(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】二重機能抗原結合分子
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20241010BHJP
C07K 16/32 20060101ALI20241010BHJP
C07K 16/08 20060101ALI20241010BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241010BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241010BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241010BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/32
C07K16/08
C12N15/13
C12N15/63 Z
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546515
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 IL2022051102
(87)【国際公開番号】W WO2023067596
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524149344
【氏名又は名称】トロジャン バイオ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バーコヴィッツ,アナト
(72)【発明者】
【氏名】ディアマント,ノーム シー.
(72)【発明者】
【氏名】アハロニ,アミール
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
抗体またはその抗原結合フラグメントの可変領域中に挿入された少なくとも1個の免疫原性ペプチドを含む抗体またはその抗原結合フラグメントであって、挿入は、抗体または抗原結合フラグメント配列の除去を含む。本発明の抗体または抗原結合フラグメントおよび第2の抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、標的細胞上に過剰発現される抗原に結合できる、二重機能抗原結合分子が、提供される。二重機能抗原結合分子をコードする核酸分子、二重機能抗原結合分子を含む医薬組成物および二重機能抗原結合分子を投与することによる癌を治療する方法も、提供される。抗体または抗原結合フラグメントを製造する方法もまた、提供される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.抗体またはその抗原結合フラグメントのCDR中に挿入された少なくとも1個の免疫原性ペプチドを含む第1の抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記挿入は、CDR配列の除去を含む、第1の抗体またはその抗原結合フラグメント;および
b.上皮成長因子受容体(EGFR)を結合できる第2の抗体であって、セツキシマブ、パニツムマブおよびネシツムマブまたはそれらに対する少なくとも85%の配列同一性を含む抗体から選択される、第2の抗体、
を含む二重機能抗原結合分子。
【請求項2】
前記第1の抗体またはその抗原結合フラグメントおよび前記第2の抗体は、ヘテロ二量体化を促進しかつホモ二量体化を抑制する少なくとも1つの改変を含む、請求項1に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項3】
前記第1のおよび第2の抗体の一方は、配列番号1074を含む重鎖定常領域を含みおよびもう一方の抗体は、配列番号1075を含む重鎖定常領域を含む、請求項2に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項4】
前記第1の抗体またはその抗原結合フラグメントは、標的細胞に結合し、かつ前記標的細胞は、癌細胞、樹状細胞または両方である、請求項1~3のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項5】
前記免疫原性ペプチドは、癌特異的ペプチドである、請求項1~4のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項6】
前記癌特異的ペプチドは、表1で与えられるペプチド配列から選択される、請求項5に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項7】
前記免疫原性ペプチドは、ウイルスペプチドである、請求項1~4のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項8】
前記ウイルスペプチドは、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)、アデノウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)またはインフルエンザウイルス(FLU)由来である、請求項7に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項9】
前記ウイルスペプチドは、表2または表3で与えられるペプチド配列から選択される、請求項8に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項10】
前記第1の抗体またはその抗原結合フラグメントにより結合される細胞の細胞質に前記第1の抗体またはその抗原結合フラグメントを向ける細胞透過配列をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項11】
前記細胞透過配列は、エンドソーム脱出ドメイン(EED)である、請求項10に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項12】
前記第1の抗体またはその抗原結合フラグメントは、エンドソーム経路中に取り込まれかつ前記細胞質に送達される、請求項10または11に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項13】
前記CDRは、標的抗原への結合にほとんどまたは全く寄与しない不活性CDRである、請求項1~12のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項14】
不活性CDRは、前記標的抗原と接触する2個以下のアミノ酸を含む、請求項13に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項15】
接触は、CDRのアミノ酸と前記標的抗原のアミノ酸の間の5Å以下の距離を含む、請求項14に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項16】
前記挿入および除去は、前記第1の抗体またはその抗原結合フラグメントが前記免疫原性ペプチドを欠く前記第1の抗体または抗原結合フラグメントと同等の親和性でその標的抗原を結合するように前記第1の抗体またはその抗原結合フラグメントの全体の立体配座における変化を生じないかまたは最小限の変化を生じる、請求項1~15のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項17】
抗原結合領域の少なくとも1個の不活性CDRは、細胞透過配列で置換される、請求項1~16のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項18】
前記標的細胞は、樹状細胞でありかつ樹状細胞抗原は、CD40、CD205、CD206、CLEC9A、CLEC12A、CD209、およびCD207から選択される、請求項4~17のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項19】
前記標的細胞は、悪性免疫細胞でありかつ免疫細胞抗原は、CD20、CD19、CD21、およびCD22から選択される、請求項4~17のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項20】
前記標的細胞は、癌細胞でありかつ癌細胞抗原は、HER2、EGFR、EpCAM、PSMA、BCMA、CD123、CD33、CD38、CTLA、LAG-3、ICOS、4-1BBおよびPD-L1から選択される、請求項4~19のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項21】
化学リンカーを欠く、請求項1~20のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項22】
前記第1の抗体またはその抗原結合フラグメント内で前記抗原結合領域、前記免疫原性ペプチドおよび前記細胞透過性配列はそれぞれ、リンカーにより分離される、請求項1~21のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項23】
前記免疫原性ペプチドは、CD4 T細胞、CD8 T細胞または両方により認識される、請求項1~22のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項24】
前記免疫原性ペプチドが挿入される前に前記第1の抗体は、
a.配列番号1021の重鎖可変領域および配列番号1022の軽鎖可変領域を含む抗体TMab4;
b.配列番号1023の重鎖可変領域および配列番号1024の軽鎖可変領域を含む抗体3E10;および
c.配列番号1026の重鎖可変領域および配列番号1027の軽鎖可変領域を含む抗体71F12、
から選択される、請求項1~23のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項25】
少なくとも1個の:
a.前記免疫原性ペプチドは、前記TMab4のCDRH1、CDRH2、CDRH3またはCDRL3中に挿入される;
b.前記免疫原性ペプチドは、前記3E10のCDRL1またはCDRL2中に挿入される;および
c.前記免疫原性ペプチドは、前記71F12のCDRL1中に挿入される、
請求項24に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項26】
前記第1の抗体は、
a.配列番号1022の軽鎖可変領域および配列番号1028~1040、1043~1045、1047~1055、および1058~1059から選択される重鎖可変領域;
b.配列番号1021の重鎖可変領域および配列番号1041~1042、1046、および1056~1057から選択される軽鎖可変領域;
c.配列番号1023の重鎖可変領域および配列番号1060~1065から選択される軽鎖可変領域;
d.配列番号1026の重鎖可変領域および配列番号1066の軽鎖可変領域;および
e.配列番号1027の軽鎖可変領域および配列番号1067の重鎖可変領域、
の少なくとも1つを含む、請求項25に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項27】
2つの重鎖および2つの軽鎖を含み、
a.前記2つの重鎖は、配列番号1088および1080でありかつ前記2つの軽鎖は、配列番号1087および1079であり;
b.前記2つの重鎖は、配列番号1088および1082でありかつ前記2つの軽鎖は、配列番号1087および1081であり;
c.前記2つの重鎖は、配列番号1090および1080でありかつ前記2つの軽鎖は、配列番号1089および1079であり;
d.前記2つの重鎖は、配列番号1090および1082でありかつ前記2つの軽鎖は、配列番号1089および1081であり;または
e.前記2つの重鎖は、配列番号1088および1086でありかつ前記2つの軽鎖は、配列番号1087および1085である、
請求項3~26のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子。
【請求項28】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントの可変領域中に挿入された少なくとも1個の免疫原性ペプチドを含む抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記挿入は、抗体または抗原結合フラグメント配列の除去を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項29】
請求項1~17のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子または請求項18に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントおよび薬学的に許容可能な担体、賦形剤または補助剤を含む医薬組成物。
【請求項30】
少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含む核酸分子であって、前記オープンリーディングフレームは、請求項1~17のいずれか1項に記載の二重機能抗原結合分子または請求項29に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする、核酸分子。
【請求項31】
請求項30に記載の核酸分子に動作可能に連結される少なくとも1つの調節エレメントを含む発現ベクター。
【請求項32】
それを必要とする対象において癌を治療する方法であって、請求項29に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含み、それにより対象において癌を治療する、方法。
【請求項33】
前記癌は、EGFR陽性癌である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
抗体またはその抗原結合フラグメントを操作する方法であって、
a.目的の抗体またはその抗原結合フラグメントを選択すること;
b.その標的に結合された前記選択された抗体または抗原結合ドメインの構造分析を受け取ること;
c.前記構造分析に基づき前記標的への結合に必要とされない前記選択された抗体または抗原結合ドメインの少なくとも1個のCDRを決定すること;
d.前記決定された少なくとも1個のCDRまたはその一部を免疫原性ペプチドと置換すること;
を含み、それにより抗体またはその抗原結合フラグメントを操作する、方法。
【請求項35】
抗体またはその抗原結合フラグメントを操作する方法であって、
a.目的の抗体またはその抗原結合フラグメントを選択すること;
b.免疫原性ペプチドのデータベースを受け取ること;
c.目的の前記選択された抗体またはその抗原結合フラグメントの可変領域のペプチドと前記データベースの免疫原性ペプチドのペアワイズアラインメントを実施すること;
d.所定の閾値を越えるアラインメントスコアを有する前記選択された抗体またはその抗原結合フラグメント由来のペプチドおよび免疫原性ペプチドを決定すること;および
e.前記選択された抗体またはその抗原結合フラグメントからの前記決定されたペプチドを前記決定された免疫原性ペプチドと置換すること;
を含み、それにより抗体またはその抗原結合フラグメントを操作する、方法。
【請求項36】
目的の前記選択抗体またはその抗原結合フラグメントの構造において可能な限り少ない乱れを生じるために前記置換することを最適化することをさらに含む、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記操作される抗体またはその抗原結合フラグメントは、免疫原性ペプチド送達抗体である、請求項34~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
ステップ(a)は、標的細胞の表面に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを選択することを含む、請求項34~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ステップ(a)は、表面への結合時に内部移行されかつ前記標的細胞の細胞質ゾルに送達される抗体またはその抗原結合フラグメントを選択することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記標的細胞の細胞質ゾルへの前記免疫原性ペプチドの送達、前記標的細胞の表面へのHLA分子との複合体での前記免疫原性ペプチドの送達および前記免疫原性ペプチドに特異的なエフェクター細胞による前記標的細胞の特異的死滅:の少なくとも1つを確認することをさらに含む、請求項34~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
標的細胞の表面上のタンパク質に結合する標的化抗体を選択することならびに前記遺伝子操作抗体および前記標的化抗体を組み合わせることにより二重機能抗原結合分子を生じることをさらに含む、請求項34~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記組み合わせることは、ヘテロ二量体化を促進しかつホモ二量体化を抑制するために前記標的化抗体の重鎖定常領域および前記操作される抗体の重鎖定常領域を操作することを含む、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月18日出願のイスラエル特許出願第287372号の優先権の利益を主張するものであり、この出願特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
発明の分野
本発明は、抗癌免疫療法の分野に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、抗体またはその抗原結合フラグメントの可変領域中に挿入された少なくとも1個の免疫原性ペプチドを含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。本発明の抗体または抗原結合フラグメントおよび第2の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む二重機能抗原結合分子は、標的細胞上で過剰発現される抗原に結合できる。二重機能抗原結合分子をコードする核酸分子、二重機能抗原結合分子を含む医薬組成物および二重機能抗原結合分子を投与することによる癌を治療する方法もまた、提供される。抗体または抗原結合フラグメントを製造する方法も提供される。
【0003】
第1の態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントの可変領域中に挿入された少なくとも1個の免疫原性ペプチドを含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、挿入は、抗体または抗原結合フラグメント配列の除去を含む。
【0004】
別の態様では、下記を含む二重機能抗原結合分子が提供される:
a.抗体またはその抗原結合フラグメントのCDR中に挿入された少なくとも1個の免疫原性ペプチドを含む第1の抗体またはその抗原結合フラグメントであって、挿入はCDR配列の除去を含む、第1の抗体またはその抗原結合フラグメント:および
b.上皮成長因子受容体(EGFR)を結合できる第2の抗体であって、抗体は、セツキシマブ、パニツムマブおよびネシツムマブまたはそれらと少なくとも85%の配列同一性を含む抗体から選択される、第2の抗体。
【0005】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、標的細胞に結合し、標的細胞は、癌細胞、樹状細胞またはそれらの両方である。いくつかの実施形態では、第1の抗体またはその抗原結合フラグメントは、標的細胞に結合し、標的細胞は、癌細胞、樹状細胞またはそれらの両方である。
【0006】
いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、癌特異的ペプチドである。
【0007】
いくつかの実施形態では、癌特異的ペプチドは、表1で与えられるペプチド配列から選択される。
【0008】
いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、ウイルスペプチドである。
【0009】
いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)、アデノウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)またはインフルエンザウイルス(FLU)由来である。
【0010】
いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、表2または表3で与えられるペプチド配列から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗体またはその抗原結合フラグメントを抗体またはその抗原結合フラグメントを結合する細胞の細胞質に向ける、細胞透過配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、第1の抗体またはその抗原結合フラグメントを、第1の抗体またはその抗原結合フラグメントにより結合される細胞の細胞質に向ける、細胞透過配列をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、エンドソーム脱出ドメイン(EED)である。
【0013】
いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドを欠く抗体は、エンドソーム経路中に取り込まれ、細胞質に送達される。いくつかの実施形態では、第1の抗体またはその抗原結合フラグメントは、エンドソーム経路中に取り込まれ、細胞質に送達される。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントの少なくとも1個のCDRまたはその一部は、免疫原性ペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、第1の抗体またはその抗原結合フラグメントの少なくとも1個のCDRまたはその一部は、免疫原性ペプチドで置換される。
【0015】
いくつかの実施形態では、CDRは、標的抗原への結合にほとんどまたは全く寄与しない不活性CDRである。
【0016】
いくつかの実施形態では、不活性CDRは、標的抗原と接触する2個以下のアミノ酸を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、接触は、CDRのアミノ酸と標的抗原のアミノ酸の間の5Å以下の距離を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、挿入および除去は、抗体またはその抗原結合フラグメントの全体立体配座において変化を生じないか、または最小限の変化しか生じず、それにより抗体またはその抗原結合フラグメントは、免疫原性ペプチドを欠く抗体または抗原結合フラグメントと同等の親和性でその標的抗原を結合する。いくつかの実施形態では、挿入および除去は、第1の抗体またはその抗原結合フラグメントの全体立体配座において変化を生じないか、または最小限の変化しか生じず、それにより第1の抗体またはその抗原結合フラグメントは、免疫原性ペプチドを欠く第1の抗体または抗原結合フラグメントと同等の親和性でその標的抗原を結合する。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗原結合領域の少なくとも1個の不活性CDRは、細胞透過配列で置換される。
【0020】
いくつかの実施形態では、標的細胞は、樹状細胞であり、樹状細胞抗原は、CD40、CD205、CD206、CLEC9A、CLEC12A、CD209、およびCD207から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、標的細胞は、悪性免疫細胞であり、免疫細胞抗原は、CD20、CD19、CD21、およびCD22から選択される。
【0022】
いくつかの実施形態では、標的細胞は、癌細胞であり、癌細胞抗原は、HER2、EGFR、EpCAM、PSMA、BCMA、CD123、CD33、CD38、CTLA、LAG-3、ICOS、4-1BBおよびPD-L1から選択される。
【0023】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、化学リンカーを欠く。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗原結合領域、免疫原性ペプチドおよび細胞透過配列は、リンカーによりそれぞれ分離される。いくつかの実施形態では、第1の抗体またはその抗原結合フラグメント内で、抗原結合領域、免疫原性ペプチドおよび細胞透過配列は、リンカーによりそれぞれ分離される。
【0025】
いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、CD4 T細胞、CD8 T細胞またはそれらの両方により認識される。
【0026】
いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドが挿入される前の抗体は、下記から選択される:
a.配列番号1021の重鎖可変領域および配列番号1022の軽鎖可変領域を含む抗体TMab4;
b.配列番号1023の重鎖可変領域および配列番号1024の軽鎖可変領域を含む抗体3E10;および
c.配列番号1026の重鎖可変領域および配列番号1027の軽鎖可変領域を含む抗体71F12。
【0027】
いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドが挿入される前の第1の抗体は、下記から選択される:
a.配列番号1021の重鎖可変領域および配列番号1022の軽鎖可変領域を含む抗体TMab4;
b.配列番号1023の重鎖可変領域および配列番号1024の軽鎖可変領域を含む抗体3E10;および
c.配列番号1026の重鎖可変領域および配列番号1027の軽鎖可変領域を含む抗体71F12。
【0028】
いくつかの実施形態では、少なくとも1個の:
a.免疫原性ペプチドは、TMab4のCDRH1、CDRH2、CDRH3またはCDRL3中に挿入される;
b.免疫原性ペプチドは、3E10のCDRL1またはCDRL2中に挿入される;および
c.免疫原性ペプチドは、71F12のCDRL1中に挿入される。
【0029】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは:
a.配列番号1022の軽鎖可変領域および配列番号1028~1040、1043~1045、1047~1055、および1058~1059から選択される重鎖可変領域;
b.配列番号1021の重鎖可変領域および配列番号1041~1042、1046、および1056~1057から選択される軽鎖可変領域;
c.配列番号1023の重鎖可変領域および配列番号1060~1065から選択される軽鎖可変領域;
d.配列番号1026の重鎖可変領域および配列番号1066の軽鎖可変領域;
e.配列番号1027の軽鎖可変領域および配列番号1067の重鎖可変領域、
の少なくとも1つを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1の抗体は:
a.配列番号1022の軽鎖可変領域および配列番号1028~1040、1043~1045、1047~1055、および1058~1059から選択される重鎖可変領域;
b.配列番号1021の重鎖可変領域および配列番号1041~1042、1046、および1056~1057から選択される軽鎖可変領域;
c.配列番号1023の重鎖可変領域および配列番号1060~1065から選択される軽鎖可変領域;
d.配列番号1026の重鎖可変領域および配列番号1066の軽鎖可変領域;および
e.配列番号1027の軽鎖可変領域および配列番号1067の重鎖可変領域、
の少なくとも1つを含む。
【0031】
別の態様では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントを含む第1の抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに標的癌細胞上で過剰発現される抗原を結合できる第2の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、二重機能抗原結合分子が提供される。
【0032】
いくつかの実施形態では、標的癌細胞上で過剰発現される抗原は、EGFRであり、第2の抗体は、セツキシマブ、パニツムマブおよびネシツムマブから選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1の抗体および第2の抗体は、ヘテロ二量体化を促進しホモ二量体化を抑制する少なくとも1つの改変を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1および第2の抗体の一方は、配列番号1074を含む重鎖定常領域を含み、およびもう一方の抗体は、配列番号1075を含む重鎖定常領域を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、二重機能抗原結合分子は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含み:
a.2つの重鎖は、配列番号1088および1080であり、2つの軽鎖は、配列番号1087および1079であり;
b.2つの重鎖は、配列番号1088および1082であり、2つの軽鎖は、配列番号1087および1081であり;
c.2つの重鎖は、配列番号1090および1080であり、2つの軽鎖は、配列番号1089および1079であり;
d.2つの重鎖は、配列番号1090および1082であり、2つの軽鎖は、配列番号1089および1081であり;または
e.2つの重鎖は、配列番号1088および1086であり、2つの軽鎖は、配列番号1087および1085である。
【0036】
別の態様では、本発明の抗体または抗原結合フラグメントまたは本発明の二重機能抗原結合分子および薬学的に許容可能な担体、賦形剤または補助剤を含む、医薬組成物が提供される。
【0037】
別の態様では、少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含む核酸分子が提供され、オープンリーディングフレームは、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントまたは本発明の二重機能抗原結合分子をコードする。
【0038】
別の態様では、本発明の核酸分子に動作可能に連結された少なくとも1つの調節エレメントを含む、発現ベクターが提供される。
【0039】
別の態様では、それを必要とする対象において癌を治療する方法が提供され、方法は、本発明の医薬組成物を対象に投与することを含み、それにより対象における癌を治療する。
【0040】
いくつかの実施形態では、癌は、癌特異的抗原を過剰発現する。
【0041】
いくつかの実施形態では、癌は、EGFR陽性癌である。
【0042】
いくつかの実施形態では、二重機能抗原結合分子は、癌ワクチンであり、樹状細胞抗原を結合できる抗原結合領域を含む。
【0043】
別の態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントを操作する方法が提供され、方法は:
a.目的の抗体またはその抗原結合フラグメントを選択すること、
b.その標的に結合された選択された抗体または抗原結合ドメインの構造分析を行うこと;
c.構造分析に基づき標的への結合のために必要とされない選択された抗体または抗原結合ドメインの少なくとも1個のCDRを決定すること;
d.決定された少なくとも1個のCDRまたはその一部を免疫原性ペプチドと置換すること;
を含み、それにより抗体またはその抗原結合フラグメントを操作する。
【0044】
別の態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントを操作する方法が提供され、方法は:
a.目的の抗体またはその抗原結合フラグメントを選択すること、
b.免疫原性ペプチドのデータベースを入手すること;
c.目的の選択抗体またはその抗原結合フラグメントの可変領域のペプチドとデータベースの免疫原性ペプチドのペアワイズアラインメントを実施すること;
d.所定の閾値を越えるアラインメントスコアを有する選択された抗体またはその抗原結合フラグメント由来のペプチドおよび免疫原性ペプチドを決定すること;および
e.選択された抗体またはその抗原結合フラグメント由来の決定されたペプチドを、決定された免疫原性ペプチドと置換すること;
を含み、それにより抗体またはその抗原結合フラグメントを操作する。
【0045】
いくつかの実施形態では、方法は、置換を最適化して、目的の選択抗体またはその抗原結合フラグメントの構造において可能な限り少ない乱れ(perturbation)をもたらすことをさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、操作された抗体またはその抗原結合フラグメントは、免疫原性ペプチド送達抗体である。
【0047】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、標的細胞の表面に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを選択することを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、表面への結合時に内部移行され、標的細胞の細胞質ゾルに送達される、抗体またはその抗原結合フラグメントを選択することを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞の細胞質ゾルへの免疫原性ペプチドの送達、標的細胞の表面へのHLA分子との複合体での免疫原性ペプチドの送達および免疫原性ペプチドに特異的なエフェクター細胞による標的細胞の特異的死滅、の少なくとも1つを確認することをさらに含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞の表面上のタンパク質に結合する標的化抗体を選択すること、ならびに操作された抗体および標的化抗体を組み合わせることにより二重機能抗原結合分子を生成することをさらに含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、組み合わせることは、標的化抗体の重鎖定常領域および操作された抗体の重鎖定常領域を操作して、ヘテロ二量体化を促進しホモ二量体化を抑制することを含む。
【0052】
本発明のさらなる実施形態および適用性の全範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および具体的実施例は、本発明の好ましい実施形態を示してはいるが、実例として与えられているにすぎず、この詳細な説明から、本発明の趣旨および範囲内で様々な変更および修正が当業者には明らかであることは理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】その抗原を係合する抗体および結合に関与しない不活性CDRの存在を示す概略図である。
【
図2】不活性CDR含む抗PD-L1抗体およびその不活性CDRが免疫原性ペプチドで置換された後の本発明のトロイの木馬抗体の画像である。
【
図3】本発明の樹状細胞ワクチン接種法を段階的に示した図である。
【
図4】本発明のB細胞標的化CD4+T細胞媒介法を段階的に示した図である。
【
図5】本発明のCD8+T細胞媒介癌死滅法を段階的に示した図である。
【
図6】トロイの木馬抗体の産生法の実施形態の概要を示す。
【
図7A-7C】(7A)TMab4(P1)抗体のCDRH1中に挿入された免疫原性ペプチドを含むTAb、(7B)TMab4(P1)抗体のCDRH3中に挿入された免疫原性ペプチドを含むTAb、および(7C)TMab4(P1)抗体のCDRL3またはCDRH2中に挿入された免疫原性ペプチドを含むTAb、と接触され、その後ペプチド特異的エフェクター細胞と共培養された癌細胞の特異的死滅の棒グラフである。
【
図8】3E10(P2)抗体のCDRL1中に挿入された免疫原性ペプチドを含むTAbと接触され、その後ペプチド特異的エフェクター細胞と共培養された癌細胞の特異的死滅の棒グラフである。
【
図9A-9B】エフェクター細胞単独(細胞のみ)で、(9A)親抗体3E10(P2)およびTAb T2_11、ならびに(9B)親抗体TMab4(P1)およびTAb T18、と共に培養されたアポトーシス性癌細胞の折れ線グラフである。
【
図10】二官能性トロイの木馬抗体および対応する対照の概略図である。bi-TAbは、FTAbとして標識され、対照bi-TAbは、cFTAbとして標識される。
【
図11】癌細胞の表面上のEGFRへのbi-TAbの結合を示すヒストグラムである。治療抗体は、陽性対照として使用され、蛍光標識二次抗体は、陰性対照として使用される。上段パネルは、0.3nMの濃度を示し、下段パネルは、3nMの濃度を示す。bi-TAbは、FTAbとして標識される。
【
図12】異なる時点でHLAペプチド複合体を提示する癌細胞のパーセンテージを示す棒グラフである。各bi-TAb(白色バー)は、同じ死滅化モジュールを有するが免疫原性ペプチドを有しないその陰性対照(灰色バー)と比較される。bi-TAbは、FTAbとして標識され、対照bi-TAbは、cFTAbとして標識される。
【
図13】種々のエフェクター対標的細胞の比率でのエフェクター細胞により死滅された癌細胞のパーセンテージの折れ線グラフである。各bi-TAb(薄灰色線)は、その陰性対照(黒線)と比較される。エフェクター細胞を含まない抗体のみの点が、含まれる。bi-TAbは、FTAbとして標識され、対照bi-TAbは、cFTAbとして標識される。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントの可変領域中に挿入された少なくとも1個の免疫原性ペプチドを含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、挿入は、抗体または抗原結合フラグメント配列の除去を含む。本発明の抗体または抗原結合フラグメントおよび第2の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む二重機能抗原結合分子は、標的細胞上で過剰発現される抗原に結合できる。二重機能抗原結合分子をコードする核酸分子、二重機能抗原結合分子を含む医薬組成物および二重機能抗原結合分子を投与することによる癌を治療する方法も、提供される。抗体または抗原結合フラグメントを製造する方法もまた、提供される。
【0055】
本発明は、抗体/抗原結合分子が、免疫原性ペプチドのための送達系として使用できるという意外な発見に基づく。すなわち、高度に免疫原性のペプチドは、癌細胞に特異的に送達でき、それにより、それらに対する免疫監視を強化できる。抗体は、この場合、治療分子を癌細胞に結合させ得る、癌エピトープに対する抗原結合ドメインを有する。抗体/抗原結合分子のエンドサイトーシス時に、免疫原性ペプチドは、細胞質に送達され得る。これは、細胞透過配列、または特に、エンドソーム脱出配列の含有により強化できる。しかし、エンドソーム脱出は、抗体の受容体媒介トランスサイトーシス、細胞質への抗体直接送達、などのいくつかの機構のように不可欠ではない。治療分子は、切断され、免疫原性ペプチドを放出し、これは次いでHLA分子と複合体化して細胞表面上で提示され、従って癌細胞の免疫原性を高め、かつ癌および癌死滅に対する免疫監視を強化し得る。
【0056】
あるいは、抗原結合領域は、樹状細胞抗原を結合でき、これは、樹状細胞に癌細胞抗原を含む治療分子を送達し得る。分子は、結合時に取り込まれ、免疫原性癌ペプチドは、本発明の分子の残部から切断され、HLA分子により樹状細胞の表面上に提示され得る。これは次に、この免疫原性ペプチドを標的にし従って癌を標的にするように細胞傷害性免疫細胞(T細胞およびNK細胞)を訓練する。
【0057】
第1の態様により、抗原結合分子が提供される。
【0058】
別の態様により、本発明の抗原結合分子を含む組成物が提供される。
【0059】
別の態様により、本発明の抗原結合分子をコードする核酸分子が提供される。
【0060】
別の態様により、本発明の核酸分子を含む発現ベクターが提供される。
【0061】
別の態様により、標的細胞の表面上でペプチドを発現させる方法が提供され、方法は、本発明の抗原結合分子または本発明の医薬組成物と標的細胞を接触させること、それにより標的細胞の表面上でペプチドを発現させることを含む。
【0062】
別の態様により、対象において癌を治療する方法が提供され、方法は、本発明の抗原結合分子または本発明の医薬組成物を対象に投与すること、それによりそれを必要としている対象において癌を治療することを含む。
【0063】
別の態様により、標的細胞の表面上でペプチドを発現させることにおける使用のための本発明の組成物が提供される。別の態様により、癌を治療することにおける使用のための本発明の組成物が提供される。別の態様により、癌の治療のための薬物の製造における使用のための本発明の組成物が提供される。
【0064】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、二重機能分子である。いくつかの実施形態では、第1の機能は、抗原を結合することである。いくつかの実施形態では、第2の機能は、細胞へ侵入することである。いくつかの実施形態では、第2の機能は、ペプチドを送達することである。いくつかの実施形態では、ペプチドは、免疫原性ペプチドである。いくつかの実施形態では、第2の機能は、細胞の細胞質中へ免疫原性ペプチドを送達することである。
【0065】
いくつかの実施形態では、分子は、抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態では、領域は、ドメインである。いくつかの実施形態では、領域は、抗原を結合する。いくつかの実施形態では、抗原は、標的細胞上にある。いくつかの実施形態では、抗原結合領域は、標的細胞に結合できる。いくつかの実施形態では、抗原は、癌抗原である。いくつかの実施形態では、癌抗原は、癌特異的抗原である。いくつかの実施形態では、癌抗原は、癌細胞上の抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、免疫細胞抗原である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、樹状細胞、B細胞、T細胞、好中球、マクロファージ、好中球、およびナチュラルキラー(NK)細胞から選択される。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、樹状細胞である。いくつかの実施形態では、抗原は、樹状細胞抗原である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、B細胞である。いくつかの実施形態では、抗原は、B細胞抗原である。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞上で発現される。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞表面上で発現される。いくつかの実施形態では、抗原は、MHC分子として細胞表面上で提示される。いくつかの実施形態では、MHC分子は、MHCクラスIまたはクラスII分子である。いくつかの実施形態では、MHC分子は、抗原およびHLAタンパク質のタンパク質複合体である。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞表面タンパク質である。いくつかの実施形態では、細胞表面タンパク質は、細胞表面受容体である。いくつかの実施形態では、抗原結合領域は、抗原を結合できる。
【0066】
いくつかの実施形態では、樹状細胞抗原は、CD40、CD205、CD206、CLEC9A、CLEC12A、CD209、およびCD207から選択される。樹状細胞のマーカーは、当技術分野で周知であり、いずれかのこのような表面マーカーが、抗原として使用されてよい。いくつかの実施形態では、樹状細胞抗原は、CD40である。樹状細胞抗原を標的とする抗原結合ドメインは、当技術分野で周知であり、いずれかのこのような抗原結合ドメインが用いられてよい。非限定例として、Fab516は、CD40に特異的に結合する。
【0067】
いくつかの実施形態では、免疫細胞抗原は、CD20、CD19、CD21、およびCD22から選択される。いくつかの実施形態では、樹状細胞抗原は、CD20である。いくつかの実施形態では、免疫細胞抗原は、B細胞抗原である。免疫細胞のマーカーは一般に周知で、特にB細胞のマーカーは当技術分野で周知であり、いずれかのこのような表面マーカーが、抗原として使用されてよい。免疫細胞抗原を標的とする抗原結合ドメインは、当技術分野で周知であり、いずれかのこのような抗原結合ドメインが、用いられてよい。非限定例として、アーゼラは、CD20に特異的に結合する。
【0068】
いくつかの実施形態では、癌細胞抗原は、HER2、EGFR、EpCAM、PSMA、BCMA、CD123、CD33、CD38、CTLA、LAG-3、ICOS、4-1BBおよびPD-L1から選択される。癌細胞のマーカーは、当技術分野で周知であり、いずれかのこのような表面マーカーは、抗原として使用し得る。いくつかの実施形態では、癌細胞抗原は、PD-L1である。免疫細胞抗原を標的とする抗原結合ドメインは、当技術分野で周知であり、いずれかのこのような抗原結合ドメインを用い得る。非限定例として、デュルバルマブは、PD-L1に特異的に結合する。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体の抗原結合ドメインである。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体またはその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、抗体は、単鎖抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、単一ドメイン抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、完全抗体である。
【0070】
本明細書で使用される、「抗体」という用語は、内部表面形状および抗原の抗原決定基の特徴に相補的な電荷分布を有する三次元結合空間を有するポリペプチド鎖の折り畳みから形成される少なくとも1つの結合ドメインを含むポリペプチドまたはポリペプチド群を指す。抗体は典型的には、ポリペプチド鎖の2つの同一の対を含む四量体形態を有し、各対は1つの「軽」鎖および1つの「重」鎖を有する。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。抗体は、オリゴクローナル、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ラクダ化、CDRグラフト化、多重特異性、二重特異性、触媒性、ヒト化、完全ヒト型、抗イディオタイプであってよく、および可溶型または結合型で標識できる抗体、ならびに、単独でまたは他のアミノ酸配列と組み合わせてのいずれかで、そのエピトープ結合フラグメント、バリアントまたは誘導体を含むフラグメントであってよい。抗体は、いずれの種由来であってもよい。抗体という用語はまた、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(svFC)、二量体可変領域(ダイアボディ)、およびジスルフィド結合可変領域(dsFv)を含むがこれらに限定されない、結合フラグメントも含む。特に、抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性なフラグメント、すなわち抗原結合部位を含む分子、を含む。抗体フラグメントは、Fc領域またはそのフラグメントを含むがこれらに限定されない別の免疫グロブリンドメインに融合されてよく、または融合されなくてもよい。当業者はさらに、scFv-Fc融合体、可変領域(例えば、VLおよびVH)-Fc融合体およびscFv-scFv-Fc融合体を含むがそれらに限定されない他の融合産物が生成され得ることを理解するであろう。
【0071】
免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスのものであってよい。
【0072】
「抗原」は、抗体形成を誘発できかつ抗体により結合され得る、分子または分子の一部である。抗体形成は、マウス、ラット、ウサギ、ブタおよび抗体の生成によく使用される他の動物で起こり得るが、無論、異種抗原に対する応答としてヒトでも起こり得る。抗原は、1つまたは2つ以上のエピトープを有し得る。上記で言及した特異的反応は、抗原が高度に選択的に、その対応する抗体と反応し、かつ他の抗原により誘発され得る数多くの他の抗体とは反応しないであろうことを示すと意図される。
【0073】
本発明による用語「抗原決定基」または「エピトープ」は、特定の抗体と特異的に反応する抗原分子の領域を指す。エピトープ由来のペプチド配列は、当該技術分野において既知の方法を適用して、単独でまたは担体部分と併せて、使用されて、動物を免疫化し、追加のポリクローナルまたはモノクローナル抗体を産生できる。免疫グロブリン可変ドメインはまた、IMGT情報システム(imgt.Cines.fr/)(IMGT(登録商標)/V-Quest)を使用して分析されて、CDRを含む可変領域セグメントを特定することもできる。例えば、Brochet,X.et al,Nucl.Acids Res.J6:W503-508(2008)を参照されたい。
【0074】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能な可変ドメイン配列のナンバリングシステムを定義した。当業者は、実験データに依存することなく、配列自体を超えて、この「Kabatナンバリング」のシステムを任意の可変ドメイン配列に明確に割り当てることができる。本明細書で使用される、「Kabatナンバリング」は、Kabat et al,U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequence of Proteins of Immunological Interest”(1983)により記載されるナンバリングシステムを指す。
【0075】
用語「抗体」(免疫グロブリンとも呼ばれる)は、最も広い意味で使用され、特に、それらが所望の生物活性を示す限り、モノクローナル抗体および抗体フラグメントを包含する。特定の実施形態では、キメラ抗体またはヒト化抗体の使用もまた、本発明により包含される。
【0076】
天然起源の抗体構造の基本単位は、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質複合体であり、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖で構成され、非共有結合およびジスルフィド結合の両方により共に連結される。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に間隔を置いて配置される鎖内ジスルフィド架橋も有する。5つのヒト抗体クラス(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)が存在し、これらのクラス内で、様々なサブクラスは、単一の抗体分子内の免疫グロブリン単位の数、個々の単位のジスルフィド架橋構造、ならびに鎖長および配列の違い等の、構造の違いに基づき認識される。抗体のクラスおよびサブクラスは、そのアイソタイプである。
【0077】
重鎖および軽鎖のアミノ末端領域は、カルボキシ末端領域よりも配列において多様であり、したがって可変ドメインと呼ばれる。抗体構造のこの部分は、抗体の抗原結合特異性を付与する。重鎖可変(VH)ドメインおよび軽鎖可変(VL)ドメインは、一緒に単一の抗原結合部位を形成し、したがって、基本的な免疫グロブリン単位は、2つの抗原結合部位を有する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの間の界面を形成すると考えられている(Chothia et al.,J.Mol.Biol.186,651-63(1985)、Novotny and Haber,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82 4592-4596)。
【0078】
重鎖および軽鎖のカルボキシ末端部分は、定常ドメイン、すなわちCH1、CH2、CH3、CLを形成する。これらのドメインにおける多様性ははるかに低いが、動物種ごとに違いがあり、およびさらに、同じ個体内でそれぞれ異なる機能を有するいくつかの異なる抗体のアイソタイプがある。
【0079】
「フレームワーク領域」または「FR」という用語は、本明細書で定義される超可変領域アミノ酸残基以外の、抗体の可変ドメイン内のアミノ酸残基を指す。本明細書で使用される「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する、抗体の可変ドメイン中のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基を含む。CDRは主に、抗原のエピトープへの結合に関与する。FRおよびCDRの範囲は、正確に定義されている(Kabat et al.を参照されたい)。いくつかの実施形態では、CDRは、KABATシステムを用いて決定される。いくつかの実施形態では、CDRは、コチア(Clothia)を用いて決定される。いくつかの実施形態では、コチアシステムは、改良コチアシステム(Martinシステム)である。
【0080】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、免疫原性ペプチドを欠く、または含まない、抗体またはその抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドを欠く、または含まないは、免疫原性ペプチドの挿入の前である。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、標的細胞に結合する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、標的細胞の表面に接着する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、細胞透過性抗体である。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、細胞中へと貪食される。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、細胞中へと取り込まれる。いくつかの実施形態では、細胞中へと、は、細胞のエンドソーム経路の中へと、である。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、エンドソーム経路中へと組み込まれる。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、エンドソーム経路から脱出する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、それを結合する細胞の細胞質中へと送達される。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、DNA結合抗体である。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、ループス抗体である。
【0081】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、Tmab4抗体である。いくつかの実施形態では、Tmab4は、配列番号1021の重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含みかつ細胞を結合でき細胞質ゾルに到達できる類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、Tmab4は、配列番号1022の軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含みかつ細胞を結合でき細胞質ゾルに到達できる類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、3E10抗体である。いくつかの実施形態では、3E10は、配列番号1023の重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含みかつ細胞を結合でき細胞質ゾルに到達できる類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、3E10は、配列番号1024の軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含みかつ細胞を結合でき細胞質ゾルに到達できる類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、71F12抗体である。いくつかの実施形態では、71F12は、配列番号1026の重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含みかつ細胞を結合でき細胞質ゾルに到達できる類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、71F12は、配列番号1027の軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含みかつ細胞を結合でき細胞質ゾルに到達できる類似体または相同体を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、少なくとも1個の免疫原性ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の免疫原性ペプチドを含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、外来性免疫原性ペプチドである。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、抗原結合分子中に挿入される。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、抗体またはその抗原結合フラグメントの可変領域中に挿入される。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、抗原結合分子の天然部分ではない。いくつかの実施形態では、ペプチドは、アミノ酸のある配列である。いくつかの実施形態では、免疫原性アミノ酸の配列は、抗原結合分子の配列中に挿入される。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、抗原結合分子のアミノ酸を置換する。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドの挿入は、アミノ酸配列の除去を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸配列は、抗体またはその抗原結合フラグメントの配列である。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、抗原結合分子に人工的に連結されない。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、組換え分子である。いくつかの実施形態では、組換え分子は、免疫原性ペプチドのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、抗原結合分子に化学結合により連結されない。いくつかの実施形態では、化学結合は、ペプチド結合以外の任意の結合である。いくつかの実施形態では、化学結合は、アミノ酸結合以外の任意の結合である。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、ペプチド結合、アミノ酸結合またはそれらの両方により抗原結合分子に連結される。
【0083】
本明細書で使用される、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、同じ意味で用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。別の実施形態では、本明細書で使用される、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、天然ペプチド、ペプチド模倣体(典型的には、非ペプチド結合または他の合成的改変を含む)およびペプチド類似体ペプトイドおよびセミペプトイドまたはこれらの任意の組み合わせを包含する。別の実施形態では、記載されるペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質は、身体中でそれらをより安定にするまたは細胞の中へとより透過可能にする改変を有する。一実施形態では、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、天然起源のアミノ酸ポリマーに適用される。別の実施形態では、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、1個または複数のアミノ酸残基が対応する天然起源のアミノ酸の人工の化学的類似体である、アミノ酸ポリマーに適用される。
【0084】
本明細書で使用される、「組換えタンパク質」という用語は、組換えDNAによりコードされ、従って天然起源ではない、タンパク質を指す。用語「組換えDNA」は、遺伝的組換えの実験室手法により形成されたDNA分子を指す。一般に、この組換えDNAは、細胞中で組換えタンパク質を発現するために使用されるベクター、プラスミドまたはウイルスの形態である。
【0085】
いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、少なくとも、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、最大で5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、3~20、3~15、3~12、3~11、3~10、3~7、5~20、5~15、5~12、5~11、5~10、7~20、7~15、7~12、7~11、または7~10個のアミノ酸である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、8~11個のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、8個のアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、9個のアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、10個のアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、11個のアミノ酸からなる。
【0086】
本明細書で使用される、「免疫原性ペプチド」という用語は、ヒト免疫系に曝露されると免疫応答を生ずるアミノ酸配列を指す。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、非ヒトペプチドである。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、免疫細胞からの免疫応答を生ずる。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、免疫細胞からの免疫応答で認識される。いくつかの実施形態では、認識されることは、それにより結合されることである。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、樹状細胞からの免疫応答を生ずる。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、細胞表面上で提示される。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、MHC分子として提示される。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、HLAとの複合体で提示される。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、T細胞からの免疫応答を生ずる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、樹状細胞である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD4 T細胞およびCD8 T細胞から選択される。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD4 T細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD8 T細胞である。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、CD4エピトープ、CD8エピトープまたはそれらの両方を含む。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、NK細胞からの免疫応答を生ずる。いくつかの実施形態では、免疫応答は、増大した免疫応答である。いくつかの実施形態では、免疫原性は、免疫原性の増大を含む。いくつかの実施形態では、増大されるは、対照ペプチドに比較してである。いくつかの実施形態では、対照ペプチドは、ヒトペプチドである。いくつかの実施形態では、対照ペプチドは、非癌性ペプチドである。いくつかの実施形態では、対照ペプチドは、非免疫原性ペプチドである。
【0087】
いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、癌ペプチドである。いくつかの実施形態では、癌ペプチドは、癌特異的ペプチドである。いくつかの実施形態では、癌ペプチドは、増大した癌ペプチドである。いくつかの実施形態では、癌ペプチドは、癌細胞中の増大された表面発現を有するペプチドである。いくつかの実施形態では、癌ペプチドは、表1で提供されるペプチドである。いくつかの実施形態では、癌ペプチドは、表1で提供される配列から選択される。いくつかの実施形態では、癌ペプチドは、配列番号702~1020で提供される配列から選択される。癌ペプチドは当該技術分野において周知であり、例えば、癌抗原ペプチドデータベース:caped.icp.ucl.ac.be/Peptide/search、で見つけることができる。
【表1】
【0088】
いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、非ヒトペプチドである。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、ウイルスペプチドである。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、細菌ペプチドである。ウイルスペプチドは、当技術分野で周知であり、いずれかのこのようなペプチドを採用し得る。このようなペプチドは、例えば、免疫エピトープデータベース(IEDB)およびVDJDBデータベース:iedb.orgおよびvdjdb.cdr3.netで見つけることができる。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バールウイルス(EBV)またはインフルエンザウイルス(FLU)から選択されるウイルス由来である。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、CMV、EBV、FLU、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)、アデノウイルスおよびヒトパピローマウイルス(HPV)から選択されるウイルス由来である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、CMVである。いくつかの実施形態では、ウイルスは、EBVである。いくつかの実施形態では、ウイルスは、FLUである。いくつかの実施形態では、ウイルスは、SARS-CoV2である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、アデノウイルスである。いくつかの実施形態では、ウイルスは、HPVである。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、表2で提供されるペプチドである。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、表2で提供される配列から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、表3で提供されるペプチドである。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、表3で提供される配列から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号1~701から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号1~695から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号1~11から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号1~9から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号1~5から選択される。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号1である。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号2である。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号3である。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号4である。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号5である。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号6である。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号7である。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号8である。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号9である。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号10である。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号11である。いくつかの実施形態では、ウイルスペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、151、197、471、677、696、697、698、699、700、および701から選択される。
【0089】
【0090】
いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、抗体またはその抗原結合フラグメントの相補性決定領域(CDR)中に挿入される。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドの挿入は、CDR配列の除去を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントの少なくとも1個のCDRは、免疫原性ペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、CDRは、全CDRである。いくつかの実施形態では、CDRは、CDRの少なくとも一部である。いくつかの実施形態では、CDR配列は、CDRの少なくとも一部の配列を含む。いくつかの実施形態では、一部は、少なくとも4個のアミノである。いくつかの実施形態では、一部は、少なくとも5個のアミノである。いくつかの実施形態では、一部は、少なくとも6個のアミノである。いくつかの実施形態では、一部は、少なくとも7個のアミノである。いくつかの実施形態では、一部は、少なくとも8個のアミノである。いくつかの実施形態では、一部は、少なくとも9個のアミノである。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドの挿入は、CDRの除去を含む。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドの挿入は、CDRの少なくとも一部の除去を含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、CDRまたはCDRの一部の置換はまた、CDRに隣接する少なくとも1個のアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態では、隣接するは、CDRに対しN末端である。いくつかの実施形態では、隣接するは、CDRに対しC末端である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸は、CDRに直接隣接する少なくとも1、2、3、4または5個のアミノ酸である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸は、4~5個のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸は、4個のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸は、5個のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、隣接する領域は、5、6、7、8、9または10個以下のアミノ酸である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、隣接する領域は、5個以下のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、隣接する領域は、10個以下のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、隣接する領域は、CDRループのステムを含む。構造を保存するため、かつ可能な限り乱れを少なくするために、CDRそれ自体(またはその一部)と併せて、CDRに隣接する領域の一部を置換することも必要な場合があることは、当業者には理解されるであろう。
【0092】
いくつかの実施形態では、TMab4のCDRH1は、配列番号1021のアミノ酸26~33を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、TMab4のCDRH2は、配列番号1021のアミノ酸51~58を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、TMab4のCDRH3は、配列番号1021のアミノ酸97~109を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、TMab4のCDRL1は、配列番号1022のアミノ酸27~38を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、TMab4のCDRL2は、配列番号1022のアミノ酸56~58を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、TMab4のCDRL3は、配列番号1022のアミノ酸95~103を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、3E10のCDRH1は、配列番号1023のアミノ酸26~33を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、3E10のCDRH2は、配列番号1023のアミノ酸51~58を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、3E10のCDRH3は、配列番号1023のアミノ酸97~105を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、3E10のCDRL1は、配列番号1024のアミノ酸27~36を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、3E10のCDRL2は、配列番号1024のアミノ酸54~56を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、3E10のCDRL3は、配列番号1024のアミノ酸93~101を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、71F12のCDRH1は、配列番号1026のアミノ酸26~33を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、71F12のCDRH2は、配列番号1026のアミノ酸51~57を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、71F12のCDRH3は、配列番号1026のアミノ酸96~105を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、71F12のCDRL1は、配列番号1027のアミノ酸26~34を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、71F12のCDRL2は、配列番号1027のアミノ酸52~54を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、71F12のCDRL3は、配列番号1027のアミノ酸91~100を含む、またはこれらからなる。
【0093】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、細胞透過配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、細胞透過ドメインである。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、細胞透過ペプチドである。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、細胞の内部に分子を向ける。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、細胞の内部に分子を送達する。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、細胞の内部への分子の侵入を可能にする。いくつかの実施形態では、細胞の内部は、エンドソームである。いくつかの実施形態では、細胞の内部は、細胞質である。いくつかの実施形態では、細胞質への送達は、エンドソームからの退出を含む。いくつかの実施形態では、細胞質への送達は、エンドソームからの脱出を含む。いくつかの実施形態では、エンドソームは、エンドソーム経路である。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、ペプチド透過ドメイン(PTD)である。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、細胞透過ペプチド(CPP)である。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、エンドソーム脱出ドメイン(EED)である。細胞質中への進入、特に、エンドサイトーシス後にエンドソーム経路からの脱出を可能にするペプチド配列は、当技術分野で周知であり、いずれかのこのようなペプチド配列を採用し得る。
【0094】
Tmab4のCDRL1およびCDRL3はいずれも、抗体侵入に関与することは当該技術分野において既知である(Kim et al.,“Endosomal acidic pH-induced conformational changes of a cytosol-penetrating antibody mediate endosomal escape”,J Control Release,2016,10;235:165-175、およびChoi et al.,“A general strategy for generating intact,full-length IgG antibodies that penetrate into the cytosol of living cells”,Mabs,2014;6(6):1402-14を参照されたい、これらの文献は参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、Tmab4のCDRL1を含む。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、Tmab4のCDRL1からなる。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、Tmab4のCDRL3を含む。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、Tmab4のCDRL3からなる。他の抗体中へ細胞透過配列をグラフトする方法(例えば、Chioらにより提供された方法など)は、当技術分野において既知である。
【0095】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、抗体の二重特異性抗体フラグメントである。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、複数の抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、少なくとも2つの抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、2つの抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原結合領域は、標的細胞に結合できる抗原結合領域である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原結合領域は、免疫原性ペプチドを含むように変異される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原結合領域は、細胞透過配列を含むように変異される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原結合領域は、免疫原性ペプチド、細胞透過配列または両方を含むように変異される。いくつかの実施形態では、変異は、相補性決定領域(CDR)の変異である。いくつかの実施形態では、抗原結合領域のCDRは、変異される。いくつかの実施形態では、変異されるは、置換されるである。いくつかの実施形態では、置換されるは、免疫原性ペプチドにより置換される。いくつかの実施形態では、置換されるは、細胞透過配列により置換される。
【0096】
いくつかの実施形態では、CDRは、不活性CDRである。いくつかの実施形態では、不活性CDRは、標的抗原への結合に寄与しない。いくつかの実施形態では、結合は、標的抗原へのCDRを含む抗原結合領域の結合である。いくつかの実施形態では、不活性CDRは、結合に対し、ほとんど、または全く寄与しない。いくつかの実施形態では、不活性CDRは、標的抗原と接触する2個以下のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、不活性CDRは、標的抗原と接触する2個より少ないアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、不活性CDRは、標的抗原と接触する2、1または0個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、不活性CDRは、標的抗原と接触する2個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、不活性CDRは、標的抗原と接触する1個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、不活性CDRは、標的抗原と接触するアミノ酸を含まない。いくつかの実施形態では、不活性CDRは、標的抗原と接触しない。いくつかの実施形態では、接触は、3、5、7、9または10Å以下の距離を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、接触は、5Å以下の距離を含む。いくつかの実施形態では、距離は、CDRのアミノ酸と標的抗原のアミノ酸の間の距離である。いくつかの実施形態では、距離は、抗原結合ドメインが抗原に結合される時に存在する距離である。いくつかの実施形態では、距離は、結合の結晶学的調査中の距離である。
【0097】
いくつかの実施形態では、不活性CDRの変異または置換は、結合を減少させない。いくつかの実施形態では、結合を低下させないことは、結合を大きく低下させないことである。いくつかの実施形態では、不活性CDRの変異または置換は、結合を抑止しない。いくつかの実施形態では、大きな低下は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、75、80、90、95または99%を越える結合の低下である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、大きな低下は、10%を越える結合の低下である。いくつかの実施形態では、大きな低下は、20%を越える結合の低下である。いくつかの実施形態では、不活性CDRの変異または置換は、結合を100%低下させない。
【0098】
いくつかの実施形態では、不活性CDRの変異または置換は、細胞透過を低下させない。いくつかの実施形態では、細胞透過を低下させないことは、細胞透過を大きく低下させないことである。いくつかの実施形態では、不活性CDRの変異または置換は、細胞透過を抑止しない。いくつかの実施形態では、大きな低下は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、75、80、90、95または99%を越える透過における低下である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、大きな低下は、10%を越える透過における低下である。いくつかの実施形態では、大きな低下は、20%を越える透過における低下である。いくつかの実施形態では、不活性CDRの変異または置換は、透過を100%低下させない。いくつかの実施形態では、不活性CDRの変異または置換は、透過を対照抗体のレベルまで低下させない。いくつかの実施形態では、対照抗体は、細胞に侵入しない抗体である。細胞に侵入しない抗体は、当該技術分野において周知であり、例えば、アダリムマブおよびムロモナブを含む。いくつかの実施形態では、細胞透過を低下させないことは、免疫原性ペプチドを欠くまたは含まない抗体またはその抗原結合フラグメントの結合に実質的に等しい透過を保持することを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドの挿入およびCDR配列の除去は、抗体またはその抗原結合フラグメントの立体配座の変化を生じない。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドの挿入およびCDR配列の除去は、抗体またはその抗原結合フラグメントの立体配座の最小限の変化を生じる。いくつかの実施形態では、立体配座は、全体の立体配座である。いくつかの実施形態では、立体配座は、3D構造である。いくつかの実施形態では、立体配座は、三次構造である。いくつかの実施形態では、変化は、乱れである。いくつかの実施形態では、最小限の変化は、結合の損失を伴わない。いくつかの実施形態では、最小限の変化は、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50%未満の変化である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、最小限の変化は、免疫原性ペプチドを欠くまたは含まない抗体またはその抗原結合フラグメントと同等の親和性での標的抗原への結合を含む。いくつかの実施形態では、同等は、親和性の低下がないことである。いくつかの実施形態では、同等は、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50%以下の親和性の低下である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、同等は、10%以下の親和性の低下である。いくつかの実施形態では、同等は、20%以下の親和性の低下である。
【0100】
いくつかの実施形態では、変異されるCDRは、標的細胞を結合できる抗原結合領域中にある。いくつかの実施形態では、変異導されるCDRは、標的細胞を結合できる抗原結合領域中には存在しない。いくつかの実施形態では、変異されるCDRは、標的細胞に結合できる抗原結合領域以外の抗原結合領域中にある。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、標的細胞を結合できる抗原結合領域中のCDRを置換する。いくつかの実施形態では、細胞透過配列は、標的細胞を結合する抗原結合領域ではない抗原結合領域中のCDRを置換する。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドおよび細胞透過配列は、同じ抗原結合領域中にある。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドおよび細胞透過配列は、異なる抗原結合領域中にある。
【0101】
いくつかの実施形態では、標的細胞は、樹状細胞であり、樹状細胞抗原は、CD40であり、CD40に結合できる抗原結合領域は、Fab516であり、軽鎖CDRL2は、上記細胞透過配列、上記免疫原性ペプチドまたはそれらの両方により置換される。
【0102】
いくつかの実施形態では、標的細胞は、B細胞であり、B細胞抗原は、CD20であり、CD20に結合できる抗原結合領域は、アーゼラであり、重鎖CDRH1、軽鎖CDRL1および軽鎖CDRL2の少なくとも1つは、上記細胞透過配列、上記免疫原性ペプチドまたはそれらの両方により置換される。いくつかの実施形態では、置換されるは、ペプチドまたは配列を含むように変異される、である。いくつかの実施形態では、重鎖CDRH1は、置換される。いくつかの実施形態では、軽鎖CDRL1は、置換される。いくつかの実施形態では、軽鎖CDRL2は、置換される。
【0103】
いくつかの実施形態では、標的細胞は、癌であり、癌細胞抗原は、PD-L1であり、PD-L1に結合できる抗原結合領域は、デュルバルマブであり、重鎖CDRH1、軽鎖CDRL2の少なくとも1つは、上記細胞透過配列、上記免疫原性ペプチドまたはそれらの両方により置換される。いくつかの実施形態では、置換されるは、ペプチドまたは配列を含むように変異される、である。いくつかの実施形態では、重鎖CDRH1は、置換される。いくつかの実施形態では、軽鎖CDRL2は、置換される。
【0104】
いくつかの実施形態では、抗体は、TMab4であり、免疫原性ペプチドは、CDRH1、CDRH2、CDRH3およびCDRL3のいずれか1つの中に挿入される。いくつかの実施形態では、抗体は、TMab4であり、免疫原性ペプチドは、CDRH1中に挿入される。いくつかの実施形態では、抗体は、TMab4であり、免疫原性ペプチドは、CDRH2中に、挿入される。いくつかの実施形態では、抗体は、TMab4であり、免疫原性ペプチドは、CDRH3中に挿入される。いくつかの実施形態では、抗体は、TMab4であり、免疫原性ペプチドは、CDRL3中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号1は、TMab4のCDRH1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号2は、TMab4のCDRH1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号3は、TMab4のCDRH1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号4は、TMab4のCDRH1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号5は、TMab4のCDRH1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号1は、TMab4のCDRH2中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号2は、TMab4のCDRH2中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号3は、TMab4のCDRH2中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号4は、TMab4のCDRH2中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号5は、TMab4のCDRH2中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号1は、TMab4のCDRH3中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号2は、TMab4のCDRH3中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号3は、TMab4のCDRH3中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号4は、TMab4のCDRH3中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号5は、TMab4のCDRH3中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号1は、TMab4のCDRL3中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号2は、TMab4のCDRL3中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号3は、TMab4のCDRL3中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号4は、TMab4のCDRL3中に挿入される いくつかの実施形態では、配列番号5は、TMab4のCDRL3中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号6は、TMab4のCDRH1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号7は、TMab4のCDRH23中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号8は、TMab4の軽鎖の14~22のアミノ酸に代えて挿入される。 いくつかの実施形態では、CDRH1中へは、重鎖のアミノ酸25~33を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH1中へは、重鎖のアミノ酸26~33を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH1中へは、重鎖のアミノ酸26~32を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH1中へは、重鎖のアミノ酸27~33を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH1中へは、重鎖のアミノ酸28~33を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH1中へは、重鎖のアミノ酸22~30を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH1中へは、重鎖のアミノ酸22~29を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH1中へは、重鎖のアミノ酸26~31を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH1中へは、重鎖のアミノ酸23~32を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH1中へは、重鎖のアミノ酸23~31を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH1中へは、重鎖のアミノ酸28~35を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH3中へは、重鎖のアミノ酸100~108を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH3中へは、重鎖のアミノ酸99~106を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH3中へは、重鎖のアミノ酸99~105を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH3中へは、重鎖のアミノ酸100~106を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH3中へは、重鎖のアミノ酸100~105を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH3中へは、重鎖のアミノ酸100~104を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH3中へは、重鎖のアミノ酸99~107を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH2中へは、重鎖のアミノ酸52~59を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRH2中へは、重鎖のアミノ酸52~60を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRL3中へは、軽鎖のアミノ酸97~103を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRL3中へは、軽鎖のアミノ酸98~103を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRL3中へは、軽鎖のアミノ酸96~104を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRL3中へは、軽鎖のアミノ酸98~104を置換することを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、抗体は、3E10であり、免疫原性ペプチドは、CDRL1およびCDRL2のいずれか1つの中に挿入される。いくつかの実施形態では、抗体は、3E10であり、免疫原性ペプチドは、CDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、抗体は、3E10であり、免疫原性ペプチドは、CDRL2中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号1は、3E10のCDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号2は、3E10のCDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号3は、3E10のCDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号4は、3E10のCDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号5は、3E10のCDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号1は、3E10のCDRL2中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号2は、3E10のCDRL2中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号3は、3E10のCDRL2中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号4は、3E10のCDRL2中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号5は、3E10のCDRL2中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号6は、3E10のCDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号9は、3E10のCDRL2中に挿入される。いくつかの実施形態では、CDRL1中へは、軽鎖のアミノ酸27~35を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRL1中へは、軽鎖のアミノ酸28~36を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRL2中へは、軽鎖のアミノ酸50~58を置換することを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、抗体は、71F12であり、免疫原性ペプチドは、CDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号1は、71F12のCDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号2は、71F12のCDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号3は、71F12のCDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号4は、71F12のCDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、配列番号5は、71F12のCDRL1中に挿入される。いくつかの実施形態では、CDRL1中へは、軽鎖のアミノ酸28~36を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRL1中へは、軽鎖のアミノ酸26~34を置換することを含む。いくつかの実施形態では、CDRL2中へは、軽鎖のアミノ酸50~58を置換することを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗体は、商業的に入手できる抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、TMab4、3E10および71F12のいずれか1つと同等のレベルで結合される細胞中に侵入する。いくつかの実施形態では、抗体は、TMab4と同等のレベルで結合される細胞中に侵入する。いくつかの実施形態では、抗体は、3E10と同等のレベルで結合される細胞中に侵入する。いくつかの実施形態では、抗体は、71F12と同等のレベルで結合される細胞中に侵入する。いくつかの実施形態では、同等は、元の抗体の少なくとも、50、55、60、65、70、75、80、85、90、92、95、97、99、または100%である透過を伴う。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、同等は、元の抗体の少なくとも80%である透過を伴う。いくつかの実施形態では、同等は、元の抗体の少なくとも90%である透過を伴う。
【0108】
いくつかの実施形態では、抗原結合領域および免疫原性ペプチドは、同じアミノ酸鎖の一部である。いくつかの実施形態では、抗原結合領域および細胞透過配列は、同じアミノ酸鎖の一部である。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドおよび細胞透過配列は、同じアミノ酸鎖の一部である。いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合分子は、単一の融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合分子は、単一のアミノ酸鎖である。
【0109】
いくつかの実施形態では、抗原結合領域および免疫原性ペプチドは、リンカーにより分離される。いくつかの実施形態では、抗原結合領域および細胞透過配列は、リンカーにより分離される。いくつかの実施形態では、免疫原性および細胞透過配列は、リンカーにより分離される。いくつかの実施形態では、リンカーは、化学リンカーではない。いくつかの実施形態では、リンカーは、人工リンカーではない。いくつかの実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ酸リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、少なくとも、1、2、3、4または5個のアミノ酸を含む、またはこれらからなる。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、リンカーは、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸を含む、またはこれらからなる。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸を含む、またはこれらからなる。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0110】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体T1-T19、T1_30-T1_35、T1_39-T1_45およびT1_47から選択される。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1028~1040、1043~1045、1047~1055、および1058~1059または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体から選択される配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、類似体または相同体は、免疫原性ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、類似体または相同体は、細胞を結合できる。いくつかの実施形態では、類似体または相同体は、細胞結合時に細胞質ゾルに送達される。いくつかの実施形態では、細胞質ゾルへの到達は、結合細胞の表面上への免疫原性ペプチドの提示を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1028を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1029を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1030を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1031を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1032を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1033を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1034を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1035を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1036を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1037を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1038を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1039を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1040を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1043を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1044を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1045を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1047を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1048を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1049を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1050を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1051を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1052を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1053を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1054を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1055を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1058を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1022を含む軽鎖可変領域および配列番号1059を含む重鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1021を含む重鎖可変領域および配列番号1041~1042、1046、および1056~1057から選択される配列を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1021を含む重鎖可変領域および配列番号1041を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1021を含む重鎖可変領域および配列番号1042を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1021を含む重鎖可変領域および配列番号1046を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1021を含む重鎖可変領域および配列番号1056を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1021を含む重鎖可変領域および配列番号1057を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体T2_6、T2_11-T2_13、T2_20およびT2_23から選択される。 いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1023を含む重鎖可変領域および配列番号1060~1065から選択される配列を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1023を含む重鎖可変領域および配列番号1060を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1023を含む重鎖可変領域および配列番号1061を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1023を含む重鎖可変領域および配列番号1062を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1023を含む重鎖可変領域および配列番号1063を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1023を含む重鎖可変領域および配列番号1064を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1023を含む重鎖可変領域および配列番号1065を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体T4_1およびT4_3から選択される。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1026を含む重鎖可変領域および配列番号1066を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1027を含む重鎖可変領域および配列番号1067を含む軽鎖可変領域または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、少なくとも85%の同一性は、少なくとも、90、92、95、97、99、または100%の同一性である。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。抗原結合CDR、免疫原性ペプチドおよび細胞透過部分などの、抗体中の特定の領域が、機能のために必要とされるが、他の領域は、機能を変えることなく変化を許容し得ることは、当業者には理解されるであろう。他の不活性CDRは、多くのCDR間配列ならびに抗体の定常領域内の配列などの、このような領域である。機能を保持するがこれらの他の領域で変化を含む類似体および相同体もまた、本発明に包含される。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗原結合領域は、単鎖抗体である。いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合分子は、第1の単鎖抗体および第2の単鎖抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1の単鎖抗体は、標的細胞の抗原を結合できる。いくつかの実施形態では、第2の単鎖抗体は、機能的でない。いくつかの実施形態では、第2の単鎖抗体は、細胞透過配列を含む。いくつかの実施形態では、第1の単鎖抗体は、免疫原性ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、第2の単鎖抗体は、免疫原性ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、第1の単鎖抗体は、免疫原性ペプチドと置換される不活性CDRを含む。いくつかの実施形態では、第1の単鎖抗体は、細胞透過配列と置換される不活性CDRを含む。いつかの実施形態では、第1の単鎖抗体と上記第2の単鎖抗体は、リンカーにより分離される。いくつかの実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカーまたはアミノ酸リンカーである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸リンカーである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、ペプチド結合である。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、第1の重鎖および第1の軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域は、第1の重鎖および第1の軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1の重鎖および第1の軽鎖は、標的細胞上の抗原を結合できる。いくつかの実施形態では、第1の重鎖のCDRは、不活性である。いくつかの実施形態では、第1の軽鎖のCDRは、不活性である。いくつかの実施形態では、第1の重鎖の不活性CDRは、免疫原性ペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、第1の軽鎖の不活性CDRは、免疫原性ペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、第1の重鎖の不活性CDRは、細胞透過配列で置換される。いくつかの実施形態では、第1の軽鎖の不活性CDRは、細胞透過配列で置換される。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、第2の重鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、第2の軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、第2の重鎖および第2の軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、第2の重鎖を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、第2の軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合領域は、第2の重鎖および第2の軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、第2の重鎖のCDRは、不活性である。いくつかの実施形態では、第2の軽鎖のCDRは、不活性である。いくつかの実施形態では、第2の重鎖は、免疫原性ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、第2の軽鎖は、免疫原性ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、第2の重鎖は、細胞透過配列を含む。いくつかの実施形態では、第2の軽鎖は、細胞透過配列を含む。いくつかの実施形態では、第2の軽鎖のCDRは、置換される。いくつかの実施形態では、第2の重鎖のCDRは、置換される。いくつかの実施形態では、第2の重鎖の不活性CDRは、免疫原性ペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、第2の軽鎖の不活性CDRは、免疫原性ペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、第2の重鎖の不活性CDRは、細胞透過配列で置換される。いくつかの実施形態では、第2の軽鎖の不活性CDRは、細胞透過配列で置換される。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗原結合分子は、二重機能抗原結合分子である。いくつかの実施形態では、組成物は、二重機能抗原結合分子を含む。いくつかの実施形態では、二重機能抗原結合分子は、本発明の抗体または抗原結合フラグメントを含む。いくつかの実施形態では、二重機能抗原結合分子は、二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、二重機能抗原結合分子は、第1の抗体または抗原結合分子および第2の抗体または抗原結合分子を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗体は、第1の重鎖および第1の軽鎖を含み、第2の抗体は、第2の重鎖および第2の軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、重鎖および軽鎖は、重鎖のCH1ドメインと軽鎖のCLドメインの間でハイブリダイズされる。いくつかの実施形態では、ハイブリダイズされるは、結合されることである。いくつかの実施形態では、ハイブリダイズされるは、ジスルフィド結合を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗体またはその抗原結合フラグメントは、標的細胞上で過剰発現される抗原を結合できる。いくつかの実施形態では、標的細胞は、癌細胞である。いくつかの実施形態では、抗原は、癌抗原である。
【0119】
癌抗原の例は、限定されないが、上皮増殖因子(EGFR)、受容体チロシンプロテインキナーゼerbB2(HER2)、ネクチン細胞接着分子4(ネクチン-4)、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達物質2(TROP-2/TACSTD2)、組織因子(TF/F3)、B細胞成熟抗原(BCMA/TNFRSF17)、プログラム細胞死リガンド1(PDL-1)、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、TNF受容体スーパーファミリーメンバー8(CD30/TNFRSF8)、Bリンパ球抗原CD19(CD19)、表面抗原分類-22(CD22)、シグレック-3(CD33)、表面抗原分類38(CD38)、表面抗原分類79(CD79)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、C-Cモチーフケモカイン受容体4(CCR4)、血管内皮細胞増殖因子2(VEGFR2/KDR)、葉酸受容体1(FOLR1)、キャンパス-1抗原(CD52)、血小板由来増殖因子受容体A(PDGFRα)、ジシアロガングリオシドGD2、モノシアロジヘキソシルガングリオシド(GM3)、インスリン様成長因子1(IGF-1)受容体(IGF1R)、SLAMファミリーメンバー7(SLAMF7)、および細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA-4)を含む。これらの癌抗原に結合する抗体は、当技術分野で周知であり、いずれかのこのような抗体が、本発明の標的化モジュールとして使用され得る。いくつかの実施形態では、標的化分子により標的化される癌抗原は、HER2、EGFR、EpCAM、BCMA、CD33、CD38、CTLA、LAG-3、およびPD-L1から選択される。ターゲティング部分に使用できる抗体の例は、表4で提供される。
【表4】
【0120】
いくつかの実施形態では、抗原は、上皮成長因子受容体(EGFR)である。いくつかの実施形態では、第2の抗体は、セツキシマブ、パニツムマブおよびネシツムマブから選択される。いくつかの実施形態では、第2の抗体は、セツキシマブである。いくつかの実施形態では、第2の抗体は、パニツムマブである。いくつかの実施形態では、第2の抗体は、ネシツムマブである。いくつかの実施形態では、セツキシマブは、配列番号1069を含む重鎖または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、セツキシマブは、配列番号1068を含む軽鎖または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、パニツムマブは、配列番号1071を含む重鎖または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、パニツムマブは、配列番号1070を含む軽鎖または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、ネシツムマブは、配列番号1073を含む重鎖または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、ネシツムマブは、配列番号1072を含む軽鎖または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、類似体または相同体は、標的結合機能を保持する。いくつかの実施形態では、類似体または相同体は、抗体のCDRを保持する。いくつかの実施形態では、CDRは、不活性ではない全てのCDRである。
【0121】
いくつかの実施形態では、第2の抗体の少なくとも1個の不活性CDRは、免疫原性ペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、第2の抗体は、標的化抗体である。いくつかの実施形態では、セツキシマブのCDRH1は、置換される。いくつかの実施形態では、セツキシマブのCDRL1は、置換される。いくつかの実施形態では、セツキシマブのCDRL2は、置換される。いくつかの実施形態では、パニツムマブのCDRL1は、置換される。いくつかの実施形態では、パニツムマブのCDRL2は、置換される。いくつかの実施形態では、ネシツムマブのCDRL1は、置換される。いくつかの実施形態では、ネシツムマブのCDRL2は、置換される。いくつかの実施形態では、CDRは、表1~3で提供されるものから選択されるペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、CDRは、表1で提供されるものから選択されるペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、CDRは、表2で提供されるものから選択されるペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、CDRは、表3で提供されるものから選択されるペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、CDRは、配列番号1~11から選択されるペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、CDRは、配列番号1~5から選択されるペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、CDRは、配列番号1で置換される。いくつかの実施形態では、第2の抗体は、不活性CDR由来のアミノ酸配列に代えて免疫原性ペプチドを含む。いくつかの実施形態では、不活性CDRは、表14で提供される。
【0122】
いくつかの実施形態では、第1の抗体は、ヘテロダイマー化を促進する少なくとも1つの改変を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗体は、ホモ二量体化を抑制する少なくとも1つの改変を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗体は、ヘテロダイマー化を促進する少なくとも1つの改変を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗体は、ホモ二量体化を抑制する少なくとも1つの改変を含む。いくつかの実施形態では、改変は、ノブインホール改変である。いくつかの実施形態では、改変は、変異である。いくつかの実施形態では、改変は、定常領域にある。いくつかの実施形態では、定常領域は、Fc領域である。
【0123】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、Ig CH2ドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、Ig 重鎖CH2ドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、Ig CH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、Ig 重鎖CH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fc領域は、Ig CH2およびIg CH3ドメインの両方を含む、または両方からなる。いくつかの実施形態では、Fc領域は、Ig重鎖CH2およびIg重鎖CH3ドメインの両方を含む、または両方からなる。いくつかの実施形態では、第1の鎖は、Fc領域の第1の部分を含み、および第2の鎖は、Fc領域の第2の部分を含む。いくつかの実施形態では、第1の部分は、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはそれらの両方を含む。いくつかの実施形態では、第2の部分は、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはそれらの両方を含む。いくつかの実施形態では、Fc領域の第1の部分とFc領域の第2の部分の境界は、機能的なFc領域を生成する。いくつかの実施形態では、境界は、接触を含む。いくつかの実施形態では、境界は、隣接位置決めを含む。いくつかの実施形態では、境界は、本発明のタンパク質複合体の形成を含む。いくつかの実施形態では、境界は、第1および第2のダイマー化ドメインのダイマー化を含む。いくつかの実施形態では、CH2ドメインは、Ig CH2ドメインである。いくつかの実施形態では、CH2ドメインは、重鎖CH2ドメインである。いくつかの実施形態では、CH3ドメインは、Ig CH3ドメインである。いくつかの実施形態では、CH3ドメインは、重鎖CH3ドメインである。
【0124】
いくつかの実施形態では、CH2ドメインは、アミノ酸配列SVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAK(配列番号1097)または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、CH2ドメインは、配列番号1097からなる。いくつかの実施形態では、配列番号1097は、IgG1 CH2ドメインである。
【0125】
いくつかの実施形態では、CH3ドメインは、アミノ酸配列GQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号1098)または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、CH3ドメインは、アミノ酸配列GQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号1099)または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む。いくつかの実施形態では、CH3ドメインは、配列番号1098からなる。いくつかの実施形態では、CH3ドメインは、配列番号1099からなる。いくつかの実施形態では、配列番号1098は、IgG1 CH3ドメインである。いくつかの実施形態では、配列番号1099は、IgG1 CH3ドメインである。いくつかの実施形態では、配列番号1098配列は、ヨーロッパ系およびアメリカ系のヒトで主に見つかる配列である。いくつかの実施形態では、配列番号1099は、アジア系のヒトで主に見つかる配列である。
【0126】
いくつかの実施形態では、CH3ドメインは、変異を含む。いくつかの実施形態では、第1のCH3ドメインは、第1の変異を含む。いくつかの実施形態では、第2のCH3ドメインは、第2の変異を含む。いくつかの実施形態では、CH2ドメインは、変異を含む。いくつかの実施形態では、第1のCH2ドメインは、第1の変異を含む。いくつかの実施形態では、第2のCH2ドメインは、第2の変異を含む。いくつかの実施形態では、CH2およびCH3ドメインは、両方とも変異を含む。いくつかの実施形態では、第1のCH2ドメインおよび第1のCH3ドメインはそれぞれ、第1の変異を含む。いくつかの実施形態では、第2のCH2ドメインおよび第2のCH3ドメインはそれぞれ、第2の変異を含む。いくつかの実施形態では、変異は、第1のポリペプチド鎖のホモ二量体化を抑制する。いくつかの実施形態では、第1の変異は、第1のポリペプチド鎖のホモ二量体化を抑制する。いくつかの実施形態では、変異は、第2のポリペプチド鎖のホモ二量体化を抑制する。いくつかの実施形態では、第2の変異は、第2のポリペプチド鎖のホモ二量体化を抑制する。いくつかの実施形態では、変異は、ヘテロダイマー化を許容する。いくつかの実施形態では、変異は、第1および第2の鎖のヘテロダイマー化を許容する。いくつかの実施形態では、許容することは、促進することである。いくつかの実施形態では、許容することは、強化することである。
【0127】
重鎖のヘテロ二量体化を促進しおよび/またはホモ二量体化を抑制する変異は、当該技術分野において周知である。いずれかのこのような変異または変化を、本発明のポリペプチドを構築するために使用し得る。いくつかの実施形態では、IgG由来の領域は、IgA由来の領域で置換される。いくつかの実施形態では、TCRa由来の領域は、第1のCH3ドメイン中に挿入され、TCRb由来の領域は、第2のCH3ドメイン中に挿入される。いくつかの実施形態では、変異は、TCR由来の領域の挿入である。いくつかの実施形態では、TCRは、TCRaおよびTCRbから選択される。いくつかの実施形態では、変異は、異なるIg由来の領域の挿入である。これらの変異の例は、表5で見出される。いくつかの実施形態では、変異は、表5の変異から選択される。いくつかの実施形態では、第1の変異は、表5の行および第2の列で提供される変異の群から選択され、第2の変異は、表5の第3の列の同じ行で提供される変異の群である。表5中の変異は、特に明記しない限り、IgG1に対するKabatナンバリングと共に提供され;対応する変異は、他のIGで、特に他のIgGで作製できる。いくつかの実施形態では、第1の変異は、T366Yであり、第2の変異は、Y407Tである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、S354CおよびT366Wであり、第2の変異は、Y349C、T366S、L368A、およびY407Vである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、S364HおよびF405Aであり、第2の変異は、Y349TおよびT392Fである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、T350V、L351Y、F405A、およびY407Vであり、第2の変異は、T350V、T366L、K392L、およびT394Wである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、K392D、およびK409Dであり、第2の変異は、E356K、およびD399Kである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、D221E、P228E、およびL368Eであり、第2の変異は、D221R、P228R、およびK409Rである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、K360E、およびK409Wであり、第2の変異は、Q347R、D399V、およびF405Tである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、K360E、K409W、およびY349Cであり、第2の変異は、Q347R、D399V、F405T、およびS354Cである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、F405Lであり、第2の変異は、K409Rである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、K360D、D399M、およびY407Aであり、第2の変異は、E345R、Q347R、T366V、およびK409Vである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、Y349S、K370Y、T366M、およびK409Vであり、第2の変異は、E356G、E357D、S364Q、およびY407Aである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、T366Kであり、第2の変異は、C351D、Y349E、Y349D、L368E、L368D、Y349EおよびR355E、Y349EおよびR355D、Y349DおよびR355E、ならびにY349DおよびR355Dから選択される。いくつかの実施形態では、第1の変異は、T366KおよびC351Kであり、第2の変異は、C351D、Y349E、Y349D、L368E、L368D、Y349EおよびR355E、Y349EおよびR355D、Y349DおよびR355E、ならびにY349DおよびR355Dから選択される。いくつかの実施形態では、第1の変異は、L351DおよびL368Eであり、第2の変異は、L351KおよびT366Kである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、L368DおよびK370Sであり、第2の変異は、E357QおよびS364Kである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、T366Wであり、第2の変異は、T366S、L368A、およびY407Vである。いくつかの実施形態では、Igは、IgG2であり、第1の変異は、C223E、P228E、およびL368Eであり、第2の変異はC223R、E225R、P228R、およびK409Rである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、S354CまたはT366Wであり、第2の変異は、Y349C、T366S、L368A、またはY407Vである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、S364HまたはF405Aであり、第2の変異は、Y349TまたはT392Fである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、T350V、L351Y、F405A、またはY407Vであり、第2の変異は、T350V、T366L、K392L、またはT394Wである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、K392DまたはK409Dであり、第2の変異は、E356KまたはD399Kである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、D221E、P228E、またはL368Eであり、第2の変異は、D221R、P228R、またはK409Rである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、K360EまたはK409Wであり、第2の変異は、Q347R、D399VまたはF405Tである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、K360E、K409W、またはY349Cであり、第2の変異は、Q347R、D399V、F405T、またはS354Cである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、K360D、D399M、またはY407Aであり、第2の変異は、E345R、Q347R、T366V、またはK409Vである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、Y349S、K370Y、T366M、またはK409Vであり、第2の変異は、E356G、E357D、S364Q、またはY407Aである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、L351DまたはL368Eであり、第2の変異は、L351KまたはT366Kである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、L368DまたはK370Sであり、第2の変異は、E357QまたはS364Kである。いくつかの実施形態では、第1の変異は、T366Wであり、第2の変異は、T366S、L368A、またはY407Vである。いくつかの実施形態では、Igは、IgG2であり、第1の変異は、C223E、P228E、またはL368Eであり、第2の変異は、C223R、E225R、P228R、またはK409Rである。いくつかの実施形態では、第1の重鎖定常領域は、配列番号1074、または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体もしくは相同体を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、第2の重鎖定常領域は、配列番号1074を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、第1の重鎖定常領域は、配列番号1075、または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体もしくは相同体を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、第2の重鎖定常領域は、配列番号1075を含む、またはこれらからなる。配列番号1074および配列番号1075は相互にヘテロ二量体化するが、ホモ二量体化を抑制することが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、CLドメインは、配列番号1076、または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体もしくは相同体を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、軽鎖定常領域は、配列番号1076を含む、または配列番号1076からなる。いくつかの実施形態では、類似体または相同体は、ヘテロ二量体化を促進しかつホモ二量体化を抑制する変異を保持する。
【表5】
【0128】
いくつかの実施形態では、二重機能抗原結合分子は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、2つの重鎖は、配列番号1088および1080であり、2つの軽鎖は、配列番号1087および1079、または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体もしくは相同体である。いくつかの実施形態では、2つの重鎖は、配列番号1088および1082であり、2つの軽鎖は、配列番号1087および1081、または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体もしくは相同体である。いくつかの実施形態では、2つの重鎖は、配列番号1090および1082であり、2つの軽鎖は、配列番号1089および1079、または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体もしくは相同体である。いくつかの実施形態では、2つの重鎖は、配列番号1090および1082であり、2つの軽鎖は、配列番号1089および1081、または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体もしくは相同体である。いくつかの実施形態では、2つの重鎖は、配列番号1088および1086であり、2つの軽鎖は、配列番号1087および1085、または少なくとも85%の配列同一性を含む類似体もしくは相同体である。類似体または相同体は、標的化モジュールにより標的タンパク質を標的化し、細胞に結合し、死滅化モジュールにより細胞質ゾルに送達され、かつHLAとの複合体で細胞表面上に提示される免疫原性ペプチドを含むことが、理解されるであろう。
【0129】
いくつかの実施形態では、組成物は、医薬組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または補助剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、対象への投与用に処方される。いくつかの実施形態では、組成物は、全身投与用に処方される。いくつかの実施形態では、組成物は、腫瘍への投与用に処方される。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内投与用に処方される。いくつかの実施形態では、組成物は、対象への投与用に処方される。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0130】
本明細書で使用される、「担体」、「賦形剤」、または「補助剤」という用語は、活性薬剤ではない医薬組成物の任意の成分を指す。本明細書で使用される、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、非毒性の不活性固体、半固体液体充填剤、希釈剤、封入材料、任意のタイプの製剤補助剤、または単に生理食塩水などの無菌水性媒体を指す。薬学的に許容可能な担体として機能し得る物質のいくつかの例は、ラクトース、ブドウ糖およびスクロースなどの糖類;コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末状トラガント;麦芽;ゼラチン;滑石;ココアバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールポリエチレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質非含有水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびに医薬製剤に使用される他の非毒性の相溶性物質である。本明細書において担体として機能し得る物質のいくつかの非限定例は、糖、デンプン、セルロースおよびその誘導体、トラガント末、麦芽、ゼラチン、滑石、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油、アルギン酸、ポリオール、発熱物質を含まない水、等張生理食塩水、リン酸緩衝液、ココアバター(坐剤基剤)、乳化剤ならびに他の医薬製剤で使用される他の非毒性の医薬適合性物質を含む。ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤および滑剤、ならびに着色料、香味剤、賦形剤、安定剤、抗酸化剤、および保存剤も存在し得る。任意の非毒性、不活性および有効な担体が、本明細書で意図される組成物を製剤化するために使用され得る。この関連で、好適な薬学的に許容可能な担体、賦形剤および希釈剤は、当業者には周知であり、例えば、The Merck Index,Thirteenth Edition,Budavari et al.,Eds.,Merck & Co.,Inc.,Rahway,N.J.(2001);the CTFA(Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association)International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,Tenth Edition(2004);およびthe “Inactive Ingredient Guide,” U.S.Food and Drug Administration(FDA)Center for Drug Evaluation and Research(CDER)Office of Managementに記載されるものである。これらの全ての内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本組成物に有用な薬学的に許容可能な賦形剤、担体および希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス液、およびDMSOを含む。これらの追加の不活性成分、ならびに効果的配合および投与手順は、当該技術分野において周知であり、Goodman and Gillman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics,8th Ed.,Gilman et al.Eds.Pergamon Press(1990);Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1990);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,Pa.,(2005)などの標準的教科書に記載されている。これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載される組成物はまた、人工的に作成された構造物、例えば、リポソーム、ISCOMS、徐放粒子、および血清中でペプチドまたはポリペプチドの半減期を延長する他のビークルに含有されてよい。リポソームは、エマルション、フォーム、ミセル、不溶性単分子膜、液晶、リン脂質分散物およびラメラ層などを含む。本明細書に記載のペプチドとの使用のためのリポソームは、中性および負電荷のリン脂質およびコレステロールなどのステロールを通常含む、標準的なビークル形成脂質から形成される。脂質の選択は通常、リポソームサイズおよび血液中の安定性などを考慮して決定される。種々の方法を、例えば、Coligan,J.E.et al,Current Protocols in Protein Science,1999,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkにより概説されるように、リポソームの調製に利用できる。さらに、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号および同第5,019,369号も参照されたい。
【0131】
担体は、全体で、本明細書に提示される医薬組成物の約0.1重量%~約99.99999重量%を構成し得る。
【0132】
本明細書で使用される、「投与する」、「投与」などの用語は、健全な医療行為において、活性剤を含む組成物を、治療効果を提供するように対象に送達する任意の方法を指す。本発明の主題の一態様は、それを必要としている患者への本発明の主題の組成物の治療的有効量の静脈内投与を提供する。他の好適な投与経路は、非経口、皮下、経口、筋肉内、腫瘍内または腹腔内を含み得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、オープンリーディングフレームを含む。いくつかの実施形態では、オープンリーディングフレームは、本発明の抗原結合分子をコードする。いくつかの実施形態では、核酸分子は、本発明の抗原結合分子を一括してコードする複数のオープンリーディングフレームを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、本発明の核酸分子に動作可能に連結された少なくとも1つの調節エレメントを含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、本発明の核酸分子をコードするオープンリーディングフレームに動作可能に連結された少なくとも1つの調節エレメントを含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、本発明の抗原結合分子を一括してコードするオープンリーディングフレームにそれぞれ動作可能に連結された複数の調節エレメントを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、オープンリーディングフレームに動作可能に連結された少なくとも1つの調節エレメントをそれぞれ含む複数のベクターを含み、複数のオープンリーディングフレームは、本発明の核酸分子を一括してコードする。
【0135】
本明細書で使用される用語「発現」は、遺伝子産物の生合成を指し、上記遺伝子産物の転写および/または翻訳を含む。従って、核酸分子の発現は、核酸フラグメントの転写(例えば、mRNAまたは他の機能性RNAを生ずる転写)および/または前駆物質または成熟タンパク質(ポリペプチド)へのRNAの翻訳を指し得る。
【0136】
細胞内での遺伝子の発現は、当業者に周知である。それは、多くの方法の中でも特に、遺伝子導入、ウイルス感染、または細胞のゲノムの直接改変により実行できる。いくつかの実施形態では、遺伝子は、プラスミドまたはウイルスベクターなどの発現ベクター中にある。
【0137】
ベクター核酸配列は通常、少なくとも細胞中での増殖のための複製起点、および必要に応じ、異種ポリヌクレオチド配列、発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー)、選択可能なマーカー(例えば、抗生物質耐性)、ポリアデニン配列などの追加のエレメントを含む。
【0138】
ベクターは、非ウイルス法によりまたはウイルス法により送達されるDNAプラスミドであってよい。ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはポックスウイルスベクターであってよい。プロモーターは、哺乳動物細胞において活性であり得る。プロモーターは、ウイルスプロモーターであってよい。
【0139】
いくつかの実施形態では、遺伝子は、プロモーターに動作可能に連結される。「動作可能に連結される」という用語は、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にするように(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、またはベクターが宿主細胞中に導入される場合は宿主細胞において)調節エレメントに連結されることを意味すると意図される。
【0140】
いくつかの実施形態では、ベクターは、電気穿孔(例えば、From et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82,5824(1985)に記載されるように)、ヒートショック、ウイルスベクターによる感染、小ビーズまたは粒子のマトリックス内もしくは表面上の核酸を用いた小粒子による高速弾道貫入(Klein et al.,Nature 327.70-73(1987))、などの標準的方法により細胞に導入される。
【0141】
本明細書で使用される、用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼ、即ち、RNAポリメラーゼIIのための開始部位の周りにクラスター化される一群の転写制御モジュールを指す。プロモーターは、離散形機能モジュールから構成され、それぞれは、約7~20bpのDNAからなり、転写活性化因子またはリプレッサータンパク質に対する1種または複数の認識部位を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、RNAポリメラーゼII(RNAP IIおよびPol II)により転写される。RNAP IIは、真核細胞で見出される酵素である。それは、DNAの転写を触媒して、mRNAおよびほとんどのsnRNAおよびマイクロRNAの前駆物質を合成する。
【0143】
いくつかの実施形態では、哺乳動物発現ベクターは、pcDNA3、pcDNA3.1(±)、pGL3、pZeoSV2(±)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81(これらはInvitrogenから入手可能である)、pCI(これはPromegaから入手可能である)、pMbac、pPbac、pBK-RSVおよびpBK-CMV(これらはStrategeneから入手可能である)、pTRES(これはClontechから入手可能である)、ならびに、それらの誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0144】
いくつかの実施形態では、レトロウイルスなどの真核生物ウイルス由来の調節エレメントを含む発現ベクターが、本発明で用いられる。SV40ベクターは、pSVT7およびpMT2を含む。いくつかの実施形態では、ウシパピローマウイルス由来のベクターは、pBV-1MTHAを含み、エプスタイン・バーウイルス由来のベクターは、pHEBOおよびp2O5を含む。他の例示的なベクターとしては、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、およびSV-40初期プロモーター、SV-40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核生物細胞での発現に有効であると示される他のプロモーターの指示下でタンパク質の発現を可能にする、任意の他のベクターが挙げられる。
【0145】
いくつかの実施形態では、水平感染および標的特異性などの利点を提供する組み換えウイルスベクターは、インビボ発現のために使用される。一実施形態では、水平感染は、例えば、レトロウイルスのライフサイクルに固有であり、それにより単一の感染細胞が多くの子孫ビリオンを生成し、これらが母体から分離し隣接細胞に感染するプロセスである。一実施形態では、結果は、広い領域が急速に感染されるようになることであり、そのほとんどはもとのウイルス粒子により最初に感染されなかった。一実施形態では、水平に伝染できないウイルスベクターが、生成される。一実施形態では、この特徴は、望ましい目的が限局数の標的細胞にのみ特定の遺伝子を導入することである場合、有用であり得る。
【0146】
種々の方法が、細胞中に本発明の発現ベクターを導入するために使用できる。このような方法は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(1989,1992),in Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1989),Chang et al.,Somatic Gene Therapy,CRC Press,Ann Arbor,Mich.(1995),Vega et al.,Gene Targeting,CRC Press,Ann Arbor Mich.(1995),Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths,Boston Mass.(1988)およびGilboa et at.[Biotechniques 4(6):504-512,1986]に一般的に記載されており、例えば、組換えウイルスベクターによる安定なまたは一時的な遺伝子導入、リポフェクション、電気穿孔および感染を含む。さらに、ポジティブ-ネガティブ選択法に関する米国特許第5,464,764号および同第5,487,992号を参照されたい。
【0147】
一実施形態では、植物発現ベクターが、使用される。一実施形態では、ポリペプチドコード配列の発現は、いくつかのプロモーターにより推進される。いくつかの実施形態では、ウイルスプロモーター、例えばCaMVの35S RNAおよび19S RNAプロモーター[Brisson et al.、Nature 310:511-514(1984)]、またはTMVに対するコートタンパク質プロモーター[Takamatsu et al.、EMBO J.6:307-311(1987)]が、使用される。別の実施形態では、例えばRUBISCOの小サブユニット[Coruzzi et al.,EMBO J.3:1671-1680(1984)およびBrogli et al.,Science 224:838-843(1984)]またはヒートショックプロモーター、例えば大豆hsp17.5-Eまたはhsp17.3-B[Gurley et al.,Mol.Cell.Biol.6:559-565(1986)]などの植物プロモーターが、使用される。一実施形態では、構築物は、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、微量注入、電気穿孔、および当業者に公知の他の技術を用いて植物細胞中に導入される。例えば、Weissbach & Weissbach [Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,NY,Section VIII,pp 421-463(1988)]を参照されたい。当技術分野で公知である、昆虫および哺乳動物宿主細胞系などの他の発現系もまた、本発明により使用されてよい。
【0148】
挿入されたコード配列(ポリペプチドをコードする)の転写および翻訳のための必須のエレメントを含む以外に、本発明の発現構築物はまた、発現されたポリペプチドの安定性、産生、精製、収率または活性を最適化するように操作された配列を含み得ることは理解されよう。
【0149】
いくつかの実施形態では、方法は、癌を治療する方法である。いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合分子は、癌を治療することにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の二重機能抗原結合分子は、癌を治療することにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、癌を治療することにおける使用のためのものである。いくつかの実施形態では、癌は、癌特異的抗原を発現する癌である。いくつかの実施形態では、癌は、癌特異的抗原を過剰発現する癌である。いくつかの実施形態では、過剰発現は、非癌細胞中でよりも高いレベルでの発現である。いくつかの実施形態では、非癌細胞は、癌細胞と同じ細胞型または組織である。いくつかの実施形態では、癌は、免疫原性癌ペプチドを発現する癌である。いくつかの実施形態では、癌は、血液癌である。いくつかの実施形態では、癌は、悪性免疫細胞を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、B細胞である。いくつかの実施形態では、癌は、固形癌である。いくつかの実施形態では、癌は、PD-L1陽性癌である。いくつかの実施形態では、癌は、EGFR陽性癌である。いくつかの実施形態では、癌は、EGFRを過剰発現する癌である。
【0150】
本明細書で使用される、「癌」は、細胞増殖に関連する疾患を指す。癌の非限定的種類は、癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、芽細胞腫および生殖細胞腫瘍を含む。一実施形態では、癌腫は、限定されないが、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、および結腸癌を含む上皮細胞由来の腫瘍を指す。一実施形態では、肉腫は、限定されないが、ブドウ状肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性血管内皮腫、悪性シュワン腫、骨肉腫および軟組織肉腫を含む間葉細胞由来腫瘍を指す。一実施形態では、リンパ腫は、骨髄を出てリンパ節中で成熟する傾向がある、造血細胞由来の腫瘍を指し、限定されないがホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫および免疫増殖性疾患を含む。一実施形態では、白血病は、骨髄を出て血液中で成熟する傾向がある、造血細胞由来の腫瘍を指し、限定されないが急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、T細胞性前リンパ球性白血病、大顆粒リンパ球性白血病および成人T細胞白血病を含む。一実施形態では、芽細胞腫は、未成熟前駆細胞または胚性組織由来の腫瘍を指し、限定されないが肝芽腫、髄芽腫、腎芽細胞腫、神経芽腫、膵芽腫、胸膜肺芽腫、網膜芽細胞腫および多形神経膠芽腫を含む。一実施形態では、生殖細胞腫瘍は、生殖細胞由来の腫瘍を指し、限定されないがジャーミノーマ胚細胞腫瘍またはセミノーマ胚細胞腫瘍(GGCT、SGCT)および非ジャーミノーマ胚細胞腫瘍または非セミノーマ胚細胞腫瘍(NGGCT、NSGCT)を含む。一実施形態では、ジャーミノーマまたはセミノーマ腫瘍は、限定されないがジャーミノーマ、ジスゲルミノーマおよびセミノーマを含む。一実施形態では、非ジャーミノーマまたは非セミノーマ腫瘍は、純粋生殖細胞および混合生殖細胞腫瘍を指し、限定されないが胚性癌腫、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、涙腺癌(tearoom)、多胚腫、性腺芽腫および奇形癌を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合分子は、癌ワクチンである。いくつかの実施形態では、癌ワクチンは、樹状細胞抗原を結合できる抗原結合領域を含む抗原結合分子である。樹状細胞中への進入時に、免疫原性癌ペプチドは、本発明の分子の残部から切断され、HLA分子により樹状細胞の表面上に提示されることは、当業者には理解されよう。これは次に、この免疫原性ペプチドを標的にし、従って癌を標的にするように細胞傷害性免疫細胞(T細胞およびNK細胞)を訓練する。
【0152】
いくつかの実施形態では、治療することは、対象に免疫原性ペプチドに特異的なエフェクター細胞を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、細胞傷害性細胞である。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、リンパ球である。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、CD8 T細胞である。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、ペプチドに曝露されている。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、HLAとの複合体でペプチドを提示する抗原提示細胞に曝露されている。
【0153】
いくつかの実施形態では、治療することは、免疫原性ペプチドを含むワクチンを投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、免疫原性ペプチドを含むワクチンを以前に受けている。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳類である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、癌に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、本発明の方法により治療されるのに適する。いくつかの実施形態では、対象は、免疫原性ペプチドに以前に曝露されている。いくつかの実施形態では、対象は、免疫原性ペプチドが由来する病原体に以前に感染している。いくつかの実施形態では、病原体は、ウイルスである。いくつかの実施形態では、対象は、ペプチドに対し免疫応答を開始できる。いくつかの実施形態では、対象は、ペプチドまたはその一部を認識するTCRを含むT細胞を含む。いくつかの実施形態では、対象は、ペプチドまたはその一部を認識するBCRを含む記憶B細胞を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞中でペプチドの表面提示を生成する方法である。いくつかの実施形態では、表面提示は、ペプチドと複合体化したHLAの提示である。いくつかの実施形態では、発現は、表面提示である。いくつかの実施形態では、発現は、HLA複合体での発現である。
【0155】
別の態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントを操作する方法が提供され、方法は:
a.目的の抗体またはその抗原結合フラグメントを選択すること、
b.選択された抗体またはその抗原結合ドメインの少なくとも1個のCDRが標的への結合に必要とされないことを決定すること;
c.決定された少なくとも1個のCDRまたはその一部をペプチドと置換すること;
を含み、それにより、抗体またはその抗原結合フラグメントを操作する。
【0156】
別の態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントを操作する方法が提供され、方法は:
a.目的の抗体またはその抗原結合フラグメントを選択すること、
b.ペプチドのデータベースを受け取ること;
c.データベースのペプチドとの選択された抗体またはその抗原結合フラグメントの可変領域のペプチドのアラインメントを実施すること;
d.所定の閾値を越えるアラインメントスコアを有する選択された抗体またはその抗原結合フラグメント由来のペプチドおよびデータベース由来のペプチドを決定すること;および
e.選択された抗体またはその抗原結合フラグメントから決定されたペプチドを、データベースから決定されたペプチドと置換すること;
を含み、それにより抗体またはその抗原結合フラグメントを操作する。
【0157】
いくつかの実施形態では、操作される抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗体または抗原結合フラグメントである。いくつかの実施形態では、操作される抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の抗原結合分子である。いくつかの実施形態では、操作される抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の二重機能抗原結合分子である。いくつかの実施形態では、操作される抗体またはその抗原結合フラグメントは、免疫原性ペプチド送達抗体である。いくつかの実施形態では、操作される抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の方法における使用のためである。いくつかの実施形態では、操作する前の抗体またはその抗原結合フラグメントは、細胞透過性抗体である。いくつかの実施形態では、選択することは、それが結合する細胞中に侵入する抗体を選択することである。いくつかの実施形態では、操作する前の抗体またはその抗原結合フラグメントは、商業的に入手できる抗体である。
【0158】
いくつかの実施形態では、操作する前の抗体またはその抗原結合フラグメントは、標的細胞の表面に結合する。いくつかの実施形態では、標的細胞は、癌細胞である。いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、標的細胞の表面に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを選択することを含む。いくつかの実施形態では、表面に結合することは、表面抗原に結合することである。いくつかの実施形態では、操作する前の抗体またはその抗原結合フラグメントは、DNA結合抗体である。いくつかの実施形態では、操作する前の抗体またはその抗原結合フラグメントは、細胞のエンドサイトーシス経路中に取り込まれる。いくつかの実施形態では、操作する前の抗体またはその抗原結合フラグメントは、それが結合する細胞の細胞質中に輸送される。いくつかの実施形態では、操作する前の抗体またはその抗原結合フラグメントは、エンドソーム脱出ができる。いくつかの実施形態では、操作する前の抗体またはその抗原結合フラグメントは、それが結合する細胞の細胞質ゾルに送達される。いくつかの実施形態では、方法は、細胞透過性部分を、抗体またはその抗原結合フラグメント中に挿入することをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞透過性部分は、免疫原性ペプチドの前に挿入される。いくつかの実施形態では、細胞透過性部分は、免疫原性ペプチドの後に挿入される。いくつかの実施形態では、細胞透過性部分は、免疫原性ペプチドの挿入と同時に挿入される。いくつかの実施形態では、ステップ(a)は、標的細胞の表面への結合時に内部移行され標的細胞の細胞質ゾルに送達される、抗体またはその抗原結合フラグメントを選択することを含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、操作する前の抗体またはその抗原結合フラグメントは、TMab4、3E10および71F12のいずれか1つと同等のレベルで結合される細胞中に侵入/内部移行する。いくつかの実施形態では、操作する前の抗体またはその抗原結合フラグメントは、TMab4と同等のレベルで結合される細胞中に侵入/内部移行する。いくつかの実施形態では、操作する前の抗体またはその抗原結合フラグメントは、3E10と同等のレベルで結合される細胞中に侵入/内部移行する。いくつかの実施形態では、操作する前の抗体またはその抗原結合フラグメントは、71F12と同等のレベルで結合される細胞中に侵入/内部移行する。いくつかの実施形態では、同等は、元の抗体の少なくとも、50、55、60、65、70、75、80、85、90、92、95、97、99、または100%である透過を伴う。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、同等は、元の抗体の少なくとも80%である透過を伴う。いくつかの実施形態では、同等は、元の抗体の少なくとも90%である透過を伴う。
【0160】
いくつかの実施形態では、決定することは、少なくとも1個の不活性CDRを含む。いくつかの実施形態では、決定することは、細胞中への輸送に関与しない少なくとも1個の不活性CDRを決定することを含む。いくつかの実施形態では、決定することは、エンドソーム脱出に関与しない少なくとも1個のCDRを決定することを含む。いくつかの実施形態では、決定することは、その標的に結合された抗体またはその抗原結合フラグメントの構造分析に基づく。いくつかの実施形態では、構造分析は、インシリコ分析である。いくつかの実施形態では、構造分析は、結晶学的分析である。いくつかの実施形態では、方法は、構造分析を受けることをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、構造分析を実施することをさらに含む。いくつかの実施形態では、分析は、抗体またはその抗原結合フラグメントのそれぞれのアミノ酸の標的のアミノ酸までの距離を与える。いくつかの実施形態では、分析は、抗体またはその抗原結合フラグメントのCDRのそれぞれのアミノ酸の標的のアミノ酸までの距離を与える。いくつかの実施形態では、決定することは、CDRのそれぞれのアミノ酸の標的までの距離を決定することである。いくつかの実施形態では、抗原と接触している2個以下のアミノ酸を有するCDRは、結合に必要とされないと決定される。いくつかの実施形態では、決定することは、CDRのそれぞれのアミノ酸の標的までの距離を決定することである。いくつかの実施形態では、抗原と接触している1個以下のアミノ酸を有するCDRは、結合に必要とされないと決定される。いくつかの実施形態では、結合に必要とされないCDRは、不活性CDRである。いくつかの実施形態では、結合に必要とされないCDRは、その中での変異が抗体機能に影響しないことが示されているCDRである。いくつかの実施形態では、機能は、結合である。
【0161】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、免疫原性ペプチドである。いくつかの実施形態では、ペプチドは、少なくとも5、6、7、8、9、10または11個のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、ペプチドは、少なくとも7個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、少なくとも8個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、8~11個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、本明細書で提供される免疫原性ペプチドである。いくつかの実施形態では、ペプチドは、抗体またはその抗原結合フラグメントの可変領域由来である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、抗体またはその抗原結合フラグメントのCDR由来である。CDRの位置を決定する方法は、当該技術分野において周知であり、ClothiaおよびKabatシステムを使用し得る。抗体の可変ドメインの配列を考慮して、当業者は、容易にCDRを特定できるであろう。
【0162】
いくつかの実施形態では、少なくとも1個のCDRは、除去される。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のCDRの一部は、除去される。いくつかの実施形態では、除去されるアミノ酸は、免疫原性ペプチドで置換される。いくつかの実施形態では、置換することは、最適化される。いくつかの実施形態では、方法は、置換を最適化することをさらに含む。いくつかの実施形態では、最適化することは、構造的最適化である。いくつかの実施形態では、最適化することは、最適化アルゴリズムを実施することを含む。いくつかの実施形態では、最適化することは、選択された抗体またはその抗原結合フラグメントの構造中で可能な限り少ない乱れを生じることを含む。いくつかの実施形態では、最適化することは、インシリコ分析または免疫原性ペプチドの少なくとも1個の決定されたCDR中への挿入とそれに伴うCDRの全ての可能な部分の除去および選択された挿入、ならびに最小の乱れを生じる部分の除去を含む。いくつかの実施形態では、最適化は、少なくとも1個の充填アミノ酸の挿入を含む。いくつかの実施形態では、最適化は、決定されたCDR以外での少なくとも1つの代償の変異を生成することを含む。いくつかの実施形態では、最適化アルゴリズムは、最小摂動置換(minimal perturbation replacement)(MBR)アルゴリズムである。いくつかの実施形態では、最適化は、CDR隣接配列の最適化を含む。いくつかの実施形態では、隣接配列の最適化は、抗体ステムの保存を含む。いくつかの実施形態では、CDRに隣接するステムの構造は、維持される。いくつかの実施形態では、ステムは、CDRに隣接するβシートの末端である。いくつかの実施形態では、末端は、CDRに直接隣接する少なくとも1、2、3、4または5個のアミノ酸を含む。それぞれの可能性は、本発明の別の実施形態を表す。
【0163】
いくつかの実施形態では、方法は、選択された抗体またはその抗原結合フラグメントにより結合された同じ標的への操作された抗体またはその抗原結合フラグメントの結合を確認することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、選択された抗体またはその抗原結合フラグメントにより結合された同じ標的への操作された抗体またはその抗原結合フラグメントの結合を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、選択された抗体またはその抗原結合フラグメントにより結合された同じ標的への操作された抗体またはその抗原結合フラグメントの結合を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、結合は、選択された抗体またはその抗原結合フラグメントの結合と同等である。いくつかの実施形態では、測定することは、結合が、選択された抗体またはその抗原結合フラグメントに比べて有意に低下されないことを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、有意には、統計的に有意にである。いくつかの実施形態では、大きく低下されたは、10%を越える低下を含む。いくつかの実施形態では、有意に低下されたは、20%を越える低下を含む。いくつかの実施形態では、有意に低下されたは、50%を越える低下を含む。いくつかの実施形態では、有意に低下されたは、消失されることである。
【0164】
いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞の細胞質ゾル中のペプチドのレベルを測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞質ゾルへのペプチドの送達を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞質ゾルへのペプチドの送達を測定することをさらに含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞の細胞質ゾルへのペプチドの送達を確認することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞の細胞質ゾル中のペプチドのレベルを測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞質ゾルへのペプチドの送達を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞質ゾルへのペプチドの送達を測定することをさらに含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞の表面へのペプチドの送達を確認することをさらに含む。いくつかの実施形態では、送達は、ペプチドの表面提示である。いくつかの実施形態では、送達は、標的細胞の表面へのHLA分子との複合体でのペプチドの送達である。いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞の表面上のペプチドのレベルを測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、レベルは、HLAとの複合体でのペプチドのレベルである。いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞の表面へのペプチドの送達を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞の表面へのペプチドの送達を測定することをさらに含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、方法は、エフェクター細胞による標的細胞の死滅を確認することをさらに含む。いくつかの実施形態では、死滅は、特異的死滅である。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、ペプチドに特異的である。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、免疫細胞である。いくつかの実施形態では、方法は、エフェクター細胞による標的細胞の死滅を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、エフェクター細胞による標的細胞の死滅を決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、インビトロの方法である。いくつかの実施形態では、確認すること、測定することおよび決定することは、インビトロで実施される。いくつかの実施形態では、インビトロは、エクスビボである。確認すること、測定することおよび決定することを実施する方法の例は、本明細書で提供されるが、このような測定すること/確認すること/決定することのための当該技術分野において既知の任意のアッセイが、使用され得る。
【0168】
ペプチドおよび特に免疫原性ペプチドのデータベースは、当技術分野で周知であり、任意のこのようなデータベースを採用し得る。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、癌ペプチドである。いくつかの実施形態では、データベースは、表3を含む、または表3からなる。いくつかの実施形態では、アラインメントは、ペアワイズアラインメントである。いくつかの実施形態では、アラインメントは、アラインメントペアを生成するための、選択された抗体またはその抗原結合フラグメント由来の1つのペプチドと、データベースの1つのペプチドのアラインメントである。いくつかの実施形態では、所定の閾値を越えるアラインメントスコアを有するアラインメントペアは、ステップ(e)での置換のために使用される。
【0169】
いくつかの実施形態では、方法は、二重機能抗原結合分子中に操作された抗体を挿入することをさらに含む。いくつかの実施形態では、二重機能抗原結合分子は、本発明の分子である。いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞上のタンパク質に結合する標的化抗体を選択することをさらに含む。いくつかの実施形態では、標的細胞上は、標的細胞の表面上である。いくつかの実施形態では、標的細胞は、癌細胞である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、受容体である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、癌抗原である。いくつかの実施形態では、タンパク質は、癌細胞上でのみ発現され、対応する健康な細胞では発現されない。いくつかの実施形態では、タンパク質は、対応する健康な細胞に比較して、癌細胞上で過剰発現されるタンパク質である。いくつかの実施形態では、対応する細胞は、癌細胞と同じ組織または細胞型の細胞である。いくつかの実施形態では、対応する細胞は、対照細胞である。いくつかの実施形態では、選択された標的化抗体は、操作される抗体と組み合わされる。いくつかの実施形態では、組み合わせることは、二重機能抗原結合分子を生成する。いくつかの実施形態では、二重機能抗原結合分子は、二重特異性抗体である。
【0170】
いくつかの実施形態では、操作される抗体は、1つの重鎖および1つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、標的化抗体または抗原結合フラグメントは、1つの重鎖および1つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、操作される抗体は、単鎖抗体である。いくつかの実施形態では、標的化抗体は、単鎖抗体である。いくつかの実施形態では、単鎖抗体は、アミノ酸リンカーにより単一ポリペプチドで連結された重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、標的化抗体の重鎖定常領域は、ヘテロ二量体化を促進しホモ二量体化を抑制するように操作される、いくつかの実施形態では、操作される抗体の重鎖定常領域は、ヘテロ二量体化を促進しおよび/またはホモ二量体化を抑制するように操作される、いくつかの実施形態では、操作されるは、改変されるである。いくつかの実施形態では、改変されるは変異されるある。いくつかの実施形態では、方法は、操作される抗体および/または標的化抗体の定常領域を操作することを含む。いくつかの実施形態では、操作することは、表5で提供される一連の変異を生成することである。いくつかの実施形態では、使われる重鎖定常領域は、配列番号1074および1075または85%の配列同一性を含む類似体または相同体を含む、またはこれらからなる。いくつかの実施形態では、類似体または相同体は、ノブインホール変異を保持する。
【0171】
本明細書で使用される、値と組み合わせたときの「約」という用語は、参照値のプラスおよびマイナス10%を指す。例えば、約1000ナノメートル(nm)の長さは、1000nm±100nmの長さを指す。
【0172】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により別の意味が明示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド(a polynucleotide)」への言及は、複数のこのようなポリヌクレオチドを含み、「ポリペプチド(the polypeptide)」への言及は、1つまたは複数のポリペプチドおよび当業者に既知のその同等物への言及を含む、などである。特許請求の範囲は、いずれか任意の要素を除外するように記載されてもよいことに、さらに留意されたい。したがって、この記述は、請求要素の列挙、または「否定的な」制限の使用に関連して、「単独」、「唯一」などの排他的な用語を使用するための先行基準として機能することが意図される。
【0173】
「A、B、およびC等の少なくとも1つ」に類似した慣例が使用される事例では、概して、このような構造は、当業者が慣例を理解するであろうという意味で意図される(例えば、「A、B、ならびにCの少なくとも1つを有する系」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを一緒に、AおよびCを一緒に、BおよびCを一緒に、ならびに/またはA、B、およびCを一緒に等を有する系を含むがこれらに限定されないであろう)。2つ以上の代替的な用語を提示する実質的に任意の離接的な単語および/または句は、明細書、特許請求の範囲、または図面のいずれにおいても、用語の1つ、用語のいずれか、または両方の用語を含む可能性を企図すると理解されるべきであることは当業者によりさらに理解されるであろう。例えば、「AまたはB」という句は、「A」もしくは「B」または「AおよびB」の可能性を含むと理解されるであろう。
【0174】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが、理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態として説明される本発明の種々の特徴はまた、別々にまたは任意の好適な副組み合わせで提供されてよい。本発明に関連する実施形態のすべての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、全ての組み合わせが個別に、かつ明示的に開示されたかのように、本明細書において開示される。さらに、様々な実施形態およびその要素のすべての部分的組み合わせもまた、本発明によって具体的に包含され、すべてのそのような部分的組み合わせが本明細書で個別に、かつ明示的に開示されたかのように、本明細書において開示される。
【0175】
本発明の追加の目的、利点、および新規の特徴は、限定することを意図しない、以下の実施例を考察することにより、当業者に明らかになるであろう。さらに、上で説明されおよび以下の特許請求の範囲のセクションで請求される、本発明の様々な実施形態および態様の各々は、以下の実施例において実験的に裏付けられる。
【0176】
上で説明され、以下の特許請求の範囲で請求される本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的に裏付けられる。
【0177】
実施例
一般に、本明細書で使用される命名法および本発明で使用される検査法は、分子の、生化学の、微生物学のおよび組み換えDNAの技術を含む。これらの技術は文献で詳細に説明される。例えば、”Molecular Cloning:A laboratory Manual” Sambrook et al.,(1989);”Current Protocols in Molecular Biology” Volumes I-III Ausubel,R.M.,ed.(1994);Ausubel et al.,”Current Protocols in Molecular Biology”,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989);Perbal,”A Practical Guide to Molecular Cloning”,John Wiley & Sons,New York(1988);Watson et al.,”Recombinant DNA”,Scientific American Books,New York;Birren et al.(eds)”Genome Analysis:A Laboratory Manual Series”,Vols.1-4,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);米国特許第4,666,828号、同第4,683,202号、同第4,801,531号、同第5,192,659号、および同第5,272,057号に記載される方法論;”Cell Biology:A Laboratory Handbook”,Volumes I-III Cellis,J.E.,ed.(1994);”Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique” by Freshney,Wiley-Liss,N.Y.(1994),Third Edition;”Current Protocols in Immunology” Volumes I-III Coligan J.E.,ed.(1994);Stites et al.(eds),”Basic and Clinical Immunology”(8th Edition),Appleton & Lange,Norwalk,CT(1994);Mishell and Shiigi(eds),”Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual” CSHL Press(1996)、を参照されたい。これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる)。他の一般的な参考文献は、本明細書全体を通して記載される。
【0178】
材料および方法
細胞浸透アッセイ:全てのAbの透過能力を、細胞内の抗体検出とそれに続くフローサイトメトリー分析によりスクリーニングする。蛍光標識抗Fc-FITCを用いて、細胞内抗体を検出する。手短に説明すると、乳癌細胞を、24ウェルプレートに播種し、0.5~1μMの対照抗体またはトロイの木馬Abと6時間インキュベートする。次に、細胞を、PBSおよび低pH緩衝剤(グリシン、pH=2.5)で洗浄して、細胞表面に結合した抗体を取り出す。その後、細胞を、固定し、透過処理し、抗Fc-FITC抗体により細胞内蛍光標識する(PBS中の0.1%サポニン、1%BSA、室温で2時間)。標識された細胞を、FITCについてフローサイトメトリーにより分析し、非標識細胞を、陰性対照として使用する。細胞内トロイの木馬Abのプロテアソーム分解のレベルを決定するために、プロテアソーム阻害剤MG132を、トロイの木馬抗体の添加の前に細胞に加える。
【0179】
ルシフェラーゼ死滅アッセイ:ルシフェラーゼを発現する標的癌細胞(T)を、96ウェルプレートに播種し、種々の濃度(0.5~4μM)でトロイの木馬Abにより処置する。3~24時間後に、トロイの木馬Ab内の関連ペプチドに特異的な、抗原特異的エフェクター細胞(E)を、種々のE:T比率で加える。細胞をその後、18~24時間にわたり共培養し、続いて、ルシフェラーゼ基質(Bio-Glo;Promega)を加える。生存細胞の数を定量するために、発光強度(lum)を記録する。死滅を、%死滅=1-lum(治療した標的+エフェクター)/Lum(非治療対照)を計算することにより評価し、これは、他の対照に対しても計算できる。
【0180】
画像ベース死滅アッセイ(IncuCyteイメージングシステム):標的細胞(T)を最初に、細胞質ゾル赤色色素(IncuCyte(登録商標)Cytolight Rapid Red)で標識し、IncuCyte撮像装置で標的細胞増殖の追跡を可能にする。標識された標的細胞をその後、96ウェルプレートに播種し、種々の濃度(0.5~4μM)でトロイの木馬Abにより処置する。3~24時間後に、トロイの木馬Ab内の関連ペプチドに特異的な、抗原特異的エフェクター細胞(E)を、種々のE:T比率で加える。次に、プレートを、IncuCyte(37℃;5%CO2)中に置き、2時間間隔で48時間にわたり撮像する。あるいは、カスパーゼ3/7緑色色素を培地に加えて、標的細胞のアポトーシス評価を可能にする。データを、次記の2つの主要パラメーターを比較するIncuCyteソフトウェア分析ツールにより分析する:増殖: 時間0hに正規化した赤色染料の集密度; およびアポトーシス:(赤色+緑色領域)/時間0hに正規化した赤色領域。
【0181】
EGFR結合アッセイ:癌細胞表面上のEGFRを結合する完全なトロイの木馬抗体(FTAb)の能力を評価するために、フローサイトメトリー結合アッセイを、確立した。予め播種した細胞を、トリプシン処理し、洗浄し、その後、0.3または3nMのFTAbまたは陽性対照として機能するEGFR二価の治療抗体と氷上で1時間インキュベートした。その後、細胞を、PBS緩衝液中の2%FBSで3回洗浄し、氷上で30分間蛍光二次抗体(抗ヒトFc-FITC)で標識する。細胞をその後、同じ緩衝液で3回洗浄し、フローサイトメトリーにより分析する。FTAb結合は、FITC蛍光レベルに比例する。
【0182】
癌細胞表面上のHLA-ペプチド複合体の提示:FTAbとのインキュベーション時の、癌細胞上のHLA-ペプチド複合体の提示のレベルを定量するために、HLA-ペプチド複合体を特異的に結合するTCR様抗体を、用いた。手短に説明すると、細胞を、24ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO2下で1μMのFTAbまたはcFTAb(対照FTAb)と異なる持続時間(4時間、8時間および10時間)の間インキュベートする。次に、細胞を、フルオレセイン(FITC)にコンジュゲートされたC1-17抗体(Lee et al.“Affinity Maturation of a T-Cell Receptor-Like Antibody Specific for a Cytomegalovirus pp65-Derived Peptide Presented by HLA-A*02:01” Int.J.Mol.Sci.2021,22,2349を参照、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)と氷上で30分間インキュベートし、フローサイトメトリーにより分析する。
【0183】
実施例1: トロイの木馬抗体のデザイン
癌細胞により提示される免疫原性ペプチドは、免疫細胞活性化および癌細胞死滅をもたらし得ることが知られている。対象内のリンパ球は、免疫原性ペプチドを認識し、対象の免疫系は、癌細胞に対抗させられる。この機序は、癌細胞中に免疫原性ペプチドを積極的に送達すること、これらの癌細胞が次に(in turn)、それらの細胞表面上に免疫原性ペプチドを提示することにより、利用できる。次の2つのクラスの免疫原性ペプチドを用いることができる:1)ウイルスまたは細菌ペプチドなどの非自己ペプチド/ヒトで見出されないペプチド、および2)免疫系が健康な細胞に対し活性化されないよう癌特異性を与えるために、変異された、あるいは改変されたヒトペプチドである、改変された自己ペプチド。
【0184】
免疫原性ペプチドは、抗体を介して送達できると、以前に仮定されている。Sefrinらは、ジスルフィド結合を介してペプチドにコンジュゲートた完全サイズの抗体を利用した(Sefrin et al.,2019 “Sensitization of tumors for attack by virus-specific CD8+ T-cells through antibody-mediated delivery of immunogenic T cell epitopes”,Front.Immunol.,Aug 21;10:1962)。しかし、この構築物は、非常に低い安定性を有し、血清中で高率の脱コンジュゲーションを生じる可能性がある。これは次に、標的細胞への不十分な送達、低下した効力および高いオフターゲット効果(副作用)につながる可能性がある。Gastonらは、ペプチドが重鎖または軽鎖のアミノ酸鎖の末端に組み込まれた、または鎖内のヒンジドメインに隣接して配置された、融合タンパク質構築物を採用した(Gaston et al.,2019,“Intracellular delivery of therapeutic antibodies into specific cells using antibody-peptide fusions”,Sci.Rep.,Dec 10;9(1):18688)。この方法は、製造収率の低下、凝集の増大およびインビトロ安定性の低下をもたらした。
【0185】
これらの方法に固有の問題を軽減するために、鎖の末端でまたは構造間に免疫原性ペプチドを挿入するのではなく、免疫原性ペプチドを、抗体可変領域中に挿入する。特に、免疫原性ペプチドを、抗体の重鎖または軽鎖内の全てのまたは一部の「不活性」の、必須でないCDRを置換するために用いる(
図1)。インシリコモデル化を用いて、既知の治療抗体中の不活性CDRループを特定する。不活性CDRを次に、免疫原性ペプチドにより置換する(
図2)。この立体配座では、操作された抗体は、高い安定性および抗原結合親和性を維持する。免疫原性ペプチドがCDRより短い場合は、充填アミノ酸を、抗体立体配座を変えないように付加できる。同様に、CDRが免疫原性ペプチドより長い場合には、CDRの一部のみが、除去される。不活性CDRの隣接領域もまた、置換できるが、これらの領域はしばしば全体の抗体立体配座に重要であるので、それらの全体構造を保存しなければならない。これらの操作された抗体は、トロイの木馬抗体と呼ばれる。
【0186】
実施例2:トロイの木馬抗体の使用
本発明のトロイの木馬抗体の1つの用途は、樹状細胞ワクチン接種である。樹状細胞表面マーカー(例えば、CD40)に対する抗体が、操作のために使用される。この場合、抗ヒトCD40抗体Fab516を採用し、標的癌により発現される改変された自己抗原を、不活性CDR中に挿入する。CD40への抗体結合後に、抗体は消化され、免疫原性ペプチドを含む短鎖ペプチドが、MHCI分子により細胞表面に提示される。CD8+T細胞は、これらの樹状細胞により活性化され、腫瘍特異的になり、強化された腫瘍細胞死滅をもたらす(
図3)。
【0187】
本発明のトロイの木馬抗体はまた、白血病などのB細胞悪性腫瘍を治療するために使用される。この場合、B細胞表面マーカー(例えば、CD20)に対する抗体が、使用される。例えば、アーゼラ抗体は、ウイルスエピトープ(例えば、CD4ウイルスエピトープ/CD4 T細胞により認識されるエピトープ)で置換された不活性CDRを有する。エンドサイトーシス後に、抗体はプロセスされ、MHCII分子によりB細胞の表面上に提示される。細胞傷害性T細胞は、ウイルスエピトープを認識し、悪性細胞を死滅させる(
図4)。
【0188】
本発明のトロイの木馬抗体はまた、固形腫瘍または一般癌を治療するために使用される。HER2、EGFR、EpCAMおよびPSMAなどの癌特異的エピトープに結合する抗体が、使用され、特に二重特異的抗体が、用いられる。二重特異的分子の場合、1つのみの抗原結合ドメインが、癌細胞に薬剤を運ぶのために必要とされ;他のものは、CD8+T細胞により認識される1種または複数のペプチドおよび/または細胞透過成分で置換できる。細胞透過成分はまた、2つの不活性CDRが存在する場合、非二重特異性抗体中に挿入できることは無論理解されよう(1つは透過成分のため、もう1つは、免疫原性ペプチドのため)。あるいは、免疫原性ペプチドの挿入が内部移行を妨げない限り、内部移行することが既知の抗体を使用できる。標的タンパク質に結合後、抗体は、消化され、細胞質ゾルに放出される(エンドソーム脱出)。そこから、それは、MHCII分子を介して、癌細胞の表面上に提示される(
図5)。
【0189】
実施例3:不活性CDR特定を含むトロイの木馬抗体経路(
図6、右側経路)
トロイの木馬抗体は、最初に目的の抗体を選択することにより設計される。その標的への抗体の結合の構造分析が行われ、不活性CDRが、特定される。不活性CDRは、タンパク質標的に直接接触しないCDRである(タンパク質標的から5Åを超える距離)。CDRを置換できる好適な免疫原性ペプチドが、特定され、操作される抗体中に挿入される。免疫原性ペプチドは、予め選択されてよく、または免疫原性ペプチドは、除去されるCDRに対するその類似性に基づき選択されてよい。計算機モデル化を用いて、好適なペプチドを選択し、正確な抗体立体配座を確認する。この計算機モデル化は、最小摂動置換(MBR)と呼ばれ、それは、CDR内の置換位置を最適化するために適用できる。例えば、CDRが免疫原性ペプチドより長い場合、充填アミノ酸が、抗原結合の最小摂動(minimal perturbation)のために付加される必要があり得る。同様に、CDRが免疫原性ペプチドより短い場合、CDR間領域からのアミノ酸がまた、除去され得る。隣接するアミノ酸もまたしばしば、結合および抗体立体配座に関与し、隣接領域における抗体立体配座および構造的類似性/最小摂動もまた望ましい。MBRは、免疫原性ペプチドの位置決めを最適化する。
【0190】
抗体が明らかな不活性CDRなしに選択される場合、MBRは、抗体内、特にCDR内の可能な置換位置をランク付けするために適用される。結合を乱さない(または所定の閾値より小さく乱す)位置が見出されるならば、免疫原性ペプチドは、この位置に挿入される。
【0191】
MBR分析は、抗体の標準構造を考慮し、この構造を最も厳密に維持する位置/置換位置を選択する。抗体ステム保存は、高度に保存される。ステムは、CDRループに直接隣接するβシート部分を指す。この領域はまた、CDR隣接領域とも呼ばれる。これらの1~5個のアミノ酸は、ループ位置に重要であり、高度に強固である傾向があるが、一方でループそれ自体、特に不活性CDRループは、それほど規則的でない。ステム保存は従って、MBR分析の間は重要である。MBRはまた、他の既知の抗体の位置頻度マトリックスを考慮する。計算機モデルは、帰属された数百の既知の抗体を有し、各位置での各アミノ酸の頻度を考慮する。既知の抗体の位置頻度に最も密接に一致するペプチド置換が、好ましい。最終的に、MBRは、ペプチド置換のための抗体内の最適位置を出力する、または2つ以上の許容可能な位置が存在する場合、それは、階層位置を出力する。
【0192】
実施例4:配列類似性によるトロイの木馬抗体経路(
図6、左側経路)
トロイの木馬抗体はあるいは、配列類似性に基づき生成できる。標的抗体は、免疫原性ペプチドのリストにあるように(例えば、表1~3を参照)選択される。ペアワイズ配列アラインメントは、種々のウイルスペプチドと抗体の間で実施される。8~11個のアミノ酸の抗体内で重なり合うペプチドは、免疫原性ペプチドと比較され、アラインメントスコアは、各対(抗体由来の1個のペプチドと1個の免疫原性ペプチド)に対し与えられる。スコアは、blosum62、およびギャップオープニング当り、およびギャップエクステンション当り-3のペナルティに基づき計算された。閾値が、許容可能なアラインメントについて設定された(例えば、>25を下記の実施例で使用した)。アラインメントスコアの閾値に適合する免疫原性ペプチドと置換されるべき抗体中のペプチドが、選択され、MBRが、適用されて置換位置を最適化する。
【0193】
実施例5:トロイの木馬抗体の機能的確認(不活性CDR)
配列類似性に基づく置換は、CDRに限定されず、抗体中のどこでも実施できる。配列における類似性のため、最小の乱れが予測される。それにもかかわらず、この方法および不活性CDR置換法は依然として、抗体がその機能性を維持していることの確認を必要とする。特に、抗体が依然としてその標的に結合し、かつ依然として細胞中に内部移行することが決定される必要がある。結合/内部移行が消失される場合、新規の抗体は使い物にならない。
【0194】
免疫原性ペプチドの挿入のために選択された第1の抗体は、TMab4としても知られる、DNA加水分解抗体3D8であった。マウス抗体3D8は最初に、Kim et al.,“Heavy and Light Chain Variable Single Domains of an Anti-DNA Binding Antibody Hydrolyze Both Double- and Single-stranded DNAs without Sequence Specificity”,J Biol Chem.,2006,Jun 2;281(22):15287-9で開示され、そのヒト化型は、国際公開第WO2019/244086号で提供された。TMab4は、癌細胞に結合し、かつそれに侵入し、エンドソーム脱出を介して細胞質に到達することが示され、従って、それは、トロイの木馬抗体への変換のために選択された。重鎖のCDR1、2、3(CDRH1、CDRH2、CDRH3)と軽鎖のCDR3(CDRL3)が不活性CDRであることが見出された。
【0195】
最初に、TMab4のCDRH1を置換する能力を、試験した。CMV由来の2個のペプチド、EBV由来の2個のペプチドおよびインフルエンザ由来の1個のペプチドを、CDRH1中の種々の位置に挿入した(表6参照)。陰性対照(アダリムマブ)よりも優れた透過は、CDRH1内の位置に関係なく全ての挿入ペプチドで維持された。しかし、いくつかの挿入は、優れた透過を示し、一方で他のものは、親TMab4に比較して、透過が低下した。いくつかの構築物は、CDRに隣接したアミノ酸の置換を含んだ。これは、これらの追加の置換が全体の抗体立体配座の乱れを低減すると予測されたため実施した。具体的には、構築物T1では、CDRに対し直接N末端の「S」もまた、置換した。構築物T_32、T_33およびT_34では、CDRに対し直接N末端の「CAAS」もまた、置換した。構築物T_42、T_43では、CDRに対し直接N末端の「AAS」もまた、置換した。1つの構築物、T1_34は、抗体の乱れを減らすと予測された重鎖の代償変異(T30S)を含んだ。従って、不活性CDRの全体の変化は、予測されたように透過を消失させなかったが、細胞に侵入する全体の能力に影響を有した。
【表6】
【0196】
生成した抗体のいくつかを、トロイの木馬抗体中に存在する免疫原性ペプチドに特異的なエフェクター細胞の存在下で標的細胞を死滅させるそれらの能力について試験した。
図7Aでわかるように、全ての抗体は依然として、細胞に侵入できたが、特異的な死滅を誘導する能力は、非常に多様であった。NLVPMVATV(配列番号1)ペプチドの5種の挿入のうち、2種は、特異的死滅を生じず、一方で他の3種は、死滅を生じた。ペプチドCLGGLLTMV(配列番号2)に関しては、優れた透過を生じた2種の挿入はまた、優れた死滅も生じた。
【0197】
次に、CDRH3中への配列番号1および配列番号3の挿入を、試験した(表7)。配列番号3は、それが置換するCDRに対しある程度の構造的類似性を示し、特に、CDRの先頭に近い「G」は、維持され、そのため、それを、配列番号1と共に試験した。CDRH3は、抗体結合および細胞透過に全く重要でないことが以前に報告された(Lee et al.,“Functional Consequences of Complementarity-determining Region Deactivation in a Multifunctional Anti-nucleic Acid Antibody”,J Biol Chem.2013 Dec 13;288(50):35877-85を参照されたい、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。しかし、配列番号1の挿入は、透過を大きく損ない、それにより、それは、陰性対照抗体よりわずかに優れているに過ぎなかった。対照的に、配列番号3の挿入は、2つの挿入位置で、親抗体より優れているとは言わないまでも同じくらい良好な透過を常にもたらした。これは全て、挿入位置に適合する免疫原性ペプチドの選択が極めて重要であることを示唆する。
【表7】
【0198】
興味深いことに、CDRH3中に挿入された配列番号1を含むトロイの木馬抗体を用いて特異的死滅を試験した場合、意外な結果が観察された。最低の測定された透過を有する2つのTabは、特異的な死滅を示した(
図7B)。細胞内での低い検出は、効果的死滅をもたらす急速な抗体プロセッシングおよび細胞表面上の提示が原因であった可能性がある。
【0199】
CDRL3中への配列番号1および配列番号5の挿入、およびCDRH2中への配列番号1の挿入もまた、試験した(表8)。配列番号5は、CDRL3と極めて高い配列アラインメントを有し、そのため、試験のために選択された。構築物のいくつかは、CDRに隣接したアミノ酸の置換を含んだ。これは、これらの追加の置換が全体の抗体立体配座の乱れを減らすと予測されたため実施された。具体的には、構築物T1_44およびT1_45では、CDRに対し直接C末端の「F」もまた、置換した。構築物T18では、CDRに対し直接C末端の「Y」もまた、置換した。全ての試験された挿入は、親抗体と実質的に同等の良好な透過を生じた。CDRL3は細胞透過に重要であると報告されているので、この結果は極めて重要であり、この機能は、試験された免疫原性ペプチドによるこのCDRの置換により乱されなかった。
【表8】
【0200】
特異的死滅を、配列番号1を含むトロイの木馬抗体について試験し、この場合、全ての抗体は、死滅を誘導することが明らかになった(
図7C)。これは、この挿入が、高い測定された透過および高レベルの特異的死滅を生じることを示す。不活性CDR置換の組み合わせを含むトロイの木馬抗体もまた、生成する。4個のCDRが不活性であるので、2、3および4個の免疫原性ペプチドの組み合わせが、生成される。挿入されるペプチドは、同じペプチドの反復であっても、または異なるペプチドであってもよい。
【0201】
細胞中に透過できる第2のDNA結合抗体もまた、試験した。抗体3E10(Weisbart et al.,“DNA-dependent targeting of cell nuclei by a lupus autoantibody”,Sci Rep.2015 Jul 9;5:12022を参照されたい、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を、不活性CDRについて調査し、CDRL1およびCDRL2の両方が結合中に抗原に関与しなかったと決定された。配列番号1を、CDRL1またはCDRL2のいずれかに挿入し、配列番号3をまた、CDRL1中に挿入した(表9)。構築物の1つは、CDRに隣接したアミノ酸に隣接する置換を含んだ。これは、追加の置換が全体抗体立体配座の乱れを減らすと予測されたため、実施された。具体的には、構築物T2_13では、CDRに対し直接N末端の「LLIK」およびCDRに対し直接C末端の「YL」を同様に、置換した。全ての配列番号1の挿入は、陰性対照を越える透過をもたらしたが、この場合も、透過のレベルは様々であった。
【表9】
【0202】
ペプチド特異的エフェクター細胞による死滅を、3E10由来であり配列番号1を含むトロイの木馬抗体で処置した癌細胞について、同様に試験した。両方の試験されたTAbは、強力な特異的死滅を生じた(
図8)。これらの結果は、トロイの木馬システムの普遍性を示す。免疫原性ペプチドは、細胞中に透過できかつペプチド特異的死滅をもたらす、種々の抗体中に挿入できる。
【0203】
生成した全てのTAbは、癌細胞と共に培養され、透過が、測定される。透過は、不活性CDRの置換時に抗体立体配座を維持すると決定された全てのペプチドについて観察される。全てのTAbは、ペプチド特異的エフェクター細胞の存在下で、特異的癌細胞死滅を誘導するそれらの能力について試験される。全ての癌細胞が細胞表面までHLA複合体を運ぶことができ、それによりTAbの免疫原性ペプチドを提示できるので、試験される癌の特定のタイプは重要ではないことが、当業者には理解されよう。TAbは、免疫原性ペプチドを有しない親抗体のものを超える高められた特異的細胞死滅を生じることができる。不活性CDR置換の組み合わせを含むトロイの木馬抗体もまた、生成する。2個のCDRが不活性であるので、2個の免疫原性ペプチドの組み合わせが、生成される。挿入されるペプチドは、同じペプチドの反復であっても、または異なるペプチドであってもよい。
【0204】
実施例6:トロイの木馬抗体の機能確認(配列類似性)
配列類似性に基づく置換もまた、TMab4抗体に対し実施した。
免疫原性ペプチド(表3参照)のスクリーニングは、試験したペプチドの0.0057%のみが、可能な置換についてアラインメントスコア閾値(>25)を越えることを見出した。TMab4抗体に対し最も高い類似性を有する3種を、置換のために選択した。EBV由来の配列番号6は、抗体の重鎖内のアミノ酸28~35に対応した。これは、そのC末端でCDRH1に隣接する2個のアミノ酸(「MH」)を含む。重鎖中の代償変異(Y27D)もまた、抗体の乱れを減らすために作製した。SARS-CoV2由来の配列番号7は、抗体の重鎖内のアミノ酸52~60に対応する。これは、そのC末端でCDRH2に隣接する2個のアミノ酸(「YY」)を含む。EBV由来の配列番号8は、抗体の軽鎖の第1のフレームワーク領域中のアミノ酸14~22に対応する。これらの3種のTAbを、生成し、透過を、前述のように試験した(表10)。全ての3種は、陰性対照のものを越えた透過を示したが、配列番号7および配列番号8は、親抗体と同等かまたはそれより良好な透過を生じ、一方で配列番号6は、より悪い透過を生じた。
【表10】
【0205】
配列類似性法をまた、3E10抗体を改変するために使用した。免疫原性ペプチド(表3参照)のスクリーニングは、試験したペプチドの0.0093%のみが、可能な置換についてアラインメントスコア閾値(>25)を越えることを見出した。EBV由来の配列番号6は、抗体のCDRL1内のアミノ酸28~36に対応する。SARS-CoV2由来の配列番号9は、抗体の重鎖内のアミノ酸50~58に対応する。これは、そのN末端でCDRL2に隣接する4個のアミノ酸(「LLIK」)およびそのC末端でCDRL2に隣接する2個のアミノ酸(「YL」)を含む。両方のTAbを、生成し、それらは、親抗体と同等であった細胞中への浸透を有すると見出された(表11)。
【表11】
【0206】
最後に、第3の抗体であるDNA結合抗体、71F12(Sakakibara et al.,“Clonal evolution and antigen recognition of anti-nuclear antibodies in acute systemic lupus erythematosus”,Sci Rep.2017;7:16428を参照されたい、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を、不活性CDRについて分析し、CDRL1が不活性であると決定した。置換を、配列類似性に基づき実施し、アデノウイルス由来の配列番号10は、抗体(T4_1と呼ばれる)のCDRL1内のアミノ酸26~34に対応した。HPV由来の配列番号11は、抗体(T4_3と呼ばれる)の重鎖の第1のフレームワーク領域中のアミノ酸17~24に対応する。両方のTAbを、生成し、それらは、親抗体と少なくとも同等であった細胞中への浸透を有すると見出された。
【0207】
全ての生成したTAbをまた、前述のように特異的細胞死滅について試験した。うまく細胞に侵入したTAbは、死滅を含まない親抗体より優れた細胞死滅を誘導できる。
【0208】
実施例7:トロイの木馬抗体による死滅のさらなる確認
トロイの木馬抗体による死滅を、第2の方法により確認した。IncuCyteイメージングシステムを用いて、癌細胞を追跡し、カスパーゼ3/7色素の存在下でアポトーシスを定量した(材料と方法を参照)。TMab4および3E10抗体由来のTAb(T18およびT2_11)を、両方が良好な死滅化を示したので、さらなる調査のために選択した。
図9A~9Bから分かるように、両方のTAbは、エフェクター細胞単独により、または親抗体で処置した細胞と共培養したエフェクター細胞により生じたものを充分に越える特異的細胞死滅を生じた。これは、免疫原性ペプチドが標的細胞中に移入されるのみならず、プロセスされかつ細胞表面上に提示され、これがエフェクター細胞による特異的死滅を可能にする、ということを示す。
【0209】
他のTAbもまた、IncuCyteイメージングアッセイを用いて試験される。エフェクター細胞単独および/または親抗体により誘導されたものを超える特異的死滅が、本発明のTAbを用いて観察される。
【0210】
作製した種々のTAbの配列、および親抗体を表12にまとめる。重鎖が免疫原性ペプチドを含む場合、親の軽鎖を使用してTAbを作製し、軽鎖が免疫原性ペプチドを含む場合、親の重鎖を使用してTAbを作製することは理解されよう。特に、3E10抗体は、異なる軽鎖を含む2種の変種(P2およびP3と呼ばれる)を有する。いずれかが、TAbを生成するために使用できる。
【表12】
【0211】
種々の既知の治療抗体を、不活性CDRについて調査した。その抗原と接触している各CDRの結晶構造分析を実施し、抗原と接触しているアミノ酸の数を数えた。CDRのアミノ酸と抗原のアミノ酸の間の5Å未満の距離を、接触と見なした。抗原と接触している3個以上のアミノ酸は、結合に関与するCDRを示す。2個未満は、確実な不活性CDRを示す。正確に2個は、結合に関与している可能性が少ない、または関与が低いCDRを示す。評価のために、全てのこのようなCDRを、不活性と見なす。多数の他の抗体が、表1~3で提供されるものなどの免疫原性ペプチドで置換され得る不活性CDRを含むと見出された。MBRを、位置決めを最適化するために使用する。あるいは、TAbを、既知の抗体、特に不活性CDRを有するものに対し配列相同性を有する、表3からのペプチドを特定することにより設計する。高い相同性を有するペプチドを、TAbを生成するために、抗体中に入れ替える。全ての生成されたTabを、細胞透過について検査し、透過性を維持する。TAbをまた、前述のように特異的細胞死滅について試験し、親抗体により得られたものを越える死滅のレベルを観察する。
【0212】
実施例8:標的化抗体と組み合わせたトロイの木馬抗体(二重特異性トロイの木馬抗体、bi-TAb)。
前述のTAbは、それらが標的細胞に侵入し免疫原性ペプチドに対し刺激されたエフェクター細胞により特異的死滅を誘導すると示された、死滅化モジュールと考えられてよい。しかし、これらの分子の特異度を高め、癌細胞にそれらを標的化し、オフターゲット効果を減らすために、標的化モジュールを、加えた。3種のEGFR抗体:セツキシマブ、パニツムマブおよびネシツムマブ、を選択して、標的化モジュールとして使用した。全ての3種は、EGFRに特異的に結合すること、およびEGFRを過剰発現する癌を標的にすることが既知である。他の癌特異的/過剰発現分子を標的にする抗体もまた、可能である。これは単なる標的化モジュールであり、かつ死滅化モジュールと異なるので、任意の既知の癌標的化抗体を使用できる。EGFRを、単に概念実証として使用した。
【0213】
T18およびT2_11 TAbを、原理証明としてbi-TAbの生成のために使用した。対照の二官能性抗体もまた、TMab4または3E10親抗体を用いて生成した。二重特異性分子を、重鎖のホモ二量体化を制限するために、既知のノブインホール手法を用いて生成した。ユニークな改変を、死滅化モジュールおよび標的化モジュールの両方の重鎖の定常領域中に作製した(表13参照;Shatz et al.,“Knob-into-holes antibody production in mammalian cell lines reveals that asymmetric afucosylation is sufficient for full antibody-dependent cellular cytotoxicity”,2013,mAbs 5:6,872-881、で提供された方法を参照、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。これは、異なる重鎖間のヘテロダイマー化を促進し、ホモ二量体化を防止する。作製されたbi-TAbは、目的の二重機能分子の少なくとも90%の純度を有すると見出された。最終bi-TAbおよびそれらの対照の概略図を、
図10に示し、全配列を、表13で提供する。
【表13】
【0214】
bi-TAbを、高レベルのEGFRを発現する乳癌細胞上の表面EGFRに結合するそれらの能力について試験した。追加の死滅化モジュールは標的化モジュールの表面結合に影響を与えないはずであると予測され、実際にそれは、観察されたことであった(
図11)。bi-TAbは0.3nMまたは3nMのいずれの濃度でも、対照の元の抗EGFR抗体と同等レベルで、表面EGFRにうまく結合した。従って、bi-TAbは、選択された標的化モジュールに基づき癌細胞を効果的に標的化できる。
【0215】
次に、HLA分子との複合体で癌細胞の表面上に免疫原性ペプチドを運ぶbi-TAbの能力を、試験した。HLAペプチド提示を、本明細書で前述のように、測定した(材料と方法)。経時変化実験を実施して、経時的に表面提示を監視した。全ての5種のbi-TAbは、10時間のインキュベーションにより細胞表面にペプチドをうまく運んだ(
図12)。全てのbi-TAbは、それらの対照の対応物より優れていた。
【0216】
最後に、癌細胞死滅を、種々のエフェクター細胞濃度で調査した。それぞれ異なる標的化モジュールを有するbi-TAb3~5を、1:1、3:1、および6:1のエフェクター:標的細胞(E:T)濃度で試験した。6:1の比率で全ての3種の抗体は、対照抗体で観察されるものを超える特異的死滅を誘導した(
図13)。bi-TAb4および5(1つは、TAb由来のP1を含み、1つはTAb由来のP2を含む)もまた、3:1およびさらに1:1の比率で増大した死滅を示した。エフェクター細胞を含まない培養物を、コントロールとして用いた。これらの結果は、bi-TAbは癌細胞標的化と高レベルの特異的死滅を組み合わせるので、bi-TAbの高レベルの有効性を示す。
【0217】
使用した3種の抗EGFR抗体はそれら自体、不活性CDRを含む。これらの不活性CDRの要約を、表14で提供する。セツキシマブのCDRH1、CDRL1およびCDRL2ならびにパニツムマブCDRL1およびCDRL2、ならびにネシツムマブのCDRL1およびCDRL2は全て、不活性であると見出された。これらのCDRはまた、免疫原性ペプチドで置換される。置換された抗体の標的化が、確認され、EGFRへ結合するおよび癌細胞を過剰発現するEGFRへ標的化する能力は、維持される。改変された標的化モジュールの死滅化モジュールとの組み合わせは、送達される免疫原性ペプチドの数を増大させる。死滅化モジュールで使用されるペプチドおよび標的化モジュールで使用されるペプチドは、同じであっても、または異なっていてもよい。
【表14】
【0218】
bi-TAbは、他の死滅化モジュールおよび種々の標的化モジュールを用いて生成される。bi-TAbは、癌細胞標的化、HLAペプチド表面提示および特異的死滅に関して上述のように評価される。bi-Tabは、対照二官能性分子より優れ、癌に標的化でき、ペプチド提示を誘導でき、および最終的に免疫原性ペプチドに特異的なエフェクター細胞により標的細胞の死滅を強化できる。
【0219】
インビボ検証もまた、実施される。操作されたbi-TAbは、標的化モジュールにより標的化できる腫瘍を発現する免疫コンピテントマウス中に注入される。免疫原性ペプチドを欠くおよび/または非癌関連標的に結合する対照二官能性分子もまた、投与される。経時的な動物生存が、腫瘍サイズと同様に監視される。トロイの木馬抗体は、統計的に有意に腫瘍を収縮させおよび/または生存時間を延長すると見出され、それらが癌に対する免疫系を活性化させることを示す。マウスは、事前に免疫原性ペプチドでワクチン接種され得る。
【0220】
本発明はその特定の実施形態と共に説明されてきたが、多くの代替物、修正物および変形物があることは当業者には明らかであろう。従って、本発明は、添付の請求項の範囲の趣旨と広い範囲に入るこのような代替物、修正物および変形物のすべてを包含すると意図される。
【配列表】
【国際調査報告】