(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】二次電池集電体用の電解銅箔
(51)【国際特許分類】
C25D 1/04 20060101AFI20241010BHJP
C25D 1/00 20060101ALI20241010BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C25D1/04 311
C25D1/00 311
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525745
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 KR2022015138
(87)【国際公開番号】W WO2023075197
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0147036
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515059290
【氏名又は名称】ロッテエナジーマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン、キトク
(72)【発明者】
【氏名】イ、スン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ス ウン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソルキ
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017CC01
5H017EE01
5H017HH00
5H017HH01
(57)【要約】
二次電池集電体用の電解銅箔が開示される。本発明は、常温での厚さ対比延伸率が1.3~2.0%/μmであり、常温での析出面に対するXRDスペクトルにおいて、(200)結晶面に対する回折ピークの強度I(200)と(111)結晶面に対する回折ピークの強度I(111)との比であるI(200)/I(111)が0.3~0.5であることを特徴とする。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温での厚さ対比延伸率が1.3~2.0%/μmであり、
常温での析出面に対するXRDスペクトルにおいて、(200)結晶面に対する回折ピークの強度I(200)と(111)結晶面に対する回折ピークの強度I(111)との比であるI(200)/I(111)が0.4~0.5であることを特徴とする電解銅箔。
【請求項2】
常温での引張強度が40kgf/mm
2以上であり、
常温での析出面に対するXRDスペクトルにおいて、(200)結晶面に対する回折ピークの強度I(200)と(111)結晶面に対する回折ピークの強度I(111)との比であるI(200)/I(111)が0.4~0.5であることを特徴とする電解銅箔。
【請求項3】
常温での析出面に対するXRDスペクトルにおいて(200)結晶面に対する回折ピークの強度I(200)と(111)結晶面に対する回折ピークの強度I(111)との比であるI(200)/I(111)をAとし、
200℃で1時間熱処理後の析出面に対するXRDスペクトルにおいて(200)結晶面に対する回折ピークの強度I(200)と(111)結晶面に対する回折ピークの強度I(111)との比であるI(200)/I(111)をBとするとき、
A>Bであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電解銅箔。
【請求項4】
-0.3<(B-A)/A<-0.1であることを特徴とする、請求項3に記載の電解銅箔。
【請求項5】
常温での析出面に対するXRDスペクトルにおいて、(200)結晶面に対する配向指数M(200)と(111)結晶面に対する配向指数M(111)から得られる配向指数の比であるM(200)/M(111)が0.5~1であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電解銅箔。
【請求項6】
常温での析出面に対するXRDスペクトルにおいて、(200)結晶面に対する配向指数M(200)と(111)結晶面に対する配向指数M(111)から得られる配向指数の比であるM(200)/M(111)をCとし、
200℃で1時間熱処理後の析出面に対するXRDスペクトルにおいて、(200)結晶面に対する配向指数M(200)と(111)結晶面に対する配向指数M(111)から得られる配向指数の比であるM(200)/M(111)をDとするとき、
C>Dであることを特徴とする、請求項5に記載の電解銅箔。
【請求項7】
-0.3<(D-C)/C<-0.1であることを特徴とする、請求項6に記載の電解銅箔。
【請求項8】
TOC含有量が5~8ppmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電解銅箔。
【請求項9】
200℃で1時間熱処理後の厚さ対比延伸率が1.4~2.4%/μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電解銅箔。
【請求項10】
常温での厚さ対比延伸率に対する200℃で1時間熱処理後の厚さ対比延伸率の比率が1.05~1.25であることを特徴とする、請求項9に記載の電解銅箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解銅箔に関し、より詳細には、二次電池集電体用の電解銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の集電体としては一般に銅箔が使用される。前記銅箔は、圧延加工による圧延銅箔が主に使用されるが、製造コストが高く、広幅の銅箔が製造し難い。また、圧延銅箔は圧延加工時に潤滑油を使用しなければならず、潤滑油の汚染によって活物質との密着性が低下するため、電池の充放電サイクル特性が低下することがある。
【0003】
リチウム電池は、充放電時に体積変化及び過充電による発熱現象を伴う。しかも、電極活物質との密着性を向上させ、充放電サイクルによる活物質層の膨脹・収縮と関連して銅箔基材への影響が比較的少なくて集電体としての銅箔にシワ、破綻などの発生を防止する効果を得るように、銅箔の表面粗度が低くなければならない。したがって、リチウム電池の体積変化及び発熱現象に耐えることができ、活物質との密着性に優れた、高延伸、高強度、且つ低粗度の銅箔が要求される。また、二次電池用の負極(anode)集電体として使用する時に、銅箔の両面には電極活物質が被覆される。このとき、電解銅箔の両面の粗度が異なる場合には電池特性が異なってくるため、電解銅箔の両面の粗度が同一又は類似のレベルを維持する必要がある。
【0004】
このような電解銅箔を用いた二次電池の製造工程では、銅箔を真空乾燥させる段階を経るが、真空乾燥は高温で長時間行われる過程であるため、銅箔を真空乾燥させる段階において銅箔と活物質コーティング面との接着力及び応力が変化してしまい、電池の寿命を低下させるか、クラック(Crack)が発生する問題点があった。
【0005】
電解銅箔を二次電池用の負極(anode)集電体として使用する場合には、銅箔の両面に電極活物質を被覆して使用する。したがって、電解銅薄の表面は、活物質との良好な接触を提供することが好ましい。しかしながら、活物質との良好な接触を提供するための従来の接近方法は、電解銅薄の表面粗度を制御するレベルに留まっている。
【0006】
したがって、様々な温度領域において高い機械的特性を備えると同時に、活物質に対する良好な接触特性を提供できる二次電池集電体用の電解銅箔が要求されている。
【0007】
電解銅箔と活物質との良好な接触特性は、電解銅薄の表面エネルギーと関連があり得、銅箔の結晶面の配向によって決定されてよい。また、銅箔の結晶配向は、引張強度及び延伸率に影響を及ぼすことがあり、したがって、高強度、高延伸率、及び/又は良好な接触特性のために電解銅薄の結晶配向を設計する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、広い温度範囲で高い機械的強度と高い延伸率を有する電解銅箔を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、高温乾燥工程の適用にもかかわらずに高い機械的強度及び高延伸率を有する電解銅箔を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、水系バインダーを含む活物質コーティングに対して良好な接触性能を提供できる二次電池集電体用の電解銅箔を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、電解銅箔の両面に均一な活物質コーティングを可能にする二次電池集電体用の電解銅箔を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、高強度、高延伸率、及び/又は良好な接触特性のために設計された結晶配向を有する電解銅箔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の技術的課題を達成するために、本発明は、常温での厚さ対比延伸率が1.3~2.0%/μmであり、常温での析出面に対するXRDスペクトルにおいて、(200)結晶面に対する回折ピークの強度I(200)と(111)結晶面に対する回折ピークの強度I(111)との比であるI(200)/I(111)が0.4~0.5であることを特徴とする電解銅箔を提供する。
【0014】
本発明の電解銅箔は、常温での引張強度が40kgf/mm2以上であり、常温での析出面に対するXRDスペクトルにおいて、(200)結晶面に対する回折ピークの強度I(200)と(111)結晶面に対する回折ピークの強度I(111)との比であるI(200)/I(111)が0.4~0.5であってよい。
【0015】
また、本発明の電解銅箔は、常温での析出面に対するXRDスペクトルにおいて(200)結晶面に対する回折ピークの強度I(200)と(111)結晶面に対する回折ピークの強度I(111)との比であるI(200)/I(111)をAとし、200℃で1時間熱処理後の析出面に対するXRDスペクトルにおいて(200)結晶面に対する回折ピークの強度I(200)と(111)結晶面に対する回折ピークの強度I(111)との比であるI(200)/I(111)をBとするとき、A>Bであってよい。このとき、AとBは、-0.3<(B-A)/A<-0.1の関係にあってよい。
【0016】
また、本発明の電解銅箔は、常温での析出面に対するXRDスペクトルにおいて、(200)結晶面に対する配向指数M(200)と(111)結晶面に対する配向指数M(111)から得られる配向指数の比であるM(200)/M(111)が、0.5~1であってよい。
【0017】
また、本発明の電解銅箔は、常温での析出面に対するXRDスペクトルにおいて、(200)結晶面に対する配向指数M(200)と(111)結晶面に対する配向指数M(111)から得られる配向指数の比であるM(200)/M(111)をCとし、200℃で1時間熱処理後の析出面に対するXRDスペクトルにおいて、(200)結晶面に対する配向指数M(200)と(111)結晶面に対する配向指数M(111)から得られる配向指数の比であるM(200)/M(111)をDとするとき、C>Dであってよい。このとき、CとDは、-0.3<(D-C)/C<-0.1の関係にあってよい。
【0018】
また、本発明の電解銅箔は、TOC含有量が5~8ppmであってよい。
【0019】
また、本発明の電解銅箔は、200℃で1時間熱処理後の厚さ対比延伸率が1.4~2.4%/μmであってよい。
【0020】
また、本発明の電解銅箔は、常温での厚さ対比延伸率に対する200℃で1時間熱処理後の厚さ対比延伸率の比率は、1.05~1.25であってよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、様々な温度領域において高い機械的強度及び高延伸率を備えた電解銅箔を提供することが可能になる。
【0022】
また、本発明によれば、水系バインダーを含む活物質コーティングに対して良好な接触性能を提供できる集電体を提供することが可能になる。
【0023】
また、本発明によれば、電解銅箔の両面に均一な活物質コーティングを可能にする二次電池集電体を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】
図1A及び
図1Bは、それぞれ、本発明の一実施例に係る常温及び高温の銅箔試験片に対するXRD分析結果を示す図である。
【
図1B】
図1A及び
図1Bは、それぞれ、本発明の一実施例に係る常温及び高温の銅箔試験片に対するXRD分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載された実施例と図面に示す構成は、本発明の最も好ましい一つの実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願時点においてそれらを代替できる様々な均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。以下では、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0026】
本発明の明細書において、S面は、電解銅箔製造過程中にドラムと接する面であり、通常、光沢面と称されている面のことを指し、M面は、その反対面であり、析出面又はマット面と称される。この用語は、当該面の粗さを表現するものでなく、S面がM面に比べて光沢度が低いか表面粗さが高くてよいことは勿論である。
【0027】
本発明において、電解銅箔は、常温での引張強度(以下、「常温引張強度」という。)が40kgf/mm2以上であることが好ましい。また、前記電解銅箔は、常温引張強度が50kgf/mm2以下又は45kgf/mm2以下であることが好ましい。
【0028】
銅箔の常温引張強度が40kgf/mm2未満であれば、リチウム二次電池において、負極(anode)電極形成工程で負極活物質(active material)を銅箔上に高速コーティングするとき、塑性変形によってシワ、歪み、曲げなどの不良が発生する可能性が大きく、50kgf/mm2を超える場合には、歪み又はシワの発生現象は減少し得るが、負極活物質の高速コーティング時に高いテンションの不均衡をもたらす可能性が高く、銅箔自体の脆性が増加し、クラック(Crack)及び破れの原因になることがある。
【0029】
本発明の電解銅箔は、高温熱処理後にも高い引張強度を備える。本発明の電解銅箔は、200℃で1時間の熱処理後の引張強度(以下、「高温引張強度」という。)は36kgf/mm2以上であることが好ましい。また、前記電解銅箔は、高温引張強度が45kgf/mm2以下又は42kgf/mm2以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の明細書において、高温引張強度は、リチウム二次電池の負極(Anode)電極形成工程時に、塗装乾燥(Coating Dry)及び真空乾燥(Vacuum Dry)などの高温工程が加えられるプロセスを摸写した測定値であるが、銅箔の高温引張強度が36kgf/mm2未満であれば、リチウム二次電池の充放電時に負極の体積膨脹によってかかる応力(stress)に対して変形が発生し、充放電時に寿命低下を起こし、45kgf/mm2を超える場合には、体積膨脹による応力に対する変形は減少するが、銅箔の脆性が増加し、応力の累積によるクラック及び電極脱離が発生し、電極の寿命が減少する。電解銅箔は、適当な強度の高延伸率を有することが要求される。
【0031】
本発明において、常温引張強度に対する高温引張強度の比は、0.9以上であることが好ましく、また、前記引張強度の比は、1未満、好ましくは0.95未満であると良い。本発明において、電解銅箔は、高温熱処理による引張強度の劣化が極力抑制されることを特徴とする。
【0032】
本発明において、電解銅箔は、高い延伸率を有する。具体的には、本発明の電解銅箔は、延伸率を厚さで割った値(以下、「厚さ対比延伸率(elongation per unit thickness)」という。)が、従来の電解銅箔に比べて高い値を示す。例えば、常温での厚さ対比延伸率(以下、「常温厚さ対比延伸率」という。)は、1.3%/μm以上又は1.5%/μmm以上の値を有してよい。また、常温厚さ対比延伸率は、2.0%/μm以下、1.9%/μm以下、又は1.8%/μm以下の値を有してよい。また、本発明において、前記電解銅箔は、高温熱処理後にも高い延伸率を示す。本発明の電解銅箔は、200℃で1時間の熱処理後の厚さ対比延伸率(以下、「高温厚さ対比延伸率」という。)が1.4%/μm以上、1.5%/μm以上、又は1.6%/μm以上の値を有してよい。また、前記電解銅薄の高温厚さ対比延伸率は2.4%/μm以下、2.2%/μm以下、又は2.0%/μm以下の値を有してよい。
【0033】
リチウム二次電池のエネルギー密度を向上させるためには、活物質の含有量を増やし、非活物質(non active material)である銅箔及びアルミニウム箔、分離膜などの厚さを減少させなければならない。したがって、リチウム二次電池のエネルギー密度が増えるほど、要求される銅箔の厚さは薄くなっている。しかし、銅箔の厚さが薄くなると、箔の持っている物性エネルギー含有量が小さくなる。したがって、厚さが薄いほど、小さい外部応力(Stress)が加えられても破れ、クラックなどが発生するため、一定以上の厚さ当たり延伸率を有してこそ、銅箔の製造工程又は銅箔を用いた二次電池用電極の製造工程において安定した製品製造が可能であり、二次電池充放電時に安定した寿命性能の具現が可能である。後述するように、本発明の電解銅箔は、薄い厚さにおいても高い厚さ対比延伸率を有する。
【0034】
本発明において、前記電解銅箔は、2μm、又は4μmの薄い厚さにおいても高い厚さ対比延伸率値を示す。例えば、本発明の銅箔が前述の厚さ対比延伸率を示す厚さ領域は、2~12μmの範囲、4~12μmの範囲、2~10μmの範囲、又は4~10μmの範囲であってよい。
【0035】
また、本発明において、電解銅薄の厚さ対比延伸率は、銅箔の厚さ範囲にわたって狭い偏差を示す。例えば、厚さ4μmの電解銅箔は、厚さ12μmの電解銅箔と類似な厚さ対比延伸率値を有し得る。
【0036】
また、本発明の電解銅箔は、常温延伸率に対する高温延伸率の比率(延伸率比)が1以上、又は1.05以上の値を有する。また、常温延伸率に対する高温延伸率の比率(延伸率比)は、1.25以下、又は1.2以下の値を有し得る。
【0037】
本発明の電解銅箔は、後述するようなXRDスペクトル上の特定の結晶面のピーク強度関係及びXRDスペクトルから計算された配向指数(orientation index,M)が次の関係を有する。
【0038】
ここで、配向指数は、S.Yoshimura,S.Yoshihara,T.Shirakashi,E.Sato,Electrochim,Acta 39,589(1994)で提案した配向指数(M)を用いて測定した値である。
【0039】
例えば、(111)面を有する試験片は、次のような方法で配向指数(orientation index,M)を計算する。
【0040】
IFR(111)=IF(111)/{IF(111)+IF(200)+IF(220)+IF(311)}
【0041】
IR(111)=I(111)/{I(111)+I(200)+I(220)+I(311)}
【0042】
M(111)=IR(111)/IFR(111)
【0043】
IF(111)は、JCPDSカード(Cards)におけるXRD強度であり、I(111)は、実験値である。M(111)が1より大きければ、(111)面に平行な優先方位を有し、Mが1より小さければ、優先方位が減少することを意味する。
【0044】
(空白段落)
【0045】
本発明の電解銅箔は、次のようなM面に対する常温XRDスペクトルの特徴を有し得る。
【0046】
XRDスペクトルにおいてI(200)/I(111)は0.5以下、又は0.45以下の値を有してよい。また、本発明では、銅箔析出面のXRDスペクトルにおいてI(200)/I(111)は0.35以上、又は0.40以上であってよい。
【0047】
(空白段落)
【0048】
また、本発明の電解銅箔は、結晶面の配向指数(M)が、M(200)/M(111)は1以下、0.95以下、又は0.93以下の値を有してよい。また、M(200)/M(111)は0.8以上、又は0.85以上の値を有してよい。
【0049】
(空白段落)
【0050】
一方、本発明の電解銅箔は、200゜Cで1時間熱処理後(以下、これを「高温」という。)にXRDスペクトル内のI(200)/I(111)は減少する。例えば、I(200)/I(111)は0.4以下、又は0.35以下の値を有してよい。また、高温においてI(200)/I(111)は0.2以上、又は0.25以上の値を有してよい。
【0051】
また、本発明の電解銅箔は、200゜Cで1時間熱処理後(以下、これを「高温」という。)にXRDスペクトル内のM(200)/M(111)は減少する。例えば、高温においてM(200)/M(111)は0.8以下、0.75以下、又は0.7以下の値を有してよい。また、M(200)/M(111)は0.6以上、又は0.65以上の値を有してよい。
【0052】
本発明は、常温において高強度及び高延伸率を具現し、電解銅薄の結晶面が特定の配向を有するように、次のような添加剤A~添加剤Cから選ばれる組合せの添加剤を含む電解液で製造されてよい。
【0053】
(空白段落)
【0054】
●添加剤A
【0055】
添加剤Aは、チオウレア系化合物、窒素を含むヘテロ環にチオール基が連結された化合物、又はそれらの混合物である。
【0056】
ここで、チオウレア系化合物は、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、アセチレンチオウレア、ジプロピルチオウレア、ジブチルチオウレア、N-トリフルオロアセチルチオウレア(N-trifluoroacetylthiourea)、N-エチルチオウレア(N-ethylthiourea)、N-シアノアセチルチオウレア(N-cyanoacetylthiourea)、N-アリルチオウレア(N-allylthiourea)、o-トリルチオウレア(o-tolylthiourea)、N,N’-ブチレンチオウレア(N,N’-butylene thiourea)、チアゾリジンチオール(thiazolidinethiol)、4-チアゾリンチオール(4-thiazolinethiol)、4-メチル-2-ピリミジンチオール(4-methyl-2-pyrimidinethiol)、2-チオウラシル(2-thiouracil)からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよいが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術の分野で添加剤として使用可能な様々なチオウレア化合物が使用されてよい。
【0057】
前記添加剤Aの窒素を含むヘテロ環にチオール基が連結された化合物は、2-メルカプト-5-ベンゾイミダゾールスルホン酸ナトリウム塩(2-mercapto-5-benzoimidazole sulfonic acid sodium salt)、ナトリウム3-(5-メルカプト-1-テトラゾリル)ベンゼンスルホネート(Sodium3-(5-mercapto-1-tetrazolyl)benzene sulfonate)、及び2-メルカプトベンゾチアゾール(2-mercapto benzothiazole)からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよいが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術の分野で添加剤として使用可能な様々な窒素を含むヘテロ環にチオール基が連結された化合物が使用されてよい。
【0058】
本発明において、前記添加剤Aは電解液中に2ppm未満となるように添加されることが好ましい。好ましくは、前記添加剤Aは0.5~1.9ppm添加されることが良い。
【0059】
添加剤Aは、電解銅薄の強度を向上させることができる。前記添加剤Aの含有量が1.9ppmを超えると、析出面の表面粗度が上昇して低粗度の電解銅箔を製造し難く、延伸率が低下することがある。
【0060】
(空白段落)
【0061】
●添加剤B
【0062】
添加剤Bは、硫黄原子を含む化合物のスルホン酸又はその金属塩である。
【0063】
例えば、硫黄原子を含む化合物のスルホン酸又はその金属塩は、ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジナトリウム塩(SPS)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸(MPS)、3-(N,N-ジメチルチオカルバモイル)-チオプロパンスルホネートナトリウム塩(DPS)、3-[(アミノ-イミノメチル)チオ]-1-プロパンスルホネートナトリウム塩(UPS)、o-エチルジチオカーボネート-S-(3-スルホプロピル)-エステルナトリウム塩(OPX)、3-(ベンゾチアゾリル-2-メルカプト)-プロピルスルホン酸ナトリウム塩(ZPS)、エチレンジチオジプロピルスルホン酸ナトリウム塩(Ethylenedithiodipropylsulfonic acid sodium salt)、チオグリコール酸(Thioglycolic acid)、チオリン酸-o-エチル-ビス-(ω-スルホプロピル)エステルジナトリウム塩(Thiophosphoric acid-O-ethyl-bis-(ω-sulfopropyl)ester disodium salt)、及びチオリン酸-トリス-(ω-スルホプロピル)エステルトリナトリウム塩(Thiophosphoric acid-tris-(ω-sulfopropyl)ester trisodium salt)からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよいが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術の分野で添加剤として使用可能な硫黄原子を含む化合物のスルホン酸又はその金属塩であれば可能である。
【0064】
本発明において、前記添加剤Bは、電解液中に20~80ppm添加されることが好ましい。
【0065】
添加剤Bは、電解銅薄の表面光沢を向上させることができる。前記添加剤Bの含有量が20ppm未満であれば、電解銅薄の光沢が低下することがあり、前記添加剤Bの含有量が80ppm超であれば、析出面の表面粗度が上昇して低粗度の電解銅箔を製造し難く、電解銅薄の引張強度が低下することがある。
【0066】
(空白段落)
【0067】
●添加剤C
【0068】
添加剤Cは、非イオン性水溶性高分子である。
【0069】
前記非イオン性水溶性高分子は、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、ノニルフェノールポリグリコールエーテル(Nonylphenol polyglycol ether)、オクタンジオール-ビス-(ポリアルキレングリコールエーテル(Octane diol-bis-(polyalkylene glycol ether)、オクタノールポリアルキレングリコールエーテル(Ocatanol polyalkylene glycol ether)、オレイン酸ポリグリコールエーテル(Oleic acid polyglycol ether)、ポリエチレンプロピレングリコール(Polyethylene propylene glycol)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(Polyethylene glycoldimethyl ether)、ポリオキシプロピレングリコール(Polyoxypropylene glycol)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol)、β-ナフトールポリグリコールエーテル(β-naphthol polyglycol ether)、ステアリン酸ポリグリコールエーテル(Stearic acid polyglycol eter)、及びステアリルアルコールポリグリコールエーテル(Stearyl alcohol polyglycol ether)からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよいが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術の分野で添加剤として使用可能な水溶性高分子であればいずれも可能である。例えば、前記ポリエチレングリコールは、分子量が100~20000であってよい。
【0070】
また、前記非イオン性水溶性高分子は、ヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース(Carboxymethylcellulose)からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよいが、必ずしもそれに限定されない。
【0071】
また、前記非イオン性水溶性高分子は、ゼラチン、コラーゲンなどの水溶性タンパク質性阿膠物質であり、グリシン、ヒドロキシリシン、ヒドロキシプロリンが反復される構造を有するが、type I、type II、type Vを含めて6種類以上が存在する。3種類のアミノ酸が反復された鎖をアルファ鎖(alpha chain)と呼び、3本のアルファ鎖が互いに巻き付いたものを三重螺旋(triple helix)と呼ぶ。一般に、この三重螺旋同士が架橋結合しながらコラーゲンの複雑な構造が形成される。本発明の非イオン性水溶性高分子は、コラーゲン、ゼラチンからなる群から選ばれる1種以上であってよいが、必ずしもそれらに限定されない。
【0072】
本発明において、前記添加剤Cは、電解液中に5~10ppm添加されることが好ましい。
【0073】
銅電解液において添加剤Cは電解銅薄の表面粗度を下げ、表面光沢を向上させることができる。前記添加剤Cの含有量が5ppm未満であれば、析出面の表面粗度が上昇して低粗度の電解銅箔を製造し難く、電解銅薄の光沢が低下することがあり、前記添加剤Cの含有量が10ppm超であれば、電解銅薄の高温強度低下及び高温硬度低下が起きることがある。
【0074】
以上、電解液中の添加剤A、B、Cが電解銅薄の物性に及ぼす影響について説明したが、上述した説明は例示的なものである。本発明の各添加剤の種類、含有量又はその組合せは、知られていないメカニズムによって本発明で製造された電解銅薄の他の物性にも影響を及ぼし得ることは勿論である。
【0075】
一義的には規定できないが、本発明において、XRDスペクトルは、添加剤の種類、含有量、及び/又は相対的比率によって変化し得る。例えば、添加剤Cの濃度が増加するか、添加剤AとBに対する添加剤Cの相対的比率が増加すると、電解銅薄の(200)面が減少する傾向を示す。
【実施例】
【0076】
<電解銅箔製造例1>
【0077】
(実施例1~5)
【0078】
200~452g/LのCuSO45H2O、30~250g/Lの硫酸、10~30ppmの塩素イオン濃度を有する電解液において50~60℃、50~70A/dm2(ASD)の電流密度で電解メッキを行った。添加剤Aとして0.5~1.9ppmのETU(エチレンチオウレア)、添加剤Bとして20~80ppm DPS(3-(N,N-ジメチルチオカルバモイル)-チオプロパンスルホネートナトリウム塩)と5~10ppmのPEG(ポリエチレングリコール、分子量Mw:500~4000)を電解液に添加した。各実施例で使用された電解液組成は、表1の通りである。メッキ膜の厚さは実施例別に異ならせた。
【0079】
(空白段落)
【0080】
(比較例1)
【0081】
Cu 100g/L、硫酸150g/L、塩素イオン濃度20ppmの電解液において50~60℃、50~70A/dm2(ASD)の電流密度で電解メッキを行い、18μm厚のメッキ膜を製造した。添加剤Aとして2ppmのDET(ジエチルチオウレア)、添加剤Bとして45ppmのSPS(ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジナトリウム塩)と10ppmのZPS(3-(ベンゾチアゾリル-2-メルカプト)-プロピルスルホン酸ナトリウム塩)、添加剤Cとして20ppmのPEG(ポリエチレングリコール、分子量Mw:500~4000)、添加剤Dとして3ppmのJGB(ヤヌスグリーンB)を電解液に添加した。
【0082】
(空白段落)
【0083】
(比較例2)
【0084】
Cu 90g/L、硫酸120g/L、塩素イオン濃度30ppmの電解液において50~60℃、50~70A/dm2(ASD)の電流密度で電解メッキを行い、4μm厚のメッキ膜を製造した。添加剤Aとして3ppmのDET(ジエチルチオウレア)、添加剤Bとして60ppmのSPS(ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジナトリウム塩)と40ppmのZPS(3-(ベンゾチアゾリル-2-メルカプト)-プロピルスルホン酸ナトリウム塩)、添加剤Cとして20ppmのPEG(ポリエチレングリコール、分子量Mw:500~4000)、10ppmのPGL(ポリグリセリン)、375ppmのZn、75ppmのFeを電解液に添加した。
【0085】
(空白段落)
【0086】
(比較例3)
【0087】
Cu 100g/L、硫酸130g/L、塩素イオン濃度30ppmの電解液において50~60℃、50~70A/dm2(ASD)の電流密度で電解メッキを行い、6μm厚のメッキ膜を製造した。添加剤Aとして26ppmのDET(ジエチルチオウレア)、添加剤Bとして80ppmのSPS(ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジナトリウム塩)と40ppmのZPS(3-(ベンゾチアゾリル-2-メルカプト)-プロピルスルホン酸ナトリウム塩)、添加剤Cとして20ppmのPEG(ポリエチレングリコール、分子量Mw:500~4000)、10ppmのPGL(ポリグリセリン)を電解液に添加した。
【0088】
(空白段落)
【0089】
(比較例4)
【0090】
Cu 80g/L、硫酸140g/L、塩素イオン濃度10ppmの電解液において50~60℃、50~70A/dm2(ASD)の電流密度で電解メッキを行い、12μm厚のメッキ膜を製造した。添加剤Bとして5ppmのMPS(3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸)、添加剤EとしてDDAC(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)を電解液に添加した。
【0091】
(空白段落)
【0092】
(比較例5)
【0093】
Cu 80g/L、硫酸140g/L、塩素イオン濃度10ppmの電解液において50~60℃、50~70A/dm2(ASD)の電流密度で電解メッキを行い、12μm厚のメッキ膜を製造した。添加剤Bとして5ppmのMPS(3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸)、添加剤EとしてDDAC(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)を電解液に添加した。
【0094】
各実施例のメッキ液組成を下表1に示す。
【0095】
【0096】
(空白段落)
【0097】
<物性評価>
【0098】
実施例及び比較例で製造された各表面処理洞箔試験片の物性を測定し、表1及び表2に示した。物性評価項目及び測定方法は、次の通りである。
【0099】
(空白段落)
【0100】
a.引張強度/延伸率
【0101】
電解銅箔を幅12.7mm*ゲージ長50mmとして引張試験片を採取した後、50.8mm/minクロスヘッド速度で引張試験をIPC-TM-650 2.4.18B規格にしたがって実施し、測定される引張強度の最大荷重を引張強度とし、破綻時の延伸率を延伸率とした。各試験片に対して常温での引張強度と延伸率を測定したし、200℃の高温で1時間熱処理した後に引張強度と延伸率を測定し、その結果を下表2に示した。
【0102】
(空白段落)
【0103】
b.電解銅薄のTOC測定
【0104】
電解銅箔に含まれているTOCの含有量は、実施例及び比較例で得られた電解銅箔を、塩酸(35%)60ml、過酸化水素水(30%)40mlに溶かした後、Shimadzu社製TOC-V WPを用いて分析した。下表2にその結果を記載した。
【0105】
(空白段落)
【0106】
c.XRD分析
【0107】
実施例及び比較例で製造された銅箔試験片のM面に対してXRD分析を行った。熱処理していない試験片(常温)と200゜Cで1時間熱処理した後の試験片(高温)に対してXRD分析を行った。
図1A及び
図1Bにそれぞれ、実施例1の常温及び高温の試験片に対するXRD分析結果を例示した。
【0108】
(空白段落)
【0109】
測定されたXRDデータから、Ir(200)/Ir(111)、M(200)/M(111)、常温と高温でのIr及びMの変化量を常温値基準で計算した変化率(すなわち、(高温値-常温値)/常温値)を表3に示した。
【0110】
(空白段落)
【0111】
【0112】
表2に列挙されているように、実施例1~5の試験片は、常温で40kgf/mm2の高強度特性を示し、200゜Cの高温熱処理後にも高い強度を維持していることが分かる。また、表2に示すように、実施例1~5は、常温での厚さ対比延伸率値が1.3~1.97%/μmと高い値を示している。さらに、4μm厚の実施例1においても厚さ対比延伸率は1.3%/μmの値を示すのに対し、比較例では1.2以下の値を示していることが分かる。
【0113】
(空白段落)
【0114】
【0115】
表3に見られるように、本発明の実施例において、常温でのI(200)/I(111)は0.4~0.5の値を有する。また、本発明の実施例において、常温でのI(200)/I(111)値に比べて高温でのI(200)/I(111)値は減少する。このような傾向はM(200)/M(111)にも見られることが分かる。これに対し、比較例1~5では、高温でI(200)/I(111)値が増加することが分かる。前述した実施例及び比較例は、添加剤の種類、含有量、及び/又は相対的比率によって電解銅薄の結晶面の配向が変化し得ることを示す。例えば、添加剤Cが20ppm以上添加された比較例1~3では(200)面が減少する傾向を示している。また、添加剤Cがない比較例4及び5では(200)面が発達することが分かる。
【0116】
(空白段落)
【0117】
以上、本発明の好ましい実施例を詳細に説明したが、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は、上述した実施例に対して本発明の範ちゅうから逸脱しない限度内で様々な変形が可能であることが理解できよう。したがって、本発明の権利範囲は、説明された実施例に限定されず、後述する特許請求の範囲及びそれと均等なものによって定められるべきである。
【0118】
(空白段落)
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、電解銅箔に適用可能である。
【国際調査報告】