(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】無色ソーダライムガラスの組成物
(51)【国際特許分類】
C03C 3/078 20060101AFI20241010BHJP
C03C 3/083 20060101ALI20241010BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20241010BHJP
C03C 3/089 20060101ALI20241010BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20241010BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20241010BHJP
C03C 3/095 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C03C3/078
C03C3/083
C03C3/087
C03C3/089
C03C3/091
C03C3/093
C03C3/095
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526608
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2022080738
(87)【国際公開番号】W WO2023079034
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519417805
【氏名又は名称】アーエールセー フランス
【氏名又は名称原語表記】ARC FRANCE
【住所又は居所原語表記】104 avenue du General de Gaulle, 62510 ARQUES, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】シャルル・エルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】デラヴァル・ロドルフェ
(72)【発明者】
【氏名】イブレ・グザヴィエ
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
4G062BB01
4G062DA06
4G062DB01
4G062DB02
4G062DB03
4G062DC01
4G062DC02
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4G062DE01
4G062DE02
4G062DE03
4G062DF01
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4G062EB03
4G062EB04
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4G062JJ01
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4G062JJ10
4G062KK01
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4G062KK05
4G062KK06
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062NN29
4G062NN34
(57)【要約】
【課題】精錬時間を長くせずとも、ガラスの品質を保ちながら、浴に投入する硫酸塩の量を減らす、無色ソーダライムガラスの組成物を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、重量で、SiO2:68~78%、Na2O:8~18%、K2O:0~10%、CaO:7~12%、MgO:0~10%、ZnO:0~10%、BaO:0~10%、Al2O3:0~3%、B2O3:0~1%、SrO:0~1%、SO3の形態で表される全硫黄分:0.078%未満、CeO2の形態で表される全セリウム分:0.12%以下、およびFe2O3の形態で表される全鉄分:50~1,200ppm、を含有し、Mo種、As種、Sn種およびSb種が、意図的には添加されておらず、レドックスが、45未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無色ソーダライムガラスの組成物であって、重量で、
SiO
2:68~78%、
Na
2O:8~18%、
K
2O:0~10%、
CaO:7~12%、
MgO:0~10%、
ZnO:0~10%、
BaO:0~10%、
Al
2O
3:0~3%、
B
2O
3:0~1%、
SrO:0~1%、
SO
3の形態で表される全硫黄分:0.078%未満、
CeO
2の形態で表される全セリウム分:0.12%以下、および
Fe
2O
3の形態で表される全鉄分:50~1,200ppm、
を含有し、
Mo種、As種、Sn種およびSb種が、意図的には添加されておらず、
レドックスが、45未満である、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、重量で、
SO
3の形態で表される全硫黄分:0.074%未満、
を含有する、組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物において、重量で、
TiO
2:0~1%、および
F:0~0.3%、
を含有する、組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物において、重量で、
Na
2O:8%超~15%未満、
ZnO:0~1%、
BaO:0~2%、好ましくは0.10%未満、
Al
2O
3:0~2%、好ましくは1.0~1.90%、
CeO
2の形態で表される全セリウム分:0.1%以下、
ZrO
2:0.10%未満、好ましくは0.05%未満、および
Er
2O
3:200ppm未満、
を含有し、
レドックスが、40未満である、組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物において、重量で、
K
2O:0~0.5%、好ましくは0~0.2%、および
MgO:1~2%、
を含有する、組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物において、重量で、
SiO
2:71.0~73.0%、および
CaO:9~12%未満、
を含有する、組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物において、重量で、
CaO:10.0~11.4%、
を含有する、組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物において、重量で、
Er
2O
3:150ppm未満、
を含有する、組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物において、重量で、
Na
2O:13.0~14.0%、
を含有する、組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物において、Ti種、Ce種、B種、Zn種、Sr種およびSn種が、意図的には添加されていない、組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物において、重量で、
BaO:0~0.06%、好ましくは0~0.05%、
を含有する、組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物において、重量で、
Fe
2O
3の形態で表される全鉄分:100~300ppm、好ましくは100~250ppm、
を含有する、組成物。
【請求項13】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物において、重量で、
Fe
2O
3の形態で表される全鉄分:300ppm超~900ppm、好ましくは700ppm未満、
を含有する、組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物において、家庭用途または調理用途に意図されたものである、組成物。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物において、全透過光の、CIE1976に準拠した輝度値L
*が、94超、好ましくは95超である、組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物において、重量で、
SO
3の形態で表される全硫黄分:0.0405~0.0731%、
を含有する、組成物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物において、レドックスが、30超~40未満である、組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物において、
Se、CoおよびErのうちの少なくとも1種、
を含有し、好ましくは、亜セレン酸亜鉛、CoOおよびEr
2O
3の総量が、50~200ppmである、組成物。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物において、
ZrO
2の含有量が335~961ppmであり、
CaOの含有量が9.03~11.36%であり、
MgOの含有量が1.13~1.51%であり、
K
2Oの含有量が0.04~0.36%であり、
SiO
2の含有量が71.48~72.74%であり、
Al
2O
3の含有量が1.39~2%であり、
Na
2Oの含有量が13.03~14.37%であり、
CeO
2の含有量が827~1,000ppmであり、
レドックスが、18~36であり、
輝度L
*が、94.35~95.75である、組成物。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物において、
ZrO
2の含有量が、102~136ppmであり、
CaOの含有量が、10.83~11.23%であり、
MgOの含有量が、1.38~1.42%であり、
K
2Oの含有量が、0.03~0.04%であり、
SiO
2の含有量が、72.60~72.77%であり、
Al
2O
3の含有量が、1.50~1.52%であり、
Na
2Oの含有量が、13.31~13.36%であり、
CeO
2の含有量が、337~362ppmであり、
レドックスが、33~40未満であり、
輝度L
*が、95.36~95.58である、組成物。
【請求項21】
請求項1から16および18のいずれか一項に記載の組成物において、レドックスが、18以上である、組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の組成物において、レドックスが、20以上である、組成物。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物において、重量で、
SiO
2:69.0~75.0%、
Na
2O+K
2O:12.0~16.0%、
CaO+MgO+BaO:10.0~15.5%、
Al
2O
3:0.5~3.0%、および
B
2O
3:0~1.0%、
を含有する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス工業の分野に関する。ガラスの構成物質を溶融させるには、大量のエネルギーの供給が必要になる。ガラス浴の温度は、1,300~1,500℃の範囲内である。ガラスには、その組成に応じて、例えば飲料用グラス等の家庭用途に意図されたものや、例えば調理容器等の調理用途に意図されたものがある。
【背景技術】
【0002】
炉は、極めて大きい熱応力や機械的応力に曝される。炉は、高品質の耐火性コーティングで構築されている。このような耐火性コーティングは、高価なだけでなく、ガラスのうちの、高い化学反応性を有する一部の構成成分と反応を起こし易い。耐火性コーティングは熱伝導性が低いので、溶融ガラス浴の加熱は、炉内で例えば該ガラス浴の上方や該ガラス浴内部から行われる。
【0003】
例えば、ガラス浴といわゆるvaultと称される炉の頂部との間に、液体燃料又は気体燃料よる火炎バーナが存在する。実質的に、ガラス浴は輻射によって加熱される。ガスの出口温度は、ガラスの種族にもよるが、1,300~1,600℃である。
【0004】
また、ガラスの製造では、大量のガスが放出される。ガラス浴は、ガラス中に泡が形成されないように数時間かけて脱気される。脱気を促すために、硫酸塩などの精錬用添加剤が使用されることがある。炉は、所定の組成を有するガラスの連続バッチ運転を行うが、該組成はバッチ内で変化する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の出願人は、硫酸塩が、汚染の観点から、特には、出口ガスやガラス浴の汚染の観点から、欠点となり得ることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の出願人は、精錬時間を長くせずとも、ガラスの品質を保ちながら、浴に投入する硫酸塩の量を減らすという試験を行った。
【0007】
本発明は、無色ソーダライムガラスの組成物であって、重量で、SiO2:68~78%、Na2O:8~18%、K2O:0~10%、CaO:7~12%、MgO:0~10%、ZnO:0~10%、BaO:0~10%、Al2O3:0~3%、B2O3:0~1%、SrO:0~1%、SO3の形態で表される全硫黄分:0.078%未満、CeO2の形態で表される全セリウム分:0.12%以下、およびFe2O3の形態で表される全鉄分:50~1,200ppm、を含有し、Mo種、As種、Sn種およびSb種が、意図的には添加されておらず、レドックスが45未満である、組成物を提案する。
【0008】
SiO2の含有量が68%を下回ると、ガラスの粘度が下がり、膨張係数が増加する。
【0009】
SiO2の含有量が78%を上回ると、溶融がより困難になる。
【0010】
Na2Oの含有量が8%を下回ると、溶融キネティクスが悪化する。
【0011】
Na2Oの含有量が18%を上回ると、炉の耐火物の摩耗が増え、膨張係数が増加する。
【0012】
K2Oの含有量が10%を超えると、ガラス浴の粘度が大幅に上がる。
【0013】
CaOの含有量が7%を下回ると、温度-粘度曲線の傾きが小さくなり、成形機でのガラス形成レートが低速化する。
【0014】
CaOの含有量が12%を上回ると、結晶化による失透のリスクを招く。
【0015】
MgOの含有量が10%を上回ると、ガラスの軟化点が下がる。
【0016】
ZnOの含有量が10%を上回ると、ガラスの軟化点が下がり、ガラスの密度が増加する。
【0017】
BaOの含有量が10%を上回ると、ガラスの軟化点が下がり、ガラスの密度が増加する。
【0018】
Al2O3の含有量が3%を上回ると、融点が上昇する。
【0019】
B2O3の含有量が1%を上回ると、下流堆積物と共に蒸発するほか、耐火物の腐食が増える。
【0020】
CeO2の形態で表される全セリウム分が0.12%を上回ると、メタメリズムによってガラスが発色する。
【0021】
Fe2O3の形態で表される全鉄分が50ppmを下回ると、一般的に、シリコンの添加源、カルシウムの添加源およびナトリウムの添加源は鉄の含有量が少ないものが利用できないため、原材料の選択がより困難になるほか、カレットのリサイクルに制限が生じる。ガラス浴が赤外に対して透明になるので、炉床や炉の壁付近の温度が上昇し、耐火物の摩耗が加速する。
【0022】
Fe2O3の形態で表される全鉄分が1,200ppmを上回ると、対策が困難な発色、具体的には、FeOを低発色のFe2O3に酸化させる酸化剤を添加せずには対策が困難な発色が生じる。
【0023】
Asの意図的な添加は、毒性に関連する理由から望ましくない。
【0024】
Sbの意図的な添加は、毒性に関連する理由から望ましくない。
【0025】
本願の出願人は、第一鉄/第二鉄の比に相当するレドックスが、硫酸塩の含有量が低い場合に精錬を成功させるのに重要であるということに気付いた。レドックスは、SO3の可溶性に影響する。レドックスが55に近付くと、可溶性は最小になる。
【0026】
本明細書では、レドックスを、FeO(第一鉄)/Fe2O3(第二鉄)のモル比として定める。
【0027】
本願の出願人は、空気-天然ガス燃焼炉では、ガラス中のSO3の質量含有量が、レドックス=40で約0.20%以下になるという点を見出した。すなわち、硫酸塩の脱気は、ガラス浴中の含有量が多ければ多いほど発生する。一方で、生産条件を変えずに、ガラス中のSO3の質量含有量を少なくすることは難しい。実際、精錬時間を長くすると、精錬剤の量を減らすことはできるが、精錬時間に反比例して生産が低下し、ガラスの製造トン数に対して炉の消費エネルギーや摩耗が増加するという代償がある。
【0028】
酸素-天然ガス燃焼炉では、ガラス中のSO3の質量含有量が、レドックス=40で約0.10%以下となった。レドックスは、10~15の範囲内の数値に下げることができる。
【0029】
とはいっても、酸化度の大きいガラスを精錬しようとすると、精錬時間は長くなり、製造トン数は少なくなる。そのため、精錬速度のほか、いわゆるホワイトガラス(すなわち、透明でほぼ無色のガラス)を得るうえでのガラスの消色に関連する理由から、レドックスは18以上、あるいは、25以上が好ましい。このレドックス範囲では、ガラスの酸化度が大きければ大きいほど、ガラス中に残留する硫酸塩の最大相対量が増える。
【0030】
レドックスの範囲は、20~45が好ましい。レドックスの範囲は、25~40がより好ましい。レドックスは、30~40がなおいっそう良い。
【0031】
一実施形態において、前記組成物は、重量で、SO3の形態で表される全硫黄分が、レドックスとガラスの組成とから許容される最大量よりも低い。
【0032】
一実施形態において、前記組成物は、重量で、SO3の形態で表される全硫黄分:0.074%未満、を含有する。コンデンセイションが抑制される。生産ラインの部品に対するガラスの反応性が抑えられる。
【0033】
一実施形態において、前記組成物は、重量で、TiO2:0~1%、を含有する。
【0034】
一実施形態において、前記組成物は、重量で、F:0~0.3%を含有する。0.3%を超えると、金型の腐食が増える。
【0035】
一実施形態において、前記組成物は、重量で、SiO2:71.0~73.0%、Na2O:8%超~15%未満、K2O:0~0.5%、CaO:9~12%未満、MgO:1~2%、ZnO:0~1%、BaO:0~2%、Al2O3:0~2%、CeO2の形態で表される全セリウム分:0.1%以下、ZrO2:0.10%未満、およびEr2O3:200ppm未満、を含有し、レドックスが、40未満である。
【0036】
好ましい一実施形態において、前記組成物は、重量で、Na2O:13.0~14.0%、を含有する。
【0037】
好ましい一実施形態において、前記組成物は、重量で、K2O:0~0.2%、を含有する。
【0038】
好ましい一実施形態において、前記組成物は、重量で、CaO:10.0~11.4%、を含有する。
【0039】
好ましい一実施形態において、前記組成物は、重量で、BaO:0.10%未満、を含有する。
【0040】
好ましい一実施形態において、前記組成物は、重量で、Al2O3:1.0~1.90%、を含有する。Al2O3が1%未満であると、最終的なガラスの耐薬品性が低下する。
【0041】
好ましい一実施形態において、前記組成物は、重量で、ZrO2:0.05%未満、を含有する。
【0042】
好ましい一実施形態において、前記組成物は重量で、Er2O3:150ppm未満、を含有する。消色は例えば亜セレン酸亜鉛ZnSeO3(CAS13597-46-1)等の形態のセレンによって得られてもよい。
【0043】
一実施形態において、前記組成物は、Ti種が、意図的には添加されていない。
【0044】
一実施形態において、前記組成物は、B種が、意図的には添加されていない。
【0045】
一実施形態において、前記組成物は、Zn種が、意図的には添加されていない。
【0046】
一実施形態において、前記組成物は、Sr種が、意図的には添加されていない。
【0047】
一実施形態において、前記組成物は、Sn種が、意図的には添加されていない。
【0048】
一実施形態において、前記組成物は、Ce種が、意図的には添加されていない。
【0049】
一実施形態において、前記組成物は、Cr種が、意図的には添加されていない。
【0050】
一実施形態において、前記組成物は、重量で、BaO:0~0.06%、好ましくは0~0.05%、を含有する。光学的特性は、その他の化学種によって得られる。
【0051】
一実施形態において、前記組成物は、重量で、Fe2O3の形態で表される全鉄分:100~300ppm、を含有する。
【0052】
好ましい一実施形態において、前記組成物は、重量で、Fe2O3の形態で表される全鉄分:100~250ppm、を含有する。
【0053】
一実施形態において、前記組成物は、重量で、Fe2O3の形態で表される全鉄分:300ppm超~900ppm、を含有する。
【0054】
好ましい一実施形態において、前記組成物は、重量で、Fe2O3の形態で表される全鉄分:300~700ppm未満、を含有する。
【0055】
一実施形態において、前記組成物は、家庭用途または調理用途に意図されたものである。
【0056】
一実施形態において、前記組成物は全透過光の、CIE1976に準拠した輝度値L*が、94超、好ましくは95超である。このような数値は、いわゆるホワイトガラスとも称される透明ガラスに相当する。
【0057】
一実施形態において、レドックスは、18以上である。
【0058】
一実施形態において、レドックスは、20以上である。
【0059】
一実施形態において、前記組成物は、重量で、SiO2:69.0~75.0%、Na2O+K2O:12.0~16.0%、CaO+MgO+BaO:10.0~15.5%、Al2O3:0.5~3.0%、およびB2O3:0~1.0%、を含有する。
【0060】
一般的に、原材料同士の混合物が、ガラス原材料であると理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明を参酌することで明らかになる。
【0062】
ガラスの精錬は、ガラス生産の極めて重要な工程の一つである。この工程については、炉の一般的な運転の場面での精錬剤及びその挙動について詳述した各種刊行物に記載のとおりである:
【0063】
刊行物1:Le Verre - Sciences et Technologie - James BARTON and Claude GUILLEMET.
【0064】
刊行物2:Glass Science (Second edition) - Robert H. DOREMUS (Rensselaer Polytechnic Institute) - Wiley-Interscience publication John Wiley & Sons Inc.
【0065】
刊行物3:Glass - Science and Technology - Volume 2 Processing I - Edited by
D. R. UHLMANN and N. J. KREIDL.
【0066】
刊行物4:Elaboration du verre (fusion et affinage) - Etude bibliographique - Symposium de l’Union Scientifique Continentale du verre (Belgium) - Madrid, 11 - 14 September 1973.
【0067】
しかし、上記の刊行物では、硫酸塩を減らすための手段を解明することができない。一般的に、ガラス中に残留する硫酸塩の含有量は、製造されるガラスのレドックス状態と強く関係していると考えられている。よって、レドックスのモディファイすることなく、最終的なガラス中のSO3の濃度を削減することはできない。また、SO3の含有量は、生産品の品質、具体的には、最終的なガラスの精錬性についての保証になるので、そのような削減は無駄になる。
【0068】
ソーダライムガラスは、硫酸塩を添加することで精錬される。特に配慮すべき点は、ガラス作業温度、ガラス作業量、耐火物の腐食、ヒューム排出回路や濾過系統の温度、塩酸の露点よりも高い濾過温度、既存の濾過設備の濾過品質、およびガラス製品の生産に用いられる鋼製金型の腐食に対する影響である。
【0069】
ガラス製品では、しばしば、異質ガラスの形成源となる、各種汚染物質によるガラス中の濃縮現象を回避するために、白金コーティングが利用される。例えば、食器の分野では、このような濃縮が、食洗器内で、ウィグの形態の微細な糸条物の出現というかたちで明らかになる。これらの糸条物は、炉やフィーダ(すなわち、成形機に向かうガラスの流路)の構築に用いられる耐火物中に存在する化合物であるジルコニアの局所的な濃縮特有のものである。ガラスに対して中性的な元素である白金は、ガラスの品質にとって有害である上記のようなガラス/耐火物の接触を防止することができる。
【0070】
また、白金は、ガラスや構造材料処理の使用温度で昇華し易い金属の、保護コーティングとしても機能し得る(WO2016135084を参照のこと)。
【0071】
本願出願人は、ガラス中に残留する硫酸塩を減らすことで、白金の使用を抑えることができると判断している。
【実施例】
【0072】
本願の出願人は、幾つかの組成を試して、生産試験を何回も行った。これらの試験は、同じ原材料を使い、最終的に所望の組成となるように量を調節して実施した。
【0073】
ヒ酸塩のような毒性成分や、硝酸塩のような汚染の恐れがある成分は、使用を避けた。硫酸塩を削減しつつも精錬を促すために、ハロゲン類の添加を検討した。しかし、ソーダライムガラスへのハロゲン類の配合には、懸念がある。つまり、塩素には、ソーダライムガラスへの可溶性の問題があるため、精錬に対する効果を得るには、相当量の投与を検討しなければならない。
【0074】
レドックスが20~45である場合、ガラスの消色は、亜セレン酸亜鉛によって行われ得る。
【0075】
第1の工業炉での15日間を超える試験では、平均に対する一日当たりの生産の変化が-17%~+18%であった。ZrO2の含有量は、335~961ppmである。CaOの含有量は、9.03~11.36%である。MgOの含有量は、1.13~1.51%である。K2Oの含有量は、0.04~0.36%である。SiO2の含有量は、71.48~72.74%である。Al2O3の含有量は、1.39~3.01%である。Na2Oの含有量は、13.03~14.37%である。CeO2の含有量は、827~1,007ppmである。レドックスは、18~36(平均=26)である。輝度L*は、94.35~95.75(平均=95.38)である。このガラスは、商用グレードであり、
変化のない精錬時間が長い。このようにして、精錬は適切なものになる。具体的に述べると、保持期間に対する平均全体精錬は、双眼拡大鏡(倍率=20倍)で確認できるガラス気泡が1cm3当たり0.7未満、かつ、100μm超の気泡が1cm3当たり0.55未満である。一日当たりの生産は、安定している。
【0076】
Se、CoおよびErの添加を行い、いずれの添加の消色も、良い結果が得られた。酸化物の形態でこれらSe、CoおよびErの3種の添加を行うのが好ましい。亜セレン酸亜鉛の量は、0.5~5ppmであり得る。CoOの量は、0.5~5ppmであり得る。Er2O3の量は、50~200ppmであり得る。亜セレン酸亜鉛、CoOおよびEr2O3の総量は、50~200ppmであり得る。
【0077】
Zn種、Ba種、B種、Sr種、Mo種、As種、Sn種、Sb種、Ti種およびF種は、意図的には投入しない。
【0078】
後述の表1は、原材料の組成の変化が生産ガラスの組成に安定的に反映されるのに十分な時間をかけて行った工業炉での生産試験の生産出力で測定したガラス組成データを含む。また、生産の定期的モニタリングのために、測定No.1~12同士はスペースが数時間空けられている。CaO、K2O、SiO2、Al2O3、MgO、Na2O、CeO2、Er2O3、ZnSeO3およびCoOの含有量は、投入した原材料に由来するものである。この構成では、以上の種が炉内で揮発し難いことが判明した。それらの含有量は、投入した原材料の組成が経時的に一定となる範囲で良好に制御されている。
【0079】
ZrO2の含有量は、炉や下流の流路の運転条件に左右される。というのも、ガラス中のジルコニアは、炉容器や流路を構成する耐火物に由来するからである。ジルコニアは、原材料には含まれていない。ジルコニアの存在は、炉や流路の摩耗を反映している。ジルコニアの含有量が高いということは、耐火物の2回の交換の間である炉の寿命が短く、かつ、ガラスの製造トン数のコストが高価になることを表している。ジルコニアの含有量は、ガラス浴の温度や、例えばガラス浴内での動きの変化等の運転上の事象の影響を極めて受け易い。
【0080】
酸化鉄の総含有量は、投入した原材料の品質や稠度に左右される。そのため、このパラメータは、制御が難しい。レドックスは、ガラスの酸化度に依存し、着色剤の不在下ではガラスの色と相関する。レドックスが同じであれば、ガラスの色は、着色物質によって変わり得る。
【0081】
SO3の含有量は、ガラス浴に投入された硫酸塩の量、レドックス、加熱モード、および炉の構造パラメータに左右される。本願の出願人は、透明で且つSO3の含有量が少ない、家庭用途または調理用途のソーダライムガラスを製造することを試みた。予想外のことに、炉の一日当たりの生産は、炉を変えずに硫酸塩の含有量を多くした場合と同程度であった。
【0082】
一般的に、組成の測定は、ASTM C169規格に準拠して行われ得る。
【0083】
硫酸塩の含有量の測定は、DIN 51001に準拠して蛍光X線により実施する。精度を上げるために、HF、さらに、HNO3で酸溶解した後、ICP分析装置を用いた分析による方法を実施してもよく、これにより、35%と分散が抑えられることが分かった。
【0084】
【0085】
第2の工業炉での試験では、平均に対する一日当たりの生産の変化が-5%~+10%であった。ZrO2の含有量は、102~136ppmである。CaOの含有量は、10.83~11.23%である。MgOの含有量は、1.38~1.42%である。K2Oの含有量は、0.03~0.04%である。SiO2の含有量は、72.60~72.77%である。Al2O3の含有量は、1.50~1.52%である。Na2Oの含有量は、13.31~13.36%である。CeO2の含有量は、337~362ppmである。レドックスは、33~43(平均=37)である。ガラスは、変化のない精製期間が長い商用グレードのものである。このようにして、精錬は適切なものになる。具体的に述べると、保持期間に対する平均全体精錬は、双眼拡大鏡(倍率=20倍)で確認できるガラス気泡が1cm3当たり0(bouillon/cm3)となる。日々の生産量は、極めて安定している。
【0086】
好ましい方法は、酸化物の形態でSe, Co, Erの3つの種を添加することである。
亜セレン酸亜鉛(zinc selenite)の量は、0.5~5ppmであり得る。CoOの量は、0.5~5ppmであり得る。Er2O3の量は、投入する原材料に応じて、50~200ppmであり得る。亜セレン酸亜鉛、CoOおよびEr2O3の総量は、50~200ppmであり得る。
【0087】
Zn種、Ba種、B種、Sr種、Mo種、As種、Sn種、Sb種、Ti種およびF種は、意図的には投入しない。
【0088】
後述の表2は、原材料の組成の変化が生産ガラスの組成に安定的に反映されるのに十分な時間をかけて行った、工業炉での生産試験の生産出力で測定したガラス組成データを含む。また、生産の定期的モニタリングのために、測定No.1~4同士は少なくとも24時間空けられている。CaO、K2O、SiO2、Al2O3、MgO、Na2O、CeO2、Er2O3およびCoOの含有量は、投入した原材料に由来するものである。この構成では、以上の種が炉内で揮発し難いことが判明した。それらの含有量は、投入した原材料の組成が経時的に一定となる範囲で良好に制御されている。
【0089】
ジルコニアは、原材料に含まれていない。
【0090】
酸化鉄の総含有量は、投入した原材料の品質や稠度(constance)に左右される。
【0091】
SO3の含有量は、ガラス浴に投入された硫酸塩の量、レドックス、加熱モード、および炉の構造パラメータに左右される。本願の出願人は、透明で且つSO3の含有量が少ない家庭用途または調理用途のソーダライムガラスを製造することを試みた。予想外のことに、炉の一日当たりの生産は、炉を変えずに硫酸塩の含有量を多くした場合と同程度であった。
【0092】
【国際調査報告】