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特表2024-538420反射防止光学コーティング及びそれを形成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】反射防止光学コーティング及びそれを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/115 20150101AFI20241010BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
G02B1/115
G02B3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530534
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 US2022049359
(87)【国際公開番号】W WO2023096747
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】63/282,467
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】ファン ミン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム フン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジュエ
【テーマコード(参考)】
2K009
【Fターム(参考)】
2K009AA06
2K009AA07
2K009AA09
2K009CC03
2K009CC06
2K009DD06
2K009DD09
(57)【要約】
本開示の少なくとも1つの特色によれば、光学素子のフィルムを形成する方法は、湾曲した表面を画定する実質的に透明なレンズを反応器チャンバ内に位置付けるステップと、第1の前駆体がレンズの湾曲した表面上に堆積させられるように、ランタン又はガドリニウムの一方を含む第1の前駆体にレンズを曝露するステップと、レンズの湾曲した表面上に存在する第1の前駆体が第1の酸化剤と反応して、フィルムの高屈折率層を形成するように、湾曲した表面上の第1の前駆体を第1の酸化剤に曝露するステップと、第2の前駆体が高屈折率層上に堆積させられるように、高屈折率層を第2の前駆体に曝露するステップと、高屈折率層上に存在する第2の前駆体が第2の酸化剤と反応して、フィルムの低屈折率層を形成するように、高屈折率層上の第2の前駆体を第2の酸化剤に曝露するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した表面を画定する光学的に透明なレンズ、及び
湾曲した表面上に位置付けられているフィルム
を含む光学素子であって、フィルムが、
湾曲した表面上に位置付けられている酸化ハフニウム(HfO2)の第1の層、
第1の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第2の層、及び
第2の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第3の層
を含む、光学素子。
【請求項2】
フィルムが、約60nm~70nmの厚さを有している、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
酸化ハフニウムの第1の層が、約1nm~約8nmの厚さを有している、請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
フッ化アルミニウムの第2の層が、約50nm~約60nmの厚さを有している、請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
二酸化ケイ素の第3の層が、約1nm~約2nmの厚さを有している、請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
フィルムのモデル化反射率が、256nm~276nmの波長で垂直入射角(90°)にわたって0.2%未満である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
湾曲した表面を画定する光学的に透明なレンズ、及び
湾曲した表面上に位置付けられているフィルム
を含む光学素子であって、フィルムが、
湾曲した表面上に位置付けられている酸化アルミニウム(Al23)の第1の層、
第1の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第2の層、及び
第2の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第3の層
を含む、光学素子。
【請求項8】
フィルムが、約60nm~70nmの厚さを有している、請求項7に記載の光学素子。
【請求項9】
酸化アルミニウムの第1の層が、約15nm~約20nmの厚さを有している、請求項7に記載の光学素子。
【請求項10】
フッ化アルミニウムの第2の層が、約35nm~約40nmの厚さを有している、請求項7に記載の光学素子。
【請求項11】
二酸化ケイ素の第3の層が、約1nm~約2nmの厚さを有している、請求項7に記載の光学素子。
【請求項12】
フィルムのモデル化反射率が、256nm~276nmの波長で垂直入射角(90°)にわたって0.2%未満である、請求項7に記載の光学素子。
【請求項13】
湾曲した表面を画定する光学的に透明なレンズ、及び
湾曲した表面上に位置付けられているフィルム、
を含む光学素子であって、フィルムが、
湾曲した表面上に位置付けられているフッ化ランタン(LaF3)の第1の層、
第1の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第2の層、及び
第2の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第3の層
を含む、光学素子。
【請求項14】
フィルムが、約60nm~70nmの厚さを有している、請求項13に記載の光学素子。
【請求項15】
酸化アルミニウムの第1の層が、約25nm~約28nmの厚さを有している、請求項13に記載の光学素子。
【請求項16】
フッ化アルミニウムの第2の層が、約30nm~約32nmの厚さを有している、請求項13に記載の光学素子。
【請求項17】
二酸化ケイ素の第3の層が、約1nm~約2nmの厚さを有している、請求項13に記載の光学素子。
【請求項18】
フィルムのモデル化反射率が、256nm~276nmの波長で垂直入射角(90°)にわたって0.3%未満である、請求項13に記載の光学素子。
【請求項19】
湾曲した表面を画定する光学的に透明なレンズ、及び
湾曲した表面上に位置付けられているフィルム、
を含む光学素子であって、フィルムが、
湾曲した表面上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第1の層、
第1の層上に位置付けられているフッ化ランタン(LaF3)の第2の層、
第2の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第3の層、及び
第3の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第4の層
を含む、光学素子。
【請求項20】
フィルムが、約60nm~70nmの厚さを有している、請求項19に記載の光学素子。
【請求項21】
フッ化アルミニウムの第1の層が、約1nm~約2nmの厚さを有している、請求項19に記載の光学素子。
【請求項22】
フッ化ランタンの第2の層が、約25nm~約28nmの厚さを有している、請求項19に記載の光学素子。
【請求項23】
フッ化アルミニウムの第3の層が、約30nm~約32nmの厚さを有している、請求項19に記載の光学素子。
【請求項24】
二酸化ケイ素の第4の層が、約1nm~約2nmの厚さを有している、請求項19に記載の光学素子。
【請求項25】
フィルムのモデル化反射率が、256nm~276nmの波長で垂直入射角(90°)にわたって0.3%未満である、請求項19に記載の光学素子。
【請求項26】
湾曲した表面を画定する光学的に透明なレンズ、及び
湾曲した表面上に位置付けられているフィルム
を含む光学素子であって、フィルムが、
湾曲した表面上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第1の層、
第1の層上に位置付けられているフッ化ランタン(LaF3)の第2の層、
第2の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第3の層、
第3の層上に位置付けられているフッ化ランタン(LaF3)の第4の層、
第4の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第5の層、及び
第5の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第6の層
を含む、光学素子。
【請求項27】
フィルムが、約60nm~70nmの厚さを有している、請求項26に記載の光学素子。
【請求項28】
フッ化アルミニウムの第1の層が、約1nm~約2nmの厚さを有している、請求項26に記載の光学素子。
【請求項29】
フッ化ランタンの第2の層が、約10nm~約15nmの厚さを有している、請求項26に記載の光学素子。
【請求項30】
フッ化アルミニウムの第3の層が、約30nm~約32nmの厚さを有している、請求項26に記載の光学素子。
【請求項31】
フッ化ランタンの第4の層が、約1nm~約2nmの厚さを有している、請求項26に記載の光学素子。
【請求項32】
フッ化アルミニウムの第5の層が、約1nm~約2nmの厚さを有している、請求項26に記載の光学素子。
【請求項33】
二酸化ケイ素の第6の層が、約1nm~約2nmの厚さを有している、請求項26に記載の光学素子。
【請求項34】
フィルムのモデル化反射率が、256nm~276nmの波長で垂直入射角(90°)にわたって0.3%未満である、請求項26に記載の光学素子。
【請求項35】
光学素子のフィルムを形成する方法であって、
湾曲した表面を画定する実質的に透明なレンズを反応器チャンバ内に位置付けるステップと、
第1の前駆体がレンズの湾曲した表面上に堆積させられるように、ランタン又はガドリニウムの一方を含む第1の前駆体にレンズを曝露するステップと、
レンズの湾曲した表面上に存在する第1の前駆体が第1の酸化剤と反応して、フィルムの高屈折率層を形成するように、湾曲した表面上の第1の前駆体を第1の酸化剤に曝露するステップと、
第2の前駆体が高屈折率層上に堆積させられるように、高屈折率層を第2の前駆体に曝露するステップと、
高屈折率層上に存在する第2の前駆体が第2の酸化剤と反応して、フィルムの低屈折率層を形成するように、高屈折率層上の第2の前駆体を第2の酸化剤に曝露するステップと
を含む、方法。
【請求項36】
ランタンを含有する前駆体ガスが、トリス(N,N’-ジイソプロピルホルムアミジネート)ランタンLa(iPr2-fmd)3又はLa(iPrCp)2(iPr-amd)の一方である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ガドリニウムを含有する前駆体ガスが、ガドリニウムトリス(N,N’-N,N’ジイソプロピルアセトアミジネート)Gd(iPr2-Me-amd)3又はGd(iPrCp)2(iPr-amd)の一方である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
実質的に透明なレンズを約50℃~約350℃の温度に加熱するステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
湾曲した表面上の第1の前駆体を第1の酸化剤に曝露するステップが、湾曲した表面上の第1の前駆体を水蒸気に曝露することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
実質的に透明なレンズを反応器チャンバ内に位置付けるステップが、実質的に透明なレンズを反応器チャンバ内に位置付けることをさらに含み、実質的に透明なレンズが、約0.5~約1.0のR/数によって与えられた勾配度を含む、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月23日出願の米国仮出願第63/282,467号の優先権の利益を主張するものであり、その内容に依拠し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本開示は、一般に、光学素子、より具体的には反射防止光学コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
深紫外線(DUV)又は広帯域スペクトル波長における光学システムのための高い開口数(NA)のレンズは、多くの要素を必要とする場合があり、その一部は勾配が非常に大きい表面曲率を有することがある。勾配が大きい表面は、フィルムを湾曲した表面に適用すると不均一な厚さのフィルムなどを生じ得るので、広角度範囲及び/又は広範なスペクトルバンド幅にわたる高性能コーティングには困難を生じる。レンズ上の従来のフィルムは、見通し堆積プロセスである物理蒸着法(PVD)を介して製造され得る。PVDプロセスによるコーティング材料は、レンズ表面に対して非常に大きい角度に到達するので、コーティングは、レンズ表面の中心と比較して、端部に向かって実質的に異なり得る厚さ及び機械特性を示すことがある。コーティングの均一性が低いと、レンズの端部で高いスペクトル反射及び偏光分離が生じる。この問題に対処するために、いくつかの技術的手法、例えばティルティング及びマスキングが探索されてきた。ティルティング及びマスキング手法は、共に、勾配が大きい表面上の一部のコーティングの均一性を改善することができるが、中心に向かってコーティングの充填密度が低下して、中心における散乱損失が増大する。したがって、新しい光学フィルム及びそれらを作製する方法が有利であり得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示の少なくとも1つの特色によれば、光学素子は、湾曲した表面を画定する光学的に透明なレンズ、及び湾曲した表面上に位置付けられているフィルムを含み、フィルムは、湾曲した表面上に位置付けられている酸化ハフニウム(HfO2)の第1の層、第1の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第2の層、及び第2の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第3の層を含む。
本開示の少なくとも1つの特色によれば、光学素子は、湾曲した表面を画定する光学的に透明なレンズ、及び湾曲した表面上に位置付けられているフィルムを含み、フィルムは、湾曲した表面上に位置付けられている酸化アルミニウム(Al23)の第1の層、第1の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第2の層、及び第2の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第3の層を含む。
【0004】
本開示の少なくとも1つの特色によれば、光学素子は、湾曲した表面を画定する光学的に透明なレンズ、及び湾曲した表面上に位置付けられているフィルムを含み、フィルムは、湾曲した表面上に位置付けられているフッ化ランタン(LaF3)の第1の層、第1の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第2の層、及び第2の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第3の層を含む。
本開示の少なくとも1つの特色によれば、光学素子は、湾曲した表面を画定する光学的に透明なレンズ、及び湾曲した表面上に位置付けられているフィルムを含み、フィルムは、湾曲した表面上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第1の層、第1の層上に位置付けられているフッ化ランタン(LaF3)の第2の層、第2の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第3の層、及び第3の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第4の層を含む。
本開示の少なくとも1つの特色によれば、光学素子は、湾曲した表面を画定する光学的に透明なレンズ、及び湾曲した表面上に位置付けられているフィルムを含み、フィルムは、湾曲した表面上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第1の層、第1の層上に位置付けられているフッ化ランタン(LaF3)の第2の層、第2の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第3の層、第3の層上に位置付けられているフッ化ランタン(LaF3)の第4の層、第4の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第5の層、及びの第5の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第6の層を含む。
【0005】
本開示の少なくとも1つの特色によれば、光学素子のフィルムを形成する方法は、湾曲した表面を画定する実質的に透明なレンズを反応器チャンバ内に位置付けるステップと、第1の前駆体がレンズの湾曲した表面上に堆積させられるように、ランタン又はガドリニウムの一方を含む第1の前駆体にレンズを曝露するステップと、レンズの湾曲した表面上に存在する第1の前駆体が第1の酸化剤と反応して、フィルムの高屈折率層を形成するように、湾曲した表面上の第1の前駆体を第1の酸化剤に曝露するステップと、第2の前駆体が高屈折率層上に堆積させられるように、高屈折率層を第2の前駆体に曝露するステップと、高屈折率層上に存在する第2の前駆体が第2の酸化剤と反応して、フィルムの低屈折率層を形成するように、高屈折率層上の第2の前駆体を第2の酸化剤に曝露するステップとを含む。
本開示のこれら及び他の特色、利点、及び目的は、以下の明細書、特許請求の範囲、及び添付の図面を参照することによって当業者によってさらに理解され、認識されよう。
以下は、添付の図面における図の説明である。図は、必ずしも一定の縮尺ではなく、図のある特定の特色及びある特定の見え方は、明確且つ簡潔にするために縮尺又は概略が誇張されて示されていることがある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】少なくとも1つの例による、光学素子の概略図である。
図1B】少なくとも1つの例による、光学素子の概略図である。
図2】少なくとも1つの例による、図1A~1Bに図示されている光学素子上に堆積させられたフィルムの波長(nm)に対する反射率(%)を図示するプロットである。
図3】少なくとも1つの例による、図1A~1Bに図示されている光学素子上に堆積させられたフィルムの波長(nm)に対する反射率(%)を図示するプロットである。
図4】少なくとも1つの例による、図1A~1Bに図示されている光学素子上に堆積させられたフィルムの波長(nm)に対する反射率(%)を図示するプロットである。
図5】少なくとも1つの例による、図1A~1Bに図示されている光学素子上に堆積させられたフィルムの波長(nm)に対する反射率(%)を図示するプロットである。
図6】少なくとも1つの例による、光学素子を形成する例示的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のさらなる特色及び利点は、以下の詳細な説明に記載され、当業者には本説明から明らかになるか、又は特許請求の範囲及び添付の図面と一緒に以下の説明に記載される通りに本発明を実践することによって認識されよう。
【0008】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の一覧において使用される場合、列挙された項目のいずれか1つを、それ自体で用いることができ、又は列挙された項目のうちの2つ以上のあらゆる組合せを用いることができることを意味する。例えば、組成物が構成成分A、B、及び/又はCを含有するものとして記載される場合、その組成物は、A単独、B単独、C単独、AとBの組合せ、AとCの組合せ、BとCの組合せ、又はAとBとCの組合せを含有することができる。
本文書では、関係を示す用語、例えば第1及び第2、上部及び底部などは、ある実体又は動作を別の実体又は動作と区別するためだけに、そのような実体又は動作間のあらゆる実際のそのような関係又は順序を必ずしも必要とすることなく又は暗示することなく使用される。
記載される本開示の構成及び他の構成成分は、いかなる特定の材料にも限定されないことが、当業者によって理解されよう。本明細書で開示される本開示の他の例示的な実施形態は、本明細書で別段の記載がない限り、多種多様な材料から形成され得る。
【0009】
本開示の目的では、「連結されている」という用語(連結する、連結、連結されたなどの、その形態のすべて)は、一般に、2つの構成成分(電気的又は機械的)を互いに直接的又は間接的に結合することを意味する。そのような結合は、固定された性質のものでも、移動可能な性質のものでもよい。そのような結合は、2つの構成成分(電気的又は機械的)と、互いに又はその2つの構成成分と共に1つの単一体として一体に形成されるあらゆる追加の中間部材とを用いて達成され得る。そのような結合は、別段述べられない限り、永久的な性質のものであっても、除去可能又は解除可能な性質のものであってもよい。
【0010】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、及び他の分量及び特徴が、厳密なものでなく、厳密である必要もないが、所望に応じて許容差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、及び当業者に公知の他の因子を反映して、近似し得る且つ/又はより大きい若しくはより小さいものであり得ることを意味する。「約」という用語が、ある範囲の値又は端点を記載するのに使用される場合、本開示は、言及される具体的な値又は端点を含むと理解されるべきである。本明細書におけるある範囲の数値又は端点に、「約」が記述されているかどうかに関わらず、ある範囲の数値又は端点は、「約」によって修正された実施形態及び「約」によって修正されていない実施形態の、2つの実施形態を含むことが意図される。さらに、複数範囲のそれぞれの端点は、他方の端点と関連していようと他方の端点とは独立であろうと、有意であることを理解されよう。
【0011】
「実質的な」、「実質的に」という用語及びそれらの変形は、本明細書で使用される場合、記載された特色が、ある値又は説明と等しいか、又はほぼ等しいことに言及することが意図される。例えば、「実質的に平面の」表面は、平面であるか、又はほぼ平面である表面を示すことが意図される。さらに、「実質的に」は、2つの値が等しいか、又はほぼ等しいことを示すことが意図される。一部の実施形態では、「実質的に」は、互いに約10%以内の値を示し得る。
【0012】
本開示の要素の構成及び配置は、例示的な実施形態に示される通り、単に説明的なものであることに留意することも重要である。本発明の技術革新のごくわずかの実施形態が、本開示において詳細に記載されているが、本開示を再検討する当業者は、記述される主題の新規な教示及び利点から大きく逸脱することなく、多くの修正(例えば、種々の要素のサイズ、寸法、構造、形状及び割合、パラメータの値、取付け配置、材料の使用、色、配向の変動など)が可能であることを容易に認識されよう。例えば、一体に形態されたものとして示される要素は、複数の部品から構築されてもよく、又は複数の部品として示される要素は、一体に形成されてもよく、インターフェース操作は、逆転させるか又はそうでなければ変更することができ、システムの構造及び/又は部材又はコネクタ又は他の要素の長さ又は幅は、変更することができ、要素の間に提供される調整位置の性質又は数は、変更することができる。システムの要素及び/又はアセンブリは、十分な強度又は耐久性を提供する多種多様な材料のいずれかから、多種多様な色、質感、及び組合せのいずれかで構築され得ることに留意すべきである。したがって、そのようなすべての修正は、本発明の技術革新の範囲に含まれることが意図される。本発明の技術革新の精神から逸脱することなく、所望の及び他の例示的な実施形態の設計、操作条件、及び配置に、他の置換、修正、変更、及び省略を行うことができる。
【0013】
ここで図1A~1Bを参照すると、光学素子10は、レンズ14及びフィルム18を含む。以下に詳細に説明される通り、フィルム18は、レンズ14に1つ又は複数の特性、例えば、機械特性(例えば、傷つきにくさ(scratch resistance))及び/又は光学特性(例えば、反射防止及び色の中立性)を提供することができる多層構造であり得る。
【0014】
レンズ14は、ガラス、ガラス-セラミック、セラミック材料及び/又はそれらの組合せを含み得る。レンズ14の例示的なガラスベースの例として、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス及び/又はアルカリアルミノホウケイ酸ガラスを挙げることができる。本開示の目的では、「ガラスベースの」という用語は、ガラス、ガラス-セラミック及び/又はセラミック材料を意味し得る。種々の例によれば、レンズ14は、ガラスベースの基材であり得る。レンズ14のガラスベースの例では、レンズ14は、強化され得るか(例えば、アルカリ交換される)、又は強力であり得る(例えば、欠陥を除去するために研磨される)。レンズ14は、実質的にクリアであってもよく、透明であってもよく、且つ/又は光散乱がなくてもよい。例えば、レンズ14は、約180nm~約700nmの波長範囲にわたる1つ又は複数の波長又は波長域において約50%~約100%の透過度を有することができる。レンズ14のガラスベースの例では、レンズ14は、約266nmの波長で約1.45~約1.55の範囲の屈折率を有することができる。さらに、光学素子10のレンズ14は、サファイア及び/又はポリマー材料を含み得る。好適なポリマーの例として、ポリスチレン(PS)(スチレンコポリマー及びブレンドを含む)、ポリカーボネート(PC)(コポリマー及びブレンドを含む)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートコポリマーを含むコポリマー及びブレンドを含む)、ポリオレフィン(PO)及び環式ポリオレフィン(環式PO)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むアクリルポリマー(コポリマー及びブレンドを含む)、熱可塑性物質ウレタン(TPU)、ポリエーテルイミド(PEI)、並びにこれらのポリマーの互いのブレンドを含む熱可塑性物質が挙げられるが、これらに限定されない。他の例示的なポリマーとして、エポキシ、スチレン、フェノール、メラミン、及びシリコーン樹脂が挙げられる。
【0015】
レンズ14は、1つ又は複数の湾曲した表面22を画定し得る。湾曲した表面22は、レンズ14が一般に湾曲した形状を有するように画定するのを助ける。湾曲した表面22は、レンズ14が一般に凹面、凸面、両凸、平凸、正メニスカス、負メニスカス、平凹、両凹及び/又はそれらの組合せを有するように形成することができる。湾曲した表面22は、R/数の値として表される勾配度(steepness)、又は「速度」を有することができる。R/数の値は、レンズ14の曲率半径(R)をクリアアパーチャによって割ったものとして計算することができる。本開示の目的では、曲率半径は、レンズ14の頂点と曲率中心との間の距離として定義され得る。本開示の目的では、クリアアパーチャは、光が通過し得るレンズ14の直径又はサイズとして定義される。クリアアパーチャは、本明細書では、クリアアパーチャの中心(例えば、約0.0)からクリアアパーチャの端部(約1.0)までの距離を示す分率又は小数点として表され得る。例えば、クリアアパーチャの中心とクリアアパーチャの端部との間の中間点は、約0.5である。
【0016】
湾曲した表面22のR/数は、約0.5~約1.0、又は約0.6~約1.0、又は約0.7~約1.0、又は約0.8~約1.0、又は約0.9~約1.0であり得る。例えば、R/数の値は、約0.5、約0.55、約0.6、約0.65、約0.7、約0.75、約0.8、約0.85、約0.9、約0.95、約0.99、又はそれらの間のありとあらゆる値及び範囲であり得る。種々の例によれば、湾曲した表面22は、約0.5以上のR/数の値を有することができる。レンズ14の湾曲した表面22の1つ又は複数は、本明細書で提供される教示から逸脱することなく、1よりも大きい(例えば、2以上、5以上、10以上、又は100以上の)R/数の値を有することができると考えられることを理解されよう。
【0017】
図1A~1Bをさらに参照すると、フィルム18は、レンズ14の湾曲した表面22上に直接位置付けられたものとして図示されているが、フィルム18とレンズ14との間に、1つ又は複数の層、コーティング及び/又はフィルムが位置付けられてもよいことを理解されよう。例えば、フィルム18とレンズ14との間に、ひび割れ軽減(crack mitigation)層、接着層、導電層、電気絶縁層、光学層、反射防止層、保護層、傷つきにくい層、高硬度層、他のタイプの層及び/又はそれらの組合せが位置付けられ得る。さらに、フィルム18は、レンズ14の1つよりも多い表面上に位置付けられ得る。例えば、フィルム18は、本明細書で提供される教示から逸脱することなく、レンズ14の複数の湾曲した表面22にわたって位置付けることができ、且つ/又は平坦表面上に伸びることができる。
【0018】
「フィルム」という用語は、光学素子10に組み込まれるフィルム18及び/又は他のフィルムに適用される場合、別個の堆積プロセス又は連続的堆積プロセスを含む、当技術分野で公知のあらゆる方法によって形成される1つ又は複数の層を含む。そのような層は、互いに直接接触していてもよい。層は、同じ材料又は1種類よりも多い異なる材料から形成することができる。1つ又は複数の代替例では、そのような層は、それらの間に配置された、異なる材料の介在する層を有することができる。1つ又は複数の例では、フィルム18は、1つ若しくは複数の連続的な中断されていない層、及び/又は1つ若しくは複数の不連続な中断された層(すなわち、互いに隣接して形成された、異なる材料を有する層)を含み得る。
【0019】
フィルム18は、種々の堆積方法、例えば、真空堆積技術、例えば、化学蒸着法(例えば、プラズマ増強化学蒸着法、低圧化学蒸着法、大気圧化学蒸着法、及びプラズマ増強大気圧化学蒸着法)、物理蒸着法(例えば、反応性又は非反応性スパッタリング又はレーザーアブレーション)、熱又は電子ビーム蒸発法及び/又は原子層堆積法を使用して形成することができる。光学フィルム18の1つ又は複数の層は、特定の屈折率範囲又は値を提供するために、ナノポア又は混合材料を含み得る。
フィルム18の厚さは、約60nm~約70nm、又は約62nm~約70nmの範囲であり得る。他の例によれば、フィルム18は、約65nm~約70nmの範囲の厚さを有することができる。前述の値の間のありとあらゆる値及び範囲が企図されることを理解されよう。
【0020】
種々の例によれば、フィルム18又はそのいずれの層の厚さも、以下により詳細に記載される通り、高い均一性を有することができる。例えば、フィルム18及び/又はそのいずれの層の厚さも、フィルム18及び/又は層に沿ったあらゆる2つの点の間で測定される約±0nm~約±100nmの厚さ分散を有することができる。例えば、フィルム18及び/又はそのいずれの層も、約±100nm以下、約±90nm以下、約±80nm以下、約±70nm以下、約±60nm以下、約±50nm以下、約±40nm以下、約±30nm以下、約±20nm以下、約±10nm以下、約±9nm以下、約±8nm以下、約±7nm以下、約±6nm以下、約±5nm以下、約±4nm以下、約±3nm以下、約±2nm以下、約±1nm以下、約±0.5nm以下、約±0.1nm以下、又はそれらの間のありとあらゆる値及び範囲の厚さ分散を有することができる。以下により詳細に説明される通り、フィルム18の高い均一性は、種々のクリアアパーチャの場所にわたって光学素子10の一貫した光学特性を確保するのに有利であり得る。
第1の例示的なフィルム18の組成は、湾曲した表面上に位置付けられている酸化ハフニウム(HfO2)の第1の層、第1の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第2の層、及び第2の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第3の層を含む。酸化ハフニウムの第1の層は、約1nm~約8nmの厚さを有している。フッ化アルミニウムの第2の層は、約50nm~約60nmの厚さを有している。二酸化ケイ素の第3の層は、約1nm~約2nmの厚さを有している。図2は、図1A~1Bに図示される光学素子上に堆積させられた第1の例示的なフィルムの波長(nm)に対する反射率(%)を図示するプロットである。図2は、第1の例示的なフィルムのモデル化反射率が、256nm~276nmの波長で垂直入射角(90°)にわたって0.2%未満であることを示している。
【0021】
第2の例示的なフィルム18の組成は、湾曲した表面上に位置付けられている酸化アルミニウム(Al23)の第1の層、第1の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第2の層、及び第2の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第3の層を含む。酸化アルミニウムの第1の層は、約15nm~約20nmの厚さを有している。フッ化アルミニウムの第2の層は、約35nm~約40nmの厚さを有している。二酸化ケイ素の第3の層は、約1nm~約2nmの厚さを有している。図3は、図1A~1Bに図示される光学素子上に堆積させられた第2の例示的なフィルムの波長(nm)に対する反射率(%)を図示するプロットである。図3は、第2の例示的なフィルムのモデル化反射率が、256nm~276nmの波長で垂直入射角(90°)にわたって0.2%未満であることを示している。
【0022】
第3の例示的なフィルム18の組成は、湾曲した表面上に位置付けられているフッ化ランタン(LaF3)の第1の層、第1の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第2の層、及び第2の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第3の層を含む。酸化アルミニウムの第1の層は、約25nm~約28nmの厚さを有している。フッ化アルミニウムの第2の層は、約30nm~約32nmの厚さを有している。二酸化ケイ素の第3の層は、約1nm~約2nmの厚さを有している。図4は、図1A~1Bに図示される光学素子上に堆積させられた第3の例示的なフィルムの波長(nm)に対する反射率(%)を図示するプロットである。図4は、第3の例示的なフィルムのモデル化反射率が、256nm~276nmの波長で垂直入射角(90°)にわたって0.3%未満であることを示している。
【0023】
第4の例示的なフィルム18の組成は、湾曲した表面上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第1の層、第1の層上に位置付けられているフッ化ランタン(LaF3)の第2の層、第2の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第3の層、第3の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第4の層を含む。フッ化アルミニウムの第1の層は、約1nm~約2nmの厚さを有している。フッ化ランタンの第2の層は、約25nm~約28nmの厚さを有している。二酸化ケイ素の第4の層は、約1nm~約2nmの厚さを有している。図5は、図1A~1Bに図示される光学素子上に堆積させられた第4の例示的なフィルムの波長(nm)に対する反射率(%)を図示するプロットである。図5は、第4の例示的なフィルムのモデル化反射率が、256nm~276nmの波長で垂直入射角(90°)にわたって0.3%未満であることを示している。
【0024】
第5の例示的なフィルム18の組成は、湾曲した表面上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第1の層、第1の層上に位置付けられているフッ化ランタン(LaF3)の第2の層、第2の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第3の層、第3の層上に位置付けられているフッ化ランタン(LaF3)の第4の層、第4の層上に位置付けられているフッ化アルミニウム(AlF3)の第5の層、及び第5の層上に位置付けられている二酸化ケイ素(SiO2)の第6の層を含む。フッ化アルミニウムの第1の層は、約1nm~約2nmの厚さを有している。フッ化ランタンの第2の層は、約10nm~約15nmの厚さを有している。フッ化アルミニウムの第3の層は、約30nm~約32nmの厚さを有している。フッ化ランタンの第4の層は、約1nm~約2nmの厚さを有している。フッ化アルミニウムの第5の層は、約1nm~約2nmの厚さを有している。二酸化ケイ素の第6の層は、約1nm~約2nmの厚さを有している。
【0025】
ここで図6を参照すると、光学素子10を形成する例示的な方法50が図示されている。方法50は、実質的に透明なレンズ14を反応器チャンバ内に位置付けるステップ54で始めることができ、ここで、レンズ14は湾曲した表面22を画定する。種々の例によれば、レンズ14は、約0.5~約1.0のR/数の値によって与えられた勾配度を有することができる。種々の例によれば、反応器は、原子層堆積反応器であり得る。そのような例では、レンズ14は、反応器に入る1つ又は複数の前駆体及び/又は酸化剤が湾曲した表面22と接触するように、反応器内に位置付けることができる。原子層堆積法は、自己制御(self-limiting)表面半反応への基材の逐次的な曝露に基づく薄膜成長技術である。
【0026】
次に、第1の前駆体がレンズ14の湾曲した表面22上に堆積させられるように、第1の前駆体にレンズ14を曝露するステップ58が実施される。いくつかの実施形態では、第1の前駆体は、ランタン含有前駆体、例えば、トリス(N,N’-ジイソプロピルホルムアミジネート)ランタンLa(iPr2-fmd)3若しくはLa(iPrCp)2(iPr-amd)、又はガドリニウム含有前駆体、例えば、ガドリニウムトリス(N,N’-N,N’ジイソプロピルアセトアミジネート(iisopropylacetamidinate))Gd(iPr2-Me-amd)3若しくはGd(iPrCp)2(iPr-amd)である。第1の前駆体は、約0.1秒~約0.6秒、又は約0.1秒~約0.5秒、又は約0.1秒~約0.4秒、又は約0.1秒~約0.3秒、又は約0.1秒~約0.2秒の範囲の時間にわたって湾曲した表面22に曝露され得る。例えば、第1の前駆体は、約0.1秒、約0.2秒、約0.3秒、約0.4秒、約0.5秒、約0.6秒、並びにそれらの間のありとあらゆる値及び範囲にわたってレンズ14の湾曲した表面22に曝露され得る。
【0027】
次に、第1の酸化剤は、レンズの湾曲した表面22上に存在する第1の前駆体が第1の酸化剤と反応して、フィルムの高屈折率層18を形成するように、湾曲した表面22上の第1の前駆体を第1の酸化剤に曝露するステップ62において、反応器に導入され得る。第1の酸化剤には、水蒸気、オゾン、第1の前駆体を酸化することができる他の材料及び/又はそれらの組合せが含まれ得る。第1の酸化剤は、約0.1秒~約0.6秒、又は約0.1秒~約0.5秒、又は約0.1秒~約0.4秒、又は約0.1秒~約0.3秒、又は約0.1秒~約0.2秒の範囲の時間にわたって第1の前駆体に曝露され得る。例えば、第1の酸化剤は、約0.1秒、約0.2秒、約0.3秒、約0.4秒、約0.5秒、約0.6秒、並びにそれらの間のありとあらゆる値及び範囲にわたって第1の前駆体に曝露され得る。ステップ58及び62は、所望の厚さ(例えば、複合層34、第1の層38及び/又は第2の層42の)に達するまで反復され得ることを理解されよう。
【0028】
次に、第2の前駆体が高屈折率層上に堆積させられるように、高屈折率層を第2の前駆体に曝露するステップ66が実施される。第2の前駆体は、約0.1秒~約0.6秒、又は約0.1秒~約0.5秒、又は約0.1秒~約0.4秒、又は約0.1秒~約0.3秒、又は約0.1秒~約0.1秒~約0.2秒の範囲の時間にわたって高屈折率層に曝露され得る。例えば、第2の前駆体は、約0.1秒、約0.2秒、約0.3秒、約0.4秒、約0.5秒、約0.6秒、並びにそれらの間のありとあらゆる値及び範囲にわたってレンズ14の湾曲した表面22に曝露され得る。第2の前駆体には、トリス(ジメチルアミノ)シラン、ビス(ジエチルアミノ)シラン、N-(ジエチルアミノシリル)-N-エチルエタンアミン、他のケイ素含有化合物、低屈折率材料の他の前駆体及び/又はそれらの組合せが含まれ得る。第2の前駆体が所定の時間にわたって高屈折率層に曝露されると、反応器は、約0.5秒、約1秒、約1.5秒、約2秒、約2.5秒、約3秒 約3.5秒、約4秒若しくは約5秒、又はそれよりも長時間にわたってパージされ得る。
【0029】
次に、高屈折率層上に存在する第2の前駆体が第2の酸化剤と反応して、フィルムの低屈折率層18を形成するように、高屈折率層上の第2の前駆体を第2の酸化剤に曝露するステップ70が実施される。種々の例によれば、低屈折率層は、屈折率層30であり得る。第2の酸化剤には、水蒸気、オゾン、第2の前駆体を酸化することができる他の材料及び/又はそれらの組合せが含まれ得る。第2の酸化剤は、約0.1秒~約0.6秒、又は約0.1秒~約0.5秒、又は約0.1秒~約0.4秒、又は約0.1秒~約0.3秒、又は約0.1秒~約0.1秒~約0.2秒の範囲の時間にわたって第2の前駆体に曝露され得る。例えば、第2の酸化剤は、約0.1秒、約0.2秒、約0.3秒、約0.4秒、約0.5秒、約0.6秒、並びにそれらの間のありとあらゆる値及び範囲にわたって第2の前駆体に曝露され得る。
【0030】
種々の例によれば、ステップ54~70は、上昇させられた温度で実施され得る。例えば、ステップ54~70は、約20℃~約400℃、又は約100℃~約400℃、又は約200℃~約300℃の温度で実施され得る。例えば、ステップ54~70は、約20℃、約30℃、約40℃、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約150℃、約200℃、約250℃、約300℃、約350℃、約400℃、又はそれらの間のありとあらゆる範囲及び値の温度で実施され得る。上記で開示されるすべての値及び範囲は、レンズ14及びレンズ14上に形成された層の温度、並びに/又は第1及び/若しくは第2の前駆体及び/若しくは酸化剤が反応基に導入される温度であり得ることを理解されよう。例えば、方法50は、実質的に透明なレンズ14を約50℃~約350℃の温度に加熱するステップを含み得る。
方法50のステップは、特定の順序で記載されているが、方法50は、本明細書で提供される教示から逸脱することなく、追加のステップを含むことも、ステップを省略することもでき、適用できる場合にはあらゆる順序で反復又は実施され得ることを理解されよう。
【0031】
フィルム18を製造するための原子層堆積の使用は、様々な利点を付与し得る。例えば、原子層堆積の使用は、自己制御フィルム成長技術を提供し、この技術は、フィルム18の種々の層の正確な厚さ制御、及びレンズ14の複数表面を同時にコーティングする機会、及び複数のレンズ14を同時にコーティングする能力を可能にする。原子層堆積の使用により、勾配度が高い又は勾配が大きい湾曲表面、例えば、湾曲した表面22を均一にコーティングすることが可能になると同時に、従来の作製プロセスが最小限に抑えられ、又は排除される。原子層堆積プロセスは、反応器内のレンズ14を固定するために使用される工具固定具を簡素化することができるので、従来の物理蒸着プロセスと比較して、レンズ14への機械的損傷のリスクの低減が実現され得る。
【0032】
当業者及び本開示を作製又は使用する者は、本開示の修正を思い付くであろう。したがって、図面に示され、上記で記載される実施形態は、単に説明的な目的のものであり、均等論の原則を含む特許法の原理に従って解釈される通り、以下の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。
記載される本開示の構成及び他の構成成分が、いかなる特定の材料にも限定されないことが、当業者によって理解されよう。本明細書で開示される本開示の他の例示的な実施形態は、本明細書で別段の記載がない限り、多種多様な材料から形成され得る。
【0033】
記載されるいずれのプロセス、又は記載されるプロセスにおけるステップも、開示される他のプロセス又はステップと組み合わせて、本開示の範囲内の構造を形成することができることを理解されよう。本明細書で開示される例示的な構造及びプロセスは、説明的な目的のものであり、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0034】
また、本開示の概念から逸脱することなく前述の構造及び方法に変動及び修正を加えることができると理解されるべきであり、さらに、このような概念は、これらの特許請求の範囲がそれらの言語によって別段明確に述べられない限り、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図されると理解されるべきである。さらに、特許請求の範囲は、以下に記載される通りである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】