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特表2024-538323腸炎と腸癌の予防又は治療に用いる薬物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】腸炎と腸癌の予防又は治療に用いる薬物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/57 20150101AFI20241010BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241010BHJP
   C12N 5/073 20100101ALI20241010BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
A61K35/57
A61P1/00
A61P31/04
A61P33/00
A61P29/00
A61P1/04
C12N5/073 ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525966
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 CN2022128160
(87)【国際公開番号】W WO2023072229
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111268772.X
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524162147
【氏名又は名称】安徽楚▲ユアン▼生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】ANHUI HYGEIANCELLS BIOMEDICAL CO. LTD
【住所又は居所原語表記】Building 5, Jiulong Kechuang Park, No.12 Fengshan Road, Yiqi Town, Tunxi District, Huangshan City, Anhui 245021, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】錢 進
(72)【発明者】
【氏名】李 詩言
(72)【発明者】
【氏名】王 榮
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA22
4B065BC50
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB61
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は、腸炎と腸癌の予防又は治療に用いる薬物を提供する。具体的には、本発明は腸炎と腸癌の予防又は治療に用いる薬物製造における羊水の適用;被験者の結腸癌予防薬物製造における羊水の適用;及び被験者の腸粘膜障壁破壊による炎症及び酸化損傷を減らすためにNrf2を活性化し、NF-κBを抑制する薬物製造における羊水の適用に関するものである。 前記羊水は、胚齢が5~12日の卵から由来するか、発達段階が前記胚齢の卵が置かれた発達段階に該当する鶏以外の鳥類の卵から由来するか、胎齢が8~14日の齧歯類の胚から由来するか、発達段階が胎齢が8~14日の齧歯類の発達段階に該当する齧歯類以外の非人間哺乳類における胚から由来する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胚齢が5~12日である卵から由来するか、発達段階が前記胚齢の卵が置かれた発達段階に該当する鶏以外の鳥類の卵から由来するか、胎齢が8~14日である齧歯類から由来するか、発達段階が胎齢が8~14日である齧歯類の発達段階に該当する齧歯類以外の非ヒト哺乳類の胚から由来する羊水を被験者の腸炎を予防する薬物の製造において利用することを特徴とする適用。
【請求項2】
胚齢が6~11日の卵に由来する前記羊水を利用することを特徴とする、請求項1に記載の適用。
【請求項3】
胚齢が7~9日である卵に由来し、より好ましくは、胚齢が7~8日である卵に由来する前記羊水を利用することを特徴とする、請求項1に記載の適用。
【請求項4】
前記腸炎は、小腸炎および結腸炎であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の適用。
【請求項5】
前記腸炎が、腸炎は慢性細菌性赤痢、慢性アメーバ赤痢、住血吸虫症、非特異的潰瘍性結腸炎及び限局性腸炎を含む慢性腸炎であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の適用。
【請求項6】
前記腸炎が潰瘍性結腸炎およびクローン病を含む炎症性腸疾患であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の適用。
【請求項7】
胚齢が5~12日である卵から由来するか、発達段階が前記胚齢の卵が置かれた発達段階に該当する鶏以外の鳥類の卵から由来するか、胎齢が8~14日である齧歯類から由来するか、発達段階が胎齢が8~14日である齧歯類の発達段階に該当する齧歯類以外の非ヒト哺乳類の胚から由来する羊水を被験者の腸癌を予防する薬物の製造において利用することを特徴とする適用。
【請求項8】
年齢が6~11日である卵から由来し、好ましくは、胚齢が7~9日である卵から由来し、より好ましくは、胚齢が7~8日である卵から由来する前記羊水を利用することを特徴とする、請求項7に記載の適用。
【請求項9】
胚齢が5~12日である卵から由来するか、発達段階が前記胚齢の卵が置かれた発達段階に該当する鶏以外の鳥類の卵から由来するか、胎齢が8~14日である齧歯類から由来するか、発達段階が胎齢が8~14日である齧歯類の発達段階に該当する齧歯類以外の非ヒト哺乳類の胚から由来する羊水を被験者の腸粘膜の障壁破壊による炎症及び酸化損傷を減らすためにNrf2を活性化し、NF-κBを抑制する薬物の製造において利用することを特徴とする適用。
【請求項10】
胚齢が6~11日である卵から由来し、好適には胚齢が7~9日である卵から由来し、より好適には胚齢が7~8日である卵から由来する羊水を利用することを特徴とする、請求項9に記載の適用。
【請求項11】
(1)被験者の結腸短縮を遅らせるか、防止する;(2)被験者の脾臓腫大を抑制する;(3)結腸炎の進行を緩和する;(4)被験者の急性腸炎(例:急性UC)症状(例:結腸粘膜損傷、組織構造損失、上皮びらん、腺体水量減少、炎症細胞浸潤など)を緩和する;(5)被験者の杯細胞の豊富度を高め、杯細胞の形態を改善して、より多くの粘液を生成する;及び(6)被験者NF-κB p65、PIκB、IL-6及びTNF-αの発現を下方制御し、被験者Occludin、ZO-1、Nrf2及びHO-1の発現を上方制御する用途において、1つ以上の薬物組成物の製造に羊水を利用し、前記羊水は、胚齢が5~12日の卵から由来するか、発達段階が前記胚齢の卵が置かれた発達段階に該当する鶏以外の鳥類の卵から由来するか、胎齢が8~14日である齧歯類の胚から由来するか、発達段階が胎齢が8~14日である齧歯類の発達段階に該当する齧歯類以外の非人間哺乳類における胚から由来することを特徴とする適用。
【請求項12】
前記羊水が6~11日の胚齢である卵から由来することを特徴とする、請求項11に記載の適用。
【請求項13】
前記羊水が7~9日の胚齢である卵から由来し、より好ましくは7~8日の胚齢である卵から由来することを特徴とする、請求項12に記載の適用。
【請求項14】
前記急性腸炎の症状は、結腸粘膜損傷、組織構造損失、上皮びらん、腺体数量減少及び炎症性細胞浸潤のうち、1つ以上を選択することを特徴とする、請求項11~13のいずれか一項に記載の適用。
【請求項15】
前記被験者が腸炎患者であることを特徴とする、請求項11~14のいずれか一項に記載の適用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸炎と腸癌の予防又は治療に用いる薬物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腸炎は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫または未知の原因によって引き起こされる腸の炎症であり、小腸炎や大腸炎を含む。臨床症状は、主に腹痛、下痢、水様便又は粘液膿血便を含む。腸炎は、罹患期間によって、急性腸炎と慢性腸炎の二種類に分けられる。慢性腸炎の罹患期間は、一般的に2ヶ月以上であり、臨床でよく見られるのは、慢性細菌性赤痢、慢性アメーバ赤痢、住血吸虫病、非特異性潰瘍性大腸炎と限局性腸炎などである。
【0003】
潰瘍性大腸炎(UC)は、結腸と直腸に影響を与える慢性、再発性炎症疾患であり、体重減少(BW)、下痢、結腸/直腸炎症、血便と潰瘍を特徴とする。現在、UCの発病機序は、まだ完全には明らかではない。しかし、環境と遺伝的要因、酸化ストレス、結腸炎症、腸管微生物群不均衡、粘膜免疫反応機能障害はいずれもこの疾患の進行に関連する可能性があると考えられている。結腸粘液層は、外部環境と宿主内部環境との間の重要な障壁を形成し、腸管菌群と免疫との相互作用を制御することができる。現在、コルチコステロイド、チオプリン、アミノサリチル酸などUC治療薬は、相対的に無効であり、深刻な有害事象を引き起こすことが多い。そのため、より効果的で毒性の少ない治療薬を開発する必要がある。
【0004】
細胞酸化ストレスは、一連のシグナル伝導に関連し、炎症性疾患の発生と進行を引き起こすことができる。核転写因子Nrf 2(nuclear erythroid 2-related factor 2)は、主要な転写因子であり、抗酸化反応素子(AREs)を含む遺伝子と結合し、さらにNAD(P)Hキノン酸化還元酵素1(NQO 1)、ヘモグロビンオキシゲナーゼ1(HO-1)などの抗酸化関連遺伝子を活性化することができる。Nrf 2はUCと大腸炎に関連する腸癌の炎症反応を制御できることが報告されている。また、別の研究では、Nrf 2活性化剤を用いて、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導の慢性及び急性大腸炎を緩和した。Nrf 2シグナル伝達経路は、複数のシグナル伝達経路を活性化することができ、炎症と酸化ストレスを媒介する上で重要な役割を果たす。また、Nrf 2は炎症性サイトカインIL-1を抑制することによりβ、IL-6とTNF-αの生成は一定の抗炎症作用を発揮する。炎症性サイトカインの過剰発現は、活性酸素(ROS)は核因子-κB(NFκB)経路によりUC炎症を誘導する際立った特徴と考えられる。全般的にNrf2とNFκB経路を同時に標的とすることは、UCの治療及び予防に非常に効果的である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1態様は、被験者の腸炎と腸癌の予防又は治療に用いる薬物製造における羊水を利用した適用を提供する。その中で、前記羊水は、胚齢が5~12日である卵、好ましくは、胚齢が6~11日である卵、より好ましくは、胚齢が7~9日である卵から由来するか、より好ましくは、胚齢が7~8日である卵から由来するか、発達段階が前記胚齢の卵が置かれた発達段階に該当する鶏以外の鳥類の卵から由来するか、胎齢が8~14日である齧歯類から由来するか、胎齢が8~14日である齧歯類の発達段階に該当する齧歯類以外の非ヒト哺乳類の胚から由来する。
【0006】
一つ以上の実施態様において、腸炎は小腸炎及び結腸炎を含むが、これに限定されない。
【0007】
一つ以上の実施態様において、腸炎は慢性細菌性赤痢、慢性アメーバ赤痢、住血吸虫症、非特異的潰瘍性結腸炎及び限局性腸炎を含む慢性腸炎である。
【0008】
一つ以上の実施態様において、腸炎は潰瘍性結腸炎及びクローン病を含むが、これに限定されない炎症性腸疾患である。
【0009】
本発明の第2態様は、被験者の腸炎と腸癌の予防又は治療に用いる薬物製造における羊水を利用した適用を提供する。その中で、前記羊水は、胚齢が5~12日である卵、好ましくは、胚齢が6~11日である卵、より好ましくは、胚齢が7~9日である卵から由来するか、より好ましくは、胚齢が7~8日である卵から由来するか、発達段階が前記胚齢の卵が置かれた発達段階に該当する鶏以外の鳥類の卵から由来するか、胎齢が8~14日である齧歯類から由来するか、胎齢が8~14日である齧歯類の発達段階に該当する齧歯類以外の非ヒト哺乳類の胚から由来する。
【0010】
本発明の第3様態は、Nrf2活性化及びNF-κB抑制、被験者の腸粘膜障壁破壊による炎症及び酸化損傷を緩和するための薬物適用を含み、これに限定されない羊水を提供する。その中で、前記羊水は、胚齢が5~12日である卵、好ましくは、胚齢が6~11日である卵、より好ましくは、胚齢が7~9日である卵から由来するか、より好ましくは、胚齢が7~8日である卵から由来するか、発達段階が前記胚齢の卵が置かれた発達段階に該当する鶏以外の鳥類の卵から由来するか、胎齢が8~14日である齧歯類から由来するか、胎齢が8~14日である齧歯類の発達段階に該当する齧歯類以外の非ヒト哺乳類の胚から由来する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】図1:マウスに7日間3%DSSの滅菌水を、7日間普通の水を投与した。 この過程における関連媒介変数の変化:(A)鶏の初期羊水(ceAF)は、DSSが誘導したマウスの急性大腸炎の形態学的症状を改善した結果であり、(B)マウスの体重、(C)結腸長さ、(D)脾臓重量及び(E)疾病活動指数(DAI)が改善された。データは、平均±SD;*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001と表示される。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図2図2:ceAFは、DSSが誘導した結腸炎マウスの結腸構造と杯細胞の豊富度を改善することにより、治療効果があり、マウスの主要器官には明白な形態学的損傷及び異常がない。 代表的なスライス(slices)の(A)H&E染色イメージ及び(C)組織学的点数である。 スケール:200μm.(B)PAS染色の代表的なイメージである。 スケール:100μm。
図3-1】図3:ceAFはDSSが誘導した炎症反応と結腸障壁機能障害を制御することによって、DSSが誘導した結腸炎で抗炎症及び抗酸化活性が示される。(A) ウエスタンブロット(Western Blot)は、GAPDHを内部参照として使用し、結腸組織におけるNFκB p65, pIκB, IL6, Nrf2, HO-1, ZO-1及びOccludinの発現を評価した。(B) GAPDH を用いて正規化した後のNFκB p65, pIκB, IL6, Nrf2, HO-1, ZO-1及びOccludin の相対的発現強度である。 結腸組織において、(C)TNF-α、(D)IL-6、(E)IL-1β、(F)Nrf2、(G)HO-1、(H)Occludin及び(I)ZO-1遺伝子のmRNA発現レベルをリアルタイムPCRで測定した。 M1 大食細胞において、(J)CD68 及び(K)iNOS に対して標識したレーザー共焦点画像である。 スケール:500μm。 データは、平均±SD;*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、n=10 で表示される。
図3-2】同上。
図3-3】同上。
図4-1】図4:ceAFは結腸炎DSSが誘導したマウスの酸化ストレスと炎症を緩和した。 化学クロマトグラフィーは、結腸組織での(A)SOD、(B)GSH-Px、(C)MPO及び(D)MDAのレベルを検出した。 ELISA方法は血清内炎症性サイトカイン(E)IL-6及び(F)TNF-αのレベルを測定した。 (G、 H) 結腸組織スライスの免疫染色である。 すべての代表的なイメージは、倒立蛍光顕微鏡を使ってキャプチャーした。データは、平均±SDで示した。 *P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001;nsは有意差がなかった(n=10)。
図4-2】同上。
図5図5:ceAFは、Nrf2を活性化し、NFκB経路を抑制することで、LPS刺激したRAW264.7細胞で炎症及び酸化ストレスを抑制する。(A) は、濃度別ceAF処理進行後のRAW264.7細胞生存可能性である。(B) は、ceAFはNFκB 及びNrf2 シグナル伝達経路における関連タンパク質のウエスタンブロット分析である。 内部参照としてGAPDHを用いて、TLR4、NFκB p65、pIκB、IL6、TNF-α、Keap1、Nrf2及びHO-1の発現を検出した。(C)は、光学密度測定法で(B)に表示されたウエスタンブロットバンドに対して行った定量分析である。データは、平均±SD; *P<0.05、 **P<0.01、 ***P<0.001 である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の範囲では、本発明の前記技術的特徴と(実施例のように)以下に具体的に説明された技術的特徴を互いに結合して、好ましい課題の解決手段を構成できることを理解しなければならない。
【0013】
本発明者は、非ヒト動物の羊水がNrf2を活性化し、NF-κBを抑制して腸粘膜障壁破壊による炎症及び酸化損傷を減量させることができることを発見することによって、腸炎及び腸炎と関連した腸癌を治療又は予防するのに使用できることを発見した。
【0014】
本発明で羊水は、飛鳥の卵と非ヒト哺乳類から由来することができる。 飛鳥の卵は、鳥類の卵のことをいう。 好ましくは、鳥類は、鶏、鴨、ガチョウなどの家禽類である。 本発明において、好ましくは、胚齢が5~20日である鳥類卵、より好ましくは、6~15日である鳥類卵を使用する。 適切な胎齢は、家禽の卵によって異なる場合があることを理解しなければならない。 例えば、卵を使用する場合、好ましくは、胚齢が5~12日である卵、より好ましくは、胚齢が6~11日である卵、より好ましくは、胚齢が7~9日である卵、より好ましくは、胚齢が7~8日である卵を使用する。 他の鳥類の卵を使用する場合、前記胚齢の卵が置かれた発達段階に該当する卵を使用することができる。 例えば、アヒルの卵を使用する場合、胚齢が8~10日、特に8~9日であるアヒルの卵が最もよい場合がある。
【0015】
鳥の卵の羊水は、伝統的な方法で獲得することができる。 例えば、当該胚齢である卵の鈍端部を叩いて皮を砕き、皮を剥いて直径約2cmの穴をあける。 その後、ピンセットを使って羊膜が損傷しないように注意しながら、皮膜と卵黄膜を慎重に剥がす。胚を包んでいる羊膜と連結された組織を皮からペトリ皿に注ぎ、羊膜が胚に密着するまで注射器で羊膜を刺して羊水を採取して本発明の羊水を獲得する。
【0016】
本文で、羊水は非ヒト哺乳類、特にマウスのような齧歯類から由来することもできる。 他の非ヒト哺乳類は、牛、羊、犬、猫、豚などの一般的な家畜である可能性がある。 一部の実施形態において、羊水は胎齢が8~14日である齧歯類の胚から由来するか、胎齢が8~14日である齧歯類の発達段階に該当する非ヒト哺乳類の胚から由来する。 羊水は、伝統的な方法で獲得することができる。例えば、妊娠8~14日になったマウスの腹腔を手術用ハサミで切り、子宮を慎重に外し、切開した後、注射器で羊膜を刺して羊膜が胚に密着するまで羊水を採取することによって、本発明に使われる羊水を獲得することができる。
【0017】
必要な場合、羊水を遠心分離してできるだけ純粋な羊水を獲得するために、羊水を遠心分離して含有し得る不純物を分離することを理解しなければならない。遠心分離後に得られた上澄み液は、本発明に使用された羊水である。 羊水を獲得するためのすべての段階は、無菌条件で行わなければならず、また本文に記載の「羊水」は「純粋な」羊水、すなわち鳥類卵又は非ヒト哺乳類胚から分離され、鳥類卵又は非ヒト哺乳類胚の内部のその他の成分を含まず、外部物質に汚染されていない羊水のことを言う。 純粋な羊水は、-60℃以下の冷蔵庫で保管でき、解凍後に使用できる。
【0018】
本文に記載の羊水は、薬物の活性成分として体内投与を必要とする被験者に使用することができる。例えば、本文に記載の有効量の羊水又は羊水を含む薬物組成物を必要な被験者に提供することができる。
【0019】
本文で、被験者は哺乳類、特に人間などの動物になり得る。
【0020】
腸炎は、発病部位から判断すると、腸炎と大腸炎が含まれる。腸炎は、経過によって急性腸炎と慢性腸炎の二類型に分けられる。一般的な臨床慢性腸炎には、慢性細菌性赤痢、慢性アメーバ赤痢、住血吸虫症、非特異的潰瘍性結腸炎及び限局性腸炎が含まれる。腸炎は、炎症性腸疾患(IBD)である。 IBDは、潰瘍性結腸炎(UC)及びクローン病(CD)を含む特別な慢性腸炎症疾患である。UCは、主に結腸粘膜と粘膜下層を侵す慢性非特異的、非感染性、炎症性腸疾患である。特徴的な症状は、連続性、弥漫性分布であり、直腸と結腸の連続粘膜潰瘍であり、直腸から始まって様々な程度に拡張され、最も長い時は盲腸に広がることがある。 UCはよくある炎症性腸疾患(IBD)の一種であり、結腸がんの発生と関連がある。UCは、主に免疫異常及び遺伝的変異と関連があり、感染、食べ物、生活習慣、環境要因、情緒などは必須の誘導要因である。
【0021】
研究によると、慢性潰瘍性結腸炎は、結腸がんを伴う可能性がある。 結腸がんの発生原因は、結腸粘膜の慢性炎症刺激と関連がある可能性があり、一般的に炎症増加過程で炎症性ポリープ段階を経てがんが発生すると認める。 したがって、一部の実施態様において本発明は本文に記載の非ヒト動物の羊水又は薬物組成物を使用して、結腸粘膜の慢性炎症刺激と関連した結腸癌を予防することに関するものでもある。 前記結腸癌は結腸粘膜の慢性炎症刺激と関連がある。
【0022】
本発明の特に好ましい実施形態において、羊水、特に本願に記載の家禽卵の羊水、より好ましくは、卵の羊水はUCの治療及び予防及び結腸粘膜の慢性炎症刺激と関連した腸癌の予防に使われる。
【0023】
一部の実施態様において、本発明に使用される羊水は、特に本文に記載の鳥類として卵羊水を使用し、より好ましくは卵羊水は次の用途のうち一つ以上使用する。
(1)被験者の結腸短縮を遅らせるか、防止する用途;
(2)被験者の脾臓腫大を抑制する用途;
(3)結腸炎の進行を緩和する用途;
(4)被験者の急性腸炎(例:急性UC)症状(例:結腸粘膜損傷、組織構造損失、上皮びらん、腺体水量減少、炎症細胞浸潤など)を緩和する用途;
(5)被験者の杯細胞の豊富度を高め、杯細胞の形態を改善して、より多くの粘液を生成する用途;
(6)被験者NF-κB p65、PIκB、IL-6及びTNF-αの発現を下方制御し、被験者Occludin、ZO-1、Nrf2及びHO-1の発現を上方制御する用途。好ましくは、被験者は結腸炎の患者である。
【0024】
一部の実施形態において、本発明は羊水、特に本文に記載の鳥類の卵の羊水、より好ましく、卵の羊水を利用して次の用途のうち一つ以上の製剤を製造する適用に関するものである。
(1)被験者の結腸短縮を遅らせるか、防止する用途;
(2)被験者の脾臓腫大を抑制する用途;
(3)結腸炎の進行を緩和する用途;
(4)被験者の急性腸炎(例:急性UC)症状(例:結腸粘膜損傷、組織構造損失、上皮びらん、腺の数の減少、炎症性細胞浸潤など)を緩和する用途;
(5)被験者の杯細胞の豊富度を高め、杯細胞の形態を改善して、より多くの粘液を生成する用途;及び
(6)被験者のNF-κB p65、PIκB、IL-6及びTNF-α発現を下方制御し、被験者のOccludin、ZO-1、Nrf2及びHO-1発現を上方制御する用途。
【0025】
したがって、本発明は結腸炎の重症度を減少させるか、結腸炎を治療及び予防するか、結腸粘膜の慢性炎症刺激と関連した結腸癌を予防する方法を提供する。前記方法は、必要な被験者に有効量の本発明の前記羊水を投与するか、有効量の前記羊水を含む薬物組成物を投与する段階を含む。また、本発明は羊水を被験者の腸炎の治療又は予防、結腸粘膜の慢性炎症刺激に関連する結腸癌の予防又はNrf2の活性化及びNF-κBの抑制、被験者の腸粘膜障壁破壊による炎症及び酸化損傷を減らすための薬物を製造するのに使用する適用を提供し、腸炎の治療又は予防、結腸粘膜の慢性炎症刺激に関連する結腸癌の予防又はNrf 2bの活性化とNF-κBの抑制に使用することで、腸粘膜障壁破壊による炎症及び酸化損傷を軽減する本文に記載の羊水或はその医薬組成物。
【0026】
一部の実施態様において、本発明は、1)被験者の結腸短縮を遅らせるか、防止する方法;及び/又は(2)被験者の脾臓腫大を抑制する方法;及び/又は(3)結腸炎の進行を緩和させる方法;及び/又は(4)被験者の急性腸炎(例:急性UC)症状(例:結腸粘膜損傷、組織構造損失、上皮びらん、腺体数量減少、炎症性細胞浸潤等)を緩和する方法;及び/又は(5)被験者の杯細胞の豊富度(Abundance)を高め、杯細胞の形態を改善して、より多くの粘液を発生させる方法;及び/又は(6)被験者のNF-κB p65,PIκB,IL-6及びTNF-αの発現を下方制御し,被験者のOccludin,ZO-1,、 Nrf2及びHO-1発現を上方制御する方法を含む方法を提供するこの方法は、必要な被験者に有効量の本発明に記載の羊水又は前記羊水を含有する薬物組成物を投与する段階を含む。好ましくは、被験者は結腸炎患者である。
【0027】
本文において、有効量とは、被験者の疾病あるいは病症を治療、予防、軽減及び/又は緩和できる用量を意味する。 治療の有効量は、患者の年齢、性別、疾病及び重症度、患者のその他の身体状態などの要因によって決定することができる。 本文において、被験者又は患者又は対象者は、一般に哺乳類、特に人のことをいう。 本文で治療と予防は当業界によく知られた意味を持つ。
【0028】
本文に記載の羊水を直接使用するか、本文に記載の方法及び用途に使用して、必要な被験者に投与することができる。 投与方法は、静脈注射投与のような非経口投与である可能性がある。 一部の実施態様において、治療用有効羊水と注射用生理食塩水、注射用水又はブドウ糖注射剤を均等に混合し、静脈注射等により投与することができる。 好ましくは、投与する薬物組成物は、5-40%(v/v)又は10%-35%(v/v)の羊水を含むことができ、好ましくは、15-30%(v/v)の羊水を含むことができる。
【0029】
本文に記載の羊水を含む薬物組成物には、一般的に薬学的に許容される補助材料が含まれる。 本文で「薬学的に許容される補助材料」は、薬理学及び/又は生理学的に適合する担体及び/又は賦形剤を意味するが、これに限定されない。前記担体及び/又は賦形剤は抗生剤、保湿剤、pH制御剤、界面活性剤、炭水化物、アジュバント、抗酸化剤、キレート剤、イオン強度強化剤、防腐剤、担体、滑沢剤、甘味料、染料/着色剤、香味増進剤、湿潤剤 、分散薬 、懸濁薬 、安定薬 、等張剤 、溶媒又は乳化薬をいう。 一部の実施態様で薬学的に許容される補助材料は、安定剤、防腐剤、添加剤、アジュバント、腸溶媒又は薬効化合物と共に投与するのに適したその他の不活性成分を含み、これに限定されない一つ以上の不活性成分を含むことができる。 投与量及び頻度は、特定の状態、患者の年齢及び性別に応じて医者が決定することができる。 一般的に、特定疾病の治療で治療有効量は疾病と関連した症状を改善するか、緩和できる十分な容量を意味する。 このような用量は、単一用量で投与するか、効果的な治療計画に従って投与することができる。薬物の投与量は、病気を完治する可能性もあるが、一般的に病気の症状を改善するために投与される。 一般的に希望する症状の改善のためには、反復投与が必要である。 例えば、投与された用量は一般的に1-200mL/回、一日又は毎週投与することができる。 一部の実施療法において、薬物投与頻度は1日数回、1日2回、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと又は6日ごとに1回投与するが、半月に1回又は1ヶ月に1回投与する。
【0030】
本文ではもう一つの薬物組成物を提供する。該当薬物組成物は本文に記載の羊水、特に鳥類の卵に含まれた羊水、より好ましくは、胚齢が5~12日、より好ましくは、6~11日、より好ましくは、6~9日、より好ましくは、7~8日である卵の羊水である。薬物組成物は、-60℃以下で凍結保存された羊水又は凍結乾燥された羊水など凍結乾燥試薬であることができる。 薬物組成物には、注射用生理食塩水、注射用水又はブドウ糖注射剤のような他の薬学的に許容される担体又は賦形剤が含まれることもある。 好ましくは、薬物組成物は5~40%(v/v)又は10~35%の羊水、好ましくは、15~30%を含有する。
【0031】
以下、具体的な実施例で本発明を説明する。 このような実施例は単に説明的なものであり、本発明の範囲を制限しようとする意図はないことを理解しなければならない。 実施例で使用された方法、試薬及び機器は、特に明示されない限り、当業界の一般的な方法、試薬及び機器である。
【0032】
材料と方法
ceAF製造
受精卵は、38±1℃、50%湿度の条件で孵化し、6~8日後に卵から採取した。試料を2500gから20分間遠心分離した後、上層液を0.22μm滅菌器で濾過し、-80℃条件で保管した。
【0033】
細胞培養
実験細胞は、中国科学院の細胞バンクから入手した RAW264.7 マウス大食細胞株でした。細胞を10%牛胎児血清(米国Gibco)、ペニシリン100U/mlやストレプトマイシン100mg/mL(米国Gibco)を含有するDMEM高グルコース培地にて 37℃で5%CO2インキュベーターを利用して培養した。Nrf2抑制剤ML385は、Selleckchemから購入した。リポ多糖(LPS)は、Sigmaから購入した。細胞を5×105/mLの密度に6-ウェルプレートに接種して、ジメチルソルポクサイド(25μM)に溶解されたML385を添加して、37℃で12時間の間、インキュベーションした上で、2μg LPS(1μg/mL)及び10%CEAFを添加して、37℃で12時間インキュベーションした。
【0034】
細胞生存可能性検出
細胞生存可能性検出は、CCK-8方法を使用して、96ウェルプレートで行われた。12時間飢えさせて、細胞周期を同期させした後、細胞に対してそれぞれ0、2%、4%、6%、8%及び10%のceAFで24時間処理した後、細胞をリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で3回繰り返して洗浄した。 その後,不完全培地(100μL)をCCK-8溶液(10μL)と混合した。 酵素結合免疫分析器は、450nm波長を選択して、吸光度値を決定した。
【0035】
実験動物及び介入措置
C57BL/6Jマウス(雌、7-8週齢)は、南京大学モデル動物研究センターで購入した。 マウスを特定病原体(SPF)のない環境に置いた。 環境温度は22±1℃、相対湿度は50±1%、光/暗黒周期は12/12hであり、無作為に5つの群(n=10)に分けた。
(1)対照群:自由に食事し、水を飲み、蒸留水を経管栄養法で摂取する。
(2)結腸炎群(DSS、デキストラン硫酸ナトリウム):3%DSS水溶液で経管栄養法の蒸留水を代替する。
(3)低線量ceAF治療群(DSS+5%ceAF):3%DSSの水溶液を飲み、5%ceAFを経管栄養法で摂取する。
(4)高線量ceAF治療群(DSS+ceAF):3%DSSの水溶液を飲み、10%ceAFを経管栄養法で摂取する。
(5)大量ceAF群(蒸留水+10%ceAF):自由に食べ物を食べ、水を飲み、10%ceAFを経管栄養法で摂取する。
【0036】
連続7日間、3%DSS(w/v)飲用水を使用して、マウスの実験的結腸炎を誘導した。治療のためにマウスはDSSを服用した同日から12日間、胃内挿管を通じてceAF治療を受けた。 正常対照群のマウスは、滅菌水だけを飲んだ。マウスの行動、体重、食べ物の摂取量及び便の状態を毎日測定したか、観察した。 2週間後、マウスを犠牲にして検体を採取し、-80℃の条件で保管した。結腸を蛍光染色した。
【0037】
体重、疾病活動指数(DAI)点数、裸眼潰瘍点数、結腸の長さに対する評価
実験過程において、体重変化、大便特性及び大便潜血を記録し、疾病活動指数(DAI)を計算して採点する。 DAI点数は、体重減量の程度、大便の濃度及び大便の血液量を記録し、疾病の重症度を評価した。 DAI採点は、DAI=(体重減量採点+大便特性採点+大便血液採点)/3だ。 体重減量率によって0(0点)、1~5%(1点)、5~10%(2点)、10~20%(3点)、>20%(4点)に分けられる。大便の濃度は正常粒子(0点)、ぼくぼくした大便(1点)、半形成大便(2点)、液体大便(3点)、下痢(4点)があった。出血タイプは無血(0点)、微量(1点)、軽微な潜血(2点)、明白な潜血(3点)、多出血(4点)に区分される。 次に、すべての下位項目の点数を合算し、総点数を3で割ってDAI点数(0~4点)を獲得した。 結腸は,以前に説明した成熟採点方法により提案された採点基準に従って,炎症面積と潰瘍の有無を考慮した明らかな損傷について立体顕微鏡で0-5点に採点された。裸眼潰瘍の評価基準としては、0点:潰瘍なし、炎症なし。1点:潰瘍なし、局所的うっ血。2点:うっ血なしの潰瘍。3点:潰瘍と炎症が1部位のみ。4点:潰瘍と炎症が2部位以上。5点:潰瘍の範囲が2cmを超える。頸椎を分離してマウスを犠牲にし、盲腸から肛門までの結腸を切断して長さを測定した。
【0038】
ヘマトキシリン-エオシン(HE)及び過ヨウ素酸-シープ(PAS)染色法
組織病理学的評価のために、遠位結腸部分を10%ホルマリンで固定した後、パラフィンで包含し、HEで染色した。 DSSによる組織損傷の重症度は、次のように組織学的採点システムによって分類された。 損傷の割合により、無組織損傷(0点)、1-25%(1点)、26-50%(2点)、51-75%(3点)、76-100%(4点)に分けた。組織損傷の場合、粘膜(1点)、粘膜及び粘膜下層(2点)、粘膜下層超過(3点)である。 陰窩損傷の程度:底部1/3損傷(1点)、底部2/3損傷(2点)、上皮表面のみ完全に維持(3点)、全体の陰窩及び上皮損失(4点)である。炎症の程度:軽症(1点)、中等度(2点)、重症(3点)。 同時に、粘液分泌細胞を測定するためにPAS染色を行なった。
【0039】
ウエスタンブロット分析
RIPA溶解液を使用して結腸組織を抽出し、遠心分離(5000×g、10分)してタンパク質を獲得した。タンパク質濃度はBCAタンパク質分析キットで検出された。同じ量のタンパク質(30μg)を10%SDS-ポリアクリアミドゲル電気泳動で分離し、ニトロセルロース膜に移し、5%BSA緩衝液で90分間遮断した。 4℃でTLR4、pIR4、IL6、NF64 p65、TNF-α、Keap1、ZO-1、Occludin、HO-1及びNrf2の1次抗体(1:1000希釈)とともに一晩中インキュベーションした後に膜をTBS-T(pH7.4)で6分間3回すすいだ後に、HRP標識された抗塩素2次抗体(1:40000希釈)とともに90分間インキュベーションした。TBS-Tを6分間3回すすぎ、すべての膜をimmobilon western化学発光HRP基質に視覚化した。各タンパク質の発現レベルは内部参照GAPDHで正規化された。
【0040】
サイトカインのレベルと抗酸化活性に対する評価
血清中のTNF-α及びIL-6レベルは、商業用ELISAキットを使用して検出した。 一方、結腸を4℃下に切除して均質化した後、BCAタンパク質分析キットを使用して総タンパク質含量を評価した。 クロマトグラフィーを用いて結腸組織中のGSH-Px、MDA、MPO及びSODの活性を測定した。
【0041】
RNA抽出とmRNA発現分析
FastPure細胞/組織総RNA分離キットの説明書に従って総RNAを抽出した。 cDNAを準備するためにPrimeScriptリアルタイムプリミックスを使用して、RNA試料(500ng)のcDNA合成を行なった。 試料は、Applied Biosystems Power SYBR Green PCR Master Mix試薬を使用して、リアルタイム蛍光定量PCRシステムQuantStudio 5でリアルタイムPCR分析を行なった。 各標的遺伝子の相対的発現は、GAPDHを使用して正規化した。 表1は、標的遺伝子のプライマー配列(SEQIDNO:1-16)を示す。 各反応のしきい値周期(CT)値と相対mRNA濃度(E=2-ΔΔCt)に対して測定した。
【0042】
【表1】
【0043】
免疫蛍光(IF)検出
結腸組織を4%パラホルムアルデヒドで固定した後、パラフィンで包埋した。 組織スライドをキシレンで脱落した後、アルコール濃度を減少させて分極化し、脱イオン水で洗浄した。 牛血清アルブミン(1%)を利用して1時間ブロックした後、スライドを1次抗体(4℃)で一晩中インキュベーションした。 その後、Alexa Flour 488 又は 594 で標識された二次抗体を使用して染色した。2次抗体培養後、DAPI溶液を細胞核に染色し、遮光条件で全体作業を行った。イメージは、LeicaDMIRE2レーザー共焦点走査顕微鏡を使用してキャプチャーした。
【0044】
統計分析
すべてのテスト結果は、GraphPad Prism v6.0 によって統計分析し、データは平均±標準偏差で表示された。 双方向分析及び最小有意差方法を使用してグループ間の差を比較した。 有意水準P値は、<0.05、<0.01 及び<0.001 に設定した。
【0045】
結果
1. DSSが誘発した結腸炎マウスの症状に対するceAFの緩和効果である
DSS誘導結腸炎マウスに対するceAFの基本である保護効果を評価するため、前記とおりマウスを処理して結腸炎モデルを確立した(図1、A)。体重減少、大便濃度、出血はすべてDSSによる結腸炎の重要な症状である。体重減少、DAI、結腸長及び腸の損傷を観察した。 DSS摂取開始5日後、マウスの体重は有意に減少したのに対し、ceAFはこうした傾向を緩和させた(図1、B)。結腸長さは、腸炎重症度の別の再現可能な間接指標である。対照群と比較してDSSを含有したマウスの結腸長さは有意に短かった。 驚くべきことに、ceAF補足はDSSにさらされたマウスの結腸短縮を有意に逆転させた(図1、C)。 DSSはまた、炎症の変化とともに脾臓を増加させることが観察された。 しかし、ceAF治療はDSSが誘導する脾臓肥大を抑えることができた(図1、D)。 ceAFを継続的に使用すると、結腸炎グループのマウスの大便特性、潜血、さらには化膿性血液のような大便の変化を改善することができた。 DAI点数(結腸炎症重症度の指数)は、水だけを摂取したマウスに比べてDSS にに露出されたマウスで増加し、ceAF 投与により、これらの症状を有意に改善した(図1、E)。全般的に、このような観察結果は、ceAF摂取が結腸炎の発病を効果的に緩和することができ、10%濃度のceAFが5%ceAFより良い治療効果があることを示す。
【0046】
2.ceAFはDSSが誘導したマウス結腸炎の組織学的媒介変数を改善する
私たちは、組織病理学的分析を通じてDSS誘導結腸炎に対するceAFの効果を追加で確認した。潰瘍性結腸炎の急性期は、粘膜びらん、陰窩短縮、浮腫、粘膜及び固有層炎症細胞浸潤を含む多くの組織学的特徴が示された。H&E染色スライスのデータは、結腸組織の形態学的構造がかなり異なることを示した。対照群と比較して、DSS群マウスは結腸粘膜損傷、組織構造損傷、深刻な上皮びらん、腺体数量減少及び明白な炎症細胞浸潤が発生した。対照的に、5%又は10%ceAFで処理されたマウスは急性UC炎症症状が減少した(図2,A)。ceAFの投与はまた、DSSが誘導した結腸炎の組織学的点数を減少させることができ(図2、C)、これはceAFが誘導したマウス炎症の腸損傷に相当な保護効果があるを示した。
【0047】
PAS染色は、腸を保護する主な障壁である結腸粘液層で杯細胞の豊富度と完全性を評価するために使用された。 対照群と比較して、DSSは結腸炎群マウスの杯細胞の豊富度を有意に減少させ、炎症部位に粘液層がなかった(図2、B)。 驚くべきことに、結腸炎マウスをceAFで治療することで、杯細胞の豊富度と形態学的改善が大きく増加し、杯細胞の健康はより多くの粘液生成を意味する(図2、B)。 このような回復は、組織の損傷を軽減する主な原因である様々なムチンを生成する上皮杯細胞の保存に起因する可能性がある。また、より高い濃度のceAFは、より良い治療効果があることが示された。
【0048】
3.ceAFの経口投与後、DSSが誘導した炎症反応と結腸バリア機能障害の回復
Nrf2経路は、HO-1、SOD、GSH-Pxを含む様々な解毒酵素と抗酸化タンパク質を調節することで、腸の炎症及び酸化ストレスの危険を減少させる細胞防御システムにおいて重要な役割を果たす。 HO-1は、ヘム異化作用の速度制限酵素であり、内因性防御メカニズムを持っている。 Nrf2の活性化はHO-1転写を肯定的に調節し、胃腸炎症及び酸化ストレスの危険を減らすのに重要である。 NF-κBは炎症、先天免疫及び組織完全性維持に重要な酸化還元に敏感な転写因子であり、IL-6、IL-1β、腫瘍壊死因子-α、エポキシ化酵素-2及びケモカインなど多様な炎症因子の発現を調節する。このようなサイトカインは、究極的に局所炎症及び免疫機能障害を誘導し、このような変化は肯定的なフィードバック循環を誘導して炎症を誘導し、腸粘膜損傷を誘導する。
【0049】
前記治療作用が可能なメカニズムを研究するために、私たちはウエスタンブロット及びリアルタイム蛍光定量的PCR方法を使用して,ceAF投与後、マウス腸組織でサイトカインのタンパク質及びmRNA発現レベルを検出した。対照群と比較して、DSSによって誘導された結腸炎マウスにおいて、NF-κB p65、PIκB、IL-6、TNF-αの発現は有意に増加したのに対し、Nrf2及びHO-1の発現は有意に減少した(図3、A及びB)。興味深いことに、ceAF治療後、このような典型的な炎症及び酸化ストレス指標の発現は有意に下方調節された(図3、A及びB)。 タンパク質発現と一致し、ceAF処理はmRNAレベルでこれらの典型的な指標を有意に抑制した(図3、C-G)。 対照群と比較して、DSS処理群はZO1及びoccludinタンパク質の発現が有意に減少し、密着接合(TJ)構造が破壊されたことを示した。 対照的に、ceAF処理はこれらのタンパク質の発現レベルを完全に逆転させた(図3、A、H及びI)。 結論として、10% ceAFの保護効能は5% ceAFより優れていました。10%ceAFで処理された結腸組織のM1大食細胞を免疫蛍光染色で検出した。 結果は10%ceAF処理がM1マクロファージの数を有意に減少させることが分かった(図3、J及びK)。
【0050】
4. ceAFは、DSSが誘導した実験的結腸炎で酸化ストレス反応に関与する酵素及び炎症性サイトカインを調節する。
結腸炎(UC)は、IL-1β、IL6及びTNF-αなど様々な炎症性サイトカインの持続的な発現と酸化ストレスの蓄積を特徴とする。抗酸化酵素の使用は、GSH-Px、MDA、MPO、SODを標的にして炎症に関わる疾病に効果的に抵抗することができる。
【0051】
対照群と比較して、DSSは結腸組織においてSOD及びGSH-Px活性を有意に減少した(図4、A及びB)。対照的に、DSS処理後にMDA及びMPO活性が活性化されたが、挿管による経管栄養は、10%ceAFのDSS媒介変化を有意に逆転させることができる(図4、C及びD)。 また、IL-6及びTNF-αの血清レベルは、対照群マウスと比較して結腸炎マウスで有意に上方制御された。しかし、この上方制御は10%ceAFにより有意に抑制された(図4,E及びF)。 免疫蛍光(IF)分析の結果(図4、G及びH)は、上述のウエスタンブロットの結果(図3、A)と一致する。私たちの研究は、ceAFがNrf2を活性化し、NF-κBシグナル伝達経路を抑制することで、伝染性サイトカインの上方制御及び酸化ストレスを直接抑制できることを示している。
【0052】
5. ceAFはNF-κB及びNRF2シグナル伝達経路を通じて脂質多糖類(LPS)に刺激されたRAW264.7細胞の炎症及び酸化ストレスを緩和する。
Nrf2欠乏は、肺気腫、胸膜炎及び敗血症のような多様な疾病の動物モデルで腸炎を悪化させることがあり、これは炎症及び酸化ストレスを媒介するのに重要な役割をすることを示す。 標的細胞に対する抗炎症剤及び抗酸化剤の効能を評価する際、生体適合性が重要な考慮事項である。 したがって、処理された細胞の生存率を測定することによりceAFの体外細胞毒性を測定した。
【0053】
私たちの研究結果: ceAFは濃度が10%未満の場合、より良い生体適合性を示す(図5、A)。しかし、ceAF濃度が40%を超えると、細胞生存率が大幅に減少する(図5、A)。 したがって、私たちは10%ceAFを使用するか、又は使用しない脂質多糖類によって刺激されたRAW264.7細胞で炎症及び酸化ストレスと関連した後続タンパク質発現を研究した。 脂質多糖類は、RAW 264.7細胞において、TLR4、PIκB、NFκB p65、IL6、TNF-α及びKeap1の発現水準を有意に上方制御し、Nrf2及びHO1の発現水準を減少させ(図5、B及びC)、脂質多糖類がこのような炎症及び酸化ストレスと関連したシグナル経路を有意に活性化することを示す。 興味深いことに、これらのタンパク質の発現は、10%ceAFで処理した後、有意に逆転した。 耐毒素が刺激したRAW 264.7細胞に対するcEAFの拮抗効果の潜在的メカニズムを追加で確認するために、Nrf2抑制剤(ML385)を使用して実験を行った。 私たちはML385がNrf2活性を効果的に抑制する反面、耐毒素が刺激したRAW264.7細胞のこのような炎症及び酸化ストレスに対するcEAF効果は、ML385の前処理によって相殺される可能性があることを発見した。 したがって、私たちはceAFがNrf2を活性化し、NF-κBを抑制することによって、炎症性サイトカインの上方制御及び酸化ストレスを直接的に抑制できることを証明する。
【0054】
結論
総合すると、私たちのデータはceAFが巨視的及び組織学的パラメータの両方でDSS(グルカン硫酸ナトリウム)によって誘導された結腸炎の重症度を減少できることを示す。また、ceAFはNrf2及びNF-κB信号伝達経路を調節し、腸粘膜障壁破壊による炎症及び酸化損傷を軽減する。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図5
【配列表】
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【国際調査報告】