(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】増強された活性を有する担持された水素化処理触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 31/34 20060101AFI20241010BHJP
B01J 37/20 20060101ALI20241010BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20241010BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20241010BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20241010BHJP
C10G 45/08 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
B01J31/34 M
B01J37/20
B01J37/02 101E
B01J37/08
B01J37/00 D
C10G45/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525920
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022080805
(87)【国際公開番号】W WO2023079070
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524161209
【氏名又は名称】ケッチェン・ネザーランズ・ビー・ブイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴラール,チョスティル
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲラール,バスティアン・マールテン
(72)【発明者】
【氏名】レンケマ-クリシナ,ヴィクトリア・アンドレーヴナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィアマン,ウィルヘルムス・クレメンス・ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】エイジスバウツ-スピコバ,ソナ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、担体、少なくとも1つのVI族金属、少なくとも1つのVIII族金属、及びポリマーを含む担持された触媒を提供する。担持された触媒において、VI族金属とVIII族金属とのモル比は、約1:1~約5:1であり、ポリマーは、炭素骨格を有し、少なくとも1つのヘテロ原子を有する官能基を含む。また、このような担持された触媒を調製するためのプロセス、ならびに担持された触媒を使用する水素化処理、水素化脱窒素、及び/または水素化脱硫のための方法も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体、少なくとも1つのVI族金属、少なくとも1つのVIII族金属、及びポリマーを含む担持された触媒であって、前記VI族金属と前記VIII族金属とのモル比が、約1:1~約5:1であり、前記ポリマーが、炭素骨格を有し、少なくとも1つのヘテロ原子を有する官能基を含む、前記担持された触媒。
【請求項2】
前記担体が、炭素、1つ以上の無機酸化物との組み合わせの炭素、ボリア、チタニア、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、中に分散したシリカ-アルミナを有するアルミナ、アルミナ被覆シリカ、シリカ被覆アルミナ、ホウ素を含有するアルミナ、ケイ素を含有するアルミナ、チタンを含有するアルミナ、またはこれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせである、請求項1に記載の担持された触媒。
【請求項3】
前記ポリマーの前記官能基が、カルボン酸基またはアミド基である、請求項1に記載の担持された触媒。
【請求項4】
前記ポリマーが、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリアクリル酸、ポリ(2-カルボキシエチル)アクリレート、ポリ(N-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、または前述のうちの任意の2つ以上のコポリマーである、請求項1に記載の担持された触媒。
【請求項5】
前記ポリマーが、ポリアクリル酸またはポリアクリルアミドである、請求項1に記載の担持された触媒。
【請求項6】
前記VI族金属が、モリブデン及び/またはタングステンであり、かつ/または前記VIII族金属が、ニッケル及び/またはコバルトである、請求項1~5のいずれか1項に記載の担持された触媒。
【請求項7】
前記担体、前記VI族金属、及び前記VIII族金属の総重量に対して、約1.5重量%以上のポリマー担持量を有し、前記VI族金属及び前記VIII族金属が、それらの酸化物として表される、請求項1~5のいずれか1項に記載の担持された触媒。
【請求項8】
約0.5mm~約5mmの平均粒径を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の担持された触媒。
【請求項9】
前記担体が、前記担体、前記VI族金属、及び前記VIII族金属の総重量に対して、約40重量%~約80重量%であり、前記VI族金属及び前記VIII族金属が、それらの酸化物として表される、請求項1~5のいずれか1項に記載の担持された触媒。
【請求項10】
前記担体が、炭素、またはホウ素を含有するアルミナ、ケイ素を含有するアルミナ、及び/またはチタンを含有するアルミナである、請求項2に記載の担持された触媒。
【請求項11】
水素化処理、水素化脱窒素、及び/または水素化脱硫のための方法であって、炭化水素供給物と請求項1~10のいずれか1項に記載の担持された触媒とを接触させることを含む、前記方法。
【請求項12】
担持された触媒を形成するためのプロセスであって、
I)担体、1つ以上のモノマー種、溶媒、ならびにペルオキソモリブドコバルテート化合物または少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物を、以下の組み合わせ:
a)担体、1つ以上のモノマー種、及び溶媒、
b)担体、1つ以上のモノマー種、ならびにペルオキソモリブドコバルテート化合物もしくは少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物、または
c)担体及び含浸溶液で、含浸された担体を形成し、続いて前記含浸された担体を1つ以上のモノマー種と混合、のいずれかにおいて一緒にして、
モノマー含有混合物を形成することであって、前記1つ以上のモノマー種が、前記溶媒に可溶であり、炭素-炭素不飽和、及び少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つの官能基を有する、前記形成することと、
II)前記モノマー含有混合物中の前記1つ以上のモノマー種の少なくとも一部の重合を開始して、重合生成物を形成することと、
III)I)における前記モノマー含有混合物が、a)と同様に形成される場合、
A)II)における前記重合中に、含浸溶液と前記モノマー含有混合物とを接触させて、または
B)前記重合生成物と含浸溶液とを接触させて、
担持された触媒を形成することであって、前記VI族金属と前記VIII族金属とのモル比が、約1:1~約5:1であり、前記含浸溶液が、溶媒、少なくとも1つのVI族金属、及び少なくとも1つのVIII族金属を含む、前記形成することと、を含む、前記プロセス。
【請求項13】
単一の含浸ステップが、
a)I)において、担体、1つ以上のモノマー種、及びペルオキソモリブドコバルテート化合物または少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物を一緒にする場合、
b)I)において、担体及び含浸溶液を一緒にする場合、または
c)III)において、実行される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記担持された触媒から過剰な溶媒を除去することをさらに含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記重合が、前記過剰な溶媒の除去中に実行される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記担持された触媒を硫化することをさらに含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項17】
I)における前記モノマー含有混合物が、b)と同様に形成される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項18】
前記モノマー種の前記官能基の前記ヘテロ原子が、窒素、酸素、リン、及び/または硫黄を含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項19】
前記モノマー種の前記官能基が、カルボン酸基、エステル基、カルボキシル基、またはアミド基である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項20】
前記モノマー種が、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、アクリルアミド、またはN-ヒドロキシエチルアクリルアミドである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項21】
前記モノマー種が、アクリル酸またはアクリルアミドである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項22】
前記モノマー種が、前記担体、前記VI族金属化合物、及び前記VIII族金属化合物の総重量に対して、約1.5重量%以上の量であり、前記VI族金属化合物及び前記VIII族金属化合物が、酸化物として表される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項23】
前記担体が、炭素、ボリア、チタニア、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、中に分散したシリカ-アルミナを有するアルミナ、アルミナ被覆シリカ、シリカ被覆アルミナ、ボリアを含有するアルミナ、及び/またはチタニアを含有するアルミナである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項24】
化学物質が、開始剤として用いられ、前記化学物質が、過硫酸塩を含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項25】
前記溶媒が、水である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項26】
前記VI族金属化合物が、酸化物またはオキソ酸である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項27】
前記VIII族金属化合物が、炭酸塩、水酸化物、またはヒドロキシ炭酸塩である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項28】
前記VI族金属化合物が、モリブデン化合物及び/またはタングステン化合物であり、かつ/または前記VIII族化合物が、ニッケル及び/またはコバルト化合物である、請求項25~27のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項29】
ペルオキソモリブドコバルテート化合物が使用され、前記担体が、アルミナ、シリカを含有するアルミナ、ボリアを含有するアルミナ、チタニアを含有するアルミナ、またはこれらのうちの任意の2つ以上の混合物である、請求項12~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記担体が、前記プロセスのステップI)の前に焼成及び/または押出成形されている、請求項12~29のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記担体が、約0.5mm~約5mmの平均粒径を有し、前記担持された触媒が、約0.5mm~約5mmの平均粒径を有する、請求項12~29のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項32】
前記担体が、ホウ素を含有するアルミナ、ケイ素を含有するアルミナ、チタンを含有するアルミナ、またはこれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせである、請求項28に記載のプロセス。
【請求項33】
I)における前記モノマー含有混合物が、b)またはc)と同様に形成され、前記担体が、アルミナ、シリカを含有するアルミナ、ボリアを含有するアルミナ、チタニアを含有するアルミナ、またはこれらのうちの任意の2つ以上の混合物である場合、前記重合が、前記モノマー含有混合物を約50℃以上の1つ以上の温度に加熱することによって開始される、請求項12~31のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項34】
請求項12~30のいずれか1項に記載のように形成された担持された触媒。
【請求項35】
前記VI族金属が、モリブデン及び/またはタングステンであり、かつ/または前記VIII族化合物が、ニッケル及び/またはコバルトである、請求項34に記載の担持された触媒。
【請求項36】
約0.5mm~約5mmの平均粒径を有する、請求項34または35に記載の担持された触媒。
【請求項37】
前記担体が、前記担体、前記VI族金属、及び前記VIII族金属の総重量に対して、約40重量%~約80重量%であり、前記VI族金属及び前記VIII族金属が、それらの酸化物として表される、請求項34または35に記載の担持された触媒。
【請求項38】
水素化処理、水素化脱窒素、及び/または水素化脱硫のための方法であって、炭化水素供給物と請求項33に記載の担持された触媒とを接触させることを含む、前記方法。
【請求項39】
約0.5:2~約1.5:2のコバルト:モリブデン比で、コバルト及びモリブデンを含む、ペルオキソモリブドコバルテート化合物。
【請求項40】
前記コバルト:モリブデン比が、約0.75:2~約1.25:2である、請求項39に記載のペルオキソモリブドコバルテート化合物。
【請求項41】
ペルオキソモリブドコバルテート化合物を形成するためのプロセスであって、
i)極性溶媒中で、少なくとも1つのモリブデン化合物及び少なくとも1つの酸化剤を一緒にして、モリブデン含有混合物を形成することと、
ii)前記モリブデン含有混合物と少なくとも1つのコバルト化合物とを組み合わせて、約0.5:2~約1.5:2のコバルト:モリブデン比でモリブデン-コバルト混合物を形成することと、
ii)前記モリブデン-コバルト混合物を噴霧乾燥させて、前記ペルオキソモリブドコバルテート化合物を得ることと、を含む、前記プロセス。
【請求項42】
前記酸化剤が、過酸化水素である、請求項41に記載のプロセス。
【請求項43】
モリブデンと過酸化水素とのモル比が、約1:4~約1:7の範囲である、請求項42に記載のプロセス。
【請求項44】
前記モリブデン化合物が、酸化モリブデンであり、かつ/または前記コバルト化合物が、炭酸コバルトである、請求項41~43のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項45】
前記コバルト:モリブデン比が、約0.75:2~約1.25:2である、請求項41に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VI族金属及びVIII族金属を含む濃縮溶液から形成される担持された触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化処理、水素化脱硫、及び/または水素化脱窒素のための様々な触媒が、知られており、及び/または市販されている。これらの触媒のうちのいくつかが、モリブデン、ニッケルまたはコバルト、及びリンを含有する、これらの触媒の多くは、担体上で担持され、通常、細孔容積含浸によって調製される。当該技術分野は、特に、水素化処理、水素化脱硫、及び/または水素化脱窒素のためのより高い活性を有する、異なるより良好な触媒を作製するように継続的に努めている。
【0003】
水素化処理触媒は、典型的には、活性金属を含有する溶液を用いた多孔質担体材料の含浸、続いて、乾燥または焼成のいずれかによって調製される。焼成触媒は、高金属分散をもたらす、強い金属-支持体相互作用を示す傾向がある。しかしながら、焼成触媒における強い金属-支持体相互作用は、触媒のより弱い固有活性をもたらすと理論化される。非焼成触媒は、典型的には、低い金属-支持体相互作用及び本質的に高い活性を示す。非焼成触媒における低い金属-支持体相互作用に起因して、金属は、凝集する傾向がある(不良な金属分散)。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、VI族金属及びVIII族金属を含む濃縮溶液から担持された触媒を調製するためのプロセス、ならびにこのようなプロセスによって調製された触媒を提供する。本発明に従って調製された触媒は、水素化脱硫及び水素化脱窒素において高い活性を示す。ポリマー変性されている本発明の触媒では、水素化金属は、ポリマー変性の不在下での類似の触媒よりも分散していることが示唆されている。本発明の特徴は、触媒が含浸添加剤としてリンを含有しないことである。本発明の別の特徴は、本発明のリンを含まない触媒を形成する場合に使用され得るペルオキソモリブドコバルテート化合物である。ポリマーを含有しない類似のリンを含まない触媒と比較して、触媒がポリマー含有である本発明による触媒の触媒活性の増加が観察される。
【0005】
キレート化ポリマーは、金属(例えば、Co、Ni、Mo)の存在下で、担体材料(例えば、無機酸化物)の細孔構造内で合成され得る。これらのキレート化ポリマーの存在は、ポリマーを含有しない触媒と比較して、水素化処理触媒の活性を増強させる。水素化脱硫活性及び水素化脱窒素活性の両方は、ポリマーを含有しない触媒と比較して増加し、これによって、本発明の触媒は、炭化水素分解前処理(HC-PT)、流体触媒分解前処理(FCC-PT)、及び超低硫黄ディーゼル(ULSD)が挙げられるが、これらに限定されない、様々な水素化処理用途において有用となる。
【0006】
本発明の実施形態は、担持された触媒である。担持された触媒は、担体、少なくとも1つのVI族金属、少なくとも1つのVIII族金属、及びポリマーを含む。触媒では、VI族金属とVIII族金属とのモル比は、約1:1~約5:1である。触媒中のポリマーは、炭素骨格を有し、少なくとも1つのヘテロ原子を有する官能基を含む。
【0007】
本発明の別の実施形態は、約0.5:2~約1.5:2のコバルト:モリブデン比で、コバルト及びモリブデンを含有するペルオキソモリブドコバルテート化合物である。
【0008】
本発明の他の実施形態は、上記の担持された触媒及び上記のペルオキソモリブドコバルテート化合物を形成するためのプロセス、ならびに上記の担持された触媒を使用した水素化処理、水素化脱窒素、及び/または水素化脱硫のための方法を含む。
【0009】
本発明のこれら及び他の実施形態及び特徴は、以下の説明、図面、及び添付の特許請求の範囲からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例4で調製された試料における重合の証拠を提供するFT-IRスペクトルを示す。
【
図2-1】実施例6にあるように調製された試料のSEM-EDXラインスキャンを示す。
【
図2-2】実施例6にあるように調製された試料のSEM-EDXラインスキャンを示す。
【
図2-3】実施例6にあるように調製された試料のSEM-EDXラインスキャンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書全体を通して、「水素化金属(hydrogenation metal)」及び「水素化金属(hydrogenation metals)」という句は、VI族金属(metal)または金属(metals)、及びグループVIII金属(metal)または金属(metals)を総称して指す。本明細書全体を通して使用される場合、「VI族金属」という用語は、VIB族の金属を指す。本明細書全体を通して使用される場合、「VI族金属三酸化物として」、「VI族金属三酸化物として報告される」、「VI族金属三酸化物として計算される」、「それらの酸化物として表される」という句、及びそれらの一酸化物としてのVIII族金属の類似の句は、別段の記載がない限り、数値がそれぞれの酸化物の場合、VI族金属またはVIII族金属の量または濃度を指す。例えば、炭酸ニッケルが使用され得るが、ニッケルの量は、酸化ニッケルの値として記載される。通常の実施とは対照的に、本発明における触媒は、含浸添加剤としてリンを含有しない。したがって、本発明における触媒は、本明細書において、リンを含まない触媒と称されることがある。いくつかの事例では、リンは、触媒のポリマー上の官能基中に存在し得る。
【0012】
本明細書全体を通して使用される場合、「含浸」という用語は、担体の含浸を指す場合、物質、溶液、または混合物が担体の細孔に浸透することを意味する。
【0013】
本発明の実施において使用される含浸溶液は、溶媒、少なくとも1つのVI族金属、及び少なくとも1つのVIII族金属を含み、VI族金属とVIII族金属とのモル比は、約1:1~約5:1である。
【0014】
VI族金属は、モリブデン、タングステン、及び/またはクロムであり、好ましくは、モリブデンまたはタングステン、より好ましくは、モリブデンである。VIII族金属は、鉄、ニッケル、及び/またはコバルトであり、好ましくは、ニッケル及び/またはコバルトである。金属の好ましい組み合わせは、ニッケル及び/またはコバルトと、モリブデン及び/またはタングステンとの組み合わせを含む。触媒の水素化脱硫活性が重視される場合、コバルトとモリブデンとの組み合わせが有利であり、好ましい。触媒の水素化脱窒素活性が重視される場合、ニッケルとモリブデン及び/またはタングステンとの組み合わせが有利であり、好ましい。水素化金属の別の好ましい組み合わせは、ニッケル、コバルト、及びモリブデンである。
【0015】
含浸溶液を調製するために使用されるVI族金属化合物は、酸化物、オキソ酸、またはオキソまたはポリオキソアニオンのアンモニウム塩であり得、これらのVI族金属化合物は、金属がモリブデンまたはタングステンである場合、形式的に+6酸化状態である。酸化物及びオキソ酸は、好ましくは、VI族金属化合物である。本発明の実施における好適なVI族金属化合物としては、酸化クロム(III)、クロム酸アンモニウム、重クロム酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、パラモリブデン酸アンモニウム、三酸化タングステン、タングステン酸、メタタングステン酸水和物アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウムなどが挙げられる。好ましいVI族金属化合物としては、酸化クロム(III)、三酸化モリブデン、モリブデン酸、パラタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステン、及びタングステン酸が挙げられる。任意の2つ以上のVI族金属化合物の組み合わせが使用され得る。
【0016】
含浸溶液を調製するために使用されるVIII族金属化合物は、通常、酸化物、炭酸塩、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、または塩である。好適なVIII族金属化合物としては、酸化鉄、水酸化鉄、硝酸鉄、炭酸鉄、ヒドロキシ炭酸鉄、酢酸鉄、クエン酸鉄、酸化コバルト、水酸化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、ヒドロキシ炭酸コバルト、酢酸コバルト、クエン酸コバルト、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、ヒドロキシ炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、及びクエン酸ニッケルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいVIII族金属化合物としては、水酸化鉄、炭酸鉄、ヒドロキシ炭酸鉄、水酸化コバルト、炭酸コバルト、ヒドロキシ炭酸コバルト、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、及びヒドロキシ炭酸ニッケルが挙げられる。2つ以上のVIII族金属化合物の組み合わせが使用され得る。
【0017】
1つ以上の有機添加剤が任意選択的に含まれ、非酸性有機添加剤及び/または酸性有機添加剤であり得る。
【0018】
非酸性有機添加剤の場合、本明細書全体を通して使用される場合、「非酸性」という用語は、添加剤中に酸性カルボン酸基が存在しないことを意味する。非酸性有機添加剤としては、通常、少なくとも2つのヒドロキシル基及び2~約10個の炭素原子を有する化合物、ならびにこれらの化合物の(ポリ)エーテルが挙げられる。いくつかの好ましい非酸性有機添加剤は、2つのヒドロキシル基を有する。非酸性有機添加剤のための好適なタイプの化合物としては、脂肪族アルコール、脂肪族アルコールのエーテルを含むエーテル、ポリエーテル、単糖類及び二糖類を含む糖類、ならびに多糖類が挙げられる。このような化合物の例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラペンチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、及びサッカロースが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい非酸性有機添加剤としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコールなどのグリコールが挙げられる。必要に応じて、2つ以上の有機添加剤の組み合わせが使用され得る。
【0019】
任意選択的な酸性有機添加剤は、少なくとも1つの酸基、及びヒドロキシル基及び酸基から選択される少なくとも1つの官能基を有する。したがって、少なくとも、酸性有機添加剤は、1つの酸基及び1つのヒドロキシル基、または2つの酸基を有する。本明細書で使用される場合、「酸基」という用語は、─COOH部分を意味する。酸性有機添加剤は、好ましくは、少なくとも2個のカルボン酸部分を有し、好ましくは、少なくとも約3個の炭素原子を有する。酸性有機添加剤が少なくとも1つのヒドロキシル基を有することが好ましい場合がある。好適な酸性有機添加剤としては、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、酒石酸などが挙げられる。クエン酸は、好ましい酸性有機添加剤である。酸性有機添加剤の組み合わせが使用され得る。
【0020】
本発明のペルオキソモリブドコバルテート化合物は、VI族金属がモリブデンであり、VIII族金属がコバルトである場合、VI族金属及びVIII族金属を提供して、本発明による触媒を形成するために使用され得る。本発明の触媒を形成する場合、ペルオキソモリブドコバルテート化合物に加えて、1つ以上のVI族金属化合物及び/またはVIII族金属化合物が使用され得るが、追加のVI族金属化合物またはVIII族金属化合物を有さないペルオキソモリブドコバルテート化合物の使用が好ましい。
【0021】
VI族金属化合物及びVIII族金属化合物、またはペルオキソモリブドコバルテート化合物を溶解するためには、通常、極性溶媒が必要である。本発明では、極性溶媒は、プロトン性または非プロトン性であり得、一般に、極性有機溶媒及び/または水である。非プロトン性溶媒及びプロトン性溶媒を含む混合物を含む、極性溶媒の混合物が使用され得る。好適な極性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、塩化メチレンなど、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、極性溶媒は、プロトン性溶媒であり、より好ましくは、極性溶媒は、水、またはエタノールもしくはイソプロピルアルコールなどのアルコールである。2つ以上の極性溶媒の混合物が使用され得る。水は、好ましい極性溶媒である。
【0022】
モノマー及び担体が一緒になり、モノマーが含浸溶液(VI族金属化合物及びVIII族金属化合物、またはペルオキソモリブドコバルテート化合物を含有する溶液)と接触する前に重合すると、モノマーは、非極性溶媒を含む、モノマーが可溶性である任意の溶媒中で重合し得る。重合後、溶媒は、除去され得る。モノマー及び担体が一緒になり、モノマーが含浸溶液と接触する前に重合する場合、特に重合用溶媒がVI族金属化合物及び/またはVIII族金属化合物、またはペルオキソモリブドコバルテート化合物の溶解度に悪影響を及ぼす場合、溶媒の少なくとも一部の除去が好ましい。VI族金属化合物及び/またはVIII族金属化合物、またはペルオキソモリブドコバルテート化合物の不在下での重合に好適な溶媒は、用いられるモノマー(複数可)の溶解度に依存する。重合ステップにおいて使用される溶媒(複数可)は、重合ステップからの溶媒(複数可)が、VI族金属化合物及び/またはVIII族金属化合物、またはペルオキソモリブドコバルテート化合物を沈殿させない限り、VI族金属化合物及びVIII族金属化合物、またはペルオキソモリブドコバルテート化合物を用いる溶液中に存在し得る。
【0023】
含浸溶液及び担体が一緒になって、モノマーと接触する前に含浸担体を形成する場合、モノマーは、含浸溶液の溶媒と同じであっても異なっていてもよい溶媒に溶解され得る。モノマーの溶媒(複数可)は、用いられるモノマー(複数可)の溶解度に依存する。モノマーを溶解し含浸溶液を形成するために同じ溶媒を用いることが好ましいが、必要に応じて、異なる溶媒が使用され得る。
【0024】
含浸溶液を形成する溶媒は、本発明の実施において使用される含浸溶液の形成に使用されるVI族金属化合物及びVIII族金属化合物を溶解できるものでなければならず、このような溶媒は、典型的には極性溶媒である。
【0025】
モノマー種、少なくとも1つのVI族金属化合物、及び少なくとも1つのVIII族金属化合物が重合前に一緒になる場合、モノマー種は、少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物を含有する溶液に可溶であるべきである。含浸溶液が重合中に担体及びモノマー種と接触する場合、同じ溶解度の考慮が適用される、すなわち、存在するモノマー種は、少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物の存在下で、溶液に可溶であるべきである。多くの場合、モノマーが、ペルオキソモリブドコバルテート化合物または少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物を含有する溶液に可溶であるために、モノマーは、ペルオキソモリブドコバルテート化合物またはVI族金属化合物及びVIII族金属化合物が溶解される極性溶媒に少なくともいくらか可溶である。
【0026】
本明細書を通して、「モノマー」という用語は、「モノマー種」という句と同義である。モノマー種は、典型的には、3個以上の炭素原子、好ましくは、3~約12個の炭素原子、より好ましくは、3~約10個の炭素原子、いっそうより好ましくは、3~約8個の炭素原子を有する。モノマー種は、重合性部分として炭素-炭素不飽和、及び少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つの官能基を有する。ヘテロ原子(複数可)は、金属イオンとの結合または相互作用を形成し得るが、結合または相互作用の形成は必要ないと理論化されている。好ましいモノマーとしては、1つ以上の孤立電子対を有する官能基が挙げられる。好ましくは、モノマー種の官能基は、窒素、酸素、リン、及び/または硫黄を含む。好適な官能基の例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基、アミノ酸基、リン酸基、チオール基、スルホン酸基などが挙げられる。好ましい官能基としては、ヒドロキシル基、エステル基、アミド基、及びカルボキシル含有基、特にカルボン酸基が挙げられ、より好ましくは、カルボン酸基及びアミド基、特にアミド基である。
【0027】
したがって、好適なモノマー種としては、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ペンテン酸、メタクリル酸、2,3-ジメタクリル酸、3,3-ジメタクリル酸、アリルアルコール、2-スルホエチルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-カルボキシエチルアクリレート、3-エトキシ-3-オキソプロピルアクリレート、メチルカルバミルエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、硫酸ビニル、ビニルスルホン酸、2-プロペン-1-スルホン酸、リン酸ビニル、ホスホン酸ビニル、リン酸ジメチルアリル、リン酸ジエチルアリルなどが挙げられる。好ましいモノマー種としては、アクリル酸、マレイン酸、2-カルボキシエチルアクリレート、アクリルアミド、及びN-ヒドロキシエチルアクリルアミドが挙げられる。より好ましくは、アクリルアミド及びアクリル酸、特にアクリルアミドである。2つ以上のモノマー種が用いられ得、2つ以上のモノマー種が用いられる場合、コポリマーが形成される。
【0028】
本発明の触媒を形成するために使用されるモノマーの量は、溶媒を排除して、触媒を形成するために使用される他の構成要素の総重量に対する重量%として表される。本明細書全体を通して使用される場合、「触媒を形成するために使用される他の構成要素」及び「他の触媒構成要素」という句は、担体及び触媒に水素化金属を提供する化学物質を指す。例えば、(溶媒以外の)触媒の他の構成要素の総重量が100グラムである場合、10重量%のモノマーは、10グラムである。本発明の実施では、モノマーの量は、一般に、担体、VI族金属化合物、及びVIII族金属化合物を含む触媒の他の構成要素の総重量に対して、約1.5重量%以上、好ましくは、約1.5重量%~約35重量%の範囲であるが、これらの範囲外の量は本発明の範囲内であり、VI族金属化合物及びVIII族金属化合物は、それらのVI族金属酸化物及びVIII族金属酸化物として表され、任意の溶媒の重量は、排除される。より好ましくは、モノマーの量は、溶媒を排除する触媒の他の構成要素の総重量に対して、約3重量%~約30重量%の範囲、さらにより好ましくは、約5重量%~約25重量%の範囲、いっそうより好ましくは、約10重量%~約25重量%の範囲である。
【0029】
モノマー種の早期重合を防止するために、抑制剤(例えば、ラジカル捕捉剤)がモノマーに含められ得る。好適な抑制剤は、特定のモノマー(複数可)によって様々である。適切な抑制剤は、重合が開始される前に混合物中に存在する場合、少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物に悪影響を及ぼさない。望ましくは、抑制剤は、重合反応を開始することが望ましい場合、(例えば、蒸発または開始剤の導入によって)中和または除去される。
【0030】
含浸溶液の形成に使用される構成要素は、任意の順序で組み合わされ得るが、一方の構成要素は、他方の構成要素の導入前に溶媒に懸濁または溶解されることが推奨され、好ましい。好ましくは、VIII族金属化合物が最初に導入され、より好ましくは、VI族金属化合物がVIII族金属化合物の後に導入される。溶液を形成する場合、撹拌が用いられ得るが、溶液が均質になると停止され得る。類似の考慮が、モノマー、少なくとも1つのVI族金属化合物、及び少なくとも1つのVIII族金属化合物が一緒になる場合に適用され、水素化金属の化合物を、溶媒、通常は極性溶媒と組み合わせ、次いで、モノマーを添加することが好ましい。
【0031】
含浸溶液の構成要素の組み合わせは、周囲条件、すなわち室温及び周囲圧力で行われ得る。構成成分、特にVI群化合物及びVIII群化合物の溶解を促進するために、高温が必要とされることもある。このような高温は、典型的には、約50℃~約95℃、好ましくは、約60℃~約95℃の範囲である。約95℃を超える温度及び/または高圧(例えば、水熱調製)が適用され得るが、必須ではない。重合が熱的に開始されるモノマーが溶液中に含まれる場合、溶液が加熱される温度は、重合が開始される温度より低く保持されるか、または好ましくは、溶液の加熱が完了した後にモノマー種が添加される。
【0032】
溶液のさらなる意図された使用のために実用的である濃度を有する溶液を調製することは便利である。これらの溶液は、本発明において具体化されるように、担持された触媒を形成するために用いられ得る。VI族金属に基づく好適な濃度(または、組成物中に2つ以上のVI族金属が存在する場合、その合計)は、典型的には、約1.39mol/L~約6mol/Lの範囲、好ましくは、約2.1mol/L~約4.2mol/Lの範囲である。
【0033】
より濃縮された含浸溶液を調製するための方法が既知であり、例えば、国際特許公開第WO2011/023668号に記載されている。
【0034】
上に記載されたように形成される、本発明の含浸溶液は、ペルオキソモリブドコバルテート、もしくはVI族金属化合物及びVIII族金属化合物を含む溶液、または極性溶媒中の溶液である。VI族金属及びVIII族金属の濃度、ならびにそれらのための選好は、上に記載された通りである。これらの溶液では、VI族金属とVIII族金属とのモル比は、約1:1~約5:1である。
【0035】
上記のように、試薬の組み合わせが溶液を形成する際に使用される場合、異なる金属を有する種の混合物が溶液中に存在する。例えば、モリブデン化合物及びタングステン化合物が使用される場合、生成物溶液は、モリブデン及びタングステンを含む。別の例では、コバルト化合物及びニッケル化合物が使用される場合、溶液は、コバルト及びニッケルを含む。化合物のVI族金属が異なるVI族金属化合物、及び化合物のVIII族金属が異なるVIII族金属化合物のような試薬の混合物が、必要に応じて溶液組成物を形成する際に使用され得る。
【0036】
触媒を形成するための本発明のプロセスは、I)担体、1つ以上のモノマー種、溶媒、ならびに少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物またはペルオキソモリブドコバルテート化合物を、以下の組み合わせ:
a)担体、1つ以上のモノマー種、及び溶媒、
b)担体、1つ以上のモノマー種、ならびにペルオキソモリブドコバルテート化合物もしくは少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物、または
c)担体及び含浸溶液で、含浸された担体を形成し、続いて含浸された担体を1つ以上のモノマー種と混合、のいずれかにおいて一緒にして、
モノマー含有混合物を形成することであって、当該モノマー種が、溶媒に可溶であり、炭素-炭素不飽和、及び少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つの官能基を有する、形成すること、を含む。重合開始剤が、化学物質である場合、開始剤は、ステップI)において、上記a)、b)、及びc)の組み合わせのうちのいずれかに含まれ得る。ステップII)は、モノマー含有混合物中で、モノマー種の重合を開始して、重合生成物を形成することを含む。ステップIII)は、I)中のモノマー含有混合物が、a)と同様に形成され、
A)II)における重合中に、含浸溶液とモノマー含有混合物とを接触させること、または
B)重合生成物と含浸溶液とを接触させることを含む場合に実施される。
担持された触媒が形成される。本プロセスでは、VI族金属とVIII族金属とのモル比は、約1:1~約5:1である。本プロセスにおいて用いられる含浸溶液は、極性溶媒、少なくとも1つのVI族金属、及び少なくとも1つのVIII族金属を含む。例えば、乾燥によって、担持された触媒から過剰な溶媒を除去することは、推奨されるさらなるステップである。
【0037】
開始剤は、上記のプロセスに含まれ得る。上記プロセスにおいて使用される場合、開始剤は、a)、b)、またはc)に導入され得る。c)と同様に成分を組み合わせる場合、含浸された担体が形成された後に開始剤が導入される。
【0038】
本発明の特徴は、特にペルオキソモリブドコバルテート化合物が使用される場合、触媒を形成するための本発明のプロセスにおいて、担体粒子の凝集がほとんどまたはまったくないことである。生成された非凝集触媒粒子は、一般に、自由流動性であり、互いに付着しない。開始剤が使用される場合、少量の含浸溶液が担体から出てもよく、いくつかのポリマーが担体の外部に形成されてもよく、その結果、任意の凝集粒子に最小限の力を加えること(例えば、手でタップすること)によって容易に除去される何らかの凝集がもたらされる。本発明の別の特徴は、担体粒子が、触媒を形成するための本発明のプロセスによって、径及び形状において変化しないことである。例えば、約2mmの平均粒径を有する担体粒子は、約2mmの平均粒径を有する触媒粒子となる。
【0039】
触媒を形成するための本発明のプロセスでは、含浸溶液中のすべての構成要素は、含浸ステップを開始する前に溶解されなければならない。少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物、またはペルオキソモリブドコバルテート化合物が、モノマー含有混合物の一部を形成する場合、モノマー種は、好ましくは、混合物の任意の加熱が終了した後に混合物と組み合わされる。熱的に開始された重合のモノマーの場合、モノマー含有混合物の形成中の温度は、重合のための開始温度未満に保持される。
【0040】
重合反応は、通常発熱性であるため、反応槽は、少なくとも重合反応によって到達される温度に対して耐熱性でなければならない。
【0041】
好ましい実施形態では、プロセスは、極性溶媒中でペルオキソモリブドコバルテート化合物またはVI族金属化合物及びVIII族金属化合物の含浸溶液を形成し、任意選択的に、熱活性化された化学物質開始剤を添加し、次いで、担体を含浸溶液に添加し、続いて、含浸溶液と担体との混合物を、低温(例えば、30℃~60℃)で、一定時間、例えば、0.5~10時間エージングして、担体の細孔内へ含浸溶液を浸透させることを含む。含浸溶液が化学物質開始剤を含有する場合、エージング後、混合物は、好ましくは、重合反応が開始される1つ以上の温度で加熱される。一般に、選択される温度(複数可)は、重合を開始するのに必要な温度またはそれをわずかに超える温度である。重合中の熱放出の制御は、含浸溶液の一部が担体細孔から追い出され、最終触媒中のVI族金属及びVIII族金属の量を低減させることを回避するために推奨される。重合反応は、生成された発熱を介して監視され得る。重合反応が終了すると、好ましくは、生成物を乾燥させて、溶媒(複数可)を除去する。大気圧では、乾燥(溶媒除去)は、好ましくは、約25℃~約200℃、より好ましくは、約50℃~約150℃、さらにより好ましくは、約75℃~約125℃の温度である。減圧及び/または真空条件が乾燥に使用され得る。乾燥温度(複数可)は、ポリマーの分解温度よりも低くなければならず、ポリマーの分解温度は、触媒特徴(担体、VI族金属、VIII族金属、及びこれらの量)のうちの1つ以上によって様々であり得る。
【0042】
モノマー含有混合物は、少なくとも1つの担体及び少なくとも1つのモノマー種を含む。少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物、または含浸溶液は、任意選択的に、モノマー含有混合物を形成する際に、担体及び1つ以上のモノマー種に含まれる。ペルオキソモリブドコバルテート化合物または少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物をモノマー含有混合物に含めることが推奨され、好ましい。少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物がモノマー含有混合物に含まれていない場合、含浸溶液は、モノマー含有溶液の重合生成物と混合され得る、あるいは、含浸溶液は、重合中にモノマー含有混合物と接触し得る。
【0043】
本発明のプロセスでは、ポリマーを形成するためのモノマー種の重合は、多くの場合、少なくとも1つの開始剤を用いる。開始剤としては、熱、放射線(例えば、UV)、化学物質、及びこれらの組み合わせが挙げられる。開始剤が化学物質である場合、それは、通常、担持された触媒に残っており、触媒性能に影響を及ぼす可能性がある。したがって、2つ以上の開始剤が選択され得る場合、開始剤(複数可)と選択されたモノマー(複数可)とのどの組み合わせが最適な触媒性能を可能にするかを決定するために試験を実行することが有用であり得る。別の検討は、選択された開始剤(複数可)及びモノマー(複数可)が、含浸溶液中のVI族金属化合物及び/またはVIII族金属化合物の溶解度に悪影響を及ぼさないことである(例えば、沈殿を引き起こすことによって)。例えば、過硫酸塩を開始剤として用いるアクリル酸のいくつかの重合では、過硫酸カリウムは、ニッケル及びモリブデンを含有する触媒に対して過硫酸アンモニウムよりも良好な開始剤であることがわかった(国際特許公開第WO2014/056846号を参照されたい)。アクリルアミドの重合では、化学物質開始剤が使用される場合、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウムが好ましい開始剤である。特定の開始剤の効果は、触媒中に存在する水素化金属の濃度、モノマー、及び触媒作用が実施される条件によって様々であり得る。
【0044】
開始剤が化学物質(または熱または放射線と組み合わせた化学物質)である場合、モノマーの重合を開始し、溶液中に存在するモノマー、VI族金属化合物及び/またはVIII族金属化合物、またはペルオキソモリブドコバルテート化合物の溶解度に悪影響を及ぼさない、任意の好適な化学物質開始剤が使用され得る。好ましい化学物質開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩が挙げられ、より好ましくは、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウムである。過酸化水素は、好適な開始剤であるが、少なくともモノマーがアクリルアミドである場合、通常、過硫酸塩と比較してモノマーに対してより多くの量で使用される必要がある。さらに、担体は、開始剤が過酸化水素である場合、重合に影響を及ぼし、アルミナまたはチタンが担体である場合、重合が観察されることが見出された。シリカまたはアルミナとシリカとの組み合わせが担体である場合、過酸化水素を開始剤として用いる重合は観察されない。好ましくは、開始剤が過酸化水素である場合、担体は、アルミナ、チタニア、またはチタニアを含有するアルミナ、より好ましくは、アルミナである。
【0045】
好適な開始剤はまた、選択されたモノマー(複数可)の(重合)反応性に依存する。例えば、室温から80℃への温度上昇と組み合わせた過硫酸アンモニウムまたは過硫酸カリウムは、アクリル酸またはアクリルアミドの重合のための開始剤の好適な組み合わせである。しかしながら、それほど容易に重合しないモノマーの場合、異なるタイプの開始剤または開始剤の異なる組み合わせが必要であり得る。
【0046】
ポリマーの高い収率を提供する化学物質開始剤の量は、開始剤、モノマー、金属、及び担体によって様々であり得る。過硫酸塩は、特にモノマーがアクリルアミドである場合、好ましくは、モノマー1モル当たり、約1.25mmol以上、または約1.25mmol~約3mmol、より好ましくは、モノマー1モル当たり、約1.5mmol以上、または約1.5mmol~約2.75mmolであることが見出された。重量に関して、過硫酸塩は、特にモノマーがアクリルアミドである場合、モノマーの重量に対して、好ましくは、約0.4重量%以上、または約0.4重量%~約1.15重量%であり、より好ましくは、モノマーの重量に対して、約0.48重量%以上、または約0.48重量%~約1.05重量%である。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態では、ポリマーの高収率を提供する過硫酸塩の量は、特に開始剤が過硫酸アンモニウムである場合、かつ特にモノマーがアクリルアミドである場合、モノマー1モル当たり、約1.5mmol以上、好ましくは約1.75mmol以上、いっそうより好ましくは、約2mmol以上、さらにより好ましくは、約2.25mmol以上である。他の好ましい実施形態では、ポリマーの高収率を提供する過硫酸塩の量は、特に開始剤が過硫酸アンモニウムである場合、かつ特にモノマーがアクリルアミドである場合、モノマー1モル当たり、約1.5mmol~約2.5mmol、好ましくは、約1.75~約2.5mmol、より好ましくは、約2mmol~約2.5mmol、いっそうより好ましくは、約2.25mmol~約2.5mmolである。
【0048】
重量に関して、いくつかの好ましい実施形態では、ポリマーの高収率を提供する過硫酸塩の量は、特に開始剤が過硫酸アンモニウムである場合、特にモノマーがアクリルアミドである場合、モノマーの重量に対して、約0.48重量%以上、好ましくは、約0.55重量%以上、いっそうより好ましくは、約0.63重量%以上、さらにより好ましくは約0.72重量%以上である。他の好ましい実施形態では、ポリマーの高収率を提供する過硫酸塩の量は、特に開始剤が過硫酸アンモニウムである場合、かつ特にモノマーがアクリルアミドである場合、モノマーの重量に対して、0.48重量%~約0.8重量%、好ましくは、約0.55重量%~約0.8重量%、より好ましくは、約0.63重量%~約0.8重量%、いっそうより好ましくは、約0.72重量%~約0.8重量%である。
【0049】
いくつかの他の好ましい実施形態では、ポリマーの高収率を提供する過硫酸塩の量は、特に開始剤が過硫酸カリウムである場合、かつ特にモノマーがアクリルアミドである場合、モノマー1モル当たり、約1.9mmol以上、好ましくは、約2mmol以上、いっそうより好ましくは、約2.25mmol以上、さらにより好ましくは、約2.5mmol以上である。他の好ましい実施形態では、ポリマーの高収率を提供する過硫酸塩の量は、特に開始剤が過硫酸カリウムである場合、かつ特にモノマーがアクリルアミドである場合、モノマー1モル当たり、約1.9mmol~約3mmol、好ましくは、約2~約3mmol、より好ましくは、約2.25mmol~約2.75mmol、いっそうより好ましくは、約2.5mmol~約2.75mmolである。
【0050】
重量に関して、いくつかの他の好ましい実施形態では、ポリマーの高収率を提供する過硫酸塩の量は、特に開始剤が過硫酸カリウムである場合、かつ特にモノマーがアクリルアミドである場合、モノマーの重量に対して、約0.75重量%以上、好ましくは、約0.8重量%以上、いっそうより好ましくは、約0.85重量%以上、いっそうより好ましくは、約0.95重量%以上である。他の好ましい実施形態では、ポリマーの高収率を提供する過硫酸塩の量は、特に開始剤が過硫酸カリウムである場合、かつ特にモノマーがアクリルアミドである場合、モノマーの重量に対して、約0.75重量%~約1.15重量%、好ましくは、約0.8重量%~約1.15重量%、より好ましくは、約0.85重量%~約1.05重量%、いっそうより好ましくは、約0.95重量%~約1.05重量%である。
【0051】
本発明の特徴の1つは、いくつかの事例では、モノマー含有溶液の構成要素は、ペルオキソモリブドコバルテート化合物がVI族金属及びVIII族金属の供給源である場合、重合反応の開始剤として作用し得る。これらの事例では、重合反応は、ペルオキソモリブドコバルテート化合物及び担体がモノマーとともに存在する場合のみ開始する。担体またはペルオキソモリブドコバルテート化合物のいずれかが不在の場合、重合は、開始剤なしでは開始しない。有利なことには、これにより、重合反応の開始が望まれるまで、担体、または好ましくは、ペルオキソモリブドコバルテート化合物のいずれかを、溶液から排除することによって、重合開始の制御が可能になる。これらの開始剤を含まない重合の場合、担体は、通常、アルミナ、シリカを含有するアルミナ、ボリアを含有するアルミナ、チタニアを含有するアルミナ、またはこれらの担体のうちの任意の2つ以上の混合物であり、好ましくは、担体は、アルミナである。ペルオキソモリブドコバルテート化合物及びモノマーの、担体への含浸の後、典型的には周囲温度における、化学開始剤を用いない重合は、一般に、含浸された担体(モノマー含有溶液)を約50℃以上、好ましくは、約50℃~約100℃の1つ以上の温度に加熱することを伴う。
【0052】
ペルオキソモリブドコバルテート化合物と担体との組み合わせが重合を開始するように見える重合の場合、25℃で約4以上の等電点を有する担体が有効である。重合の開始は、担体がアルミナ(約7または8の等電点)及びチタン(約4~約8の等電点)であった場合に生じたが、担体がシリカ(約1~約3の等電点)であった場合は、開始は観察されなかった。
【0053】
本発明のペルオキソモリブドコバルテート化合物は、一般に、他の水素化処理触媒系よりもモリブデンに対してより高い量のコバルトを有する。ペルオキソモリブドコバルテートでは、Co:Mo比は、一般に約0.5:2~約1.5:2、より好ましくは、約0.75:2~約1.25:2、さらにより好ましくは、約1:2である。ペルオキソモリブドコバルテート化合物は、アンダーソン複合体(例えば、Co3[Co2Mo10O38H4])、及び/または類似の部分を含むと考えられる。
【0054】
本発明の実施では、ペルオキソモリブドコバルテート化合物は、最初にモリブデン化合物と酸化剤、好ましくは、過酸化水素とを接触させて、モリブデン含有混合物を形成することによって調製される。モリブデン化合物は、極性溶媒に溶解され、極性溶媒及びそれらのための選好は、上に記載された通りである。好ましい実施形態では、モリブデン含有混合物は、約30℃~約90℃、好ましくは、約40℃~約80℃、より好ましくは、約50℃~約75℃の範囲の1つ以上の温度で加熱される。
【0055】
モリブデン含有混合物は、コバルト化合物と組み合わされて、モリブデン-コバルト混合物を形成し、モリブデン-コバルト混合物は、噴霧乾燥されて、ペルオキソモリブドコバルテート化合物が得られる。好ましくは、モリブデン含有混合物は、コバルト化合物との組み合わせ中に、約30℃~約75℃、好ましくは、約40℃~約65℃の範囲の1つ以上の温度にある。噴霧乾燥は、典型的には、約150℃以上、好ましくは、約180℃の入口温度、及び約100℃の出口温度で実施される。
【0056】
ペルオキソモリブドコバルテート化合物を形成するための好適なモリブデン化合物及びコバルト化合物、ならびにそれらのための選好は、本発明の触媒のために別々に添加される場合、VI族金属化合物及びVIII族金属化合物について上に記載された通りである。
【0057】
ペルオキソモリブドコバルテートを形成するための好適な酸化剤としては、過酸化水素が挙げられる。過酸化水素は、任意の所望の濃度で使用され得るが、より高い濃度、例えば、約30%以上を有する溶液が好ましい。
【0058】
酸化剤が過酸化水素である場合、モリブデンと過酸化水素とのモル比は、約1:4~約1:7、好ましくは、約1:5~約1:6の範囲である。モリブデン化合物及びコバルト化合物は、Co:Mo比が約0.5:2~約1.5:2、より好ましくは、約0.75:2~約1.25:2、さらにより好ましくは、約1:2であるような量である。
【0059】
本明細書全体を通して使用される場合、「担体」という用語は、触媒支持体を意味するために使用され、「担体」という用語は、「支持体」という用語と互換的に使用され得る。本明細書を通して、「担体」という用語は、固体形態であるか、または事前に形成されている担体を指す。このような担体は、溶媒と接触する場合、主に固体形態のままである。「担体」という用語は、1つ以上の溶媒、特に極性溶媒にほぼ完全に溶解するアルミン酸ナトリウムなどの前駆体塩を指すものではない。
【0060】
担体は、一般に、炭素及び/または粒子状多孔質固体である無機酸化物である。炭素は、アルミナ、シリカ、チタニア、またはボリアなどの1つ以上の無機酸化物と組み合わせて使用され得、シリカ、特にアルミナは、これらの組み合わせのために好ましい。無機酸化物担体は、従来の酸化物、例えば、アルミナ、シリカ、シリカを含有するアルミナ(例えば、シリカ-アルミナ、中に分散したシリカ-アルミナを有するアルミナ、アルミナ被覆シリカ、シリカ被覆アルミナ)、ボリアを含有するアルミナ、チタニアを含有するアルミナ、マグネシア、ジルコニア、ボリア、及びチタニア、ならびにこれらの酸化物の組み合わせからなり得る。好適な担体としてはまた、遷移アルミナ、例えば、イータ、シータ、またはガンマアルミナも挙げられる。好ましい担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、中に分散したシリカ-アルミナを有するアルミナ、アルミナ被覆シリカ、またはシリカ被覆アルミナ、特に、アルミナ、または最大約20重量%のシリカ、好ましくは、最大約12重量%のシリカ、より好ましくは、約0.25重量%~約10重量%、いっそうより好ましくは、約0.5重量%~約2重量%、または約5重量%~約10重量%のシリカを含有するアルミナが挙げられる。遷移アルミナ、例えば、イータ、シータ、またはガンマアルミナを含有する担体が特に好ましく、ガンマアルミナ担体が最も好ましい。
【0061】
別の好ましい担体は、ホウ素(もしくはボリア)またはチタン(もしくはチタニア)を含有するアルミナ、特にボリア-アルミナまたはチタニア-アルミナである。アルミナがホウ素を含有する場合、ホウ素は、B2O3として、好ましくは、約0.5重量%~約20重量%、より好ましくは、約1重量%~約15重量%、さらにより好ましくは、約2重量%~約10重量%の量である。アルミナがチタンを含有する場合、チタンは、TiO2として、好ましくは、約1重量%~約50重量%、より好ましくは、約5重量%~約30重量%、さらにより好ましくは、約15重量%~約25重量%の量である。
【0062】
担体は、通常、球体、または好ましくは、押出物の形態で従来の方式で用いられる。好適なタイプの押出物の例は、文献に開示されており、例えば、米国特許第4,028,227号を参照されたい。使用に非常に好適であるものは、円筒形の粒子(中空であっても、中空でなくてもよい)、ならびに対称及び非対称のポリローブ粒子(2、3、または4ローブ)である。担体粒子は、本発明の触媒の形成に使用する前に、典型的には、約400℃~約850℃の範囲の温度で焼成される。
【0063】
ホウ素、ケイ素、及び/またはチタンなどの他の元素を担体に導入するために、担体は、所望の原子を含有する化合物と共押出、所望の原子を含有する化合物と共沈殿、または所望の原子を含有する化合物で含浸され得る。共押出の場合、化合物は、多くの場合、酸化物または酸素含有酸(例えば、ホウ素の場合、HBO2、H3BO3、またはB2O3)である。
【0064】
ホウ素、ケイ素、及び/またはチタンなどの他の元素を無機酸化物担体に導入する場合、典型的には、B2O3として、約0.5重量%~約20重量%、好ましくは、約1重量%~約10重量%をもたらすのに十分なホウ素含有化合物が使用され、TiO2として、約1重量%~約50重量%、より好ましくは、約5重量%~約30重量%、さらにより好ましくは、約15重量%~約25重量%をもたらすのに十分なチタン含有化合物が使用され、SiO2として、0.5重量%~約15重量%、好ましくは、約0.75~約10重量%、より好ましくは、約0.8~約8重量%をもたらすのに十分なケイ素含有化合物が使用される。このタイプの好ましい担体としては、ホウ素を含有するアルミナ、ケイ素を含有するアルミナ、チタンを含有するアルミナ、またはこれらのうちの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0065】
特定の細孔寸法は、本発明の実施において必要とされないが、担体の細孔容積(N2吸着を介して測定される)は、一般に、約0.25~約1mL/gの範囲である。比表面積は、一般に、約50~約400m2/g、好ましくは、約100~約300m2/g、より好ましくは、約150~約275m2/gの範囲である(Braun-Emmet-Teller(BET)N2吸着法を使用して測定)。一般に、触媒は、N2吸着によって決定される、約5nm~約20nmの範囲、好ましくは、約6nm~約15nmの範囲の細孔直径中央値を有する。好ましくは、総細孔容積の約60%以上は、細孔直径中央値から概ね2nmの範囲である。上記の細孔径分布及び表面積の値は、約500℃で1時間の担体の焼成後に決定される。
【0066】
担体粒子は、典型的には、約0.5mm~約5mm、より好ましくは、約1mm~約3mm、いっそうより好ましくは、約1mm~約2mmの平均粒径を有する。担体のサイズ及び形状は、触媒を形成するプロセスによって変化しないため、触媒は、一般に、約0.5mm~約5mm、より好ましくは、約1mm~約3mm、いっそうより好ましくは、約1mm~約2mmの平均粒径を有する。
【0067】
本発明の触媒を形成するために使用される担体の量は、担体及び水素化金属の総重量に対して、約40重量%~約80重量%、好ましくは、約50重量%~約70重量%、より好ましくは、約60重量%~約70重量%であり、水素化金属は、それらの酸化物として、すなわち、溶媒及びモノマー種を排除して表される。
【0068】
担体を含浸させるための方法は、当業者には既知である。好ましい方法は、少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物の共含浸を含む。触媒を形成するための本発明のプロセスでは、1つの含浸ステップのみが必要とされる。単一の含浸ステップでは、担体及び含浸溶液が一緒になると、混合物は、通常、含浸溶液の事実上すべてが触媒に取り込まれるまで均質化される。細孔容積含浸または初期湿潤含浸として当該技術分野において既知であるこの技術では、含浸溶液は、触媒の細孔によって事実上完全に取り込まれ、これは、化学物質の効率的な使用を可能にし、生成物中の粉塵を回避する。
【0069】
含浸方法には、幅広いバリエーションが存在し得る。したがって、複数の含浸ステップを適用することが可能であり、使用される含浸溶液は、堆積する構成要素前駆体のうちの1つ以上、またはその一部を含有する(順次含浸)。含浸技術の代わりに、浸漬方法、噴霧方法などが使用され得る。複数の含浸、浸漬などのステップを実行する場合、乾燥が含浸ステップの間に実行され得る。しかしながら、単一の含浸ステップは、より速く、より簡単なプロセスであり、より高い生成速度を可能にし、より低コストであるため、好ましい。単一含浸はまた、より良好な品質の触媒を提供する傾向がある。
【0070】
好ましい1ステップ含浸手順では、必要な濃度のVI族金属及びVIII族金属を有する溶液が調製され、次いで、好ましくは室温で、モノマー及び開始剤(使用される場合)が添加される。より好ましくは、モノマーが添加され、次いで、開始剤(使用される場合)が添加される。必要に応じて、金属、モノマー、及び開始剤(使用される場合)を含有する含浸溶液の体積は、通常、希釈によって、担体の細孔容積に一致するように調整される。必要に応じて、この時点で、1つ以上の有機添加剤が添加され得る。含浸溶液の調製中、溶液の温度は、好ましくは、約50℃未満に保持される。次いで、含浸溶液は、その細孔の約90%~約105%の飽和度、より好ましくは、その細孔の約98%~約100%の飽和度で担体と組み合わされる。触媒は、典型的には、約50℃以下の1つ以上の温度で数分間以上エージングされる。エージング後、重合が誘導される。いくつかの実施形態では、重合は、触媒を約70℃~約90℃、好ましくは、約75℃~約85℃で、約30分間以上加熱することによって誘導される。多くの場合、重合中に放出される発熱を測定することによって、重合が監視され得る。重合が完了すると、触媒は、通常、約50℃~約150℃、好ましくは、約50℃~約80℃の1つ以上の温度で乾燥される。
【0071】
好ましい2ステップ含浸手順では、必要な濃度のVI族金属及びVIII族金属を有する溶液が調製され、次いで、必要に応じて、金属を含有する含浸溶液の体積を、通常は希釈によって、担体の細孔容積に一致するように調整される。この溶液は、担体と組み合わされ、得られた固体は、約50℃~約150℃、好ましくは、約50℃~約80℃の1つ以上の温度で乾燥される。第2の含浸ステップでは、モノマー及び開始剤(使用される場合)を含有する溶液が脱イオン水中で調製される。モノマー含有溶液は、その細孔の約90%~約105%の飽和度、より好ましくは、その細孔の約98%~約100%の飽和度で、金属含浸担体と組み合わされる。金属含浸担体は、典型的には、約50℃以下、より好ましくは、約40℃以下の1つ以上の温度で約60分以上エージングされる。エージング後、重合が誘導される。いくつかの実施形態では、重合は、触媒を約70℃~約90℃、好ましくは、約75℃~約85℃で、約30分間以上加熱することによって誘導される。多くの場合、重合中に放出される発熱を測定することによって、重合が監視され得る。重合が完了すると、触媒は、通常、約50℃~約150℃、好ましくは、約50℃~約80℃の1つ以上の温度で乾燥される。
【0072】
少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物が、モノマー含有混合物の一部を形成する場合、モノマー種の重合は、好ましくは、含浸ステップの後に実施されるが、重合は、担体の含浸中に開始し得る。重合が含浸後に実行される場合、重合は、過剰な溶媒の除去が実施される場合、過剰な溶媒の除去前または除去中に実施され得、好ましくは、重合は、過剰な溶媒の除去前に実施され得る。同様に、含浸溶液及び担体が一緒になって、次いで、モノマーと混合される含浸担体を形成する場合、過剰な溶媒の除去が実施される場合、好ましくは、過剰な溶媒の除去前に重合が実施される。重合ステップ中の溶媒の蒸発を最小限に抑えることが推奨され、好ましい。
【0073】
本発明のプロセスでは、重合は、モノマー種を、モノマーの少なくとも一部を重合するのに好適な量の開始剤に曝露することによって、通常の方式で実行され得る。重合は、金属及び担体の両方が存在し、金属の少なくとも一部がペルオキソモリブドコバルテート化合物の形態である場合、モノマー含有溶液を約50℃以上に加熱することによって、開始剤なしで実行され得る。開始剤が使用されるかどうかにかかわらず、重合阻害剤は、重合反応を開始する場合、不活性化される必要がある。
【0074】
少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物が、モノマー含有混合物の一部を形成しない場合、含浸前に担体の存在下で重合が開始され、含浸溶液が重合中または重合が終了した後にモノマー含有混合物と混合される。
【0075】
触媒中のポリマーは、炭素骨格を有し、1つ以上の孤立電子対を有する官能基を含む。好ましくは、モノマー種の官能基は、窒素、酸素、リン、及び/または硫黄を含む。好適な官能基の例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、ニトリル基、アミノ酸基、リン酸基、チオール基、スルホン酸基などが挙げられる。好ましい官能基としては、ヒドロキシル基、エステル基、アミド基、及びカルボキシル含有基、特にカルボン酸基が挙げられ、より好ましくは、カルボン酸基及びアミド基、特にアミド基である。
【0076】
本発明の触媒の一部として形成されるポリマーの例としては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリクロトン酸、ポリ(ペンテン)酸、ポリメタクリル酸、ポリジメタクリル酸、ポリ(アリルアルコール)、ポリ(2-スルホエチル)メタクリレート、ポリ(n-プロピル)アクリレート、ポリ(ヒドロキシメチル)アクリレート、ポリ(2-ヒドロキシエチル)アクリレート、ポリ(2-カルボキシエチル)アクリレート、ポリ(3-エトキシ-3-オキソプロピル)アクリレート、ポリ(メチルカルバミルエチル)アクリレート、ポリ(2-ヒドロキシエチル)メタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ(N-イソプロピル)アクリルアミド、ポリビニルアセタミド、ポリビニル-N-メチルアセトアミド、ポリ(N-ヒドロキシメチル)アクリルアミド、ポリ(N-ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ポリ(N-メトキシメチル)アクリルアミド、ポリ(N-エトキシメチル)アクリルアミド、ポリビニルスルフェート、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2-プロピル)-1-スルホン酸、ポリビニルホスフェート、ポリビニルホスホン酸、ポリ(ジメチルアリルホスフェート)、ポリ(ジエチルアリルホスフェート)、ポリビニルホスホン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリ(2-カルボキシエチル)アクリレート、ポリアクリルアミド、及びポリ(N-ヒドロキシエチル)アクリルアミドが挙げられ、より好ましくは、ポリアクリルアミド及びポリアクリル酸、特にポリアクリルアミドである。上記のように、2つ以上のモノマー種が用いられ得、このような事例では、形成されるポリマーは、コポリマーであり、これは、上記に列挙されたポリマーのうちの任意の2つ以上のコポリマーであり得る。
【0077】
担持された触媒を形成するために使用されるモノマーは、多くの場合、溶媒に可溶であるが、モノマー(複数可)から形成されるポリマーは、触媒の形成に使用される溶媒(複数可)に可溶である必要はない。
【0078】
本発明のプロセスは、一酸化物として計算され、VIII族金属が、通常、約1~約10重量%、好ましくは、約3~約8.5重量%の量で存在する担持された触媒をもたらす。触媒中のVI族金属がモリブデンである場合、通常、三酸化モリブデンとして計算されて、約35重量%以下の量、好ましくは、約15~約35重量%の量で存在する。
【0079】
少なくとも1つのVI族金属化合物及び少なくとも1つのVIII族金属化合物、または含浸溶液が重合前または重合中に含まれる場合、担持された触媒が重合ステップの終了時に得られる。代わりに、重合生成物が形成され、次いで、重合後に含浸溶液と接触すると、担持された触媒は、含浸ステップ(複数可)の終了時に得られる。
【0080】
任意選択的に、過剰な溶媒が担持された触媒から除去される。過剰な溶媒の除去は、空気中で、真空下で、または不活性ガスの存在下で実行され得る。溶媒の除去は、好ましくは、担持された触媒を乾燥させることによって達成される。担持された触媒の乾燥は、ポリマーの少なくとも一部が触媒中に残る、すなわち、ポリマーが分解によって完全に除去されないような条件下で実施される。したがって、適用される乾燥条件は、特定のポリマーが分解する温度に依存し、分解は、乾燥が酸素の存在下で実施される場合、燃焼を含み得る。本発明のこれらのプロセスでは、乾燥は、乾燥後も約50%以上、好ましくは、約70%以上、より好ましくは、約90%以上のポリマーが触媒中に依然として存在するような条件下で実行されるべきである。乾燥中に担持された触媒中にできるだけ多くのポリマーを保持することが好ましいが、少なくとも分解しやすいポリマーの場合、乾燥ステップ中のポリマーの一部の損失を常に回避することはできないことが理解される。ポリマーに応じて、約270℃未満の乾燥温度が必要であり得る。いくつかの実施形態では、乾燥温度は、好ましくは、約25℃~約200℃、より好ましくは、約50℃~約150℃、さらにより好ましくは、約75℃~約125℃であり、乾燥温度(複数可)は、ポリマーの分解温度よりも低くなければならない。減圧及び/または真空条件が、乾燥に使用され得る。
【0081】
上記のように、本発明の担持された触媒は、担体、少なくとも1つのVI族金属、少なくとも1つのVIII族金属、及びポリマーを含み、VI族金属とVIII族金属とのモル比は、約1:1~約5:1であり、ポリマーは、炭素骨格を有し、少なくとも1つのヘテロ原子を有する官能基を含む。担体及びその選好は、上に記載された通りである。本発明の担持された触媒中の担体は、担体及び水素化金属の総重量に対して、約40重量%~約80重量%、好ましくは、約50重量%~約70重量%、より好ましくは、約60重量%~約70重量%の量であり、水素化金属は、それらの酸化物として、すなわちポリマーを排除して表される。水素化金属及びその選好は、したがって上に記載された通りである。ポリマーでは、炭素骨格は、炭素-炭素骨格と称されることもあり、骨格は、ポリマーの主鎖である。担持された触媒中のポリマー及びその選好は、上に記載された通りである。
【0082】
任意選択的に、本発明の触媒は、硫化ステップ(処理)に供されて、金属構成要素をそれらの硫化物に変換し得る。本明細書の文脈では、「硫化ステップ(sulfiding step)」及び「硫化ステップ(sulfidation step)」という句は、硫黄含有化合物が触媒組成物に添加され、触媒中に存在する水素化金属構成要素の少なくとも一部分が直接または水素を用いる活性化処理の後のいずれかで硫化形態に変換される任意のプロセスステップを含むことを意味する。好適な硫化プロセスは、当該技術分野において既知である。硫化ステップは、触媒が炭化水素供給物の水素化処理に使用される反応器に対して、エクスサイチュで、インサイチュで、または反応器に対してエクスサイチュとインサイチュとの組み合わせで行われ得る。
【0083】
エクスサイチュ硫化プロセスは、触媒が炭化水素供給物の水素化処理に使用される反応器の外側で行われる。このようなプロセスでは、触媒は、反応器の外側で硫黄化合物、例えば、有機または無機ポリスルフィドまたは元素状硫黄と接触し、必要に応じて、好ましくは不活性雰囲気中で乾燥される。第2のステップでは、材料は、反応器内で、高温で、任意選択的に供給物の存在下で、水素ガスを用いて処理されて、触媒を活性化させる、すなわち、触媒を硫化状態にする。
【0084】
インサイチュ硫化プロセスは、触媒が炭化水素供給物の水素化処理に使用される反応器内で行われる。ここで、触媒を、硫化水素または一般的な条件下で硫化水素に分解可能な化合物(例えば、ジメチルジスルフィド)などの硫化剤と混合された水素ガスストリームと、高温で、反応器内で接触させる。一般的な条件下で硫化水素に分解可能な硫黄化合物を含む炭化水素供給物と組み合わされた水素ガスストリームを使用することも可能である。後者の場合、ジメチルジスルフィドなどの添加された硫化剤を含む炭化水素供給物(スパイクされた炭化水素供給物)と接触させることによって、触媒を硫化することが可能であり、また、供給物中に存在する硫黄構成要素が触媒の存在下で硫化水素に変換されるため、添加された硫化剤を用いずに硫黄含有炭化水素供給物を使用することも可能である。様々な硫化技術の組み合わせも適用され得る。スパイクされた炭化水素供給物の使用が好ましい場合がある。
【0085】
触媒がインサイチュ硫化ステップに供される場合、触媒は、硫化が完了する前のプロセス中に形成された油及び水の存在下で高温に曝露される。油及び水の存在下での高温へのこの曝露は、触媒活性に悪影響を及ぼすようには見えない。理論に束縛されることを望むものではないが、ポリマーは、低分子量の有機添加剤を有する当該技術分野に記載されている触媒と比較して、浸出または蒸発に対してより耐性があると考えられる。
【0086】
本発明の触媒組成物は、プロセスが任意選択的な硫化ステップを含むか否かにかかわらず、上に記載されたプロセスによって生成されたものである。
【0087】
理論に束縛されることを望むものではないが、観察された水素化金属のより優れた分散及び弱い(低い)金属-支持体相互作用の両方は、上に記載された官能基を有するモノマーを用いて、担持された触媒中にポリマーを形成することによって達成される。このようなポリマーは、水素化金属を細孔ネットワーク全体に分散させるのに役立つと仮定される。また、理論に束縛されることを望むものではないが、水素化金属は、支持体の細孔空間に水素化金属を分散させるポリマーと相互作用すると考えられる。また、硫化雰囲気中での触媒の活性化は、ポリマーの官能基のヘテロ原子の少なくとも一部を硫黄に置換すると仮定され、硫黄は、水素化金属が一緒にクラスター化すること、または支持体と相互作用することを最小限に抑える、または防止するのに役立つと考えられ、これは、クラスター化及び/または支持体と相互作用することを最小限に抑え、次に、観察された増強された触媒活性に寄与すると考えられる。加えて、ポリマー(硫化後)は、水素化金属の焼結を抑制し得、担持された触媒の改善された安定性に寄与すると理論化されている。
【0088】
本発明の触媒組成物は、広範囲の炭化水素供給物の水素化処理、水素化脱窒素、及び/または水素化脱硫に使用され得る。好適な供給物の例としては、中間留分、ケロ、ナフサ、真空ガス油、重質ガス油などが挙げられる。
【0089】
本発明の方法は、炭化水素供給物の水素化処理、水素化脱窒素、及び/または水素化脱硫のための方法であり、この方法は、炭化水素供給物と本発明の触媒とを接触させることを含む。炭化水素供給物の水素化処理は、水素化処理条件で、本発明の触媒組成物の存在下で、水素を用いて供給物を処理することを伴う。
【0090】
約250℃~約450℃の範囲の温度、約5~約250バール(約5x105Pa~約2.5x107Pa)の範囲の反応器入口水素分圧、約0.1~約10vol./vol.hrの範囲の空間速度、及び約50~約2000NL/Lの範囲のH2/供給物比などの、従来の水素化処理プロセス条件が適用され得る。
【0091】
実施例に示されるように、他の触媒構成要素に対して最大で少なくとも20重量%のポリマー担持量が達成された。担持された触媒中に存在するポリマーの量(ポリマー担持量)は、他の触媒構成要素に対するモノマーの量が上に定義された方式と同様に定義される。言い換えれば、本発明の触媒中のポリマーの量は、任意の溶媒を排除して、触媒を形成するために使用される他の構成要素の総重量に対する重量%として表される。例えば、触媒の他の構成要素の総重量が100グラムである場合、10重量%のポリマーは、10グラムである。本発明では、ポリマー担持量は、一般に、担体、VI族金属、及びVIII族金属を含む触媒中の他の構成要素の総重量に対して約1.5重量%以上、好ましくは、約1.5重量%~約35重量%の範囲であるが、これらの範囲外の量は本発明の範囲内であり、VI族金属及びVIII族金属は、それらの酸化物として表され、任意の溶媒の重量は、排除される。ポリマー担持量は、特にポリマーがポリアクリル酸またはポリアクリルアミドである場合、触媒の他の構成要素の総重量に対して、より好ましくは、約3重量%~約30重量%の範囲、さらにより好ましくは、約5重量%~約25重量%の範囲、いっそうより好ましくは、約10重量%~約25重量%の範囲である。
【実施例】
【0092】
以下の実施例は、例示の目的のために提示されるものであり、本発明の範囲に限定を課すことを意図するものではない。
【0093】
以下のいくつかの実施例では、炭素収率(C収率)が報告される。炭素収率は、モノマーを介して試料中に導入され、材料の乾燥後に依然として存在する炭素の%として定義される。
【0094】
いくつかの事例では、触媒活性は、相対重量活性(RWA)として報告される。水素化脱硫(HDS)と水素化脱窒素(HDN)の両方の相対重量活性が、比較実行と比較して報告され、ここで、比較実行の触媒活性は、任意の値(たとえば、100)に設定され、試験される触媒のRWAは、比較触媒実行の値の倍数として報告される。
【0095】
実施例1
ペルオキソモリブドコバルテート(すなわち、コバルト及びモリブデンを含有し、リンを含有しない)のストック供給を、最初に、MoO3(168.2g)、H2O2(水性、30%、648g)、水(581.5g)を、Mo:H2O2の比が1:5~6になるように一緒に混合し、70℃に加熱することによって調製した。この温度付近で発熱反応が起こり、おそらくペルオキソモリブドコバルテートの形成による。発熱が落ち着いた後、混合物を50~60℃まで冷却した。次いで、炭酸コバルト(CoCO3、74.4g、43.5gのCoOに相当)を添加し、混合物を少なくとも1時間撹拌した。より濃縮された溶液を形成するための水の蒸発によって、不溶性の堆積物の形成がもたらされ、これによって、単純な蒸発による溶液の濃縮ができないことが示されたため、溶液は、噴霧乾燥によって濃縮されて、固体が得られた。ペルオキソモリブドコバルテートのこのストック供給において、モノマーまたは開始剤は、存在しなかった。含浸のための所望の濃度のコバルト及びモリブデンを、噴霧乾燥された固体を水に溶解することによって調製した。
【0096】
実施例2
異なる重合開始剤及び/または異なる量の重合開始剤を用いて、いくつかの試料をアルミナ及びアクリルアミドから調製した。アクリルアミドは、組み合わされたモノマー及び担体の重量に対して、20重量%であった。重合後、試料を80℃で乾燥させた。試料を、ヘリウム下600℃で発生気体分析(EGA)によって分析した。加熱によって生成された化合物の一部は、有毒であることが既知であるアクリロニトリル及びアクリルアミドであった。ポリマー収率を、炭素収率と同様に、EGA処理後の残留炭素量を乾燥生成物中の炭素量で割って計算し、ポリマー収率を以下の表1に報告する。
【表1】
【0097】
過酸化水素が開始剤である場合の重合に対する担体の効果が注目され、pH効果であると理論化されているが、これは確実ではない。
【0098】
実施例3
いくつかの試料を水、及び実施例4で調製されたペルオキソモリブドコバルテートのストック供給から、溶液中でCoOとして5.4重量%、MoO
3として26重量%を提供する量で調製した。アクリルアミド(AAM)、アルミナ、及び1つの実行では、過硫酸カリウム(PPS)を金属含有溶液と混合した。含浸及びエージングの後、各混合物を80℃で加熱し、発熱の存在を監視した。発熱は、重合反応の発生を示す。結果を表2に要約する。実行11C及び12Cは、比較である。
【表2】
【0099】
表2における結果は、ペルオキソモリブドコバルテート単独では重合を引き起こさないことを示しており、ペルオキソモリブドコバルテート及びアルミナまたは開始剤の両方が、重合をもたらすために存在する必要がある。
【0100】
1ステップ含浸手順の場合、必要な濃度のモリブデン及びコバルトを有する溶液を、モリブデン化合物及びコバルト化合物のいずれかから、またはペルオキソモリブドコバルテート化合物から調製した。次いで、モノマーを室温で添加し、続いて開始剤(使用される場合)を添加した。次いで、金属及びモノマー、ならびに使用される場合、リン及び/または開始剤を含有する含浸溶液の体積を、脱イオン水で希釈することによって、担体細孔容積の100%に調整した。必要に応じて、この時点で、有機添加剤が添加され得る。含浸が完了する前に、溶液中での重合を防止するために、1ステップ含浸手順のための溶液の調製中に、溶液の温度を50℃未満に保持した。最終的な溶液は、透明な液体であるべきである。次いで、最終溶液を、その細孔の90~105%の飽和度でアルミナ押出物上に導入した。触媒を50℃未満で少なくとも60分間エージングさせて、重合を誘発することなく、アルミナ押出物全体に溶液を均質に分散させた。エージング後、触媒を70~90℃で少なくとも30分間加熱することによって重合を誘導した。重合を、重合中に放出される発熱を測定することによって監視した。重合が完了したら、触媒を50~150℃の温度で乾燥させて、過剰な水を除去した。
【0101】
2ステップ含浸手順の場合、モノマー及び開始剤(使用される場合)が溶液中に存在しなかったことを除いて、必要な濃度のモリブデン及びコバルトを有する溶液を、1ステップ手順について記載されたように調製した。この溶液を、アルミナ押出物と組み合わせ、上に記載されたように乾燥させた。第2の含浸ステップでは、モノマーを含有する溶液、及び使用される場合、開始剤を、脱イオン水中で調製した。モノマー含有溶液を、その細孔の90~105%の飽和度で金属含浸アルミナ押出物に導入した。触媒を40℃で少なくとも60分間エージングさせ、次いで、触媒を70~90℃で少なくとも30分間加熱することによって重合させた。重合を、重合中に放出される発熱を測定することによって監視した。重合が完了したら、触媒を50~150℃の温度で乾燥させて、過剰な水を除去した。
【0102】
以下の実施例のいくつかでは、ジエチレングリコール(DEG)は、最先端の添加剤であるとみなされるため、DEGを比較溶液に使用した。この関連で、米国特許第6,753,291号及び同第6,923,904号を参照されたい。
【0103】
実施例4
Co及びMoを含むポリマー変性触媒の調製
本実施例におけるすべての実行の触媒を、上に記載された1ステップ含浸方法、及び実施例1で調製されたペルオキソモリブドコバルテートのストック供給の一部を使用して調製した。いくつかの試料を、アクリルアミド(AAM)及びストック溶液の一部を用いて作製した(実行15、16、及び17)。試料を調製するために、一定量のストック溶液を丸底フラスコに秤量した。試料の一部は、アクリルアミドを含有していなかった。含浸手順における適切な時点で、アクリルアミド(及び場合によっては、過硫酸カリウム、PPS)を添加した。271m2/gの表面積を有するγ-アルミナの押出物を担体として使用した。試薬の量及び触媒特性のいくつかを以下の表3に列挙する。表3では、Co、Mo、及びアルミナの量は、担体及び水素化金属の総重量に対して報告され、モノマー、開始剤、及び有機添加剤の量は、触媒の総(乾燥)重量に対してであり、触媒の総重量は、MoO3、CoO、モノマー、開始剤を含むが、有機添加剤を含まない。有機添加剤は、ジエチレングリコール(DEG)であった。実行15C及び16Cは比較である。
【0104】
比較実行(19C)では、アクリルアミド及びアルミナの溶液を作製し、80℃に加熱した。発熱は観察されず、重合が起こらなかったことを示すと解釈した。別の比較実行(18C)では、モリブデン、コバルト、及びアクリルアミドの溶液を作製し、80℃に加熱した。発熱は観察されず、重合が起こらなかったことを示すと解釈した。対照的に、実行16(15°増加)及び実行17(10°増加)については、発熱が観察された。
【表3】
【0105】
図1は、実行17のものと類似の本発明の触媒(実線、開始剤なし)、及び実行17と類似であるが、リンを含有する比較実行(破線)のFT-IRスペクトルを示す。この比較試料は、調製中の発熱などの重合の徴候を示さなかった。加えて、アクリルアミドのいくつかの特徴は、文献(Journal of the Korean Physical Society、1998、32、505~512)との比較に基づいて、1430cm
-1でのアクリルアミドC-Nストレッチ及び1053cm
-1での-CH
2-ロッキング(破線)など、比較試料のFT-IRスペクトルで認識され得る。実行17のものと類似の本発明の触媒の場合、FT-IRスペクトル(実線)は、1612cm
-1でのC-Cストレッチなどの特徴的なアクリルアミドシグナルの消失、ならびに1465cm
-1での-CH
2-変形、及び1420cm
-1でのC-Nストレッチなどのポリアクリルアミドシグナルの出現を示し、重合の成功を示唆している。これらの触媒の不均質性は、完全な特性評価を妨げる。
【0106】
実施例5
Co及びMoを含有する触媒の活性試験
実施例3に記載された調製された触媒を粉砕し、125~310μmの粉末画分をふるい分けによって単離した。125~310μm画分を、水素化脱硫及び水素化脱窒素におけるそれらの性能について評価した。触媒を、試験を実行する直前に、ジメチルジスルフィド(2.5重量%のS)、スパイクされたストレートラン軽油(SRGO)と接触させることによって硫化した。前硫化条件を表4Aに記載する。触媒試験を、高スループット試験ユニット(HTU)を使用して実施した。15℃で0.849g/mLの密度、13713ppmの硫黄含有量、及び121ppmの窒素含有量を有するSRGO供給物を試験のために使用した。試験に使用された3つの異なる条件を表4Bに記載する。
【表4】
【表5】
【0107】
各試験条件の間にいくつかの定期的な排水(試料)を採取した。表5は、いくつかの試料の平均である各試験条件での平均S及びN値、ならびに異なる触媒の相対重量活性(RWA)を記載する。水素化脱硫(HDS)と水素化脱窒素(HDN)の両方の相対重量活性が、比較実行と比較して報告され、ここで、比較実行の触媒活性は、任意の値(たとえば、100)に設定され、試験される触媒のRWAは、比較触媒実行の値の倍数として報告される。これらの実行では、ポリマー含有触媒を使用した実行からのRWAは、100%に正規化されたDEG含有触媒を使用した実行からのRWAと比較して与えられる。触媒組成がそうでなければ同じであるジエチレングリコールを含有する触媒と比較して、ポリアクリルアミドを含有する触媒の場合、有意な触媒活性の増加が達成され得る(表5を参照されたい)。重量ベースでのHDS活性の増加は、試験条件及び触媒組成に応じて、約10重量%~約20重量%である。実行15C及び16Cは、比較であり、実行15Cは、実行15に対する比較であり、実行16Cは、実行16及び17に対する比較である。
【表6】
【0108】
実施例6
Co及びMoを含むポリマー変性触媒の調製
実施例4の手順に従い、実施例4において調製されたペルオキソモリブドコバルテートのストック供給の一部及び押出アルミナ担体を使用して、アクリルアミド(AAM)を有するCo及びMoを含有する触媒試料を調製した。アルミナ担体の一部には、ホウ素、ケイ素、またはチタンが含有されており、ホウ素は、アルミナとの共押出によって導入され、チタンは、含浸によって導入され、ケイ素は、共沈殿によって導入された。共押出の手順は、例えば、国際特許公開第WO2010/121807号に記載されている。本実施例におけるすべての実行の触媒を、上に記載された1ステップ含浸方法を使用して調製した。試薬の量及び触媒特性のいくつかを表6に列挙する。表6では、担体、水素化金属、及びリンの総重量に対して、Co、Mo、及びアルミナの量が報告され、モノマー、開始剤、及び有機添加剤の量は、アルミナ、MoO
3、及びCoOの総(乾燥)重量に対してである。
【表7】
【0109】
表6に列挙された実行からの試料を、走査型電子顕微鏡エネルギー分散X線(SEM-EDX)ラインスキャン分析に供した。各試料を、150℃、真空(約0.05mbar)下で、24時間乾燥させ、次いで、大気圧でエポキシ樹脂(EpoFix、Struers Inc.)に埋め込んだ。押出物への樹脂の浸透を可能な限り回避(5μm未満に)するために、埋め込み手順の前に、樹脂を概ね70分間前硬化させた。埋め込まれた試料を粉砕し、窒素下で研磨して、試料の大気への曝露を最小限に抑え、次いで、約2nmの厚さまで金層を用いてコーティングした。ラインスキャン測定を、走査型電子顕微鏡(Zeiss EVO MA 15とNoran system 7、光源:LaB6、ビーム電流:4.2nA)で実施した。
【0110】
結果を
図2-1~2-3に、担体(ここではアルミナ)100グラム当たりの元素のグラム数として示す。押出物(担体)の断面にわたって、体積単位当たりの純粋な担体の重量は、含浸された元素の重量にかかわらず変化しないため、元素のグラム数は、元素が担体全体に存在するか、またはその表面上だけに存在するかを示す。ラインスキャングラフの左側の元素のスケールは、ラインスキャングラフの右側の元素のスケールよりもはるかに小さいことに留意されたい。グラフ中の炭素及び窒素の分布は、比較的平坦であり、これは、実行A~Fにおいてポリマーが担体全体にわたって形成されていることを示す。
【0111】
本明細書または特許請求の範囲のいずれかで化学名または化学式で言及される構成要素は、単数または複数で言及されるかどうかにかかわらず、化学名または化学タイプで言及される別の物質(例えば、別の構成要素、溶媒など)と接触する前に存在するものとして識別される。得られた混合物または溶液でどのような化学変化、変換、及び/または反応(もしあれば)が起こるかは問題ではない。なぜなら、このような変化、変換、及び/または反応は、本開示に従って要求される条件下で特定の構成要素を一緒にすることの自然な結果であるからである。したがって、構成要素は、所望の操作を実施することに関連して、または所望の組成物を形成することにおいて一緒にされる成分として特定される。また、たとえ以下の特許請求の範囲が、現在形(「含む」、「である」など)で物質、構成要素、及び/または成分に言及する場合があるとしても、その言及は、本開示に従って1つ以上の他の物質、構成要素、及び/または成分と最初に接触、ブレンド、または混合される直前に存在していた物質、構成要素、または成分を指す。したがって、物質、構成要素、または成分が、本開示に従って化学者の通常の技術で実施される場合、接触、ブレンド、または混合操作の過程での化学反応または化学変換を通して元の同一性を失った可能性があるという事実は、実際上問題ではない。
【0112】
本発明は、本明細書に列挙される材料及び/または手順を含み得るか、それらからなり得るか、またはそれらから本質的なり得る。
【0113】
本明細書で使用される場合、本発明の組成物中のまたは本発明の方法で用いられる成分の量を修飾する「約」という用語は、例えば、現実世界で濃縮物または使用溶液を作製するために使用される典型的な測定手順及び液体取り扱い手順を通して、これらの手順における不注意による誤りを通して、組成物の作製または方法の実行に用いられる成分の製造、供給源、または純度の相違を通してなど、起こり得る数値量の変動を指す。約という用語はまた、特定の初期混合物から得られる組成物の異なる平衡条件に起因して異なる量も包含する。「約」という用語によって修飾されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲は、その量と等価なものを含む。
【0114】
明示的に別段の指示がある場合を除き、本明細書で使用される場合、冠詞「a」または「an」は、説明または特許請求の範囲を、その冠詞が指す単一の要素に限定することを意図するものではなく、また限定するものとして解釈されるべきではない。むしろ、本明細書で使用される場合、冠詞「a」または「an」とは、本文に明示的に別段の指示がない限り、1つ以上のこのような要素を網羅することを意図している。
【0115】
本発明は、その実施においてかなりの変動の影響を受けやすい。したがって、前述の説明は、本発明を上記に提示された特定の例示に限定することを意図するものではなく、また限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】