを限定しようとするものではない。当業者には、そのような直線寸法及び円寸法に相当する寸法を、任意の幾何学的形状について容易に判定することができる点が認識されるであろう。アンカー及びアンカーシステム、並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくとも、アンカー及びアンカーシステムが使用される対象の解剖学的構造、アンカー及びアンカーシステムがともに使用される構成要素のサイズ及び形状、並びにアンカー及びアンカーシステムが使用される方法及び手術に依存し得る。
【0070】
値又は範囲は、本明細書では、「約」及び/又は「約」1つの特定の値から別の特定の値までとして表すことができる。そのように値又は範囲が表される場合、開示される他の実施形態は、列挙された特定の値、及び/又は1つの特定の値から別の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」の使用によって値が近似の形式で表現された場合、開示される多くの値が列挙され、その特定値により別の実施形態が形成されることが理解されるであろう。開示される多くの値が存在し、各値は、本明細書においては、その特定の値自体に加えて「約」が付く値として開示されることも更に理解されるであろう。一部の実施形態では、「約」は、例えば、列挙された値の10%以内、列挙された値の5%以内、又は列挙された値の2%以内を意味するために使用され得る。
【0071】
本教示を説明及び定義する目的で、別途記載のない限り、用語「実質的に」は、本明細書では、任意の定量的な比較、値、測定、又は他の表現に起因し得る固有の不確実性の程度を表すために利用されることに留意されたい。用語「実質的に」はまた、本明細書では、定量的表現が、問題の対象物の基本的機能の変化をもたらすことなく、記述された基準から変化し得る程度を表すためにも利用される。
【0072】
当業者には、上で説明される実施形態に基づいて本発明のさらなる特徴及び利点が認識されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明された内容により限定されるものではない。本明細書で引用される全ての刊行物及び参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に明示的に組み込まれる。参照によって全体又は一部が本明細書に組み込まれるとされる任意の特許、公開又は情報は、組み込まれる資料は、この文書に記載されている既存の定義、記述、又は他の開示資料と矛盾しない程度のみである。したがって、本明細書に明確に示した開示内容は、本明細書に援用されるいかなる矛盾する文献にも優先するものとする。
【0073】
〔実施の態様〕
(1) アンカーであって、
遠位ノーズと、前記遠位ノーズの一方の側部から近位に延在するスパインとを有するねじ山のない非対称アンカー本体であって、前記スパインが、前記アンカー本体の背面を画定し、外側骨係合面と、前記外側骨係合面とは反対側の内側組織着座面と、両側の横方向の側部とを有する、ねじ山のない非対称アンカー本体と、
前記スパインとは反対側の前記ノーズの側部から近位に延在する偏向可能なクリップであって、前記偏向可能なクリップ及び前記スパインの一部が、骨に取り付けられる軟組織の前端を収容及び遮蔽するように構成されたガイド領域を画定する、偏向可能なクリップと、
を備えているアンカー。
(2) 前記遠位ノーズの遠位先端が、内部を通って長手方向に延在する少なくとも2つの縫合糸穴を有する、実施態様1に記載のアンカー。
(3) 前記少なくとも2つの縫合糸穴が、互いに横方向に隣接して配置されている、実施態様2に記載のアンカー。
(4) 前記少なくとも2つの縫合糸穴が、前記軟組織の前記前端を前記ガイド領域の遠位端に維持するために手術用縫合糸を受容するように構成されている、実施態様2に記載のアンカー。
(5) 前記スパインの前記横方向の側部から延在する偏向可能なウィングの複数の対をさらに備え、各ウィングが、軟組織を包囲する側面を画定するように、前記スパインの前記組織着座面の上方かつ前記組織着座面を越えて延在する部分を有する状態で、各対が前記スパインに沿って長手方向に離間されている、実施態様1に記載のアンカー。
【0074】
(6) 偏向可能なウィングの少なくとも1つの対に隣接して近位に配置された縫合糸凹部の少なくとも1つの対をさらに備え、各縫合糸凹部が、縫合糸を少なくとも部分的に収容するように構成されており、各縫合糸凹部が、前記縫合糸凹部内に着座した縫合糸が前記偏向可能なウィングの偏向に干渉しないように、前記アンカー本体の横方向の側部を通って延在する、実施態様5に記載のアンカー。
(7) 各縫合糸凹部が、少なくとも部分的に弧状である経路に沿って前記アンカー本体の前記横方向の側部を通って延在する、実施態様6に記載のアンカー。
(8) 前記外側骨係合面上に形成された少なくとも1つの骨係合バーブをさらに備えている、実施態様1に記載のアンカー。
(9) 前記外側骨係合面から延在する少なくとも1つの偏向可能なバックウィングをさらに備えている、実施態様1に記載のアンカー。
(10) 前記スパインの前記横方向の側部の近位端から横方向に延在する1つの対の配向タブをさらに備え、前記1つの対の配向タブが、前記アンカーが骨に挿入されるときに前記アンカーの横方向の移動を制限するように構成されている、実施態様1に記載のアンカー。
【0075】
(11) 前記アンカー本体が、前記アンカー本体の近位端に形成され、前記アンカー本体内に遠位に延在する少なくとも1つのボアを有し、前記ボアが、挿入器具の遠位端を受容するように構成されている、実施態様1に記載のアンカー。
(12) 軟組織アンカーシステムであって、
骨に挿入されるように構成されたねじ山のない非対称アンカーであって、前記アンカーが、
内部を通って延在する長手方向軸を有する遠位ノーズと、
前記遠位ノーズの一方の側部から近位に延在するスパインであって、前記スパインが、前記長手方向軸からオフセットされており、前記スパイン及び前記遠位ノーズが前記アンカーの長さを画定する、スパインと、
前記スパインの反対側の前記遠位ノーズの側部から近位に延在する可撓性フランジであって、前記可撓性フランジ及び前記スパインの一部が、前記遠位ノーズに近接して隣接する組織受容凹部を画定し、前記可撓性フランジが、挿入中に前記凹部内に軟組織セグメントを捕捉するのに有効である、可撓性フランジと、
を有する、ねじ山のない非対称アンカーと、
前記アンカーに取り外し可能に結合され、前記アンカーを骨内に押し込むように構成された挿入器具であって、前記挿入器具が、ハンドルと、前記ハンドルから延在する細長いシャフトとを有し、前記ハンドルが近位端及び遠位端を有し、前記近位端が、前記アンカーが挿入される解剖学的構造の一部を表す形状を有する、挿入器具と、
を備えている、軟組織アンカーシステム。
(13) 前記細長いシャフトが、その遠位端に挿入器プロングを有し、前記挿入器プロングが、前記アンカーに取り外し可能に結合するように、前記アンカーの近位端内に延在するボア内に受容されるように構成されている、実施態様12に記載のアンカーシステム。
(14) 前記細長いシャフトが、前記アンカーが骨に挿入されている際の前記アンカーの挿入深さを示す少なくとも1つのマーキングを含む、実施態様12に記載のアンカーシステム。
(15) 前記解剖学的構造の前記一部が上腕骨である、実施態様12に記載のアンカーシステム。
【0076】
(16) 前記ハンドルの前記近位端が、前記ハンドルの前記遠位端よりも広い、実施態様12に記載のアンカーシステム。
(17) 前記可撓性フランジが、前記アンカーの長さよりも短い長さを有する、実施態様12に記載のアンカーシステム。
【国際調査報告】