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特表2024-538317廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置
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  • 特表-廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 65/16 20060101AFI20241010BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20241010BHJP
   C10G 25/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C10G65/16
C10G45/02
C10G25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525892
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 KR2022016863
(87)【国際公開番号】W WO2023075559
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0148136
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム オクユン
(72)【発明者】
【氏名】キム カユン
(72)【発明者】
【氏名】パク ユンム
(72)【発明者】
【氏名】イ ホウォン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA22
4H129DA15
4H129KB03
4H129KC03Y
4H129KD15Y
4H129KD22Y
4H129KD24Y
4H129MA02
4H129MA07
4H129MA08
4H129MA11
4H129MB14A
4H129NA01
4H129NA04
4H129NA22
4H129NA23
(57)【要約】
本開示は、廃プラスチック熱分解油を軽質油と重質油に分離する分離部と、前記分離部から流入した軽質油を、水素化処理触媒下で、300℃超400℃未満の温度で水素化処理反応する第1反応器と、前記第1反応器から流入した反応生成物から塩化水素を除去するセパレータと、前記分離部から流入した重質油を50℃超300℃未満の温度で不純物を除去する第2反応器とを含む廃プラスチック熱分解油の精製装置に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック熱分解油を軽質油と重質油に分離する分離部と、
前記分離部から流入した軽質油を、水素化処理触媒下で、300℃超400℃未満の温度で水素化処理する第1反応器と、
前記第1反応器から流入した反応生成物から塩化水素を除去するセパレータと、
前記分離部から流入した重質油を50℃超300℃未満の温度で不純物を除去する第2反応器とを含む、廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項2】
前記分離部の軽質油の沸点は180℃未満であり、重質油の沸点は180℃超である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項3】
前記分離部の軽質油は、塩素(Cl)を800ppm以上3300ppm以下、窒素(N)を200ppm以上1100ppm以下含み、重質油は、塩素(Cl)を200ppm以上500ppm以下、窒素(N)を1200ppm以上1700ppm以下含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項4】
前記第1反応器の反応圧力は100bar以下である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項5】
前記セパレータは、水素ガス流入部をさらに含み、水素ガス流入部から流入した水素ガスにより、前記第1反応器から流入した反応生成物から塩化水素が除去される、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項6】
前記第2反応器は、前記分離部から流入した重質油を水素化処理触媒下で脱塩素化反応を行う第1反応領域と、第1反応領域から流入した前記反応生成物を吸着剤の存在下で残留塩素成分を除去する第2反応領域とを含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項7】
前記第2反応器は、前記分離部から流入した重質油を、固体酸触媒下で、不活性雰囲気で不純物の除去反応を行う、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項8】
前記第2反応器は、窒素雰囲気、30bar以下の圧力で反応を行う、請求項7に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項9】
前記セパレータから塩化水素が除去された第1留分が流入し、前記第1留分を触媒改質する改質部をさらに含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項10】
前記第2反応器から不純物が除去された第2留分が流入し、前記第2留分を互いに異なる沸点を有する2以上の留分に分離精製する分別蒸留部をさらに含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項11】
廃プラスチック熱分解油を軽質油と重質油に分離するステップと、
(a-1)前記軽質油を、水素化処理触媒下で、300℃超400℃未満の温度で水素化処理するステップと、
(a-2)前記水素化処理された軽質油を水素ガスと混合して塩化水素を除去するステップと、
(b-1)前記重質油を50℃超300℃未満の温度で不純物を除去するステップとを含む、廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項12】
前記軽質油の沸点は180℃未満であり、重質油の沸点は180℃超である、請求項11に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項13】
前記軽質油は、塩素(Cl)を800ppm以上3300ppm以下、窒素(N)を200ppm以上1100ppm以下含み、重質油は、塩素(Cl)を200ppm以上500ppm以下、窒素(N)を1200ppm以上1700ppm以下含む、請求項11に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項14】
前記(a-1)水素化処理するステップは、100bar以下の反応圧力で行われる、請求項11に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項15】
前記(b-1)不純物を除去するステップは、前記重質油を水素化処理触媒下で脱塩素化反応を行った後、吸着剤の存在下で残留塩素成分を除去する、請求項11に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項16】
前記(b-1)不純物を除去するステップは、前記重質油を固体酸触媒下で、窒素雰囲気、30bar以下の圧力で反応を行う、請求項11に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項17】
前記(a-2)の塩化水素を追加除去するステップの後、(a-3)触媒改質するステップをさらに含む、請求項11に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項18】
前記(b-1)の不純物を除去するステップの後、(b-2)互いに異なる沸点を有する2以上の留分に分離精製するステップをさらに含む、請求項11に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックは、石油を原料として製造されたものであり、リサイクル率が低く、ほとんどがゴミとして廃棄処分されている。このような廃棄物は、自然状態で分解されるのに長い時間がかかるため、土壌を汚染し、深刻な環境汚染を引き起こしている状況である。廃プラスチックをリサイクルするための方法として、廃プラスチックを熱分解し、使用可能なオイルに転換することができ、これを廃プラスチック熱分解油としている。
【0003】
しかし、廃プラスチックを熱分解して得られた熱分解油は、一般的な方法で原油から製造されるオイルに比べて、塩素、窒素、金属などの不純物の含有量が高いため、揮発油、ディーゼル油などの高付加価値の石油化学製品としてすぐ使用することができず、精製工程を経なければならない。
【0004】
例えば、廃プラスチック熱分解油に含有された塩素、窒素、金属などの不純物を除去するための精製方法として、水素化処理触媒下で、廃プラスチック熱分解油と水素を反応させて、脱塩素化/脱窒素化する方法または塩素吸着剤を用いて、廃プラスチック熱分解油に含有された塩素を吸着除去する方法などが知られている。
【0005】
廃プラスチック熱分解油は、様々な沸点および様々な分子量分布を有する炭化水素オイルの混合物であり、前記沸点および分子量分布の特性に応じて熱分解油内の不純物の組成や反応活性が変化する。
【0006】
そのため、廃プラスチック熱分解油の全体フィード(whole feed)を対象に精製工程を行う場合、様々な工程的問題を引き起こす。具体的には、廃プラスチック熱分解油内の不純物の含有量が高くて、過剰な運転条件(高温、高圧)で過剰な水素化処理を行うことになり、これによってアンモニウム塩(NHCl)の生成が活性化する。反応器の内部に生成されるアンモニウム塩(NHCl)は、反応器の腐食を引き起こして耐久性を減少させるだけでなく、差圧の発生、工程効率の低下などの問題を引き起こす。
【0007】
従来、原油のフィード(feed)を沸点別に分離した後、精製する技術が行われているが、廃プラスチック熱分解油と原油は、その成分および組成比が相違するため、これを廃プラスチック熱分解油の精製にそのまま適用する場合、不純物の除去効率が低下し、目的とする成分の含有量を満たす精製油を取得することができない問題がある。
【0008】
したがって、廃プラスチック熱分解油の精製工程において、廃プラスチック熱分解油を沸点別に分離した後、分離した留分の不純物の組成に応じてそれぞれ異なる精製工程を行うことにより、取得した精製油内の不純物の含有量を最小化し、アンモニウム塩(NHCl)の生成を抑制するか最小化して、工程安定性を確保する熱分解油の精製装置および精製方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許公開公報第111171865号(公開日:2020年05月19日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、精製工程中に、アンモニウム塩(NHCl)の生成を抑制するか、これを最小化することにより、工程安定性が向上した熱分解油の精製方法および精製装置を提供することを目的とする。
【0011】
本開示は、廃プラスチック熱分解油を沸点別に分離した後、分離した留分の不純物の組成に応じて異なる精製工程を行うことにより、取得した精製油内の不純物の含有量を最小化する廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法を提供することを他の目的とする。
【0012】
本開示は、廃プラスチック熱分解油を沸点別に分離した後、分離した留分の不純物の組成に応じて異なる精製工程を行うことにより、高付加価値の石油化学製品への転換時に、エネルギー効率が向上した廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、廃プラスチック熱分解油を軽質油と重質油に分離する分離部と、前記分離部から流入した軽質油を、水素化処理触媒下で、300℃超400℃未満の温度で水素化処理反応する第1反応器と、前記第1反応器から流入した反応生成物から塩化水素を除去するセパレータと、前記分離部から流入した重質油を50℃超300℃未満の温度で不純物を除去する第2反応器とを含む廃プラスチック熱分解油の精製装置を提供する。
【0014】
本開示の一例において、前記分離部の軽質油の沸点は180℃未満であり、重質油の沸点は180℃超であることができる。
【0015】
本開示の一例において、前記分離部の軽質油は、塩素(Cl)を800ppm以上3300ppm以下、窒素(N)を200ppm以上1100ppm以下含み、重質油は、塩素(Cl)を200ppm以上500ppm以下、窒素(N)を1200ppm以上1700ppm以下含むことができる。
【0016】
本開示の一例において、前記第1反応器の反応圧力は100bar以下であることができる。
【0017】
本開示の一例において、前記セパレータは、水素ガス流入部をさらに含み、水素ガス流入部から流入した水素ガスにより、前記第1反応器から流入した反応生成物から塩化水素が除去されることができる。
【0018】
本開示の一例において、前記第2反応器は、前記分離部から流入した重質油を水素化処理触媒下で脱塩素化反応を行う第1反応領域と、第1反応領域から流入した前記反応生成物を吸着剤の存在下で残留塩素成分を除去する第2反応領域とを含むことができる。
【0019】
本開示の一例において、前記第2反応器は、前記分離部から流入した重質油を、固体酸触媒下で、不活性雰囲気で不純物の除去反応を行うことができる。
【0020】
本開示の一例において、前記第2反応器は、窒素雰囲気、30bar以下の圧力で反応を行うことができる。
【0021】
本開示の一例において、前記セパレータから塩化水素が除去された第1留分が流入し、前記第1留分を触媒改質する改質部をさらに含むことができる。
【0022】
本開示の一例において、前記第2反応器から不純物が除去された第2留分が流入し、前記第2留分を互いに異なる沸点を有する2以上の留分に分離精製する分別蒸留部をさらに含むことができる。
【0023】
また、本開示は、廃プラスチック熱分解油を軽質油と重質油に分離するステップと、
(a-1)前記軽質油を、水素化処理触媒下で、300℃超400℃未満の温度で水素化処理するステップと、(a-2)前記水素化処理された軽質油を水素ガスと混合して塩化水素を除去するステップと、(b-1)前記重質油を50℃超300℃未満の温度で不純物を除去するステップとを含む廃プラスチック熱分解油の精製方法を提供する。
【0024】
本開示の一例において、前記軽質油の沸点は180℃未満であり、重質油の沸点は180℃超であることができる。
【0025】
本開示の一例において、前記軽質油は、塩素(Cl)を800ppm以上3300ppm以下、窒素(N)を200ppm以上1100ppm以下含み、重質油は、塩素(Cl)を200ppm以上500ppm以下、窒素(N)を1200ppm以上1700ppm以下含むことができる。
【0026】
本開示の一例において、前記(a-1)水素化処理するステップは、100bar以下の反応圧力で行われることができる。
【0027】
本開示の一例において、前記(b-1)不純物を除去するステップは、前記重質油を水素化処理触媒下で脱塩素化反応を行った後、吸着剤の存在下で残留塩素成分を除去することができる。
【0028】
本開示の一例において、前記(b-1)不純物を除去するステップは、前記重質油を固体酸触媒下で、窒素雰囲気、30bar以下の圧力で反応を行うことができる。
【0029】
本開示の一例において、前記(a-2)の塩化水素を追加除去するステップの後、(a-3)触媒改質するステップをさらに含むことができる。
【0030】
本開示の一例において、前記(b-1)の不純物を除去するステップの後、(b-2)互いに異なる沸点を有する2以上の留分に分離精製するステップをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0031】
本開示による熱分解油の精製装置および精製方法は、精製工程中に、アンモニウム塩(NHCl)の生成を抑制するか、これを最小化することにより、工程安定性が向上する効果がある。
【0032】
また、本開示による熱分解油の精製装置および精製方法は、廃プラスチック熱分解油を沸点別に分離した後、分離した留分の不純物の組成に応じて異なる精製工程を行うことにより、取得した精製油内の不純物の含有量を最小化し、高付加価値の石油化学製品への転換時に、エネルギー効率が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本開示によって廃プラスチック熱分解油を軽質油と重質油に分離した後、精製する工程を図式化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照して、本開示による廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置について詳細に説明する。
【0035】
本明細書に記載されている図面は、当業者に本開示の思想が十分に伝達されるようにするために、例として提供される。したがって、本開示は、提示される図面に限定されず、他の形態に具体化されてもよく、前記図面は、本発明の思想を明確にするために、誇張して図示されることがある。
【0036】
本明細書で使用されている技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付の図面において、本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0037】
本明細書で使用されている用語の単数形態は、特別な指示がない限り、複数形態も含むものと解釈することができる。
【0038】
本明細書で使用されている数値範囲は、下限値と上限値と、その範囲内でのすべての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、二重限定されたすべての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限のすべての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書において特別な定義がない限り、実験誤差または値の四捨五入によって発生する可能性がある数値範囲以外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0039】
本明細書で言及される「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であり、さらに列挙されていない要素、材料または工程を排除しない。
【0040】
本明細書で特別な言及なしに使用されている%の単位は、特に定義がない限り、重量%を意味する。
【0041】
本明細書で言及されるppmは、特別な定義がない限り、質量ppm(wppm)を意味する。
【0042】
本明細書で言及される沸点は、常圧での沸点(Bp、boiling point)を意味する。
【0043】
本明細書で言及される水素化処理触媒は、廃プラスチック熱分解油に水素が添加される水添反応が行われるようにする触媒であれば、公知の様々な種類のものが使用可能である。
【0044】
具体的には、水素化処理触媒は、水素化脱硫化触媒、水素化脱窒素化触媒、水素化脱塩素化触媒および水素化脱金属化触媒などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。このような触媒は、脱金属化反応が行われるとともに、上述の温度などの条件に応じて脱窒素化反応または脱塩素化反応が行われるようにする。より具体的には、前記水素化処理触媒能を有する活性金属を含むことができ、好ましくは、支持体に活性金属が担持されたものであり得る。前記活性金属は、要求触媒能を有するものであればよく、例えば、モリブデン、ニッケルなどから選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。前記支持体は、活性金属を担持することができる耐久性を有するものであればよく、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコン、ナトリウムおよびマンガンチタンなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む金属;前記金属の酸化物;カーボンブラック、活性炭素、グラフェン、カーボンナノチューブおよび黒鉛などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む炭素系素材;などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。具体的な一実施形態として、前記水素化処理触媒は、全重量に対して、ニッケル0.1~10重量%およびモリブデン0.1~30重量%を含む活性金属が担持された支持体である触媒であることができる。しかし、これは、具体的な一例として説明されたものであって、本発明がこれに制限して解釈されるものではない。
【0045】
廃プラスチックを熱分解して得られた熱分解油は、一般的な方法で原油から製造されるオイルに比べて、塩素、窒素、金属など不純物の含有量が高いことからガソリン、ディーゼル油などの高付加価値の石油化学製品としてすぐ使用されることができず、精製工程を経なければならない。
【0046】
しかし、廃プラスチック熱分解油の全体フィード(whole feed)を対象に精製工程を行う場合、様々な工程的問題を引き起こす。具体的には、廃プラスチック熱分解油内の不純物の含有量が高くて、過剰な運転条件(高温、高圧)で過剰な水素化処理を行うことになり、これによってアンモニウム塩(NHCl)の生成が活性化する。反応器の内部に生成されるアンモニウム塩(NHCl)は、反応器の腐食を引き起こして耐久性を減少させるだけでなく、差圧の発生、工程効率の低下などの問題を引き起こす。
【0047】
したがって、本開示は、廃プラスチック熱分解油を軽質油と重質油に分離する分離部と、前記分離部から流入した軽質油を、水素化処理触媒下で、300℃超400℃未満の温度で水素化処理反応する第1反応器と、前記第1反応器から流入した反応生成物から塩化水素を除去するセパレータと、前記分離部から流入した重質油を50℃超300℃未満の温度で不純物を除去する第2反応器とを含む廃プラスチック熱分解油の精製装置を提供する。
【0048】
前記分離部は、廃プラスチック熱分解油を軽質油と重質油に分離する分離部であり、常圧蒸留、減圧蒸留などの蒸留方法により沸点の特性に応じて分離することができ、必ずしもこれに制限されるものではなく、公知の蒸留方法により分離することができる。前記軽質油および重質油の沸点は、平均沸点であることができ、誤差範囲は、±10℃と検討することができる。
【0049】
前記廃プラスチック熱分解油は、H-Naphtha(~C8、bp<150℃):Kero(C9~C17、bp150~265℃)、LGO(C18~C20、bp265~340℃)およびVGO/AR(C21~、bp>340℃)を10:90~40:60の重量比、または20:80~30:70の重量比で含むことができる。
【0050】
本開示の一例において、前記分離部の軽質油の沸点は、180℃未満であることができ、重質油の沸点は、180℃超であることができる。具体的には、前記軽質油は、沸点180℃未満のH-Naphtha、L-Naphthaなどを含むことができ、前記重質油は、沸点180℃超のKero、LGOなどを含むことができる。
【0051】
本開示の一例において、前記分離部の軽質油は、塩素(Cl)を800ppm以上3300ppm以下、窒素(N)を200ppm以上1100ppm以下含み、重質油は、塩素(Cl)を200ppm以上500ppm以下、窒素(N)を1200ppm以上1700ppm以下含むことができる。具体的には、前記軽質油は、塩素(Cl)を1000ppm以上3000ppm以下、窒素(N)を300ppm以上800ppm以下含むことができ、前記重質油は、塩素(Cl)を300ppm以上400ppm以下、窒素(N)を1300ppm以上1600ppm以下含むことができる。塩素を過量で含む軽質油と窒素を過量で含む重質油をそれぞれ分離して精製工程を行うことにより、アンモニウム塩(NHCl)の生成を最小化し、長期間安定的に工程を行うことができ、工程安定性を著しく向上させることができる。
【0052】
前記第1反応器は、前記分離部から流入した軽質油を水素化処理触媒下で、300℃超400℃未満の温度で水素化処理することができる。前記反応器内には、水素化処理触媒が備えられている水素化反応領域が存在し、脱塩素化、脱窒素化、脱硫化または脱金属化反応が行われることができる。前記第1反応器に軽質油および水素ガスが流入し、これらは、水素化処理触媒下で互いに反応して水素化反応が行われる。また、一部のオレフィンと金属不純物が軽質油から除去される反応もともに行われる。
【0053】
具体的には、前記第1反応器内の反応領域に軽質油と水素ガスが流入すると、水素化処理触媒下で、廃プラスチック熱分解油の水素添加反応が行われ、軽質油から塩素(Cl)および窒素(N)を含む不純物とオレフィンの一部が除去され、その他の金属不純物も除去され、塩化水素(HCl)副生成物が生成される。水素化処理された軽質油と塩化水素、および未反応の水素ガスを含む反応生成物は、セパレータに流入する。
【0054】
非制限的な一例において、前記第1反応器は、前記セパレータに流入する経路以外の塩化水素排出経路またはこれを含むガス排出経路が排除されたものであり得る。すなわち、前記第1反応器の生成物および未反応物を含む反応生成物は、そのままセパレータに流入することができる。具体的な一例として、前記第1反応器は、別のガス排出口がないことが好ましい。
【0055】
前記第1反応器の反応温度は、300℃~400℃、具体的には320℃~370℃、より具体的には340℃~360℃であることができる。前記範囲を満たす場合、水素化処理反応効率が向上することができる。
【0056】
本開示の一例において、前記第1反応器の反応圧力は、100bar以下であることができる。具体的には、アンモニウム塩(NHCl)の生成をさらに抑制することができる面で、90bar以下、非制限的には60bar以上90bar以下で行うことができるが、これは一例として提示されたものであって、本開示がこれに限定して解釈されるものではない。
【0057】
前記第1反応器に流入する軽質油と水素ガスの供給流量比は、脱塩素化反応が行われることができる程度であればよく、例えば、1気圧に対する体積流量比が1:300~3,000、具体的には1:500~2,500であることができる。しかし、これは一例として提示されたものであって、本開示がこれに限定して解釈されるものではない。
【0058】
前記セパレータは、第1反応器から流入した反応生成物から塩化水素を除去することができる。塩化水素を除去するセパレータを別に備えることにより、塩化水素の除去効率が向上することができる。前記セパレータは、反応生成物から塩化水素を分離して除去することができるものであれば、様々なものが使用可能であり、例えば、特定のガスの供給によるガス-ガス分離方法であることができる。
【0059】
本開示の一例において、前記セパレータは、水素ガス流入部をさらに含み、水素ガス流入部から流入した水素ガスにより、前記第1反応器から流入した反応生成物から塩化水素が除去されることができる。前記第1反応器から流入する反応生成物内に含まれた水素ガスとは異なる、別の水素ガスが流入することで塩化水素が除去され、前記塩化水素がセパレータから排出されて除去されることができる。これにより、最終的に、前記反応生成物から塩化水素が除去された第1留分を生成することができる。
【0060】
前記セパレータ内の温度は、塩化水素が除去されることができる程度であれば、適宜制御されることができるためあまり制限されず、例えば、反応生成物の温度が40℃~100℃になるように調節されることができる。しかし、これは、具体的な一例として説明されたものであって、本開示がこれに制限して解釈されるものではない。
【0061】
前記廃プラスチック熱分解油の精製装置は、前記第1反応器に第1水素ガスを供給する第1水素貯蔵タンクおよび前記セパレータに第2水素ガスを供給する第2水素貯蔵タンクを含むことができる。ここで、第1水素貯蔵タンクおよび第2水素貯蔵タンクは、同じ水素貯蔵タンクであってもよく、別に分離された水素貯蔵タンクであってもよい。前記第1水素貯蔵タンクから第1水素ガスは前記第1反応器に流入し、廃プラスチック熱分解油と脱塩素化反応を行う。前記第2水素貯蔵タンクから第2水素ガスが前記セパレータに流入し、前記反応生成物から塩化水素が除去される。
【0062】
前記第2反応器は、前記分離部から流入した重質油を50℃超300℃未満の温度で不純物を除去することができる。前記重質油と軽質油に含まれた不純物の含有量および組成の差によって、第1反応器の反応条件より温和な温度条件で、不純物の除去工程を行うことができる。これにより、アンモニウム塩(NHCl)の生成を最小化して、運転時間の向上など、工程安定性が向上する利点がある。また、潤滑油基油(Lube base oil)製品への転換を目的とする場合、製品の特性上、重質油内の窒素(N)含有量を低減する必要がなく、過剰な条件で不純物の除去工程を行わなくてもよいことから、エネルギー効率の面で優れる利点がある。具体的には100~250℃の温度で行うことができ、より具体的には130~200℃の温度で行うことができる。これにより、最終的に、重質油から不純物が除去された第2留分を生成することができる。
【0063】
図1に図示されているように、前記第2反応器と前記第1反応器は、前記分離部に並列になることができ、工程がそれぞれ独立して行われてもよく、反応順序が制限されない。また、第2反応器の不純物の除去工程は、例えば、2種の様態で行われることができ、具体的には、第1様態である水素化/吸着工程、第2様態である固体酸触媒工程から選択される工程により行われることができる。前記2種の様態から選択される工程により不純物の除去工程を行う場合、上述の効果である重質油の不純物の含有量および組成に応じて第1反応器の反応条件より温和な条件で反応を行うことになり、アンモニウム塩(NHCl)の生成を最小化し、運転時間の向上など、工程安定性が向上する効果を効率的に奏することができる。
【0064】
本開示の一例において、前記第2反応器の第1様態として、前記第2反応器は、前記分離部から流入した重質油を水素化処理触媒下で脱塩素化反応を行う第1反応領域と、第1反応領域から流入した前記反応生成物を吸着剤の存在下で残留塩素成分を除去する第2反応領域とを含むことができる。
【0065】
前記第1反応領域は、水素化処理触媒下で脱塩素化反応を行う領域であり、前記第2反応器内に重質油および水素ガスが流入し、これらは、水素化処理触媒下で互いに反応して脱塩素化反応が行われる。また、一部のオレフィンと金属不純物が除去される反応も行われる。
【0066】
前記第1反応領域から反応生成物が第2反応領域に流入し、吸着剤の存在下で、残留塩素(Cl)をさらに除去することができる。これにより、塩素除去効率を上昇させることができる。
【0067】
前記吸着剤は、重質油内の塩素成分を吸着することができるものであれば、各種のものが使用可能である。具体的には、前記吸着剤は、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭化物などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。前記吸着剤の金属酸化物、金属水酸化物または金属炭化物の金属は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムおよび鉄などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。より具体的には、前記吸着剤は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄(Fe、Fe)、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、鉄炭化物(Fe-C composite)およびカルシウム炭化物(CaH-C composite)などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。しかし、これは、例示として説明されたものであって、これに制限されるものではない。
【0068】
前記第2反応領域は、吸着剤が備えられ、重質油を含む反応生成物が前記吸着剤と接触することができるように設計されることができる。具体的には、多数の吸着剤が充填された吸着層が、所定の厚さで第2反応領域に備えられ、上側から下側に前記吸着層を前記反応生成物が通過して吸着が行われることができる。より具体的には、前記吸着層の平均厚さは、接触および通過する反応生成物の流量、反応器内部のサイズ、要求処理速度などに応じて適宜調節されることができ、例えば、0.5~10cm、具体的には1~5cmであることができる。しかし、これは、例示として説明されたものであって、これに制限されるものではない。
【0069】
前記第2反応器の第1様態の温度条件は、上述のように、50超300℃未満であることができ、具体的には100~250℃の温度で行うことができ、より具体的には130~200℃であることができる。圧力条件は、100bar以下であることができ、具体的には、アンモニウム塩(NHCl)の生成をさらに抑制することができる面で、60bar以下、非制限的には30bar~60barで行うことができるが、これは一例として提示されたものであって、本開示がこれに限定して解釈されるものではない。重質油と水素ガスの供給流量比は、脱塩素化反応が行われることができる程度であればよく、例えば、1気圧に対する体積流量比が1:300~3,000、具体的には1:500~2,500であることができる。しかし、これは例示として説明されたものであって、これに制限されるものではない。
【0070】
本開示の一例において、前記第2反応器の第2様態として、前記第2反応器は、前記分離部から流入した重質油を固体酸触媒下で、不活性雰囲気で不純物の除去反応を行うことができる。
【0071】
前記固体酸触媒は、ブレンステッド酸、ルイス酸またはこれらの混合物を含むものであり、具体的にはブレンステッド酸(Bronsted acid)またはルイス酸サイト(Lewis acid site)が存在する固体物質であり、具体的にはゼオライト(zeolite)、クレイ(clay)、SAPO(Silica-alumina-phosphate)、ALPO(aluminum phosphate)、MOF(Metal Organic Framework)、シリカアルミナまたはこれらの混合物であることができる。
【0072】
前記固体酸触媒は、前記重質油の全重量に対して、5~10重量%含まれることができ、具体的には7~10重量%、より具体的には8~10重量%含まれることができる。前記範囲内で固体酸触媒導入量が増加するほど、塩素(Cl)および窒素(N)の除去効果が向上し、10重量%以下の場合、重質油内の分解(Cracking)反応を抑制することができる。
【0073】
前記第2反応器の第2様態の温度条件は、150℃超300℃未満であることができ、具体的には170℃超270℃未満であることができる。上述の温度範囲を満たす場合、塩素(Cl)の低減効果だけでなく、窒素(N)の低減効果も増大する。
【0074】
前記第2反応器の第2様態の一例において、前記第2反応器は、窒素雰囲気、30bar以下の圧力で反応を行うことができる。窒素雰囲気で反応を行う場合、運転安定性および経済性の面で有利な利点がある。空気(Air)の条件でも、類似するClの低減性能を示すが、150℃超の運転条件でリーク(leak)が発生する場合、火災発生のリスクが高く、Hの条件では、Clの低減効率が高くなるが、N運転に比べてHの使用による経済性が低くなる問題がある。30bar以上の条件で工程を行う場合、アンモニウム塩(NHCl)の生成率が増加し、工程費用が増大する問題がある。非制限的には2bar以上の圧力で行うことができ、2bar未満の低真空または高真空条件で反応が行われる場合、触媒熱分解反応が発生し、熱分解油の粘度および分子量が減少し、重質油の組成が変化する問題がある。
【0075】
本開示の一例において、前記廃プラスチック熱分解油の精製装置は、前記セパレータから塩化水素が除去された第1留分が流入し、前記第1留分を触媒改質する改質部をさらに含むことができる。前記セパレータから塩化水素が除去された第1留分は、軽質油の成分を含むものであり、これを触媒改質することにより、BTX、軽質オレフィン(Light olefin)などの高付加価値の石油化学製品に転換することができる。触媒改質は、従来公知の方法により行われることができ、例えば、第1留分と白金やレニウムなどの貴金属を含有する触媒を接触して反応を行う接触改質方法で行うことができるが、これは、一例として説明されたものであって、本開示がこれに制限されるものではない。
【0076】
本開示の一例において、前記廃プラスチック熱分解油の精製装置は、前記第2反応器から不純物が除去された第2留分が流入し、前記第2留分を互いに異なる沸点を有する2以上の留分に分離精製する分別蒸留部をさらに含むことができる。前記第2反応器から不純物が除去された第2留分は、重質油の成分を含むものであり、これを沸点別に分離して、潤滑油基油(Lube base oil)や燃料(Fuel)などの高付加価値の石油化学製品に転換することができる。前記分別蒸留方式は、従来公知の方法により行うことができ、例えば、常圧蒸留、減圧蒸留などの方式で行うことができるが、これは一例として説明されたものであって、本開示がこれに制限されるものではない。
【0077】
本開示による廃プラスチック熱分解油の精製方法は、廃プラスチック熱分解油を軽質油と重質油に分離するステップと、(a-1)前記軽質油を水素化処理触媒下で、300℃超400℃未満の温度で水素化処理するステップと、(a-2)前記水素化処理された軽質油を水素ガスと混合して、塩化水素を除去するステップと、(b-1)前記重質油を50℃超300℃未満の温度で不純物を除去するステップとを含むことができる。
【0078】
前記廃プラスチック熱分解油は、H-Naphtha(~C8、bp<150℃):Kero(C9~C17、bp150~265℃)、LGO(C18~C20、bp265~340℃)およびVGO/AR(C21~、bp>340℃)を10:90~40:60の重量比、または20:80~30:70の重量比で含むことができる。
【0079】
前記廃プラスチック熱分解油を軽質油と重質油に分離するステップは、常圧蒸留、減圧蒸留などの公知の分別蒸留方法により特定の沸点(bp)を基準に分離することができ、これに制限されるものではない。前記軽質油および重質油の沸点(bp)は、平均沸点であることができ、誤差範囲は、±10℃と検討することができる。
【0080】
本開示の一例において、前記軽質油の沸点は、180℃未満であることができ、重質油の沸点は、180℃超であることができる。具体的には、前記軽質油は、沸点180℃未満のH-Naphtha、L-Naphthaなどを含むことができ、前記重質油は、沸点180℃超のKero、LGOなどを含むことができる。
【0081】
本開示の一例において、前記軽質油は、塩素(Cl)を800ppm以上3300ppm以下、窒素(N)を200ppm以上1100ppm以下含むことができる。具体的には、塩素(Cl)を1000ppm以上3000ppm以下、窒素(N)を300ppm以上800ppm以下含むことができる。重質油は、塩素(Cl)を200ppm以上500ppm以下、窒素(N)を1200ppm以上1700ppm以下含むことができる。具体的には、塩素(Cl)を300ppm以上400ppm以下、窒素(N)を1300ppm以上1600ppm以下含むことができる。塩素を過量で含む軽質油と窒素を過量で含む重質油を分離して精製工程を行うことにより、アンモニウム塩(NHCl)の生成を最小化し、運転時間の向上など、工程安定性が向上する効果がある。
【0082】
前記(a-1)水素化処理するステップは、前記軽質油を水素化処理触媒下で、250℃超400℃未満の温度で水素化処理反応を行うステップであることができる。前記水素化処理反応として、脱塩素化、脱窒素化、脱硫化または脱金属化反応が行われることができる。前記軽質油と水素ガスが、水素化処理触媒下で互いに反応して水素化反応が行われ、塩素(Cl)、窒素(N)不純物とオレフィンの一部が除去され、その他の金属不純物も除去され、塩化水素(HCl)副生成物が生成される。
【0083】
前記(a-1)水素化処理ステップの反応温度は、300℃~400℃、具体的には320℃~370℃、より具体的には340℃~360℃であることができる。前記範囲を満たす場合、水素化処理反応効率が向上することができる。
【0084】
本開示の一例において、前記(a-1)水素化処理ステップの反応圧力は、100bar以下であることができる。具体的には、アンモニウム塩(NHCl)の生成をさらに抑制することができる面で、90bar以下、非制限的には60bar以上90bar以下で行うことができるが、これは一例として提示されたものであって、本開示がこれに限定して解釈されるものではない。
【0085】
前記(a-1)水素化処理ステップにおいて、前記軽質油と水素ガスの供給流量比は、脱塩素化反応が行われることができる程度であればよく、例えば、1気圧に対する体積流量比が1:300~3,000、具体的には1:500~2,500であることができる。しかし、これは一例として説明されたものであって、本発明がこれに制限して解釈されるものではない。
【0086】
前記(a-2)塩化水素を除去するステップは、前記水素化処理された軽質油を水素ガスと混合して塩化水素を除去するステップであることができる。具体的には、水素化処理された軽質油、塩化水素、および未反応の水素ガスを含む反応生成物と別の水素ガスを反応させて、反応生成物から塩化水素を除去することができる。塩化水素を除去するステップをさらに行うことにより、塩化水素の除去効率が向上することができる。
【0087】
前記(a-2)塩化水素を除去するステップの温度は、塩化水素が除去されることができる程度であれば適宜制御されることができるためあまり制限されず、例えば、反応生成物の温度が40~100℃になるように調節されることができる。しかし、これは、具体的な一例として説明されたものであって、本開示がこれに制限して解釈されるものではない。
【0088】
前記(b-1)不純物を除去するステップは、重質油を50℃超300℃未満の温度で不純物を除去するステップであることができる。前記重質油と軽質油の不純物の含有量および組成差によって、前記(a-1)ステップより温和な温度条件で不純物の除去工程を行うことができ、これにより、アンモニウム塩(NHCl)の生成を最小化して、運転時間の向上など、工程安定性が向上する効果がある。また、潤滑油基油(Lube base oil)製品への転換を目的とする場合、重質油内の窒素(N)含有量を低減する必要がなく、過剰な条件で不純物の除去工程を行わなくてもよいことから、エネルギー効率の面で優れる利点がある。具体的には、100~250℃の温度で行うことができ、より具体的には130~200℃の温度で行うことができる。これにより、最終的に、重質油から不純物が除去された第2留分を生成することができる。
【0089】
前記(a-1)および(a-2)ステップと(b-1)ステップは、独立して行われることができ、反応順序は、制限されない。また、(b-1)ステップの不純物除去ステップは、例えば、2種の様態により行われることができ、具体的には、第1様態である水素化/吸着工程、第2様態である固体酸触媒工程から選択される工程により行われることができる。前記2種の様態から選択される工程により不純物除去ステップを行う場合、上述の効果である重質油の不純物の含有量および組成比によってより温和な条件で反応を行うことになり、アンモニウム塩(NHCl)の生成を最小化して、運転時間の向上など、工程安定性が向上する効果を効率的に図ることができる。
【0090】
本開示の一例において、前記(b-1)ステップの第1様態として、不純物を除去するステップは、前記重質油を水素化処理触媒下で脱塩素化反応を行った後、吸着剤の存在下で残留塩素成分を除去するステップであることができる。
【0091】
重質油と水素ガスが水素化処理触媒下で互いに反応して脱塩素化反応が行われ、一部のオレフィンと金属不純物も除去される。そして、前記脱塩素化反応の反応生成物から吸着剤の存在下で残留塩素成分をさらに除去するステップを行うことにより、塩素除去効率を上昇させることができる。
【0092】
前記吸着剤は、重質油内の塩素成分を吸着することができるものであれば、各種のものが使用可能である。具体的な一例として、前記吸着剤は、金属酸化物、金属水酸化物および金属炭化物などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。前記吸着剤の金属酸化物、金属水酸化物または金属炭化物の金属は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムおよび鉄などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。具体的な一実施形態として、前記吸着剤は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄(Fe、Fe)、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、鉄炭化物(Fe-C composite)およびカルシウム炭化物(CaH-C composite)などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。しかし、これは、好ましい一例として説明されたものであって、本発明がこれに制限して解釈されるものではない。
【0093】
前記(b-1)ステップの第1様態の温度条件は、上述のように、50超300℃未満であることができ、具体的には100~250℃の温度で行うことができ、より具体的には130~200℃であることができる。圧力条件は、100bar以下であることができ、具体的には、アンモニウム塩(NHCl)の生成をさらに抑制することができる面で、60bar以下、非制限的には30bar~60barで行うことができるが、これは一例として提示されたものであって、本開示がこれに限定して解釈されるものではない。重質油と水素ガスの供給流量比は、脱塩素化反応が行われることができる程度であればよく、例えば、1気圧に対する体積流量比が1:300~3,000、具体的には1:500~2,500であることができる。しかし、これは一例として説明されたものであって、本発明がこれに制限して解釈されるものではない。
【0094】
本開示の一例において、前記(b-1)ステップの第2様態として、不純物を除去するステップは、前記重質油を、固体酸触媒下で、窒素雰囲気、30bar以下の圧力で反応を行うステップであることができる。
【0095】
前記固体酸触媒は、ブレンステッド酸、ルイス酸またはこれらの混合物を含むものであり、具体的には、ブレンステッド酸(Bronsted acid)またはルイス酸サイト(Lewis acid site)が存在する固体物質であり、具体的にはゼオライト(zeolite)、クレイ(clay)、SAPO(silica-alumina-phosphate)、ALPO(aluminum phosphate)、MOF(Metal Organic Framework)、シリカアルミナまたはこれらの混合物であることができる。
【0096】
前記固体酸触媒は、前記重質油の全重量に対して、5~10重量%含まれることができ、具体的には7~10重量%、より具体的には8~10重量%含まれることができる。前記範囲内で、固体酸触媒の導入量が増加するほど、塩素(Cl)および窒素(N)の除去効果が向上し、10重量%以下の場合、重質油内の分解(Cracking)反応を抑制することができる。
【0097】
前記(b-1)ステップの第2様態の温度条件は、150℃超300℃未満であることができ、具体的には170℃超270℃未満であることができる。上述の温度範囲を満たす場合、塩素(Cl)の低減効果だけでなく、窒素(N)の低減効果も増大する。
【0098】
前記(b-1)ステップの第2様態の一例において、前記(b-1)不純物を除去するステップは、前記重質油を固体酸触媒下で、窒素雰囲気、30bar以下の圧力で反応を行うことができる。窒素雰囲気で反応を行う場合、運転安定性および経済性の面で有利な利点がある。空気(Air)の条件でも、類似するClの低減性能を示すが、150℃超の運転条件でリーク(leak)が発生する場合、火災発生のリスクが高く、Hの条件では、Clの低減効率が高くなるが、N運転に比べて、Hの使用による経済性が低くなる問題がある。30bar以上の条件で工程を行う場合、アンモニウム塩(NHCl)の生成率が増加し、工程費用が増大する問題がある。非制限的には2bar以上の圧力で行うことができ、2bar未満の低真空または高真空の条件で反応が行われる場合、触媒熱分解反応が発生し、熱分解油の粘度および分子量が減少し、重質油の組成が変化する問題がある。
【0099】
本開示の一例において、前記廃プラスチック熱分解油の精製方法は、前記(a-2)の塩化水素を追加除去するステップの後、(a-3)触媒改質するステップをさらに含むことができる。軽質油から塩化水素を除去した後、これを触媒改質することにより、BTX、軽質オレフィン(Light olefin)などの高付加価値の石油化学製品に転換することができる。触媒改質は、従来公知の方法により行われることができ、例えば、第1留分と白金やレニウムなどの貴金属を含有する触媒を接触して反応を行う接触改質方法で行うことができるが、これは一例として説明されたものであって、本開示がこれに制限されるものではない。
【0100】
本開示の一例において、前記廃プラスチック熱分解油の精製方法は、前記(b-1)の不純物を除去するステップの後、(b-2)互いに異なる沸点を有する2以上の留分に分離精製するステップをさらに含むことができる。重質油から不純物を除去した後、沸点別に分離して、潤滑油基油(Lube base oil)や燃料(Fuel)などの高付加価値の石油化学製品に転換することができる。前記分別蒸留方式は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、常圧蒸留、減圧蒸留などの方式で行うことができるが、これは一例として説明されたものであって、本開示がこれに制限されるものではない。
【0101】
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、これらは、本発明をより詳細に説明するためのものであって、本発明の権利範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0102】
実施例1
1-1)廃プラスチック熱分解油からナフサ(Naphtha)とKero留分を分離する分離部
廃プラスチックを熱分解して塩素(Cl)706ppm、窒素(N)1081ppm、オレフィン(Olefin)30体積%以上、共役ジオレフィン(Conjugated diolefin)1体積%以上の高濃度の不純物を含有する熱分解油を取得した。前記熱分解油の分子量分布をGC-Simdis(HT 750)分析により確認した。前記分析結果は、下記表1に示した。
【0103】
【表1】
【0104】
高付加価値の石油化学製品に転換可能な留分である軽質油および重質油を回収するために、蒸留装置を介して沸点別に分離した。軽質油は、常圧で沸点180℃未満の(以下、H-Naphthaと表示)留分を分離したものであり、重質油は、減圧蒸留により沸点180℃超の留分を(以下、Kero+と表示)分離したものである。
【0105】
廃プラスチック熱分解油の全体フィード(whole feed)、分離されたH-NaphthaとKero+留分の不純物Cl、N含有量をICP、TNS、EA-O、XRF分析により確認した。分析結果を下記表2に記載した。
【0106】
【表2】
【0107】
1-2)第1反応器およびセパレータ
1-2-1)H-Naphtha留分の水素化処理によりCl、Nが低減する第1反応器
前記分離したH-Naphtha留分を内部に水素化処理触媒であるNiMo/r-Al、CoMo/r-Al触媒が備えられた第1反応器に投入した。前記第1反応器の内部にそれぞれ流入するH-Naphtha留分と水素ガスが反応して、塩素(Cl)、窒素(N)、オレフィンおよび金属不純物などが除去され、副生成物である塩化水素が生成される。
【0108】
1-2-2)水素化処理されたH-Naphtha留分の塩化水素を除去するセパレータ
前記第1反応器で塩素成分が除去されたH-Naphtha、塩化水素および未反応の水素ガスを含む反応生成物をセパレータに投入した。そして、前記セパレータに水素ガス流入部を介して別の水素ガスを投入し、前記セパレータに存在する反応生成物のうち塩化水素の代わりに前記水素が使用され、前記セパレータから排出されて除去された。
【0109】
1-3)Kero+留分の不純物を除去する第2反応器-第1様態:水素化/吸着
前記分離したKero+留分を水素化処理触媒であるモリブデン硫化物(MoS)系触媒が備えられた第2反応器に投入した。第2反応器の内部には、Kero+留分と水素ガスが反応する第1反応領域が第2反応器の上部に形成されており、前記第1反応領域から流入する反応生成物内の塩素が吸着剤である酸化カルシウム粒子(粒径:0.55mm)が充填された吸着層(層の体積:2cc、層の厚さ:2.5cm)により吸着される第2反応領域が第2反応器の下部に形成されている。
【0110】
前記第2反応器の上部にKero+留分と水素ガスを投入して、前記第2反応器内の第1反応領域でKero+留分と水素ガスが反応することにより、Kero+留分から塩素成分が除去された。塩素成分が除去されたKero+留分が前記第2反応器内の第2反応領域に投入されて、Kero+留分内の残量の塩素成分が吸着剤により吸着除去された。
【0111】
前記第1反応器、セパレータおよび第2反応器の運転条件は、下記表3のとおりである。
【0112】
【表3】
【0113】
実施例2および実施例3-温度、圧力条件の変更
実施例1の第1反応器および第2反応器の運転条件のうち反応温度および圧力条件を下記表4のように変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0114】
【表4】
【0115】
実施例4-Kero+留分の不純物の除去工程-第2様態:固体酸触媒
実施例1の第1様態の代わりに固体酸触媒による不純物の除去工程を行った以外は、実施例1と同様に実施した。固体酸触媒は、ゼオライト(zeolite)40wt%、クレイ(clay)50wt%、その他、シリカゲル(silica gel)、アルミナゲル(alumina gel)、機能材料(functional material)10wt%で構成された、平均粒子径80μmのE-cat触媒を使用した。
【0116】
前記分離したKero+留分100重量部に対する固体酸触媒25重量部を第2反応器に投入し、反応を行って、不純物が除去された精製油を取得した。
【0117】
前記第2様態の第2反応器の反応条件は、下記表5のとおりである。
【0118】
【表5】
【0119】
比較例1-H-NaphthaおよびKero留分の不純物の除去工程を同じ手段で遂行
実施例1のKero+留分の不純物の除去工程をH-Naphtha留分の水素化処理工程と同じ手段および条件で実施した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0120】
比較例2-全体フィード(whole feed)を対象に不純物の除去工程遂行
廃プラスチック熱分解油からH-NaphthaとKero+留分を分離せず、全体フィード(whole feed)を対象に不純物を除去する工程を行って精製油を取得した。350℃、180barで実施した以外は、実施例1のH-Naphtha留分の水素化処理工程(1-2-1、1-2-2)と同様に実施した。
【0121】
比較例3-沸点265℃を基準に分離して不純物の除去工程遂行
実施例1で廃プラスチック熱分解油から沸点265℃未満の軽質油(以下、Kero-と表示)と、265℃以上の重質油(以下、LGO+と表示)を分離して回収した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0122】
評価例-不純物の含有量および最大運転時間の測定
実施例1~5、比較例1~3を参照して、最終的に取得した精製油内の不純物である塩素(Cl)と窒素(N)含有量をICP、TNS、EA-O、XRF分析により評価した。
【0123】
また、圧力降下の問題なしに運転が可能な時間を測定し、アンモニウム塩(NHCl)の抑制効果を評価した。具体的には、各実施例または比較例の装置を介して精製油を生産し続け、この時に生成されるアンモニウム塩(NHCl)による圧力損失(delta P)が7barになるまでかかる最大運転時間を測定し、これに関する結果を下記表6に示した。
【0124】
【表6】
【0125】
実施例1~4の場合、軽質油(H-Naphtha)から取得した精製油内の塩素(Cl)含有量は、いずれも2ppm以下と確認され、窒素(N)含有量は、いずれも6ppm以下と確認され、特に、実施例3の場合、塩素および窒素含有量がいずれも1ppm以下と著しく減少することを確認することができる。一方、比較例2の全体フィード(whole feed)から取得した精製油内の窒素(N)含有量は13ppmと確認され、全体フィード(whole feed)の場合、不純物である窒素含有量が著しく増加することを確認することができる。また、比較例3の沸点265℃未満の軽質油(Kero-)から取得した精製油内の塩素(Cl)含有量は43ppm、窒素(N)含有量は19ppmと確認され、不純物の含有量が、実施例1~4に比べて著しく増加することを確認することができる。
【0126】
まとめると、実施例1~5の場合、軽質油(H-Naphtha)から塩素(Cl)および窒素(N)含有量が著しく低減した高品質の精製油を取得することができることを確認することができ、特に、実施例4の場合は、軽質油(H-Naphtha)および重質油(Kero+)の両方から不純物である塩素および窒素含有量が著しく低減した高品質の精製油を取得することができることを確認することができる。
【0127】
また、実施例1~4の場合、最大運転時間がいずれも13日以上と長期間安定的に工程を行うことができることを確認することができる。
【0128】
一方、比較例1の場合、第1反応器および第2反応器を350℃の高い温度条件で反応を行うことから、アンモニウム塩(NHCl)の発生および反応器の差圧が増加し、最大運転時間が7日以下と著しく短いことを確認することができる。比較例2も廃プラスチック熱分解油の全体フィード(whole feed)を対象に精製工程を行うことから、最大運転時間が7日以下と著しく短いことを確認することができる。
【0129】
比較例3は、Kero-、LGO+留分内の塩素(Cl)および窒素(N)含有量が過剰であり、アンモニウム塩(NHCl)の発生および反応器の差圧(delta P)が増加することから、最大運転時間が4日と著しく短いことを確認することができる。
図1
【国際調査報告】