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特表2024-538381天然油系のワセリン及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】天然油系のワセリン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20241010BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20241010BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/92
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529147
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-15
(86)【国際出願番号】 US2022079949
(87)【国際公開番号】W WO2023091937
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/264,211
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/367,339
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】カース、トッド エル.
(72)【発明者】
【氏名】ローランド、セリーナ テス
(72)【発明者】
【氏名】ツゥオ、イジュン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC421
4C083BB12
4C083CC02
4C083CC31
4C083DD22
4C083EE12
4C083EE29
4C083FF01
(57)【要約】
本開示は、トリグリセリド成分を含む組成物であって、トリグリセリド成分が、トリグリセリドの混合物を含み、トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、エステル含有脂肪酸のエステルが、C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、組成物が、30℃~70℃の滴下融点及び/又は合わせて0.5~10パーセントのモノグリセリド及びジグリセリドの含有量を有する、組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリグリセリド成分を含む組成物であって、前記トリグリセリド成分が、トリグリセリドの混合物を含み、前記トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、前記エステル含有脂肪酸のエステルが、C8-C22の分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、前記組成物が、AOCS標準手順Cc18-80によって測定される30℃~70℃の滴下融点を有する、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、合わせて0.5%~10%のモノグリセリド及びジグリセリドを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記個々のトリグリセリドのいくつかが、1つ超のエステル含有脂肪酸を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記トリグリセリドの混合物が、20%~70%のエステル含有脂肪酸を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルが、ステアリン酸及びパルミチン酸を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルが、ステアリン酸及びパルミチン酸から本質的になる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
50重量パーセント~100重量パーセントの前記トリグリセリド成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
0.5~20の酸価を有する、請求項1に記載の天然油系のワセリン。
【請求項9】
10~90のヒドロキシル価を有する、請求項1に記載の天然油系のワセリン。
【請求項10】
前記天然油系のワセリンが、0.5~5の酸価を有する、請求項4に記載の天然油系のワセリン。
【請求項11】
前記トリグリセリド成分が、ヒマシ油又は水素化ヒマシ油に由来する、請求項4に記載の天然油系のワセリン。
【請求項12】
トリグリセリド成分を含む組成物であって、前記トリグリセリド成分が、トリグリセリドの混合物を含み、前記トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、前記エステル含有脂肪酸のエステルが、C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、前記組成物が、合わせて0.5%~10%のモノグリセリド及びジグリセリドを含有する、組成物。
【請求項13】
前記個々のトリグリセリドのいくつかが、1つ超のエステル含有脂肪酸を含有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記トリグリセリドの混合物が、20%~70%のエステル含有脂肪酸を含有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルが、ステアリン酸及びパルミチン酸を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルが、ステアリン酸及びパルミチン酸から本質的になる、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
50重量パーセント~100重量パーセントの前記トリグリセリド成分を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
0.5~20の酸価を有する、請求項12に記載の天然油系のワセリン。
【請求項19】
10~90のヒドロキシル価を有する、請求項12に記載の天然油系のワセリン。
【請求項20】
前記トリグリセリド成分が、ヒマシ油又は水素化ヒマシ油に由来する、請求項14に記載の天然油系のワセリン。
【請求項21】
トリグリセリド成分を含む組成物であって、前記トリグリセリド成分が、トリグリセリドの混合物を含み、前記トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、前記エステル含有脂肪酸のエステルが、C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、前記組成物が、
a)合わせて0.5%~10%のモノグリセリド及びジグリセリドを含有し、b)AOCS標準手順Cc18-80によって測定される30℃~70℃の滴下融点を有し、c)10~90のヒドロキシル価、0.5~20の酸価を有し、前記C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルが、ステアリン酸及びパルミチン酸を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年6月30日に出願された米国特許仮出願第63/367,339号、及び2021年11月17日に出願された米国特許仮出願第63/264,211号の利益を主張し、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、天然油系のワセリン組成物、その製造方法、及びパーソナルケア製品におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ワセリンは、石油精製の副生成物である。融点が体温に近いため、ワセリンは、適用時に軟化し、適用された領域の周囲に閉塞性フィルムを形成し、したがって、皮膚の自然水分の蒸発、及び感染を引き起こす可能性がある異物又は微生物に対する、有効なバリアを作り出す。ワセリンは、無臭かつ無色であり、本質的に長い貯蔵寿命を有するが、容易に生分解されない。ワセリンは、単一の実体ではなく、むしろ多様な構造を有する有機化合物の複雑な混合物から構成される。この成分の多様性は、ワセリンが広範囲の温度にわたって独特のレオロジー特性を有することを可能にする。例えば、ワセリンは、有機化合物において伝統的に考えられているような明確な融点を有さず、むしろ、ある温度範囲にわたって融解し、ほぼ同じ温度範囲で凝固する。これらの特性により、ワセリンは、スキンケア製品及び化粧品において有用かつ一般的な成分となる。これは、スキンクリーム、ローション、ヘアケア製品、及び化粧品などの多種多様なパーソナルケア製品の成分として使用されることが多い。主要な利点は、ワセリンの閉塞性であり、皮膚の水分補給を保護又は保持するためのバリアを作り出すことができる。したがって、それは、皮膚、毛髪、及び唇を保護するために、又は損傷した皮膚若しくは唇の治癒を補助するために一般に使用される。これは、商標名Vaseline(登録商標)によって一般に知られている。
【0004】
適切に精製された場合、ワセリンは、既知の健康上の懸念を有さない。しかしながら、不完全な精製履歴では、ワセリンは、多環式芳香族炭化水素、すなわちPAHが混入している可能性がある。PAHは、有機材料の燃焼の副生成物であり、通常、その親油性のために曝露時に脂肪中に貯蔵される。
【0005】
ワセリンに代わるバイオ系の代替物を開発するために、多くの努力がなされてきた。これらの努力のほとんどは、高融点ワックス、水素化油、又は他の天然油のブレンドを作り出すことに関する。ブレンドすることにより、ワセリンと同様の感触を有する製品を作り出すことが可能であり得るが、これらの製品は共通の欠点を有する。それらは単純なブレンドであるので、材料のレオロジーは、適用温度の範囲を通じてワセリンと一致しない。これらの材料は、低温溶融成分が最初に溶融する一方で、高温溶融成分が、温度がより高い点に達するまで変化しないままである、多モードの溶融プロファイルを有し得る。別の言い方をすれば、これらの代替製品は、ある温度範囲にわたって滑らかな融解曲線又は滑らかなレオロジー変化を有さない。むしろ、それらは、二段階又は多段階の融解プロファイルを有するため、多様な温度にわたってワセリンの性能を模倣しない。加えて、これらのブレンドは、天然油中の著しく高い不飽和度の存在を表す、はるかに高いヨウ素価(IV)を有し得る。この不飽和度は、経時的な酸化安定性を低いものとするため、望ましくない。最後に、これらの代替生成物はまた、比較的高いヒドロキシル価を有し得る。これらの高いヒドロキシル価を有する製品は、水酸化物基の親水性が製品処方を妨害する追加の界面活性剤効果を作り出すため、パーソナルケア用途に処方するケア用途に配合することが困難となり得る。
【0006】
したがって、ワセリンの質感、外観、形態、レオロジー、安定性、配合及び界面活性特性をより厳密に模倣する改善された天然系の材料を有することは有利であろう。このような材料がより容易に又は完全に生分解性であり、天然油などの再生可能な原材料に由来すれば、環境的かつ経済的に望ましくあるだろう。
【発明の概要】
【0007】
先行技術の成分のブレンドとは対照的に、本明細書に開示される組成物は、異なる分子量及びレオロジー特性を有する成分の混合物を含有することによって、石油系のワセリンをより厳密に模倣する。ブレンドによってかかる製品を作り出すことは、非常に時間及び費用がかかる。
【0008】
本開示は、トリグリセリド成分を含む組成物であって、トリグリセリド成分が、トリグリセリドの混合物を含み、トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、エステル含有脂肪酸のエステルが、C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、組成物が、AOCS標準手順Cc18-80によって測定される30℃~70℃の滴下融点を有する、組成物に関する。
【0009】
本開示は、トリグリセリド成分を含む組成物であって、トリグリセリド成分が、トリグリセリドの混合物を含み、トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、エステル含有脂肪酸のエステルが、C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、組成物が、合わせて10%未満のモノグリセリド及びジグリセリドを有する、組成物を提供する。
【0010】
本開示は、トリグリセリド成分を含む組成物であって、トリグリセリド成分が、トリグリセリドの混合物を含み、トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、エステル含有脂肪酸のエステルが、C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、組成物が、a)合わせて10%未満のモノグリセリド及びジグリセリドを含有し、かつ、b)AOCS標準手順Cc18-80によって測定される30℃~70℃の滴下融点を有する、組成物を提供する。
【0011】
本開示は、また、天然油系のワセリン組成物の製造方法を提供する。この方法は、(i)C8-C22脂肪酸と、1つ以上のヒドロキシル含有脂肪酸鎖を含有するトリグリセリド成分と、任意選択で水素化天然油とを混合することと、(ii)混合物を(任意選択で酸触媒の存在下で)加熱することと、(iii)加熱した混合物を周囲圧力未満の圧力に曝露して生成物を得ることであって、1つ以上のヒドロキシル含有脂肪酸鎖が、C8-C22脂肪酸でエステル化されており、組成物が、a)合わせて10%未満のモノグリセリド及びジグリセリドを含有し、かつ/又はb)AOCS標準手順Cc18-80によって測定される滴下融点が30~70℃である、得ることと、(iii)天然系のワセリン組成物を単離することと、を含む。
【0012】
本明細書に開示される天然油系のワセリンの低IVは、改善された酸化安定性、並びに対応して改善された貯蔵寿命及び品質をもたらす。より低いヒドロキシル価は、本明細書に開示される天然油系のワセリンが、パーソナルケア配合物においてより効率的に利用される能力を改善するものである。加えて、本明細書に開示される天然油系のワセリンの構造は、驚くべきことに生分解性である。
【0013】
本明細書に記載の天然油系のワセリン組成物は、工業用途及びパーソナルケア製品に有用である。具体的には、パーソナルケア製品の場合、ワセリン代替物は、魅力的な外観及び感触を提供すると同時に、製造の容易さを改善することができる特性を有することが望ましい。
【0014】
本開示の態様によって、利点(そのうちのいくつかは予想外である)が達成される。例えば、本明細書に記載される様々な組成物は、有利には、皮膚上に均等かつ均一に広がる。それらは、ある範囲の温度にわたってはるかに一貫したレオロジーを有し、石油系のワセリンの特性をより厳密に模倣する。本明細書に開示される天然油系のワセリン組成物は、閉塞効果、並びに皮膚をコーティングして水分損失から保護する能力を有する。
【0015】
本開示の組成物はまた、改善された製造特性を有し、シャンプー、コンディショナー、クリーム、ローション、サンケア、ヘアケア、ヘアスタイリング、ボディウォッシュなどのパーソナルケア製品に組み込むことができる。
【0016】
本開示の組成物はまた、先行技術を超える明確な利点を有する。いくつかの用途では、最終製品への組み込みを容易にするために、組成物が低いヒドロキシル価を有することが有利であり得る。組成物中に存在するMAG及びDAGの量を制限することは、ヒドロキシル価に影響を与え、最終製品への配合を容易にする。
【0017】
別個の態様では、特定の製造プロセス条件は、MAG、DAG、及び関連する遊離脂肪酸の生成を制限する。遊離脂肪酸生成の制限は、特にヒマシ油又は水素化ヒマシ油が反応において利用される場合、反応の更なる生成物としてのヒドロキシステアリン酸のオリゴマーの生成を制限する。これらの化合物の任意の有意な形成は、望ましくないレオロジー、対応するMAG及びDAGSの生成、並びに生分解性に対する抵抗性に寄与する。
【0018】
更なる利点として、本明細書に記載の様々な組成物は、天然油系であり、したがって、生分解性、再生可能、かつ環境に優しい成分を含むという利点を有する。例えば、本開示の天然油系のワセリン組成物は、天然油から調製することができ、更に上述の利点を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、開示される主題の特定の態様について詳細に言及する。開示される主題は、列挙される特許請求の範囲と共に説明されるが、例示される主題は、特許請求の範囲を開示される主題に限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。特定の実施形態と共に説明される一態様は、必ずしもその実施形態に限定されず、任意の他の実施形態と共に実施され得る。
【0020】
本明細書全体を通して、範囲形式で表される値は、範囲の限度として明示的に列挙された数値を含むだけでなく、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲も含むように、柔軟に解釈されるべきである。例えば、「約0.1%~約5%」又は「約0.1%~5%」の範囲は、約0.1%~約5%だけでなく、示された範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%及び4%)及び部分範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むと解釈されるべきである。「約X~Y」という記述は、別段示されない限り、「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様に、「約X、Y、又は約Z」という記述は、別段示されない限り、「約X、約Y、又は約Z」と同じ意味を有する。
【0021】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」、並びに要素を説明する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)同様の指示対象は、文脈が明確に別様に指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「置換基」への言及は、単一の置換基に加えて2つ以上の置換基などを包含する。本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に否定されない限り、単数形の任意の用語は、その複数形の対応語を含んでもよく、逆もまた同様であることが理解される。
【0022】
用語「又は」は、別段示されない限り、非排他的な「又は」を指すために使用される。「A及びBのうちの少なくとも1つ」という記述は、「A、B、又はA及びB」と同じ意味を有する。
【0023】
加えて、本明細書で用いられ、別段定義されない表現又は用語は、説明のみを目的とするものであり、限定を目的とするものではないことを理解されたい。セクション見出しの任意の使用は、本明細書の読解を支援するように意図されており、限定として解釈されるべきではなく、セクション見出しに関連する情報は、その特定のセクション内で起こるか、又はそのセクション外で起こる場合もある。法規に違反しない限りにおいて、本明細書で参照される任意の刊行物、特許、及び特許文献は、参照により個々に組み込まれているかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書とこのように参照により組み込まれるそれらの文書との間で使用が一貫していない場合、組み込まれる参考文献における使用は、本明細書のものを補足するものであると解釈されるべきであり、相容れない矛盾の場合、本明細書における使用を優先する。
【0024】
本明細書で使用するとき、以下の用語は、そうではないことが明示的に記載されていない限り、以下の意味を有する。
【0025】
本明細書で使用するとき、用語「例えば(for example)」、「例えば(for instance)」、「など」、又は「含む」という用語は、より全般的な主題を更に明確にする例を導入することを意味する。特に断らない限り、これらの例は、本開示において例証される用途を理解するための補助としてのみ提供され、いかなる方式でも限定することを意味するものではない。
【0026】
本明細書に記載の方法では、時間的又は動作的な順序が明示的に列挙されている場合を除いて、本開示の原理から逸脱することなくいかなる順序で行為を実行してもよい。更に、明示的な請求項の文言が、別個に実行され得ることが列挙されない限り、特定の行為を並行して実行することができる。例えば、Xを行う特許請求された行為及びYを行う特許請求された行為を単一の動作内で同時に実施することができ、結果として得られるプロセスは、特許請求されるプロセスの逐語的な範囲内に入る。
【0027】
本明細書で使用するとき、用語「約」は、例えば、指定の値又は指定の範囲の限度の±10%以内、5%以内、又は1%以内の値又は範囲内のばらつきの程度を許容することができ、正確な指定の値又は範囲を含む。
【0028】
本明細書で使用される「いくつか」という用語は、ある程度の変動性を許容することができる。これは、群のサブセットが特定の品質又は態様を有することを意味する。それは、群の2つ以上のメンバーが特定の品質又は態様を有することを意味することが意図されるが、群の全てのメンバーがかかる特定の品質又は態様を有することを意味することは意図されない。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「実質的に」は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%若しくは少なくとも約99.999%以上、若しくは100%のような大部分又はほとんどを指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「天然油」は、植物又は動物資源に由来する油を指し得る。用語「天然油」は、別途記載のない限り、天然油誘導体を含む。天然油の例としては、植物油、藻油、動物脂、トール油、これらの油の誘導体、これらの油の任意の組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。植物油の代表的な非限定例としては、キャノーラ油、菜種油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、アマニ油、パーム核油、桐油、ジャトロファ油、カラシ油、カメリナ油、ペニークレス油、大麻油、藻油、ホホバ油、及びヒマシ油が挙げられる。動物脂の代表的な非限定例としては、ラード、タロー、家禽脂、黄色油脂、及び魚油が挙げられる。トール油は、木材パルプ製造の副生成物である。いくつかの態様では、天然油は、精製、漂白、及び/又は脱臭されてもよい。いくつかの態様では、天然油は、個々に又はこれらの混合物として存在する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「水素化」又は「水素化天然油」という用語は、天然油の部分的、完全、又は実質的に完全な水素化を指す。天然油の部分的又は実質的に完全な水素化は、当該技術分野において周知である。当業者であれば、水素化中に要する長さにかかわらず、いくらかの不飽和が任意の水素化油中に残る可能性が非常に高いため、天然油を完全に水素化することは困難かつ非実用的であることを理解するであろう。油を完全に水素化する努力は、経済的な非効率性及び油の劣化につながる。水素化の程度は、典型的には、生成物の残留ヨウ素価を参照することによって反映される。したがって、市販されている、又は「完全」水素化されていると言及される多くの油は、この収穫逓減点まで処理されており、依然として若干の残留ヨウ素価を有する。多くの水素化天然油は市場で購入することができ、様々な商業的供給源から入手可能である。
【0032】
本明細書で使用するとき、「天然油系」組成物とは、組成物が、主に、実質的に又は全体的に天然油及び天然油誘導体に由来する油及び脂肪酸を含有することを意味する。天然油系組成物は、様々な態様では、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、99.9%、99.99%、又は約100%天然油若しくは水素化天然油を含有し得る。
【0033】
「アシルグリセリド」は、エステル結合を介して連結される少なくとも1つの脂肪酸残基を有する少なくとも1つのグリセロール部分を有する分子を指す。例えば、アシルグリセリドは、モノアシルグリセリド、ジアシルグリセリド、トリアシルグリセリドを含み得る。アシルグリセリドという群は、追加の記述用語によって更に絞り込むことができ、アシルグリセリドの特定のサブセットを明示的に除くか又は含むように修飾することができる。例えば、モノグリセリド及びジグリセリドという語句は、MAG(monoacylglyceride、モノアシルグリセリド)及びDAG(diacylglyceride、ジアシルグリセリド)を指し、一方、非MAG/非DAGアシルグリセリドという語句は、MAG及びDAGを除くアシルグリセリドの群を指す。
【0034】
「モノアシルグリセリド」は、エステル結合を介して連結される単一の脂肪酸残基を有するグリセロール部分を有する分子を指す。用語「モノアシルグリセロール」、「モノアシルグリセリド」、「モノグリセリド」、及び「MAG」は、本明細書において互換的に使用される。モノアシルグリセリドとしては、2-アシルグリセリド及び1-アシルグリセリドが挙げられる。
【0035】
「ジグリセリド」は、エステル結合を介して連結された2つの脂肪酸残基を有するグリセロール部分を有する分子を指す。用語「ジアシルグリセロール」、「ジアシルグリセリド」、「ジグリセリド」、及び「DAG」は、本明細書において互換的に使用される。ジアシルグリセリドとしては、1,2-ジアシルグリセリド及び1,3-ジアシルグリセリドが挙げられる。
【0036】
「トリアシルグリセリド」は、エステル結合を介して3つの脂肪酸残基に連結されるグリセロール部分を有する分子を指す。用語「トリアシルグリセロール」、「トリアシルグリセリド」、「トリグリセリド」、及び「TAG」は、本明細書において互換的に使用される。
【0037】
いくつかの態様では、トリグリセリドは、C8-C22脂肪酸から構成される。更なる態様では、トリグリセリドは、ヒドロキシ含有脂肪酸を含む。トリグリセリドのヒドロキシ含有脂肪酸は、エステル化によって更に修飾され得る。ヒドロキシ含有脂肪酸は、遊離脂肪酸と反応してエステル結合を作り出すことができ、したがって対応するエステル含有脂肪酸を作り出すことができる。
【0038】
いくつかの態様では、トリグリセリドは、エステル含有脂肪酸を含む。いくつかの態様では、ヒドロキシ含有脂肪酸の20パーセント超がエステル化されている。いくつかの態様では、ヒドロキシ含有脂肪酸の30パーセント超がエステル化されている。いくつかの態様では、ヒドロキシ含有脂肪酸の40パーセント超がエステル化されている。いくつかの態様では、ヒドロキシ含有脂肪酸の50パーセント超がエステル化されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の20パーセント超がC8-C22脂肪酸エステルで置換されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の30パーセント超がC8-C22脂肪酸エステルで置換されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の40パーセント超がC8-C22脂肪酸エステルで置換されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の50パーセント超がC8-C22脂肪酸エステルで置換されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の20パーセント~90パーセントがC8-C22脂肪酸エステルで置換されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の20パーセント~70パーセントがC8-C22脂肪酸エステルで置換されている。いくつかの態様では、トリグリセリド脂肪酸の30パーセント~50パーセントがC8-C22脂肪酸エステルで置換されている。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「脂肪酸」は、炭化水素鎖及び末端カルボン酸基を含む分子を指し得る。本明細書で使用するとき、脂肪酸のカルボン酸基は、例えば脂肪酸がグリセリド又は別の分子に組み込まれるときに生じるように修飾又はエステル化されてもよい(例えば、COOR(式中、Rは、例えば炭化水素鎖を指す))。代替的に、カルボン酸基は、遊離脂肪酸又は塩の形態にあってもよい(すなわち、COO’’又はCOOH)。脂肪酸の「尾部」又は炭化水素鎖はまた、それがエステル化されているか遊離であるかによって、脂肪酸鎖、脂肪酸側鎖、又は脂肪鎖と称され得る。脂肪酸の炭化水素鎖は、典型的には、飽和又は不飽和脂肪族基である。N個の炭素数を有する脂肪酸は、典型的には、N-1個の炭素を有する脂肪酸側鎖を有する。
【0040】
本出願はまた、脂肪酸の修飾形態にも関し、したがって、脂肪酸という用語は、記載されるように脂肪酸が置換されているか、又は別の方法で修飾されている状況で使用され得る。例えば、様々な態様では、脂肪酸は、別のアルキル鎖(イソステアリン酸の場合のように、又はヒマシ油中に存在するリシノール酸の場合のようにヒドロキシ基)で置換され得る。
【0041】
脂肪酸及び/又はそれらを含有する天然油は、本明細書に記載されるように水素化され得る。
【0042】
特定の種類の脂肪酸の濃度は、油の総脂肪酸含有量のパーセントで本明細書において提供され得る。特に断りのない限り、このようなパーセントは、当業者に周知の方法により実験的に計算された遊離脂肪酸及びエステル化脂肪酸を含む全脂肪酸に基づく重量パーセントである。
【0043】
「飽和」脂肪酸は、炭化水素鎖に炭素-炭素二重結合を全く含有しない脂肪酸である。「不飽和」脂肪酸は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含有する。「多価不飽和」脂肪酸は、2つ以上のこのような炭素-炭素二重結合を含有し、他方、「一不飽和」脂肪酸は、1つの炭素-炭素二重結合のみを含有する。炭素-炭素二重結合は、シス及びトランスで示される2つの立体配置のうちの1つであってもよい。天然に生じる不飽和脂肪酸は、概して「シス」形態にある。
【0044】
脂肪酸の非限定的な例としては、C8、C10、C12、C14、C16(例えば、C16:0、C16:1)、C18(例えば、C18:0、C18:1、C18:2、C18:3、C18:4)、C20及びC22脂肪酸が挙げられる。例えば、脂肪酸は、カプリル酸(8:0)、カプリン酸(10:0)、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン若しくはイソステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、及びリノレン(18:3)酸であり得る。
【0045】
用語「C8-C22脂肪酸」は、8~22個の炭素を含有する脂肪酸を意味する。C8-C22脂肪酸は、直鎖又は分岐鎖であってもよく、C1-C3アルキル基、ヒドロキシル基、又はエステル基などの追加の置換基で置換されていてもよい。いくつかの態様では、C8-C22脂肪酸は、直鎖を有する。いくつかの態様では、C8-C22脂肪酸は、C16又はC18脂肪酸である。いくつかの態様では、C8-C22脂肪酸は、ステアリン酸を含む。いくつかの態様では、C8-C22脂肪酸は、40%超又は70%超のステアリン酸を含む。いくつかの態様では、C8-C22脂肪酸は、40%~95%のステアリン酸を含む。
【0046】
C8-C22脂肪酸は、C8-C22脂肪酸の混合物であってもよい。ステアリン酸は、様々な純度で市販されている。これは、90%のC18(ステアリン酸)含有を意味する1890として販売され得る。その残りは典型的には他の脂肪酸、主にC16から構成される。代替的に、ステアリン酸は1845(又は1655)として販売することができ、これは、約45%のステアリン酸及び55%のパルミチン酸を意味する。いくつかの態様では、C8-C22脂肪酸は、ステアリン酸及びパルミチン酸から本質的になる。
【0047】
任意の態様では、C1-C3アルキル置換基は、メチル、エチル、又はプロピルから選択され得る。任意の実施形態では、C1-C3アルキル置換基はメチルであり得る。本明細書に記載の任意の実施形態では、1つ以上のC1-C3アルキル置換基で置換されたC8-C22脂肪酸は、イソパルミチン酸、イソミリスチン酸、イソステアリン酸、19-メチルアラキドン酸、イソラウリン酸であり得る。
【0048】
「イソステアリン酸」という用語は、本明細書で使用される場合、化学物質16-メチルヘプタデカン酸を指し、これは、16位でメチルによって置換されたヘプタデカン酸であるメチル分岐脂肪酸である。イソステアリン酸は、オレイン酸と天然鉱物触媒との反応によって製造することができる、軽度に分岐した液体脂肪酸である。イソステアリン酸は、安定性を有する液体脂肪酸を必要とする用途において、すなわち、潤滑剤の場合の熱安定性、化粧品配合物のための臭気安定性、及び長い貯蔵寿命要件を有する製品のための酸化安定性、の用途において使用される。イソステアリン酸の分岐構造はまた、その分散力を増強し、油及び溶媒中の顔料及び鉱物粒子の安定化のために化粧品及び工業用途において使用される。イソステアリン酸は周知であり、市販されている。本明細書で使用される場合、イソステアリン酸という用語は、実質的に全てのイソステアリン酸を含むが、100%純粋である必要はない組成物を指す。イソステアリン酸という用語はまた、具体的には、メチル置換基が脂肪酸鎖上の様々な位置に存在するイソステアリン酸の全ての潜在的異性体を含む。
【0049】
油の脂肪酸組成は、当該技術分野において周知の方法によって決定することができる。米国油化学会(The American Oil Chemist’s Society、AOCS)は、植物油に対して実施される多種多様な試験のための分析方法を維持管理している。遊離脂肪酸を生成するための油成分の加水分解、遊離脂肪酸のメチルエステルへの変換、及び気液クロマトグラフィ(gas-liquid chromatography、GLC)による分析が、油サンプルの脂肪酸組成を決定するための一般的に受け入れられている標準的な方法である。AOCS手順Ce1-62に、使用される手順が記載されている。
【0050】
用語「エステル化又はエステル化された」は、以下を含むエステル結合の生成を意味する:1)アルコールと酸との脱水反応、2)エステル交換、すなわち新しいエステルを形成するためのアルコールとエステルとの反応、又は3)エステル交換、すなわちトリアシルグリセロール構造内の脂肪酸の転位。
【0051】
「滴点(drop point又はdropping point)」は、広義には、所与の標準化試験の条件下で測定したときの、材料(例えばワックス)が軟化し、十分に流動する流体になる温度を指す。本明細書で使用するとき、滴点は、AOCS標準手順Cc18-80によって決定される。(Official Methods and Recommended Practices of the American Oil Chemists’Society,7th Edition)。滴点は、化合物の熱特性を反映するという点で融点と同様であるが、滴点は、明確な融点を有さない材料を定義する際に有用であり得る。いくつかの態様では、天然油系のワセリンは、約30℃~約70℃の滴下融点を示す。いくつかの態様では、天然油系のワセリンは、約35℃~約50℃の滴下融点を示す。
【0052】
本明細書で使用するとき、用語「多分散指数(分子量分布としても知られている)」は、重量平均分子量(Mw)の、数平均分子量(Mn)に対する比率である。多分散性データは、Waters510ポンプ、及び410示差屈折率計を装備した、ゲル透過クロマトグラフィ装置を使用して収集される。サンプルは、THF溶媒中で約2%の濃度で調製される。1ml/分の流速及び35℃の温度を使用する。カラムは、Phenogel5ミクロンストレート/ミックスガードカラムと、50、100、1000、及び10000オングストロームの、300×7.8mmのPhenogel5ミクロンカラム(スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー)からなる。分子量は、以下の基準を使用して決定された。
【0053】
【表1】
【0054】
本明細書で使用するとき、用語「重量平均分子量」は、ΣM /ΣM(式中、nは、分子量Mの分子の数である)に等しいMを指す。様々な例において、重量平均分子量は、本明細書に記載される試験、又はサイズ排除クロマトグラフィ、光散乱、小角中性子散乱、X線散乱、及び沈降速度を使用して決定することができる。
【0055】
本明細書で使用される「数平均分子量」という用語は、Mを指し、これは、サンプル中の分子の数で割ったサンプルの総重量に等しい。Mは、式ΣM/nによって表すことができ、式中、nは分子量Mの分子の数である。
【0056】
いくつかの態様では、天然油系のワセリンは、1.3を超える多分散指数を示す。いくつかの態様では、天然油系のワセリンは、1.3~2.0の多分散指数を示す。
【0057】
本明細書で使用される用語「酸価」(Acid Value、AV)は、試験サンプル1g中に存在する有機酸を中和するために必要なKOHの重量(mg)として定義され、組成物中に存在する遊離脂肪酸の尺度である。AVは、AOCS Official Method Cd 3d-63によって決定することができる。本明細書に記載される組成物の酸価は、20.0未満、又は10.0未満、又は4.0未満、又は0.5~20.0、又は0.5~10.0、又は0.5~4.0であり得る。
【0058】
本明細書で使用される「ヒドロキシル価」という用語は、水酸化カリウムのミリグラムで表され、サンプル1g中に存在するヒドロキシル基の数に相当し、油及び脂肪の従来の特性の1つである。ヒドロキシル価は、AOCS標準法Cd13-60によって決定することができる。本明細書に記載される組成物は、90未満又は50未満のヒドロキシル価を有し得る。いくつかの態様では、組成物は、10~90又は30~90のヒドロキシル価を有し得る。いくつかの態様では、組成物は、50~90のヒドロキシル価を有し得る。
【0059】
本明細書で使用される「ヨウ素価」(一般にIV(Iodine Value)と略される)という用語は、化学物質100グラムによって消費されるヨウ素のグラム単位の質量である。ヨウ素価は、脂肪、油及びワックス中の不飽和の量を決定するためにしばしば使用される。脂肪酸において、不飽和は、ハロゲン、この場合はヨウ素に対して非常に反応性である、二重結合として主に生じる。したがって、ヨウ素価が高いほど、より多くの不飽和がサンプル中に存在する。材料のヨウ素価は、標準的な周知のWijs法(A.O.C.S.Cd1-25)によって決定することができる。
【0060】
天然油系のワセリン組成物
本明細書に記載される天然油系のワセリン組成物は、石油系のワセリンをより厳密に模倣し、様々な温度にわたってより一貫したレオロジーを提供する、独特の組成を有する。
【0061】
本開示は、トリグリセリド成分を含む組成物であって、トリグリセリド成分が、トリグリセリドの混合物を含み、トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、エステル含有脂肪酸のエステルが、C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、組成物が、AOCS標準手順Cc18-80によって測定される30℃~70℃の滴下融点を有する、組成物を提供する。
【0062】
本開示は、トリグリセリド成分を含む組成物であって、トリグリセリド成分が、トリグリセリドの混合物を含み、トリグリセリドの混合物が、1つ以上のエステル含有脂肪酸を含む個々のトリグリセリドを含み、エステル含有脂肪酸のエステルが、C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸エステルであり、組成物が、合わせて10%未満のモノグリセリド及びジグリセリドを含有する、組成物を提供する。
【0063】
トリグリセリド成分は、当業者によって、例えば、不飽和脂肪酸を含有する天然油をエポキシ化し、エポキシドを開環することによって調製され得る。この化学反応は、油脂の技術分野において周知である。代替的に、トリグリセリド成分は、天然にヒドロキシ基を含有し得る。いくつかの天然油は、天然の状態でヒドロキシ脂肪酸を含有する。ヒマシ油はかかる例の1つである。典型的には、ヒマシ油は、約70%~90%のリシノール酸脂肪酸残基から構成される。トリグリセリド成分は、部分的に、実質的に、又は完全に水素化され得る。良好な品質のヒマシ油は、約160のヒドロキシル価を有する。完全硬化又は水素化ヒマシ油は、典型的には、150の最小ヒドロキシル価を有する。
【0064】
本開示の手順は、反応中に起こるエステル交換及びエステル交換の量を最小限に抑えるように調整される。過剰なエステル交換は、ヒドロキシステアリン酸オリゴマー及び高分子量構造、並びに望ましくないMAG及びDAGを作り出す可能性がある。いくつかの態様では、組成物は、合わせて10%未満のMAG及びDAGを含有する。いくつかの態様では、組成物は、合わせて10%未満のMAG及びDAGを含有する。いくつかの態様では、組成物は、合わせて0.5%~10%のMAG及びDAGを含有する。いくつかの態様では、組成物は、合わせて1%~8%のMAG及びDAGを含有する。組成物中のMAG及びDAGの含有量は、当業者によって日常的に決定することができる。上記のサイズ排除クロマトグラフィ又はGPCを使用して、モノ、ジ、又はトリグリセリドである組成物の分子量及び対応する画分を決定することができる。当業者は、標準曲線が作成され得、特定のクロマトグラフィ装置を校正するために使用され得ることを理解する。
【0065】
いくつかの態様では、トリグリセリド成分は、水素化されている。いくつかの態様では、トリグリセリド成分は、水素化ヒマシ油を含む。
【0066】
いくつかの態様では、反応混合物は、追加の天然油又は水素化天然油を含む。
【0067】
いくつかの態様では、追加の天然油は、水素化ダイズ油又は水素化ココナッツ油である。
【0068】
組成物は、最小限の量の遊離脂肪酸を含み得る。例えば、組成物は、約2重量%未満の遊離脂肪酸を含み得る。別の実施形態では、組成物は、約1重量%未満、約2.5重量%未満の遊離脂肪酸、又は0.1重量%~2.5重量%の脂肪酸を含み得る。
【0069】
組成物は、合わせて最小量のモノグリセリド及びジグリセリドを含み得る。例えば、本組成物は、合わせて約10重量%未満のモノグリセリド及びジグリセリドを含み得る。別の態様では、組成物は、合わせて約8重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、又は約3重量%未満のモノグリセリド及びジグリセリドを含み得る。別の態様では、組成物は、合わせて約1%~約10重量%、又は約1重量%~約7重量%、又は約2重量%~約5重量%、又は約2重量%~約5重量%のモノグリセリド及びジグリセリドを含み得る。
【0070】
本明細書に記載される組成物のヨウ素価は、約5.0未満、又は約3.0未満、又は約0.1~約3の間であり得る。
【0071】
組成物は、任意の実施形態において本明細書に記載されるように、以下のうちの1つ以上を含み得る:(i)約20.0未満の酸価、(ii)合わせて約2重量%~約7重量%のモノグリセリド及びジグリセリド、又は(iii)約3.0未満のヨウ素価。いくつかの態様では、天然油系のワセリン組成物は、前述の特徴のうちの2つ又は3つ全てを有し得る。
【0072】
ワックス又は硬質油脂とは異なり、本明細書に記載される天然油系のワセリン製剤は、それ自体の形状を保持することができるが、グリース又はショートニングにより類似して圧力下で撓む半固体材料であり得る。圧力下での撓みに対する耐性は、コーン貫入試験を使用することによって決定することができる。コーン貫入は、標準法ASTM D217-2の使用によって測定することができる。
【0073】
天然油系のワセリンは、石油系のワセリンに匹敵する広がり及び粘着性を提供するレオロジー特性の組み合わせを示す。本明細書に開示される任意の実施形態では、天然油系のワセリンは、約35℃~約70℃の溶融滴点、25℃で20超又は約20~約100又は約60~約90(Dmm(1/10mm)のコーン針入度、100℃で約5mm/秒~約35mm/秒の動粘度、約25℃~約45℃の凝固点、あるいはこれらの組み合わせから選択される1つ以上のレオロジー特性を示す。
【0074】
天然油系のワセリン組成物(本明細書では単に組成物とも称される)を調製する方法
本開示は、また、天然油系のワセリン組成物の製造方法を提供する。方法は、脂肪酸と、1つ以上のヒドロキシル含有脂肪酸鎖及び任意選択で水素化天然油を含有するトリグリセリド成分とを混合することと、混合物を(任意選択で酸触媒の存在下で)高温に加熱することと、加熱された混合物を周囲圧力未満の圧力に曝露して、複数のヒドロキシル含有脂肪酸鎖がC8-C22分岐又は直鎖脂肪酸でエステル化され、トリグリセリド成分が、a)合わせて10%未満のモノグリセリド及びジグリセリドを含有し、かつ/又はb)AOCS標準手順Cc18-80によって測定される30℃~70℃の滴下融点を有する、生成物を得ることと、ワセリン組成物を単離することとを含む。
【0075】
反応は、求められる特性に応じていくつかの異なる方式でモニターされ得る。反応を進行させると、平衡の形態が達成される一定の定常状態点に達する。この時点で、生成物のパラメータは有意に変化せず、反応時間継続すると分解が促進されて生成物の品質に影響を及ぼす。代替的に、酸価、ヒドロキシル価などが特定の設定点となるまで、又は特定の滴下融点が達成されるまで、反応を進行させてもよい。これはオペレータの裁量による。いくつかの態様では、天然油系のワセリン組成物を提供するために、反応混合物が20.0未満、又は10未満、又は5未満の酸価に達するまで、又は反応混合物が4.0未満の酸価に達するまで、反応を進行させる。いくつかの態様では、反応混合物は、0.5~20.0の酸価に達する。いくつかの態様では、反応混合物は、0.5~10の酸価に達する。
【0076】
反応混合物は、本明細書に記載される組成を有し、混合物は、当該技術分野で周知の方法によって化学的又は酵素的エステル化を誘導するように処理される。真空及び限定された触媒の使用を含む本開示の手順は、反応中に起こるエステル交換の量及びエステル交換を最小化又は制御するように調整される。過剰なエステル交換は、生分解性を低下させるヒドロキシステアリン酸オリゴマー及び高分子量構造、並びに望ましくないMAG及びDAGを作り出す。
【0077】
化学的エステル化を行うために、反応混合物に対して約0.1重量%の量で触媒を添加し得る。例示的な触媒は、メタンスルホン酸などの酸、又は水酸化ナトリウム及び水酸化カルシウムなどの塩基、又は金属触媒であり得る。いくつかの態様では、メタンスルホン酸は触媒である。任意選択で、反応混合物に次リン酸を添加して、オフカラーの形成を防止することができる。次いで、反応温度を約140~250℃に上昇させ得る。典型的には、約160℃の反応温度が利用される。この反応温度を一定時間維持し、所望の終点又は定常状態に達するまで20~50トールの圧力を達成するために、反応容器を真空に供する。いくつかの態様では、15未満若しくは10未満若しくは5未満の酸価が達成されるか、又は1.3を超える多分散指数が得られる。塩基、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カルシウムなどの鉱物塩基を約0.2重量%の量で添加して、わずかに過剰の触媒を中和することができる。次いで、反応混合物を約60~80℃の範囲の温度に冷却し得る。濾材、例えば、B80neutral又はTrisyl(登録商標)などの酸活性化砂利粘土を、反応混合物に対して約2重量%の量で反応混合物に添加して、不純物を除去し得る。次いで、最終生成物、すなわち天然油系のワセリン組成物を濾過して、塩、シリカ又は粘土混合物を除去する。
【0078】
いくつかの態様では、触媒は、塩基、酸、金属、又はそれらの組み合わせの群から選択される。いくつかの態様では、触媒は、酸触媒又は酸触媒の組み合わせである。
【0079】
代替的に、酵素エステル交換を行うために、酵素触媒を反応混合物に対して2重量%の量で添加し得る。酵素触媒の例は、Lipase Novozyme 435であり得る。反応が行われる際に、約50トールの真空を使用して水を除去することができる。5.0未満の酸価が達成されるか、又は1.3を超える多分散指数が得られるまで、約60~80℃の範囲の反応温度は維持される。次いで、適切なフィルターデバイスを使用して酵素触媒を濾別して、最終生成物、すなわち天然油系のワセリン組成物を得ることができる。
【0080】
代替的に、エステル化は、触媒なしで行うことができる。C8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸と、ヒマシ油などの水素化天然油との反応混合物を予め溶融し、60℃~80℃の範囲の温度に加熱した後、酸化を防止するために窒素スパージと共に反応容器に添加する。反応容器を真空にして20~50トールの圧力を達成し、温度を180℃~250℃に上昇させる。反応のために選択された装置に応じて、より低い圧力及び/又は温度を利用し得る。反応の酸価をモニターし、20未満の酸価(又は他の終点)が達成されるまで、反応温度及び真空を維持する。反応混合物を60℃~80℃に冷却し、濾過して(例えば、ソックフィルターを通して)微粒子を除去した後、生成物を単離する。
【0081】
局所製剤
本明細書に提供される組成物は、パーソナルケア製品又は化粧品などの局所製剤の製造において有用である。本発明者らは、予想外にも、天然油系のワセリンを含む製剤が、以下で更に説明するような多くの望ましい特性を有し、パーソナルケア又は化粧品製剤において現在使用されている石油系のワセリンの全部又は一部を置き換えるために使用することができることを見出した。
【0082】
一態様では、本発明は、本明細書に記載される天然油系のワセリンを含む局所製剤である。本明細書で使用される場合、用語「局所製剤」は、身体の一部に直接適用され得る製剤を指す。用語「製剤」は、パーソナルケア又はホームケアに使用するための、本開示による様々な重量範囲における様々な成分の組成を示すために本明細書で使用される。
【0083】
「パーソナルケア」は、任意の化粧用、衛生用、洗面用、及び局所ケア製品を意味し、かつこれらを含み、これらとしては、リーブオン製品(すなわち、適用後に皮膚又はケラチン基質上に残される製品);リンスオフ製品(すなわち、適用中又は適用の数分以内に、皮膚及びケラチン基質から洗浄又はリンスオフされる製品);シャンプー;ヘアカール及び髪矯正製品;コーミング用又はもつれほぐし用クリーム、ヘアスタイル維持及びヘアコンディショニング用製品(濃縮マスク又はより標準的な製剤のいずれか、リンスオフ又はリーブオン);爪、手、足、顔、頭皮及び/又は身体用のローション及びクリーム;毛髪染料;顔及び身体のメイクアップ;ファンデーション;マスク;ネイルケア製品;収斂剤;デオドラント;制汗剤;抗ニキビ薬;老化防止;脱毛剤;コロン及び香料;皮膚保護クリーム及びローション(日焼け止め剤など);スキン及びボディクレンザー/ボディウォッシュ;洗顔料;皮膚コンディショナー;皮膚トナー;皮膚引き締め組成物;皮膚日焼け及び美白組成物;液体石鹸;固形石鹸;固形合成洗剤;浴用製品;シェービング製品;パーソナル用潤滑剤;並びに口腔衛生製品(練り歯磨き、オーラル懸濁剤、及びマウスケア製品など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書に開示される天然油系のワセリンは、皮膚又は毛髪上で単独で利用することができ、シャンプー、ボディウォッシュ、ヘアケア、もつれほぐし、及びコンディショナー製剤中の様々な成分を低減又は置換するのに特に有用である。
【0085】
このようなパーソナルケア製剤の質感は限定されず、とりわけ、限定するものではないが、液体、ゲル、スプレー、エマルション(ローション及びクリームなど)、シャンプー、コンディショナー、コーミングクリーム、ポマード、フォーム、錠剤、スティック(リップケア製品など)、メイクアップ、坐剤であり得、そのいずれも皮膚又は髪又は強健性に適用され得、典型的には、水ですすぐか又はシャンプー若しくは石鹸で洗浄するなどによって、除去されるまで、それと接触したままであるように設計される。他の形態は、柔らかく、硬く又は圧搾可能であり得るゲルであり得る。スプレーは、手動ポンプ式指作動式噴霧器から送達される非加圧エアロゾルであり得るか、又は化学的若しくはガス状噴射剤が使用されるムース、スプレー若しくは泡形成組成物などの加圧エアロゾルであり得る。
【0086】
本明細書に開示される天然油系のワセリンを使用して調製された製剤は、概して審美的に魅力的であると考えられる白色又はペールホワイト色を有する。場合によっては、本開示の製剤は、着色された最終製品を製造するために更に処理されてもよい。かかる場合、白色は、最終的な色に影響を及ぼすことなく追加の顔料を見せるため、有益である。
【0087】
本開示の天然油系のワセリンを含有する製剤は、特定の用途の必要性に合わせて粘度を調整するために、任意選択で追加の成分を含有し得る。当業者であれば、この目的に適合するために利用可能な、限定されないが、スクレロチウムガム、キサンタンガム、カラギーナン、ジェランガム、天然デンプン、加工デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、コハク酸デンプンアルミニウム、リン酸ヒドロキシプロピルデンプン、ペクチン、クエン酸カルシウム、塩NaCl、KCl、アクリレートポリマー、アクリレート系コポリマー、カルボマー、セルロース、シトラス繊維及び誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ソルビトールなどのポリオール、並びにそれらの混合物などの、添加剤の範囲を容易に理解するであろう。これらの添加剤は、組成物にテクスチャー、粘度、又は構造を加えるために利用され得る。当業者は、これらの成分が、特定の製剤の必要性に応じて様々な濃度で存在してもよく、特定の製剤の主要な要素であってもよいことを理解するであろう。
【0088】
本開示の天然油系のワセリンを含有する製剤は、任意選択で、防腐剤、塩、ビタミン、乳化剤、品質改良剤、栄養素、微量栄養素、糖、タンパク質、多糖類、ポリオール、グルコース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、pH調整剤、皮膚軟化剤、染料、顔料、皮膚活性物質、油脂、水素化油脂、ワックス又はシリコーンからなる群から選択される少なくとも1つの更なる成分を含有してもよい。
【0089】
本開示の天然油系のワセリンを含有する製剤は、広範囲のpH値を有し得る。本開示の態様は、3~11、又は4~8、又は4~7のpHを有する製剤を含む。
【0090】
本開示の製剤は、任意の有用な量の本開示の天然油系のワセリンを含有し得る。製剤は、好ましくは、最終製剤中に1重量%~100重量%、50重量%~99重量%、75重量%~95重量%、20重量%~90重量%、20重量%~80重量%、1重量%~30重量%、2重量%~20重量%、3重量%~5重量%又は1重量%~8重量%の天然油系のワセリンを含有する。
【0091】
いくつかの態様では、天然油系のワセリンを含むパーソナル製品は、ボディウォッシュ、洗顔料、シャンプー、コンディショナー、コーミングクリーム、リーブオンコンディショナー、皮膚保湿剤、リップ保湿剤、又は化粧品である。
【0092】
別の実施形態では、組成物は、約55重量%~約85重量%の完全水素化ヒマシ油、約15重量%~約45重量%のC8-C22分岐鎖又は直鎖脂肪酸のエステル化生成物である。
【0093】
別の実施形態では、組成物は、約55重量%~約85重量%の完全水素化ヒマシ油、約15重量%~約45重量%のC8-C22分岐又は直鎖脂肪酸、及び約5重量%~約15重量%のヒマシ油以外の水素化天然油のエステル化生成物である。
【0094】
天然油系のワセリンについて本明細書に開示された2つ以上の特徴のありとあらゆる組み合わせが、本発明者らによって具体的に企図され、想定されている。したがって、本発明者らは、複数のヒドロキシル含有脂肪酸鎖及びC8-C22分岐又は直鎖脂肪酸を含有するトリグリセリド成分について開示された単一の及び一定範囲のあらゆる組み合わせを、並びに、以下のパラメータ、すなわち滴下融点、円錐針入度、凝固点、ヒドロキシル価、酸価、ヨウ素価、及び多分散性指数の値又は範囲のうちの1つ以上の各々及び全ての組み合わせ、と併せ、考案し、開示した。
【実施例
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
HCO、ステアリン酸、及びHSOの量は、反応混合物の重量%である。
【0097】
実施例1:
実施例1A及び1Bを作製するために、以下の化学的エステル化法を行った。表2に記載の全ての成分又は油を予め融解させ、80℃に加熱し、次に窒素スパージ下で反応容器に添加した。撹拌機を作動させて内容物を混合した。使用する場合、次リン酸を0.2%用量で添加し、メタンスルホン酸を0.1%用量で添加した。全ての成分を添加し、十分に混合してから、温度を約160℃に上昇させた。酸価を反応を通してモニターし、AVが<20になるか、又はAVの変化が1時間当たり1単位未満になると、反応容器を真空にして約30トールの圧力を達成する。5以下の酸価が達成されるまで、この反応温度を維持した。次いで、反応物を約85℃に冷却し、水酸化カルシウム溶液を添加して、わずかに過剰な触媒を中和した。混合物を70℃に冷却し、Trisyl(登録商標)シリカを1%で反応に添加し、触媒から塩を吸収させた。次いで、生成物を濾過して、塩及び粘土混合物並びに他の不純物を除去した。
【0098】
実施例2:
実施例2A~2Dの調製においてエステル交換を意図的に制限するために、以下の化学的エステル化法を行った。表2に記載される全ての成分又は油を予め溶融し、約80℃に加熱した後、窒素スパージ下で反応容器に添加して、反応中に生成物が酸化しないようにした。撹拌機を作動させて内容物を混合した。使用する場合、次リン酸を0.2%用量で添加した。全ての成分を添加し、十分に混合したら、温度を約180℃に上昇させ、反応容器を真空にして、約20~30トールの圧力を達成する。酸価を反応を通してモニターする。20以下の酸価が達成されるまで、この反応温度及び真空を維持した。次いで、反応物を約85℃に冷却し、ソックフィルターを通して濾過して、あらゆる微粒子を除去した。
【0099】
実施例3:
【0100】
【表4】
HCO及びステアリン酸の量は、反応混合物の重量%である。
**値が劇的に変化しない本質的に完了又は平衡まで反応を行う。
***特定のAVが達成されるまで反応を行う。
【0101】
実施例3A~Mを表3に示すように調製した。それらは、異なるスケールで、異なる時間にわたって実施し、触媒を含まないか、又は実施例1及び2に記載されるような酸触媒系のいずれかを利用した。平衡に達する安定状態まで反応を継続させるか、又は18未満の酸価に達するまで反応を行った。
【0102】
実施例4:
【0103】
【表5】
HCO及びステアリン酸の量は、反応混合物の重量%である。
【0104】
実施例4A~Fは、表4に示すように調製した。それらは、異なるスケールで、異なる時間にわたって実施し、触媒を含まないか、又は実施例1及び2に記載されるような酸触媒系のいずれかを利用した。加えて、真空の程度及びタイミングを変化させた。反応は、典型的には、平衡に達する安定状態まで、又は更なる期間にわたって継続させた。示されるように反応条件を変化させることによって、当業者は、ヒドロキシ脂肪酸のエステル化対トリグリセリドのエステル交換の選択を管理することができる。
【国際調査報告】