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特表2024-538318ハイドランジア(Hydrangea)栽培
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ハイドランジア(Hydrangea)栽培
(51)【国際特許分類】
   A01H 3/00 20060101AFI20241010BHJP
   A01H 6/48 20180101ALI20241010BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20241010BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20241010BHJP
【FI】
A01H3/00
A01H6/48
A01G7/00 604Z
A01G31/00 612
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525898
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 EP2021080643
(87)【国際公開番号】W WO2023078553
(87)【国際公開日】2023-05-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521397201
【氏名又は名称】シムライズ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ・ペーター・ライ
(72)【発明者】
【氏名】エスター-コリンナ・シュヴァルツェ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ウルブリヒ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・タイゼン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・プロイシェ
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA38
2B314MA57
2B314MA67
2B314PB19
2B314PC04
2B314PC17
2B314PC18
2B314PC19
(57)【要約】
本発明は、フィロズルシンの産生を増加させるためのハイドランジア種の栽培(好ましくは、屋内)及び植物材料、好ましくは、フィロズルシンの含有量が増加した乾燥植物材料の準備に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥植物材料の総量に基づいて、少なくとも2.5wt%のフィロズルシン同等物の含有量を有する前記乾燥植物材料の調製のための方法であって、
a)ハイドランジア・マクロフィラ、好ましくは、亜種セラタ、より好ましくは、品種オオアマチャ、アマチャ及びアマギアマチャからなる群から選択される亜種セラタ、それらの雑種及び品種、特にオオアマチャ、アマチャ及びアマギアマチャから選択される品種とハイドランジア・マクロフィラの任意の他の品種との間の標的交配の結果の少なくとも1つの頭部及び/又はシュートの挿し穂を準備するステップと、
b)前記少なくとも1つの頭部及び/又はシュートの挿し穂を、好ましくは、固体基材を用いない、土を用いない及び/又はピートを用いない基材において発根させるステップと、
c)発根した前記少なくとも1つの頭部及び/又はシュートの挿し穂をハイドロポニック、エアロポニック又はフォグポニックシステムにおいて栽培し、得られた植物(複数可)に5から15wt%の窒素源、2から10wt%のリン源、5から25wt%のカリウム源及び1から20wt%のマグネシウム源を含むか、又はそれらからなる栄養液によって、栽培水100L当たり5gから250gまでの投与計画、好ましくは、栽培水100L当たり10gから150gの投与計画で栽培中に少なくとも1回施肥するステップであって、
前記栽培は、フィルターされた、及び/又は遮光された自然光曝露或いはフィルターされた、及び/又は遮光された自然光曝露と追加の人工照明、或いは人工照明を用いて行われる、ステップと、
d)20から200日、好ましくは30から120日、とりわけ好ましくは40から80日の栽培期間後に前記植物(複数可)から茎及び/又は葉を収穫するステップと、
e)収穫された前記茎及び/又は葉を20から110℃の温度、好ましくは30から70℃の温度、とりわけ好ましくは40から60℃の温度で乾燥するステップと、
f)乾燥植物材料の総量に基づいて、重量で少なくとも2.5wt%のフィロズルシン同等物を含む前記乾燥植物材料を得るステップと
を含むか、或いはそれらからなる、方法。
【請求項2】
前記植物(複数可)は、栽培中に少なくとも1回、好ましくは数回、人工的なストレス条件、好ましくは、標的UV光曝露及び/又は化学的ストレス、とりわけ好ましくは、ジャスモナートに曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物(複数可)のジャスモナートへの前記曝露は、葉への適用及び/又は前記栽培水により、及び/又は気体形態で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記植物(複数可)は、栽培中に少なくとも1回、好ましくは数回、0.1mMから10mMの総量のジャスモナートに曝露される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記土及び/又はピートを用いない基材は、バーミキュライト、ロックウール、ココナツ繊維、パーライト、ポン、セラミス、火山灰、火山灰細粒、ススキ繊維、ゼオリス、溶岩、軽石から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記植物(複数可)は、15から30℃、好ましくは18から26℃の温度で栽培される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記植物(複数可)は、12から5時間の人工的な無照明時間に対して12から19時間の人工的な照明時間、好ましくは、7から9時間の人工的な無照明時間に対して15から17時間の人工的な照明時間で栽培される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複数の植物が栽培され、前記植物は、最大25植物/m2の栽植密度、好ましくは、最大20植物/m2の栽植密度で栽培される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記植物(複数可)は、エブアンドフロー、栄養膜、点滴灌漑、細流灌漑、ディープウォーター、エアロポニック又はアクアポニックシステムで栽培される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップd)は、前の収穫後の少なくとも20日間の期間の後、少なくとも1回繰り返される、好ましくは、ステップd)は、それぞれ前の収穫後の少なくとも20日間の期間の後、2、3、4、5回又はそれ以上繰り返される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
茎及び葉がステップd)で収穫され、ステップe)で前記葉及び茎材料を乾燥した後、前記植物材料は、好ましくは、空気分離、空気浮遊又はふるい分けから選択される方法によって葉及び茎材料に分離されて、少なくとも75wt%、好ましくは少なくとも85wt%、とりわけ好ましくは少なくとも95wt%の葉材料からなるか、又はそれを含む植物材料を得る、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
好ましくは、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、乾燥植物材料であって、
前記乾燥植物材料の総量に基づいて、少なくとも2.5wt%、好ましくは少なくとも3wt%、特に好ましくは少なくとも4wt%のフィロズルシン同等物の含有量を有し、
且つ/又は
前記乾燥植物材料は、前記乾燥植物材料の総量に基づいて2.0wt%未満、好ましくは1.5wt%未満、より好ましくは1wt%未満、特に好ましくは0.5wt%未満のヒドランゲノール同等物を含み、
好ましくは、前記乾燥植物材料は、主として葉からなる、乾燥植物材料。
【請求項13】
前記乾燥植物材料は、前記乾燥植物材料の総量により、20wt%未満、好ましくは10wt%未満の残存水分を有する、請求項12に記載の乾燥植物材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィロズルシンの産生を増加させるためのハイドランジア種の栽培(好ましくは、屋内)及び植物材料、好ましくは、フィロズルシンの含有量が増加した乾燥植物材料の準備に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者は、一般に、好ましい甘さ及びそれに関連する甘さプロフィールのため、大量の高カロリー糖、特にスクロース(サッカロース)、グルコース、フルクトース若しくはそれらの混合物を含む、食料品又は贅沢食品を強く好む。一方で、容易に代謝できる炭水化物の含有量が多いと血糖値の急上昇を引き起こし、脂肪沈着の形成につながり、最終的に過体重、肥満、インスリン抵抗性、加齢性糖尿病及びその合併症などの健康問題をもたらす可能性があることが一般に知られている。別の特有の深刻化する要素は、上記の炭水化物の多くは、口腔内において特定の種類の細菌により乳酸に分解され、例えば、乳歯又は成歯のエナメル質を侵食する(齲蝕)可能性があるため、歯の健康に対しても悪影響があり得ることである。
【0003】
したがって、食品又は飲料品の高カロリー糖の含有量を低減し、それを、甘味を与えるか、又は低濃度で甘味自体は示さずに低濃度の甘味にプラスの影響を及ぼすことができる他の物質(味覚修飾物質)で部分的又は完全に置き換えることが長く目標とされてきた。
【0004】
低甘味料製品用の味覚修飾物質としてのフィロズルシンの使用、そのための風味付け混合物、及びそのような製品を生産する方法が特許文献1に記載されている。
【0005】
フィロズルシンは、植物ハイドランジア・マクロフィラ(Hydrangea macrophylla)の亜種で排他的に生じる天然化合物である。フィロズルシンは、化学合成又はバイオ工学的アプローチによって経済的に生成することができない。
【0006】
ハイドランジア・マクロフィラの葉は、主にお茶、特に、甘味のある日本茶であり、タンニンと、フィロズルシンを含むジヒドロイソクマリンとを含むアマチャを調製するために使用される。ハイドランジア・マクロフィラの葉は、一般に儀式的目的(花祭り)で日本及び韓国において使用される。
【0007】
東南アジアのハイドランジア・マクロフィラの原産地と欧州との間の気候条件は著しく異なる。それにもかかわらず、いくつかのハイドランジア・マクロフィラの雑種が、欧州で園芸植物として栽培されるよう作り出されてきた。これらの雑種は、観賞植物としてのみ使用されており、その大半は、いかなるフィロズルシンの存在も示さない。日本及び韓国以外でのハイドランジア・マクロフィラ亜種アマチャの商業栽培は今まで知られていない。
【0008】
葉におけるジヒドロイソクマリン及びフィロズルシンの分布は、遺伝子型に非常に依存的であるが、環境条件によるかはあまり明白でない。自由な受粉によって繁殖した野生植物は、フィロズルシン含有量が植物によって変動することがわかった(非特許文献1)。植物内でどのようにフィロズルシンが合成されるのか及びそれがどのような機能を持つのかについて最新の技術でも依然としてわかっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第2,298,084(B1)号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ウジハラ(Ujihara).Mら、(1995年)、「ハイドランジア・セラタ(serrata)の甘葉植物におけるフィロズルシンの蓄積及び専門のハモグリ植食者に対する防御におけるその中立性(Accumulation of Phyllodulcin in Sweet-Leaf Plants of Hydrangea serrata and Its Neutrality in the Defence Against a Specialist Leafmining Herbivore)」リサーチーズ・オン・ポピュレーション・エコロジー(Researches on Population Ecology)、第37巻(2):p.249-257
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、フィロズルシンの産業生産のために特定のハイドランジア・マクロフィラ種を栽培するための方法があることは非常に有利である。
【0012】
したがって、ハイドランジア・マクロフィラ種の商業的大規模栽培のための方法及びその後の加工のための植物材料の準備を提供することが本発明の課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この主要な課題は、乾燥植物材料の総量に基づいて、少なくとも2.5wt%のフィロズルシンの含有量を有する乾燥植物材料の調製のための方法を提供することによって解決され、本方法は、
a)ハイドランジア・マクロフィラ、好ましくは、亜種セラタ、より好ましくは、品種オオアマチャ、アマチャ及びアマギアマチャからなる群から選択される亜種セラタ、それらの雑種及び品種、特にオオアマチャ、アマチャ及びアマギアマチャから選択される品種とハイドランジア・マクロフィラの任意の他の品種との間の標的交配の結果の少なくとも1つの頭部及び/又はシュートの挿し穂を準備するステップと、
b)少なくとも1つの頭部及び/又はシュートの挿し穂を、好ましくは、固体基材を用いない、土を用いない及び/又はピートを用いない基材において発根させるステップと、
c)発根した少なくとも1つの頭部及び/又はシュートの挿し穂をハイドロポニック、エアロポニック又はフォグポニックシステムにおいて栽培し、得られた植物(複数可)に5から15wt%の窒素源、2から10wt%のリン源、5から25wt%のカリウム源及び1から20wt%のマグネシウム源を含むか、又はそれらからなる栄養液によって、栽培水100L当たり5gから250gまでの投与計画、好ましくは、栽培水100L当たりの10gから150gの投与計画で栽培中に少なくとも1回施肥するステップであって、
栽培は、フィルターされた、及び/又は遮光された自然光曝露或いはフィルターされた、及び/又は遮光された自然光曝露と追加の人工照明、或いは人工照明を用いて行われる、ステップと、
d)20から200日、好ましくは30から120日、とりわけ好ましくは40から80日の栽培期間後に植物(複数可)から茎及び/又は葉を収穫するステップと、
e)収穫された茎及び/又は葉を20から110℃の温度、好ましくは30から70℃の温度、とりわけ好ましくは40から60℃の温度で乾燥するステップと、
f)乾燥植物材料の総量に基づいて、重量で少なくとも2.5wt%のフィロズルシン同等物を含む乾燥植物材料を得るステップと
を含むか、或いはそれらからなる。
【0014】
頭部又はシュートの挿し穂とは、本発明に関しては、生長点を含む植物の末端部分からなるハイドランジア・マクロフィラ種の部分を意味する。ハイドランジア・マクロフィラのシュートの挿し穂は、繁殖することができる(例えば、生長点を有する)植物の任意の部分から得られる。本発明に関しては、頭部及び/又はシュートの挿し穂が、発根し、独立した植物を発育する能力を有することが重要である。
【0015】
特に、種「アマギアマチャ」(植物番号1177)は、畑作では十分に確立していないが、本発明による方法により栽培された場合、植物乾物中に6wt%までの非常に高いフィロズルシン値を得ることができる栽培変種である。
【0016】
本発明に関して、ハイドランジア・マクロフィラ亜種セラタ種、例えば、「オオアマチャ」、「アマチャ」及び「アマギアマチャ」を栽培するのに有利であるが、その雑種及び親植物として上で挙げた異なる種を組み合わせた標的交配種も本発明による方法により栽培することができる。例えば、ハイドランジア・マクロフィラの種は、ハイドランジア・マクロフィラ亜種セラタである「オオアマチャ」、「アマチャ」及び「アマギアマチャ」のうちの任意の1種と交配させることができる。ハイドランジア・マクロフィラの植物品種として本明細書で記述される植物品種「アマチャ」及び「アマギアマチャ」は、それぞれ品種ツンベルギイ(thunbergii)又はアマギアナ(amagiana)としても知られている。
【0017】
本発明に関して「発根させること」という用語は、ステップa)で準備された頭部及び/又はシュートの挿し穂が根を生やすことができる条件を提供することを意味する。挿し穂が根を生やしたら、植物と呼ばれる。当業者は、根の生長を可能にするため該当する条件及びそのような条件を実現する方法を十分に認識している。
【0018】
固体基材を用いない、土を用いない及び/又はピートを用いない基材においてステップa)で準備された挿し穂を発根させることが特に有利であることが確認された。挿し穂はより多くの根を生やし、速く生長もするため、短時間で安定した植物をもたらすことができる。
【0019】
本発明に関して「栽培すること」とは、挿し穂又は発根させた植物を、それらが生長し、より多くの生物量を生じる条件に曝露することを意味する。当業者は、生物量増大を可能にするための該当する条件及びそのような条件を実現する方法を十分に認識している。
【0020】
「フィルターされた、及び/又は遮光された自然光曝露」という用語は、好ましくは、例えば、ガラス又は透明な高分子ガラス代替物によってフィルターされた、特に、UV-B及びUV-A光がフィルター除去された、及び/又は白色、灰色、黒色、緑色若しくはその他の色の遮光ネットによる遮光部によって途切れさせた日光を意味する。
【0021】
「人工照明」は、例えば、さまざまなスペクトル幅を有する、任意にUV-B照射を低減するためにフィルターされた、古典的なフィラメントランプ、ガス放電若しくは金属放電ランプ、又はLED(発光ダイオード)により発生させてもよい。全体的な照射は、少なくとも50%の光合成有効放射(PAR、380から780nmの間)及び25から800、好適な50から500、特に50から250μmol光量子m-2-1の光合成有効光量子束密度(PPFD)になるべきである。VIS部分の分布は、日光と同様でも、或いは日光と異なって赤色及び/又は青色の比率が高く、黄色及び緑色の波長の強度が低くてもよい。
【0022】
好ましくは、栽培は、5℃から35℃の間の日平均温度及び40%から90%までの相対湿度、より好ましくは、15℃から30℃の間の日平均温度及び50%から80%までの相対湿度、特に好適な15℃から25℃の間の日平均温度及び50%から75%までの相対湿度で行った。
【0023】
「ハイドロポニックシステム」が、植物が液膜に連続的に曝露されるピートを用いない基材において栽培される栽培システムであるのに対し、「エアロポニックシステム」は、植物がピートを用いない基材、好ましくは、ポン(pon)において栽培され、定期的に水が供給されるシステムである。「フォグポニック」システムは、植物が高湿度又は蒸気に曝露されるピートを用いない基材において栽培されるシステムを示す。その結果、植物の水供給は、蒸気部分により行われる。
【0024】
栽培中にすべての必要な栄養分を植物に供給することが特に好ましい。これは、本発明に関して「施肥すること」という用語によって理解される。(それぞれの場合、100wt%の肥料(=「栄養液」)に基づいて)5から15wt%の窒素源、2から10wt%のリン源、5から25wt%のカリウム源及び1から20wt%のマグネシウム源を含む肥料が使用され、ここで、「源」という用語は、市販の肥料溶液に存在し、対応する元素を提供することができる任意の化合物に関する。
【0025】
この肥料は、栽培水100L当たり5gから250gまでの投与計画、好ましくは、栽培水100L当たり10gから150gの投与計画に使用される。
【0026】
本発明の特に好適な実施形態では、15wt%の窒素源、7wt%のリン源、22wt%のマグネシウム源及び追加の6wt%の酸化マグネシウムを含む15-7-22(+6)N-P-K-肥料が、好ましくは、栽培水100L当たり65gの投与で使用される。
【0027】
本発明に関して「収穫すること」という用語は、生長した植物材料を植物から取り除くことを意味する。収穫は、(植物がそれ以上生長及び繁殖できないように)植物全体若しくは基本的に植物全体を使用することによって、又は例えば、葉などの植物の一部のみを部分的に収穫することによって行われてもよい。好適な一実施形態において、植物の上部の茎及び葉のみ、特に好適な葉のみが収穫される。
【0028】
次の乾燥するステップでは、収穫された植物材料、好ましくは、収穫された葉が乾燥され、したがって、水が植物材料から除去される。好ましくは、得られた乾燥植物材料は、最大20wt%、好ましくは10wt%、とりわけ好ましくは、最大5wt%の残存水分含有量を有する。残存水分含有量を決定するための方法は、当該技術分野において周知である。
【0029】
好ましくは、水分含有量は、例えば、乾燥マスバランス若しくは熱重量測定によって決定される乾燥減量(LOD)法によって、又はカール・フィッシャー滴定によって決定される。
【0030】
一般に、「フィロズルシン」という用語は、アグリコンと分類される化学化合物を示す。しかしながら、自然界では、フィロズルシンは、グリコシドの形態で存在することが多く、いくつかのグリコシドが先行技術において当業者に知られている。「フィロズルシン同等物」という用語は、本明細書中で使用される場合、アグリコン及びフィロズルシングリコシドを示す。したがって、フィロズルシン同等物の量が決定される場合、それぞれ存在する限り、アグリコン及びフィロズルシングリコシドの両方が考慮されるべきであるが、脱グリコシル化によって実質的に遊離したフィロズルシンに基づいて計算される。
【0031】
典型的なフィロズルシンのグリコシドは、例えば、以下のものであるが、これらに限定されない。
【0032】
【化1】
【0033】
別の実施形態によると、好ましくは、「フィロズルシン同等物」という用語は、フィロズルシンエナンチオマー(及びそのグリコシド)の混合物を示し、エナンチオマー(2R)-フィロズルシンの量は、その他のエナンチオマーのそれぞれの量よりも多く、特に好ましくは、その他のエナンチオマーの合わせた量よりも多い。
【0034】
好適な一実施形態は、植物(複数可)が、栽培中に少なくとも1回、好ましくは数回、人工的なストレス条件、好ましくは、標的UV光曝露及び/又は化学的ストレス、とりわけ好ましくは、ジャスモナートに曝露される本発明の方法に関する。
【0035】
標的UV光曝露は、栽培時間の1~100%、好ましくは10~80%、とりわけ好ましくは50~100%の間の、可視スペクトル(400~700nm)に加えて、特定の質及び量のUV光、全発光スペクトル(UVプラスVIS、315~700nm)の1から25%、好ましくは、2から10%の好ましいUV-A(400~315nm)光、とりわけ好ましくは、340~380nmの波長範囲のUV-Aによる植物の連続的又はパルス曝露を意味する。
【0036】
「ジャスモナート」という用語は、一般にオキシリピッドの群からの脂質ベースの植物ホルモンを示す(アバンシ(Avanci)NC、ルーチェ(Luche)DD、ゴールドマン(Goldman)GH、ゴールドマン.MH、「ジャスモナートは植物防御及び繁殖を含む複数の機能を有する植物ホルモンである(Jasmonates are phytohormones with multiple functions, including plant defense and reproduction)」、ジェネティクス・アンド・モレキュラーリサーチ(Genetics and Molecular Research)、2010年3月16日、第9巻(1):p.484-505)。ジャスモナートのいくつかの誘導体、例えば、ジャスモン酸異性体、メチルジャスモナート異性体、12-オキソフィトジエン酸並びにロイシン及びイソロイシンなどのいくつかのアミノ酸と結合したジャスモン酸異性体が当該技術分野において知られており、とりわけジャスモナートが植物界において一般的である。
【0037】
好適な一実施形態は、特に(-)-(3R,7R,9Z)-ジャスモン酸、(+)-(3S,7S,9Z)-ジャスモン酸、(+)-(3R,7S,9Z)-エピジャスモン酸及び(-)-(3S,7R,9Z)-エピジャスモン酸及び/又はそれらの混合物及び/又はそれらのそれぞれの塩及び/又はそれらのそれぞれのメチルエステルに関する。
【0038】
本発明に関して、メチルジャスモナート、好ましくは(-)-メチル-(3R,7R,9Z)-ジャスモナート若しくは(+)-メチル-(3S,7S,9Z)-ジャスモナート又はそれらの混合物を使用することが特に好ましい。
【0039】
別の好適なジャスモナート誘導体は、特に、ジャスミンからの抽出物又は精油(ジャスミンアブソリュート(absolue))などの天然の供給源由来の(-)-メチル-(3R,7R,9Z)-ジャスモナートである。
【0040】
驚くべきことに、ジャスモナートの適用により、収穫時に植物の葉中のジヒドリソクマリン(dihydorisocoumarine)及び特にフィロズルシン同等物の含有量が増加することがわかった。この発見は、ジヒドリソクマリン(dihydorisocoumarine)及びフィロズルシン合成のために植物内のどの経路でシグナル伝達されるかがわかっていないため、特に驚くべきことである。
【0041】
別の好適な実施形態は、植物(複数可)のジャスモナートへの曝露が葉への適用及び/又は栽培水により、及び/又は気体形態で行われる本発明の方法に関する。
【0042】
「葉への適用」は、物質がシリンジ又は同様に適した道具によって葉に直接適用される方法である。ジャスモナートはまた、所望の量を栽培水に単に加えることによって、又はそれを気体形態で植物に提供することによって適用されてもよい。
【0043】
好適な一実施形態は、植物(複数可)が栽培中に少なくとも1回、好ましくは数回、0.1mMから10mMの総量のジャスモナートに曝露される本発明の方法に関する。
【0044】
さらに別の好適な実施形態は、土及び/又はピートを用いない基材が、バーミキュライト、ロックウール、ココナツ繊維、パーライト、ポン、セラミス、火山灰、火山灰細粒、ススキ繊維、ゼオリス、溶岩、軽石から選択される本発明による方法に関する。
【0045】
別の好適な実施形態は、植物(複数可)が15から30℃、好ましくは18から26℃の温度で栽培される本発明による方法に関する。
【0046】
さらに別の好適な実施形態は、植物(複数可)が、12から5時間の人工的な無照明時間に対して12から19時間の人工的な照明時間、好ましくは、7から9時間の人工的な無照明時間に対して15から17時間の人工的な照明時間で栽培される本発明による方法に関する。
【0047】
本発明の特に好適な実施形態では、植物(複数可)は、8時間の人工的な無照明時間に対して16時間の人工的な照明時間で栽培される。
【0048】
好適な一実施形態は、複数の植物が栽培され、植物が、最大25植物/mの栽植密度、好ましくは、最大20植物/mの栽植密度で栽培される本発明による方法に関する。
【0049】
別の好適な実施形態は、植物(複数可)がエブアンドフロー、栄養膜、点滴灌漑、細流灌漑、ディープウォーター、エアロポニック又はアクアポニックシステムで栽培される本発明による方法に関する。
【0050】
「エブアンドフロー」システムとは、植物が植栽トレイの底部から栽培水に連続的に曝露され、その後、植栽トレイが水に曝露されない期間が続くシステムを示す。
【0051】
「栄養膜」システムとは、栄養液が加えられた連続的な栽培水膜中に植栽トレイが立てられているシステムを示す。
【0052】
「点滴灌漑」システムとは、栽培水がバルブ、パイプ、管及び放出源のネットワークにより直接単一の植物に散布されるシステムを示す。「細流灌漑」システムとは、点滴灌漑システムの特定の実施形態を示す。
【0053】
「ディープウォーター」システムは、植物が栽培水中で栽培されるシステムを示す。これは、植栽トレイが栽培水で満たされたタンク中に立てられていることを意味する。
【0054】
好適な一実施形態は、ステップd)が前の収穫後の少なくとも20日間の期間の後、少なくとも1回繰り返される、好ましくは、ステップd)がそれぞれ前の収穫後の少なくとも20日間の期間の後、2、3、4、5回又はそれ以上繰り返される本発明による方法に関する。
【0055】
さらに別の好適な実施形態は、茎及び葉がステップd)で収穫され、ステップe)で葉及び茎材料を乾燥した後、植物材料が、好ましくは、空気分離、空気浮遊又はふるい分けから選択される方法によって葉及び茎材料に分離されて、少なくとも75wt%、好ましくは少なくとも85wt%、とりわけ好ましくは少なくとも95wt%の葉材料からなるか、又はそれを含む植物材料を得る本発明による方法に関する。
【0056】
本発明の第2の態様は、好ましくは、本発明による方法によって得ることができる乾燥植物材料に関し、乾燥植物材料の総量に基づいて、少なくとも2.5wt%、好ましくは少なくとも3wt%、特に好ましくは少なくとも4wt%のフィロズルシン同等物の含有量を有し、且つ/又は乾燥植物材料は、乾燥植物材料の総量に基づいて、2.0wt%未満、好ましくは1.5wt%未満、より好ましくは1wt%未満、特に好ましくは0.5wt%未満のヒドランゲノール同等物を含み、好ましくは、乾燥植物材料が、葉からなるか、又は主として葉からなる。
【0057】
一般に、「ヒドランゲノール」という用語は、アグリコンと分類される化学化合物を示す。しかしながら、自然界では、ヒドランゲノールは、グリコシドの形態で存在することが多く、いくつかのグリコシドが先行技術において当業者に知られている。さらに、ヒドランゲノールは、開鎖型、いわゆる、ヒドランゲ酸又はそのグリコシドとして存在する場合もある。「ヒドランゲノール同等物」という用語は、本明細書中で使用される場合、アグリコン及びヒドランゲノールグリコシドを示す。したがって、ヒドランゲノール同等物の量が決定される場合、それぞれ存在する限り、アグリコン及びヒドランゲノールグリコシドの両方が考慮されるべきであるが、脱グリコシル化によって実質的に遊離したヒドランゲノールに基づいて計算される。
【0058】
典型的なヒドランゲノールのグリコシドは、例えば、以下のものであるが、これらに限定されない。
【0059】
【化2】
【0060】
好ましくは、「ヒドランゲノール」という用語は、上記のアグリコンのみを示す。この場合、ヒドランゲノールの量が決定されるとき、存在する場合はアグリコンのみが考慮されるべきである。
【0061】
好適な一実施形態は、乾燥植物材料の総量により、20wt%未満、好ましくは10wt%未満の残存水分を有する本発明による乾燥植物材料に関する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】さまざまな濃度のメチルジャスモナート(MeJ)による処理後のフィロズルシン含有量を示す(+/-標準偏差、アグリコン、乾燥し、再び湿らせた若葉の発酵後にUPLCにより決定された)を示す。MeJ適用直後;C=対照:0mM;V1:0.1mM、V2:0.5mM、V3:1mM;V4:10mMのMeJ(n=24m、p=0.01;異なる文字は統計的有意性を意味する)。
図2】遺伝子型アマギアマチャを用いたハイドロポニックシステムにおける対象の施肥及び栽培の影響を示す。
図3】最大8日間の過程の最大5回のMeJ適用(5mM)の影響を示す。最後の適用の1日後に植物サンプルを採取した。遺伝子型オオアマチャ。
図4】最大9回のMeJ適用の影響を示す。各サンプル採取日に、サンプルを対照及びMeJ処理植物から採取した(各群の90の個々の植物サンプルを採取した9回の適用後の最後のサンプル採取日を除いて、各サンプル採取日に各群に対して18の複合サンプル)。
図5】4回のMeJ適用(5mM溶液)の影響を示す。最後の適用の1日後に植物サンプルを採取した。遺伝子型は、オオアマチャである。
図6】4回のMeJ適用(5mM溶液)の影響を示す。最後の適用の1日後に植物サンプルを採取した。遺伝子型は、アマギアマチャである。
図7】4回のMeJ適用(5mM溶液)の影響を示す。最後の適用の1日後に植物サンプルを採取した。遺伝子型は、アマギアマチャである。
図8】UV-A光及びMeJ適用(5mM溶液)の影響を示す。最後の適用の1日後に植物サンプルを採取した。
図9】UV-A光及びMeJ適用(5mM溶液)の影響を示す。最後の適用の3日後に植物サンプルを採取した。
図10】UV-Aピークを伴うLEDパネルのスペクトル強度(A)対UV-Aピークを伴わない使用したLEDパネルの波長(B)を示す。
【実施例
【0063】
[実施例1]
フィロズルシン及びヒドランゲノール同等物の定量
フィロズルシン及びヒドランゲノール同等物の定量のために、採取した葉を40℃で72時間乾燥した。その後、分析前に、サンプルを、乳鉢を使用して均質化し、湿らせ、発酵させた。発酵を、水(200μL)を加えることによって行い、最後にメタノール(1800μL)で止め、続いて、30分間の超音波抽出及びろ過(メンブランフィルターChromafil XtraPTFE-20/25)を行った。サンプルのUPLC分析をAcquity UPLC ελPDA検出器及び市販の逆相C18カラム(Luna Omega 1.6μm PolarC18 50×2.1mm)を備えたWaters Acquity UPLC(登録商標)I-クラスシステムにおいて行った。酸性化水(0.1%ギ酸)及びアセトニトリルからなる二成分溶媒系を使用した。検出波長は254nmとし、クロマトグラフィーデータをEmpore(商標)3Pro2010によって処理した。
【0064】
[実施例2]
メチルジャスモナートで処理されるハイドランジア・マクロフィラ亜種セラタ「オオアマチャ」の栽培
(会社Kotterheinrich、レンゲリッヒ(Lengerich)が繁殖した)発根した挿し穂を、Osnabruck University of Applied Sciences、ハステキャンパス(農業造園学科(Department of Agricultural and Landscape Architecture))の試験農園の温室に置いた。1週間の順応後、植物をKlasmann-Deilmann GmbHの粘土基材を満たした13cmの鉢(容量約1リットル)に植えた。基材は、80%のピート及び粘土並びに1リットル当たり210mgの窒素、150mgのホスファート、270mgのカリウム、100mgのマグネシウム及び150mgの硫黄の元肥、並びに微量元素からなるものであった。植物を56植物/mで四角形において、換気装置を夜間18℃及び日中20℃に設定した。
【0065】
6週間後に、25の実験植物を選択し、実験設計のフリースマット及びMyPexフィルムを備えたテーブルに置いた。
【0066】
高い屋外温度及び高照射のため、温室の小室を実験の間中、遮光した。実験前及び実験中、手作業で植物に水をまいた。さらに、試験期間を除いて、全栽培期間の間、葉への適用として0.5wt%の濃度で週に1回、Planta Dungermittel GmbHの液体肥料Ferty3Megaを適用した。
【0067】
その後、植物を異なる濃度のメチルジャスモナートに曝露させた。植物がフィロズルシン含有量に関して先天的に異なる可能性を排除するため、及び植物のこの先行する(侵襲的)サンプル採取(すなわち、葉の切り取り)が結果に影響を与えないことを確実にするために、最初のメチルジャスモナート適用前にすべての植物から葉のサンプルを採取した。
【0068】
さまざまな濃度のメチルジャスモナートの適用後にフィロズルシン含有量が増加することが確認できた(図1)。
【0069】
[実施例3]
ハイドロポニックシステムにおけるハイドランジア・マクロフィラ亜種セラタ「アマギアマチャ」の栽培
ハイドロポニック試験の出発材料は、遺伝子型「アマギアマチャ」のハイドランジア・マクロフィラ亜種セラタの植物である。選択した遺伝子型は、レンゲリッヒにある会社「Kotterheinrich Hortensienkulturen」のお茶ハイドランジアコレクションからのものである。
【0070】
幼植物を発根させた後、遺伝子型「アマギアマチャ」の75の植物を会社Floraguardの農業用バーミキュライト基材に植え、ハイドロポニックシステムに移した。このハイドロポニックシステムは、栄養膜技術システム(NFT)である。この技術は、薄い栄養膜により水及び栄養分を植物に供給するハイドロポニックシステムを示す。
【0071】
幼植物が順応したら、これらの植物にCompo Expertの肥料溶液Hakaphos(登録商標)blau(10wt%の窒素、4wt%のホスファート、7wt%のカリウム及び2wt%のマグネシウム)を与えた。
【0072】
最初の5週間は、植物を0.1wt%のHakaphos(登録商標)blau栄養液及び5.8のpHでNFTシステムにおいて24時間栽培した。さらに2週間後、栄養液を0.2wt%のHakaphos(登録商標)blauに増加させた。その後、YaraTera(商標)KRISTA MAG(硝酸マグネシウムフレーク、低塩化物、スルファートフリー、完全に水溶性、15wt%のMgO)を0.2wt%のHakaphos(登録商標)blauに添加した。pHを全期間5.8に維持した。
【0073】
18~22℃の平均温度及び約60%の湿度において、Future LED(登録商標)のP1-500-VIS LEDランプにより238μmol/(m×s)(日光に相当するPAR)で16時間、植物に照射した。キノコバエ幼虫に対してNeudomuk(登録商標)(Neudorff会社)による水処理を3週目の栽培に適用した。同様に、4週目の栽培にアブラムシ及びハダニに対して植物を処理する必要があり、ここでは、SyngentaのVertimec pro(登録商標)及びProgemaのSpuzit(登録商標)の薬剤、接触及び採食効果によるダニ駆除剤及び殺虫剤の両方を使用した。新たな害虫の発生及び病気の葉に関する植物の定期的な検査を週に1回行った。NFT植物及び隣接する領域の清潔も管理した。
【0074】
肥料による改良後の3時点に植物のサンプル採取を行った。分析のために実験室の乾燥キャビネットにサンプルを移し、ここで、植物を40℃で48時間乾燥した。植物は、良好に発育し、実施例1のピート基材において観察可能なものよりも多く、大きな根を形成した。
【0075】
UPLC測定のために調製したサンプルを、乳鉢で乳棒により均一にすりつぶした。乳鉢ですりつぶした後、代表的なサンプルをキャップ(2mL)に入れ計量し、平均して10mgから17mgの間であった。次に、0.2mLの水を添加し、サンプルを40℃で2時間インキュベートした。その後、1.8mLのメタノールをサンプルに添加し、さらなるステップにおいて、サンプルを超音波浴で30分抽出した。抽出後、UPLCに充填する前にサンプルを0.2μmメンブランフィルターに通す必要があった。ヒドランゲノール(HG)及びフィロズルシン(PD)の定量は、mg/mLに外部較正してUPLCによって決定した。
【0076】
保持時間により、UV検出器によって物質の検出を行った。結果は、図2からわかる。
【0077】
[実施例4]
繰り返しのメチルジャスモナート適用後のフィロズルシン蓄積
実施例3に記載されているとおりに栽培した「オオアマチャ」ハイドランジアの15の植物(又は9回のメチルジャスモナート適用の試験に関しては90の植物)を、さまざまな時点(1回、3回、5回、7回及び9回)において5mMのメチルジャスモナートで処理した。それを超えてさらに適用しても乾物中のフィロズルシン含有量に有意な効果がない、「飽和点」に達するために何回のメチルジャスモナート適用を要するかを試験する必要がある。
【0078】
10mM未満のMeJAの適用に関して葉の重量、生育速度、乾物、光合成能、病気及び健康な生長などの生理学的効果は、どの試験でも検出できなかった。
【0079】
2回以上のメチルジャスモナート適用が、葉の乾物中のフィロズルシン含有量に対して有益な影響があることは図3から明らかである。これらの有益な効果は、各群に90の植物を使用した、図4に示されるとおりの合計9回MeJを適用することによる2020年の別の実験において実証することができた。
【0080】
図4からわかるとおり、上記のMeJ適用に関する「飽和点」は、合計3から5回の間の適用である。
【0081】
同様に、これらの結果は、図5に示されるとおり各群に15の植物を使用した2021年に首尾よく確認された。
【0082】
葉の乾物中のフィロズルシン含有量に対するMeJ適用の有益な効果はまた、図6に示されるとおり、別の遺伝子型(アマギアマチャ)を使用して2020年(各群の50の個々の植物のサンプル採取)にも示された。
【0083】
同様に、2021年に各群の15の個々の植物からサンプル採取することにより、図7に示される結果からわかるとおり、図6に示される結果が再現された。
【0084】
[実施例5]
UV-A処理及びメチルジャスモナート適用の組み合わせ後のフィロズルシン蓄積。
既に記載されているものと同じ様式で、64の植物(遺伝子型「オオアマチャ」)を温室で栽培した。それぞれ16の植物を含む4群を無作為に構成した。1群を通常の条件下(人工光なし、MeJ適用なし)で栽培した。別の1群を、Sanlight M30モジュールを使用して追加の人工光(PPF:100~130μmol/s)下で栽培した。他の2群を追加の5.49%のUV-A光作用(375nmのUV-Aピーク、PFF 300~400nm:3.5μmol/s;植物の高さで判断される合計PPF:100~130μmol/s)をもたらす改変されたSanlight M30モジュール下で栽培した。これらの2群のうちの1群も既に記載されているものと同じ様式でMeJで4回処理した。これらの条件下で4群のすべての栽培を7日間続けた後、最初のサンプルを採取した。
【0085】
図8に示される結果から、特にUV+MeJが乾燥葉中のフィロズルシン含有量に対して有益な効果を有すること、並びにUV及びMeJ処理の組み合わせが、収穫前にMeJにより誘発された上昇したフィロズルシン含有量の一過性の性質を低下させること(図9)を結論づける。比較のために、使用したそれぞれのUV-VIS及びVIS LEDパネルのスペクトルを図10に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】