(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】潤滑組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20241010BHJP
C10M 119/22 20060101ALN20241010BHJP
C10M 101/02 20060101ALN20241010BHJP
C10M 107/02 20060101ALN20241010BHJP
C10M 129/68 20060101ALN20241010BHJP
C10M 155/02 20060101ALN20241010BHJP
C10M 105/18 20060101ALN20241010BHJP
C10M 145/24 20060101ALN20241010BHJP
C10M 151/04 20060101ALN20241010BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20241010BHJP
C10N 20/06 20060101ALN20241010BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20241010BHJP
C10N 30/10 20060101ALN20241010BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20241010BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20241010BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M119/22
C10M101/02
C10M107/02
C10M129/68
C10M155/02
C10M105/18
C10M145/24
C10M151/04
C10N20:00 A
C10N20:06
C10N20:00 Z
C10N30:08
C10N30:10
C10N50:10
C10N40:02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526845
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2022080493
(87)【国際公開番号】W WO2023078890
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハモン, クリスティーネ
(72)【発明者】
【氏名】カルヴァルゾ, ガエターノ
(72)【発明者】
【氏名】ブランハム, ケリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ホン
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB31A
4H104BB41A
4H104CB14A
4H104CB14C
4H104CD04A
4H104CG03C
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104EA01C
4H104EA04C
4H104EA08C
4H104EB05
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104LA04
4H104LA05
4H104PA01
4H104QA18
(57)【要約】
本特許出願は、フッ素化潤滑剤の添加剤としての非フッ素化芳香族ポリマーの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(A)前記組成物の100重量%を基準として99.9重量%~65.0重量%の、少なくとも1種の水添油又は(全)フッ素化油と、
(B)前記組成物の100重量%を基準として0.1重量%~35.0重量%の少なくとも1種の芳香族ポリマーと、
を含有し、
- 少なくとも150℃の融点を有し、且つ
- 体積粒度分布としてレーザー回折粒度分析によって測定される平均粒度(d
50)が1μm超15μm以下の範囲内であり、ISO 9277に準拠したBET法を使用するガス吸着によって決定される表面積が0.5m
2/g以上5m
2/g未満である粉末の形態である、
組成物。
【請求項2】
前記組成物が、
(A)前記組成物の100重量%を基準として99重量%~68.0重量%の、少なくとも1種の水添油又は(全)フッ素化油と、
(B)前記組成物の100重量%を基準として1.0重量%~32.0重量%の少なくとも1種の芳香族ポリマーと、
を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の水添油が、鉱油又は合成油であり、好ましくはポリアルファオレフィン(PAO)、ポリアルキレングリコール(PGA)、エステル、シリコーン油、ポリフェニルエーテルを含む群の中で選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の(全)フッ素化油が(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記PFPEポリマーが、繰り返し単位R°を含む、好ましくはこれらからなる部分的に又は完全にフッ素化された鎖[鎖(Rf)]を含み、前記繰り返し単位が、
(i)-CFXO-(式中、Xは、F又はCF
3である)、
(ii)-CFXCFXO-(式中、Xは、出現ごとに同じであるか又は異なり、F又はCF
3であるが、Xの少なくとも1つは-Fであることを条件とする)、
(iii)-CF
2CF
2CW
2O-(式中、各Wは、出現ごとに同じであるか又は異なり、F、Cl、Hである)、
(iv)-CF
2CF
2CF
2CF
2O-、
(v)-(CF
2)
j-CFZ-O-(式中、jは0~3の整数であり、Zは一般式-O-R
(f-a)-Tの基であり、R
(f-a)は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、Xのそれぞれが独立してF又はCF
3である-CFXO-、-CF
2CFXO-、-CF
2CF
2CF
2O-、-CF
2CF
2CF
2CF
2O-の中で選択され、TはC
1~C
3パーフルオロアルキル基である)
からなる群から独立して選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーが、
(a)ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)ポリマー;
(b)ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)ポリマー;
(c)ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマー;及び
(d)ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマー;
を含む群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記(a)ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)ポリマーが、繰り返し単位:
-(Ar-S)- (RPAs)
(式中、Arはアリーレン基である)
を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記(b)ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)ポリマーが、以下の式(II):
【化1】
(式中、
R及びR’は、互いに同じであるか又は異なり、H、-CH
3、又は-C
6H
5であり、
nは少なくとも1の整数である)
に従う繰り返し単位を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記(c)ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマーが、基:
Ar-C(O)-Ar’ (R-PAEK)
(式中、Ar及びAr’は、互いに同じであるか又は異なり、芳香族基である)
を含む繰り返し単位を50モル%よりも多く含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記(d)ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーが、式(IV):
【化2】
(式中、
(i)各Rは、互いに同じであるか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び四級アンモニウムから選択され、
(ii)各hは、互いに同じであるか又は異なり、0~4の範囲の整数であり、
(iii)Tは、結合、スルホン基
[-S(=O)2-]、及び基-C(Rj)(Rk)-(式中、Rj及びRkは、互いに同じであるか又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ若しくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び四級アンモニウムから選択される)からなる群から選択される)
の繰り返し単位を少なくとも50モル%含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の追加の添加剤、好ましくは防錆剤、酸化防止剤、熱安定剤、流動点降下剤、高圧用のものを含む耐摩耗剤、トレーサー、染料、及び充填剤を含む群の中で選択される添加剤を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)を含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
分散剤及び/又は界面活性剤を含まない、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、米国で2021年11月3日に出願された米国特許出願第63/275025号及び欧州で2021年11月18日に出願された欧州特許出願第21209038.5号に基づく優先権を主張し、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本特許出願は、潤滑剤用の添加剤としての芳香族ポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
天然又は合成起源のある種の水素系潤滑剤、特にある種の潤滑油は、卓越した潤滑特性に恵まれており、妥当な価格で市場で入手可能であることが知られている。水素系潤滑油の例は、炭化水素タイプの鉱油、水添された動物及び植物油、ポリアルファオレフィン(PAO)などの合成水素化油、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、ホスフェートエステル、ポリエステル、アルキル化ナフタレン、ポリフェニルエーテル、ポリブテン、多重アルキル化シクロペンタン、シラン炭化水素、シロキサン及びポリアルキレングリコールを含む。
【0004】
水素系潤滑剤の可能な代替品としては、(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)潤滑剤、すなわち、パーフルオロオキシアルキレン鎖、言い換えると少なくとも1つのエーテル結合と少なくとも1つのフルオロカーボン部位とを有する繰り返し単位を含む鎖を含む潤滑剤がその代表である。PFPE潤滑剤は高い耐熱性と耐薬品性を備えているため、過酷な条件(非常に高い温度、酸素の存在、攻撃的な化学薬品及び放射線の使用など)を特徴とする用途の場合に有用である。しかしながら、PFPE油は水添油よりも高価であるため、高い性能が要求される場合にのみ使用される。
【0005】
高温で機能させるためには、増粘添加剤は優れた熱的安定性及び化学的安定性を有している必要がある。加えて、フッ素化油及びグリースは、金属の存在下及び酸化環境下で高温分解プロセスを受け、これによって主鎖が破壊されて揮発性生成物を生成する。これは、油とグリースの両方の潤滑性能の低下につながる。
【0006】
この欠点を克服するために、酸化環境及び金属の存在下で高温で油及びグリースを安定させる添加剤を使用し、使用中の安定性を保証することが、従来技術から公知である。
【0007】
液体安定化添加剤は従来技術において開示されている。しかしながら、200℃を超える高温で継続的に使用することが必要な用途では、添加剤の量を、一般的には油又はグリースの総重量に対して約5重量%を超える値まで増やす必要がある。グリースの調製において液体安定化添加剤を大量に使用することの欠点は、グリースの液体成分(油+添加剤)とグリースの固体成分(増粘剤)との間の比率が変化することである。液体の量が多いと、温度の上昇に伴い固体からの液体の分離が増加し、その結果初期のグリースの稠度が変化する。200℃を超える温度では油の分離が顕著になる。更に、使用温度が高くなると、液体添加剤が蒸発しやすくなる傾向がある。
【0008】
室温で固体であり、且つ150℃よりも高い融点を有するポリマーの使用は、例えば国際公開第2007/082829号パンフレット(Solvay Solexis S.p.A.)に開示された。この特許出願は、パーフルオロポリエーテル油を安定化させるための添加剤として、少なくとも1つの芳香族環を主鎖に含むポリマーの使用を開示している。この特許出願で開示されている組成物は、好ましくは0.1μm~1000μmの平均サイズを有する芳香族ポリマー粉末を含んでいた。好ましい実施形態は、前記芳香族ポリマー粉末に加えてPTFE粉末も含んでいた。
【発明の概要】
【0009】
本出願人は、一方では、環境上の理由からPTFE粉末を使用することはもはや望ましくないことを認識していた。他方で、本出願人は、そのような芳香族ポリマー粉末の性能は、特殊産業の更に増え続ける要求に応えるためにはもはや適していないことに注目した。
【0010】
このような課題に直面して、本出願人は、酸化環境における高温で、特に200℃を超える温度で優れた熱安定性を有する新規な組成物を開発した。
【0011】
より具体的には、本出願人は、酸化環境における高温で水添油を安定化することができ、且つ200℃を超えるような高温で金属の存在下であってもフッ素化油も安定化することができる、特定の粒度及び表面積を特徴とする芳香族ポリマーの粉末を開発した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本説明の及び以下の特許請求の範囲の目的のためには:
- 例えば「ポリマー(P)」等のような表現における、式を特定する記号又は数字の周りの括弧の使用は、本文の残りから記号又は数字をよりよく区別するという目的を有しているにすぎず、そのため、前記括弧は省略することもできる。
【0013】
したがって、第1の態様では、本発明は、
(A)前記組成物の100重量%を基準として99.9重量%~65.0重量%、99.0重量%~68.0重量%の、少なくとも1種の水添油又は(全)フッ素化油と、
(B)前記組成物の100重量%を基準として0.1重量%~35.0重量%、好ましくは1.0重量%~32.0重量%の少なくとも1種の芳香族ポリマーと、
を含有する組成物であって、
- 少なくとも150℃の融点を有し、且つ
- 体積粒度分布としてレーザー回折粒度分析によって測定される平均粒度(d50)が1μm超15μm以下の範囲内であり、表面積(ISO 9277に準拠したBET法を使用するガス吸着により決定)が0.5m2/g以上5m2/g未満である粉末の形態である、
組成物に関する。
【0014】
好ましくは、芳香族ポリマーは、体積粒度分布としてレーザー回折粒度分析によって測定したときに、1μmを超える、より好ましくは2μmを超える、更に好ましくは3μmを超えるd50を有する粉末の形態である。
【0015】
好ましくは、芳香族ポリマーは、体積粒度分布としてレーザー回折粒度分析によって測定したときに、15μm未満、より好ましくは12μm未満、更に好ましくは10μm未満のd50を有する粉末の形態である。
【0016】
好ましくは、前記少なくとも1種の水添油は、鉱油又は合成油、例えばポリアルファオレフィン(PAO)及びポリアルキレングリコール(PAG);エステル;シリコーン油;ポリフェニルエーテル;などである。
【0017】
好ましくは、前記少なくとも1種の(全)フッ素化油は、(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ポリマーである。
【0018】
好ましくは、前記PFPEポリマーは、繰り返し単位R°を含む、好ましくはこれらからなる部分的に又は完全にフッ素化された鎖[鎖(Rf)]を含み、前記繰り返し単位は、
(i)-CFXO-(式中、Xは、F又はCF3である)、
(ii)-CFXCFXO-(式中、Xは、出現ごとに同じであるか又は異なり、F又はCF3であるが、Xの少なくとも1つは-Fであることを条件とする)、
(iii)-CF2CF2CW2O-(式中、各Wは、互いに同じであるか又は異なり、F、Cl、Hである)、
(iv)-CF2CF2CF2CF2O-、
(v)-(CF2)j-CFZ-O-(式中、jは0~3の整数であり、Zは一般式-O-R(f-a)-Tの基であり、R(f-a)は、0~10の数の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖であり、前記繰り返し単位は、Xのそれぞれが独立してF又はCF3である-CFXO-、-CF2CFXO-、-CF2CF2CF2O-、-CF2CF2CF2CF2O-の中で選択され、TはC1~C3パーフルオロアルキル基である)
からなる群から独立して選択される。
【0019】
好ましくは、鎖(Rf)は、以下の式:
(Rf-I)
-[(CFX1O)g1(CFX2CFX3O)g2(CF2CF2CF2O)g3(CF2CF2CF2CF2O)g4]-
(式中、
- X1は-F及び-CF3から独立して選択され、
- X2、X3は、互いに及び出現ごとに同じであるか又は異なり、独立して、-F、-CF3であるが、Xの少なくとも1つは-Fであることを条件とし;
- g1、g2、g3及びg4は、互いに同じであるか又は異なり、独立して、0以上の整数であり、それにより、g1+g2+g3+g4は、2~300、好ましくは2~100の範囲であり、g1、g2、g3及びg4の少なくとも2つが0と異なる場合、異なる繰り返し単位は鎖に沿って概して統計的に分布している)
に従う。
【0020】
より好ましくは、鎖(Rf)は、式:
(Rf-IIA) -[(CF2CF2O)a1(CF2O)a2]-
(式中、
- a1及びa2は、独立して0以上の整数であり、それにより、数平均分子量は、400~10,000、好ましくは400~5,000であり、a1及びa2の両方は好ましくは0ではなく、比a1/a2は好ましくは0.1~10に含まれる)、
(Rf-IIB) -[(CF2CF2O)b1(CF2O)b2(CF(CF3)O)b3(CF2CF(CF3)O)b4]-
(式中、
b1、b2、b3、b4は、独立して、0以上の整数であり、それにより、数平均分子量は、400~10,000、好ましくは400~5,000であり、好ましくはb1は0であり、b2、b3、b4は、0より大きく、比b4/(b2+b3)は1以上である)、
(Rf-IIC) -[(CF2CF2O)c1(CF2O)c2(CF2(CF2)cwCF2O)c3]-
(式中、
cw=1又は2であり、
c1、c2及びc3は、独立して、0以上の整数であるように選択され、それにより、数平均分子量は、400~10,000、好ましくは400~5,000であり、好ましくは、c1、c2及びc3は、全て0より大きく、比c3/(c1+c2)は、概して0.2より小さい)
の鎖から選択される。
【0021】
更により好ましくは、鎖(Rf)は、本明細書で以下の式(Rf-III):
(Rf-III) -[(CF2CF2O)a1(CF2O)a2]-
(式中:
- a1及びa2は、0より大きい整数であり、それにより、数平均分子量は、400~10,000、好ましくは400~5,000であり、比a1/a2は、概して0.1~10、より好ましくは0.2~5に含まれる)
に従う。
【0022】
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーは、有利には、
(a)ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)ポリマー;
(b)ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)ポリマー;
(c)ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマー;及び
(d)ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマー;
を含む群の中で、好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0023】
好ましくは、前記(a)ポリ(アリーレンスルフィド)(PAS)は、
-(Ar-S)-繰り返し単位(Arはアリーレン基であり、本明細書では繰り返し単位(RPA)とも呼ばれる)を含むポリマーである。
【0024】
PASのアリーレン基は、置換されていても無置換であってもよい。
【0025】
更に、前記PASは、ポリマー中のスルフィド結合の任意の異性体関係を含むことができ、例えばアリーレン基がフェニレン基である場合、スルフィド結合は、オルト、メタ、パラ、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0026】
好ましくは、前記PASポリマーは、PAS中の総モル数を基準として、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも98モル%の繰り返し単位(RPA)を含む。一実施形態によれば、PASは、本質的に繰り返し単位(RPA)から構成される。
【0027】
好ましくは、前記PASポリマーは、ポリ(2,4-トルエンスルフィド)、ポリ(4,4’-ビフェニレンスルフィド)、ポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)、ポリ(オルト-フェニレンスルフィド)、ポリ(メタ-フェニレンスルフィド)、ポリ(キシレンスルフィド)、ポリ(エチルイソプロピルフェニレンスルフィド)、ポリ(テトラメチルフェニレンスルフィド)、ポリ(ブチルシクロヘキシルフェニレンスルフィド)、ポリ(ヘキシルドデシルフェニレンスルフィド)、ポリ(オクタデシルフェニレンスルフィド)、ポリ(フェニルフェニレンスルフィド)、ポリ-(トリルフェニレンスルフィド)、ポリ(ベンジルフェニレンスルフィド)及びポリ[オクチル-4-(3-メチルシクロペンチル)フェニレンスルフィド]からなる群から選択される。
【0028】
より好ましくは、前記PASは、式I:
【化1】
で表される繰り返し単位を含むPPSである。
【0029】
更に好ましくは、PPSは、PPSポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%の式Iの繰り返し単位を含む。例えば、PPS中の少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、少なくとも約99モル%の繰り返し単位が、式Iの繰り返し単位である。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、PPSポリマーは、約100モル%の繰り返し単位が式Iの繰り返し単位であるようなものである。この実施形態によれば、PPSポリマーは、式Iの繰り返し単位(RPP)から本質的になる。
【0031】
本発明のPASポリマーは、当該技術分野で知られている方法によって得ることができる。特に、国際公開第2015/095362A1号パンフレット(Chevron Philipps)、国際公開第2015/177857A1号パンフレット(Solvay)及び国際公開第2016/079243A1号パンフレット(Solvay)を参照することができる。
【0032】
好ましくは、前記(b)ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)ポリマーは、以下の式(II)に従う繰り返し単位を含む:
【化2】
(式中、
R及びR’は、互いに同じであるか又は異なり、H、-CH
3、又は-C
6H
5であり、
nは少なくとも1の整数である)。
【0033】
好ましくは、前記(c)ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマーは、50モル%を超える繰り返し単位(R-PAEK)を含むポリマーであり、繰り返し単位(R-PAEK)は、Ar-C(O)-Ar’基
(式中、Ar及びAr’は、互いに同じであるか又は異なり、芳香族基である)
を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)は、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、又は少なくとも99モル%、少なくとも99.5モル%、又は少なくとも99.9モル%の繰り返し単位(R-PAEK)を含む。本明細書で使用される場合、モル%は、ポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)の繰り返し単位の総モル数に対してである。
【0035】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(R-PAEK)は、以下の式(J-A)~(J-O):
【化3】
【化4】
からなる群から選択され、これらの式中、
各R’は、互いに同じであるか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び四級アンモニウムからなる群から選択され、
j’は0~4の整数である。
【0036】
繰り返し単位(R-PAEK)において、それぞれのフェニレン部位は、繰り返し単位内のR’とは異なる他の部位に、1,2-結合、1,4-結合、又は1,3-結合を独立して有していてもよい。好ましくは、フェニレン部位は、1,3-又は1,4-結合を有し、より好ましくはこれらは1,4-結合を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(R-PAEK)のj’は、各出現においてゼロである。すなわち、フェニレン部位には、ポリマーの主鎖での結合を可能にする置換基以外の他の置換基がない。
【0038】
したがって、好ましい繰り返し単位(RPAEK)は、以下の式(J’-A)~(J’-O):
【化5】
【化6】
のものから選択される。
【0039】
好ましい実施形態では、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。
【0040】
この実施形態では、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、式(J-A)又は(J’-A)のいずれかで表される繰り返し単位(R-PEEK)を有し、好ましくは繰り返し単位(R-PEEK)は式(J’-A)で表される。
【0041】
一実施形態によれば、組成物(C)は、複数の別個のポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーを含み、各ポリ(アリールエーテルケトン)ポリマーは、別個の繰り返し単位(RPAEK)を有する。
【0042】
好ましくは、前記(d)ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマーにおいて、繰り返し単位の少なくとも50モル%が式(IV):
【化7】
(式中、
(i)各Rは、互いに同じであるか又は異なり、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び四級アンモニウムから選択され、
(ii)各hは、互いに同じであるか又は異なり、0~4の範囲の整数であり、
(iii)Tは、結合、スルホン基
[-S(=O)2-]、及び基-C(Rj)(Rk)-(式中、Rj及びRkは、互いに同じであるか又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ若しくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び四級アンモニウムから選択される)からなる群から選択される)
の繰り返し単位である。
【0043】
Rj及びRkは、好ましくはメチル基である。
【0044】
好ましくは、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)中の少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%、最も好ましくは全ての繰り返し単位が、式(IV)の繰り返し単位である。本明細書で使用される場合、モル%は、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)の繰り返し単位の総モル数に対してである。
【0045】
一実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)である。ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマーは、ビフェニル部位を含むポリ(アリールエーテルスルホン)である。ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は、ポリフェニルスルホン(PPSU)としても知られており、例えば4,4’-ジヒドロキシビフェニル(ビフェノール)と4,4’-ジクロロジフェニルスルホンとの縮合によって得られる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)」は、50モル%超の繰り返し単位が式(IV-A):
【化8】
の繰り返し単位(Rppsu)である任意のポリマーを意味する。
【0047】
好ましくは、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)(PPSU)中の少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%、最も好ましくは全ての繰り返し単位が、式(IV-A)の繰り返し単位である。
【0048】
一実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、ポリエーテルスルホン(PES)である。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ポリ(エーテルスルホン)(PES)」は、少なくとも50モル%の繰り返し単位が式(IV-B):
【化9】
の繰り返し単位である任意のポリマーを意味する。
【0050】
好ましくは、ポリ(エーテルスルホン)(PES)中の少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%、最も好ましくは全ての繰り返し単位が、式(IV-B)の繰り返し単位である。
【0051】
一実施形態では、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)は、ポリスルホン(PSU)である。本明細書で使用される場合、「ポリスルホン(PSU)」は、少なくとも50モル%の繰り返し単位が式(IV-C):
【化10】
の繰り返し単位である任意のポリマーを意味する。
【0052】
好ましくは、PSU中の少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%、最も好ましくは全ての繰り返し単位が、式(IV-C)の繰り返し単位である。
【0053】
本発明の組成物は、最終用途で必要とされる場合には、例えば潤滑剤組成物で一般的に使用されるものなどの追加の添加剤を更に含むことができる。好適な追加の添加剤の非限定的な例は、防錆剤、酸化防止剤、熱安定剤、流動点降下剤、高圧用のものを含む耐摩耗剤、トレーサー、染料、及び充填剤である。
【0054】
しかしながら、本発明の組成物は、有利には、充填剤としてのPTFE及び/又は分散剤、例えば界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤を含まない。
【0055】
本発明の組成物は、前記組成物が意図される最終用途に応じて、当該技術分野で公知の方法に従って調製することができる。
【0056】
本発明の組成物は、そのまますぐに使用することができ、或いは別の油/グリース組成物に添加することができる。
【0057】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願、及び出版物の開示が、万が一にも本願の説明と、用語を不明瞭にし得る程度まで矛盾する場合、本説明が優先されるものとする。
【0058】
本発明は、これから、以下の実施例に関連して説明されるが、その目的は、例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0059】
実験の部
材料
PPS-1:d50=2.5μm;表面積=1.3m2/g
PPS-2:d50=6.0μm;表面積=1.7m2/g
ブレンドPPS-2/Algoflon(登録商標)PTFE L203 50/50重量%
PEEK-1(ポリエーテルエーテルケトン):d50=10.0μm;表面積=1.7m2/g
基油:
- Fomblin(登録商標)M30 PFPEは、Solvay Specialty Polymers Italy,S.p.Aから入手した
- Priolube(商標)3970(nC8/nC10ポリオールエステル)は、Croda Industrialから提供された
- 化学薬品Synfluid(登録商標)mPAO40cStは、Chevrons Phillips Chemicalsから提供された
【0060】
以下のものを比較として使用した:
- Algoflon(登録商標)L206及びAlgoflon(登録商標)L203-PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)(両方のポリマーのd50=5μm、表面積=それぞれ7.5m2/g及び10.0m2/g)は、Solvay Specialty Polymers Italy,S.p.Aから入手した。
- 背景のセクションで引用した国際公開第2007/082829号パンフレットに開示されている方法に従って製造されたPPS、以降「PPS-2007」と呼ぶ(d50=30~35μm;表面積=1.45m2/g)。
【0061】
方法:
粒度分布はレーザー回折粒度分析によって測定した。粉末の比表面積は、BET法(ISO9277)を使用したガス吸着によって決定した。
【0062】
調製実施例
グリースは、高せん断実験室混合装置(Silverson 1L)を使用して、基油を粉末形態の少なくとも1種のポリマーと混合することによって調製した。必要に応じて、グリースをその後3ロールリファイナーで更に均質化した。
【0063】
実施例セットA-基油=Fomblin(登録商標)M30 PFPE
実施例A-1
各組成物について、ASTM D217-10(25℃におけるグリース浸透範囲が10分で265~295mm)に従って、グリース稠度NLGIが2になるまで、Fomblin(登録商標)M30 PFPE中のポリマーの濃度を増加させた。
【0064】
組成物及びそれらの特性が表1にまとめられている。
【0065】
【0066】
本発明による粉末は、良好な増粘特性を示した。この結果は、これまでそのような評価の基準となっていた組成物5(*C)について得られたものと実際に類似していた。
【0067】
実施例A-2
各組成物について、ASTM D6184に従って油分離を204℃/30時間で測定した。
【0068】
結果は表2にまとめられている。
【0069】
【0070】
実施例A-3
各組成物について、低温でのトルクを、ASTM D1478に従って、全てのベアリングSKF6204において、回転速度=1rpmで1時間、-40℃の温度で評価した。
【0071】
結果は表3にまとめられている。
【0072】
【0073】
本発明の組成物は、比較組成物6(*C)よりも低い始動トルクを示し、これは低温での性能がより優れていることを示している。
【0074】
実施例A-4
摩擦及び摩耗試験は、ASTM D5707:高周波線形振動(SRV)試験機を使用する潤滑グリースの摩擦及び摩耗特性を測定するための標準試験方法に従って実施した。
【0075】
試験は以下の条件で行った:
- 形状:ディスク上のボール(φ=10mm)(材質100Cr6)
- 予荷重 50Nで30秒;
- 荷重 200Nで2時間;
- ストローク 1mm;
- 周波数 50Hz;
- 温度:180℃。
【0076】
結果は表4にまとめられている。
【0077】
【0078】
本発明による組成物は低い摩擦係数を示し、ボールにはわずかな摩耗痕しか生じなかった。
【0079】
実施例A-5
熱酸化試験は、グリースが陽性金属と接触するようにグリースサンプルをアルミニウムキャップに入れて、空気中でTGA分析を用いて行った。サンプルは300℃まで加熱し、続いて10℃の温度刻みで300℃から500℃まで等温で30分間昇温させた。
【0080】
【0081】
本発明の組成物の熱酸化安定性は、比較組成物の安定性よりも高かった。
【0082】
実施例セットB-基油=Priolube(商標)3970
実施例B-1
試験は実施例A-1で開示の通りに行った。結果は表6にまとめられている。
【0083】
【0084】
実施例B-2
試験は実施例A-2に開示の通りに行ったが、120℃の温度で30時間行った。
【0085】
結果は表7にまとめられている。
【0086】
【0087】
上の結果は、本発明による組成物が比較組成物よりも安定であることを示した。
【0088】
実施例セットC-基油=Synfluid(登録商標)mPAO40cSt
実施例C-1
試験は実施例A-1に開示の通りに行った。結果は表8にまとめられている。
【0089】
【0090】
実施例C-2
試験は実施例A-2に開示の通りに行ったが、120℃の温度で30時間行った。
【0091】
結果は表9にまとめられている。
【0092】
【0093】
上の結果は、本発明による組成物が比較組成物よりも安定であることを示した。
【国際調査報告】