(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】流路システム、遺伝子シーケンサ及び試薬回収方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20241010BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G01N35/08 A
C12M1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525684
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2021129640
(87)【国際公開番号】W WO2023082063
(87)【国際公開日】2023-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516122667
【氏名又は名称】深▲セン▼華大智造科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】MGI Tech Co.,LTD
【住所又は居所原語表記】Main Building and Second Floor of No.11 Building,Beishan Industrial Zone,Yantian District,Shenzhen,Guangdong 518083,China
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ルー, ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ニュー, ツーホワ
(72)【発明者】
【氏名】リー, ソンリン
(72)【発明者】
【氏名】シン, チューティエン
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
【Fターム(参考)】
2G058CC05
2G058EA14
2G058EC03
2G058GA06
4B029AA27
4B029BB20
(57)【要約】
流路システム、遺伝子シーケンサ及び試薬回収方法。流路システムは、少なくとも2つの試薬貯蔵容器、フローセル、分流モジュール及び流体動力ユニットを備える。フローセルは、少なくとも2つの試薬貯蔵容器に接続される。分流モジュールは、分流構造体及び少なくとも2つの分流チャネルを備える。流体動力ユニットは、分流モジュールに接続され、流体動力ユニットは、少なくとも2つの分流チャネルのうちの1つに選択的に連通され、流体動力ユニットは、試薬貯蔵容器から分流モジュールに向かう順方向の流れで試薬を駆動するように構成され、流体動力ユニットは、分流モジュールから試薬貯蔵容器に向かう逆方向の流れで試薬を駆動するようにさらに構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なる試薬をそれぞれ貯蔵するための少なくとも2つの試薬貯蔵容器と、
試料を収容するためのフローセルであって、前記フローセルが、少なくとも2つの試薬貯蔵容器に流体接続されている、フローセルと、
分流構造体及び少なくとも2つの分流チャネルを備える分流モジュールであって、前記分流構造体が、前記フローセルと流体連通する集束ポート、及び前記少なくとも2つの分流チャネルに対応する少なくとも2つの分流ポートを有する、分流モジュールと、
前記分流モジュールに流体接続された流体動力ユニットであって、前記流体動力ユニットが、前記少なくとも2つの分流チャネルのうちの1つと選択的に流体連通し、前記流体動力ユニットが、前記試薬貯蔵容器から前記分流モジュールに向かう順方向の流れで試薬を駆動するように構成されており、前記流体動力ユニットが、前記分流モジュールから前記試薬貯蔵容器に向かう逆方向の流れで試薬を駆動するようにさらに構成されている、流体動力ユニットと
を具備する流路システム。
【請求項2】
前記少なくとも2つの分流チャネル及び前記少なくとも2つの試薬貯蔵容器が、一対一対応で設けられている、請求項1に記載の流路システム。
【請求項3】
前記少なくとも2つの分流チャネルが、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルを備え、前記分流構造体が、三方管を備え、前記三方管が、前記フローセルに流体連通された集束ポート、前記第1の分流チャネルと流体連通する第1の分流ポート、及び前記第2の分流チャネルと流体連通する第2の分流ポートを備える、請求項1に記載の流路システム。
【請求項4】
前記分流構造体が、開閉制御バルブをさらに備え、前記開閉制御バルブが、第1の分流チャネル及び/又は前記第2の分流チャネルに設けられている、請求項3に記載の流路システム。
【請求項5】
前記少なくとも2つの分流チャネルが、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルを備え、前記分流構造体が、第1のリバースバルブを備え、前記第1のリバースバルブが、第1のポート、第2のポート及び第3のポートを有し、前記第1のポートが、集束ポートを形成し、前記第2のポートが、前記第1の分流チャネルと流体連通する第1の分流ポートを形成し、前記第3のポートが、前記第2の分流チャネルと流体連通する第2の分流ポートを形成し、前記第1のリバースバルブが、前記第1のリバースバルブの前記第1のポートの、前記第2のポート又は前記第3のポートとの連通を制御するように動作する、請求項1に記載の流路システム。
【請求項6】
前記流体動力ユニットが、注入ポンプを備え、前記注入ポンプが、第1の動力ポート及び第2の動力ポートを備え、前記第1の動力ポートが、前記第1の分流チャネルに流体接続されており、前記第2の動力ポートが、前記第2の分流チャネルに流体接続されている、請求項3~5のいずれか一項に記載の流路システム。
【請求項7】
前記流路システムが、廃液セルをさらに備え、前記注入ポンプが、第3の動力ポートをさらに備え、前記第3の動力ポートが、前記廃液セルと流体連通する、請求項6に記載の流路システム。
【請求項8】
前記流体動力ユニットが、注入ポンプ及び第2のリバースバルブを備え、前記注入ポンプが、第1の動力ポートを備え、前記第2のリバースバルブが、第1のポート、第2のポート、及び第3のポートを有し、前記第1のポート及び前記第2のポートが、それぞれ前記第1の分流チャネル及び前記第2の分流チャネルに接続されており、前記第3のポートが、前記注入ポンプの第1の動力ポートに接続されており、前記第2のリバースバルブが、前記第3のポートの、前記第1のポート又は前記第2のポートとの連通を制御するように動作する、請求項3に記載の流路システム。
【請求項9】
前記流路システムが、廃液セルをさらに備え、前記注入ポンプが、第2の動力ポートをさらに備え、前記注入ポンプの第2の動力ポートが、前記廃液セルと連通する、請求項8に記載の流路システム。
【請求項10】
前記流体動力ユニットが、第1の蠕動ポンプ及び第2の蠕動ポンプを備え、前記流路システムが、廃液セルをさらに備え、前記第1の分流チャネル及び前記第2の分流チャネルが両方、前記廃液セルと連通し、前記第1の蠕動ポンプが、前記第1の分流チャネルに設けられており、前記第2の蠕動ポンプが、前記第2の分流チャネルに設けられている、請求項5に記載の流路システム。
【請求項11】
前記流路システムが、試薬選択構成要素をさらに備え、前記試薬選択構成要素が、共通孔及び少なくとも2つの分岐孔を備え、前記少なくとも2つの分岐孔が、前記少なくとも2つの試薬貯蔵容器に対応して接続されており、前記共通孔が、前記フローセルに流体接続されており、前記共通孔が、前記少なくとも2つの分岐孔のうちの1つと選択的に連通する、請求項1~10のいずれか一項に記載の流路システム。
【請求項12】
前記流体動力ユニットが、注入ポンプを備え、前記流路システムが、廃液セル及び試薬選択構成要素をさらに備え、前記第1の分流チャネル及び前記第2の分流チャネルが両方、前記廃液セルと連通し、前記注入ポンプが、動力ポートを備え、前記試薬選択構成要素が、共通孔及び複数の分岐孔を備え、前記共通孔が、前記複数の分岐孔のうちの1つと選択的に連通し、前記複数の分岐孔が、前記少なくとも2つの試薬貯蔵容器と対応して連通する少なくとも2つの試薬分岐孔、及び前記フローセルと連通するフローセル分岐孔を備え、前記注入ポンプの動力ポートが、前記共通孔に接続されている、請求項5に記載の流路システム。
【請求項13】
前記流路システムが、緩衝液を貯蔵するための緩衝液貯蔵容器をさらに備え、前記緩衝液貯蔵容器が、前記フローセルに接続されており、前記流体動力ユニットが、前記緩衝液貯蔵容器から前記分流モジュールに向かう順方向の流れで前記緩衝液を駆動するように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の流路システム。
【請求項14】
前記流体動力ユニットが、前記分流モジュールから前記試薬貯蔵容器に向かう逆方向で流れて試薬貯蔵容器の出口端部に接続された管路に戻るよう、試薬を駆動するように構成されている、請求項1に記載の流路システム。
【請求項15】
シーケンシングスライドと、請求項1~14のいずれか一項に記載の流路システムとを備え、前記フローセルが前記シーケンシングスライドに配置されている、遺伝子シーケンサ。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載の流路システムの試薬回収方法であって、前記少なくとも2つの異なる試薬が、第1の試薬及び第2の試薬を含み、前記少なくとも2つの分流チャネルが、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルを備え、前記試薬回収方法が、
第1の分流チャネルと連通し、フローセル及び分流構造体を通って前記少なくとも2つの分流チャネルの第1の分流チャネルに入るよう第1の試薬を駆動するように、前記流体動力ユニットを制御し、第1の試薬がフローセルにおける試料と第1の反応を行うステップと、
フローセル及び分流構造体を通るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御し、第2の試薬がフローセルにおける試料と第2の反応を行い、第2の反応の後に、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップと
を含む、試薬回収方法。
【請求項17】
前記試薬回収方法が、第1の反応の後に、フローセル及び分流構造体を通って第1の分流チャネルに入るよう緩衝液を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御して、洗浄を実行するステップをさらに含む、請求項16に記載の試薬回収方法。
【請求項18】
フローセル及び分流構造体を通るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御し、第2の試薬がフローセルにおける試料と第2の反応を行い、第2の反応の後に、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップが、第2の分流チャネルと連通し、フローセル及び分流構造体を通って前記少なくとも2つの分流チャネルの第2の分流チャネルに入るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することと、第2の反応の後に、前記第2の分流チャネルと連通し、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう前記第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することとを含む、請求項17に記載の試薬回収方法。
【請求項19】
フローセル及び分流構造体を通るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御し、第2の試薬がフローセルにおける試料と第2の反応を行い、第2の反応の後に、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップが、第1の分流チャネルと連通し、フローセル及び分流構造体を通って前記第1の分流チャネルに入るよう第2の試薬を駆動するように、前記流体動力ユニットを制御することと、第2の反応の後に、前記第2の分流チャネルと連通し、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう前記第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することとを含む、請求項16に記載の試薬回収方法。
【請求項20】
第1の反応の後に、前記第1の分流チャネルと連通し、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう前記第1の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することによって、回収された第1の試薬が、試薬貯蔵容器の出口端部に接続された管路を逆流するステップをさらに含む、請求項16に記載の試薬回収方法。
【請求項21】
前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップが、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することによって、回収された第2の試薬が、試薬貯蔵容器の出口端部に接続された管路を逆流するステップを含む、請求項16に記載の試薬回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本出願は、流路システム、遺伝子シーケンサ及び試薬回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
[002]臨床診断及び生命科学研究に用いられる様々な検査機器(遺伝子シーケンサ、フローサイトメータ、及び高圧液体クロマトグラフなど)は、通常、種々の溶液を複数の領域間で移送するための流体システムを有する。例えば、検査対象物(細胞、DNAフラグメント等)を含有する試料、試料と反応する生化学試薬、様々な緩衝液、洗浄液等は、一般に、試料管、試薬セル及び他の容器から1つ又は複数の反応領域又は検査領域へと移送され、次いで、反応又は検査が完了した後に廃液領域へと移される。反応領域に入る試薬の濃度及び均質性は、生化学反応の効率を決定し、前者は、流体システムの全体的な設計に密接に関連する。加えて、試料及び生化学試薬は、貴重且つ高価である場合が多く、これは、移送中に用いられる試薬の量を十分に少なくする必要があることを意味する。
【0003】
[003]現在のところ、ハイエンドの検査機器の流体システムはほとんど、高精度な低内部容積のポンプバルブ構成要素及び管路を用いて上記の試薬貯蔵領域、反応領域又は検査領域、廃液領域及び他の領域を流体接続する、圧力駆動の形態を採用している。生化学反応は、段階的に実行される場合が多いため、種々の試薬が反応領域を順に通過する必要があり、これは試薬間の置換の問題を伴う。閉じた管路又はチャネルにおける流れ(ポアズイユ流れとしても知られる)については、流体の粘度により、壁の近くでは流速が低く、壁から遠くでは流速が高くなり、全体的な速度は放物線状に分布する。したがって、管路の一部分における1つの試薬が後続の試薬と置換されるか又は後続の試薬により押し流されるとき、壁に近い領域における試薬はより置換されにくい場合が多く、その結果、管路を押し流し綺麗にするために管路の容積の数倍の量の試薬を使用する必要がある。
【0004】
[004]具体的には、容積Vを有し何らかの試薬aで満ちた管路又はフローセルを別の試薬bで完全に充填したい場合、試薬bの必要量は、少なくともrVである必要があり、ここでr>1は、置換率として定義される。rは、管路ジオメトリ、試薬a及びbの粘度比及び密度比、流速等のような多くの変数に関連する数である。実験及び数値シミュレーションは共に、円形断面を有する直線管路の一部について、rが通常4~5の間であり、高さが長さ及び幅よりもはるかに小さい(例えば、長さ及び幅が高さの100倍)チャネルについて、rが1.5~2の間であることを示している。これら2つの基本形状は、医療用検査機器の流体システムにおいて非常に一般的である。例えば、遺伝子シーケンサにおいて、検査対象となるDNAフラグメントは通常、フローセルに固定される。必要な試薬の量を低減するためにフローセルの内部容積を可能な限り低減すると同時に、検査対象となるDNAフラグメントが検査平面において可能な限り広がることを確実にするために、フローセルチャネルの典型的な高さ寸法は、一般にわずか50~100ミクロンであり、これはミリメートル又はセンチメートル単位の長さ及び幅(長さ及び幅が検査平面を構成する)よりもはるかに小さい。加えて、フローセルは、通常は加工の容易な標準的な丸形管路を用いて、フローセルの上流部及び下流部において試薬槽、廃液槽、ポンプバルブ構成要素等に流体接続される。ここで、容積V1を有するフローセルがあり、その上流部が内部容積V2を有する丸形管路の一部分に滑らかに接続されていると仮定する。フローセル及び丸形管路の両方は、試薬aで完全に充填されている。計算を簡便にするために、フローセルのrの値は2に固定され、丸形管路のrの値は5に固定される。このとき、試薬bが丸形管路の入口端部に注入される場合、丸形管路における試薬aを完全に置換するには5V2の試薬bが必要となり、さらにフローセル内の試薬aを完全に置換するには2V1の試薬bが必要となる。上流部における丸形管路の置換プロセス中にいくらかの試薬bがフローセルに入っていることを考慮すると、用いられる試薬bの最終体積は、一般に2V1~2V1+5V2の間である。ポアズイユ流れの特性により、用いられる試薬の量は、検査領域の内部容積V1に依存するのみならず、検査領域の上流部における管路の内部容積V2にも大きく関連することがわかる。特に検査領域が上流部における管路の容積よりも小さい(すなわちV1<V2)一部の流体システムでは、検査領域における試薬濃度及び反応効率を確保するために大量の試薬が必要になる。用いられる試薬の量を低減するために、明白な解決策は、上流部における管路の容積又は相対容積を低減する(すなわちV2又はV2/V1を低減する)ことであり、これは、管路の断面積又は長さを低減することにより実現することができる。しかしながら、管路の断面積の低減は、全体的な圧力損失の増大を不可避的にもたらし、以て流体システムに対する負荷を増大させる。管路の長さには、機器内部の物理的スペースの制約に起因して下限がある。要するに、V2又はV2/V1をゼロに低減することはできない。
【0005】
[005]加えて、用いられる試薬の量を効果的に低減し得る別の技術的解決策には、試薬回収がある。試薬回収中に他の試薬がフローセルに回収されることにより生じる交差汚染をいかに回避するかが、解決する必要のある課題となっている。
【発明の概要】
【0006】
(概要)
[006]本出願は、前回の反応の試薬がフローセルに回収されることにより生じる交差汚染を回避するための流路システム、遺伝子シーケンサ及び試薬回収方法を提供する。
【0007】
[007]第1の態様において、本出願は、少なくとも2つの試薬貯蔵容器、フローセル、分流モジュール及び流体動力ユニットを含む流路システムを提供し、少なくとも2つの試薬貯蔵容器は、少なくとも2つの異なる試薬をそれぞれ貯蔵するように構成される。フローセルは、試料を収容するように構成され、フローセルは、少なくとも2つの試薬貯蔵容器に接続される。分流モジュールは、分流構造体及び少なくとも2つの分流チャネルを含み、分流構造体は、フローセルと流体連通する集束ポート、及び少なくとも2つの分流チャネルに対応する少なくとも2つの分流ポートを有する。流体動力ユニットは、分流モジュールに接続され、流体動力ユニットは、少なくとも2つの分流チャネルのうちの1つに選択的に連通し、流体動力ユニットは、試薬貯蔵容器から分流モジュールに向かう順方向の流れで試薬を駆動するように構成され、流体動力ユニットは、分流モジュールから試薬貯蔵容器に向かう逆方向の流れで試薬を駆動するようにさらに構成される。
【0008】
[008]いくつかの実施形態において、少なくとも2つの分流チャネル及び少なくとも2つの試薬貯蔵容器は、一対一対応で設けられる。
【0009】
[009]いくつかの実施形態において、少なくとも2つの分流チャネルは、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルを含み、分流構造体は、三方管を含み、三方管は、フローセルに流体連通された集束ポート、第1の分流チャネルと連通する第1の分流ポート、及び第2の分流チャネルと連通する第2の分流ポートを含む。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態において、分流構造体は、開閉制御バルブをさらに含み、開閉制御バルブは、第1の分流チャネル及び/又は第2の分流チャネルに設けられる。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態において、少なくとも2つの分流チャネルは、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルを含み、分流構造体は、第1のリバースバルブを含み、第1のリバースバルブは、第1のポート、第2のポート及び第3のポートを有し、第1のポートは、集束ポートを形成し、第2のポートは、第1の分流チャネルと連通する第1の分流ポートを形成し、第3のポートは、第2の分流チャネルと連通する第2の分流ポートを形成し、第1のリバースバルブは、第1のポートの、第2のポート又は第3のポートとの連通を制御するように動作する。
【0012】
[0012]いくつかの実施形態において、流体動力ユニットは、注入ポンプを含み、注入ポンプは、第1の動力ポート及び第2の動力ポートを含み、第1の動力ポートは、第1の分流チャネルに流体接続され、第2の動力ポートは、第2の分流チャネルに流体接続される。
【0013】
[0013]いくつかの実施形態において、流路システムは、廃液セルをさらに含み、注入ポンプは、第3の動力ポートをさらに含み、第3の動力ポートは、廃液セルと連通する。
【0014】
[0014]いくつかの実施形態において、流体動力ユニットは、注入ポンプ及び第2のリバースバルブを含み、注入ポンプは、第1の動力ポートを含み、第2のリバースバルブは、第1のポート、第2のポート及び第3のポートを有し、第1のポート及び第2のポートは、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルにそれぞれ接続され、第3のポートは、注入ポンプの第1の動力ポートに接続され、第2のリバースバルブは、第3のポートの、第1のポート又は第2のポートとの連通を制御するように動作する。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態において、流路システムは、廃液セルをさらに含み、注入ポンプは、第2の動力ポートをさらに含み、注入ポンプの第2の動力ポートは、廃液セルと連通する。
【0016】
[0016]いくつかの実施形態において、流体動力ユニットは、第1の蠕動ポンプ及び第2の蠕動ポンプを含み、流路システムは、廃液セルをさらに含み、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルは両方、廃液セルと連通し、第1の蠕動ポンプは、第1の分流チャネルに設けられ、第2の蠕動ポンプは、第2の分流チャネルに設けられる。
【0017】
[0017]いくつかの実施形態において、流路システムは、試薬選択構成要素をさらに含み、試薬選択構成要素は、共通孔及び少なくとも2つの分岐孔を含み、少なくとも2つの分岐孔は、少なくとも2つの試薬貯蔵容器に対応して接続され、共通孔は、フローセルに接続され、共通孔は、少なくとも2つの分岐孔のうちの1つと選択的に連通する。
【0018】
[0018]いくつかの実施形態において、流体動力ユニットは、注入ポンプを含み、流路システムは、廃液セル及び試薬選択構成要素をさらに含み、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルは両方、廃液セルと連通し、注入ポンプは、動力ポートを含み、試薬選択構成要素は、共通孔及び複数の分岐孔を含み、共通孔は、複数の分岐孔のうちの1つと選択的に連通し、複数の分岐孔は、少なくとも2つの試薬貯蔵容器と対応して連通する少なくとも2つの試薬分岐孔、及びフローセルと連通するフローセル分岐孔を含み、注入ポンプの動力ポートは、共通孔に接続される。
【0019】
[0019]いくつかの実施形態において、流路システムは、緩衝液を貯蔵するための緩衝液貯蔵容器をさらに含み、緩衝液貯蔵容器は、フローセルに接続され、流体動力ユニットは、緩衝液貯蔵容器から分流モジュールに向かう順方向の流れで緩衝液を駆動するように構成される。
【0020】
[0020]いくつかの実施形態において、流体動力ユニットは、分流モジュールから試薬貯蔵容器に向かう逆方向で流れて試薬貯蔵容器の出口端部に接続された管路に戻るよう、試薬を駆動するように構成される。
【0021】
[0021]第2の態様において、本出願は、シーケンシングスライド及び上述の流路システムを含む遺伝子シーケンサを提供し、フローセルは、シーケンシングスライドに配置される。
【0022】
[0022]第3の態様において、本出願は、上述の流路システムに基づく試薬回収方法を提供し、少なくとも2つの異なる試薬は、第1の試薬及び第2の試薬を含み、少なくとも2つの分流チャネルは、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルを含み、試薬回収方法は、以下のステップを含む。
【0023】
[0023]第1の分流チャネルと連通し、フローセル及び分流構造体を通って少なくとも2つの分流チャネルの第1の分流チャネルに入るよう第1の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御し、第1の試薬がフローセルにおける試料と第1の反応を行うステップ。
【0024】
[0024]フローセル及び分流構造体を通るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御し、第2の試薬がフローセルにおける試料と第2の反応を行い、第2の反応の後に、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップ。
【0025】
[0025]いくつかの実施形態において、試薬回収方法は、第1の反応の後に、フローセル及び分流構造体を通って第1の分流チャネルに入るよう緩衝液を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御して、洗浄を実行するステップをさらに含む。
【0026】
[0026]いくつかの実施形態において、フローセル及び分流構造体を通るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御し、第2の試薬がフローセルにおける試料と第2の反応を行い、第2の反応の後に、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップは、第2の分流チャネルと連通し、フローセル及び分流構造体を通って少なくとも2つの分流チャネルの第2の分流チャネルに入るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することと、第2の反応の後に、第2の分流チャネルと連通し、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することとを含む。
【0027】
[0027]いくつかの実施形態において、フローセル及び分流構造体を通るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御し、第2の試薬がフローセルにおける試料と第2の反応を行い、第2の反応の後に、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップは、第1の分流チャネルと連通し、フローセル及び分流構造体を通って第1の分流チャネルに入るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することと、第2の反応の後に、第2の分流チャネルと連通し、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することとを含む。
【0028】
[0028]いくつかの実施形態において、試薬回収方法は、第1の反応の後に、第1の分流チャネルと連通し、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第1の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することによって、回収された第1の試薬が、第1の試薬を貯蔵する試薬貯蔵容器の出口端部に接続された管路を逆流するステップをさらに含む。
【0029】
[0029]いくつかの実施形態において、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップは、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することによって、回収された第2の試薬が、試薬貯蔵容器の出口端部に接続された管路を逆流するステップを含む。
【0030】
[0030]本出願の様々な態様に基づいて、流路システムに分流モジュールが設けられ、分流モジュールが分流構造体及び少なくとも2つの分流チャネルを含むことにより、回収する必要がある試薬が、前回の反応の試薬とは異なる分流チャネルに入ることができ、以て、前回の反応の試薬がフローセルに回収されることにより生じる交差汚染が回避される。
【0031】
[0031]本出願の他の特徴及び利点が、添付の図面に関連する本出願の例示的実施形態の以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0032】
[0032]ここで説明する添付の図面は、本出願のさらなる理解を提供し、本出願の一部を構成することを意図したものである。本出願の概略的に示した実施形態及びその説明は、本出願を説明するために用いられ、本出願に対する不要な限定を構成するものではない。添付の図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1の試薬が順方向に流れる場合の、先行技術における流路システムの構造の模式図である。
【
図2】第1の試薬が逆方向に回収される場合の、先行技術における流路システムの構造の模式図である。
【
図3】本出願のいくつかの実施形態に係る流路システムの構造の模式図である。
【
図4】
図3に示す流路システムの一実施形態に基づく試薬回収方法のフローチャートである。
【
図5】本出願のいくつかの実施形態に係る試薬回収方法のステップ図である。
【
図6】本出願の他のいくつかの実施形態に係る試薬回収方法のステップ図である。
【
図7】本出願のいくつかの実施形態に係る試薬回収方法のフローチャートである。
【
図8】本出願の第1の実施形態に係る流路システムの構造の模式図である。
【
図9】
図8に示す流路システムが試薬回収に用いられる場合の、サイクル数に伴う試薬貯蔵容器における試薬濃度の変化を示す図である。
【
図10】本出願の第2の実施形態に係る流路システムの構造の模式図である。
【
図11】本出願の第3の実施形態に係る流路システムの構造の模式図である。
【
図12】本出願の第4の実施形態に係る流路システムの構造の模式図である。
【
図13】本出願の第5の実施形態に係る流路システムの構造の模式図である。
【
図14】本出願の第6の実施形態に係る流路システムの構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(実施形態の詳細な説明)
[0047]以下、添付の図面を参照して、本出願の実施形態における技術的解決策を明確且つ完全に説明する。説明されている実施形態は、単に本出願の実施形態の一部であり、全実施形態ではないことは明らかである。少なくとも1つの例示的実施形態の以下の説明は、実質的に単なる例示であり、本出願、その応用例又は用途を限定することを意図したものでは決してない。本出願における実施形態に基づいて、当業者によって創造的努力なしで得られる全ての他の実施形態は、本出願の保護範囲に属する。
【0035】
[0048]別途説明のない限り、これらの実施形態に記載されている構成要素及びステップの相対的配置、数式及び数値は、本出願の範囲を限定するものではない。同時に、説明を簡便にするために、図面に示す様々な部分の寸法は、実際の縮尺関係に従って描かれていないことを理解されたい。当業者に既知の技法、方法及び機器については詳細に論じない場合があるが、適切な場合には、技法、方法及び機器が、認可された明細書の一部として考えられるべきである。本明細書で示し論じる全ての例において、任意の特定の値は、限定ではなく単に例示として解釈されるべきである。したがって、例示的実施形態の他の例は、異なる値を有してもよい。以下の図面において、同様の数字及び文字は同様の項目を示し、そのため、ある項目が1つの図面において定義されれば、後続の図面においてさらに論じられる必要はないことに留意されたい。
【0036】
[0049]説明を簡便にするために、「上」、「上方」、「の上面に」及び「上側」などの空間的に相対的な用語が、図に示すデバイス又は特徴と他のデバイス又は特徴との間の空間的な位置関係を説明するために本明細書で用いられる場合がある。空間的に相対的な用語は、図面に示すデバイスの向きに加えて、使用中又は動作中における種々の向きを包含することを意図したものであることを理解されたい。例えば、図面におけるデバイスが反転した場合、他のデバイス又は構造体の「上方」又は「上」にあるものとして説明されるデバイスは、他のデバイス又は構造体の「下方」又は「下」に配置される。よって、「上方」という例示的用語は、「上方」及び「下方」の両方の方向を含み得る。デバイスは、他の異なる方法で配置されてもよく、本明細書で用いられる空間的な相対的記載は、それに応じて説明される。
【0037】
[0050]
図1及び
図2に示すように、関連技術における流路システムは、フローセルC1、第1の管路L1及び第2の管路L2を含む。第1の管路L1は、フローセルC1の第1の端部に接続され、第2の管路L2は、フローセルC1の第2の端部に接続される。矢印FDは、流れ方向を示す。
図1及び
図2に示す流路システムでは、各反応サイクルにおいて、試料がまず第1の試薬と第1の反応を行い、次いで第2の試薬と第2の反応を行い、次いで上記の反応サイクルが複数回繰り返される。次いで、2回の反応サイクルが生じる場合、第1の反応サイクルにおける第2の試薬がまず反応し、第2の反応サイクルにおける第1の試薬がその後に反応する。
図1は、ある反応サイクルにおいて第1の管路L1から第2の管路L2へと順方向に流れる第1の試薬R1の模式図を示す。
図1に示すように、第1の試薬R1が第1の管路L1から第2の管路L2へと順方向に流れるとき、第2の管路L2には、緩衝液S及び前回の反応サイクルの第2の試薬R2が依然として残留する。
図2は、第2の管路L2から第1の管路L1へと逆流する第1の試薬R1の模式図を示す。すなわち、
図2は、第1の試薬R1の回収の模式図を示す。
【0038】
[0051]ポアズイユ流れの特性、すなわち、閉じた管路又はチャネルにおける流速の放物線状の分布に基づいて、試薬間の界面は直線ではなく、より複雑な曲線である。
図1からわかるように、第1の試薬R1が左から右へ順方向にフローセルC1に流れ込むとき、第2の管路L2は、第1の試薬R1により置換された緩衝液S及びそれ以前に置換された第2の試薬R2を含む。この場合、第1の試薬R1と緩衝液Sとの間の界面及び緩衝液Sと第2の試薬R2との間の界面は、両方が放物線であり、緩衝液Sは、第1の試薬R1と第2の試薬R2との間の障壁として働く。これにより、第1の試薬R1の一部が右から左へ逆方向に回収されるとき(
図2参照)、フローセルC1の中間部における流速が最も速いため、少量の第2の試薬R2がフローセルの中間部に沿ってフローセルC1に逆流する場合がある。ある順序で実行される必要がある一部の反応システムにおいては、これは悪影響を生じさせる可能性が高い。例えば、遺伝子シーケンシングは通常、一本鎖DNAフラグメントにおける各塩基について周期的な「合成・検査・除去」のプロセスを要する。合成段階において、蛍光体を有する遊離塩基が、合成試薬を媒体として用いてフローセルに入り、ポリメラーゼの作用下で、フローセルの表面に固定された検査対象の一本鎖DNAを相補する。後続の検査フェーズにおいて、光学系が蛍光体を発色させて、現在のサイクルの塩基を特定する。最後に、除去試薬が蛍光体を除去するためにフローセルに入ることにより、現在のサイクルが終了する。
図1及び
図2において、第1の試薬R1が合成試薬であり、第2の試薬R2が前回のサイクルにおける除去試薬であると仮定する。第1の試薬R1がフローセルC1に入ると(
図1)、合成反応の新たなサイクルが開始する。このとき、「合成・検査・除去」の順序では、光学的発色が次に行われるべきである。しかしながら、試薬回収に起因して、除去試薬の一部がフローセルに逆流し(
図2)、以て結合した蛍光体の一部を塩基から分離させる。光学的発色の前のこの予期しない除去反応により、全体的なフローセルのシーケンシングプロセスが非同期化し、結果としてシーケンシングエラーが生じる。したがって、試薬回収中において、前回の反応の試薬がフローセルに逆流することにより生じる交差汚染をいかに回避するかが、解決する必要のある喫緊の技術的課題となっている。
【0039】
[0052]加えて、既存の回収ソリューションは全て、回収された試薬を直接試薬貯蔵容器に収集する。試薬は、フローセルに順方向に入る間に、以前にフローセル及びその第1の管路を占有していた液体と不可避的に混合するため、逆方向に回収された後のその濃度は、不可避的に減少する。結果として、試薬は、複数の回収及び再利用の間に繰り返し希釈され、そのため、フローセルにおいて反応を行う試薬の実効濃度を保証することができない。かつ、これらの回収された試薬は、貯蔵セル又は容器に入ると、容器内の未使用の試薬をさらに希釈する。濃度が反応効率と正の相関を有する反応システムについては、希釈された試薬がフローセルにおける反応効率を著しく低減させる場合がある。さらに、試薬濃度の減少は、回収回数と正の相関を有する。例えば、試薬濃度が回収の度に10%低減する場合、濃度は、4サイクル後に34%低減することになる。したがって、回収率が高いほど、フローセル内の全体的な反応効率は低くなる。したがって、生化学反応に関わる試薬の濃度をいかに保証するかもまた、解決する必要のある課題となっている。
【0040】
[0053]前回の反応の試薬がフローセルに逆流することにより生じる交差汚染を回避するために、本出願は、フローセルC1の第2の端部(試薬が順方向に流れるときの下流側端部)に分流チャネルを配置して、回収する必要のある試薬及び前回の反応の試薬を分流することにより、交差汚染を回避するという技術的解決策を提供する。
【0041】
[0054]
図3を参照すると、本出願の一実施形態に係る流路システムは、少なくとも2つの試薬貯蔵容器(不図示)、フローセルC1、分流モジュール及び流体動力ユニット(不図示)を含み、少なくとも2つの試薬貯蔵容器は、少なくとも2つの異なる試薬をそれぞれ貯蔵するように構成される。フローセルC1は、試料を収容するように構成され、フローセルC1は、少なくとも2つの試薬貯蔵容器に接続される。分流モジュールは、分流構造体C2及び少なくとも2つの分流チャネルを含む。分流構造体C2は、フローセルC1と流体連通する集束ポート、及び少なくとも2つの分流チャネルに対応する少なくとも2つの分流ポートを有する。流体動力ユニットは、分流モジュールに接続される。流体動力ユニットは、少なくとも2つの分流チャネルのうちの1つと選択的に連通し、流体動力ユニットは、試薬貯蔵容器から分流モジュールに向かう順方向の流れで試薬を駆動するように構成される。流体動力ユニットは、分流モジュールから試薬貯蔵容器に向かう逆方向の流れで試薬を駆動するようにさらに構成される。
【0042】
[0055]
図3に示すように、流路システムは、少なくとも2つの試薬貯蔵容器(不図示)、フローセルC1、フローセルC1の第1の端部に接続された第1の管路L1、フローセルC1の第2の端部に接続された第2の管路L2、分流構造体C2、及び少なくとも2つの分流チャネルを含む。具体的には、
図3は、少なくとも2つの分流チャネルが第1の分流チャネルL3及び第2の分流チャネルL4を含むことを示す。
【0043】
[0056]第1の管路L1は、試薬貯蔵容器に流体接続されるように構成され、切換バルブなどの試薬選択のための構成要素が、第1の管路L1と試薬貯蔵容器との間に設けられてもよいことに留意されたい。同様に、第1の分流チャネルL3及び第2の分流チャネルL4は、流路制御のためのバルブ及び流体を駆動するための流体動力ユニットなどの他の機能モジュールにさらに流体接続されてもよい。分流構造体C2は、単純な三方向構成要素(T字形状の三方向構成要素又はY字形状の三方向構成要素など)若しくは三方ソレノイドバルブなどの制御構成要素、又はそれらの組合せであってもよい。加えて、実際の応用の必要性に応じて、分流構造体C2は、2つよりも多くの分枝に分流されてもよく、各分枝は、1つ又は複数の分流モジュールを介してより多くの分枝に分流されてもよい。これらの下流方向に拡張するバイパス設計は全て、本出願の保護範囲内である。
【0044】
[0057]
図3における流路システム設計に基づいて、
図4に示すように、フローセルC1における交差汚染を回避するために、一組の試薬回収ロジックを確立することができる。理解を容易にするために、ここでは、2つの反応ステップ、すなわち第1の反応及び第2の反応のみが関わる。
図4では、議論を簡略にするために第2の反応において用いられる試薬のみが回収されるが、これは第1の反応において用いられる試薬を回収することができないことを意味しないことにも留意されたい。
図4を参照すると、全体的な回収ロジックは、以下のステップを主に含む。
【0045】
[0058]S1:第1の管路L1が、第1の試薬101を含む試薬貯蔵容器に流体接続され(
図4では、試薬選択構成要素及び試薬貯蔵容器には符号が付されていない)、流体動力ユニットが第1の分流チャネルL3に連通されるように、第1の管路L1の上流部に位置する試薬選択構成要素が切り替えられ、次いで、第1の試薬101が、第1の管路L1、フローセルC1、第2の管路L2及び分流構造体C2における緩衝液102を順に置換するように流体動力ユニットにより駆動され、最終的に第1の分流チャネルL3に沿って流出し、この場合、第1の試薬101と緩衝液102との間の放物線状の界面は、第1の分流チャネルL3に位置する。
【0046】
[0059]S2:S1の終了時、フローセルC1における第1の試薬101が、フローセルC1に固定された試料と直ちに第1の反応を行う。
【0047】
[0060]S3:第1の反応が完了した後、第1の管路L1が、緩衝液102を含む緩衝液貯蔵容器に流体接続されるように試薬選択構成要素が切り替えられ、緩衝液102が、第1の管路L1、フローセルC1、第2の管路L2、及び分流構造体C2における第1の試薬101を順に洗浄するように流体動力ユニットにより駆動され、最終的に第1の分流チャネルL3に沿って流出し、この場合、緩衝液102と第1の試薬101との間の界面は、第1の分流チャネルL3に位置し、第1の試薬101が分流構造体C2から完全に離脱することが確実になる。
【0048】
[0061]S4:第1の管路L1が、第2の試薬103を含む試薬貯蔵容器に流体接続され、流体動力ユニットが第2の分流チャネルL4に連通されるように試薬選択構成要素が切り替えられ、次いで、第2の試薬103が、第1の管路L1、フローセルC1、第2の管路L2及び分流構造体C2における緩衝液102を順に置換するように流体動力ユニットにより駆動され、最終的に第2の分流チャネルL4に沿って流出し、この場合、第2の試薬103と緩衝液102との間の放物線状の界面は、第2の分流チャネルL4に位置し、分流構造体C2における第2の試薬103は、第1の分流チャネルL3における第1の試薬101と混合しない。
【0049】
[0062]S5:S4の終了時、フローセルC1における第2の試薬103が、フローセルC1に固定された試料と直ちに第2の反応を行う。
【0050】
[0063]S6:第2の反応が完了した後、流体動力ユニットは、第2の試薬103の回収を実現するために、第2の分流チャネルL4、分流構造体C2、第2の管路L2及びフローセルC1から順に離脱するように第2の試薬103を逆方向に駆動する。
【0051】
[0064]S1~S6は、2つの反応システムにおける単一の試薬(すなわち第2の試薬103)の回収方針を説明するものである。第1の試薬101及び第2の試薬103をそれぞれ第1の分流チャネルL3及び第2の分流チャネルL4に送達し、第1の試薬101と第2の試薬103との間に緩衝液を設けることにより、第2の試薬103が回収されるときに、第1の試薬101がフローセルを逆流することがなく、以て第1の反応の再発が回避される。
【0052】
[0065]ここで、
図4に示す回収方法は、第2の試薬103の回収プロセスを示すが、別の可能な試薬回収方法においては、第1の反応が完了した後に第1の試薬101が回収されてもよいことに留意されたい。例えば、第1の反応の後、流体動力ユニットは、第1の試薬101の回収を実現するために、第1の分流チャネルL3、分流構造体C2、第2の管路L2及びフローセルC1から順に離脱するように第1の試薬101を逆方向に駆動する。サイクル反応については、まさに前回のサイクル反応における第2の試薬103が第2の分流チャネルL4に流れ込むので、第1の試薬101が回収されるときに、第2の試薬103がフローセルC1に逆流することがなく、以て交差汚染が回避される。要約すると、本出願の流路システムは、第1の試薬及び第2の試薬が分流モジュールによって異なる分流チャネルに入ることを可能とし、結果として、ある一方の試薬が回収されるときに、他方の試薬がフローセルに逆流しないことがわかる。すなわち、本出願の流路システムは、第2の試薬のみでなく、第1の試薬及び第2の試薬の両方を回収することができる。
【0053】
[0066]上記の実施形態においては、第1の試薬101及び第2の試薬103がそれぞれ異なる分流チャネルに入ることを可能とするために、流体動力ユニットは、第1の分流チャネルと第2の分流チャネルとの間の選択を行うことが可能である必要があり、以て、一方のチャネルにおける液体が流れるときに他方のチャネルにおける液体が静止したままとなることが確実になる。すなわち、流体動力ユニットは、少なくとも2つの分流チャネルのうちの1つに選択的に連通されるように構成される。さらに、上記の実施形態において、試薬は、反応を行うためにフローセルに順方向に流れ込む必要がある。試薬を回収する必要がある場合、試薬は、分流モジュールから逆方向に流れる必要もある。上述のような試薬の双方向の流れは、流体動力ユニットにより実現される。流体動力ユニットは、試薬貯蔵容器から分流モジュールに向かう順方向の流れで試薬を駆動するように構成される。流体動力ユニットは、分流モジュールから試薬貯蔵容器に向かう逆方向の流れで試薬を駆動するようにさらに構成される。具体的には、流体動力ユニットは、順方向駆動及び逆方向駆動の両方が可能な動力デバイスを含んでもよい。流体動力ユニットは、順方向駆動が可能な順方向動力デバイス及び逆方向駆動が可能な逆方向動力デバイスを含んでもよい。
【0054】
[0067]要約すると、本出願の実施形態の技術的解決策においては、分流構造体及び少なくとも2つの分流チャネルを含む分流モジュールを配置することにより、回収する必要がある試薬が、前回の反応からの試薬とは異なる分流チャネルに入ることができ、以て、前回の反応で用いられた試薬がフローセルに回収されることにより生じる交差汚染が回避される。
【0055】
[0068]
図5を参照すると、本出願の一実施形態は、試薬回収方法をさらに提供する。試薬回収方法は、以下のステップを含む。
【0056】
[0069]S101:第1の分流チャネルL3と連通し、フローセルC1及び分流構造体C2を通って少なくとも2つの分流チャネルの第1の分流チャネルL3に入るよう第1の試薬101を駆動するように、流体動力ユニットを制御し、第1の試薬101がフローセルC1における試料と第1の反応を行う。
【0057】
[0070]S102:フローセルC1及び分流構造体C2を通るよう第2の試薬103を駆動するように流体動力ユニットの動作を制御し、第2の試薬103がフローセルC1における試料と第2の反応を行い、第2の反応の後に、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬103を駆動するように、流体動力ユニットを制御する。
【0058】
[0071]いくつかの実施形態において、流路システムは、緩衝液を貯蔵するための緩衝液貯蔵容器をさらに含み、緩衝液貯蔵容器は、フローセルに接続され、流体動力ユニットは、緩衝液貯蔵容器から分流モジュールに向かう順方向の流れで緩衝液を駆動するように構成される。
【0059】
[0072]いくつかの実施形態において、試薬回収方法は、第1の反応の後に、フローセル及び分流構造体を通って第1の分流チャネルに入るよう緩衝液を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御して、洗浄を実行することと、洗浄の後に、第2の分流チャネルと連通し、フローセル及び分流構造体を通って少なくとも2つの分流チャネルの第2の分流チャネルに入るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することと、第2の反応の後に、第2の分流チャネルと連通し、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することとをさらに含む。すなわち、本実施形態においては、緩衝液洗浄プロセスが第1の反応と第2の反応との間に設けられ、第1の試薬及び第2の試薬は、それぞれ2つの異なる分流チャネルに入ることが可能となる。
【0060】
[0073]他の実施形態においては、緩衝液洗浄プロセスが第1の反応と第2の反応との間に設けられなくてもよい。フローセル及び分流構造体を通るよう第2の試薬を駆動するように流体動力ユニットの動作を制御し、第2の試薬がフローセルにおける試料と第2の反応を行い、第2の反応の後に、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップは、第1の分流チャネルと連通し、フローセル及び分流構造体を通って第1の分流チャネルに入るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することと、第2の反応の後に、第2の分流チャネルと連通し、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することとを含む。すなわち、第1の反応の後、第2の試薬は、フローセルにおける第1の試薬を直接置換し、最終的に第1の分流チャネルに沿って流出する。この場合、第1の試薬と第2の試薬との間の界面は、第1の分流チャネルに位置する。その後第2の試薬の回収は、第2の分流チャネルに切り替えられる。
【0061】
[0074]いくつかの実施形態において、少なくとも2つの分流チャネル及び少なくとも2つの試薬貯蔵容器は、一対一対応で設けられる。すなわち、各試薬が異なる分流チャネルに入り、よって、回収中に他の試薬がフローセルに逆流することが防止される。
【0062】
[0075]他の実施形態においては、流路システムのサイズを低減し、その構造を簡略化するために、流路システムの分流モジュールは、2つの分流チャネルを含む。2つの試薬を伴うサイクル反応の場合、一方の試薬は第1の分流チャネルに流れ込むように制御され、他方の試薬は第2の分流チャネルに流れ込むように制御される。換言すると、それらの試薬は、
図6に示す回収方針に従って回収することができる。複数の試薬を伴う多重サイクル反応の場合、前回の反応において用いられた試薬がフローセルに逆流して不適切な反応を引き起こすことを防止するために、各ステップにおいて用いられる試薬は、前回の反応において用いられた試薬とは異なる分流チャネルに入る必要がある。
【0063】
[0076]1つの可能な状況において、1つの試薬が回収されるときに、前回の反応からの試薬がフローセルに逆流する場合があるのみならず、2つ以上前の反応からの試薬もフローセルに逆流する場合がある。これは、試薬間の緩衝液の体積を増大させるか、回収率を低減させるか、又は分流モジュールの後により多くの試薬チャネルを追加することにより、解決することができる。例えば、上記の実施形態で述べた少なくとも2つの分流チャネル及び少なくとも2つの試薬貯蔵容器が一対一対応で設けられることで、各試薬が対応する分流チャネルに入り、以て交差汚染が回避される。
【0064】
[0077]本出願の発明者は、試薬を回収する間に生化学反応に関与する試薬の濃度をいかに確保するかという課題について深く研究も行った。いくつかの実施形態において、流体動力ユニットは、分流モジュールから試薬貯蔵容器に向かう逆方向で流れて試薬貯蔵容器の出口端部に接続された管路に戻るよう、試薬を駆動するように構成される。例えば、第2の試薬の回収の場合、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように流体動力ユニットを制御するステップは、試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することによって、回収された第2の試薬が試薬貯蔵容器の出口端部に接続された管路を逆流することを含む。すなわち、回収された第2の試薬は、試薬貯蔵容器の出口端部に接続された管路を逆流するのみであり、試薬貯蔵容器には戻らない。これにより、試薬貯蔵容器における試薬が希釈されないことを確実にすることができる。
【0065】
[0078]具体的には、回収された試薬が試薬貯蔵容器に戻らないように、回収率を調節することができる。例えば、これは、回収される試薬の体積を制御することによる。
【0066】
[0079]勿論、必要な場合には、試薬貯蔵容器における希釈された試薬が再利用の要件を満たす限り、回収された試薬を部分的に又は完全に試薬貯蔵容器に戻すことも可能である。
【0067】
[0080]
図7を参照すると、流路システムは、第1の貯蔵容器111、第2の貯蔵容器112、第3の貯蔵容器113、試薬選択構成要素C3、第1の管路L1、フローセルC1、及び第2の管路L2を含む。第1の貯蔵容器111は、第1の試薬101を貯蔵するように構成され、第2の貯蔵容器112は、緩衝液102を貯蔵するように構成され、第3の貯蔵容器113は、第2の試薬103を貯蔵するように構成される。
図7Aは、現在のサイクルの回収プロセスを示し、
図7Bは、次のサイクルの第2の反応を示す。
図7Aに示すように、回収が完了した後、緩衝液102との直接接触に起因して希釈された部分1031、及びほぼ未希釈の部分1032を含め、一定の体積の第2の試薬103が、フローセルC3の上流部に回収される。希釈部分1031は未希釈部分1032の下流部にあるので、
図7Bに示すように、第2の試薬103が次のサイクルにおいて用いられるときに、希釈部分1031がまず第1の管路L1及びフローセルC1における試薬置換に関与することが確実である。速い流速で、希釈部分1031は、フローセルを通過するときに、弱い第2の反応(ほぼ無視できる)を開始するのみである。第2の試薬103が下流部に流れ続けることに伴い、ほぼ未希釈の部分1032がフローセルに入り、この場合、流れが止まり、この部分がフローセルにおける試料と十分に反応する。
【0068】
[0081]本出願の技術的解決策は、流路システムの設計及び回収ロジックにより、効率的な試薬の回収及び再利用を実現し、それにより、閉じた管路及びチャネルにおいて消費される試薬の量を大幅に低減することができ、以て医療用検査機器における試薬消耗品のコストが著しく低減する。ここで、本出願は、以下の2つの利点を主に有する。
【0069】
[0082]1)分流モジュールを配置することにより、回収する必要がある試薬が前回の試薬から分流され、よって、試薬回収後のフローセルにおける交差汚染の課題が解決され、遺伝子シーケンサなどの精密機器における複雑なサイクルの秩序立った反応システムが、試薬回収により混乱することが防止され、生化学反応の品質が確保される。フローセルの容積が上流部及び下流部における管路の容積と比較して小さい場合、試薬回収により交差汚染が生じやすい。この解決策により、小さいフローセルにおける高い回収率を実現することが可能となる。
【0070】
[0083]2)試薬の回収によって、貯蔵容器における試薬の全体的濃度の大幅な低減が生じることがない。回収された試薬の低濃度部分は、生化学反応に関与するのではなく、フローセル及びその上流部の共通管路における別の液体を置換するために主に用いられる。生化学反応は依然として高い試薬濃度で実行され、反応の効率が確保される。
【0071】
[0084]
図8を参照すると、いくつかの実施形態において、少なくとも2つの分流チャネルは、第1の分流チャネル206及び第2の分流チャネル207を含み、分流構造体は、三方管202を含み、三方管202は、フローセルに流体連通された集束ポート、第1の分流チャネル206に連通された第1の分流ポート、及び第2の分流チャネル207に連通された第2の分流ポートを含む。
【0072】
[0085]
図8に示す第1の実施形態に係る遺伝子シーケンサの流路システムは、詳細な説明のための一例として取り上げられている。
図8に示すように、流路システムは、貯蔵容器208、試薬選択構成要素203、第1の管路204、シーケンシングスライド201、第2の管路205、三方管202、第1の分流チャネル206、第2の分流チャネル207、注入ポンプ209、第3の管路210、及び廃液セル211を含む。
【0073】
[0086]貯蔵容器208は、合成試薬221を貯蔵するための第1の貯蔵容器、スキャン試薬222を貯蔵するための第2の貯蔵容器、除去試薬223を貯蔵するための第3の貯蔵容器、及び緩衝液224を貯蔵するための第4の貯蔵容器を含む。シーケンシングスライド201は、フローセルを有する。
【0074】
[0087]試薬選択構成要素203は、フローセルを貯蔵容器208のうちの1つと選択的に流体連通するように構成され、以て、対応する試薬がフローセルに入ることが可能となる。試薬選択構成要素203は、共通孔及び少なくとも2つの分岐孔を含み、少なくとも2つの分岐孔は、少なくとも2つの試薬貯蔵容器に対応して接続され、共通孔は、第1の管路204を介してフローセルに接続され、共通孔は、少なくとも2つの分岐孔のうちの1つに選択的に連通される。具体的には、試薬選択構成要素203は、試薬セレクタバルブとして構成される。
【0075】
[0088]三方管202は、分流構造体を形成する。三方管202は、フローセルに流体連通された集束ポート、第1の分流チャネル206に連通された第1の分流ポート、及び第2の分流チャネル207に連通された第2の分流ポートを含む。具体的には、三方管202は、T字形状の三方管である。他の実施形態においては、これはY字形状の三方向構成要素であってもよい。
【0076】
[0089]他の実施形態においては、より多くの分流チャネルを実現するために、分流構造体は、四方管などの多方管を含んでもよい。
【0077】
[0090]注入ポンプ209は、流体動力ユニットを形成する。注入ポンプ209は、3つの動力ポートを有し、第1の動力ポートは、第1の分流チャネル206に流体接続され、第2の動力ポートは、第2の分流チャネル207に流体接続され、第3の動力ポートは、第3の管路210を介して廃液セル211に流体接続される。注入ポンプ209は、3つの動力ポートのうちの1つに駆動力を選択的に供給することができる。注入ポンプ209は、試薬の順方向の流れのための順方向駆動力を供給することができ、試薬の逆方向の流れのための逆方向駆動力を供給することもできる。勿論、他の実施形態においては、流体動力ユニットは、2つの独立して配置された注入ポンプを含んでもよい。それらの注入ポンプのうちの一方は、試薬に順方向駆動力を供給するように構成され、他方の注入ポンプは、試薬に逆方向駆動力を供給するように構成される。
【0078】
[0091]
図8に示す第1の実施形態に係る流路システムの動作プロセスについて、下記で詳細に説明する。本図において、実線矢印は、順方向の流れでの試薬の流れ方向を示し、点線矢印は、逆方向の回収での試薬の流れ方向を示す。検査対象のDNAフラグメントは、シーケンシングスライドのフローセルの表面に固定され、全体的なシーケンシングプロセスは、上述のように、サイクル型「合成・検査・除去」システムである。説明を簡略にするために、各ステップは1つの試薬のみを伴い、2つのステップの間において、緩衝液が試薬間の障壁として用いられる。約4μLの容積を有する本実施形態におけるフローセルは、典型的な小容積フローセルであることに留意されたい。比較として、第1の管路204の容積は4μLであり、試薬選択構成要素203及び試薬選択構成要素203と貯蔵容器208との間の管路の合計容積はおよそ30μLであり、第2の管路205の容積は10μLであり、第1の分流チャネル206及び第2の分流チャネル207の容積はいずれも100μL以上である。シーケンシングの前に、貯蔵容器208における各試薬が、貯蔵容器と試薬選択構成要素203との間の管路に予め充填される。したがって、シーケンシングプロセス中、試薬置換は、第1の管路204及びシーケンシングスライド201のフローセルにおいて主に生じる。
【0079】
[0092]本実施形態において、完全な反応サイクルは、以下のステップを含む。
1)試薬選択構成要素203が、第1の貯蔵容器に流体接続されるように切り替えられ、注入ポンプ209が、第1の分流チャネル206に流体接続されるように切り替えられ、40μLの合成試薬221が、高い流速(例えば2000μL/分、以下同じ)でシーケンシングスライド201を通って流れるように圧送される。このステップにおいて、合成試薬221は、第1の管路204及びフローセルに元々存在する緩衝液224を置換する。
2)合成反応が、一定期間にわたってフローセルにおいて実行される。
3)注入ポンプ209が、30μLの合成試薬221を第1の分流チャネル206に沿って逆方向に(
図8における点線矢印を参照)上流部へと押し出し、合成試薬221の希釈部分が、試薬選択構成要素203と貯蔵容器208との間の管路に逆流するが、貯蔵容器208には逆流しない。
4)試薬選択構成要素203が、第4の貯蔵容器と流体接続されるように切り替えられ、注入ポンプ209は、第1の分流チャネル206と流体接続されたままであり、50μLの緩衝液224が、シーケンシングスライド201を通って第1の管路204及びフローセルにおける残りの合成試薬221を置換するように圧送される。
5)試薬選択構成要素203が、第2の貯蔵容器と流体接続されるように切り替えられ、注入ポンプ209は、第1の分流チャネル206と流体接続されたままであり、40μLのスキャン試薬222が、シーケンシングスライド201を通って流れるように圧送され、次いでシーケンシングスライド201が、光学系(不図示)により検査される。
6)試薬選択構成要素203が、第4の貯蔵容器と流体接続されるように切り替えられ、50μLの緩衝液224が、シーケンシングスライド201を通って第1の管路204及びフローセルにおけるスキャン試薬222を置換するように、注入ポンプ209により圧送される。
7)試薬選択構成要素203が、第3の貯蔵容器に流体接続されるように切り替えられ、注入ポンプ209が、第2の分流チャネル207に流体接続されるように切り替えられ、40μLの除去試薬223が、シーケンシングスライド201を通るように圧送される。
8)除去反応が、一定期間にわたってフローセルにおいて実行される。
9)試薬選択構成要素203が、第4の貯蔵容器と流体接続されるように切り替えられ、注入ポンプ209は、第2の分流チャネル207と流体接続されたままであり、50μLの緩衝液224が、シーケンシングスライド201を通って流れて第1の管路204及びフローセルにおける除去試薬223を置換するように圧送される。
10)注入ポンプから液体を抜くために、注入ポンプ209が、第3の管路210及び廃液セル211に流体接続されるように切り替えられる。
【0080】
[0093]上記のステップにおいては、40μLの合成試薬221がまず圧送され、次いで30μLが回収されるため、回収率は、30/40=75%として算出され、実消費量は、40-30=10μLとして算出され、フローセル容積(4μL)に対する置換率rは、10/4=2.5として算出される。試薬回収が行われない場合、置換率は、40/4=10として算出される。本出願の回収方針の導入後、置換率は元の1/4に低減されることがわかる。
【0081】
[0094]シーケンシング品質の観点からは、高い試薬回収率は、シーケンシング結果に著しい影響を及ぼさない。表1は、回収なし及び75%回収のシーケンシング品質指標を比較する。これらは両方、総リード及び品質値(Q30)に関して同じレベルにある。
【0082】
【0083】
[0095]本実施形態においては、T字形状の三方管202、第1の分流チャネル206及び第2の分流チャネル207をフローセルの出口端部に導入することにより、試薬回収に起因する除去試薬223の逆流により生じるフローセルにおける交差汚染の課題が成功裏に解決される。回収後のフローセルにおける残りの除去試薬の濃度を測定することにより、三方管202及び分流チャネルが導入されない場合、残留濃度は0.7%であり、導入後の残留濃度は無視できるほどであることがわかる。非常に少量の除去試薬が不適切な反応及びシーケンシングエラーを引き起こし得るので、本出願の技術的解決策は、遺伝子シーケンシングに非常に重要である。
【0084】
[0096]
図8に示す実施形態において、合成試薬221は第1の分流チャネル206に入り、除去試薬223は第2の分流チャネル207に入る。したがって、合成試薬221の回収中、除去試薬223がフローセルに逆流することにより生じる交差汚染の課題を回避することができる。勿論、必要な場合には、除去試薬223を回収することもでき、それにより、合成試薬221がフローセルに逆流することにより生じる交差汚染の課題を回避することもできる。加えて、複数の試薬を伴う多重サイクルの場合、いくつかの実施形態において、各回において用いられる試薬を、前回の反応において用いられた試薬とは異なる分流チャネルに入らせることができる。しかしながら、試薬が回収されるときに、以下の状況が生じる場合もあり、2つ以上前の反応において用いられた試薬が、回収されるべき試薬と同じ分流チャネルにある場合があり、逆流が生じる場合がある。これは、試薬間の緩衝液の体積を増大させることにより回避することができる。他の実施形態においては、試薬の種類に応じて、各回において用いられる試薬が、前回の反応において用いられた試薬とは異なる分流チャネルに入るべきであるか否かを決定することができる。重要なのは、現在の反応において用いられる試薬が、前回の反応において用いられた試薬と同じ分流チャネルに入るときに、不適切な反応が生じるか否かである。例えば、合成試薬221、スキャン試薬222及び除去試薬223を伴う
図8に示す実施形態において、反応の順序は、合成・スキャン・除去である。フローセルに逆流するスキャン試薬222は不適切な反応を引き起こさないが、フローセルに逆流する除去試薬223は不適切な反応を引き起こすので、上記の実施形態において、合成試薬221及びスキャン試薬222はいずれも第1の分流チャネル206に流れ込み、除去試薬223は第2の分流チャネル207に流れ込む。この配置は、主に除去試薬223がスキャン試薬222とは異なる分流チャネルに入ることを可能とするためのものである。
【0085】
[0097]本実施形態における合成試薬は、反応後に回収され、貯蔵容器208に回収されることがない。次のサイクルにおける再利用では、希釈部分が主に試薬置換に関与し、フローセルにおける反応に関与する試薬の濃度は、高いレベルに維持される。この利点は、
図9に示すフローセルにおけるサイクル数に対する合成試薬濃度のプロットにより実証することができる。本図から、合成試薬濃度は、100サイクル以内で98.7%以上の実効相対濃度を維持することがわかり、これは、本明細書に記載の技術的解決策の主要な利点を十分に示すものである。
【0086】
[0098]
図10を参照すると、いくつかの実施形態において、分流モジュールは、開閉制御バルブをさらに含む。開閉制御バルブは、第1の分流チャネル206及び/又は第2の分流チャネル207に設けられる。第1の分流チャネル206及び/又は第2の分流チャネル207に開閉制御バルブを設けることにより、物理的障壁を補強することができ、それにより、前回の反応において用いられた試薬が試薬回収中に別の分流チャネルに完全に隔離される。
【0087】
[0099]具体的には、
図10に示す第2の実施形態に係る遺伝子シーケンサの流路システムは、詳細な説明のための一例として取り上げられている。
【0088】
[00100]第1の実施形態と比較して第2の実施形態においてなされる変更は、開閉制御バルブ、具体的には二位置二方ソレノイドバルブ212が、第2の分流チャネル207に追加される点である。ソレノイドバルブは、物理的障壁を補強するように機能し、それにより、合成試薬の回収中に除去試薬が第2の分流チャネル207に完全に残る。
図8に示す実施形態の設計においては、三方管202、第1の分流チャネル206、及び第2の分流チャネル207は全て通路を形成するので、合成試薬が第1の分流チャネル206に沿って回収されるときに、第1の分流チャネル206及び第2の分流チャネル207の不均等な流れ抵抗、管路における気泡等に起因して、第2の分流チャネル207における除去試薬は、依然として部分的にフローセルに逆流する場合がある。ソレノイドバルブ212を導入することにより、本実施形態は、この課題を解決することができる。ソレノイドバルブ212は、電力が投入されると通路を形成し、電力が切断されると通路を遮断する。
【0089】
[00101]本実施形態において、試薬回収の手順は、第1の実施形態におけるものとはわずかに異なり、具体的には以下の通りである。
1)試薬選択構成要素203が、第1の貯蔵容器に流体接続されるように切り替えられ、ソレノイドバルブ212がスイッチオフされ、注入ポンプ209が、第1の分流チャネル206に流体接続されるように切り替えられ、40μLの合成試薬221が、高い流速(例えば2000μL/分、以下同じ)でシーケンシングスライド201を通って流れるように圧送される。このステップにおいて、合成試薬221は、第1の管路204及びフローセルに元々存在する緩衝液224を置換する。
2)~6)は、第1の実施形態におけるものと同じである。
7)試薬選択構成要素203が、第3の貯蔵容器に流体接続されるように切り替えられ、ソレノイドバルブ212がスイッチオンされ、注入ポンプ209が、第2の分流チャネル207に流体接続されるように切り替えられ、40μLの除去試薬223が、シーケンシングスライド201を通って流れるように圧送される。
8)~10)は、第1の実施形態におけるものと同じである。
【0090】
[00102]図面には示されていないいくつかの他の実施形態において、開閉制御バルブは、第1の分流チャネル206に設けられてもよい。代替的に、開閉制御バルブは、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルの各々に設けられる。開閉制御バルブは、管路の開閉を制御することが可能なソレノイドバルブ又は他の構成要素であってもよい。
【0091】
[00103]
図11を参照すると、いくつかの実施形態において、少なくとも2つの分流チャネルは、第1の分流チャネル206及び第2の分流チャネル207を含む。分流構造体は、第1のリバースバルブを含む。第1のリバースバルブは、第1のポート、第2のポート及び第3のポートを有し、第1のポートは、集束ポートを形成し、第2のポートは、第1の分流チャネル206に接続された第1の分流ポートを形成し、第3のポートは、第2の分流チャネル207に接続された第2の分流ポートを形成し、第1のリバースバルブは、第1のポートの第2のポート又は第3のポートへの接続を制御するように動作する。
【0092】
[00104]具体的には、
図11に示す第3の実施形態に係る遺伝子シーケンサの流路システムは、詳細な説明のための一例として取り上げられている。
【0093】
[00105]本実施形態は、第1の実施形態の改良された設計である。
図11からわかるように、第1の実施形態と比較して本実施形態においてなされる唯一の変更は、三方管をリバースバルブ、具体的には二位置三方ソレノイドバルブ213で置き換えることである。ソレノイドバルブの常時開端部は、第1の分流チャネル206に流体接続され、常時閉端部は、第2の分流チャネル207に流体接続される。第2の実施形態と同様に、本実施形態は、第1の実施形態よりも良好な物理的障壁を有する。
【0094】
[00106]本実施形態において、試薬回収の手順は、第1の実施形態におけるものとはわずかに異なり、具体的には以下の通りである。
1)試薬選択構成要素203が、第1の貯蔵容器に流体接続されるように切り替えられ、ソレノイドバルブ213は電力が切断されたままであり、注入ポンプ209が、第1の分流チャネル206に流体接続されるように切り替えられ、40μLの合成試薬221が、高い流速(例えば2000μL/分、以下同じ)でシーケンシングスライド201を通って流れるように圧送される。このステップにおいて、合成試薬221は、第1の管路204及びフローセルに元々存在する緩衝液224を置換する。
2)~6)は、第1の実施形態におけるものと同じである。
7)試薬選択構成要素203が、第3の貯蔵容器に流体接続されるように切り替えられ、ソレノイドバルブ213がスイッチオンされ、注入ポンプ209が、第2の分流チャネル207に流体接続されるように切り替えられ、40μLの除去試薬223が、シーケンシングスライド201を通って流れるように圧送される。
8)~10)は、第1の実施形態におけるものと同じである。
【0095】
[00107]いくつかの実施形態において、流体動力ユニットは、注入ポンプ209を含み、注入ポンプ209は、第1の動力ポート及び第2の動力ポートを含み、第1の動力ポートは、第1の分流チャネルに流体接続され、第2の動力ポートは、第2の分流チャネルに流体接続される。
【0096】
[00108]具体的には、
図9、
図10及び
図11に示す3つの実施形態を参照すると、注入ポンプ209は、第1の動力ポート及び第2の動力ポートを含み、第1の動力ポートは、第1の分流チャネル206に流体接続され、第2の動力ポートは、第2の分流チャネル207に流体接続される。
【0097】
[00109]
図9、
図10及び
図11に示す3つの実施形態を参照すると、流路システムは、廃液セル211をさらに含み、注入ポンプ209は、第3の動力ポートをさらに含み、第3の動力ポートは、廃液セル211に連通される。
【0098】
[00110]
図12を参照すると、いくつかの実施形態において、流体動力ユニットは、注入ポンプ214及び第2のリバースバルブを含み、注入ポンプは、第1の動力ポートを含み、第2のリバースバルブは、第1のポート、第2のポート及び第3のポートを有し、第1のポート及び第2のポートは、それぞれ第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルに接続され、第3のポートは、注入ポンプ214の第1の動力ポートに接続され、第2のリバースバルブは、第3のポートの、第1のポート又は第2のポートとの連通を制御するように動作する。
【0099】
[00111]
図12に示す第4の実施形態に係る遺伝子シーケンサの流路システムは、詳細な説明のための一例として取り上げられている。
図12からわかるように、第1の実施形態と比較して本実施形態においてなされる変更は、リバースバルブ、具体的には二位置三方ソレノイドバルブ213を、三方管202の後端部に追加することである。ソレノイドバルブの常時開端部は、第2の分流チャネル207に流体接続され、常時閉端部は、第1の分流チャネル206に流体接続される。加えて、本実施形態における注入ポンプ214は、2つの任意選択的な動力ポートのみを有し、一端部はソレノイドバルブ213に流体接続され、他端部は第3の管路210及び廃液セル211に流体接続される。
【0100】
[00112]本実施形態において、試薬回収のステップは、第1の実施形態におけるものとはわずかに異なり、具体的には以下の通りである。
1)試薬選択構成要素203が、第1の貯蔵容器に流体接続されるように切り替えられ、ソレノイドバルブ213がスイッチオンされ、40μLの合成試薬221が、高い流速(例えば2000μL/分、以下同じ)でシーケンシングスライド201を通って流れるように注入ポンプ214により圧送される。このステップにおいて、合成試薬221は、第1の管路204及びフローセルに元々存在する緩衝液224を置換する。
2)合成反応が、一定期間にわたってフローセルにおいて実行される。
3)注入ポンプ214が、30μLの試薬を第1の分流チャネル206に沿って逆方向に(
図12における点線矢印を参照)上流部へと押し出し、合成試薬221の希釈部分が、試薬選択構成要素203と試薬貯蔵容器208との間の管路に逆流するが、試薬貯蔵容器208には逆流しない。
4)試薬選択構成要素203が、第4の貯蔵容器と流体接続されるように切り替えられ、50μLの緩衝液224が、シーケンシングスライド201を通って流れて第1の管路204及びフローセルにおける残りの合成試薬221を置換するように、注入ポンプ214により圧送される。
5)試薬選択構成要素203が、第2の貯蔵容器と流体接続されるように切り替えられ、40μLのスキャン試薬222が、シーケンシングスライド201を通って流れるように注入ポンプ214により圧送され、次いでシーケンシングスライド201が、光学系(不図示)により検査される。
6)試薬選択構成要素203が、第4の貯蔵容器と流体接続されるように切り替えられ、50μLの緩衝液224が、シーケンシングスライド201を通って流れて第1の管路204及びフローセルにおけるスキャン試薬222を置換するように、注入ポンプ214により圧送される。
7)試薬選択構成要素203が、除去試薬223に流体接続されるように切り替えられ、ソレノイドバルブ213がスイッチオフされ、40μLの除去試薬223が、シーケンシングスライド201を通って第2の分流チャネル207に流れ込むように注入ポンプ214により圧送される。
8)除去反応が、一定期間にわたってフローセルにおいて実行される。
9)試薬選択構成要素203が、第4の貯蔵容器と流体接続されるように切り替えられ、50μLの緩衝液224が、シーケンシングスライド201を通って流れて第1の管路204及びフローセルにおける除去試薬223を置換するように、注入ポンプ214により圧送される。
10)注入ポンプから液体を抜くために、注入ポンプ214が、第3の管路210及び廃液セル211に流体接続されるように切り替えられる。
【0101】
[00113]いくつかの実施形態において、流路システムは、廃液セル211をさらに含み、注入ポンプ214は、第2の動力ポートをさらに含み、注入ポンプ214の第2の動力ポートは、廃液セルに連通される。
図12に示すように、注入ポンプ214は、2つの動力ポートを含み、動力ポートのうちの一方は、リバースバルブ(二位置三方ソレノイドバルブ213)に接続され、他方の動力ポートは、第3の管路210を介して廃液セル211に接続される。
【0102】
[00114]いくつかの実施形態において、
図13を参照すると、流体動力ユニットは、第1の蠕動ポンプ216及び第2の蠕動ポンプ217を含む。流路システムは、廃液セル211をさらに含み、第1の分流チャネル206及び第2の分流チャネル207は両方、廃液セル211に連通され、第1の蠕動ポンプ216は、第1の分流チャネル206に設けられ、第2の蠕動ポンプ217は、第2の分流チャネル207に設けられる。
【0103】
[00115]
図13は、第5の実施形態に係る遺伝子シーケンサの流路システムを示す。
図13に示すように、本実施形態は、第3の実施形態の改変された設計であり、主な変更は、注入ポンプが2つの蠕動ポンプ216及び217で置き換えられる点である。
図13からわかるように、ソレノイドバルブ213の常時開端部は、第1の分流チャネル206を介して第1の蠕動ポンプ216に流体接続され、常時閉端部は、第2の分流チャネル207を介して第2の蠕動ポンプ217に流体接続される。
【0104】
[00116]本実施形態において、試薬回収のステップは、第3の実施形態におけるものとはわずかに異なり、具体的には以下の通りである。
1)試薬選択構成要素203が、第1の貯蔵容器に流体接続されるように切り替えられ、ソレノイドバルブ213は電力が切断されたままであり、40μLの合成試薬221が、高い流速(例えば2000μL/分、以下同じ)でシーケンシングスライド201を通って流れるように注入ポンプ217により圧送される。このステップにおいて、合成試薬221は、第1の管路204及びフローセルに元々存在する緩衝液224を置換する。
2)合成反応が、一定期間にわたってフローセルにおいて実行される。
3)第1の蠕動ポンプ216が、30μLの試薬を第1の分流チャネル206に沿って逆方向に(
図14における点線矢印を参照)上流部へと押し出し、合成試薬221の希釈部分が、試薬選択構成要素203と試薬貯蔵容器208との間の管路に逆流するが、試薬貯蔵容器208には逆流しない。
4)試薬選択構成要素203が、第4の貯蔵容器と流体接続されるように切り替えられ、50μLの緩衝液224が、シーケンシングスライド201を通って流れて第1の管路204及びフローセルにおける残りの合成試薬221を置換するように、第2の蠕動ポンプ217により圧送される。
5)試薬選択構成要素203が、第2の貯蔵容器と流体接続されるように切り替えられ、40μLのスキャン試薬222が、シーケンシングスライド201を通って流れるように第2の蠕動ポンプ217により圧送され、次いでシーケンシングスライド201が、光学系(不図示)により検査される。
6)試薬選択構成要素203が、第4の貯蔵容器と流体接続されるように切り替えられ、50μLの緩衝液224が、シーケンシングスライド201を通って流れて第1の管路204及びフローセルにおけるスキャン試薬222を置換するように、第2の蠕動ポンプ217により圧送される。
7)試薬選択構成要素203が、第3の貯蔵容器に流体接続されるように切り替えられ、ソレノイドバルブ213がスイッチオンされ、この場合、40μLの除去試薬223が、シーケンシングスライド201を通って第2の分流チャネル207に流れ込むように第2の蠕動ポンプ217により圧送される。
8)除去反応が、一定期間にわたってフローセルにおいて実行される。
9)試薬選択構成要素203が、緩衝液224と流体接続されるように切り替えられ、50μLの緩衝液224が、シーケンシングスライド201を通って流れて第1の管路204及びフローセルにおける除去試薬223を置換するように、第1の蠕動ポンプ216により圧送される。
【0105】
[00117]いくつかの実施形態において、流体動力ユニットは、注入ポンプ214を含む。流路システムは、廃液セル211及び試薬選択構成要素203をさらに含み、第1の分流チャネル206及び第2の分流チャネル207は両方、廃液セル211に連通され、注入ポンプ214は、動力ポートを含み、試薬選択構成要素203は、共通孔及び複数の分岐孔を含み、共通孔は、複数の分岐孔のうちの1つに選択的に連通され、複数の分岐孔は、少なくとも2つの試薬貯蔵容器に対応して連通された少なくとも2つの試薬分岐孔、及びフローセルに連通されたフローセル分岐孔を含み、注入ポンプ214の動力ポートは、共通孔に接続される。
【0106】
[00118]
図14は、第6の実施形態に係る遺伝子シーケンサの流路システムを示す。この流路システムは、
図11に示す第3の実施形態の改変された実施形態である。第3の実施形態と比較して、本実施形態においてなされる主な変更は、注入ポンプが前に配置され、試薬選択構成要素に後続することで、順方向の試薬の流れが陽圧駆動となる点である。
図14から、注入ポンプ214が管路215を介して試薬選択構成要素203の共通孔に流体接続され、共通の管路204が代わりに試薬選択構成要素203の分岐孔に流体接続されることがわかる。加えて、ソレノイドバルブ213の分流チャネル206及び207は両方、廃液セル211に流体接続される。実用において、試薬回収のステップは、液体が順方向に圧送されるたびに、まず注入ポンプ214が試薬を試薬選択構成要素203の共通孔から管路215へと圧送し、次いで試薬選択構成要素203が第1の管路204に流体接続されるように切り替えられ、最後に注入ポンプ214が試薬を第1の管路204に押し出すことを除き、基本的に第3の実施形態におけるものと同じである。試薬回収の場合、まず注入ポンプ214が使用済みの試薬を第1の管路204から管路215へと圧送し、次いで試薬選択構成要素203が試薬に対応する孔に切り替えられ、最後に注入ポンプ214が回収された試薬を試薬孔に押し出す。
【0107】
[00119]本出願は、シーケンシングスライド及び上述の流路システムを含み、フローセルがシーケンシングスライドに配置される遺伝子シーケンサをさらに提供する。
【0108】
[00120]最後に、上記の実施形態は、本出願の技術的解決策を限定するのではなく単に例示するために用いられていることが説明されるべきであり、好ましい実施形態に関連して本出願を詳細に説明したが、当業者は、本出願の特定の実施形態が依然として改変可能であるか、又は一部の技術的特徴が均等物により置き換え可能であることを理解すべきであり、それらの均等物は、本出願の技術的解決策の趣旨から逸脱しない限りにおいて、本出願により請求保護される技術的解決策の範囲に含まれるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なる試薬をそれぞれ貯蔵するための少なくとも2つの試薬貯蔵容器と、
試料を収容するためのフローセルであって、前記フローセルが、少なくとも2つの試薬貯蔵容器に流体接続されている、フローセルと、
分流構造体及び少なくとも2つの分流チャネルを備える分流モジュールであって、前記分流構造体が、前記フローセルと流体連通する集束ポート、及び前記少なくとも2つの分流チャネルに対応する少なくとも2つの分流ポートを有する、分流モジュールと、
前記分流モジュールに流体接続された流体動力ユニットであって、前記流体動力ユニットが、前記少なくとも2つの分流チャネルのうちの1つと選択的に流体連通し、前記流体動力ユニットが、前記試薬貯蔵容器から前記分流モジュールに向かう順方向の流れで試薬を駆動するように構成されており、前記流体動力ユニットが、前記分流モジュールから前記試薬貯蔵容器に向かう逆方向の流れで試薬を駆動するようにさらに構成されている、流体動力ユニットと
を具備する流路システム。
【請求項2】
前記少なくとも2つの分流チャネル及び前記少なくとも2つの試薬貯蔵容器が、一対一対応で設けられている、請求項1に記載の流路システム。
【請求項3】
前記少なくとも2つの分流チャネルが、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルを備え、前記分流構造体が、三方管を備え、前記三方管が、前記フローセルに流体連通された集束ポート、前記第1の分流チャネルと流体連通する第1の分流ポート、及び前記第2の分流チャネルと流体連通する第2の分流ポートを備える、請求項1に記載の流路システム。
【請求項4】
前記分流構造体が、開閉制御バルブをさらに備え、前記開閉制御バルブが、第1の分流チャネル及び/又は前記第2の分流チャネルに設けられている、請求項3に記載の流路システム。
【請求項5】
前記少なくとも2つの分流チャネルが、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルを備え、前記分流構造体が、第1のリバースバルブを備え、前記第1のリバースバルブが、第1のポート、第2のポート及び第3のポートを有し、前記第1のポートが、集束ポートを形成し、前記第2のポートが、前記第1の分流チャネルと流体連通する第1の分流ポートを形成し、前記第3のポートが、前記第2の分流チャネルと流体連通する第2の分流ポートを形成し、前記第1のリバースバルブが、前記第1のリバースバルブの前記第1のポートの、前記第2のポート又は前記第3のポートとの連通を制御するように動作する、請求項1に記載の流路システム。
【請求項6】
前記流体動力ユニットが、注入ポンプを備え、前記注入ポンプが、第1の動力ポート及び第2の動力ポートを備え、前記第1の動力ポートが、前記第1の分流チャネルに流体接続されており、前記第2の動力ポートが、前記第2の分流チャネルに流体接続されている、請求項
3に記載の流路システム。
【請求項7】
前記流路システムが、廃液セルをさらに備え、前記注入ポンプが、第3の動力ポートをさらに備え、前記第3の動力ポートが、前記廃液セルと流体連通する、請求項6に記載の流路システム。
【請求項8】
前記流体動力ユニットが、注入ポンプ及び第2のリバースバルブを備え、前記注入ポンプが、第1の動力ポートを備え、前記第2のリバースバルブが、第1のポート、第2のポート、及び第3のポートを有し、前記第1のポート及び前記第2のポートが、それぞれ前記第1の分流チャネル及び前記第2の分流チャネルに接続されており、前記第3のポートが、前記注入ポンプの第1の動力ポートに接続されており、前記第2のリバースバルブが、前記第3のポートの、前記第1のポート又は前記第2のポートとの連通を制御するように動作する、請求項3に記載の流路システム。
【請求項9】
前記流路システムが、廃液セルをさらに備え、前記注入ポンプが、第2の動力ポートをさらに備え、前記注入ポンプの第2の動力ポートが、前記廃液セルと連通する、請求項8に記載の流路システム。
【請求項10】
前記流体動力ユニットが、第1の蠕動ポンプ及び第2の蠕動ポンプを備え、前記流路システムが、廃液セルをさらに備え、前記第1の分流チャネル及び前記第2の分流チャネルが両方、前記廃液セルと連通し、前記第1の蠕動ポンプが、前記第1の分流チャネルに設けられており、前記第2の蠕動ポンプが、前記第2の分流チャネルに設けられている、請求項5に記載の流路システム。
【請求項11】
前記流路システムが、試薬選択構成要素をさらに備え、前記試薬選択構成要素が、共通孔及び少なくとも2つの分岐孔を備え、前記少なくとも2つの分岐孔が、前記少なくとも2つの試薬貯蔵容器に対応して接続されており、前記共通孔が、前記フローセルに流体接続されており、前記共通孔が、前記少なくとも2つの分岐孔のうちの1つと選択的に連通する、請求項1~10のいずれか一項に記載の流路システム。
【請求項12】
前記流体動力ユニットが、注入ポンプを備え、前記流路システムが、廃液セル及び試薬選択構成要素をさらに備え、前記第1の分流チャネル及び前記第2の分流チャネルが両方、前記廃液セルと連通し、前記注入ポンプが、動力ポートを備え、前記試薬選択構成要素が、共通孔及び複数の分岐孔を備え、前記共通孔が、前記複数の分岐孔のうちの1つと選択的に連通し、前記複数の分岐孔が、前記少なくとも2つの試薬貯蔵容器と対応して連通する少なくとも2つの試薬分岐孔、及び前記フローセルと連通するフローセル分岐孔を備え、前記注入ポンプの動力ポートが、前記共通孔に接続されている、請求項5に記載の流路システム。
【請求項13】
前記流路システムが、緩衝液を貯蔵するための緩衝液貯蔵容器をさらに備え、前記緩衝液貯蔵容器が、前記フローセルに接続されており、前記流体動力ユニットが、前記緩衝液貯蔵容器から前記分流モジュールに向かう順方向の流れで前記緩衝液を駆動するように構成されている、請求項1~
10のいずれか一項に記載の流路システム。
【請求項14】
前記流体動力ユニットが、前記分流モジュールから前記試薬貯蔵容器に向かう逆方向で流れて試薬貯蔵容器の出口端部に接続された管路に戻るよう、試薬を駆動するように構成されている、請求項1に記載の流路システム。
【請求項15】
シーケンシングスライドと、請求項1~
10のいずれか一項に記載の流路システムとを備え、前記フローセルが前記シーケンシングスライドに配置されている、遺伝子シーケンサ。
【請求項16】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の流路システムの試薬回収方法であって、前記少なくとも2つの異なる試薬が、第1の試薬及び第2の試薬を含み、前記少なくとも2つの分流チャネルが、第1の分流チャネル及び第2の分流チャネルを備え、前記試薬回収方法が、
第1の分流チャネルと連通し、フローセル及び分流構造体を通って前記少なくとも2つの分流チャネルの第1の分流チャネルに入るよう第1の試薬を駆動するように、前記流体動力ユニットを制御し、第1の試薬がフローセルにおける試料と第1の反応を行うステップと、
フローセル及び分流構造体を通るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御し、第2の試薬がフローセルにおける試料と第2の反応を行い、第2の反応の後に、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップと
を含む、試薬回収方法。
【請求項17】
前記試薬回収方法が、第1の反応の後に、フローセル及び分流構造体を通って第1の分流チャネルに入るよう緩衝液を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御して、洗浄を実行するステップをさらに含む、請求項16に記載の試薬回収方法。
【請求項18】
フローセル及び分流構造体を通るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御し、第2の試薬がフローセルにおける試料と第2の反応を行い、第2の反応の後に、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップが、第2の分流チャネルと連通し、フローセル及び分流構造体を通って前記少なくとも2つの分流チャネルの第2の分流チャネルに入るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することと、第2の反応の後に、前記第2の分流チャネルと連通し、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう前記第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することとを含む、請求項17に記載の試薬回収方法。
【請求項19】
フローセル及び分流構造体を通るよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットの動作を制御し、第2の試薬がフローセルにおける試料と第2の反応を行い、第2の反応の後に、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップが、第1の分流チャネルと連通し、フローセル及び分流構造体を通って前記第1の分流チャネルに入るよう第2の試薬を駆動するように、前記流体動力ユニットを制御することと、第2の反応の後に、前記第2の分流チャネルと連通し、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう前記第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することとを含む、請求項16に記載の試薬回収方法。
【請求項20】
第1の反応の後に、前記第1の分流チャネルと連通し、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう前記第1の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することによって、回収された第1の試薬が、試薬貯蔵容器の出口端部に接続された管路を逆流するステップをさらに含む、請求項16に記載の試薬回収方法。
【請求項21】
前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御するステップが、前記試薬貯蔵容器に向かって逆流するよう第2の試薬を駆動するように、流体動力ユニットを制御することによって、回収された第2の試薬が、試薬貯蔵容器の出口端部に接続された管路を逆流するステップを含む、請求項16に記載の試薬回収方法。
【国際調査報告】