(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】2’-(7,7-ジメチル-1’H,7H-スピロ[フロ[3,4-B]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-イル)-1,3-ジヒドロ-4’H-スピロ[インデン-2,5’-[1,3]オキサゾール]-4’-オン及びその結晶形態の合成
(51)【国際特許分類】
C07D 491/20 20060101AFI20241010BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20241010BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20241010BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20241010BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20241010BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C07D491/20 CSP
A61P25/00
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/18
A61P25/20
A61K31/454
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529528
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2022082192
(87)【国際公開番号】W WO2023088996
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】アダン,ジャン-ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】バッハマン,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ビグラー,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ドット,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ファンタジア,セレーナ・マリア
(72)【発明者】
【氏名】グロッセ-センダー,カチャ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シュプール,ポール
(72)【発明者】
【氏名】トゥーン,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】トナッツィ,サンドロ
(72)【発明者】
【氏名】トサッティ,パオロ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB22
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZA05
4C086ZA12
4C086ZA18
(57)【要約】
本出願は、化合物2’-(7,7-ジメチル-1’H,7H-スピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-イル)-1,3-ジヒドロ-4’H-スピロ[インデン-2,5’-[1,3]オキサゾール]-4’-オン(式I)の結晶形態、及び化合物を調製するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
の化合物の結晶形態。
【請求項2】
およそ(±0.20°2θ)の°2θの値で表される特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項1に記載の式Iの化合物の結晶形態A
【表1】
【請求項3】
図1に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項1~2のいずれか一項に記載の結晶形態A。
【請求項4】
およそ(±0.20°2θ)の°2θの値で表される特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項1に記載の式Iの化合物の結晶形態B
【表2】
【請求項5】
図4に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項1又は4のいずれか一項に記載の結晶形態B。
【請求項6】
請求項1に記載の式Iの化合物を合成するための方法であって、式VIIIの化合物を反応させて式VIIの化合物にすることを含み、
【化2】
式VIIIの化合物を反応させて式VIIの化合物にすることを含む、方法
【化3】
【請求項7】
式VIIIの化合物が、パラジウム触媒、エタノール及び有機塩基の存在下、一酸化炭素雰囲気の圧力下、100±5℃で処理される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式VIIIの化合物が、PdCl
2(dppp)、エタノール及びトリエチルアミンの存在下、一酸化炭素雰囲気の60~100bar圧力下、100±5℃、及び100超~最大1000の基質/触媒負荷で処理される、請求項6~7に記載の方法。
【請求項9】
酢酸パラジウムとトリフェニルホスフィン又は4-(ジ-tert-ブチルホスファニル)-N,N-ジメチルアニリンの存在下で、式VIIの化合物をXVの化合物と反応させて、式VIの化合物にすることを更に含む、請求項6~8に記載の方法
【化4】
【請求項10】
反応が、酢酸パラジウムと4-(ジ-tert-ブチルホスファニル)-N,N-ジメチルアニリン及びテトラブチルアンモニウムブロミドの存在下、溶媒としてのtert-アミルアルコール中、110℃で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式IXの化合物を式IIの化合物と反応させることを含む、請求項1に記載の式Iの化合物を合成するための方法
【化5】
【請求項12】
式Xの化合物を反応させて、式IXの化合物にすることを更に含む、請求項11に記載の方法:
【化6】
【請求項13】
以下の工程:
【化7】
を介して、式XIVの化合物を反応させて、式Xの化合物又はその薬学的に許容され得る塩にすることを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
以下の工程:
【化8】
を更に含む、請求項11~13に記載の方法。
【請求項15】
請求項6~14のいずれか一項に記載の方法によって調製される場合の、式Iの化合物又は薬学的に許容され得る塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2’-(7,7-ジメチル-1’H,7H-スピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-イル)-1,3-ジヒドロ-4’H-スピロ[インデン-2,5’-[1,3]オキサゾール]-4’-オンを製造するための方法を提供する。本発明の方法における中間体として有用な化合物も開示される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
視交叉上核(SCN)は、概日リズムを調節する体内時計であり、バソプレシンニューロンが豊富に存在し(Kalsbeekら2010)1、24時間の概日リズムでバソプレシンを産生及び放出することが知られている(Schwartzら.1983)2。概日リズムに対するバソプレシンの主要な調節効果は、先行技術によって実証し得なかった。点変異に起因してバソプレシンを天然に欠くラット系統であるブラットルボローラットは、その概日リズムに明らかな欠陥がない(Groblewskiら.1981)3。バソプレシンをハムスターSCNに直接注射しても、概日性位相シフトに影響はなかった(Albersら.1984)4。対照的に、バソプレシン受容体は、より微妙な方法で概日時計を調節することが示された。Yamaguchiら(2013)5は、V1aノックアウトマウス及びV1a/V1bダブルノックアウトマウスが、ヒトにおける時差ぼけを模倣する実験である概日位相前進又は位相遅延後の新しい明暗サイクルへのより速い再同調を示すことを実証した。V1a及びV1b小分子アンタゴニストの混合物をSCN上に直接ミニポンプによって長期投与した後、同じ結果が得られた。
【0003】
睡眠不足は、不安、うつ病、易刺激性、社会的相互作用及び精神運動協調の障害などを含む多数の健康障害をもたらし得る。
【0004】
国際公開第2013/176220号は、バソプレシン受容体V1a及びV1bを阻害することができる阻害剤を含む概日リズム調節剤を記載している。
【0005】
2’-(7,7-ジメチル-1’H,7H-スピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-イル)-1,3-ジヒドロ-4’H-スピロ[インデン-2,5’-[1,3]オキサゾール]-4’-オンは、国際公開第2015/091411号において当技術分野で以前記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明による方法を使用することにより、2’-(7,7-ジメチル-1’H,7H-スピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-イル)-1,3-ジヒドロ-4’H-スピロ[インデン-2,5’-[1,3]オキサゾール]-4’-オン及びその薬学的に許容され得る塩を、適度の反応条件下、より少ない方法工程により、顕著な収率でより経済的に調製できることが見出された。更に、粗中間生成物は、大部分は、追加の精製工程を必要とせずに、その後の反応工程に使用することができる。
【0007】
更に、2つの形態が特定されており、形態Bが最も好ましい形態であることが更に見出された。これまで、式(I)の化合物は非晶質形態でのみ記載されている。この形態はさらなる薬物開発には適しておらず、式(I)の化合物の周囲条件で吸湿性が低く熱力学的に安定な形態が依然として必要とされている。この課題は、驚くべきことに、式(I)の化合物の結晶形態B(以下、「形態B」と呼ばれる)によって解決された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
定義
本明細書で使用される一般用語の以下の定義は、問題の用語が単独で現れるか、又は他の群と組み合わせて現れるかに関係なく適用される。
【0009】
「室温」(RT)という用語は18~30℃を指す。
【0010】
本明細書で使用される「溶液」は、試薬又は反応物が溶解形態で(溶質として)溶媒中に存在するか、又は粒子状、非溶解形態、もしくはその両方で存在する液体を包含することを意味する。したがって、「溶液」では、溶質がその中に完全に溶解していなくてもよく、固体溶質が分散体又はスラリー形態で存在していてもよいと考えられる。したがって、特定の試薬又は反応物の「溶液」は、このような試薬又は反応物のスラリー及び分散体、ならびに溶液を包含することを意味する。「溶液」及び「スラリー」は、本明細書では互換的に使用され得る。
【0011】
本明細書で使用される「溶媒」は、溶媒に曝露された試薬又は反応物を完全に溶解する液体、ならびに試薬もしくは反応物を部分的にのみ溶解するか、又は試薬もしくは反応物の分散剤として作用する液体を包含することを意味する。したがって、特定の反応が「溶媒」で行われる場合、存在する試薬又は反応物の一部又は全部は溶解形態でなくてもよいと考えられる。
【0012】
°2θ値に関連する「およそ」という用語は、±0.2°2θを指す。
【0013】
「結晶形態」又は「形態」という用語は、化合物の多形形態及び溶媒和物を指す。
【0014】
「薬学的に許容され得る塩」という用語は、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適した塩を指す。無機酸及び有機酸による適切な塩の例としては、酢酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、塩酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸などがあるが、これらに限定されない。ギ酸、トリフルオロ酢酸及び塩酸が好ましい。塩酸が最も好ましい。
【0015】
「位相シフト睡眠障害」という用語は、概日リズム、すなわち生物、例えばヒトによって生成されるおよそ24時間のサイクルにおける障害として分類される症状を要約したものである。
【0016】
位相シフト睡眠障害としては、時差ぼけ、又は仕事、社会的責任、もしくは病気による睡眠スケジュールの変更などの一過性障害、ならびに睡眠相後退症候群(DSPS)、睡眠相後退型(DSPT)、睡眠相前進症候群(ASPS)、及び不規則な睡眠覚醒サイクルなどの慢性障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本出願で使用される命名法は、特に指示しない限り、IUPAC系統的命名法に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
詳細には、本発明は、式I
【化1】
の化合物の結晶形態を合成するための方法に関する。
【0020】
本発明のある特定の実施形態は、およそ(±0.20°2θ)の°2θの値で表される特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする、本明細書に記載される式Iの化合物の結晶形態Aに関する
【表1】
【0021】
本発明のある特定の実施形態は、
図1に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、本明細書に記載される式Iの化合物の結晶形態Aに関する。
【0022】
本発明のある特定の実施形態は、
図2に示される赤外スペクトルを特徴とする、本明細書に記載される式Iの化合物の結晶形態Aに関する。
【0023】
本発明のある特定の実施形態は、
図3に示されるラマンスペクトルを特徴とする、本明細書に記載される式Iの化合物の結晶形態Aに関する。
【0024】
本発明のある特定の実施形態は、およそ(±0.20°2θ)の°2θの値で表される特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする、本明細書に記載される式Iの化合物の結晶形態Bに関する
【表2】
【0025】
本発明のある特定の実施形態は、
図4に示されるX線粉末回折パターンを特徴とする、本明細書に記載される式Iの化合物の結晶形態Bに関する。
【0026】
本発明のある特定の実施形態は、
図5に示される赤外スペクトルを特徴とする、本明細書に記載される式Iの化合物の結晶形態Bに関する。
【0027】
本発明のある特定の実施形態は、
図6に示されるラマンスペクトルを特徴とする、本明細書に記載される式Iの化合物の結晶形態Bに関する。
【0028】
本発明は更に、形態Aを形態Bに変換するための方法に関する。
【化2】
【0029】
形態Bは、周囲温度での式(I)の化合物の熱力学的に安定な既知の結晶形態である。
【0030】
本発明のある特定の実施形態は、式IIの化合物を式IXの化合物と反応させることを含む、本明細書に記載される式Iの化合物を合成するための方法に関する
【化3】
。
【0031】
本発明のある特定の実施形態は、7,7-ジメチルスピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]二塩酸塩を50~60℃の温度で2,2-ジメチル-N-(4’-オキソスピロ[インダン-2,5’-オキサゾール]-2’-イル)プロパンアミド懸濁液に添加し、N,N-ジイソプロピルエチルアミンの存在下、55℃で反応させる、上記の変換に関する。
【0032】
本発明のある特定の実施形態は、以下の工程:
【化4】
を含む、式Iの化合物を合成するための方法に関する。
【0033】
本発明のある特定の実施形態は、式Xの化合物を反応させて式IXの化合物にすることを含む方法に関する:
【化5】
。
【0034】
本発明のある特定の実施形態は、アセトニトリル、ピリジン及びピバロイルクロリドの存在下、60℃の温度で行われる、上記の方法に関する。
【0035】
本発明のある特定の実施形態は、以下の工程:
【化6】
を含む、式Xの化合物を合成するための方法に関する。
【0036】
本発明のある特定の実施形態は、式(X)の化合物への容易でかつ簡便なアクセスを与えるという点で特に有利な式(XI)の化合物に関する
【化7】
。
【0037】
式(I)の化合物の既知の合成は、多くの工程を含み、時には収率が制限される。本発明の化合物及び方法の提供によって、この課題が対処され、改善が達成され、その後、無駄が少なくなり、収率及び方法の堅牢性が向上するという利点が達成された。したがって、本発明の方法によると、式XIの化合物は、以下のスキームから得られる。
【0038】
本発明のある特定の実施形態は、以下の工程:
【化8】
に見られる工程を介して式XIVの化合物を反応させて式XIの化合物にすることを含む方法に関する。
【0039】
本発明のある特定の実施形態は、式XIVの化合物を、ヨウ化亜鉛の存在下、トリメチルシリルシアニドの塩化メチレン中溶液中、10~20℃で反応させる、上記の方法に関する。
【0040】
本発明のある特定の実施形態は、式XIIの化合物が、トルエン中濃塩酸を使用して80~90℃で式XIIIの化合物を加水分解することによって得られる、上記の方法に関する。
【0041】
本発明のある特定の実施形態は、式XIの化合物が式XIIの化合物のエステル化を通して得られる、上記の方法に関する。
【0042】
本発明のある特定の実施形態は、式VIIIの化合物を反応させて式VIIの化合物にすることを含む方法に関する
【化9】
。
【0043】
本発明のある特定の実施形態は、式VIIIの化合物が、パラジウム触媒、エタノール及び有機塩基の存在下、一酸化炭素雰囲気の圧力下、100℃で処理される、上記の方法に関する。酢酸ナトリウムの典型的な無機塩基に対して有機塩基を使用すると6、方法のスループットがおよそ5倍増加し、触媒負荷が最大10倍減少した。
【0044】
本発明のある特定の実施形態は、式VIIIの化合物が、パラジウム触媒、エタノール及びトリエチルアミンの存在下、一酸化炭素雰囲気の圧力下、100±5℃で処理される、上記の方法に関する。
【0045】
本発明のある特定の実施形態は、式VIIIの化合物が、PdCl2(dppp)(dpppは1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンとして知られている)、エタノール及び有機塩基の存在下、一酸化炭素雰囲気の圧力下、100±5℃で処理される、上記の方法に関する。
【0046】
本発明のある特定の実施形態は、式VIIIの化合物が、PdCl2(dppp)、エタノール及びトリエチルアミンの存在下、一酸化炭素雰囲気の圧力下、100±5℃で処理される、上記の方法に関する。
【0047】
本発明のある特定の実施形態は、式VIIIの化合物が、PdCl2(dppp)、エタノール及びトリエチルアミンの存在下、一酸化炭素雰囲気の60~100bar圧力下、100±5℃で処理される、上記の方法に関する。文献は一酸化炭素雰囲気の15~25barを提供しているが6、7、圧力を上昇させることにより、より低いレベルのジエステル形成でより高い位置選択性が達成されることが見出された(20barでおよそ3%のジエステルが形成された)。
【0048】
本発明のある特定の実施形態は、式VIIIの化合物が、PdCl2(dppp)、エタノール及びトリエチルアミンの存在下、一酸化炭素雰囲気の60~100bar圧力下、100±5℃、及び100超~最大1000の基質/触媒比(S/C)で処理される、上記の方法に関する。
【0049】
本発明の好ましい実施形態は、式VIIIの化合物が、PdCl2(dppp)、エタノール及びトリエチルアミンの存在下、一酸化炭素雰囲気の60~80bar圧力下、100±5℃、及び100超~最大1000の基質/触媒比(S/C)で処理される、上記の方法に関する。
【0050】
本発明のある特定の実施形態は、式VIIの化合物をXVの化合物と反応させて、式VIの化合物にすることを含む方法に関する。
【化10】
。
【0051】
本発明のある特定の実施形態は、反応が鈴木-宮浦カップリング反応を介してパラジウム触媒の存在下で行われる、上記の方法に関する。
【0052】
本発明のある特定の実施形態は、パラジウム触媒がパラジウム前駆体及び配位子を含む、上記の方法に関する。
【0053】
本発明のある特定の実施形態は、配位子が一般構造L=P(R)(R1)2(式中、R=tert-ブチル、n-ブチル、1-フェニル-1H-ピロール-2-イル又は4-ジメチルアミノフェニルであり、R1=シクロヘキシル、tert-ブチル又はアダマンチルである)のモノホスフィンである、上記の方法に関する。より具体的には、R=4-ジメチルアミノフェニル及びR1=tert-ブチル(L=4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン)である。
【0054】
本発明のある特定の実施形態は、パラジウム前駆体がパラジウム(II)又はパラジウム(0)種、例えば:[PdCl(X)]2(X=例えば、アリル、シンナミル、クロチル、インデニルである)、[Pd(X)(Y)](Y=例えば、シクロペンタジエニル又はp-シミルである)、Pd(dba)2、Pd2(dba)3、Pd(OAc)2、PdZ2(Z=Cl、Br、Iである)、及びPd(TFA)2である、上記の方法に関する。Pd(MeCN)2Cl2、Pd(ベンゾニトリル)2Cl2、Pd(MeCN)4(BF4)2、Pd(acac)2、ジ-μ-クロロビス[2’-(アミノ-N)[1,1’-ビフェニル]-2-イル-C]ジパラジウム(II)、ジ-μ-メシルビス[2’-(アミノ-N)[1,1’-ビフェニル]-2-イル-C]ジパラジウム(II)、ジ-μ-クロロビス[2-[(ジメチルアミノ)メチル]フェニル-C,N]ジパラジウム(II)。より具体的には、パラジウム前駆体はPd(OAc)2である。
【0055】
パラジウム前駆体は、AmPhos配位子を含有するパラジウム錯体、例えば、クロロ[4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン-2-(2’-アミノビフェニル)]パラジウム(II)、[4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン-2-(2’-アミノビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート、[4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン-2-(2’-N-メチルアミノビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート、[Pd(AmPhos)2Cl2]、[Pd(AmPhos)2]、[Pd(AmPhos)Cl(X)]((X=例えば、アリル、シンナミル、又はクロチル、インデニルである)、[Pd(AmPhos)(X)]OTfであってもよい。そのような場合、追加の配位子は必要とされない。
【0056】
本発明のある特定の実施形態は、反応が酢酸パラジウムとトリフェニルホスフィン又は4-(ジ-tert-ブチルホスファニル)-N,N-ジメチルアニリンの存在下で行われる、上記の方法に関する。
【0057】
本発明のある特定の実施形態は、反応が酢酸パラジウムと4-(ジ-tert-ブチルホスファニル)-N,N-ジメチルアニリンの存在下で行われる、上記の方法に関する。触媒と配位子とのそのような組み合わせは、より活性な触媒系(7.5倍少ないPd触媒及び12倍少ないホスフィンを必要とする)、次いで、Pd(OAc)2/トリフェニルホスフィン系(経済的利点をもたらし、下流のプロセスで残留パラジウムを枯渇させるためにより少ない労力を必要とする)であることが示された。
【0058】
本発明のある特定の実施形態は、反応が酢酸パラジウムと4-(ジ-tert-ブチルホスファニル)-N,N-ジメチルアニリン及びテトラブチルアンモニウムブロミドの存在下で行われる、上記の方法に関する。
【0059】
本発明のある特定の実施形態は、反応が酢酸パラジウムと4-(ジ-tert-ブチルホスファニル)-N,N-ジメチルアニリン及びテトラブチルアンモニウムブロミドの存在下、溶媒としてのtert-アミルアルコール中、110℃で行われる、上記の方法に関する。
【0060】
本発明のある特定の実施形態は、VIの化合物を反応させてVの化合物にすることを含む方法に関する:
【化11】
。
【0061】
本発明のある特定の実施形態は、VIをグリニャール試薬メチルマグネシウムブロミドに添加してVを生成する、上記の方法に関する。
【0062】
本発明のある特定の実施形態は、VIの化合物を反応させてV-MgClの化合物にすることを含む方法に関する:
【化12】
【0063】
本発明のある特定の実施形態は、VIをTHF中メチルマグネシウムクロリドと反応させる、上記の方法に関する。
【0064】
本発明のある特定の実施形態は、V-MgClの化合物を反応させてIVの化合物にすることを含む方法に関する。
【化13】
【0065】
本発明のある特定の実施形態は、IVの化合物を反応させてIIIの化合物にすることを含む方法に関する。
【化14】
【0066】
本発明のある特定の実施形態は、本明細書に記載される方法によって調製される場合の、式Iの化合物又は薬学的に許容され得る塩に関する。
【0067】
本発明のある特定の実施形態は、中間体IXに関する。
【化15】
【0068】
本発明のある特定の実施形態は、式IXの化合物が中間体として形成される、式Iの化合物を合成するための方法に関する。
【0069】
本発明のある特定の実施形態は、式IIの化合物が中間体として形成される、式Iの化合物を合成するための方法に関する。
【化16】
【0070】
本発明のある特定の実施形態は、医薬として使用するための本明細書に記載される式Iの化合物に関する。
【0071】
本発明のある特定の実施形態は、バソプレシンの不適切な分泌、不安、うつ病性障害、強迫性障害、自閉症スペクトラム障害、統合失調症、攻撃行動、位相シフト睡眠障害、特に時差ぼけ又は概日障害の治療的及び/又は予防的処置に使用するための、本明細書に記載される式Iの化合物に関する。
【実施例】
【0072】
実験部
以下の実験は、本発明を説明するために提供される。それらは、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではなく、単にその代表例と見なされるべきである。
【0073】
IR分析
ATR FTIRスペクトルは、ATRアクセサリを備えたThermoNicolet iS5 FTIR分光計を使用して、試料を一切調製せずに記録した。スペクトル範囲は4000cm-1~650cm-1であり、分解能2cm-1及び50回の同時付加走査が収集された。Happ-Genzelアポダイゼーションを適用した。ATR FTIRの使用により、赤外線域の相対強度は、KBrディスク又はヌジョール試料調製を使用する透過FTIRで見られるものとは異なるようになる。ATR FTIRの性質に起因して、低波数の帯域は、高波数の帯域より強度が高い。
【0074】
ラマン分析
FT-ラマンスペクトルは、NdYAG 1064nmレーザー及び液体窒素冷却ゲルマニウム検出器を備えたBruker MultiRam FT-ラマン分光計を用いて4000~50cm-1のスペクトル範囲で収集された。レーザー出力は約300mWに設定し、2cm-1の分解能を使用し、1024回の走査を同時に追加した。使用したアポダイゼーションは、Blackman-Harris 4-termであった。
【0075】
X線分析
X線回析パターンを、Stoe Stadi P回析計(Cu Ka1照射、一次モノクロメーター、ケイ素ストリップ検出器、角度範囲3~42°2θ、段階幅0.02°2θ、及び1段階につき20秒の測定時間)を用いて、透過幾何学において周囲条件において記録した。試料を調製し、物質を更に処理(例えば、粉砕又はふるい分け)することなく分析した。
【0076】
Iの形態A
形態Aは、ジクロロメタンからのIの迅速な蒸発結晶化によって、又はクロロホルムからのIの迅速な蒸発結晶化によって得ることができる。
【0077】
Iの形態B
197mgのIの形態Aを、密封バイアル中、周囲温度で2mLの1-プロパノールに懸濁した。22℃で14日間撹拌した後、固体を遠心分離(10分/22℃/1500rpm)によって単離した。試料を50℃/5mbar未満でおよそ48時間乾燥させた。
【0078】
2-ヒドロキシインダン-2-カルボン酸
【化17】
窒素雰囲気下、インダン-2-オン(33.0kg、250mol、当量:1.00)、塩化メチレン(132kg、99L)及びヨウ化亜鉛(0.792kg、2.48mol、当量:0.010)を室温で反応器に装入した。トリメチルシリルシアニド(28.05kg、283mol、当量:1.13)の塩化メチレン(33.0kg、24.8L)中溶液を10~20℃で3時間以内に混合物に添加し、反応物をこの温度で4時間撹拌した。2%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(198kg)を10~20℃で添加し、混合物をこの温度で2時間撹拌した。相を分離し、有機層を水(168kg)で洗浄し、次いで、減圧下、35~45℃のジャケット温度で濃縮した。トルエン(132kg)、次いで、濃塩酸(66kg)を添加した。混合物を80~90℃で5時間加熱及び撹拌した。混合物を0~10℃に冷却し、1時間撹拌した。懸濁液をフィルタにかけ、ケークをトルエン(16.5kg)で洗浄して、32.8kgの標記化合物を湿潤ケークとして得た。
【0079】
エチル2-ヒドロキシインダン-2-カルボキシレート
【化18】
窒素雰囲気下、湿潤2-ヒドロキシインダン-2-カルボン酸(32.8kg)及びトルエン(154kg、177L)を反応器に装入し、強い還流条件下で共沸蒸留によって水を除去した。30~40℃に冷却した後、硫酸(0.55kg、5.5mol、当量:0.02)及びエタノール(39.1kg、49.5L)を装入し、混合物を110~120℃で12時間撹拌した。混合物を30~40℃に冷却し、フィルタにかけた。得られた溶液を減圧下で1.0~1.5体積まで濃縮した。n-ヘプタン(61.5kg、90.4L)を装入し、重炭酸ナトリウムの1%水溶液(154kg)を10~20℃で2~3時間にわたって添加し、次いで、0~10℃で3時間撹拌した。懸濁液をフィルタにかけ、ケークをn-ヘプタン(15.4kg、22.6L)で洗浄し、真空下40℃で乾燥させて、26.15kgの標記化合物を黄色固体として得た。
【0080】
2’-アミノスピロ[インダン-2,5’-オキサゾール]-4’-オン
【化19】
窒素雰囲気下、エチル2-ヒドロキシインダン-2-カルボキシレート(26.15kg、127mol、当量:1.00)、エタノール(91.5kg、116L)及び塩酸グアニジン(13.9kg、146mol、当量:1.15)を反応器に装入した。メタノール中30%ナトリウムメトキシド(25.4kg、141mol、当量:1.11)を10~20℃で2時間にわたって添加し、この温度で10時間撹拌した。混合物を減圧下で1.0~1.5体積まで濃縮した。1.3%塩酸水溶液(131kg)を0~10℃で添加して、pH=2.0~2.5を達成した。懸濁液を10~20℃で3時間撹拌し、フィルタにかけ、ケークを水(26.2kg)で洗浄した。湿潤ケークを水(131kg)により10~20℃で3時間消化し、フィルタにかけ、湿潤ケークを水(26.2kg)で洗浄した。湿潤ケークをテトラヒドロフラン(52.3kg、58.8L)により30~40℃で2時間消化し、フィルタにかけ、湿潤ケークをテトラヒドロフラン(13.1kg、14.7L)で洗浄した。湿潤ケークを真空下50℃で乾燥させて、15.19kgの標記化合物を灰白色固体として得た。
【0081】
エチル3-クロロピリジン-2-カルボキシレート
【化20】
アルゴン雰囲気下、2,3-ジクロロピリジン(150g、1.01mol、当量:1.00)、エタノール(592g、750mL)、PdCl
2(dppp)(1.20g、2.03mmol、当量:0.0020)及びトリエチルアミン(205g、2.03mol、当量:2.00)をオートクレーブに装入した。雰囲気を一酸化炭素で3回交換し、圧力を10barに調整した。撹拌を開始し、混合物を100℃に加熱した。一酸化炭素圧力を60barに調整し、反応混合物を100℃で20時間撹拌した。内容物を室温に冷却し、雰囲気をアルゴンで5回交換した。オートクレーブを排出し、エタノール(158g、200mL)ですすいだ。粗混合物を、添加漏斗を用いてクエン酸(97.3g、0.506mol;当量:0.50)の水(367g、367mL)中溶液に添加し、添加漏斗をエタノール(39.5g、50mL)ですすいだ。溶液をフィルタにかけ、水(985g、985mL)を添加した。エタノールを減圧下で除去し、酢酸エチル(630g、700mL)を添加した。揮発性物質を減圧下で除去し、酢酸エチル(1.42kg、1.58L)及び水(329g、329mL)を添加した。水相を分離し、有機相を真空下で完全に濃縮した。残渣を2-メチル-2-ブタノール(639g、790mL)に溶解し、完全に濃縮し、55℃/10mbar未満で乾燥させて、173.3gの標記化合物を赤褐色油として得た。
【0082】
エチル3-(1-tert-ブトキシカルボニル-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-4-イル)ピリジン-2-カルボキシレート
【化21】
アルゴン雰囲気下、tert-ブチル4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボキシレート(64.4g、208mmol、当量:1.00)、炭酸カリウム(57.6g、416mmol、当量:2.00)、テトラブチルアンモニウムブロミド(3.36g、10.4mmol、当量:0.050)及び脱気した2-メチル-2-ブタノール(100g、124mL)を反応器に装入した。脱気した2-メチル-2-ブタノール中25.2w/w%溶液としてのエチル3-クロロピリジン-2-カルボキシレート(153.2g、208mmol、当量:1.00)を、2-メチル-2-ブタノール(93.5g、116mL)を用いて添加した。アルゴン雰囲気下の別のフラスコ中で、4-(ジ-tert-ブチルホスファニル)-N,N-ジメチルアニリン(829mg、3.12mmol、当量:0.015)及び酢酸パラジウム(467mg、2.08mmol、当量:0.010)を脱気した2-メチル-2-ブタノール(24.2g、30mL)に懸濁し、15分間撹拌した。触媒溶液を反応器に添加し、混合物を102℃で2時間加熱還流した。室温に冷却した後、tert-ブチルメチルエーテル(430g、582mL)及び水(716g、716mL)を添加した。水層を分離し、塩化ナトリウム(31.2g)の水(624g、624mL)中溶液を添加した。水層を分離し、有機層をSpeedexパッド及び活性炭フィルタを通して順次フィルタにかけた。反応器及びフィルタをtert-ブチルメチルエーテル(68g、92mL)ですすいだ。有機溶液から減圧下で溶媒を除去し、トルエン(116g、134mL)を添加し、溶液を再び減圧下で蒸発乾固した。2-メチルテトラヒドロフラン(110g、129mL)を橙色残渣(190.2g)に添加して、標記化合物の2-メチルテトラヒドロフラン中32.6w/w%溶液を作製した。
【0083】
tert-ブチル4-[2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-3-ピリジル]-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボキシレート
【化22】
窒素雰囲気下、2-メチルテトラヒドロフラン(192g、230mL)を反応器に装入し、テトラヒドロフラン中21.9w/w%メチルマグネシウムクロリド(263.1g、261mL、770mmol、当量:3.70)を、添加漏斗を介して室温で添加し、これを2-メチルテトラヒドロフラン(23.9g、28mL)ですすいだ。2-メチル-テトラヒドロフラン中36.3w/w%溶液としてのtert-ブチル4-[2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-3-ピリジル]-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボキシレート(190.2g、69.0g補正、208mmol、当量:1.00)を、添加漏斗を使用して15~25℃で添加し、添加漏斗を2-メチルテトラヒドロフラン(25g、29.3mL)ですすいだ。ベージュ色懸濁液を10℃に冷却し、酢酸(92.5g、1.54mol、当量:7.41)のtert-ブチルメチルエーテル(285g、385mL)中溶液を10~25℃で3時間にわたって添加した。水Ca(300g、300mL)、引き続いてtert-ブチルメチルエーテル(300g、405mL)を10~25℃で添加した。水層を分離し、有機層をSpeedexフィルタ及び活性炭フィルタを通して室温で順次フィルタにかけた。反応器及びフィルタをtert-ブチルメチルエーテル(37g、50mL)ですすいだ。有機層を、クエン酸(106g、554mmol、当量:2.65)の水(366g、366mL)中溶液で1回、クエン酸(53g、277mol、当量:1.33)の水(183g、183mL)中溶液で3回抽出した。水層を合わせ、反応器に装入し、移送機器を水(50g、50mL)ですすいだ。水層にtert-ブチルメチルエーテル(300g、405mL)を添加し、28w/w%水酸化ナトリウム水溶液(573g、441mL、4.01mol、当量:19.3)を10~25℃で添加した。水層を分離し、有機層を水(100g、100mL)で洗浄した。有機溶液を減圧下で完全に濃縮した。アセトニトリル(151g、192mL)を残渣に添加し、溶液を減圧下でもう一度完全に蒸発させた。アセトニトリル(151g、192mL)を残渣(350g)に添加し、得られた溶液を1μmフィルタに通し、標記化合物をアセトニトリル中16.7w/w%溶液として得た。
【0084】
tert-ブチルrac-(3’S,5R)-3’-ブロモ-7,7-ジメチル-スピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-カルボキシレート
【化23】
アルゴン雰囲気下、N-ブロモスクシンイミド(30.0g、167mmol、当量:1.00)をアセトニトリル(190g、242mL)に溶解し、添加漏斗を使用して、溶液をtert-ブチル4-[2-(1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)-3-ピリジル]-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボキシレートのアセトニトリル中16.7w/w%溶液(318g、53.2g補正、167mmol、当量:1.00)に室温で75分間にわたって添加した。添加漏斗をアセトニトリル(25g、32mL)ですすいだ。混合物を室温で15分間撹拌した。アスコルビン酸(588mg、3.34mmol、当量:0.020)を水(57g、57mL)に溶解し、溶液を、添加漏斗を介して室温で反応混合物に添加した。添加漏斗を水(25g、25mL)ですすいだ。重炭酸ナトリウム(842mg、10.0mmol、当量:0.060)を水(81g、81mL)に溶解し、溶液を、添加漏斗を用いて室温で反応混合物に添加した。添加漏斗を水(25g、25mL)ですすいだ。混合物を減圧下で約300mL体積まで濃縮し、tert-ブチルメチルエーテル(259g、350mL)を添加した。水層を分離し、有機層を約180mL体積まで濃縮した。エタノール(473g、600mL)を添加し、混合物を減圧下で約380mL体積まで濃縮した。水(290g、290mL)を溶液に1時間にわたって添加し、40℃で維持した。得られた軽い混濁溶液を播種し、40℃で1時間撹拌した。懸濁液を2時間にわたって20℃に冷却し、一晩撹拌した。水(250g、250mL)を1時間にわたって添加し、懸濁液を20℃で4時間老化させ、次いで、フィルタにかけた。濾過ケークをエタノール(24g、30mL)と水(90g、90mL)の混合物で洗浄し、50℃/10mbar未満で一晩乾燥させた。標記化合物(57.9g)が白色結晶として得られた。
【0085】
マグネシウム2-(1’-(tert-ブトキシカルボニル)-1’,2’,3’,6’-テトラヒドロ-[3,4’-ビピリジン]-2-イル)プロパン-2-オレートクロリド
【化24】
テトラヒドロフラン(8.8kg、10L)を反応器に装入し、5℃に冷却した。THF中22%メチルマグネシウムクロリド(6.8kg、20mol、当量:2.67)を、温度を5~20℃に維持しながら20分間にわたって添加した。供給ラインをテトラヒドロフラン(2.64kg,3L)ですすいだ。溶液を20℃に加熱した。1’-(tert-ブチル)-2-エチル-3’,6’-ジヒドロ-[3,4’-ビピリジン]-1’,2(2’H)-ジカルボキシレートのTHF中31.5%溶液(7.9kg、7.49mol、当量:1.00)を、反応温度を20~26℃に維持しながら30分間にわたって添加した。20℃で5分後、反応混合物を0~5℃に冷却した(HPLCによるIPC)。温度を1~4℃に維持しながら、アセトン(658g、832mL、11.3mol、当量:1.51)を得られた懸濁液に添加した(過剰グリニャールクエンチ)。懸濁液をフィルタにかけ、濾過ケークをテトラヒドロフラン(合計:11kg、12.5L)で少しずつ洗浄した。残渣を減圧下40℃で乾燥させ、2.5kgの標記生成物を得て、これを更に精製することなく次の工程に導入した。
【0086】
tert-ブチルrac-(3’S,5R)-3’-ブロモ-7,7-ジメチル-スピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-カルボキシレート
【化25】
マグネシウム2-(1’-(tert-ブトキシカルボニル)-1’,2’,3’,6’-テトラヒドロ-[3,4’-ビピリジン]-2-イル)プロパン-2-オレートクロリド(100g、265mmol、当量:1.00)をMTBE(518g、700mL)に懸濁した。10%塩化アンモニウム水溶液(800g、800mL)を10分間にわたって添加して、透明な二相系を作製した。有機相を分離し、脱イオン水(800g、800mL)で洗浄し、減圧下60℃で濃縮乾固して、74.3gの第三級アルコール中間体Vを得た。
【0087】
粗アルコールVをアセトニトリル(393g、500mL)に再溶解した。約100mLの溶媒を減圧下60℃で蒸留した(最終体積約420mL)。N-ブロモスクシンイミド(43.6g、245mmol、当量:1.05)のアセトニトリル(275g、350mL)中溶液を室温で1時間にわたって添加した。供給ラインをアセトニトリル(50mL)で洗浄した。室温で10分後(HPLCによるIPC)、アスコルビン酸(6.2g、35.2mmol、当量:0.151)の水(90g、90mL)中溶液を室温で少しずつ添加した(得られたpH2~3)。更に10分後、重炭酸ナトリウム(7g、83.3mmol、当量:0.357)の水(110g、110mL)中溶液を10分間にわたって添加した(得られたpH7~8、軽い懸濁液)。約780mLの溶媒を減圧下60℃で蒸留した。エタノール(213g、270mL)及び水(200g、200mL)を50℃で添加し、引き続いて種結晶を添加した。懸濁液を室温に冷却した(0.5℃/分の冷却速度)。水(400g、400mL)を1時間にわたって添加した。懸濁液を室温で一晩撹拌し、フィルタにかけた。濾過ケークを水/エタノールの4:1混合物溶液(440mL)で洗浄し、減圧下50℃で乾燥させて、81gの標記生成物を白色結晶として得た。
【0088】
tert-ブチル7,7-ジメチルスピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-カルボキシレート
【化26】
アルゴン雰囲気下、tert-ブチルrac-(3’S,5R)-3’-ブロモ-7,7-ジメチル-スピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-カルボキシレート(80g、201mmol、当量:1.00)及び10%Pd/C(8g)をオートクレーブに装入した。メタノール(632g、800mL)及びトリエチルアミン(30.6g、42mL、302mmol、当量:1.50)を添加した。容器を密封し、混合物を25℃で1時間撹拌した。撹拌を停止し、雰囲気を水素に交換し、4barに調整した。次いで、混合物を25℃で16時間撹拌した。雰囲気をアルゴンに交換し、反応混合物をフィルタにかけた。フィルタをメタノール(79g、100mL)ですすぎ、濾液を減圧下で135mL体積まで濃縮した。得られた白色懸濁液を酢酸エチル(270g、300mL)に溶解し、溶液を135mL体積まで濃縮した。酢酸エチル(720g、800mL)及び水(320g、320mL)を撹拌下で添加した。水層の分離後、有機層を重炭酸ナトリウム(10.2g、121mmol、当量:0.60)の水(200g、200mL)中溶液及び水(200g、200mL)で洗浄した。有機層を周囲圧力で150mL体積まで濃縮した。n-ヘプタン(465g、680mL)を添加し、周囲圧力でn-ヘプタン(479g、700mL)と溶媒交換を行った。溶液を80℃で播種し、室温に冷却し、一晩撹拌した。生成物をフィルタにかけ、n-ヘプタン(164g、240mL)で洗浄し、50℃/10mbar未満で乾燥させ、51.2gの標記化合物を白色固体として得た。
【0089】
7,7-ジメチルスピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]二塩酸塩
【化27】
1-プロパノール(81.6g、102mL)を反応器に装入し、温度を0~5℃に設定し、塩化アセチル(18.6g、16.9mL、237mmol、当量:2.1)をこの温度で添加漏斗によって滴加した。添加漏斗を1-プロパノール(28.8g、36mL)ですすいだ。得られた1-プロパノール中HCl溶液を0~5℃で1時間撹拌し、一方、別個に、1-プロパノール(180g、225mL)中tert-ブチル7,7-ジメチルスピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-カルボキシレート(36.0g、113mmol、当量:1.00)を反応器に装入し、60℃に加熱した。T
iを55~60℃に維持しながら、調製したHCl溶液を、添加漏斗を通して添加し、添加漏斗を1-プロパノール(24g、30mL)ですすいだ。反応混合物を60℃で一晩撹拌し、標記化合物を淡黄色溶液又は白色懸濁液として得た。
【0090】
2,2-ジメチル-N-(4’-オキソスピロ[インダン-2,5’-オキサゾール]-2’-イル)プロパンアミド
【化28】
2’-アミノスピロ[インダン-2,5’-オキサゾール]-4’-オン(22.9g、113mmol、当量:1.00)を反応器に装入し、アセトニトリル(106g、135mL)を添加した。懸濁液に、ピリジン(11.7g、12mL、148mmol、当量:1.31)を、添加漏斗を介して添加し、添加漏斗をアセトニトリル(9.4g、12mL)ですすいだ。懸濁液を60~65℃に加熱し、塩化ピバロイル(14.2g、14.5mL、118mmol、当量:1.04)を、添加漏斗を使用して添加し、添加漏斗をアセトニトリル(10.4g、13.2mL)ですすいだ。反応混合物を60℃で4~5時間撹拌し、標記化合物をベージュ色懸濁液として生成した。
【0091】
2’-(7,7-ジメチルスピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-イル)スピロ[インダン-2,5’-オキサゾール]-4’-オン
【化29】
55~60℃に加熱した、先に調製したアセトニトリル中の2,2-ジメチル-N-(4’-オキソスピロ[インダン-2,5’-オキサゾール]-2’-イル)プロパンアミド懸濁液(反応器1)に、添加漏斗を使用してN,N-ジイソプロピルエチルアミン(44.0g、59.4mL、340mmol、当量:3.01)を添加し、その後、アセトニトリル(10.3g、13.2mL)ですすいだ。55~60℃に加熱した、先に調製した1-プロパノール中の7,7-ジメチルスピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]二塩酸塩溶液又は懸濁液(反応器2)に、添加漏斗を使用してN,N-ジイソプロピルエチルアミン(14.6g、19.8mL、当量:1.00)を添加し、その後、1-プロパノール(8g、10mL)ですすいだ。反応器2の内容物を、50~60℃に維持された反応器1中の懸濁液に30分間にわたって添加した。反応器2を1-プロパノール(31.2g、39mL)ですすいだ。反応混合物を55℃で16時間撹拌した。淡黄色溶液を30℃に冷却し、活性炭カートリッジを通してフィルタにかけた。装置を1-プロパノール(80g、100mL)ですすいだ。溶液を減圧下で480mLまで濃縮し、水(250g、250mL)を60~80℃で添加し、次いで、混合物を減圧下で480mLまで濃縮した。T
iを65~80℃に維持しながら、さらなる水(300g、300mL)を30分間にわたって添加した。懸濁液を1時間撹拌し、n-ヘプタン(82g、120mL)を75℃で15分間にわたって添加した。懸濁液を75℃で1時間撹拌し、6時間にわたって20℃に冷却し、この温度で一晩(約16時間)撹拌した。懸濁液をフィルタにかけ、残渣を1-プロパノール(28g、35mL)と水(112g、112mL)の混合物、次いでn-ヘプタン(43.1g、63mL)ですすいだ。生成物を60℃/10mbar未満で乾燥させて、40.5gの標記化合物を白色結晶として得た。
【0092】
2’-(7,7-ジメチルスピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-イル)スピロ[インダン-2,5’-オキサゾール]-4’-オン、再結晶
【化30】
1-プロパノール中での再結晶:
2’-(7,7-ジメチルスピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-イル)スピロ[インダン-2,5’-オキサゾール]-4’-オン(40.0g;99.1mmol、当量:1.00)を反応器に装入した。1-プロパノール(480g、598mL)を添加し、懸濁液を100℃に加熱した。熱溶液をフィルタにかけ、反応器を熱(80℃超)1-プロパノール(50g、62mL)ですすぎ、減圧下、80~95℃で蒸留することによって総体積を480mLまで減少させた。透明な溶液が得られるまで、混合物を95℃に加熱した。溶液を73℃に冷却し、播種した。その後の懸濁液を73℃で1~2時間撹拌し、次いで、温度を65℃に設定した。混合物を65℃で一晩(約16時間)撹拌し、6時間にわたって20℃に冷却し、20℃で更に約16時間撹拌した。生成物をフィルタにかけ、残渣を1-プロパノール(40g、50mL)で洗浄し、次いで、55℃/10mbar未満で乾燥させて、34.8gの標記化合物を白色結晶として得た。
【0093】
水/1-プロパノール中での再結晶:
2’-(7,7-ジメチルスピロ[フロ[3,4-b]ピリジン-5,4’-ピペリジン]-1’-イル)スピロ[インダン-2,5’-オキサゾール]-4’-オン(50.0g;124mmol、当量:1.00)を反応器に装入した。1-プロパノール(600g、747mL)を添加し、懸濁液を100℃に加熱した。熱溶液をフィルタにかけ、反応器を熱(80℃超)1-プロパノール(50g、62mL)ですすぎ、減圧下、7~95℃で蒸留することによって総体積を325mLまで減少させた。水(100g、100mL)を添加し、透明な溶液が得られるまで混合物を85℃に加熱した。溶液を73℃に冷却し、播種した。懸濁液を73℃で1~2時間撹拌し、水(700g、700mL)を同じ温度で1時間にわたって添加した。温度を65℃に設定した後、懸濁液を65℃で一晩(約16時間)撹拌し、6時間にわたって20℃に冷却し、20℃で更に約16時間撹拌した。生成物をフィルタにかけ、残渣を1-プロパノール(15g、19mL)と水(60g、60mL)の混合物で洗浄し、次いで、真空下60℃/10mbar未満で乾燥させて、48.3gの標記化合物を白色結晶として得た。
【0094】
参考文献
1J Neuroendocrinol 2010,22(5):362-72。
2Brain Res.1983,263(1):105-12。
3Brain Res Bull.1981,(2):125-30。
4Science 1984,223:833-5。
5Science,2013,342:85-90。
6Heterocycles 1999,51:2589
7Synthesis,2001(7):1098
【国際調査報告】