(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】特に臨床制約を条件とした最適な個人投与計画の計算のための方法、システムおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20241010BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525829
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022080865
(87)【国際公開番号】W WO2023079106
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524160073
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート バーゼル
(71)【出願人】
【識別番号】524159664
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート コンスタンス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジンナイ,ガボール
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】フィスター,マルク
(72)【発明者】
【氏名】シュロップ,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ステフェンス,ブリッタ
(72)【発明者】
【氏名】バッハマン,フレイヤ
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
5L099AA25
(57)【要約】
本発明は、既知の疾患を患っている患者に対する少なくとも1つの薬物の最適な個人投与計画を自動的に決定するための方法に関し、最適な個人投与計画は、任意選択で少なくとも1つの臨床制約を受け、本方法は、前記疾患の進行および少なくとも1つの薬物の疾患の進行への作用をモデル化するように適合された数学モデルを提供することであって、モデルは、患者と関連付けられた個人モデルパラメータを含むこと;患者と関連付けられた患者データを利用する数学モデルの個人モデルパラメータを自動的かつ数値的に推定するために経験的ベイズ推定を利用すること;最適制御問題を望ましい疾患進行、推定された個人モデルパラメータ、および投与計画に対する初期推測に基づいて解決することにより、数学モデルに対する最適な個人投与計画を自動的に計算すること;ならびに任意選択で少なくとも1つの臨床制約を吸収するために最適な個人投与計画を調整して前記少なくとも1つの臨床制約を条件とした最適な個人投与計画をもたらすこと、を行うステップを含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知の疾患を患っている患者に対する少なくとも1つの薬物の最適な個人投与計画を決定するための方法であって、前記方法は、
(a)前記疾患の疾患進行をモデル化するように適合された数学モデルを提供することであって、前記モデルは、1人の患者と関連付けられた個人モデルパラメータを含むことと、
(b)患者データを利用する前記数学モデルの前記個人モデルパラメータを推定するために経験的ベイズ推定を利用することと、
(c)最適制御問題を、望ましい疾患進行、前記推定された個人モデルパラメータ、および前記投与計画に対する初期推測に基づいて解決することにより、前記数学モデルに対する最適な個人投与計画を計算することと、
(d)少なくとも1つの臨床制約を吸収するために前記最適な個人投与計画を調整して前記少なくとも1つの臨床制約を条件とした前記最適な個人投与計画をもたらすことと
を行うステップを含み、
ステップ(b)~(d)は、前記患者の複数のx回の後続来診の各来診で実施されて、x>1に対して、ステップb)における前記患者データは、以前のx-1回の来診(複数可)の患者データを含み、ステップb)における前記経験的ベイズ推定は、現在の来診までに前記患者に対して実際に投与された前記少なくとも1つの薬物の全ての投与量をさらに使用する、
方法。
【請求項2】
前記数学モデルは薬物動態/薬力学(PKPD)モデルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記望ましい疾患進行は数学関数の形で与えられる、先行する請求項の1項に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)~(c)、詳細にはステップ(b)~(d)を実行するアルゴリズムの少なくとも一部が、人工ニューラルネットワーク(ANN)によって近似される、先行する請求項の1項に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患は、後天性甲状腺機能低下症、詳細には自己免疫型および/または非自己免疫型、後天性甲状腺機能亢進症、詳細には自己免疫型および/または非自己免疫型、先天性甲状腺機能低下症、先天性甲状腺機能亢進症の1つである、先行する請求項の1項に記載の方法。
【請求項6】
前記薬物は、レボチロキシン、カルビマゾール、プロピルチオウラシルから成る群から選択される、先行する請求項の1項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者データの少なくとも一部は、前記患者によって装着されたウェアラブルデバイスによって測定される、先行する請求項の1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ウェアラブルデバイスは、腕時計、詳細にはスマートウォッチ、携帯電話、詳細にはスマートフォンの1つである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記患者データは心拍数を含み、前記患者の前記心拍数は前記ウェアラブルデバイスで測定される、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
既知の疾患を患っている患者に対する少なくとも1つの薬物の最適な個人投与計画を決定するためのシステムであって、先行する請求項の1項に従った前記方法の前記ステップを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む、システム。
【請求項11】
前記システムは、前記患者データの少なくとも一部を測定するように構成されたウェアラブルデバイスをさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
命令を含むコンピュータプログラムであって、前記命令は、請求項10または請求項11に従った前記システム上で実行される場合に、前記システムに、請求項1~請求項9の1項に従った前記方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に従った前記コンピュータプログラムがその上に格納されているコンピュータ可読持続性記憶媒体。
【請求項14】
請求項12の前記コンピュータプログラムを搬送するデータ搬送波信号。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既知の疾患を患っている患者に対する少なくとも1つの薬物の最適な投与計画を決定するための方法、システムおよびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大多数の疾患は、疾患の進行が患者および臨床診療によって異なるので、個人レベルでの治療が依然として難しい。詳細には、最適な個人投与計画を、特に臨床環境において、処置に関連した有害事象を最小限にしながら、患者の回復につながる、疾患の進行の制御を理想的に可能にする十分に迅速かつ信頼できる方法で、決定することは多くの場合、いまだに課題である。
【0003】
詳細には、かかる疾患の中で、世界的に見て、先天性甲状腺機能低下症が、最も多い先天性内分泌疾患であり、精神遅滞の最も多い予防可能な原因である[Polak 2017]。疾患重症度は、診断時に個人によって大きく異なる、すなわち、甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、標準が0.5~5mU/Lであるが、6~1200mU/Lの範囲である。甲状腺ホルモンの主作用は、介在ニューロンの軸索成長およびミエリン形成、主に出生後、ヒトにおいて進行中のプロセスである。新生児スクリーニングは、小児が臨床兆候および回復不能な神経学的欠損症に苦しむ前に、先天性甲状腺機能低下症をもつ小児の診断を可能にする。ここ40年の間、先天性甲状腺機能低下症をもつ患者の神経学的転帰は、1)検診と治療開始との間の時間窓(スイスでは現在のところ4~5日)を短縮することにより、かつ2)レボチロキシンの初期投与量を(5~8mcg/kg/日から現在のところ10~15mcg/kg/日へ)増やすことによって大幅に改善されている。レボチロキシンを用いた代替治療の目標は、脳の発達を保護するために甲状腺機能低下症を可能な限り迅速に矯正することである。臨床医は、遊離チロキシン(T4)レベルが正常参照範囲の上限内に14日以内に達することを目標とする(
図3(a)を参照)。しかし、いくつかの調査により、最大で小児の10%が10~15mcg/kg/日の初期および維持投与量で適切な期間を超えて過剰投与されたことが明らかになった。さらに、11歳の時に、彼らの神経学的転帰は、経過観察中に過少量投与の期間のある小児に匹敵し、過剰および過少量投与の両方の小児が、経過観察中に甲状腺ホルモンを参照範囲内に維持しているレボチロキシン投与量の小児と比べて、不良の神経学的転帰を有した。
【0004】
現在の国際的指針は、生後2年の間、より頻繁で必要な個人の、年齢に適した投与量の調整を可能にして甲状腺ホルモンを生理学的正常参照範囲内に維持するために、もっと頻繁な制御を推奨する。これは、過剰および過少量投与のより迅速な検出を可能にするが、それは、準最適な投与のエピソードを阻止しない。結果として、罹患患者における神経学的転帰を改善するための最後のステップは、経過観察中に個別化された投与のために臨床および研究データを考慮することにより、長期間にわたる代替投与の最適化に焦点を合わせる必要がある。従って、生後2年の間に最適な個別化された投与を決定できることは特に非常に望ましく、それは、脳の発達および長期間にわたる正常な認知機能にとって不可欠である。中枢性先天性甲状腺機能低下症は、同じ方法でレボチロキシンで治療された下垂体および視床下部の障害に起因した低TSHおよびFT4値をもつ先天性甲状腺機能低下症のサブグループである。
【0005】
さらに、先天性甲状腺機能亢進症は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体に対する刺激抗体の胎盤通過に起因して自己免疫性甲状腺機能亢進症(グレーブス病)をもつ母親の出生児の約10%に生じる。それは、幼児を罹患率および死亡率に対して重大なリスクに曝す。出生時および生後1週間の間に約95%無症状である、先天性甲状腺機能低下症をもつ幼児とは対照的に、先天性甲状腺機能亢進症を患っている幼児は、軽度の頻脈および発汗から体重の減少、嘔吐、下痢、脱水症状、ひどい高熱、てんかん発作、および心不全に至る、典型的な兆候ならびに症状を呈する。発症は、生後直ぐ、または母親の抗甲状腺性薬物の胎盤通過によって生後4~10日まで遅延される。再度、疾患の重症度は、極めて軽症型から生命を脅かす合併症まで、大幅に異なる。発症遅延は、最適な治療をさらに複雑にして、生後1、4、7、10および14日における臨床観察および試験室管理を必須にする。
【0006】
また、先天性甲状腺機能亢進症に対して、どの小児が重症な臨床経過のリスクに曝されているか、および治療をいつ開始すべきかを予測することにより、かつ抗甲状腺薬の考えられる重い副作用(無顆粒球症、肝炎、血管炎)の状況において疾患重症度に対して適合された最小有効開始および維持量を見つけることによって、治療を最適化することは、非常に望ましい(
図3(b)を参照)。
【0007】
その上、後天性甲状腺機能亢進症[Leger 2014]は、ヨーロッパでは小児において0.5~2:100000で出現し、ヨーロッパにおける成人では、25~90:100000で出現して、ブラジル、中国およびインドでは、最も罹患率が高く、それぞれ人口の0.75~1.25%に及ぶ。甲状腺機能亢進症の重症度も同様に、診断時に個人によって大きく異なり、FT4値は、標準が11~21pmol/Lであるが、22~100以上pmol/Lに及ぶ。生理学的FT4レベルの回復は、正常化が可能な限り迅速に目指されるべき、先天性甲状腺疾患とは対照的に、4~6週間後に達成されるべきである。単純な治療法は以前は、block and replace療法であった:抗甲状腺薬の投与量は、甲状腺を完全に遮断するために選択されて、レボチロキシンでの代替が追加された。国際的指針によれば、抗甲状腺薬のより高い投与量に伴う副作用(無顆粒球症、肝炎、血管炎)の頻度が増加する状況では、かかるアプローチは、国際的指針によればもう推奨されない。現在のところ、抗甲状腺薬の最小有効量は、医原性甲状腺機能低下症を引き起こす過剰投与または持続性甲状腺機能亢進症となる過少量投与のリスクを軽減するために個人レベルで適正量を決める必要がある。甲状腺機能亢進症および甲状腺機能低下症の両方は、成長および思春期の発達(それぞれ、遅滞または促進)、ならびに認知機能に悪影響を及ぼして、学業およびスポーツ成績における低下につながる。最後に、小児期に複雑さがさらに増大するため、低年齢または思春期前の子供たちにおいて、より年長(10歳以上)または思春期および思春期を過ぎた子供たちと比べて、疾患経過はより厳しく、甲状腺機能亢進症の再発リスクは遥かに高くて、小児グレーブス病を治療上の課題にする。
【0008】
グレーブス病に関しても、定常状態および最小有効維持量に達して経過観察中に再発を回避するために、臨床および検査パラメータに応じて最適な個人の開始投与量を計算するのを可能にする治療法が大いに望まれる(
図3(d)を参照)。
【0009】
その上、甲状腺機能低下症は、世界中で一般的であり、ヨーロッパでは成人人口の0.2~5.3%までの有病率である。後天性甲状腺機能低下症の最も多い原因は、世界のヨウ素が十分な地域では橋本甲状腺炎である。後天性甲状腺機能低下症(1.2%の発症率)の治療の目標は、遊離T4レベルを緩徐に正常化して、長期にわたる甲状腺機能低下症の後に甲状腺機能亢進症の兆候および症状を回避することである。他の疾患と同様に、最適な開始および維持投与量は、身体発育、認知機能およびその結果として学業成績を正常化するが、しかし、小児患者に過剰摂取させないために必要である(
図3(c)を参照)。さらに、下垂体および視床下部の障害(例えば、とりわけ、外傷、腫瘍、感染症)に起因した中枢性甲状腺機能低下症は、後天性甲状腺機能低下症のさらなる形態を引き起こし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
要約すれば、前述に基づき、本発明によって解決すべき問題は、特に、小児甲状腺疾患に対して、個別化された投与量決定を改善するのを可能にする、方法、システム、コンピュータプログラム、コンピュータ可読持続性記憶媒体、およびデータ搬送波信号を提供することである。かかる疾患の重症度に起因して、罹患患者の治療および転帰を改善することは臨床的に非常に適切である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この問題は、請求項1の特徴を有する方法、請求項10の特徴を有するシステム、請求項12の特徴を有するコンピュータプログラム、請求項13の特徴を有するコンピュータ可読持続性記憶媒体、および請求項14の特徴を有するデータ搬送波信号によって解決される。
【0012】
本発明のこれらの態様の好ましい実施形態は、対応する従属請求に記載されて、以下で説明される。
【0013】
請求項1によれば、疾患を患っている患者(例えば、新生児、乳児、小児、青少年または成人)に対して少なくとも1つの薬物の最適な個人投与計画を自動的に決定するための方法であって、特に最適な個人投与計画は少なくとも1つの臨床制約を受け、本方法は、
(a)前記疾患の疾患進行および特に少なくとも1つの薬物の疾患の進行への作用をモデル化する(詳細には特性化および予測する)ように適合されたコンピュータ実装された数学モデルを提供するステップであって、そのモデルは、所与の患者と(詳細には、所与の疾患およびその疾患重症度および進行、ならびに適用された投与計画と)関連付けられた個人モデル(または臨床ルーチン)パラメータを含む、ステップと、
(b)所与の患者の患者データ、特に、個人の投薬情報を使用して数学モデルの個人モデルパラメータを自動的かつ数値的に推定するために経験的ベイズ推定を使用するステップと、
(c)最適制御問題を、望ましい疾患進行、推定された個人モデルパラメータ、および投与計画に対する初期推測に基づいて解決することにより、数学モデルに対する最適な個人投与計画を自動的に計算するステップと、
(d)少なくとも1つの臨床制約を吸収するために最適な個人投与計画を調整して前記少なくとも1つの臨床制約を条件とした最適な個人投与計画をもたらすステップと
を含み、
ステップ(b)~(d)は、患者の複数のx回の後続来診の各来診で実施されて、x>1に対して、ステップb)における患者データは、以前のx-1の来診(複数可)の患者データを含み、ステップb)における経験的ベイズ推定は、現在の来診までに患者に対して実際に投与された前記少なくとも1つの薬物の全ての投与量をさらに使用する。
【0014】
好都合に、本発明は、薬物療法を次のレベルまで高めるために個別化された投与を可能にする。多くの疾患に関して、詳細には甲状腺機能亢進症または甲状腺機能低下症に関して、新しい薬理学的なアプローチは開発されておらず、個人投与計画の決定における改善は、治療転帰の改善における鍵である。
【0015】
詳細には、上で概説して
図3に示されるように、本発明は、開始および維持投与に対する疾患固有のアルゴリズムを開発するために別々にモデル化される必要がある異なる臨床的症状のモデル化に特に適用可能である。
【0016】
本発明のフレームワークでは、次の概念および定義がしばしば言及される。
【0017】
患者
患者は、仮想/in-silico(非ヒト)オブジェクト(例えば、患者集団の平均)または実際の人間の患者であり得る。
【0018】
来診(visit)
患者の来診は、(i)対象の任意の時点、(ii)病院における非入院患者の臨床通院の時点、または(iii)臨床医が病院で入院患者を診る時点であり得る。
【0019】
ウェアラブルデバイスおよびセンサー
ウェアラブルデバイスおよびセンサーは、患者によって装着されて、心拍数(1分当たりの拍動)、血圧(mmHg)、体温(℃)、呼吸数(回数/分)、酸素飽和度および歩数(1日あたりのカウント)などの、バイタルサインを監視する非侵襲的装置である。
【0020】
検査室測定
検査室測定は、医学研究所で、または医師、看護師、医療助手もしくは薬剤師のような医療従事者によって、分析されるバイオマーカー(例えば、ホルモン)の定期的な生化学的検査である。甲状腺ホルモンの事例では、1つのホルモンが下垂体によって合成されて分泌されて(甲状腺刺激ホルモンと呼ばれる末梢内分泌腺の調節ホルモンまたは下垂体・甲状腺軸に対する甲状腺刺激ホルモン(TSH))、末梢ホルモンが甲状腺から分泌される(結合(T3、T4)および遊離型(FT3、FT4)のチロキシン(T4)およびトリヨードチロニン(T3)である下垂体の支配下の内分泌腺)。
【0021】
人口統計/人体測定特性
人口統計データは、例えば、年齢(日齢(新生児)、月齢(乳児)、年齢(小児または成人))、出生時の在胎期間(未熟または満期出産)および性別である。人体測定データは、例えば、体重(kg)、身長(cm)および頭囲(cm)である。
【0022】
共変量(covariate)
共変量は、経時的に変わり得るが、必ずしも変わる必要はない、患者特性(例えば、人口統計/人体測定特性)である。時不変共変量は、例えば、出生時体重、在胎期間、分娩様式、ベースライン時における全ての特性などである。時変共変量に対する例は、体重、身長、心拍数、血圧、呼吸数などである。
【0023】
患者データ
患者データは、ウェアラブルデバイスまたはセンサーからのデータ、検査室測定、および全ての利用可能な来診からの共変量の組合せである。加えて、患者データは、全ての利用可能な来診からの投薬量に関する全ての情報を含む。
【0024】
薬物動態モデル
薬物動態(PK)モデルは、薬物(または、例えば、その代謝物)または外因性物質の、例えば、吸収、分配、代謝および排出プロセスによる、濃度を記述する。薬物の投与経路は、(i)経口、(ii)静脈内、または(iii)皮下であり得る。PKモデルは典型的には、1つ以上の微分方程式によって特性化される。
【0025】
薬物動態/薬力学モデル
薬物動態/薬力学(PKPD)モデルは、例えば、PKモデルによって特性化される、1つもしくは複数の薬物の刺激/抑制効果によって引き起こされたバイオマーカーの反応または疾患進行など(所謂、薬力学)を記述する。いくつかの薬物の組合せに関して、薬物は、同時に、または連続して、投与できる。PKPDモデルは典型的には、1つ以上の微分方程式によって特性化される。
【0026】
基本的な数学モデル
基本的な数学モデルは、PKモデルだけ、またはPKPDモデルにできる。基本的な数学モデルは、生理学に基づく機構的仮定、成熟関連プロセスおよび/またはデータ駆動型仮定の組合せを含み得る。基本的な数学モデルは、1つまたは、いくつかの薬物の投薬量によって制御される。基本的な数学モデルは、ベクトルθに要約されるモデルパラメータを含み、それらの一部は既に分かっている可能性があるが、他は推定する必要がある。病状は、疾患進行を特性化する基本的な数学モデルの1つの状態変数またはいくつかの状態変数の組合せである。
【0027】
個人モデルパラメータ
個人モデルパラメータは、θiに要約されて、個々の患者を個人データに基づいて特性化する。インデックスiはN人の患者をもつ集団内のi番目の個人、すなわち、i=1,...,Nを示す。全部または一部だけのモデルパラメータは、生理学的、生物学的または他の意味を有し得る。例えば、モデルパラメータは、プロセス(例えば、生成または排出)の速度を記述でき、コンパートメントの容積を記述でき、または他の意味を有することができる。
【0028】
望ましい疾患進行
望ましい疾患進行は、臨床医/ユーザーによって与えられて、個々の患者に対する目標を特性化する。例えば、薬物で治療されている、バイオマーカーの増加を示している患者に対して、目標は、そのバイオマーカー値を正常な(年齢別)参照範囲まで所与の期間内に正常化することである。またはPKモデルの例では、望ましい疾患進行は、薬物曝露に関する目標、例えば、濃度曲線下の一定の領域に達することであり得る。薬物療法下の望ましい疾患進行は、数学関数によって特性化される。
【0029】
投与計画
投与計画は、1つの薬物またはいくつかの薬物の投与に関する情報である。それは、薬物(複数可)自体、投与経路(経口、静脈内、皮下)、投薬時点、および投与量を含む。
【0030】
最適な個人投与計画
最適な個人投与計画は、個々の患者に対する(望ましい疾患進行に関して)最適な投与量を有する投与計画である。
【0031】
臨床適用における制約を受ける最適な個人投与計画
臨床適用における制約を受ける最適な個人投与計画は、臨床適用における制約に対して調整された最適な個人投与計画である。これは、例えば、利用可能な錠剤サイズであり得る。2つの利用可能な投与サイズの間で最適な投与量を調整するために異なる方針、例えば、
1)最も近い利用可能な投与サイズに丸める、または
2)低い方の対応するコスト汎関数値に基づいて高い方もしくは低い方の利用可能な投与量を選択する(混合整数最適化[Belotti 2013]において見られるような)、
が適用できる。
【0032】
非線形混合効果モデリングアプローチ
非線形混合効果(NLME)モデリングアプローチ[Lavielle 2014]では、同じ疾患をもつ患者は、共通または類似の特徴を有する集団を形成することが想定される。各個人iに対して、時点
【数1】
におけるn
iの測定w
i=
【数2】
のベクトルが、i=1,...Nに対して取られる。基本的な数学モデルからの予測fは、これらの測定を予測する。しかし、基本的な数学モデルにおける個人モデルパラメータθ
iは、未知であるか、または少なくとも部分的に未知である。これらのモデルパラメータのサブセットは、推定された個人モデルパラメータφ
iである。基本的なNLMEモデリングアプローチは、i=1,...Nおよびj=1,...n
iに対して、
【数3】
を示し、式中η
iは、η
i~N(0,Ω)の変量効果であり、共分散行列Ω、βは共分散効果を示し、c
iは個々の共変量値、およびφ
popは、集団における典型的な(平均的な)個人のパラメータを示す。基本的な数学モデルで利用される個人モデルパラメータθ
iは、推定された個人モデルパラメータφ
iおよび既知のパラメータを含み、ε
iは、異なる誤差モデルが考慮できる残差誤差である。従って、個人モデルパラメータφ
iは、ランダム変数として扱われて、単独で、正規に分布すると想定される。他の分布は、変換φ=h(ψ)、例えば、対数正規分布モデルパラメータψに対するh(x)=log(x)によって実現できる。集団パラメータρ=(φ
pop,Ω,β)は、確率を記述する、所謂、観測された尤度
【数4】
(同等に、対数尤度)を最大化することによって推定されて、ρに関して、観測された測定w
1,...,w
Nを得る、すなわち、ρは、モデルが観測された測定を最も予測する可能性が高くなるように選択される。観測された尤度は、条件付き確率密度関数
【数5】
および周辺確率密度関数
【数6】
に依存する。
【0033】
数学モデル
数学モデルは、NLMEモデリングアプローチの適用と一緒にその集団パラメータρによって患者の所与の集団を記述する基本的な数学モデルである。かかる数学モデルは従って、完全に開発された数学モデルとしても時々示される。
【0034】
経験的ベイズ推定
最大事後推定としても知られる経験的ベイズ推定[Bassett、Deride 2019]は、集団パラメータρをもつ集団に属している個人iに対して時点t
iにおいて観測される測定w
iを予測する可能性が最も高い推定された個人モデルパラメータφ
iを計算する。数学的に、条件付き確率密度関数
【数7】
が最大限にされるか、または同等に、対数尤度のマイナス2乗が最小限にされる、すなわち、
【数8】
【0035】
最適制御問題
最適制御問題は、数学モデル(例えば、患者の病状)の1つの状態変数またはいくつかの状態変数の組合せが望ましい疾患進行に可能な限り近接して達するように、制御(すなわち、1つまたはいくつかの薬物の投与量)を計算するために解決される。これは、特定の制御から生じる病状と望ましい疾患進行との間の差を特性化するコスト汎関数を最小限にすることによって達成される。最適制御問題は、論文:「Bachmann F,Koch G,Pfister M,Szinnai G,Schropp J(2021)OptiDose:Computing the Individualized Optimal Drug Dosing Regimen Using Optimal Control.Journal of Optimization Theory and Applications 189:46-6」において開示されているOptiDoseアルゴリズムなどの最適制御アルゴリズムで解決でき、その論文は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。詳細には、最適化は、(i)初期制御から始まり、(ii)数学モデルを解決して病状を取得し、(iii)随伴方程式を解いて(病状とコスト汎関数を関連付ける)、(iv)コスト汎関数の勾配を利用する制御を更新する、反復手順である。ステップ(iii)~(iv)が各反復内で繰り返される。
【0036】
本発明に従った方法の好ましい実施形態によれば、本方法は、
(d)少なくとも1つの臨床制約を吸収するために最適な個人投与計画を調整して前記少なくとも1つの臨床制約を条件とした最適な個人投与計画をもたらすこと
を行うステップをさらに含む。
【0037】
さらに、本方法の一実施形態によれば、数学モデルは、望ましくはファーマコメトリック(pharmacometric)、薬物動態/薬力学(PKPD)モデルであるか、またはそれを含む。
【0038】
さらに、本方法の一実施形態によれば、望ましい疾患進行は、数学関数の形で与えられる。
【0039】
さらに、本方法の一実施形態によれば、ステップ(b)~(c)、詳細には(b)~(d)が、患者の複数のx回の後続来診の各来診で実施されて、x>1に対して、ステップ(b)における患者データは、以前のx-1の来診(複数可)の全ての患者データを含み、ステップ(b)における経験的ベイズ推定は、現在の来診までに患者に対して実際に投与された前記少なくとも1つの薬物の全ての投与量をさらに使用する。
【0040】
さらに、本方法の一実施形態によれば、ステップ(b)~(c)、詳細には(b)~(d)を実行するアルゴリズムの少なくとも一部は、人工ニューラルネットワーク(ANN)によって近似される。
【0041】
人工ニューラルネットワーク(ANN)は、ユニバーサル近似器(universal approximator)であり、それ故に、利用可能な訓練データ量およびANNの構造に応じて、任意の入力/出力関係を一定の精度まで近似できる。従って、ANNは、任意のアルゴリズムも一定の精度まで近似できる、すなわち、それは、アルゴリズムの機能を学習して、最終的にそのアルゴリズムを模倣できる。訓練されたANNの利点は、それは、学習された入力/出力関係を標準的なコンピュータ上で瞬時に計算でき、それ故に、計算的に時間のかかるアルゴリズムを置換できることである。
【0042】
詳細には、好ましい実施形態によれば、ステップ(a)~(c)、および任意選択でステップ(d)は、ANNによって近似される。
【0043】
詳細には、これに対して、一実施形態では、ANNによって置換/近似すべき本方法のアルゴリズム/ステップのそれぞれの部分での複数のシミュレーションが実施され、これらのシミュレーションは次いで、ANNに対する訓練データとして使用されて、結果として生じた訓練されたANNが代わりに、反復アルゴリズム内に含まれる(または本方法において使用される)。従って、アルゴリズムのいくつかの部分の計算コストは、ANNを前もって訓練することによってアルゴリズム開発にアウトソーシングできる。これは、日々の臨床適用に対する計算コストを大幅に減少できる。
【0044】
さらに、本方法の一実施形態によれば、疾患は:後天性甲状腺機能低下症(自己免疫型および非自己免疫型)、後天性甲状腺機能亢進症(自己免疫型および非自己免疫型)、先天性甲状腺機能低下症、先天性甲状腺機能亢進症の1つである。
【0045】
さらに、本方法の一実施形態によれば、薬物は、任意の型の甲状腺機能低下症の治療のためのレボチロキシン(C15H11I4NO4、CAS番号51-48-9)、任意の型の甲状腺機能亢進症の治療のための、カルビマゾール(C7H10N2O2S、CAS番号22232-54-8)、メチマゾール(C4H6N2S、CAS番号60-56-0)、プロピルチオウラシル(C7H10N2OS、CAS番号51-52-5)から成る群から選択される。
【0046】
さらに、本方法の一実施形態によれば、前記患者データの少なくとも一部は、患者によって装着されたウェアラブルデバイスによって測定される。
【0047】
ウェアラブルデバイスは:腕時計、詳細にはスマートウォッチ、携帯電話、詳細にはスマートフォンの1つである。詳細には、スマートフォンは、コンピュータプログラムを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサおよび情報を表示するためのディスプレイを含み、ディスプレイは、ユーザーインタフェースの部分を形成するタッチスクリーンにできる。同様に、スマートウォッチは特に、コンピュータプログラムを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサおよび情報を表示するためのディスプレイを含み、ディスプレイは、ウォッチのユーザーインタフェースの部分を形成するタッチスクリーンにできる。
【0048】
さらに、本発明に従った方法の一実施形態によれば、前記患者データは、患者の心拍数などのバイタルサインを含み、患者のバイタルサイン(例えば、心拍数)は、ウェアラブルデバイスで測定される。ウェアラブルデバイスによって測定できる他のバイタルサイン/生理学的データは:血圧(mmHg)、体温(℃)、呼吸数(回数/分)、酸素飽和度および歩数(1日あたりのカウント)の少なくとも1つである。
【0049】
本発明のさらに別の態様は、既知の疾患を患っている患者に対する少なくとも1つの薬物の最適な個人投与計画(任意選択で少なくとも1つの臨床制約を受けている最適な個人投与計画)を自動的に決定するためのシステムに関し、本システムは、本発明に従った方法のステップを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0050】
本システムの一実施形態によれば、本システムは、前記患者データの少なくとも一部を測定するように構成されたウェアラブルデバイスをさらに含む。詳細には、ウェアラブルデバイスは、患者の生理学的データを測定するように構成できる。一実施形態では、ウェアラブルデバイスは心拍数を測定するように構成できる。
【0051】
命令を含むコンピュータプログラムであって、命令は、コンピュータまたは本発明に従ったシステム上で実行される場合に、コンピュータ(またはシステム)に、本発明に従った方法のステップを実行させる。詳細には、本システムまたはコンピュータは、患者データ、詳細には、ウェアラブルデバイスによって測定される心拍数(または本明細書で説明される別のバイタルサイン)を、特に、本明細書で説明されるように本発明に従った方法で前記患者データを使用するために、受信するようにされる。
【0052】
本発明のさらなる態様は、本発明に従ったコンピュータプログラムがその上に格納されているコンピュータ可読持続性記憶媒体に関する。
【0053】
その上、本発明のさらに別の態様は、本発明に従ったコンピュータプログラムを搬送するデータ搬送波信号に関する。
【発明の効果】
【0054】
以下で、本発明の更なる特徴および利点ならびに本発明の実施形態が、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1A】本発明の一実施形態に従った全ての構成要素の概要および全ての構成要素間の関係を表示する。(1)~(4)は、本発明に従った方法/アルゴリズムの一実施形態の4つの構成要素である。(A)~(G)は、構成要素(1)~(4)とやり取りする追加の構成要素である。
【
図1B】本発明に従った方法の一実施形態のステップを概略的に示す。
【
図2】本発明に従った方法/アルゴリズムの一実施形態によって実行される来診数にわたる反復手順を概略的に示しており、xは現在の来診を示す。
【
図3】4つの甲状腺疾患状況の図式的概観を本発明の適用の一例として示す。甲状腺ホルモン(遊離チロキシン(FT4))の正常範囲が、水平方向の網掛け領域S1によってマークされており、4つ全部の甲状腺疾患におけるFT4値の正常化のための望ましい時間間隔が、別の網掛け領域によって強調表示されている。先天性の甲状腺機能亢進症および甲状腺機能低下症では、FT4は、脳の発達を保護するために、可能な限り迅速に、理想的には2週間以内に、正常参照範囲の上限内にすべきである。後天性の甲状腺機能亢進症および甲状腺機能低下症では、FT4値は、治療の副作用を回避するためにあまりに急速に増加または減少すべきでなく、理想的には正常参照範囲は、4~6週間以内に達成される。望ましいFT4の増加または減少は、各グラフにおいて破線L1によって示される。過剰または過少量投与は、正常範囲(水平方向の網掛け領域S1)の上および下に実線L2によって示されている。先天性および後天性の甲状腺機能低下症に対する薬物はレボチロキシンであり、先天性および後天性の甲状腺機能亢進症に対する薬物は、カルビマゾール、メチマゾールまたはプロピルチオウラシルである。a)先天性甲状腺機能低下症、b)先天性甲状腺機能亢進症、実線L3は、生後4日と10日との間の甲状腺機能亢進症の最も多い遅延ピークを示す、c)後天性甲状腺機能低下症、d)後天性甲状腺機能亢進症。中断された時間軸は、甲状腺機能亢進症および甲状腺機能低下症の初期矯正期間ならびに治療の長期間にわたる維持期間を示す。
【
図4】本発明に従った方法/コンピュータプログラムによって計算された最適な個人投与計画の一例を示す。
【
図5】後天性甲状腺機能亢進症に関する本発明の一例に従った反復手順を示す。
【
図6】本発明によって達成された改善(右側)を、ここで標準的な投与量計算(左側)と比較したFT4反応に関して、示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明に従った方法/アルゴリズムの一実施形態の構成要素
アルゴリズムは詳細には、4つの構成要素(
図1A;(1)~(4))およびそれらのやり取りから成る。加えて、構成要素(1)~(4)とやり取りする全ての追加の構成要素が
図1A;(A)~(G)に示されている。4つ全部の構成要素の説明およびそれらの入力/出力関係が以下および
図1Aに提示されている。
【0057】
数学モデルの適用(
図1A;(1))
数学モデルの開発は、2つの異なる方法で実行できる。第1に、数学モデルが既に利用可能である。次いで、この数学モデルは、我々のアルゴリズム内で適用でき、このパラグラフ内のステップがスキップされる。第2に、かかる数学モデルが利用可能ではなく、それ故に、以下のとおりに開発される必要がある:
入力:
1)基本的な数学モデル
2)非線形混合効果モデリングアプローチ
3)集団からの遡及的患者データ
出力:
1)数学モデル
【0058】
経験的ベイズ推定法の適用(
図1A;(2))
経験的ベイズ推定法は、新しい患者に対する個人モデルパラメータを数学モデルおよびそれらの個々の患者データに基づいて推定する。
入力:
1)数学モデル
2)新しい患者のデータ
出力:
1)新しい患者の個人モデルパラメータ
【0059】
最適制御アルゴリズムの適用(
図1A;(3))
最適制御問題は、詳細には、個々の患者に対する最適な投与計画を計算するOptiDoseアルゴリズムで解決される。
入力:
1)数学モデル
2)新しい患者の個人モデルパラメータ
3)数学関数によって提供される望ましい疾患進行
4)投与計画
出力:
1)最適な個人投与計画
【0060】
任意選択で、特に必要な場合:臨床制約を条件とした最適な個人投与計画の調整(
図1A;(4))
事後ステップで、臨床適用における制約、例えば、利用可能な錠剤サイズに起因した制限、を吸収するために、最適な個人投与計画が調整される。
入力:
1)数学モデル
2)新しい患者の個人モデルパラメータ
3)数学関数によって提供される望ましい疾患進行
4)臨床制約
5)最適な個人投与計画
出力:
1)臨床適用における制約を受ける最適な個人投与計画
【0061】
詳細には、本発明は、数学モデル、経験的ベイズ推定法、最適制御アルゴリズムおよび任意選択で臨床適用における制約の包含を、前記制約を受ける患者に対する最適な個人投与計画を計算するために、組み合わせる。
【0062】
本発明に従った方法/アルゴリズムは、来診数にわたる反復手順である(
図2)。全ての来診において、任意選択で臨床制約を条件とした、最適な個人投与計画が、アルゴリズムの反復を1回実行することによって計算される。この最適な個人投与計画は、次の来診予定まで有効である。
【0063】
来診時におけるアルゴリズムの1回の反復の実行
ステップ1)「個人モデルパラメータの推定」:現在および過去の来診時の利用可能な患者データ、および現在の来診までの投与量に基づき(
図1A;(A)~(D))、患者の個人モデルパラメータφ
i(
図1A;(E))が、数学モデルを利用する経験的ベイズ推定法で推定される(
図1A;(1)~(2))。
ステップ2)「最適な個人投与計画」:次の来診予定までの期間に対する最適な個人投与計画(
図1A;(1)、(3)、(F)、(G))を計算するために推定された個人モデルパラメータ(
図1A;(E))が適用される。
ステップ3)(任意選択)「臨床制約を条件とした最適な個人投与計画」:臨床適用における制約を吸収するために(
図1A;(4)、(E)、(F)、(G))最適な個人投与計画(
図1A;(3))が調整される。
【0064】
これらのステップは、全ての来診において反復して繰り返される。この反復プロセスにおける最初の来診時には、この来診時の情報だけが適用される。
【0065】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の個々の態様(詳細には、本発明に従った方法、システム、およびコンピュータプログラム)は、小児および成人における甲状腺疾患に適用される。
【0066】
既に上で示したように、甲状腺ホルモンは、正常な脳の発達、成長および思春期にとって極めて重要である。しかし、稀な甲状腺疾患の先天性甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモン生成がないか、または低すぎる)および小児期発症グレーブス病(甲状腺ホルモン生成が高過ぎる)の治療は難しい。第1に、臨床経験に基づいて注意深く選択された開始投与量が必要である。第2に、甲状腺ホルモンの生理学的バランスに達した後に、年齢、体重および疾患重症度に応じた個人の投与量の継続的な調整が甲状腺機能正常を維持するために要求される。神経学的転帰不良のリスクを軽減するために、甲状腺機能亢進症または甲状腺機能低下症をもつ新生児、乳児および小児における特定の必要性を吸収するために継続的に微調整される最適な、個人投薬戦略を確立することが重要である。
【0067】
詳細には、本発明の一実施形態では、最適な投与計画を決定すべき疾患は、序論で定式化された現在の医学的問題に対して解決策を提供する次の4つの甲状腺疾患の1つである。
【0068】
一実施形態によれば、前述のとおり、最適な個人投与計画をわずかな時間内に、詳細には、数秒以内に計算するために、人工ニューラルネットワーク(ANN)が本アプローチに含まれ得る。言い換えれば、ANNは、本発明に従った方法、システムおよび/またはコンピュータプログラム/アルゴリズムを加速するために使用できるが、しかし、本発明にとって必要不可欠ではない(例えば、
図1;(1)、(3)、(F)、(G)および本発明に従った方法の特にステップc)を参照)。
【0069】
一例として、所与の数学モデルによって特性化された所与の疾患を考える。次いで、各患者が自身の個人モデルパラメータによって表される、十分な数の患者が、所与の数学モデルからサンプリングされて、前記疾患をもつ患者集団全体を特性化できる。この集団の全ての個々の患者に対して、最適な投与量が計算できる。次いでANNが個人モデルパラメータを入力として、最適な投与量を出力として用いて訓練される。従って、訓練されたANNは、所与の個人モデルパラメータに対して最適な投与量を計算する。この訓練されたANNは、それぞれ、ステップ2)「最適な個人投与計画」:(
図1A;(1)、(3)、(F)、(G))および請求項1(c)を置き換えることができる。
【0070】
一例として、パラメータ化θ=(R
0,k
in,E
max,EC
50)において、基本的な数学モデルとして間接反応モデル
【数9】
を考え、式中、dは投与量である。この基本的な数学モデルは、集団からの遡及的患者データに基づいて非線形混合効果モデリングアプローチにおいて適用される。パラメータ化θにおける全てのモデルパラメータが対数正規分布に従うとすれば、我々は集団パラメータρを得る。
【0071】
十分な数n
sufの個々の患者が集団パラメータρからサンプリングされて、より多くの次元空間を全ての種類の個人パラメータの組合せでカバーする。例として、次の表を考える:
【表1】
【0072】
全てのこれらの個人パラメータに対して、任意選択で、決定された投与計画に従って少なくとも1つの臨床制約(ステップ3または請求項1d)を吸収する、最適な個人投与計画(ステップ2または請求項1c)が計算され、セクション「最適制御問題」を対照する。この例では、後続の6回の時間単位に対する6つの投与量d=(D1,...,D6)が計算されて、次のデータセットが取得され、次の表を対照する:
【表2】
【0073】
この構築されたデータセットは、ANNを開発するための訓練、検証およびテストデータセットに分割される。ANNの入力は、個人モデルパラメータ(R
0,k
in,E
max,EC
50)であり、ANNの出力は、最適な個人投与計画からの最適な投与量d=(D1,...,D6)である。従って、この訓練されたANNは、それぞれ、ステップ2)「最適な個人投与計画」:(
図1A;(1)、(3)、(F)、(G))および請求項1(c)を置き換えることができる。
【0074】
新しい個々の測定をもつ新しい患者に対して、ANNに対する入力として機能する新しい推定された個人モデルパラメータφ
iを計算するために、経験的ベイズ推定が適用される。ANNは次いで、最適な個人投与計画を計算するために適用される。従って、ステップ2)「最適な個人投与計画」:(
図1A;(1)、(3)、(F)、(G))および請求項1(c)がそれぞれ、ANNによって置き換えられる。
【0075】
先天性甲状腺機能低下症をもつ患者:先天性甲状腺機能低下症に対して、人工的に製造されたT4ホルモン(異なる製薬会社によって異なる生薬形態(例えば、錠剤、点滴剤)で製造される、例えば、レボチロキシン)が、補充療法として投与されて、甲状腺ホルモン(T3、FT3、T4、FT4、TSH)を正常参照範囲に正常化する。主クレームからの包括的概念が、出生時からの小児患者に対して、この疾患分野に適用される。レボチロキシン補充療法を用いた先天性甲状腺機能低下症に対する数学モデルが、2021年に我々によって公表された[Koch 2021]。
【0076】
後天性甲状腺機能低下症をもつ患者:先天性甲状腺機能低下症と同様に、小児、妊婦および成人における後天性甲状腺機能低下症は、同じアプローチを利用してモデル化できる。
【0077】
後天性甲状腺機能亢進症をもつ患者:後天性甲状腺機能亢進症に対して、小児および成人患者では、甲状腺ホルモン(T3、FT3、T4、FT4、TSH)を正常参照範囲に正常化するために、2つの異なる治療法が臨床診療において適用される:
1)甲状腺ホルモンの過剰生成を抑制するための抗甲状腺薬(例えば、カルビマゾール)だけの投与
2)甲状腺機能を抑制するための抗甲状腺薬(例えば、カルビマゾール)、およびT4ホルモンを増加させるための補充療法としてのレボチロキシンの同時投与。
【0078】
今までのところ、同時のレボチロキシンの有無にかかわらず、カルビマゾールの投薬は、甲状腺ホルモンT3、FT3、T4、FT4、およびTSHの臨床検査に基づく。新しいアプローチは、患者の心拍数、高すぎるレベルの甲状腺ホルモンに対してうまく確立された非常に高感度の臨床的兆候、の使用であろう。甲状腺機能亢進症と診断された患者は常に高すぎる心拍数値を有しており、それは、甲状腺ホルモンレベルがカルビマゾール治療を受けて正常範囲に戻る場合、数週間にわたって正常化するだけである。心拍数は、ウェアラブルデバイスを利用して監視される。これは、診察および血液検査を必要とすることなく、安静時の心拍数に基づき、医師の忠告および薬物投与を遠隔で提供する(遠隔医療)ことを目標として、FT4と心拍数との間の関係を確立するのを可能にする。このアプローチは、特に、遠隔地および臨床検査がどこでも利用可能というわけではない低および中所得の国々において重要であろう。
【0079】
先天性甲状腺機能亢進症をもつ患者:後天性甲状腺機能亢進症と同様に、小児における先天性甲状腺機能亢進症は、同じアプローチによってモデル化できる。
【0080】
先天性甲状腺機能低下症に対する数学モデルの例
レボチロキシン治療に対する数学モデルおよび結果として生じるFT4濃度が提示される[Koch 2021]。補充療法に起因して、このモデルは純粋なPKモデルと考えることができる。吸収コンパートメントを備えた1コンパートメントモデルおよび追加の体内生成項が開発された:
【数10】
式中、C
FT4は、レボチロキシン治療に起因するFT4濃度であり、Wは体重(時変共変量)およびW
Refは参照体重(通常は基礎となる患者集団における体重の平均)である。用量投与を記述する入力関数はIn
T4であり、ここで
【数11】
はk番目の投与時点であり、
【数12】
はレボチロキシンのk番目の投与であり、F
T4は、例えば、レボチロキシンの生物学的利用率を記述する、乗法因子である。吸収コンパートメント
【数13】
は、例えば、経口投与を特性化し、コンパートメントT4はホルモンチロキシンを特性化する。吸収速度は、
【数14】
であり、体内生成速度は
【数15】
であり、排出速度は
【数16】
である。パラメータ
【数17】
は、体重を分配量V
T4と関連付ける因子でありβ
Wは形状パラメータである。全てのモデルパラメータを組み合わせるベクトルは、
【数18】
を示す。
【0081】
推定された個人モデルパラメータ
【数19】
は対数正規分布した。
【0082】
後天性甲状腺機能亢進症に対する数学モデルの例
カルビマゾール治療に対する数学モデル、追加のblock and replace(レボチロキシンとの組合せ)療法、および結果として生じる遊離チロキシン(FT4)濃度が提示される。構造的に、これはPKPDモデルと考えることができ、この場合PKは、カルビマゾール治療から生じたメチマゾール(代謝されたカルビマゾール)濃度であり、PDはFT4バイオマーカーである。開発されたモデルは、カルビマゾール単剤療法およびblock and replace療法の両方に適用できる。
【0083】
カルビマゾールは、プロドラッグであり、分配、代謝などの、PKのいくつかの特性が分かっている。詳細なカルビマゾールPKモデルが提示される。
【数20】
を時点
【数21】
におけるカルビマゾールの投与量とする。カルビマゾール吸収は
【数22】
によって特性化されて、式中、
【数23】
は吸収速度であり、In
Cは、カルビマゾールの投薬入力関数である。
【0084】
中央コンパートメント内のカルビマゾールの量A
Cは、
【数24】
によって記述されて、式中、k
tは代謝遷移速度(metabolism transit rate)である。中央コンパートメント内のメチマゾールの量A
Mは、
【数25】
によって与えられて、式中、f
Mは、代謝変換係数であり、
【数26】
は排出速度であり、k
12およびk
21は末梢コンパートメントPに対する分配速度である。メチマゾールの濃度は
【数27】
によって得られ、式中、W(t)は経時的な体重であり、
【数28】
は、体重をメチマゾールの分配量V
Mと線形に関連付ける乗法因子である。
【0085】
メチマゾール濃度C
M(t)による体内T4生成速度への抑制性カルビマゾール治療効果は、阻害作用項
【数29】
を利用して含まれて、式中、I
max≦1は最大阻害薬作用であり、IC
50は半分の最大阻害作用を引き起こすメチマゾール濃度である。加えて、In
T4は投薬入力関数であり、
【数30】
は時点
【数31】
におけるレボチロキシンの投与量であり、F
T4≦1はレボチロキシンの生物学的利用率で、
【数32】
はそれぞれの吸収速度である。パラメータ
【数33】
は、体重を分配量V
T4と関連付ける因子であり、β
Wは形状パラメータである。C
FT4は、カルビマゾール単剤療法(In
T4=0)またはblock and replace療法に起因するFT4濃度である。全てのモデルパラメータを組み合わせるベクトルは
【数34】
を示す。
【0086】
推定された個人モデルパラメータ
【数35】
は、対数正規分布した。ベースライン時における共変量年齢(AGE:時不変連続)およびベースライン時における疾患重症度(カテゴリ)は、個々の体内T4生成速度
【数36】
に影響を及ぼす:
【数37】
(for severe disease:重症向け、for moderate disease:中等症向け、for mild disease:軽症向け)
【0087】
連続的かつ時間依存の体重W(t)は、体重測定を利用して、または体重測定間の補間をもつ時変共変量として、推定できる追加のモデルパラメータに応じて、例えば、数学関数によって与えられる体重増加モデル、例えば、新生児および乳児に対するLeffler関数によって、モデル化できる。
【0088】
最後に、
図4は、本発明に従った方法/コンピュータプログラムによって計算された最適な個人投与計画の図式例を示す。
【0089】
望ましい疾患進行(左側パネル、実線曲線B1)および結果として生じたバイオマーカー濃度(左側パネル、実線曲線B2)が計算された最適な個人投与計画(右側パネル、クロス)に対して示されている。実線C1は、最適な個人投与計画に起因する対応する薬物濃度である。
【0090】
本発明の以下の更なる態様およびその実施形態では、項目として述べられる。これらの項目はしかし、本出願の請求項としても明確に説明され得る。
【0091】
項目1:既知の疾患を患っている患者に対する少なくとも1つの薬物の最適な個人投与計画を決定するための方法であって、本方法は、
(a)前記疾患の疾患進行および少なくとも1つの薬物の疾患の進行への作用をモデル化するように適合された数学モデルを提供することであって、モデルは、患者と関連付けられた個人モデルパラメータを含むこと、
(b)患者データを利用する数学モデルの個人モデルパラメータを推定するために経験的ベイズ推定を利用すること、
(c)最適制御問題を、望ましい疾患進行、推定された個人モデルパラメータ、および投与計画に対する初期推測に基づいて解決することにより、数学モデルに対する最適な個人投与計画を計算すること、
を行うステップを含む。
【0092】
項目2:項目1に従った方法であって、本方法は、
(d)少なくとも1つの臨床制約を吸収するために最適な個人投与計画を調整して前記少なくとも1つの臨床制約を条件とした最適な個人投与計画をもたらすこと
を行うステップをさらに含む。
【0093】
項目3:項目1または2に従った方法であって、数学モデルは薬物動態/薬力学(PKPD)モデルである。
【0094】
項目4:先行する項目の1つに従った方法であって、望ましい疾患進行は数学関数の形で与えられる。
【0095】
項目5:先行する項目の1つに従った方法であって、ステップ(b)~(c)、詳細には、ステップ(b)~(d)は、患者の複数のx回の後続来診の各来診で実施されて、x>1に対して、ステップb)における患者データは、以前のx-1の来診(複数可)の全ての患者データを含み、ステップb)における経験的ベイズ推定は、現在の来診までに患者に対して実際に投与された前記少なくとも1つの薬物の全ての投与量をさらに使用する。
【0096】
項目6:先行する項目の1つに従った方法であって、ステップ(b)~(c)、詳細にはステップ(b)~(d)を実行するアルゴリズムの少なくとも一部が、人工ニューラルネットワーク(ANN)によって近似される。
【0097】
項目7:先行する項目の1つに従った方法であって、疾患は:後天性甲状腺機能低下症、詳細には、自己免疫型および/または非自己免疫型;後天性甲状腺機能亢進症、詳細には、自己免疫型および/または非自己免疫型;先天性甲状腺機能低下症、先天性甲状腺機能亢進症の1つである。
【0098】
項目8:先行する項目の1つに従った方法であって、薬物は、レボチロキシン、カルビマゾール、プロピルチオウラシルから成る群から選択される。
【0099】
項目9:先行する項目の1つに従った方法であって、前記患者データの少なくとも一部は、患者によって装着されたウェアラブルデバイスによって測定される。
【0100】
項目10:項目9に従った方法であって、ウェアラブルデバイスは、腕時計、詳細にはスマートウォッチ、携帯電話、詳細にはスマートフォンの1つである。
【0101】
項目11:項目9または10に従った方法であって、前記患者データは心拍数を含み、患者の心拍数はウェアラブルデバイスで測定される。
【0102】
項目12:既知の疾患を患っている患者に対する少なくとも1つの薬物の最適な個人投与計画を決定するためのシステムであって、本システムは、先行する項目の1つに従った方法のステップを実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0103】
項目13:項目12に従ったシステムであって、本システムは、前記患者データの少なくとも一部を測定するように構成されたウェアラブルデバイスをさらに含む。
【0104】
項目14:命令を含むコンピュータプログラムであって、命令は、項目12または13に従ったシステム上で実行される場合に、システムに、項目1~11の1つに従った方法を実行させる。
【0105】
項目15:項目14に従ったコンピュータプログラムがその上に格納されているコンピュータ可読持続性記憶媒体。
【0106】
項目16:項目14のコンピュータプログラムを搬送するデータ搬送波信号。
【0107】
参考文献
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【国際調査報告】