(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】アロマターゼ耐性ER+がんのラソフォキシフェン処置
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4155 20060101AFI20241010BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20241010BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K31/4155
A61K31/40
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/519
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529563
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 US2022050218
(87)【国際公開番号】W WO2023091553
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524185951
【氏名又は名称】サーモニックス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コム, バリー サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】グリーン, ジェフリー エル.
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086BC36
4C086CB09
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA63
4C086MA65
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、アロマターゼインヒビター下で進行した患者においてエストロゲンレセプター陽性(ER+)がんを処置するための方法における使用のための、有効量のラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩もしくは機能的誘導体を提供する。エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有しないER+がんが、特に重要である。インビトロおよび動物モデル実験は新たに、ラソフォキシフェンが、ERα活性化変異を発現しないレトロゾール誘導性、AI耐性乳房腫瘍モデル(MCF-7 LTLT細胞)においてフルベストラント(ICI)より有効であることを明らかに示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロマターゼインヒビター下で進行した患者においてエストロゲンレセプター陽性(ER
+)がんの進行を低減させる方法であって、ここで前記がんは、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有さず、前記方法は、
有効量のラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体を前記患者に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記ER
+がんは、局所進行性または転移性乳がんであり、ここで必要に応じて前記がんは、HER2
-である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アロマターゼインヒビターは、エキセメスタン(アロマシン(登録商標))、レトロゾール(フェマーラ(登録商標))、またはアナストロゾール(アリミデックス
(登録商標))である、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記がんが、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有しないことを決定する、より前の工程をさらに包含する。前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
ラソフォキシフェンは、ラソフォキシフェン酒石酸塩として投与される、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項6】
ラソフォキシフェンは、経口、静脈内、経皮、膣局所、または膣リング投与によって投与される、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
ラソフォキシフェンは、経口投与によって投与される、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
ラソフォキシフェンは、5mg/日~約10mg/日の用量で経口投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのさらなる内分泌療法で前記患者を処置する工程をさらに包含する、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項10】
有効量のサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)インヒビターを前記患者に投与する工程をさらに包含する、前述のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記CDK4/6インヒビターは、パルボシクリブ、アベマシクリブ、またはリボシクリブであり、ここで好ましくは、前記インヒビターは、アベマシクリブである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有効量のAKTインヒビターを前記患者に投与する工程をさらに包含する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記AKTインヒビターは、アフレセルチブである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
有効量のmTorインヒビターを前記患者に投与する工程をさらに包含する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月18日出願の米国仮特許出願第63/280,769号(その開示は、その全体において本明細書に参考として援用される)の利益および優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
2.発明の背景
エストロゲンレセプター陽性(ER+)乳がんは、ESR1遺伝子によってコードされるエストロゲンレセプターα(ERα)を発現するがんである。乳がんのうちのおよそ70%が、ER+であり、従って、循環エストロゲンレベルを枯渇させるかまたはがん細胞においてエストロゲンシグナル伝達を遮断する薬剤(まとめて、内分泌療法)で処置される。選択的エストロゲンレセプター調節因子(SERM)、選択的エストロゲンレセプター分解因子(SERD)、およびアロマターゼインヒビター(AI)は、内分泌療法薬剤の主要なクラスである。内分泌療法は、ER+乳がんを有する女性の転帰において有意な改善をもたらした。しかし、内分泌療法の有効性は、内因的な、および重要なことには、獲得性の内分泌耐性によって制限される。内分泌療法によって課される選択圧(特に、アロマターゼインヒビター)への応答において、ER+腫瘍は、種々の回避機序を発達させる。これらの中には、ERαレセプターのリガンド結合ドメインを変化させるESR1遺伝子における機能獲得型変異の獲得があり、低レベルのエストロゲンまたはエストロゲンの非存在下でレセプターを構成的に活性にする。内分泌療法の利益にもかかわらず、ER+を有する患者のうちの大部分は、最終的には、耐性を獲得し、進行する。
ラソフォキシフェン、選択的エストロゲンレセプター調節因子(SERM)は、野生型エストロゲンレセプターを有する女性、乳がんの履歴がなく、骨粗鬆症の処置を受けている閉経後の女性において、ER+乳がんのリスクを低減することが示された。LaCroixら,J.Natl.Cancer Inst.102:1706-1715(2010)。ラソフォキシフェンは、ERαレセプターのリガンド結合ドメインにおいて機能獲得型変異を発生させたER+がんの進行を阻害する能力を保持していることが後に示された。米国特許第10,258,605号;同第10,905,659号;WO2019/199891。ESR1機能獲得型変異を獲得した局所進行性または転移性ER+乳がんを有する閉経前および閉経後の女性の処置における単一薬剤としてのラソフォキシフェンの有効性は、フェーズ2臨床試験、NCT03781063(ELAINE治験)において現在確認されている最中である。CDK4/6インヒビター、アベマシクリブとの組み合わせでのラソフォキシフェンの有効性を確認する臨床試験は、乳がん患者の類似の集団(彼らは全て、ERαレセプターにおける機能獲得型変異を有する)においても、進行中である(NCT04432454(ELAINE II治験))。
ラソフォキシフェンは、ESR1機能獲得型変異の獲得を介して内分泌療法下で進行したER+乳がんの進行を阻害するにあたって有効であることが示されているが、ER+がん細胞は、内分泌療法を回避する他の機序を発達させる。従って、内分泌療法下で進行し、ESR1遺伝子の変異を欠くER+がんの進行および転移を阻害するにあたって有効である治療剤の必要性が未だにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10,258,605号明細書
【特許文献2】米国特許第10,905,659号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/199891号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】LaCroixら,J.Natl.Cancer Inst.102:1706-1715(2010)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
3.発明の要旨
インビトロおよび動物モデル実験は新たに、ラソフォキシフェンが、ERα活性化変異を発現しないレトロゾール誘導性、AI耐性乳房腫瘍モデル(MCF-7 LTLT細胞)においてフルベストラント(ICI)より有効であることを明らかに示す。これらのデータは、ラソフォキシフェンがERα活性化変異を発現しないAI耐性ER+がんに対して有効な治療であることを明らかに示す。
【0006】
よって、第1の局面において、アロマターゼインヒビター下で進行した患者においてエストロゲンレセプター陽性(ER+)がんの進行を低減するための方法であって、ここで上記がんは、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有さない方法が提供される。上記方法は、有効量のラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体を上記患者に投与する工程を包含する。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記ER+がんは、局所進行性または転移性乳がんであり、ここで必要に応じて上記がんは、HER2-である。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記アロマターゼインヒビターは、エキセメスタン(アロマシン(登録商標))、レトロゾール(フェマーラ(登録商標))、またはアナストロゾール(アリミデックス(登録商標))である。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記がんがエストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有さないことを決定する、より前の工程をさらに包含する。
【0010】
いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、ラソフォキシフェン酒石酸塩として投与される。
【0011】
いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、経口、静脈内、経皮、膣局所、または膣リング投与によって投与される。
【0012】
いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、経口投与によって投与される。これらの実施形態のうちの特定のものにおいて、ラソフォキシフェンは、5mg/日~約10mg/日の用量で経口投与される。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記方法は、少なくとも1つのさらなる内分泌療法で上記患者を処置する工程をさらに包含する。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記方法は、有効量のサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)インヒビターを投与する工程をさらに包含する。ある特定の実施形態において、上記CDK4/6インヒビターは、パルボシクリブ、アベマシクリブ、またはリボシクリブである。いくつかの実施形態において、上記CDK4/6インヒビターは、アベマシクリブである。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記方法は、有効量のAKTインヒビターを投与する工程を包含する。ある特定の実施形態において、上記AKTインヒビターは、アフレセルチブである。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記方法は、有効量のmTorインヒビターを投与する工程をさらに包含する。
【0017】
4.図面の簡単な説明
本発明のこれらおよび他の特徴、局面、および利点は、以下の説明、および添付の図面に関してよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、文献からのMCF7 「WT」の2つの公に入手可能な参照ゲノムに対してAI耐性乳房腫瘍モデルMCF-7 LTLT細胞におけるバリアント数の比較を示す。
【0019】
【
図2】
図2は、ラソフォキシフェンが、MCF7 LTLT(ESR1機能獲得型変異を欠いているAI耐性ER
+細胞)腫瘍の原発性腫瘍増殖を阻害することを示すデータを表す。データは、各群に関する経時的にライブイメージソフトウェアで定量した全光子フラックスを示すインビボ画像化からのものである。マウスを、ビヒクル、パルボシクリブ、ラソフォキシフェン、フルベストラント(ICI)、ラソフォキシフェン+パルボシクリブ、またはフルベストラント(ICI)+パルボシクリブで処置した。
【0020】
【
図3】
図3は、ラソフォキシフェンが、ESR1機能獲得型変異を欠いているAI耐性ER
+細胞における原発性腫瘍増殖を阻害することを示すデータをまとめるヒストグラムである。上記ヒストグラムは、104日目の乳腺の全光子フラックスを示す。N=6~12腺±SEM。P値は、*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005、****p<0.0001である。
【0021】
【
図4】
図4は、ラソフォキシフェンが、ESR1機能獲得型変異を欠いているAI耐性ER+細胞において原発性腫瘍重量の増大を阻害することを示すデータを示す。そのヒストグラムは、屠殺日の乳腺の平均重量を示す。N=6~12腺±SEM。P値は、*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005、****p<0.0001である。
【0022】
【
図5】
図5は、腫瘍面積がラソフォキシフェンおよびラソフォキシフェン+パルボシクリブによって低減されることを示すデータを示す。乳腺の切断切片のH&E分析を介して明らかにされたとおりのパーセント腫瘍面積 対 全腺面積。H&E切片の全腺面積に対する腫瘍面積のパーセントを示すヒストグラム。N=3~6腺±SEM。P値は、*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005、****p<0.0001である。
【0023】
【
図6-1】
図6は、Let+コホートにおいて、ラソフォキシフェンが、単一薬剤として、およびパルボシクリブとの組み合わせにおいてKi67増殖指数を低減することを示すデータを示す。
図6Aは、ビヒクル 対 Let
- 対 Let
+コホートの比較における% Ki67を示す。
図6Bおよび
図6Cは、それぞれ、Let
-およびLet
+コホートの% Ki67を示す。N=3~6腺±SEM。P値は、*p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005、****p<0.0001である。
【0024】
【
図7A】
図7は、肝臓、肺および脳におけるエキソビボラジアンス測定値を示す。屠殺時に切除した器官のエキソビボ画像化。ラジアンスを、肝臓(
図7A)、肺(
図7B)、および脳(
図7C)において測定した。肝臓、肺および脳に関してはN=3~6、ならびに骨に関してはN=6~12。
【0025】
【
図8】
図8は、骨におけるエキソビボラジアンス測定値を示す。
図8A:ラジアンスを、屠殺時に骨において測定した。骨に関してはN=6~12。
図8Bは、代表画像を示す。
【0026】
【
図9-1】
図9は、ERαおよびグルココルチコイドレセプター(GR)タンパク質発現が、MCF7およびT47Dと比較して、MCF7aroおよびLTLTにおいて低いことを示すデータを示す。
図9A,ERαおよびアクチンを示すウェスタンブロット。
図9B,アクチンに対するERαレベルの正規化。
図9C,GRおよびアクチンを示すウェスタンブロット。
図9D,アクチンに対するGRタンパク質バンドの正規化。
【0027】
【
図10-1】
図10は、MCF7およびT47Dと比較して、MCF7aroおよびMCF7 LTLTにおけるAR、HER2およびPRタンパク質レベルを比較するデータを示す。
図10A,ARおよびアクチンを示すウェスタンブロット。
図10B,アクチンに対するARレベルの正規化。
図10C,MCF7 LTLTにおけるHer2発現を示すウェスタンブロット。
図10D,T47DおよびMCF7 LTLTのアクチンに対するHer2の正規化。
図10E,PRを示すウェスタンブロット。ARおよびHer2に関しては、1つのゲルを実行した。PRに関しては、2つの代表的実験のうちの1つを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
5.発明の詳細な説明
エストロゲンレセプター陽性(ERα+)原発性侵襲性乳がんを有する閉経後の患者は、代表的には、第1選択肢の補助療法としてアロマターゼインヒビター(AI)で処置される。AIに耐性になった患者は、第2選択肢の治療として、現在、SERD、フルベストラント、および/またはCDK4/6インヒビター(例えば、パルボシクリブ)で処置される。ラソフォキシフェンは以前に、ERαレセプターのリガンド結合ドメインにおける機能獲得型(活性化)変異の獲得を通じてAI耐性になったER+腫瘍の進行を阻害するその能力を保持することが明らかに示された。他の機序によって内分泌療法を回避するAI耐性ER+がんの進行を防止するラソフォキシフェンの能力は、未知である。
【0029】
以下の例において記載されるように、本発明者らは、ERαのリガンド結合ドメインにおいて活性化変異を有しないレトロゾール誘導性AI耐性細胞(LTLT細胞)を使用する乳房腫瘍モデルにおいて、ラソフォキシフェン(単独で、およびパルボシクリブとの組み合わせの両方において)の有効性を、フルベストラント(単独で、およびパルボシクリブとの組み合わせの両方において)に対して比較した。ラソフォキシフェン(単独で、およびパルボシクリブとの組み合わせ)は、原発性腫瘍増殖の阻害に関して、フルベストラント(単独で、およびパルボシクリブとの組み合わせの両方において)より有意に有効であった。さらに、フルベストラント単独を除く全ての処置は、ビヒクルに対して骨転移を阻害した。これらのデータは、ラソフォキシフェンがこの腫瘍モデルにおいてフルベストラントより有効であることを示し、ラソフォキシフェンがERα活性化変異を発現しないAI耐性乳がんに有効な治療であることを明らかに示す。データは、ラソフォキシフェンとサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)インヒビターとの組み合わせが、ERα活性化変異を発現しないAI耐性乳がんにとってより有効な治療であることを示す。さらに、ラソフォキシフェン(単独で、またはサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)インヒビターとの組み合わせにおいて)は、骨へのおよび脳への転移を阻害する。
【0030】
5.1.処置方法
よって、第1の局面において、アロマターゼインヒビター下で進行した患者においてエストロゲンレセプター陽性(ER+)がんの進行を低減させる方法であって、ここで上記がんは、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有しない方法が、本明細書で開示される。上記方法は、有効量のラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体を上記患者に投与する工程を包含する。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記がんが、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有しないことを決定する、より前の工程をさらに包含する。
【0032】
上記方法は、有効量のラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体を、サイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)インヒビター(例えば、パルボシクリブ、アベマシクリブまたはリボシクリブ)との組み合わせにおいて、および/またはアロマターゼインヒビター(例えば、エキセメスタン(アロマシン(登録商標))、レトロゾール(フェマーラ(登録商標))、またはアナストロゾール(アリミデックス(登録商標))との組み合わせにおいて、上記患者に投与する工程を包含し得る。
【0033】
5.1.1. ER+がんを有する患者
種々の実施形態において、上記患者は、ER+がんと診断されている。いくつかの実施形態において、上記ER状態は、上記患者のがんのサンプルに対して行われる免疫組織化学(IHC)によって、RT-PCRによって、大規模並行次世代シーケンシング(NGS)によって、または他の従来の技術によって、決定されている。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、生検に由来する腫瘍組織である。いくつかの実施形態において、上記サンプルは、採血、唾液、または他の体液からの液体生検材料(例えば、血清、腫瘍生体マーカーの循環DNA)である。
【0034】
いくつかの実施形態において、上記患者は、ER+乳がんと診断されている。いくつかの実施形態において、上記がんは、ER+/HER2-乳がんである。いくつかの実施形態において、上記患者は、ER+原発性乳がんと診断されている。いくつかの実施形態において、上記がんは、局所進行性または転移性ER+乳がんである。いくつかの実施形態において、上記患者は以前に、エキセメスタン(アロマシン(登録商標))、レトロゾール(フェマーラ(登録商標))、またはアナストロゾール(アリミデックス(登録商標))から選択されるアロマターゼインヒビターで処置されている。
【0035】
いくつかの実施形態において、上記患者は、閉経前、閉経期前後または閉経後である。いくつかの実施形態において、上記患者は、閉経前であり、原発性ER+乳がんを有する。いくつかの実施形態において、上記患者は、閉経前であり、局所進行性または転移性ER+乳がんを有する。いくつかの実施形態において、上記患者は、閉経期前後であり、原発性ER+乳がんを有する。いくつかの実施形態において、上記患者は、閉経期前後であり、局所進行性または転移性ER+乳がんを有する。いくつかの実施形態において、上記患者は、閉経後であり、原発性ER+乳がんを有する。いくつかの実施形態において、上記患者は、閉経後であり、局所進行性または転移性ER+乳がんを有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、上記患者は、閉経前であり、原発性乳がんを有するか、または局所進行性または転移性ER+乳がんを有し、以前に、第2の治療との組み合わせにおいてアロマターゼインヒビターで処置されたことがある。例えば、上記患者は、第2の治療(例えば、ゴセレリン(ゾラデックス(登録商標))またはロイプロリド(リュープリン(登録商標))との組み合わせにおいてレトロゾールで処置されたことがあってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態において、上記患者は、乳がん以外のER+がんと診断されている。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、上記患者は、ER+卵巣がんと診断されている。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、上記患者は、ER+肺がんと診断されている。ある特定の実施形態において、上記がんは、子宮がん、子宮頚がん、腹膜がん、外陰がん、および腟がんから選択される婦人科系のがんである。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記患者は、原発性ER+子宮がんと診断されている。ある特定の実施形態において、上記子宮がんは、類内膜、明細胞癌、乳頭状漿液(papillary serous)、癌肉腫、平滑筋肉腫、および子宮内膜間質部肉腫(ESS)から選択される。ある特定の実施形態において、上記子宮がんは、子宮内膜間質部肉腫、子宮内膜腺肉腫、子宮腺扁平上皮癌、子宮平滑筋肉腫または子宮体癌である。
【0039】
これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、上記患者は、ER+子宮頚がんと診断されている。ある特定の実施形態において、上記子宮頚がんは、子宮頚部明細胞癌である。
【0040】
これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、上記患者は、ER+外陰/腟がんと診断されている。ある特定の実施形態において、上記外陰または腟がんは、扁平上皮癌(SCC)または腺癌である。
【0041】
これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、上記患者は、ER+肺がんと診断されている。ある特定の実施形態において、上記肺がんは、肺腺肉腫、肺扁平上皮癌、または小細胞肺癌である。
【0042】
ある特定の実施形態において、上記がんは、食道がん、胃がん、小腸がん、結腸がん、直腸がん、および結腸直腸がんから選択される消化器系の癌である。
【0043】
いくつかの実施形態において、上記患者は、原発性ER+食道がんと診断されている。ある特定の実施形態において、上記食道がんは、腺癌または扁平上皮癌である。
【0044】
いくつかの実施形態において、上記患者は、原発性ER+胃がんと診断されている。ある特定の実施形態において、上記胃がんは、胃腺癌である。
【0045】
いくつかの実施形態において、上記患者は、原発性ER+小腸がんと診断されている。ある特定の実施形態において、上記小腸がんは、腺癌、カルチノイド腫瘍、リンパ腫、または肉腫(例えば、平滑筋肉腫)である。ある特定の実施形態において、上記小腸がんは、悪性小腸新生物である。
【0046】
いくつかの実施形態において、上記患者は、原発性ER+結腸がんと診断されている。ある特定の実施形態において、上記結腸がんは、結腸腺癌である。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記患者は、原発性ER+直腸がんと診断されている。ある特定の実施形態において、上記直腸がんは、直腸腺癌である。
【0048】
いくつかの実施形態において、上記患者は、原発性ER+結腸直腸癌と診断されている。ある特定の実施形態において、上記結腸直腸がんは、結腸直腸腺癌および結腸直腸粘液性腺癌(colorectal mucinous adenocarcinoma)である。
【0049】
ある特定の実施形態において、上記がんは、膀胱がん、例えば、膀胱尿路上皮癌;神経膠芽腫、例えば、従来の多形神経膠芽腫;皮膚がん、例えば、皮膚扁平上皮癌;黒色腫、例えば、皮膚黒色腫;浸潤性腎盂がん;膵臓がん、例えば、膵臓腺癌および原発不明がんから選択される。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記ER+がんは、原発性がんである。いくつかの実施形態において、上記ER+がんは、限局性がんである。いくつかの実施形態において、上記がんは、局所進行性である。いくつかの実施形態において、上記がんは、転移性ER+がんである。
【0051】
いくつかの実施形態において、上記患者のがんは、タモキシフェン処置後に再燃または進行している。いくつかの実施形態において、上記患者のがんは、フルベストラント処置後に再燃または進行している。いくつかの実施形態において、上記患者のがんは、アロマターゼインヒビター処置後に再燃または進行している。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、上記患者のがんは、複数の系統の内分泌療法処置の後に再燃または進行している。
【0052】
5.1.1.1.ESR1遺伝子変異の検出
種々の実施形態において、上記患者は、ESR1遺伝子のLBDにおいて変異を有しないことが予め決定されている。本明細書で記載される方法のいくつかの実施形態は、ESR1遺伝子において変異を検出する工程をさらに包含する。
【0053】
いくつかの実施形態において、大規模並行次世代シーケンシング(NGS)は、上記患者のがんにおいてエストロゲンレセプター変異を検出するために使用される。ある特定の実施形態において、ゲノム全体が配列決定される。ある特定の実施形態において、癌関連遺伝子の選択された遺伝子パネルが配列決定される。ある特定の実施形態において、所定の遺伝子セット内の全てのコードエキソンは、配列決定される。ある特定の実施形態において、所定の遺伝子セット内の既知の「ホットスポット」領域が配列決定される。しかし、現在の次世代シーケンシング技術の固有の誤差率は、1%までであり、検出感度および検出特異性を制限する。いくつかの実施形態において、標的化シーケンシングは、ESR1変異の存在を検出するために使用される。標的化シーケンシングはより深いシーケンシングを可能にするが、それはまた、現在、1%の誤差率によって制限される。いくつかの実施形態において、低減されたシーケンシング誤差率を有する方法が使用される。特定の実施形態において、セーフシーケンシングシステム(Safe-Sequencing System)(Safe-SeqS)が使用される。これは、各テンプレート分子をタグ付けして、稀少バリアントの信頼性の高い特定を可能にする。Kindeら,Proceedings of the National Academy of Sciences 108(23):9530-9535(2011)を参照のこと。特定の実施形態において、超高感度デュプレクスシーケンシング(ultrasensitive Duplex sequencing)が使用され、これは、DNA二重鎖の2本の鎖の各々を独立してタグ付けしかつ配列決定する。Schmittら,Proceedings of the National Academy of Sciences 109(36):14508-14513(2012)を参照のこと。いくつかの実施形態において、デジタル液滴PCRが使用され、これは、変異体特異的プライマーとともに設計される、単一のDNA分子を被包するために数千から数百万の液滴中にDNAを乳化する。Vogelstein and Kinzler,Proceedings of the National Academy of Sciences 96(16):2322-2326(1999)およびHuggettら,Clinical Chemistry 61(1):79-88(2014)を参照のこと。
【0054】
いくつかの実施形態において、上記ESR1変異の検出は、初期診断時に行われる。いくつかの実施形態において、上記変異の検出は、疾患進行、再燃(relapse)、または再発(recurrence)時に行われる。いくつかの実施形態において、上記変異の検出は、疾患進行時に行われる。いくつかの実施形態において、上記変異の検出は、上記疾患が安定しているときに行われる。
【0055】
いくつかの実施形態において、1またはこれより多くの組織標本が、上記変異の検出のために得られる。ある特定の実施形態において、上記組織標本は、腫瘍生検材料である。ある特定の実施形態において、上記組織標本は、転移の生検材料である。いくつかの他の実施形態において、液体生検材料は、上記変異の検出のために得られる。ある特定の実施形態において、上記液体生検材料は、循環腫瘍細胞(CTC)である。ある特定の他の実施形態において、上記液体生検材料は、血液サンプルに由来する無細胞DNAである。
【0056】
具体的な実施形態において、上記ESR1変異は、循環腫瘍DNA(ctDNA)分析によってモニターされる。いくつかの実施形態において、上記ctDNA分析は、処置クール全体にわたって行われる。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、上記ctDNAは、患者血液サンプルから抽出される。ある特定の実施形態において、上記ctDNAは、上記ESR1変異のデジタルPCR分析によって評価される。
【0057】
5.1.2.補助処置
種々の実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助処置として上記患者に投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、単独で補助処置として上記患者に投与される。ある特定の他の実施形態において、ラソフォキシフェンは、他の内分泌療法との組み合わせにおいて補助処置として上記患者に投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、一次処置(primary treatment)の後に上記患者に投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、ラソフォキシフェンは、がんの外科的除去または減量後に、上記患者に投与される。
【0058】
いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、アロマターゼインヒビター(AI)との組み合わせにおいて補助療法として上記患者に投与される。種々の実施形態において、上記アロマターゼインヒビターは、エキセメスタン(アロマシン(登録商標))、レトロゾール(フェマーラ(登録商標))、またはアナストロゾール(アリミデックス(登録商標))である。
【0059】
種々の実施形態において、上記アロマターゼインヒビターは、上記患者を骨関連の毒性効果にかかりやすくする。いくつかの実施形態において、上記アロマターゼインヒビターは、上記患者を骨粗鬆症にかかりやすくする。いくつかの実施形態において、上記アロマターゼインヒビターは、上記患者を骨減少にかかりやすくする。いくつかの実施形態において、上記アロマターゼインヒビターは、上記患者を骨折しやすくする。いくつかの実施形態において、上記アロマターゼインヒビターは、上記患者を骨痛にかかりやすくする。
【0060】
種々の実施形態において、上記アロマターゼインヒビターは、上記患者を外陰腟萎縮症(vulvovaginal atrophy)(VVA)にかかりやすくする。
【0061】
いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、上記アロマターゼインヒビターの投与中に連続して投与される。いくつかの他の実施形態において、ラソフォキシフェンは、上記アロマターゼインヒビターの投与の間に周期的に投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンおよび上記アロマターゼインヒビターは、一緒に(同時に)投与される。いくつかの他の実施形態において、ラソフォキシフェンおよび上記アロマターゼインヒビターは、別個に(逐次的に)投与される。
【0062】
ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンの投与レジメンは、上記アロマターゼインヒビターの投与レジメンとは異なる。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、ラソフォキシフェンの投与量は、上記アロマターゼインヒビターの投与量とは異なる。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンの投与スケジュールは、上記アロマターゼインヒビターの投与スケジュールとは異なる。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンの投与経路は、上記アロマターゼインヒビターの投与経路とは異なる。
【0063】
ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンの投与レジメンは、上記アロマターゼインヒビターの投与レジメンと同じである。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンの投与量は、上記アロマターゼインヒビターの投与量と同じである。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンの投与スケジュールは、上記アロマターゼインヒビターの投与スケジュールと同じである。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンの投与経路は、上記アロマターゼインヒビターの投与経路と同じである。
【0064】
いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて上記患者に1年間投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて上記患者に2年間投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて上記患者に3年間投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて上記患者に4年間投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて上記患者に5年間投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて上記患者に6年間投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて上記患者に7年間投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて上記患者に8年間投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて上記患者に9年間投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて上記患者に10年間投与される。いくつかの他の実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて上記患者に10年間より長く投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて、上記患者のがんが治療下で進行するまで投与される。
【0065】
いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、がん患者の無病生存期間を増大させるために、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、対側乳がんの発生率を減少させるために、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、補助療法として、がんの再発または進行を防止するために、アロマターゼインヒビターとの組み合わせにおいて投与される。
【0066】
5.2.ラソフォキシフェン
種々の実施形態において、選択された患者は、有効量のラソフォキシフェン、薬学的に受容可能なその塩、そのプロドラッグもしくは機能的誘導体で処置される。ラソフォキシフェンは,以下の構造を有する:
【化1】
【0067】
いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、ラソフォキシフェン酒石酸塩として上記選択された患者に投与される。
【0068】
用語「薬学的に受容可能な塩」とは、非毒性の薬学的に受容可能な塩に言及する。Gould,International Journal of Pharmaceutics 33: 201-217(1986)およびBergeら,Journal of Pharmaceutical Sciences 66(1):1-19(1977)を参照のこと。しかし、当業者に周知の他の塩が使用されてもよい。代表的な有機酸または無機酸としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸、パモ酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サリチル酸、サッカリン酸またはトリフルオロ酢酸。代表的な有機塩基または無機塩基としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、および亜鉛のような塩基性またはカチオン性の塩。
【0069】
実施形態はまた、本明細書で開示される化合物のプロドラッグを含む。一般に、このようなプロドラッグとしては、必要とされる化合物へとインビボで容易に変換可能な、本明細書で記載される化合物の機能的誘導体が挙げられる。従って、本発明の処置方法において、用語「投与すること」とは、具体的に開示される化合物または具体的に開示されていない可能性があるが、被験体への投与後にインビボで特定の化合物へと変換する化合物での、記載される種々の障害の処置を包含するものとする。適切なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来の手順は、例えば、「Design of Prodrugs」,H.Bundgaard,Elsevier,1985に記載される。
【0070】
ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンの機能的誘導体は、ラソフォキシフェンを含むタンパク質分解誘導キメラ(proteolysis targeting chimera)(PROTAC)を包含する。ある特定の実施形態において、PROTACSは、3つの化学的構成要素:ラソフォキシフェン、ユビキチンリガンド結合部分またはULM基、およびこれらの2つの構成要素を結合体化するためのリガンドを有するヘテロ二官能性低分子である。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、ユビキチンリガンド結合部分またはULM基へと、リンカーを介して共有結合的に結合体化される。このようなリンカーの非限定的な例としては、エステルリンカー、アミドリンカー、マレイミドまたはマレイミドベースのリンカー;バリン-シトルリンリンカー;ヒドラゾンリンカー;N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB)リンカー;スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)リンカー;ビニルスルホンベースのリンカー;ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、テトラエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない)を含むリンカー;プロパノール酸(propanols acid)を含むリンカー;カプロレイン酸(caproleic acid)を含むリンカー、およびこれらの任意の組み合わせを含むリンカーが挙げられる。実施形態において、上記リンカーは、化学的に不安定なリンカー(例えば、中性pH(血流pH 7.3~7.5)では安定であるが、標的細胞(例えば、がん細胞)の軽度に酸性のエンドソーム(pH 5.0~6.5)およびリソソーム(pH 4.5~5.0)への内在化の際に加水分解を受ける酸切断可能なリンカー)である。化学的に不安定なリンカーとしては、ヒドラゾンベースのリンカー、オキシムベースのリンカー、カーボネートベースのリンカー、エステルベースのリンカーなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記リンカーは、酵素不安定性のリンカー(例えば、血流中で安定であるが、標的細胞への内在化の際に、例えば、標的細胞(例えば、がん細胞)のリソソーム中のリソソームプロテアーゼ(例えば、カテプシンまたはプラスミン)によって酵素による切断を受ける酵素不安定性のリンカー)である。酵素不安定性のリンカーとしては、ペプチド結合を含むリンカー、例えば、ジペプチドベースのリンカー(例えば、バリン-シトルリンリンカー(例えば、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジル(arninobenzyl)(MC-vc-PAB)リンカー、バリル-アラニル-パラ-アミノベンジルオキシ(Val-Ala-PAB)リンカーなど))が挙げられるが、これらに限定されない。化学的に不安定なリンカー、酵素不安定性、および切断できないリンカーは、例えば、Ducry & Stump (2010)Bioconjugate Chem.21:5-13に詳細に記載される。ある特定の実施形態において、ULMは、以下からなる群より選択される:
【化2-1】
【化2-2】
ここで上記ULM基は、ラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、立体異性体、溶媒和物、多形体またはプロドラッグが結合されるリンカーに共有結合される。
【0071】
上記化合物の結晶形態のうちのいくつかは、多形体として存在し得るので、本発明に包含されることが意図される。さらに、上記化合物のうちのいくつかは、水(すなわち、水和物)または一般的な有機溶媒と溶媒和物を形成してもよく、このような溶媒和物は、いくつかの実施形態によって包含されることが意図される。
【0072】
本明細書で開示されるとおりの化合物の調製のためのプロセスが、立体異性体の混合物を生じる場合、これらの異性体は、従来技術(例えば、分取用クロマトグラフィー)によって分離され得る。上記化合物は、ラセミ形態において、または立体特異的合成もしくは分割のいずれかによって、個々のエナンチオマーもしくはジアステレオマーとして調製され得る。上記化合物は、例えば、標準的技術(例えば、光学的に活性な塩基との塩形成、続いて、分別晶出法および遊離酸の再生による立体異性体対の形成)によって、それらの構成要素のエナンチオマーまたはジアステレオマーへと分割され得る。上記化合物はまた、立体異性体のエステルまたはアミドの形成、続いて、クロマトグラフィー分離および不斉補助剤(chiral auxiliary)の除去によって分割され得る。あるいは、上記化合物は、キラルHPLCカラムを使用して分割され得る。全ての立体異性体、ラセミ混合物、ジアステレオマー、cis-trans異性体、およびこれらのエナンチオマーがいくつかの実施形態によって包含されることは、理解されるべきである。
【0073】
5.3.薬学的組成物
エストロゲンレセプター陽性(ER+)がんの処置のための方法は、治療上有効な量のラソフォキシフェン、薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグ、もしくは機能的誘導体を投与する工程を包含する。本発明のラソフォキシフェン、薬学的に受容可能な塩、またはプロドラッグは、薬学的組成物中に製剤化され得る。ラソフォキシフェン、薬学的に受容可能なその塩、そのプロドラッグに加えて、上記組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤、キャリア、緩衝液、安定剤または当業者に周知の他の物質をさらに含む。このような物質は、非毒性であるべきであり、活性成分の有効性に干渉するべきではない。上記キャリアまたは他の物質の正確な性質は、投与経路、例えば、経口、静脈内、経皮、膣局所、または膣リングに依存し得る。
【0074】
経口投与のための薬学的組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤または液体の形態にあり得る。錠剤は、固体キャリア(例えば、ゼラチンまたは佐剤)を含み得る。液体の薬学的組成物は、一般に、液体キャリア、例えば、水、石油、動物性油、植物油、ミネラルオイルまたは合成油を含む。生理学的塩類溶液、デキストロースまたは他のサッカリド溶液もしくはグリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)がまた、含まれ得る。
【0075】
非経口的投与のために、上記ラソフォキシフェンは、発熱物質非含有でありかつ適切なpH、等張性および安定性を有する非経口的に受容可能な水性溶液の形態にある。当業者は、例えば、等張性ビヒクル(例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ラクトース添加リンゲル注射液)を使用して適切な液剤を十分に調製し得る。保存剤、安定剤、緩衝液、抗酸化剤および/または他の添加剤は、必要である場合に、含まれ得る。
【0076】
膣局所投与のための薬学的組成物は、軟膏剤、クリーム剤、ゲルまたはローション剤の形態にあり得る。膣局所投与のための薬学的組成物はしばしば、水、アルコール、動物性油、植物油、ミネラルオイルまたは合成油を含む。炭化水素(パラフィン)、羊毛脂、蜜蝋、マクロゴール、乳化ワックスまたはセトリミドがまた、含められ得る。
【0077】
組成物は、処置される状態に依存して、単独で、または他の処置との組み合わせにおいて、同時または逐次的のいずれかで投与され得る。
【0078】
5.4.処置レジメン
ER+がんの処置に関して上記で記載されるとおりの薬学的組成物の形態において有効量のラソフォキシフェン、薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグ、もしくはその機能的誘導体を投与する方法において、用語「処置」、「処置すること」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを一般に意味するために、本明細書で使用される。上記効果は、疾患、状態、もしくはその症状を完全にもしくは部分的に防止することに関して予防的であり得る、ならびに/あるいは疾患もしくは状態および/または有害効果(例えば、上記疾患もしくは状態に原因があり得る症状)のための部分的もしくは完全な治療に関して治療的であり得る。「処置」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、特に、ヒトの疾患もしくは状態の任意の処置を網羅し、(a) 上記疾患もしくは状態が、上記疾患もしくは状態に対する素因があり得るが、これを有するとは未だ診断されていない被験体に起こることを防止すること;(b)上記疾患もしくは状態を阻害すること(例えば、その発生を停止させること);または(c)上記疾患もしくは状態を軽減すること(例えば、上記疾患もしくは状態の退縮を引き起こすこと、1もしくはこれより多くの症状において改善を提供すること)が挙げられる。任意の状態における改善は、当該分野で公知の標準的方法および技術に従って容易に評価され得る。上記疾患を上記方法によって処置される被験体の集団は、望ましくない状態または疾患を被っている被験体、および上記状態もしくは疾患の発生のリスクにある被験体を含む。
【0079】
用語「有効量」とは、所望の効果を生じ、そのために投与される用量を意味する。正確な用量は、処置の目的に依存し、公知の技術を使用して、当業者によって確認され得る。Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999)を参照のこと。
【0080】
5.4.1.投与経路
種々の実施形態において、ラソフォキシフェン、薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグ、もしくはその機能的誘導体は、経口、静脈内、経皮、膣局所、または膣リング投与によって投与される。
【0081】
いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、経口投与によって上記患者に投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、約5mg/日 経口~約10mg/日 経口で投与され、例えば、いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約5mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約6mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約7mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約8mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約9mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約10mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約0.5mg/日 経口~約10mg/日 経口(例えば、約0.5mg/日 経口~約5mg/日 経口、約1mg/日 経口~約5mg/日 経口、約2mg/日 経口~約5mg/日 経口、約3mg/日 経口~約5mg/日 経口、約4mg/日 経口~約5mg/日 経口、約0.5mg/日 経口~約4mg/日 経口、約1mg/日 経口~約4mg/日 経口、約2mg/日 経口~約4mg/日 経口、約3mg/日 経口~約4mg/日 経口、約0.5mg/日 経口~約3mg/日 経口、約1mg/日 経口~約3mg/日 経口、約2mg/日 経口~約3mg/日 経口、約0.5mg/日 経口~約2mg/日 経口、約1mg/日 経口~約2mg/日 経口、または約0.5mg/日 経口~約1mg/日 経口)の投与量で、経口投与(経口)によって上記患者に投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約0.5mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約1mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約1.5mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約2mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約2.5mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約3mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約3.5mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約4mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約4.5mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約5mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約6mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約7mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約8mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約9mg/日 経口で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約10mg/日 経口で投与される。いくつかの他の実施形態において、ラソフォキシフェンは、10mg/日 経口より多く投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約0.5mg/日~約10mg/日で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約0.5mg/日、約1mg/日、約1.5mg/日、約2mg/日、約2.5mg/日、約3mg/日、約3.5mg/日、約4mg/日、約5mg/日、約5.5mg/日、約6mg/日、約6.5mg/日、約7mg/日、約7.5mg/日、約8 mg/日、約8.5mg/日、約9mg/日、約9.5mg/日、または約10mg/日で投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、約5mg/日で経口投与される。
【0082】
ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、毎日1回投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、2日ごとに1回投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、3日ごとに1回投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、4日ごとに1回投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、5日ごとに1回投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、6日ごとに1回投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、1週間に1回投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、2週間ごとに1回投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、3週間ごとに1回投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、1ヶ月ごとに1回投与される。
【0083】
いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、膣リング投与によって上記患者に投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、ラソフォキシフェンは、2週間ごとに1回投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、ラソフォキシフェンは、3週間ごとに1回投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、ラソフォキシフェンは、1ヶ月ごとに1回投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、ラソフォキシフェンは、2ヶ月ごとに1回投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、ラソフォキシフェンは、3ヶ月ごとに1回投与される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、ラソフォキシフェンは、4ヶ月ごとに1回投与される。
【0084】
いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンは、上記ER+乳がん患者に、上記患者のがんが治療下で進行するか、完全寛解状態になるか、または副作用に耐えられなくなるまで投与される。
【0085】
5.4.2.併用療法
種々の実施形態において、ラソフォキシフェン、薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグ、もしくはその機能的誘導体は、単独で、または他の治療との組み合わせにおいての、いずれかで投与される。ある特定の実施形態において、ラソフォキシフェンは、少なくとも1種の他の治療との組み合わせにおいて投与される。いくつかの実施形態において、ラソフォキシフェンおよび他の治療は、一緒に(同時に)投与される。いくつかの他の実施形態において、ラソフォキシフェンおよび他の治療は、異なる時に(逐次的に)投与される。
【0086】
特定の実施形態において、上記患者が処置されるさらなる治療は、内分泌療法である。種々の実施形態において、上記患者は、少なくとも1つの系統のさらなる内分泌療法で処置される。いくつかの実施形態において、上記患者は、1つの系統のさらなる内分泌療法で処置される。いくつかの他の実施形態において、上記患者は、複数の系統のさらなる内分泌療法で処置される。ある特定の実施形態において、上記患者のがんは、以前の治療後に再燃または進行している。
【0087】
いくつかの実施形態において、上記患者は、本来の用量においてさらなる内分泌療法で処置される。いくつかの他の実施形態において、上記患者は、本来の用量より高い用量においてさらなる内分泌療法で処置される。ある特定の実施形態において、上記患者は、本来の用量より低い用量においてさらなる内分泌療法で処置される。
【0088】
ある特定の実施形態において、上記さらなる内分泌療法は、ラソフォキシフェン以外の選択的ER調節因子(SERM)での処置である。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、上記選択的ER調節因子は、タモキシフェン、ラロキシフェン、バゼドキシフェン、トレミフェン、およびオスペミフェン(ospermifene)、ブロパレストロール(broparestrol)、オルメロキシフェン(ormeloxifene)、OP-1074、およびGDC-0945から選択される。ある特定の実施形態において、上記選択的ER調節因子は、タモキシフェンである。
【0089】
ある特定の実施形態において、上記さらなる内分泌療法は、選択的ER分解因子(SERD)での処置である。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、上記選択的ER分解因子は、エストロゲンレセプターに結合し、上記レセプターのプロテアソーム分解をもたらす。いくつかの実施形態において、上記選択的ER分解因子は、フルベストラント、RAD1901(エラセストラント(elacestrant))、ARN-810(GDC-0810)、ジレデストラント(giredestrant)(GDC-9545)、アムセネストラント(amcenestrant)(SAR439859)、リントデストラント(rintodestrant)(G1T48)、LSZ102、LY3484356、zN-c5、D-0502、SHR9549、カミゼストラント(camizestrant)(AZD9833)、およびAZD9496から選択される。ある特定の実施形態において、上記内分泌療法は、フルベストラントである。
【0090】
ある特定の実施形態において、上記さらなる内分泌療法は、アロマターゼインヒビター(AI)での処置である。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、上記アロマターゼインヒビターは、エキセメスタン(アロマシン(登録商標))、レトロゾール(フェマーラ(登録商標))、およびアナストロゾール(アリミデックス(登録商標))から選択される。
【0091】
いくつかの実施形態において、上記内分泌療法は、卵巣抑制である。種々の実施形態において、上記卵巣抑制は、卵巣摘出術またはGnRHアンタゴニストでの処置によって達成される。いくつかの実施形態において、上記卵巣抑制は、ゴセレリン(ゾラデックス(登録商標))またはロイプロリド(リュープリン(登録商標))での処置によって達成される。
【0092】
種々の実施形態において、上記さらなる治療は、上記患者への有効量の細胞周期インヒビターの投与である。ある特定の実施形態において、上記さらなる治療は、有効量のサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)インヒビターの投与である。いくつかの実施形態において、上記さらなる治療は、パルボシクリブ、アベマシクリブ、およびリボシクリブの群から選択されるCDK4/6インヒビターである。
【0093】
種々の実施形態において、上記さらなる治療は、上記患者への有効量の細胞周期インヒビターの投与である。ある特定の実施形態において、上記さらなる治療は、有効量のAKTキナーゼインヒビターの投与である。いくつかの実施形態において、上記さらなる治療は、アフレセルチブ、カピバセルチブおよびイパタセルチブの群から選択されるAKTインヒビターである。
【0094】
いくつかの実施形態において、上記さらなる治療は、上記患者へのER転写活性とクロストークしかつ活性化する経路のインヒビターの投与である。ある特定の実施形態において、上記さらなる治療は、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)インヒビターである。具体的な実施形態において、上記mTORインヒビターは、エベロリムスである。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、エベロリムスとの組み合わせにおけるラソフォキシフェンは、単剤療法として、またはCDK4/6インヒビターとの組み合わせのいずれかにおいて、非ステロイドAIおよび/またはフルベストラント下で進行した局所進行性または転移性がんを有する閉経後女性に投与される。種々の実施形態において、上記さらなる治療は、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)インヒビターまたはヒートショックタンパク質90(HSP90)インヒビターである。
【0095】
種々の実施形態において、上記さらなる治療は、上記患者への有効量の増殖因子インヒビターの投与である。ある特定の実施形態において、上記さらなる治療は、ヒト上皮成長因子レセプター2(HER2)インヒビターである。いくつかの実施形態において、上記HER2インヒビターは、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))である。いくつかの他の実施形態において、上記HER2インヒビターは、ado-トラスツズマブエムタンシン(カドサイラ(登録商標))である。
【0096】
いくつかの実施形態において、上記さらなる治療は、上記患者への有効量のヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビターの投与である。種々の実施形態において、上記HDACインヒビターは、ボリノスタット(ゾリンザ(登録商標))、ロミデプシン(イストダックス(登録商標))、チダミド(chidamide)(エピダザ(Epidaza)(登録商標))、パノビノスタット(ファリーダック(登録商標))、ベリノスタット(ベレオダック(Beleodaq)(登録商標)、PXD101)、バルプロ酸(デパコート(登録商標)、デパケン(登録商標)、スタブゾル(Stavzor)(登録商標))、モセチノスタット(MGCD0103)、アベキシノスタット(PCI-24781)、エンチノスタット(MS-275)、プラシノスタット(pracinostat)(SB939)、レスミノスタット(4SC-201)、ジビノスタット(givinostat)(ITF2357)、キシノスタット(JNJ-26481585)、ケベトリン(kevetrin)、CUDC-101、AR-42、テフィノスタット(tefinostat)(CHR-2835)、CHR-3996、4SC202、CG200745、ロシリノスタット(rocilinostat)(ACY-1215)、またはスルフォラファンである。ある特定の実施形態において、上記HDACインヒビターは、上記患者がHER2インヒビターで処置されないことを条件として、エンチノスタット(MS-275)である。ある特定の他の実施形態において、上記HDACインヒビターは、ボリノスタット(ゾリンザ(登録商標))である。さらにある特定の他の実施形態において、上記HDACインヒビターは、ロミデプシン(イストダックス(登録商標))である。
【0097】
いくつかの実施形態において、上記さらなる治療は、上記患者への有効量のチェックポイントインヒビターの投与である。ある特定の実施形態において、上記チェックポイントインヒビターは抗体である。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、上記チェックポイントインヒビターは、プログラム細胞死タンパク質(programmed cell death protein)1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド(programmed death-ligand)1(PD-L1)、または細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)に特異的な抗体である。いくつかの実施形態において、上記PD-1抗体は、ペムブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標))またはニボルマブ(オプジーボ(登録商標))である。いくつかの実施形態において、上記CTLA-4抗体は、イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))である。
【0098】
ある特定の実施形態において、上記さらなる治療は、上記患者への有効量のがんワクチンの投与である。
【0099】
いくつかの実施形態において、上記さらなる治療は、上記患者への有効量のデノスマブの投与である。
【0100】
いくつかの実施形態において、上記さらなる治療は、上記患者への有効量のセロトニン-ノルエピネフリン再取り込みインヒビター(SNRI)、選択的セロトニン再取り込みインヒビター(SSRI)、またはガバペンチンの投与である。ある特定の実施形態において、上記SNRIは、ベンラファキシン(イフェクサー(登録商標))である。
【0101】
いくつかの実施形態において、前述の段落に記載されるさらなる治療は、組み合わせて使用され得る。ラソフォキシフェン、薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグ、もしくはその機能的誘導体は、2つの治療(例えば、内分泌療法(例えば、アロマターゼインヒビター(例えば、レトロゾール(letrizole))および細胞周期インヒビター(例えば、CDK4/6インヒビター(例えば、パルボシクリブ、アベマシクリブ、およびリボシクリブ)))との組み合わせにおいて投与され得る。
【0102】
5.4.3.臨床エンドポイント
5.4.3.1.一次臨床エンドポイント
種々の実施形態において、上記方法は、上記ER+がん患者の無病生存期間を増大させるために有効な量のラソフォキシフェン、薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグ、もしくはその機能的誘導体を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、ER+がんの再発を低減させるために有効な量においてラソフォキシフェンを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、ER+がんの再発までの時間を増大させるために有効な量においてラソフォキシフェンを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、ER+がんの転移を低減するために有効な量においてラソフォキシフェンを投与する工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記方法は、上記ER+がん患者の無増悪生存期間の持続時間を増大させるために有効な量においてラソフォキシフェンを投与する工程を包含する。
【0103】
種々の実施形態において、上記方法は、上記ER+がん患者の無病生存期間を増大させる。ある特定の実施形態において、上記方法は、ER+がんの再発を低減させる。ある特定の実施形態において、上記方法は、ER+がんの再発までの時間を増大させる。ある特定の実施形態において、上記方法は、骨へのER+がんの転移を低減する。ある特定の実施形態において、上記方法は、骨以外の組織へのER+がんの転移を低減する。ある特定の実施形態において、上記方法は、脳へのER+がんの転移を低減する。ある特定の実施形態において、上記方法は、肺へのER+がんの転移を低減する。ある特定の実施形態において、上記方法は、肝臓へのER+がんの転移を低減する。ある特定の実施形態において、上記方法は、上記ER+がん患者の無増悪生存期間の持続時間を増大させる。上記方法は、ラソフォキシフェンを、1またはこれより多くのさらなる治療剤(本明細書で記載されるとおり)との組み合わせにおいて投与する工程を包含し得る。
【0104】
種々の実施形態において、上記方法は、AI耐性を有するER+がん患者において無病生存期間を増大させる。いくつかの実施形態において、上記方法は、AI耐性を有する患者においてがんの再発を低減させる。いくつかの実施形態において、上記方法は、AI耐性を有する患者においてがんの再発までの時間を増大させる。いくつかの実施形態において、上記方法は、AI耐性を有する患者においてがんの転移を低減する。いくつかの実施形態において、上記方法は、AI耐性を有するER+がん患者において無増悪生存期間の持続時間を増大させる。
【0105】
いくつかの実施形態において、上記方法は、AI耐性を発生させたER+局所進行性または転移性がんを有する患者において、無病生存期間を増大させる、再発を低減させる、再発までの時間を増大させる、転移を低減する、および/または無増悪生存期間の持続時間を増大させる。特定の実施形態において、上記がんは、本明細書で考察されるESR1のLBDにおいて機能獲得型変異以外の1またはこれより多くの変異を獲得することによって、AI耐性を発生させている。いくつかの実施形態において、上記方法は、選択圧を低減し、処置中にER+局所進行性または転移性がんにおけるAI耐性クローンの拡大を防止する。
【0106】
5.4.3.2.二次臨床エンドポイント
いくつかの実施形態において、上記方法は、骨粗鬆症を引き起こすかまたはかかりやすくする1またはこれより多くの薬物で同時に処置されている女性において骨折および骨減少を防止するために有効である。
【0107】
いくつかの実施形態において、上記方法は、外陰腟萎縮症(VVA)を引き起こすかまたはかかりやすくする1またはこれより多くの薬物で同時に処置されている女性において、膣pHを減少させる、膣潤滑を増大させる、および/または膣細胞成熟指数(vaginal cell maturation index)を改善するために有効である。
【0108】
いくつかの実施形態において、上記方法は、性機能障害を引き起こすかまたはかかりやすくする1またはこれより多くの薬物で同時に処置されている女性において、性機能障害の1またはこれより多くの症状を低減させる。
【0109】
いくつかの実施形態において、上記方法は、のぼせを引き起こすかまたはかかりやすくする1またはこれより多くの薬物で同時に処置されている女性において、のぼせを処置する。
【0110】
いくつかの実施形態において、上記方法は、関節痛、泌尿生殖系の症状、骨減少、および骨折から選択される1またはこれより多くのクオリティーオブライフの尺度を増大させる。
【0111】
本発明の実施形態
【0112】
A1a. アロマターゼインヒビター下で進行した患者においてエストロゲンレセプター陽性(ER+)がんの進行を低減させる方法における使用のための、ラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体であって、ここで前記がんは、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有さず、前記方法は、有効量のラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体を前記患者に投与する工程を包含する、ラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0113】
A1b. アロマターゼインヒビター下で進行した患者においてER+がんの転移を低減する方法における使用のためのラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体であって、ここで前記がんは、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有さず、ここで必要に応じて前記方法は、骨または脳へのER+がんの転移を低減し、ここで好ましくは、前記方法は、脳へのER+がんの転移を低減する、ラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0114】
A1c. アロマターゼインヒビター下で進行した患者においてエストロゲンレセプター陽性(ER+)がんの進行を低減させる方法における別個の、同時のまたは逐次的な使用のための、ラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体、およびサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)インヒビターを含む組み合わせであって、ここで前記がんは、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有さず、ここで必要に応じて前記組み合わせは、アロマターゼインヒビター(例えば、レトロゾール)をさらに含む、組み合わせ。
【0115】
A1d. ERα活性化変異を発現しないAI耐性乳がんの処置における使用のための、ラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0116】
A1e. アロマターゼインヒビター下で進行した患者においてER+がんの転移を低減する方法における別個の、同時のまたは逐次的な使用のための、ラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体、およびサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)インヒビターを含む組み合わせであって、ここで前記がんは、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有さず、ここで必要に応じて前記組み合わせは、アロマターゼインヒビター(例えば、レトロゾール)をさらに含む、組み合わせ。
【0117】
A2. 前記ER+がんは、局所進行性または転移性乳がんであり、ここで必要に応じて上記がんは、HER2-である、実施形態A1a~A1eのいずれか1つに記載の使用のための、ラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0118】
A3. 前記アロマターゼインヒビターは、エキセメスタン、レトロゾール、またはアナストロゾールである、前述のいずれかの実施形態に記載の使用のためのラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0119】
A4. 前記方法は、
(i)前記がんが、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有しないことを決定する工程、および
(ii)有効量のラソフォキシフェンまたは薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体を前記患者に投与する工程を包含する、
前述のいずれかの実施形態に記載の使用のためのラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0120】
A5. ラソフォキシフェンは、ラソフォキシフェン酒石酸塩として投与される、前述のいずれかの実施形態に記載の使用のためのラソフォキシフェン。
【0121】
A6. ラソフォキシフェンは、経口、静脈内、経皮、膣局所、または膣リング投与によって投与される、前述のいずれかの実施形態に記載の使用のためのラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0122】
A7. ラソフォキシフェンは、経口投与によって投与される、前述のいずれかの実施形態に記載の使用のためのラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0123】
A8. ラソフォキシフェンは、5mg/日~約10mg/日の用量において経口投与される、実施形態A7に記載の使用のためのラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0124】
A9. 前記がんは、表1に列挙される遺伝子において変異を有する、前述のいずれかの実施形態に記載の使用のためのラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0125】
A10. 前記方法は、少なくとも1つのさらなる内分泌療法で前記患者を処置する工程をさらに包含する、前述のいずれかの実施形態に記載の使用のためのラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0126】
A11. 前記方法は、有効量のサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)インヒビターを前記患者に投与する工程をさらに包含し、ここで必要に応じて前記CDK4/6インヒビターは、例えば、70mg/kgの用量において経口投与される、前述のいずれかの実施形態に記載の使用のためのラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0127】
A12. アロマターゼインヒビター下で進行した患者においてエストロゲンレセプター陽性(ER+)がんの進行を低減させる方法における同時の、別個の、または逐次的な使用のためのラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体、およびサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)インヒビターであって、ここで前記がんは、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有しない、ラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体、およびサイクリン依存性キナーゼ4/6(CDK4/6)インヒビター。
【0128】
A13. 前記CDK4/6インヒビターは、パルボシクリブ、アベマシクリブ、またはリボシクリブであり、ここで必要に応じて前記CDK4/6インヒビターは、パルボシクリブであり、ここで好ましくは前記CDK4/6 インヒビターは、アベマシクリブである、実施形態A11またはA12。
【0129】
A14. 前記方法は、有効量のAKTインヒビターを前記患者に投与する工程をさらに包含する、実施形態A1~A10のいずれか1つに記載の使用のための、ラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0130】
A15. アロマターゼインヒビター下で進行した患者においてエストロゲンレセプター陽性(ER+)がんの進行を低減させる方法における同時の、別個のまたは逐次的な使用のためのラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体、およびAKTインヒビターであって、ここで前記がんは、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有しない、ラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体、およびAKTインヒビター。
【0131】
A16. 前記AKTインヒビターは、アフレセルチブである、実施形態A14またはA15。
【0132】
A17. 有効量のmTorインヒビターを前記患者に投与する工程をさらに包含する、実施形態A1~A10のいずれか1つに記載の使用のための、ラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体。
【0133】
A18. アロマターゼインヒビター下で進行した患者においてエストロゲンレセプター陽性(ER+)がんの進行を低減させる方法における同時の、別個のまたは逐次的な使用のためのラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体、およびmTorインヒビターであって、前記がんは、エストロゲンレセプター1(ESR1)遺伝子のリガンド結合ドメイン(LBD)内に機能獲得型ミスセンス変異を有しない、ラソフォキシフェン、または薬学的に受容可能なその塩、プロドラッグもしくは機能的誘導体、およびmTorインヒビター。
【実施例】
【0134】
5.5.実施例
以下は、本発明を実行するための具体的な実施形態の例である。実施例は、例証目的で提供されるに過ぎず、本発明の範囲を限定することを決して意図しない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して正確度を確実にする努力がなされているが、いくらかの実験誤差および偏差は、当然のことながら許容されるべきである。
【0135】
本発明の実施は、別段示されなければ、分子生物学、細胞生物学、生化学、遺伝学、がん生物学、および薬理学の、当該分野の技術範囲内の従来方法を使用する。このような技術は、文献中で十分に説明されている。
【0136】
5.5.1.実施例1:ERα活性化変異を発現しないレトロゾール誘導性AI耐性乳房腫瘍モデル(MCF-7細胞)の生成
エストロゲンレセプター陽性(ERα+)原発性侵襲性乳がんを有する閉経後患者は、代表的には、第1選択肢の補助療法としてアロマターゼインヒビター(AI)で処置される。AIに耐性になる患者は、第2選択肢の治療として、フルベストラントおよび/またはCDK4/6インヒビター(例えば、パルボシクリブ)で処置される。ラソフォキシフェン、選択的エストロゲンレセプター調節因子(SERM)は、膣萎縮症および骨粗鬆症の処置のために開発された。本発明者らの以前の試験(活性化ERα変異を伴うMCF-7異種移植転移性乳がんマウスモデルで行われた)は、ラソフォキシフェン(単独で、およびパルボシクリブとの組み合わせの両方において)が、ERαレセプター(ESR1遺伝子によってコードされる)中の機能獲得型活性化変異の文脈において腫瘍増殖ならびに肝臓、肺、骨および脳への転移を阻害するにあたって、フルベストラントより有効であることを示した。
【0137】
最新の試験において、本発明者らは、ラソフォキシフェン(単独で、およびパルボシクリブとの組み合わせの両方において)の有効性を、リガンド結合ドメインにおいて活性化変異を有するERαを発現しないレトロゾール誘導性AI耐性細胞(LTLT細胞)を使用する乳房腫瘍モデルにおいて、フルベストラント(単独で、およびパルボシクリブとの組み合わせの両方において)に対して比較した。
【0138】
ルシフェラーゼ-GFPタグ付きLTLT細胞を、NSGマウス(MINDモデル)の乳管へと注射し、腫瘍進行を、原発性腫瘍の肝臓発光画像化、ならびに試験エンドポイントにおける転移部位のエキソビボ画像化および組織化学的分析によってモニターした。原発性腫瘍の面積をまた、試験エンドポイントにおいて測定した。ラソフォキシフェン(単独で、およびパルボシクリブとの組み合わせにおいて)は、原発性腫瘍増殖の阻害に関して、フルベストラント(単独で、およびパルボシクリブとの組み合わせの両方において)より有意に有効であった。さらに、フルベストラント単独を除く全ての処置は、ビヒクルに対して骨転移を阻害した。これらのデータは、ラソフォキシフェンがこの腫瘍モデルにおいてフルベストラントより有効であることを示し、ラソフォキシフェンがERα活性化変異を発現しないAI耐性乳がんにとって有効な治療であることを明らかに示す。
【0139】
細胞培養、レンチウイルス生成および感染、安定な細胞株の生成
MCF7 LTLT細胞(LTLT-Ca細胞としても公知(Sabnis,G.ら,Cancer Res.69,1416-1428(2009)))は、WTおよび変異体ERαを有するホルモンレセプター陽性(ER+、PR+、GR+)ヒト乳がん細胞株であるMCF7の派生物である。MCF7 LTLT細胞は、アロマターゼインヒビターに対して獲得性の耐性を有する。それらは、上記アロマターゼインヒビターであるレトロゾールでのMCF7aro細胞の長期間処理によって、Brodie研究室で元々得られた(Sabnisら,2009)。MCF-7aro細胞は、アロマターゼ遺伝子で安定してトランスフェクトされている(Sun,X.Z.ら,J.Steroid Biochem.Mol.Biol.63,29-36(1997))。MCF7 LTLT細胞は親切なことに、UT SouthwesternのGanesh Rajから贈られた。MCF7aro細胞は、親切なことに、City of HopeのShiuan Chenによって提供された。
【0140】
腫瘍細胞増殖のインビボ測定を可能にするために、本発明者らは、MCF7 LTLT細胞を、MOI=5において懸濁物中、ユビキチンプロモーターの制御下でルシフェラーゼおよびGFPを含むL2Gレンチウイルスベクター(pFU-Luc2-eGFP)でトランスフェクトし(Liu,H.ら,Proc.Natl Acad.Sci.USA 107,18115-18120(2010))、プレートした。細胞を、10% FBSおよび1μM レトロゾールを含むRPMI中で増殖させた。細胞試験に関しては、MCF7 LTLTおよびMCF7aro細胞を、レンチウイルス核-GFP染色(Nuclight GFP/puro、カタログ番号4475 Essen Bioscience)で、製造業者の推奨に従ってトランスフェクトした。
【0141】
遺伝子型の評価
アロマターゼ耐性MCF7 LTLT細胞がESR1リガンド結合ドメイン機能獲得型変異を欠いていることを確認し、内分泌療法耐性表現型をMCF7 LTLT細胞に付与し得る非ESR1変異を調査するために、本発明者らは、全ゲノムエキソンシーケンシングを行い、その配列データを、2つの以前に報告したMCF7参照配列(参照1および参照2)と比較した(
図1)。
【0142】
上記MCF7 LTLT細胞(
図1中のLT-LT細胞)は、ESR1変異を欠いておりかつ18,687の新規なバリアントを有し、その中には、1508のエキソン性非同義バリアントがあることが決定された。バリアントを有する注目すべき遺伝子(63の遺伝子、85のバリアント)を、表1に列挙する。
【表1-1】
【表1-2】
【0143】
ウェスタンブロットを介するMCF7LTLTおよびMCF7aroの表現型特徴づけ
MCF7aroおよびMCF7 LTLT細胞株を特徴づけるために、本発明者らは、ウェスタンブロットを行い、ERα、プロゲステロンレセプター(PR)、アンドロゲンレセプター(AR)およびグルココルチコイドレセプター(GR)に対してプローブした。
【0144】
図9A~9Dは、通常のMCF7およびT47D細胞におけるERαと比較して、MCF7aroおよびMCF7 LTLT細胞におけるERαおよびGRタンパク質の相対的タンパク質レベルを示す。アクチンの発現を、各細胞株に関する内部コントロールとして使用した。記載されるように、MCF7 LTLT細胞は、通常のMCF7細胞より少ない、および同様にT47D細胞より少ないERαタンパク質を発現し(
図9A)、これは、ER 対 アクチン発現の比によっても示される(
図9B)。GRタンパク質レベルは、MCF7 LTLTおよびMCF7aro細胞において低いが、T47D細胞に類似である(
図9C~9D)。両方のアッセイにおいて、アクチンの発現は、細胞株にわたって一貫している(
図9Aおよび9C)。
【0145】
図10A~10Bは、ARレベルが、MCF7およびT47Dと比較して、MCF7aroおよびMCF7 LTLTにおいて低いことを示す。
図10Cおよび
図10Dは、HER2の存在を示し、これは、MCF7 LTLT細胞株においてアップレギュレートされると以前に報告されている。PRは、MCF7、MCF7aro、またはMCF7 LTLT細胞のいずれにおいても検出されなかった(
図10E)。
【0146】
5.5.2.実施例2:ESR1遺伝子において機能獲得型変異を欠いているAI耐性乳がんのラソフォキシフェンの有効性
方法
レトロゾール耐性試験に関して、細胞を、RPMI中またはCS RPMI(SRPMI)中のいずれかで96ウェルプレートにおいて、2500~3000細胞/ウェルでプレートし、0.1nMから10μMまでの種々の濃度のレトロゾールで処理した。SRPMI中で行われる実験に関しては、細胞を、処理する前に48時間にわたってCS血清中で培養した。エストラジオールおよびSERM(ラソフォキシフェン)での処理を、SRPMI中で行った。96ウェルプレートを、IncuCyte S3(Essen Bioscience)において、1週間まで6時間ごとにスキャンした。IncuCyteソフトウェアを介してGFPでタグ付けされた核を計数することによって、分析を行った。
【0147】
動物試験および注射
マウス試験を、承認された動物実験委員会のプロトコールを遵守して行った。NSG(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ)マウスを、The Jackson Laboratoriesから購入した。注射の前に、マウスに、酸素中2~3% イソフルランで吸入麻酔を行った。鼠径腺(inguinal gland)4および9の乳管への250,000 MCF7細胞の単一細胞懸濁物の注射を、記載されるように行った(Behbod,F.ら,Breast Cancer Res.11,R66(2009);Sflomos,G.ら,Cancer Cell 29,407-422(2016);Laine,M.ら,Breast Cancer Res.23,54(2021))。インサイチュでの腫瘍増殖を、University of ChicagoのIntegrated Small Animal Imaging Research ResourceにあるXenogen IVIS 200機器での画像化を介して追跡した。IVIS画像化に関しては、マウスに、100μlの、PBS中0.1M ルシフェリン溶液(Perkin Elmer XenoLight #122799)を注射した。
【0148】
細胞注射後に、マウスを2つの等しい群に分けた;一方の群は、PBS中15% PEG400において10μg/日のレトロゾールを、皮下注射を介して受容した(「LTLT-Let」);他方の群には、レトロゾールを投与しなかった(「LTLT」)。細胞注射の2~3週間後に、各群のマウスを無作為化し、ラソフォキシフェン(15% PEG400を含むPBSの100μl中、10mg/kg)、パルボシクリブ(50mM 乳酸ナトリウム緩衝液(pH4)中、70mg/kg,Med Chem Express #HY-50567)、またはビヒクルを、5日/週間で処置した。ラソフォキシフェンおよびビヒクルを、皮下投与した。パルボシクリブを、経口胃管栄養を介して、5回/週で投与した。フルベストラント(Med Chem Express #HY-13636)(「ICI」)(5mg/マウス)を、100μlのミネラルオイル中での皮下注射を介して1週間に1回投与した。マウスをまた、ラソフォキシフェン+パルボシクリブ、フルベストラント+パルボシクリブ、ラソフォキシフェン+レトロゾール、およびパルボシクリブもしくはフルベストラント+パルボシクリブの組み合わせ、またはレトロゾールで処置した。
【表2-1】
【表2-2】
【0149】
90~93日の処置後、マウスを屠殺し、乳腺腫瘍を切除し、秤量した。屠殺の8分前のルシフェリンのインビボ注射に続いて、肝臓、骨、脳および肺を取り出し、IVIS 200においてエキソビボで画像化して、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0150】
IHCおよびH&E分析
採取した組織を、IHCおよびH&E染色のためにホルマリン中で固定した。組織学検査を、University of ChicagoのHuman Tissue Resource Center(HRTC)で行った。マウスから切除した一次腺(primary gland)を切片化し、エストロゲンレセプターαに対する抗体(ThermoScientific,RM-9101-S0、クローンSP1)、プロゲステロンレセプターに対する抗体(ThermoScientific,RM-9102-S0、クローンSP2)、グルココルチコイドレセプターに対する抗体(Cell Signaling,カタログ番号3660)、アンドロゲンレセプターに対する抗体(Abcam,ab133273、クローンEPR1535)、Ki67に対する抗体(ThermoScientific,カタログ番号RM-9106-s、クローン:SP6)およびミトコンドリアに対するヒト特異的マウスモノクローナル抗体(Abcam,ab92824、クローン112-1)で染色した。
【0151】
H&EおよびIHCスライドを、高解像度画像のために10×対物レンズを備えるNikon eclipse Ti2顕微鏡でスキャンした。Ki67スコアを、標準化した手動計数を使用して決定した。
【0152】
ウェスタンブロット分析
細胞を、プロテアーゼインヒビターカクテル3(Calbiochem,カタログ番号535140)の存在下でM-PER溶解緩衝液(Thermo fisher,カタログ番号78501)中で溶解した。サンプルを、WES Protein Simpleプラットフォームにローディングした。使用した抗体は以下であった:エストロゲンレセプター(Santa Cruz,F10 カタログ番号sc8002)、グルココルチコイドレセプター(Cell signaling,カタログ番号12041s)、Her2(Cell Signaling カタログ番号 2242s)、アンドロゲンレセプター(sigma カタログ番号sp242)、およびプロゲステロンレセプター(KD68)、社内で作製したラットモノクローナル抗体(Greene,G.L.ら,Mol.Endocrinol 2,714-726(1988))。
グラフおよび統計分析
グラフおよび箱ひげ図を、Graphpad Prism 7ソフトウェアを使用して作成した。対応のない両側T検定を使用して、p値を決定した。
【0153】
結果:
ラソフォキシフェン単独およびパルボシクリブとの組み合わせは、MCF7 LTLT原発性腫瘍増殖を阻害する
GFPルシフェラーゼで標識したMCF7 LTLT細胞を、NSGマウスの乳管に注射して腫瘍を確立した。これは、AI耐性の非ESR1変異乳がんモデルを表す。ラソフォキシフェン、パルボシクリブ、ならびにラソフォキシフェンおよびパルボシクリブの組み合わせでの処置を、Let
-コホートにおけるレトロゾール耐性の潜在的喪失(「復帰」)を考慮するために、レトロゾールの存在下(Let
+)または非存在下(Let
-)で行った。マウスをXenogen IVISスキャナーで2週間に1回画像化して、腫瘍増殖を推定した。試験の終了時に、乳腺を取り出し、秤量した。このモデルにおいて、腫瘍は触知可能ではなかった;しかし、ビヒクルの全光子フラックス(濃い塗りつぶしの丸)およびフルベストラント(逆向き三角(「ICI」ともいわれる))処置は、全ての他の処置より高い(
図2および
図3;Let
-コホートのみが示される)。
【0154】
異なる処置群に関する光子フラックス読み取り値は、レトロゾールの存在下または非存在下において、類似のパターンを示し、パルボシクリブまたはラソフォキシフェンの単一処置に関する読み取り値は、ビヒクルの1/2~1/3であり、パルボシクリブおよびラソフォキシフェンの組み合わせに関する読み取り値は、ビヒクルの1/3~1/4である(
図2および
図3;Let
-コホートのみが示される)。104日目での各処置に関する光子フラックスは、レトロゾールの存在にかかわらず、ラソフォキシフェン、パルボシクリブ、およびラソフォキシフェン+パルボシクリブが、ビヒクルおよびフルベストラント(ICI)処置より有意に低いことを示す。驚くべきことに、フルベストラントは、予測されるように阻害するのではなく、レトロゾールの存在下で腫瘍光子フラックスを増大させるようであった(データは示さず)。この結果は、現在説明されない例外である。
【0155】
類似の結果を、試験の終了時に乳腺重量に関して観察した(
図4;Let
-コホートのみが示される)。しかし、腺重量間の差異は、ラジアンスに関するほど劇的ではない(データは示さず)。なぜならおそらくこれらの重量が腫瘍重量推定値を希釈するいくらかの正常な乳腺組織を含むのに対して、ラジアンス測定値は、ルシフェラーゼ発現腫瘍細胞のみを反映するからである。いずれにしても、フルベストラントがいずれの群においても乳腺重量を増大させず、実際に、Let
-コホートにおいて乳腺重量を阻害するが、Let
+コホートでは阻害しない(データは示さず)ことを除いて、重量とラジアンスとの間の傾向は類似である。
【0156】
図5は、Let
-コホートにおいて、代表的切片のH&E染色に基づく乳腺における全組織のパーセンテージ(%)として腫瘍面積を示す。H&Eスライドを、Nikon顕微鏡でスキャンし、NSI elementソフトウェアで分析した。H&E染色は、Let
-コホートにおける%腫瘍面積がビヒクルと比較して、ラソフォキシフェン単独に関して有意に低いこと、およびラソフォキシフェン+パルボシクリブがビヒクルより有意に低いことを示す。パルボシクリブ+フルベストラント(ICI)はまた、Let
-コホートにおいてビヒクルより有意に低い。ラソフォキシフェン+パルボシクリブはフルベストラント(ICI)+パルボシクリブより低いようであるが、この差異は、統計的有意性に達しない。Let
+コホート(データは示さず)では、ラソフォキシフェン+パルボシクリブはパルボシクリブ+フルベストラントより有意に低い。他の処置(例えば、パルボシクリブまたはフルベストラント単独)は、ビヒクルに対してまたは互いに対して統計的有意性に達しなかった。
【0157】
これらの結果を考慮すれば、本発明者らは、ラソフォキシフェン(単独で、およびCDK4/6インヒビターであるパルボシクリブとの組み合わせにおいて)が、原発性腫瘍増殖を、特に、Let-コホートにおいて有意に阻害すると結論づけ得る。全体として、ラソフォキシフェン+パルボシクリブの組み合わせは、全ての他の処置より、特に、従来の処置レジメンであるフルベストラント(単独で、またはパルボシクリブとの組み合わせにおいて)の処置より明らかに優れている。データは、ラソフォキシフェンまたはラソフォキシフェン+パルボシクリブの組み合わせが、ERαレセプター(ESR1遺伝子によってコードされる)のリガンド結合ドメインにおける機能獲得型変異の獲得以外の機序を介してレトロゾール(ER+乳がんを処置するために一般に処方されるアロマターゼインヒビター(AI))に対して耐性を発生させたがん細胞における原発性腫瘍増殖を阻害するにあたって有効であることを示す。
【0158】
MCF7 LTLTモデルにおける腫瘍増殖指数は、レトロゾール
+
群においてのみ低い
抗Ki67抗体での免疫組織化学を、固定した乳腺に対して行って、MCF7 LTLT原発性腫瘍の増殖指数を決定した。
【0159】
レトロゾール自体は、ビヒクルと比較して、Ki67パーセンテージを56.7±9から39.5±7.7へと有意に下げる(
図6A)。低減を、Let
+コホートにおいて観察した(
図6C)。ここでラソフォキシフェン単独およびラソフォキシフェン+パルボシクリブは、Ki67パーセンテージを、それぞれ、6.5%および12.4%低減する(
図6Cおよび表3)。表3は、各処置群に関して手動で測定した平均% Ki67および±標準偏差を示す。データを検討すると、ラソフォキシフェン単独の効果は、レトロゾールコントロールに対して有意でないのに対して、ラソフォキシフェン+パルボシクリブは、パルボシクリブ単独に対してKi67を有意に低減することが示される。興味深いことに、パルボシクリブ単独またはフルベストラント(ICI)単独は、このモデルにおいてKi67 %レベルを低減しない。しかし、フルベストラント+パルボシクリブは、レトロゾールコントロール(39.5±7.7)と比較して、およびパルボシクリブ(45.3±19.0)に対して、Ki67パーセンテージを18.8±12.3へと有意に低減する(表3)。これらの結果は、増殖指数単独が、MCF7 LTLTモデルにおいてラソフォキシフェン活性の最良の尺度ではない可能性があることを示唆する。
【表3】
【0160】
ラソフォキシフェンおよびラソフォキシフェン+パルボシクリブは、骨転移を低減するようである
屠殺時に、肝臓、肺、骨および脳を切除し、IVISで、エキソビボで画像化した。
図7A~7Cおよび
図8Aは、Let
-処置群における肝臓(
図7A)、肺(
図7B)、脳(
図7C)および骨(
図8A)に関する平均ラジアンスの箱ひげ図を示す。Let
+群に関するデータは、評価されたが、示されていない。全ての器官に関する平均ラジアンスは低く、これは、最小限の転移しか観察されていないことを示す。肝臓、肺および脳に関して統計的に有意なパターンは観察されなかったが、ラソフォキシフェン+パルボシクリブシグナルは、Let
-およびLet
+両方のコホートに関してビヒクルに対して、任意の他の処置より脳において視覚的に低い。
【0161】
骨へのあり得る転移を検出した(
図8B)。しかし、ビヒクル群において3つの読み取り値、フルベストラント(ICI)群において2つ、およびフルベストラント(ICI)+パルボシクリブ群において1つのみが、閾値を超えるシグナルを示す。両方のコホートにおいて、特に、Let
-コホートにおいて、ラソフォキシフェン+パルボシクリブに関しては、ビヒクルに対してラジアンスの阻害が存在するようであるが、統計的有意性には到達しなかった。
【0162】
結論として、まとめると、これらのデータは、耐性がESRリガンド結合ドメイン機能獲得型変異の獲得以外の機序によるものであるAI耐性乳がんのこのモデルに関して、ラソフォキシフェン(単独で、またはパルボシクリブとの組み合わせにおいて)が、原発性腫瘍増殖を阻害することを示す。さらに、ラソフォキシフェン(単独で、またはパルボシクリブとの組み合わせにおいて)は、骨への転移を阻害するようである。一般に、パルボシクリブと組み合わせたラソフォキシフェンは、これらの細胞の原発性腫瘍および転移阻害において、フルベストラントおよびパルボシクリブの組み合わせより有効である。データは、重要な臨床的意義を有し、アロマターゼインヒビターに耐性になり、かつESR1機能獲得型変異を欠いている進行性または転移性ER+乳がんを有する女性の有効な治療としてラソフォキシフェンを使用する可能性を明らかに示す。
【0163】
6.均等物および参照による援用
本発明は、主要な実施形態および種々の代替の実施形態を参照しながら、詳細に示されかつ記載されてきたが、形態および詳細における種々の変更が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくその中で行われ得ることは、関連分野の当業者によって理解される。
【0164】
本明細書の本文内で引用される全ての参考文献、発行された特許および特許出願は、全ての目的のために、それらの全体において本明細書に参照として援用される。
【国際調査報告】