(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】電池セル状態管理システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/609 20210101AFI20241010BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20241010BHJP
【FI】
H01M50/609
H01M10/058
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527220
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 KR2022016042
(87)【国際公開番号】W WO2023085636
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0154280
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ハン・ジン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・キョン・チェ
【テーマコード(参考)】
5H023
5H029
【Fターム(参考)】
5H023BB10
5H029AJ14
5H029BJ04
5H029CJ16
5H029CJ30
(57)【要約】
本文書に開示された一実施形態に係る電池セル状態管理システムは、電池セルの電解液注入量に関する情報を取得する情報取得部と、前記電池セルの製造工程のうち少なくともいずれか1つの工程による前記電池セルの電解液吐出量および前記電解液注入量に基づいて、前記電池セルの電解液残存量を算出するコントローラと、を含む。実施形態に係る電池セル状態管理システムは、製造工程を行う電池セル組み立てシステムと連動して電解液残存量の算出に必要なデータを収集し、収集したデータに基づいて、工程が完了した電池セルの内部に残っている電解液残存量を正確に算出することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルの電解液注入量に関する情報を取得する情報取得部と、
前記電池セルの製造工程のうち少なくともいずれか1つの工程による前記電池セルの電解液吐出量および前記電解液注入量に基づいて、前記電池セルの電解液残存量を算出するコントローラと、
を含む、電池セル状態管理システム。
【請求項2】
前記電池セルの製造工程は、
電極組立体をパウチに取り付け、前記パウチの内部に電解液を注入するパッケージング工程、
前記パッケージング工程を経た電池セルパッケージを活性化させる活性化工程、
前記電池セルパッケージからガスを排出させる脱気(degassing)工程、および
前記パウチの一部を切断した後に密封するフォールディング(folding)工程のうち少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の電池セル状態管理システム。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記電解液が注入された電池セルパッケージの重量、および工程が完了した電池セルの重量に関する情報を取得し、
前記コントローラは、前記電解液が注入された電池セルパッケージの重量、前記工程が完了した電池セルの重量、および前記電池セルの製造工程により切断されたパウチの重量に基づいて、前記電解液吐出量を算出することを特徴とする、請求項2に記載の電池セル状態管理システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記切断されたパウチのスクラップ(scrap)の長さ、全長、レイヤ数、および単位面積当たりのパウチの重量のうち少なくとも1つに基づいて、前記切断されたパウチの重量を計算することを特徴とする、請求項3に記載の電池セル状態管理システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記切断されたパウチの重量を定数化して前記電解液吐出量の算出に用いることを特徴とする、請求項4に記載の電池セル状態管理システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記電池セルの前記電解液残存量が第1閾値未満であるかまたは第2閾値を超過する場合に、ユーザに当該電池セルの電解液残存量データを提供することを特徴とする、請求項1に記載の電池セル状態管理システム。
【請求項7】
前記第1閾値または前記第2閾値は、前記電池セルおよび他の2以上の電池セルの前記電解液残存量データに基づいて決められることを特徴とする、請求項6に記載の電池セル状態管理システム。
【請求項8】
電池セルの製造工程を行う電池セル組み立てシステムと、
前記製造工程が完了した電池セルの電解液残存量を管理する電池セル状態管理システムと、
を含み、
前記電池セル状態管理システムは、
前記電池セル組み立てシステムから前記電池セルの電解液注入量に関する情報を取得する情報取得部と、
前記電池セルの製造工程のうち少なくともいずれか1つの工程による前記電池セルの電解液吐出量および前記電解液注入量に基づいて、前記電池セルの前記電解液残存量を算出するコントローラと、
を含む、電池セル製造システム。
【請求項9】
前記電池セル組み立てシステムは、
電極組立体をパウチに取り付け、前記パウチの内部に電解液を注入するパッケージング工程、
前記パッケージング工程を経た電池セルパッケージを活性化させる活性化工程、
前記電池セルパッケージからガスを排出させる脱気(degassing)工程、および
前記パウチの一部を切断した後に密封するフォールディング(folding)工程のうち少なくともいずれか1つの工程を行うことを特徴とする、請求項8に記載の電池セル製造システム。
【請求項10】
前記情報取得部は、前記電池セル組み立てシステムから前記電解液が注入された電池セルパッケージの重量、および工程が完了した電池セルの重量に関する情報を取得し、
前記コントローラは、前記電解液が注入された電池セルパッケージの重量、前記工程が完了した電池セルの重量、および前記電池セルの製造工程により切断されたパウチの重量に基づいて、前記電解液吐出量を算出することを特徴とする、請求項9に記載の電池セル製造システム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記切断されたパウチのスクラップ(scrap)の長さ、全長、レイヤ数、および単位面積当たりのパウチの重量のうち少なくとも1つに基づいて、前記切断されたパウチの重量を計算することを特徴とする、請求項10に記載の電池セル製造システム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記切断されたパウチの重量を定数化して前記電解液吐出量の算出に用いることを特徴とする、請求項11に記載の電池セル製造システム。
【請求項13】
前記コントローラは、前記電池セルの前記電解液残存量が第1閾値未満であるかまたは第2閾値を超過する場合に、ユーザに当該電池セルの電解液残存量データを提供することを特徴とする、請求項8に記載の電池セル製造システム。
【請求項14】
前記第1閾値または前記第2閾値は、前記電池セルおよび他の2以上の電池セルの前記電解液残存量データに基づいて決められることを特徴とする、請求項13に記載の電池セル製造システム。
【請求項15】
前記コントローラは、前記電池セルの前記電解液残存量が前記第1閾値未満であるかまたは前記第2閾値を超過する場合に、前記電池セル組み立てシステムに当該電池セルの前記電解液残存量データを提供し、
前記電池セル組み立てシステムは、前記電池セルの前記電解液残存量データに基づいて、前記電池セルの製造工程のうち少なくともいずれか1つを修正することを特徴とする、請求項13に記載の電池セル製造システム。
【請求項16】
電池セルの電解液注入量に関する情報を取得するステップと、
前記電池セルの製造工程のうち少なくともいずれか1つの工程による前記電池セルの電解液吐出量および前記電解液注入量に基づいて、前記電池セルの電解液残存量を算出するステップと、
を含む、電池セルの状態管理方法。
【請求項17】
前記電池セルの製造工程は、
電極組立体をパウチに取り付け、前記パウチの内部に電解液を注入するパッケージング工程、
前記パッケージング工程を経た電池セルパッケージを活性化させる活性化工程、
前記電池セルパッケージからガスを排出させる脱気(degassing)工程、および
前記パウチの一部を切断した後に密封するフォールディング(folding)工程のうち少なくともいずれか1つの工程を含むことを特徴とする、請求項16に記載の電池セルの状態管理方法。
【請求項18】
前記電池セルの前記電解液残存量を算出するステップは、
前記電解液が注入された電池セルパッケージの重量、および工程が完了した電池セルの重量に関する情報を取得するステップと、
前記電解液が注入された電池セルパッケージの重量、前記工程が完了した電池セルの重量、および前記電池セルの製造工程により切断されたパウチの重量に基づいて、前記電解液吐出量を算出するステップと、
前記電解液注入量から前記電解液吐出量を引いた値を前記電池セルの前記電解液残存量に決めるステップと、を含むことを特徴とする、請求項17に記載の電池セルの状態管理方法。
【請求項19】
前記電解液吐出量を算出するステップは、前記切断されたパウチのスクラップ(scrap)の長さ、全長、レイヤ数、および単位面積当たりのパウチの重量のうち少なくとも1つに基づいて、前記切断されたパウチの重量を計算するステップを含むことを特徴とする、請求項18に記載の電池セルの状態管理方法。
【請求項20】
前記電池セルの前記電解液残存量が第1閾値未満であるかまたは第2閾値を超過する場合に、ユーザおよび電池セル組み立てシステムのうち少なくとも1つに当該電池セルの電解液残存量データを提供するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の電池セルの状態管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本文書に開示された実施形態は、2021年11月10日付けの韓国特許出願第10-2021-0154280号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本文書に開示された実施形態は、電池セルの電解液残存量を算出する電池セル状態管理システムおよびそれを用いた電池セルの状態管理方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電気、電子、通信、およびコンピュータ産業が急速に発展するに伴い、高性能、高安全性の電池に対する需要が次第に増大している。中でも、リチウム二次電池は、寿命が長く、容量が大きいという長所を有するため、近年、携帯用電子機器に多く用いられている。前記リチウム二次電池は、電解質の種類に応じて、液体電解質を用いるリチウム金属電池とリチウムイオン電池、および高分子固体電池を用いるリチウムポリマー電池に分類され、電極組立体を密封する外装材の種類に応じて、角型缶が用いられる角型電池、円筒型缶が用いられる円筒型電池、およびパウチが用いられるパウチ型電池に区分される。
【0004】
パウチ型電池は、単位重量および体積当たりのエネルギー密度が高く、電池の薄型化および軽量化が可能であり、外装材の材料費が少ないという長所を有するため広く活用されている。パウチ型電池の製造工程は、電池内部のガスを排出させる脱気(degassing)工程を含む。電池セルの内部にガスが占めることができる別の余裕空間が存在する円筒型または角型電池とは異なり、パウチ型電池は、パウチ内部の不要なガスを除去する脱気工程が必須である。脱気工程を経た後、パウチの縁部を切断および溶接するフォールディング(folding)工程を行う。
【0005】
このような脱気工程およびフォールディング工程で、パウチの内部に注入された電解液中の一部が吐出され得る。電解液の残存量が過度に低いと、サイクル性能に問題が発生し得、その逆に残存量が過度に高いと、安全性が劣り得る。したがって、ポリマー電池の製造工程において、電池セルの電解液残存量を適正レベルに管理する必要がある。ところで、小型ポリマー電池の場合は、脱気工程で全数の重量測定が可能であるのに対し、電気自動車(EV)に用いられる中大型ポリマー電池の場合は、全数検査が不可能であるため、工程上の変更が発生するときに限ってサンプリング検査を行っている。また、既存の小型ポリマー電池の場合も、脱気工程による電解液吐出量のみを考慮して残存量を算出するだけであって、フォールディング工程による電解液吐出量を反映することができないため、算出の結果と実際の電解液残存量に相当な差があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本文書に開示された実施形態の一目的は、電池セル内部の電解液残存量を正確に算出することができる状態管理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【0007】
本文書に開示された実施形態の技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及していないまた他の技術的課題は、下記の記載から当業者に明らかに理解できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る電池セル状態管理システムは、電池セルの電解液注入量に関する情報を取得する情報取得部と、前記電池セルの製造工程のうち少なくともいずれか1つの工程による前記電池セルの電解液吐出量および前記電解液注入量に基づいて、前記電池セルの電解液残存量を算出するコントローラと、を含む。
【0009】
一実施形態によると、前記電池セルの製造工程は、電極組立体をパウチに取り付け、前記パウチの内部に電解液を注入するパッケージング工程、前記パッケージング工程を経た電池セルパッケージを活性化させる活性化工程、前記電池セルパッケージからガスを排出させる脱気(degassing)工程、および前記パウチの一部を切断した後に密封するフォールディング(folding)工程のうち少なくともいずれか1つの工程を含むことができる。
【0010】
一実施形態によると、前記情報取得部は、前記電解液が注入された電池セルパッケージの重量、および工程が完了した電池セルの重量に関する情報を取得し、前記コントローラは、前記電解液が注入された電池セルパッケージの重量、前記工程が完了した電池セルの重量、および前記電池セルの製造工程により切断されたパウチの重量に基づいて、前記電解液吐出量を算出することができる。
【0011】
一実施形態によると、前記コントローラは、前記切断されたパウチのスクラップ(scrap)の長さ、全長、レイヤ数、および単位面積当たりのパウチの重量のうち少なくとも1つに基づいて、前記切断されたパウチの重量を計算することができる。
【0012】
一実施形態によると、前記コントローラは、前記切断されたパウチの重量を定数化して前記電解液吐出量の算出に用いることができる。
一実施形態によると、前記コントローラは、前記電池セルの電解液残存量が第1閾値未満であるかまたは第2閾値を超過する場合に、ユーザに当該電池セルの電解液残存量データを提供することができる。
【0013】
一実施形態によると、前記第1閾値または前記第2閾値は、前記電池セルおよび他の2以上の電池セルの電解液残存量データに基づいて決められることができる。
【0014】
一実施形態に係る電池セル製造システムは、電池セルの製造工程を行う電池セル組み立てシステムと、前記製造工程が完了した電池セルの電解液残存量を管理する電池セル状態管理システムと、を含み、前記電池セル状態管理システムは、前記電池セル組み立てシステムから前記電池セルの電解液注入量に関する情報を取得する情報取得部と、前記電池セルの製造工程のうち少なくともいずれか1つの工程による前記電池セルの電解液吐出量および前記電解液注入量に基づいて、前記電池セルの電解液残存量を算出するコントローラと、を含む。
【0015】
一実施形態によると、前記電池セル組み立てシステムは、電極組立体をパウチに取り付け、前記パウチの内部に電解液を注入するパッケージング工程、前記パッケージング工程を経た電池セルパッケージを活性化させる活性化工程、前記電池セルパッケージからガスを排出させる脱気(degassing)工程、および前記パウチの一部を切断した後に密封するフォールディング(folding)工程のうち少なくともいずれか1つを行うことができる。
【0016】
一実施形態によると、前記情報取得部は、前記電池セル組み立てシステムから前記電解液が注入された電池セルパッケージの重量、および工程が完了した電池セルの重量に関する情報を取得し、前記コントローラは、前記電解液が注入された電池セルパッケージの重量、前記工程が完了した電池セルの重量、および前記電池セルの製造工程により切断されたパウチの重量に基づいて、前記電解液吐出量を算出することができる。
【0017】
一実施形態によると、前記コントローラは、前記電池セルの電解液残存量が第1閾値未満であるかまたは第2閾値を超過する場合に、前記電池セル組み立てシステムに当該電池セルの電解液残存量データを提供し、前記電池セル組み立てシステムは、前記電池セルの電解液残存量データに基づいて、前記電池セルの製造工程のうち少なくともいずれか1つを修正することができる。
【0018】
一実施形態に係る電池セルの状態管理方法は、電池セルの電解液注入量に関する情報を取得するステップと、前記電池セルの製造工程のうち少なくともいずれか1つの工程による前記電池セルの電解液吐出量および前記電解液注入量に基づいて、前記電池セルの電解液残存量を算出するステップと、を含む。
【0019】
一実施形態によると、前記電池セルの電解液残存量を算出するステップは、前記電解液が注入された電池セルパッケージの重量、および工程が完了した電池セルの重量に関する情報を取得するステップと、前記電解液が注入された電池セルパッケージの重量、前記工程が完了した電池セルの重量、および前記電池セルの製造工程により切断されたパウチの重量に基づいて、前記電解液吐出量を算出するステップと、前記電解液注入量から前記電解液吐出量を引いた値を前記電池セルの電解液残存量に決めるステップと、を含むことができる。
【0020】
一実施形態によると、前記電解液吐出量を算出するステップは、前記切断されたパウチのスクラップ(scrap)の長さ、全長、レイヤ数、および単位面積当たりのパウチの重量のうち少なくとも1つに基づいて、前記切断されたパウチの重量を計算するステップを含むことができる。
【0021】
一実施形態によると、前記方法は、前記電池セルの電解液残存量が第1閾値未満であるかまたは第2閾値を超過する場合に、ユーザおよび電池セル組み立てシステムのうち少なくとも1つに当該電池セルの電解液残存量データを提供するステップをさらに含むことができる。
【0022】
一実施形態に係る電池セルの状態管理方法を行うための、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されたコンピュータプログラムが提供されることができる。
【発明の効果】
【0023】
一実施形態に係る電池セル状態管理システムによると、製造工程を行う電池セル組み立てシステムと連動して電解液残存量の算出に必要なデータを収集し、収集したデータに基づいて、工程が完了した電池セルの内部に残っている電解液残存量を正確に算出することができる。
【0024】
一実施形態によると、後続工程で切断されたパウチの重量を定数化して自動で計算することができ、それに基づいて算出された電解液吐出量を残存量の算出時に反映することで、フォールディング工程による電解液吐出量を反映できなかった既存の方式に比べて正確な電解液残存量の算出が可能である。
【0025】
このように、電池セル内部の電解液残存量を正確に算出し、電解液が下限値以下または上限値以上になることで発生する安全問題を予防することができる。
この他に、本文書により、直接的または間接的に把握される多様な効果が提供可能である。
【0026】
本文書に開示された実施形態または従来技術の技術的解決策をより明らかに説明するために、実施形態に関する説明に必要な図面が以下に簡単に紹介される。以下の図面は、本明細書の実施形態を説明するためのものにすぎず、限定するためのものではないことを理解しなければならない。また、説明の明瞭性のために、図面の一部の構成要素に対する表現が誇張または省略されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施形態に係る電池セル状態管理システムを含む電池セル製造システムの構成を示す。
【
図2】パウチの内部に電解液が注入された状態の電池セルパッケージの構成を示す。
【
図3】脱気(degassing)工程により、パウチの一部が切断され、電解液の一部が吐出された状態の電池セルパッケージの構成を示す。
【
図4】フォールディング(folding)工程により、パウチの一部が切断され、電解液の一部が吐出された状態の電池セルパッケージの構成を示す。
【
図5】一実施形態に係る電池セルの状態管理方法を示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態に係る電池セルの電解液残存量を算出するステップを詳細に示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態に係る電池セルの電解液残存量の算出過程を説明するための図である。
【
図8】他の実施形態に係る電池セルの状態管理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本文書に開示された実施形態を例示的な図面により詳細に説明する。各図面の構成要素に参照符号を付するに際し、同一の構成要素に対しては他の図面上に表示される際にも可能な限り同一の符号を付するようにしていることに留意しなければならない。また、本文書に開示された実施形態を説明するに際し、関連した公知の構成または機能に関する具体的な説明が本文書に開示された実施形態に対する理解を妨げると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0029】
本文書で用いられる用語は、機能を考慮しつつ可能な限り現在広く用いられる一般的な用語を選択したが、これは、当該分野に携わる技術者の意図または慣例または新しい技術の出現などに応じて異なり得る。また、特定の場合、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、当該明細書の説明部分にその意味を記載する。したがって、本文書で用いられる用語は、単なる用語の名称ではなく、その用語が有する実質的な意味および本文書の全般にわたった内容に基づいて解釈しなければならないことを明らかにしておく。
【0030】
図1は、一実施形態に係る電池セル状態管理システムを含む電池セル製造システムの構成を示す。
図1を参照すると、一実施形態に係る電池セル製造システム10は、電池セルの製造工程を行うための電池セル組み立てシステム110と、前記電池セル組み立てシステム110から受信したデータに基づいて、電池セルの内部に残っている電解液の量を算出するための電池セル状態管理システム120と、を含むことができる。図示していないが、実施形態に係る電池セル製造システム10は、電池セルの製造に必須または選択的な他の工程システムをさらに含むことができる。
【0031】
電池セル組み立てシステム110は、電極組立体をパウチに取り付け、前記パウチの内部に電解液を注入するパッケージング工程、前記パッケージング工程を経た電池を充放電して活性化させる活性化工程、前記電池セルからガスを排出させる脱気(degassing)工程、および前記パウチの一部を切断した後に密封するフォールディング(folding)工程を行うことができ、各工程を行うための装置で構成されることができる。
【0032】
電極組立体は、電池の正極および負極タブを作るノッチング(notching)工程、電池素材を積層するスタッキング(stacking)工程、正極および負極タブを繋ぎ合わせるタブ溶接(tab welding)工程により製造されることができ、パッケージング工程は、詳細には、電極組立体をパウチでパッケージングし、パウチの内部に電解液を注入する工程、およびパウチを一次密封する真空シーリング(vacuum sealing)工程を含むことができる。
【0033】
電極組立体は、組み立て工程以前に行われる電極製造工程により製造され、正極集電体に正極活物質が形成された1つまたは複数の正極シートと、負極集電体に負極活物質が形成された1つまたは複数の負極シートとが交互に積層されており、前記正極シートと負極シートとは、セパレータシートを間に介在させ、互いに対向する構造を有する。パウチは、前記電極組立体および電解液を内蔵する外装材であり、電池セルの形態を決める。パウチは、例えば、70~160マイクロメータの厚さおよび4.5~8.0マイクロメータの成形深さを有する多層構造の包装用プラスチック積層フィルムで構成されることができる。一実施形態によると、パウチは、「外層フィルム-接着剤-アルミニウム箔-接着剤-内層フィルム」の5層構造からなるアルミニウム積層膜の形態を有することができる。電極組立体の構造、パウチの数値、構成などは、目的および用途に応じて設計変更が可能であり、上述した内容に限定されない。
【0034】
図2は、パウチの内部に電解液が注入された状態の電池セルパッケージの構成を示す。
図2を参照すると、電池セル組み立てシステム110により行われる組み立て工程において、電極組立体20は、パウチ200でパッケージングされ、パウチ200の内部に電解液30が注入される。電解液30は、例えば、1M LiPF
6カーボネート系電解液溶液であってもよいが、これに限定されない。
図2では電解液30を3個の要素31、32、33に分けて示しているが、後述するように、一部の電解液32、33は、後続工程により電池セルの外部に吐出され、一部の電解液31は、工程が完了した後、電池セルの内部に残存することになる。一実施形態の目的は、工程が完了した電池セルの内部に残存する電解液31の量を正確に算出することにある。
【0035】
活性化工程においては、パッケージング工程により組み立てられた電池セルの繰り返しの充電および放電により電池を活性化させる。この際、活性化工程で過充電が起こる場合にパウチの内部にガスが発生し得るが、このようなガスは、電池の不良を誘発し得る。したがって、過充電によりパウチの内部に発生したガスを排出する脱気(degassing)工程が行われる。電池セルの内部にガスが占めることができる別の余裕空間が存在する円筒型または角型電池とは異なり、パウチ型電池は、パウチ内部の不要なガスを除去する脱気工程が必須である。
【0036】
図3は、脱気(degassing)工程により、パウチの一部(ガス袋)が切断され、電解液の一部が吐出された状態の電池セルパッケージの構成を示す。脱気工程で一部のパウチ210を切り取るが、この過程で、一部の電解液33がセルの外部に共に吐出され得る(製造者は、通常、脱気工程で吐出される電解液を考慮し、パッケージング工程で電解液を過注入したりもする)。電解液は、ガス排出孔を介して吐出され得るし、切断されたパウチの一部に留まっている形態で吐出され得る。脱気工程後、電池セルパッケージは、パウチ200’で取り囲まれた電極組立体20および電解液31、32で構成される。
【0037】
フォールディング(folding)工程は、パウチの外縁部分を必要な分だけ残して折り畳んで電池セルを密封する工程である。例えば、ダブルサイドフォールディング(double side folding)のように、パウチの縁部を切り取った後に二重に折り畳んで熱圧着する方式で電池セルを密封することができる。この過程においても一部の電解液がパウチの外部に吐出され得る。例えば、フォールディング工程で切断されたパウチに一部の電解液が留まっている形態で吐出され得る。
【0038】
図4は、フォールディング工程により、パウチの一部が切断され、電解液の一部が吐出された状態の電池セルパッケージの構成を示す。図示されたように、脱気工程後に残っていた電解液31、32中の一部の電解液32が、フォールディング工程により切断されたパウチ220とともに吐出され得る。脱気工程およびフォールディング工程が完了した電池セルは、パウチ200’’で取り囲まれた電極組立体20および電解液31で構成される。
【0039】
再び
図1を参照すると、電池セル状態管理システム120は、電池セル組み立てシステム110から収集したデータD1に基づいて、電池セルに残っている電解液残存量31を算出するように構成される。一実施形態によると、各電池セルの電解液残存量データD2は、ユーザに(端末、サーバ、内部インターフェースなどを介して)提供されるか、または製造工程の修正または変更のために電池セル組み立てシステム110に提供されることができる。
【0040】
電池セル状態管理システム120は、前記電池セル組み立てシステム110から電池セルの電解液残存量の算出に必要な情報を取得する情報取得部121と、前記情報に基づいて電池セルの電解液残存量を算出するコントローラ122と、を含むことができる。
【0041】
情報取得部121は、例えば、電池セルの電解液注入量、電解液が注入された直後のパッケージの重量、工程が完了した電池セルの重量などの情報を外部システムから取得し、コントローラ122は、電池セルの製造工程のうち少なくともいずれか1つの工程による電池セルの電解液吐出量および前記電解液注入量に基づいて電解液残存量を算出する。
【0042】
以下、図面を参照して、一実施形態に係る電池セルの状態管理方法により電池セルの電解液残存量を算出する過程について記述することにする。
図5は、一実施形態に係る電池セルの状態管理方法を示すフローチャートである。
【0043】
先ず、電池セルの電解液注入量に関する情報(例えば、電池セルの電解液注入量、電解液が注入された直後のパッケージの重量、工程が完了した電池セルの重量などの情報)を取得するステップ(S510)を行う。前記ステップ(S510)は、電池セル状態管理システム120に含まれた情報取得部121により行われることができる。
【0044】
電解液注入量情報は、注入器とパウチの連結地点を通過する電解液の流量を測定して取得してもよく、システムに予め登録された電解液注入量データをそのまま持ってきてもよい。電解液が注入されたパッケージの重量は、電解液注入工程(もしくは、後続工程を行う前の任意の時点)でパッケージの重量を測定して取得することができる。
【0045】
また、ステップ(S510)において、工程が完了した電池セルの重量(「EOL(end of life)重量」ともいう)に関する情報を取得することができる。工程が完了した電池セルは、電池セル組み立てシステム110による製造工程(組み立て工程、パッケージング工程、エージング工程、活性化工程、脱気工程、フォールディング工程など)が完了した状態の電池セルであり、
図4に示されたように、パウチ200’’で取り囲まれた電極組立体20および残存電解液31で構成される。前記電池セルの重量情報は、電池セル組み立てシステム110から直接受信するか、または電池セルの重量を測定可能な別の後続工程システムから受信してもよい。
【0046】
次いで、電池セルの製造工程のうち少なくともいずれか1つの工程による前記電池セルの電解液吐出量および電解液注入量に基づいて、電池セルの電解液残存量を算出するステップ(S520)を行う。
【0047】
図6は、電池セルの電解液残存量を算出するステップ(S520)を詳細に示すフローチャートである。
図6を参照すると、電解液が注入された電池セルパッケージの重量、および工程が完了した電池セルの重量に関する情報を取得するステップ(S521)と、電解液が注入された電池セルパッケージの重量、工程が完了した電池セルの重量、および電池セルの製造工程により切断されたパウチの重量に基づいて、電解液吐出量を算出するステップ(S522)と、電解液注入量から電解液吐出量を引いた値を電池セルの電解液残存量に決めるステップ(S523)とが順次実行されることができる。
【0048】
ステップ(S521)は、情報取得部121により行われることができ、電解液注入量に関する情報を取得するステップ(S510)と同時にまたは後続して行われることができる。
【0049】
一実施形態によると、前記電解液吐出量を算出するステップ(S522)は、前記切断されたパウチのスクラップ(scrap)の長さ、全長、レイヤ数、および単位面積当たりのパウチの重量のうち少なくとも1つの情報に基づいて、前記切断されたパウチの重量を計算するステップを含むことができる。
【0050】
最終工程後に残存する電解液の量を計算するためには、脱気工程/フォールディング工程により切断されたパウチの重量情報が必要であるが、電池セルの製造工程で電池セル別に切断されたパウチ(ガス袋)の重量を個別的に測定することは難しい。
【0051】
提案された実施形態によると、パウチと関連して予め入力された情報(全長値(mm)、レイヤ数、単位面積当たりのパウチの重量(g/mm2))と、パウチのスクラップの長さ(mm)情報とを用いて、切断されたパウチの重量を自動で計算することができる。更なる実施形態によると、計算の容易性のために、切断されたパウチの重量を定数化して電解液残存量の算出に適用することができ、例えば、既に計算された3個以上のパウチの重量の平均値を用いることができる。
【0052】
図7は、一実施形態に係る電池セルの電解液残存量の算出過程を説明するための図である。製造工程による電解液吐出量を次のように計算することができる。
【0053】
【0054】
ここで、Edは、電解液吐出量、Wpkgは、パッケージング工程で電解液が注入されたパッケージの重量、Weolは、工程が完了した(end of life)電池セルの重量、Wpouchは、後続工程(脱気工程、フォールディング工程など)により切断されたパウチの重量を意味する。
【0055】
最後に、ステップ(S523)においては、電解液注入量から電解液吐出量を引いた値を電池セルの電解液残存量に決めることができる。すなわち、次の数学式のように電解液残存量を計算することができる。
【0056】
【0057】
ここで、Erは、電池セル内に残っている電解液残存量、Eiは、パッケージング工程での電解液注入量を意味する。
【0058】
以上の実施形態によると、最終工程後に電池セル内に残っている電解液残存量を比較的正確に算出することができる。既存のロジックとは異なり、製造工程を行う製造システムと連動してデータを収集および電解液残存量を算出することができ、フォールディング工程(例えば、DSF工程)による電解液吐出量を反映することで、計算された電解液残存量と実際の残存量との誤差を減らすことができるということが特徴である。また、予め入力された情報を用いて、パウチのスクラップの長さによる切断されたパウチの重量を自動で計算することができるため、運営が容易である。正確に算出された電解液残存量に基づいて、電池セルの不良を容易に検出することができる。
【0059】
図8は、他の実施形態に係る電池セルの状態管理方法を示すフローチャートである。
図8の実施形態のステップ(S810~S820)は、
図5を参照して説明した実施形態のステップ(S510~S520)と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0060】
図8を参照すると、電池セルの電解液残存量が第1閾値未満であるかまたは第2閾値を超過する場合に、ユーザおよび/または電池セル組み立てシステムに当該電池セルの電解液残存量データを提供するステップ(S830)がさらに行われる。
【0061】
図1に示されたように、電池セル状態管理システム120により算出された電解液残存量が下限値未満であるかまたは上限値を超過する場合に、当該電池セルの電解液残存量データD2がユーザ(ユーザ端末、外部サーバ、内部出力インターフェースなどを意味)および/または電池セル組み立てシステム110に伝送される。
【0062】
一実施形態によると、第1閾値および/または第2閾値は、当該電池セルおよび他の2以上の電池セルの電解液残存量データに基づいて決められることができる。他の電池セルの電解液残存量データは、電池セル状態管理システム120の内部または外部に位置した格納装置に格納されることができ、システム120は、当該電池セルの電解液残存量を前記格納装置に格納された他の電池セルの電解液残存量(または、それに基づいて決められた上限/下限閾値)と比較することができる。その後、当該電池セルの電解液残存量データD2は、前記格納装置に新たに格納されることができる。
【0063】
ユーザは、電解液残存量データD2に基づいて当該電池セルの不良有無を判定することができ、当該電池セルの製造時点前後に不良が繰り返されると、工程に予想できない異常が発生したと判断して問題を改善することができる。または、電池セル組み立てシステム110の内部診断システムがデータD2を受信して製造工程上の問題を探し、工程の一部を修正することもできる。
【0064】
前記実施形態に係る電池セルの状態管理方法は、アプリケーションで実現されるか、または多様なコンピュータ構成要素を介して実行可能なプログラム命令語の形態で実現され、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されることができる。前記コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、プログラム命令語、データファイル、データ構造などを単独でまたは組み合わせて含むことができる。
【0065】
コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例には、ハードディスク、フロッピーディスク、および磁気テープのような磁気媒体、CD-ROM、DVDのような光記録媒体、フロプティカルディスク(floptical disk)のような磁気-光媒体(magneto-optical media)、およびROM、RAM、フラッシュメモリなどのようなプログラム命令語を格納し実行するように特別に構成されたハードウェア装置が含まれる。
【0066】
プログラム命令語の例には、コンパイラにより作られるもののような機械語コードだけでなく、インタープリタなどを用いてコンピュータにより実行可能な高級言語コードも含まれる。前記ハードウェア装置は、実施形態の技術による処理を行うために1つ以上のソフトウェアモジュールとして作動するように構成されてもよく、その逆も同様である。
【0067】
前述した実施形態で提案されたものによると、パウチ型電池セルの製造システムと連動して電解液残存量の算出に必要なデータを収集し、収集したデータに基づいて、工程が完了したパウチ型電池セルの内部に残っている電解液残存量を正確に算出することができる。また、フォールディング工程で切断されたパウチの重量を定数化し、それに基づいて算出された電解液吐出量を残存量の算出時に反映することで、フォールディング工程による電解液吐出量を反映できなかった既存の方式に比べて正確な電解液残存量の算出が可能である。このように、電池セル内部の電解液残存量を正確に算出し、電解液が下限値以下または上限値以上になることで発生する安全問題を予防することができる。
【0068】
以上の説明は本文書に開示された技術思想を例示的に説明したものにすぎず、本文書に開示された実施形態が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本文書に開示された実施形態の本質的な特性から逸脱しない範囲内で多様な修正および変形が可能である。
【0069】
したがって、本文書に開示された実施形態は本文書に開示された技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであって、このような実施形態により本文書に開示された技術思想の範囲が限定されるものではない。本文書に開示された技術思想の保護範囲は後述の請求範囲により解釈されなければならず、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は本文書の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0070】
10 ・・・電池セル製造システム
20 ・・・電極組立体
30 ・・・電解液
110 ・・・電池セル組み立てシステム
120 ・・・電池セル状態管理システム
121 ・・・情報取得部
122 ・・・コントローラ
200、200’、200’’ ・・・パウチ
【国際調査報告】