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特表2024-538447三相電流再構成の方法、装置、機器および記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-21
(54)【発明の名称】三相電流再構成の方法、装置、機器および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/22 20160101AFI20241011BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H02P21/22
H02P27/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519602
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2022108615
(87)【国際公開番号】W WO2023045555
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111134223.3
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524118971
【氏名又は名称】彿山市順徳区美的電子科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】FOSHAN SHUNDE MIDEA ELECTRIC SCIENCE AND TECHNOLOGY CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】517344192
【氏名又は名称】広東美的制冷設備有限公司
【氏名又は名称原語表記】GD MIDEA AIR-CONDITIONING EQUIPMENT CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Lingang Road,Beijiao,Shunde,Foshan,Guangdong,China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】劉文龍
(72)【発明者】
【氏名】趙鳴
(72)【発明者】
【氏名】黄招彬
(72)【発明者】
【氏名】龍譚
(72)【発明者】
【氏名】胡斌
(72)【発明者】
【氏名】曾賢杰
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505CC01
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505EE49
5H505GG04
5H505HA05
5H505HA07
5H505JJ03
5H505JJ16
5H505JJ17
5H505JJ24
5H505LL14
5H505LL22
5H505MM12
(57)【要約】
本開示は、三相電流再構成の方法、装置、機器及び記憶媒体に関する。この方法において、前回のPWM周期の三相電流値により、現在のPWM周期の三相デューティを算出し、三相デューティにより、現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認し、現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定し、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値およびモータロータの電気角により、現在のPWM周期の三相電流値を再構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前回のパルス幅変調PWM周期の三相電流値により、現在のPWM周期の三相デューティを算出することと、
前記三相デューティにより、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認することと、
前記現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定することと、
前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値とモータロータの電気角により、前記現在のPWM周期の三相電流値を再構成することと、を含み、
前記観測不可能領域は、前記現在のPWM周期内に収集できない2つの非ゼロ電圧ベクトルに対応するバス電流値である
三相電流再構成の方法。
【請求項2】
前記現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定する前に、前記方法は、
電流ベクトル振幅ピーク値を記録することと、
前回のPWM周期のモータロータの電気角、電気角速度およびPWM周期の期間により、前記現在のPWM周期のモータロータの電気角を決定することと、
前記現在のPWM周期のモータロータの電気角により、前記現在のPWM周期のモータロータの機械角を決定することと、
前記前回のPWM周期のモータロータの電気角速度により、前記現在のPWM周期のモータロータの回転角速度を決定することと、
をさらに含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定することは、
Im=Imax*sin(ωt+θm)
を用い、
Imは前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値であり、Imaxは前記電流ベクトル振幅ピーク値であり、ωは回転角速度であり、tはPWM周期の期間であり、θmは前記現在のPWM周期のモータロータの機械角である
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記三相デューティにより、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認することは、
前記三相デューティおよびPWM周期の期間により、各相線路のハイレベルの期間を決定することと、
各相線路のハイレベルの期間、前記PWM周期の期間およびバス電流の最小サンプリングの期間により、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認すること、
を含む
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
各相線路のハイレベルの期間、前記PWM周期の期間およびバス電流の最小サンプリングの期間により、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認することは、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間よりも小さく、前記PWM周期の期間と前記中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間よりも小さいことを確認すること、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間以上であり、前記中間相のハイレベルの期間及び最小相のハイレベルの期間がそれぞれ前記最小サンプリングの期間よりも小さいことを確認すること、及び
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間よりも小さく、前記PWM周期の期間と前記中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間以上であることを確認すること、
のいずれか1つを含み、
前記最大相は、三相線路のうちデューティが最大の相であり、前記最小相は、三相線路のうちデューティが最小の相であり、前記中間相は、三相線路のうちデューティが中間にある相である
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前回のPWM周期の三相電流値により、現在のPWM周期の三相デューティを算出するように配置されるデューティ計算モジュールと、
前記三相デューティにより、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認するように配置される第1の決定モジュールと、
前記現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定するように配置される第2の決定モジュールと、
前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値及びモータロータの電気角により、前記現在のPWM周期の三相電流値を再構成するように配置される電流再構成モジュールと、
を備え、
前記観測不可能領域は、前記現在のPWM周期内に収集できない2つの非ゼロ電圧ベクトルに対応するバス電流値である
三相電流再構成の装置。
【請求項7】
電流ベクトル振幅ピーク値を記録するように配置される記録モジュールと、
前回のPWM周期のモータロータの電気角、電気角速度及びPWM周期の期間により、前記現在のPWM周期のモータロータの電気角を決定し、前記現在のPWM周期のモータロータの電気角により、前記現在のPWM周期のモータロータの機械角を決定し、前記前回のPWM周期のモータロータの電気角速度により、前記現在のPWM周期のモータロータの回転角速度を決定するように配置される換算モジュールと、
をさらに備える
請求項6に記載の三相電流再構成の装置。
【請求項8】
前記第2の決定モジュールは、
Im=Imax*sin(ωt+θm)
を用い、Imは前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値であり、Imaxは前記電流ベクトル振幅ピーク値であり、ωは回転角速度であり、tはPWM周期の期間であり、θmは前記現在のPWM周期のモータロータの機械角である
請求項6に記載の三相電流再構成の装置。
【請求項9】
前記第1の決定モジュールは、具体的に、
前記三相デューティおよびPWM周期の期間により、各相線路のハイレベルの期間を決定し、
各相線路のハイレベルの期間、前記PWM周期の期間およびバス電流の最小サンプリングの期間により、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認するように配置される
請求項6に記載の三相電流再構成の装置。
【請求項10】
前記第1の決定モジュールが各相線路のハイレベルの期間、前記PWM周期の期間およびバス電流の最小サンプリングの期間により、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認することは、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間よりも小さく、前記PWM周期の期間と前記中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間よりも小さいことを確認すること、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間以上であり、前記中間相のハイレベルの期間及び最小相のハイレベルの期間がそれぞれ前記最小サンプリングの期間よりも小さいことを確認すること、及び
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間よりも小さく、前記PWM周期の期間と前記中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間以上であることを確認すること、
のいずれか1つを含み、
前記最大相は三相線路のうちデューティが最大の相であり、前記最小相は三相線路のうちデューティが最小の相であり、前記中間相は三相線路のうちデューティが中間にある相である
請求項9に記載の三相電流再構成の装置。
【請求項11】
プロセッサと、
プロセッサにおいて実行可能なコンピュータプログラムを格納するように配置されるメモリと、を備え、
前記プロセッサは、コンピュータプログラムを実行する場合、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するように配置される
三相電流再構成の機器。
【請求項12】
バス電流のサンプリング値を収集し、前記サンプリング値を前記プロセッサに送信するように配置されるバス電流収集装置をさらに備える
請求項11に記載の三相電流再構成の機器。
【請求項13】
コンピュータプログラムが記憶され、前記コンピュータプログラムはプロセッサにより実行される場合、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法のステップを実現する
記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、出願番号が202111134223.3であり、出願日が2021年09月27日である中国特許出願に基づいて提案され且つこの中国特許出願の優先権を主張し、この中国特許出願の全ての内容を参照として本出願に援用する。
【0002】
本開示は、モータ制御技術の分野に関し、特に三相電流再構成の方法、装置、機器および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
省エネ・損失低減技術の積極的な普及に伴い、モータ制御の省エネ技術は、日々重視されている。例えば、インバータエアコンは、損失が少なく、効率が高い永久磁石同期モータ(PerManenT MagneTIc Synchronous MachIne、PMSM)を採用している。
【0004】
インバータが永久磁石同期モータを駆動する時、インバータの三相ブリッジインバータは、SVPWM(Space Vector Pulse Width Modulation、空間ベクトルパルス幅変調)方式で制御することができる。SVPWMは、交流電動機の固定子磁気チェーン追跡の思想から生まれ、デジタルコントローラの実現を容易にすると共に、出力電流波形が良く、直流リンク電圧利用率が高いなどの利点がある。
【0005】
従来のSVPWM制御システムでは、電流の閉ループ制御を実現するために、三相の交流電気信号をフィードバックとして測定する。すなわちインバータの交流側に3つの電流センサを設ける必要があるため、コストが高く、構造が複雑で、体積が大きく、集積化に不利であることを招来している。単電流センサこを用いて三相電流の再構成を完成することが研究の焦点となっている。
【0006】
実際の応用において、モータ制御中にモータの最大出力トルクを大きくするように、三相ブリッジインバータの出力電圧を高めるために、過変調技術が必要となることが多い。しかし、過変調現象が発生した場合、空間ベクトルは観測不可能領域にあるため、関連する単電流センサによる三相電流再構成の方法への実現は困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これに鑑みて、本開示の実施例は、SVPWM制御による単電流センサの収集シナリオにおける三相電流再構成を満たすことを目的とした三相電流再構成の方法、装置、機器および記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例の技術解決策は、次のようにして実現される。
【0009】
第1の形態において、本開示の実施例は、
前回のパルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM)周期の三相電流値により、現在のPWM周期の三相デューティを算出することと、
前記三相デューティにより、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認することと、
前記現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定することと、
前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値とモータロータの電気角により、前記現在のPWM周期の三相電流値を再構成することと、を含み、
前記観測不可能領域は、前記現在のPWM周期内に収集できない2つの非ゼロ電圧ベクトルに対応するバス電流値である三相電流再構成の方法を提供する。
【0010】
一部の実施例では、前記現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定する前に、前記方法は、
電流ベクトル振幅ピーク値を記録することと、
前回のPWM周期のモータロータの電気角、電気角速度およびPWM周期の期間により、前記現在のPWM周期のモータロータの電気角を決定することと、
前記現在のPWM周期のモータロータの電気角により、前記現在のPWM周期のモータロータの機械角を決定することと、
前記前回のPWM周期のモータロータの電気角速度により、前記現在のPWM周期のモータロータの回転角速度を決定することと、
をさらに含む。
【0011】
一部の実施例では、前記現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定することは、
Im=Imax*sin(ωT+θm)
を用い、
Imは前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値であり、Imaxは前記電流ベクトル振幅ピーク値であり、ωは回転角速度であり、TはPWM周期の期間であり、θmは前記現在のPWM周期のモータロータの機械角である。
【0012】
一部の実施例では、前記三相デューティにより、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認することは、
前記三相デューティおよびPWM周期の期間により、各相線路のハイレベルの期間を決定することと、
各相線路のハイレベルの期間、前記PWM周期の期間およびバス電流の最小サンプリングの期間により、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認すること、
を含む。
【0013】
一部の実施例では、各相線路のハイレベルの期間、前記PWM周期の期間およびバス電流の最小サンプリングの期間により、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認することは、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間よりも小さく、前記PWM周期の期間と前記中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間よりも小さいことを確認すること、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間以上であり、前記中間相のハイレベルの期間及び最小相のハイレベルの期間がそれぞれ前記最小サンプリングの期間よりも小さいことを確認すること、及び
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間よりも小さく、前記PWM周期の期間と前記中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間以上であることを確認すること、
のいずれか1つを含み、
前記最大相は、三相線路のうちデューティが最大の相であり、前記最小相は、三相線路のうちデューティが最小の相であり、前記中間相は、三相線路のうちデューティが中間にある相である。
【0014】
第2の形態において、本開示の実施例は、
前回のPWM周期の三相電流値により、現在のPWM周期の三相デューティを算出するように配置されるデューティ計算モジュールと、
前記三相デューティにより、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認するように配置される第1の決定モジュールと、
前記現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定するように配置される第2の決定モジュールと、
前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値及びモータロータの電気角により、前記現在のPWM周期の三相電流値を再構成するように配置される電流再構成モジュールと、
を備え、
前記観測不可能領域は、前記現在のPWM周期内に収集できない2つの非ゼロ電圧ベクトルに対応するバス電流値である三相電流再構成の装置を提供する。
【0015】
一部の実施例では、前記三相電流再構成の装置は、
電流ベクトル振幅ピーク値を記録するように配置される記録モジュールと、
前回のPWM周期のモータロータの電気角、電気角速度及びPWM周期の期間により、前記現在のPWM周期のモータロータの電気角を決定し、前記現在のPWM周期のモータロータの電気角により、前記現在のPWM周期のモータロータの機械角を決定し、前記前回のPWM周期のモータロータの電気角速度により、前記現在のPWM周期のモータロータの回転角速度を決定するように配置される換算モジュールと、をさらに備える。
【0016】
一部の実施例では、前記第2の決定モジュールは、
Im=Imax*sin(ωT+θm)
を用い、
Imは前記現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値であり、Imaxは前記電流ベクトル振幅ピーク値であり、ωは回転角速度であり、TはPWM周期の期間であり、θmは前記現在のPWM周期のモータロータの機械角である。
【0017】
一部の実施例では、前記第1の決定モジュールは、具体的に、
前記三相デューティおよびPWM周期の期間により、各相線路のハイレベル期間を決定し、
各相線路のハイレベルの期間、前記PWM周期の期間およびバス電流の最小サンプリングの期間により、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認するように配置される。
【0018】
一部の実施例では、前記第1の決定モジュールが各相線路のハイレベルの期間、前記PWM周期の期間及びバス電流の最小サンプリングの期間により、前記現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認することは、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間よりも小さく、前記PWM周期の期間と前記中間相のハイレベル期間との差が前記最小サンプリングの期間よりも小さいことを確認すること、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間以上であり、前記中間相のハイレベルの期間及び最小相のハイレベルの期間がそれぞれ前記最小サンプリングの期間よりも小さいことを確認すること、及び
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が前記最小サンプリングの期間よりも小さく、前記PWM周期の期間と前記中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間以上であることを確認すること、
のいずれか1つを含み、
前記最大相は三相線路のうちデューティが最大の相であり、前記最小相は三相線路のうちデューティが最小の相であり、前記中間相は三相線路のうちデューティが中間にある相である。
【0019】
第3の形態において、本開示の実施例は、プロセッサと、プロセッサにおいて実行可能なコンピュータプログラムを格納するように配置されるメモリを備え、
前記プロセッサは、コンピュータプログラムを実行する場合、本開示の実施例に記載の方法のステップを実行するように配置される三相電流再構成の機器を提供する。
一部の実施例では、前記三相電流再構成の機器は、バス電流のサンプリング値を収集し、前記サンプリング値を前記プロセッサに送信するように配置されるバス電流収集装置をさらに備える。
【0020】
第4の形態において、本開示の実施例は、コンピュータプログラムが記憶され、前記コンピュータプログラムはプロセッサにより実行される場合、本開示の実施例に記載の三相電流再構成の方法のステップを実現する記憶媒体を提供する。
【0021】
本開示の実施例に係る技術案によれば、現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったと判定されると、現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定し、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値とモータロータの電気角により、現在のPWM周期の三相電流値を再構成する。空間ベクトルが観測不可能領域にある場合、三相電流の再構成を実現することができる。特に、過変調領域では、有効電圧ベクトルを満たす上で、三相電流の再構成を実現することができ、これによりバス電圧が変化しない場合、モータの出力トルクを増大させ、電源電圧の利用率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本開示の実施例に係る三相電流再構成の方法を適用するシステムの構造模式図である。
図2図2は、空間電圧ベクトルの分布模式図である。
図3図3は、本開示の実施例における空間電圧ベクトルの観測不可能領域の原理を示す模式図である。
図4図4は、関連技術において位相シフト処理に基づく原理を示す模式図である。
図5図5は、本開示の実施例に係る三相電流再構成の方法のフローチャート模式図である。
図6図6は、本開示の実施例におけるシングルロータ圧縮機のモータトルクの変化を示す模式図である。
図7図7は、本開示の実施例のモータ制御における搬送波と変調との関係を示す模式図である。
図8図8は、本開示の一応用例の三相電流再構成の方法のフローチャート模式図である。
図9図9は、本開示の実施例に係る三相電流再構成の装置の構造模式図である。
図10図10は、本開示の実施例に係る三相電流再構成の機器の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面および実施例を参照して本開示をさらに詳細に説明する。
【0024】
別の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者が一般に理解する意味と同じである。本開示の明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためにのみ使用されるものであり、本明細書を限定することを意図するものではない。
【0025】
本開示の実施例に係る三相電流再構成の方法を説明する前に、三相電流再構成の方法を適用するシステムを例示的に説明する。
【0026】
図1に示すように、当該システムは、モータM、三相ブリッジインバータ101、直流電源DC及びバス電流収集装置102を備える。
【0027】
例示的に、直流電源DCの正極と負極との間にもコンデンサC1が接続されている。直流電源DCから供給された直流電流は、三相ブリッジインバータ101を介してPMSMとなり得るモータMの三相電源に変換される。この三相ブリッジインバータ101は、インバータによりSVPWM方式で制御可能である。ここで、バス電流収集装置102は、例えば、直流電源DCの負極と三相ブリッジインバータ101との間に接続された抵抗R1を含む典型的な単抵抗サンプリング回路を採用することができ、抵抗R1の両端電圧はオペアンプを介してAD変換回路に伝達され、AD変換回路で変換されてバス電流が生成される。このバス電流は、次の三相電流再構成のために使用され、再構成した三相交流電流をフィードバックとして電流の閉ループ制御が実現される。
【0028】
三相ブリッジインバータは、SVPWM変調方式で制御され、6つの非ゼロ電圧ベクトル(V-V)と2つの零電圧ベクトル(VとV)を含む8種類のスイッチング動作状態があることと理解できる。それが電圧空間平面を六角形に分けて図2に示す。相電流再構成の基本原理は、1つのPWM周期内で異なる時刻においてサンプリングされたバス電流を利用して、各相電流を取得しることである。直流バスの電流と三相電流との関係は瞬時スイッチング量の状態によって決まり、その関係を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
実際の応用では、バス電流のサンプリングはサンプリングウィンドウを満たす必要があることを考慮して、非ゼロ電圧ベクトルが最小サンプリング時間Tminを1つ持続しなければならないことを要求し、Tmin=T+Tset+TADとなり、ただし、Tは上下のブリッジアームのデッドゾーンの期間を表し、Tsetはバス電流の確立の期間を表し、TADはサンプリングの変換の期間を表す。
【0031】
図3に示すように、出力された電圧ベクトルが低変調領域または非ゼロ電圧ベクトルの近傍にある場合、1つのPWM周期内に非ゼロ電圧ベクトルの持続時間がTminよりも短い可能性がある。この場合、サンプリングされたバス電流は無意味になる。本開示の実施例では、1つのPWM周期内に2相が異なる相電流(即、2つの非ゼロ電圧ベクトルが対応するバス直流)をサンプリングできない領域を総称して観測不可能領域と呼ぶ。
【0032】
関連技術において、PWM周期ごとに二相の相電流をサンプリングできることを確保するために、観測不可能領域での位相シフト処理により、一つのPWM周期内に二相の相電流をサンプリングすることを確保する必要がある。例えば、図4に示すように、例示的に、三相線路は、a相、b相及びc相の線路を備える。元のT1のサンプリングウィンドウはTminよりも小さく、位相シフト処理により、b相のハイレベルを右へTshiftだけシフトすることで、移相後のT1のサンプリングウィンドウをTminと等しくすることができる。
【0033】
観測不可能領域が過変調領域である場合、例えば、図3に示す六角形の内接円以外の領域において、位相シフトでPWM周期からずれて有効ベクトル電圧を満たすことができないという問題がある。しかし、ベクトル電圧のPWM周期を確保するために、サンプリングウィンドウを提供できない場合があると、一つのPWM周期内に二相の相電流を収集できなくなる。このため、位相シフト処理による三相電流再構成の関連方法は、過変調領域での三相電流の再構成の要求を満たすことができない。
【0034】
これに基づいて、本開示の各々の実施例では、過変調領域に適応できる三相電流再構成の方法を提案する。これにより、過変調領域においてバス電流に基づいて三相電流の再構成を実現することができる。
【0035】
図5に示すように、本開示の実施例に係る三相電流再構成の方法は、
前回のPWM周期の三相電流値により、現在のPWM周期の三相デューティを算出するステップ501を含む。
【0036】
例示的に、三相デューティは、以下のように計算される。
1)前回のPWM周期の三相電流値ia、ib、icを取得し、ただし、iaはa相の線路に対応する相電流であり、ibはb相の線路に対応する相電流であり、icはc相の線路に対応する相電流であり、
2)速度位置推定モジュールにより、モータロータの磁界角度θと速度ωを決定し、
3)三相電流値ia、ib、icに対してclark(クラーク)変換及びpark(パイク)変換によりid、iqを取得し、ただし、clark変換は、abcの三軸座標系を静止のαβ座標系に変換するためのものであり、park変換は、静止のαβ座標系を回転のdq座標系に変換するためのものであり、idは変換後のd軸の電流値であり、iqは変換後のq軸の電流値であり、
4)モータロータの磁界角度θと速度ωにより、d軸とq軸の所定の電流値を変換して取得し、当該所定の電流値およびステップ3)で得られたid、iqにより、PID(比例積分微分)演算により、Vd、Vqを取得し、ただし、Vdはd軸の変調電圧であり、Vqはq軸の変調電圧であり、
5)Vd、Vqを逆park変換することにより、Vα、Vβを取得し、ただし、Vαはα軸の変調電圧であり、Vβはβ軸の変調電圧であり、
6)Vα、VβをSVベクトル演算により、Va、Vb、Vcを取得し、ただし、Vaはa軸の変調電圧であり、Vbはa軸の変調電圧であり、Vcはa軸の変調電圧であり、
7)バス電圧及び得られたVa、Vb、Vcから三相デューティduty、duty、dutyを算出し、ただし、dutyはa相のデューティであり、dutyはb相のデューティであり、dutyはc相のデューティである。
【0037】
本開示の実施例に係る三相電流再構成の方法は、
三相デューティにより、現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認するステップ502と、
現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定するステップ503と、
現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値とモータロータの電気角により、現在のPWM周期の三相電流値を再構成するステップ504とを含む。
【0038】
ここで、観測不可能領域とは、現在のPWM周期内に収集できない2つの非ゼロ電圧ベクトルに対応するバス電流値であり、即ち、1つのPWM周期内に2相が異なる相電流をサンプリングできないことで、現在のPWM周期の三相電流に対する再構成を完成できないことを意味する。
【0039】
本開示の実施例では、現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったと確認すると、現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定し、現在のPWM周期的電流ベクのトル振幅値とモータロータの電気角により、現在のPWM周期の三相電流値を再構成する。空間ベクトルが観測不可能領域にある場合、三相電流の再構成を実現することができる。特に、過変調領域では、有効電圧ベクトルを満たす上で、三相電流の再構成を実現することができる。さらに、バス電圧が変化することなく、モータの出力トルクを増大させ、電源電圧の利用率を高めることができる。
【0040】
例示的に、現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定する前に、前記方法は、
電流ベクトル振幅ピーク値を記録することと、
前回のPWM周期のモータロータの電気角、電気角速度およびPWM周期の期間により、現在のPWM周期のモータロータの電気角を決定することと、
現在のPWM周期のモータロータの電気角により、現在のPWM周期のモータロータの機械角を決定することと、
前回のPWM周期のモータロータの電気角速度により、現在のPWM周期のモータロータの回転角速度を決定することと、を含む。
【0041】
本開示の実施例では、モータはシングルロータ圧縮機のモータであり、当該シングルロータ圧縮機が単周期圧縮の作動方式によるものであるため、1回転周期内でモータのトルクに大きな変動がある。図6に示すように、トルクTが0~2πの回転周期内で、最低トルクはTminであり、最高トルクはTmaxであり、それらに対応する平均トルクはTavgである。正弦波シミュレーション方法を用いてトルクの変動状態をシミュレーションしてもよい。
【0042】
ここで、電流ベクトル振幅ピーク値を記録することは、モータが観測不可能領域まで運転する前に検出された電流ベクトル振幅の最大値であってもよい。
【0043】
理解できることは、モータが観測不可能領域まで運転され、モータロータの回転速度が定格回転速度よりも高くなると、2つのPWM周期内でモータ回転速度が変化しない、つまり回転速度が安定を維持するが、モータのトルクが動的に変化すると考えられる。回転速度が安定を維持する特性を考慮すると、本開示の実施例では、前回のPWM周期のモータロータの電気角、電気角速度及びPWM周期の期間により、現在のPWM周期のモータロータの電気角を決定することができる。
【0044】
例示的に、図7に示すように、現在のPWM周期の電気角を計算する式は、
θe2=θe1+(Ts*Fs)/2π
で表し、ただし、θe1は前回のPWM周期の電気角であり、θe2は現在のPWM周期の電気角であり、TsはPWM周期の期間であり、Fsは前回のPWM周期の電気角速度(電気周波数ともいう)である。このように、現在のPWM周期の電気角は、モータの回転速度が一定であると仮定する原則に基づいて算出することができる。
【0045】
ここで、モータロータの電気角はモータの極対数と関係があり、モータが一対の極であれば、モータの一周は360°の電気角度であり、モータが二対の極であれば、モータの一周は720°の電気角度であり、モータが三対の極であれば、モータの一周は1080°の電気角であり、これによって類推する。モータの極対数がPであれば、モータの総電気角=360°*Pとなる。モータの電気角=機械角*Pとなり、モータの電気角速度=回転角速度*Pとなることと理解できる。
【0046】
上記の電気角度と機械角との変換関係によれば、現在のPWM周期のモータロータの電気角により現在のPWM周期のモータロータの機械角を決定することができる。また、モータの回転速度が安定を維持することを考慮して、前回のPWM周期のモータロータの電気角速度を現在のPWM周期のモータロータの電気角速度とし、更に現在のPWM周期のモータロータの回転角速度を決定することができる。
【0047】
例示的に、現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定することは、下式
Im=Imax*sin(ωT+θm)
を用い、ただし、Imは現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値であり、Imaxは電流ベクトル振幅ピーク値であり、ωは回転角速度であり、TはPWM周期の期間であり、θmは現在のPWM周期のモータロータの機械角である。
【0048】
機械角θmは、前回のPWM周期の電気角、電気角速度により推定し変換したものであると理解できる。この機械角θmはモータロータの現在の回転位置と理解できる。
【0049】
現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値Imを取得した後、以下に示す三相電流の算出式により、現在のPWM周期の各相電流値を決定することができる。
【0050】
【数1】
【0051】
ただし、Iはベクトル電流幅値であり、Iはa相の電流値であり、Iはb相の電流値であり、Iはc相の電流値であり、θeは電気角である。このように、三相電流の再構成が実現される。
【0052】
本開示の実施例における三相電流再構成の方法では、観測不可能領域において、現在のPWM周期のバス電流値を収集する必要がなく、現在のPWMの三相電流の再構成を実現できると理解できる。
【0053】
一部の実施例では、三相デューティにより現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認することは、
三相デューティおよびPWM周期の期間により、各相線路のハイレベル期間を決定することと、
各相線路のハイレベルの期間、PWM周期の期間およびバス電流の最小サンプリングの期間により、現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認することと、を含む。
【0054】
例示的に、TpがPWM周期の期間とすれば、a相のハイレベルの期間がTa=Tp*dutyとなり、b相のハイレベルの期間がTb=Tp*dutyとなり、c相のハイレベルの期間がTc=Tp*dutyとなる。
【0055】
例示的に、各相線路のハイレベルの期間、PWM周期の期間およびバス電流の最小サンプリングの期間により、現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認するのは、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間よりも小さく、PWM周期の期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間よりも小さいことを確認すること、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間以上であり、中間相のハイレベルの期間及び最小相のハイレベルの期間がともに最小サンプリングの期間よりも小さいことを確認すること、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間よりも小さく、PWM周期の期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間以上であることを確認すること、
のいずれか1つを含み、
ただし、最大相は、三相線路のうちデューティが最大の相であり、最小相は、三相線路のうちデューティが最小の相であり、中間相は、三相線路のうちデューティが中間にある相である。
【0056】
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間よりも小さく、且つPWM周期の期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間よりも小さい場合、三相デューティにおいて二相のデューティが大きいことがあると理解できる。最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間以上であり、且つ中間相のハイレベルの期間及び最小相のハイレベルの期間がともに最小サンプリングの期間よりも小さい場合、三相デューティにおいて二相のデューティが小さいことであり、このとき、位相シフト処理により二相電流への収集を実現することができない。本開示の実施例に係る方法に基づいて、二相電流を収集することなく、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値とモータロータの電気角度により、現在のPWM周期の三相電流値を再構成し、モータのベクトル制御を実現することができる。
【0057】
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間よりも小さく、且つPWM周期の期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間以上である場合、中間相を位相シフト処理することにより、PWM周期内において二相の相電流を収集し、三相電流の再構成を実現してもよいし、本開示の実施例に係る方法により三相電流の再構成を実現してもよいが、本開示の実施例はこれに対し限定されないと理解できる。
【0058】
以下、一応用例を組み合わせ本開示の実施例に係る三相電流再構成の方法を例示的に説明する。
【0059】
図8に示すように、当該三相電流再構成の方法は、
現在のPWM周期の三相デューティ及びサンプリングウィンドウの大きさを算出するステップ801を含め得る。
【0060】
例示的に、前回のPWM周期の三相電流値により現在のPWM周期の三相デューティを計算することができ、具体的に、上述した記載を参照することができ、ここで説明を省略する。
【0061】
ここで、サンプリングウィンドウの大きさ、即ち非ゼロ電圧ベクトルが持続しなければならない最小サンプリング期間TminがTmin=T+Tset+TADとなり、ただし、Tdは上下のブリッジアームのデッドゾーンの期間を表し、Tsetはバス電流の確立の期間を表し、TADはサンプリング変換の期間を表す。
【0062】
ステップ802では、観測不可能領域に入るかどうかを判断し、そうでなければ、ステップ803を実行し、その後、ステップ806を実行し、そうであればステップ804とステップ805を実行し、その後、ステップ806を実行する。
【0063】
例示的に、三相デューティとPWM周期の期間により各相線路のハイレベルの期間を決定することができる。次に、各相線路のハイレベルの期間、PWM周期の期間及びバス電流の最小サンプリングの期間により現在のPWM周期が観測不可能領域に入るかどうかを判断する。
【0064】
ステップ803では、三相電流を正常に再構成し、電流ベクトル振幅ピークを記録する。
【0065】
現在のPWM周期が観測不可能領域に入っていないと判断された場合、二相電流を正常に収集し三相電流を取得し、電流ベクトル振幅ピーク値Imaxを記録する。
【0066】
ステップ804では、現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定する。
【0067】
現在のPWM周期が観測不可能領域に入ると判断される場合、本開示実施例に係る方法により現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度を決定し、次に、当該機械角、回転角速度および電流ベクトル振幅ピーク値により、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定し、具体的に上述した記載を参照することができ、ここで説明を省略する。
【0068】
ステップ805では、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値とモータロータの電気角度により、現在のPWM周期の三相電流値を再構成する。
【0069】
ステップ806では、モータベクトル演算制御を行う。
【0070】
現在のPWM周期の三相電流値により、モータベクトル演算制御を行いことができ、例えば、SVPWM方式によりモータを制御する。
【0071】
本応用例では、電圧ベクトルが過変調領域にある場合、観測不可能領域において、現在のPWM周期のバス電流値を収集することなく、現在のPWMの三相電流の再構成を実現できると理解できる。これにより、過変調領域がバス電流により三相電流の再構成を実現するというニーズを満たすことができる。さらに、バス電圧を変化することなく、モータの出力トルクを増大させ、電源電圧の利用率を向上させることができる。
【0072】
本開示の実施例に係る方法を実現するために、本開示の実施例は、上記三相電流再構成の方法に対応する三相電流再構成の装置をさらに提供する。上記三相電流再構成の方法の実施例における各ステップは本三相電流再構成の装置の実施例に完全にも適用できる。
【0073】
図9に示すように、当該三相電流再構成の装置は、
前回のPWM周期の三相電流値により、現在のPWM周期の三相デューティを計算するように配置されるデューティ計算モジュール901と、
三相デューティにより。現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを決定するように配置される第1の決定モジュール902と、
現在のPWM周期のモータロータの機械角、回転角速度及び観測不可能領域に入る前の電流ベクトル振幅ピーク値により、現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値を決定するように配置される第2の決定モジュール903と、
現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値及びモータロータの電気角により、現在のPWM周期の三相電流値を再構成するように配置される電流再構成モジュール904と、を備え、
ここで、観測不可能領域とは、現在のPWM周期内に収集できない2つの非ゼロ電圧ベクトルに対応するバス電流値である。
【0074】
一部の実施例では、三相電流再構成の装置は、
電流ベクトル振幅ピーク値を記録するように配置される記録モジュール905と、
前回のPWM周期のモータロータの電気角、電気角速度及びPWM周期の期間により、現在のPWM周期のモータロータの電気角を決定し、現在のPWM周期のモータロータの電気角により、現在のPWM周期のモータロータの機械角を決定し、前回のPWM周期のモータロータの電気角速度により、現在のPWM周期のモータロータの回転角速度を決定するように配置される換算モジュール906と、をさらに備える。
【0075】
一部の実施例では、第2の決定モジュール903は、下式
Im=Imax*sin(ωT+θm)
を用い、ただし、Imは現在のPWM周期の電流ベクトル振幅値であり、Imaxは電流ベクトル振幅ピーク値であり、ωは回転角速度であり、TはPWM周期の期間であり、θmは現在のPWM周期のモータロータの機械角である。
【0076】
一部の実施例では、第1の決定モジュール902は、具体的に、
三相デューティおよびPWM周期の期間により、各相線路のハイレベルの期間を決定し、
各相線路のハイレベルの期間、PWM周期の期間およびバス電流の最小サンプリングの期間により、現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認するように配置される。
【0077】
一部の実施例では、第1の決定モジュール902は、各相線路のハイレベルの期間、PWM周期の期間およびバス電流の最小サンプリングの期間により、現在のPWM周期が観測不可能領域に入ったことを確認することは、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間よりも小さく、PWM周期の期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間よりも小さいことを確認すること、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間以上であり、中間相のハイレベルの期間及び最小相のハイレベルの期間がともに最小サンプリングの期間よりも小さいことを確認すること、
最大相のハイレベルの期間と中間相のハイレベルの期間との差が最小サンプリングの期間よりも小さく、PWM周期の期間と中間相のハイレベル期間との差が最小サンプリングの期間以上であることを確認すること、
のいずれか1つを含み、
ただし、最大相は三相線路のうちデューティが最大の相であり、最小相は三相線路のうちデューティが最小の相であり、中間相は三相線路のうちデューティが中間にある相である。
【0078】
実際の応用において、デューティ計算モジュール901、第1の決定モジュール902、第2の決定モジュール903、電流再構成モジュール904、記録モジュール905及換算モジュール906は、三相電流再構成の機器のプロセッサにより実装することができる。もちろん、プロセッサは、その機能を実現するためにメモリ内のコンピュータプログラムを実行する必要がある。
【0079】
なお、上記の実施例に係る三相電流再構成の装置は、三相電流再構成を行う際に、上記の各プログラムモジュールの区分を例に挙げて説明したが、実用の応用においては、必要に応じて上記の処理を異なるプログラムモジュールに分配して完成させ、すなわち、装置の内部構成を異なるプログラムモジュールに区画し、上記の処理の全部または一部を行うことができるようになる。また、上記の実施例に係る三相電流再構成の装置は三相電流再構成の方法の実施例と同一の構想であり、その具体的な実現過程については方法の実施例を参照し、ここでは説明を省略する。
【0080】
上記の程序モジュールのハードウェアにより実現され、且つ、本開示の実施例に係る方法を実現するために、本開示の実施例は、三相電流再構成の機器をさらに提供する。図10はこの三相電流再構成の機器の全ての構成ではなく、示例的な構造のみを示す。ニーズに応じて図10に示す一部の構成または全ての構成を実施することができる。
【0081】
図10に示すように、本開示の実施例に係る三相電流再構成の機器1000は、少なくとも1つのプロセッサ1001、メモリ1002とユーザインタフェース1003を備える。三相電流再構成の機器1000の各構成要素は、バスシステム1004を介して結合される。バスシステム1004はこれらの構成要素間の接続通信を実現するために使用されると理解できる。バスシステム1004は、データバス以外、電源バス、制御バス、ステータス信号バスを含む。しかし、説明を明確にするために、図10には様々なバスをバスシステム1004と表記する。
【0082】
例示的に、当該三相電流再構成の機器1000は、バス電流のサンプリング値を収集し、サンプリング値をプロセッサ1001に送信するように配置されているバス電流収集装置をさらに備える。例えば、バス電流収集装置は、図1に示す単抵抗サンプリング回路とすることができる。
【0083】
ここで、ユーザインタフェース1003は、ディスプレイ、キーボード、マウス、トラックボール、クリックホイール、キー、ボタン、タッチパッド、またはタッチスクリーンなどを含んでもよい。
【0084】
本開示の実施例におけるメモリ1002は、三相電流再構成の機器の動作をサポートするように様々な種類のデータを格納するために使用される。これらのデータの例には、三相電流再構成の機器で動作するコンピュータプログラムが含まれる。
【0085】
本開示の実施例に係る三相電流再構成の方法は、プロセッサ1001に適用することができ、または、プロセッサ1001により実装される。プロセッサ1001は、信号の処理能力を持つ集積回路チップであり得る。実現の過程において、三相電流再構成の方法の各ステップは、プロセッサ1001におけるハードウェアの集積論理回路またはソフトウェア形式の命令によって達成されてもよい。上記のプロセッサ1001は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP、Digital Signal Processor)、または他のプログラム可能な論理デバイス、ディスクリートゲートまたはトランジスタ論理デバイス、ディスクリートハードウェア構成要素などであってもよい。プロセッサ1001は、本開示の実施例に開示された夫々の方法、ステップ、および論理ブロック図を実現または実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサでもよいし、正常のプロセッサなどでもよい。本開示の実施例に開示された方法のステップは、ハードウェア復号化プロセッサによって実行されてもよく、あるいは、復号化プロセッサにおけるハードウェアとソフトウェア・モジュールとの組合せによって実行されてもよい。ソフトウェア・モジュールは、メモリ1002にある記憶媒体に存在することができ、プロセッサ1001はメモリ1002内の情報を読み取り、そのハードウェアに関連して、本開示の実施例に係る三相電流再構成の方法のステップを完了する。
【0086】
例示的な実施例では、三相電流再構成の機器は、上記の方法を実行するために、1つ以上のアプリケーション専用集積回路(ASIC、Application Specific Integrated Circuit)、DSP、プログラマブル論理デバイス(PLD、Programmable Logic Device)、複雑プログラマブル論理デバイス(CPLD、Complex Programmable Logic Device)、フィールドプログラマブル論理ゲートアレイ(FPGA、Field Programmable Gate Array)、汎用プロセッサ、コントローラ、前述の方法を実行するためのマイクロコントローラ(MCU、Micro Controller Unit)、マイクロプロセッサ(Microprocessor)、または他の電子部品により実装されることができる。
【0087】
メモリ1002は、揮発性メモリまたは不揮発性メモリであるもよく、揮発性メモリと不揮発性メモリの両方を含んでいてもよいと理解できる。ただし、不揮発性メモリは、読み取り専用メモリ(ROM、Read Only Memory)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM、Programmable Read-Only Memory)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM、Erasable Programmable Read-Only Memory)、電気消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM、Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、磁気ランダムアクセスメモリ(FRAM(登録商標)、ferromagnetic random access memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、磁気表面メモリ、光ディスク、または読み取り専用光ディスク(CD-ROM、Compact Disc Read-Only Memory)でもよい。磁気表面メモリは、磁気ディスクメモリまたは磁気テープメモリであってもよい。揮発性メモリはランダムアクセスメモリ(RAM、Random Access Memory)とすることができ、これは外部キャッシュとして機能する。例示的であるが限定的な説明ではないが、多くの形態のRAMが使用可能であり、例えば、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM、Static Random Access Memory)、同期静的ランダムアクセスメモリ(SSRAM、Synchronous Static Random Access Memory)、動的ランダムアクセスメモリ(DRAM、Dynamic Random Access Memory)、同期動的ランダムアクセスメモリ(SDRAM、Synchronous Dynamic Random Access Memory)、2倍データレート同期動的ランダムアクセスメモリ(DDRSDRAM、Double Data Rate Synchronous Dynamic Random Access Memory)、拡張型同期動的ランダムアクセスメモリ(ESDRAM、Enhanced Synchronous Dynamic Random Access Memory)、同期接続動的ランダムアクセスメモリ(SLDRAM、SyncLink Dynamic Random Access Memory)、ダイレクトメモリバスランダムアクセスメモリ(DRRAM、Direct Rambus Random Access Memory)である。本開示の実施例に記載のメモリは、これらおよびその他任意の適切なタイプのメモリを含むことが意図されているが、これらに限定されるものではない。
【0088】
例示的な実施例では、本開示の実施例は、コンピュータ記憶媒体である記憶媒体をさらに提供する。具体的には、コンピュータプログラムを格納するメモリ1002を含むようなコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であってもよい。上記のコンピュータプログラムは、本開示の実施例に係る方法のステップを完了するために、三相電流再構成の機器のプロセッサ1001によって実行することができる。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、Flash Memory、磁気表面メモリ、光ディスク、またはCD-ROMなどのメモリであってもよい。
【0089】
なお、「第1」、「第2」などのものは類似の対象を区別するためのものであり、特定の順序または優先順位を記述するために使用する必要はありません。
【0090】
また、本開示の実施例に記載された解決策は互いに衝突しない限り、任意に組み合わせることが可能である。
【0091】
以上は、本発明の具体的な実施形態のみであるが、本発明の範囲はこれに限定されなく、当業者であれば、本発明に記載された技術範囲内に、容易に考えられる変更又は置換は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。そのため、本発明の範囲は請求の範囲を基準とすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】