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特表2024-538331単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/18 20060101AFI20241010BHJP
   D04B 21/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
D04B1/18
D04B21/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526482
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 CN2022089060
(87)【国際公開番号】W WO2023077745
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】202111290852.5
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524007790
【氏名又は名称】ドンガン ベスト パシフィック テキスタイル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGGUAN BEST PACIFIC TEXTILE LTD
【住所又は居所原語表記】Xinsha Port Industrial Zone, Machong Town Dongguan, Guangdong 523000 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,シャンデ
(72)【発明者】
【氏名】フー,ジュンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ザン,ハイタオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チャンロン
(72)【発明者】
【氏名】ザン,タオ
【テーマコード(参考)】
4L002
【Fターム(参考)】
4L002AA05
4L002AC01
4L002AC07
4L002BA01
4L002BB01
4L002CA01
4L002CB02
4L002EA06
4L002FA03
(57)【要約】
単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地及びその調製方法であって、Y1糸、Y2糸を含む少なくとも2本の同材質かつ単一物質の弾性糸を用いて製織され、各弾性糸でループを作って互いに絡み合わせ、直列構造と並列構造が併存する生地本体を構成し、Y1糸のモジュラス≦Y2糸のモジュラス、またはY1糸の番手≦Y2糸の番手であり、生地本体は、弾性糸のモジュラスまたは番手の変化に伴ってその経糸方向及び緯糸方向の初開放度及びモジュラスが変化し、生地本体は経編構造または緯編構造であり、生地本体に対して引張作用を施し、かつ引張力が増大する過程で、生地本体が直列と並列の構造が併存する全体構造を形成して、Y1糸またはY2糸の初開放度及び/またはモジュラスを増大させる。直列及び並列の構造設計により、低モジュラス段階での大開放度変形を実現しており、高弾性、軽くて薄い、高モジュラス、柔軟性、通気性、大面積シート状、裁断可能といった特長を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地の調製方法において、
Y1糸、Y2糸を含む少なくとも2本の同材質かつ単一物質の弾性糸を用いて製織され、各弾性糸でループを作った後、互いに絡み合わせて直列構造と並列構造が併存する生地本体を構成するステップと、
Y1糸のモジュラス≦Y2糸のモジュラス、またはY1糸の番手≦Y2糸の番手であり、
前記生地本体が弾性糸のモジュラスまたは番手に伴って変化し、該生地本体の経糸方向及び緯糸方向の初開放度及びモジュラスがそれに応じて変化するステップと、
前記生地本体は経編構造または緯編構造であり、生地本体に対して引張作用を施し、かつ引張力が増大する過程で、生地本体が直列と並列の構造が併存する全体構造を形成して、Y1糸またはY2糸の経糸方向または緯糸方向の初開放度及び/またはモジュラスを増大させるステップと、を含むことを特徴とする、
単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地の調製方法。
【請求項2】
前記生地本体の直列構造において、生地本体に引張力が作用すると、同じ引張力がモジュラスの異なる弾性糸に伝達され、モジュラスの小さい弾性糸にまず変形が生じ、それにより生地本体の総モジュラスに各弾性糸の低モジュラスの方が順に使用されるということが生じ、この時、生地本体の総モジュラスは弾性糸のモジュラスの最小値であり、並列構造では、生地本体に対する引張力が作用すると、引張力は各弾性糸上に分布し、各弾性糸に生じる同じ変形と各モジュラスの合成によって生地本体の総モジュラスが得られ、即ち、該生地本体の総モジュラスはいずれの弾性糸のモジュラスよりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地の調製方法。
【請求項3】
前記生地本体が緯編構造である場合は、生地本体に対する引張力が増大するにつれて、経糸方向に直列構造が形成され、具体的には、まずY1糸を引っ張り、Y1糸を変形させると、Y1糸がY2糸の経糸方向の初開放度及びモジュラスを徐々に増大させ、緯糸方向には並列構造が形成され、具体的には、まずY2糸を引っ張り、Y2糸を変形させると、Y2糸がY1糸の緯糸方向の初開放度及びモジュラスを徐々に増大させ、
前記生地本体が経編構造である場合は、生地本体に対する引張力が増大するにつれて、緯糸方向に直列構造が形成され、具体的には、まずY1糸を引っ張り、Y1糸を変形させると、Y1糸がY2糸の緯糸方向の初開放度及びモジュラスを徐々に増大させ、経糸方向には並列構造が形成され、具体的には、まずY2糸を引っ張り、Y2糸を変形させると、Y2糸がY1糸の経糸方向の初開放度及びモジュラスを徐々に増大させることを特徴とする、
請求項1に記載の単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地の調製方法。
【請求項4】
単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地において、生地本体を含み、前記生地本体はY1糸、Y2糸を含む少なくとも2本の同材質かつ単一材質の弾性糸によって製織されて成り、Y1糸、Y2糸はそれぞれループを形成した後、互いに絡み合って連結され、直列構造部分と並列構造部分を形成しており、Y1糸のモジュラス≦Y2糸のモジュラス、またはY1糸の番手≦Y2糸の番手であることを特徴とする、単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地。
【請求項5】
前記生地本体が緯編構造である場合、前記Y1糸から成るループとY2糸から成るループが、生地本体の経糸方向にそれぞれ連結されて直列構造を形成し、緯糸方向にそれぞれ連結されて並列構造を形成することを特徴とする、請求項4に記載の単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地。
【請求項6】
前記生地本体が経編構造である場合、前記Y1糸から成るループとY2糸から成るループが、生地本体の経糸方向にそれぞれ連結されて並列構造を形成し、緯糸方向にそれぞれ連結されて直列構造を形成することを特徴とする、請求項4に記載の単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地。
【請求項7】
前記単一物質の弾性糸が、スパンデックス糸、硬弾性繊維、ポリオレフィン弾性繊維、複合弾性繊維、ポリエーテルエステル弾性繊維、ポリウレタン繊維及びジエン系弾性繊維のいずれかであることを特徴とする、請求項4に記載の単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地。
【請求項8】
前記生地本体はメッシュ織物または両フラット織物であり、前記生地本体が平織両面構造であることを特徴とする、請求項5に記載の単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地。
【請求項9】
前記弾性糸の密度が50~200デニールであることを特徴とする、請求項8に記載の単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地。
【請求項10】
前記生地本体の弾性復元率が95%以上であることを特徴とする、請求項9に記載の単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紡織生地分野に関し、具体的には単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柔らかく、快適でスタイリッシュな下着製品(下着、コルセットまたはスポーツウェア)はファッションや健康を追求する現代女性が真っ先に選ぶものである。ニット生地は重要な紡織製品として、近年、急速に発展しており、下着、スポーツ、レジャーなどの応用分野で重要な地位を占めている。その繊維の消費量は総消費量の50%前後を占め、しかも絶えず増加している。では、織物と比べて、ニットの最も重要な優位性はどこにあるのか?高弾性という特徴に疑いはない。織物はどのように設計してもニットのような高弾性は得られず、これはそれらの構造の本質によって決まるのである。
【0003】
現代女性による健康と快適さの訴求が強くなるにつれて、柔らかく、快適で、しかもスタイリッシュな下着製品が徐々に市場での消費ニーズになってきている。しかし、市場にあるサポート及びリフトアップ効果を有する下着製品は、着心地の良さに欠け、着用すると跡が残り、女性の身体を圧迫し、女性の身体の美しさに負担をかけている。このような下着製品は、一定のリフトアップサポート効果を有すると同時に、着心地が良く、圧迫されず、跡がつかないという消費ニーズを満たすことができないので、高弾性生地が市場に供給されることが切望されている。しかし、それと同時に、ニットの高弾性がもたらす、弾性織物よりも低い復元率にも直面せざるを得ない。復元率の低さは、既製服の使用に非常に悪い影響及び体験をもたらし、また服飾デザイナーを悩ませる大きな難題でもある。この難題に対してどのように対処すべきかが、現在の技術者にとってのネックとなっているのである。高弾性、高復元率はいずれも消費者の実際のニーズであり、かつ、使用中にも実際のニーズに基づいて既製服の伸縮度を調整する必要があり、これらのニーズの問題を同時に満たさなければならない。
【0004】
スパンデックス繊維は優れた弾性繊維であり、その弾性伸長は450%~700%、弾性復元率は95%以上であり、丈夫で耐久性があり、その卓越した伸長及び復元性により衣服のフィット性、快適さ及びドレープ性を増加させる。しかし、スパンデックスにも、例えば、べたつき感や黄ばみ易さといった欠点があり、一般に、弾性ニットはスパンデックスと他の糸との混織なので、その織物の弾性及び復元率は純粋なスパンデックスの弾性及び復元率には及ばず、人々の使用需要に応えることは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
織物は弾性及び復元率において人々のニーズを満たすことが難しく、快適性が劣るという従来技術における問題を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
技術的解決手段
単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地の調製方法であって、
【0007】
Y1糸、Y2糸を含む少なくとも2本の同材質かつ単一物質の弾性糸を用いて製織され、各弾性糸でループを作った後、互いに絡み合わせて直列構造と並列構造が併存する生地本体を構成するステップと、
【0008】
Y1糸のモジュラス≦Y2糸のモジュラス、またはY1糸の番手≦Y2糸の番手であり、前記生地本体は弾性糸のモジュラスまたは番手に伴って変化し、該生地本体の経糸方向及び緯糸方向の初開放度及び/またはモジュラスがそれに応じて変化するステップと、
【0009】
前記生地本体は経編構造または緯編構造であり、生地本体に対して引張作用を施し、かつ引張力が増大する過程で、生地本体が直列と並列の構造が併存する全体構造を形成して、Y1糸またはY2糸の経糸方向または緯糸方向の初開放度及び/またはモジュラスを増大させるステップと、
【0010】
前記生地本体が緯編構造である場合は、生地本体に対する引張力が増大するにつれて、経糸方向に直列構造が形成され、具体的には、まずY1糸を引っ張り、Y1糸を変形させると、Y1糸がY2糸の経糸方向の初開放度及びモジュラスを徐々に増大させ、緯糸方向には並列構造が形成され、具体的には、まずY2糸を引っ張り、Y2糸を変形させると、Y2糸がY1糸の緯糸方向の初開放度及びモジュラスを徐々に増大させるステップと、
【0011】
前記生地本体が経編構造である場合は、生地本体に対する引張力が増大するにつれて、緯糸方向に直列構造が形成され、具体的には、まずY1糸を引っ張り、Y1糸を変形させると、Y1糸がY2糸の緯糸方向の初開放度及びモジュラスを徐々に増大させ、経糸方向には並列構造が形成され、具体的には、まずY2糸を引っ張り、Y2糸を変形させると、Y2糸がY1糸の経糸方向の初開放度及びモジュラスを徐々に増大させるステップと、を含む。
【0012】
前記生地本体の直列構造において、生地本体に引張力が作用する場合、同じ引張力がモジュラスの異なる弾性糸に伝達され、モジュラスの小さい弾性糸にまず変形が生じ、それにより、生地本体の総モジュラスに各弾性糸のモジュラスの低いものが順に使用されることになる。この時、生地本体の総モジュラスは弾性糸のモジュラスの最小値である。並列構造では、生地本体に対する引張力が作用すると、引張力は各弾性糸上に分布し、各弾性糸に生じる同じ変形と各モジュラスの合成によって生地本体の総モジュラスが得られる。即ち、該生地本体の総モジュラスはいずれの弾性糸のモジュラスよりも大きいのである。
【0013】
単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地であって、生地本体を含み、前記生地本体はY1糸、Y2糸を含む少なくとも2本の同材質かつ単一材質の弾性糸によって製織されて成り、Y1糸、Y2糸はそれぞれループを形成した後、互いに絡み合って連結され、直列構造部分と並列構造部分を形成する。そのうち、Y1糸のモジュラス≦Y2糸のモジュラス、またはY1糸の番手≦Y2糸の番手である。
【0014】
前記Y1糸から成るループとY2糸から成るループは、生地本体の経糸方向及び緯糸方向にそれぞれ連結されて直列構造及び並列構造を形成する。
【0015】
前記単一物質の弾性糸は、スパンデックス糸、硬弾性繊維、ポリオレフィン弾性繊維、複合弾性繊維、ポリエーテルエステル弾性繊維、ポリウレタン繊維及びジエン系弾性繊維のいずれかである。
【0016】
前記生地本体はメッシュ織物または両フラット織物である。
【0017】
前記生地本体は平織両面構造である。
【0018】
前記弾性糸の密度は50~200デニールである。
【0019】
前記生地本体の弾性復元率は95%以上である。
【発明の効果】
【0020】
有益な効果
本発明は、生地本体の直列構造と並列構造の設計によって、低モジュラス段階での大開放度の変形を実現し、該生地のストレッチ快適性の領域を向上させており、かつ高弾性、軽くて薄い、高モジュラス、柔軟性、通気性、大面積シート状、裁断可能といった特長を有し、主に衣服の中間層に応用され、複合材料のモジュラス、復元率及び防しわ性を向上させており、下着、コルセット、スポーツウェアなどの服飾に幅広く応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の原理概略図である。
【0022】
図2図2は、本発明の実施例1の構造概略図である。
【0023】
図3図3は、本発明の緯編構造のループの概略図である。
【0024】
Aは直列構造、Bは並列構造である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の最適な実施形態
以下では、本発明の実施形態について詳細に説明しているが、前記実施形態の例は図面に示されており、その中で、常に同一または類似する符号は同一または類似する素子または同一または類似する機能を有する素子を表している。以下で図面を参照して説明している実施形態は例示的なものであり、本発明を解釈するためにのみ用いられるので、本発明に対する限定と理解することはできない。
【0026】
本発明の説明において、説明しておかなければならないが、別途明確な規定及び限定がある場合を除き、用語の「連結」、「接続」は広義に理解しなければならず、例えば、当業者であれば、具体的な状況に基づいて上記の用語の本発明における具体的な意味を理解することができる。
【0027】
図1~3に示すように、本発明では、生地本体を含む単一物質のフレキシブル高弾性シート状紡織生地を開示しており、該生地本体は、少なくとも2本の同材質でかつ単一物質の弾性糸によって製織して成り、本実施例では、Y1糸及びY2糸の2本の糸を例として説明している。Y1糸とY2糸を製織して若干のループを形成し、その後、各ループを互いに絡み合わせて直列構造A及び並列構造Bを構成する。Y1糸のモジュラス≦Y2糸のモジュラス、またはY1糸の番手≦Y2糸の番手であり、前記生地本体は弾性糸のモジュラスまたは番手に伴って変化し、該生地本体の経糸方向及び緯糸方向の初開放度及びモジュラスがそれに応じて変化する。
【0028】
もちろん、他のニーズを満たす状況では、3本の弾性糸を用いて生地本体を製織して形成することもできるし、さらに多い本数の弾性糸を用いることもできる。各弾性糸はいずれも単一物質であり、同じ材質なので、単一物質の生地を得ることができる。
【0029】
例えば、図1に示すように、直列と並列が併存するこのような構造により、どの方向に力を受けたとしても、いずれかの弾性糸の経糸方向または緯糸方向における初開放度及びモジュラスが増大する。
【0030】
前記生地本体は経編構造または緯編構造であり、生地本体に対して引張作用を施し、かつ引張力が増大する過程で、生地本体が経糸方向及び緯糸方向においてそれぞれ直列または並列構造を形成し、Y1糸またはY2糸の経糸方向または緯糸方向の初開放度及び/またはモジュラスを増大させる。
【0031】
より具体的には、生地本体が緯編構造である場合、生地本体に対する引張力が増大するにつれて、経糸方向に直列構造が形成され、まずY1糸を引っ張り、Y1糸を変形させると、Y1糸がY2糸の経糸方向の初開放度及びモジュラスを徐々に増大させ、緯糸方向には並列構造が形成され、Y2糸を引っ張り、Y2糸を変形させると、Y2糸がY1糸の緯糸方向の初開放度及びモジュラスを徐々に増大させる。
【0032】
生地本体が経編構造である場合、生地本体に対する引張力が増大するにつれて、緯糸方向に直列構造が形成され、まずY1糸を引っ張り、Y1糸を変形させると、Y1糸がY2糸の緯糸方向の初開放度及びモジュラスを徐々に増大させ、経糸方向には並列構造が形成され、まずY2糸を引っ張り、Y2糸を変形させると、Y2糸がY1糸の経糸方向の初開放度及びモジュラスを徐々に増大させる。
【0033】
上記の異なる組織構造の応力状況から、弾性糸の応力の違いが他の弾性糸に対して関連する影響を生じさせ、それに応じて弾性糸の対応する方向における初開放度及びモジュラスを増大させることがわかる。
【0034】
生地本体内の各弾性糸のモジュラスの直列及び並列構造の設計により、異なる弾性糸の変化を利用して、低モジュラス段階での大開放度の変形を実現し、該生地本体のストレッチ快適性の領域を向上させており、かつ高弾性、軽くて薄い、高モジュラス、柔軟性、通気性、大面積シート状、裁断可能などの特長を有し、主に衣服の中間層に応用され、複合材料のモジュラス、復元率及び防しわ性を向上させている。
【0035】
前記生地本体の直列構造において、生地本体に引張力が作用する場合、同じ引張力がモジュラスの異なる弾性糸に伝達され、モジュラスの小さい弾性糸にまず変形が生じ、それにより生地本体の総モジュラスは各弾性糸のモジュラスの低いものが順に使用されることになる。この時、生地本体の総モジュラスは弾性糸のモジュラスの最小値である。並列構造では、生地本体に対する引張力が作用すると、引張力は各弾性糸上に分布し、各弾性糸に生じる同じ変形と各モジュラスの合成によって生地本体の総モジュラスが得られる。即ち、該生地本体の総モジュラスはいずれの弾性糸のモジュラスよりも大きいのである。
【0036】
また、前記単一物質の弾性糸は、スパンデックス糸、硬弾性繊維、ポリオレフィン弾性繊維、複合弾性繊維、ポリエーテルエステル弾性繊維、ポリウレタン繊維及びジエン系弾性繊維のいずれかであり、本実施例では、弾性糸にスパンデックス糸を選択しているので、生地本体全体がスパンデックス糸で織られている。
【0037】
前記生地本体はメッシュ織物または両フラット織物であり、平織両面構造を採用している。
【0038】
また、弾性糸の密度は50~200デニールであり、製織して得られる生地本の弾性復元率は95%以上であり、生地本体が良好な反発性を有することを保証することができる。
【0039】
本発明では、生地本体は、Y1糸、Y2糸のモジュラスまたは番手を調整することによって、その経緯糸方向の初開放度及びモジュラスを変化させている。生地本体が緯編構造である場合、各糸は経糸方向に同様の引張力を受けるので、該生地の経糸方向の開放度及びモジュラスは最小の糸によって決定され、引張力の増加に伴い、もとの低モジュラス糸が引張特性の変化によりそのモジュラスが高モジュラス糸より大きくなると、もとの高モジュラス糸が低モジュラス糸に代わって引き続き変形する。緯糸方向に伸びる場合、生地本体が受ける力はY1糸、Y2糸の2本の糸によってそれぞれ支持され、かつ初期開放度及びモジュラスは最も太い弾性糸によって決定される。経編構造はその逆で、経糸方向の開放度及びモジュラスは最も太い糸により決定され、緯糸方向の開放度及びモジュラスは最も細い糸により決定される。それにより、経編構造であるか緯編構造であるかに関わらず、低モジュラス段階での大開放度の変形という特性を有することを確保することができるのである。
【0040】
緯編機で平織または両面生地を製織する場合、各経路を変えてスパンデックス糸規格を供給することにより、生地を所要の弾性及びモジュラスに到達させることができる。使用時に、モジュラスが小さい方がよければ、その経糸方向を使用する方向と一致させれば良く、モジュラスが大きい方がよければ、その緯糸方向を使用する方向と一致させれば良い。
【0041】
以下では、具体的な実施例により説明を行う。
【0042】
実施例1:
【0043】
使用した弾性糸: Y1糸-PU 70D +Y2糸-PU 105D。
【0044】
2、スパンデックス糸の整経:
【0045】
整経機の機種:Karl Mayer DSE-H21/30 NC-2、積極給糸。
【0046】
整経温度:24°C 整経湿度:78%。
【0047】
作業場では、上記温湿度の条件下で工程パラメータを設定した。
【0048】
3、製織設備:32ゲージのラッセル経編機。
【0049】
4、仕上げ工程。
【0050】
水洗-予定-布の検品。
【0051】
5、テスト結果
【0052】
【0053】
上表のテスト結果から、2本の異なる細さのスパンデックス糸で織られた経編生地の本体は、Y1糸とY2糸が所在するループが絡み合って柔軟で軽く薄い生地を形成しているであることがわかる。組織構造が異なると、形成される状況も異なり、直列構造(緯糸方向)において、同じ引張力がモジュラスの異なる糸構造に伝達されることで、モジュラスの小さい糸にまず変形が生じ、それにより生地の総モジュラスには2本の糸の低モジュラスの方が順に使用されるということが生じる。そのため、織物の総モジュラスは糸のモジュラスの最小値である。並列構造(経糸方向)では、引張力は2本の糸上に分布しており、そのモジュラスの合成及び同じ変形により、付与される引張力に適応する。よって、織物の総モジュラスは、個々の独立した糸のモジュラスより大きく、その経糸方向の開放度及びモジュラスは、最も太い105D糸、即ちY2糸によって決定され、緯糸方向の開放度及びモジュラスは、最も細い70D糸、即ちY1糸によって決定されるのである。このことから、該構造設置により得られた生地は、高弾性、軽くて薄い、高モジュラス、柔軟性、通気性、大面積シート状、裁断可能などの特長を有し、主に下着、コルセットまたはスポーツウェアの生地の中間層に応用されて、複合材料のモジュラス、復元率及び防しわ性を向上させることがわかる。
【0054】
実施例2:
【0055】
実施例1を基礎として、Y1糸にPU 105D、Y2糸にPU 140Dを採用してダブルフレーム平織経編生地を製織した。弾力テストの結果、直列構造(緯糸方向)では、同じ引張力がモジュラスの異なる糸構造に伝達されることで、モジュラスの小さい糸にまず変形が生じ、それにより織物の総モジュラスに2本の糸の低モジュラスの方が順に使用されるということが生じていることがわかる。そのため、織物の総モジュラスは糸のモジュラスの最小値である。並列構造(経糸方向)では、引張力は2本の糸上に分布しており、そのモジュラスの合成及び同じ変形により、付与される引張力に適応する。よって、織物の総モジュラスは、個々の独立した糸のモジュラスより大きく、その経糸方向の開放度及びモジュラスは、最も太い140D糸、即ちY2糸によって決定され、緯糸方向の開放度及びモジュラスは、最も細い105D糸、即ちY1糸即ちY1糸によって決定されるのである。
【0056】
実施例3:
【0057】
使用した糸: Y1糸-PU 75D+Y2糸-PU 140Dを製織して成る平織両面緯編生地は、弾力テストの結果、直列構造(経糸方向)では、同じ引張力がモジュラスの異なる糸構造に伝達されることで、モジュラスの小さい糸にまず変形が生じ、それにより織物の総モジュラスに、2本の糸の低モジュラスの方が順に使用されるということが生じていることがわかる。そのため、織物の総モジュラスは糸のモジュラスの最小値である。並列構造(緯糸方向)では、引張力は2本の糸上に分布しており、そのモジュラスの合成及び同じ変形により、付与される引張力に適応する。よって、織物の総モジュラスは、個々の独立した糸のモジュラスより大きく、その経糸方向の開放度及びモジュラスは、最も太い140D糸、即ちY2糸によって決定され、緯糸方向の開放度及びモジュラスは、最も細い75D糸、即ちY1糸によって決定されるのである。
【0058】
説明しておかなければならないが、上で述べているのは本発明の好適な実施例にすぎず、本発明を限定するためのものではない。実施例を参照して本発明を詳細に説明してきたが、当業者であれば、前述の実施例に記載された技術手法を修正したり、またはその中の一部の技術的特徴に対して同等の置換を行ったりすることはできるものの、本発明の主旨及び原則内で行われる修正、同等の置換、改良などは、すべて本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
図1A
図1B
図2
図3
【国際調査報告】