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特表2024-538377天然油系ワセリンを含有するパーソナルケア製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】天然油系ワセリンを含有するパーソナルケア製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20241010BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20241010BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20241010BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20241010BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20241010BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20241010BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/92
A61Q1/04
A61Q1/12
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q19/00
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527860
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 US2022079954
(87)【国際公開番号】W WO2023091941
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/264,211
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/367,352
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】エバーアート、エマニュエル ポール ジョス マリエ
(72)【発明者】
【氏名】フルゼル、スミタ
(72)【発明者】
【氏名】カース、トッド エル.
(72)【発明者】
【氏名】ローランド、セリーナ テス
(72)【発明者】
【氏名】ツゥオ、イジュン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB242
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC662
4C083AC712
4C083AC812
4C083AD242
4C083AD352
4C083AD572
4C083AD662
4C083CC01
4C083CC05
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC23
4C083CC33
4C083CC38
4C083DD17
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD28
4C083DD30
4C083DD31
4C083EE07
4C083FF01
(57)【要約】
本開示は、天然油系ワセリン組成物を含むパーソナルケア製剤及びその作製方法に関する。天然油系ワセリンは、トリグリセリド構成成分を含み、トリグリセリド構成成分は、複数のヒドロキシル含有脂肪酸鎖を含有し、複数のヒドロキシル含有脂肪酸鎖は、C8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸でエステル化され、トリグリセリド構成成分は、a)10%未満の合わせたモノグリセリド及びジグリセリドを含有するか、又はb)AOCS標準手順Cc18-80によって測定される35~70℃の滴融点を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリグリセリド構成成分を含むパーソナルケア組成物であって、前記トリグリセリド構成成分が、トリグリセリドの混合物を含み、前記トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、前記エステル含有脂肪酸のエステルが、C8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、前記組成物が、AOCS標準手順Cc 18-80によって測定される30°~70℃の滴融点を有する、パーソナルケア組成物。
【請求項2】
50%~100%重量パーセントの前記トリグリセリド構成成分を含む、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項3】
1%~50%重量パーセントの前記トリグリセリド構成成分を含む、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項4】
天然油系ワセリンが、0.5~20の酸価を有する、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項5】
天然油系ワセリンが、10~90のヒドロキシル価を有する、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項6】
前記C8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸が、ステアリン酸、パルミチン酸、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項7】
前記C8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルが、ステアリン酸及びパルミチン酸から本質的になる、請求項6に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項8】
トリグリセリド構成成分を含むパーソナルケア組成物であって、前記トリグリセリド構成成分が、トリグリセリドの混合物を含み、前記トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、前記エステル含有脂肪酸のエステルが、C8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、前記組成物が、0.5%~10%の合わせたモノグリセリド及びジグリセリドを含有する、パーソナルケア組成物。
【請求項9】
50%~100%重量パーセントの前記トリグリセリド構成成分を含む、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項10】
1%~50%重量パーセントの前記トリグリセリド構成成分を含む、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項11】
天然油系ワセリンが、0.5~20の酸価を有する、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項12】
天然油系ワセリンが、10~90のヒドロキシル価を有する、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項13】
前記C8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸が、ステアリン酸、パルミチン酸、又はそれらの混合物を含む、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項14】
天然油系ワセリンが、10~90のヒドロキシル価を有する、請求項8に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項15】
ボディウォッシュ、洗顔料、シャンプー、コンディショナ、コーミングクリーム、皮膚保湿剤、皮膚ローション、リップ保湿剤、又は化粧品である、請求項1~14のいずれか一項に記載のパーソナルケア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年6月30日に出願された米国仮特許出願第63/367,352号、及び2021年11月17日に出願された米国仮特許出願第63/264,211号の利益を主張し、これらの各々は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、天然油系ワセリン組成物、その作製方法、及びパーソナルケア製品におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ワセリンは、石油精製の副生成物である。融点が体温に近いので、ワセリンは適用時に軟化し、適用された領域の周囲に閉塞性フィルムを形成し、したがって、皮膚の自然水分の蒸発及び感染を引き起こす可能性がある異物又は微生物に対する有効なバリアが生じる。ワセリンは、無臭及び無色であり、本質的に長い貯蔵寿命を有するが、容易には生分解可能ではない。ワセリンは、単一の実体ではなく、むしろ多様な構造を有する有機化合物の複雑な混合物からなる。この構成成分の多様性は、ワセリンが広範囲の温度にわたって独特のレオロジー特性を有することを可能にする。例えば、ワセリンは、有機化合物において伝統的に考えられているような明確な融点を有さず、むしろ、ある温度範囲にわたって溶融し、ほぼ同じ温度範囲で凝固する。これらの特性により、ワセリンは、皮膚ケア製品及び化粧品において有用で一般的な成分となる。それは、皮膚クリーム、ローション、ヘアケア製品、及び化粧品などの多種多様なパーソナルケア製品の成分として使用されることが多い。主要な利点は、皮膚の水分補給を保護又は保存するためのバリアを生じ得るワセリンの閉塞性特性である。したがって、ワセリンは、皮膚、毛髪、及び唇を保護するために、又は損傷した皮膚若しくは唇の治癒を助けるために一般に使用される。これは、商標名Vaseline(登録商標)によって一般に知られている。
【0004】
適切に精製された場合、ワセリンは既知の健康上の懸念を有さない。しかしながら、不完全な精製過程では、ワセリンは、多環式芳香族炭化水素、すなわちPAHで汚染される可能性がある。PAHは、有機材料燃焼の副生成物であり、通常、その親油性のために曝露時に脂肪中に貯蔵される。
【0005】
ワセリンに代わるバイオ系代替物を開発するために多くの努力がなされてきた。これらの努力のほとんどは、高溶融ワックス、水素化油、又は他の天然油のブレンドを作り出すことに関する。ブレンドすることによって、それは、ワセリンと同様の感触を有する製品を作り出すことが可能であり得るが、これらの製品は共通の欠点を有する。それらは単純なブレンドであるので、材料のレオロジーは、適用温度の範囲を通してワセリンと一致しない。これらの材料は、より低い溶融構成成分が最初に溶融する一方で、より高い溶融構成成分は、温度がより高い点に達するまで無傷のままである多モード溶融プロファイルを有し得る。別の言い方をすれば、これらの代替生成物は、ある温度範囲にわたって滑らかな溶融曲線又は滑らかなレオロジー変化を有さない。むしろ、それらは、多様な温度にわたってワセリンの性能を模倣しないように、二重又は多段階の溶融プロファイルを有する。加えて、これらのブレンドは、天然油中の著しく高い不飽和度の存在を表す、はるかに高いヨウ素価(Iodine Value、IV)を有することができる。この不飽和度は、経時的に著しくより低い酸化安定性に寄与するので、望ましくない。最後に、これらの代替生成物はまた、比較的高いヒドロキシル価を有し得る。これらの高ヒドロキシル価製品は、水酸化物基の親水性が、製品製剤を妨害する追加の界面活性剤効果を生じるため、パーソナルケア用途に製剤化するケア用途に配合することが困難であり得る。
【0006】
したがって、ワセリンの質感、外観、形態、レオロジー、安定性、製剤及び界面活性剤特性をより厳密に模倣する改善された天然系材料を有することは有利であろう。このような材料がより容易に又は完全に生分解可能であり、天然油などの再生可能な原材料に由来する場合、環境的かつ経済的に望ましい。
【発明の概要】
【0007】
先行技術の成分ブレンドとは対照的に、本明細書に開示される組成物は、異なる分子量及びレオロジー特性を有する構成成分の混合物を含有することによって、石油系ワセリンをより厳密に模倣する。ブレンドによってそのような製品を作り出すことは、徹底的に時間がかかり、費用がかかる。
【0008】
本開示は、トリグリセリド構成成分を含む組成物であって、トリグリセリド構成成分が、トリグリセリドの混合物を含み、トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、エステル含有脂肪酸のエステルが、C8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、組成物が、AOCS標準手順Cc 18-80によって測定される30°~70℃の滴融点を有する、組成物に関する。
【0009】
本開示は、トリグリセリド構成成分を含む組成物に関し、トリグリセリド構成成分が、トリグリセリドの混合物を含み、トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、エステル含有脂肪酸のエステルが、C8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、組成物が、10%未満の合わせたモノグリセリド及びジグリセリドを含有する、組成物を提供する。
【0010】
本開示は、トリグリセリド構成成分を含む組成物であって、トリグリセリド構成成分が、トリグリセリドの混合物を含み、トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、エステル含有脂肪酸のエステルが、C8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、組成物が、a)10%未満の合わせたモノグリセリド及びジグリセリドを含有し、b)AOCS標準手順Cc 18-80によって測定された30°~70℃の滴融点を有する、組成物を提供する。
【0011】
本明細書に開示される天然油系ワセリンの低IVは、改善された酸化安定性、及び対応して改善された貯蔵寿命及び品質をもたらす。より低いヒドロキシル価は、パーソナルケア製剤においてより効率的に利用されるための、本明細書に開示される天然油系ワセリンの能力を改善する。加えて、本明細書に開示される天然油系ワセリンの構造は、驚くべきことに生分解可能である。
【0012】
本明細書に記載の天然油系ワセリン組成物は、工業用途及びパーソナルケア製品に有用である。特にパーソナルケア製品の場合、ワセリン代替品が、快い外観及び感触を提供すると同時に、製造の容易さを改善することができる特性を有することが望ましい。
【0013】
本開示の態様によって、利点(そのうちのいくつかは予想外である)が達成される。例えば、本明細書に記載される様々な組成物は、有利には、皮膚上に均等かつ均一に広がる。それらは、ある範囲の温度にわたってはるかに一貫したレオロジーを有し、石油系ワセリンの特性をより厳密に模倣する。本明細書に開示される天然油系ワセリン組成物は、閉塞性効果、並びに皮膚をコーティングして水分損失から保護する能力を有する。
【0014】
本開示の組成物はまた、改善された製造特性を有し、シャンプー、コンディショナ、クリーム、ローション、サンケア、ヘアケア、ヘアスタイリング、ボディウォッシュなどのパーソナルケア製品に組み込むことができる。
【0015】
本開示の組成物はまた、先行技術を超える明確な利点を有する。いくつかの用途では、最終製品への組み込みを容易にするために、低いヒドロキシル価を有することが、組成物において有利であり得る。組成物中に存在するMAG及びDAGの量を制限することは、ヒドロキシル価に影響を与え、最終製品への製剤化を容易にする。
【0016】
別の態様では、特定の製造プロセス条件は、MAG、DAG、及び関連する遊離脂肪酸の生成を制限する。遊離脂肪酸生成の制限は、特にヒマシ油又は水素化ヒマシ油が反応において利用される場合、反応の追加の生成物としてヒドロキシステアリン酸のオリゴマーが生じることを制限する。これらの化合物の任意の有意な形成は、望ましくないレオロジー、対応するMAG及びDAGSの産生、並びに生分解性に対する耐性に寄与する。
【0017】
更なる利点として、本明細書に記載の様々な組成物は、天然油ベースであり、したがって、生分解可能で、再生可能で、かつ環境に優しい構成成分を含むという利点を有する。例えば、本開示の天然油系ワセリン組成物は、天然油から調製することができ、更に上述の利点を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、開示される主題の特定の態様について詳細に言及する。開示される主題は、列挙される特許請求の範囲とともに説明されるが、例示される主題は、特許請求の範囲を開示される主題に限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。特定の態様とともに説明される1つの態様は、必ずしもその態様に限定されず、任意の他の態様とともに実施され得る。
【0019】
本明細書全体を通して、範囲形式で表される値は、範囲の限度として明示的に列挙された数値を含むだけでなく、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲も含むように、柔軟に解釈されるべきである。例えば、「約0.1%~約5%」又は「約0.1%~5%」の範囲は、約0.1%~約5%だけでなく、示された範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%及び4%)及び部分範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むと解釈されるべきである。「約X~Y」という記述は、別段示されない限り、「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様に、「約X、Y、又は約Z」という記述は、別段示されない限り、「約X、約Y、又は約Z」と同じ意味を有する。
【0020】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」、並びに要素を説明する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)同様の指示対象は、文脈が明確に別様に指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「置換基(a substituent)」への言及は、単一の置換基に加えて2つ以上の置換基などを包含する。本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に否定されない限り、単数形の任意の用語は、その複数形の対応物を含んでもよく、逆もまた同様であることが理解される。
【0021】
「又は」という用語は、別段示されない限り、非排他的な「又は」を指すために使用される。「A及びBのうちの少なくとも1つ」という記述は、「A、B、又はA及びB」と同じ意味を有する。
【0022】
加えて、本明細書で用いられ、別段定義されない表現又は用語は、説明のみを目的とするものであり、限定を目的とするものではないことを理解されたい。セクションの見出しの任意の使用は、文書の読解を支援するように意図されており、限定として解釈されるべきではない。セクション見出しに関連する情報は、その特定のセクション内に存在する場合もあり、当該セクション外に存在する場合もある。法律で許可されている範囲で、本文書で参照される任意の刊行物、特許、及び特許文献は、参照により個々に組み込まれているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。この文書とこのように参照により組み込まれるそれらの文書との間で使用が一貫していない場合、組み込まれる参考文献における使用は、この文書のものを補足するものであると解釈されるべきである。相容れない矛盾の場合、この文書における使用を優先する。
【0023】
本明細書で使用するとき、以下の用語は、そうではないことが明示的に記載されていない限り、以下の意味を有する。
【0024】
本明細書で使用するとき、「例えば(for example)」、「例えば(for instance)」、「など(such as)」、又は「含む(including)」という用語は、より全般的な課題を更に明確にする例を導入することを意味する。特に断らない限り、これらの例は、本開示において例証される用途を理解するための補助としてのみ提供され、いかなる方法でも限定することを意味するものではない。
【0025】
本明細書に記載の方法では、時間的又は動作的な順序が明示的に列挙されている場合を除いて、本開示の原理から逸脱することなくいかなる順序で行為を実行してもよい。更に、明示的な「特許請求の範囲」の文言によって別個に実行されことが記載されていない限り、特定の行為を並行して実行することができる。例えば、Xを行う請求された行為及びYを行う請求された行為を単一の動作内で同時に実施することができ、結果として得られるプロセスは、請求されるプロセスの逐語的な範囲内に入る。
【0026】
本明細書で使用するとき、「約」という用語は、例えば、指定の値又は指定の範囲の限度のプラス又はマイナス10%以内、5%以内、又は1%以内の値又は範囲内のばらつきの程度を許容することができ、正確な指定の値又は範囲を含む。
【0027】
本明細書で使用するとき、「実質的に」という用語は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は少なくとも約99.999%以上、又は100%のような大部分又はほとんどの部分を指す。
【0028】
本明細書で使用するとき、「天然油」という用語は、植物又は動物源に由来する油を指し得る。「天然油」という用語は、別途記載のない限り、天然油誘導体を含む。天然油の例としては、植物油、藻油、動物脂、トール油、これらの油の誘導体、これらの油のいずれかの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。植物油の代表的な非限定例としては、キャノーラ油、菜種油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、アマニ油、パーム核油、桐油、ジャトロファ油、カラシ油、カメリナ油、ペニークレス油、大麻油、藻油、ホホバ油、及びヒマシ油が挙げられる。動物脂の代表的な非限定例としては、ラード、タロー、家禽脂、黄色油脂、及び魚油が挙げられる。トール油は、木材パルプ製造の副産物である。いくつかの態様では、天然油は、精製、漂白、及び/又は脱臭されてもよい。いくつかの態様では、天然油は、個々に又はこれらの混合物として存在する。
【0029】
本明細書で使用するとき、「水素化」又は「水素化天然油」という用語は、天然油の部分的、完全、又は実質的に完全な水素化を指す。天然油の部分的又は実質的に完全な水素化は、当該技術分野において周知である。当業者であれば、水素化の間に取られる長さに関わらず、いくらかの不飽和が任意の水素化油中に残る可能性が最も高いので、天然油を完全に水素化することは困難かつ非実用的であることを理解するであろう。油を完全に水素化する取り組みは、経済的非効率性及び油の劣化につながる。水素化の程度は、典型的には、生成物の残留ヨウ素価を参照することによって反映される。したがって、「完全に」水素化されているとして販売されている、又はそのように言われる多くの油は、この収穫逓減点まで処理されており、依然として小さい残留ヨウ素価を有する。多くの水素化天然油は市場で購入することができ、様々な商業的供給源から入手可能である。
【0030】
本明細書で使用するとき、「天然油系」組成物とは、当該組成物が、主に、実質的に又は全体的に天然油及び天然油誘導体に由来する油及び脂肪酸を含有することを意味する。天然油系組成物は、様々な態様では、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、99.99%、又は約100%天然油又は水素化天然油である油を含有していてよい。
【0031】
「モノアシルグリセリド」は、エステル結合を介して連結された単一の脂肪酸残基を有するグリセロール部分を有する分子を指す。「モノアシルグリセロール」、「モノアシルグリセリド」、「モノグリセリド」、及び「MAG」という用語は、本明細書において互換的に使用される。モノアシルグリセリドとしては、2-アシルグリセリド及び1-アシルグリセリドが挙げられる。
【0032】
「ジグリセリド」は、エステル結合を介して連結された2つの脂肪酸残基を有するグリセロール部分を有する分子を指す。「ジアシルグリセロール」、「ジアシルグリセリド」、「ジグリセリド」、及び「DAG」という用語は、本明細書において互換的に使用される。ジアシルグリセリドとしては、1,2-ジアシルグリセリド及び1,3-ジアシルグリセリドが挙げられる。
【0033】
「トリアシルグリセリド」は、エステル結合を介して3つの脂肪酸残基に連結されたグリセロール部分を有する分子を指す。「トリアシルグリセロール」、「トリアシルグリセリド」、「トリグリセリド」、及び「TAG」という用語は、本明細書において互換的に使用される。いくつかの態様では、トリグリセリドは、C8~C22脂肪酸から構成される。更なる態様では、トリグリセリドは、ヒドロキシ含有脂肪酸を含む。
【0034】
トリグリセリドのヒドロキシ含有脂肪酸は、エステル化によって更に修飾することができる。ヒドロキシ含有脂肪酸は、遊離脂肪酸と反応してエステル結合を生成することができ、したがってそれに対応してエステル含有脂肪酸が生じ得る。いくつかの態様では、トリグリセリドは、エステル含有脂肪酸を含む。いくつかの態様では、ヒドロキシ含有脂肪酸の20パーセント超は、エステル化されている。いくつかの態様では、ヒドロキシ含有脂肪酸の30パーセント超は、エステル化されている。いくつかの態様では、ヒドロキシ含有脂肪酸の40パーセント超は、エステル化されている。いくつかの態様では、ヒドロキシ含有脂肪酸の50パーセント超は、エステル化されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の20パーセント超は、C8~C22脂肪酸エステルで置換されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の30パーセント超は、C8~C22脂肪酸エステルで置換されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の40パーセント超は、C8~C22脂肪酸エステルで置換されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の50パーセント超は、C8~C22脂肪酸エステルで置換されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の20パーセント~90パーセントは、C8~C22脂肪酸エステルで置換されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の20パーセント~70パーセントは、C8~C22脂肪酸エステルで置換されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の30パーセント~50パーセントは、C8~C22脂肪酸エステルで置換されている。
【0035】
本明細書で使用するとき、「脂肪酸」という用語は、炭化水素鎖及び末端カルボン酸基を含む分子を指し得る。本明細書で使用するとき、脂肪酸のカルボン酸基は、例えば脂肪酸がグリセリド又は別の分子に組み込まれたときに生じるように修飾又はエステル化(例えば、COOR(式中、Rは、例えば炭化水素鎖を指す))されてもよい。あるいは、カルボン酸基は、遊離脂肪酸又は塩の形態(すなわち、COO’’又はCOOH)であってもよい。脂肪酸の「尾部」又は炭化水素鎖はまた、エステル化されたものであるか遊離体であるかに関わらず、脂肪酸鎖、脂肪酸側鎖、又は脂肪鎖と呼ばれる場合もある。脂肪酸の炭化水素鎖は、典型的には、飽和又は不飽和脂肪族基である。N個の炭素数を有する脂肪酸は、典型的には、N-1個の炭素を有する脂肪酸側鎖を有する。
【0036】
本願はまた、脂肪酸の修飾形態にも関連し、したがって、脂肪酸という用語は、記載されるように脂肪酸が置換されているか、又は別の方法で修飾されている状況で使用されてもよい。例えば、様々な態様では、脂肪酸は、別のアルキル鎖(イソステアリン酸の場合のように、又はヒマシ油中に存在するリシノール酸の場合のようにヒドロキシ基)で置換されてもよい。
【0037】
「アシルグリセリド」は、エステル結合を介して連結された少なくとも1つの脂肪酸残基を有する少なくとも1つのグリセロール部分を有する分子を指す。例えば、アシルグリセリドは、モノアシルグリセリド、ジアシルグリセリド、トリアシルグリセリドを含むことができる。アシルグリセリドという群は、追加の記述用語によって更に絞り込むことができ、特定の小集団のアシルグリセリドを明示的に除くか又は含むように修飾することができる。例えば、モノ-及びジ-アシルグリセリドという語句は、MAG(monoacylglyceride、モノアシルグリセリド)及びDAG(diacylglyceride、ジアシルグリセリド)を指し、一方、非MAG/非DAGアシルグリセリドという語句は、MAG及びDAGを除くアシルグリセリドの群を指す。
【0038】
脂肪酸及び/又はそれらを含有する天然油は、本明細書に記載されるように水素化され得る。
【0039】
特定の種類の脂肪酸の濃度は、本明細書では、油の総脂肪酸含量のパーセントで提供され得る。特に断りのない限り、このようなパーセントは、当業者によく知られている方法によって実験的に計算された遊離脂肪酸及びエステル化脂肪酸を含む全脂肪酸に基づく重量パーセントである。
【0040】
「飽和」脂肪酸は、炭化水素鎖に炭素-炭素二重結合を全く含有しない脂肪酸である。「不飽和」脂肪酸は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含有する。「多価不飽和」脂肪酸は、2つ以上のこのような炭素-炭素二重結合を含有し、他方、「一不飽和」脂肪酸は、1つの炭素-炭素二重結合のみを含有する。炭素-炭素二重結合は、シス及びトランスで示される2つの立体配置のうちの1つであってよい。天然に生じる不飽和脂肪酸は、概して「シス」形態である。
【0041】
脂肪酸の非限定的な例としては、C8、C10、C12、C14、C16(例えば、C16:0、C16:1)、C18(例えば、C18:0、C18:1、C18:2、C18:3、C18:4)、C20及びC22脂肪酸が挙げられる。例えば、脂肪酸は、カプリル酸(8:0)、カプリン酸(10:0)、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸又はイソステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、及びリノレン(18:3)酸であり得る。
【0042】
「C8~C22脂肪酸」という用語は、8~22個の炭素を含有する脂肪酸を意味する。C8~C22脂肪酸は、直鎖又は分岐鎖であってもよく、C1~C3アルキル基、ヒドロキシル基、又はエステル基などの追加の置換基で置換されていてもよい。いくつかの態様では、C8~C22脂肪酸は、直鎖を有する。いくつかの態様では、C8~C22脂肪酸は、C16又はC18脂肪酸である。いくつかの態様では、C8~C22脂肪酸は、ステアリン酸を含む。いくつかの態様では、C8~C22脂肪酸は、40%超又は70%超のステアリン酸を含む。いくつかの態様では、C8~C22脂肪酸は、40%~95%のステアリン酸を含む。
【0043】
C8~C22脂肪酸は、C8~C22脂肪酸の混合物であってもよい。ステアリン酸は、様々な純度で市販されている。これは、90%のC18(ステアリン酸)含有を意味する1890として販売され得る。残りは、典型的には他の脂肪酸、主にC16から構成される。あるいは、ステアリン酸は、1845(又は1655)として販売され得る。これは、約45%のステアリン酸及び55%のパルミチン酸を意味する。いくつかの態様では、C8~C22脂肪酸は、ステアリン酸及びパルミチン酸から本質的になる。
【0044】
いずれかの態様では、C1~C3アルキル置換基は、メチル、エチル、又はプロピルから選択され得る。任意の実施形態において、C1~C3アルキル置換基は、メチルであってもよい。本明細書に記載の任意の実施形態において、1つ以上のC1~C3アルキル置換基で置換されたC8~C22脂肪酸は、イソパルミチン酸、イソミリスチン酸、イソステアリン酸、19-メチルアラキジン酸、イソラウリン酸であってもよい。
【0045】
「イソステアリン酸」という用語は、本明細書で使用するとき、化学物質16-メチルヘプタデカン酸を指し、これは、16位でメチルによって置換されたヘプタデカン酸であるメチル分岐脂肪酸である。イソステアリン酸は、オレイン酸と天然鉱物触媒との反応によって生成することができる軽度に分岐した液体脂肪酸である。イソステアリン酸は、安定性、潤滑剤の場合の熱安定性、化粧品製剤のための臭気安定性、及び長い貯蔵寿命要件を有する製品のための酸化安定性を有する液体脂肪酸を必要とする用途において使用される。イソステアリン酸の分岐構造はまた、その分散力を増強し、油及び溶媒中の顔料及び鉱物粒子の安定化のために化粧品及び工業用途において使用される。イソステアリン酸は、周知であり、市販されている。本明細書で使用するとき、イソステアリン酸という用語は、実質的に全てのイソステアリン酸を含むが、100%純粋である必要はない組成物を指す。イソステアリン酸という用語はまた、具体的には、メチル置換基が脂肪酸鎖上の様々な位置に存在するイソステアリン酸の全ての潜在的異性体を含む。
【0046】
油の脂肪酸組成は、当該技術分野において既知の方法によって決定することができる。米国油化学会(The American Oil Chemist’s Society、AOCS)は、植物油に対して実施される多種多様な試験のための分析方法を維持管理している。遊離脂肪酸を生成するための油構成成分の加水分解、遊離脂肪酸のメチルエステルへの変換、及び気液クロマトグラフィー(gas-liquid chromatography、GLC)による分析が、油サンプルの脂肪酸組成を決定するための一般的に受け入れられている標準的な方法である。AOCS手順Ce 1-62に、使用される手順が記載されている。
【0047】
「エステル化又はエステル化された」という用語は、以下を含むエステル結合が生じることを意味する:1)アルコールと酸との脱水反応、2)エステル交換、新しいエステルを形成するためのアルコールとエステルとの反応、又は3)エステル交換、トリアシルグリセロール構造内の脂肪酸の転位。
【0048】
「滴点(drop point又はdropping point)」は、全般的に、所与の標準化試験の条件下で決定したとき、材料(ワックスなど)が軟化し、十分に流動する流体になる温度を指す。本明細書で使用するとき、滴点は、AOCS標準手順Cc 18-80によって決定される。(Official Methods and Recommended Practices of the American Oil Chemists’Society,7th Edition)。滴点は、化合物の熱特性を反映するという点で融点と同様であるが、滴点は、明確な融点を有さない材料を定義するのに有用であり得る。いくつかの態様では、天然油系ワセリンは、約30℃~約70℃の滴融点を示す。いくつかの態様では、天然油系ワセリンは、約35℃~約50℃の滴融点を示す。
【0049】
「多分散指数(分子量分布としても知られている)」という用語は、本明細書で使用するとき、重量平均分子量(Mw)の、数平均分子量(Mn)に対する比率である。多分散性データは、Waters 510ポンプ、及び410示差屈折率計を装備した、ゲル透過クロマトグラフィー装置を用いて収集される。サンプルは、THF溶媒中で約2%の濃度で調製される。1ml/分の流速と、35℃の温度とを用いる。カラムは、Phenogel 5ミクロンストレート/ミックスガードカラムと、50、100、1000、及び10000オングストロームの、300×7.8mmのPhenogel 5ミクロンカラム(スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー)とからなる。分子量は、以下の基準を用いて決定された:
【0050】
【表1】
【0051】
本明細書で使用するとき、「重量平均分子量」という用語は、ΣM /ΣM(式中、nは、分子量Mの分子の数である)に等しいMを指す。様々な例において、重量平均分子量は、本明細書に記載されている試験、又はサイズ排除クロマトグラフィー、光散乱、小角中性子散乱、X線散乱、及び沈降速度を使用して決定することができる。
【0052】
「数平均分子量」という用語は、本明細書で使用するとき、Mを指し、これは、試料の総重量を試料中の分子の数で割ったものに等しい。Mは、式ΣM/nによって表すことができ、式中、nは、分子量Mの分子の数である。
【0053】
いくつかの態様では、天然油系ワセリンは、1.3を超える多分散指数を示す。いくつかの態様では、天然油系ワセリンは、1.3~2.0の多分散指数を示す。
【0054】
「酸価」(Acid Value、AV)という用語は、本明細書で使用するとき、試験サンプル1g中に存在する有機酸を中和するために必要なKOHの重量(mg)として定義され、組成物中に存在する遊離脂肪酸の尺度である。AVは、AOCS Official Method Cd 3d-63によって決定することができる。本明細書に記載される組成物の酸価は、20.0未満、又は10.0未満、又は4.0未満、又は0.5~20.0、又は0.5~10.0、又は0.5~4.0であり得る。
【0055】
「ヒドロキシル価」という用語は、本明細書で使用するとき、水酸化カリウムのミリグラムで表され、試料1g中に存在するヒドロキシル基の数に相当し、油及び脂肪の従来の特性のうちの1つである。ヒドロキシル価は、AOCS標準法Cd 13-60によって決定することができる。本明細書に記載される組成物は、90未満又は50未満のヒドロキシル価を有し得る。いくつかの態様では、組成物は、10~90又は30~90のヒドロキシル価を有し得る。いくつかの態様では、組成物は、50~90のヒドロキシル価を有し得る。
【0056】
「ヨウ素価」(一般にIVと略される)という用語は、本明細書で使用するとき、化学物質100グラムによって消費されるヨウ素のグラム単位の質量である。ヨウ素価は、脂肪、油及びワックス中の不飽和の量を決定するためにしばしば使用される。脂肪酸において、不飽和は主に二重結合として生じ、これはハロゲン、この場合はヨウ素に対して非常に反応性である。したがって、ヨウ素価が高いほど、より多くの不飽和が試料中に存在する。材料のヨウ素価は、標準的な周知のWijs法(A.O.C.S.Cd1-25)によって決定することができる。
【0057】
天然油系ワセリン組成物
本明細書に記載される天然油系ワセリン組成物は、石油系ワセリンをより厳密に模倣する様々な温度にわたって、より一貫したレオロジーを提供する独特の組成を有する。
【0058】
本開示は、トリグリセリド構成成分を含むパーソナルケア組成物であって、トリグリセリド構成成分が、トリグリセリドの混合物を含み、トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、エステル含有脂肪酸のエステルが、C8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、組成物が、AOCS標準手順Cc 18-80によって測定される30°~70℃の滴融点を有する、パーソナルケア組成物を提供する。
【0059】
本開示は、トリグリセリド構成成分を含む組成物に関し、トリグリセリド構成成分が、トリグリセリドの混合物を含み、トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、エステル含有脂肪酸のエステルが、C8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、組成物が、10%未満の合わせたモノグリセリド及びジグリセリドを含有する、パーソナルケア組成物を提供する。トリグリセリド構成成分は、当業者によって、例えば、不飽和脂肪酸を含有する天然油をエポキシ化し、エポキシドを開環することによって調製され得る。この化学は、油脂技術において周知である。あるいは、トリグリセリド構成成分は、天然にヒドロキシ基を含有し得る。いくつかの天然油は、天然状態でヒドロキシ脂肪酸を含有する。ヒマシ油は、そのような例の1つである。典型的には、ヒマシ油は、約70%~90%のリシノール酸脂肪酸残基からなる。トリグリセリド構成成分は、部分的に、実質的に、又は完全に水素化されていてもよい。良好な品質のヒマシ油は、約160のヒドロキシル価を有する。完全硬化又は水素化ヒマシ油は、典型的には、150の最小ヒドロキシル価を有する。
【0060】
本開示の手順は、反応中に起こるエステル交換及びエステル交換の量を最小限に抑えるように調整される。過剰なエステル交換は、ヒドロキシステアリン酸オリゴマー及び高分子量構造並びに望ましくないMAG及びDAGを生じさせ得る。いくつかの態様では、組成物は、10%未満の合わせたMAG及びDAGを含有する。いくつかの態様では、組成物は、10%未満の合わせたMAG及びDAGを含有する。いくつかの態様では、組成物は、0.5%~10%の合わせたMAG及びDAGを含有する。いくつかの態様では、組成物は、1%~8%の合わせたMAG及びDAGを含有する。組成物中のMAG及びDAGの含量は、当業者によって日常的に決定することができる。上記のサイズ排除クロマトグラフィー又はGPCを使用して、モノ、ジ、又はトリグリセリドである組成物の分子量及び対応する画分を決定することができる。当業者であれば、標準曲線を作り出し、標準曲線を使用して特定のクロマトグラフィー装置を祝うことができることを理解するであろう。
【0061】
いくつかの態様では、トリグリセリド構成成分は、水素化されている。いくつかの態様では、トリグリセリド構成成分は、水素化ヒマシ油を含む。
【0062】
いくつかの態様では、反応混合物は、追加の天然油又は水素化天然油を含む。
【0063】
いくつかの態様では、追加の天然油は、水素化ダイズ油又は水素化ヤシ油である。
【0064】
組成物は、最小限の量の遊離脂肪酸を含み得る。例えば、組成物は、約2重量%未満の遊離脂肪酸を含み得る。別の実施形態では、組成物は、約1重量%未満、約2.5重量%未満の遊離脂肪酸、又は0.1重量%~2.5重量%の脂肪酸を含み得る。
【0065】
組成物は、最小量の合わせたモノグリセリド及びジグリセリドを含んでもよい。例えば、本組成物は、約10重量%未満の合わせたモノグリセリド及びジグリセリドを含み得る。別の態様では、組成物は、約8重量%未満、約6重量%、約5重量%未満、又は約3重量%未満の、合わせたモノグリセリド及びジグリセリドを含み得る。別の態様では、組成物は、約1%~約10重量%、又は約1%~約7重量%、又は約2%~約5重量%、又は1%~約4%の合わせたモノグリセリド及びジグリセリドを含み得る。
【0066】
本明細書に記載される組成物のヨウ素価は、約5.0未満、又は約3.0未満、又は約0.1~約3の間であり得る。
【0067】
組成物は、任意の実施形態において本明細書に記載されるように、以下:(i)約20.0未満の酸価、(ii)約2%~約7重量%の合わせたモノグリセリド及びジグリセリド、又は(iii)約10.0未満のヨウ素価のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの態様では、天然油系ワセリン組成物は、前述の特徴のうちの2つ、又は3つ全てを有し得る。
【0068】
ワックス又は硬質脂肪とは異なり、本明細書に記載される天然油系ワセリン製剤は、それ自体の形状を保持することができるが、グリース又はショートニングにより類似して、圧力下で撓む半固体材料であり得る。圧力下での撓みに対する耐性は、円錐針入度試験を使用することによって決定することができる。円錐針入度は、標準方法論ASTM D217-2の使用によって測定することができる。
【0069】
天然油系ワセリンは、石油系ワセリンに匹敵する広がり及び粘着性を提供するレオロジー特性の組み合わせを示す。本明細書に開示される任意の実施形態において、天然油系ワセリンは、約35℃~約70℃の溶融滴点、25℃で20超又は約20~約100又は約60~約90(Dmm(mmの1/10)の円錐針入度、100℃で約5mm/s~約35mm/sの動粘度、約25℃~約45℃の凝固点、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上のレオロジー特性を示す。
【0070】
天然油系ワセリン組成物(本明細書では単に組成物とも呼ぶ)を調製する方法
本開示は、また、天然油系ワセリン組成物の作製方法を提供する。この方法は、脂肪酸と、1つ以上のヒドロキシル含有脂肪酸鎖及び任意選択で水素化天然油を含有するトリグリセリド構成成分とを混合することと、混合物を(任意選択で酸触媒の存在下で)高温に加熱することと、加熱された混合物を周囲圧力未満の圧力に曝露して、ヒドロキシル含有脂肪酸鎖のうちの1つ以上がC8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸でエステル化され、トリグリセリド構成成分が、a)10%未満の合わせたモノグリセリド及びジグリセリドを含有し、かつ/又はb)30℃~70℃のAOCS標準手順Cc 18-80によって測定される滴融点を有する生成物を得ることと、ワセリン組成物を単離することと、を含む。
【0071】
反応は、求められる特性に応じていくつかの異なる方法で監視することができる。反応を進行させると、平衡の形態が達成される一定の定常状態点に達する。この時点で、生成物のパラメータは劇的に変化せず、反応時間を継続すると分解が促進されて生成物の品質に影響を及ぼす。あるいは、酸価、ヒドロキシル価などの特定の設定点まで、又は特定の滴融点が達成されるまで、反応を進行させてもよい。これは、オペレータの裁量による。いくつかの態様では、反応混合物が20.0未満、又は10未満、又は5未満の酸価に達するまで、又は反応混合物が4.0未満の酸価に達するまで反応を進行させて、天然油系ワセリン組成物を提供する。いくつかの態様では、その反応混合物は、0.5~20.0の酸価に達する。いくつかの態様では、その反応混合物は、0.5~10の酸価に達する。
【0072】
反応混合物は、本明細書に記載される組成物を有し、混合物は、当該技術分野で周知の方法によって化学的又は酵素的エステル化を誘導するように処理される。本開示の手順は、真空及び限られた触媒の使用を含み、反応中に起こるエステル交換及びエステル交換の量を最小化するように調整される。過剰なエステル交換は、生分解性を低下させるヒドロキシステアリン酸オリゴマー及び高分子量構造、並びに望ましくないMAG及びDAGを生じ得る。
【0073】
化学エステル化を行うために、成分の反応混合物に対して約0.1重量%の量で触媒を添加してよい。例示的な触媒は、メタンスルホン酸などの酸、又は水酸化ナトリウム及び水酸化カルシウムなどの塩基、又は金属触媒であり得る。いくつかの態様では、メタンスルホン酸は、触媒である。任意選択で、反応混合物に次リン酸を添加して、オフカラーの形成を防止することができる。次いで、反応温度を約140°~250℃に上昇させてよい。典型的には、約160℃の反応温度が利用される。この反応温度を一定時間維持し、反応容器を真空に供して、所望の終点又は定常状態に達するまで20~50トルの圧力を達成する。いくつかの態様では、15未満若しくは10未満若しくは5未満の酸価が達成されるか、又は1.3を超える多分散指数が得られる。塩基、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カルシウムのような鉱物塩基は、わずかに過剰の触媒を中和するために約0.2重量%の量で添加することができる。次いで、反応混合物を約60°~80℃の範囲の温度に冷却してよい。B80中性又はTrisyl(登録商標)シリカのような酸活性化砂利粘土のようなフィルター媒体は、不純物を除去するために、反応混合物に対して約2重量%以下の量で反応混合物に添加することができる。次いで、最終生成物、すなわち天然油系ワセリン組成物を濾過して、塩、シリカ、及び粘土混合物を除去する。
【0074】
あるいは、酵素的エステル交換を行うために、反応混合物に対して2重量%の量で酵素触媒を添加することができる。例示的な酵素触媒は、Lipase Novozyme 435であってよい。反応が行われる際に、約50トルの真空を使用して水を除去することができる。5.0未満の酸価が達成されるまで、又は1.3を超える多分散指数が得られるまで、約60~80℃の範囲の反応温度を維持する。次いで、適切なフィルターデバイスを用いて酵素触媒を濾別して、最終生成物、すなわち天然油系ワセリン組成物を得ることができる。
【0075】
あるいは、エステル化は、触媒なしで行うことができる。C8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸と、ヒマシ油などの水素化天然油との反応混合物を予め溶融し、60°~80℃の範囲の温度に加熱した後、酸化を防止するために窒素スパージとともに反応容器に添加する。反応容器を真空にして20~50トルの圧力を達成し、温度を180°~250℃に上昇させる。
【0076】
反応のために選択された装置に応じて、より低い圧力及び/又は温度を利用することもできる。反応の酸価を監視し、20未満の酸価(又は他の終点)が達成されるまで、反応温度及び真空を維持する。反応混合物を60°~80℃に冷却し、濾過して(ソックフィルターを通してなど)微粒子を除去した後、生成物を単離する。
【0077】
局所製剤
本明細書に記載の組成物は、多種多様なパーソナルケア製品に利用することができる。それは、望ましい溶融及び拡散特性、並びに皮膚に閉塞性を提供する性能を有する。加えて、それは石鹸、ボディウォッシュ、及びヘア製品において使用されて、使用後に望ましい質感及び感触を提供する。本明細書に記載される組成物は、これらの用途のほとんど又は全てにおいて石油系ワセリンの代わりとなり得る。当業者は、本明細書中に開示される天然系ワセリンの品質を利用する(又は任意の望ましくない影響を改善する)ようにパーソナルケア処方をわずかに修正又は調整してそれをわずかに適合させる必要があり得る。この種の適合は、当該技術分野においてよく理解されており、任意の新しい成分に対して、又は異なる供給業者から来る既知の成分に対してさえも行われる。
【0078】
本発明者らは、予想外にも、これらの組成物を含む製剤が、以下で更に説明するような多くの望ましい特性を有し、パーソナルケア又は化粧品製剤において現在使用されている石油系ワセリンの全部又は一部を置き換えるために使用することができることを見出した。
【0079】
一態様では、本発明は、本明細書に記載される天然油系ワセリン組成物を含む局所製剤である。本明細書で使用される場合、「局所製剤」という用語は、身体の一部に直接適用され得る製剤を指す。「製剤」という用語は、パーソナルケア又は在宅ケアで使用するための本開示に従って、様々な重量範囲における様々な成分の組成を表すために使用される。
【0080】
「パーソナルケア」は、任意の化粧品、衛生用品、洗面用品、及び局所ケア製品を意味し、かつこれらを含み、これらとしては、リーブオン製品(すなわち、適用後に皮膚又はケラチン基質上に残される製品)、リンスオフ製品(すなわち、適用中又は適用の数分以内に、皮膚及びケラチン基質から洗浄又はすすぎ洗いされる製品);シャンプー;ヘアカール及び髪矯正製品;コーミングクリーム又はもつれをほぐすクリーム、ヘアスタイル維持及びヘアコンディショニング製品(濃縮マスク又はより標準的な製剤のいずれか;リンスオフ又はリーブオン);爪、手、足、顔、頭皮及び/又は身体用のローション及びクリーム;毛髪染料;顔及び身体のメイクアップ;ファンデーション;マスク;ネイルケア製品;収斂剤;デオドラント;制汗剤;抗ニキビ薬;老化防止;脱毛剤;コロン及び香料;皮膚保護クリーム及びローション(日焼け止め剤など);皮膚及びボディ洗浄剤/ボディウォッシュ;洗顔料;皮膚コンディショナ;皮膚トナー;皮膚引き締め組成物;皮膚日焼け及び美白組成物;液体石鹸;固形石鹸;固形合成洗剤;浴用製品;シェービング製品;パーソナル潤滑剤、並びにオーラル衛生製品(練り歯磨き、オーラル懸濁剤、及びマウスケア製品など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書に開示される天然油系ワセリンは、皮膚又は毛髪上で単独で利用することができ、シャンプー、ボディウォッシュ、ヘアケア、もつれほぐし、及びコンディショナ製剤中の様々な構成成分を低減又は置換するのに特に有用である。
【0082】
本明細書に開示される天然系ワセリンは、パーソナルケア製品におけるエマルション(マイクロエマルション又は更にはナノエマルションなどの非常に小さい液滴サイズのエマルションを含む)の調製において特に有用である。ローション、日焼け止め剤、ボディウォッシュ、及びヘアケア製品などのパーソナルケア製剤の多くは、水中油型エマルション技術に基づいている。これらのエマルションの調製は、当該技術分野において周知である。そのような技術の例は、以下の公開特許文献に見出すことができる。国際公開第2006/024095号、欧州特許第3743038号、及び欧州特許第1572333号。
【0083】
本明細書に開示される天然系ワセリンは、個人衛生製品、おむつケア及び抗擦過製品、シェービング調製物、及び性行為用調製物などの皮膚の潤滑のための製品の調製において特に有用である。
【0084】
天然系ワセリンのヒドロキシル価は、安定なエマルションを形成するのに重要である。ヒドロキシル価が高すぎる場合、製剤を崩壊させるか、又は安定性を妨げる可能性がある。当業者であれば、ある程度のヒドロキシル価が全体的な界面活性に有益に寄与し得ること、並びに製剤及び他の対応する界面活性剤及び/又は乳化剤を調整して補償し得ることを理解するであろう。
【0085】
このようなパーソナルケア製剤の質感は限定されず、とりわけ、限定するものではないが、液体、ゲル、スプレー、エマルション(ローション及びクリームなど)、シャンプー、コンディショナ、コーミングクリーム、ポマード、フォーム、錠剤、スティック(リップケア製品など)、メイクアップ、坐剤であり得、そのいずれも皮膚又は髪に適用され得、典型的には、水ですすぐ又はシャンプー若しくは石鹸若しくは固形合成洗剤で洗浄するなどによって、除去されるまで、それと接触したままであるように設計される。他の形態は、柔らかく、硬く又は圧搾可能であり得るゲルであり得る。スプレーは、手動ポンプ式指作動式噴霧器から送達される非加圧エアロゾルであり得るか、又は化学的若しくはガス状噴射剤が使用されるムース、スプレー若しくは泡形成組成物などの加圧エアロゾルであり得る。
【0086】
本明細書に開示される天然油系ワセリンを使用して調製された製剤は、概して審美的に魅力的であると考えられる白色又はペールホワイト色を有する。場合によっては、本開示の製剤は、着色された最終製品を作製するために更に処理されてもよい。そのような場合、白色は、最終的な色に影響を及ぼすことなく追加の顔料を見せるため、有益である。
【0087】
本開示の天然油系ワセリンを含有する製剤は、特定の用途の必要性に合わせて粘度を調整するために、任意選択で追加の成分を含有してもよい。当業者であれば、以下を含むがこれらに限定されない、この目的に適合するために利用可能な添加剤の範囲を容易に理解するであろう:スクレロチウムガム、キサンタンガム、カラギーナン、ジェランガム、天然デンプン、加工デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、コハク酸デンプンアルミニウム、リン酸ヒドロキシプロピルデンプン、ペクチン、クエン酸カルシウム、塩NaCl、KCl、アクリレートポリマー、アクリレート系コポリマー、カルボマー、セルロース、シトラス繊維及び誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ソルビトールなどのポリオール、並びにそれらの混合物。これらの添加剤は、製剤に質感、粘度、又は構造を加えるために利用され得る。当業者は、これらの成分が、特定の製剤の必要性に応じて様々な濃度で存在してもよく、特定の製剤の主要な要素であってもよいことを理解するであろう。
【0088】
本開示の天然油系ワセリンを含有する製剤は、任意選択で、保存料、塩、ビタミン、乳化剤、品質改良剤、栄養素、微量栄養素、糖、タンパク質、多糖類、ポリオール、グルコース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、pH調整剤、皮膚軟化剤、染料、顔料、皮膚活性物質、油、水素化油、ワックス又はシリコーンからなる群から選択される少なくとも1つの更なる成分を含有してもよい。
【0089】
本開示の天然油系ワセリンを含有する製剤は、広範囲のpH値を有し得る。本開示の態様は、3~11、又は4~8、又は4~7のpHを有する製剤を含む。
【0090】
本開示の製剤は、任意の有用な量の本開示の天然油系ワセリンを含有してもよい。製剤は、好ましくは、最終製剤中に1重量%~100重量%、50重量%~99重量%、75重量%~95重量%、20重量%~90重量%、20重量%~80重量%、1重量%~30重量%、2重量%~20重量%、3重量%~5重量%又は1重量%~8重量%の天然油系ワセリンを含有する。例えば、天然油系ワセリンは、Vasolineに取って代わる皮膚保護剤又は軟膏として製剤の90%~100%であり得る。保湿剤又は化粧品着色剤などのリップケア製品において、天然油系ワセリンは、製剤の5%~70%であり得る。皮膚クリーム、フェイシャルクリーム、又はナイトクリームでは、天然油系ワセリンは、製剤の5%~30%であり得る。ボディローションにおいて、天然油系ワセリンは、製剤の10%~30%であり得る。練り歯磨きなどの口腔ケア製品において、天然油系ワセリンは、製剤の1%~50%であり得る。ボディウォッシュ又は液体石鹸において、天然油系ワセリンは、製剤の3%~10%であり得る。硬質ヘアスタイリング製品において、天然油系ワセリンは、製剤の20%~50%であり得る。スプレー又はローションなどのより柔らかいヘアスタイリング製剤において、天然油系ワセリンは、製剤の1%~5%であり得る。ヘアコンディショナ、シャンプー、又は2 in 1シャンプー/コンディショナ製剤において、天然油系ワセリンは、製剤の1%~5%であり得る。ヘアマスク用途において、天然油系ワセリンは、製剤の2%~5%であり得る。当業者は、所望の結果を達成するために包含のレベルを調整することができるであろう。
【0091】
本明細書に開示される天然油系ワセリンは、皮膚洗浄剤及び湿潤皮膚トリートメントの調製において特に有用である。そのような技術の例は、以下の公開特許文献に見出すことができる。米国特許第9943468号、米国特許出願公開第20170049673号、特許第5759389号、米国特許第8263538号、米国特許第8134054号、及び米国特許第6716440号。
【0092】
本明細書に開示される天然油系ワセリンは、保湿ローションの調製において特に有用である。そのような技術の例は、以下の公開特許文献に見出すことができる。米国特許第8840911号及び欧州特許第322088号。
【0093】
本明細書に開示される天然油系ワセリンは、口腔ケア及び歯のホワイトニングの調製において特に有用である。そのような技術の例は、以下の公開特許文献に見出すことができる。米国特許第3936194号
【0094】
本明細書に開示される天然油系ワセリンは、日焼け止め製剤の調製において特に有用である。そのような技術の例は、以下の公開特許文献に見出すことができる。米国特許第10375952号
【0095】
本明細書に開示される天然油系ワセリンは、シャンプーの調製において特に有用である。そのような技術の例は、以下の公開特許文献に見出すことができる。特許第5694187号
【0096】
本明細書に開示される天然油系ワセリンは、化粧品の調製において、及び活性成分の担体として特に有用である。そのような技術の例は、以下の公開特許文献に見出すことができる。米国特許第9668957号及び米国特許第9682021号。
【0097】
本明細書に開示される天然油系ワセリンは、リップバーム及び化粧用リップスティックの調製において特に有用である。そのような技術の例は、以下の公開特許文献に見出すことができる。米国特許第7776347号
【0098】
全ての引用された特許文献は、当該技術分野の現在の状態のいくつかの態様を示しており、許容される範囲で参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
いくつかの態様では、天然油系ワセリンを含むパーソナル製品は、ボディウォッシュ、洗顔料、シャンプー、コンディショナ、コーミングクリーム、リーブオンコンディショナ、皮膚保湿剤、リップ保湿剤、又は化粧品である。
【0100】
別の実施形態では、組成物は、約55重量%~約85重量%の完全水素化ヒマシ油、約15重量%~約45重量%のC8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸のエステル化生成物である。
【0101】
別の実施形態では、組成物は、約55重量%~約85重量%の完全水素化ヒマシ油、約15重量%~約45重量%のC8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸、及び約5重量%~約15重量%のヒマシ油以外の水素化天然油のエステル化生成物である。
【0102】
天然油系ワセリンについて本明細書に開示された2つ以上の特徴のあらゆる組み合わせが、本発明者らによって具体的に企図され、想定されている。したがって、本発明者らは、複数のヒドロキシル含有脂肪酸鎖及びC8~C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸を含有するトリグリセリド構成成分について開示された単一点及び範囲のあらゆる組み合わせ、並びに以下のパラメータ:滴融点、円錐針入度、凝固点、ヒドロキシル価、酸価、ヨウ素価、及び多分散性指数の値又は範囲のうちの1つ以上の各々及び全ての組み合わせを考え、それに応じて開示した。
【実施例
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
HCO、ステアリン酸、及びHSOの量は、反応混合物の重量%である。
【0105】
実施例1:
以下の化学エステル化法を実施して、実施例1A及び1Bを作製した。表2に記載されている全ての構成成分又は油は、窒素スパージ下で反応容器に添加する前に、予め融解させ、80℃に加熱した。撹拌機を作動させて内容物を混合した。次リン酸を0.2%用量で添加し、メタンスルホン酸を0.1%用量で添加した。全ての成分を添加し、十分に混合して温度を約160℃に上昇させた。酸価を反応全体にわたって監視し、AVが20未満になるか、又はAVの変化が1時間当たり1単位未満になると、反応容器を真空にして約30トルの圧力を達成する。5以下の酸価が達成されるまで、反応温度を維持した。次いで、反応物を約85℃に冷却し、水酸化カルシウム溶液を添加して、わずかに過剰の触媒を中和した。混合物を70℃に冷却し、Trisyl(登録商標)シリカを1%で反応に添加し、触媒から塩を吸収させた。次いで、生成物を濾過して、塩及び粘土混合物並びに他の不純物を除去した。
【0106】
実施例2:
実施例2A~2Dの調製においてエステル交換を意図的に制限するために、以下の化学エステル化法を行った。表2に記載されている全ての構成成分又は油は、窒素スパージ下で反応容器に添加する前に、予め溶融させ、80℃に加熱した後、反応中に生成物が酸化しないようにした。撹拌機を作動させて内容物を混合した。次リン酸を0.2%用量で添加した。全ての成分を添加し、十分に混合したら、温度を約180℃に上昇させ、反応容器に真空を適用して、約20~30トルの圧力を達成した。酸価は、反応の間中、監視する。20以下の酸価が達成されるまで、反応温度及び真空を維持した。次いで、反応物を約85℃に冷却し、ソックフィルターを通して濾過して、任意の微粒子を除去した。
【0107】
実施例3:
【0108】
【表4】
HCO及びステアリン酸の量は、反応混合物の重量%である。
**値が劇的に変化しない本質的に完了するか又は平衡するまで反応を行う。
***特定のAVが達成されるまで反応を行う。
【0109】
実施例3A~Kは、表2に示すように調製した。それらは、異なるスケールで、異なる時間にわたって実行され、実施例1及び2に記載されるような触媒を含まないか又は酸触媒系のいずれかを利用した。平衡に達する安定な状態になるまで反応を続けるか、又は18未満の酸価に達するまで反応を行った。
【0110】
実施例4:
【0111】
【表5】
HCO及びステアリン酸の量は、反応混合物の重量%である。
【0112】
実施例4A~Fは、表4に示すように調製した。それらは、異なるスケールで、異なる時間にわたって実行され、実施例1及び2に記載されるような触媒を含まないか又は酸触媒系のいずれかを利用した。加えて、真空の程度及びタイミングを変化させた。反応は、典型的には、平衡に達する安定状態まで、又は追加の期間にわたって継続させた。示されるように反応条件を変化させることによって、当業者は、ヒドロキシ脂肪酸のエステル化対トリグリセリドのエステル交換の優先度を管理することができる。
【0113】
実施例5:
実施例5は、以下の表に示すように調製した。それらは、ラメラ及びシリコーンフリーヘアコンディショナへの本開示の組成物の包含の例を示す。
【0114】
【表6】
【0115】
各相の成分を別々に混合し、添加された相を高せん断混合しながら順次一緒に添加する。当業者は、この製剤を調製するために既知の技術及び装置を容易に使用することができるであろう。当業者はまた、個々の成分をその範囲内で調整して(又は追加成分を添加して)、それらの特に所望の質感を得ることができる。
【0116】
実施例6:
実施例6は、パウダーブラッシュ化粧品の製剤である。
【0117】
【表7】
【0118】
実施例7:
実施例7は、クリーム又はローションの製剤である。
【0119】
【表8】
【0120】
各相の成分を別々に混合し、高せん断混合しながら、相を順次一緒に加える。当業者は、この製剤を調製するために既知の技術及び装置を容易に使用することができるであろう。当業者はまた、個々の成分をその範囲内で調整して(又は追加成分を添加して)、それらの特に所望の質感を得ることができる。
【0121】
実施例8:
実施例8はボディウォッシュ又はシャンプーの製剤である。
【0122】
【表9】
【0123】
各相の成分を別々に混合し、高せん断混合で順次一緒に添加する。当業者は、この製剤を調製するために既知の技術及び装置を容易に使用することができるであろう。当業者はまた、個々の成分をその範囲内で調整して(又は追加成分を添加して)、それらの特に所望の質感を得ることができる。
【0124】
実施例9:
実施例9は、リップバームの製剤である。
【0125】
【表10】
【0126】
製造プロセス-全ての成分を加え、混合を開始し、85℃に加熱する。全てのワックスが溶融し、全てが均一であることを確認する。全てが均一になり、全ての成分が添加されたら、リップバームの温度が80~85℃であることを確認する。80~85℃になったら、沈降及び層が生じるのを回避するために、リップバームを構成成分中に比較的迅速に注ぐ。沈殿及び凹みを避けるために、確実に最上部まで注ぐ。
【国際調査報告】