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特表2024-538414産業プロセスの健全性状態を決定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】産業プロセスの健全性状態を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
G05B23/02 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530027
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2022082386
(87)【国際公開番号】W WO2023089085
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】21209618.4
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】アブクワイク、ハディル
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、ディブヤシール
(72)【発明者】
【氏名】クレッパー、ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】コトリワラ、アルザム・ムザッファー
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス、パブロ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】タン、ルオム
(72)【発明者】
【氏名】ケー・アール、チャンドリカ
(72)【発明者】
【氏名】ボリソン、ロイベン
(72)【発明者】
【氏名】ディックス、マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ドッペルハマー、イェンス
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223EB01
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF45
(57)【要約】
産業プロセス(1)の健全性状態(1*)を決定するための方法(100)であって、プロセス(1)は、エンティティ(2a~2f)の配列を備える少なくとも1つの産業プラントによって実行され、そのような各エンティティ(2a~2f)の状態は、エンティティ状態変数(3a~3f)のセットによって特徴付けられ、本方法(100)は、 ・ エンティティ状態変数(3a~3f)の値、及び/又は値の時系列を取得すること(110)と、 ・ 各エンティティ(2a~2f)について、値(3a~3f)及び/又は値(3a~3f)の時系列を、それぞれのエンティティ(2a~2f)に対応するモデル(4a~4f)に提供し(120)、これによって、それぞれのエンティティ(2a~2f)の健全性状態(5a~5f)の予測を取得することと、 ・ プロセス(1)を実行する産業プラントのレイアウト(1a)に少なくとも部分的に基づいて、該エンティティ(2a~2f)間の異常の伝搬経路(6)を決定すること(130)と、 ・ 該伝搬経路(6)に少なくとも部分的に基づいて、プロセスの全体的な健全性状態(1*)に対する個々のエンティティ(2a~2f)の健全性状態(5a~5f)の重要度(7a~7f)を決定すること(140)と、 ・ プロセス(1)の全体的な健全性状態(1*)を取得するために、該重要度(7a~7f)に少なくとも部分的に基づいて、エンティティ(2a~2f)の個々の健全性状態(5a~5f)を集約すること(150)と、を行うステップを備える、方法(100)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業プロセス(1)の健全性状態(1*)を決定するための方法(100)であって、前記産業プロセス(1)は、エンティティ(2a~2f)の配列を備える少なくとも1つの産業プラントによって実行され、各々の前記エンティティ(2a~2f)の状態は、エンティティ状態変数(3a~3f)のセットによって特徴付けられ、前記方法(100)は、
・ 前記エンティティ状態変数(3a~3f)の値、及び/又は前記値の時系列を取得すること(110)と、
・ 各エンティティ(2a~2f)について、前記値(3a~3f)及び/又は前記値(3a~3f)の時系列を、それぞれの前記エンティティ(2a~2f)に対応するモデル(4a~4f)に提供し(120)、これによって、それぞれの前記エンティティ(2a~2f)の健全性状態(5a~5f)の予測を取得することと、
・ 前記産業プロセス(1)を実行する前記産業プラントのレイアウト(1a)に少なくとも部分的に基づいて、前記エンティティ(2a~2f)間の異常の伝搬経路(6)を決定すること(130)と、
・ 前記伝搬経路(6)に少なくとも部分的に基づいて、前記産業プロセスの全体的な前記健全性状態(1*)に対する個々の前記エンティティ(2a~2f)の前記健全性状態(5a~5f)の重要度(7a~7f)を決定すること(140)と、
・ 前記産業プロセス(1)の全体的な前記健全性状態(1*)を取得するために、前記重要度(7a~7f)に少なくとも部分的に基づいて、前記エンティティ(2a~2f)の個々の前記健全性状態(5a~5f)を集約すること(150)と、
を行うステップを備える、方法(100)。
【請求項2】
前記異常の伝搬経路(6)は、エンティティ(2a~2f)間の材料及び/又はエネルギーフローのトポロジに少なくとも部分的に基づいて決定される(131)、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記産業プラントの通常運転中の第1のエンティティ(2a~2f)から第2のエンティティ(2a~2f)への少なくとも1つの既知の方向性相互作用経路が、前記第1のエンティティと前記第2のエンティティとの間の異常の双方向伝搬経路に拡張される(132)、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
少なくとも1つの伝搬経路(6)は、具体的には、
・ 第1のエンティティ(2a~2f)の第1のエンティティ状態変数(3a~3f)と、第2のエンティティ(2a~2f)の第2のエンティティ状態変数(3a~3f)との間の因果関係、及び/又は、
・ 第1のエンティティ(2a~2f)における第1のイベントの発生と、第2のエンティティ(2a~2f)における第2のイベントの発生との間の因果関係、
を備える(133)、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項5】
第1のエンティティ(2a~2f)から第2のエンティティ(2a~2f)への少なくとも1つの伝搬経路(6)を決定すること(130)は、具体的には、
・ 前記第1のエンティティ(2a~2f)の第1のエンティティ状態変数(3a~3f)の第1の時系列が前記第2のエンティティ(2a~2f)の第2のエンティティ状態変数(3a~3f)の第2の時系列に及ぼす統計的影響を計算すること(134)と、
・ 前記統計的影響に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のエンティティ(2a~2f)と前記第2のエンティティ(2a~2f)との間の異常の伝搬の強度を定量化すること(135)と、
を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記統計的影響を計算すること(134)は、具体的には、前記第1の時系列と前記第2の時系列との間のグレンジャー因果性及び/又は移動エントロピーを計算すること(134a)を備える、請求項5に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記伝搬経路(6)を決定すること(130)は、具体的には、
・ 候補伝搬経路(6)のセットからの各伝搬経路(6)の実現可能性を検証すること(136)と、
・ 伝搬経路(6)が実現可能でないことに応答して、前記伝搬経路(6)を前記候補伝搬経路(6)のセットから除去すること(137)と、
を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
エンティティ(2a~2f)の前記健全性状態(5a~5f)の前記重要度(7a~7f)は、前記エンティティ(2a~2f)を備える伝搬経路(6)の数及び/又は強度に伴い増加する(141)、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
少なくとも1つのエンティティ(2a~2f)に対応する前記モデル(4a~4f)は、
・ 機械学習モデル、及び/又は、
・ シミュレーションモデル、及び/又は、
・ 前記シミュレーションモデルのサロゲート近似、
を備える(121)、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
個々の健全性状態(5a~5f)を集約すること(150)は、個々の前記健全性状態(5a~5f)の加重和を計算すること(152)を備え、前記加重和の重みは、それぞれの個々の前記健全性状態(5a~5f)の前記重要度(7a~7f)に基づいて決定される(151)、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記産業プロセス(1)は、1つ又は複数の抽出物を1つ又は複数の生成物に変換する化学生成プロセスであり、前記エンティティの配列における少なくとも1つのエンティティは、パイプ、ポンプ、又はタンクである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項12】
産業プロセスの健全性状態(1*)を決定するための方法(200)であって、前記産業プロセスは、エンティティ(2a~2f)の配列を備える少なくとも1つの産業プラントによって実行され、各々の前記エンティティ(2a~2f)の状態は、エンティティ状態変数(3a~3f)のセットによって特徴付けられ、前記方法(200)は、
・ 前記エンティティ状態変数(3a~3f)の値、及び/又は前記値の時系列を取得すること(210)と、
・ 前記値及び/又は前記値の時系列を、前記産業プロセス(1)のモデル(1b)に提供し(220)、これによって、前記産業プロセス(1)の前記健全性状態(1*)の予測を取得することと、ここにおいて、前記モデル(1b)は、機械学習モデルとして実装され、
を行うステップを備える、方法(200)。
【請求項13】
前記機械学習モデル(1b)は、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)及び/又はニューラルトランスフォーマネットワークを備える(221)、請求項12に記載の方法(200)。
【請求項14】
1つ又は複数のコンピュータによって実行されると、前記1つ又は複数のコンピュータに、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法(100、200)を行わせる機械可読命令を備えるコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを有する、非一時的機械可読記憶媒体及び/又はダウンロード製品。
【請求項16】
請求項14に記載のコンピュータプログラム、並びに/又は請求項15に記載の非一時的機械可読記憶媒体及び/又はダウンロード製品を有する1つ又は複数のコンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在の異常又は差し迫った異常について産業プロセスを監視することに関する。
【背景技術】
【0002】
動的な産業プロセスにおいて、徐々により多くの様々なプロセスユニットが含まれ、これらのユニット各々のプロセス健全性が全体的なプロセス健全性の一因となるので、複雑性がますます増している。互いに独立した異なるデータ信号を調査するために、異なる統計的分析方法が産業プラントにおいて広く使用されてきた。しかしながら、全体的な健全性問題の検出において一歩前進するのに、階層関係と因果関係の方向とを考慮することが重要である。
【0003】
EP3379357B1には、とりわけ、産業プロセスシステム内のそれぞれの信号の物理的位置、又は相関分析にしたがって、プロセスからの技術的ステータスデータを信号グループにグループ化することが開示されている。次いで、各グループからの信号は、このグループ専用の機械学習モデルによって分析される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、産業プロセス全体としての健全性状態(state of health)を決定することができる精度を更に改善することである。
【0005】
本目的は、独立請求項に記載の方法によって達成される。更なる有利な実施形態が、それぞれの従属請求項に詳述される。
【0006】
本発明は、産業プロセスの健全性状態を決定するための方法を提供する。このプロセスは、エンティティの配列を備える少なくとも1つの産業プラントによって実行される。これらのエンティティは、任意のレベルの粒度を有し得る。例えば、エンティティは、ポンプ、タンク、反応容器、パイプ、又は弁などの機器に対応し得る。しかし、エンティティはまた、例えば、プロセスの下位区分(「物質Aの製作」、「物質Bの製作」、及び「物質A及びBからの製品Cの製造」など)、又はモジュール式プラントのプロセスモジュールに対応し得る。各エンティティの状態は、エンティティ状態変数のセットによって特徴付けられる。
【0007】
方法の過程において、エンティティ状態変数の値、及び/又は値の時系列が取得される。各エンティティについて、これらの値及び/又は値の時系列は、それぞれのエンティティに対応するモデルに提供され、それにより、それぞれのエンティティの健全性状態の予測が取得される。このモデルは、例えば、エンティティの少なくとも1つの更なる変数を予測することができ、次いでこの変数からエンティティの健全性状態が推測され得る。モデルはまた、例えば、エンティティの健全性状態を直接予測することもできる。健全性状態は、数値スコア(例えば、0~1のスケールで、1が最良)の形態であり得るが、いくつかの利用可能な離散的なクラスのうちの1つの形態であってもよい。クラスは、例えば、離散的な等級(AからFまでなど)、又は「健全」若しくは「不健全」のような二値分類を表し得る。
【0008】
エンティティに対応するモデルは、例えば、機械学習モデルであり得る。訓練例のセットから、これらのモデルは、入力(すなわち、状態変数)から出力(すなわち、更なる変数又は健全性状態)への未知の伝搬を学習する。代替として又は組み合わせて、入力から出力への伝搬についての少なくとも何らかのアプリオリな知識があるエンティティについては、シミュレーションモデルが使用され得る。そのようなシミュレーションモデルがエンティティの挙動を模倣する精度及び詳細レベルに依存して、モデルは、計算コストが高い場合がある。したがって、シミュレーションモデルのサロゲート近似(surrogate approximation)が、実際のシミュレーションモデルの代わりに使用され得る。サロゲート近似は、例えば、シミュレーションモデルの挙動を学習する機械学習モデルであり得る。異なるタイプのモデルが、異なるエンティティのために使用され得る。
【0009】
産業プラントのレイアウトに少なくとも部分的に基づいて、プロセスに関与するエンティティ間の異常の伝搬経路が決定される。
【0010】
これらの伝搬経路に少なくとも部分的に基づいて、プロセスの全体的な健全性状態に対する個々のエンティティの健全性状態の重要度が決定される。プロセスの全体的な健全性状態を取得するために、これらの重要度に少なくとも部分的に基づいて、個々の健全性状態が集約される。
【0011】
本発明者らによれば、健全性状態を決定することをこれらの方法ステップに分解することにより、これらのステップの各々において、エンティティについてのアプリオリな知識、又はプロセス全体におけるこれらのエンティティ間の相互作用を考慮する機会が提供されることがわかった。そのようなアプリオリな知識は、エンティティのモデル、異常の伝搬経路、プロセスの全体的な健全性状態に対する個々のエンティティの健全性状態の重要度、及び個々の健全性状態が集約されるモードにおいて現れ得る。異なるステップでそのような知識を考慮する複数の機会があることにより、より広い範囲の利用可能な知識を利用することが可能になる。したがって、具体的な多くの利用可能なアプリオリな知識が与えられると、全体的な健全性状態を決定することができる精度が改善される。
【0012】
特に、本方法により、エンティティ内の異常間の定性的因果関係を定量的因果関係から区別することが可能になる。定性的因果関係は、エンティティ間の伝搬経路のトポロジに存在するものであり、1つのエンティティで開始してプロセス全体としての劣化、シャットダウン、又は障害に拡大する一連のイベントに原理上どのエンティティがあり得るかの情報を含んでいる。定量的因果関係は、そのような拡大が起こる確率の尺度である。この定量的因果関係は、例えば、伝搬経路の強度に、又はプロセスの全体的な健全性状態に集約するときに使用される個々のエンティティの健全性状態の重要度に符号化され得る。定量的因果関係は、必ずしも、伝搬経路によって接続されている2つの特定のエンティティのみに依存するわけではない。むしろ、プラント全体としてのレイアウトにも依存し得る。例えば、いくつかのエンティティの機能は、あるレベルの冗長性を有するプラントにおいてかなえられ得る。この1つの例には、ある量の流体を輸送する作業を分担する並列ポンプの配列がある。1つのポンプが故障した場合、残りのポンプが少なくとも部分的に不足分を補い得る。
【0013】
特に有利な実施形態では、異常の伝搬経路は、エンティティ間の材料及び/又はエネルギーフローのトポロジに少なくとも部分的に基づいて決定される。そのようなフローは、産業プロセスにおけるエンティティが互いに依存する主な理由である。特に、化学プロセスの多くは、1つの段階の生成物が次の段階で必要な抽出物である多段階プロセスである。
【0014】
更なる有利な実施形態では、プラントの通常運転中の第1のエンティティから第2のエンティティへの少なくとも1つの既知の方向性相互作用経路が、第1のエンティティと第2のエンティティとの間の異常の双方向伝搬経路に拡張され得る。これは、プロセスにおける異常により、異なるエンティティ間の因果関係が逆になり得るという経験に基づく。例えば、ポンプの流量は、通常、下流タンク内の充填レベルの原因となるが、異常があるとタンクが過剰充填され、その結果、ポンプからの液体をそれ以上受け入れられなくなる。液体は圧縮可能ではないので、次にこれは、ポンプの流量を停止させる。
【0015】
したがって、更に特に有利な実施形態では、少なくとも1つの伝搬経路は、具体的には、
・ 第1のエンティティの第1のエンティティ状態変数と、第2のエンティティの第2のエンティティ状態変数との間の因果関係、及び/又は、
・ 第1のエンティティにおける第1のイベントの発生と、第2のエンティティにおける第2のイベントの発生との間の因果関係、を備える。
【0016】
これらの伝搬経路の1つの可能な根源は、トリガイベントと、これらのトリガイベントの結果として起こるイベントとの間の既存のインターロッキングルールのセットである。例えば、真空チャンバ内の圧力が高すぎる場合、質量分析計又はゲッターポンプなどの特定の感応性機器は、この機器への損傷を防止するために始動を防止され得る。
【0017】
しかしながら、エンティティ間の異常の伝搬経路は、アプリオリな知識なしにデータ駆動方式で決定される場合もある。更に特に有利な実施形態では、第1のエンティティから第2のエンティティへの少なくとも1つの伝搬経路を決定することは、具体的には、
・ 第1のエンティティの第1のエンティティ状態変数の第1の時系列が第2のエンティティの第2のエンティティ状態変数の第2の時系列に及ぼす統計的影響を計算することと、
・ この統計的影響に少なくとも部分的に基づいて、第1のエンティティと第2のエンティティとの間の異常の伝搬の強度を定量化することと、を備える。
【0018】
例えば、統計的影響を計算することは、第1の時系列と第2の時系列との間のグレンジャー因果性及び/又は移動エントロピーを計算することを備え得る。グレンジャー因果性は、第1の時系列が第2の時系列を予測するためにどの程度有用であるかをテストするための統計的仮説テストである。移動エントロピーは、確率分布間の情報利得に更に焦点を当てる。
【0019】
更なる有利な実施形態では、伝搬経路を決定することは、
・ 候補伝搬経路のセットからの各伝搬経路の実現可能性を検証することと、
・ 伝搬経路が実現可能でないことに応答して、この伝搬経路を候補伝搬経路のセットから除去することと、を備え得る。
【0020】
特に、第1のエンティティから第2のエンティティへの方向性相互作用経路を、第1のエンティティと第2のエンティティとの間の双方向相互作用経路に拡張すると、逆方向が実現可能でないことが判明する場合がある。例えば、材料が下方に落下することによって第1のエンティティから第2のエンティティに輸送される場合、再び上方に落下することはできない。そのような逆の相互作用の実現不可能性は、産業プラントを設計したときに安全機能として意図的に案出されている場合さえある。したがって、実現不可能な伝搬経路を除去することにより、全体的な健全性状態のより正確な状況が得られる。
【0021】
更なる有利な実施形態では、エンティティの健全性状態の重要度は、このエンティティを備える伝搬経路の数及び/又は強度に伴い増加する。例えば、プロセスモジュールは、複数の下流プロセスモジュールによって抽出物として使用される生成物を生成し得る。別の例では、プロセスが、パイプラインによって接続された異なる物理的プラント上に存在するエンティティを備える場合、このパイプラインは、全体的なプロセスの「単一障害点」である場合があり、したがって、全体的な健全性状態を決定する際に非常に高い重要度を有する。
【0022】
例えば、タンクに流体を供給するポンプ及びパイプを有するシステムでは、タンクの充填レベルが過度に高いと、更なる流体の供給が妨げられ、ポンプに背圧を引き起こす場合がある。したがって、ポンプはタンクの高い充填レベルと因果関係にある。しかし、パイプ内の圧力は、別のエンティティと因果関係にない。したがって、ポンプの健全性状態のほうが、プロセスの全体的な健全性状態において、パイプの健全性状態よりも高い重要度を得る。
【0023】
更なる有利な実施形態では、個々の健全性状態を集約することは、これらの個々の健全性状態の加重和を計算することを備え、重みは、それぞれの個々の健全性状態の重要度に基づいて決定される。これにより、全体的な健全性状態の容易に解釈可能な指標が得られ、その結果、「健全」又は「不健全」のような全体的な状態の二値分類のための閾値を容易に引き出すことができる。しかしながら、加重和の代替として又はそれと組み合わせて、個々の健全性状態の集約は、例えば、乗法的寄与(multiplicative contributions)を備えてもよい。例えば、健全性が0~1のスケールで測定され、あるエンティティがプロセス全体としての機能に対する「単一障害点」である場合、このエンティティの寄与は乗法的であり得る。プロセスの全体的な健全性状態は、この場合、「単一障害点」エンティティの健全性状態よりも良好でない可能性がある。
【0024】
前述のように、特に有利な実施形態では、産業プロセスは、1つ又は複数の抽出物を1つ又は複数の生成物に変換する化学生成プロセスであり得る。エンティティの配列における少なくとも1つのエンティティは、パイプ、ポンプ、又はタンクであり得る。これらは、それらの間の異常に対して最も多く最も強力な伝搬経路を有するエンティティである。
【0025】
本発明はまた、産業プロセスの健全性状態を決定するための第2の方法を提供する。第1の方法と同様の方式で、プロセスは、エンティティの配列を備える少なくとも1つの産業プラントによって実行され、そのような各エンティティの状態は、エンティティ状態変数のセットによって特徴付けられる。また、エンティティ状態変数の値、及び/又は値の時系列が取得される。
【0026】
第1の方法とは対照的に、値、及び/又は値の時系列は、ここで、産業プロセス全体としてのモデルに提供される。このモデルは、機械学習モデルとして実装される。モデルの結果から、産業プロセス全体としての健全性状態の予測が取得される。このために、第1の方法で使用される個々のエンティティに対応するモデルと同様に、プロセス全体のための単一のモデルは、プロセスの変数を出力することができ、次いでこの変数から健全性状態を推測することができるか、又は健全性状態を直接予測することができる。
【0027】
全体的な健全性状態を決定するためにエンティティ状態変数を利用する基本的な考えも、第1の方法で使用されるものと同じである。しかしながら、この第2の方法は、エンティティ間の相互作用についてのアプリオリな知識が利用可能であることを想定していない。例えば、単一のモデルは、入力としてエンティティ状態変数の値及び/又は値の時系列を備え、及びグランドトゥルースラベルとしてプロセス全体としての健全性状態を備える訓練データについて「ブラックボックス」方式で直接訓練され得る。したがって、どちらの方法を使用するのがより有利であるかは、具体的な状況で利用可能なアプリオリな情報の量に依存する。
【0028】
更なる有利な実施形態では、機械学習モデルは、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)及び/又はニューラルトランスフォーマネットワークを備える。これらのネットワークは、シーケンスとして状態変数の時系列を処理するのに特によく適している。
【0029】
本方法は、全体的又は部分的にコンピュータ実装され得る。したがって、本発明はまた、1つ又は複数のコンピュータ及び/又は計算インスタンス上で実行されると、1つ又は複数のコンピュータに上述の方法のうちの1つを行わせる機械可読命令を有する1つ又は複数のコンピュータプログラムにも関する。このコンテキストでは、仮想化プラットフォーム、ハードウェアコントローラ、ネットワークインフラストラクチャデバイス(スイッチ、ブリッジ、ルータ、又はワイヤレスアクセスポイントなど)、及び機械可読命令を実行することができるネットワーク内のエンドデバイス(センサ、アクチュエータ、又は他の産業分野デバイスなど)も、コンピュータとして見なされるものとする。
【0030】
したがって、本発明はまた、1つ又は複数のコンピュータプログラムを有する非一時的記憶媒体及び/又はダウンロード製品に関する。ダウンロード製品は、ダウンロードによる即時フルフィルメントのためにオンラインショップで販売され得る製品である。本発明はまた、1つ又は複数のコンピュータプログラム、及び/若しくは1つ又は複数の非一時的機械可読記憶媒体及び/若しくはダウンロード製品を有する1つ又は複数のコンピュータ並びに/又は計算インスタンスを提供する。
【0031】
健全性状態を決定するためにどちらの方法が使用されるかにかかわらず、決定された健全性状態は、プロセス健全性が悪化している場合に早期警告を提供するために使用され得る。これは、プラントを安全に保つためのアクションを取るために利用され得る。例えば、プロセスの決定された健全性状態が所定の基準を満たす(例えば、所定の閾値を下回る)ことに応答して、プロセスの挙動を特徴付けるパラメータが、プロセスの健全性状態が改善するように修正及び/又は最適化され得る。そのようなパラメータは、例えば、ローレベルコントローラのための設定点値を備え得る。特に、1つの例では、プロセスの全体的な健全性状態を予測するために使用される1つ又は複数のモデルは、プロセスに対して取られるべき異なる候補アクションのうちのどれがプロセスの全体的な健全性状態を改善するのに最良であるかを決定するために、これらの候補アクションについて複数回呼び出され得る。この場合、全体的な健全性状態をリアルタイムよりもはるかに速く予測することができると特に有利である。例えば、計算コストの高いシミュレーションモデルの近似としてサロゲートモデルを使用することが更により有利であり得る。
【0032】
以下では、本発明の範囲を限定する意図なしに図を使用して本発明が例示される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】産業プロセスの健全性状態を決定するための方法100の例示的な実施形態である。
図2】産業プロセスの健全性状態を決定するための方法200の例示的な実施形態である。
図3】方法100、200が適用され得る例示的なシステムである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、産業プロセス1の健全性状態1*を決定するための方法100の一実施形態の概略的なフローチャートである。プロセス1は、エンティティ2a~2fの配列を備える少なくとも1つの産業プラントによって実行される。そのような各エンティティ2a~2fの状態は、エンティティ状態変数3a~3fのセットによって特徴付けられる。
【0035】
ステップ110において、エンティティ状態変数3a~3fの値、及び/又は値の時系列が取得される。
【0036】
ステップ120において、各エンティティ2a~2fについて、値3a~3f、及び/又は値3a~3fの時系列が、それぞれのエンティティ2a~2fに対応するモデル4a~4fに提供される。このようにして、それぞれのエンティティ2a~2fの健全性状態5a~5fの予測が取得される。
【0037】
ブロック121によれば、少なくとも1つのエンティティ2a~2fに対応するモデル4a~4fは、
・ 機械学習モデル、及び/又は、
・ シミュレーションモデル、及び/又は、
・ このシミュレーションモデルのサロゲート近似、を備え得る。
【0038】
ステップ130において、プロセス1を実行する産業プラントのレイアウト1aに少なくとも部分的に基づいて、該エンティティ2a~2f間の異常の伝搬経路6が決定される。
【0039】
ブロック131によれば、そのような伝搬経路6は、エンティティ2a~2f間の材料及び/又はエネルギーフローのトポロジに少なくとも部分的に基づいて決定され得る。
【0040】
ブロック132によれば、プラントの通常運転中の第1のエンティティ2a~2fから第2のエンティティ2a~2fへの少なくとも1つの既知の方向性相互作用経路が、第1のエンティティと第2のエンティティとの間の異常の双方向伝搬経路に拡張され得る。
【0041】
ブロック133によれば、少なくとも1つの伝搬経路6は、具体的には、
・ 第1のエンティティ2a~2fの第1のエンティティ状態変数3a~3fと、第2のエンティティ2a~2fの第2のエンティティ状態変数3a~3fとの間の因果関係、及び/又は、
・ 第1のエンティティ2a~2fにおける第1のイベントの発生と、第2のエンティティ2a~2fにおける第2のイベントの発生との間の因果関係、を備え得る。
【0042】
ブロック134によれば、第1のエンティティ2a~2fの第1のエンティティ状態変数3a~3fの第1の時系列が第2のエンティティ2a~2fの第2のエンティティ状態変数3a~3fの第2の時系列に及ぼす統計的影響が計算され得る。特に、ブロック134aによれば、これは、第1の時系列と第2の時系列との間のグレンジャー因果性及び/又は移動エントロピーを計算することを備え得る。ブロック135によれば、計算された統計的影響に少なくとも部分的に基づいて、第1のエンティティ2a~2fと第2のエンティティ2a~2fとの間の異常の伝搬の強度が定量化され得る。
【0043】
ブロック136によれば、候補伝搬経路6のセットからの各伝搬経路6の実現可能性が検証され得る。ブロック137によれば、伝搬経路6が実現可能でないことに応答して、この伝搬経路6は、候補伝搬経路6のセットから除去され得る。
【0044】
ステップ140において、伝搬経路6に少なくとも部分的に基づいて、プロセスの全体的な健全性状態(1*)に対する個々のエンティティ(2a~2f)の健全性状態5a~5fの重要度7a~7fが決定され得る。
【0045】
ブロック141によれば、エンティティ2a~2fの健全性状態5a~5fの重要度7a~7fは、このエンティティ2a~2fを備える伝搬経路6の数及び/又は強度に伴い増加し得る。
【0046】
ステップ150において、該重要度7a~7fに少なくとも部分的に基づいて、エンティティ2a~2fの個々の健全性状態5a~5fが集約されて、プロセス1の全体的な健全性状態1*が取得される。
【0047】
ブロック151によれば、それぞれの個々の健全性状態5a~5fの重要度7a~7fに基づいて、これらの個々の健全性状態5a~5fについての重みが決定され得る。ブロック152によれば、これらの重みを使用して、これらの個々の状態5a~5fの加重和が計算され得る。
【0048】
図2は、産業プロセス1の健全性状態1*を決定するための方法200の例示的な実施形態である。方法100と同様に、方法200は、プロセス1が、エンティティ2a~2fの配列を備える少なくとも1つの産業プラントによって実行され、そのような各エンティティ2a~2fの状態が、エンティティ状態変数3a~3fのセットによって特徴付けられる状況から開始する。
【0049】
ステップ210において、エンティティ状態変数3a~3fの値、及び/又は値の時系列が取得される。
【0050】
ステップ220において、値、及び/又は値の時系列は、産業プロセス1のモデル1bに提供される。このモデル1bは、機械学習モデルとして実装される。モデルの結果から、産業プロセスの健全性状態1*の予測が取得される。モデル1bは、求められた健全性状態1*を直接出力してもよいし、又は健全性状態1*を示すプロセス1の変数を出力してもよい。
【0051】
ブロック221によれば、機械学習モデル1bは、時系列及び他の値のシーケンスを処理するのに特によく適した再帰型ニューラルネットワーク(RNN)及び/又はニューラルトランスフォーマネットワークを備える。
【0052】
図3は、方法100及び/又は200が適用され得る例示的なシステムを示す。システムは、エンティティ2a~2fの具体例を備える。流体が、ポンプ2aによって弁2bを介してタンク2cに圧送される。タンク2cには、弁2dを介して別の供給源からも充填され得る。タンク2cからの流体は、加圧パイプ2eを通って別の弁2fに通過する。パイプ2e内の圧力は、圧力pを電流Iに変換する圧力計によって測定され得る。
【符号の説明】
【0053】
1…産業プロセス
1*…プロセス1の健全性状態
1a…プロセス1を実行するプラントのトポロジ
1b…プロセス1のモデル
2a~2f…プロセス1を実行するプラントのエンティティ
3a~3f…エンティティ2a~2fのエンティティ状態変数
4a~4f…エンティティ2a~2fに対応するモデル
5a~5f…エンティティ2a~2fの健全性状態
6…エンティティ2a~2f間の異常の伝搬経路
7a~7f…健全性状態5a~5fの重要度
100…健全性状態1*を決定するための第1の方法
110…エンティティ状態変数3a~3fを取得する
120…値3a~3fをモデル4a~4fに提供する
121…特定のタイプのモデルを使用する
130…エンティティ2a~2f間の伝搬経路6を決定する
131…材料及び/又はエネルギーフローのトポロジを評価する
132…方向性経路を双方向伝搬経路6に拡張する
133…特定の因果関係を考慮する
134…時系列間の統計的影響を計算する
134a…グレンジャー因果性又は移動エントロピーを計算する
135…伝搬の強度を定量化する
136…伝搬経路6の実現可能性を検証する
137…実現不可能な伝搬経路6を除去する
140…重要度7a~7fを決定する
141…重要度7a~7fを伝搬経路6に依存させる
150…重要度7a~7fを使用して健全性状態5a~5fを集約する
151…重要度7a~7fに基づいて重みを計算する
152…加重和を計算する
200…健全性状態1*を決定するための第2の方法
210…エンティティ状態変数3a~3fを取得する
220…プロセス1のモデル1bに値を提供する
221…RNN又はトランスフォーマネットワークを使用する
p…圧力
I…電流
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業プロセス(1)の健全性状態(1*)を決定するための方法(100)であって、前記産業プロセス(1)は、エンティティ(2a~2f)の配列を備える少なくとも1つの産業プラントによって実行され、各々の前記エンティティ(2a~2f)の状態は、エンティティ状態変数(3a~3f)のセットによって特徴付けられ、前記方法(100)は、
・ 前記エンティティ状態変数(3a~3f)の値、及び/又は前記値の時系列を取得すること(110)と、
・ 各エンティティ(2a~2f)について、前記値(3a~3f)及び/又は前記値(3a~3f)の時系列を、それぞれの前記エンティティ(2a~2f)に対応するモデル(4a~4f)に提供し(120)、これによって、それぞれの前記エンティティ(2a~2f)の健全性状態(5a~5f)の予測を取得することと、
・ 前記産業プロセス(1)を実行する前記産業プラントのレイアウト(1a)に少なくとも部分的に基づいて、前記エンティティ(2a~2f)間の異常の伝搬経路(6)を決定すること(130)と、
・ 前記伝搬経路(6)に少なくとも部分的に基づいて、前記産業プロセスの全体的な前記健全性状態(1*)に対する個々の前記エンティティ(2a~2f)の前記健全性状態(5a~5f)の重要度(7a~7f)を決定すること(140)と、
・ 前記産業プロセス(1)の全体的な前記健全性状態(1*)を取得するために、前記重要度(7a~7f)に少なくとも部分的に基づいて、前記エンティティ(2a~2f)の個々の前記健全性状態(5a~5f)を集約すること(150)と、
を行うステップを備える、方法(100)。
【請求項2】
前記異常の伝搬経路(6)は、エンティティ(2a~2f)間の材料及び/又はエネルギーフローのトポロジに少なくとも部分的に基づいて決定される(131)、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記産業プラントの通常運転中の第1のエンティティ(2a~2f)から第2のエンティティ(2a~2f)への少なくとも1つの既知の方向性相互作用経路が、前記第1のエンティティと前記第2のエンティティとの間の異常の双方向伝搬経路に拡張される(132)、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
少なくとも1つの伝搬経路(6)は、具体的には、
・ 第1のエンティティ(2a~2f)の第1のエンティティ状態変数(3a~3f)と、第2のエンティティ(2a~2f)の第2のエンティティ状態変数(3a~3f)との間の因果関係、及び/又は、
・ 第1のエンティティ(2a~2f)における第1のイベントの発生と、第2のエンティティ(2a~2f)における第2のイベントの発生との間の因果関係、
を備える(133)、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項5】
第1のエンティティ(2a~2f)から第2のエンティティ(2a~2f)への少なくとも1つの伝搬経路(6)を決定すること(130)は、具体的には、
・ 前記第1のエンティティ(2a~2f)の第1のエンティティ状態変数(3a~3f)の第1の時系列が前記第2のエンティティ(2a~2f)の第2のエンティティ状態変数(3a~3f)の第2の時系列に及ぼす統計的影響を計算すること(134)と、
・ 前記統計的影響に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のエンティティ(2a~2f)と前記第2のエンティティ(2a~2f)との間の異常の伝搬の強度を定量化すること(135)と、
を備える、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記統計的影響を計算すること(134)は、具体的には、前記第1の時系列と前記第2の時系列との間のグレンジャー因果性及び/又は移動エントロピーを計算すること(134a)を備える、請求項5に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記伝搬経路(6)を決定すること(130)は、具体的には、
・ 候補伝搬経路(6)のセットからの各伝搬経路(6)の実現可能性を検証すること(136)と、
・ 伝搬経路(6)が実現可能でないことに応答して、前記伝搬経路(6)を前記候補伝搬経路(6)のセットから除去すること(137)と、
を備える、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項8】
エンティティ(2a~2f)の前記健全性状態(5a~5f)の前記重要度(7a~7f)は、前記エンティティ(2a~2f)を備える伝搬経路(6)の数及び/又は強度に伴い増加する(141)、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項9】
少なくとも1つのエンティティ(2a~2f)に対応する前記モデル(4a~4f)は、
・ 機械学習モデル、及び/又は、
・ シミュレーションモデル、及び/又は、
・ 前記シミュレーションモデルのサロゲート近似、
を備える(121)、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項10】
個々の健全性状態(5a~5f)を集約すること(150)は、個々の前記健全性状態(5a~5f)の加重和を計算すること(152)を備え、前記加重和の重みは、それぞれの個々の前記健全性状態(5a~5f)の前記重要度(7a~7f)に基づいて決定される(151)、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記産業プロセス(1)は、1つ又は複数の抽出物を1つ又は複数の生成物に変換する化学生成プロセスであり、前記エンティティの配列における少なくとも1つのエンティティは、パイプ、ポンプ、又はタンクである、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項12】
1つ又は複数のコンピュータによって実行されると、前記1つ又は複数のコンピュータに、請求項に記載の方法(100)を行わせる機械可読命令を備えるコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムを有する、非一時的機械可読記憶媒体及び/又はダウンロード製品。
【請求項14】
請求項12に記載のコンピュータプログラム、並びに/又は請求項13に記載の非一時的機械可読記憶媒体及び/又はダウンロード製品を有する1つ又は複数のコンピュータ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
図3は、方法100及び/又は200が適用され得る例示的なシステムを示す。システムは、エンティティ2a~2fの具体例を備える。流体が、ポンプ2aによって弁2bを介してタンク2cに圧送される。タンク2cには、弁2dを介して別の供給源からも充填され得る。タンク2cからの流体は、加圧パイプ2eを通って別の弁2fに通過する。パイプ2e内の圧力は、圧力pを電流Iに変換する圧力計によって測定され得る。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 産業プロセス(1)の健全性状態(1*)を決定するための方法(100)であって、前記産業プロセス(1)は、エンティティ(2a~2f)の配列を備える少なくとも1つの産業プラントによって実行され、各々の前記エンティティ(2a~2f)の状態は、エンティティ状態変数(3a~3f)のセットによって特徴付けられ、前記方法(100)は、
・ 前記エンティティ状態変数(3a~3f)の値、及び/又は前記値の時系列を取得すること(110)と、
・ 各エンティティ(2a~2f)について、前記値(3a~3f)及び/又は前記値(3a~3f)の時系列を、それぞれの前記エンティティ(2a~2f)に対応するモデル(4a~4f)に提供し(120)、これによって、それぞれの前記エンティティ(2a~2f)の健全性状態(5a~5f)の予測を取得することと、
・ 前記産業プロセス(1)を実行する前記産業プラントのレイアウト(1a)に少なくとも部分的に基づいて、前記エンティティ(2a~2f)間の異常の伝搬経路(6)を決定すること(130)と、
・ 前記伝搬経路(6)に少なくとも部分的に基づいて、前記産業プロセスの全体的な前記健全性状態(1*)に対する個々の前記エンティティ(2a~2f)の前記健全性状態(5a~5f)の重要度(7a~7f)を決定すること(140)と、
・ 前記産業プロセス(1)の全体的な前記健全性状態(1*)を取得するために、前記重要度(7a~7f)に少なくとも部分的に基づいて、前記エンティティ(2a~2f)の個々の前記健全性状態(5a~5f)を集約すること(150)と、
を行うステップを備える、方法(100)。
[2] 前記異常の伝搬経路(6)は、エンティティ(2a~2f)間の材料及び/又はエネルギーフローのトポロジに少なくとも部分的に基づいて決定される(131)、[1]に記載の方法(100)。
[3] 前記産業プラントの通常運転中の第1のエンティティ(2a~2f)から第2のエンティティ(2a~2f)への少なくとも1つの既知の方向性相互作用経路が、前記第1のエンティティと前記第2のエンティティとの間の異常の双方向伝搬経路に拡張される(132)、[1]又は[2]に記載の方法(100)。
[4] 少なくとも1つの伝搬経路(6)は、具体的には、
・ 第1のエンティティ(2a~2f)の第1のエンティティ状態変数(3a~3f)と、第2のエンティティ(2a~2f)の第2のエンティティ状態変数(3a~3f)との間の因果関係、及び/又は、
・ 第1のエンティティ(2a~2f)における第1のイベントの発生と、第2のエンティティ(2a~2f)における第2のイベントの発生との間の因果関係、
を備える(133)、[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法(100)。
[5] 第1のエンティティ(2a~2f)から第2のエンティティ(2a~2f)への少なくとも1つの伝搬経路(6)を決定すること(130)は、具体的には、
・ 前記第1のエンティティ(2a~2f)の第1のエンティティ状態変数(3a~3f)の第1の時系列が前記第2のエンティティ(2a~2f)の第2のエンティティ状態変数(3a~3f)の第2の時系列に及ぼす統計的影響を計算すること(134)と、
・ 前記統計的影響に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のエンティティ(2a~2f)と前記第2のエンティティ(2a~2f)との間の異常の伝搬の強度を定量化すること(135)と、
を備える、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法(100)。
[6] 前記統計的影響を計算すること(134)は、具体的には、前記第1の時系列と前記第2の時系列との間のグレンジャー因果性及び/又は移動エントロピーを計算すること(134a)を備える、[5]に記載の方法(100)。
[7] 前記伝搬経路(6)を決定すること(130)は、具体的には、
・ 候補伝搬経路(6)のセットからの各伝搬経路(6)の実現可能性を検証すること(136)と、
・ 伝搬経路(6)が実現可能でないことに応答して、前記伝搬経路(6)を前記候補伝搬経路(6)のセットから除去すること(137)と、
を備える、[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法(100)。
[8] エンティティ(2a~2f)の前記健全性状態(5a~5f)の前記重要度(7a~7f)は、前記エンティティ(2a~2f)を備える伝搬経路(6)の数及び/又は強度に伴い増加する(141)、[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法(100)。
[9] 少なくとも1つのエンティティ(2a~2f)に対応する前記モデル(4a~4f)は、
・ 機械学習モデル、及び/又は、
・ シミュレーションモデル、及び/又は、
・ 前記シミュレーションモデルのサロゲート近似、
を備える(121)、[1]~[8]のいずれか一項に記載の方法(100)。
[10] 個々の健全性状態(5a~5f)を集約すること(150)は、個々の前記健全性状態(5a~5f)の加重和を計算すること(152)を備え、前記加重和の重みは、それぞれの個々の前記健全性状態(5a~5f)の前記重要度(7a~7f)に基づいて決定される(151)、[1]~[9]のいずれか一項に記載の方法(100)。
[11] 前記産業プロセス(1)は、1つ又は複数の抽出物を1つ又は複数の生成物に変換する化学生成プロセスであり、前記エンティティの配列における少なくとも1つのエンティティは、パイプ、ポンプ、又はタンクである、[1]~[10]のいずれか一項に記載の方法(100)。
[12] 産業プロセスの健全性状態(1*)を決定するための方法(200)であって、前記産業プロセスは、エンティティ(2a~2f)の配列を備える少なくとも1つの産業プラントによって実行され、各々の前記エンティティ(2a~2f)の状態は、エンティティ状態変数(3a~3f)のセットによって特徴付けられ、前記方法(200)は、
・ 前記エンティティ状態変数(3a~3f)の値、及び/又は前記値の時系列を取得すること(210)と、
・ 前記値及び/又は前記値の時系列を、前記産業プロセス(1)のモデル(1b)に提供し(220)、これによって、前記産業プロセス(1)の前記健全性状態(1*)の予測を取得することと、ここにおいて、前記モデル(1b)は、機械学習モデルとして実装され、
を行うステップを備える、方法(200)。
[13] 前記機械学習モデル(1b)は、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)及び/又はニューラルトランスフォーマネットワークを備える(221)、[12]に記載の方法(200)。
[14] 1つ又は複数のコンピュータによって実行されると、前記1つ又は複数のコンピュータに、[1]~[13]のいずれか一項に記載の方法(100、200)を行わせる機械可読命令を備えるコンピュータプログラム。
[15] [14]に記載のコンピュータプログラムを有する、非一時的機械可読記憶媒体及び/又はダウンロード製品。
[16] [14]に記載のコンピュータプログラム、並びに/又は[15]に記載の非一時的機械可読記憶媒体及び/又はダウンロード製品を有する1つ又は複数のコンピュータ。
【国際調査報告】