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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】カーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 68/08 20060101AFI20241010BHJP
   C07C 68/06 20200101ALI20241010BHJP
【FI】
C07C68/08
C07C68/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530441
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 KR2022018589
(87)【国際公開番号】W WO2023101298
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0168077
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511123485
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ウネ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ワン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ペク、ミ ファ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョン ミョン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC48
4H006AD17
4H006BA69
4H006BD82
4H006BD84
4H006KA57
(57)【要約】
本発明は、カーボネートの製造方法に関する。本発明のカーボネートの製造方法は、その製造工程に適用した触媒を吸着剤を損傷することなく、高い効率で除去することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルカーボネートおよびエタノールを含む原料を触媒存在下で反応させて、触媒、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメタノールを含む反応生成物ストリームを製造する反応段階と、
前記反応生成物ストリームに酸性吸着剤を投入し、前記触媒と吸着剤の吸着を誘導する、吸着段階と、
前記触媒と吸着した吸着剤を除去し、吸着剤を除去した反応生成物ストリームを製造する、吸着剤除去段階と、
前記吸着剤を除去した反応生成物ストリームからエチルメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートを分離する、生成物分離段階と、を含み、
前記吸着剤は、アルミニウム系吸着剤である、
カーボネートの製造方法。
【請求項2】
ジメチルカーボネートおよびエタノールを含む原料を触媒の存在下で反応させて、触媒、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメタノールを含む反応生成物ストリームを製造する、反応段階と、
前記反応生成物ストリームを酸性吸着剤を含む吸着塔へ供給し、前記触媒と吸着剤の吸着を誘導する、吸着段階と、
前記吸着塔を通過した反応生成物ストリームからエチルメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートを分離する、生成物分離段階と、を含み、
前記吸着剤は、ビーズ状のアルミニウム系吸着剤である、
カーボネートの製造方法。
【請求項3】
前記反応段階は、連続フロー式反応器にて行われるものである、
請求項1または2に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記触媒は、 ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、水酸化カリウム、カリウムエトキシド、またはこれらの組み合わせを含むものである、
請求項1または2に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項5】
前記吸着剤は、アルミニウムシリケートまたはベーマイトのものである、
請求項1または2に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項6】
前記生成物分離段階は、フラッシュドラムで前記吸着剤を除去した反応生成物ストリームからエチルメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートを分離するものである、
請求項1または2に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項7】
前記吸着剤除去段階は、前記触媒と吸着した吸着剤を濾過(filtering)により除去するものである、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項8】
前記反応段階後および前記吸着段階前に、
前記反応生成物ストリームを濾過する予備触媒除去段階と、をさらに含むものである、
請求項1に記載のカーボネートの製造方法。
【請求項9】
前記生成物分離段階は、前記吸着段階直後に行われるものである、
請求項2に記載のカーボネートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボネートの製造方法に関する。具体的には、本発明は、カーボネート生成反応にて用いた触媒を効率的に除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ電解液の有機溶媒としては、主にエチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)が用いられる。EMCとDECは、ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)のエステル交換反応により製造される。該反応は、可逆反応でもある。また、該反応を触媒の存在下で進めることもできる。このとき、触媒としては、主に塩基性触媒が用いられる。以下の反応式1は、当該反応を示すものである(ここで、MeOHは、メタノールの略語である):
【化1】
【0003】
前記反応では、触媒として塩基性触媒(主にアルカリ金属またはアルカリ土類金属などを金属成分として含む、金属塩)が用いられる。当該触媒は、前記反応の反応物または生成物であるカーボネートに対する溶解度が低い。したがって、前記触媒を別途に除去しなければ、後続する工程において不良が発生する。なぜなら、析出した触媒は、後工程にてカラムの目詰まり(column plugging)またはファウリング(fouling)を引き起こすからである。
【0004】
触媒を除去する方法として、触媒をフィルターで濾過する方式を考慮したことがある。しかし、触媒の大きさがフィルターの気孔の大きさよりも小さい場合、または前記反応の生成物に含まれるアルコールが前記触媒を溶解した場合には、前記フィルターで触媒を濾過することができない。
【0005】
特許文献1では、塩基性触媒(Sodium Methoxide、SME)の存在下、DMCとアルコールを反応させて、蒸留する過程を通じてEMCとDECを製造し、反応蒸留塔後段にストレーナ(固体物質を分離する装置)を導入する工程が紹介されている。また、特許文献2では、反応蒸留塔内部に多孔性トレイを設け、触媒を除去する内容が紹介されている。しかし、特許文献1および特許文献2では、蒸留塔下段における濃縮液が触媒を析出することによる蒸留塔における目詰まりの問題を依然として含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】CN103804124B
【特許文献2】KR10-1668571B
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、カーボネートの製造工程に適用した触媒を吸着剤を損傷することなく、高効率で除去しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1具現例によるカーボネートの製造方法は、ジメチルカーボネートおよびエタノールを含む原料を触媒の存在下で反応させて、触媒、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメタノールを含む反応生成物ストリームを製造する、反応段階と、前記反応生成物ストリームに酸性吸着剤を投入し、前記触媒と吸着剤の吸着を誘導する、吸着段階と、前記触媒と吸着した吸着剤を除去し、吸着剤を除去した反応生成物ストリームを製造する、吸着剤除去段階と、前記吸着剤を除去した反応生成物ストリームからエチルメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートを分離する、生成物分離段階と、を含み、前記吸着剤は、アルミニウム系吸着剤のものである。
【0009】
本発明の第2具現例によるカーボネートの製造方法は、ジメチルカーボネートおよびエタノールを含む原料を触媒の存在下で反応させて、触媒、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメタノールを含む反応生成物ストリームを製造する、反応段階と、前記反応生成物ストリームを酸性吸着剤を含む吸着塔へ供給し、前記触媒と吸着剤の吸着を誘導する、吸着段階と、前記吸着塔を通過した反応生成物ストリームからエチルメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートを分離する、生成物分離段階と、を含み、前記吸着剤は、ビーズ状のアルミニウム系吸着剤のものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカーボネートの製造方法は、その製造工程に適用した触媒を吸着剤の損傷なしに、高い効率で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1具現例によるカーボネートの製造方法の模式図である。
図2】本発明の第2具現例によるカーボネートの製造方法の模式図である。
図3】本発明の比較例7(左)および実施例3(右)において、吸着剤を投入したときの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本出願の内容についてより詳しく説明する。
【0013】
上述したように、本発明は、カーボネート、具体的には、エチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートを生成する反応に用いた触媒を効率的に回収または除去しようとするものである。その結果、前記生成物を高純度で得ることができる。こうして生成されたカーボネート化合物を二次電池電解液の溶媒として有用に適用することができる。
【0014】
上述したように、本発明において、前記反応における生成物は、前記反応に適用した触媒を溶かすことができない。触媒を除去せずに反応後、工程を進めると、前記触媒が析出して管などを詰まらせ、工程の不良の原因であるカラムの目詰まりやファウリングを引き起こす。フィルターを用いて触媒を濾過してみることもできるが、前記反応の副産物であるアルコールに前記触媒が溶解する可能性があり、溶解した触媒は、前記フィルターをそのまま通過し得る。溶解した状態の触媒を含む生成物ストリームもまた後工程の不良を引き起こすため、溶解した状態の触媒も除去できなければならない。
【0015】
本発明では、吸着剤または吸着塔を用いて前記触媒を高い効率で除去しようとするものである。併せて本発明の方法を適用すると、前記吸着剤を損傷することなく、前記触媒を高い効率で除去することができる。よって、本発明の方法を適用すると、高純度のカーボネートを製造することができるばかりでなく、工程の経済性もまた確保することができる。
【0016】
以下、吸着剤そのものを用いる方法を本発明の第1具現例と称し、吸着塔を用いる方法を本発明の第2具現例と称する。
【0017】
<第1具現例>
本発明の第1具現例によるカーボネートの製造方法は、少なくとも4段階を含む。本発明の第1具現例による方法は、吸着剤そのものを用いることを主な内容とする。図1は、本発明の第1具現例による方法の進行過程の模式図である。
【0018】
本発明の第1具現例によるカーボネートの製造方法は、反応段階、吸着段階、吸着剤除去段階、および生成物分離段階を少なくとも含む。以下において、各段階についてより詳しく説明する。
【0019】
本発明の第1具現例によるカーボネートの製造方法は、反応段階において、ジメチルカーボネートおよびエタノールを含む原料を触媒の存在下で反応させて、触媒、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメタノールを含む反応生成物ストリームを製造する。
【0020】
ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)は、エステル交換反応を通じて主要生成物として、エチルメチルカーボネート(EMC)をまたはジエチルカーボネート(DEC)を、副産物としてメタノール(MeOH)を生成する。
【0021】
前記原料中の反応物間の組成によって反応物の転化率および目的生成物の選択性と収率が異なり得る。したがって、目的生成物の種類と反応物の転化率を最大化することを考慮して、前記原料中の反応物間の組成を調節することができる。
【0022】
一具現例において、前記原料は、ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)を0.1~10範囲内の重量比(EtOH/DMC)で含むことができる。
【0023】
一具現例において、前記原料の反応を行う反応器として適切なものを選択することができる。本発明では、前記カーボネートの製造反応に適用する触媒を反応生成物ストリームから除去しようとする。よって、本発明にて適用する反応器は、少なくとも触媒を反応生成物ストリームに残す反応器である。
【0024】
一方、固定層反応器(Fixed Bed Reactor)は、反応器内に触媒を充填し固定させる。すなわち、固定層反応器にて触媒反応を行うと、その反応生成物には、触媒がほとんどない。したがって、本発明にて述べる反応器は、少なくとも前記固定層反応器ではない。要するに、本発明にて述べる反応器は、少なくとも反応器内で流動する触媒を含む反応器である。このような反応器を業界では、流動層反応器ともいう。
【0025】
本発明では、前記反応器としてバッチ式反応器または連続フロー式反応器を用いることができる。具体的には、本発明では、バッチ式反応器を用いて本発明の効果を検証してみることができる。また、本発明の方法を実際、製品生産に適用すると、連続フロー式反応器を適用することができる。
【0026】
本明細書において、バッチ式反応器は、反応物の供給と生成物の排出が一気に起こる反応器である。
【0027】
本明細書において、連続フロー式反応器は、用語の通り反応物の供給と生成物の排出が連続して起こる反応器である。
【0028】
連続フロー式反応器は、大きく二つに分類することができる。第一に、連続攪拌槽型反応器または混合流れ反応器(CSTRまたはMFR)であり、第二に、プラグフロー反応器(PFR)である。このうち、CSTRは、反応器内で成分間の組成を一定に維持することができる。本発明は、前記反応器としてCSTRを適用し、均一な反応を行うことができる。すなわち、本発明は、一具現例において、前記反応段階は、連続攪拌槽型反応器(CSTR)で行うことができる。
【0029】
前記反応器の大きさに関連した事項は、本発明では、特に制限されるものではない。本発明では、反応器の大きさを前記反応の速度と、目的生成物の収率および/または選択性、並びに反応物の転化率などを総合的に考慮して決定することができる。
【0030】
本発明にて使用する化学反応は、DMCとEtOHのエステル交換反応である。化学反応では、反応物の組成、触媒の含有量、反応温度などによって前記反応にて反応物の転化率、目的生成物の選択性などが異なる。ここで、触媒の含有量と反応温度は、反応速度に影響を及ぼす。
【0031】
なお、本発明にて適用する反応は、前述したように原料中の反応物の組成によって上述した生成物の組成が大きく異なる。また、特定の反応器、例えば、CSTRにて前記反応を行うと、生成物の組成が特に反応物の組成に影響され得る。この場合、触媒の含有量と温度などは大きく影響を及ぼさないことがある。
【0032】
また、前記反応が100%進むとは限らないため、前記生成物ストリームは、前記原料が含むDMCとEtOHを所定量含むこともできる。
【0033】
本発明の方法において、前記原料の反応は、触媒の存在下で行われる。前記反応に適用することができる触媒は、塩基性触媒であってもよい。前記塩基性触媒は、ナトリウムメトキシド(Sodium Methoxide、NaOCH)、ナトリウムエトキシド(Sodium ethoxide、NaOC)、水酸化カリウム(Potassium Hydroxide、KOH)、水酸化ナトリウム(Sodium Hydroxide、NaOH)またはこれらの組み合わせを含むことができる。ここで、前記触媒としてNaOCHを代表的に用いることができる。反応物または反応生成物中のカーボネート(DMC、EMC、またはDEC)は、この触媒を溶解することができないが、反応物または反応生成物中のアルコール(エタノールまたはメタノール)は、当該触媒を溶解することができる。したがって、前記生成物ストリームは、所定量のナトリウム陽イオン(Na)を含むことができる。これは、普通のフィルターでは濾過することができず、反応後の反応である精製工程などにて析出され、工程不良を引き起こすことができる。
【0034】
本発明では、特にこのような触媒の適用に応じて発生する問題を解決しようとするものである。
【0035】
本発明の第1具現例によるカーボネートの製造方法は、吸着段階において、前記反応生成物ストリームに酸性吸着剤を投入し、前記触媒と吸着剤の吸着を誘導する。具体的には、前記吸着段階において、吸着剤は、前記触媒の金属陽イオンと前記吸着剤の水素イオンのイオン交換反応を通じて前記触媒と吸着することができる。ここで、酸性吸着剤とは、前記吸着剤を水に解離すると、水素イオンまたはその他の金属陽イオンを放出する金属塩などを称する場合がある。
【0036】
また、前記吸着剤は、アルミニウム系吸着剤である。アルミニウム系吸着剤は、分子構造内のアルミニウムを少なくとも含むことを意味する。例えば、前記吸着剤は、アルミニウムシリケート(Si-Al)またはベーマイト(γ-AlO(OH))であってもよい。一方、シリカゲルなどのシリコン系吸着剤は、本発明にて目的とする触媒除去効率を達成することができない。
【0037】
例えば、触媒としてナトリウムを金属イオンとするイオン性塩を用いて、吸着剤としてベーマイトを用いると、吸着剤は、以下のようなメカニズムを通して触媒残渣(residue、Na金属またはNaイオン)と吸着することができる。
【化2】
【0038】
前記反応式において、O部位はナトリウムだけでなく、生成物ストリームに残留するその他の塩基性、腐食性金属(例:Li、Be、Mg、K、Ca、Rb、Sr、CsまたはBaなど)も除去することができる。
【0039】
また、前記触媒としてNaOCHなどの塩基性触媒を用いると、前記過程で放出された水素イオンが前記反応生成物に残留する触媒とイオン交換反応してメタノールを形成することもできる。メタノールは、以後、生成物ストリームから分離されてから再利用され、反応過程に原料と共に投入されることもできる。なぜなら、前述した塩基性触媒は、メタノールに溶解させた溶液形態で供給されることもできるからである。メタノールを生成する過程は、次のとおりである。
【化3】
【0040】
前記生成物ストリームに投入する吸着剤の量もまた適切に調節することができる。例えば、本発明は、前記吸着段階において、前記原料対比0.5重量%~20重量%の吸着剤を投入することができる。前記吸着剤の含有量は、他の具現例において、1重量%~10重量%範囲、または1重量%~5重量%範囲内であってもよい。
【0041】
本発明の第1具現例によるカーボネートの製造方法は、吸着剤除去段階において、前記触媒と吸着した吸着剤を除去し、吸着剤を除去した反応生成物ストリームを製造する。前記触媒と吸着した吸着剤は、前記反応生成物ストリームにて固体として存在するため、後工程で不良を引き起こし得るからである。これは、後述する本発明の第2具現例による方法との相異点でもある。すなわち、本発明において、前記触媒と吸着させた吸着剤を含む生成物ストリームを精製する前に、前記生成物ストリームから触媒と吸着させた吸着剤は除去しなければならない。
【0042】
一具現例において、本発明は、前記吸着剤除去段階において、前記触媒と吸着した吸着剤を濾過(filtering)により除去することができる。適切な気孔の大きさを有するフィルターに前記反応生成物を適切に通過させると、前記吸着剤が触媒と吸着して、固体状態で存在する。したがって、前記生成物ストリームから触媒とそれを除去するために投入した吸着剤を除去することができる。
【0043】
本発明の第1具現例によるカーボネートの製造方法は、生成物分離段階において、前記吸着剤を除去した反応生成物ストリームからエチルメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートを分離する。
【0044】
本発明にて使用する化学反応の生成物のうち、目的生成物は、カーボネート化合物である。現在は、DECを二次電池電解液用溶媒として用いるが、上述したように、EMCに対する需要も相当なものである。したがって、本発明では、事業的重要度によって前記生成物ストリームが含むカーボネーの中から特定化合物(DECまたはEMC)を目的生成物として分離する工程を行うことができる。
【0045】
一具現例において、本発明は、前記生成物分離段階において、フラッシュドラムで前記吸着剤を除去した反応生成物ストリームからジエチルカーボネートまたはエチルメチルカーボネートを分離することができる。前記生成物ストリームから触媒と吸着剤を大幅に除去したからである。すなわち、本発明では、このような分離工程をさらなる精製工程なしに行うことができる。言い換えると、本発明では、上記の分離工程を簡単な装備(例:フラッシュドラム)でも行うことができるため、別途の精製装備が不要である。
【0046】
本発明の第1具現例による方法は、前記反応段階後および前記吸着段階前に、前記反応生成物ストリームを濾過する予備触媒除去段階と、を追加で含むことができる。すなわち、前記反応生成物が含む触媒を吸着剤で除去する前にフィルターなどを用いて前記反応生成物から触媒を相当量を除去することができる。本発明では、吸着剤を解離した状態の触媒陽イオンを固体化するために主に用いる。したがって、既に固体状態で存在する触媒を予め除去しておくと吸着剤の適用による触媒除去効率をさらに向上させることができる。
【0047】
本発明の第1具現例による方法は、前記段階以外にもカーボネートの製造工程とこれに用いられた触媒を除去するために使用する工程において必要であるとして知られたその他の段階を全部含むことができる。
【0048】
次は、本発明の第2具現例について説明したものである。
【0049】
<第2具現例>
本発明の第2具現例は、少なくとも3段階を含む。本発明の第2具現例による方法は、吸着塔を用いることを主要内容とする。図2は、本発明の第2具現例による方法の進行過程の模式図である。本発明の第2具現例は、反応段階、吸着段階、および生成物分離段階を少なくとも含む。
【0050】
本発明の第2具現例によるカーボネートの製造方法は、反応段階において、ジメチルカーボネートおよびエタノールを含む原料を触媒の存在下で反応させて、触媒、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメタノールを含む反応生成物ストリームを製造する。
【0051】
当該段階は、前述した第1具現例にて述べた内容と同様の方式で進める。したがって、前記第1具現例の反応段階に対する内容は、第2具現例の反応段階にも適用することができる。
【0052】
第2具現例において、前記原料は、ジメチルカーボネート(DMC)とエタノール(EtOH)を0.1~10範囲内の重量比(EtOH/DMC)で含むことができる。
【0053】
したがって、本発明の第2具現例においても前記反応が起こる反応器として連続フロー式反応器を用いることができる。また、前記反応器の大きさに関連した事項は、本発明では、特に制限されるものではない。本発明では、反応器の大きさを前記反応の速度と、目的生成物の収率および/または選択性、並びに反応物の転化率などを総合的に考慮して決定することができる。
【0054】
本発明の第2具現例においても、第1具現例と同様に前記反応を触媒の存在下で進める。したがって、触媒に関連した事項もまた前記第1具現例にて述べた内容をそのまま適用することができる。また、本発明の第2具現例もまた第1具現例のようにこのような触媒の適用に応じて発生する問題を解決しようとするものである。
【0055】
本発明の第2具現例によるカーボネートの製造方法は、吸着段階の前記反応生成物ストリームを、酸性吸着剤を含む吸着塔へ供給し、前記触媒と吸着剤の吸着を誘導する。この内容は、第1具現例と異なる部分がある。
【0056】
まず、第2具現例にて用いられた触媒自体に関する事項は、第1具現例を説明しながら述べた触媒を適用することができる。すなわち、第2具現例の吸着段階では、前記反応生成物ストリームが酸性吸着剤と接触できるようにして、前記触媒と吸着剤の吸着を誘導する。
【0057】
具体的には、前記吸着段階において、吸着剤は、前記触媒の金属陽イオンと前記吸着剤の水素イオンのイオン交換反応により前記触媒と吸着することができる。ここで、酸性吸着剤とは、前記吸着剤を水に解離すると水素イオンまたは金属陽イオンなどを放出する金属塩などを称する場合がある。したがって、第2具現例も前述した吸着剤の吸着メカニズムをそのまま適用することができる。
【0058】
また、前記吸着剤は、アルミニウム系吸着剤である。アルミニウム系吸着剤は、分子構造内のアルミニウムを少なくとも含むことを意味する。例えば、前記吸着剤は、アルミニウムシリケート(Si-Al)またはベーマイト(γ-AlO(OH))であってもよい。
【0059】
また、第2具現例にて適用する吸着剤は、アルミニウム系吸着剤であると同時にその形態が特定の形態を有しなければならない。具体的には、本発明の第2具現例において、前記吸着段階に適用する吸着剤は、ビーズ状のアルミニウム系吸着剤である。ビーズ状ではなく、例えば、押出(extrude)形態または粉末形態などの吸着剤を適用すると、たとえその成分がアルミニウム系であり、酸性である吸着剤としても本発明にて目的とする触媒除去効率を達成することができる。
【0060】
第1具現例とは異なり、第2具現例では、前記生成物ストリームを、吸着剤を含む吸着塔へ供給し、前記触媒と吸着剤の吸着を誘導する。具体的には、前記吸着剤は、前記吸着塔を充填している。さらに具体的には、前記吸着剤は、前記吸着塔内で固定した状態を有している。したがって、前記生成物ストリームが前記吸着塔を通過すると、触媒と吸着剤の吸着の結果、吸着塔内に触媒が留まり、触媒を除外(若しくは少量の触媒を含む)した生成物ストリームが前記吸着塔から流出される。
【0061】
吸着塔を充電する吸着剤の量もまた適切に調節することができる。一具現例において、前記吸着段階は、前記原料100重量部対比0.5重量部~100重量部範囲内の含有量の吸着剤を含む吸着塔に前記反応生成物ストリームを供給するものであってもよい。
【0062】
本発明の第2具現例によるカーボネートの製造方法は、前記触媒と吸着した吸着剤を除去し、吸着剤を除去した反応生成物ストリームを製造する、吸着剤除去段階と、を含まない。前記触媒と吸着した吸着剤は、前記反応生成物ストリームにて固体として存在するため、後工程において不良を引き起こすことができる。しかし、本具現例では、前記吸着剤が吸着塔内で固定されているため、このような問題は発生する可能性がある。このことは前述した本発明の第1具現例による方法との相異点でもある。
【0063】
本発明の第2具現例によるカーボネートの製造方法は、前記吸着剤を除去した反応生成物ストリームからエチルメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートを分離する、生成物分離段階、を含む。
【0064】
当該段階は、前述した第1具現例にて述べた内容と同様の方式で進める。したがって、前記第1具現例の生成物分離段階に対する内容は、第2具現例の生成物分離段階、にも適用することができる。
【0065】
したがって、第2具現例は、前記生成物分離段階において、フラッシュドラムで前記吸着剤を除去した反応生成物ストリームからエチルメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートを分離することができる。前記生成物ストリームから触媒と吸着剤を大幅に除去したからである。すなわち、本発明では、このような分離工程を追加の精製工程なしに進めることができる。言い換えると、本発明では、上記の分離工程を簡単な装備(例:フラッシュドラム)でも行うことができるため、別途の精製装備が不要である。
【0066】
本発明の第2具現例によれば、生成物ストリームから吸着により触媒を除去した後、吸着剤を別途に除去する過程が不要である。第2具現例では、触媒除去が完了した生成物ストリームを別途の処理なしに分離工程で投入することができる。したがって、第2具現例は、生成物分離段階と、を前記吸着段階直後に行うことができる。
【0067】
本発明の第2具現例による方法は、前記段階以外にもカーボネートの製造工程とこれに用いた触媒を除去するために使用する工程にて必要なものと知られたその他の段階を全部含むことができる。
【実施例
【0068】
以下、実施例にて本発明の内容をより詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明の範囲を制限するものではない。
【0069】
[実験例1]ガスクロマトグラフィー
反応生成物の定性および定量分析のために、生成物1gを0.1gのm-キシレンと混合した試料に対してガスクロマトグラフィー(GC)を行った。GC装備としては、Young In Chromass社のYL6500GC製品を用いており、ここでGCカラムは、Agilent社のDB-1 30m*0.32mmであり、GC検出器は、FIDであった。製造原料であるDMCの反応転化率は、供給量対比消費量をモル%で計算し、目的物であるEMC反応選択性は、それぞれ生成されるEMCおよびDEC合計含有量対比EMCの含有量モル%で計算した。
【0070】
[実験例2]ICP-AES
Na含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)を用いて測定した。Perkinelmer社のOptima 8300モデルを用いた。流出物サンプル10gと70%の硝酸10mlおよび水10mlを混合し、250℃で2時間加熱した後、分析を行った。
【0071】
[実施例1]
(反応段階)
DMC90.1gおよびEtOH 46.07gを混合した溶液を準備した。前記溶液を塩基性触媒SME0.09g(DMC対比重量比0.1%)と共に500ml体積を有するCSTR反応器に投入した。反応器において反応温度を50℃で維持し、エステル交換反応によりEMC、DECを合成した。1時間経過後、生成物ストリームをGCで分析した。DMC転化率54%、EMC選択性82%、DEC選択性18%の結果を得た。反応生成物中のNa含有量を把握するために、ICP-AES分析を行った。反応生成物中のNa含有量は247.6mg/Lであった。
【0072】
(予備触媒除去段階)
気孔の大きさ1μmのFilter paperを活用し、常温、減圧条件で反応生成物を濾過した。濾液中のNa含有量は、70.6mg/Lであった。
【0073】
(吸着段階)
次いでNaを除去するために、さらに吸着工程を行った。市販の吸着剤(Powder type Aluminum Silicate、Kyowaad社)5gを濾過した反応生成物(Na含有)100gに添加した後、常温で30分間攪拌した。
【0074】
(吸着剤除去段階)
気孔の大きさ1μmのPTFE材質Syringe Filterで吸着剤を除去した。その次にICP-AES分析により濾過溶液中のNa含有量が0.45mg/Lであることが確認された。
【0075】
[実施例2]
吸着剤として市販の吸着剤(Powder type Boehmite、Osangjaiel社)を適用したことを除き、実施例1と同様の方法により触媒を除去した。ICP-AES分析により最終濾過溶液中のNa含有量が1.8mg/Lであることが確認された。
【0076】
[比較例1]
吸着剤として市販の吸着剤(Powder type Silica gel、Merck社)を適用したことを除き、実施例1と同様の方法により触媒を除去した。ICP-AES分析により最終濾過溶液中のNa含有量が4.1mg/Lであることが確認された。
【0077】
[比較例2]
実施例1と同様の方法にて行い、さらなる工程を一切行わなかった。その結果、ICP-AES分析により最終溶液中のNa含有量が247.6mg/Lであることが確認された。
【0078】
[比較例3]
実施例1と同様の方法にて行うが、吸着段階および吸着剤除去段階を行わなかった。その結果、ICP-AES分析により最終溶液中のNa含有量が70.6mg/Lであることが確認された。
【0079】
[比較例4]
実施例1と同様の方法にて行うが、吸着段階および吸着剤除去段階を行わず、予備触媒除去段階にて気孔の大きさ0.45μmPTFE材質Syringe Filterを用いて触媒を除去した。その結果、ICP-AES分析により最終溶液中のNa含有量が65.0mg/Lであることが確認された。
【0080】
[実施例3]
(反応段階)
DMC90.1gおよびEtOH46.07gを混合した溶液を準備した。前記溶液を塩基性触媒SME0.045g(DMC対比重量比0.05%)と共に500ml体積を有する反応器に投入した。反応器で反応温度を50℃で維持し、エステル交換反応によりEMC、DECを合成した。1時間経過後、生成物ストリームをGCで分析した。DMC転化率54%、EMC選択性82%、DEC選択性18%の結果が得られた。反応生成物中のNa含有量を把握するために、ICP-AES分析を行った。反応生成物中のNa含有量は、130.3mg/Lであった。
【0081】
(吸着段階)
前記反応生成物300gを原料として実験を行った。吸着剤として300℃で8時間焼成し、有機バインダーを除去したBoehmite beadを用意した。石英管に吸着剤12gを充填した。600g/hrの原料流量、50hr-1のWHSV(Weight Hour Space Velocity)、常温条件下、前記原料を石英管にて6時間循環させた。その後、ICP-AES分析により吸着タワー(石英管)を通過した濾液中のNa含有量が14.1mg/Lであることが確認された。
【0082】
[実施例4]
吸着剤として300℃で8時間焼成し、有機バインダーを除去したSi-Al beadを用いたことを除き、実施例3と同様の方法により触媒を除去した。ICP-AES分析により吸着タワー(石英管)を通過した濾液中のNa含有量が20.7mg/Lであることが確認された。
【0083】
[比較例5]
吸着剤として300℃で8時間焼成し、有機バインダーを除去したBoehmite Extrudateを用いたことを除き、実施例3と同様の方法により触媒を除去した。ICP-AES分析により吸着タワー(石英管)を通過した濾液中のNa含有量が2.41mg/Lであることが確認された。
【0084】
[比較例6]
(予備触媒除去段階)
実施例3の反応段階生成物を、気孔の大きさ1μmのFilter paperを活用し、常温、減圧条件で反応生成物を濾過した。ICP-AES分析を行い、濾液中のNa含有量は、77.2mg/Lであった。当該反応生成物300gを吸着段階に適用した。
【0085】
(吸着段階)
吸着剤としてSilica gel W127を準備した。石英管に吸着剤12gを充填した。600g/hrの原料流量、50hr-1のWHSV(Weight Hour Space Velocity)、常温条件下、前記原料を石英管にて6時間循環させた。その後、ICP-AES分析により吸着タワー(石英管)を通過した濾液中のNa含有量が44.7mg/Lであることが確認された。
【0086】
[比較例7]
比較例6において、吸着剤として180℃で15時間前処理し、水分を完全に除去したSilica gel B127、Beadを用いたことを除き、比較例6と同様の方法により触媒を除去した。ICP-AES分析により吸着 タワー(石英管)を通過した濾液中のNa含有量が29.4mg/Lであることが確認された。
【0087】
[比較例8]
比較例7と同様の方式により触媒を除去するが、気孔の大きさ1μmのFilter paperで濾過する過程を行わなかった。ICP-AES分析により吸着タワー(石英管)を通過した濾液中のNa含有量が68.7mg/Lであることが確認された。
【0088】
実施例1~実施例4および比較例1~8の結果を、次の表1および表2に要約した。
【0089】
【表1】
【0090】
表1に記載した実施例1~実施例2および比較例1~比較例4は、本発明の第1具現例に対するものである。表1では、本発明の第1具現例のように特定の種類の吸着剤を用いることによって、触媒を高効率で除去することができることを知ることができる。
【0091】
【表2】
【0092】
図3は、本発明の比較例7(左)および実施例3(右)における反応生成物に吸着剤を投入したときの写真である。具体的には、実施例3および比較例7のそれぞれにて石英管に吸着剤を投入することとは別途に、各反応の反応生成物の一部をビーカーで取得し、そのビーカー内に実施例3および比較例7にて適用する吸着剤を投与したときの写真である。図3から確認されるように、比較例7のシリカ系ビーズ吸着剤は、反応生成物中のアルコール系溶媒により割れた。その反面、実施例3のアルミナ系ビーズ吸着剤は、反応生成物中のエタノールによって割れなかった。
【0093】
表2に記載した実施例3~実施例4および比較例5~比較例8は、本発明の第2具現例に対するものである。表2では、本発明の第2具現例のように特定の種類の吸着剤を適用した吸着塔を使用することによって触媒を高効率で、粒子割れ現像なく除去することができることを知ることができる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】