(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-21
(54)【発明の名称】ナチュラルキラー細胞調製物を増殖させるためのフィーダーフリー細胞培養方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20241011BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241011BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20241011BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241011BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20241011BHJP
C12N 5/074 20100101ALN20241011BHJP
C12N 5/0789 20100101ALN20241011BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20241011BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
A61P31/12
C12N5/074
C12N5/0789
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529582
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 IB2022061155
(87)【国際公開番号】W WO2023089561
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】スノーデン,アンドリュー ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ザマニ,アリ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA25
4B065BB19
4B065BC01
4B065BD39
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB33
(57)【要約】
本開示は、増殖ナチュラルキラー(NK)細胞調製物を産生するフィーダー細胞フリー方法を対象とする。本方法は、NK細胞の出発調製物を提供することと、ナチュラルキラー細胞p30関連タンパク質(NKp30)調節剤単独、又は本明細書に記載の他の増殖剤で出発調製物を処理することとを含む。本方法は、処理された調製物を、NK細胞の出発調製物を増殖させるのに有効な条件下で培養して、増殖NK細胞調製物を産生することを更に伴う。本開示の他の態様は、本明細書に記載の方法に従って産生されたNK細胞の治療調製物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナチュラルキラー(NK)細胞の治療調製物を産生する方法であって、前記方法が、
NK細胞の出発調製物を提供することと、
前記出発調製物をナチュラルキラー細胞p30関連タンパク質(NKp30)調節剤で処理することと、
処理された前記調製物を、前記NK細胞の出発調製物を増殖させるのに有効な条件下で培養し、それによって、増殖NK細胞調製物を産生することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記培養が、細胞のフィーダー細胞集団の存在下で前記NK細胞の出発調製物を培養することを伴わない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記NKp30調節剤が、NKp30抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処理が、
前記調製物に、前記NKp30調節剤と併せて、2B4リガンド、DNAM-1リガンド、又はそれらの組み合わせを投与することを更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記NKp30調節剤、前記2B4リガンド、及び/又は前記DNAM-1リガンドが、固体支持体に結合されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記固体支持体が、複数のビーズである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記2B4リガンドが、CD48タンパク質又はそのポリペプチド断片である、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記2B4リガンドが、2B4抗体又はその抗体結合断片である、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記DNAM-1リガンドが、CD155タンパク質又はそのポリペプチド断片である、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記DNAM-1リガンドが、CD112タンパク質又はそのポリペプチド断片である、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記処理が、
前記NKp30調節剤、前記2B4リガンド、及び前記DNAM-1リガンドの組み合わせを前記NK細胞の出発調製物に投与することを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組み合わせが、NKp30抗体、CD48タンパク質又はポリペプチド、及びCD155タンパク質又はポリペプチドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理が、前記培養の間に定期的に繰り返される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記処理及び前記培養が、前記出発調製物中のNK細胞の数よりも少なくとも20倍多いNK細胞を含む増殖NK細胞調製物を産生するのに有効である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記処理及び前記培養が、前記出発調製物中のNK細胞の数よりも少なくとも40倍多いNK細胞を含む増殖NK細胞調製物を産生するのに有効である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記処理及び前記培養が、前記出発調製物中のNK細胞の数よりも40倍多いNK細胞を含む増殖NK細胞調製物を産生するのに有効である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記増殖NK細胞調製物が、ヒト増殖NK細胞調製物である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記増殖NK細胞調製物が、後期未成熟NK細胞と成熟NK細胞との異質混合物を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記増殖NK細胞調製物が、CD56
+/CD3
-/CD45
+/CD16
+/- NK細胞を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記増殖NK細胞調製物が、NKG2-CタイプII内在性膜タンパク質を発現するが、NKG2-A/NKG2-BタイプII内在性膜タンパク質を発現しない細胞を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記NK細胞の出発調製物の細胞が、遺伝子改変され、それによって、遺伝子改変されたNK細胞を含む増殖NK細胞調製物を産生する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記遺伝子改変されたNK細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記出発調製物の前記NK細胞が、CD56
+/-/CD16
-/CD45
+/CD34
- iNK細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記NK細胞の出発調製物が、CD34
+人工多能性幹細胞(iPSC)又はCD34
+臍帯血細胞に由来する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、
前記処理又は前記培養の間に、前記出発調製物に1つ又は2つ以上の刺激性サイトカインを投与することを更に含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ又は2つ以上の刺激性サイトカインが、IL-2、IL-12、IL-15、IL18、及びIL21から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記培養後、NK細胞の増殖調製物を、2B4リガンド、4-1BBリガンド、又はOX40Lのうちの1つ又は2つ以上と組み合わせたDNAM-1リガンドで処理することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記増殖NK細胞調製物が、約2×10
9~約1×10
11個のNK細胞を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の方法に従って産生された、NK細胞の治療調製物。
【請求項30】
医薬組成物であって、
請求項29に記載のNK細胞の治療調製物と、
医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項31】
養子NK細胞療法を必要とする対象を治療する方法であって、前記方法が、
前記対象に、請求項29に記載の治療調製物又は請求項30に記載の医薬組成物を、前記養子NK細胞療法を必要とする対象を治療するのに有効な量で投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記対象が、がんを有し、前記投与が、がん細胞死を引き起こす、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、ウイルス感染を有し、前記投与が、ウイルス感染細胞死を引き起こす、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治療NK細胞調製物を産生するための、iPSC(iNK)又は臍帯血(CB-NK)に由来するナチュラルキラー(natural killer、NK)細胞のフィーダーフリー増殖のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、先天性免疫応答において重要な役割を果たす細胞傷害性リンパ球である。NK細胞は、CD56+CD3-として表現型的に特徴付けられ、腫瘍細胞及びウイルス感染細胞を自発的に溶解する能力を有する。NK細胞はまた、抗体依存性細胞傷害性と呼ばれるプロセスによる適応免疫応答に関与し、NK細胞は、抗体分子によって結合された細胞に直接結合し、それを死滅させる。ヒトの身体において、NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃腺、及び胸腺などの様々な免疫臓器において分化及び成熟する。
【0003】
ヒト人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell、iPSC)は、特定の遺伝子の強制発現によって非多能性細胞から人工的に生成される多能性幹細胞の一種である。iPSCを利用して、様々な種類のがん、並びに急性及び慢性ウイルス感染症を治療するための治療的に生存可能なNK細胞の潜在的に無制限の供給源を生成することができる。したがって、制御可能な様式でiPSCからNK細胞を効率的かつ再現性よく生成することができることが必須である。
【0004】
フィーダー細胞依存的な様式でiPSCから始まるNK細胞分化のプロセスが記述されている。iPSC/CD34+由来未成熟NK細胞からのNK細胞のエクスビボ増殖のための既存のプロトコルは、K562腫瘍形成性細胞株などの人工的に生成されたフィーダー細胞株との共培養に依存する。フィーダー細胞系における増殖は、養子細胞免疫療法における増殖された細胞集団のその後の使用に悪影響を及ぼし得る未知の遺伝的な/安全性の変動を増殖されたNK細胞集団に導入する。したがって、K562細胞又は他のフィーダー細胞株との共培養を伴わないNK細胞のエクスビボ増殖の強力な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、ナチュラルキラー細胞の増殖における現在の欠陥を克服することを対象とする。
【0006】
本開示の第1の態様は、増殖ナチュラルキラー(NK)細胞調製物を産生する方法を対象とする。本方法は、NK細胞の出発調製物を提供することと、出発調製物をナチュラルキラー細胞p30関連タンパク質(natural killer cell p30、NKp30)調節剤で処理することと、を含む。本方法は、処理された調製物を、NK細胞の出発調製物を増殖させるのに有効な条件下で培養して、増殖NK細胞調製物を産生することを更に伴う。任意の実施形態では、出発NK細胞調製物は、人工多能性幹細胞又は臍帯血に由来する調製物である。任意の実施形態では、NKp30調節剤は、抗NKp30抗体である。
【0007】
本開示の別の態様は、本明細書に開示される方法に従って産生されたNK細胞の治療調製物を対象とする。
【0008】
本開示の別の態様は、本明細書に開示される方法に従って産生されたNK細胞の増殖調製物と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物を対象とする。
【0009】
本開示の別の態様は、養子NK細胞療法を必要とする対象を治療する方法を対象とする。本方法は、養子NK細胞療法を必要とする対象に、本明細書に開示される方法に従って産生されたNK細胞の治療調製物又はそれを含む医薬組成物を、養子NK細胞療法を必要とする対象を治療するのに有効な量で投与することを伴う。
【0010】
iPSC又は臍帯血に由来するCD34+前駆細胞に由来する未成熟NK細胞の異質調製物からNK細胞を増殖させるための方法が本明細書に開示される。これらの方法は、NK細胞と、フィーダー細胞集団、例えば、遺伝子改変されたフィーダー細胞株(K562)又はエプスタイン-バーウイルスでの感染によって天然に不死化されたB細胞株との共培養を必要とする先行技術の方法とは異なる。本明細書に記載のフィーダーフリー培養法は、インビボ移植時のそれらの持続性及び増殖能力により、養子細胞療法に有利である後期未成熟NK細胞及び成熟NK細胞の異質増殖集団を産生する。対照的に、フィーダー培養物中で増殖されたNK細胞は、増殖が制限され、かつ/又は患者の治療後に急速に枯渇する成熟NK細胞のより均質な集団を含む。本開示の増殖NK細胞調製物は、腫瘍形成性フィーダー細胞の非存在下で産生されるため、フィーダー細胞汚染のリスクがなく、したがって、増殖NK細胞調製物の治療移植の前に厳密な精製プロセスを用いる必要がない。本明細書に記載のフィーダーフリー方法に従って産生された増殖NK細胞調製物は、異なる遺伝的背景及び免疫原性障壁にわたって個体に複数回の用量で投与するのに好適な「既製の」治療NK細胞組成物として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】増殖剤の特定の組み合わせを含む第1のラウンドの処理による、培養物中で10日間にわたる臍帯血CD34+由来のNK細胞の増加倍率を示すグラフである。フィーダー細胞(すなわち、K562細胞)の存在下でのNK細胞の増殖を、比較のために並行して行った。NKp30=抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗NKp30ビオチン化抗体、2B4=抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗2B4(CD244)ビオチン化抗体、CD48=抗FcビーズにコンジュゲートされたCD48-Fcタンパク質、CD155=抗FcビーズにコンジュゲートされたCD155-Fcタンパク質、ICAM2=抗FcビーズにコンジュゲートされたICAM-2-Fcタンパク質、4-1BBL=抗Fcビーズにコンジュゲートされた4-1BBL-Fcタンパク質、K562-4-1BBL-IL21又はK562=フィーダー細胞培養物。
【
図2】増殖剤の特定の組み合わせでの第2のラウンドの処理後の更なる10日間の培養にわたるNK細胞(
図1を参照して説明されるように第1のラウンドにおいてNKp30/2B4の存在下で培養された)の増加倍率を示すグラフである。NKp30=抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗NKp30ビオチン化抗体、CD2=抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗CD2ビオチン化抗体、CD48=抗FcビーズにコンジュゲートされたCD48-Fcタンパク質、NKp46=抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗NKp46ビオチン化抗体、NKp44=抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗NKp44ビオチン化抗体、NKp80=抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗NKp80ビオチン化抗体。
【
図3】LigaTrapビーズ(Dianova GmbH、Hamburg,Germany)、タンパク質A/Gビーズ、又は抗ヒトFc抗体のいずれかに各々コンジュゲートされたCD48、CD155、及びNKp30の存在下での培養3日目及び10日目のiPSC(iNK)に由来するNK細胞の増加倍率を示すグラフである。
【
図4A】最初の3日間をNKp30の存在下とし、続いて抗ビオチンビーズ(DNAM1)にコンジュゲートされた抗DNAM1ビオチン化抗体、又はLigaTrapビーズ(Dianova GmbH、Hamburg,Germany)に各々コンジュゲートされたCD48若しくは4-1BBLを添加した、培養10日目のiPSC(iNK)由来のNK細胞の増加倍率を示すグラフである。
【
図4B】最初の3日間をNKp30の存在下とし、続いてLigaTrapビーズ(Dianova GmbH、Hamburg,Germany)に各々コンジュゲートされたIL21若しくは4-1BBL、又はIL21と4-1BBLとの組み合わせ、又はCD40、又はCRACCを添加した、培養10日目のiPSC(iNK)由来のNK細胞の増加倍率を示すグラフである。
【
図5A-1】本明細書に記載のフィーダーフリー方法を使用してiPSCから産生されたNK細胞のCD56+CD3-集団にサブゲートされた、NK表面マーカー(
図5A~5C)及び枯渇マーカー(
図5D)のフローサイトメトリー分析を示す。培養10日目に分析を行い、ここで、出発集団iNKは、最初の3日間をNKp30の存在下とし、続いて抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗DNAM1ビオチン化抗体を添加して、培養された。
図5A及び
図5A-1は、CD56陽性細胞にサブゲートされた一般的なNKマーカー(CD45、NKP30、DNAM1、2B4)の発現レベルのフローサイトメトリー分析を示す。
図5B及び
図5B-1は、未成熟NKマーカー(NKG2A、NKG2D、NKP46、NKP44)の発現レベルを示し、
図5C及び
図5C-1は、成熟NKマーカー(NKp80、CD16、KIR2DL2、CRACC)の発現を示すグラフである。
図5D及び
図5D-1は、増殖NK上の枯渇マーカーの発現レベルを示すグラフである。このマーカー分析は、増殖NK集団が成熟及び未成熟表現型の組み合わせを含有し、著しい枯渇集団を含まないことを示し、更なる増殖の潜在性を指摘する。
【
図5B-1】本明細書に記載のフィーダーフリー方法を使用してiPSCから産生されたNK細胞のCD56+CD3-集団にサブゲートされた、NK表面マーカー(
図5A~5C)及び枯渇マーカー(
図5D)のフローサイトメトリー分析を示す。培養10日目に分析を行い、ここで、出発集団iNKは、最初の3日間をNKp30の存在下とし、続いて抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗DNAM1ビオチン化抗体を添加して、培養された。
図5A及び
図5A-1は、CD56陽性細胞にサブゲートされた一般的なNKマーカー(CD45、NKP30、DNAM1、2B4)の発現レベルのフローサイトメトリー分析を示す。
図5B及び
図5B-1は、未成熟NKマーカー(NKG2A、NKG2D、NKP46、NKP44)の発現レベルを示し、
図5C及び
図5C-1は、成熟NKマーカー(NKp80、CD16、KIR2DL2、CRACC)の発現を示すグラフである。
図5D及び
図5D-1は、増殖NK上の枯渇マーカーの発現レベルを示すグラフである。このマーカー分析は、増殖NK集団が成熟及び未成熟表現型の組み合わせを含有し、著しい枯渇集団を含まないことを示し、更なる増殖の潜在性を指摘する。
【
図5C-1】本明細書に記載のフィーダーフリー方法を使用してiPSCから産生されたNK細胞のCD56+CD3-集団にサブゲートされた、NK表面マーカー(
図5A~5C)及び枯渇マーカー(
図5D)のフローサイトメトリー分析を示す。培養10日目に分析を行い、ここで、出発集団iNKは、最初の3日間をNKp30の存在下とし、続いて抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗DNAM1ビオチン化抗体を添加して、培養された。
図5A及び
図5A-1は、CD56陽性細胞にサブゲートされた一般的なNKマーカー(CD45、NKP30、DNAM1、2B4)の発現レベルのフローサイトメトリー分析を示す。
図5B及び
図5B-1は、未成熟NKマーカー(NKG2A、NKG2D、NKP46、NKP44)の発現レベルを示し、
図5C及び
図5C-1は、成熟NKマーカー(NKp80、CD16、KIR2DL2、CRACC)の発現を示すグラフである。
図5D及び
図5D-1は、増殖NK上の枯渇マーカーの発現レベルを示すグラフである。このマーカー分析は、増殖NK集団が成熟及び未成熟表現型の組み合わせを含有し、著しい枯渇集団を含まないことを示し、更なる増殖の潜在性を指摘する。
【
図5D-1】本明細書に記載のフィーダーフリー方法を使用してiPSCから産生されたNK細胞のCD56+CD3-集団にサブゲートされた、NK表面マーカー(
図5A~5C)及び枯渇マーカー(
図5D)のフローサイトメトリー分析を示す。培養10日目に分析を行い、ここで、出発集団iNKは、最初の3日間をNKp30の存在下とし、続いて抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗DNAM1ビオチン化抗体を添加して、培養された。
図5A及び
図5A-1は、CD56陽性細胞にサブゲートされた一般的なNKマーカー(CD45、NKP30、DNAM1、2B4)の発現レベルのフローサイトメトリー分析を示す。
図5B及び
図5B-1は、未成熟NKマーカー(NKG2A、NKG2D、NKP46、NKP44)の発現レベルを示し、
図5C及び
図5C-1は、成熟NKマーカー(NKp80、CD16、KIR2DL2、CRACC)の発現を示すグラフである。
図5D及び
図5D-1は、増殖NK上の枯渇マーカーの発現レベルを示すグラフである。このマーカー分析は、増殖NK集団が成熟及び未成熟表現型の組み合わせを含有し、著しい枯渇集団を含まないことを示し、更なる増殖の潜在性を指摘する。
【
図6】iPSC由来の増殖NK細胞(iNK)の細胞傷害性効果を示すグラフである。出発NK調製物をNKp30の存在下で最初の3日間培養し、続いて更なる7日間の培養のために、抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗DNAM1ビオチン化抗体を添加した。この死滅アッセイでは、増殖NK調製物を、異なる比(0.25:1~10:1のNK:K562)でK562がん細胞株(「標的」細胞)と共培養して、標的K562細胞に対する増殖NK調製物の細胞傷害性効果を決定した。各時点(6時間毎)で、リアルタイムライブイメージングシステム(Incucyte、Sartorius,US)を使用して、生きたがん細胞のレベルを決定し、時間0(播種日)での標的細胞の初期負荷数に対して正規化した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、フィーダーフリー細胞培養環境においてiPSC又は臍帯血に由来するナチュラルキラー細胞を増殖させる方法に関する。ナチュラルキラー(以下、「NK」と略記する)細胞は、免疫反応に関与するリンパ系細胞である。これらの細胞は、腫瘍細胞、がん化を受けている細胞、ウイルス感染細胞、及び生体内の他の異常細胞を死滅させることを含む、様々な機能を有する。したがって、NK細胞は、先天性免疫監視機構の重要な構成要素である。NK細胞は、ウイルス感染細胞及び腫瘍細胞に対して自発的な非MHC拘束性細胞傷害性活性を示し、インビボでのウイルス感染及びがん発生に対する耐性を媒介する。したがって、NK細胞の数を効果的に増殖又は増加させるためのエクスビボ法は、腫瘍及びウイルス感染の免疫療法治療に好適な治療有効濃度の細胞を生成するのに有用である。
【0013】
したがって、本開示の第1の態様は、増殖ナチュラルキラー(NK)細胞調製物を産生する方法を対象とする。本方法は、NK細胞の出発調製物を提供することと、出発調製物をナチュラルキラー細胞p30関連タンパク質(NKp30)調節剤で処理することと、を含む。本方法は、処理された調製物を、NK細胞の出発調製物を増殖させるのに有効な条件下で培養して、増殖NK細胞調製物を産生することを更に伴う。
【0014】
本開示のこの態様及び全ての態様によれば、増殖NK細胞調製物を産生する方法は、方法の間の任意のどの時点でも細胞のフィーダー細胞集団の存在下でNK細胞の出発調製物を培養することを伴わない。本方法は、フィーダー細胞集団の完全な非存在下で行われる。
【0015】
いくつかの実施形態では、NK細胞の出発調製物は、未成熟NK(immature NK、iNK)細胞の調製物である。未成熟NK細胞としては、Abel et al.,「Natural Killer Cells:Development,Maturation,and Clinical Utilization,」Frontiers Immunol.9:1869(2018)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)によって定義されているステージ3及び4のNK前駆細胞が挙げられ、それは、成熟NK細胞になることができる。未成熟NK細胞は、NKG2D、CD335、CD337、NKG2A、NKP80、及びCD56brightのうちのいずれか1つ又は2つ以上のそれらの発現によって定義される。いくつかの実施形態では、NK細胞の出発調製物は、成熟NK細胞の調製物である。成熟NK細胞は、特徴的な表面マーカー及びNK細胞機能を有し、更なる分化の潜在性を欠く、コミットされたNK細胞である(Abel et al.,「Natural Killer Cells:Development,Maturation,and Clinical Utilization,」Frontiers Immunol.9:1869(2018)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。成熟NK細胞は、CD16、CD56dim、KIR、及びCD57のいずれか1つ又は2つ以上のそれらの発現によって定義される。いくつかの実施形態では、NK細胞の出発調製物は、未成熟NK細胞と成熟NK細胞との混合物を含有する調製物である。いくつかの実施形態では、NK細胞の出発調製物は、CD56+/-/CD16-/CD45+/CD34-発現プロファイルによって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、NK細胞の出発調製物は、CD56+/CD16-/CD45+/CD34-発現プロファイルによって特徴付けられる。
【0016】
任意の実施形態では、出発NK細胞調製物のNK細胞は、臍帯血のiPSC又はCD34+造血前駆細胞に由来する哺乳動物NK細胞である。好適な哺乳動物NK細胞集団としては、ヒトNK細胞、霊長類NK細胞、ウシNK細胞、イヌNK細胞、ネコNK細胞、齧歯類NK細胞(例えば、マウスNK細胞)、並びに他の哺乳動物に由来するNK細胞が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、出発NK調製物のNK細胞は、ヒトNK細胞であり、増殖NK調製物のNK細胞も同様にヒトNK細胞である。
【0017】
任意の実施形態では、NK細胞の出発調製物は、CD34+造血前駆細胞集団に由来する。任意の実施形態では、CD34+造血前駆細胞集団は、CD34+臍帯血細胞の集団である。CD34+造血前駆細胞からNK細胞を産生する方法は、当該技術分野において周知されており、例えば、以下を参照されたい:Spanholtz et al.,「Clinical-grade generation of active NK cells from cord blood hematopoietic progenitor cells for immunotherapy using a closed-system culture process,」PLoS One 6(6):e20740(2011)、Cany et al.,「Combined IL-15 and IL-12 drives the generation of CD34-derived natural killer cells with superior maturation and alloreactivity potential following adoptive transfer,」Oncoimmunology 4(7):e1017701(2015)、及びSpanholtz et al.,「High log-scale expansion of functional human natural killer cells from umbilical cord blood CD34-positive cells for adoptive cancer immunotherapy,」PLoS One 5(2):e9221(2010)。これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0018】
任意の実施形態では、CD34+造血前駆細胞集団は、人工多能性幹細胞(iPSC)の集団に由来するか、又はそれから分化する。iPSC集団からナチュラルキラー細胞を生成する方法は、当該技術分野において周知されている(例えば、以下を参照されたい:Rezvani et al.,「Engineering natural killer cells for cancer immunotherapy,」Mol Ther.25(8):1769-81(2017)、Li et al.「Human iPSC-derived natural killer cells engineered with chimeric antigen receptors enhance anti-tumor activity,」Cell Stem Cell,23(2):181-192.e5(2018)、Ni et al.「Expression of chimeric receptor CD4zeta by natural killer cells derived from human pluripotent stem cells improves in vitro activity but does not enhance suppression of HIV infection in vivo,」Stem Cells 32(4):1021-31(2014)。これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0019】
任意の実施形態では、出発NK細胞調製物のNK細胞は、遺伝子改変され、すなわち、外来遺伝子又は核酸配列を含有及び/又は発現し、これが次に細胞又はその子孫の遺伝子型又は表現型を改変する。例えば、一実施形態では、出発NK細胞調製物のNK細胞は、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)を発現するように遺伝子改変される。別の実施形態では、出発NK細胞調製物のNK細胞は、1つ又は2つ以上のケモカイン受容体を発現又は過剰発現するように遺伝子改変される。遺伝子改変されたNK細胞を産生する方法は、当該技術分野において周知されており、本明細書に記載の方法における使用に好適である(例えば、以下を参照されたい:Rezvani et al.,「Engineering natural killer cells for cancer immunotherapy,」Mol Ther.25(8):1769-81(2017)、Li et al.「Human iPSC-derived natural killer cells engineered with chimeric antigen receptors enhance anti-tumor activity,」Cell Stem Cell,23(2):181-192.e5(2018)、Ni et al.「Expression of chimeric receptor CD4zeta by natural killer cells derived from human pluripotent stem cells improves in vitro activity but does not enhance suppression of HIV infection in vivo,」Stem Cells 32(4):1021-31(2014)、Schonfeld et al.,「Selective inhibition of tumor growth by clonal NK cells expressing an ErbB2/HER2-specific chimeric antigen receptor,」Mol Ther.23(2):330-8(2015)、Romanski et al.,「CD19-CAR engineered NK-92 cells are sufficient to overcome NK cell resistance in B-cell malignancies,」J Cell Mol Med.20(7):1287-94(2016)。これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。本明細書に記載の方法によれば、増殖NK調製物の細胞は、出発調製物細胞の遺伝子改変を保持する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の方法は、CAR-NK細胞などの遺伝子改変されたNK細胞を増殖させて、遺伝子改変されたNK細胞の増殖調製物を産生するのに好適である。
【0020】
任意の実施形態では、精製されたNK細胞の集団を含むNK細胞の出発調製物。NK細胞は、MACS(登録商標)(Miltenyi Biotec)などの磁気細胞分離方法又はFACS(商標)などのフローサイトメトリー法によって、NK細胞及び他の細胞、例えば、PMBC又は全血などを含む試料から精製され得る。細胞、例えば、NK細胞の精製のためのこれら及び他の方法は、当該技術分野において周知されている。
【0021】
任意の実施形態では、出発調製物中の該NK細胞の濃度は、5~20mlの標準NK細胞培養培地中、約1×105~約1×106個の細胞のいずれかである。任意の実施形態では、出発調製物中の該NK細胞の濃度は、5~20mlの標準NK細胞培養培地中、約2.5×105~約7.5×105個の細胞である。任意の実施形態では、出発調製物中の該NK細胞の濃度は、5~20ml中、約1×105、1.5×105、2×105、2.5×105、3×105、3.5×105、4×105、4.5×105、5×105、5.5×105、6×105、6.5×105、7×105、7.5×105、8×105、8.5×105、9×105、9.5×105、又は1×106個の細胞である。任意の実施形態では、出発調製物中の該NK細胞の濃度は、5~20mlの標準NK細胞培養培地中、5×105個の細胞である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「細胞培養培地」という用語は、NK細胞の維持に必要とされる化学的条件を提供する液体を含む。NK細胞増殖を支持することが既知の化学的条件の例としては、細胞培養培地中に定期的に提供される(又は手動で与えられ得る)溶液、緩衝液、血清、血清成分、栄養素、ビタミン、サイトカイン、及び他の成長因子が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載のNK細胞を増殖させる方法における使用に好適な細胞培養培地としては、NK-MACS(Miltenyi)、TexMACS(Miltenyi)、CellGro SCGM(CellGenix)、X-Vivo10、X-Vivo15、BINKIT NK細胞初期培地(Cosmo Bio USA)、AIM-V(Invitrogen)、DMEM/F12、NK細胞培養培地(Upcyte Technologies)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
上述されるように、本明細書に開示される方法に従ってNK細胞を増殖させる方法は、出発調製物をNKp30調節剤で処理することを伴う。NKp30(天然細胞傷害性誘発受容体3、活性化ナチュラルキラー受容体30、及びCD337としても既知)は、その細胞外リガンドに結合することによって活性化されるNK細胞の細胞膜受容体である。NKp30の細胞外リガンドとしては、大型プロリンリッチタンパク質BAG6(「BAG6」)及び天然細胞傷害性誘発受容体3リガンド1(B7ホモログ6又はB7-H6としても既知)が挙げられる。本明細書に記載されるように、好適なNKp30調節剤は、抗NKp30抗体、抗NKp30抗体断片(例えば、NKp30Fab断片、NKp30単一可変ドメインなど)又は抗NKp30抗体ベースの分子(例えば、NKp30単鎖抗体)である。好適な抗NKp30抗体、抗体断片、及び抗体ベースの分子は、当該技術分野で知られており、本明細書に開示される方法で使用するために市販されている(例えば、以下を参照されたい:Miltenyi Biotec、Abcam、Bio-Techne(R&D)及びBiolegend)。任意の実施形態では、本明細書に開示される方法に従う使用に好適なNKp30調節剤は、NKp30のリガンド、例えば、BAG6若しくはB7-H6、又はBAG6若しくはB7-H6のNKp30受容体結合断片である。本明細書に記載のインビトロ細胞培養方法における使用に好適な好適な組換えBAG6タンパク質及びB7-H6タンパク質、特に組換えヒトBAG6タンパク質及びB7-H6タンパク質は、当該技術分野で知られており、例えば、R&D Systems及びAbcamから市販されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、出発調製物は、NKp30調節剤で処理される。いくつかの実施形態では、出発調製物は、第2又は第3の増殖剤と併せてNKp30調節剤で処理される。いくつかの実施形態では、NKp30調節剤は、1ラウンド又は2ラウンド以上の増殖(すなわち、10日)のために出発調製物に単独で投与され、次いで増殖の後続のラウンドでは、NKp30調節剤は、第2又は第3の増殖剤と併せて投与される。更に別の実施形態では、NKp30調節剤は、1ラウンド又は2ラウンド以上の増殖(すなわち、10日)のために出発NK調製物に投与され、次いで増殖の後続のラウンドでは、NKp30調節剤は、除去され、かつ/又は第2及び/若しくは第3の増殖剤によって置き換えられる。
【0025】
本明細書に開示される方法に従う使用のための好適な第2及び第3の増殖剤としては、NK細胞受容体2B4(「2B4」)リガンド及びDNAM-1リガンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
NK細胞受容体2B4は、SLAMファミリーメンバー4及びシグナル伝達リンパ球活性化分子4としても知られており、NK細胞の活性化及びNK細胞の細胞傷害性の刺激に関与する異好性受容体である。CD48は、2B4のリガンドであり、したがって、任意の実施形態では、本明細書に開示される方法において増殖剤として使用するための好適な2B4リガンドは、CD48タンパク質又はその2B4受容体結合断片である。インビトロ細胞培養の使用に好適な組換えCD48タンパク質、特に組換えヒトCD48タンパク質は、当該技術分野で知られており、例えば、R&D Systems及びAbcamから市販されている。いくつかの実施形態では、2B4リガンドは、抗2B4抗体、抗体断片、又は抗体ベースの分子である。好適な抗2B4抗体及び抗体ベースの分子は、当該技術分野で知られており、購入及び記載の方法における使用のために市販されている(例えば、以下を参照されたい:R&D Systems及びAbcam)。
【0027】
CD226抗原としても既知のDNAM-1は、細胞間接着、リンパ球シグナル伝達、細胞傷害性、及びリンホカイン分泌に関与する細胞表面受容体である。DNAM-1の機能的リガンドとして、CD155(ネクチン様タンパク質5及びポリオウイルス受容体としても既知)及びCD112(ネクチン-2としても既知)が挙げられる。したがって、本明細書に開示される方法における増殖剤としての使用のための好適なDNAM-1リガンドとしては、組換えCD155タンパク質及びCD112タンパク質又はこれらのタンパク質のDNAM-1結合断片が挙げられる。インビトロ細胞培養の使用に好適な組換えCD155及びCD112タンパク質、特に組換えヒトCD155及びCD112タンパク質は、当該技術分野で知られており、例えば、R&D Systems及びAbcamから市販されている。他の好適なDNAM-1リガンドとしては、DNAM-1抗体、抗体断片、及び抗体ベースの分子が挙げられる。好適な抗DNAM-1抗体及び抗体ベースの分子は、当該技術分野で知られており、購入及び記載の方法における使用のために市販されている(例えば、以下を参照されたい:Thermofisher、Abcam及びBiolegend)。
【0028】
本開示のこの態様及び全ての態様によれば、組換えタンパク質リガンド、例えば、CD155又はCD48の使用は、それぞれのNK細胞受容体を調節して、NK細胞の分裂増殖を誘導する能力を保持するこれらのリガンドタンパク質の断片、突然変異体、又は変異体(例えば、改変形態)の使用を含むことが理解される。言い換えれば、好適なリガンド断片、突然変異体、変異体などは、エクスビボ培養条件においてNK細胞の分裂増殖を増強するためにそれぞれのNK細胞受容体を調節することに関連するため、それらの生物学的活性を保持するものである。
【0029】
本明細書に記載の方法の任意の実施形態では、NKp30調節剤は、好適な2B4リガンドと組み合わせて出発NK調製物に投与される。任意の実施形態では、NKp30調節剤は、DNAM-1リガンドと併せて投与される。任意の実施形態では、NKp30調節剤は、2B4リガンド及びDNAM-1リガンドと併せて投与される。好ましい実施形態では、NKp30調節剤はNKp30抗体であり、該抗体は、組換えCD48タンパク質及び組換えCD155タンパク質と併せて出発NK細胞調製物に投与される。
【0030】
本明細書に記載のNK細胞増殖方法において、NKp30調節剤、2B4リガンド、及びDNAM-1リガンドと組み合わせて、及び/又はそれらの代替として使用され得る他の薬剤としては、固定化IL21、CD40タンパク質(CD40リガンドに結合する)、CRACC/SLAMF7タンパク質(CRACC/SLAMF7に結合する)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー9(TNFRSF9)に対するリガンド、及び腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(TNFRSF4)に対するリガンドが挙げられるが、これらに限定されない。IL21は、IL21受容体及び共通サイトカイン受容体ガンマ鎖に結合するサイトカインであり、CD40は、CD40リガンドに結合する共刺激タンパク質であり、CRACCタンパク質は、IgスーパーファミリーのCD2サブセットに属するI型膜貫通タンパク質である。インビトロ細胞培養の使用に好適なIL21、CD40、及びCRACCは、当該技術分野で知られており、例えば、R&D Systems、Acrobiosystems及びSinobiologicalから市販されている。TNFRSF9に対する機能的リガンドは4-1BBリガンド(4-1BBL)又は抗4-1BB抗体であり、TNFRSF4に対する機能的リガンドはOX40Lである。インビトロ細胞培養の使用に好適な組換え4-1BBL及びOX40Lタンパク質、特に組換えヒト4-1BBL及びOX40Lタンパク質、又はその三量体構築物(活性型)若しくは特異的4-1BB活性化抗体(抗4-1BB抗体)としての受容体結合断片は、当該技術分野で知られており、例えば、R&D Systems、Biolegend、Acrobiosystems及びAbcamから市販されている。NKp30調節剤、2B4リガンド、及びDNAM-1リガンドと組み合わせて、及び/又はそれらの代替として投与され得る別の増殖剤は、白血球接着タンパク質LFAに対するリガンドである細胞内接着分子2(ICAM-2)である。インビトロ細胞培養の使用に好適な組換えICAM-2タンパク質、特に組換えヒトICAM-2タンパク質又はその受容体結合断片も当該技術分野で知られており、例えば、R&D Systems、Abcam、Acrobiosystems及びSinobiologicalから市販されている。
【0031】
任意の実施形態では、NK細胞増殖を誘導する本明細書に開示される薬剤、すなわち、NKp30調節剤、2B4リガンド、DNAM-1リガンド、ICAM-2、4-1BBリガンド、調節剤(抗体)cra、及びOX40Lは、本明細書において集合的に「NK細胞培養増殖剤」と称される。任意の実施形態では、本明細書に記載のこれらのNK細胞培養増殖剤は、天然の可溶性形態で出発NK細胞調製物に投与される。いくつかの実施形態では、これらのNK細胞培養増殖剤は、固体支持体又は基質に結合され、この基質結合形態で出発NK細胞調製物に投与される。更に別の実施形態では、NK細胞培養増殖剤のうちの1つ又は2つ以上は、可溶性形態で投与されるが、1つ又は2つ以上は、固体支持体に結合された出発NK細胞調製物に投与される。
【0032】
本方法のこの実施形態によれば、増殖剤は、出発NK細胞集団の分化及び増殖を誘導するために出発NK集団に投与される前に、好適な固体支持体、例えば、細胞培養ビーズ又は粒子に結合され得る。任意の実施形態では、NK増殖剤は各々、それら自体の固体支持体に結合又はコンジュゲートされ、例えば、一種の増殖剤が一種の細胞培養ビーズに結合される。別の実施形態では、NK細胞増殖剤のうちの2つ又はそれ以上は、1種類のビーズに一緒に結合される。細胞培養ビーズへのNK増殖剤の結合は、当該技術分野において日常的であり、例えば、結合対部分の第1のメンバーが増殖剤(例えば、ビオチン又はFc断片)にコンジュゲートされ、結合対部分の第2のメンバー(例えば、ストレプトアビジン又はFc受容体)が固体支持体にコンジュゲートされる、標準的な結合対部分の使用を介して達成され得る。好適な結合対部分としては、Fc-IgG Fc受容体、ビオチン-ストレプトアビジン、IgG-タンパク質A、マルトース-マルトース結合タンパク質(maltose-maltose binding protein、MBP)、アルブミン-アルブミン結合タンパク質(albumin-albumin-binding protein、ABP)、及びカルモジュリン-カルモジュリン結合ペプチド(calmodulin-calmodulin binding peptide、CBP)が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、いくつかの実施形態では、増殖剤は、結合部分、例えば、Fc部分、ビオチン部分、又は任意の他の結合対部分に結合され、ビーズ又は他の固体支持体は、NK増殖剤を固体支持体にコンジュゲート又は結合させるためのパートナー結合対部分を含有する。
【0033】
本明細書に記載のNK細胞調製物を増殖させるフィーダーフリー方法の実施形態は、増殖プロセスを補足するために、出発NK調製物を1つ又は2つ以上の刺激性サイトカインで処理することを更に伴い得る。この実施形態によれば、1つ又は2つ以上の刺激性サイトカインは、増殖剤が細胞調製物に投与されるのと同時に、又は培養工程中の任意の時点(すなわち、培養の0日目~10日目の間の任意の時点の間)で、細胞培養培地への添加を介して出発NK細胞調製物に投与され得る。個々のサイトカイン又はサイトカインの組み合わせは、増殖期間中に1回添加され得るか、又は増殖を最大化するために必要に応じて繰り返し添加され得る。本明細書に記載の方法において増殖剤を補足し得る好適な刺激性サイトカインとしては、IL-2、IL-12、IL-15、IL18、IL21、又はこれらのサイトカインの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書に記載の出発NK細胞調製物を増殖させる方法によれば、出発NK細胞調製物は、本方法の0日目にNK細胞培養増殖剤のうちの1つ又は2つ以上で処理される。NK細胞培養増殖剤は各々、細胞成長培地において、出発NK細胞調製物の増殖を誘導するのに好適な濃度で投与される。典型的には、個々のNK細胞培養増殖剤又は刺激性サイトカイン、例えば、NKp30調節剤、2B4リガンド、及びDNAM-1リガンドの好適な濃度は、約0.1~1000ng/mLの範囲にある。いくつかの実施形態では、各増殖剤の濃度は、約1~200ng/mLの範囲にある。いくつかの実施形態では、各増殖剤の濃度は、約10~100ng/mLの範囲、例えば、10ng/ml、20ng/ml、30ng/ml、40ng/ml、50ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、80ng/ml、90ng/ml、100ng/ml、120ng/ml、130ng/ml、140ng/ml、150ng/ml、160ng/ml、170ng/ml、180ng/ml、190ng/ml、200ng/ml、又は≧200ng/mlにある。以下の実施例は、増殖剤の例示的な有効濃度を実証する。
【0035】
NK細胞の出発集団が1つ又は2つ以上の増殖剤で処理されると、処理された調製物は、調製物中のNK細胞の数を増加又は増殖させる条件下で培養される。調製物中のNK細胞の数を増加又は増殖させるのに有効な条件は、標準的な細胞成長培地(例えば、5%ウシ胎児血清を含有するNK MACS培地)の存在下での標準的な細胞培養条件、例えば、37℃、5%CO2、及び80%湿度を含む。
【0036】
本明細書に記載の1つ又は2つ以上の増殖剤の存在下での出発NK細胞調製物の培養は、1ラウンド又は2ラウンド以上で行うことができ、各ラウンドは、約5~約15日、例えば、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、又は>15日である。各ラウンドの終わりに、該培養工程から得られた増殖NK細胞調製物は、1ラウンド又は2ラウンド以上の増殖の更なるラウンドに供される前に、収集及び分割され得る。上記のように、増殖の更なるラウンドは、細胞を同じか又は異なる増殖試薬で処理することによって行われ得る。増殖の各ラウンドの間、1つの又は増殖試薬は、典型的には、出発細胞調製物に1回だけ投与される。しかしながら、1ラウンドの増殖内での1つ又は2つ以上の増殖試薬及び/又は刺激性サイトカインの反復投与も企図される。
【0037】
本明細書に記載の1つ又は2つ以上の増殖剤の存在下でNK細胞の出発調製物を培養することは、出発調製物中の細胞の数より少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも35倍、少なくとも40倍、少なくとも45倍、少なくとも50倍、少なくとも55倍、少なくとも60倍、少なくとも65倍、少なくとも70倍、少なくとも75倍、少なくとも80倍、少なくとも85倍、少なくとも90倍、少なくとも95倍、少なくとも100倍以上の細胞を含む増殖NK細胞調製物を産生することができる。
【0038】
任意の実施形態では、出発NK細胞調製物を処理及び培養する方法は、出発調製物中の細胞の数よりも少なくとも40倍多い細胞を含む増殖NK細胞調製物を産生するのに有効である。
【0039】
任意の実施形態では、出発NK細胞調製物を処理及び培養する方法は、出発調製物中の細胞の数よりも40倍超えて多い細胞を含む増殖NK細胞調製物を産生するのに有効である。
【0040】
任意の実施形態では、本明細書に記載のNK細胞を増殖させるフィーダーフリー方法は、約2×109~約1×1011個のNK細胞を含む増殖NK調製物を産生する。任意の実施形態では、本明細書に記載の方法は、2×109個のNK細胞、3×109個のNK細胞、4×109個のNK細胞、5×109個のNK細胞、6×109個のNK細胞、7×109個のNK細胞、8×109個のNK細胞、9×109個のNK細胞、1×1010個のNK細胞、2×1010個のNK細胞、3×1010個のNK細胞、4×1010個のNK細胞、5×1010個のNK細胞、6×1010個のNK細胞、7×1010個のNK細胞、8×1010個のNK細胞、9×1010個のNK細胞、1×1011個のNK細胞、又は1×1011個超のNK細胞を含む増殖NK調製物を産生する。
【0041】
本明細書に記載の方法によれば、増殖NK細胞調製物は、未成熟NK細胞と成熟NK細胞との異質混合物を含む調製物である。一実施形態では、増殖NK細胞調製物は、後期未成熟NK細胞及び成熟NK細胞の調製物である。一実施形態では、増殖NK細胞調製物は、CD56+/CD3-/CD45+/CD16+/-発現プロファイルによって特徴付けられる細胞の調製物である。別の実施形態では、増殖NK細胞調製物のNK細胞は、NKG2-CタイプII内在性膜タンパク質を発現するが、NKG2-A/NKG2-BタイプII内在性膜タンパク質を発現しない。この発現パターンを利用して、本明細書に記載の方法によって産生された増殖NK細胞調製物を、フィーダー細胞集団の存在下で産生された増殖NK細胞調製物と区別することができる(すなわち、フィーダー細胞培養系において産生されたNK細胞は、NKG2-CタイプII内在性膜タンパク質を発現しないが、NKG2-A/NKG2-BタイプII内在性膜タンパク質を発現する。
【0042】
本明細書に記載の方法に従って生成された増殖NK細胞調製物のNK細胞は、機能的NK細胞である。換言すれば、増殖細胞調製物のNK細胞は、NK細胞に起因するそれらの正常な生物学的機能を保持する。NK細胞機能の非限定的なリストとしては、例えば、細胞傷害性、アポトーシスの誘導、細胞運動性、指向性遊走、サイトカイン及び他の細胞シグナル応答、サイトカイン/ケモカイン産生及び分泌、活性化及び阻害性細胞表面分子の発現、移植宿主における細胞ホーミング及び生着(インビボ保持)、並びに疾患又は疾患プロセスインビボの変化が挙げられる。
【0043】
本開示の別の態様は、本明細書に開示される方法に従って産生されたNK細胞の治療調製物を対象とする。本明細書で言及される場合、NK細胞の「治療調製物」は、治療有効濃度の機能的NK細胞を含む調製物である。治療調製物中のNK細胞の量は、企図されるインビボでの使用又は免疫療法に依存して変化する。投与される治療量はまた、患者の状態及び併用療法に依存して変化し、全ての適切な因子を考慮することによって決定されるべきである。
【0044】
本開示の別の態様は、NK細胞の治療調製物と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物を対象とする。本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される担体」としては、当業者に既知であるような、任意の及び全ての水性溶媒(例えば、水、生理食塩水、非経口ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム、リンゲルデキストロースなど)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、分散媒地、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤又は抗真菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガス)、等張剤、吸収遅延剤、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。医薬組成物中の様々な構成成分のpH及び正確な濃度は、周知のパラメータに従って調整される。
【0045】
本開示の別の態様は、養子NK細胞療法を必要とする対象を治療する方法を対象とする。本方法は、養子NK細胞療法を必要とする対象に、本明細書に開示される方法に従って産生されたNK細胞の治療調製物又はそれを含む医薬組成物を、養子NK細胞療法を必要とする対象を治療するのに有効な量で投与することを伴う。
【0046】
一実施形態では、養子NK細胞療法を必要とする対象は、がんを有する対象である。NK細胞の注入は、急性骨髄性白血病又は多発性骨髄腫などの血液がん、並びにいくつかの固形腫瘍、例えば、脳腫瘍、ユーイング肉腫、及び横紋筋肉腫を含む、NK細胞溶解に感受性のがんを有する患者のための治療選択肢である。機能的NK細胞の数の増加はまた、とりわけ、リンパ腫、結腸直腸がん、肺がん、及び乳がんを含むいくつかのがんの治療において使用される治療抗体の有効性を著しく増強し得る。
【0047】
したがって、一実施形態では、養子NK細胞療法は、がんを有する対象に投与され、増殖NK細胞調製物は、がん細胞死を引き起こすために投与される。本明細書に開示される増殖NK細胞調製物による治療に好適な例示的な固形腫瘍としては、膵臓、結腸、盲腸、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、黒色腫、前立腺、及び乳房からなる群から選択される臓器の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な血液学的腫瘍としては、骨髄の腫瘍、T細胞悪性腫瘍又はB細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、骨髄腫などが挙げられる。本明細書に提供される増殖NK細胞調製物を使用して治療され得るがんの更なる例としては、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、及び肺の扁平上皮がんを含む)、腹膜のがん、胃がん(gastric cancer)又は胃がん(stomach cancer)(胃腸がん及び胃腸間質がんを含む)、膵臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓又は腎細胞がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、様々な種類の頭頸部がん、神経芽細胞腫、神経膠芽腫、並びに鼻咽頭がん及び黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に従って生成された増殖NK細胞調製物は、原発がん治療と組み合わせてがんを有する対象に投与される。いくつかの実施形態では、増殖NK細胞集団は、化学療法、手術、又は放射線と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に従って生成された増殖NK細胞調製物は、例えば、多発性骨髄腫を有する対象において、がん治療として自己幹細胞移植を受けた対象に投与される。
【0049】
別の実施形態では、養子NK細胞療法は、ウイルス感染を有する対象に投与され、増殖NK細胞調製物を投与して、抗ウイルス免疫及びウイルス感染宿主細胞の死を増強する。本明細書に開示される方法に従って生成された増殖NK細胞調製物による治療に好適なウイルス感染としては、二本鎖DNA(double-stranded DNA、dsDNA)、一本鎖DNA(single-stranded DNA、ssDNA)、二本鎖ゲノムRNA(double-stranded genomic RNA、dsRNA)、一本鎖陽性RNA、及び一本鎖陰性RNAウイルスによって引き起こされるか、又はそれらに関連する任意の感染が挙げられる。任意の実施形態では、ウイルス感染は、急性感染、例えば、インフルエンザ(例えば、H1N1、H5N1)、パラインフルエンザ、パラミクソウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、エンテロウイルス、痘瘡ウイルス、ロタウイルス、フラビウイルス感染(例えば、デングウイルス(dengue virus、DENV)、西ナイルウイルス、日本脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、及びジカウイルス)、出血熱ウイルス(例えば、アレナウイルス科、ブニヤウイルス科、フィロウイルス科、フラビウイルス科、及びトガウイルス科のウイルス)、及びコロナウイルス(例えば、SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoV)による感染であるが、これらに限定されない。任意の実施形態では、ウイルス感染は、肝炎ウイルス、エプスタイン-バーウイルス(ヘルペスウイルス)、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus、HIV)などの慢性ウイルス感染である。
【0050】
細胞組成物、例えば、治療有効量の本明細書に記載の増殖NK細胞を含む組成物を投与する方法は、当該技術分野で知られており、Rezvaniらの米国特許公開第2018/0353544号及びDaherらの同第2021/0230548号に例示されているものなどの手順が挙げられ、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。使用される活性化NK細胞の量は、インビトロの使用とインビトロの使用との間で、並びに標的細胞の量及び種類に応じて変化し得る。投与される量はまた、患者の状態に依存して変化し、かつ医療者によって全ての適切な因子を考慮することによって決定されるべきである。
【実施例】
【0051】
以下の実施例は、本開示の実施形態を例示するために提供されるが、その範囲を限定することを意図するものではない。
【0052】
実施例1:フィーダーフリー培養系は、NK細胞集団の著しい増殖を達成する
フィーダーフリー増殖培養の確立のために、CD34+臍帯血を元とするNK細胞の出発集団を得た。このNK細胞の出発調製物は、CD56+/-/CD16-/CD45+/CD34-である未成熟NK細胞から主に構成された。
【0053】
5%FBSを含有する10mlのNK-MACS培地(Miltenyi)中のおよそ5×105個の細胞を各々が含有するいくつかの培養物を、0日目(播種日)に播種した。各培養物に、増殖因子の特定の組み合わせを添加して、NK細胞増殖を誘導するそれらの能力を調査した。これらの組み合わせとしては、抗NKp30モノクローナル抗体コンジュゲートビーズ(NKp30)/抗2B4モノクローナル抗体コンジュゲートビーズ(2B4)(0.25ug/ml)、NKp30/2B4/CD155-Fcコンジュゲートビーズ(CD155)(0.25ug/mlのNKp30/2B4及び3ug/mlのCD155);NKp30/2B4/ICAM2-Fcコンジュゲートビーズ(ICAM2)(0.25ug/mlのNKp30/2B4及び3ug/mlのICAM2)、NKp30/2B4/4-1BBL-Fcコンジュゲートビーズ(4-1BBL)(0.25ug/mlのNKp30/2B4及び3ug/mlの4-1BBL);及びNKp30/CD48-Fcコンジュゲートビーズ(CD48)(0.25ug/mlのNKp30及び3ug/mlのCD48)が挙げられる。比較のために、播種されたNK培養物をまた、4-1BBL及びIL21サイトカインと組み合わせて、伝統的なフィーダー細胞、すなわち、K562細胞、骨髄性白血病細胞株、又はK562フィーダー細胞の存在下で成長させた。細胞を標準的な培養条件、すなわち、37℃、5%CO2、及び80%湿度でインキュベートした。
【0054】
図1は、前段落に記載の様々な増殖剤の存在下での培養において10日間にわたって観察されたNK細胞増殖の増加を示す。増殖させた細胞集団を、CD56+/CD3-/CD45+/CD16
+/-の発現プロファイルに基づいて、未成熟NK細胞と成熟NK細胞との混合物として特徴付けた。
図1のグラフに示されるように、この10日間の短い培養期間にわたって、NKp30抗体/2B4抗体/CD155の組み合わせ及びNKp30抗体/2B4抗体/ICAM2の組み合わせで処理した培養物において、NK細胞の数の>15倍の増加が観察された。これらの培養物における増殖倍率は、フィーダー培養物で観察されたNK増殖のレベルに対応した。
【0055】
第2のラウンドの培養では、前段落に記載の第1のラウンドからのNKp30/2B4の存在下で培養した細胞を、増殖因子の同じ又は異なる組み合わせを使用する第2のラウンドの増殖のために選択した。最初の残りのビーズを除去せずに、細胞数を最初の最適数(2.5E5/ml)に調整し、次いで新鮮なNKp30/2B4ビーズ(0.25ug/ml)又はCD48ビーズ(3ug/ml)を添加した。全ての他の抗CD2、NKp46、NKp44、及びNKp80を、個々のコンジュゲートビーズにおいて0.25ug/ml濃度で添加した。
【0056】
図2は、更に12日間の培養にわたって観察されたNK細胞増殖の増加を示す。この図に示されるように、NKp30を有するNK細胞の出発培養物を、2B4のリガンドであるCD48で処理することは、NKp30及び2B4抗体で処理した培養物と比較して、より高い増殖倍率を有した。他の因子、特にNKp46モノクローナル抗体を含めると、増殖が更に増強された。
【0057】
第2の実験において、固体支持体、すなわち、ビーズコンジュゲートの効果を、フィーダーフリー培養物において試験した。この実験では、抗NKp30抗体を抗ビオチンビーズにコンジュゲートし、全ての条件において0.25ug/mlで使用した。固体支持体を試験するために、A/Gビーズ(棒グラフ上でAG条件として記載される)又は抗ヒトFcペプチドを含有するアガロースビーズ(棒グラフ上でLigatrap条件として記載される)を貫通するようにC48及びC155をコンジュゲートした。非固体支持体条件では、CD48及びCD155を、一切のビーズコンジュゲーションなしで抗ヒトFcモノクローナル抗体とともにインキュベートした(棒グラフ上でFc条件として記載される)。
【0058】
図3のグラフに示されるように、増殖因子がタンパク質A/Gビーズにコンジュゲートされた培養物におけるNK細胞増殖は、LigaTrapビーズ及び抗Fcビーズにコンジュゲートされた因子を含有する培養物と比較して、10日間にわたって最も高い増殖倍率を有した。
【0059】
第3の実験では、NKp30と組み合わせたDNAM1、CD48、及び4-1BBLのiNK増殖に対する効果を試験した。
図4に示されるように、抗ビオチンビーズにコンジュゲートされたNKp30とDNAM1との組み合わせで処理した培養物におけるNK細胞増殖は、LigaTrapビーズにコンジュゲートされたCD48又は4-1BBLを含有する培養物と比較して、10日間にわたって最も高い増殖倍率を有した。
【0060】
実施例2:フィーダーフリー増殖NK細胞集団の特徴付け。
フィーダーフリー増殖NK細胞集団のフローサイトメトリー分析を実施して、集団の異質性を評価した。したがって、NKp30の存在下での3日間の培養及び抗ビオチンビーズにコンジュゲートされた抗DNAM1ビオチン化抗体の存在下での更なる7日間の培養、一般的NKマーカー(CD56、NKP30、DNAM1、2B4)、未成熟NKマーカー(NKG2A、NKG2D、NKP46、NKP44)、及び成熟NKマーカー(NKp80、CD16、KIR、CRACC)の発現を、NK細胞のCD56+CD3-サブゲート化集団において評価した。加えて、枯渇マーカー、すなわち、PD1、LAG3、TIM3、TIGITの発現もまた発現された。
【0061】
がん細胞(K562)に対するフィーダーフリー増殖NK集団の死滅効力を評価するために、標的細胞を96ウェルプレートに最適数(20K)で播種した。この数は、エフェクター細胞(NK細胞)の添加後の高い細胞密度を回避するために選択された。アッセイの当日、標的細胞は、96ウェルプレートに3連で播種した後、少なくとも2時間沈降した。次いで、増殖させたNK細胞を、様々なE:T比(NK:K562)でプレートに添加し、全ウェル画像を、Incucyteイメージングシステムを使用して6時間毎に50時間記録した。がん細胞に対する増殖NK細胞の死滅効力を、各時点での蛍光標的細胞の数を時間0でのそれらの数と比較することによって評価した。がん細胞の死滅は、最初の25時間の時点で容易に検出可能であり、増殖NK集団の存在下での生存蛍光K562のパーセンテージの減少によって示されるように、経時的に増加した(
図6)。死滅はNK細胞比に比例し、最も早い死滅は10:1及び2.5:1のE:T比の間で起こった。
【0062】
実施例1及び2の考察
ヒトNK細胞は、CD56又はCD16の発現及びCD3の不在を特徴とするリンパ球の一種である。NK細胞は、活性化受容体及び阻害受容体の両方を発現する。NKG2D、NKp30、2B4、NKp44、NKp46、NKp80、及びDNAM-1などの活性化受容体が関与する場合、NK細胞は、これらの活性化受容体のリガンド(B7H6(NKp30リガンド)、CD48(2B4リガンド)、及びCD155(DNAM-1リガンド)など)を発現する標的細胞(例えば、がん細胞)を直接死滅させることができる。一方、NK細胞上の阻害性受容体(NKG2A)の関与は、標的細胞の溶解を防止する。
【0063】
養子NK細胞治療は、がん患者にとって有望な療法である。有効な治療用量に達するために、NK細胞を大量に増殖させる必要がある。しかしながら、以前の研究は、NK細胞増殖が細胞老化に起因していくつかの分裂に限定されることを示している。NK細胞を増殖させるための現在の増殖方法は、K562細胞などの白血病由来フィーダー細胞株上で発現される活性化リガンドを有する高用量サイトカインの使用を伴う。フィーダー細胞の使用は、未知の変数をNK細胞産生システムに導入し、これは、臨床使用のためのNK細胞産物の安全性及び品質にとって好ましくない。本明細書に記載のフィーダーフリー増殖培養プロトコルは、フィーダー細胞の必要性を排除し、したがって、方法論を単純化し、更に同等のレベルの細胞増殖を提供する。
【0064】
更に、本明細書に記載のように産生された増殖NK集団のフローサイトメトリー分析によって示されるように(
図5A~C)、フィーダーフリー系は、NKG2A、NKG2D、NKP46、NKP44の発現によって示される後期未成熟NK細胞(
図5B)と、NKp80、CD16、KIR、CRACCの発現によって示される成熟NK(
図5C)との混合物を産生する。一方、
図5Dのフローサイトメトリー分析に示されるように、フィーダーフリー増殖NK集団は、PD1、LAG3、TIM3、及びTIGITなどの既知のNK枯渇マーカーの発現の欠如によって示されるように、枯渇のいかなる徴候も示さなかった。
図5A~Dに示されるように、この枯渇の欠如、並びに未成熟状態及び成熟状態の両方の増殖NKの存在は、患者への移植の際の持続性及び増殖能力の観点から有利であるはずである。対照的に、フィーダー細胞系で増殖させたNK細胞は、増殖能力が限られている可能性があり、かつ/又は枯渇により近い成熟NK細胞のより均一な集団を産生する。
【0065】
図6に示されるように、フィーダーフリー系で増殖させたNK細胞の細胞傷害性は強力であり、少なくとも非特異的標的(K562)に対してフィーダー系で増殖させたNK細胞の公表された細胞傷害性と同等であった。最後に、フィーダー細胞は腫瘍形成性であるため、フィーダーフリー系を用いることによって、フィーダー系細胞培養において腫瘍形成性細胞を除去するために必要とされるような、増殖後の厳密な精製工程を用いる必要性が排除される。
【0066】
好ましい実施形態を本明細書で詳細に描写及び説明するが、本開示の趣旨から逸脱することなく様々な修正、追加、置換などを行うことができ、したがって、これらは以下の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲内であると考えられることは、当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】