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特表2024-538335柔軟なバッキングを有する密封性膏薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】柔軟なバッキングを有する密封性膏薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20241010BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241010BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241010BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/32
A61K47/34
A61K31/381
A61P25/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526561
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2022080882
(87)【国際公開番号】W WO2023079119
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】102021128912.2
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト・デツィーカン
(72)【発明者】
【氏名】ニコ・ロイム
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・エムゲンブロイフ
(72)【発明者】
【氏名】ルイーザ・ヴィットリッヒ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA76
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC29
4C076EE03A
4C076EE12
4C076EE27
4C076EE49A
4C076FF02
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086BB02
4C086MA63
4C086NA10
4C086ZA22
(57)【要約】
本発明は、支持層、密封層、および少なくとも1つの薬学的有効成分を含む経皮治療システムであって、密封層が、少なくとも1つのポリイソブチレンおよび少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーに基づく少なくとも1つの密封性接着成分を含む、システムに関する。本発明はまた、医薬品として使用するためのこの種のシステムに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層、密封層、および少なくとも1つの原薬を含む経皮治療システムであって、密封層は、少なくとも1つのポリイソブチレンおよび少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーに基づく少なくとも1つの密封性接着成分を含み、それぞれ密封層の総重量に対して、少なくとも1つのポリイソブチレンは、密封層中に80~97.5重量%の量で存在し、少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーは、密封層中に2.5~20重量%の量で存在する、経皮治療システム。
【請求項2】
少なくとも1つのポリイソブチレンは、分子量20,000~60,000g/molの中分子量ポリイソブチレンおよび分子量1,000,000~1,200,000g/molの高分子量ポリイソブチレンを含む混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーは、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、および/またはスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
少なくとも1つのポリイソブチレンは、中分子量ポリイソブチレンおよび高分子量ポリイソブチレンを95:5~75:25の重量比で含む混合物であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
少なくとも1つのポリイソブチレンは、密封層の総重量に対して、密封層中に85~95重量%の量で含まれることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーは、密封層の総重量に対して、密封層中に5~15重量%の量で含まれることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
密封層の坪量は、30~250g/m、好ましくは50~200g/mであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
経皮治療システムは、マトリックス層をさらに含み、密封層は、支持層とマトリックス層との間に配置され、マトリックス層は、少なくとも1つの感圧接着剤および少なくとも1つの原薬を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
少なくとも1つの感圧接着剤は、シリコーンに基づく感圧接着剤、(メタ)アクリレートポリマーに基づく感圧接着剤、および/または(メタ)アクリレートコポリマーに基づく感圧接着剤を含むことを特徴とする、請求項8に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
少なくとも1つの原薬は、催眠薬、鎮静薬、抗てんかん薬、アンフェタミン、向精神薬、神経遮断薬、神経筋遮断薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、昇圧薬、鎮咳薬、去痰薬、鎮痛薬、甲状腺ホルモン、性ホルモン、グルココルチコイドホルモン、抗糖尿病薬、抗腫瘍薬、抗生物質、化学療法薬、麻酔薬、抗パーキンソン病薬、抗アルツハイマー病薬および/またはトリプタンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
少なくとも1つの原薬は、密封層の総重量に対して密封層中に、および/またはマトリックス層の総重量に対してマトリックス層中に、1~30重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
支持層は、伸縮性の織布、編布、または不織布を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
支持層は、材料の初期状態に対して、厚さ方向ではなく、長手方向および/または横方向に、1~100%、好ましくは10~50%、最も好ましくは15~30%の弾性を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
医薬品として使用するための請求項1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮治療システムおよび医薬品としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮治療システム(TTS)は、貼付剤の形で薬物を投与する剤形である。これらのシステムには、従来の剤形よりも特定の利点がある。有効成分を含有する貼付剤を皮膚に貼付すると、当該有効成分は、身体の対応する部位の皮膚を介して、この部位に正確に、正確な用量で、消化管や肝臓で早期に分解されることなく吸収される。加えて、この剤形は、有効成分を長期間にわたって一定に放出することができる。
【0003】
多くの場合、有効成分の経皮投与は、皮膚の透過性の低さによって妨げられる。したがって、有効成分を効率よく吸収するためには、皮膚の透過性を高めることが重要であった。この可能性の1つは、皮膚部位を可能な限り覆うか、または密閉し、皮膚の上層に水蒸気を蓄積させ、その結果、有効成分に関して皮膚の透過性が高くなることを意味すると理解される、密封の効果である。
【0004】
しかしながら、これらのよく知られた貼付剤には、一般にその材料特性が非弾性的で硬いため、装着感が悪く、そのため装着者の運動性が制限され、貼付剤が頻繁に意図せず外れてしまうという欠点がある。
【0005】
特許文献1によると、貼付剤の密封は、薄いプラスチックフィルム、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような、水蒸気に対して不透過性の支持層を使用することによって達成される。
【0006】
有効成分の吸収のために皮膚の透過性を高めるもう1つの可能性は、透過増強剤の使用である。
【0007】
例えば、特許文献2には、ジクロフェナクを局所放出する鎮痛、抗炎症貼付剤(「Dojin Patch」)が開示されている。このシステムには、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドンが含まれているため、皮膚からの有効成分の透過が確実に増加する。このシステムの欠点は、この溶媒がヒトの健康への影響が懸念される物質であることで、ICHガイドラインQ3C(2011年2月4日付)によれば、1日あたり5.3mgのN-メチル-2-ピロリドンの摂取量を超えてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE10103860A1
【特許文献2】EP1312360A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の上述の欠点を取り除くことである。より詳細には、本発明の目的は、皮膚を介した有効成分の最適な吸収を生じさせると同時に、健康への影響が懸念される溶媒を必要としない経皮治療システムを提供することであり、すなわち、皮膚を介した有効成分の最適な吸収は、好ましくは密封を介してのみ起こるべきである。密封があるにもかかわらず、このシステムは、関節のような身体の曲げやすい部分であっても、高いレベルの快適性と接着性をなおもたらすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、請求項1に記載の経皮治療システム、すなわち、支持層、密封層、および少なくとも1つの原薬を含む経皮治療システムであって、密封層は、少なくとも1つのポリイソブチレンおよび少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーに基づく少なくとも1つの密封性接着成分を含む経皮治療システムによって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による経皮治療システムを説明する場合、「含む」という用語は、「からなる」を意味することができる。
【0012】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、層構造に関する限り、支持層および密封層を含むことができる。この実施形態では、少なくとも1つの原薬は、密封層に含まれている。
【0013】
別の実施形態では、本発明による経皮治療システムは、支持層および密封層に加えて、好ましくは、密封層が支持層とそれぞれのさらなる層との間に配置されるように配置されるさらなる層を含むことができる。そのような追加の層は、マトリックス層と呼ばれることが多い。本発明による経皮治療システムが支持層および密封層に加えてこのようなマトリックス層を含む場合、少なくとも1つの原薬はマトリックス層に含まれている。
【0014】
密封とは、少なくとも可能な限り最大限まで、水蒸気を通さない材料で皮膚部位を覆う、または密閉することを指す。その結果、不感蒸散(perspiratio insensibilis、安静時のヒトの皮膚からの水または水蒸気の放出)が損なわれ、水分が蓄積され、したがって角質層(表皮の最外層)が水分補給される。密封条件下では、角質層の水分量は最大25%(m/m)、好ましくは最大50%(m/m)増加する。皮膚の表面温度は37℃まで上昇することもできる。好ましくは、放出される水蒸気の量は、温度37℃、相対湿度30%で、DIN EN 13726-2:2002に従って測定して、24時間以内に500g/m未満、特に好ましくは200g/m未満、最も好ましくは120g/m未満である。
【0015】
接着成分とは、それ自体が接着剤、好ましくは感圧接着剤、すなわちそれ自体が粘着性であるか、または他の物質と混合したときに接着剤を生成する物質のことであると理解される。接着剤とは、DIN EN 923(2008年6月)に定義されているように、表面結合(接着力)と適切な内部強度(密着力)によって部品を接合できる非金属物質の物質である。物質または物質の混合物は、それ自体が接着剤として、より詳細には感圧接着剤として使用できる場合、粘着性があると表現される。感圧接着剤は、担体材料に塗布された後、高い粘性と永久的な粘着性を維持し、次いで、軽い圧力を加えることによって基材に適用され、粘着性を維持することができる接着剤である。DIN EN 923(2008年6月)に定義される感圧接着剤はまた、DIN EN 923(2008年6月)に定義されるように、セットされた乾燥フィルムが室温で永久的に粘着性があり、粘着性を維持するという特徴がある。感圧接着剤で作製された接着剤は通常、接着された基材を破壊することなく剥がすことができる。
【0016】
少なくとも1つの密封性接着成分は、好ましくは感圧接着剤を含むか、または他の物質と混合することによって感圧接着剤をもたらす。
【0017】
したがって、少なくとも1つの密封性接着成分は、不感蒸散、すなわち、皮膚からの水蒸気の損失を大いに防止し、したがって角質層への水分の蓄積をもたらす成分であると理解される。好ましくは、少なくとも1つの密封性接着成分は、すでに本質的に粘着性のある密封性接着成分である。
【0018】
透過性とは、固体(多孔性固体を含む)、特に薄い仕切りが、特定の物質(気体、液体、溶解分子、イオン、または原子)を通過させる能力のことである。この場合、ヒトまたは動物の皮膚が小分子、より詳細には原薬を通過させる能力である。専門用語では、透過とは、ある物質が別の物質を通過する、または貫通する方法であると理解されている。この用語は、化粧品または原薬の皮膚への透過または皮膚を介した透過という文脈で使われることが多い。
【0019】
したがって、ポリイソブチレンに基づく密封性接着成分を使用することにより、有効成分に対する皮膚の透過性が高まる。
【0020】
スチレン-イソプレンブロックコポリマーを使用することで、密封がさらに良好な影響を与えることができるという利点がある。加えて、スチレン-イソプレンブロックコポリマーは、経皮治療システムの各層の接着性を向上させるために、ポリイソブチレンの接着強度を補強する。
【0021】
好ましい一実施形態では、支持層は、密閉性ではない。
【0022】
好ましい一実施形態では、マトリックス層は、密閉性ではない。
【0023】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、少なくとも1つのポリイソブチレンが中分子量ポリイソブチレンおよび高分子量ポリイソブチレンを含む混合物であることを特徴とする。
【0024】
上記のような中分子量ポリイソブチレンは、好ましくは、20,000~60,000g/mol(粘度測定から決定される)、より詳細には約40,000g/mol(例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される)の平均分子量を有するポリイソブチレンである。
【0025】
上記のような中分子量ポリイソブチレンは、好ましくは、約27.5~51.6cm/gの極限粘度を有するポリイソブチレンである。
【0026】
市販されている適切な中分子量ポリイソブチレンの一例は、BASFからOppanol B10の商品名で入手可能である。
【0027】
上記のような高分子量ポリイソブチレンは、好ましくは、1,000,000~1,200,000g/mol(粘度測定から決定される)、より詳細には約1,110,000g/mol(例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される)の平均分子量を有するポリイソブチレンである。
【0028】
上記のような高分子量ポリイソブチレンは、好ましくは、約128~479cm/gの極限粘度を有するポリイソブチレンである。
【0029】
市販されている適切な高分子量ポリイソブチレンの一例は、BASFからOppanol N100の商品名でも知られているOppanol B100という商品名で入手可能である。
【0030】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、および/またはスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマーを含むことを特徴とする。
【0031】
スチレンブロックコポリマーは、スチレンモノマーの長い配列またはブロックおよび少なくとも1つの他のモノマーのブロックからなるか、またはそれらを含むブロックコポリマー(またはセグメントコポリマー)(例えば、-(AAA)-(BBB)-、ここでA=スチレン、B=他のモノマー)であると理解される。
【0032】
スチレンブロックコポリマーはまた、スチロールブロックコポリマーとしても知られている。
【0033】
スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマーが好ましい。このようなコポリマーの1つは、好ましくは、スチレンモノマーの長い配列またはブロック、続いてイソプレンモノマーの長い配列またはブロック、再びスチレンモノマーの長い配列またはブロックからなるか、またはそれらを含む(例えば、-(AAA)-(BBB)-(AAA)-、ここでA=スチレン、B=イソプレン)。
【0034】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、少なくとも1つのポリイソブチレンが中分子量ポリイソブチレンおよび高分子量ポリイソブチレンを95:5~75:25の重量比で含む混合物であることを特徴とする。
【0035】
好ましいのは、95:5、94:6、93:7、92:8、91:9、90:10、89:11、88:12、87:13、86:14、85:15、84:16、83:17、82:18、81:19、80:20、79:21、78:22、77:23、76:24、または75:25の重量比で、中分子量ポリイソブチレンおよび高分子量ポリイソブチレンを含み、より詳細には上記で定義したような混合物である。96:4、97:3、98:2、99:1、74:26、73:27、72:28、71:19、または70:30の重量比で、中分子量ポリイソブチレンおよび高分子量ポリイソブチレンを含み、より詳細には上記で定義したような混合物も同様に可能である。
【0036】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、少なくとも1つのポリイソブチレンが、密封層の総重量に対して80~97.5重量%、好ましくは85~95重量%の量で密封層に含まれていることを特徴とする。
【0037】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、中分子量ポリイソブチレンが密封層の総重量に対して55~90重量%、好ましくは60~85重量%、より好ましくは65~80%の場合の量で密封層に含まれていることを特徴とする。
【0038】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、高分子量ポリイソブチレンが密封層の総重量に対して5~35重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは15~25重量%の場合の量で密封層に含まれていることを特徴とする。
【0039】
異なるポリイソブチレンの混合物を使用する場合、この量はポリイソブチレンの総量を意味する。
【0040】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、少なくとも1つのスチレンブロックコポリマーが、密封層の総重量に対して2.5~20重量%、好ましくは5~15重量%の量で密封層に含まれていることを特徴とする。
【0041】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、密封層の坪量が30~200g/m、好ましくは50~150g/mであることを特徴とする。
【0042】
坪量が低いと、許容可能な水蒸気透過性に達するほど密封を確立できないので不利である。
【0043】
坪量が高くなると、水蒸気透過性が許容可能になるが、経皮治療システムは材料の使用量が増えるため柔軟性が低下し、経済的でなくなる。
【0044】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、密封層の水蒸気透過性が24時間以内に120g/m未満、好ましくは100g/m未満であることを特徴とする。
【0045】
水蒸気透過性は、本明細書ではDIN EN 13726-2:2002に従って、温度37℃、相対湿度30%で測定した。
【0046】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、経皮治療システムがマトリックス層をさらに含み、密封層が支持層とマトリックス層との間に配置され、マトリックス層が少なくとも1つの感圧接着剤および少なくとも1つの原薬を含むことを特徴とする。
【0047】
少なくとも1つの原薬は、マトリックス層のみに存在することができるか、またはマトリックス層および密封層の両方に存在することができる。
【0048】
別の実施形態では、マトリックス層が存在するが、それにもかかわらず、少なくとも1つの原薬は密封層にのみ存在する。そのため、マトリックス層は、好ましくは接着を強化するために使用される。
【0049】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、少なくとも1つの感圧接着剤が、シリコーンに基づく、(メタ)アクリレートポリマーに基づく、および/または(メタ)アクリレートコポリマーに基づく感圧接着剤を含むことを特徴とする。
【0050】
(メタ)アクリレートポリマーが適しており、より詳細には、アルミニウムまたはチタン化合物を添加してキレートエステルを形成することによって架橋する、自己架橋(メタ)アクリル酸含有(メタ)アクリレートポリマーの形態が適している。このような自己架橋マトリックスポリマーでは、例えばチタンに結合した(メタ)アクリル酸が架橋点を形成する。あるいは、非自己架橋(メタ)アクリレートコポリマー、例えば官能基としてヒドロキシル基または酸性基を有するものを使用することができる。このようなポリマーは、例えばHenkelからDurotakという商品名で市販されている。
【0051】
挙げることができる特に適したアクリレートポリマーは、アクリル酸2-エチルヘキシル、酢酸ビニル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルのコポリマーまたはターポリマー;アクリル酸2-エチルヘキシル、酢酸ビニルおよびアクリル酸のコポリマーまたはターポリマー;アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、酢酸ビニルおよびアクリル酸のコポリマーまたはテトラポリマー、またはそれらの混合物である。
【0052】
最も適しているものは、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、酢酸ビニルおよびアクリル酸の自己架橋テトラポリマー、ならびにアクリル酸2-エチルヘキシル、酢酸ビニルおよびアクリル酸2-ヒドロキシルエチルの自己架橋または非自己架橋ターポリマーである。
【0053】
特殊なアクリレートポリマーは、例えば以下のようなものがある:
・ Duro-Tak(商標)387-2510またはDuro-Tak(商標)87-2510(アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよびアクリル酸メチルに基づくコポリマー)、
・ Duro-Tak(商標)87-4287(酢酸ビニル、アクリル酸2-エチルヘキシルおよびアクリル酸2-ヒドロキシエチルに基づき、酢酸エチル中の溶液として、架橋剤を含まないコポリマー)、
・ Duro-Tak(商標)387-2287またはDuro-Tak(商標)87-2287(酢酸ビニル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸グリシジルに基づき、酢酸エチル中の溶液として、架橋剤を含まないコポリマー)、
・ Duro-Tak(商標)387-2516またはDuro-Tak(商標)87-2516(酢酸ビニル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸グリシジルに基づき、酢酸エチル、エタノール、n-ヘプタンおよびメタノール中の溶液として、チタン架橋剤を含むコポリマー)、
・ Duro-Tak(商標)387-2051またはDuro-Tak(商標)87-2051(アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルおよび酢酸ビニルに基づき、酢酸エチルおよびヘプタンの溶液としてのコポリマー)、
・ Duro-Tak(商標)387-2353またはDuro-Tak(商標)87-2353(アクリル酸、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジルおよびアクリル酸メチルに基づき、酢酸エチルおよびヘキサン中の溶液としてのコポリマー)、
・ Duro-Tak(商標)87-4098(アクリル酸2-エチルヘキシルおよび酢酸ビニルに基づき、酢酸エチル中の溶液としてのコポリマー)、
・ Duro-Tak(商標)87-900A
・ Duro-Tak(商標)387-2052(アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルおよび酢酸ビニルに基づき、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、およびヘプタン中の溶液として、アルミニウム架橋剤を含むコポリマー)、
・ Duro-Tak(商標)87-9301
・ Duro-Tak(商標)87-2074(アクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸グリシジルに基づき、酢酸エチル、エタノール、n-ヘプタンおよびメタノール中の溶液として、アルミニウム架橋剤を含むコポリマー)
・ Duro-Tak(商標)87-235A
・ Gelva GMS 9073
・ Gelva GMS 788
【0054】
可能な一実施形態では、感圧接着剤は、シリコーン系感圧接着剤、すなわちシリコーン感圧接着剤、より詳細にはアミン耐性シリコーン感圧接着剤を含む。
【0055】
好ましくは、本発明に従って使用することができるシリコーン感圧接着剤は、ジメチコノール/トリメチルシロキシシリケートクロスポリマーおよび/またはトリメチルシリル処理ジメチコノール/トリメチルシロキシシリケートクロスポリマーなどのシリコーンポリマーに基づく感圧接着剤であり、これらは、シリケートに対して、好ましくは少なくとも30重量%、より詳細には35~95重量%、特に好ましくは40~90重量%、または40~60重量%、または45~55重量%のシリコーンポリマーを含有する。
【0056】
一実施形態では、本発明に従って使用することができるシリコーン感圧接着剤は、ジメチコノール/トリメチルシロキシシリケートクロスポリマーおよび/またはトリメチルシリル処理ジメチコノール/トリメチルシロキシシリケートクロスポリマーなどのシリコーンポリマーを基礎として調製される感圧接着剤であり、これらは、好ましくは40重量%のシリコーンポリマーおよび60重量%のシリケートを含有する。このような接着剤は「ミディアムタック接着剤」と表現できる。
【0057】
別の実施形態では、本発明に従って使用することができるシリコーン感圧接着剤は、ジメチコノール/トリメチルシロキシシリケートクロスポリマーおよび/またはトリメチルシリル処理ジメチコノール/トリメチルシロキシシリケートクロスポリマーなどのシリコーンポリマーを基礎として調製される感圧接着剤であり、これらは、好ましくは45重量%のシリコーンポリマーおよび55重量%のシリケートを含有する。このような接着剤は「ハイタック接着剤」と表現できる。
【0058】
異なるシリコーン接着剤の混合物を使用することができ、例えば上記のような「ミディアムタック接着剤」および「ハイタック接着剤」を1:1(重量比)で使用することができる。
【0059】
上記のようなすべてのシリコーン感圧接着剤は、好ましくは溶媒としてn-ヘプタンを含有する。
【0060】
本発明に従って使用するのに適したシリコーン感圧接着剤は、例えば、Dow Corningのホットメルト感圧接着剤BIO-PSA 7-4201および/またはBIO-PSA 7-4301である。上記で定義したように、BIO-PSA 7-4201は「ミディアムタック接着剤」であり、BIO-PSA 7-4301は「ハイタック接着剤」である。
【0061】
また、前述のポリマー混合物を感圧接着剤として使用することも可能であるが、ただし、ポリマー成分の実質的な分離が起こらないように、ポリマーが互いに十分相溶することが条件となる。しかしながら、異なるポリマーに基づく感圧接着剤層の製造に必要な処理労力が高くなるため、経皮治療システムが感圧接着剤として1種類のポリマーのみを含有することが好ましい。
【0062】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、少なくとも1つの感圧接着剤が、マトリックス層に対して40~98重量%、好ましくは50~95重量%、特に好ましくは60~90重量%の量でマトリックス層中に存在することを特徴とする。
【0063】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは少なくとも1つの原薬が、催眠薬、鎮静薬、抗てんかん薬、アンフェタミン、向精神薬、神経遮断薬、神経筋遮断薬、鎮痙薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、強心薬、抗不整脈薬、利尿薬、降圧薬、昇圧薬、鎮咳薬、去痰薬、鎮痛薬、甲状腺ホルモン、性ホルモン、グルココルチコイドホルモン、抗糖尿病薬、抗腫瘍薬、抗生物質、化学療法薬、麻酔薬、抗パーキンソン病薬、抗アルツハイマー病薬および/またはトリプタンを含む群から選択されることを特徴とするが、この群は網羅的なものではない。
【0064】
具体例は、アセトアミノフェン、アドレナリン、アゴメラチン、アルプラゾラム、アムロジピン、アナストロゾール、アポモルヒネ、アリピプラゾール、アセナピン、アトルバスタチン、バクロフェン、ベンゾカイン、ベンゾカイン/メントール、ベンジダミン、ブプレノルフィン、ブプレノルフィン/ナロキソン、ブプレノルフィン/ナロキソン/セチリジン、カンナビノイド、トウガラシ、セチリジン、クロルフェニラミン、クロミプラミン、デキサメタゾン、デキストロメトルファン、デキストロメトルファン/フェニレフリン、ジクロフェナク、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン/フェニレフリン、ドネペジル、ドロナビノール、エピネフリン、エスシタロプラム、エストラジオール、エストラジオール/レボノルゲストレル、エチニルエストラジオール、ファモチジン、フェンタニル、フィンゴリモド、グリメピリド、GLP-1ペプチド、グラニセトロン、イブプロフェン、インスリン、インスリンナノ粒子、インスリン/GLP-1ナノ粒子、ケタミン、ケトプロフェン、ケトチフェン、カフェイン、レボセチリジン、レボノルゲストレル、リドカイン、ロペラミド、ロラタジン、ロキソプロフェン、メクリジン、メチルフェニデート、サリチル酸メチル、ミダゾラム、ミロデナフィル、モンテルカスト、多量体-001、ナロキソン、ニコチン、ニトログリセリン、ノルエルゲストロミン、オランザピン、オロパタジン、オンダンセトロン、オキシブチニン、ペクチン、ペクチン/メントール、ペクチン/アスコルビル酸、pediaSUNAT(アルテスネートおよびアモジアキン)、ピロキシカム、フェニレフリン、プレドニゾロン、プソイドエフェドリン、リスペリドン、リバスチグミン、リザトリプタン、ロチゴチン、サルブタモール、セレギリン、センナ配糖体、シルデナフィルクエン酸塩、シメチコン、スマトリプタン、タダラフィル、テストステロン、トリアムシノロンアセトニド、トリプタン、トロピカミド、ボグリボース、ゾルミトリプタン、ゾルピデム、またはこれらの化合物の薬学的に許容される塩を含む。
【0065】
原薬はまた、異なる有効成分の混合物でもよい。
【0066】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、少なくとも1つの原薬が、密封層の総重量に対して密封層中に、マトリックス層の総重量に対してマトリックス層中に、0.5~40重量%、好ましくは1~30重量%の量で存在することを特徴とする。
【0067】
一実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくは、マトリックス層および/または密封層が、好ましくはアルコール、脂肪酸および/または脂肪酸エステルから選択される少なくとも1つの透過増強剤を含むことを特徴とする。
【0068】
透過増強剤とは、ある物質の別の物質への透過を促進する、すなわち透過速度を増加させる、または一般に透過の効率を増加させる化合物であると理解される。
【0069】
加えて、少なくとも1つの透過増強剤は、好ましくは、有効成分の形態を安定化し、長期間にわたって皮膚を介した有効成分の比較的高い、また安定したを保証する化合物であることが好ましい。
【0070】
原薬の融点の低下および/または、例えば皮膚のタイトジャンクションを開くことによる皮膚バリアの低下のような透過性を高めるための様々なメカニズムが知られている。
【0071】
透過増強剤は、好ましくは、以下の特性の少なくとも1つを特徴とする。
【0072】
理想的には、透過増強剤の効果は早く、その効果の活性および持続時間はいずれも予測可能で再現可能であるべきである。
【0073】
透過増強剤は、体内でいかなる薬理学的活性も有してはならない、すなわち、例えば、いかなる受容体部位にも結合してはならない。
【0074】
透過増強剤は、好ましくは一方向に機能すべきである、すなわち、治療有効成分を体内に透過させると同時に、体内からの内因性物質の損失を防ぐべきである。
【0075】
透過増強剤が皮膚から取り除かれると、バリア特性は迅速かつ完全に戻るはずである。
【0076】
透過増強剤は、異なる製剤への製剤化に適していなければならない、すなわち、賦形剤および薬物の両方に適合するものでなければならない。
【0077】
透過増強剤は、美容的に受け入れられ、肌触りがよく、毒性がなく、刺激がなく、アレルギー性がないものでなければならない。
【0078】
透過増強剤の機能および特性は、例えば、Williamsらによる刊行物「Penetration Enhancers」、Advanced Drug Delivery reviews、56(2004)、603~618頁、またはAmjadiらによる刊行物「Recent advances in skin penetration enhancers for transdermal gene and drug delivery」、Current Gene Therapy 17(2)、2017、またはGuptaらによる刊行物「Effect of chemical penetration enhancers on skin permeability:In silico screening using molecular dynamics simulations」、Scientific Reports、9_1456(2019)に記載されており、その内容を本明細書に完全に組み入れる。
【0079】
適した透過増強剤は、ペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、イソ吉草酸、ネオヘプトン酸、ネオノナン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノレン酸、バクセン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、オレイン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、酢酸エチル、プロピル酸メチル、酢酸ブチル、吉草酸メチル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸メチル、オレイン酸エチル、デカン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル(ミリスチン酸イソプロピルエステル)、パルミチン酸イソプロピルおよび/またはオレイン酸イソプロピルのような脂肪酸および/または脂肪酸エステルを含む。
【0080】
他の適した透過増強剤は、プロピレングリコールのようなまたはジプロピレングリコールのような多価アルコールを含む。
【0081】
他の適した透過増強剤は、プロピレン尿素、ジメチルプロピレン尿素および/またはジメチルエチレン尿素を含む。
【0082】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、密封層および/またはマトリックス層が、密封層の総重量に対して密封層中に、および/またはマトリックス層の総重量に対してマトリックス層中に、0.5~20重量%の量で、特に好ましくは2~15重量%の量で、最も特に好ましくは5~10重量%の量で少なくとも1つの透過増強剤を含有することを特徴とする。
【0083】
さらに、本発明による経皮治療システムは、ピロリドン、より詳細にはN-メチル-2-ピロリドン、スルホキシド、より詳細にはジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、より詳細にはジメチルホルムアミド(DMF)、および/または1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンもしくはラウロカプラム(アゾン)および/または誘導体のクラスからの透過増強剤が、本発明による経皮治療システム中に存在しないことを特徴とする。
【0084】
別の好ましい実施形態では、本発明による経皮治療システムは、好ましくはマトリックス層および/または密封層中に少なくとも1つの抗酸化剤を含有する。少なくとも1つの抗酸化剤は、好ましくは、α-トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na)およびブチルヒドロキシトルエンから選択される。
【0085】
少なくとも1つの抗酸化剤は、好ましくは、密封層の総重量に対して密封層中に、および/またはマトリックス層の総重量に対してマトリックス層中に、0.05~1.5重量%、好ましくは0.2~1重量%の量で存在する。
【0086】
抗酸化剤の使用は、本発明による経皮治療システムが、長期間にわたって、様々な外部条件下で安定したままであるという利点を有する。
【0087】
本発明による経皮治療システムは、さらに好ましくは、マトリックス層が50~400g/m、好ましくは70~150g/m、特に好ましくは90~120g/mの坪量を有することを特徴とする。
【0088】
別の好ましい実施形態では、本発明による経皮治療システムは、約2~250cm、好ましくは約50~150cmの表面積を含むことを特徴とする。
【0089】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、支持層が伸縮性の織布、編布、または不織布を含むことを特徴とする。
【0090】
当該布地は、好ましくは、少なくとも一方向、より好ましくは二方向に伸縮可能である。これは、織布、編布、または不織布の厚さ方向ではなく、縦方向および/または横方向の伸縮性または弾性を指す。
【0091】
弾性または少なくとも一方向、好ましくは二方向(縦方向および/または横方向)に伸縮可能であるとは、経皮治療システムが、材料の初期状態に対して、元の形状を失うことなく、厚さ方向ではなく、少なくとも一方向、好ましくは二方向、好ましくは縦方向および横方向に伸長する能力を意味すると理解される。伸縮素材の永久的な変形は起こらない。弾性は伸びによって評価され、無次元数として、または100倍したときのパーセント値として指定される。
【0092】
本発明による経皮治療システムは、好ましくは、支持層が、材料の初期状態に対して、厚さ方向ではなく、長手方向および/または横方向に、1~100%、好ましくは10~50%、最も好ましくは15~30%の弾性を有することを特徴とする。弾性は、2013年4月10日のISO 13934-1に従って決定される。
【0093】
このような伸縮性の織布、編布、または不織布の使用は、本発明による経皮治療システムまたは有効成分含有貼付剤が、大きな具体例であっても、また四肢の関節のような身体の曲げやすい部位に適用される場合であっても、装着が非常に快適であり、可動性が制限されず、皮膚に対する高い接着性を有し、したがって意図しない剥離を防止するという利点を有する。
【0094】
さらに、別の好ましい実施形態では、本発明による経皮治療システムは、マトリックス層の密封層でない側に接着される、好ましくはシリコーン化ポリエチレンテレフタレートフィルムの除去可能な保護層を含むことを特徴とする。この除去可能な保護層(保護層がマトリックスと接触する側のシリコーン化またはフッ素重合(シリコーン接着剤の場合)による)は、本発明による経皮治療システムの包装および輸送を容易にする。
【0095】
本発明はさらに、医薬品として使用するための上記のような経皮治療システムに関する。
【0096】
以下、本発明を非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0097】
密封層の組成(表1)
【表1】
【0098】
密封層の調製:
最初に、プレ溶液を調製する。SISをn-プロピルアセテートに溶解し、固形分が約20%~25%になるようにする。Oppanolをn-ヘプタンに溶解する。B10については、固形分を60%~70%に調整し、N100については、固形分を15%~20%に調整する。溶液を正しい比率で混合し、均質化する。完成した混合物をシリコーン処理剥離ライナー上に所望の層厚で広げ、溶媒除去のために積層物をオーブンで乾燥させる。最後に、非密閉性の支持材(織布または不織布)を、乾燥および冷却した積層物に積層する。
【0099】
様々な密封層の水蒸気透過性を測定した。水蒸気透過性は、DIN EN 13726-2:2002に従って、温度37℃、相対湿度30%で測定した。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】坪量100g/mの比較製剤V1の層と比較した、坪量36.5、63.5および106.4g/mの組成物O1の3つの密封層の水蒸気透過性を示す図である。
図2】坪量100g/mの比較製剤V2の層と比較した、坪量34.6、66.5および108.8g/mの組成物O2の3つの密封層の水蒸気透過性を示す図である。
図3】坪量100g/mの比較製剤V2の層と比較した、坪量29.8、59.1および104.6g/mの組成物O3の3つの密封層の水蒸気透過性を示す図である。
図4】坪量100g/mの比較製剤V2の層と比較した、坪量33.2、64および91g/mの組成物O4の3つの密封層の水蒸気透過性を示す図である。
図5】坪量100g/mの比較製剤V1の層と比較した、坪量30.3、59.9および94.9g/mの組成物O5の3つの密封層の水蒸気透過性を示す図である。
図6】坪量100g/mの比較製剤V1の層と比較した、坪量35.4、63.3および96.4g/mの組成物O6の3つの密封層の水蒸気透過性を示す図である。
図7】坪量100g/mの比較製剤V2の層と比較した、坪量36.8、58.9および101.5g/mの組成物O6の3つの密封層の水蒸気透過性を示す図である。
【実施例
【0101】
【表2】
【0102】
様々なシステムの水蒸気透過性を測定した。このため、柔軟で非密封性の支持層に密封層のみを適用した。水蒸気透過性は、DIN EN 13726-2:2002に従って、温度37℃、相対湿度30%で測定した。
【0103】
中分子量ポリイソブチレン(Oppanol B10)および高分子量ポリイソブチレン(Oppanol N100)を75:25の割合で含む密封層(製剤1)またはSISを含まず85:15の割合で含む密封層(製剤2)の水蒸気透過性を、遊離ヒドロキシル基を有するアクリレートコポリマーであるDuroTak 387-2287からなる層(製剤3)と比較して測定した。いずれの場合も、坪量は100g/mであった。
【0104】
結果を図8に要約する。
【実施例
【0105】
実施例1および2に記載する様々な密封層(支持層:織布)の粘着性を、支持層およびヒト皮膚で調査した。
【0106】
すべての密封層は良好な接着性を示し、皮膚に残留物は残らなかった。
【実施例
【0107】
ロチゴチンを投与するための5つの異なる経皮治療システムをインビトロでヒト皮膚への透過性に関して調査した。
【0108】
有効成分含有層の組成
【表3】
【0109】
有効成分を含有する層の調製:
ポリビニルピロリドン(PVP、Kollidon 90F)6.66g、DL-α-トコフェロール0.083g、パルミチン酸アスコルビル0.033gおよびメタ重亜硫酸ナトリウム水溶液(10重量%)0.030gを無水エタノール25.93gと混合し、透明な溶液を得る(300~2000rpm;プロペラ撹拌機)。多形体IIの15.00gのロチゴチンを300rpmで撹拌しながら添加し、60℃で90分間加熱する。
【0110】
シリコーン接着剤BIO-PSA 7-4301(n-ヘプタン中70重量%)152.80gおよびシリコーン接着剤BIO-PSA 7-4201(n-ヘプタン中70重量%)101.84gをこの混合物に添加し、2000rpmで10分間撹拌し(プロペラ撹拌機)、安定な分散液を得る。
【0111】
得られた混合物を適切なポリエステル剥離ライナー(例えばScotchpak(商標)9744)上に置く。コーティングされた剥離ライナーを乾燥オーブンで50℃で30分間、その後約110℃で10分間乾燥させる。コーティングの厚さは、溶媒を除去したロチゴチン含有層の坪量が60g/mになるように選択した。
【0112】
経皮システムの製造:
ロチゴチン含有層を、対応するPIB混合積層物に積層し、両弾性支持層KOB TAN 053を備える。
【0113】
最後に、ロチゴチン含有自己接着層構造から10cmの大きさの個々のTTSを打ち抜き、袋に封入した。
【0114】
経皮システムの組成
【表4】
【0115】
表3に列挙したシステムのインビトロヒト皮膚透過性は、フランツセルを使用して測定した。ドナーコンパートメントにはTTS製剤が入っている。アクセプターコンパートメントには緩衝液またはその他の溶液が満たされている。アクセプターコンパートメントから頻繁に試料を採取することで、選択した期間にわたって皮膚からの物質の透過を監視することができる。物質の透過に対する透過増強剤の影響も、このシステムを使用して試験することができる。拡散モデルとしてフランツセルを使用することは、全身的な利用可能性に相当する、ヒト皮膚を介した薬物の輸送(=透過)を予測するのに特に適している。しかしながら、インビトロとインビボの相関関係がないことに注意することが重要である。フランツセルには、手術で得られたヒト腹部皮膚を装填した。ここでは、拡散面積1.172cmの採皮した皮膚500μmを局所治療システムとインキュベートした。リン酸緩衝液+0.1%NaN(pH=5.5)を充填量10mLでアクセプター媒質として使用した。透過測定を32℃の温度で行った。
【0116】
測定結果を図9に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】