(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】測量可能な電気通信地盤調査
(51)【国際特許分類】
G01V 8/16 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
G01V8/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547174
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 US2022077880
(87)【国際公開番号】W WO2023064748
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521040466
【氏名又は名称】ファイバー センス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンジー、ナサニエル ジェイ.
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB17
2G105DD02
2G105EE02
2G105LL03
2G105LL04
2G105LL05
2G105LL06
(57)【要約】
対象地域の地盤調査を生成する方法は、対象地域の感知距離内に位置する光ファイバ内のDFOSデータを測定することと、測定されたDFOSデータに基づいて対象地域の地下特性を決定することとを含む。地盤調査システムは、光ファイバと、DFOS装置と、DFOSデータに基づいて地盤データを計算するように構成されたプロセッサと、を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地域の感知距離内に位置する光ファイバ内のDFOSデータを測定することであって、前記DFOSデータの測定は、前記光ファイバ内に誘起される歪み、歪み速度、速度、変位、圧力、運動、及び加速度のうちの少なくとも1つを測定することを含み、
コヒーレントノイズ成分を増幅し、インコヒーレントノイズ成分を抑制するために、隣接チャネルを1つのチャネルに対して相互相関させ、
T1よりも長いT2の全期間にわたって、相互相関の期間T1の時間セグメントを積み重ね、
周波数の関数としての地震波速度を測定し、複数の深さにおける地震波の速度の周波数依存性に基づいて前記光ファイバの下の地下地層をモデル化することによって、測定された前記DFOSデータに基づいて、前記対象地域の地下特性を決定し、
マルコフ連鎖モンテカルロ法を適用して可能なモデルパラメータ空間を探索することにより、地下地質を表すせん断波速度の1-Dモデルに変換する、
ことを含む、対象地域の地盤調査を生成するための方法。
【請求項2】
前記対象地域の感知距離内に位置する光ファイバ内のDFOSデータを測定し、
測定された前記DFOSデータに基づいて、前記対象地域の地下特性を決定する、
ことを含む、対象地域の地盤調査を生成するための方法。
【請求項3】
前記DFOSデータの測定は、前記光ファイバ内に誘起される歪み、歪み速度、速度、変位、圧力、運動、及び加速度のうちの少なくとも1つを測定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記DFOSデータの測定は、コヒーレントノイズ成分を増幅し、インコヒーレントノイズ成分を抑制するために、隣接チャネルを1つのチャネルに対して相互相関させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記DFOSデータの測定は、T1よりも長いT2の全期間にわたって、相互相関の期間T1の時間セグメントを積み重ねることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記歪みは、背景地震ノイズによって前記光ファイバに誘起される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記背景地震ノイズは、発電機、車両、建設及び掘削機器、ポンプ、機械、インフラ、風、及び海洋波のうちの少なくとも1つによって引き起こされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
測定された前記DFOSデータに基づいて前記対象地域の前記地下特性を決定することは、周波数の関数として地震波速度を測定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
測定された前記DFOSデータに基づいて前記対象地域の前記地下特性を決定することは、周波数の関数として計算された前記波速度に基づいて前記光ファイバの下の地下地層をモデル化することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記地震波速度を測定することは、所定の空間分解能でコヒーレント表面波を抽出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記対象地域の前記地下特性を決定することは、複数の深さにおける地震波速度の周波数依存性に基づいて地下層をモデル化することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記対象地域の前記地下特性を決定することは、マルコフ連鎖モンテカルロ法を適用して可能なモデルパラメータ空間を探索することによって、地下地質を表すせん断波速度の1-Dモデルに変換することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
測定された前記DFOSデータに基づいて前記対象地域の前記地下特性を決定することは、オフセットの関数として地震波速度を測定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記対象地域の前記地下特性を決定することは、前記地下を貫通する地震波の移動時間を測定することに基づいて、地下層をモデル化することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対象地域の前記地下特性を決定することは、前記地下を貫通する地震波の減衰を測定することに基づいて、地下層をモデル化することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記対象地域の前記地下特性を決定することは、地震断層撮影を適用することによって、地下地質を表す圧縮波速度及び/又はせん断波速度の1-Dモデルに変換することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記対象地域の前記地下特性を決定することは、前記圧縮波速度と前記せん断波速度との比を計算することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
DFOS装置を前記光ファイバに接続すること、
をさらに含み、
前記DFOSデータを測定することは、
前記DFOS装置からの光を前記光ファイバに送信し、
前記光ファイバからの屈折光を受信する、
ことを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
前記DFOSデータの測定は、歪みの測定を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記DFOSデータの測定は、地動の測定を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項21】
前記光ファイバの検出領域にアクティブ地震源を提供し、アクティブ源から地震エネルギーを放射する、ことをさらに含む、請求項2~請求項17の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記調査の結果は、一次元である、請求項2~請求項18の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記調査の結果は、前記光ファイバの経路に沿った前記地下の二次元プロファイルをもたらす、請求項2~請求項18の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記調査の結果は、三次元である、請求項2~請求項18の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記調査の結果は、地域を横切る層及び等層厚線を有する地下容積である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記光ファイバは、海底の上又は下のいずれかの水中で水平に設置される、請求項2~請求項22の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記調査の結果は、岩石及び土壌の種類、層の厚さ、及び層の深さを含む、上側の50mにおける岩石情報である、請求項2~請求項26の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記調査の結果は、密度、せん断弾性率、バルク弾性率、ポアソン比、Vp/Vs比、飽和度、層厚、及び層深さ、を含む物理的パラメータである、請求項2~請求項26の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記調査の結果は、Vs30値、又は地震せん断波速度情報の異なる統計的表現である、請求項2~請求項26の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記調査の結果は、水面の深さ、再充填状態、水理学的健康段階、利用可能な総水量、水バンキング量、浸透率を含む水理学的情報である、請求項2~請求項26の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記調査の結果は、>150mの深度における深い探査である、請求項2~請求項26の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記調査の結果は、前記光ファイバのカバーの深さの測定値である、請求項2~請求項26の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記地盤調査に使用される記録信号は、自然地震エネルギー及び人工的に生成された地震エネルギーである、請求項2~請求項29の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記地盤調査の使用される記録信号は、自然地震エネルギーである、請求項2~請求項29の何れか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記地盤調査に使用される記録信号は、人工的に生成された地震エネルギーである、請求項2~請求項29の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
光ファイバ内に光を送信するように構成された光送信器と、
光ファイバから光を受信するように構成された受信器と、
対象地域の地盤調査を生成する方法を実行するように構成された制御装置と、
を備える、DFOS装置、
を含む地盤調査システムであって、
対象地域の感知距離内に位置する前記光ファイバ内のDFOSデータを測定し、
測定された前記DFOSデータに基づいて、前記対象地域の地下特性を決定する、
ことを含む、地盤調査システム。
【請求項37】
前記光ファイバを更に備える、請求項36に記載の地盤調査システム。
【請求項38】
前記光ファイバは、通信に用いられるファイバ束の一部である、請求項36に記載の地盤調査システム。
【請求項39】
前記DFOS装置によって検出可能な地震波を生成するために、地中に地震エネルギーを生成して出力するように構成された少なくとも1つのアクティブ地震源を更に備える、請求項36に記載の地盤調査システム。
【請求項40】
前記調査の結果は、岩石及び土壌の種類、層の厚さ、及び層の深さを含む、上側の50mにおける岩石情報である、請求項36に記載の地盤調査システム。
【請求項41】
前記調査の結果は、密度、せん断弾性率、バルク弾性率、ポアソン比、Vp/Vs比、飽和度、層厚、及び層深さ、を含む物理的パラメータである、請求項36に記載の地盤調査システム。
【請求項42】
前記調査の結果は、Vs30値、又は地震せん断波速度情報の異なる統計的表現である、請求項36に記載の地盤調査システム。
【請求項43】
前記調査の結果は、水面の深さ、再充電状態、水理学的健康段階、利用可能な総水量、水バンキング量、浸透率を含む水理学的情報である、請求項36に記載の地盤調査システム。
【請求項44】
前記調査の結果は、>150mにおける深い探査である、請求項36に記載の地盤調査システム。
【請求項45】
前記調査の結果は、前記光ファイバのカバーの深さの測定値である、請求項36に記載の地盤調査システム。
【請求項46】
前記地盤調査に使用される記録信号は、海洋波、風、車両、インフラ、及び/又は建物のうちの少なくとも1つによって生成される自然地震エネルギーである、請求項36に記載の地盤調査システム。
【請求項47】
前記少なくとも1つのアクティブ地震源は、ハンマーを振ること、又はタンパー、エアガン、又は爆薬を使用することを含む、請求項38に記載の地盤調査システム。
【請求項48】
前記地盤調査に使用される記録信号は、自然地震エネルギー及び人工的に生成された地震エネルギーである、請求項36~請求項47の何れか1項に記載の地盤調査システム。
【請求項49】
光ファイバ内に光を伝送するように構成された光送信器と、
前記光ファイバからの光を受信するように構成された受信機と、
対象地域の地盤調査を生成する方法を実行するように構成される制御装置と、
を備える、DFOS装置であって、
前記対象地域の感知距離内に位置する光ファイバ内のDFOSデータを測定し、
測定されたDFOSデータに基づいて、対象地域の地下特性を決定する、
ことを含む、DFOS装置。
【請求項50】
1つ以上の請求項49に記載の前記DFOS装置と、
1つ以上の前記DFOS装置に動作可能に接続された1つ以上の光ファイバと、
を備える、地震情報を処理するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年10月15日に出願された米国仮出願第63/256,079号の権利を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
地表付近(地殻の上10~300m)の物性は、新しいインフラの安全な建設に重要である。地盤調査は、世界中の都市及び農村地域、ならびに沖合地域で一般的である。例えば、建築技術者は、敷地の等級、建築物の基礎を支えなければならない土壌強度、基礎を補強するための潜在的な必要性、及び地下の飽和又は不飽和特性を考慮して構造を設計する。地盤調査は、新しい建物建設許可及び詳細調査プロセスで使用され、不動産所有者が安全な建物慣行に従うのを助ける。
【0003】
また、米国西部、メキシコ、中南米、カリブ諸島、ニュージーランド、日本、インドネシア、マレーシア、タイ、台湾、インド、イタリア、トルコ、ギリシャなど、地震が起きやすい地域における地震・液状化ハザードの解析にも地盤調査が重要である。地質工学的地震調査では、将来の大規模地震と高振幅地震動シナリオによってもたらされるリスクを特徴づけるために、近地表面の物理的性質を評価することを目的とする。地震が発生すると、地震によって発生した地震波が浅い地表下の土壌層に捕捉されるようになるため、厚い地帯と固結していない地帯では、地震の度合いが増幅される。この残響は、地震動の増幅を引き起こし、これは、表面付近でより圧縮された隣接ゾーン、又はここでは堆積物層が存在しないように表面で岩盤が作り出されるゾーンと比較して、5~20倍であることが繰り返し示されている。
【0004】
近表面特性は、岩石及び/又は土壌の種類、層の厚さ、及び水面の深さ(例えば、「岩盤の上の5メートルの厚さの砂層」)などの地質学的用語で、又は密度、多孔度、せん断弾性率、バルク弾性率、ポアソン比、及び飽和などの物理的及び材料パラメータを使用して、しばしば記述される。表面付近の特性情報又は地盤調査の結果を通信する1つの方法は、表面上の識別された点間の1-D(垂直)特性プロファイル、又は表面で識別された線に沿って特性の横方向の変動を示すために複数の垂直プロファイルを接続する2-D「断面」画像図である。
【0005】
表面付近の特性は、異なる技術を用いて評価することができる。最も詳細な特性情報は、典型的には穿孔機を使用して、関心のある部位における近表面の関心のある部分全体を通して深い垂直コアを抽出することから得られる。次いで、コア試料を手で視覚的に評価することができ、層の深さ及び岩石の種類を直接測定することができる。この方法は、炉心孔の現場で実際の「グラウンドトゥルース」を提供するが、侵入的であり、しばしば集中的な許可を必要とし、ドリルリグのサイズのために、狭い都市地域への操作がロジスティック的に困難又は不可能であり得、一般に、掘削を完了するのに数週間を要し、したがって、非常に大きなプロジェクト費用を有する。新たな沖合インフラの建設において、ドリルコア試料を得ることはさらに困難である。しかし、表面近傍の特性情報を得るための穿孔の中心的な問題は、情報が横方向に変化することである。いくつかの地域では、必要とされる複雑さの度合いを捉えるために、浅い土壌厚さを水平方向に10~100メートルごとにサンプリングしなければならない。したがって、ドリルコア分析は1つの100m×100mの地域では有用であり得るが、10,000m×10,000mのフットプリントを有する都市地域などのより大きな地域では非実用的であり、高価である。
【0006】
非侵入手段による地表付近の地形情報を得るための別の方法は、地下構造物及び物質を探査するために地震イメージングのような地球物理学的方法を適用することである。地震イメージングは、地表に地震計/ジオフォン装置の集合体を配備し、爆発物、Betsyガンのようなアクティブな制御された発生源を設定すること、又はVibroSeisトラックを使用することを含む。地震イメージングでは、一般的な慣性地震計、加速度計、及び/又はハイドロフォンが表面に配備され、地震源が爆発され、実験に必要な入力地震波エネルギーを生成する。X線又は他の形態の医用イメージングと同様に、地震イメージングは、反射及び屈折の原理を使用して、その地震波速度に従って地下の材料特性を特徴付け、十分に確立された材料特性と比較することによって、表面付近の特性のプロファイルを検索するために使用することができる。この種の技術は、1960年代以来、地質工学的現地調査に適用されてきた。地震探査は非侵襲的であり、1,000m×1,000mの領域をカバーする最大数日まで数時間で迅速に展開でき、横方向の特性(2-D情報)と1-Dプロファイルを提供するように設計できることが、地球物理学を地盤調査に使用する利点である。特に都市部及び沖合における地盤調査の限界は、海洋哺乳類が存在する水中又は都市部での大きな地震源の必要性のために、調査が許容することが困難であり得ることである。したがって、とりわけ、上記の課題を克服する非侵入的な地盤調査方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態は、上述の欠点のない自由な地盤調査を実行する方法、システム、及びデバイスを提供する。特に、本開示は、都市又は沖合地域の電気通信ネットワーク上に配備された1つ又は複数の分散型光ファイバ感知システムを使用して、都市地域又は沖合の規模で地球物理学的地盤調査情報を取得するためのシステム及び方法、測量可能な電気通信地盤調査と呼ばれる技術を提供することによって、地盤調査の困難に対処する。
【0008】
開示される実施形態によるシステム及び方法の実施形態では、地震波動場相関分析の原理が、都市部に一般に存在する背景の自然及び/又は人為的地震学的活動からコヒーレント地震信号を抽出するために適用される。この背景地震活動の最終的な発生源は、発電機、水文ポンプ、農業機器、音響警報器、建設及び掘削機器、車両、歩行者、動物、風、雨、地震、暴風、及び海洋波を含むことができる。複数のそのような活動が、本開示による地盤調査を実施するために使用される背景地震エネルギーを生成することが理解されるのであろう。
【0009】
調査の実施の正確性及び効率を改善するパラメータを用いて、オフショア地域及び都市地域においてこのタイプの調査を実施する方法を決定するための方法が開示される。様々なパラメータは、先の情報を利用して調査品質の尤度を決定することができる。様々な方法は、自然及び/又は人為的な地震源を補完するために、質の悪い調査地域を人工地震源で補完することができる。
【0010】
開示される装置、システム、及び方法は都市全体にわたって、又は海底に敷設された(たとえば、50km以上延在する)光ファイバケーブルに沿って、連続的かつ効率的な方法で、表面近傍特性情報を取得する。出力は、1次元の感覚(垂直プロファイル)、2次元の感覚(断面画像)、又は3次元の感覚(体積/層状モデル)における表面下構造を記述する表面下特性のモデルであり得る。これは、地球物理学的地盤調査に要求される典型的なフィールドワークなしに効率的に達成される。この種の調査は、長年~数十年にわたって繰り返し実施することができる。
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明するが、図面において、同一の参照番号は同一の要素を表す。添付の図面は、必ずしも縮尺通りに描かれていない。図面のいくつかは、他の基礎となる特徴をより明確に示す目的で、選択された特徴を省略することによって簡略化されている場合がある。いくつかの図における要素のそのような省略は対応する書面による説明において明示的に開示される場合を除き、例示的な実施形態のいずれかにおける特定の要素の存在又は不存在を必ずしも示すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】開示される主題の実施形態による、レーザ光を送受信するDFOS機器の例を図示する。
【
図1B】開示される主題の実施形態による、光ファイバインフラストラクチャを有する地理的地域の例を図示する。
【
図2】開示される主題の実施形態によるアルゴリズムワークフローの一例を示す。
【
図3】開示される主題の実施形態による、DFOSデータを記録するためのアルゴリズムワークフローの一例を示す。
【
図4】開示される主題の実施形態による、DFOSデータ品質を検証するためのアルゴリズムワークフローの一例を示す。
【
図5】開示される主題の実施形態による、DFOSデータを処理するためのアルゴリズムワークフローの一例を示す。
【
図6】開示される主題の実施形態による、地震フェーズを検出するためのアルゴリズムワークフローの例を図示する。
【
図7】開示される主題の実施形態による、地下環境をモデリングするためのアルゴリズムワークフローの一例を示す。
【
図8】開示される主題の実施形態による、背景地震学的活動及び地下地質学的情報の概念的表現の例を図示する。
【
図9】開示された主題の実施形態による地盤調査特性の例を示す。
【
図10】光ファイバケーブルに沿って記録され、開示される主題の実施形態によるDFOSデータを表す地震ノイズの例を示す。
【
図11A】開示される主題の実施形態による、記録された地震ノイズからのコヒーレント地震波の抽出の例を示す。
【
図11B】開示される主題の実施形態による、記録された地震ノイズからのコヒーレント地震波の抽出の例を示す。
【
図12A】開示される主題の実施形態による、DFOSデータから抽出されたコヒーレント地震波に基づく中間処理結果の例を示す。
【
図12B】開示される主題の実施形態による、DFOSデータから抽出されたコヒーレント地震波に基づく中間処理結果の例を示す。
【
図12C】開示される主題の実施形態による、DFOSデータから抽出されたコヒーレント地震波に基づく中間処理結果の例を示す。
【
図13】開示される主題の実施形態による、光ファイバに沿った1つの位置における処理されたDFOSデータから得られる、速度対深さの結果の例を図示する。
【
図14】開示される主題の実施形態による、地盤調査の2Dモデルの例を図示する。
【
図15】開示される主題の実施形態による、波速度と岩石タイプとの間の例示的な関係を図示する。
【
図16】開示される主題の実施形態による、速度がどのように土壌タイプに変換されるかを概念的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1Aを参照すると、DFOS機器100は、光ファイバ150に光を照射し、時間の関数として戻るエネルギー110を記録する。
図1Aに示されるように、ファイバ150は、道路140の下又は近くに埋設されてもよい。1台以上の車両130が道路140上を走行し、車両が地震エネルギーを生成し、地震エネルギーは、本開示による地盤調査に使用される源と考えることができる。
【0014】
DFOS測定は、光ファイバ150の動き/変形、したがって、光ファイバの周囲の動き/変形に敏感である。例えば、地震中に、地震波が近表面を伝播することにつれて、土壌は圧縮及び希薄化を受け、この運動は、光ファイバ150に伝達される。
【0015】
DFOS測定は、連続光ファイバが存在する場所であればどこでも行うことができ、一端をDFOS機器100に接続することができる。ファイバは、DFOS測定の各ゲージ長さに2つ以上の運動/変形成分を導入するために、任意の配向で敷設することができ、又は中心円筒の周りに螺旋状に巻き付けることさえできる。異なる目的のために敷設された既存の光ファイバを、DFOS測定のために利用することができる。複数のファイバを直列に接続し、1つの機器でDFOSに使用することも、複数のDFOSチャンネル(同じDFOS機器又は別々のDFOS機器で分析)を使用して、同じ近傍のDFOSデータを記録することもできる。DFOS測定のために既に設置されている既存の電気通信ファイバを使用して、地盤調査を実施することが有利である。そのようなアプローチは、上記の他の地盤調査技術の欠点の多くを克服する。
【0016】
光ファイバ150は、
図1Bのマップにおけるファイバ150のトレース170によって示されるように、地理的地域内の大きな距離に及び得る。実施形態では、光ファイバの束が通信のために通常使用されないか、又は使用のために割り当てられない1つ又は複数のファイバを含む。光は、ダークファイバとも呼ばれるそのようなファイバ又はファイバに注入されることができる。
図1Aに示すように、このプロセスに使用される地震エネルギー源は、車両交通などの人工ノイズ、又は海洋波などからの自然エネルギーによって提供することができる。実施形態では、補足音響源120を使用することができる。光源120は、光ファイバによって見ることができるエネルギーを生成するために、関心地域に配置することができる。供給源120は、爆発物、土壌圧縮機、又は他の装置、例えば、とりわけ、ハンマー、タンパー、又はエアガンを振ることであってもよい。
【0017】
光は、単純パルス、チャープパルス、又は連続波を含む、任意の種類であり得る。実施形態において、光はレーザ光である。更なる実施形態では、レーザ光は、赤外線又は近赤外線周波数範囲内にある。
図1Aにおいて矢印として示される光ファイバ感知経路から戻るエネルギーは、光ファイバの長さに沿った光散乱特性の結果としてレーリー散乱された可能性があり、又は戻りエネルギーは、入射波長からのいくつかのブリルオイン又はラマン遷移によって引き起こされた可能性がある。散乱光は、前方散乱、後方散乱、又はその両方であってもよい。
【0018】
戻り光は、光学的に、デジタル的に、又はその両方で分析することができる。このプロセスの出力は、本明細書ではDFOSデータ又はDFOS記録と呼ばれるデータセットであり、ファイバ内のすべてのセンサ位置における特定の時間サンプルについての光ファイバの状態に関する値を含む。また、DFOSのために電気通信受信機統計自体を使用することを想像することも可能であり、一方の端部に専用の機器を使用せずに、ファイバの長さの時間変化率、又はある点又はその長さにわたるファイバの応力又は歪みの状態に関する情報を運ぶ可能性がある、一方の端部から他方の端部への偏光又は飛行時間の特性などのファイバ状態に関する情報を抽出することができる。
【0019】
一実施形態では、DFOS機器は、WO2018/045433A1に記載されている分散型音響感知のためのユニットなどのインテロゲータユニット(「IU」)であってもよく、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
DFOSの場合によっては、物理的な固定長センサ位置がない。原則として、ゲージ長は、光ファイバに沿って1つのDFOS値が検出可能な距離である。例えば、1つのタイプのパルス化されたレイリーベースのDFOSでは、ゲージ長は10mであってもよく、記録されたデータは歪みであってもよく、この場合、10mのゲージ長は変位が結果として生じる歪みを引き起こす「基準長さ」である。ゲージ長は、測定の品質、測定のゲイン、空間エイリアシングなしに分析することができる最も細かい空間サイズ、及び記録されたDFOSデータボリュームを含む測定の多くの態様に影響を及ぼすことができる。ゲージ長は、ハードウェア及び/又はソフトウェアで設定できる。ゲージ長は、ソフトウェアで設定されている場合、複数のゲージ長においてDFOSデータを記録することができる。
【0021】
DFOS測定は、光ファイバの動き/変形、したがって、光ファイバの周囲の動き/変形に敏感である。例えば、地震の間、地震波が近表面を伝播することにつれて、土壌は圧縮及び希薄化を受け、この運動は光ファイバに伝達される。大地震が発生しない場合、DFOS測定法の自己ノイズが低いため、しばしば「地震ノイズ」と呼ばれる微小な振動が記録中に存在する。これらの背景振動は、海洋波の相互作用、潮流、他の小さな地震、風、及び、車両、列車、掘削機、建設機器、発電機、水文ポンプ、警報、及び他の人間の技術などの地震波の人為的な発生源のような自然の地震学的プロセスの結果である。これらの自然プロセス及び人為的プロセスによって生成される地震エネルギーの大部分は、もはや検出できないレベルまで減衰する前に100キロメートルを超えて伝播する。例えば、移動する貨物列車及び風力タービンによって放射される地震波は、それらの発生源から40キロメートルまで見ることができる。
【0022】
様々な実施形態において、ファイバ経路に沿って行われたDFOS測定値は相関され、抽出されたコヒーレント地震波背景位相情報(すなわち、波速)は、電気通信の光ファイバのセグメントの下の表面近傍情報を取得するために使用される。
【0023】
DFOSを使用することは、ディスクリートスクリートファイバブラッググレーティングセンシング(FBG)などの他のアプローチとは、異なることに留意されたい。FBGでは、センサ又は複数のセンサが光ファイバに沿って追加されるか、又は新しい光ファイバが複数のそのようなセンサを接続するために使用され、光がセンサに伝達される。そのようなアプローチは、新しいセンサ(及びおそらく新しいファイバ)が既存の電気通信インフラストラクチャに追加されなければならないが、DFOSでは、既存の光ファイバ自体がセンサとして機能し、ファイバ又は新しいファイバに沿って既存のファイバにさらにセンサを追加する必要がないので、DFOSよりも望ましくない。さらに、光ファイバ全体がセンサとして使用され、したがって、感知のために選択されたファイバに沿った任意の位置が、地盤調査のためにファイバに沿った特定の地理的地域及び場所に焦点を合わせることを可能にする。
【0024】
本開示は、光学プロセスで始まり、表面下の特性情報で終わる例示的なワークフローアルゴリズムを強調する。
図2を参照すると、地盤調査を生成するための例示的なワークフローアルゴリズムが示されている。S201では、
図3を参照して以下でより詳細に説明するように、DFOSデータが収集される。S203において、収集されたデータは、それが特定の品質パラメータを満たすかどうかを決定するためにチェックされる。収集されたデータがデータ品質チェックに合格しない場合、新しいデータが記録され、記憶される。データ品質チェックの詳細については、
図4を参照して後述する。データがデータ品質チェックに合格する場合、処理はS205に進み、DFOSデータの処理を行い、これについては
図5を参照して以下でより詳細に説明する。
【0025】
S207において、プロセスは、
図6を参照して以下でより詳細に説明されるように、S205の出力から地震フェーズを選択する。S209において、プロセスは
図7を参照して以下でより詳細に説明されるように、研究される地域のサブサーフェスをモデル化し、それによって、地盤調査を生成する。これらの処理ステップの更なる詳細を以下に説明する。
【0026】
図3は、DFOSデータを収集するための例示的な実施形態の更なる詳細を提供する(
図2、S201)。光ファイバは、一般に、光パルスとして符号化されたデジタルトラフィックを搬送するために使用される通信ケーブルなどの既存のインフラストラクチャの一部であることが理解されよう。多くの場合、そのような通信インフラストラクチャは、複数の光ファイバの束を含み、それらのすべてが利用されるわけではない。未利用の光ファイバ(すなわち、暗ケーブル)をDFOS装置に接続することができ、その結果、光をファイバ内に放出することができ、また、ファイバから受光することができる。
【0027】
第1のステップ(S301)は、発光デバイスを使用して光ファイバ内に光を照射し、次いで、光ファイバの同じ又は異なる終端において受信デバイスを使用してその光を受信すること(S303)を伴う。実施形態では、発光デバイスは、レーザ光を放出することができるレーザエミッタである。実施形態では、放出されるレーザ光は、1550~1580年ナノメートルの波長にわたる周波数の帯域内にある。更なる実施形態では、単一の周波数が使用される。更なる実施形態では、互いに分離された複数の周波数帯域が使用される。
【0028】
S301の結果は、ある時間隔にわたって光ファイバケーブルに作用する分布振動又は温度場を含むDFOSデータストリームである。DFOSでは、空間サンプリングレート又は空間分解能がミリメートルからキロメートルまで、又はキロメートルまでと同じくらい小さいことが可能である。また、時間サンプリングレートは、マイクロ秒から時間までの範囲であってもよい。実際の空間及び時間サンプリングレートは、ソフトウェアで選択可能であり、地下における地面の動きを捕捉するように選択され、典型的には、ファイバに沿って1メートルごとに1つの空間感知点、及び0.1~0.001秒(10~1000Hz)ごとに1つのデータ点を捕捉するように選択される。アルゴリズムの第2のステップは、DFOSデータストリームのサブセットを記録することであり、ここで、表面下の特性を決定することが望ましい。記録は、S307において、M個のセンシングチャネル(ファイバ内の位置)と、T分間の連続データとからなる。
図10は、S307の例示的な結果を示す。
【0029】
光ファイバは、通信又は他のインフラストラクチャ目的のために使用される光ファイバの束の一部として含まれ得る。実施形態では、光が放射される光ファイバは、ダークファイバであり、これは通常、インフラストラクチャ目的の一部として使用されないことを意味する。いくつかの実施形態では、複数の光ファイバが並列に利用され、その結果、複数の地盤調査もたらされて、処理が複数のファイバの各々に対して別々に実行されてもよく、その結果、複数の地盤調査を組み合わせて精度を向上させることができる。更なる実施形態では、複数の並列光ファイバが使用され、並列ファイバからのデータは、最終的な地盤調査の精度を改善するために、処理の初期段階で(例えば、値の平均化によって)組み合わされる。
【0030】
データセットをサブセット化するステップは、また、データセットを記憶するのに十分なRAMが利用可能である場合、サブセットデータセットを実際に記憶することなく達成され得る。サブセットデータセットは、6時間の期間の全てのチャネルであり得、その場合、Mは、DFOSデータストリーム中のチャネル数(たとえば、12000)に等しく、Tは2160に等しい。
【0031】
再び
図2を参照すると、S203において品質チェックが行われる。S203の例示的な実施形態の詳細を
図4に示す。品質チェックに合格した場合、ワークフローは、サブセットデータセットを継続することが許可される。品質チェックによって品質が不良であると識別された場合、ワークフローは、DFOSデータストリームに戻り、新しい未加工のDFOSサブセット部を選択する。記録されたデータを破棄し、新しいデータセットを得るための基準として、以下のステップのいずれか1つを使用することができる。以下のプロセスは特定の順序で列挙されるが、以下のデータ品質チェックは任意の順序で実行され得ることが理解されよう。
【0032】
S401において、記録されたデータの信号対雑音比が検証される。信号対雑音比は、光学雑音フロア上の振動信号の回復された忠実度に関連する。DFOSの光ノイズは、一般に、光ファイバアレイの範囲にわたって変化することが分かっているので、このステップは、使用可能なデータがある場所を確立するために使用することができる。
【0033】
S403において、信号が有効であることを検証するために、地震減衰の統計的試験を適用することによって、データの減衰特性が検証される。例えば、地下の地震波がどのように減衰するかのモデルをデータに当てはめ、その後、試験が失敗した部分集合データを棄却することが可能である。
【0034】
S405では、時間不変光ノイズ特性を評価することによって、低光ノイズチェックが実行される。あるいは、これらの効果を除去することが可能である。
【0035】
S407において、チャネル範囲チェックは、サブセットセクションの曲率が有用性の範囲外であるかどうかを決定するために、サブセットチャネルの線形性を決定する。
【0036】
S409において、地図チェックを使用して、選択された光ファイバが、ピットもしくは建物の内部もしくは橋脚に沿って位置すること、又は地震源から遠くに位置すること、又は地震源に近すぎることなど、正確な測定を排除しない物理的レイアウトを有することを検証する。データ品質チェックが満たされる場合、処理はS205に進み、詳細は
図5に示される。
【0037】
S205における全体的な処理はDASアレイ内のセグメント(すなわち、光ファイバに沿って指定された仮想センサ位置)に適用される地震干渉法として考えることができる。地震干渉法は、隣接するチャネルが1つのチャネルに対して相互相関するプロセスである。このステップは、コヒーレント成分を「強化」し、インコヒーレント成分を「低減」する。そのため、このプロセスは、地震ノイズ圧縮と考えることもできる。入力は
図10に概略的に示されており、時間は縦軸に、チャンネル番号は横軸に沿っている。
【0038】
N個の規則的又は不規則に離間されたセンサ(N<=M)からのデータは、背景波動場からコヒーレント成分を抽出するために、隣接するP個のセンサと畳み込まれ、経時的に平均化される。プロセスは、S501でセンサ位置にわたってループし、S503でウィンドウ開始時間にわたってループする。特定のセンサ位置及び特定の時間に対するDFOSデータは、S505において、隣接するセンサのDFOSデータと、複数の時間窓にわたって相互相関される。実施形態では、図に示すように、「抽出」が鮮明な画像に収束するまで、3時間にわたって1分間の相互相関が積み重ねられる。
図11A及び
図11Bは、コヒーレントなエネルギーが明確に見える波動場を表す。
【0039】
より具体的には、結果は、サイズN×Pの圧縮波動場データセットである。
【0040】
次に、
図2のプロセスは、S207において、詳細が
図6に示されている地震フェーズの検出を続ける。地球内の地震波速度の変化、圧縮(P)波とせん断(S)波との間の変換の可能性は、多くの可能な波経路をもたらす。各経路は、振動図上に別々の地震フェーズを生成する。
図6を参照すると、地震フェーズ検出のプロセスが概略的な図が示されている。高レベルでは、このプロセスが複数の異なる地震学的処理技術を適用して、地下特性情報に関して圧縮波動場データを分析し、モデル化し、解釈する。このプロセスは、地震波の速度が、波の周波数に依存することを認識する。地球上のほとんどの場所で、地震波速度は、材料の圧密化により深さが増加することにつれて増加する。より高い周波数の(比較的短い波長の)地震波は、浅い層に対してより敏感であり、一方、より低い周波数の(比較的長い波長の)地震波は、より深い層に対してより敏感である。
【0041】
このステップにおける異なるプロセスは、異なる結果をもたらし得、例えば、表面波分析に適用される技術は空間(Z)の関数として、せん断波速度(Vs)に関連する表面下特性情報をもたらし得、一方、身体波情報の分析は圧縮波速度(Vp)に関連する表面下特性情報をもたらし得る。このような情報を組み合わせて、地盤調査報告書を作成することができる。
【0042】
一実施形態では、地震フェーズ検出プロセスがS205からの波動場データセット、センサ位置、及び研究中の地域内の地震波の可能な速度のリストを入力として受信する。プロセスは、関心のある波動場及び速度に基づいてテーブルを作成するために、S601においてセンサ位置にわたってループし、また、速度にわたってループする。これは、速度リストのグリッド検索と考えることができる。S605において、分散のテーブルが上述のテーブルのフーリエ変換(例えば、FFT)に基づいて計算される。得られたデータセットの例を
図12Aに示し、速度を周波数に対してプロットする。この結果は、特定のセンサ(すなわち、光ファイバの一部)によって見られる周波数のセットに対する波速度と考えることができ、プロット内の色は速度を表し、より明るい中央地域1200は、プロット内の最も高い速度を表す。
【0043】
S607において、地震フェーズは、データ内のピークを見つけることによって選ばれる。
図12Bは、ピーク検出が適用された後の
図12Aのデータセットを示し、最高エネルギーレベルのみが、1210に示されるように保存される。この中間データは、
図12Cに示されるように、速度対周波数の曲線(又は複数の曲線1220及び1240)を戻すために、例えば、ベストフィット法を適用することによって、さらに処理される。実施形態では、10Hzでの最初の30メートルの深さが対象であり、これは表面から30メートルの深さまでの平均地震せん断波速度として定義されるVS30データに対応する。この測定深さでは、光ファイバの深さは測定にあまり影響を与えない。
【0044】
次いで、プロセスは、S209に続き、ここで、S207で選択された地震フェーズに基づいて地下がモデル化される。S209の詳細を
図7に示す。概念的には、プロセスが、地下地質を表すせん断波速度の1-Dモデルに変換する。このプロセスは、マルコフ連鎖モンテカルロを使用して、可能なモデルパラメータ空間を効率的に探索し、
図13のプロセスの結果によって示されるように、最良適合最終モデルファミリーを識別することができる。
【0045】
図7を参照すると、S701において、
図15に示される様々な地下層の波動速度を考慮して、モデルのセットが生成される。実施形態において、モデルの数は100,000以下である。次いで、これらのモデルは、S703において、合成地震位相選択を計算するために使用される。S705において、合成地震フェーズ選択は、S207からの計算されたフェーズ選択と比較される。誤差を最小化するためにRMSなどの方法を使用して、最も類似した合成位相選択が選択される。
【0046】
S707では、
図13に示すように、選択された合成位相選択に基づいて、深度対波速度のモデルが生成される。
図13のモデルは、
図16に示すように、例えば、波速度対深度線を単一の線に平均化し、基板の既知の特性に基づいて実際の基板物質を各波速度にマッピングすることによって、さらに精緻化することができる。
【0047】
図13及び
図16の結果は、特定のセンサ位置(すなわち、光ファイバのセグメント)における表面下の状態を表す。これらの位置は、
図14に示すように、光ファイバの長いスパンにわたる表面下条件を示すために組み合わせることができる。ここで、各画素の色は、Km/s単位の波速度を表す。
図14の例から明らかなように、それぞれがある範囲の波速度を有する3つの異なる基板が、様々な深さで研究地域内に延在している。特定の列における波速度(プロットにおける色)の急激な変化は、基板の2つの別個の層の間の境界を表す。この結果は最終結果とみなすことができ、又は
図9に示されるようなデータにさらに解析することができる。
【0048】
更なる実施形態は、以下の通りである。第1の更なる実施形態によれば、対象地域の地盤調査を生成する方法であって、対象地域の感知距離内に位置する光ファイバ内のDFOSデータを測定し、測定されたDFOSデータに基づいて対象地域の地下特性を決定する、ことを含む方法が提供される。第2の更なる実施形態によれば、第1の更なる実施形態の方法が提供され、DFOSデータの測定は、光ファイバケーブルに誘起された歪みを測定することを含む。第3の更なる実施形態によれば、第1の更なる実施形態の方法が提供され、DFOSデータの測定は、コヒーレントノイズ成分を増幅し、インコヒーレントノイズ成分を抑制するために、1つのチャネルに対して隣接チャネルを相互相関させることを含む。第4の更なる実施形態によれば、第3の更なる実施形態の方法が提供され、DFOSデータの測定は、T1よりも長い、総持続時間T2にわたる相互相関の持続時間T1の時間セグメントを積み重ねることを含む。
【0049】
第5の更なる実施形態によれば、第2の更なる実施形態の方法が提供され、歪みは、背景地震ノイズによって光ファイバケーブル内に誘起される。第6の更なる実施形態によれば、第5の更なる実施形態の方法が提供され、背景地震ノイズは、発電機、車両、建設及び掘削機器、ポンプ、機械、インフラ、風、及び海洋波のうちの少なくとも1つによって引き起こされる。第7の更なる実施形態によれば、第2の更なる実施形態の方法が提供され、測定されたDFOSデータに基づいて対象地域の地下特性を決定することは、周波数の関数として地震波速度を測定することを含む。第8の更なる実施形態によれば、第1の更なる実施形態の方法が提供され、測定されたDFOSデータに基づいて対象地域の地下特性を決定することは、周波数の関数として計算された波速に基づいて、光ファイバケーブルの下の地下地層をモデリングすることを含む。第9の更なる実施形態によれば、第7の更なる実施形態の方法が提供され、地震波速度を測定することは、所定の空間分解能でコヒーレント表面波を抽出することを含む。
【0050】
第10の更なる実施形態によれば、第9の更なる実施形態の方法が提供され、対象地域の地下特性を決定することは、複数の深さにおける地震波の速度の周波数依存性に基づいて地下層をモデル化することを含む。第11の更なる実施形態によれば、第10の更なる実施形態の方法が提供され、対象地域の地下特性を決定することは、マルコフ連鎖モンテカルロを適用して可能なモデルパラメータ空間を探索することによって、地下地質を表すせん断波速度の1-Dモデルに変換することを含む。第12の更なる実施形態によれば、第2の更なる実施形態の方法が提供され、測定されたDFOSデータに基づいて対象地域の地下特性を決定することは、オフセットの関数として地震波速度を測定することを含む。第13の更なる実施形態によれば、第12の更なる実施形態の方法が提供され、対象地域の地下特性を決定することは、地下を貫通する地震波の移動時間を測定することに基づいて地下層をモデル化することを含む。第14の更なる実施形態によれば、第12の更なる実施形態の方法が提供され、対象地域の地下特性を決定することは、地下を貫通する地震波の減衰を測定することに基づいて地下層をモデル化することを含む。
【0051】
第15の更なる実施形態によれば、第10の更なる実施形態の方法が提供され、対象地域の地下特性を決定することは、地震断層撮影を適用することによって、地下地質を表す圧縮波速度及び/又はせん断波速度の1-Dモデルに変換することを含む。第16の更なる実施形態によれば、第10の更なる実施形態の方法が提供され、対象地域の地下特性を決定することは、圧縮波速度とせん断波速度との比を計算することを含む。第17の更なる実施形態によれば、第1の更なる実施形態の方法が提供され、この方法は、DFOS装置を光ファイバに接続することをさらに含み、DFOSデータを測定することは、DFOS装置から光ファイバに光を送信し、光ファイバから屈折光を受信する、ことを含む。第18の更なる実施形態によれば、DFOSデータの測定は、歪みの測定を含む、第1の更なる実施形態の方法が提供される。第19の更なる実施形態によれば、DFOSデータの測定は、地動の測定を含む、第1の更なる実施形態の方法が提供される。
【0052】
第20の更なる実施形態によれば、第1~第16の更なる実施形態の方法が提供され、さらに、光ファイバの感知範囲内にアクティブ地震源を提供することと、アクティブ源から地震エネルギーを放出することとを含む。第21の更なる実施形態によれば、第1~第17の更なる実施形態の方法が提供され、ここで、調査は、一次元で行われる。第22の更なる実施形態によれば、第1~第17の更なる実施形態の方法が提供され、調査は、ファイバ経路に沿った表面下の2次元プロファイルをもたらす。第23の更なる実施形態によれば、第1~第17の更なる実施形態の方法が提供され、ここで、調査は、3次元で行われる。第24の更なる実施形態によれば、第23の更なる実施形態の方法が提供され、結果は、地域を横切る層及び等層厚線を有する表面下容積である。第25の更なる実施形態によれば、第1~第21の更なる実施形態の方法が提供され、光ファイバは海底の上又は下のいずれかにの水中で水平に設置される。
【0053】
第26の更なる実施形態によれば、光を光ファイバ内に送信するように構成された光送信機と、光ファイバから光を受信するように構成された受信機と、第1~第25の更なる実施形態のいずれかに定義された方法を実行するように構成されたコントローラとを備える、DFOS装置が提供される。
【0054】
第27の更なる実施形態によれば、第26の更なる実施形態による1つ又は複数のDFOS装置と、1つ又は複数のDFOS装置に動作可能に接続された1つ又は複数の光ファイバとを備える、地震データを処理するためのシステムが提供される。
【0055】
第28の更なる実施形態によれば、第1~第25の更なる実施形態の方法が提供され、調査の結果は、岩石及び土壌の種類、層の厚さ、及び層の深さを含む、上側の50mの岩石情報である。第29の更なる実施形態によれば、第1~第25の更なる実施形態の方法が提供され、調査の結果は、密度、せん断弾性率、バルク弾性率、ポアソン比、Vp/Vs比、飽和度、層厚、及び層深さ、を含む物理パラメータである。第30の更なる実施形態によれば、第1~第25の更なる実施形態の方法が提供され、調査の結果は、Vs30値、又は地震せん断波速度情報の異なる統計的表現(例えば、上位30、40、50メートルにおける地震せん断波速度の平均又は加重平均又は中央値)である。第31の更なる実施形態によれば、第1~第25の更なる実施形態の方法が提供され、調査の結果は、水面の深さ、再充電状態、水理学的健康段階、利用可能な総水量、水バンキング量、浸透率を含む水文学的情報である。
【0056】
第32の更なる実施形態によれば、第1~第25の更なる実施形態の方法が提供され、調査の結果は、>150m深度での深い音響である。第33の更なる実施形態によれば、第1~第25の更なる実施形態の方法が提供され、調査の結果は、光ファイバのカバーの深さの測定値である。第34の更なる実施形態によれば、第1~第30の更なる実施形態の方法が提供され、地盤調査に使用される記録信号は、自然地震エネルギー及び人工的に生成された地震エネルギーである。第35の更なる実施形態によれば、第1~第30の更なる実施形態の方法が提供され、地盤調査に使用される記録信号は、自然地震エネルギーである。第36の更なる実施形態によれば、第1~第30の更なる実施形態の方法が提供され、地盤調査のために使用される記録信号は、人工的に生成された地震エネルギーである。
【0057】
第37の更なる実施形態によれば、光ファイバ内に光を送信するように構成された光送信機と、光ファイバから光を受信するように構成された受信機と、第1~第22の更なる実施形態のいずれかに定義された方法を実行するように構成されたコントローラとを含むDFOS装置を備える地質工学測量システムが提供される。第38の更なる実施形態によれば、第37の更なる実施形態のシステムが提供され、光ファイバを更に備える。第39の更なる実施形態によれば、第38の更なる実施形態のシステムが提供され、光ファイバは、通信に使用されるファイバ束の一部である。第40の更なる実施形態によれば、第37の更なる実施形態のシステムが提供され、DFOS装置によって検出可能な地震波を生成するために、地面に地震エネルギーを生成し、出力するように構成された少なくとも1つのアクティブ地震源を更に備える。
【0058】
第41の更なる実施形態によれば、第37の更なる実施形態のシステムが提供され、調査の結果は、岩石及び土壌の種類、層の厚さ、及び層の深さを含む、上側の50mの岩石情報である。
【0059】
第42の更なる実施形態によれば、第37の更なる実施形態のシステムが提供され、調査の結果は、密度、せん断弾性率、バルク弾性率、ポアソン比、Vp/Vs比、飽和度、層厚及び層深さを含む物理パラメータである。第43の更なる実施形態によれば、第37の更なる実施形態のシステムが提供され、調査の結果はVs30値又は地震せん断波速度情報の異なる統計的表現(例えば、上位30、40、50メートルにおける地震せん断波速度の平均又は加重平均又は中央値)である。第44の更なる実施形態によれば、第37の更なる実施形態のシステムが提供され、調査の結果は、水面の深さ、再充電状態、水理学的健康段階、利用可能な総水量、水バンキング量、浸透率を含む水理学的情報である。第45の更なる実施形態によれば、第37の更なる実施形態のシステムが提供され、調査の結果は、>150mの深度における深い音響である。
【0060】
第46の更なる実施形態によれば、第37の更なる実施形態のシステムが提供され、調査の結果は、光ファイバのカバーの深さの測定値である。第47の更なる実施形態によれば、第37の更なる実施形態のシステムが提供され、地盤調査に使用される記録信号は、海洋波、風、車両、インフラストラクチャ、及び/又は建物のうちの少なくとも1つによって生成される自然地震エネルギーである。第48の更なる実施形態によれば、第40の更なる実施形態のシステムが提供され、少なくとも1つのアクティブ地震源は、ハンマーを揺動させること、又はタンパー、エアガン、もしくは爆薬を使用することを含む。第49の更なる実施形態によれば、第37~第48の更なる実施形態のシステムが提供され、地盤調査に使用される記録信号は、自然地震エネルギー及び人工的に生成された地震エネルギーである。
【0061】
したがって、本開示によれば、スケーラブルな電気通信地球技術測量を提供する分散型光ファイバ感知システム、装置、及び方法が提供されることが明らかである。多くの代替形態、修正形態、及び変形形態が、本開示によって可能にされる。開示された実施形態の特徴は本発明の範囲内で組み合わされ、再構成され、省略され、等が可能であり、追加の実施形態を生成する。さらに、いくつかの特徴は、他の特徴を対応して使用することなく、有利に使用されることがある。したがって、本出願人は、本発明の精神及び範囲内にある全てのそのような代替物、修正物、等価物、及び変形物を包含することを意図する。
【国際調査報告】