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特表2024-538334ローラー押出による強化型カテーテル先端
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ローラー押出による強化型カテーテル先端
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20241010BHJP
   A61M 25/01 20060101ALI20241010BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20241010BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61M25/00 502
A61M25/00 532
A61M25/01 500
A61M25/06 500
A61M25/14 518
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526546
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 US2022048881
(87)【国際公開番号】W WO2023081314
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/275,768
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511300891
【氏名又は名称】バード・アクセス・システムズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】セプルベダ、フアン
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル、グレード エイチ.
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267AA11
4C267BB02
4C267BB40
4C267CC08
4C267FF01
4C267GG01
4C267GG05
4C267HH07
(57)【要約】
よりゲージの小さいカテーテルでは、「チッピング(tipping)」と呼ばれる遠位先端構造の形成はより一層困難になりうる。これらゲージの小さいカテーテルの薄い壁厚によって、遠位先端構造を結合するための横断面積がより縮小される。これにより、製造または使用の過程で機器に不具合が生じるリスクが上がる。前述の課題への対処のために、実施形態は、カテーテルの近位側部分の管腔内部に螺旋状プラグを形成して配置することを含む。螺旋状プラグがカテーテルと協働することで、遠位先端構造を結合するための壁厚が増大し、かつ断面積が増大する。螺旋状プラグはさらに、カテーテル本体の管腔を遠位先端構造の管腔と整合させることができる。螺旋状プラグが犠牲になり、より多くの材料を接合部に亘って提供することで、接合部の不具合を軽減しうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルを形成する方法であって、
第1のカテーテル管腔と第2のカテーテル管腔とを有するカテーテル本体の近位側部分を押し出すことと、
遠位先端構造を前記近位側部分に結合することと、を備え、
遠位先端構造を前記近位側部分に結合することは、
螺旋状プラグをロール形状で、第1のカテーテル管腔内に配置すること、
プラグを前記第2のカテーテル管腔内に配置することであって、前記プラグの遠位先端が前記第2のカテーテル管腔の遠位端と整合されること、
前記遠位先端構造の管腔を前記第1のカテーテル管腔と整合させること、および
前記遠位先端構造の近位端を前記近位側部分の遠位端に結合すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記螺旋状プラグを形成することをさらに備え、
前記螺旋状プラグを形成することは、
前記第1のカテーテル管腔の内径以上の外径を有するチューブを提供すること、
長手方向に前記チューブを切断すること、および
前記第1のカテーテル管腔の内径以下の外径を有する螺旋形状へと前記チューブを巻くこと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記螺旋状プラグが、前記第1のカテーテル管腔に締まり嵌めで係合する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記遠位先端構造の近位端を前記近位側部分の遠位端に結合することは、前記遠位先端構造を前記近位側部分に接着、接合または溶接することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記遠位先端構造の近位端を前記近位側部分の遠位端に結合することは、前記螺旋状プラグを前記第1のカテーテル管腔の内面と、前記遠位先端構造および前記近位側部分の一方または両方とに接着、接合または溶接することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
記螺旋状プラグに隣接する前記第1のカテーテル管腔の部分を穿孔することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記遠位先端構造が第1の材料から形成され、前記近位側部分が第2の材料から形成され、さらに前記螺旋状プラグが第3の材料から形成され、前記第2の材料が前記第1の材料および前記第3の材料の一方または両方と異なる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の材料が前記第1の材料に対しより柔軟な、すなわちより柔らかいデュロメーターの機械的特性を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遠位先端構造が、第1の部分および移行部分の一方、または両方を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の部分が、単一の管腔を画定するとともに、前記近位側部分の外径よりも小さい外径を画定する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記移行部分が、前記第1の部分の外径から前記近位側部分の外径へと延在するテーパ状の外形を画定する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラー押出による強化型カテーテル先端に関する。
【背景技術】
【0002】
迅速挿入型中心静脈カテーテル(RICC)システムは、遠位側に位置しかつ単一の管腔を画定した、第1の外径を有する第1の部分と、近位側に位置しかつ2つ以上の管腔を画定した、第1の径よりも大きい第2の径を有する第2の部分と、第1および第2の部分の間に位置し、かつ第1の部分の第1の外径から第2の部分の第2の外径まで延在する移行部分と、を備えたカテーテルを含む。RICCカテーテルの構造によれば、臨床医は1度のステップで、第1の部分を用いて血管系にアクセスし、移行部分を用いてアクセス部位を拡張させ、かつ第2の部分を血管系内の標的箇所に留置することができ、これらのステップそれぞれを個別に実施するために複数の器具を挿入および除去するといったことを抑制できる。
【0003】
RICCカテーテルを形成するには、第1の部分、移行部分、および第2の部分といった3つの異なる構造を結合しつつ滑らかな外形を維持することが要求される。これら3つそれぞれの異なる構造には、留置の過程で各々の役割を遂行するための異なる機械的特性が要求される。しかしながら、より小さいゲージのカテーテルはより薄い壁部を備え、従って、前記の3つの異なる構造を結合するための表面積はより小さくなる。薄壁カテーテルの「チッピング(tipping)」は、薄壁および小さい断面積により上記構造を結合するための材料を非常に少量しか備えられないために困難であり得るとともに、製造や使用の過程で機器の不具合が起こる恐れがある。本明細書で開示されている実施形態は、前述の課題への対処に関するものである。
【発明の概要】
【0004】
簡単に要約すると、本明細書で開示されている実施形態は、RICCなどのカテーテルの遠位先端構造、および関連する製造方法に関する。本明細書で開示されているのは、第1のカテーテル管腔と第2のカテーテル管腔とを有するカテーテル本体の近位側部分を押し出すことと、遠位先端構造を近位側部分に結合することと、を含み、遠位先端構造を近位側部分に結合することは、螺旋状プラグをロール形状で第1のカテーテル管腔内に配置すること、プラグを第2のカテーテル管腔内に配置することであって、プラグの遠位先端が第2のカテーテル管腔の遠位端と整合されること、遠位先端構造の管腔を第1のカテーテル管腔と整合させること、および遠位先端構造の近位端を近位側部分の遠位端に結合すること、を含む、カテーテルの形成方法である。
【0005】
いくつかの実施形態では、本方法はさらに螺旋状プラグを形成することを含み、螺旋状プラグを形成することは、第1のカテーテル管腔の内径以上の外径を有するチューブを提供すること、長手方向にチューブを切断すること、および第1のカテーテル管腔の内径以下の外径を有する螺旋形状へとチューブを巻くこと、を含む。いくつかの実施形態では、螺旋状プラグは締まり嵌めで第1のカテーテル管腔と係合する。いくつかの実施形態では、遠位先端構造の近位端を近位側部分の遠位端に結合することは、遠位先端構造を近位側部分に接着、接合または溶接することを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、遠位先端構造の近位端を近位側部分の遠位端に結合することは、螺旋状プラグを第1のカテーテル管腔の内面と、遠位先端構造および近位側部分の一方または両方とに接着、接合または溶接することを含む。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、螺旋状プラグと隣接した第1のカテーテル管腔の部分を穿孔することも含む。いくつかの実施形態では、遠位先端構造が第1の材料から形成され、近位側部分が第2の材料から形成され、さらに螺旋状プラグが第3の材料から形成され、第2の材料が第1の材料および第3の材料の一方または両方と異なる。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1の材料に対し第2の材料はより柔軟な、すなわちより柔らかいデュロメーターの機械的特性を有する。いくつかの実施形態では、遠位先端構造が、第1の部分および移行部分の一方、または両方を含む。いくつかの実施形態では、第1の部分が、単一の管腔を画定するとともに、近位側部分の外径よりも小さい外径を画定する。いくつかの実施形態では、移行部分が、第1の部分の外径から近位側部分の外径へと延在するテーパ状の外形を画定する。
【0008】
本開示のより具体的な説明は、添付の図面に示されているその特定の実施形態を参照することによって提供される。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示しており、従って、その範囲を限定すると見なされるべきではない。本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を使用することにより、追加の特異性および詳細とともに記載および説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本明細書で開示する実施形態における、カテーテル留置システムの斜視図を示す。
図1B】本明細書で開示する実施形態における、図1Aのカテーテル留置システムのカテーテルの側面図を示す。
図2】本明細書で開示する実施形態における、図1Bのカテーテルの遠位側部分の詳細を拡大図して示す。
図3】本明細書で開示する実施形態における、図2の遠位側部分の様々な断面図を示す。
図4】本明細書で開示する実施形態における、図2の遠位側部分の様々な断面図を示す。
図5】本明細書で開示する実施形態における、図2の遠位側部分の様々な断面図を示す。
図6】本明細書で開示する実施形態における、図2の遠位側部分の様々な断面図を示す。
図7A】本明細書で開示する実施形態における、図1Bのカテーテルの第2の部分の遠位側端面図を示す。
図7B】本明細書で開示する実施形態における、螺旋状プラグの例示的な形成方法を示す。
図7C】本明細書で開示する実施形態における、螺旋状プラグの例示的な形成方法を示す。
図7D】本明細書で開示する実施形態における、螺旋状プラグの例示的な形成方法を示す。
図7E】本明細書で開示する実施形態における、螺旋状プラグの例示的な形成方法を示す。
図8A】本明細書で開示する実施形態における、遠位先端構造をカテーテルの第2の部分と結合する例示的な方法を示す。
図8B】本明細書で開示する実施形態における、遠位先端構造をカテーテルの第2の部分と結合する例示的な方法を示す。
図8C】本明細書で開示する実施形態における、遠位先端構造をカテーテルの第2の部分と結合する例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
いくつかの特定の実施形態をより詳細に開示する前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書で提供される概念の範囲を制限するものではないことを理解されたい。本明細書に開示される特定の実施形態は、その特定の実施形態から容易に分離でき、かつ、本明細書で開示された数ある他の実施形態のいずれかの特徴と任意に組み合わせるかまたは置換されうる特徴を有することができることも理解されたい。
【0011】
本明細書で使用される用語に関して、これらの用語はいくつかの特定の実施形態を説明するためのものであり、本明細書で提供される概念の範囲を限定するものではないことも理解されたい。序数(例えば、第1、第2、第3など)は、一般的に特徴またはステップのグループ内の異なる特徴またはステップを区別または識別するために使用され、連続的な限定または数値の限定を提供しない。例えば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴またはステップは、必ずしもその順序で現れる必要はなく、そのような特徴またはステップを含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴またはステップに限定される必要はない。「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」などの表記は便宜上使用されるものであり、例えば特定の固定された位置、向きまたは方向などを意味するものではない。代わりに、そのような表記は、例えば、相対的な位置、向き、または方向を反映するために使用される。「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」の単数形には、文脈で明確に指示されていない限り、複数形の対象が含まれる。
【0012】
後述の説明において、本明細書で使用される「または」や「および/または」という用語は、いずれか1つまたはいずれかの組合せを含むもしくは意味すると解釈されるべきである。例えば、「A、B、またはC」もしくは「A、B、および/またはC」は「A、B、C、AとB、AとC、BとC、AとBとC、のうちのいずれか」を意味する。この定義の例外は、要素、構成要素、機能、ステップまたは動作が何らかの形で本質的に相互に排他的である場合にのみ発生する。
【0013】
「近位」に関して、例えば、本明細書に開示されるカテーテルの「近位側部分」または「近位端部分」は、患者に使用されるときに臨床医の近くにあることを意図したカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「近位長」は、カテーテルが患者に使用されるときに臨床医の近くにあることを意図したカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「近位端」は、カテーテルが患者に使用されるときに臨床医の近くにあることを意図したカテーテルの端部を含む。カテーテルの近位側部分、近位端部分、または近位長は、カテーテルの近位端を含むことができる。しかしながら、カテーテルの近位側部分、近位端部分、または近位長は、カテーテルの近位端を含む必要はない。すなわち、文脈が別のことを示唆しない限り、カテーテルの近位側部分、近位端部分、または近位長は、カテーテルの末端部分または末端長ではない。
【0014】
「遠位」に関して、例えば、本明細書に開示されるカテーテルの「遠位側部分」または「遠位端部分」は、カテーテルが患者に使用されるときに患者の近くまたは患者の体内にあることを意図したカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「遠位長」は、カテーテルが患者に使用されるときに患者の近くまたは患者の体内にあることを意図したカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「遠位端」は、カテーテルが患者に使用されるときに、患者の近くまたは患者の体内にあることを意図したカテーテルの端部を含む。カテーテルの遠位側部分、遠位端部分、または遠位長は、カテーテルの遠位端を含むことができる。しかしながら、カテーテルの遠位側部分、遠位端部分、または遠位長は、カテーテルの遠位端を含む必要はない。すなわち、文脈が別のことを示唆しない限り、カテーテルの遠位側部分、遠位端部分、または遠位長は、カテーテルの末端部分または末端長ではない。
【0015】
本明細書に開示される実施形態の説明を補助するため、図1Aに示されるように、長手軸はカテーテルの軸方向の長さに対し略平行に延びている。横軸は長手軸に対し垂直に延び、横断軸は長手軸および横軸の両方に対し垂直に延びている。
【0016】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
図1A図1Bは、一般に針120、ガイドワイヤ130、シリンジシステム140およびカテーテル150を含む例示的なカテーテル留置システム(「留置システム」)100の詳細を示している。一実施形態では、カテーテル留置システム100は迅速挿入型中心静脈カテーテル留置システム100でありうる。しかしながら、他のタイプのカテーテルを留置するために構成される他のカテーテル留置システムも考えられる。例示的なカテーテルはまた、末梢静脈内(PIV)カテーテル、末梢挿入中心型静脈カテーテル(PICC)、中心静脈カテーテル(CVC)、ミッドラインカテーテル、透析カテーテル、単腔型カテーテル、複腔型カテーテルなどを含みうる。
【0017】
一実施形態では、カテーテル150は一般的にカテーテルハブ(「ハブ」)160によって近位端で支持されるカテーテル本体152を含みうる。ハブ160は近位側に延びる1つ以上の延長脚162を含みうる。1つ以上の延長脚162の各々の延長脚は、カテーテル本体152の管腔と流体的に連通しうる。カテーテル本体152は遠位側に位置する第1の部分154、近位側に位置する第2の部分156、およびこの2つの部分の間に位置する移行部分158を含みうる。第1の部分154は単一の管腔を画定し、かつ第1の外径を有しうる。第2の部分156は2つ以上の管腔を画定し、かつ第1の径よりも大きい第2の径を有しうる。第1の部分154と第2の部分156との間に位置する移行部分158は、第1の部分の第1の径から第2の部分の第2の径に向かって延在する、テーパ状の反管腔側の形状を画定しうる。ガイドワイヤ130は、延長脚162の近位端からカテーテル150の管腔を通って第1の部分の154の遠位先端まで延在しうる。
【0018】
カテーテル150を留置するためのカテーテル留置システム100の例示的な使用方法では、針120は患者の体内へと遠位側に押し込まれ、かつ血管系にアクセスして、挿入部位を形成することができる。シリンジシステム140、あるいは類似した機器は、色や脈動流を観察しかつ正しく血管系にアクセスしていることを確認するために、針管腔122を通して流体の流れを近位側に引き込むことができる。血管系への正常なアクセスが確認されると、ガイドワイヤ130は挿入部の開存性を維持するために、針管腔122を通って血管系内へ前進することができる。その後、針120とシリンジステム140とのアセンブリは近位側に引き抜くことができる。一実施形態では、ガイドワイヤ130の遠位先端は静脈穿刺中、針管腔122にとどまることがあるが、これにより、静脈へのアクセスが確認されると血管系へのアクセスが促進されて挿入部位の開存性を維持できるようになる。
【0019】
次に、カテーテル150はガイドワイヤ130上で血管系へと前進することができる。単一の管腔を有し、かつ相対的に小さい外径を有する、カテーテル150の第1の部分154は、ガイドワイヤ130上で血管系に入りこんで、挿入部位を固定することができる。そして移行部分158は挿入部位を拡張させて、2つ以上の管腔を画定する、相対的に径が大きい第2の部分156が血管系に入り込めるようにすることができる。カテーテル150が留置されると、ガイドワイヤ130は近位側に引き抜くことができる。RICCシステム10の更なる詳細および実施形態は、たとえば、米国特許第10,376,675号明細書、米国特許出願公開第2019/0255294号明細書、米国特許出願公開第2021/0069471号明細書、米国特許出願公開第2021/0085927号明細書、米国特許出願公開第2021/0113809号明細書、米国特許出願公開第2021/0113810号明細書、米国特許出願公開第2021/0121661号明細書、米国特許出願公開第2021/0228843号明細書、米国特許出願公開第2021/0283368号明細書、米国特許出願公開第2021/0283381号明細書、米国特許出願公開第2021/0322729号明細書、米国特許出願公開第2021/0330941号明細書、米国特許出願公開第2021/0330942号明細書、米国特許出願公開第2021/0361915号明細書、米国特許出願公開第2021/0379336号明細書、米国特許出願公開第2021/0402142号明細書、米国特許出願公開第2021/0402149号明細書、米国特許出願公開第2021/0402153号明細書、米国特許出願公開第2021/0121667号明細書、米国特許出願公開第2022/0001138号明細書、米国特許出願公開第2022/0032013号明細書、米国特許出願公開第2022/0032014号明細書、米国特許出願公開第2022/0062528号明細書、米国特許出願公開第2022/0126064号明細書、米国特許出願公開第2022/0152368号明細書、米国特許出願公開第2022/0176081号明細書、米国特許出願公開第2022/0176082号明細書、米国特許出願公開第2022/0193376号明細書、米国特許出願公開第2022/0193377号明細書、米国特許出願公開第2022/0193378号明細書、米国特許出願公開第2022/0193379号明細書、および米国特許出願公開第2022/0296862号明細書に見出すことができ、これらの各々は、その全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0020】
本明細書に記載されているとおり、カテーテル150の異なる部分は異なる機能を果たすことが要求され、従って、異なる機械的特性を示すことが求められる。例えば、第1の部分154および/または移行部分158は、第2の部分156に対しより剛性のある機械的特性、もしくはより硬いデュロメーター材料を備えうる。従って、第1の部分154および/または移行部分158は、これらの部分を遠位側に押し込んで挿入部位を形成し拡張していく際にも、ねじれることも潰れることもなく軸方向へのより大きな力に耐えることができる。第2の部分156が曲がりくねった血管の経路を通りぬけるのを容易にするために、第2の部分156はより柔らかいデュロメーター材料、あるいはより柔軟な材料で形成されうる。カテーテル150の形成には、滑らかな反管腔側表面を維持する一方で、異なる材料で形成された、これらの異なる構造をともに結合することが要求される。
【0021】
図2は、第1の部分154、第2の部分156、および移行部分158を含む、カテーテル150の遠位側部分の更なる詳細を示す。一実施形態では、第2の部分156は近位管腔開口部116Aを終端とする近位管腔114Aと、中間管腔開口部116Bを終端とする中間管腔114Bと、を含みうる。近位管腔開口部116Aおよび中間管腔開口部116Bの各々は、第2の部分156の側壁を通過して延在しうる。近位管腔開口部116Aおよび中間管腔開口部116Bの各々は、移行部分158の近位側に配置されうる。一実施形態では、近位管腔開口部116Aは中間管腔開口部116Bの近位側に配置されうる。一実施形態では、近位管腔開口部116Aと中位管腔開口部116Bとはカテーテル150の遠位先端118から等距離に配置されうる。カテーテル150の遠位管腔114Cは、カテーテル150の遠位先端118まで延在しうるとともに、遠位管腔開口部116Cと連通しうる。
【0022】
図3は、図2の「A」で示した位置での第1の部分154の断面図を示す。示されている通り、第1の部分154は単一の管腔と、相対的に小さい外径とを画定しうる。図4は、図2の「B」で示した位置での、第1の部分154と移行部分158との間の接合部の断面図を示す。図5は、図2の「C」で示した位置での移行部分158の断面図を示し、この位置では、遠位管腔114が第1の部分154と第2の部分156との間を移行する際に、遠位管腔114Cの軸が移行部分158の軸からオフセットされる。図6は、図2の「D」で示した位置での第2の部分156の断面図を示し、かつ近位管腔114A、中間管腔114Bおよび遠位管腔114Cを示している。
【0023】
先端形成方法
図7A図8Cは、遠位先端構造170を第2の部分156に結合してカテーテル本体152を形成することを含む、カテーテル150の例示的な製造方法を示す。一実施形態では、遠位先端構造170は、移行部分158と第1の部分154の少なくとも一部とのうちの一方または両方を含む。「チッピング(tipping)」と呼ばれる、遠位先端構造170を第2の部分156に結合する例示的な方法では、第2の部分156は管腔114を1つ以上有するように形成されうる。一実施形態では、第2の部分156は押し出されて所望の長さにトリミングされうる。しかしながら、第2の部分156を形成する他の方法も考えられる。図7A図8Cに示すように、第1の(近位)管腔114A、第2の(中間)管腔114B、および第3の(遠位)管腔114Cを含む3つの管腔を有する第2の部分156が提供される。しかしながら、他の単管腔型または複管腔型の第2の部分156、またはカテーテル150も考えられる。カテーテル本体152の管腔114A,114B,114Cは、図6図7Aに示すように、第2の部分156の中心軸の周りに放射状に配置されうることに留意されたい。図8A図8Cは、第2の部分156の長手方向断面を、近位管腔114Aの後方に配置された中間管腔114B、および遠位管腔114Cとともに示していることに留意されたい。
【0024】
一実施形態では、プラグ252を近位管腔114Aおよび中間管腔114Bの一方または両方の中に配置しうる。例えば、第1のプラグ252Aを第1の管腔114Aの遠位端内に配置し、第2のプラグ252Bを第2の管腔114Bの遠位端内に設置してもよい。プラグ252の遠位先端254は、第2の部分156の遠位端と整合しうる。任意選択的に、プラグ252の遠位先端254を、第2の部分156の遠位端218と整合するようにトリミングしてもよい。
【0025】
図7Aに示すように、カテーテルのゲージが小さくなるほど、カテーテル150の壁の一部は、より縮小した厚み、例えば厚み(T1)を備えうる。従って、カテーテル壁のこれらの薄い部分の断面積は、遠位構造170と結合するためのごくわずかな表面積しか備えていないことがある。従って、これらの領域での接合は脆弱化し潜在的に破損しうる。あるいは、第2の部分156の壁部が遠位先端構造170の壁部と整合しないことで製造時に不具合を起こしうる。一実施形態では、遠位先端構造170と第2の部分156との結合を容易にするための螺旋状プラグ180が提供されうる。
【0026】
図7B図7Dに示すように、第2の部分156の管腔、例えば遠位管腔114Cの内径(D1)以上の外径(D2)を有するチューブ182を備えることで、螺旋状プラグ180を形成することができる。チューブ182は長手方向に切断することができ(図7C)、さらにチューブ182は管腔114の内径(D1)以下の外径(D3)を有する螺旋形状(図7D)へと巻かれることができる。螺旋状プラグ180の近位側部分は管腔114内部に留置されうる。一実施形態では、螺旋状プラグ180の遠位端184は第2の部分156の遠位端218の遠位側に延在しうる。一実施形態では、螺旋状プラグ180の遠位端184は第2の部分156の遠位端218と同一平面に整列してもよい。任意選択的に、第2の部分156の遠位端218と同一平面に整列するように、螺旋状プラグ180の遠位端184をトリミングしてもよい。
【0027】
一実施形態では、螺旋状プラグ180は非ロール形状に向かって付勢されうる(図7C)。従って、螺旋状プラグ180は、管腔114内部に配置されると、ロール形状から展開し、管腔114に締まり嵌めで係合することができる。一実施形態では、螺旋状プラグ180は接着剤、接合または溶接などを用いて管腔114の内面に結合することができる。有利なことに、螺旋状プラグ180は第2の部分156の壁部と協働してより大きな壁厚(T2)を提供することで、遠位先端構造170の結合を容易にすることができる。
【0028】
図8Aは、近位管腔114Aの中に配置された第1のプラグ252Aを含む、第2の部分156の長手方向断面図を示す。図8Aに示されてはいないものの、本明細書に記載されているとおり、第2のプラグ252Bは中間管腔114Bの中に配置されうる。さらには、螺旋状プラグ180は遠位管腔114Cの中に配置されうる。遠位先端構造170は、次いで、例えば接着剤、接合、溶剤接合、あるいは溶接などを用いて、第2の部分156の遠位端218と結合されることができる。一実施形態では、螺旋状プラグ180は、遠位管腔開口部116Cまで延在する遠位管腔114Cを形成するために、遠位先端構造170の管腔を第2の部分156の管腔114に整合させ易くすることができる。
【0029】
一実施形態では、第1のプラグ252Aは近位管腔114Aを、第2のプラグ252Bは中間管腔114Bを、移行部分158の近位側で封止することができる。次に、近位管腔開口部116Aがカテーテル本体152の壁部を貫通するように形成されて、近位管腔114Aと連通することができる。さらに、中間管腔開口部116Bがカテーテル本体152の壁部を貫通するように形成されて、中間管腔114Bと連通することができる。
【0030】
一実施形態では、遠位先端構造170が第2の部分156と結合すると、螺旋状プラグ180は管腔114から除去されうる。一実施形態では、螺旋状プラグ180は犠牲材料によって形成されうる。遠位先端構造170による第2の部分156のチッピングの過程で、螺旋状プラグ180の一部は、第2の部分156と遠位先端構造170との間の接合部に亘って、溶融しかつ管腔114の内壁と融合しうる。従って、螺旋状プラグ180は接合部に亘って追加的な支持を提供することで、確実な結合を確保することができる。図8Cに示すように、遠位先端構造170が第2の部分156と結合されると、螺旋状プラグ180の内径を拡大することができる。
【0031】
一実施形態では、第1の部分154と移行部分158との一方または両方、すなわち遠位先端構造170は第1の材料から形成され、第2の部分156は第2の材料から形成されうる。一実施形態では、第1の材料は第2の材料とは異なる機械的特性を示しうる。一実施形態では、第1の材料か第2の材料のいずれか一方はプラスチック、ポリマー、ポリウレタン、複合素料、またはエラストマーなどでありうる。一実施形態では、より柔軟な、すなわちより柔らかいデュロメーターの機械的特性を示しうる第2の材料に対し、第1の材料はより剛性のある、すなわちより硬いデュロメーターの機械的特性を示しうる。
【0032】
一実施形態では、螺旋状プラグ180は、遠位先端構造170の第1の材料、または第2の部分156の第2の材料の一方と同じ材料から形成することができる。一実施形態では、螺旋状プラグ180は第1の材料およびの第2の材料のいずれとも異なる第3の材料から形成されうる。一実施形態では、第3の材料はプラスチック、ポリマー、エラストマー、ポリウレタン、またはそれらを組み合わせたものなどでありうる。
【0033】
一実施形態では、第2の部分156の遠位端218、プラグ252、螺旋状プラグ180および遠位先端構造170のうち1つ以上を、金型の中に配置することで、遠位先端構造170を第2の部分156と結合することができる。任意で、マンドレル(図示せず)を遠位管腔114Cの一部の内部に配置することができる。エネルギー(熱、RF、または超音波接合など)および/または圧力が金型内のアセンブリに与えられることによって、第2の部分156の遠位端218、プラグ252、螺旋状プラグ180および/または遠位先端構造170の材料を一緒に融解または融合させて、カテーテル150のカテーテル本体152を形成することができる。マンドレルは、マンドレルを通って延在する遠位管腔114Cの一部を画定し、カテーテル本体152が形成されると除去されうる。
【0034】
一実施形態では、遠位先端構造170は移行部分158と第1の部分154とのうちの一方または両方を画定しうる。一実施形態では、遠位先端構造170は移行部分158を含み、さらに第1の部分154の近位端を受け入れるように構成された凹部を画定しうる。第1の部分154の近位端は接着剤、接合あるいは溶接などを用いて移行部分158と結合しうる。従って、第1の部分154は第3の材料、または第1、第2、および第3の材料とは異なる第4の材料から形成することができる。
【0035】
いくつかの特定の実施形態が本明細書に開示されており、特定の実施形態がある程度詳細に開示されているが、特定の実施形態が本明細書で提供される概念の範囲を制限することは意図されていない。追加の適応および/または修正は、当業者には明らかであり得、より広い態様では、これらの適応および/または修正もまた包含される。従って、本明細書で提供される概念の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される特定の実施形態から逸脱することができる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
【国際調査報告】