(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】モジュラ低温冷却システム
(51)【国際特許分類】
F25B 9/10 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
F25B9/10 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529484
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 FI2022050745
(87)【国際公開番号】W WO2023089233
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524184183
【氏名又は名称】ブルーフォース オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニクナムモガダム、アミール
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルセルマン、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マンニネン、マッティ
(72)【発明者】
【氏名】ロシーア、レイフ
(72)【発明者】
【氏名】グンナーソン、デイビッド
(57)【要約】
低温冷却システムは、真空室と、前記真空室内の冷却板のための第1の支持システムと、前記真空室内の熱放射シールドのための第2の支持システムと、を備える。前記第1の支持システムに結合されてそれにより支えられるのは、第1の方向において互いにずらされた複数の互いに平行な冷却板である。前記第1の方向は、前記冷却板に垂直な方向として定義される。前記第2の支持システムに結合されてそれにより支えられるのは、複数の少なくとも部分的に入れ子状の熱放射シールドである。前記熱放射シールドのそれぞれは、前記冷却板のうちの対応する1つに近接するそれぞれの部分空間を遮蔽するように構成される。前記冷却板のうちの少なくとも第1の冷却板は、前記第1の方向において同じレベルで互いに近接する複数の区画を備えるモジュラ冷却板であり、前記区画は、互いに独立して前記第1の支持システムに結合されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空室と、
前記真空室内の冷却板のための第1の支持システムと、
前記真空室内の熱放射シールドのための第2の支持システムと、
前記第1の支持システムに結合されてそれにより支えられた、第1の方向において互いにずらされた複数の互いに平行な冷却板であって、前記第1の方向は前記冷却板に垂直な方向として定義される、冷却板と、
前記第2の支持システムに結合されてそれにより支えられた、複数の少なくとも部分的に入れ子状の熱放射シールドであって、前記熱放射シールドのそれぞれが前記冷却板のうちの対応する1つに近接するそれぞれの部分空間を遮蔽するように構成された、熱放射シールドと、
を備え、
前記冷却板のうちの少なくとも第1の冷却板が、前記第1の方向において同じレベルで互いに近接する2以上の区画を備えるモジュラ冷却板であり、前記区画が、互いに独立して前記第1の支持システムに結合されている、低温冷却システム。
【請求項2】
前記複数の冷却板が、最高温度から最低温度までのそれぞれの単調に減少する連続を形成する温度で保持されるように構成された冷却板の順序付けられた配列を備え、
前記配列においてより高い少なくとも1つの冷却板が、前記配列においてそれより下の前記冷却板のいずれかを取り除くことなしに前記第1の支持システムから取り外し可能である、
請求項1に記載の低温冷却システム。
【請求項3】
前記モジュラ冷却板の前記区画の互いに近接する縁が、互いに接しない、請求項1又は2に記載の低温冷却システム。
【請求項4】
結合部材が、前記区画の前記相互に近接する縁を互いに結合する、請求項3に記載の低温冷却システム。
【請求項5】
前記結合部材が、
ステンレス鋼帯、
熱結合ブロック、又は
前記第1の支持システムの一部であってそれらの近接する縁によって前記区画を支える棚受け
のうちの少なくとも1つを備える、請求項4に記載の低温冷却システム。
【請求項6】
前記モジュラ冷却板に近接する部分空間を遮蔽する前記熱放射シールドのうちのその1つが、前記区画のうちの少なくとも1つから熱的に絶縁される、請求項3から5までのいずれか一項に記載の低温冷却システム。
【請求項7】
前記冷却板のいずれも冷却せずに前記熱放射シールドのうちの少なくともいくつかを冷却するように構成された第1の専用の低熱源と、前記熱放射シールドのいずれも冷却せずに前記冷却板のうちの少なくともいくつかを冷却するように構成された第2の専用の低熱源と、を備える、請求項1から6までのいずれか一項に記載の低温冷却システム。
【請求項8】
前記低温冷却システムが、第1の希釈冷凍器と第2の希釈冷凍器とを備え、
前記第1の希釈冷凍器が、前記冷却板のうちの1つに位置する目標領域の第1の部分区画を冷却するように構成され、
前記第2の希釈冷凍器が、前記目標領域の、前記第1の部分区画から熱的に絶縁された、第2の部分区画を冷却するように構成される、
請求項1から7までのいずれか一項に記載の低温冷却システム。
【請求項9】
前記目標領域の前記第1の部分区画が、前記目標領域と前記低温冷却システムのより温かい部分との間の接続の熱化ステージを備え、
前記目標領域の前記第2の部分区画が、ペイロード・エリアを含む、
請求項8に記載の低温冷却システム。
【請求項10】
前記真空室が、最上部と、底部と、前記最上部と底部との間の複数の接続された側面と、を有し、前記側面のうちの少なくとも1つが、平面である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の低温冷却システム。
【請求項11】
前記真空室が、前記第1の方向と垂直な平面内に一定の多角形横断面を有する、請求項10に記載の低温冷却システム。
【請求項12】
少なくとも1サブセットの前記熱放射シールドが、前記真空室と類似して形成された横断面を有する、請求項11に記載の低温冷却システム。
【請求項13】
前記サブセットの熱放射シールドのうちの少なくとも1つが、前記第2の支持システムに互いに解放可能に結合されたシート部分を備える、請求項12に記載の低温冷却システム。
【請求項14】
前記真空室が、中に前記第1の支持システム及び前記第2の支持システムが位置する第1の真空モジュールを構成する、第1の真空室であり、
前記複数の冷却板が、前記第1の真空室内に位置し前記第1の支持システムによって支えられた、第1の複数の冷却板であり、
前記複数の熱放射シールドが、前記第1の真空室内に位置し前記第2の支持システムによって支えられた、第1の複数の熱放射シールドであり、
前記低温冷却システムが、第2の真空室と、前記第2の真空室内の冷却板のための第3の支持システムと、前記第2の真空室内の熱放射シールドのための第4の支持システムと、を備え、
前記低温冷却システムが、前記第3の支持システムに結合されそれにより支えられた、前記第1の方向において互いにずらされた第2の複数の互いに平行な冷却板を備え、
前記低温冷却システムが、前記第4の支持システムに結合されそれにより支えられた、第2の複数の少なくとも部分的に入れ子状の熱放射シールドを備え、前記熱放射シールドのそれぞれが、前記第2の複数の冷却板のうちの対応する1つに近接するそれぞれの部分空間を遮蔽するように構成され、
前記低温冷却システムが、前記第1の及び第2の真空室を共通の真空空間に接続する穴、前記第1の複数の熱放射シールドと前記第2の複数の熱放射シールドとの間の熱伝導性接続、第1の複数の冷却板と第2の複数の冷却板との間の熱伝導性接続のうちの少なくとも1つである少なくとも1つの相互結合を備える、
請求項1から13までのいずれか一項に記載の低温冷却システム。
【請求項15】
前記第1の及び第2の真空室のそれぞれが、最上部と、底部と、前記最上部と底部との間の複数の接続された側面と、を有し、前記第1の及び第2の真空室のそれぞれにおける少なくとも1つの側面が、平面であり、
前記第1の及び第2の真空室が、互いに対して前記平らな側面を有して、互いに近接し、
前記相互結合が、前記平らな側面がその一部であるインターフェースを通過する、
請求項14に記載の低温冷却システム。
【請求項16】
前記第1の及び第2の真空室が、互いに直接に接続された前記平らな側面を有し、
前記平らな側面における穴が、前記相互結合を伝える、
請求項15に記載の低温冷却システム。
【請求項17】
前記第1の及び第2の真空室が、離れて互いに向き合う前記平らな側面を有して、位置し、
前記平らな側面の間の1つ又は複数の導管が、前記相互結合を伝える、
請求項15に記載の低温冷却システム。
【請求項18】
前記第1の及び第2の真空室が、機械的支持物、真空ポンプ、気体の循環システム、低温液体の循環システム、動作電力、制御電子装置、通信接続のうちの少なくとも1つを備える、少なくとも1つの共通の外部支持システムを共用する、請求項14から17までのいずれか一項に記載の低温冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温冷却システムの技術分野に関する。詳細には、本発明は、大きな低温冷却システム又は低温プラットフォームのより簡単な構築、操作、保守、及び後の修正を可能にする構造的及び機能的解決法に関する。
【背景技術】
【0002】
低温冷却システムは、目標領域又はペイロード・ボリュームを非常に低い温度まで冷却し、所望の期間にわたりそのような条件を維持するように設計された複雑な機械類である。冷却されることになるペイロードは、たとえば、科学実験、量子コンピュータ、測定装置、及び/又は、その正確な動作が単に数ケルビンほどの又は1ケルビン未満の温度さえも要求する、他の何かを含み得る。低温冷却システムはまた、クライオスタットとも称され得る。いくつかのソースでは、指定低温冷却システムは、低温を生み出すそのサブシステムのクライオスタットのためだけに使用され、一方、クライオスタットは、機械的支持物、真空ポンプ、放射線遮蔽、ケーブル配線などのような他のサブシステムを含むと付加的に言われる。本明細書では、クライオスタット及び低温冷却システムという用語は、互いの同義語として使用され、クライオスタットは、真空が単一の低熱源(機械的冷却器又は液体寒剤の浴)を有し得るような、幾分かより単純なものであり得、一方、低温冷却システムは、予冷のための外部低熱源及び最低温度を達成するための内部低熱源(たとえば、希釈冷凍器など)でより複雑なものであ得る、という解釈を場合により含む。
【0003】
図1は、希釈冷凍器及び機械的予冷器を備える低温冷却システムの簡略化された略図である。最も外側の構造は、
図1に破線で示された、真空缶101である。最も上のフランジ102は、真空缶の蓋である。機械的予冷器の室温ステージ103が、そこに取り付けられている。機械的予冷器の第1のステージ104は、第1のフランジ105に取り付けられ、機械的予冷器の第2のステージ106は、第2のフランジ107に取り付けられている。第1の及び第2のフランジは、動作中にそれらの温度を反映して、たとえば、50Kフランジ及び4Kフランジと称され得る。
【0004】
さらに下には、希釈冷凍器の蒸留器109が取り付けられた蒸留器フランジ108のような、より多くのフランジがある。
図1では、希釈冷凍器の混合室110は、基準温度フランジ111に取り付けられている。参照指示子112は、しばしばサンプルと称される、冷却されることになっているペイロードを示す。それは、可能な限り優れた熱コンダクタンスを確保するために、基準温度フランジ111にしっかりと取り付けられている。基準温度フランジ111は、熱を伝導する材料で作られている並びに極低温度で可能なので、サンプル(又は、他の形のペイロード)が、それの任意の部分に取り付けられ得る。それでペイロードのためのより適切な取り付け場所が提供され得る、混合室110に熱的に結合されたコールド・フィンガと呼ばれる延長構造が存在し得る。
【0005】
図を明確にするために
図1には示されていない円筒状で平底の放射シールドは、周囲から放射熱を守るため及びより高温の部分を内部のより冷たい部分に到達させないために、入れ子状構成においてフランジに通常は取り付けられている。構造は、蒸留器フランジ108と基準温度フランジ111との間のいわゆる100mKフランジのような他の中間フランジを備え得る。位置合わせされた開口部113、114、及び115が、サンプル112へのいわゆる見通し線ポートを、最上部のカバー116とともに、提供するために、フランジ内に存在し得る。
【0006】
図2は、或いは
図1と同じであるが、略してサンプル交換装置としばしば称される、高速サンプル交換機構でサンプルを載せる可能性を含む、低温冷却システムを示す。低温冷却システムは、仕切弁202に取り付けられ得るロード・ロック201を備える。
図2に示されたシステムは、上部投入型タイプであり、したがって、仕切弁202は、真空缶101の蓋102にある。サンプル・ホルダ203は、基準温度フランジ上の目標領域205にある場所にサンプル・ホルダ203を最終的に取り付けるためにその縦方向(
図1における垂直方向)において移動され得る、細長いプローブ204の下端にある。サンプルが、下から装填されるように、底部装填タイプのシステムは、真空缶の底部に仕切弁を有する。側面装填タイプのシステムもまた、知られており、それでは、サンプル・ローダは、真空缶の側面において仕切弁に接続する。
【0007】
図1及び
図2に概略的に示された種類の従来の低温冷却システムは、おおよそ、約数十センチメートルの基準温度フランジの直径を有する、独立型カップボードのサイズであった。ある特定の適用の枠組みでは、特定の量子コンピューティングにおいて、ますます大きなペイロード・ボリューム及びペイロード・フットプリントが、必要とされる。より大きなペイロード・ボリューム及び/又はフットプリントを提供するための簡単な手法は、単純に、従来の構造の寸法を拡大することである。大きな低温冷却システムの一例は、https://arxiv.org/abs/2108.10816v1において入手可能な、M.Hollister、R.Dhuley、G.Tatkowski:「A large millikelvin platform at Fermilab for quantum computing applications」に示されている。そこに記載されたクライオスタットのペイロード・ボリュームは、直径2メートル且つ高さ1.5メートルである。
【0008】
クライオスタットのペイロード・ボリューム及びフットプリントを拡大する別の手法は、https://www.cryoworld.com/projects/project-1/において入手可能なインターネット公開から知られる。前記手法では、円筒状のメイン真空室が、水平に配置され、長さ4メートル及び幅60センチメートルの液体ヘリウム冷却された4ケルビン台板を提供される。真空室の側面にある長方形の扉は、内側をサービス提供のためにアクセス可能にする。
【0009】
前記の知られている試みにもかかわらず、低温冷却システムに大きなペイロード・ボリュームを提供することは、些細なことではない。具体的には、冷却容量、冷却技術、及び基準温度、並びにペイロード・サイズ及び形状に関する多様で変化する要求に適合され得る柔軟なやり方で大規模な低温冷却システムを提供することを可能にする解決法を示すことが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】https://arxiv.org/abs/2108.10816v1、M.Hollister、R.Dhuley、G.Tatkowski:「A large millikelvin platform at Fermilab for quantum computing applications」
【非特許文献2】https://www.cryoworld.com/projects/project-1/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一目的は、大きく柔軟に適合可能なペイロード・ボリュームを有し、所望の温度ステージにおける大きなペイロード・フットプリントを可能にし、サービス提供を必要とするペイロード・エリア及び部分に簡単にアクセスでき、操作及び維持が容易であり、必要に応じてミリケルビン範囲以下で温度を達成することができる、低温冷却システムを示すことである。別の目的は、低温冷却システムが異なる種類の要求に柔軟に適合され得るということである。さらに別の目的は、低温冷却システムが、動作において信頼でき、さらに妥当なコストで製造、組み立て、及び動作することが可能である、ということを確実にすることである。
【0012】
これらの及びさらなる有利な目的が、低温冷却システム又はプラットフォームが添付の特許請求の範囲で述べられる特徴のうちの少なくともいくつかを有するようにすることによって、達成される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様によれば、真空室と、前記真空室内の冷却板のための第1の支持システムと、前記真空室内の熱放射シールドのための第2の支持システムと、を備える、低温冷却システムが提供される。前記第1の支持システムに結合され、それにより支えられるのは、第1の方向において互いにずらされた複数の互いに平行な冷却板である。前記第1の方向は、前記冷却板に垂直な方向として定義される。前記第2の支持システムに結合され、それにより支えられるのは、複数の少なくとも部分的に入れ子状の熱放射シールドである。前記熱放射シールドのそれぞれは、前記冷却板のうちの対応する1つに近接するそれぞれの部分空間を遮蔽するように構成される。前記冷却板のうちの少なくとも第1の冷却板は、前記第1の方向において同レベルで互いに近接する複数の区画を備えるモジュラ冷却板であり、前記区画は、互いに独立して前記第1の支持システムに結合される。
【0014】
一実施の形態によれば、前記複数の冷却板は、最高温度から最低温度までのそれぞれの単調に減少する連続を形成する温度で保持されるように構成された冷却板の順序付けられた配列を含む。前記配列内のより高い少なくとも1つの冷却板が次いで、前記配列内のそれより下の冷却板のいずれかを取り除くことなしに前記第1の支持システムから取り外し可能であり得る。これは、簡単な分解、組み立て、及びサービス提供の利点を伴う。
【0015】
一実施の形態によれば、モジュラ冷却板の前記区画の互いに近接する縁は、互いに接しない。これは、必要に応じて冷却板モジュールの間の熱結合を設計することができるという利点を伴う。
【0016】
一実施の形態によれば、結合部材は、前記区画の前記相互に近接する縁を互いに結合する。これは、必要に応じて冷却板モジュールの間の熱結合を設計することができるという利点を伴う。
【0017】
一実施の形態によれば、前記結合部材は、前記第1の支持システムの一部であってそれらの近接する縁によって前記区画を支える、ステンレス鋼帯、熱結合ブロック、又は棚受けのうちの少なくとも1つを含む。これは、構造的相乗作用が達成され得る及び/又は熱結合が確実且つ明確な方式で設計され得るという利点を伴う。
【0018】
一実施の形態によれば、前記モジュラ冷却板に近接する部分空間を遮蔽する前記熱放射シールドのうちのその1つは、前記区画のうちの少なくとも1つから熱的に絶縁される。これは、それらの温度が、必要に応じて、個別に設定され得るという利点を伴う。
【0019】
一実施の形態によれば、低温冷却システムは、前記冷却板のいずれも冷却せずに前記熱放射シールドのうちの少なくともいくつかを冷却するように構成された第1の専用の低熱源と、前記熱放射シールドのいずれも冷却せずに前記冷却板のうちの少なくともいくつかを冷却するように構成された第2の専用の低熱源と、を備える。これは、冷却力が効果的に使用され得るという、及び様々な部分の温度が必要に応じて選択され得るという利点を伴う。また、これは、低熱源を交換することと低熱源のための所望の技術を選択することとを可能にする。
【0020】
一実施の形態によれば、低温冷却システムは、第1の希釈冷凍器と第2の希釈冷凍器とを備える。前記第1の希釈冷凍器は、前記冷却板のうちの1つに位置する目標領域の第1の部分区画を冷却するように構成され得、前記第2の希釈冷凍器は、前記目標領域の、前記第1の部分区画から熱的に絶縁された、第2の部分区画を冷却するように構成され得る。これは、ペイロードが所望の温度まで効果的に冷却され得るという利点を伴う。
【0021】
一実施の形態によれば、目標領域の前記第1の部分区画は、目標領域と低温冷却システムのより温かい部分との間の接続の熱化ステージを備え、目標領域の前記第2の部分区画は、ペイロード・エリアを含む。これは、ペイロードが所望の温度まで効果的に冷却され得るという利点を伴う。
【0022】
一実施の形態によれば、真空室は、最上部と、底部と、前記最上部と底部との間の複数の接続された側面と、を有し、前記側面のうちの少なくとも1つは平面である。これは、大きなアクセス及び結合するインターフェースが真空室に比較的単純に構築され得るという利点を伴う。
【0023】
一実施の形態によれば、真空室は、前記第1の方向と垂直な平面内に一定の多角形横断面を有する。これは、構造的幾何学的形状が大きなシステムを構築する際に多目的の仕方で利用され得るという利点を伴う。
【0024】
一実施の形態によれば、少なくとも1サブセットの前記熱放射シールドは、前記真空室と類似して形成された横断面を有する。これは、特に、いくつかのモジュールがより大きなユニットに結合されるときに、構造的利点を伴う。加えて、こうして、利用可能な空間が、効果的に利用され得る。
【0025】
一実施の形態によれば、前記サブセットの熱放射シールドのうちの少なくとも1つは、第2の支持システムに互いに解放可能に結合されたシート部分を備える。これは、熱放射遮蔽の所望の部分のみが、システムの所望の内部部分にアクセスするために、分解されればよいという利点を伴う。
【0026】
一実施の形態によれば、前記真空室は、中に前記第1の支持システム及び前記第2の支持システムが位置する第1の真空モジュールを構成する、第1の真空室である。前記複数の冷却板は、そのとき、前記第1の真空室内に位置し前記第1の支持システムによって支えられた、第1の複数の冷却板でもよい。前記複数の熱放射シールドは、そのとき、前記第1の真空室内に位置し前記第2の支持システムによって支えられた、第1の複数の熱放射シールドでもよい。低温冷却システムは、そのとき、第2の真空室と、前記第2の真空室内の冷却板のための第3の支持システムと、前記第2の真空室内の熱放射シールドのための第4の支持システムと、を備え得る。低温冷却システムは、前記第3の支持システムに結合されそれにより支えられて、前記第1の方向において互いにずらされた第2の複数の互いに平行な冷却板を備え得る。低温冷却システムは、前記第4の支持システムに結合されそれにより支えられて、第2の複数の少なくとも部分的に入れ子状の熱放射シールドを備え得、前記熱放射シールドのそれぞれは、前記第2の複数の冷却板のうちの対応する1つに近接するそれぞれの部分空間を遮蔽するように構成される。低温冷却システムは、以下のうちの少なくとも1つである少なくとも1つの相互結合を備え得る:前記第1の及び第2の真空室を共通の真空空間に接続する穴、第1の複数の熱放射シールドと第2の複数の熱放射シールドとの間の熱伝導性接続、第1の複数の冷却板と第2の複数の冷却板との間の熱伝導性接続。これは、システムがモジュラ様式で拡張され得るという利点を伴う。
【0027】
一実施の形態によれば、第1の及び第2の真空室のそれぞれは、最上部と、底部と、前記最上部と底部との間の複数の接続された側面と、を有し、第1の及び第2の真空室のそれぞれにおける少なくとも1つの側面は、平面である。第1の及び第2の真空室は、そのとき、互いに対する前記平らな側面を有して、互いに近接し得、前記相互結合は、前記平らな側面がその一部であるインターフェースを通過し得る。これは、モジュラで拡張されるシステムが比較的単純な全体構造を有し得るという、及び資源が異なるモジュール間で共用され得るという利点を伴う。
【0028】
一実施の形態によれば、第1の及び第2の真空室は、互いに直接に接続された前記平らな側面を有し、前記平らな側面における穴は、前記相互結合を伝える。これは、モジュラで拡張されたシステムが比較的単純な全体構造を有し得るという、及び資源が異なるモジュール間で共用され得るという利点を伴う。
【0029】
一実施の形態によれば、第1の及び第2の真空室は、離れて互いに向き合う前記平らな側面を有して、位置し、前記平らな側面の間の1つ又は複数の導管は、前記相互結合を伝える。これは、より大きなシステムのモジュールがより自由に配置され得るという利点を伴う。
【0030】
一実施の形態によれば、前記第1の及び第2の真空室は、以下のうちの少なくとも1つを備える、少なくとも1つの共通の外部支持システムを共用する:機械的支持物、真空ポンプ、気体の循環システム、低温液体の循環システム、動作電力、制御電子装置、通信接続。これは、大きなモジュラ・システムでも比較的コンパクトなやり方で構築され得るという利点を伴う。
【0031】
本発明のさらなる理解をもたらすために含まれる及び本明細書の一部を構成する、添付の図面は、本発明の実施の形態を示し、記述とともに、本発明の原理の説明を助ける。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】希釈冷凍器を備えるクライオスタットの略図である。
【
図2】希釈冷凍器及びサンプル交換装置を備えるクライオスタットの略図である。
【
図3】低温冷却システムのいくつかの部分を概略的に示す。
【
図4】低温冷却システムのいくつかの部分を概略的に示す。
【
図5】低温冷却システムのいくつかの部分を概略的に示す。
【
図6】冷却板の区画の縁を結合する1つの可能なやり方を示す。
【
図7】冷却板の区画の縁を結合する1つの可能なやり方を示す。
【
図8】冷却板の区画の縁を結合する1つの可能なやり方を示す。
【
図9】熱放射シールドのための支持システムの一例を示す。
【
図11】ケーブル配線サブシステムの詳細の一例を示す。
【
図12】ケーブル配線サブシステムの詳細の一例を示す。
【
図13】モジュラ低温冷却システムの拡張の可能性を示す。
【
図14】冷却板及び熱放射シールドのモジュラリティの可能な手法を示す。
【
図15】低温冷却システムのいくつかの部分を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図3は、低温冷却システムの略図である。システムは、本技術分野に関する従来の考え方を越える有意な新しい態様を組み込むので、低温プラットフォームという用語が、導入され得る。本明細書の専門用語では、低温プラットフォームは、
図1及び
図2に関して前述で説明された厳密に入れ子状の手法に従った従来の低温冷却システムからサイズ及び多用途性において次のステップを表す。たとえば、低温プラットフォームは、どの種類の低熱源が使用されるかに関して大きく不可知論的であり得、以前に使用された低熱源を新しいものと交換すること及び/又は各使用事例の低熱源の数及びタイプを個別に選択することを可能にし得る。クライオスタットが低熱源を有する単純な真空缶であった並びに低温冷却システムが予冷のための外部低熱源と基準温度まで冷却するための内部低熱源とを有するより複雑な装置であった、前に導入された専門用語と比較して、低温プラットフォームは、冷却の複数のそのような階層レベル及び/又は任意の又は各階層レベルにおいて複数の並列的に動作する低熱源を有し得る。
【0034】
図3の背景における最大ブロックは、真空室301を表す。真空室301のサイズ、形状、及び基本的構造的解決法については、本明細書でさらに詳しく論じられる必要はないが、形状に関するある種の知的選択及び基本的構造的解決法は、
図1及び
図2を参照して前述したもののようなより従来型の解決法と比較して大きな利点を提供し得る、ということが指摘され得る。そのような知的選択はまた、サービス能力及び実用に関する重要な利点を同時に伴いながら、より従来型のクライオスタットよりも有意に大きなサイズにシステム又はプラットフォームを拡大するのに役立ち得る。形状に関するそのような知的選択及び基本構造的解決法の例については、本文でより詳しく後述する。
【0035】
図3によれば、真空室301内部には、2つの支持システム302及び303がある。明白な参照を目的として、これらは、第1の支持システム302及び第2の支持システム303と呼ばれ得る。第1の支持システム302は、冷却板のためであり、第2の支持システム303は、熱放射シールドのためである。第1の及び第2の支持システム302及び303は、互いに完全に分離している必要はない。言い換えれば、いくつかの構造的要素は、両方の支持システムにおいて役割を有し得る。しかしながら、より詳細に後述される理由で、冷却板から独立した少なくともいくつかの構造的特徴を放射シールドの支持システムに示させることが有利である。従来のクライオスタットでは、熱放射シールドの典型的な形及び構造は、一端において閉じた同型の円筒状のシェルのそれであった。そのような従来の熱放射シールドは、通常は、それの開口端の縁によって対応する冷却板にそれを取り付けることによって、支えられる。
【0036】
図3に概略的に示された低温冷却システム又はプラットフォームにおける第1の及び第2の支持システム302及び303の存在は、より従来型の手法に対する利点を提供する。第1に、それは、それぞれの冷却板又はその少なくとも一部から熱的に絶縁されたままであるように、熱放射シールドのうちの少なくとも1つ又はいくつかを-或いは前記熱放射シールドのすべてさえも-構築することを可能にする。熱放射シールドが、対応する冷却板によって直接に支えられないとき、これらの2つは、互いに直接の機械的(すなわち、熱伝導性)接触なしに、熱的に離れてとどまり得る。第2に、それは、適切な位置に取り付けられ得る且つ直ちに熱放射シールド全体よりも小さな部分で取り外され得るモジュラ部分の熱放射シールドのうちの少なくとも1つ又はいくつかを-或いは前記熱放射シールドのすべてさえも-構築することを可能にする。物理アクセスをするために、熱放射シールド全体を分解して取り外す必要は必ずしもなくそれの一部のみでよいので、これは、次に、従来のシステムよりも低温冷却システム又はプラットフォームの内部部分へのより簡単な物理アクセスを可能にし得る。第3に、それは、個別に熱放射シールド及び冷却板のための専用の低熱源7を使用する可能性をもたらす。
【0037】
熱放射シールドは、概して、
図3のブロック304によって表されている。
【0038】
冷却板は、概して、
図3のブロック305によって表されている。
図1及び
図2に示された従来の手法とのある特定の類似性において、冷却板305は、複数の本質的に板形の構造であり、互いに平行に位置し、冷却板に垂直のある特定の第1の方向において互いに離れている。冷却板305のうちの1つが、いわゆる基準温度板、すなわち、最も冷たくされ得る低温冷却システム又はプラットフォームの部分、であるように、冷却板305のそれぞれは真空室301内の温度ステージを表すということが-必須ではないが-可能である。前記第1の方向においてそのような基準温度板から進んで、どんどん高い温度の連続的冷却板が存在する。
【0039】
非制限的な一例として、希釈冷凍器が、数ミリケルビンだけまで基準温度板を冷却するために使用される場合、希釈冷凍器の混合室は、基準温度板上に位置する。前記第1の方向において進むと、100mK板、蒸留器板(そこに希釈冷凍器の蒸留器が位置する)、4K板(それに機械的冷蔵庫のより低いステージが熱的に結合される)、及び50K板(それに機械的冷蔵庫の上のステージが熱的に結合される)が存在し得る。
【0040】
各冷却板は、それに近接する部分空間を画定すると言われ得る。冷却板305のそれぞれに関連する熱放射シールド304のうちの対応する1つが通常は存在するので、そのような熱放射シールドは、冷却板305のうちの対応する1つに近接するそれぞれの部分空間を遮蔽するように構成されると言うことができる。
【0041】
各冷却板が必須の同型の実体である、
図1及び
図2に示された従来の手法との差として、冷却板305のうちの少なくとも1つの又はいくつかは、モジュラ冷却板でもよい。モジュラ冷却板は、互いに近接する複数の区画を備えるものである。モジュラ冷却板のみである場合、それらがさらに単一の冷却板を形成するという事実は、全体として冷却板305の配置を見るとき、区画が前記第1の方向において同レベルにある、ということを意味すると解釈される。
【0042】
いくつかの重要な利点が、互いに独立して第1の支持システム302にモジュラ冷却板の区画を結合することによって、達成され得る。同じモジュラ冷却板の他の区画から独立して第1の支持システム302に結合されることは、どのように同冷却板のその他の区画が同時に処理されるかにかかわりなく、そのような区画が、必要に応じて、第1の支持システム302に適切な位置において取り付けられ得る及びそこから取り外され得る、ということを意味する。必須ではなく、場合により、それはまた、冷却板の区画の間の熱結合の強度に影響を与え得る。本態様については、本明細書において以下でさらに詳しく論じる。
【0043】
通常は基準温度板、追加的に又は代替的にはその他の冷却板のうちの1つ又は複数もまた、
図3のブロック306に示すように1つ又は複数のペイロードを取り付けるための場所を提供する。ペイロード306は、たとえば、科学実験、量子コンピュータ構成要素、測定装置、及び/又は、適切な動作のために特定の温度を要求する他の種類のデバイス及び配置を含み得る。冷却板に及び/又は冷却板の間にやはり結合されるのは、たとえば、冷却板、並びに温度計、温度制御要素、センサ、接続のために必要とされる回路などの様々な種類の器具類308の間の熱伝導率をそれ用いて制御することができる、熱スイッチ307でもよい。
【0044】
一般に、単に基準温度板以外に冷却板にやはり取り付けられる構成要素は、ペイロードと見なされ得る。たとえば、低温冷却システム又はプラットフォームが量子コンピュータを冷却するために使用されると想定すると、量子処理ユニット、進行波パラメトリック増幅器などのような、最低温度を最も決定的に必要としているそれらの構成要素を備える基準温度ペイロードが存在し得る。たとえばHEMT(high electron mobility transistor:高電子移動度トランジスタ)増幅器、フィルタなどを備える、別のペイロードが4Kステージにあり得る。減衰器、フィルタ、熱交換器などは、必要に応じて、ほとんどどんな温度ステージにも位置し得る。
【0045】
結合309は、冷却板305と第1の支持システム302との間に概略的に示されている。
図3のすべての他の結合でのように、熱結合が、ここでは特に意図されている。前述のように、冷却板の間にも個々の冷却板の区画間にも、様々な(及び、ある場合には、可変の)大きさの熱結合が存在し得る。最後に述べたものを意図的に設計するための最善の自由を有するために、モジュラ冷却板の区画が、区画の互いに近接する縁が互いに接しないようにされる(及び、そのように第1の支持システム302に取り付けられる)場合、それは有利である。必要に応じて、別個の結合部材が、次いで、モジュラ冷却板の区画のそのような互いに近接する縁を結合するために用いられ得る。そのような結合部材の非制限的な例は、近接する縁、熱結合ブロック、又は、前記第1の支持システムの一部であってそれらの近接する縁によって前記区画を支える棚受けの間の隙間を埋めるステンレス鋼帯を含むが、これに制限されない。
【0046】
別個の第1の及び第2の支持システム302及び303によってもたらされる利点のうちの1つは、冷却板及び熱放射シールドのうちの少なくともいくつかのための専用の低熱源を有することを含む、ということは既に前述した。想起するために、
図1のもののような先行技術の解決法では、たとえば、機械的予冷器のより低いステージ106が、それぞれの冷却板107を冷やし、それぞれの冷却板107は、
図1に示されていないがそれの開口端の縁によって冷却板107からぶらさがる円筒状の缶のように見えると期待される放射シールドを次に冷却する。したがって、そのような先行技術システムでは、同冷却力は、冷却板とそれの放射シールドとの両方を冷却するために利用可能であり、冷却板及び放射シールドは、最終的にまさしく同じ温度になる。
【0047】
図3のもののような低温冷却システム又はプラットフォームには、それぞれの冷却板305に専用の1つ又は複数の低熱源310と、それぞれの熱放射シールド304に専用の1つ又は複数の低熱源311とが存在し得る。この点で、専用の低熱源は1つであり、その冷却効果が、特に、それぞれの冷却板又は熱放射シールドに向けられる。低熱源として、たとえば、パルス管冷蔵庫、ギフォード・マクマホン冷却器、スターリング冷却器などの1つ又は複数の機械的冷却器が存在し得る。追加的に又は代替的に、1つ又は複数のジュール・トムソン冷却器、希釈冷凍器、磁気熱量冷却器、及び/又は他の種類の冷却装置が存在し得る。機械的冷却器に加えて又はその代わりに、液体寒剤の1つ又は複数の浴が、使用され得る。低熱源のうちの少なくともいくつかとしての液体寒剤の可能な使用は、機械的冷却器によって表されるポイント別の冷却に加えて又はその代わりに大規模な分散された冷却解決法を場合により用いることとして特徴付けられ得る。
【0048】
有利な一実施の形態では、低温冷却システム又はプラットフォームは、冷却板305のいずれも冷却することなく熱放射シールド304のうちの少なくともいくつかを冷却するように構成された第1の専用の低熱源と、熱放射シールド304のいずれも冷却することなく冷却板305のうちの少なくともいくつかを冷却するように構成された第2の専用の低熱源と、を備える。低熱源が第2の部分を冷却することなく第1の部分を冷却するということは、厳密には-低熱源とそのような第2の部分との間に、意図された熱伝導性結合がない、又は最大でも非常に小さな熱伝導性結合があるということを意味し、熱エネルギーが、真空を通して放射線の形式で少なくともクライオスタットの内部部分の間で交換されるとき、第1の部分に専用の低熱源は第2の部分を全く冷やさないということは可能でない。
【0049】
その熱放射シールドに関連する冷却板とは異なる低熱源を有する熱放射シールドを冷却することは、重要な利点をもたらし得る。それらのうちの1つは、熱放射シールド及び冷却板の温度が、動作中でも、個別に決定され得る、ということである。また、熱放射シールドとそれぞれの冷却板との間の熱伝導性結合がないことは、通常は、直接の機械的接触がないことも意味し、したがって、熱放射シールドの機械的冷却装置によって引き起こされる振動は、少なくともその2つの共通の機械的冷却器のみが存在するかのように簡単には、冷却板に転送されない。
【0050】
図3は、第1の支持システム302と冷却板の低熱源310との間の結合312を概略的に示す。非常に望ましい多くの場合には、冷却板305と冷却板の低熱源310との間に直接に熱伝導性結合を有することもまた可能である。同様に、
図3は、熱放射シールド304と熱放射シールドの低熱源311との間の結合303を概略的に示す。これらは、
図3に概略的に示されるように、直接でもよい、及び/又はそれらは、第2の支持システム303の部分を少なくとも部分的に通過してもよい。
【0051】
前述で意図された種類の熱伝導性結合は、通常は、2つの部分をしっかりと取り付けることによって、或いはたとえば銅の組み紐又は銀のより糸といった熱伝導部材でそれらを接続することによって、実装される。取り付けが、必要に応じてリモートで行われ得るように、作動可能な機構が、そのような取り付けのために使用され得る。単純な取り付けは、同様に、単純に2つの部分をともにボルトで留めること又は何らかの他の種類の機械的コネクタをそれらの部分がアクセス可能であるときに使用することから構成され得る。場合によっては、熱伝導性結合は、交換ガスなどの液体媒体を介して行われ得るが、それは、液体部材を含んでそれが熱的に結合することを意図されているそれらの部分のみの間にそれの熱伝導性効果を制限するためのいくつかの手段を当然ながら必要とする。
【0052】
図3のブロック314は、ケーブル配線及びインターフェーシングを表す。一解釈によれば、ケーブル配線及びインターフェーシングは、ブロック306のペイロードに及び/又はブロック308の器具類に属すると考えられ得る。ケーブル配線及びインターフェーシングは、通常は、それらの部分が動作中に大きく異なる温度であり得る、低温冷却システム又はプラットフォーム内の異なる部分の間の接続を行うことを含むので、熱アンカリングを使用することが賢明である。一概念として、熱アンカリングは、前記構成要素によって表される任意の熱負荷がそのような低熱源によって(少なくとも有意な程度まで)吸収されることになるように、選択された構成要素と低熱源との間の熱伝導性結合を行うことを意味する。通常は、
図3のブロック315に概略的に示されるように、冷却板305及び/又はそれらの支持システム302は、ケーブル配線及びインターフェーシング部分314の熱的アンカリングのために使用され得る。追加的に又は代替的に、ケーブル配線及びインターフェーシング部分314の熱アンカリングは、
図3のブロック316及び317に概略的に示すように、それぞれに放射シールド304及び冷却板305のための低熱源311及び310へのより直接的な結合を用い得る。
【0053】
ブロック318によって概略的に示されるように、
図3の低温冷却システム又はプラットフォームに1つ又は複数のサンプル交換装置を備えることは、可能であるが、必須ではない。サンプル交換装置は、真空室301に真空を含まずに及びそれの内部全体を温めずに1つ又は複数のペイロードを挿入すること及び取り除くこと可能にする配置を意味する。サンプル交換装置は、そのようなものとして知られており、本明細書でさらに詳しく説明される必要はない。使用される場合、サンプル交換装置は、サンプルがすべてのそれぞれの冷却板内の位置合わせされた開口部を通して挿入される、上部投入型タイプ、又は、サンプルが他の冷却板を通過する必要なく基準温度板に直接に挿入される、底部装填タイプでもよい。
【0054】
図3のブロック319は、それを通して真空室301の内部がアクセスされ得る、1つ又は複数のアクセス扉を表す。閉じられたとき、真空室301が少なくとも高真空(10
-1…10
-5Pa)まで、好ましくは超高真空(10
-5…10
-10Pa)まで、又はさらに極高真空(<10
-10Pa)までポンプで吸い出され得るように、アクセス扉319は、真空室301を密閉する。
図1及び
図2のそれらのような従来の低温冷却システムとの差として、真空室301の内部にアクセスすることは、真空室の本体を除去することを必要としない。
【0055】
通常の真空室301の形は、最上部と、底部と、前記最上部と底部との間の複数の接続された側面と、を有する。有利な一実施の形態によれば、前記側面のうちの少なくとも1つは、平面である。一方では、アクセス扉を開くことが、内部の多数の部分がそれを通して簡単にアクセスされ得る、大きな開口部を提供し、他方では、内部に真空状態を確立するのに十分にしっかりとアクセス扉を閉じることが、妥当な努力で行われ得るように、包括的アクセス扉は、平面において構築することがより容易なので、これは、機械的見地から有利である。
【0056】
有利な一実施の形態によれば、真空室は、本明細書で前に第1の方向として特徴付けられた方向において一定の多角形横断面を有する。真空室の最上部と底部と複数の接続された側面とに関して、前記一定の多角形横断面は、側面がすべて平面であることを意味し、すなわち、それらは、横断面図において多角形の側線のように見える。正方形、六角形、及び八角形は、本明細書でさらに詳しく後述される理由で、有利な代替であるが、多角形は、任意の数の側面及び角を有し得る。
【0057】
真空室にある平らな側面が多いほど、包括的アクセス扉を簡単に提供する可能性はより豊かになる。有利な一実施の形態によれば、真空室のあらゆる第2の平らな側面又はさらにあらゆる平らな側面は、アクセス扉を備える。特に、真空室が、非常に大きい場合、真空室の内側の部分が、真空室の側面に関するそれらの位置にかかわらず、簡単にアクセス可能であるように、複数の側面に包括的アクセス扉を有することが賢明であり得る。
【0058】
大規模なモジュラ手法によれば、真空室301は、より大きなモジュラ低温冷却システム又はプラットフォームのモジュールを構成し得る。真空室301が低温冷却システム又はプラットフォームの近接するモジュールへの1つ又は複数のインターフェースを備えることが、可能であるが、必須ではない。そのようなインターフェースは、
図3のブロック320によって概略的に表されている。そのようなインターフェースの例については、本明細書でさらに詳しく後述する。
【0059】
図3のブロック321は、真空室301外部に位置する低温冷却システム又はプラットフォームのすべてのそのような支持システムを概略的に表す。そのような支持システムは、たとえば、機械的支持物、真空ポンプ、気体及び/又は低温液体の循環システム、動作電力、制御電子装置、通信接続などを含むが、これらに制限されない。真空室301がより大きなモジュラ低温冷却システム又はプラットフォームのモジュールを構成する、前述で概説された大規模なモジュラ手法によれば、支持システム321のうちのいくつか又はすべては、より大きなモジュラ低温冷却システム又はプラットフォームのいくつかの又はすべてのモジュールの間で共用され得る。低温冷却システム又はプラットフォームが、非常に大きい場合、支持システム321は、階段、はしご、狭い通路、及び/又は、オペレータが様々な部分にアクセスするのを助けるように設計された他の類似の構造を備え得る。そのようなアクセス補助装置は、それらがいつでも最も適切な場所において使用されることを可能にするために取り外し可能であり得る。
【0060】
図4は、一実施の形態による低温冷却システム又はプラットフォームの概略的横断面図である。
図4内の外周は、
図4では最上部401と、胴体402と、少なくとも1つの包括的アクセス扉403と、を備える、真空室を示す。包括的アクセス扉403のヒンジ404と真空シール405と閉鎖機構406とが、
図4には概略的に示されている。
図4における寸法は示唆しているだけであるが、包括的アクセス扉403によって覆われる開口部が真空室の側面の大部分にわたるとき、それが真空室内部のすべての構造体の少なくともその側への包括的アクセスを真に提供する。
【0061】
真空室の最上部401から支えられているのは、支持コラム407であり、その縦(垂直)方向は、本明細書で先に第1の方向と呼ばれたものを構成する。支持コラム407に沿った様々なレベルにあるのは、棚受けであり、その一例は、
図4の棚受け408である。支持コラム407及び棚受け408は、
図3で第1の支持システム302と呼ばれたものの部分である。前記第1の方向が、動作中の真空室の内部の大きな温度勾配の方向であるとき、低い熱伝導率を有する1つの材料(又は複数の材料)の支持コラム407を作ることは有利である。そのような材料の非制限的な例は、薄肉のステンレス鋼及び硬化したポリマ樹脂を含むが、これらに制限されない。それらの間に断熱材を有する縦区画から支持コラム407を組み立てること、及び/又は動作中に真空室の内側の冷たい部分に向けて支持コラム407を下る熱の流れを減らすために支持コラム407と最上部401との間に断熱留め具を提供することが、有利であることが分かり得る。
【0062】
棚受け408は、参照指示子409、410、411、412、及び413で示されて、この概略的な例において5つ存在する、冷却板を支える。
図4の実施の形態では、すべての冷却板409から413は、モジュラ冷却板である。言い換えれば、各冷却板は、前記第1の方向において同レベルで互いに近接する複数の区画を含み、それらの区画は、互いに独立して第1の支持システムに結合されている。この実施の形態では、支持コラム407の中央に対して概略的に示されているように、各冷却板の区画の互いに近接する縁は、互いに接しない。加えて、各区画のための専用の棚受け408が存在する。これは、個々の冷却板の区画の間の熱結合を減らすのに役立ち、たとえば、同じ冷却板に属するにもかかわらず(少なくともわずかに)異なる温度で区画を維持することを可能にする。
【0063】
あらゆる外部熱負荷は、最も冷たい冷却板にとって最も重大なので、最も冷たい部分まで下がるすべての道に連続的支持コラムが存在しない、代替方法で支持システムを構築することが可能である。そのような代替手法では、支持コラムは、真空室の最上部401から何らかの中間冷却板まで続き得る。そこから下へのさらなる冷却板は、そのとき、低温で可能な限り少ない熱を伝導する材料で作られた支持物を使用して、互いに順次に支えられ得る。後者の代替では、より冷たい板の区画が、それに最も近い次のより温かい冷却板(の区画)からのみ支えられるように、そのような個別に支えられた冷却板は、同型又はモジュラでもよい。
【0064】
5つの入れ子状熱放射シールド414、415、416、417、及び418が、
図4には概略的に示されている。各熱放射シールド414から418は、それぞれに冷却板409から413のうちの対応する1つに近接するそれぞれの部分空間を遮蔽するように構成される。この概略的表現では、遮蔽された部分空間は、それぞれの冷却板の下にある。
【0065】
図3の第2の支持システム303に対応する、支持システムが、支持支柱419、420、421、422、及び423を含むように概略的に示されている。入れ子状熱放射シールドが、動作中に異なる温度で維持されることになっているとき、真空室の内側の冷たい部分への不必要な熱負荷を引き起こさないように第2の支持システムを設計及び構築することが有利である。
図4の支持支柱419によって概略的に示されるように、最も外側の放射シールド414(それの通常の温度の後に50Kシールドとしばしば称される)は、低い熱伝導率の材料を使用して、真空室の構造体から、たとえば最上部401から、支えられ得る。真空室の構造体から直接に内部放射シールドもまた支えることが基本的に可能になるが、それぞれの(又は少なくともいくつかの)熱放射シールドのレベルにおいて熱アンカリングをそれが確立するように、第2の支持システムを構築することがより有利であり得る。そのような熱アンカリングは、次いで、第2の支持システムを介して他の方法で生じることになる任意の可能な熱の流れを遮る。
【0066】
図4に概略的に示された低温冷却システム又はプラットフォームは、2つの機械的冷却器424及び425を備える。これらのうち、機械的冷却器424は、冷却板のいずれも(直接に)冷却せずに熱放射シールドのうちの少なくともいくつかを冷却するように構成された専用の低熱源の一例である。機械的冷却器424の上のステージ426は、最も外側の熱放射シールド414に直接に結合されたものとして示されており、より低いステージ427は、次の内部熱放射シールド415に直接に結合されたものとして示されている。機械的冷却器424が、動作中に50Kにおいてそれの上のステージを及び4Kにおいてそれのより低いステージを維持することができるパルス管冷蔵庫であると、非制限的な一例として、想定すると、このように、2つの最も外側の熱放射シールドは、それぞれにおおよそ前記温度で維持され得る。
【0067】
他の機械的冷却器425は、熱放射シールドのいずれも(直接に)冷却せずに冷却板のうちの少なくともいくつかを冷却するように構成された専用の低熱源の一例である。機械的冷却器425の上のステージ428は、一番上の冷却板409(の1つの区画)に直接に結合されたものとして示されており、より低いステージ429は、次の上の冷却板410(の1つの区画)に直接に結合されたものとして示されている。前述と同じ想定をして、それぞれの冷却板の区画の間の何らかの種類の熱結合を想定すると、これは、動作中にそれぞれにおおよそ50K及び4Kで2つの一番上の冷却板を維持することを可能にすることになる。
【0068】
冷却板の区画に結合された別個の低熱源を有することが可能である。たとえば、
図4に425として示されたもののような別の機械的冷却器を追加し、それを支持コラム407の右側に置こうとした場合、そのようなさらなる機械的冷却器(又は何らかの他の対応する低熱源)は、2つの一番上の冷却板の右側の区画を前記冷却板の左側の区画の冷却とは独立して冷却するために使用され得る。
【0069】
冷却板の区画のための2つの別個の低熱源を有する原理は、
図4に概略的に示された2つのさらなる低熱源の場合において明示的に示されている。これらは、第1の希釈冷凍器及び第2の希釈冷凍器である。第1の希釈冷凍器は、冷却板のうちの1つに位置する目標領域の第1の部分区画を冷却するように構成される。相応して、第2の希釈冷凍器は、目標領域の、第1の部分区画から熱的に絶縁された、第2の部分区画を冷却するように構成される。
【0070】
図4の例では、目標領域は、最も低い冷却板413に近接する部分空間である。前述で参照された第1の部分区画は、それの左側の区画に近接する部分空間であり、第2の部分区画は、それの右側の区画に近接する部分空間である。前述の方式で冷却を達成するために、第1の希釈冷凍器の蒸留器430は、中間の冷却板411の左側の区画に位置し、それに取り付けられ、第1の希釈冷凍器の混合室431は、最も低い冷却板413の左側の区画に位置し、それに取り付けられている。第2の希釈冷凍器の蒸留器432は、中間の冷却板411の右側の区画に位置し、それに取り付けられ、第2の希釈冷凍器の混合室433は、最も低い冷却板413の右側の区画に位置し、それに取り付けられている。
【0071】
第1の希釈冷凍器と第2の希釈冷凍器との両方の混合室は、目標領域において同じ非常に低い基準温度に達することが基本的にでき得るが、異なってそれらを使用することが有利であり得る。たとえば、目標領域の第1の部分区画は、目標領域と低温冷却システム又はプラットフォームのより温かい部分との間の接続の熱化(すなわち、熱アンカリング)ステージを備え得る。目標領域の第2の部分区画は、そのとき、実際のペイロード・エリアを備え得る。このように、接続に由来する熱負荷は、第1の部分区画内で対処され得、それをより温かい部分に直接に(温度感覚で)結合する接続をそれが有した場合よりもさらに低い温度を第2の部分区画が達成及び維持することを次いで可能にし得る。
【0072】
希釈冷凍器は、それらが動作を開始し得る前に、約4Kへの予冷を必要とする。機械的冷却器(又は他の予冷低熱源)が、上の冷却板のうちのいくつかに単に直接に結合される場合、より低い冷却板の間の熱スイッチが、熱結合を制御可能に確立する及び切るために使用され得る。
図4では、熱スイッチは、ともに4つの最も低い冷却板(の右側の区画)結合して、概略的に示されている。これらのうち、最も上の熱スイッチ434が、一例として示されている。冷却板の間の熱結合を制御可能に確立する及び切るための熱スイッチの技術及びそれらの使用は、そのようなものとして知られており、さらに説明される必要はない。冷却板の区分及び低熱源の結合の数に応じて、熱スイッチはまた、同じ冷却板の近接する区画の間で使用され得る。第1の方向では、熱スイッチは、単に冷却板から次の近接する冷却板まで常に進む必要はないが、当技術分野で知られているように、熱スイッチは、互いにさらに冷却板を制御可能に結合するために使用され得る。
【0073】
図5は、
図1及び
図2の先行技術システムとの簡単な比較を容易にするための、低温冷却システム又はプラットフォームの簡略化された概略的な直軸測投影図を示す。熱放射シールドは、図面の明確さを理由として
図5には示されておらず、また、低温冷却システム又はプラットフォームは、単に、冷却板の3つのレベルを含むように示されている。これらの単純化は、制約として解釈されるべきではない。
【0074】
図5は、真空室の最上部401、並びに破線で真空室の胴体402の輪郭を示す。最上部401から支えられているのは、
図5には示されていない棚受けとともに、冷却板を支えるための第1の支持システムの一部である、支持コラム407である。3つの冷却板501、502、及び503のそれぞれは、第1の方向において同じレベルで互いに近接する複数の区画を備えるモジュラ冷却板であり、前記区画は、互いに独立して前記第1の支持システムに結合されている。
【0075】
3つの機械的冷却器504、505、及び506が示されており、そのそれぞれは、冷却板区画のそれぞれのセットのための低熱源を構成する。機械的冷却器504、505、及び506のうちの、それぞれは、一番上の冷却板501のそれぞれの区画に結合された上のステージと中間の冷却板502のそれぞれの区画に結合されたより低いステージとを有する。3つの基準温度低熱源507、508、及び509が示されており、それぞれが、目標領域のそれぞれの部分区画を冷却するように構成されている。
図4に関して前述したものと類似して、3つの基準温度低熱源507、508、及び509は、実際のペイロードのそれぞれの部分をそれぞれ冷やし得る、或いは、それらのうちの少なくとも1つが、目標領域の他の部分区画とシステムのより温かい部分との間の接続のための熱化(すなわち、熱アンカリング)ポイントとして使用され得る。
【0076】
図5の実施の形態では、真空室は、第1の(すなわち、垂直)方向に垂直の平面において一定の多角形(特に:六角形の)横断面を有する。言い換えれば、真空室は、最上部、底部並びに最上部と底部との間の複数の接続された側面を有し、この実施の形態では、すべての(6つの)側面は、平面である。
図5の実施の形態でもまた、冷却板の区画は、基本的に正三角形であり、支持コラム407に最も近い、その角のうちのいくらかが切り取られていることが可能である。真空室の各側面に包括的アクセス扉がある場合、注意を必要とするその側に毎回アクセスすることによって冷却板のモジュラリティを活用することが容易である。冷却板の区画は、低温冷却システム又はプラットフォームの非常に大きな部分を分解する必要なく、供給、除去、及び置換され得る。
【0077】
3つの機械的冷却器及び3つの基準温度低熱源は、
図5の前記六角形の構成内の単一のセクタに専用のものとしてそれぞれ示されている。代替として、少なくとも1つのそのような低熱源は、2つの近接するセクタの間の分割線上に位置し得、その場合、適切な冷却板の2つの近接する区画のためのそのような低熱源を熱的に結合することが特に容易である。
【0078】
図6、
図7、及び
図8は、冷却板の2つの区画601及び602の互いに近接する側面を熱的に結合する様々な可能性に応じて、複雑になる。そのような2つの区画の互いに近接する縁が互いに接しない実施の形態では、様々な可能性が、必要に応じて熱結合の大きさを決定するために存在する。1つの可能性は、結合部材に区画の互いに近接する縁を互いに結合させることである。
図6では、そのような結合部材は、区画のそれぞれの縁にその縁がボルトで留められた又は他の方法で取り付けられた、細長い一片603のステンレス鋼を含む。材料、厚さ、サイズ、輪郭、及びステンレス鋼帯603の取り付け方法を選択することによって、設計者は、区画の間の熱結合の所望の大きさを微調整し得る。代替的に、対応する結合部材として、第1の支持システムの部分である棚受けのうちの1つを使用することができる。共通の棚受けが、それらの近接する縁によって、2つの区画を支える場合、それは、結合部材の役割を果たすようにされることができ、それの材料、厚さ、サイズ、輪郭、及び取り付け方法は、それに応じて選択され得る。
【0079】
図7は、結合部材が熱結合ブロック701を含む、別の代替を示す。この代替は冷却板の、2つの近接する区画の間の優れた、頑丈な熱結合を必要とする場合に使用するのに実践的である。
図7の熱結合ブロック701は、たとえば適切な種類の銅又は銀といった、低温において非常に熱伝導性の高い材料で作られ、それは、最良の可能な熱結合を確実にするための金又は他の適切な材料でめっきされ得る。同じ理由で、熱結合ブロック701は、たとえば、ボルトで留めることによって、冷却板の両方の区画にしっかりと取り付けられる。
【0080】
図8は、冷却板の近接する区画の間の熱結合が可能な限り弱くあるべきである場合に使用するための、さらなる代替を示す。2つの区画601及び602の間に結合部材はなく、縁は、冷却板の片側から他方へのすべての直接的見通し線進路を切る迷路801を形成するように設計されてある。最後に述べられたものは、冷却板の片側の少し離れたより温かい部分からのような、他のソースからの熱放射線が、機械的接触はないにもかかわらず区間の間の隙間を通過することはできない、ということを確実にする。
【0081】
熱放射が隙間を通過することを防ぐための迷路形の幾何学的形状の使用の原理はまた、2つの構成要素が互いに近くに位置するが接触していない、低温冷却システム又はプラットフォームの他の部分において、使用され得る。一例として、
図4の先の熱放射シールド414~418のそれぞれの上の縁を考慮することができる。
図4の図面の表現は、高度に概略的であるが、それは、それでもなお、それらの間に迷路状の幾何学的形状を形成して、熱放射シールドのどの縁が冷却板の縁より上で曲がり得るかによる思考を表す。これらの指示に基づいて、当業者は、それらの使用が有利である、低温冷却システム又はプラットフォームのそれらの部分における適切な迷路状の幾何学的形状を設計することができる。
【0082】
図9は、第2の支持システム及び熱放射シールドのある種の特徴が実際にどのように実装され得るかの非制限的な例を示している。
図5との差として、
図9では、真空室には4つの側面が存在するということ、すなわち、第1の方向に垂直の平面における多角形横断面が長方形であるということと、熱放射シールドが類似して形成された横断面(すなわち、長方形)を有するということ、が想定される。
図9に示されているのは、そのうちのへり901、902、及び903が示された、長方形のへりを含む支持構造体である。支持支柱904が一例として示された、最大へりの角にある上向きに伸びる支持支柱は、真空室の最上部に支持構造体を機械的に接続するための手段(
図9には示さず)を提供する。へりの配列内のそれぞれのより小さなへりが、それより上の次のより大きなへりから支えられるように、支持支柱905及び906が例として示された、さらなる支持支柱は、それぞれのより小さなへりを支える。
【0083】
へり901、902、及び903は、高熱伝導率の材料で作られており、一方、支持支柱904、905、及び906は、低熱伝導率の材料で作られている。したがって、共通のへりに熱的に結合された部分は、同じ温度を得やすく、一方、異なるへりに熱的に結合された部分は、動作中にいっそう大きく異なる温度になり得る。
【0084】
少なくとも1サブセットの熱放射シールドは、第2の支持システムに互いに解放可能に結合されたシート部分を含む。
図9では、へり901、902、及び903によって支えられることになるそれぞれの熱放射シールドは、4つの類似して形成された部分を含む。それぞれの前記3つの熱放射シールドの2つの部分が、
図9に示されている。それぞれのそのような部分は、垂直で長方形の部分と、長方形部分のより低い縁から垂直に内側に伸びる三角形の水平の部分と、を含む。見る人から最も離れた図示された配置の側には、3つの熱放射シールド部分907、908、及び909が、その部分の長方形部分の上の縁によってそれぞれのへりに取り付けられて、それぞれ適所にある。左側の側面には、3つの熱放射シールド部分910、911、及び912が、取り外されて左に幾分ずらされて示されている。破線によって示すようにそれらを適所にもってくること、及び配置の前及び右側に類似の熱放射シールド部分を追加することは、それぞれがそれの上部にある長方形の穴を閉じるために対応する冷却板を単に必要とする、3つの熱放射シールドの入れ子状配置を完成することになる。
【0085】
図9の基本構成が、たとえば、
図5のように六角形であり、長方形ではない場合、同原理は、六角形の横断面の60度セクタを各熱放射シールド部分に覆わせることによって、適用され得る。(もしあるなら)多角形横断面の側面の数にかかわりなく、側面の数と熱放射シールド部分の数との間の1対1の関係を有する必要はない。たとえば、
図9では、各熱放射シールドについて示された2つの部分は、横断面図の2分の1を覆った一部分を形成するために、ともに恒久的に取り付けられ得る。残りの半分は、横断面図内の180度の範囲を有する類似の結合された部分によって、又は
図9に見られるもののような90度の範囲の2つの部分によって、覆われ得る。
【0086】
前者にもかかわらず、ある種の利点が、側面の数と熱放射シールド部分の数との1対1の関係を有することによって、得られ得る。特に、真空室が包括的アクセス扉を有するそれらの側面において、それぞれの包括的アクセス扉を通してそれらを取り付ける及び取り外すことが可能であるようなサイズ及び形状の熱放射シールド部分を有することが有利であり得る。そのような手法では、低温冷却システム又はプラットフォームのそれぞれの側面は、それにより、比較的独立したセクタを形成し、そこでは、サービスの提供、組み立て、及び分解は、その他のセクタで多くのことを行う必要なしに、達成され得る。
【0087】
低温冷却システム又はプラットフォーム内部にケーブル配線を構築するための多数の代替手法が、可能である。一例として、本明細書を書いている時点ではまだ公開されていない、同時係属の欧州の特許出願第20213816.0号に記載の手法のうちのいくつかを使用し得る。
図10は、そのような手法のいくつかの可能な態様を示す。
図10及び
図11の以下の記述では、「フランジ」という用語は、冷却板と冷却板の区画との両方を記述するために使用される。
【0088】
図10は、垂直平面において取られた部分的横断面図における低温冷却システム又はプラットフォームのいくつかの熱ステージ1001、1002、1003、1004、1005、及び1006を示す。これらは、動作中に異なる温度で保持されることになっている冷却板でもよい。本明細書に記載のケーブル配線サブシステムは、熱ステージの任意の特定の構成に固有では決してない。
【0089】
器具類の非制限的な例として、
図10では、参照指示子1007及び1023は、温度センサを参照し、参照指示子1008及び1024は、ヒータを参照する。有線の結合の例が、参照指示子1009及び1010で示されている。
【0090】
図10に概略的に示されたもののようなケーブル配線サブシステムは、低いが有限の熱伝導率の気密材料で作られた細長い囲い1011を備える。そのような材料の一例は、ステンレス鋼である。低いが有限の熱伝導率は、たとえば、100Kにおいて2から50W/(m×K)の間、10Kにおいて0.2から5W/(m×K)の間、1Kにおいて0.03から0.75W/(m×K)の間、0.1Kにおいて0.003から0.075W/(m×K)の間、及び0.01Kにおいて0.0003から0.0075W/(m×K)の間でもよい。
【0091】
気密であることは、それを横断する圧力差が、極めて高い真空システムにおいて通常は遭遇する種類のものである場合に、囲いの材料が、気体状物質がそれを通して漏れることを可能にしない、ということを意味する。囲い1011は、たとえば、規則的な横断面、円又は規則的な多角形など、を有する管でもよい。
【0092】
囲い1011の両端に又はその近くにあるのは、気密方式で低温冷却システム又はプラットフォームの対応するさらなる構造体に囲い1011を結合するための機械的インターフェース1012及び1013である。
図10の例では、外端における機械的インターフェース1012は、低温冷却システム又はプラットフォーム内部の固定フランジ1014に囲いを結合するためのフランジ1012を備える。内端における機械的インターフェース1013は、低温冷却システム又はプラットフォーム内部の基準温度領域に接続するために構成される。一例として、機械的インターフェース1013は、低温冷却システム又はプラットフォームの基準温度フランジ1006との固定された、熱伝導性の接続にそのときにある合わせ面1015がそのために存在する、別のフランジを備え得る。
【0093】
フランジ1012とフランジ1014との間の気密接合部並びに機械的インターフェース1013と合わせ面1015との間の気密接合部は、それらが極高真空状態に耐える程度まで両方ともに気密である。囲い1011の端の間の様々な中間の場所における、囲い1011の内部は、いわゆる内部部品である。
図10の実施の形態では、内部部品は、たとえば銅などの高熱伝導率の材料で作られた(又は他の方法でそれを含む)インサートである。高熱伝導率は、たとえば、10K以上において少なくとも100W/(m×K)、1Kにおいて少なくとも10W/(m×K)、0.1Kにおいて少なくとも1W/(m×K)、又は0.01Kにおいて少なくとも0.1W/(m×K)でもよい。
【0094】
インサート1016、1017、1025、及び1026が、例として示されている。各インサートは、たとえば、その輪郭が囲い1011の内表面輪郭に厳密に一致する、ある特定の長さの銅プラグでもよい。前述の器具の大半は、囲い1011内部のインサートのそれぞれに取り付けられる。たとえば、参照指示子1007で示された温度センサが、参照指示子1016で示されたインサートに取り付けられる。
【0095】
囲い1011の外側は、対応する外部部分である。
図10の実施の形態では、外部部分は、いわゆるクランプであり、クランプ1018、1019、1027、及び1028が、例として選び出される。クランプは、高熱伝導率の材料で作られている(又は他の方法でそれを含む)。囲い1011の長さに沿った各クランプの場所は、囲い1011内部の対応するインサートの場所に対応する。
【0096】
クランプ1018、1019、1027、及び1028のそれぞれは、それらの間に囲い1011の壁を有する対応するインサート1016、1017、1025、又は1026に対して圧縮される。これは、インサート1016が囲い1011の内部に位置し且つクランプ1018が囲い1011の外部に位置する、中間の場所の部分的な拡大された横断面図である、
図11でより容易に理解される。
図11に概略的に示されているように、特に、囲い1011の材料が、可鍛性である場合、クランプ1018の内表面は、囲い1011の壁において局所的変形をそれが引き起こすように強く、インサート1016の外表面に対して圧縮され得る。
【0097】
図11では、クランプ1018がどのように、温度センサ1007で測定されることになる温度にクランプ1018と低温冷却システム又はプラットフォームのその部分との間の熱伝導性結合(1101を参照)をするための機械的インターフェースを備えるかも分かる。ポンピング穴1103が、気体媒質がそれを通って流れるためのインサート1016の胴体を通って、
図11に概略的に示されている。ポンピング穴1103(及び通って進むワイヤ1010を暖めるための流路)は、インサート1016を通った見通し線進路をふさぐこと(又は寸法を少なくとも有意に減らすこと)が、囲い1011内部で熱放射線を縦に伝えることのブロックとしてインサートを用いることもまた可能にする、ということを強調するために、斜めの角度で示されている。
【0098】
図11の部分1016、1018、及び1002はすべて、高熱伝導率の材料で作られている(又は他の方法でそれを含む)。囲い1011の壁は、本質的に低い熱伝導率の材料で作られているが、それは難しすぎる障害物を作って、高熱伝導率の材料で作られた部分の間で熱がそれを通して伝導されることができないようにはならない。
【0099】
図10は、有線の結合1009及び1010を作る1つ又は複数のワイヤが、どのように囲い1011の外端から出てくる(及び低温冷却システム又はプラットフォームの上部に近い管状の固定された部分1029内部で続く)かを示す。
図11では、温度センサ1007の信号を伝えるワイヤ1009は、温度センサ1007で終了し、一方、
図10で電流をヒータ1008に伝えるワイヤ1010は、インサート1016を通って続く。
【0100】
図10の参照指示子1008は、囲い1011の内部のインサート1017に取り付けられたヒータを示す。クランプ1019は、それらの間に囲い1011の壁を有するインサート1017に対して圧縮される。クランプ1019は、ヒータで暖められることになっている低温冷却システム又はプラットフォームの一部分の一例である、吸着ポンプ1034への熱伝導性結合1020を行うための機械的インターフェースを備える。熱伝導性結合1020は、たとえば、一端にあるクランプ1019と他方の端にある吸着ポンプ1034とに機械的に取り付けられた、高熱伝導率の細長い一片の材料でもよい。
【0101】
図10に示されたケーブル配線サブシステムは、囲い1011の内部の(より低い)端において熱伝導性結合のために利用可能な1つの温度センサ1011を備える。
図11にあるような類似の配置を使用してそこの温度を測定することが可能になるが、最も優れた精度を達成するために、異なる材料層並びに基準温度領域と温度センサとの間の材料対材料のインターフェースを可能な限り回避する方がよい。これを理由として、囲い1011の内端は、温度センサ1021を低温冷却システム又はプラットフォームの基準温度領域1015、1006に直接に接続するために利用可能にして、開いている。これはまた、囲い1011の内端における機械的インターフェース1013が接続されるように構成された場所である。
【0102】
図10の実施の形態では、ケーブル配線サブシステムはまた、囲い1011の内端において熱伝導性結合のために利用可能なヒータ1022を備える。温度センサ1021と類似して、ヒータ1022もまた、囲い1011の開いた内端を通してアクセス可能である。温度センサ1021とヒータ1022との両方が、囲い1011の内端において機械的インターフェース1013とかみ合う基準温度領域のその部分1015に取り付けられ得る。
【0103】
図10は、囲い1011の外部の(上の)端が構築され得る及び低温冷却システム又はプラットフォームのその他の構造体に結合され得る1つの可能なやり方を示す。既に前述したように、
図10の実施の形態では、真空室蓋1001に取り付けられた管状の固定された部分1029が存在する。管状の固定された部分1029の内端は、極めて高い真空状態に耐えることができる気密接合部と(フランジ1012を通して)囲い1011の外端が付着する先のフランジ1014を備える。管状の固定された部分1029の外端において、別のペアのフランジ1030及び1031は、コネクタ・ボックス1035へのさらなる接合部を形成する。このさらなる接合部は、合理的に気密性を必要とするが、一方、それは、極めて高い真空状態に耐える必要はなく、したがって、たとえば、ゴム製のOリングが、フランジ1030とフランジ1031との間で使用され得る。
【0104】
コネクタ配列1032は、コネクタ・ボックス1035まで又はそれからさらなるワイヤに囲い1011の外端から出てくるワイヤのうちの1つ又は複数を結合するために、管状の固定された部分1029の内部又はその近くで使用され得る。
【0105】
囲い1011の内側は、低温冷却システム又はプラットフォームの動作中に真空であるべきである。しかしながら、囲い1011の内部の真空のレベルは、メイン真空室内の極高真空ほど高い必要はない。異なる温度で維持されるべき部分の間で熱を転送するための囲い壁よりも簡単な進路をその中に残る気体が提供しない程度まで囲い1011を排気することで十分である。
図10は、適切な真空ポンプが結合され得る先の配管材料1033を概略的に示す。動作中に囲い1101を継続して真空ポンプで吸い出すことが可能であるが、すべての接続が、十分に堅い場合、組み立て後に1度のポンピングを行うことと、次いで低温冷却システム又はプラットフォームの動作期間の残りの間に囲い1011を遮蔽されて維持することともまた可能である。
【0106】
囲い1011の外端において
図10の実施の形態で用いられる配置は、下からのケーブル配線サブシステムの組み立てを可能にする。囲い1011の内端が取り付けられることになっている先の部分1015が、まだ適所にないとき、下から適所に細長い囲い1011を押すために利用可能ないわゆるクリアショット(すなわち、フランジ1006、1005、1004、1003、及び1002における一連の位置合わせされた開口部)が存在する。コネクタ配列1032を先ず接続し、次いで、フランジ1012とフランジ1014との間の囲いの外端の取り付けを行うことができる。その後、囲い1011の長さに沿ってすべてのクランプを取り付け、囲い1011の壁がそれらの間に残るように、対応するインサートに対してそれらを圧縮することができる。これを目的として、各クランプが少なくとも2つの部分で構成される場合、それは有利である。そのようなクランプは、囲い1011の端のいずれかを介して適所にクランプをスライドする必要なしに、囲い1011の適切な側面上の適所にそれの部分をもってくることによって、組み立てられ得る。
【0107】
囲い1011の内端において、部分1015への器具1021及び1022(もしあるなら)の取り付けを行い、次いで、フランジ1013とフランジ1015との間の接合部を閉じることができる。クランプが低温冷却システム又はプラットフォームの対応する部分に及び/又はから熱を伝導することになっているすべての機械的インターフェースにおいて取り付けを完了した後、囲い1011は、排気され得、その後、ケーブル配線サブシステムの動作の準備は整う。
【0108】
図12は、器具のうちの1つが、囲い1011の壁内のUHV対応のフィードスルー1203の内端にある有線のコネクタ1201である、一実施の形態を示す。有線の結合1202は、囲い1011内部の有線のコネクタ1201に達する。有線の結合1202は、この例では外部部分(クランプ1018)が取り付けられる先の50Kフランジ1105である、適切な冷却された構造体でそれを熱化するための囲い1101内部の内部部品1016に取り付けられる。細長い囲い1011の長さに沿った任意の中間の場所においてこの種の有線の接続を行うことによって、目標領域においてのみならず低温冷却システム又はプラットフォームのいくつかの中間ステージにおいてもまた構成要素への有線の接続を要し得る多数の種類の特定の要求にケーブル配線サブシステムを合わせることが可能である。
【0109】
図13は、低温冷却システム又はプラットフォームにおける高いレベルのモジュラリティの原理を示す。
図13では、
図3、
図4、及び/又は
図5を参照して前述した種類の3つのモジュールが、ともに接続されている。正式な記述によれば、前述したような真空室は、第1の真空室401であり、低温冷却システム又はプラットフォームは、さらに少なくとも1つの類似の真空室を備える。真空室1301及び1302が、例として
図13に示されている。これらのうちのそれぞれの内部には、第1の真空室401にあるような支持システム、冷却板、及び熱放射シールドの類似の配置が存在し得る。
【0110】
図13は、真空室に少なくとも1つの平らな側面を有すること、又は-なお良くは-真空室に多角形横断面を有させることによってもたらされる1つの利点を示す。この種の2つの真空室は、互いに対してそれらの平らな側面を有して、互いに近接して配置され得る。この種の3つ以上の真空室が、それらの平らな側面の場所及び方向が格子の形を画定する、格子のような構成で配置され得る。真空室が、
図13にあるような六角形の横断面を有する場合、六角形の格子が、形成される。同様に、真空室が、長方形の横断面を有することになる場合、長方形の格子が、形成され得る。
【0111】
相互結合は、近接する真空室の間で行われ得る。比較的単純な相互結合は、近接する第1の及び第2の真空室を共通の真空空間と接続する穴である。
図13では、平らな側面上の包括的アクセス扉を閉じる代わりに、そのような扉を完全に取り除き、真空室をともに取り付けることができ、それらの扉の穴は、共通の真空空間が形成されるように互いに、十分にしっかりと向き合っている、と想定される。相互結合の別の例は、第1の真空室における熱放射シールドと第2の真空室における対応する熱放射シールドとの間の熱伝導性接続である。このように、そのような熱放射シールドは、動作中に共通の温度で維持され得、第1の及び第2の真空室においてそれらを冷却するために利用可能な冷却力が、共用され得る。同様に、相互結合は、接続された熱放射シールドの場合と類似の利点を有して、第1の真空室における冷却板と第2の真空室における対応する冷却板との間の熱伝導性接続でもよい。
【0112】
最後に述べたものに関して、モジュラ低温冷却システム又はプラットフォームの複数の真空室の基準温度板が、互いに結合され得る。これは、モジュラ様式でより多数の真空室を単に追加して、必要なだけ大きくされ得る共通のペイロード・ボリューム(及びフットプリント)が存在し得る、ということを意味する。現存するシステムの真空室において、アクセス可能性及び1つ又は複数の適切な穴を有する少なくとも1つの側面が残される場合、現存するシステムでも、後で拡張され得る。
【0113】
近接する真空室が互いに直接に接触はしないが少し離れて互いに向き合う、ということもまた可能である。そのような場合、平らな側面の間の1つ又は複数の導管が、相互結合を円滑化するために提供され得る。
図13の概略的表現では、最も右の真空室1302は、第1の真空室401から離れて示されている。最初に、これは、互いに行き当たる平らな側面内の大きな穴を通して相互結合がどのように可能にされ得るかのより容易な理解を促進することを意図された図面の表現である。しかしながら、図面の表現はまた、真空室401と真空室1302との間の長方形の「結合する回廊」を提供し、気密方式で2つの真空室を接続し、そのような結合する回廊を介したさらなる相互接続を可能にすることになるように、解釈され得る。
【0114】
モジュラで組み立てられた低温冷却システム又はプラットフォームの複数の真空室は、少なくとも1つの共通の外部支持システムを共用し得る。そのような外部支持システムの例は、機械的支持物、真空ポンプ、気体の循環システム、低温液体の循環システム、動作電力、制御電子装置、及び通信接続を含むが、これらに制限されない。
【0115】
図14は、モジュラ冷却板の原理を組み込むが、熱放射シールドのための別個の支持システムを有さない、低温冷却システム又はプラットフォームを示す。低温冷却システム又はプラットフォームは、破線で示された真空室1401、並びに真空室内の冷却板のための第1の支持システムを備える。第1の支持システムは、支持コラム1402と複数の棚受け1403とを備えるという点で、その他の実施の形態において説明されたものと似ているように本明細書には示されている。
【0116】
図14の第1の支持システムに結合されていてそれにより支えられるのは、第1の方向において互いにずらされた複数の互いに平行な冷却板である。前述の実施の形態のように、第1の方向は、冷却板1404から1407に垂直な方向として定義される。言い換えれば、第1の方向は、支持コラム1402の縦方向である。冷却板1404から1407のうちの少なくとも1つ(ここでは:それぞれの冷却板)は、モジュラ冷却板である。前述の実施の形態のように、モジュラ冷却板は、第1の方向において同じレベルで互いに近接する複数の区画を備えるものであり、前記区画は、互いに独立して第1の支持システムに結合されている。
【0117】
図14の実施の形態の冷却板は、6つのセクタ状の区画で構成されると考えられ得る。
図14の見ている方向に最も近い区画は、図面を明確にするために、全く示されていない。前記見つからない区画の右の区画は、右前に一時的に取り除かれたものとして示されている。これらは、
図14の区画1408、1409、1410、及び1411である。
【0118】
図14の低温冷却システム又はプラットフォームは、複数の少なくとも部分的に入れ子状の熱放射シールドを備える。各熱放射シールドは、冷却板のうちの対応する1つに近接するそれぞれの部分空間を遮蔽するように構成される。前述の実施の形態との差として、熱放射シールドが結合され熱放射シールドを支える支持システムは、冷却板を支えるそれと同じである。
【0119】
冷却板(のうちの少なくとも1つ)のモジュラリティと非常に類似して、熱放射シールドのうちの少なくとも1つ(ここでは:すべての熱放射シールド)もまた、モジュラである。
図14には、放射シールド・モジュール1412、1413、1414、及び1415が、示されている。放射シールド・モジュールのそれぞれは、垂直な、長方形の側部とセクタ形の底部とを備えた、セクタ状である。放射シールド・モジュールは、異なって形成され得るので、これは、単に一例として解釈されるべきである。たとえば、側部及び底部は、互いに離れていることが可能であり、及び/又はモジュラ放射シールドの1セットの側部及び別個の共通の底部が存在し得る。
【0120】
熱放射シールドのモジュールへの分割が、冷却板のモジュールへの分割と少なくともおおよそ同じ分割線をたどる場合、重要な利点が、達成される:低温冷却システム又はプラットフォーム内部のエリアにアクセスするために、いくつかのモジュールのみを取り除くことで十分である。たとえば、複数の熱放射シールドの全体を分解する必要はない。
【0121】
図14に関して、図示されていないモジュール(見ている方向に最も近いもの)が適所にあるということと、真空室1401の右前側に包括的アクセス扉があるということと、を想定することができる。前記包括的アクセス扉を開いて放射シールド・モジュール1412から1415及び冷却板区画1408から1411を取り除くことで、真空室1401の内部全体の比較的大きな割合へのアクセスが得られる。たとえば、冷却板区画1408から1411のうちの1つ又は複数においていくつかの構成要素を交換すること、及び/又は適所に残ったそれらの冷却板モジュールにおいて何かを交換若しくはサービスするためにアクセス進路を使用することができる。
【0122】
また、
図14のもののような複数の真空室が、より大きな低温冷却システム又はプラットフォームのモジュールとして使用されることになっている場合、近接するモジュールの冷却板のセット及び/又は熱放射シールドのセットの間の結合及び接続のためのより多くの空間を可能にするために、放射シールド・モジュール1412から1415及び冷却板区画1408から1411を再度の取付けをせずにそれらの場所に開いたセクタを残すことを選択してもよい。
【0123】
放射シールド・モジュール1412から1415は、冷却板区画1408から1411の外縁によって、機械的に支えられ得る。同じことが、次いで、低温冷却システム又はプラットフォーム内のすべての冷却板モジュール及び放射シールド・モジュールに適用され得る。そのような取り付け具が、熱伝導性である場合、共通の低熱源が、冷却板及びそれらのそれぞれの熱放射シールドのために使用され得る。
【0124】
別の代替は、それにもかかわらず熱放射シールドとそれの対応する冷却板との間の熱結合を最小限に抑えるやり方で、冷却板と熱放射シールドとの両方を第1の支持システムに支えさせることである。これは、たとえば冷却板のための棚受け1403に加えて熱放射シールドのための専用の支持アームが支持コラム1402から外へ十分に遠くまで広がり得るように、行われ得る。そのような解決法では、専用の支持アームは、熱放射シールドに専用の別個の「第2の」支持システムを構成するのに十分に構造的に独立し得る。さらに別の代替は、冷却板と熱放射シールドとの両方を同じ棚受けに支えさせるが、共用される棚受けを介する熱放射シールドと対応する冷却板との間の熱結合が最小限にされるように、それらの間に可能な限り多くの断熱を有することである。
【0125】
図15は、低温冷却システム又はプラットフォームの半分の部分的横断面図である。横断面図は、左にある支持コラム1501、並びに真空室の最上部1502及び胴体1503によって制限される。第1の支持システムは、支持コラム1501と、複数の棚受け1504、1505、1506、1507、及び1508と、を備える。第1の支持システムに結合され、それにより支えられているのは、冷却板に垂直の方向である支持コラム1501の方向において互いにずらされた複数の互いに平行な冷却板1509、1510、1511、1512、及び1513である。
【0126】
同じ第1の支持システムに結合され、それにより支えられているのは、複数の少なくとも部分的に入れ子状の熱放射シールド1514、1515、1516、1517、及び1518である。それぞれの熱放射シールドは、前記冷却板1509から1513のうちの対応する1つに近接するそれぞれの部分空間を遮蔽するように構成される。
【0127】
図15は、ある種の重要な利点が専用の低熱源の賢い使用法を通して得られ得るので、冷却板及び/又は熱放射シールドが任意のモジュラリティを示しても示さなくても、それによれば必須ではない、一態様を強調する。
図15に示された原理にモジュラリティを追加することは、本明細書の他の箇所に記述されてあるように、追加の利点をもたらすが、
図15にあるような低熱源の使用法もまた、独自の利点を有する。
【0128】
図15に示された合計4つの低熱源が存在する。それらのうちの1つは、中間の冷却板1511に位置しそれに結合されたそれの蒸留器1520と、底部冷却板1513に位置しそれに結合されたそれの混合室1521と、を有する、希釈冷凍器1519である。別の専用の低熱源は、概略で最も上で第2の冷却板1509及び1510のそれぞれの冷たい領域における、それの上の部分への熱結合を介する希釈冷凍器1519の予冷専用である、第1の機械的冷却器1522である。別の専用の低熱源は、最も上で第2の冷却板1509及び1510のそれぞれに熱的に結合されたそれのより高い及びより低いステージを有する、第2の機械的冷却器1523である。さらなる低熱源は、それぞれに第1の及び第2の熱放射シールド1514及び1515に熱的に結合されたそれのより高い及びより低いステージを有する、第3の機械的冷却器1524である。
【0129】
すべての部分において十分な冷却を有するために、追加の低熱源が提供され得る、及び/又は、熱スイッチが選択された冷却板の間のようなシステムの選択された部分の間に取り付けられ得る。そのような可能な追加の低熱源及び熱スイッチは、図を明確にするために
図15には示されていない。
【0130】
図15に示された原理は、概して、以下のように説明され得る。低温冷却システム又はプラットフォームは、冷却板のいずれも冷却せずに熱放射シールドのうちの少なくともいくつかを冷却するように構成された1つ又は複数の専用の低熱源と、前記熱放射シールドのいずれも冷却せずに冷却板のうちの少なくともいくつかを冷却するように構成された第2の専用の低熱源と、を有する。したがって、本原理は、冷却板及び/又は熱放射シールドがモジュラリティを示すかどうかにかかわりなく、並びに冷却板及び/又は熱放射シールドが共通の支持システムを共用するかどうか或いはそれらが別個の支持システムを有するかどうかにかかわりなく、適用可能である。
【0131】
図15では、3つの最下の冷却板1511、1512、及び1513から熱放射シールド1516、1517、及び1518のそれぞれへの熱結合が存在する。したがって、希釈冷凍器1519は、それぞれの熱放射シールド1516、1517、及び1518への3つの最下の冷却板1511、1512、及び1513のみを冷却するのではない。しかしながら、2つの最も外側の熱放射シールドのための専用の低熱源(第3の機械的冷却器1524)があるので、すべての前記部分の効果的冷却が、達成され得る。必要に応じて、モジュラ最下冷却板1513は、まさに最低温度を必要とするペイロードのそれらの部分を冷却するために、さらに別の希釈冷凍器と使用され得る。
【0132】
図15に示されたさらに別の態様は、その態様が本明細書で同様に説明されるすべての他の実施の形態において適用され得るが、個別に取り外し可能なインサートにおける低熱源のうちの少なくともいくつかの提供である。希釈冷凍器1519の室温部分、並びに第1の及び第2の機械的冷却器1522及び1523の室温部分は、最上部1502の取り外し可能な部分1525に配置される。前記低熱源の冷たいステージもまた、それぞれの冷却板の取り外し可能な部分に取り付けられる。そのような取り外し可能な部分及びそれぞれの開口部の寸法が正しく選択されると解釈すると、サービスの提供のために低温冷却システム又はプラットフォームから低熱源及び前記取り外し可能な部分で構成された実体全体を持ち上げることが可能であり得る。加えて、本原理は、異なる冷却力の低熱源、又は組み込まれた異なる技術の低熱源さえも有し得る別のインサートとインサート全体を交換することを可能にし得る。
【0133】
前述の実施の形態への変更形態及び修正形態が、可能である。たとえば、前述の実施の形態はすべて、単一要素として真空室の最上部を有するが、これは、要件ではない。従来のクライオスタットでは、それは真空缶及びその内部のすべての全重量を運ばなければならなかったので、単一の及び機械的に非常に強い部品であった、最上部フランジ又は蓋からぶらさがったメイン真空缶を有することが、一般的であった。真空室の最上部フランジが取り付けられる先の、外部支持フレームが、提供された。
【0134】
そのような先行技術システムと対照的に、本明細書に記載された種類の低温冷却システム又はプラットフォームは、真空室のより低い部分によって支えられて、平面上に単純に立っていてもよく、その場合、それの最上部への機械的負荷が、従来の構造的解決法と比較して相対的に小さくなり得る。これは、真空室モジュラの最上部が、気密方式で前記穴を覆う取り外し可能な蓋を有して、1つ又は複数の穴を有する支持フレームを有するように、真空室モジュラの最上部もまた作ることによって、用いられ得る。これは、上からも真空室の内部への物理アクセスを有することを可能にすることになる。真空室のモジュラ最上部を有することのもう1つの利点は、移送される及び組み立てられる必要のある構成要素の重量及びサイズの低減である。
【0135】
第1の及び第2の支持システムは、それらが2つの完全に異なるシステムであるかのように説明された。いくつかの構造的部分は冷却板と熱放射シールドとの両方を支える役割を有し得るので、これは必須要件ではない。第1の及び第2の支持システムの別個の名前付けは、本来、より概念的であり、これらの2つが必ずしも互いに密接な熱伝導性接続にないとき、低温冷却システム又はプラットフォームは冷却板及び熱放射シールドのための別個の低熱源を有し得るという事実を強調する。可能な「ハイブリッド」支持システムの一例は、最も外側の熱放射シールドが最も上の冷却板によって直接に支えられ、別個の第2の支持システムが、そのときに最も外側の熱放射シールドで開始する及びさらなる内部熱放射シールドを支えるのに役立つ、ものである。
【0136】
冷却板は、比較的単純な及びコンパクトな形状を有して示されている。これは単に、図面の明確性を理由とする。現実の冷却板(又はその区画)は、溝、指のような伸長部分、穴などを有する、比較的複雑な輪郭を有し得る。冷却板又はそれらの区画のそのようなより複雑な形状を通して得ることができる1つの利点は、たとえば、ペイロードを取り付けるために使用することができる、増加した表面エリアである。
【0137】
前述のことでは、本発明の実施の形態は、垂直ないわゆる第1の方向を有する及び互いにずらされた冷却板の積み重ねの底部に最も冷たい板を有する、直立の構成で主に説明されてある。これは、単に図面の慣例であり、先行技術との比較を容易にするために選択される。そのようなものとして、本明細書に記載の低温冷却システム又はプラットフォームは、特定の仕方で方向付けられる必要はない。たとえば、第1の方向は、垂直以外でもよい。別の例として、第1の方向が垂直だったとしても、冷却板の順番は、基準温度板が最上部にあるように、逆にされ得る。
【0138】
技術の進歩とともに、本発明の基本理念は、様々なやり方で実装され得る、ということが当業者には明らかである。したがって、本発明及びそれの実施の形態は、前述の例に制限されず、そうではなくて、特許請求の範囲内で変化し得る。
【国際調査報告】