(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】エネルギー管理システムを運用するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241010BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 180
H02J3/38 160
H02J3/38 130
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529404
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 IT2021000053
(87)【国際公開番号】W WO2023089640
(87)【国際公開日】2023-05-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルマレック,パブロ
(72)【発明者】
【氏名】ザリッリ,ドナート
(72)【発明者】
【氏名】ラ・ベラ,アレッシオ
(72)【発明者】
【氏名】ファジアーノ,ロレンツォ・マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・パラシオス,フレディ・オーランド
(72)【発明者】
【氏名】スカトリーニ,リッカルド
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AE01
5G066AE05
5G066AE09
5G066HB01
5G066HB06
(57)【要約】
マイクログリッド用のエネルギー管理システム(EMS)を運用するための方法およびシステムは、EMSによって実行される多目的最適化において異なる目的関数が重み付けされる重みを自動的に決定するように動作する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクログリッド用のエネルギー管理システム(EMS:energy management system)を運用する方法であって、
前記EMSは、予測期間にわたって1つまたはいくつかの資産動作点を決定するために多目的最適化(MOO:multi-objective optimization)を実行し、前記MOOを実行することは、いくつかの目的関数の加重和である複合目的関数を最小化する、前記予測期間にわたる時間の関数として前記1つまたはいくつかの資産動作点を決定し、
前記方法は、少なくとも1つの集積回路によって、前記MOOにおいて前記EMSによって使用される前記複合目的関数において前記いくつかの目的関数が重み付けされる重みを自動的に決定することを含む、方法。
【請求項2】
前記MOOにおいて前記EMSによって使用される前記複合目的関数において前記目的関数が重み付けされる前記重みを自動的に決定することは、前記少なくとも1つの集積回路を使用して行う以下のこと、すなわち、
ユートピア値のセットを決定することであって、前記ユートピア値の各々は、他の目的関数とは無関係に最適化されたときの前記いくつかの目的関数のうちの1つの最適値に対応する、ユートピア値のセットを決定することと、
最適解のパレートフロントを決定することであって、前記最適解の各々は、前記いくつかの目的関数の異なる加重和を最適化する、最適解のパレートフロントを決定することと、
前記パレートフロントおよび前記ユートピア値のセットに基づいて、前記目的関数が重み付けされる重みを決定することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パレートフロントおよび前記ユートピア値のセットに基づいて前記重みを決定することは、前記ユートピア値のセットによって定義された座標を有するユートピア点を決定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パレートフロントおよび前記ユートピア値のセットに基づいて前記重みを決定することは、前記パレートフロント上の点からの前記ユートピア点の距離を決定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パレートフロントおよび前記ユートピア値のセットに基づいて前記重みを決定することは、前記ユートピア点からの最小距離を有する前記パレートフロント上の点を決定することを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記複合目的関数において前記目的関数が重み付けされる前記重みは、前記ユートピア点からの前記最小距離を有する前記パレートフロント上の前記点を決定するときに前記いくつかの目的関数に適用される重みに基づいて決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ユートピア値を決定することは、前記マイクログリッドが接続されているグリッドにおけるエネルギー生成に関連する第1の目的関数の最小値を表す第1のユートピア値を決定することと、前記マイクログリッドにおける局所エネルギー生成に関連する第2のユートピア値を決定することとを含み、任意選択的に、局所エネルギー生成に関連する前記第2のユートピア値は、排出効果を含む、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記重みを決定することは、前記マイクログリッドが接続されているグリッドにおけるエネルギー生成に関連する第1の目的関数が前記複合目的関数において乗算される第1の重みと、前記マイクログリッドにおける局所エネルギー生成に関連する第2の目的関数が前記複合目的関数において乗算される第2の重みと、任意選択的に、前記マイクログリッドのエネルギー貯蔵システム、特に電池エネルギー貯蔵システム(BESS:battery energy storage system)に関連する第3の目的関数が乗算される第3の重みと、を決定することを含み、任意選択的に、前記第2の目的関数は排出効果を含む、請求項2~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ユートピア値を決定すること、前記パレートフロントを決定することは、それぞれ、制約下で最適化を実行することを含み、任意選択で、前記制約は、所定のシナリオによる前記マイクログリッドの電力バランス、負荷プロファイルの一貫性、および/または発電のうちの1つまたは複数を含む、請求項2~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ユートピア値を決定すること、前記パレートフロントを決定すること、および前記重みを決定することは、複数の異なるシナリオの各々についてそれぞれ実行され、任意選択で、前記異なるシナリオは、前記マイクログリッドの負荷および/または発電プロファイルに関して互いに区別される、請求項2~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
複数のユースケースを識別するために複数のマイクログリッドについて取得されたデータをクラスタリングすることをさらに含み、
前記重みを自動的に決定することは、前記ユースケースのうちの少なくとも1つに対して実行される、
先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記EMSによって、前記予測期間にわたる時間の関数として前記1つまたはいくつかの資産動作点を決定するために前記MOOを実行することをさらに含み、前記MOO内の前記目的関数は、前記決定された重みに依存し、任意選択的に、前記予測期間は少なくとも24時間を含む、
先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記EMSによって、前記1つまたはいくつかの資産動作点を電力管理システム(PMS:power management system)に提供することと、
前記PMSによって、前記EMSによって決定された前記動作点に従って前記マイクログリッドの制御可能資産を任意選択的に制御することと、をさらに含む、
先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
エネルギー管理システム(EMS)の動作を制御するためのシステムであって、前記EMSは、予測期間にわたって1つまたはいくつかの資産動作点を決定するために多目的最適化(MOO)を実行するように動作し、前記MOOは、いくつかの目的関数の加重和である複合目的関数を最小化する、前記予測期間にわたる時間の関数として前記1つまたはいくつかの資産動作点を決定し、前記システムは、
前記MOOにおいて前記EMSによって使用される前記複合目的関数において前記目的関数が重み付けされる重みを自動的に決定するように動作する少なくとも1つの集積回路と、
前記決定された重みを前記EMSに提供するためのインターフェースと、を備える、システム。
【請求項15】
マイクログリッドであって、
複数の制御可能資産と、
エネルギー管理システム(EMS)であって、前記EMSは、予測期間にわたって1つまたはいくつかの資産動作点を決定するために多目的最適化(MOO)を実行するように動作し、前記MOOは、いくつかの目的関数の加重和である複合目的関数を最小化する、前記予測期間にわたる時間の関数として前記1つまたはいくつかの資産動作点を決定する、エネルギー管理システムと、
請求項14に記載のシステムと、を備える、マイクログリッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の実施形態は、マイクログリッド用のエネルギー管理システムを運用するための方法、装置、およびシステムに関する。本発明の実施形態は、特に、エネルギー管理システムの動作を調整することを可能にする方法、装置、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
マイクログリッドは、エネルギー生成資産(再生可能エネルギー資源および/または発電機など)、負荷、およびオプションのエネルギー貯蔵システムを備える局所的なグループである。再生可能エネルギー源(RES:renewable energy source)、バッテリESS(BESS:battery energy storage systems)などのエネルギー貯蔵システム(ESS:energy storage systems)、または分散型エネルギー発電機(DEG:distributed energy generator)を備えた他のシステムの使用の増加にも起因して、マイクログリッドの制御戦略はますます重要になっている。マイクログリッドの制御技術は、例えばIEEE2030.7-2017に記載されている。
【0003】
マイクログリッド制御システムは、複数の個別制御可能な発電資産および任意負荷(DL:discretionary load)資産を所定の方法で調整することができる電力管理システム(PMS:Power Management System)であってもよい。各資産の動作点(OP:Operating Point)は、総負荷、マイクログリッド構成、蓄電状態(SoC:state of charge)、現在の光起電力(PV:photovoltaic)および風の可用性、他の不利益係数などのローカルに知られている値に基づいてリアルタイムで計算することができる。そのような場合、PMSはローカル値しか知らず、過去および現在時刻データしか持たないため、達成される最適化は制限され得る。
【0004】
動作点の決定をさらに改善するために、エネルギー管理システム(EMS:Energy Management System)は、予測を使用して、各資産のより良好な最適OPを計算することができる。予測は、負荷プロファイル、光起電力および風の可用性、気象および雲の予測、他の不利益係数などの予測値であってもよく、またはそれらを含んでもよい。過去、現在、および予測データを使用して、EMSは、各資産の最適OPを計算するように適合される。これは、予測期間にわたって行われ得る。
【0005】
EMSは、予測期間にわたって資産動作点を決定するために多目的最適化(MOO:multi-objective optimization)を行うことができる。MOOにおいて各種目的関数に重み付けする重みは、専門知識に基づいて設定することができる。この人間の関与は、エラーを引き起こす傾向があり得る。例示のために、MOOの重みは、少なくともいくつかのシナリオには適さない人間の専門家によって選択されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
概要
上記を考慮して、資産動作点を確実に決定することを可能にする改良された方法、装置、システム、およびマイクログリッドが引き続き必要とされている。エネルギー管理システム(EMS)の動作を調整することを可能にする方法、装置、システム、およびマイクログリッドも必要とされている。EMSが使用されることが意図されているユースケースに応じてEMSの動作を調整することを可能にする方法、装置、システム、およびマイクログリッドも必要とされている。また、客観的な基準に基づいて、人間の専門家の入力を必要とせずにEMSの動作を調整することを可能にする方法、装置、システム、およびマイクログリッドも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、独立請求項に記載の方法およびシステムが提供される。従属請求項は、好ましい実施形態を定義する。
【0008】
本発明の実施形態は、電気マイクログリッド用のエネルギー管理システム(EMS)を自動的に調整するための方法およびシステムを提供する。EMSは、複合目的関数を最小化するためにマイクログリッドの資源割り当てを計画することができる、数値最適化に基づくエネルギー管理手法を採用することができる。利用可能な資源は、マイクログリッドが接続されているメイングリッド、例えば化石燃料を使用する現地のディスパッチ可能な発電機、風力および太陽光PVなどの再生可能エネルギーシステム、制御可能な負荷、バッテリなどのエネルギー貯蔵システムとの間でエネルギーを売買する可能性を含み得る。選択された目的関数は、メイングリッドと交換されたエネルギーによって課されるペナルティ、公称消費プロファイルに対して負荷をシフトすることによって課されるペナルティ、および貯蔵システムの累積摩耗などのいくつかの性能指標を考慮する。
【0009】
実施形態によれば、複合目的関数において異なる目的関数が乗算される重みが自動的に決定され、EMSによって使用される。
【0010】
本発明の一態様によれば、マイクログリッド用のEMSを運用する方法が提供される。EMSは、予測期間にわたって1つまたはいくつかの資産動作点を決定するために多目的最適化(MOO)を実行する。MOOを実行することは、いくつかの目的関数の加重和である複合目的関数を最小化する、予測期間にわたる時間の関数として1つまたはいくつかの資産動作点を決定する。
【0011】
本方法は、EMSの現場使用においてMOOを使用することを含み得る。
【0012】
本方法は、電力システムにおいて是正または予防動作を行うためにMOOを使用することを含み得る。
【0013】
本方法は、MOOを使用して少なくとも1つの保護作用を行うことを含み得る。
【0014】
本方法は、出力インターフェースを制御するためにMOOを使用することを含み得る。
【0015】
本方法は、MOOを使用して出力インターフェースを制御して、警報、警告、ステータス情報、または他の電力システム関連情報を出力することを含み得る。
【0016】
本方法は、少なくとも1つの集積回路によって、MOOにおいてEMSによって使用される複合目的関数においていくつかの目的関数が重み付けされる重みを自動的に決定することを含む。
【0017】
MOOにおいてEMSによって使用される複合目的関数において目的関数が重み付けされる重みを自動的に決定することは、少なくとも1つの集積回路を使用して行う以下のこと、すなわち、ユートピア値のセットを決定することであって、ユートピア値の各々は、他の目的関数とは無関係に最適化されたときのいくつかの目的関数のうちの1つの最適値に対応する、ユートピア値のセットを決定することと、最適解のパレートフロントを決定することであって、最適解の各々は、いくつかの目的関数の異なる加重和を最適化する、最適解のパレートフロントを決定することと、パレートフロントおよびユートピア値のセットに基づいて、目的関数が重み付けされる重みを決定することと、を含む。
【0018】
「ユートピア値」という用語は、最適化が複合目的関数に含まれる他の目的関数から独立して行われる場合に、最適化されたいくつかの目的関数のうちの1つの値を指す。したがって、「ユートピア値」は、複合目的関数に含まれる他の目的関数を無視して最適化されたときの、目的関数の1つだけの最適値である。MOOが行われるとき、複合目的関数の最適値に対する目的関数の寄与は、MOOがいくつかの競合する目的を考慮するので、この目的関数のユートピア値よりも大きい。
【0019】
パレートフロントおよびユートピア値のセットに基づいて重みを決定することは、ユートピア値のセットによって定義された座標を有するユートピア点を決定することを含み得る。
【0020】
パレートフロントおよびユートピア値のセットに基づいて重みを決定することは、パレートフロント上の点からのユートピア点の距離を決定することを含み得る。
【0021】
パレートフロントおよびユートピア値のセットに基づいて重みを決定することは、ユートピア点からの最小距離を有するパレートフロント上の点を決定することを含み得る。
【0022】
複合目的関数において目的関数が重み付けされる重みは、ユートピア点からの最小距離を有するパレートフロント上の点を決定するときにいくつかの目的関数に適用される重みに基づいて決定され得る。
【0023】
ユートピア値を決定することは、マイクログリッドが接続されているグリッドにおけるエネルギー生成に関連する第1の目的関数の最小値を表す第1のユートピア値を決定することと、マイクログリッドにおける局所エネルギー生成に関連する第2のユートピア値を決定することとを含み得る。
【0024】
局所エネルギー生成に関連する第2のユートピア値は、排出効果を含み得る。
【0025】
重みを決定することは、マイクログリッドが接続されているグリッドにおけるエネルギー生成に関連する第1の目的関数が複合目的関数において乗算される第1の重みと、マイクログリッドにおける局所エネルギー生成に関連する第2の目的関数が複合目的関数において乗算される第2の重みとを決定することを含み得る。
【0026】
重みを決定することは、マイクログリッドのエネルギー貯蔵システム、特にバッテリエネルギー貯蔵システムBESSに関連する第3の目的関数が乗算される第3の重みを決定することを含み得る。
【0027】
第2の目的関数は、排出効果を含み得る。
【0028】
ユートピア値を決定すること、パレートフロントを決定することは、それぞれ、制約下で最適化を行うことを含み得る。
【0029】
制約は、所定のシナリオによるマイクログリッドの電力バランス、負荷プロファイルの一貫性、および/または発電のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0030】
制約は、マイクログリッド資産の技術的制約を含み得る。
【0031】
制約は、マイクログリッドオペレータの好みを含み得る。
【0032】
ユートピア値を決定すること、パレートフロントを決定すること、および重みを決定することは、複数の異なるシナリオの各々に対してそれぞれ実行されてもよい。
【0033】
異なるシナリオは、マイクログリッドの負荷および/または発電プロファイルに関して互いに区別され得る。
【0034】
本方法は、複数のユースケースを識別するために複数のマイクログリッドについて取得されたデータをクラスタリングすることを含み得る。
【0035】
EMSによって使用される重みは、ユースケースと比較してマイクログリッド仕様に基づいて選択されてもよい。
【0036】
重みを自動的に決定することは、マイクログリッド仕様に基づいて選択され得るユースケースのうちの少なくとも1つに対して実行され得る。
【0037】
本方法は、EMSによって、予測期間にわたる時間の関数として1つまたはいくつかの資産動作点を決定するためにMOOを実行することをさらに含むことができ、MOO内の目的関数は、決定された重みに依存する。
【0038】
予測期間は、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも18時間、少なくとも24時間、または少なくとも48時間を含み得る。
【0039】
本方法は、決定された資産動作点に応じてマイクログリッドの少なくとも1つの資産を制御することをさらに含み得る。
【0040】
本方法は、EMSによって、動作点を電力管理システム(PMS)に提供することをさらに含み得る。
【0041】
本方法は、PMSによって、EMSによって決定された動作点に従ってマイクログリッドの制御可能資産を制御することを含み得る。
【0042】
別の態様によれば、EMSの動作を制御するためのシステムが提供される。EMSは、予測期間にわたって1つまたはいくつかの資産動作点を決定するためにMOOを実行するように動作し、MOOは、いくつかの目的関数の加重和である複合目的関数を最小化する、予測期間にわたる時間の関数として1つまたはいくつかの資産動作点を決定する。システムは、MOOにおいてEMSによって使用される複合目的関数において目的関数が重み付けされる重みを自動的に決定するように動作する少なくとも1つの集積回路と、決定された重みをEMSに提供するためのインターフェースとを備える。
【0043】
システムは、一実施形態による方法を実行するように動作することができる。
【0044】
システムは、MOOを使用して電力システムにおける是正または予防動作を実行するように動作することができる。
【0045】
システムは、MOOを使用して少なくとも1つの保護動作を実行するように動作することができる。
【0046】
システムは、MOOを使用して出力インターフェースを制御するように動作することができる。
【0047】
システムは、MOOを使用して出力インターフェースを制御して、警報、警告、ステータス情報、または他の電力システム関連情報を出力するように動作することができる。
【0048】
一実施形態によるマイクログリッドは、複数の制御可能資産と、予測期間にわたって1つまたはいくつかの資産動作点を決定するためにMOOを実行するように動作するEMSであって、MOOは、いくつかの目的関数の加重和である複合目的関数を最小化する、予測期間にわたる時間の関数として1つまたはいくつかの資産動作点を決定する、EMSと、EMSの動作を制御するためのシステムとを備える。
【0049】
マイクログリッドは、任意選択的に、1つまたはいくつかの負荷を備えてもよい。
【0050】
複数の制御可能資産は、制御可能な発電資産および/または制御可能な任意の負荷などの制御可能な負荷を含み得る。
【0051】
複数の制御可能資産は、再生可能エネルギー源を備え得る。
【0052】
複数の制御可能資産は、任意の負荷を含み得る。
【0053】
複数の制御可能資産は、任意選択的に、1つまたはいくつかの発電機および/または1つまたはいくつかのエネルギー貯蔵システム(ESS)を備え得る。
【0054】
ESSは、バッテリESS(BESS)を備え得る。
【0055】
複数の制御可能資産は、分散型エネルギー生成システム(DEG)を形成することができる。
【0056】
マイクログリッドは、EMSによって制御できない追加の資産を備えてもよい。
【0057】
追加の資産は、検知することができ、MOO内の目的関数のうちの少なくとも1つに影響を及ぼす動作パラメータを有することができる。
【0058】
マイクログリッドはPMSを備え得る。
【0059】
EMSおよび/またはEMSに通信可能に結合された別個の装置は、本明細書に開示された様々な実施形態による方法を実行するように動作することができる。
【0060】
マイクログリッドは、MOOを使用して電力システムにおける是正または予防動作を実行するように動作することができる。
【0061】
マイクログリッドは、MOOを使用して少なくとも1つの保護作用を実行するように動作することができる。
【0062】
マイクログリッドは、MOOを使用して出力インターフェースを制御するように動作することができる。
【0063】
マイクログリッドは、MOOを使用して出力インターフェースを制御して、警報、警告、ステータス情報、または他の電力システム関連情報を出力するように動作することができる。
【0064】
実施形態による方法および制御システムを使用して、様々な効果が達成される。実施形態による方法および制御システムは、マイクログリッドの動作パラメータを決定する際の信頼性および再現性の向上の必要性に対処する。実施形態による方法および制御システムは、EMSが使用されるユースケース(例えば、マイクログリッドの詳細)に応じてEMSの動作を調整することを可能にする。
【0065】
図面の簡単な説明
本発明の主題は、添付の図面に示される好ましい例示的な実施形態を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図6】パレートフロントおよびユートピア点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
実施形態の詳細な説明
本発明の例示的な実施形態を、同一または類似の参照符号が同一または類似の要素を示す図面を参照して説明する。いくつかの実施形態は、例示的な充電インフラストラクチャの概念および/または例示的な車載バッテリの概念の文脈で説明されるが、実施形態はこれに限定されない。実施形態の特徴は、特に明記しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0068】
本発明の実施形態は、マイクログリッドの制御における向上した堅牢性および適応性を提供するために使用することができる。エネルギー管理システム(EMS)の動作は、多目的最適化(MOO)で使用される重みを調整することによって調整することができる。調整は、少なくとも1つの集積回路を使用して自動的に実行されてもよい。重みは、EMSが展開されるユースケースに応じて決定されてもよい。重みは、以下によって決定され得る。
【0069】
図1は、複数の制御可能な発電資産11、12、13、14を備える例示的なマイクログリッド10を示す。マイクログリッド10は、1つまたはいくつかの制御可能な負荷15、16、17を備え得る1つまたはいくつかの負荷18をさらに含み得る。1つまたはいくつかの制御可能な負荷15、16、17は、1つまたはいくつかの任意の負荷を含み得る。マイクログリッド10内の発電は、電力管理システム(PMS)40および/またはエネルギー管理システム(EMS)50を含む制御システムによって制御される。
【0070】
マイクログリッド10は、マクログリッド(メイングリッドとも呼ばれる)に接続されてもよい。マイクログリッド10は、マイクログリッドをマクログリッドから制御可能に接続および切断するための回路遮断器または他の断路器を備え得る。
【0071】
複数の制御可能な発電資産11、12、13、14は、
図1に示す風力タービンまたは
図2に示す光起電力モジュール21、22、23などの再生可能エネルギー源を含み得る。複数の制御可能な発電資産は、化石燃料またはエネルギー貯蔵システム(ESS)に基づいて動作するガスタービンまたは他の発電機を含み得る。
【0072】
複数の制御可能な負荷15、16、17は、任意の負荷を含み得る。
【0073】
複数の制御可能な発電資産31、32、33は、
図3のブロックとして一般的に示されており、制御可能な発電資産は、風力タービン、光起電力モジュール、他の再生可能エネルギー源(RES)、化石燃料を消費する発電機、またはESSを含み得ることが理解される。
【0074】
PMS40は、個々の資産、特に制御可能な発電資産および/または制御可能な負荷を制御および調整することができる。PMS40は、総負荷、マイクログリッド構成、充電状態(SoC)、現在のPVおよび風力の可用性、または制御目的のための他のペナルティ係数などのローカルに知られているパラメータを使用するように動作することができる。PMS40はまた、PMS40が利用可能なデータに基づいて動作を最適化する最適化エンジンを含み得る。PMS40は、典型的には、ローカルで利用可能な値ならびに過去および現在時刻データにしかアクセスできないため、この最適化は制限され得る。
【0075】
EMS50は、過去および現在のローカルデータに加えて予測を用いて各資産のより良い最適動作点を計算する最適化システムを含み得る。予測は、負荷プロファイル、PVおよび風の可用性、気象および雲の予測、他のペナルティ要因などについてのものであり得る。
【0076】
EMS50は、動作点を決定するためにMOOを実行する際に、測定したパラメータを使用してもよい。測定されたパラメータは、マイクログリッドの少なくとも1つの資産の電気特性に関するパラメータおよび/または流体特性に関するパラメータ(例えば変圧器絶縁流体、周囲空気温度、周囲空気湿度、周囲風速など)および/または他のパラメータ(平均日射量など)のうちの1つまたはいくつかの測定値を含み得る。
【0077】
PMS40は、マイクログリッド内で是正および/または予防制御動作を実行するときに、測定されたパラメータを使用することができる。測定されたパラメータは、マイクログリッドの少なくとも1つの資産の電気特性に関するパラメータおよび/または流体特性に関するパラメータ(例えば変圧器絶縁流体、周囲空気温度、周囲空気湿度、周囲風速など)および/または他のパラメータ(平均日射量など)のうちの1つまたはいくつかの測定値を含み得る。
【0078】
PMS40および/またはEMS50は、パラメータを測定し、測定値をPMS40および/またはEMS50に提供する、センサ25と総称される複数のセンサ26、27に通信可能に結合されてもよい。複数のセンサ25は、マイクログリッドの資産、資産に接続された構成要素、および/または周囲パラメータに関連するパラメータを測定するように動作することができる。複数のセンサ25は、マイクログリッドの少なくとも1つの資産の電気特性に関するパラメータ、および/または流体特性に関するパラメータ(例えば変圧器絶縁流体、周囲空気温度、周囲空気湿度、周囲風速など)、および/または他のパラメータ(平均日射量など)のうちの1つまたはいくつかを測定するように動作することができる。
【0079】
EMS50は、広域ネットワーク60を介して予測サーバ61a、61b、61cに接続されてもよい。予測サーバは、気象予測サーバ、エネルギー可用性予測サーバ、負荷プロファイル予測サーバ、または他の予測サーバを備え得る。
【0080】
EMS50は、最適化手順を実行して、複数の制御可能資産、特にマイクログリッド10の制御可能な発電資産および/または制御可能な負荷の最適動作点を決定することができる。EMS50は、MOOを実行してもよい。MOOは、予測期間(例えば、24時間)にわたる時間の関数として動作点を決定することを含むことができ、これは複合目的関数
【0081】
【数1】
を最小にする。式(1)において、OP
jは制御可能資産jの動作点を指定し、インデックスjはそれぞれの資産の識別子である。目的関数J
jは、様々な目的を含み得る。いくつかの目的関数J
jは、メイングリッドへのおよび/またはメイングリッドからのエネルギー伝達に関連する第1の目的関数(エネルギーがメイングリッドからマイクログリッドに供給されるときに課されるペナルティなど)を含み得る。いくつかの目的関数J
iは、マイクログリッドにおける発電に関連する第2の目的関数(発電のためにマイクログリッドで化石燃料を使用しなければならない場合に課されるペナルティなどで、このペナルティは、二酸化炭素排出に対するペナルティを含み得る)を含み得る。いくつかの目的関数J
iは、ESSの摩耗に関連する第3の目的関数(摩耗を引き起こすBESSの充放電プロセスに課されるペナルティなど)を含み得る。式(1)において、重みw
iは、複合目的関数Jを決定するために目的関数に乗算される重みを表す。
【0082】
目的関数Jjは、動作点だけでなく、例えば、ユーザインターフェースを介して取得され得る測定パラメータおよび/または他のパラメータにも依存し得る。そして、測定されたパラメータに対して最適化を行うと仮定して、最適化を行う変数として動作点を使用して最適化を行う。例示のために、電力変圧器および/または共通結合点の動作特性(摩耗など)などのゆっくりと変化する測定値が、目的関数Jjの1つまたはいくつかにおいて考慮されてもよい。
【0083】
過去、現在および将来の(予測された)データを使用して、EMSは、電力設定点(例えば、発電機、ESSなどについて)または電力制限(PV、風力タービンなどについて)または負荷電力設定点(例えば、任意の負荷について)の形態であり得る各資産の最良または最適な動作点を計算する。この動作点のセットは、改善されたメトリックをもたらすという点で「最適」である。改善されたメトリックの例は、これらに限定されないが、化石燃料の使用量の減少、CO2の排出量の減少、メンテナンス時間の短縮、ダウンタイムの短縮である。式(1)の複合目的関数は、そのような目的を示すメトリック値の加重和である。
【0084】
EMS50が実行されるシステムとは別個であっても一体であってもよいシステム60は、複合目的関数Jを決定するために目的関数に乗算される重みwiを設定するように動作する。コンピューティングシステム60は、EMSユースケースおよび運用シナリオを表す過去データを含むデータベース63を備えてもよく、またはデータベース63に通信可能に結合されてもよい。コンピューティングシステム60は、EMS50が展開されるユースケースと同様の少なくとも1つのユースケースについて、目的関数に乗算される重みwiを決定して複合目的関数Jを決定するように動作してもよい。
【0085】
これは、(i)(すべての重みwiの合計が1に等しいという制約下で)重みwiの様々なパラメータ化の最適化問題についての式(1)に対して得られた最適解のパレートフロント、および(ii)目的関数Jjの2つ、3つ以上、またはすべてを個別に最適化することによって算出されたユートピア点に基づいて、自動的に行われ得る。
【0086】
「ユートピア点」という用語は、複合目的関数に含まれる他の目的関数から個別に最適化された場合に、目的関数の1つが最適(例えば、最小)である動作点空間内の点を指す。
【0087】
目的関数についての「ユートピア点」を決定することは、予測期間(例えば、24時間)にわたる時間の関数として動作点を決定することを含むことができ、これは目的関数
【0088】
【数2】
を最小にする。式(2)において、OP
jは制御可能資産jの動作点を指定し、インデックスjはそれぞれの資産の識別子である。目的関数J
iは、様々な目的を含み得る。ユートピア点の決定は、複合目的関数に含まれる目的関数J
iの1つ、2つ、3つ以上に対して行われてもよい。
【0089】
目的関数の値は、他の目的関数とは独立して最適化(例えば、最小化)される場合、ユートピア値とも称される。ユートピア値という用語は、最適化が複合目的関数に含まれる他の目的関数から独立して行われる場合に、最適化されたいくつかの目的関数のうちの1つの値を指す。したがって、ユートピア値は、複合目的関数に含まれる他の目的関数を無視して最適化されたときの、目的関数の1つだけの最適値である。MOOが行われるとき、複合目的関数の最適値に対する目的関数の寄与は、MOOがいくつかの競合する目的を考慮するので、この目的関数のユートピア値よりも大きい。
【0090】
ユートピア値および/またはユートピア点のセットを決定することは、メイングリッドへのおよび/またはメイングリッドからのエネルギー伝達に関連する目的関数(エネルギーがメイングリッドからマイクログリッドに供給されるときに課されるペナルティなど)が最小である第1のユートピア値および/または第1のユートピア点を決定することを含み得る。ユートピア値および/またはユートピア点のセットを決定することは、マイクログリッドにおける発電に関連する目的関数(発電のためにマイクログリッドで化石燃料を使用しなければならない場合に課されるペナルティなどで、このペナルティは、二酸化炭素排出に対するペナルティを含み得る)が最小である第2のユートピア値および/または第2のユートピア点を決定することを含み得る。ユートピア値および/またはユートピア点のセットを決定することは、ESSの摩耗に関連する目的関数(BESSの充放電プロセスに課されるペナルティなどで、摩耗を引き起こす)が最小である第3のユートピア値および/または第3のユートピア点を決定することを含み得る。
【0091】
システム60は、1つまたはいくつかの集積回路61を含む。集積回路61は、プロセッサ、マイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field-programmable gate array)、またはそれらの組み合わせとして実装されてもよい。
【0092】
1つまたは複数の集積回路61は、適切なハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアを使用して、オプティマイザ62を実行するように構成され得る。システム60は、
(i)目的関数Jjのうちの2つ、3つ以上、またはすべてを個別に最適化することによって算出されたユートピア点を決定するために数回、および
(ii)(すべての重みwiの合計が1に等しいという制約下で)重みwiの様々なパラメータ化の最適化問題についての式(1)に対して得られた最適解のパレートフロントを決定するために数回、オプティマイザ62が実行されるように構成されてもよい。
【0093】
最適化は、個々の目的関数(ユートピア点決定用)または複合目的関数(パレートフロント生成用)が最適(典型的には最小)になる動作点をそれぞれ識別することができる。最適化は、目的関数(ユートピア点決定用)または複合目的関数(パレートフロント生成用)のこれらの最小値、およびパレートフロント上の様々な点に対する重みwiのパラメータ化をそれぞれ識別することができる。
【0094】
最適化は、制約下で実行されてもよい。制約は、所定のシナリオによるマイクログリッドの電力バランス、負荷プロファイルの一貫性、および/または発電のうちの1つまたは複数を含み得る。制約は、マイクログリッド資産の技術的制約を含み得る。制約は、ユーザインターフェースを介して入力することができるマイクログリッドオペレータの好みを含み得る。
【0095】
以下により詳細に説明するように、IC61は、目的関数JiがMOOにおいてEMS50によって使用される複合目的関数において重み付けされる重みwiを、ユートピア値のセットであって、各々は、他の目的関数とは無関係に最適化されたときのいくつかの目的関数のうちの1つの目的関数の最適値に対応する、ユートピア値のセットを決定することと、最適解のパレートフロントを決定することであって、最適解の各々は、いくつかの目的関数の異なる加重和を最適化する、パレートフロントを決定することと、パレートフロントおよびユートピア値のセットに基づいて、目的関数Jiが重み付けされる重みwiを決定することと、によって、自動的に決定するように動作することができる。
【0096】
距離ベースの技術を使用して、ユートピア値に最も近いパレートフロント上の点を識別することができる。
【0097】
重みwiは、MOOの実行に使用するためにEMS50に提供されてもよい。EMS50は、式(1)に従う複合目的関数が最小となるようにMOOを行ってもよく、重みwiはシステム60によって決定される。EMS50によって実行される最適化は、複数のセンサ25によって捕捉された測定値に依存してもよい。
【0098】
図4は、マイクログリッド制御システムの動作を示す概略ブロック図である。
【0099】
システム60は、MOOにおいてEMS50が使用する重みwiを決定する。これは、EMS50が配備されるユースケースに基づいて自動的に行われる。
【0100】
システム60は、重みwiをEMS50に提供する。重みは、有線または無線インターフェースを介して転送されてもよい。重みwiは、マイクログリッドの試運転中に調整することができる。重みwiは、マイクログリッドのEMS50のフィールド動作中に調整することができる。
【0101】
EMS50は、重みwiを受信し、提供された重みwiによっていくつかの目的関数が重み付けされる複合目的関数に対してMOOを実行する。MOOの結果は、資産動作点を含む。EMS50は、資産動作点をPMS40に提供する。これは、先読み方式で、例えば、6時間以上、12時間以上、24時間以上、48時間以上を含む予測期間にわたって行われてもよい。
【0102】
予測期間は特定の粒度を有し、予測期間は整数のより短い時間間隔を含む。より短い時間間隔は、(例えば、測定装置からの)データサンプリングの繰り返し間隔および/またはEMS50もしくはPMS40による計算の繰り返し間隔であってもよい。
【0103】
PMS40は、受信した動作点に従ってマイクログリッドの資産を制御する。
【0104】
システム60、EMS50および/またはPMS40は、同一のハードウェアシステム上に実装されてもよい。
【0105】
図5は、方法70のフローチャートである。方法70は、システム60によって自動的に実行されてもよい。
【0106】
工程71において、負荷および発電プロファイルをデータベースから読み出すことができる。データベースは、過去および/または合成プロファイルを含み得る。読み出した負荷および発電プロファイルは、マイクログリッド仕様、すなわち、EMS50が配備されるユースケースに依存し得る。
【0107】
工程72において、個別に最適化されたときの目的関数Jiの最小値に対応するユートピア値を決定するために、制約下でのいくつかの最適化が実行される。ユートピア値は、目的関数Jiの各々について決定されてもよいが、決定される必要はない。例示のために、マイクログリッドにおける局所的な発電に関連する目的関数の最適値は、ゼロ(マイクログリッドにおいて化石燃料が局所的に消費されない場合に対応する)などであり得ることが知られ得る。そのような場合、ユートピア値を決定するための最適化ルーチンは、非ゼロの最小値を有することが知られている目的関数(メイングリッドからマイクログリッドへのエネルギー伝達に対するペナルティなど)に限定され得る。
【0108】
工程73において、最適解のパレートフロントが算出される。これは、それぞれ重みwiの異なるパラメータ化について式(1)に従って複合目的関数の値を決定することを含み得る。パレートフロントの計算は、例えば、グリッド上で選択された重みwiの様々な組み合わせに対して実行され得る。パレートフロントの計算は、少なくとも2つの独立して可変の重みw1およびw2に対して実行されてもよく、重みw1およびw2は、それぞれマイクログリッド内のメイングリッドおよび局所発電との間のエネルギー伝達に関連する目的関数に適用される乗算重み係数であってもよい。次いで、ESS摩耗に関連する第3の重みw3は、重みの合計が1に等しくなるように制約されるという事実に起因して、w3=1-w1-w2であり得る。
【0109】
工程74では、パレートフロントおよびユートピア値の両方に基づいて、EMS50によって実行されるMOOで使用される重みが選択される。パレートフロントおよびユートピア値のセットに基づいて重みを決定することは、パレートフロント上の点からのユートピア点の距離を決定することを含み得る。パレートフロントおよびユートピア値のセットに基づいて重みを決定することは、ユートピア点からの最小距離を有するパレートフロント上の点を決定することを含み得る。複合目的関数において目的関数が重み付けされる重みは、ユートピア点からの最小距離を有するパレートフロント上の点を決定するときにいくつかの目的関数に適用される重みに基づいて決定され得る。
【0110】
図6は、パレートフロント80およびユートピア点81を示す。ユートピア点81は、ユートピア値によって決定される様々な個々の目的関数J
iの値によってスパンされる空間内の座標を有し得る。例示のために、ユートピア点81の座標のうちの1つは、マイクログリッドが接続されているグリッドにおけるエネルギー生成に関連する第1の目的関数が他の目的関数とは無関係に(しかし、電力バランスおよび他の技術的制約などの制約下で)最小化されるときの第1の目的関数の最小値を表す第1のユートピア値であってもよい。ユートピア点81の座標の別の1つは、第2の目的関数が他の目的関数とは無関係に(しかし、電力バランスおよび他の技術的制約などの制約下で)最小化される場合に、マイクログリッドにおける局所エネルギー生成に関連する第2の目的関数の最小値を表す第2のユートピア値であり得る。ユートピア点81の座標のさらに別の1つは、第3の目的関数が他の目的関数とは無関係に最小化される場合に(しかし、電力バランスおよび他の技術的制約などの制約下で)、ESS摩耗に関連する第3の目的関数の最小値を表す第3のユートピア値であり得る。局所エネルギー生成に関連する第2のユートピア値は、排出効果、例えば、ますます望ましくなくなってきている化石燃料消費に課されるペナルティを含み得る。
【0111】
パレートフロント80上の点82は、パレートフロント80およびユートピア点81の両方に基づいて決定される。説明のために、点82は、ユートピア点から最小距離(L1、L2などの適切な距離メトリックに従って計算される)を有するパレートフロント80上の点であると決定され得る。
【0112】
ユートピア点に最も近いパレートフロント上の点82が決定される重みwiは、MOOにおいてEMS50によって使用される重みとして識別されてもよい。
【0113】
MOOにおいてEMS50によって使用される重みwiを決定するために、他の技術が使用されてもよい。説明のために、バランスのとれた選択または正則化された選択を行うことができる。
【0114】
MOOにおいてEMS50によって使用される重みを決定するためにシステム60によって使用されるユースケースおよび/またはシナリオは、体系的な方法で過去データおよび/または合成データから生成されてもよい。
図7は、クラスタリングおよび分類が適用される技術の例示的なフローチャートである。
【0115】
図7は、方法90のフローチャートである。方法90は、システム60によって自動的に実行されてもよい。
【0116】
工程91において、データベース62からデータが読み出される。データは、過去のユースケースおよび/または動作シナリオを含み得る。データは、合成ユースケースおよび/または動作シナリオを含み得る。例示のために、機械学習(ML)技術を使用して、マイクログリッドの合成負荷および/または発電プロファイルを生成することができる。合成負荷および/または発電プロファイルを生成するために使用されるMLモデルは、過去の動作シナリオを受信する入力層を有することができる。MLモデルは、1つまたはいくつかの隠れ層を有することができる。MLモデルは、合成負荷および/または発電プロファイルを出力する出力層を有することができる。
【0117】
工程92において、クラスタリングおよび分類を実行して、同様のユースケースおよび/または負荷ならびに発電プロファイルを識別することができる。クラスタリングは、k平均クラスタリングまたは他のクラスタリング技術を含み得る。
【0118】
工程93において、ユースケースが選択される。どのEMS50に対して重みが決定されるべきかが既に分かっている場合、ユースケースは、EMS50の意図される展開シナリオに基づいて選択されてもよい。例示のために、EMS50が配備されるマイクログリッドと同じまたは同様の種類の再生可能エネルギー資源を有するか、または同様の平均発電量および/または負荷値を有するユースケースが選択されてもよい。
【0119】
工程71~74において、重みが決定される。これは、
図5を参照して説明したように行うことができる。選択された特定のユースケースは、ユートピア値およびパレートフロントを決定するときに課される負荷および/または発電プロファイルおよび制約を決定する。
【0120】
工程94において、検証を実行することができる。検証は、例えば、決定された重みを使用して実行されたときのMOOが、有効な制御戦略を表すことが知られている過去データに対してチェックされるシミュレーションを含み得る。
【0121】
工程93、71~74、および94を繰り返すことができる。例えば、いくつかの同様のユースケースが利用可能である場合、いくつかのユースケースに対して重みを決定することができる。工程94における検証において他のものよりも優れていると評価される重みのセットがEMS50に展開されてもよい。代替的または追加的に、重みのセットは、試運転中または現場使用中のいずれかで、様々なユースケースに対してプロアクティブに生成されてもよく、EMS50への展開のために格納されてもよい。
【0122】
様々な効果が、実施形態による方法およびシステムに関連する。例えば、本方法およびシステムは、EMSによって実行されるMOOのパラメータを調整することを可能にする。これは、自動的に、客観的基準に基づいて行われ得る。EMSの試運転および/または再構成が容易になる。
【0123】
本発明を図面および前述の説明において詳細に説明してきたが、そのような説明は説明的または例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。開示された実施形態に対する変形は、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の研究から、当業者によって、および特許請求された発明を実施することによって理解および達成され得る。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という語は他の要素または工程を排除せず、不定冠詞「a」または「an」は複数を排除しない。特定の要素または工程が別個の特許請求の範囲に記載されているという単なる事実は、これらの要素または工程の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではなく、具体的には、実際の特許請求の範囲の従属性に加えて、任意のさらなる意味のある特許請求の範囲の組み合わせが開示されていると見なされるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクログリッド用のエネルギー管理システム(EMS:energy management system)を運用する方法であって、
前記EMSは、予測期間にわたって1つまたはいくつかの資産動作点を決定するために多目的最適化(MOO:multi-objective optimization)を実行し、前記MOOを実行することは、いくつかの目的関数の加重和である複合目的関数を最小化する、前記予測期間にわたる時間の関数として前記1つまたはいくつかの資産動作点を決定し、
前記方法は、少なくとも1つの集積回路によって、前記MOOにおいて前記EMSによって使用される前記複合目的関数において前記いくつかの目的関数が重み付けされる重みを自動的に決定することを含む、方法。
【請求項2】
前記MOOにおいて前記EMSによって使用される前記複合目的関数において前記目的関数が重み付けされる前記重みを自動的に決定することは、前記少なくとも1つの集積回路を使用して行う以下のこと、すなわち、
ユートピア値のセットを決定することであって、前記ユートピア値の各々は、他の目的関数とは無関係に最適化されたときの前記いくつかの目的関数のうちの1つの最適値に対応する、ユートピア値のセットを決定することと、
最適解のパレートフロントを決定することであって、前記最適解の各々は、前記いくつかの目的関数の異なる加重和を最適化する、最適解のパレートフロントを決定することと、
前記パレートフロントおよび前記ユートピア値のセットに基づいて、前記目的関数が重み付けされる重みを決定することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パレートフロントおよび前記ユートピア値のセットに基づいて前記重みを決定することは、前記ユートピア値のセットによって定義された座標を有するユートピア点を決定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パレートフロントおよび前記ユートピア値のセットに基づいて前記重みを決定することは、前記パレートフロント上の点からの前記ユートピア点の距離を決定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パレートフロントおよび前記ユートピア値のセットに基づいて前記重みを決定することは、前記ユートピア点からの最小距離を有する前記パレートフロント上の点を決定することを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記複合目的関数において前記目的関数が重み付けされる前記重みは、前記ユートピア点からの前記最小距離を有する前記パレートフロント上の前記点を決定するときに前記いくつかの目的関数に適用される重みに基づいて決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ユートピア値を決定することは、前記マイクログリッドが接続されているグリッドにおけるエネルギー生成に関連する第1の目的関数の最小値を表す第1のユートピア値を決定することと、前記マイクログリッドにおける局所エネルギー生成に関連する第2のユートピア値を決定することとを含み、任意選択的に、局所エネルギー生成に関連する前記第2のユートピア値は、排出効果を含む、請求項2~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記重みを決定することは、前記マイクログリッドが接続されているグリッドにおけるエネルギー生成に関連する第1の目的関数が前記複合目的関数において乗算される第1の重みと、前記マイクログリッドにおける局所エネルギー生成に関連する第2の目的関数が前記複合目的関数において乗算される第2の重みと、任意選択的に、前記マイクログリッドのエネルギー貯蔵システム、特に電池エネルギー貯蔵システム(BESS:battery energy storage system)に関連する第3の目的関数が乗算される第3の重みと、を決定することを含み、任意選択的に、前記第2の目的関数は排出効果を含む、請求項2~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ユートピア値を決定すること、前記パレートフロントを決定することは、それぞれ、制約下で最適化を実行することを含み、任意選択で、前記制約は、所定のシナリオによる前記マイクログリッドの電力バランス、負荷プロファイルの一貫性、および/または発電のうちの1つまたは複数を含む、請求項2~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ユートピア値を決定すること、前記パレートフロントを決定すること、および前記重みを決定することは、複数の異なるシナリオの各々についてそれぞれ実行され、任意選択で、前記異なるシナリオは、前記マイクログリッドの負荷および/または発電プロファイルに関して互いに区別される、請求項2~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
複数のユースケースを識別するために複数のマイクログリッドについて取得されたデータをクラスタリングすることをさらに含み、
前記重みを自動的に決定することは、前記ユースケースのうちの少なくとも1つに対して実行される、
請求
項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記EMSによって、前記予測期間にわたる時間の関数として前記1つまたはいくつかの資産動作点を決定するために前記MOOを実行することをさらに含み、前記MOO内の前記目的関数は、前記決定された重みに依存し、任意選択的に、前記予測期間は少なくとも24時間を含む、
請求
項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記EMSによって、前記1つまたはいくつかの資産動作点を電力管理システム(PMS:power management system)に提供することと、
前記PMSによって、前記EMSによって決定された前記動作点に従って前記マイクログリッドの制御可能資産を任意選択的に制御することと、をさらに含む、
請求
項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
エネルギー管理システム(EMS)の動作を制御するためのシステムであって、前記EMSは、予測期間にわたって1つまたはいくつかの資産動作点を決定するために多目的最適化(MOO)を実行するように動作し、前記MOOは、いくつかの目的関数の加重和である複合目的関数を最小化する、前記予測期間にわたる時間の関数として前記1つまたはいくつかの資産動作点を決定し、前記システムは、
前記MOOにおいて前記EMSによって使用される前記複合目的関数において前記目的関数が重み付けされる重みを自動的に決定するように動作する少なくとも1つの集積回路と、
前記決定された重みを前記EMSに提供するためのインターフェースと、を備える、システム。
【請求項15】
マイクログリッドであって、
複数の制御可能資産と、
エネルギー管理システム(EMS)であって、前記EMSは、予測期間にわたって1つまたはいくつかの資産動作点を決定するために多目的最適化(MOO)を実行するように動作し、前記MOOは、いくつかの目的関数の加重和である複合目的関数を最小化する、前記予測期間にわたる時間の関数として前記1つまたはいくつかの資産動作点を決定する、エネルギー管理システムと、
請求項14に記載のシステムと、を備える、マイクログリッド。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0116
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0116】
工程91において、データベース63からデータが読み出される。データは、過去のユースケースおよび/または動作シナリオを含み得る。データは、合成ユースケースおよび/または動作シナリオを含み得る。例示のために、機械学習(ML)技術を使用して、マイクログリッドの合成負荷および/または発電プロファイルを生成することができる。合成負荷および/または発電プロファイルを生成するために使用されるMLモデルは、過去の動作シナリオを受信する入力層を有することができる。MLモデルは、1つまたはいくつかの隠れ層を有することができる。MLモデルは、合成負荷および/または発電プロファイルを出力する出力層を有することができる。
【国際調査報告】