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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】医療用カニューレ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20241010BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61M5/32 520
A61M5/158 500D
A61M5/158 500F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527565
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 GB2022052958
(87)【国際公開番号】W WO2023089344
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】2116815.8
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524174807
【氏名又は名称】バッキンガム メディカル テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BUCKINGHAM MEDICAL TECHNOLOGIES LTD.
【住所又は居所原語表記】Enterprise House, Rippers Court, Sible Hedingham Essex CO9 3PY (BG)
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(74)【代理人】
【識別番号】100205648
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 真一
(72)【発明者】
【氏名】バッキンガム,マーク
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066KK02
4C066KK04
4C066KK15
4C066KK16
(57)【要約】
ヒトまたは動物の組織に注射液を投与するためのカニューレであって、中空の貫通ボアと、側壁に、注射液が前記貫通ボアから外部環境へ流れるように適合された1つ以上の開口部と、を有し、開口部の1つは、非対称的に軸方向に先細り又は減少する幅を有し、当該開口部の一端の領域は、反対端の領域と比較して面積が減少している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の組織に注射液を投与するためのカニューレであって、
中空の貫通ボアと、
側壁に、前記注射液が前記貫通ボアから外部環境へ流れるように適合された1つ以上の開口部と、
を有し、
前記開口部の1つは、非対称的に軸方向に先細り又は減少する幅を有し、当該開口部の一端の領域は、反対端の領域と比較して面積が減少している、
カニューレ。
【請求項2】
請求項1に記載のカニューレにおいて、
1つの前記開口部のみが、設けられている、
カニューレ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカニューレにおいて、
先端部を含み、
前記開口部の幅は、前記先端部から遠方に向かって先細り又は減少する、
カニューレ。
【請求項4】
請求項3に記載のカニューレにおいて、
前記カニューレの前記先端部は、閉じられている、
カニューレ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のカニューレにおいて、
前記開口部の最大幅は、前記開口部の二等分正中線から前方にある、
カニューレ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のカニューレにおいて、
前記開口部の幅は、前記開口部の後方の点又は端に向かって前記開口部の最大幅から減少する、
カニューレ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のカニューレにおいて、
前記開口部の長さに沿って30%から70%の間に位置する分割線に対して、前記分割線の前方の最大幅は、前記分割線の後方の最大幅より大きい、
カニューレ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のカニューレにおいて、
前記開口部の長さに沿ってn%、nは30から70の間である、の位置にある分割線に対し、前記分割線の前方の前記開口部の面積は、前記開口部の全体の面積のn%より大きい、
カニューレ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書は、医療用カニューレ、特に脊髄カニューレに関するものであるが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
医療用カニューレは、カテーテルや針とも呼ばれ、人体や動物の体内への物質の注入や体内からの物質の吸引(除去)によく使用される。脊髄注射や吸引によく使用されるカニューレの一種は、一般に管状であり、管の末端は閉じた先端に向かって細くなっており、先端部は、尖っておらず、鉛筆の先、円錐形、丸みを帯びた、又はその他の「非切断性」、「非外傷性」の先端部を有し、管の壁には、先端部から後退してカニューレのボアと連通する開口部がある。丸みを帯びた先端は、切断や組織損傷を最小限に抑えながら組織を分割し、注射液はカニューレの中空ボアを通って開口部から出るように押し出され、注射液はカニューレの主軸に垂直な方向にカニューレから出る。
【0003】
図1を参照すると、脊髄針10は、公知のデザインであり、カニューレの円筒壁15に、閉じた先端部14から後退した、概ね楕円形又は長方形の(長さに沿って対称の)開口部12が設けられている。図2を参照すると、脊髄針10を用いて麻酔液を投与するには、硬膜17を貫通して、くも膜下腔18に入るまで針10を体内に挿入する。正しく位置決めされると、開口部12は完全にくも膜下腔18内に位置し、注射液は矢印19で示すようにカニューレからくも膜下腔18に出る。この例(脊椎麻酔)では、麻酔効果が不十分であったため、追加麻酔の必要性、手術中の痛みの危険性、又は予定された外科手術のキャンセルにつながると、その後に判断されることがある。
【0004】
図3を参照すると、脊髄針10は、開口部12によって硬膜17を跨ぐなど、くも膜下腔18に十分に挿入されない不適切な位置に配置されることがある。注射液が投与されると、注射液の一部は矢印21で示すように開口部12からくも膜下腔18に出るが、矢印22で示す注射液の一部は硬膜外腔16に出る。注射液は硬膜の層間の硬膜下腔に出ることもある。いずれの場合も、この結果、くも膜下腔18に投与される注射液が予定より少なくなり、麻酔が不十分となる。くも膜下腔18から硬膜外腔には圧力勾配があり、これがこの問題を悪化させる可能性があることに注意すべきである。
【0005】
本発明の目的は、上記のような針が誤って配置された場合に、くも膜下腔に投与される注射液の量を増加させるカニューレを提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で使用される用語「軸方向」及びその同義語は、文脈上別段の定めがある場合を除き、カニューレの軸、すなわちカニューレに沿った長手方向の軸を指す。
【0007】
本発明によれば、請求項1に記載のカニューレが提供される。
【0008】
本明細書において、「軸方向」及び同義語はカニューレの主軸を意味し、「前方」、「前部」及び「近位」はカニューレの先端部に向かうことを意味し、「後方」、「後部」及び「遠位」は、文脈上別段の定めがある場合を除き、カニューレの先端部から離れることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、公知のカニューレの平面図である。
図2図2は、使用中の公知のカニューレの側面図である。
図3図3は、使用中の公知のカニューレのさらなる側面図である。
図4図4は、本発明によるカニューレの実施形態の平面図である。
図5図5は、本発明によるカニューレのさらに詳細な平面図である。
図6図6は、本発明によるカニューレの使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明を例示的に説明する。
【0011】
図4を参照すると、カニューレ20は先端部22及びシャフト24を有し、シャフト24は開口部25を有する。ここに示す先端部22は、尖っておらず、丸みを帯びた端部に向かって先細になっているが、後述するように、他の先端形状が用いられてもよい。シャフト24は実質的に円筒形であり、貫通ボアを含む。先端部22の範囲は括弧aで示され、先端部に隣接するシャフトの範囲は括弧bで示されている。
【0012】
開口部25は、カニューレ20の貫通ボアが開口部25によってカニューレの外側の環境と連通するように、シャフト壁26を通って延びている。
【0013】
図5を参照すると、開口部25は、開口部25がカニューレ20の貫通ボアの内面に接する内側エッジ31と、開口部がカニューレ20のシャフト24の外面に接する外側エッジ32とを有するように、シャフト24の壁26を貫通して形成されている。
【0014】
開口部25は、開口部25の内側エッジ31によって画定される開口部25の形状及び面積が、開口部25の外側エッジ32によって画定される開口部25の形状及び面積よりも小さい寸法を有するように、開口部25によって露出されるシャフト壁26が面取りされ又は傾斜するように形成されてもよい。開口部25の内側エッジ31は、カニューレ20の先端部22の近位にある前方の点又はエッジ28と、先端部22の遠位にある後方の点又はエッジ29とを有する。露出したシャフト壁26の傾斜は均一でなくてもよく、シャフト壁26は、垂直(すなわち、カニューレ20の中心軸に垂直)であってもよいし、例えば、前方の点又はエッジ28のように、場所によっては垂直に対して最小限の傾斜であってもよい。
【0015】
開口部25は、一般にティアドロップ型であり、開口部25の前方に向かって最大幅w1を有し、そして、前方の点又はエッジ29に向かって先細りになっている。より正式には、開口部25が正中線mによって等しく二分されている場合、最大幅w1は正中線mの前方に位置する。一般に、正中線mよりも後方にある幅w2は、正中線mにおける開口部の幅よりも小さくなる。
【0016】
開口部25のこの形状の結果として、正中線mよりも後方の開口部の面積は、正中線mよりも前方の開口部の面積よりも小さくなる。図6を参照すると、脊髄麻酔薬の注入中にカニューレ20が誤って配置され、開口部25が硬膜17を跨ぐ場合、注射液がカニューレ20を通じて投与されるとき、脊髄針または他の従来の設計の計によって投与される同じ注射液の割合と比較すると、矢印41で示されるような開口部25から出てくも膜下腔18に入る注射液の割合は、矢印43で示されるような開口部25から出て硬膜外腔又は硬膜下腔16に入る注射液の割合に対して増加する。
【0017】
開口部25の内側エッジ31が外側エッジ32よりも小さい寸法を有するように、シャフト壁26が図示のように面取りされていることが望ましいが、シャフト壁26に傾斜やベベルを設けずに形成された開口部、あるいは傾斜がアンダーカットを形成して内側エッジ31が外側エッジ32よりも大きい寸法を有する開口部25であっても、同じ原理を適用することができる。
【0018】
正中線mは、開口部25を等分する。しかしながら、硬膜などの膜が開口部に衝突することによる不正確な注射液投与の問題を軽減する開口部25は、減少した幅を有する開口部、又は、開口部25の軸方向全長を等しく2等分していない直線又は領域から後方に先細りになった開口部を使用して提供することもできる。開口部の重要な特徴は、開口部が軸方向に先細になるか、軸非対称で幅が狭くなり、開口部の一端の領域が反対端の領域に比べて面積が減少することである。
【0019】
したがって、正中線を特に考慮するのではなく、開口部は、開口部の長さに沿って30%から70%の間に分割線が位置し、分割線の前方(すなわち、カニューレの先端部に向かって)の最大幅が分割線の後方の最大幅よりも大きいことを特徴とすることができる。しかし理想的には、分割線は正中線となる。最大幅をこのように配置することで、開口部の後端に向かって形状が一般的に狭くなるか、又は先細りになり、この領域での開口部のサイズが小さくなり、カニューレの位置が正しくない場合の影響が改善される。
【0020】
開口部を考える別の方法として、開口面積の分布という観点がある。つまり、分割線が開口部の長さのn%の位置にある開口部(nは30から70の間)では、分割線の前方の開口部の面積は、開口部の全体の面積のn%よりも大きい。
【0021】
開口部25の長さlは通常0.9mm±0.3mmであるが、これも特に針の内径によって変化する。
【0022】
脊髄針は、さまざまな体格の成人や小児に使用できるよう、さまざまな長さ及びゲージ(太さ)のものがある。長さは25mmから150mmの範囲であるが、75mmから130mmが典型的である。針の外径は典型的には0.5mmから1mmの範囲であり、壁の厚みは0.1mmから0.5mmである。ここに開示された開口部は、任意の寸法やゲージの針にも適用できる。
【0023】
開口部の幅は、カニューレ自体の内径の幅によって部分的に決定される。理想的には、これが開口部の最大幅となる。開口部をこれ以上大きくしても、注射液の投与量の増加に限界があり、カニューレの完全性が損なわれる可能性があるからである。幅は、投与される注射液の量及び速度によっても決定される。したがって、開口部の幅の好ましい範囲は、カニューレの内径の幅の20%から100%の間である。開口部の幅のより好ましい範囲は、カニューレの内径の幅の30%から95%の間であり、より好ましい範囲は、カニューレの内径の幅の60%から90%の間である。
【0024】
開口部は、できるだけ先端部に近い位置が理想的である。先端部の長さ、すなわち針の先端と開口部25の最前端とを隔てる図4の括弧a部分の長さは、通常1mmから2mmである。前述したように、開口部は円筒形のシャフト上に設置するのが理想的であるが、シャフトの直径は、特に先端部と接する前端に向かって変化する可能性がある。開口部25の最前端は、理想的には少なくとも1mm後退させるが、1.5mm、2mm、あるいはそれ以上後退させてもよい。
【0025】
本明細書で説明される原理から利益を得るために、多くの形状のバリエーションが可能である。図7aを参照すると、開口部25の形状は、前方のエッジ28の円形をベースにすることができ、そこからテーパが後方のエッジ29の小さな半径につながる。あるいは、図7bを参照すると、後方のエッジ29の半径を前方のエッジ28の半径と同様にして、テーパがあまり目立たないようにすることもできる。開口部25の別の形状は、図7cに示すように、丸みを帯びた角を有する三角形をベースにすることができる。
【0026】
ここに示された針の先端形状は、閉じた、尖っておらず、丸みを帯びた、「鉛筆の先」、又は無外傷タイプの先端部の一例であるが、ここに開示された開口部は、他のカニューレ、カテーテル、及び他の先端部、例えば鋭利な先端部又は切断用先端部を有する針、複数の内部チャネルを有するカニューレなどに適用することができ、また、注射液を投与するために、長さに沿ったある箇所に開口部を有するカテーテルラインにも適用することができる。
【0027】
カニューレは、典型的には、注射液を投与するための単一の開口部を有する。しかしながら、本明細書で開示される開口部は、注射液を投与すること以外の目的のために設けられた開口部を特徴とする他のカニューレのデザインと組み合わせることができ、これらのさらなる開口部は、他の目的のために適合され、本明細書で議論される開口部の特徴を共有しない。
【0028】
前述したように、カニューレの先端部は、通常閉じており、「非切断性」又は「非外傷性」である。しかしながら、本明細書で議論される開口部は、開口した先端部を有するカニューレ、及び/又は鋭利な先端部又は切断用先端部を有するカニューレによって利用することもできる。
【0029】
本明細書で議論される原理は、開口部のサイズ及び位置、及びカニューレの材質及び形状を適切に変更することで、他の医療介入用途にも同様に適用することができる。例えば、本明細書で開示されるような開口部は、典型的には最大34フレンチゲージ(外径11mm-内径0.445mm)を有する胸腔ドレーン、典型的には16又は18ゲージ(外径1.27-1.65-内径0.4-0.45)の軟質プラスチックチューブである硬膜外カテーテル、及び創傷のドレナージ、解剖学的筋膜への注入、胸腔ドレーン(胸膜を通して)等のための他の代替の解剖学的構造上に形成することもできる。
【0030】
本明細書において、ある特徴を「含む」装置/方法/製品は、それらの特徴を含むが、他の特徴の存在を排除するものではないことを意味すると解釈されることを意図している。
【0031】
添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変形が可能である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
【国際調査報告】